2018年9月1日土曜日

60'sグルーヴの一夜 (再掲)

残暑厳しい季節ではありますが、ああ、あの猛暑が去っていく・・。夏大好きのわたしにとってこの季節の変わり目ほど寂しいものはない。過ごしやすい秋?いや、そんな短い季節の後に控える冬の足音の恐怖といったらもう・・。今年の夏も異常気象だったのだから、12月でも半袖、短パン、サンダルで過ごせるくらいにならないかな?、東京も(苦笑)。



そんな '真夏の狂気' から短い秋風に乗っていくために '50年後の東京' を想像させる?ような、浮遊空間とダビーな動画をどーぞ。50年後は重力から解放された東京、お台場のゆりかごめに乗っていく様をSugar Plantの 'A Furrow Dub' がトリッピーに盛り上げます。いや、単にゆりかごめの先頭車からの動画を垂直反転させたものなのだけど、いやあ、こんな '未来' がいつか来るのだろうか?わたしの幼少期の記憶では21世紀はクルマが空を飛び、真空チューブの中を高速列車が疾駆、人々はピタッとしたスピードスケート選手の出で立ちで快適な生活空間を営んでいたハズなのだが・・(笑)。

さて、話は変わって狂乱の1960年代後半。それまでの 'モノクロ' なモダニズムから、ド派手な極彩色と共に怪しい出で立ちでサイケデリックなダンスフロアーに飛び出してきた若者たち。堅苦しいスーツを脱ぎ捨て、すべてがねじれた幻覚の中で何倍にも増幅した色彩と戯れ・・まるで永遠の休日を繰り返す 'サマー・オブ・ラヴ' の季節を宣言します。





さあ、グルーヴィーなダンスフロアーにかかせない60'sファンキーなグルーヴの数々。いきなり強烈なテープ・フランジングの効いた音像と共にハモンド・オルガンから、このズンドコしたノリがたまりません。いわゆるロックという 'ジャンル' として定型化する以前の、ロックンロールやツイストあり、R&Bやブーガルー、ラテンからジャズまで '異種交配' した初期のロック衝動の方がいま聴いても実に刺激的。そしてジェイムズ・クオモを中心とした謎のサイケデリア集団、The Spoils of War。ところどころに挿入される電子音は、初期コンピュータのパンチカードを用いて演算し生成したものということから、案外と現代音楽畑にいた人なのかもしれません。しかし、出てくる音は電子音+サイケデリック・ロックのザ・ドアーズ風ポップを基調としており、Silver ApplesやFifty Foot Hose、The Free Pop Electronic Conceptなどと近い位置にいる音作りです。







まずはそんな狂乱のLate 60'sを象徴するサイケデリックのダンスフロアーから、ジ・エレクトリック・フラッグの 'Fine Jug Thing' が人々の視覚と聴覚に訴えます!このチープなコンボ・オルガンはザ・ドアーズから当時のGSバンドに至るまで、まさにサイケデリックの一夜にかかせない絶妙なスパイス。反体制をきどる無軌道な若者像、みたいな退廃的なシーンとして当時至るところで再生産されましたね。そして盲目のサックス奏者、エリック・クロスとラテン・ジャズの御大ジョー・ロコも 'イェイェ' な60'sガールズのコーラスに導かれてダンスフロアーの熱気に火を付けます!エル・グラン・コンボによりヒットしたこの 'Chua Chua Boogaloo' がロコの手にかかるとさらに通俗度UP!エコーの効いた女性コーラスの怪しげな 'イェイェ' 度とクラップが増して、オリジナルの典型的にレイドバックしたノリに比べこのタイトな感じはオリジナルより好きかも。しかし、こういう 'Go-Goガールズ' というのか、お立ち台に登ってサイケデリックなステージを盛り上げる演出は、そのままバブル末期の 'ジュリアナ東京' まで脈々と続くのですね(笑)。





60'sニューヨーク・バリオの一夜を真っ赤に染めたラテン・ブーガルー狂熱の一夜。そんな素晴らしいライヴ盤 'The King of Boogaloo' でブーガルーの帝王として君臨したのがヴァイブ奏者のピート・テレス。コレ、未だにブーガルーの傑作ながら未CD化、視聴制限もかけているということできっと権利を持った大手レーベルの怠慢の結果なのだろう。8ビートのヤクザなブーガルーのノリと熱い打楽器&ホーン・セクション、わいわいと賑やかな歓声と共にピート・テレスのヴァイブがひんやりとした夜の雰囲気を彩る・・もう、ここに足りないものはない!ってくらいの内容ですヨ。そんな最高のライヴ盤はYoutubeで視聴して頂くとして、同時期のレアな7インチ・シングルもグルーヴ濃縮100%のキラーチューン。







なになに、もっとブーガルーでノリノリしたい?じゃ、こんなホットなヤツはいかがでしょう?アレ、このホーンリフはどこかで聴いたことが・・そう、クリスティーナ・アギレラ2006年の全米ポップ・チャート第1位 'Ain't No Other Man' で丸々サンプリングされております、ってか、まんまだね。このThe Latin Blues BandはSpeedレーベルの専属バンドで、何とあのグルーヴ・マスター、バーナード 'プリティ' パーディも参加していたようです。なるほど、このファットバックしたファンキーなノリはやはり!続けてTicoの異色グループにして 'レア・グルーヴ・クラシック' の一枚に数えられる謎のグループ、ザ・ヴィレッジ・カラーズ唯一のライヴ盤。ラテン・ブーガルー専門のレーベルであったTicoながら、ノリは完全にR&Bの 'どファンク一色' で盛り上がります。そうかと思えば、ボサノヴァをやったりと節操のないところもこの時代特有の猥雑な怪しさで良し!この他、ブッカーT &ザMGズの 'Hip Hug Her'、エスキヴィルの 'Mini Skirt'、デイヴ・パイク1965年のアルバム 'Jazz for The Jet Set' などなど、この辺のグルーヴィーなノリにぴったりな音源はいっぱいあるのだけど、どれも視聴制限ばかり・・仕方ないとはいえ寂しいですが、どうぞYoutubeの方でご堪能あれ。







さあ、この辺りでクールダウン。いや、熱気はそのままながらクラクラと幻覚的作用が効いてきませんか?そんな幻惑的なムードをヴァイブの音色としてニュー・スウィング・セクステット、ジョー・クーバとベニートの六重奏団がお届けします。このヴァイブってヤツはその幻惑的な金属質の音色が乾いた手の温もりの打楽器との相性が抜群!ポワ〜ンとしたアンビエンスの空気と対照的なリヴァーブ無しの直線的ラインがそのまま、熱気漲っているダンスフロアーを冷ますと共にサイケデリックの深い酩酊状態へと誘ってくれるようです。







ブーガルーといえばジャズの界隈でも話題となり、Blue NoteやPrestigeなどの名門レーベルから8ビートを軸としたファンキーかつグルーヴィーなアルバムが粗製乱造されました。まあ、こちらは本業のジャズが立ちいかなくなり、渋々世の中の需要に合わせて 'やらされて' いたというのが本音のようですが・・。有名なのはルー・ドナルドソンによりヒットした 'Alligator Boogaloo' で、当時、日本のGSグループにまで歌詞を付けてカバーされたというのだからビックリ。お!ラテン・アレンジのハプニングス・フォーに比べて、ザ・ホワイト・キックスの方はアレンジがジャズ・ピアニストの三保敬太郎なのか。あの激烈サイケ・ジャズ盤 'こけざる組曲' の人だけにファズが効いていてエグいなあ。





意外に忘れられがちなのがご存知、サンタナ。いわゆる 'Bario' 界隈からブーガルー、サルサの黎明期において世界的ヒットを飛ばし 'ラテン・ロック' を認知させたのはこの人しかいないでしょう。特に彼らの存在を象徴的なまでに高めたウッドストックのステージは60'sグルーヴの '終わりと始まり' を見事に凝縮します。そんなサンタナの高らかな '宣言' は、そのまま '時代のあだ花' として燻っていたブーガルーの連中を '原理主義' に回帰するサルサと新たな '異種交配' へと向かわせるラテン・ロックの方向へ多様化します。前述したザ・ヴィレッジ・カラーズ同様、Ticoからデビューしたフラッシュ&ザ・ダイナミクスもそんなブーガルー末期からラテン・ロックに '感電' してしまった稀有な存在です。





このブーガルーの熱狂は日本のみならず遠くアフリカの地をも席巻し、その名もずばり 'Africa Boogaloo' として同時代にリリースされました。フェラ・クティに代表されるアフロビート的イメージからすれば、ここまでラテン色濃厚でビックリしますけど、実はキューバ革命の影響からルンバの流行と6/8拍子のポリリズム含め、アフリカとラテン・アメリカ圏の文化はかなり密接な繋がりがあるそうです。こちらはカメルーンから世界に打って出たマヌ・ディバンゴとコンゴ音楽の父、ル・グラン・カレことジョセフ・カバセレ、キューバ出身のフルート奏者ドン・ゴンサーロがパリで録音したもので、ここまでグァヒーラの香り濃厚なブーガルーをやるとはビックリ。そして、やはり挙げねばならない・・当時のジミ・ヘンドリクスらロックと並ぶ '二大インフルエンス' のひとり、'Master of Funk' ことジェイムズ・ブラウン。R&Bにおけるブーガルー・ダンスを流行させたひとりであり、この1969年には新たにポップコーンというダンスを披露しますが、この鋭角的に突っ込んでくるノリこそJBそのもの!おお、まだメイシオ・パーカーも在籍中だ。







こんなR&BのグルーヴはJBと共にもうひとり、アーチー・ベル&ザ・ドレルズの 'Tighten Up'!もまさに60'sを代表するもの。もう、このベースラインとギター・カッティングから始まるノリはあらゆるところでパクられましたね。オリジナルは超有名曲だけに視聴制限がかけられているので、ここではラテン・ブーガルーの人気バンド、TNTバンドによりビミョーにカリプソ風でパクった 'Musica Del Alma' をどーぞ。そして1950年代から活動するラテン・ジャズの重鎮、アル・エスコバルとソニー・ブラヴォによるカバー・・本当、ラテン界隈の人たちって 'Tightn Up' が好きなんだなあ。







米国ベイエリアのラテン・コミュニティから現れたウォーは、元ザ・アニマルズのヴォーカルであるエリック・バードンを迎えて、サンタナとは別のラテンとロック、ファンクの濃厚なエッセンスを混ぜ合わせて成功した稀有な存在です。その諸説ある前身バンドのひとつ、セニョール・ソウルのクールにして怪しげなブーガルーは、当時のラテン及びR&B界からハミ出したウォー前夜を予兆させるユニークな個性を感じさせますね。

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