2024年1月15日月曜日

PiezoBarrelで 'DIY' の音作り

長閑な新年の休日にマウスピースの金属加工による 'DIY' などを嗜んでみます。ここ最近は古いC.G. Connのマウスピースを集めているのですが、Bachの7Cに相応する7C-N、7C-W、7C-Bなど1960年代の 'Connstallation' シリーズからさらに古い1950年代の#1、#3、#4、#6が手許にやってきました。まあ、それぞれに特徴のあるマウスピースなんですけど、その中から#6というモデルをチョイス。Bach 5Cに相応するサイズに中庸のCカップ、26スロートにタイトなバックボアですけど、分厚いリムにこの時代のマウスピースでは驚くほど重量のある密度感がわたしの愛用するTaylorの46 Custom Shop 'Shorty Oval' にベストマッチしましたね(特にこのTaylorのラッパは 'Taylorシャンク' というサイズ径なので自社マウスピース以外の選択肢が低い...)。










一見、ヘヴィタイプのようなデザインというか今ならMonetteのUnityマウスピースっぽく見えますけど(笑)、重量があるとはいえフツーのバランスによるマウスピースですね。ちなみにこのC.G. Connの電化したサウンド・システムであるMulti-Viderの付属品として、'Telex' ピエゾ・ピックアップを装着出来るアダプター接合の7C-Wが当時ありました。こちらのWとはワイドで薄めのクッションリムを指します。このMulti-Viderの為に用意されていたピックアップの製作を担当したのは、Robert Brilhartさんの手にによる 'R-B Electronic Pick-Up'。通常タイプのほか、ピックアップとアンプの間にパッシヴのヴォリューム・コントロールで奏者の腰に調整出来る仕様もありました。ケーブルはストレートなものとカールコードの2種を用意して 'デンマーク製' と表記されておりましたが、本製品はC.G. ConnのほかGibsonのMaestro、基本は 'Volume' 機能も備える仕様の専用品であったVox Ampliphonicへも 'Uni-Level(Universal) Pickup' の汎用品で '互換性オプション' の為に納入されておりました。このような同種製品による各社を跨ぐ供給網は、例えばマイクの名門Shureが用意したCA20BピックアップがH&A Selmerのほか、Hammond製作のInnovex Condor RSMの為に供給されていたことからも伺えます。ちなみに上の3枚の画像はデンマークのラッパ吹き、アラン・ボッチンスキーによる 'アンプリファイ' したレコーディングの風景。C.G Conn Muli-ViderやMaestro Echoplexと並びモーグ博士設計によるMaestro MP-1 Phaserなども駆使、そしてYamahaの衝立のようなデザインのビザールなギターアンプTA-60によるクリーンなサウンドで鳴らすという典型的70'sセッティングでございます。




そして、サイケデリック真っ只中の 'サマー・オブ・ラヴ' の季節にThe Blues Projectのフルート奏者、アンディ・カルバーグの吹くフルート頭部管にも接合されているR-B Electronic Pick-Up。その 'アンプリファイ' したフルートでサイケデリックな白昼夢の演出に威力を発揮するのがBinsonの磁気ディスク式エコー、Echorec 2ですけど、長らく高価で繊細な仕様のヴィンテージに大枚叩いていたユーザーへの朗報としてベルギーのT-Rexから最新版として復刻しました!。一時はその開発費用などで会社の経営が傾くほどの '難物' であると製品化が危惧されておりましたが、何とか会社を持ち直してその勇姿を市場に開陳しました。入力レベルに応じて飽和するサチュレーションを現す緑色の ' Magic Eye' はもちろん、グルグルと回る円盤状の磁気ディスクはただ見てるだけでも楽しいです。過去、わたしもトランジスタ仕様ですがBinsonのEchorec EC3を所有しており、回転するキャリブレーションが狂っていたことからグニャグニャした '天然コーラス' 効果含めAllen & Heathのミキシングボードに立ち上げて 'ダブ作り' に愛用しておりました(このEC3とHawkのスプリング・リヴァーブHR-45が最高の組み合わせ)。ああ、あのエコーユニットを大量に積んでいた宅録時代が懐かしいなあ...(笑)。そんなEchorecの愛用者の一人として日本を代表する 'シンセシスト' にして偉大な作曲家、冨田勲氏がその '秘密' ともいうべき物理的エラーから生成される '天然コーラス' についてこう述べております。

"Binsonは鉄製の円盤に鋼鉄線が巻いてあって、それを磁化して音を記録するという原理のものでした。消去ヘッドは、単に強力な磁石を使っているんです。支柱は鉄の太い軸で、その周りにグリスが塗ってあるんですが、回転が割といい加減なところが良かったんです。そのグリスはけっこうな粘着力があったので、微妙な回転ムラによっては周期的ではない、レスリーにも似た '揺らぎ' が生まれるんです。4つある再生ヘッドも、それぞれのヘッドで拾うピッチが微妙に違う。修理に出すと回転が正確になってしまうんで、そこには手を入れないようにしてもらっていました。2台使ってステレオにすると微妙なコーラス効果になって、さらにAKGのスプリング・リヴァーブをかけるのが僕のサウンドの特徴にもなっていましたね。当時、これは秘密のテクニックで取材でも言わなかった(笑)。Binsonは「惑星」の頃までは使っていましたね。"







                                                                 "Maid in Japan"

先駆的な日本を代表するメーカーのHoney。元Tiescoの社員を中心にわずか2年半もの短い生涯だったこの会社は、アッパーオクターヴ・ファズのBaby Crying、Crierワウペダル、飛び道具的効果のSuper Effect HA-9P、スプリング・リヴァーブとトレモロのラック版Echo Reverb ER-1U、あの 'Uni-Vibe' の源流であるVibra ChorusとHoneyの集大成的マルチエフェクツを誇示したPsychedelic Machineと、その類を見ないラインナップは世界の先端を突っ走っておりました。その中でもHA-9Pはワウペダルとヴォリューム・ペダルに加えて、'発想の源' である波(Surf)と風(Wind)とサイレンの効果音を発生させる技術者の漲ったアイデアが素晴らしい。そんなSuper Effectは僅か2年半ちょっとの起業であったHoneyにおいて初期、後期の2種が確認されており、初期型は単に 'Wind' という表記でした。続く後期型から 'Tornado' (竜巻)と表記変更されたまま後継の新映電気以降、その 'Tornado' のほか 'Hurricane' の表記などで輸出されながらついに商品名自体が本来の効果とは関係なく、まさに 'エキサイトなペダル' というイメージだけで 'Exciter' の商標名までパクりながら長らく国産エフェクター黎明期のOEM市場に君臨します。一方、Honeyから新映電気のカタログには引き継がれずそのまま黎明期の闇に埋められてしまった悲運の迷機、Special Fuzz。いわゆる 'オートワウ元年' ともいうべきMusitronicsのエンヴェロープ・フィルターMu-Tron Ⅲが登場する1972年よりもはるか前に市場へ開陳されたこの先駆は、時系列的には1969年にGibsonの手がけたマルチエフェクツMaestro Rhythm 'n Sound for Guitar G-2内蔵の 'Wow Wow' より1年早くペダルタイプの 'オートワウ' を完成させていたことに驚きを隠せません。通常のアッパーオクターヴ・ファズに加えて 'Special' というモードに切り替えることで現れる一定の周期を伴った変調する歪みは、当時世界のどこを探しても見つけることの出来ない文字通り '特別なサウンド' だったのです。'Psychedelic '68' と題された同社のカタログから堂々スペックをココに記しておきましょう。

●Special(Fuzz) (スペシャルファズ) ¥8,500

新製品ハニー・スペシャルファズは、従来のファズトーンにウネリの効果を加えたもので、スライドスイッチと2ヶのフットスイッチの操作によって、次の4種の音を選ぶことができます。

① ダイレクトトーン (生の音)
②ファズトーン (ファズ)
③スペシャルダイレクト (生の音にウネリを加えたもの)
④スペシャルファズ (ファズにウネリを加えたもの)

最近では、テクニックはもちろん、各種の効果装置をうまく使ってはじめて良い演奏ができる時代ですので、特におすすめしたい製品です。リードギターにもサイドギターにも、又電子オルガンにもおすすめします。

仕様 トランジスタ 13石
   ダイオード 2個
   電池 006P

●Super Effect (スーパーエフェクト) ¥8,500

サイケデリックサウンドに必要な各種の擬音効果を内蔵したアンプアクセサリーです。曲のイントロやバッキングで、種々の効果音が出せます。使用効果は5種で、ロータリースイッチで切替します。

① ボリュームコントロール
楽器のボリュームコントロールとしてペダルによって使用できます。
② サーフ
ペダルを踏み込むと波が浜辺に押し寄せる効果が出せます。
③ ウィンド (Tornado)
台風の時のような風の音がペダルによってコントロールできます。
④ Wah-Wah
楽器に接続してトランペットのミュート音や赤ん坊のような、ワゥワゥ効果を出せます。
⑤ サイレン
以上の4種類の音とは、別にフットスイッチを踏むとサイレンが鳴り出します。サイケデリックサウンドには絶対必要です。

仕様 トランジスタ 7石
   ダイオード 1個
   電池 006P











現在、わたしが愛用しているのが、スティーヴ・フランシスさんがひとりオーストラリアの工房で手作りするPiezoBarrel。現在の主力製品は木管楽器用 'P5' と 'P7' に金管楽器用 'P9' になります。ピックアップ本体底部にはメーカー名の刻印、全体の金や黒、青いアルマイト塗装が眩しいですね。さらに同梱するマウスピースが 'ショートシャンク' の中国製 '無印' やFaxx製となりサイズに1Cが追加。また付属するケーブルも金属製プラグとなり、ピックアップを着脱するアダプターがマウスピースのカーブに合わせた波形の加工が施されるなどグレードアップしております。このカーブ状に加工されたソケット部は大変ありがたく、以前は 'DIY' するに当たってマウスピースのシャンク部を平らに削り取っていた手間が不要になったこと。製品としては、ピックアップ本体を封入するフィルムケースをさらにデザインされたパッケージで包装し、PDFによる取扱説明書などを用意してきちんとした印象になりました。本機の開発に当たってはスティーヴさんによればバークリー音大で教鞭もとるDarren Barrett氏(今や 'All The Things Brass And Technology' 動画の中のおじさんと言った方がいいか)とのテスト、助言を得てデザインしたとのこと。その中身についてメールで以下の回答を頂きました。

"The P9 is different internally and has alot of upper harmonics. The P6 (which was the old PiezoBarrel 'Brass') was based on the same design as the 'Wood' but with more upper harmonics and a lower resonant frequency so they do not sound the same."

なるほど〜。実際、以前の 'P6' と比較して高音域がバランス良く出ているなあと感じていたのですが、かなり金管楽器用としてチューニングしてきたことが分かります。一方で以前の 'P6' は木管楽器用との差異は無いとのこと。基本的にはピックアップ本体、ソケット加工済みのマウスピース、ケーブル、ピックアップ内蔵のゲイン調整の為のミニ・ドライバー、複数のソケットが同梱されて販売されております。Bachタイプのマウスピース・サイズは7C、5C、3C、1Cの4種がありますが、このPiezoBarrel 5Cの新旧比較画像からもお判りのように、'P9' 以降は通常タイプのほかショートシャンクのギャップを持った '無印' と 'Faxx製' のBachタイプも用意。そして以前の製品では、真っ直ぐに切削されたアダプターをマウスピースのシャンクを平らに削り取る手間を経て接合しておりましたが、この波形に加工されたアダプターをハンダで接合した方がその強度面でも圧倒的に有利です。ちなみに以前は不定期でMonetteタイプのヘヴィなものもラインナップしておりましたがスティーヴさん曰く、あの分厚い真鍮の切削加工が大変で止めてしまったとのこと(苦笑)。いやホント、金属の穴開け加工って地味に手間かかるんですヨ。 






さて、このような既製品だけでは自分の 'お気に入り' で吹きたいユーザーにとって不満が募るばかり。実際、複数のソケットが同梱されているのを見ればSteveさんから 'DIY' を推奨しているように思います。じゃ、ということでSteveさんによるマウスピースへの取り付け動画を参考に自分で挑戦してみることにしました。いまいち動画の英語理解に乏しいのでお恥ずかしいのですけど(汗)、とりあえずシャンク上の取り付け位置を確定後ハンダで一滴垂らし、バーナーをちんちんに熱したところにハンダでソケット接合して、ドリルで穴を開けていくという流れのようです。まず、その下準備として金属表面の酸化膜の除去、再酸化防止をするべく軽くサンドペーパーで磨き、接合後はそのままにしていると錆が出てくるのでお湯とワイヤーブラシで余分なフラックスを除去します。そしてドリル加工ですけど、最初の3:27〜4:09のところで遅いドリル・スピードによる5mm径の工程。穴を貫通もさせずどういう意図なのかな?と思っていたらなるほど、要約するとわざわざ5mm径の穴を開けたいワケじゃなく、それはホール底面部をキレイな円錐形に加工すると説明しておりまする(3:55〜4:13)。そして、それが次の2mm〜2.5mmドリル加工に当たって位置確定すべくガイドの役目を果たしますヨ、と。ちなみに実際のドリル径としては最初の円錐形加工で4.8mm、貫通させる加工で2mmのドリルを使うのがベストです。現在、Youtubeには公式含め3本の 'DIY動画' が上がっており、Steveさんによれば公式動画の取り付けに関する部分は冒頭5分弱に集約されており、残りはマウスピース本体を磨く作業に費やされているとのこと。以下、PiezoBarrelピックアップの購入時にSteveさんから送られてくるピックアップ取り付けの為のpdf英文解説。

"First, the brass fitting should be heated with a soldering iron and the bottom surface 'tinned' with solder prior to attaching to the mouthpiece.

The Type E fittings provided are designed to fit around the stem of the trumpet mouthpiece to provide a good solder connection. Note that the fitting placement will depend on how far the stem of the mouthpiece fits into the lead pipe or receiver and the shape of the mouthpiece. It is advised to mark the desired position of the brass attachment with mouthpiece attached to the instrument to ensure the attachment will not prevent the mouthpiece from fitting the instrument correctly.

To attach the brass fitting to the mouthpiece you need to secure the mouthpiece so you can work on it without it moving. The mouthpiece will also need to be heated to approximately 300 degrees C depending on the solder, so it will need to be clamped in some material that can withstand this heat.

The mouthpiece needs to be heated until hot enough to melt the solder. Solder should be applied to a small area where the fitting will be attached. Once the solder has formed a smooth blob on the area and has adhered to the mouthpiece stem, you can carefully (and quickly) wipe the solder off with a clean damp cotton cloth. A little more solder should be carefully applied to wet the area and the fitting placed on the mouthpiece stem and kept hot until a good solder joint has been formed. Heat can them be withdrawn and the fitting and mouthpiece allowed to cool. Using a flux (either rosin or acid) during soldering is required to remove oxides and to get a smooth strong joint. The joint should be washed after cooling to remove any flux that may cause corrosion.

The last step is to drill a 2mm or 2.5mm hole into the mouthpiece to allow the sound from the instrument into the pickup. PiezoBarrel pickups work by sound pressure produced by the standing wave inside the instrument - not like a contact mic."





とりあえず取り付け動画を頼りに同種のものを揃えてみました。HakkoのFlux Paste FS120-01、Hozanの鉛フリーはんだ(Sn-Cu系)HS-374(線径1.0mm)、サカエ富士の1800度で60分噴射するスパークエースBT-20ZGというガストーチ、金属開孔の為の小型ボール盤Rexon DP2250Rという布陣で挑みます。あ、そうそう高熱を受ける土台として黒玄武製の「み尋 岩肌溶岩プレート」という3cm厚の溶岩の塊もAmazonで購入しました。この盤面の穴の開いたところに5mm径の六角レンチぶっ挿してマウスピースのシャンク部を固定させるものとします。あ、ここには写ってないけどマウスピースのメッキ剥がしで使うニッペ塗料剥がし剤(非塩素系リムーバー)、余分なフラックスを洗浄する為のぬるま湯を入れたカップに熱いバーナーの炎を後方に浴びせないようガードする下村企販の3枚の折り畳み板からなるスチール鋼板製レンジガードも用意しましょう。後はピンセットにアダプターをシャンク部に合わせる為のガイドのようなものをクリップで改造して製作。さあ道具は揃った、後は取り付けるのみ!。




ふぅ、なんとかでけた完成!。こちらがその '溶岩プレート' で穴の開いた盤面に5mm径の六角レンチぶっ挿して根元をホットボンド固定、さらに家に転がっていた金属製のフックを台にマウスピースを置いて見たところ。さあ、マウスピースを丸焼きのバーベキューにするゾ!。ちなみにこのアダプターをマウスピースのシャンク部へ穴を開ける位置の参考としたのが、C.G. Connで純正として用意されていたピックアップ装着済みの7C-W。C.G. Conn #6のシャンク部の目安となったのが 'Conn 6' と彫刻された数字6のちょい手前で、これは7C-Wに比べてシャンク部自体が分厚くテーパーに角度が付く直前がココの位置だったからです。装着するアダプターに朱肉を付けてメッキ剥がしの目安としました。あと見えにくいかも知れませんが、アダプターの上面にマジックで黒い印を入れてます。これはピックアップをスクリューネジでアダプターに締めたとき、その締め具合の向きでケーブルがピックアップの右と左のどちらから出るかが製品によりバラツキがあるんですヨ...。わたしのこのアダプターの '向き' でトランペットの左側(握り手)からケーブルの装着が可能です。'DIY' の方はココも地味にチェックしてみて下さい。







そして、このピエゾによる 'マウスピース・ピックアップ' 使用にあたって必須の唯一無二なアイテム、NeotenicSound AcoFlavor。ホント、こういうエフェクターって今まで無かったんじゃないでしょうか。というか、いわゆる ' エレアコ' のピックアップの持つクセ、機器間の 'インピーダンス・マッチング' がもたらす不均衡感に悩まされてきた者にとって、まさに喉から手が出るほど欲しかった機材がコレなんですヨ。そもそも本機は '1ノブ' のPiezoFitというプロトタイプからスタートしており、それをさらにLimitとFitの '2ノブ' で感度調整の機能を強化した製品版AcoFlavorへと仕上げ始めたのが2017年の暮れのこと。そのいくつかの意見を反映すべく微力ながらお手伝いをさせてもらったのですが、多分、多くの 'エレアコ楽器' のピックアップ自体が持つ仕様の違いからこちらは良いけどあちらはイマイチという感じで、細かな微調整を工房とやり取りしながら煮詰めて行きました。当初、送られてきたのはMaster、Fit共に10時以降回すと歪んでしまって(わたしの環境では)使えませんでした。何回かのやり取りの後、ようやく満足できるカタチに仕上がったのが今の製品版で、現在はLimit 9時、Master 1時、Fit 11時のセッティングにしてちょうど良いですね。ちなみに本機はプリアンプではなく、奏者が演奏時に感じるレスポンスの '暴れ' をピックアップのクセ含めて補正してくれるもの、と思って頂けると分かりやすいと思います。その出音以上に奏者が演奏から体感するフィードバックの点で本機の 'あると無し' じゃ大きく違い、管楽器でPiezoBarrelなどのマウスピース・ピックアップ使用の方は絶対に試して頂きたい逸品です。そう言えば以前、PiezoBarrel主宰のスティーヴさんに下手な英語で本機の 'プレゼン' 含めオススメしたのだけどプリアンプと勘違いしたのか、このピックアップはSSLコンソール(スタジオにあるでっかいミキサー)のEQやヘッドアンプを参考にした内蔵のGainツマミ調整だけでもそのまま使えるよ、ただAcoFlavorのデザインは良いね!という '評価' をもらってしまった(苦笑)。やはり言葉だけでは伝わらず、これは使ってみて初めてその '威力' が体感出来るものだと思うのですヨ。ちなみにPiezoBarrelピックアップにはミニ・ドライバーで調整するGainツマミがあるのですが、このAcoFlavor使用の場合はそのGainをフルにして本機のMasterでピックアップの調整を行います。そして2022年版では、一部パーツの変更と共に各アコースティック楽器に対する入力感度とよりレスポンスとしての '生々しさ' の演出を見直した 'マイナーチェンジ' が行われました。3つ目の動画ではそれを新旧各々のヴァージョンで弾き比べているのですが、あくまで従来の 'Ver.1' からそのまま触るツマミを変えず反映させたところにこのAcoFlavorの完成度の高さが伺えます。






ちなみにこちらはPiezoBarrelピックアップとは別にサブで愛用するBarcus-berryの 'マウスピース・ピックアップ' です。ひとつはピエゾ・トランスデューサー型のModel 1374で、もう一方はエレクトレットコンデンサー型のModel 6001というもの。Model 1374はプリアンプ兼DIの4000XLをミキサーからのファンタム駆動でXLR入力に接続、Model 6001はマイク駆動用プリアンプ3000Aを介してDIのMatchmakerを同じくミキサーからファンタム駆動で各々XLR入力に接続するというセッティング。ここにコンデンサー・マイクを混ぜても構いませんが、ダイナミック・マイク使用の場合はDI一括供給によるファンタム不可の為、その4000XL及びMatchmakerはDC9V電池やDC9Vアダプターでの使用となりまする。また、同じプリアンプの機能ながら6001で使用するModel 3000Aとピエゾ用の4000XLやModel 3500Aとはインピーダンスが違うため互換性はないのでご注意あれ。さて、そのピエゾ型Model 1374はランディ・ブレッカーを始め数々の管楽器奏者が使用している動画はあるのですが、1990年代に少量製作してあっという間に 'ディスコン' となってしまったエレクトレット・コンデンサー型のModel 6001の愛用者はほぼ見つからない...。なぜならすでに高音質でお手軽なワイヤレスマイクの時代となっていたからです。そんな過渡期の中で頑固に 'マウスピース・ピックアップ' の可能性に賭けてModel 1374から切り替えて愛用したのが電気ラッパの唯一無二、近藤等則さん。2007年にはこのModel 6001のシステムを参考にDPAのコンデンサー式ミニチュアマイクを流用した独自のピックアップに移行するのでそれほど長くありませんでしたが、Alembicの2チャンネル真空管プリアンプF-2Bによりベル側のコンデンサーマイクとミックスするスタイルはこの時期ならではの個性でありました。変わり種としては、あのレッド・ホット・チリ・ペパーズのベーシスト、フリーが嗜むラッパのマウスピースにもその1374を装着して一時はこんな調子で 'アンプリファイ' させておりました。






Barcus-berryの管楽器用ピックアップとして一時代を築いた 'マウスピース・ピックアップ'。木管楽器用1375-1と金管楽器用1374はピックアップ本体は同一ながら時期によりモデルチェンジしており、初期は中継コネクターを介した2.1mmのミニプラグを楽器のラウンドクルーク部とリードパイプ部にグルッとタイラップで固定する仕様でした。その後3.5mmのミニプラグに仕様変更されて、クリップ式の中継コネクターでリードパイプへ着脱可能なものに変わります。Barcus-berryはこの特許を1968年3月27日に出願、1970年12月1日に創業者Lester M. BarcusとJohn F. Berry両名で 'Electrical Pickup Located in Mouthpiece of Musical Instrument Piezoelectric Transducer' として取得しました。当初、特許の図面ではマウスピースのシャンク部ではなくカップ内に穴を開けてピックアップを接合するという発案でしたが、この装着で鳴らすと 'バズ音' と言うべきバジングしたような不快なノイズが入るので得策ではありません。やはりシャンク部への接合が最適ですね。そして1990年代に入りこれまでのピエゾ式から9V電池で駆動するエレクトレット・コンデンサー式の6001が登場。ピエゾ式1374とは違いスクリューネジで着脱可能となったアダプター上面をポリプロピレンでマイク保護された6001は当時、日本で代理店を務めたパール楽器1997年のカタログを確認すれば同社随一の高価格である65,000円也!。多分、日本で '最後の1つ' をヤマハ銀座店で偶然見つけて '清水の舞台から飛び降りる気持ち' (笑)で購入して以降、そのまま '電化沼' へと人生が狂わされて行きました(コレは酷使してジャンクとなってしまった...その後ネットで2つ確保)。結局、新たな潮流となったワイヤレスとグーズネック式マイクの簡便な流れには勝てず、この6001は少量の製作で同社の 'マウスピース・ピックアップ' における有終の美を飾ることとなります。実はこのエレクトレット・コンデンサー式は金管用の6001とクラリネット用の6200が用意されていたのですが最近、この型番の前モデルにあたる金管用5001とクラリネット用6081を各々手に入れました。比較してみれば、一見同じような仕様ながら何と前モデルのピックアップが6001のアダプターに入らん...互換性がない(汗)。おいおい、こんなしょうもない仕様変更すんなよ、と30年も前の製品にツッコミを入れてしまいました。入手した前モデルは肝心のアダプターが欠品(前オーナーがマウスピースに装着したまま紛失しちゃったと予想)だけに、このまま単なるコレクションとなりそうです(悲)。新大久保のグローバルさんにお願いしてアダプターを特注で作ってもらおうかな?。






さて、この時期のBarcus-berry製品、特にピエゾ式の1374(及び木管用1375-1)を個人的にあれこれ調べてみて分かったのは、1982年以前と1983年製造のものでピエゾの感度がかなり変わってしまったこと。正直、1983年製は 'ハズレ' と言いたいくらいエフェクツのかかりが悪いんですよね...(謎)。また、このピックアップはマウスピースに穴を開けてエポキシ系接着剤で接合することを推奨されているのですが、これで1年くらい使い続けるとある日突然ガクンとピックアップの感度が落ちてしまう...(謎)。想像するにピエゾとはいえ、やはりピックアップ面を猛烈な息で濡らして湿気に晒した状態は良くないということで、個人的には開けた穴にそのまま差し込み使用後は外しておいた方が良いと思います(それほど息漏れの問題は起きなかった)。今でもeBayやReverb.comでデッドストックが不定期に現れる一品であり、これからアプローチしてみたい管楽器奏者へのアドバイスとして受け取っておいて下さいませ。そんな 'マウスピース・ピックアップ' に終生こだわって音作りをしていたのが近藤等則さん。1979年にニューヨークで必要に迫られて購入したBarcus-berryピックアップから25年ほど経ち、新たにDPAの無指向性ミニチュア・マイクロフォンを流用してオリジナルのピックアップを製作致します。スクリューネジによるピックアップ本体の着脱、ポリプロピレンによる水滴と息の風を防ぐ構造などはBarcus-berry 6001をほぼ踏襲しておりますが以下、2007年にその苦労の顛末をこう述べておりました。個人的に最後の 'ひと言' が実に心に沁み入りますヨ(涙)。人生、飽きることなく足掻いてるっていうのが面白いんだよなあ。

"今年を振り返ってみるといくつかよかったことの一つが、トランペットのマウスピースの中に埋めるマイクをオリジナルに作ったんだ。それが良かったな。ずっとバーカスベリー ってメーカーのヤツを使ってたんだけど、それはもう何年も前から製造中止になってて、二つ持ってるからまだまだ大丈夫だと思ってたんだけど、今年の4月頃だったかな、ふと「ヤベえな」と、この二つとも壊れたらどうするんだ、と思って。なおかつ、バーカスベリー のをずっと使ってても、なんか気に入らないんだよ。自分で多少の改良は加えてたんだけど、それでも、これ以上いくらオレががんばっても電気トランペットの音質は変えられないな、と。ピックアップのマイクを変えるしかない、と。それで、まずエンジニアのエンドウ君に電話して、「エンちゃん、最近、コンデンサーマイクで、小さくて高性能なヤツ出てない?」って訊いたら、「コンドーさん、最近いいの出てますよ。デンマークのDPAってメーカーが、直径5.5ミリのコンデンサーマイクを作ってて、すごくいいですよ」って言うんで、すぐそれをゲットして。

それをマウスピースに埋めるにしても、水を防ぐことと、息の風を防ぐ仕掛けが要るわけだ。今度は、新大久保にあるグローバルって楽器屋の金管楽器の技術者のウエダ君に連絡して、「このソケットを旋盤で作ってくれないかな」ってお願いして、旋盤で何種類も削らして。4ヶ月ぐらいかけてね。で、ソケットができても、今言ったように防水と風防として、何か幕を張ってシールドしないといけないわけだ。それをプラスチックでやるのか、セロファンでやるのか、ポリプロピレンでやるのか。自分で接着剤と6ミリのポンチ買ってきて、ここ(スタジオ)で切って、接着剤で貼り付けて、プーッと吹いてみて、「ダメだ」また貼り付けて、また「良くねーなぁ」って延々やってね(笑)。で、ポリプロピレンのあるヤツが一番良かったんだ。そうすると今度は、ポリプロピレンを接着できる接着剤って少ないんだよ。だから東急ハンズに行って、2種類買ってきたら一つは役に立たなくて、もう一つの方がなんとかくっつきが良くてね。その新しいピックアップのチューニングが良くなってきたのは、ごく最近なんだけどね。音質もだいぶ変わってきた。音質が変わると、自分も吹きやすくなるからね。それが、今年はすごくよかったな。

電気機材も1Uっていうフォーマットで、あれは第一次世界大戦の頃にできた工業規格のはずなんだよ。第二次世界大戦前のそのままの規格なんだ。だから大きいんだよな、重いし。これからやるためには、さらに軽量化・小型化したい。今は5Uで使ってたんだけど、3Uぐらいにはできそうなんだ。最近もなんていうメーカーだったかな。小さくていいディレイが出てね。1U分のディレイ外して、それに換えてみたり。あがきはいつまでも続くね(笑)。










さて、管楽器用のマイクとして一般的なグーズネック式。そう、ベルとマイクの距離を自在に調整しながら収音すべくベルにクリップで挟んで用いる簡易ピックアップ・マイクですね。片手で手軽に楽器との着脱可能なことから、トランスミッターを腰に装着して自由にステージ上を動き回れるワイヤレス・システムと組み合わせる奏者に好まれております。また、収音の為のマイク位置もフレキシブルに調整できるなど、そのピンポイントに '被り' を抑えた出音はアンサンブルの中でスタンドにマイクを立てるよりPAにも好まれております。そんなグーズネック式でもわたしが愛用するのは珍しいダイナミック・マイクのもの。基本的にこのタイプのピックアップはファンタム電源駆動によるコンデンサー・マイクが一般的なのですが、むしろマイク駆動の為の電源の必要が無いお手軽さと頑丈な構造、ある帯域に特化した特性ゆえにエフェクターとの相性という点ではダイナミック・マイクの方が扱いやすいですね。これ以前における管楽器の 'アンプリファイ' では、マウスピースのシャンク部分に穴を開けるピエゾ式の 'マウスピース・ピックアップ' が一般的でした。上の動画はサックスによるマイク4種類の比較。管楽器用としてはコンデンサー・マイクのSD Systems LCM 8gとダイナミック・マイクのLDM 94、Beyerdynamicのダイナミック・マイクTG I52dが選ばれております。やはりスタンド・マイクに比べるとグーズネック式のものは音質的に相当スポイルされているというか、ライヴという環境での利便性にシフトして設計されている感じがしますね。さて、わたしがトランペットに用いているのはSennheiserのe608とBeyerdynamicのTG I52d。e608の指向性はスーパーカーディオイドで、これはカーディオイドよりもピックアップ角度が狭く、横からの音を遮断、ただしマイクの背面にある音源に対し少し感度が高くなる傾向があります。環境ノイズや近くの楽器などからの遮音性がより高くフィードバックが発生しにくくなりますが、使用者は「マイクの正面の位置をモニターに対して意識する必要がある」とのこと。確かにマイクを触ると後方もゴソゴソと感度は高いのが分かります。そして一方のBeyerdynamic TG i52の指向性はハイパーカーディオイドで、同じくShureHPの説明によれば「ハイパーカーディオイドには双方向性マイクロフォンの性質がいくらか備わっており、背面に対する感度は高くなっている。しかし、側面からの音の遮断に非常に優れフィードバックに特に強く、スーパーカーディオイドと同じく周囲の音が被りにくい性質。ただし指向性がとても強いため、音源に対するマイクの配置は正確さが求められる」とあります。う〜ん、どちらもよく似た指向性ながらTG i52の方がよりピンポイントで音を狙う設計というわけか。周波数特性としてはe608が4016000Hz、TG i52の方は4012000Hzとのことで、この辺も指向性の違いに反映されているのでしょう。ダイナミック・マイクはコンデンサー・マイクに比べて特に高域の周波数レンジが狭く、近接のオンマイクにセッティングしてマイク・プリアンプで適正なゲインを持ち上げてやらないと機能を発揮しません(ファンタム電源を誤ってOnにするのは厳禁です!)。










さらにお好みのプリアンプで補正、管楽器の音作りをあれこれ探求して行きましょう。ここではマイクとピエゾの2チャンネル・ミックス対応ということで、わたしの '実験ボード' ではEventideのMixinglinkとHatena ?の2チャンネル・プリアンプSpiceCubeにCloud MicrophoneのCloudlifter CL-1を組み合わせた2つのセッティングを用意。導入。このCL-1はダイナミック・マイクの '底上げ' の為に、本来なら厳禁の48Vファンタム電源を利用してお手軽に25dBものゲインアップをやってくれる優れもの。Y型の 'インサート・ケーブル' を利用して、2チャンネル入力を備えるHatena ? SpiceCubeになんとかマイク入力が出来ないものか。それがCL-1のゲインアップからTDCのMic Optionでフォンに変換、SpiceCubeで過不足なくゲインを稼げるのだから良い時代になりました。そのSpiceCubeの操作手順について取説から抜粋します。

1.ピックアップ入力について
アコースティック楽器に搭載できるピックアップ・マイクには様々な種類がありますが、いずれかひとつのみを用いて生の楽器らしいサウンドを電気信号で表現するのは思いのほか困難です。SpiceCubeでは、それらの悩みを解消すべく、単体のピックアップ・マイクを搭載させて、それらをうまく混ぜ合わせることでより生々しい、繊細なアコースティックのサウンドを作り出すことが出来るようになります。楽器から出力した信号をSpiceCubeで受けるとき、1系統のピックアップ・マイクのみの場合モノラルのシールド・ケーブルを使用します。2系統のピックアップ・マイクを搭載した楽器を受けるときはステレオのシールド・ケーブルを使用します。ステレオ・ケーブルやジャックにおいて、Lにあたる端子をTip(ティップ)、Rにあたる端子をRing(リング)と言います。モノラルの場合はL側のみですのでTip端子のみが駆動します。

2.SpiceCubeの入力回路
SpiceCubeでは、様々なタイプのピックアップ・マイクの入力に対応出来るようになっています。入力回路部分には、TipとRingのそれぞれに入力レベルを調整することが出来るIntensityツマミと、基本の音色を決めるToneのツマミが付いています。


3.Tone回路について
ピックアップ・マイクの特性はタイプによって様々です。出力レベルの大小だけではなく、パワフルなだけに中低域部分が張り出すものや、倍音が豊かなだけに全体的に薄くシャリっとしたものなどがあり、それらをうまく混ぜ合わせることで、生楽器本来の豊かなサウンドを再現出来るようになります。SpiceCubeの裏の蓋を開けたところに、TH/TL、RH/RLのスライドスイッチが並びます。TはTip、RはRing、Hはハイ、Lはローです。スイッチがハイになっているとき、Toneのツマミはカットからフラット方向へ動きます。こうすることでピックアップ・マイクの特性を利用して、より細かな音色を決めることが出来ます。

4.IntensityとTone
ここから全体的な音決めに入ります。Volume、Sensitivity、Gain、Colorの4つのツマミ部分をSpice回路と言います。初めはこの4つのツマミを全て真ん中(12時の位置)にしておきましょう。IntensityとToneのツマミは全てゼロです。まずはTip側のセッティングです。Intensityを少し上げ、軽く楽器を鳴らしながらToneツマミを回してみます。どの位置にしてもキンキンして耳障りな場合はTLにします。(Ringとのバランスなので、好みや狙いによっては逆特性で混ぜる方が良い場合もあります。)モノラルで使用する場合はTip側のみで動作しますので、大体の音量が決まったら次のステップへ進んで下さい。ステレオで使用する場合はTip側のIntensityを一旦ゼロにして、同様の手順でRing側の調整も行います。ステレオの場合、これらの後段のみで内部でミキサー回路に直結しており、それぞれのIntensityがミックスバランスの役割を持っています。どちらのピックアップ・マイクを優先するのか、どのようなToneでブレンドするかをここで大まかに決めてしまいます。

5.Spice回路について
この部分は同Hatena?の兄弟機種でもあるActiveSpiceやSpiceLandと同じ概念に基づいています。これはイコライザーでは操作しずらい部分の音を調整できるものを目指して作られた回路で、ひとつのマスターヴォリュームから得られる要素を重要ないくつかに分け、演奏する環境に合わせて違ったバランスで鳴らすことが出来るようになるものです。アンプなどのヴォリュームは本来、音量と共に音圧や艶っぽさなどが同じ割合で一緒に上がっていくものです。逆に言えば、気持ちのいい音というのは豊かな音だったり、迫力のある音圧感だったりするわけですが、それらを得ようとすると当然ヴォリューム自体をかなり上げていかないと実現出来ません。しかし、演奏環境などを考えるとそこまで大きな音で鳴らせない場合がほとんどで結局、小さな音量でどうにか出来ないものか、と悩むわけです。アンプのイコライザーを色々触ってみてもうまく行きません。それはアコースティック楽器のプリアンプも同様のことが言えるのですね。そこでSpice回路は、それらの要素 '音量 / 音圧 / 艶' を別のツマミ 'Volume / Sensitivity / Gain' にそれぞれ分担させることで例えば音量は控えめだけど迫力を出したい、そして豊かにサラッとというようなセッティングが出来るようになっています。

6.Volumeツマミ
このツマミはオーディオ的な音量の上がり方をします。素直に音量のみが上がって行きますので、最終的な音量を決めるのに使用します。

7.Sensitivityツマミ
センスは感度です。'服のセンスが良い' のあのセンスです。入力感度を設定することで、上げると太くてコシのある音圧感のリッチなサウンドに、下げると良い意味でのチープなサウンドになります。ソリスト演奏なら上げ目に、バンド・アンサンブルなら控えめに、というような使い方も出来ます。また、後で出てくるGainやColorとも連動します。センスが上がっているときは感度が上がっていますからGainやColorも敏感に働きます。逆にセンスが下がっているときは、それに応じてGainやColorの動きも滑らかになります。これらの仕組みがイメージ出来ればサウンドメイクの幅もどんどん広がります。

8.Gainツマミ
Gainといえば '歪ませるもの' とイメージされる方も多いかも知れませんが、Gainは '増幅率' です。どのくらい持ち上げるか、どのくらいグッとくるかの調整ツマミです。ですから歪みの量という認識は誤りです。Spice回路での 'Gain' は艶っぽさや煌めきの量を調整するツマミです。音の '芯' と呼ばれるものは、このSensitivityとGainの組み合わせをどうするかで決まってきます。お持ちの楽器にとっての一番気持ちの良いバランスポイントがきっと見つかると思います。

9.Colorツマミ
迫力のあるサウンドや生々しい音を狙うにあたって、最も重要なファクターのひとつが 'コンプレッション感' です。コンプレッサーというエフェクターがありますが、音の表現が言葉では難しく、実際のものとしても音のイメージや設定が難しいとされています。その為、細かいセッティングが要求されている機種ではツマミの数が多く、逆にシンプルなツマミ構成のものだと極端にかかり過ぎる、という現象が起こってしまいます。それらを踏まえてSpice回路では 'かかっている状態から制御を解いていく' という方法で、とても自然でナチュラルなコンプレッション感をひとつのツマミで賄えるようになっています。その為、左に回すほどしっかりかかり右に回すほど徐々に解除されていく、というように働きます。

残念ながらSpiceCubeの動画は無いのですが、このプリアンプ部の基本は同工房のActiveSpice / The Spiceということでそちらの動画をどーぞ。このActiveSpice / The Spiceのパラメータも全体を調整するVolumeの他はかなり異色で、音圧を調整するSensitivity、Gainは歪み量ではなく音の抜けや輪郭の調整、Colorはコンプ感とEQ感が連動し、ツマミを上げて行くほどそのコンプ感を解除すると共にトレブリーなトーンとなる。そしてブースト機能とEQ感を強調するようなSolo !、Tightスイッチはその名の通り締まったトーンとなり、On/Offスイッチはエフェクトの効果ではなくSolo !のOn/Offとのことで基本的にバッファー的接続となります。ちなみに画像左側のものは初期のプロトタイプであり、このWild !というツマミ1つを回すことで製品版よりサチュレーション的飽和感の '荒さ' がいかにも初期モノっぽい。さらにトレブリーな 'プリアンプ感' を強調した派生型のSpice Landを始め、2009年、2011年、2012年と限定カラー版(2011年版はチューナー出力増設済み)などを現在でも中古市場で見つけることが出来ます。








ちなみにこのような '2チャンネル' のミックスによるエレアコ用プリアンプは今や多岐に渡りますが、いわゆるTRSフォンの 'インサートケーブル' でミックスする簡易的なものとしては過去にPreSonusのAcousti-Qというものがありました。ハーフラックサイズに12AX7真空管を1本搭載、3バンドEQとノッチフィルターに外部エフェクツ用センド・リターンを備えた今となっては使い勝手の良いのか悪いのか分からない(苦笑)仕様となります。別売りでミュートとCut/Boostの切り替えられるフットスイッチが用意されており、さらに鉄板を 'くの字' に折り曲げただけの安易なスタンドに本体設置するのが面白い。ちなみに所有しているのは日本語取説付きなのにAC18Vの120V仕様ACアダプターであり、そこは真空管使用ということから東栄変成器のステップアップ・トランスで適正に昇圧しております。正直、今ならHeadway Music Audioのファンタム電源も兼ねたXLR入力とDI、センド・リターンを備えるエレアコ用プリアンプEDB-2 H.E.といった高品質なものもあるのですが、この少々型落ちの古いプリアンプなどを見つけて管楽器の 'アンプリファイ' に活用してみるのも面白いと思いますヨ。このクラスの真空管モノは単に出力部で通してソレっぽくしてるだけなのですが、その 'エフェクター臭さ' もちょっとした味として楽しめる機材です。ちなみに現在のメインをHeadway Music AudioのEDB-2から中古で見つけた後継機のEDB-2 H.E.に交代させました。いわゆる 'エレアコ' のピックアップ・マイクにおいて 'ピエゾ + マグ' とか 'ピエゾ + コンデンサー' とか、いかにしてPAの環境で 'アコースティック' の鳴りを再現できるのかの奥深い探求があり、本機EDB-2はフォンとXLRの2チャンネル仕様でEQをch.1、ch.2で個別及び同時使用の選択、2つのピックアップの '位相差' を揃えるフェイズ・スイッチと突発的なフィードバックに威力を発揮するNotch Filter、DIとは別にフォンのLine出力も備えるなど、高品質かつ '痒いところに手の届く' 精密な作りですね。ただしXLR入力のファンタム電源が48Vではなく18V供給となっているところは注意。このEDB-2 H.Eは新たに見直した 'H.E.A.T (Harmonic Enhanced Analog Technology)' と名付けたプリアンプ、EQ部を2チャンネル各々独立させると共にピエゾ側のチャンネルのみですが 'Send/Return' が装備されました(ココにNeotenicSound AcoFlavorを接続)。特に本機には1khz以上の帯域に作用するハーモニック・エンハンサーを新たに装備することで、これまでその機能を担わせていたNeotenicSound MagicalForceは外すことになりそうです...(汗)。そういえば安価な2チャンネルの真空管プリアンプといえば、近藤等則さんがDPAの 'マウスピース・ピックアップ' に切り替えてしばらくPreSonusのTubepre使っていました。小型の卓上サイズで真空管による 'Drive' ブーストと足下のペダルへのアンバランス出力出来ることから選んだのだろうけど、すぐにより高品質なサウンドを求めてRupert Neve DesignsのPortico 5032、ソレが空港で 'ロストバゲージ' しちゃった後にはAPIのChannel Strip、最終的にはニーヴのサウンドを模したPhoenix AudioのDRS-Q4M Mk.2に落ち着くまであれこれ探求されてましたね...。

      - BEFORE -


                        - AFTER -


で、最近のメインセッティングはこんな感じ...。後述するBoardbrain Musicの多目的ループ・セレクターTransmutronを中心に 'スピーチシンセ' のFlame Instruments Talking Synth(とそれを発音させるHikari InstrumentsのAnalog Sequencer ⅡにEuchrhymといったシーケンサー群)やループ機能も持つ 'Digital Tape Machine' のBastl Instruments Thyme、Electro-Harmonix 16 Second Digital Delayを駆使して '一人アンサンブル' からラッパによる音作りを探求しております。2チャンネルの 'エレアコ' 用プリアンプをEDB-2からEDB-2 H.E.に切り替え、本機の 'センド・リターン' はピエゾ側のチャンネル1にのみインサート出来るのでココにNeotenicSound AcoFlavorを接続。そして音色のコシと張りを演出出来るエンハンサーを搭載していることから、これまで愛用してきたNeotenicSound Magical Forceを泣く泣く外します。またTransumutronから2チャンネルで出力してThyme→Strymon Brigadierによる 'ステレオミックス' を経てRadial Engineering JDIの 'Mono to Stereo Merge' 機能でDIから出力します。基本的にラッパに使うペダル・セッティングはもう何年も前から '上がり状態' なのでほぼ入れ替えナシなのですが、ペダルとユーロラック ・モジュラーを同時にミックスするやり方としてTransmutronをようやく足下に導入したのは遅過ぎでしたね...(苦笑)。本機を何年も前から所有してたのにLand Devicesのパッシブミキサーを試してみたりと遠回りし過ぎました(汗)。てか、重すぎ...まるで要塞(汗)。












電化してリズミックにワウワウと吼えるラッパと同時に使っているのが 'スピーチシンセシス'。ちょうど運良く 'ユーロラック版' のTalking Synth入手が叶ったことから、この 'スピーチシンセ' を発音させるべくシーケンサーをベースにした最少サイズのモジュラーシステムを思案する...。'ユーロラック' は全くの門外漢なのでそれこそペダル・エフェクターとはまた違う実に奥行きの深い世界があり、これまた大手から限定モジュールにプレミアの付く個人製作モノまで幅広く用意されているんですよね。古の 'Speak and Spell' で有名となった 'Speech Synthesis Chip' ですけど、このFlameの第一号製品であるTalking SynthにもMagnevation LLCにより製造された古いアナログの 'Speakjet Chip' を2つ装備していることからプレミアが付いておりまする。当初はTalking SynthをBastl InstrumentsのThymeからMIDIで発音含め、緻密にプログラミングしてコントロールしたかったもののMIDI to CV Converterなど大掛かりになりそうなので断念...。モジュラーならではのCV/Gateによるランダマイズなシーケンスの '飛び道具' として、ThymeとのCV同期も活かしながら簡単な使い方に終始しております。また、ケースの電源スロットをもう1つ追加してエンヴェロープ・フォロワー(例えばSynthrotek ADSRなど)も入れたかったのですが、これもThymeにCVで同期してこっちのエンヴェロープでソレっぽくかけるだけに留めました(笑)。イメージとしてはやはり、現代音楽の作曲家にしてオノ・ヨーコの元旦那でもある一柳慧氏のブッ飛んだ1969年の作品 'Music for Living Space'。ここでの京大工学部が作製した初期コンピュータによる辿々しい ' スピーチ・シンセサイズ' のヴォイスとグレゴリアン・チャントの錯綜が面白い効果を上げておりまする。ちなみにここで読まれるテキストは建築家、黒川紀章氏による1970年の著作「黒川紀章の作品」から 'Capsule'、'Metabolism'、'Spaceflame'、'Metamorphose' の章を各々読み上げたもの。


ちなみにこの手の 'スピーチシンセ' としては、惜しまれつつ一昨年いっぱいで突然その活動を終えたMutable InstrumentsのPlaitsが好きですね。常に 'オープンソース' を是として '自作ッカー' にも優しかったこの工房のモジュールは今やレア物として高騰中ですが、本機は16種のアルゴリズムを用いたデジタルオシレータのモジュール。ローパスゲート(LPG)を内蔵しているので、そのままパーカッシヴなヴォイスシンセ・モジュールとしてトリガー可能。ここでの 'スピーチ・シンセシス' として搭載されているピッチ・アルゴリズムからこの 'Powell//Speech Synthesis' モードこそ、わたしの求めるモジュールでもありまする。









この 'スピーチシンセ' へCV/Gateのコントロールによる '息吹き' で命を与えるべく、ランダマイズにトリガーするユークリッド・シーケンサーのHikari Instruments Eucrhythmと8ステップのAnalog Sequencer Ⅱを各々チョイス。これらのCVとオーディオを取りまとめるのは同工房の7チャンネル入力Atten/Mixerであり、各モジュールは全て4msの電源付きラックケースPod48Xに組み込んでおります。Hikari Instrumentsといえば国産の新しい工房でデスクトップ型ノイズ・シンセサイザーのMonos、Duosで話題となったことから頭角を現しました。気にはなっていた工房の製品ということもありますが、たまたま格安でお目当の機能のモジュールを各々市場で発見したことから揃えてみたのが本音...いや、初心者なので全くこっちの分野には疎いのです(汗)。Analog Sequencer Ⅱは各ステップごとにCV入力があり、その各ステップ個別に外部のCVから制御することが可能。上昇、下降各々の調整と独立したGride(ポルタメント)を内蔵しているので、ピッチ上昇のみのポルタメント、Gateを入力すればARエンヴェロープとしても使えますね。Gate出力はPWM(内部クロック時のみ有効)によりGateの長さが調整可能です。とりあえずルーレットのようにクルクルと回るLEDがカワイイ(笑)。そしてグリッチ系のリズムに威力を発揮するユークリッド・シーケンサーのEucrhythmは 'デュアル' ということで2つのシーケンスを搭載し、各々StepsとPulesの2つのツマミによりループの長さと1ループの出力数を設定してポリリズミックなリズムを生成。Pulse Width横のスライダーでGateの長さの変更、Gate Delayによりクロックの1/16のタイミングでその出力が遅延してクロックからズレたリズムを吐き出します。またこれらはCVコントロールが可能。A、Bの2チャンネル出力、AとBのORとAND(論理和)のロジック出力により合計4種類のパターンを生成し組み合わせることで様々なリズムを堪能することが出来まする。ちなみにEucrhythmは内部クロックを備えていないのでAnalog Sequencer Ⅱからクロックを貰って駆動させるかたちとなります。そして、これらの信号をまとめるAtten/Mixerはオーディオ信号とCVをミックス可能な7チャンネルのミキサー兼アッテネータ・モジュールです。1チャンネル〜4チャンネルを各々パラアウトに繋げばミックスアウトから切り離されたパッシヴ・アッテネータ、また、1チャンネル〜4チャンネルから最大5VのCV信号を吐き出します。この各チャンネルは全てMuteスイッチでOn/Offが可能です。ちなみに、この工房からは昔ながらの8ステップによるゲート・シーケンサーも用意されており、Atten/Mixerと組み合わせることで7ステップのCVシーケンサーに代わりこんなテクノ・シーケンスも楽しめます。とりあえず、この2つのシーケンサーをTalking Synthと組み合わせるだけでもかなりイビツな 'ヴォイス' で喋らせることが出来るでしょう(笑)。理想はワウペダルと同期してラッパのフレイズに追従しながらTaling Synthを '喋らせる' ことが出来れば最高なんですけど、どこかの工房がCV/Gateも出力できるワウペダルとか作りませんかね?(謎)。





このFlame Talking Synthのラッパからのトリガーという意味では、一昨年英国のeBayから過去40年近くエンジニアとして従事したというビルダーが製作するFogas Pedals Envelope FollowerというCV/Gateコンバータも買ったことを思い出した。これはコンパクトペダル型の仕様によりスイッチのOn/OffやIn/Outの入出力と上部に並ぶCVの入出力は、Envelope、Gate、Triger、別途オーディオ入出力を装備。その下の3つのツマミはLevelと感度調整によるSensitivity、原音とCV入出力のMixというシンプルな構成をハンド・ワイアードで組み込み中身はかなり過密に詰め込まれております。リタイア寸前最後のお仕事として出品した '一期一会' 的モノらしく、もはや本機を入手することは叶いません(一緒に出品していたWatkinsのCopycatテープエコーをモデリングしたというデジタル・ディレイ 'Kopykat' も買っとけば良かったな...)。現状、ポーランドの工房SonicSmithで独自の技術であるACO(Audio Controlled Oscallator)をCV/Gateでトラッキングする 'ギターシンセ' ConVertor E1を鳴らす為に使用してるだけでしたが、このCV/Gateコンバータをオクターバーと入れ替えてラッパによる 'スピーチシンセ' のトリガーで試してみよう...ということからさっそく善は急げで(笑)、これまで長年愛用してきたチェコ製Salvation ModsのオクターバーVividerからオレンジ色のCV/Gateコンバータに入れ替えです(お疲れさん...涙)。いや、まだどんなサウンドになるのかは試していないんですけどね(汗)。ホントは 'スピーチシンセ' のピッチまでコントロール出来たら最高なんだけどMIDI中心の大仰なシステムになりそうなんで諦めます...。




 



Boardbrain Musicの多目的ループ・セクターTransmutronでは色々なことが出来ることから、そのループのひとつにカナダの工房、Industrialectricの 'グリッチ' に特化した 'ローファイ・ディレイ' Echo Degraderを繋いでみました。おお、これはかなりの 'Lo Fi' というか 'Garbage' というか、もはや個性的なひとつの '楽器' と言っていいくらい主張しますねえ。特に本機の名称としてアピールする 'Degrade' ツマミを回すことで、よく 'ビット・クラッシャー' などで用いられる 'テープを燃やしたような' バリバリ、ブチブチというノイズを付加してくれます。本機の取説を開いてみれば、そこにはユニークなツマミ、スイッチ類が並んでおり興味津々です...。

⚫︎Tone / Threshold
サウンド全体のトーンと、オシレーションのスレッショルド、さらに多くのパラメータと合わせて設定することで様々な効果を作れます。
⚫︎Degrade
ディレイに入るシグナルをカットし、壊れたテープマシンのようなトーンやコムフィルターをかけたディレイなどのサウンドを作ります。
⚫︎Tape Stability
テープが揺れるようなモジュレーションをかけたり、より強力な設定ができます。
⚫︎Tape Inputスイッチ
シグナルのインプットッレベルを選択します。Tape Stabilityの設定により違った挙動を示すことがあります。
⚫︎Tape Fidelityスイッチ
ダウンポジションではテープノイズが最大となり、アップポジションではリピートが高周波のみとなり、よりローファイでノイジーなトーンとなります。


このAcousti-Qの 'センド・リターン' はラインレベルということで、'+4dB→-20dB' のインピーダンス変換とコンパクトペダルを 'インサート' できる専用機器のお世話となりまする。この手の '便利小物' ならPA関連機器でお任せの老舗Radial Engineeringから '逆DI' ともいうべきReamp BoxのEXTC-SA。最初の動画は 'ユーロラック500' シリーズのモジュール版ではありますが、本機は独立した2系統による 'Send Return' を備えてXLRとフォンのバランス/アンバランス入出力で多様に 'インピーダンス・マッチング' を揃えていきます。さらに ' フル・ステレオ' の接続にも対応するEXTC-Stereoなども用意されておりますが、現在の円安の影響なのかメチャクチャ高価になりましたね(汗)。そして同種の製品では、国産のConisisことコニシス研究所からE-Sir CE-1000というハーフラック・サイズのモノが受注製作品としてあります。わたしも過去DAWによる 'ダブ製作' の折に大量のコンパクト・エフェクターを 'インサート' してお世話になりましたけど、こちらもこの手の機器の先駆としてとても良いモノです。さて、わたしの環境ではこちらの受注生産で用意されているガレージ的製品を愛用しているのでご紹介。そもそもはギターアンプのプリアンプ出力とパワーアンプ入力の間に設けられる 'センド・リターン' でラック型エフェクターを用いる為のもので、アンプの修理をメインにされている工房E-C-Aからその名もズバリの '+4dB → -20dB Convert Loop Box' という名で受注製作しております。本機はDC24VのACアダプターで駆動して、各入出力の 'オーバーロード' を監視出来る便利なLEDを備えた2つのツマミでレベル調整が可能。大きな容量の電解コンデンサーで平滑、コンパレータに正常な電圧がかかるために電源後20秒ほど-20dBのLEDが点灯してから使用するという仕様。また、高級なアウトボード並みの多機能を誇るUmbrella CompanyのSignalform Organizerや、大阪で業務用機器を中心に製作するEva電子さんからもInsert Box IS-1が登場。こちらのIS-1は入力レベルのツマミと出力のPhaseスイッチを装備、+4dBのIn/OutをY型のインサート・ケーブルでミキサーと接続します。まあ、こんな '煩雑な悩み' も素直にEventide MixinglinkやZorg Effects Blow !、Radial Engineering Voco- Locoといったこの手の 'インサート機能' に特化したマイク・プリアンプを使えば解決する話なんですけどね(苦笑)。






そんな悩めるダイナミック・マイク・ユーザー、がいるのかどうかは分かりませんが(汗)、まさにそれに打ってつけなアイテムを発見しました。Cloud MicrophoneのCloudlifter CL-1という '逆アッテネータ' というか 'リアンプ・ボックス' と言うべきか、ゲイン不足のダイナミック・マイクの出力をお手軽に25dBもゲインアップしてくれます。もちろん、本機は48Vのファンタム電源供給出来るプリアンプとの併用が前提です(残念ながらわたしのHeadway Music Audio EDB-2は18Vファンタム電源供給なので不可)。意外にもYoutubeには関連動画が結構UPされているようで、ここ最近のYoutuber隆盛もあってか望まれていた製品だったようですね。上で原則的にダイナミック・マイクにはファンタム電源厳禁!と書きましたが、本製品はそれを逆手に取ってファンタム電源を利用してダイナミック・マイクのゲインを稼いでおります(コンデンサー・マイクのような駆動電源ではないのでマイク破損は起きません)。逆に本製品ではコンデンサー・マイクによる使用は厳禁!ということで、ちとややこしい書き方となりましたね(汗)。ちなみにわたしのセッティングではサブのエフェクターボードで、2チャンネルのプリアンプながらマイク入力のないHatena ?のSpiceCubeにマイク入力するべくTDC Mic Optionを介してこのCL-1を使用中。48Vのファンタム電源はBehringerのMicro Power PS400で供給しております。ちなみにこのCloudlifterと似た考え方としては、Umbrella Companyからケーブルにバッファー内蔵してゲインとインピーダンス・マッチングを取るActive Mic Cableというものがありまする。




このダイナミック・マイクのゲインを稼ぐCloudlifter CL-1の後、わたしの足下に各々並べてある2つのプリアンプへ送るためにこんな '便利小物' を追加してみました。名古屋でオリジナルのペダルや各種モディファイなどを製作するこの工房が 'カスタム・オーダー' で用意しているのは、他社からありそうで無かったXLR入出力によるA/Bセレクター!。つまりわたしの環境なら1つのダイナミック・マイクを足下で切り替えて、Hatena ? SpiceCubeかEventide Mixinglinkのマイク入力へスイッチ一つで各々送れるのです。本機はA/Bそれぞれの切り替えを示す赤と青のLED用電源のほかはパッシヴの仕様なのですが、ここでちょっとした注意点。大きなオスとメスのXLR端子を筐体の片側に3本挿し込むことから、そのまま足下に置くと重さで筐体が傾いてしまいます...。そのため、本機をかさ上げするような重い台座を用意して置くと安定するでしょう。これでいちいちマイクを繋ぎ替える手間が省けました。実は本機導入の本音として、Mixinglinkの2つの入力ミックスがInput Gainのツマミ1つでしか調整出来ずダイナミック・マイクのゲイン確保が厳しかったんですヨ...。しかし、パッと見はケーブルだらけの煩雑なセッティングのように見えちゃいますね...(苦笑)。



Eventide Mixinglinkの 'センド・リターン' にはLeqtiqueの10 Band Graphic EQを繋いで、ミックスしたピックアップ・マイクの音質を補正します。そもそもは2012年にアナウンスされた 'Zolo 17 Band EQ' のスピンオフ的に登場した本機は、カラフルに自照する無表示の10本からなるEQスライダーが左から '31Hz、63Hz、250Hz、500Hz、1kHz、2kHz、4kHz、8kHz、16kHz' とレベル調整用スライダーの構成になっております。EQはそれぞれ±18dBのブースト/カットとなっており、オペアンプにLT1498の採用で極めてハイファイな原音再生能力とローノイズ、最良のバッファーとしても機能することが可能。またDC9VからDC18Vまで昇圧することで極めて広いヘッドルームを確保しており、わたしも当然DC18Vに昇圧して使用しておりまする。一点注意すべきは、このLeqtique製品で使われているLinear Technology社製高品質オペアンプのシビアな特性から電源を入れた状態で本機の入出力にケーブルを抜き差しすると壊れやすいということで、基本的にはエフェクターボードへ結線と設置を前提としたペダルであることにご注意下さいませ。ただ、コンパクトペダルのグライコとしては最高峰だと思いますヨ。






そしてLeqtiqueといえば、残念ながら現在工房休止中のShun Nokina主宰によるLeqtiqueからデジタル・ディレイEDMが面白い。基本的に高品質な歪み系中心のラインナップにあって、リヴァーブのStellaclasmと並ぶ初の空間系の本機はその名もズバリEDMで鳴らされるキックのようなフィードバックに個性があります。PT2399チップによる最大500msというショートディレイの限界を最大限に引き出しながら、Linear Technology社のLT1213超高解像度オペアンプによる原音とのミックス回路を組み込むことでハイファイな音像を追求しております。また、ミニノブの 'Ambient' コントロールにより定位のスタビライズ的な効果も得られるなど発想もユニークですが、SNSのプレゼント企画でその 'Ambient' ツマミを省いた世界で一台だけのEDM Beta(画像の緑のもの)はレアものになるでしょうね。以下、Nokina氏の説明ではその 'Beta' についてこう述べております。

"EDM Betaに関しては、あえてAmbientコントロールを無くして、DelayのタイムをTHDが劣化しない範囲に制限し、またそれに合わせて一部の定数、部品の変更で解像度をさらに上げることで超Hi-Fiなショートディレイマシーンを実現しています。"

すでに生産終了とはいえ一台ずつハンドメイドでペイントされた各々 '差異' のある本機は、かなりの生産数から市場で見つけることは容易なのでお好きなペイント柄を手に取って頂きたい。昨今、複雑なディレイタイムとプリセットを備える高品質なマルチ・ディレイが普及したことで触手の伸びなくなった製品群ではありますが、わたしはこんなシンプルかつタップテンポ程度に限定された単機能ディレイ/エコーが大好き。











スティールパンとダブの再構築にかまけてトランペットの 'アンプリファイ' を忘れたわけじゃありません(苦笑)。というか、音作りとしてはほぼ '上がり' の状態なんだけど、ずっと追い求めている管楽器の 'サチュレーション' という意味でやはりルパート・ニーヴさんの味わいは素晴らしかった。まず、Ampex 456テープとStuder A-80マルチトラック・レコーダーによる '質感' をアナログで再現したRoger Mayer 456は、オープンリール・テープの訛る感じとバンドパス帯域でスパッとカットしたところに過大入力することから現れる飽和したサチュレーションに特徴があります。本機の大きなInputツマミを回すことで 'テープコンプ' の突っ込んだ質感となり、ここからBass、Treble、Presenceの3つのツマミで補正、キモはその突っ込んだ '質感' を 'Presence' ツマミで調整する音抜けの塩梅にあります。そして、この手の 'エミュレータ・ブーム' の先鞭を付けたのが、アウトボード機器の伝説として現在まで引き継がれるルパート・ニーヴが新たに始めた 'Porticoシリーズ'。その中でも最も大きな話題と共に数々のスタジオのラックに収められたPortico 5042は、そのモチッとした 'テープ・コンプレッション' とラインアンプの組み合わせで馴染ませた '質感' を生成してくれます。発売当初はその高級品ともいうべき高価なアウトボードで手が出ませんでしたが、最近その貴重な '初期カラフル版' の一台を奇跡的に安価で手に入れることが出来ました(涙)。操作はそのコンプレッションの突っ込み具合を調整するゲインと共に、オリジナルのレコーダーで回るテープ速度(のキャラクター)をエミュレートした '15ips' か '7.5ips' を各々選ぶのみ...簡単。効果は各帯域のスパイス的操作からローファイな '飛び道具' (ある意味 '酷い音')まで絶大な威力を発揮するのですが、繋いだだけで独特のモチッとした粘り気のある '太さ' に直結するので 'Presence' の抜けを考えるのがキモですね。ちなみにここでは 'テープ・コンプレッション' の突っ込み具合をあれこれ弄るべく、パッシヴのヴォリューム・コントロールで2つのプリセットを切り替えるNeotenicSound PurePadも用意しておりまする。







さて、わたしのエフェクターボードで絶対に欠かせなかったのがNeotenicSoundのダイナミクス系エフェクターMagical Force。いわゆる 'クリーンの音作り' というのをアンプやDI後のライン環境にまで幅広く '演出' させたものなのですヨ。まさに '縁の下の力持ち' 的アイテムというか、実際の楽器本来が持つ '鳴り' や 'コシ'、'旨味?' のようなものを 'アコースティック' だけでは得られないトーンとして生成します。本機はプリアンプのようでもありエンハンサーのようでもありコンプレッサーのような '迫力増強系' エフェクター。とにかく 'Punch' (音圧)と 'Edge' (輪郭)の2つのツマミを回すだけでグッと前へ押し出され、面白いくらいに音像を動かしてくれます。'Density' (密度)を回すと音の密度が高まり、コンプレスされた質感と共に散っていってしまう音の定位を真ん中へギュッと集めてくれます。コレはわたしの '秘密兵器' でして、Headway Music Audioの2チャンネル・プリアンプEDB-2でピックアップマイク自身の補正後、本機と最終的な出力の200Wコンボアンプの3バンドEQでバランスを取っております。本機の特徴は、DI後のラインにおける 'クリーンの音作り' を積極的に作り込めることにあり、おいしい帯域を引き出してくれる代わりにガラリとバランスも変えてしまうのでかけ過ぎ注意・・。単体のEQやコンプレッサーなどの組み合わせに対し、本機のツマミは出音の変化が手に取るように分かりやすいのが良いですね。設定はLevel (11時)、Punch (1時)、Edge (11時)、Density (9時)。ともかく、わたしのラッパにおける 'クリーントーン' はコイツがないと話になりません。ただし '魔法' とはいえ、かけ過ぎればコンプ特有の平べったい質感になってしまうのですが、あえてガッツリと潰しながらEdgeをナロウ気味に設定、Punchで張り出すような '質感生成' にしてみるのも面白いかも知れません。残念ながらこの唯一無二なダイナミクス系ペダルを製作してきた 'NeotenicSound' ことEffectronics Engineeringも、去年暮れで長らく携わってきたペダル製作から足を洗ってしまいました...残念。そして、エンハンサー装備の2チャンネル・プリアンプHeadway Music Audio EDB-2 H.E.に切り替えたことから、長らくわたしの足下にあったコイツも後述するTerry Audio The White Rabbit Deluxe共々サブの機器へと後退...お疲れさま〜(涙)。ただ、足下のボード上にあるBoardbrain Musicの多目的ループセレクターTransmutronには1つだけ 'センド・リターン' があるのでココに繋いでも良いかもしれない。




ちなみにこの辺りの縁の下の力持ち的な 'バッファー・プリアンプ' ペダルとしては、Bossの 'アナログ部門' である 'Waza Craft' の名で久々に本気を出したBP-1Wが登場しました。いわゆる 'クリーン・ブースト' として古くはMXR Micro AmpやXoticのRC Booster、ここ近年ではXoticのEP Boosterなどを重宝するユーザーに歓迎されるであろうその仕様は、LevelとGainの2つのツマミにRE/NAT/CEの3種のキャラクターとスタンダード(STD)、ヴィンテージ(VTD)の2種のバッファーを各々切り替えてトーンを作っていきます。特にRolandのテープエコーRE-201とコーラスCE-1という名機2種で評価されるプリ部の再現は特にこだわっており、早速ヴィンテージのCE-1と本機を比較する動画でレビューするも登場しました。早くも去年暮れの初回ロット品は品切れとなったようですね...。








一方、もう一つの隠れた '魔法' であるTerry Audio The White Rabbit Deluxe。こちらは1960年代のMcintoshのオーディオ・アンプがベースとなっており、いわゆるコンパクト・エフェクターにおいて 'ライン・アンプ' の発想から音作りをするものです。本機の解説を読むとわたしのもうひとつの '魔法' であるNeotenicSound Magical Forceと類似した効果を求めているようで、一切その表記のない3つのツマミは左から青い矢印と共にゲイン、赤い矢印の2つのツマミはメーカーによれば '回路の動作自体をコントロールし、シャッタースピードと絞り量で調整されるカメラの露出のように有機的に連動している' とのこと。そのMagical Force搭載のPunchとEdgeを思わせるパラメータのように聞こえますが、これら2つのツマミの設定をフットスイッチで切り替えることが出来ます。また、ゲインを上げていくとファズの如く歪んでくるのもまさにギター用に特化した 'ブースト的' 音作りと言って良く、その歪み方としてはJHS Pedals Colour Boxのコンソールにおける 'ファズっぽい' 感じと同様のものです。またボード上で本機の直前にパッシヴのコンパクト・ミキサーを繋いだことからバッファー的存在としても重宝しておりまする。前段にMagical Force、後段にこのWhite Rabbit Deluxeを配置することでサチュレートした 'ハイ上がり' のトーンと共に一枚覆っていたような膜がなくなり、音抜けの良くなる 'マスタリングツール' のような位置にある機器ですね。もう、何度も口酸っぱくして書きまくってますけど(笑)、管楽器の 'アンプリファイ' でアンプやPAを用いる環境において、その 'サチュレーション' や 'クランチ' の倍音含めた管楽器の 'クリーントーン' を作ること。それはピックアップ・マイクからの '生音' の忠実な収音、再生を目指すより、あくまで電気的に増幅した際に映える '生音を作る' こと、自分にとってのフラットである管楽器の音を追求することに主眼を置くべき、と考えております。この手のサチュレーションやいわゆるStuderのレコーダーとAmpexのオープンリール・テープの組み合わせからなる 'テープ・コンプレッション' の世界は、昨今のプラグインに見るDSPテクノロジーにより新たな市場を生み出しております。この分野でのヒット作となったのがStrymonによる 'tape saturation & double tracker' のDeco。去年にその音質をブラッシュアップしてMIDIにも対応したマイナーチェンジ版のV2は、これまでの 'Saturation' の飽和感と 'Doubletracker' セクションであるLag TimeとWobbleの 'テープ・フランジング' に加え、新たに搭載された 'Cassette' モードが好評とのこと。このStrymon各製品は楽器レベルからラインレベル、そして入力に 'インサート・ケーブル' を用いることでステレオ入出力にも対応とあらゆる環境で威力を発揮します。一方、ミキシング・コンソールの 'チャンネル・ストリップ' から話題となったJHS Pedals Colour Box。音響機器において伝説的な存在として君臨するルパート・ニーヴのEQ/プリアンプを目指して設計された本機は、そのXLR入出力からも分かる通り、ヴォーカルや管楽器奏者がプリアンプ的に使うケースが多くなっております。本機の構成は上段の赤い3つのツマミ、ゲイン・セクションと下段の青い3つのツマミ、トーンコントロール・セクションからなっており、ゲイン段のPre VolumeはオーバードライブのDriveツマミと同等の感覚でPre Volumeの2つのゲインステージの間に配置、2段目のゲインステージへ送られる信号の量を決定。Stepは各プリアンプステージのゲインを5段階で切り替え、1=18dB、2=23dB、3=28dB、4=33dB、5=39dBへと増幅されます。そして最終的なMaster Gainツマミでトータルの音量を調整します。一方のトーンコントロール段は、Bass、Middle、Trebleの典型的な3バンドEQを備えており、Bass=120Hz、Middle=1kHz、Treble=10kHzの範囲で調整することが可能。そして黄色い囲み内のグレーのツマミは60〜800Hzの間で1オクターヴごとに6dB変化させ、高周波帯域だけを通過させるハイパス・フィルターとなっております(トグルスイッチはそのOn/Off)。そもそもDC18V駆動であったV.1に対してV.2は汎用性の高いDC9V仕様へとマイナーチェンジしております。最後は、そんな 'サチュレーション' の妙味はフーチーズの村田氏も刺激したようで、アナログによる 'チャンネル・ストリップ' の発想を真空管でギター向けに再現させたものと言われるこのLove Bombをご紹介。そもそもの発端はPA機器や往年のFairchildコンプレッサーのクローン製作で評価を得るAnaloguetubeとエンジニアのGareth Johnsonがタッグを組みLove Bombとしてプロデュース、その心臓部と言えるのがシルバニア/フィリップス社製のNOS品である6948サブ・ミニチュア真空管を搭載しております。いわゆる '歪み系ペダル' ではなく、その挙動は1960年代のレコーディング・コンソールの入力ゲインをオーバーロードさせた時に生じる良い塩梅の歪みを得ることに特化しております。







さて、この辺りの 'サチュレーション' とマスタリングに特化した機器としては、1990年代後半〜2000年初めの 'サウンド&レコーディング' 誌(サンレコ)を熱心に読んでいた読者ならその存在を知っているTMD(Total Music Design)のラックマウント機、Rare Toneをウン十年ぶりの時を経てついに手に入れたぜ。基本的にはハーフラックサイズのモノラル機なのですが、わたしの所有品は2台マウントされた 'ステレオ仕様' という貴重なもの。このTMDといえば畑野貴哉氏が主宰するガレージ工房であり、最も得意とする独特な設計のマスタリング専用機からサンレコ誌でも連載していたギター用コンパクトエフェクターの製作記事に至るまで(後に '土日で作るオリジナル・エフェクター' として刊行)その 'DIY感覚' を広く開陳されておりました。この工房製品の中では前身機のEmerald Grooveから何度もその仕様を煮詰めて完成させたClassic Nuboが最も有名であり、そこから真空管リミッターの名機、Fairchild 670をシミュレートしたCL-F670、Classic Nuboの発展系ともいえるトランジスタと真空管の2種用意したVolcano/Vocano Tube、そして張りのあるエンハンスしたトーンから往年のモータウンサウンドの質感に 'ローファイ' なAMラジオトーン、トータルEQ/コンプ、マスタリングなどに威力を発揮するRare Toneといったユニークな機器を貴重なヴィンテージパーツによるアナログ回路(男らしい '一点アース' 仕様!)で市場に少量精鋭投入していったのでした。本機の使い方としては、4種のモードセレクターで基本となる音色を選択し "A" は単純に各種ツマミでマニュアルに音作りしていくモード、"B" はそのツマミの前に超高音域帯でエンハンサーの付加したモード、"C" は中域の強調されたモード、"D" ではさらにサチュレーション的歪みの付加したモードとなっております。まるでギターアンプのようなTreble、Mid、Bassの3バンドEQから 'Comp' により中域を充実させることで、本機ならではの個性が表れてくる印象と言って良いでしょうね。ちなみにわたしの手に入れたものは肝心の 'Comp' 機能の無い初期型Rare Toneだったので(涙)、ココは煩雑ですけど手持ちのNeotenicSound Densityを2台本機の後段に繋いで使用します。-10dBのラインレベルによる機器からコンパクトペダルへ繋ぐにはインピーダンス・マッチングが必要なのですが、基本的に 'ロー出しハイ受け' の原則を守っていればそこまでシビアにならなくとも大丈夫...かと(適当)。ただ、Densityからライン・ミキサーへと繋ぐ為には入力部の 'ハイ落ち' とクリップ防止でNeotenicSoundのPurePad(Passive Type)による 'パッド入力' で対応します。









トランペットの 'アンプリファイ' において魅力的な音色を作る。コレ、まさに十人十色(10人もいるかな?)の個性だと思うのだけど、わたしがかなり以前からしつこく(笑)アプローチしているのが 'リンギングトーン' なのです。'リンギング' (Ringing) とはいわゆるリング変調風の音色ということで、完全にリング・モジュレーターでブッ潰した '無調の響き' とは違いますヨ。あくまでテーマは 'リンギング' という薄っすらジリジリとした金属質の '倍音生成' を行うこと。リング・モジュレーター '唯一の演奏法' と言えばFrequencyのエクスプレッション・コントロールであり、そのギュイ〜ンと非整数倍音をシフトする '飛び道具' 的効果からギターアンプの '箱鳴り' という一風変わったシミュレートの探求へと向かわせます。このような音作りに興味を持ったのはギタリストの土屋昌巳氏による雑誌のインタビュー記事がきっかけでした(Sugizo氏のリング・モジュレーターによる音作りもここからの影響大かも)。

"ギターもエレキは自宅でVoxのAC-50というアンプからのアウトをGroove Tubeに通して、そこからダイレクトに録りますね。まあ、これはスピーカー・シミュレーターと言うよりは、独特の新しいエフェクターというつもりで使ってます。どんなにスピーカー・ユニットから出る音をシミュレートしても、スピーカー・ボックスが鳴っている感じ、ある種の唸りというか、非音楽的な倍音が出ているあの箱鳴りの感じは出せませんからね。そこで、僕はGroove Tubeからの出力にさらにリング・モジュレーターをうす〜くかけて、全然音楽と関係ない倍音を少しずつ加えていって、それらしさを出しているんですよ。僕が使っているリング・モジュレーターは、電子工学の会社に務めている日本の方が作ってくれたハンドメイドもの。今回使ったのはモノラル・タイプなんですけど、ステレオ・タイプもつい1週間くらい前に出来上がったので、次のアルバムではステレオのエフェクターからの出力は全部そのリング・モジュレーターを通そうかなと思っています。アバンギャルドなモジュレーション・サウンドに行くのではなくて、よりナチュラルな倍音を作るためにね。例えば、実際のルーム・エコーがどういうものか知っていると、どんなに良いデジタル・リヴァーブのルーム・エコーを聴かされても "何だかなあ" となっちゃう。でもリング・モジュレーターを通すとその "何だかなあ" がある程度補正できるんですよ。"

ギターアンプの共鳴効果による非整数倍音のシミュレート...これが成功しているのかはともかく、その発想が面白いですね。例えばElectro-HarmonixのFrequency AnalyzerでFrequencyコントロールを司るShiftとFineの2つのツマミ、これShiftでギュイ〜ンと変調させながらFineツマミを回すことで後から追っかけるような倍音が操作出来るんですよね。本機は外部エクスプレッション・ペダルが使えませんけど、この2つの変調を個別にリアルタイムで各々操作出来たらいいな、と思わせるほど他社製品にはない 'エレハモ' だけの個性です。 しかし、ここで再度繰り返せば '飛び道具' 的なリング・モジュレーターを使いたいワケではありません、あくまで非整数倍音の '質感' 含めた、クリーンな出音がベースの管楽器でサチュレートする歪み方へのアプローチなのです。これはオクターバーなどでクリーンな出音にエッジを加えて、電気楽器などアンサンブルの中でも埋もれない管楽器のトーンを活かすやり方でもあります。以下、この手のアプローチのイノベイターでもあるラッパ吹き、ランディ・ブレッカーの昔話を交えた2012年の 'Sax & Brass Magazine' 誌によるインタビューが参考になると思います。



- ステージを見せてもらいましたが、ほとんどずっとエフェクトを使っていましたね。

R - 今回のバンドのようにギターの音が大きい場合には、エフェクトを使うことで私の音が観客に聴こえるようになるんだ。大音量の他の楽器が鳴る中でもトランペットの音を目立たせる比較的楽な方法と言えるね。トランペットとギターの音域は似ているので、エフェクターを使い始める以前のライヴでは常にトラブルを抱えていた。特に音の大きいバンドでの演奏の場合にね。それがエフェクターを使い始めた一番の理由でもあるんだよ。ピッチ・シフターで1オクターヴ上を重ねるのが好きだね。そうするとギターサウンドにも負けない音になるんだ。もし音が正しく聴こえていれば、アコースティックな音ともマッチしているはずだしね。

- ライヴではその音を聴いていて、エッジが増すような感じがしました。

R - うん、だからしっかりと聴こえるんだ。それに他の楽器には全部エレクトリックな何かが使われているから、自分もエレクトリックな状況の一部になっているのがいい感じだね。

- そのピッチ・シフトにはBossのギター用マルチ・エフェクターME-70を使っていましたね?。

R - うん、そうだ。ディレイなどにもME-70を使っている。ただ使うエフェクターの数は少なくしているんだ。というのもエフェクターの数が多すぎるとハウリングの可能性も増えるからね。ME-70は小型なのも気に入っている。大きな機材を持ち運ぶのは大変だし、たくさんケーブルを繋ぐ必要もないからね。

- そのほかのエフェクターは?。

R - BossのオートワウAW-3とイコライザーのGE-7、ほかにはErnie Ballのヴォリューム・ペダルだよ。本当はもっとエフェクツを増やしたい気持ちもあるんだけど、飛行機で移動するときに重量オーバーしてしまうから無理なのさ。もっとエフェクトが欲しいときにはラップトップ・コンピュータに入っているデジタル・エフェクツを使うようにしているね。

- マイクはどんなものを?。

R - デンマークのメーカーDPA製の4099というコンデンサー・マイクだ。このマイクだと高域を出すときが特に楽なんだ。ファンタム電源はPA卓から送ってもらっている。

- 昔はコンタクト・ピックアップを使っていましたよね?。

R - うん、エフェクツを使い始めた頃はBarcus-berryのピックアップを使っていたし、マウスピースに穴を開けて取り付けていた。ラッキーなことに今ではそんなことをしなくてもいい。ただ、あのやり方もかなり調子良かったから、悪い方法ではなかったと思うよ。

- ちなみにお使いのトランペットは?。

R - メインはYamahaのXeno YTR-8335だ。マウスピースは・・いつも違うものを試しているけど、基本的にはBach 2 1/2Cメガトーンだね。

- 弟のマイケルさんとあなたは、ホーンでエフェクツを使い始めた先駆者として知られていますが、なぜ使い出したのでしょうか?。

R -  それは必要に迫られてのことだった。つまり大音量でプレイするバンドでホーンの音を際立たせることが困難だったというのが一番の理由なんだ。最初は自分たちの音が自分たち自身にちゃんと聴こえるようにするのが目的だったんだよ。みんなが私たちを先駆者と呼ぶけど、実際はそうせざるを得ない状況から生まれたのさ。

- あなたがエフェクターを使い始めた当時の印象的なエピソードなどはありますか?。

R - 1970年当時、私たちはDreamsというバンドをやっていた。一緒にやっていたジョン・アバークロンビーはジャズ・プレイヤーなんだけど、常にワウペダルを持って来てたんだよ。彼はワウペダルを使うともっとロックな音になると思っていたらしい。ある日、リハーサルをやっていたときにジョンは来られなかったけど、彼のワウペダルだけは床に置いてあった。そこで私は使っていたコンタクト・ピックアップをワウペダルにつなげてみたら、本当に良い音だったんだ。それがワウを使い始めたきっかけだよ。それで私が "トランペットとワウって相性が良いんだよ" とマイケルに教えたら、彼もいろいろなエフェクターを使い始めたというわけだ。それからしばらくして、私たちのライヴを見に来たマイルス・デイビスまでもがエフェクターを使い出してしまった、みんなワウ・クレイジーさ(笑)。

- マイケルさんとは "こっちのエフェクターが面白いぞ" と情報交換をしていたのですか?。

R - うん、よくやっていたよ。彼の方が私よりもエフェクツにハマっていたから、時には彼がやっていることを理解できないこともあったもの。でも私たちはよく音楽に関する情報を交換していたね。特に作曲に関してや、バンドの全体的なサウンドに関していつも話をしていたよ。それにお互いに異なるエフェクツを試すことも多かった。サックスに合うエフェクトとトランペットに合うエフェクトは若干違うんだよ。ワウは彼のサックスには合わなかったよ(笑)。




このようなミキシング・テクニックのスキルを 'ペダル化' したものには、Boardbrain Musicの多目的セレクターTransmutronがあります。本機はパラレルで個別、同時にDry/Wetのミックスが出来るほか 'Fission'、'Fusion'、Fallout' の3種モードにより、2つのLoopの機能を変更することが可能なコンパクト・エフェクターとエクスプレッションCV、'ユーロラック' モジュラーシンセのCVによる統合したスイッチング・システム。今後、ペダルと共にモジュラーシンセにおけるCV/Gateなどと同期する統合システムを見越した一台として、このBoardbrain Musicの挑戦はもっと注目されることになるでしょう。

●Fission
このモードでは、入力された信号の周波数帯を分割し、それぞれを2つのLoopにスプリットして再びミックスして出力出来ます。Umbrella Company Fusion BlenderやVocuのMagic Blend Roomなどと同種の機能ですね。またエクスプレッション・ペダル及びモジュラーCVでのコントロールにも対応。

●Fusion
このモードでは、2つのLoopのバランスを調整してブレンドすることが出来ます。これらミックスのバランスは筐体真ん中にあるSplitpointツマミ、またはエクスプレッション・ペダル及びモジュラーCVでのコントロールにも対応。これは廃盤になりましたがDwarfcraft Devices Paraloopと同種の機能に当たります。

●Fallout
このモードでは、2つのLoopの前にワイドノッチ・フィルターを適用して、Splitpointツマミやエクスプレション・ペダル及びモジュラーCVでのコントロールにも対応。ペダル・コントロールすることでワウのような操作を付加することが出来ます。また本機には、これとは別にHicut、Locutのフィルターを搭載して音作りに適用することが出来ます。

ちなみに本機搭載のフィルターは12dB、24dB、48dB/Octのスロープ角度を選択出来、それぞれFission、Falloutモードのワイドノッチ・フィルターにも適用されます。もちろん、Ch.2のLoopでフェイズアウトが起こった際の位相反転にも対応出来るのは素晴らしい。そして2つのLoopからなる 'Send/Return' にはフォンと 'ユーロラック' モジュラーでお馴染み3.5mmミニプラグが同時対応し、さらにこの3.5mmのLoopには内部DIPスイッチにより楽器レベルとラインレベルで 'インピーダンス' を切り替えて使用することが出来ます。




まずはバンドパス帯域でチリチリとした 'AMラジオ・ヴォイス' 効果ということで、F-PedalsのRobotHolicとBlackout Effectors Whetstoneを各々接続。F-Pedalsは米国カリフォルニア州ロスアンジェルス在住のイタリア人音楽家、フランチェスコ・ソンデーリ氏のプロデュースにより企画と設計、製造はイタリアのナポリで行われているミニサイズのラインナップです。このRobotholicにはいわゆるリング変調とは別に 'Lo-Fi' スイッチから生成される 'AMトーン' をチョイス。そして今は無き先鋭的なラインナップを誇ったBlackout EffectrsからWhetstoneとCrystal Daggerの2つが続きます。その 'マルチ・モジュレーション' であるWhetstoneは本機に各々内蔵される 'Ring & Fix' モード(3:08〜4:20)にすると、Rateツマミは 'Ring' では非常に早い細切れスピードとなり、そのままDepthツマミを下げてLFOの可変幅を切り替えるSweepスイッチ(Shallow/Wide)と組み合わせれば一風変わったオクターヴ効果に早変わり。一方の 'Fix' はモジュレーションを無効にした揺れということでまさに 'Filter Matrix' 効果であり、そのままRateツマミはマニュアルによるフィルター・スウィープとして 'ワウ半踏み' 風味からローファイな 'AMトーン' を生成します。本機はその好評と共に早くもV.2へのマイナーチェンジが施されて、Ring ModとPhaserモードの向上と当初指摘されていたノイズフロアーの問題をより低下させました。そしてSunfish AudioのIkigai(生きがい)も国産の新たな工房として一味違うスパイスを効かせたラインナップを誇り、ここでのプリセットは1 - Tremolo/Ring Modulator、2 - Old Vinyl、3 - Filter Sample & Hold、4 - Fuzz、5 - Organ Simulator、6 - Crystal Delay、7 - Talking Filter、8 - Random Samplerの8種を用意。わたしのお気に入りは1の 'Tremolo/Ring Mod' と2の 'Old Vinyl' のザラ付いた質感ですね。










引き続きこちらは、よりノイジーに寄ったモジュレーションによる 'リンギング・アプローチ' のラインナップ。Mid-Fi ElectronicsのScrape Flutterは設計者のDoug Tuttleによれば "エンヴェロープ制御、位相シフトベースのヴィブラート/サイドチェイン・ディストーションのようなもの" とのことで、たったひとつのツマミである 'Alignment' を回して不気味なアッパー・オクターヴ成分を生成します。一方、去年いっぱいでその工房を閉じてしまったWMDの破壊的なマルチ・ディストーション、Geiger Counterはユニークな逸品として大きな話題を振り撒きました。'放射能測定器' の如く全てをぶっ潰す 'ビット・クラッシャー' 的歪みの集大成と思われておりますが、このウェーブテーブル式波形の中にはクリーンな音作りで地味に管楽器でハマるものがあります。その中でも 'リンギング' に特化した32種のプログラムで整理したものがこのCivilian Issue。そして、コーラス/ヴィブラートの変わり種である英国の工房Intensive Care AudioからFideleaterが面白い。'痩せ' と 'デブっちょ' のマークの付いた 'Untie' スイッチを 'デブっちょ' にすると一変、まるでテープを噛み砕いてブチブチと燃やしたようなグリッチ効果を8種のLFOと共に崩壊させます。この '横型筐体' は初期の仕様であり、現行品は中身はそのまま '縦型筐体' へ仕様変更されました。もうひとつこの工房の製品で面白いのは、その名の如く梱包に薬局の紙袋や薬のような取扱説明書、絆創膏という '小道具' まで封入していること(笑)。一方、製作時期によりいくつもの追加機能や 'ヴァージョン違い' など1つとして同じモノが無いオーストラリアの工房、Seppuku Fxのローファイなコーラス/ヴィブラートのMind Warp。手許にあるのはグリッチ風なノイズ機能の付加した2018年版となりますが、この工房の製品はその年度ごとにガラリと仕様を一新するのが常で(苦笑)現在は 'Seppuku / Rhys I' という名称に変更して不定期に市場へ少量供給されております。最後はこの手の効果としてフランジャーに付随する 'Filter Matrix' として、ギリシャの工房DreadboxのKomorebi(木漏れ日)はStatic、Rate、LFO OutのCV入出力と共に 'Ringi-SH' (3:27〜)という名で爽やかな効果から一転、極悪な匂いが漂います。本機からはLFOもCVで出力されるので 'ユーロラックモジュラー ' との連携、同期を取ることが可能。









そんな 'リンギング' 効果の出発点と言うべき 'エレハモ' の名機、Deluxe Electric Mistress内蔵の 'Filter Matrix' モードは地味ではありますが使えますヨ。基本はフランジャーなのでほとんど無視されちゃいますけど、これが 'Range' ツマミ1つの機能ながらなかなかにハマってしまう。しかし同製品の動画を漁って見てもほぼフランジャーのみの解説ばかりで、もはやオマケですらなく完全に忘れ去られているのは悲しいですね・・。ちなみに 'エレハモ' から最近、本機の当時愛用者であったアンディ・サマーズ往年のトーン復刻を記念したと思われる 'Walking On The Moon' が現行品としてラインナップしておりまする。とりあえず、この効果は 'Range' をリアルタイムで操作した時に '体感' 出来るので、やはりこのツマミをエクスプレッション・ペダルでコントロールしたい衝動に駆られるかも知れません。一方、イタリアからElectric Mistressの影響を受けたと思しきElectronic SoundsのFlanger / Filter Matrixは、あのTone Benderの設計でお馴染みGary Hurstがデザインしました。最後は国産にして現代でも通用するスタイリッシュなデザインで古さを感じさせないCoronのJFM-100。いわゆるフランジャーのほか、フットスイッチによる 'Jet効果' のOn/Off、そして 'Filter Matrix' と実に多岐に渡る音作りを約束します。しかし、当時の国産モノとしてはスタイリッシュでカッコいいデザインだ。そして、フランジャーといえば忘れちゃいけないA/DAの名機Flangerをペダル・アーカイブでお馴染み 'MVP' (Monthly Vintage Pedal)の第五弾として発信します。







個人的にお気に入りなのがドイツで 'ユーロラック' モジュラーシンセを得意とする工房、Koma ElektronikのBD101 Analog Gate / Delay。BBDを用いた100msという超最短のディレイタイムによるアナログ・ディレイとゲートを組み合わせて、赤外線センサーや外部とのCV(電圧制御)による 'モジュラー的' 音作りまで対応します。いわゆる 'ビット・クラッシャー' からAD(Attack、Decay)によるエンヴェロープ・モディファイア、まるで土管の中にアタマを突っ込んでしまったような 'コォ〜ッ' とする金属的変調感の 'Intergalactic Sounds' (1:30〜)は一般的フランジャーでは味わえない本機ならではの個性でしょうね。ちなみにこの効果と近い感じを生成するものといえば、古くは 'ダース・ベイダーの声' として認知されたMarshall ElectronicsのTime Modulatorや、現在 '足下' に置いて愛用するBastl Instruments Thymeの 'Robot' モードなどがありまする。


最後はチェコの工房、Bastl Instrumentsのフラッグシップ機として君臨してきたThyme。近年のコロナ禍と戦争による半導体不足の煽りを受けて早々に 'ディスコン' となってしまいましたが(涙)、ああ、こういう '変態の発想' がまた人知れず時代の彼方に消えていってしまうかと思うとやり切れないなあ。ちなみにわたしの足下には、このTyhmeにMu-Tronの名機Octave DividerのクローンであるSalvation Mods Vividerなど2つもチェコ製品が置いてあります(笑)。とりあえずご新規さんがこの面白さを体感出来ないのは残念ですけど、本機の真ん中に整然と並ぶDelayセクション3つのツマミCoarse、Fine、Spacingをテープの 'バリピッチ' の如く操作してループ・サンプラーからTape SpeedとFeedback、Filterで変調させながらフレイズを破壊・・これで電気ラッパはもちろん、取るに足らない具体音の 'サンプル' ですら新たなイメージで若返りますヨ。そしてもうひとつのRobotセクションではFM変調の如く金属質なトーンへと変調し、それを真下にズラッと並ぶ6つの波形とエンヴェロープ、外部CVやMIDIからの操作と同期・・もちろんこれらのサウンドを8つのプリセットとして保存と、ここでは説明しきれないほどの機能満載。ちなみにマニュアルは50ページ強もあるのだ...(汗)。ホントは本機を16 Second Digital DelayとMIDIクロックで同期させたいのだけど(Thymeをスレイヴでしか使えんのが残念)、残念ながらエレハモ側のMIDI端子が隠れてしまって繋げられません(涙)。とにかく本機はやることいっぱいあって(苦笑)、各ボタンやツマミに複数パラメータが割り当てられることからその '同時押し'、'長押し' といったマルチに付きものの大嫌いな操作満載で大変・・ではあるのだけど、大事なのはその膨大な機能を覚えることじゃなくコレで '何をやるのか?' ってこと。