2024年1月1日月曜日

Nippon / Nhật Bản 2024

あけましておめでとうございます。
Chúc mừng năm mới .

去年はいろんなものがぶっ壊れた一年でしたね。これまで '忖度' するかのように君臨した日本のエンタメが急降下していく様を 'マス' のレベルで皆が目撃した。特にここ10年近く奈落のように落ちていっているのが音楽の力であり、実際にはこんな状況にも関わらずユニークな才能が現れようともメディアによりフックアップする力が本当に無くなってしまった。わたしもそんなに頑張って追ってるワケではないのでエラそーなことは言えないけど、Youtubeなどで流れてくる動画から、お、コレいいなとチェックしてみると3年前、さらには5、6年前のものだったことに気付かされてしまう。もっと気が付いて欲しい動画よりSNSから卑近なものだけ摘んで大衆に与えておけば良い、という態度で本当に 'オタク' がメディアの中からいなくなってしまったことを実感するのです。いや、ちょっと違うかな...既存のメディアはもはやどうでもいいのかも知れない。そこを嘆いても仕方ないし、何かを啓蒙するようなことでも一生懸命 'マス' を変えようという意識ですらなくなった。マニアックなものからアニソンやアイドルなものとか、もはやその線引き自体でカテゴライズすることも意味がないし、皆がひとつの現象を共有して熱狂する時代はとうに過ぎ去ったのだ。ここで挙げたものもR&B志向の強いサウンドに偏っているのはわたしの趣味だけど、こういうコード感やサウンドって今の日本からは一番聴こえてこないジャンルだったりする(苦笑)。このまるで80'sニューウェイヴ全開のローファイな質感と現代のミューズ、小松菜奈を組み合わせたVaundyの傑作 '踊り子' ('トドメの一撃' も好き)から掘込高樹のソロユニットとなったKirinjiが宅録マニアのマイカ・ルブテとのコラボでモロ80'sなシティポップをアップデートし、続くバークリー音大卒キーボーディストとしてその才能を発揮するKan Sanoが、DedachiKentaとのコラボに続きフォンスとラリーのミゼル兄弟によるスカイハイ・プロダクションから触発されたようなジャズファンク・ポップチューン 'My Girl' (ぷにぷに電機とのコラボも上げたかった)、ついつい 'J-Popの良心' と呼びたくなる挑戦的な姿勢でポップスを刷新する宇多田ヒカルの2年前のアルバム 'BADモード' からそのタイトル曲とサイケデリック全開のアシッドハウスでフロアーを揺らす 'Somewhere'...いや、もうヤバすぎ、そしてすでにJ-Popを席巻するほど '時代の寵児' となった奇才、藤井風のゴリゴリなR&Bチューンを台湾ロケで贈る 'Workin' Hard' はそのMVを同じく 'まつり' や '花' の世界観でも発揮したMESS監督の掬い上げる手腕に脱帽(ちなみに風さんがわずか15歳でチャーリー・パーカーの 'Donna Lee' をコピーしたサックス動画はエグい)、そして、そろそろメジャーでの浮上によって 'Pop回帰' に戻ってきて欲しいという願いを込めて竹内まりやの 'Plastic Love' のカバーでも話題となった 'FNP' ことFriday Night PlansはStuts、JJJとのコラボによる 'Prism' のウェットな質感に貢献するMasumiさんが素晴らしい!。この不穏なR&Bポップともいうべき 'Honda' が、やっぱりサビが一回しか出てこないとこ含め、ほんと良いアレンジだなあ。ちなみに彼女のMVに携わってるのがKingGnuの常田大希氏も所属するクリエイティヴチームPerimetronとのこと。しかし、これほどの尖ったR&B感覚を持ちながらここ近年は音響作家的なアプローチに行ってしまった 'FNP' のMasumiさんの心境にいろんな思いを感じてしまうのです...うぅ。本当に広く聴かれずに埋もれていく曲や才能が多過ぎる...。

こちらは一転、最近ちょろちょろ聴き出してるベトナムものを8曲。ベトナムR&Bの先駆だというJusta Tee(しかし 'Đã Lỡ Yêu Em Nhiều' が 'うっかりあなたが大好き' っていう謎の邦題で笑った...直訳すれば '君をあまりにも愛し過ぎた' かな)や日本のSirupなどと一緒に聴きたいヴォーカルユニットDa Lab、まるで90's R&Bを思い出すヴー・タン・ヴァンにスニ・ハ・リン、フォン・リィの '紅三点' はお気に入り。さて、そんなスニさんは去年9月に埼玉のベトナムフェスで来日したステージも素晴らしかったけど、彼女がメジャーのワーナーと契約したバンドChilliesとコラボした '渋谷系' エレクトロ・ファンクチューン 'Cứ Chill Thôi' (この特徴的なドゥラッタラ...というフレイズがTikTokでバズってたらしい)のポップなアレンジ・センスもなかなかです。一方のGrey DはChilliesとのコラボで爽やかなCity Popフュージョンといった趣きから一転、最後はその濃い顔からベトナムの久保田利伸を想起させる(俳優の北村一輝っぽくもある)クァク・フンのR&B感覚が素晴らしい。最初はフォン・リィとのコラボによるCity Pop感満載の 'Phiêu Nhịp Thở' を聴いて、お、いいセンスだなと思ってたらこんなD.Train風エレクトロ・ブギーで踊らせるとはベトナム恐るべし。ということで、ここ最近近所に出来たベトナム風サンドイッチのバインミー食べながら黄昏た気分(笑)で聴いていた音楽でした。これらV-Popで一部EDM色濃いのはK-Popからの影響なんだろうけど、その音楽の幅は結構多彩でモロ欧米市場に合わせたK-Popより土着性の強い歌謡感覚がメロディーと節回しに漲っているのが独特ですね。また 'Lo-Fi' と称したリミックス文化によるマッシュアップも盛んでDAW人口も多いのだろうなあ。もっといっぱい紹介したいんだけど選曲の並びでこんな感じ...。ちなみにここでのカタカナ表記はあくまで目安でして、ベトナム語はローマ字使用ながら6声からなる声調と同音異義語の数々、それを表す発音記号がなければ全く意思疎通の出来ない難易度の高い言語(さらに南部、中部、北部で違う!)でもあります(汗)。


追記でOrangeという歌手が最近 'Com'On' (ありがとう)というアルバムを発表しましたが、その中から80'sテクノポップ風の一曲 'Em Nên Yêu Cô Ta' のセンスはなかなかですねえ。続いてフエン・タン・モンという女性歌手がかなり良いです。まだ若いのに、このちょっとハスキーなヴォイスはFriday Night PlansのMasumiさんを彷彿とさせるなど、なかなかグッと聴かせますヨ。そして、これはベトナムのピチカート・ファイブ!?と思ってしまったニャク・クア・トランのオシャレな渋谷系と歌謡性の絶妙な出会い(笑)。こういういなたい小洒落感こそスティールパンで叩いてもっと南国っぽくしてみたい。とりあえず、スニさんの 'EM ĐÃ BIẾT' と 'NGỎ LỜI'  の2曲はさらなる 'ダブ化' のアレンジでリミックスしてみたいのです。レゲエとラヴァーズ・ロックの関係じゃないけど、こういうアプローチは素材が甘ければ甘いほどビターなダブの '換骨奪胎' による再構成の美学が際立ちます。プロデュースを担当したNEWLのセンスは素晴らしいですね。個人的にはV-Popも現在主流のブリブリなK-Pop型EDMより、ちょい前のR&B寄りなセンスを下敷きにした方が好きだなあ。今や人口が1億に達する新興国ベトナムは在りし日の高度経済成長期の日本を彷彿とさせる勢いを感じるのです。ある意味、老いたように鎖国化する日本も見習いたいその忘れていた活気は刺激ですヨ。現状、言語の壁と平均所得の低いストリーミング中心の限られたアジア市場に食い込むメリット無しと尻込みして日本の訴求力が落ちている内向き志向は本当に残念であり、このまま国内だけのコンテンツにしがみ付かず燻ってる日本の魅力をもっと海外に発信して行って欲しい。そのJ-Popも最近、機能不全に陥ったヒットチャートが破壊された後の真っさらな更地から再び新たな才能が現れてきているのは嬉しい限り...。そんなある種の '聴衆不在' と共に響かない価値観の分散化した今日、各々の居場所から世界と繋がるように見渡せばもはや日本の市場だけにこだわる理由はないですね。



そしてベトナムとジャズといえば、わずか6歳で家族と渡米してバークリー音大からパット・メセニーのグループへの大抜擢で一躍その名を知られた在米ベトナム人ラッパ吹き、クォン・ヴーの存在は大きいですね。グッと顎を引き往年のウッディ・ショウを思わせるその構え方から 'アンプリファイ' による歪んだエコーの音像と共に新たなサウンドの可能性に挑み、あの左手でテーブルに置いたディレイやループサンプラーを触るスタイルが印象的です。彼が堂々Trioでゲストにブル・フリゼールのギターを呼び完成させた、2005年の4作目 '残像' こと 'It's Mostly Residual' の衝撃は凄かった。個人的には多分セカンドハンズで見つけてきたであろう、わずか2秒のサンプリングタイムを持つDigitech PDS1002 Two Second Digital DelayのHold機能で自らの世界観を生み出しているのは素晴らしい。てか、10年以上前から見てるけど元が '老け顔' だからなのかあんま老けないね(笑)。そして、ルーツ的な 'ベトナムジャズ' っていうのは何かあるのかな?と漁ってみたら出てきた 'Bong Cay Ko-Nia' なるタイトルのインストによるコンピレーション。これが南北統一前の南ベトナム時代の音源?なのかどーかそこら辺の情報一切ナシなんだけど、この鄙びたオンド・マルトーノ風のチープなオルガンや古臭い歌謡性を帯びたアレンジがエチオピアのムラトゥ・アスタトゥケなどとの共通性を発揮します。最後はベトナム統一1975年にリリースされていたという 'ベトナム・ファンク' 45回転シングル盤ノンストップ!。










最近、ダブの '換骨奪胎' から解釈されるあらゆる楽曲の分解と再構成の関係性について見直しております。この、リズムと戯れるように楽曲の構成を分解することで新たな価値観を提示したのがカリブ海の孤島、ジャマイカで探求された '変奏' ともいうべき 'ルーツ・ダブ' の世界。週末に大量のマスターテープと共に彼らのスタジオTubby's Hometown Hi-FiやBlack Ark、Studio One、Channel Oneにやってくるプロデューサーのオーダーに従い、4トラック程度のリミックスとして過剰なエコーやスプリング・リヴァーブ、フィルターなどで '換骨奪胎' されたものをリアルタイムにダブプレートと呼ばれる鉄板をアセテートで包んだ盤面に刻む。その大量の 'ヴァージョン' はこの孤島を飛び出して、今や 'リミックス文化' におけるポップ・ミュージックのスタンダードとなったことは論をまちません。一貫して島の電気屋としてトランスを巻いていたキング・タビーことオズボーン・ルドックは、週末のダンスホールを盛り上げる趣味のセレクターから一転、そのエンジニアリングの手腕を買われ自宅を 'Tubby's Hometown Hi-Fi' と改装してミックスの '副業' にも精を出します。そこからフィリップ・スマート、プリンス・ジャミー、'サイエンティスト' ことオーバートン・ブラウンらを輩出、1980年代にはピーゴ、ファットマン、バントンといったディジタル・ラガ創成期育成のオーガナイズもするなど、常にレゲエの心臓部の役割を担いました。その 'ダブ発見' についてキング・タビーをフックアップしたプロデューサー、バニー・リーは間違えたミックスとダイレクト・カッティングによる最初の興奮と顛末についてこう述べております。

"ダブが始まったとき、それは本当の「ダブ」じゃなかった。ある日の夕方、俺とタビーがデューク・リード(プロデューサー)のスタジオにいると、スパニッシュタウンからルディ・レドウッドっていうサウンドマンがヴォーカルとリディムを使って曲をカットしていた。それをエンジニアがうっかりヴォーカルを入れ忘れたから、途中でカットを止めようとするとルディが言ったんだ。「待ってくれ、そのままやってくれ!」って。それで最初にヴォーカル無しのリディムだけのダブプレートが出来た。ルディは「今度はヴォーカル入りのをカットしてくれ」って言って、ヴォーカルが入ったのもカットした。その次の日曜日、ルディが回しているとき、俺は偶然そのダンスにいた。それで奴らがこないだカットしたリディムだけの曲をかけたらダンスが凄く盛り上がって、みんなリディムに合わせて歌い始めたんだ。あんまり盛り上がったもんで、「もう一回、もう一回」ってあの曲だけを一時間弱かけるハメになってたよ!。俺は月曜の朝、キングストンに戻ってタビーに言った。「タビー、俺らのちょっとした間違いがみんなに大ウケだったよ!」って。そしたらタビーは「よし、じゃあそれをやってみよう!」って。俺らはまず、スリム・スミスの「エイント・トゥ・ベック」とかで試してみたよ。タビーはヴォーカルだけで始めて途中からリディムを入れる。それからまたヴォーカルを抜いて、今度は完全にリディムだけにする。俺らはそうやって作った曲を「ヴァージョン」って呼び始めた。"













一方、ダブの 'マッド・サイエンティスト' ことリー "スクラッチ" ペリーと 'BlackArk' スタジオには守護神的存在として彼の '魔術' に貢献した機器、Musitronics Mu-Tron Bi-Phaseとスプリング・リヴァーブのGrampian Type 636があり、さらにペリーのとぼけた効果の一端を引き出すKorgのリズムボックスMini Pops 3のOEM、Uni-Vox SR-55やトリガーとして鳴らすMaestroのRhythm 'n Sound for Guitar G-2などが用意されておりました。もちろん、それらを空中にフワッと投げ出すような効果で飛ばすMaestro EchoplexやRolandのSpace Echo RE-201といった定番テープエコーがミキシング・コンソールに立ち上げられております。ちなみにこのスタジオの司令塔として鎮座していたのはSoundcraftのコンソールでしたが、そもそもはクライブ・チン親子が経営していたRandy'sのスタジオを根城としておりました。しかし、ペリーにとってこの '魔力' を誇っていたミキシングボードを新しい24トラックのモノに新装したことからペリーとチン親子の関係は決裂、ペリーが自身のスタジオ 'BlackArk' 立ち上げのきっかけとなったのです。そして、後に取り憑かれてしまった '狂気' の果てに自らこの '聖域' を炎と共に崩壊へと導いてしまったペリー...。

"あいつらはスタジオを無茶苦茶にしたんだ。スタジオをまるっきり変えてしまった。良い物を持っているのに他のヤツが自分より大きな物を持ってるから自分もって全部台無しにしちまった。あいつらはあのボードを変えたから、ジャマイカを出て米国に逃げなくちゃ行けなくなったんだ。あそこで作る音は奇跡だったのにあいつらはオレの奇跡を無茶苦茶にした。何もかもあいつらがボードを変えたからだ。"

さて、キング・タビーと 'Tubby's Hometown Hi-Fi' ではスプリング・リヴァーブのThe Fisher K-10とタビーがダイナミック・スタジオから払い下げてきたMCI特注による4チャンネル・ミキサー内蔵のハイパス・フィルターが殊に有名です。EQの延長としてダイナミック・スタジオがオーダーしたこの機器は、後にプロデューサーのバニー・リーが "ダイナミックはこのミキサーの使い方を知らなかったんじゃないか?" と言わしめたくらい、タビーにとっての 'トレードマーク' 的効果としてそのままダブの 'キング' の座を確かなものとしました。そう、この効果が欲しければタビーのスタジオに行くほかなく、また、ここからワン・ドロップのリズムに2拍4拍のオープン・ハイハットを強調する 'フライング・シンバル' という新たな表現を生み出すのです。そのハイパス・フィルターは、左右に大きなツマミでコンソールの右側に備え付けられており、70Hzから7.5kHzの10段階の構成で、一般的な1kHz周辺でシャット・オフする機器よりも幅広い周波数音域を持っていました。タビーの下でエンジニアとしてダブ創造に寄与、'Dub of Rights' のダブ・ミックスも手がけた二番弟子、プリンス・ジャミー(キング・ジャミー)はこう述懐します。

"ダイナミック・サウンズ用に作られた特注のコンソールだから、すごく独特だったよ。最近のコンソールには付いていないものが付いていた。周波数を変えるときしむような音がするハイパス・フィルターとか、私たちはドラムでもベースでもリディムでもヴォーカルでも、何でもハイパス・フィルターに通していた。ハイパス・フィルターがタビーズ独特の音を作ったんだ。"






そして、世界でも本格的なダブに関する考察書として2007年に刊行、日本語翻訳本としては2010年に訳されたマイケルEヴィールによる名著 'DUB論' がなんと13年ぶりに復刊しました!。サイズもより小型で持ち運び自由となった四六版で13年もの間を経て翻訳者の森本幸代氏により初版本にあった意訳、誤訳など見直されてより完璧となった読み物となっておりまする。ダブとは何ぞや?という入門者から 'ダブマニア' の皆さまに至るまで、まず最初に手に取って頂きたいバイブルでございます。何度読んでもカリブ海の孤島から世界を変えたその貧しくとも溢れ出るイノベイターの実験精神に心が震えます...。そしてダブの隔世遺伝として2006年のアルバム 'Burial' と2007年の 'Untrue' 以降ダブステップ '影の帝王' として神出鬼没に活動するBurialは、一昨年の長編作 'Antidawn' と盟友のKode 9 'Infirmary' とのコラボ12インチ 'Unknown Summer' で久々にその存在をアピール....の中身がかなりの音響寄りで相変わらず名は体を表すようにダークな世界を邁進します(笑)。わたしにとってはダブステとはBurialなんだけど第二期ダブステのSkrillex以降、メジャーなビルボードチャートでK-Popに到るまで乱発されるブリブリしたウォブルベースやBurial風2ステップのEDM全盛にそろそろ食傷気味。もう、EDMブームも一息付いていいだろう...フックばっかの曲連発で疲れた耳にオリジネイターの音像がソッと手助けしてくれます。









そして去年、これまで買い漁っていたコンパクトペダル群を大量に手放しました。別にコレクターをやめたワケではありません(汗)。お気に入りなペダルは変わらず手許に所有しているのだけど、なんというか、一介のアマチュア音楽家のひとりとして '焦点がボヤけてきた' 気がしているのですヨ。つまり、やりたいことや楽しみ方はそれぞれだけど自分の手足は4本だよね、ちょっとやそっとで取り組んでもいろんな機材に使える時間は有限だよね、素晴らしいモノに囲まれていてもアイデアは錆び付いてるよねetc...ま、こーいう御託はどうでもいいんだけど(汗)、ほんと '焦点がボヤけてきた' という以外ないのが今の偽らざる気分なんです。ちなみにわたしのお気に入りである関西の工房、Effectronics Engineeringこと 'えふぇくたぁ工房' もHatena ?〜NeotenicSoundと長年携わってきたペダル製作から 'ご卒業' されました(涙)。いっぺいさん、お疲れさまでした。しかし、今後はその 'Nextステージ' としてこれまで培ってきた '音場生成' のコンセプトをアナログ回路により専門的なプロセッサーである 'Dynamics Proccesing System' (DPS)の 'HatmanDPS' へと移行します。乞うご期待!。ま、こんな黄昏た気分も飽きてきたらまたペダル買い集め出すかも知れませんけどね(汗)。そして、基本的に管楽器とは相性が悪いという点で歪み系ペダルをココで取り上げることはないのですが、いま日本の 'ペダル界' で最も頼もしく絶対に面白い組み合わせの2人の2時間に渡る試奏動画をチェック!。日本最大のコレクターにしてPedal Shop Cult主宰でこだわりのペダル製作も展開する細川雄一郎氏と渋谷の楽器店Hoochiesの店員にして信頼のレビュワーでもある村田善行氏がCultこだわりのペダル3種、Tempest、Ray、Luxを中心に 'ディストーションvsオーバードライブ' のお話はタメになりまする。月一で 'Cult × Hoochies' の 'ペダル話' チャンネルとかこの2人でやって欲しいな(笑)。そして、Cult細川氏が 'ギタマガ' とのコラボでお送りする 'MVP' こと 'Monthry Vintage Pedal' も14回目、いつの間にか 'EQD' ことEarthquaker Devices主宰のジェイミー・スティルマンも加わりHoneyのPsychedelic Machineが登場しました。ええ...あえて詳細は申しませんがこの個体はよーっく知っております(笑)。オリジナルの電球から白色LEDへの変更は購入から半年ほどで '球切れ' を起こしたがゆえの妥協だったのですが、なんで?壊れたんだからLEDで直しゃいいじゃんというジェイミーの合理的判断がハハハ、ザ・アメリカ人(笑)。そんなPsychedelic Machineの堂々スペックを同社のカタログから抜粋します。

●Psychedelic Machine (サイケデリックマシーン) ¥38,000 (フットスイッチ2ヶ付)

当節流行のサイケデリックサウンドにハニー電子技術のすべてを結集し、初めて発売されたマシーンです。すでに欧米にも多数輸出され、グループサウンドの本場から注目をあびている製品です。細かく使い分けると40種余りの効果を出せますが大きく分けて、フットスイッチ2ヶの切替により一曲の演奏中でもダイレクト、ファズ、コーラス、ビブラート、トレモロ、サイケデリックトーン等が種々のパターンで楽しめます。ギターの他にもベースや特に電子オルガンに使用した場合も素晴らしい効果を発揮します。特にファズを使用してもギターで、コード(和音)がひけるようにファズが4段階に分れ、それに2種数のトーンを選べるなど使えば使うほど皆様の表現力にプラスになるマシーンです。AC電流式なので、電池交換の必要はありません。

仕様 トランジスタ 22石
   ダイオード 2個
   cds. 4個

 






                                                      - Ace Tone Multi-Vox EX-100 -

さて、国産といえば日本初のファズボックスを製作し、後に独立してRolandを設立する梯郁太郎氏が手がけたブランド、Ace Toneことエース電子工業株式会社。Fuzz MasterやWah Masterは知っていてもこの管楽器用オクターバー、Multi-Vox EX-100を製作していたことはほとんど知られておりません。当時、39,000円というあまりにも高価格の設定とそのニッチな需要から現在までこの実物を見たことがないのですヨ。当時の雑誌広告など資料は揃えましたがあのEffects Databaseにも未だ網羅されていない為、どなたかより詳細な本機の情報を求む(実際に使用した日野皓正さんや村岡建さんはもう忘れてるだろうなあ...)。今のところ、唯一の音源として残されているのは1970年に日野クインテットが手がけた東宝映画 '白昼の襲撃' のO.S.T.盤。そのタイトル曲である 'Super Market' (3曲目)から日野さんの吹くソロで影のように追従する蒸し暑いオクターヴトーンが聴けますけど、これはオクターヴのカットされた45回転シングル盤とは別テイクのミックスでO.S.T.盤でしか味わえない貴重な音源となります。当時、Yamahaトランペットのベル横側に付属のピエゾ・ピックアップPU-10(3,000円)を自ら穴を開け取り付けたことがジャズ誌で述べられておりました。

Ace Tone Mic Adapter MP-1

そのMulti-Voxと組み合わせて使うモノなのかは分かりませんが、Ace Toneから同時期発売されていたのがMic Adapter MP-1という2チャンネルのアクティヴDI(9V電池駆動)。入力ゲイン自体低く設定されておりH.I.、L.I.各々2つずつ計4つの入力があるなどミキサーとしての機能も備わっております。出力がバランスのXLRではなくアンバランスのフォンなのは古い時代ならではですけど(苦笑)、本機の使い方を考えてみれば管楽器のベルに立てたダイナミックマイクの収音をCh.1のL.I.、Multi-Voxからピエゾ・ピックアップで収音したものをCh.2のH.I.に入力してミックスするということでしょうか?。ちなみにわたしの所有品の出力ケーブルは柔らかかったです(笑)。さて、そのAce Tone随一の謎に迫るべく、'スイングジャーナル' 誌1969年3月号に掲載された座談会「来るか電化楽器時代! - ジャズとオーディオの新しい接点 -」から掲載します。こちらは4名の識者、'スイングジャーナル ' 誌編集長の児山紀芳氏、テナーサックス奏者の松本英彦氏、オーディオ評論家の菅野沖彦氏、そして当時Ace Toneことエース電子工業専務であった梯郁太郎氏らが 'ジャズと電気楽器の黎明期' な風景について興味深く語り合います。ここでの議論の中心として、やはり三枝文夫氏と同じく梯郁太郎氏もこの '新たな楽器' に対してなかなか従来の奏者やリスナーが持つ価値観、固定観念を超えて訴えるところまで行かないことにもどかしさがあったのでしょうね。しかし、この頃からすでに現在のRoland V-DrumsやAerophoneの原初的アイデアをいろいろ探求していたとは・・梯さん凄い!。また、管楽器とピエゾ・ピックアップの過剰なレスポンスに関する 'エレアコ' の含蓄ある話が聞けることも貴重です。



- 児山
今回の座談会は、去年あたりから市販されて非常に話題になっているエレクトリック・インストゥルメントとしてのサックスやドラムといったようなものが開発されていますが、その電気楽器の原理が一体どうなっているのか、どういう特性をもっているのか、そしてこういったものが近い将来どうなっていくだろうかといったようなことを中心にお話を聞かせていただきたいと思います。そこでまずエース電子の梯さんにメーカーの立場から登場していただき、それからテナー奏者の松本英彦さんには、現在すでにエレクトリック・サックスを時おり演奏していらっしゃるという立場から、菅野沖彦さんには、ジャズを録音していくといった、それぞれの立場から見たいろんなご意見をお伺いしたいと思うんです。

まず日本で最初にこの種の製品を開発市販された梯さんに電化楽器というものの輪郭的なものをお話願いたいと思うんですが。

- 梯
電気的に増幅をして管楽器の音をとらえようというのは、もう相当以前からあったんですが、実際にセルマーとかコーンとかいった管楽器の専門メーカーが商品として試作したのは3年ぐらい前です。それが2年ぐらい前から市販されるようになったわけです。

- 児山
これは結局いままでのエレクトリック・ギターなどとは別であると考えていいわけですか。

- 梯
ええ、全然別なんです。これらの電化管楽器が、ギターなどと一番違うところは、コードのない単音楽器だけができる電気的な冒険というのが一番やりやすいわけです。といいますのは、コードになった時点からの増幅段というのは絶対に忠実でなければならない。ところが単音というのはどんな細工もできるわけです。この単音のままですと、これはまだ電子音なんです。そこに人間のフィーリングが入って初めて楽音になりますが、そういった電気的な波形の冒険というのが、単音楽器の場合いろいろなことができるわけです。その一例として、オクターブ上げたり下げたりということが装置を使うと簡単に実現することができるんです。コードの場合はその一音づつをバラバラにしてオクターブ上げたり下げたりしてまた合接する・・これはちょっと不可能なわけですね。

- 児山
これら電化楽器のメリットというか特性的なことをいまお話し願いましたが、そこでいかにして電気的な音を出しているのかという原理をサックスに例をとってわかりやすくお願いしたいんですが。

- 梯
現在市販されているものを見ますと、まずマイクロフォンを、ネックかマウスピースか朝顔などにとりつける。そのマイクもみんなエア・カップリング・マイク(普通のマイク)とコンタクト・マイク(ギターなどについているマイク)との中間をいくようなそういったマイクです。ですからナマのサックスの音がそのまま拾われてるんじゃなくて、要するに忠実度の高いマイクでスタジオでとらえた音とはまったく違うものなんですよ。むしろ音階をとらえてるような種類のマイクなんです。音色は、そのつかまえた電気のスペースを周波数としてとらえるわけです。それを今度はきれいに波を整えてしまうわけです。サックスの音というのは非常に倍音が多いものですから基本波だけを取り出す回路に入れて今度はそれを1/2とか1/4とか、これは卓上の計算機のほんの一部分に使われている回路ですけど、こういったものを使ってオクターブ違う音をつくったりするわけですよ。これらにも2つのモデルがあって、管楽器にアタッチメントされている物ですと、むしろ奏者が直ちに操作できることを主眼に置いて、コントロール部分を少なくして即時性を求めてるものと、それから複雑な種々の操作ができるということに目標を置いた、据え置き型(ギブソンのサウンド・システム)といったものがあるわけです。

- 児山
これで大体原理的なことはわかりますが。

- 菅野
わかりますね。

- 松本
ところが、これから先がたいへんなんだ(笑)。

- 児山
じゃ、そのたいへんなところを聞かせてください。それに現在松本さんはどんな製品を・・。

- 松本
現在セルマーのヴァリトーンです。しかし、これどうも気に入らないので半年かかっていろいろ改造してみたんだけど、まだまだ・・。サックスは、サックスならではの音色があるんですよ。それがネックの中を通して出る音はまず音色が変わるんですね。それから、音が出てなくてもリードなどが振動していたり、息の音などが拾われて、オクターブ下がバァーッと出るんですよ。

- 梯
それはコンタクト・マイクの特性が出てくるわけなんです。

- 菅野
わずかでもエネルギーがあればこれは音になるわけですね。

- 梯
ですから、マウス・ピースに近いところにマイクをつけるほど、いま松本さんのいわれたような現象が起るわけなんです。かといって朝顔につけるとハウリングの問題などがあるわけなんです。

- 松本
ちっちゃく吹いても、大きなボリュームの音が出るというのは、サックスが持つ表情とか感情というものを何か変えてしまうような気がするねェ。一本調子というのかなあ。それに電気サックスを吹いていると少し吹いても大きな音になるから、変なクセがつくんじゃないかなんて・・。初めオクターブ下を使ってたとき、これはゴキゲンだと思ったけど、何回かやってると飽きちゃうんだね。しかし、やっぱりロックなんかやるとすごいですよ。だれにも音はまけないし、すごい鋭い音がするしね。ただ、ちょっと自分自身が気に入らないだけで、自分のために吹いているとイージーになって力いっぱい吹かないから、なまってしまうような・・。口先だけで吹くようになるからね。

- 児山
それもいいんじゃないですか。

- 松本
いいと思う人もありますね。ただぼくがそう思うだけでね。電気としてはとにかくゴキゲンですよ。

- 児山
いま松本さんが力強く吹かなくても、それが十分なボリュームで強くでるということなんですが、現在エレクトリック・サックスの第一人者といわれるエディ・ハリスに会っていろんな話を聞いたときに、エレクトリック・サックスを吹くときにはいままでのサックスを吹くときとはまったく別のテクニックが必要であるといってました。

- 松本
そうなんですよ。だからそのクセがついてナマのときに今度は困っちゃうわけ。

- 児山
だから、ナマの楽器を吹いているつもりでやると、もうメチャクチャになって特性をこわしてしまうというわけです。結局エレクトリック・サックスにはそれなりの特性があるわけで、ナマと同じことをやるならば必要ないわけですよ。その別のものができるというメリット、そのメリットに対して、まあ新しいものだけにいろんな批判が出てると思うんですよね。いま松本さんが指摘されたように音楽の表情というものが非常に無味乾燥な状態で1本やりになるということですね。

- 松本
ただこの電気サックスだけを吹いていれば、またそれなりの味が出てくるんだろうと思うんですが、長い間ナマのサックスの音を出していたんですからね・・。これに慣れないとね。

- 児山
やっぱりそういったことがメーカーの方にとっても考えていかなきゃならないことなんですかね。

- 梯
ええ。やはり電子楽器というのは、人間のフィーリングの導入できるパートが少ないということがプレイヤーの方から一番いやがられていたわけです。それがひとつずつ改良されて、いま電子楽器が一般に受け入れられるようになった。しかし、このエレクトリック・サックスというのはまだ新しいだけに、そういう感情移入の場所が少ないんですよ。

- 松本
ぼくが思うのは、リードで音を出さないようなサックスにした方がおもしろいと思うな。だって、実際に吹いている音が出てくるから、不自然になるわけですよ。

- 梯
いま松本さんがいわれたようなものも出てきてるわけなんですよ。これは2年前にフランクフルトで初めて出品された電気ピアニカなんですが・・。

- 松本
吹かなくてもいいわけ・・。

- 梯
いや吹くんです。吹くのはフィーリングをつけるためなんです。これは後でわかったのですが、その吹く先に風船がついていて、その吹き方の強弱による風船のふくらみを弁によってボリュームの大小におきかえるという方法なんです。ですから人間のフィーリングどうりにボリュームがコントロールされる。そして鍵盤の方はリードではなく電気の接点なんです。ですからいままでのテクニックが使えて、中身はまったく別のものというものも徐々にできつつあるわけなんです。

- 松本
電気サックスの場合、増幅器の特性をなるべく生かした方が・・いいみたいね。サックスの音はサックスの音として、それだけが増幅されるという・・。

- 菅野
いまのお話から、われわれ録音の方の話に結びつけますと、電子楽器というものは、われわれの録音再生というものと縁があって近いようで、その実、方向はまったく逆なんですよね。電子楽器というのは新しい考え方で、新しい音をクリエートするという方向ですが、録音再生というのは非常に保守的な世界でして、ナマの音をエレクトロニクスや機器の力を使って忠実に出そうという・・。というわけで、われわれの立場からは、ナマの自然な楽器の音を電気くさくなく、電気の力を借りて・・という姿勢(笑)。それといまのお話で非常におもしろく思ったのは、われわれがミキシング・テクニックというものを使っていろいろな音を作るわけですが、電子楽器を録音するというのは、それなりのテクニックがありますが、どちらかというと非常に楽なんです。電子楽器がスタジオなりホールなりでスピーカーからミュージシャンが音を出してくれた場合には、われわれはそれにエフェクトを加える必要は全然ない。ですからある意味ではわれわれのやっていた仕事をミュージシャンがもっていって、プレーをしながらミキシングもやるといった形になりますね。そういうことからもわれわれがナマの音をねらっていた立場からすれば非常に残念なことである・・と思えるんですよ。話は変わりますが、この電化楽器というのは特殊なテクニックは必要としても、いままでの楽器と違うんだと、単にアンプリファイするものじゃないんだということをもっと徹底させる必要があるんじゃないですか。

- 梯
現在うちの製品はマルチボックスというものなんですが、正直な話、採算は全然合ってないんです。しかし、電子楽器をやっているメーカーが何社かありますが、管楽器関係のものが日本にひとつもないというのは寂しいし、ひとつの可能性を見つけていくためにやってるんです。しかし、これは採算が合うようになってからじゃ全然おそいわけですよ。それにつくり出さないことには、ミュージシャンの方からご意見も聞けないわけですね。実際、電子管楽器というのは、まだこれからなんですよ。ですからミュージシャンの方にどんどん吹いていただいて、望まれる音を教えていただきたいですね。私どもはそれを回路に翻訳することはできますので。

- 菅野
松本さん、サックスのナマの音とまったく違った次元の音が出るということがさきほどのお話にありましたね。それが電子楽器のひとつのポイントでもあると思うんですがそういう音に対して、ミュージシャンとしてまた音楽の素材として、どうですか・・。

- 松本
いいですよ。ナマのサックスとは全然違う音ならね。たとえば、サックスの「ド」の音を吹くとオルガンの「ド」がバッと出てくれるんならばね。

- 菅野
そういう可能性というか、いまの電気サックスはまったく新しい音を出すところまでいってませんか。

- 梯
それはいってるんですよ。こちらからの演奏者に対しての説明不十分なんです。要するに、できました渡しました・・そこで切れてしまってるわけなんです。

- 菅野
ただ、私はこの前スイングジャーナルで、いろんな電化楽器の演奏されているレコードを聴いたんですが、あんまり変わらないのが多いんですね。

- 児山
どういったものを聴かれたんですか?。

- 菅野
エディ・ハリスとか、ナット・アダレーのコルネット、スティーブ・マーカス・・エディ・ハリスのサックスは、やっぱりサックスの音でしたよ。

- 梯
あのレコードを何も説明つけずに聴かせたら、電子管楽器ということはわからないです。

- 児山
そうかもしれませんが、さきほど菅野さんがおっしゃったようにいまそういったメーカーの製品のうたい文句に、このアタッチメントをつけることによってミュージシャンは、いままでレコーディング・スタジオで複雑なテクニックを使わなければ創造できなかったようなことをあなた自身ができる、というのがあるんです。

- 菅野
やはりねェ。レコーデットされたような音をプレイできると・・。

- 梯
これはコマーシャルですからそういうぐあいに書いてあると思うんですが、水準以上のミュージシャンは、そういう使い方はされていないですね。だからエディ・ハリスのレコードは、電気サックスのよさを聴いてくださいといって、デモンストレーション用に使用しても全然効果ないわけです。

- 菅野
児山さんにお聞きしたいんですが、エディ・ハリスのプレイは聴く立場から見て、音色の問題ではなく、表現の全体的な問題として電子の力を借りることによって新しい表現というものになっているかどうかということなんですが・・。

- 児山
そもそもこの電気サックスというのは、フランスのセルマーの技師が、3本のサックスを吹く驚異的なローランド・カークの演奏を見てこれをだれにもできるようにはならないものかと考えたことが、サックスのアタッチメントを開発する動機となったといわれてるんですが、これもひとつのメリットですよね。それに実際にエディ・ハリスの演奏を聴いてみると、表情はありますよ。表情のない無味乾燥なものであれば絶対に受けるはずがないですよ。とにかくエディ・ハリスは電気サックスを吹くことによってスターになったんですからね。それにトランペットのドン・エリスの場合なんか、エコーをかけたりさらにそれをダブらせたりして、一口でいうならばなにか宇宙的なニュアンスの従来のトランペットのイメージではない音が彼の楽器プラス装置からでてくるわけなんです。それに音という意味でいうならば、突然ガリガリというようなノイズが入ってきたり、ソロの終わりにピーッと鋭い音を入れてみたり、さらにさきほど松本さんがいわれたように吹かなくても音がでるということから、キーをカチカチならしてパーカッション的なものをやったりで・・。

- 松本
私もやってみましたよ。サックスをたたくとカーンという音が出る。これにエコーでもかけると、もうそれこそものすごいですよ(笑)。

- 児山
エディ・ハリスの演奏の一例ですが、初め1人ででてきてボサ・ノバのリズムをキーによってたたきだし、今度はメロディを吹きはじめるわけなんです。さらに途中からリズム・セクションが入るとフットペダルですぐにナマに切り換えてソフトな演奏をするというぐあいなんですよ。またコルトレーンのような演奏はナマで吹くし、メロディなんかではかなり力強くオクターブでバーッと・・。つまり、彼は電気サックスの持つメリットというものを非常に深く研究してました。

- 菅野
それが電化楽器としてのひとつのまっとうな方法なんじゃないですか。でも、あのレコードはあんまりそういうこと入ってなかったですよね。

- 児山
つまり、エディ・ハリスのレコードは完全にヒットをねらったものでして、実際のステージとは全然別なんです。また彼の話によると、コルトレーンのようなハード・ブローイングを延々20分も吹くと心臓がイカレちゃうというわけです(笑)。そしてなぜ電気サックスを使いだしたかというと、現在あまりにも個性的なプレイヤーが多すぎるために、何か自分独自のものをつくっていくには、演奏なり音なりを研究し工夫しなければならない。たとえば、オーボエのマウス・ピースをサックスにつけたりとかいろんなことをやっていたが、今度開発された電気サックスは、そのようないろいろなことができるので、いままでやってたことを全部やめてこれに飛び込んだというんですよ。

- 菅野
非常によくわかりますね。


- ハウリングもノイズも自由自在 -

- 児山
ラディックというドラム・メーカーが今度電化ヴァイブを開発して、ゲーリー・バートンが使うといってましたが、彼の場合は純粋に音楽的に、そのヴァイブがないと自分のやりたいことができないというわけですよ。なぜかというと、自分のグループのギター奏者が、いままでのギター演奏とは別なフィードバックなどをやると、ほかの楽器奏者もいままで使ってなかったようなことをやりだした。そういう時にヴァイブのみがいままでと同じような状態でやっているというのは音楽的にもアンバランスであるし、グループがエレクトリック・サウンズに向かったときには自分もそうもっていきたいというわけなんですよ。もしそれをヴァイブでやることができれば、どういう方向にもっていけるかという可能性も非常に広いものになるわけですよね。

- 梯
それから、いままでの電子楽器というのは、とにかくきれいな音をつくるということだけから音が選ばれた。ところが音の種類には不協和音もあればノイズもある。そのことをもう一度考えてみると、その中に音の素材になりうるものがたくさんあるわけです。たとえばハウリングですが、以前にバンクーバーのゴーゴー・クラブへいったとき、そこでやってたのがフィードバックなんです。スピーカーのまん前にマイクをもってきてそいつを近づけたり離したりして、そこにフィルターを入れてコントロールして、パイプ・オルガンの鍵盤でずっとハーモニーを押さえ続けてるようなものすごく迫力のある音を出すんです。そんなものを見て、これはどうも電子楽器の常識というものをほんとうに捨てないと新しい音がつくれないと思いましたね。

- 児山
そうですね。ですから、いまこういう電子楽器、あるいは楽器とは別なエレクトリックな装置だけを使って、ジャズだといって演奏しているグループもあるわけです。まあそれにはドラムやいろいろなものも使ったりするわけですが、いわゆる発振器をもとに非常に電気的な演奏をしているわけなんですよ。

- 松本
ただ音は結局電子によってでるんだけど、オルガン弾いてもサックス吹いても同じ音が出るかもしれない。弾いてる人の表情は違うけれども、そういうのがあったらおもしろいと思いますね。

- 菅野
それにもうひとつの問題は、発振器をもとにしたプレーは、接点をうごかしていくといった電子楽器と根本的に違うわけだ。電気サックスなどは、松本さんがいわれているようにナマの音が一緒に出てくるという。そこが問題ですね。だからナマの音も積極的に利用して、ナマの音とつくった音を融合して音楽をつくっていくか、それともナマの音はできるだけ消しちゃって電子の音だけでいくか・・。

- 児山
それはミュージシャン自身の問題になってくるんじゃないかな。たとえばリー・コニッツなどのようにだれが聴いてもわかる音色を持っている人は変えないですね。自分の音を忠実に保ちながらオクターブでやるとか・・。

- 梯
しかしその場合、音色は保ち得ないんです。つまりその人その人のフィーリング以外は保ち得ないんですよ。

- 児山
なるほど、そうすると音楽的な内容がその個性どうりにでてくるということなんですね。

- 菅野
一般に音というものはそういうものの総合なんで、物理的な要素だけを取り上げるのは困難なわけです。そういったすべてのものがコンバインされたものをわれわれは聴いているわけですから、その中からフィーリングだけを使っても、リー・コニッツ独特なものが出てくれば、これはやはりリー・コニッツを聴いてるわけですよ。

- 松本
それならいいけどサックスというのはいい音がするわけですよ。それをなまはんかな拡声装置だといけない。それだとよけいイヤになるんですよ。


- ついに出現した電気ドラム -

- 児山
ニューポートに出演したホレス・シルヴァー・クインテットのドラマー、ビリー・コブハムがハリウッド社のトロニック・ドラムという電気ドラムを使用していましたが、あれはなんですか。

- 梯
うちでも実験をやっています。ロックなどの場合、エレキのアンプが1人に対して200W、リードが200Wならベースは400Wくらい。そうなってくるといままで一番ボリュームがあったドラムが小さくなってきたわけですよ。最初はドラムの音量をあげるだけだったのですが、やってみるとマイクのとりつけ方によって全然ちがった効果が出てきたわけですよ。

- 菅野
それは具体的に各ドラム・セットの各ユニットに取り付けるわけですか。

- 梯
最初は単純に胴の中にマイクを取り付けただけでしたが、いまはコンタクト・マイクとエア・カップリング・マイクの共用でやっていますね。

- 菅野
シンバルなんかは・・。

- 梯
バスドラム、スネア、タム・タムにはついていますが、シンバルはちょっとむずかしいのです・・。でもつけてる人もいるようですね。

- 菅野
ではいまの形としては、新しい音色をつくろうとしているわけですね。

- 梯
そうですね。現在ははっきりと音色変化につかってますね。

- 松本
でもやはりこの電気ドラムとてナマの音が混じって出るわけですよね。ナマの音がでないようにするにはできないのですか。

- 梯
それはできるんですよ。市販はしてないんですが、ドラムの練習台のようなものの下にマイクをセッティングするわけなんですよ。いままでのドラム以外の音も十分でますがシンバルだけはどうもね。らしき音はでるんですが。

- 松本
いままでの何か既成があるからでしょう。

- 梯
そうですね。だからシンバルはこういう音なんだと居直ってしまえばいいわけ・・。それぐらいの心臓がなきゃね(笑)。

- 菅野
本物そっくりのにせものをつくるというのはあまりいいことではない。あまり前向きではないですよ。よくできて本物とおなじ、それなら本物でよりいいものを・・。

- 松本
だから電気サックスでも、ナマの音をだそうとしたんじゃだめですね。これじゃ電気サックスにならない。

- 梯
松本さんにそういわれるとぐっとやりやすくなりますよ(笑)。

- 児山
電気サックスというのはだいたいいくらぐらいなんですか?。

- 松本
ぼくのは定価85万円なんですよ。でもね高いというのは輸入したということですからね。そのことから考えると・・。

- 梯
松本さんの電気サックスはニューオータニで初めて聴いたんです。これは迫力がありましたね。

- 松本
すごい迫力です。でも、それに自分がふりまわされるのがいやだから・・。

- 梯
こちらから見たり聴いたりしていると松本さんが振り回しているように見えるから、それは心配いらないですよ(笑)。

- 松本
それに運ぶのがどうもねェ。いままではサックスひとつ持ってまわればよかった。ギターなんかじゃ最初からアンプを持って歩かなければ商売にならないとあきらめがあるんですが、ぼくはなにもこれがなくたってと考えるから・・。そういうつまらないことのほうが自分に影響力が大きい・・(笑)。

- 児山
やはりコンサートなどで、おおいにやっていただかないと、こういった楽器への認識とか普及とかいった方向に発展していかないと思いますので、そういう意味からも責任重大だと思います。ひとつよろしくお願いします。それに、いまアメリカあたりでは電子楽器が非常に普及してきているわけなんですよ。映画の音楽なんかも、エレクトリック・サウンズ、エレクトリック・インスツルメントで演奏するための作曲法なんていうのはどうなるんですかねェ・・。

- 松本
これがまたたいへんな問題ですが、非常にむずかしいですね。

- 児山
それがいまの作曲家にとって一番頭のいたいことになってるんですね。

- 菅野
あらゆる可能性のあるマルチプルな音を出しうる電化楽器が普及すれば、新しい記号をつくるだけでもたいへんですね。

- 松本
そのエレクトリック・インスツルメントのメーカーだって指定しなければならないし・・。作曲家もその楽器も全部こなさなきゃならないですからね。

- 児山
そのように色々な問題もまだあるわけなんですが、現実にはあらゆる分野の音楽に、そしてもちろんジャズの世界にも着々と普及してきつつあるわけなんです。この意味からも電化楽器の肯定否定といった狭い視野ではなく、もっと広い観点から見守っていきたいですね。




ちなみにこの '心境' というのをコンパクトペダルを例にとって説明するなら(笑)、そもそもギターやベースで使うことを前提に設計されたこのペダルというヤツはソレでやれる機能というものが限定されているんです。つまり、この手の分野でも特にニッチな需要である '飛び道具' 系ペダルというのはそれが端的に示されている。ソレが10の機能備えているとして10そのままツマミを振り切ってしまえばあっという間に消費する、そしてなんだこの程度か、使えないよなという至極ごもっともな感想に辿り着いてしまう...。いやいや、そりゃそうでしょう。ソレを10じゃなく半分の5で使ってみよう、ソレを一瞬踏んでみよう、例えばメインの楽器があるとしてソレをメインじゃなくバックグラウンドに控えめで使ってみよう...段々、何を言っているのかよく分からなくなってしまいましたが(汗)、いま目の前にあるモノから紡ぎ出されるものはそれほど必死にならなくてもいろんなサウンドがあるよ、ということなんですヨ。まだ自分にとって観念的な話なんでそれこそ '絵に描いた餅' 状態なんですけど、これも私的音楽の二大インフルエンスであるジャズとダブから受け取った '隔世遺伝' 的なお話。ただ、スティールパンとBuchla Music Easelシンセサイザー、ループサンプラーを揃えたことで具体的な '地図' は見えてきたと思っております。さて、そんな御託などどうでも良いとばかりに、ハープを 'アンプリファイ' にして 'グリッチ系ペダル' ばかりアプローチすることで人気を博すEmily Hopkins姉さんによる安定のペダルレビュー。











このように空間的な音響効果はダブ的アプローチの '飛び道具' として必須ということで、大きなミキシング・コンソールと共に手に入れておきたいのが '3種の神器' ともいうべきスプリング・リヴァーブ、ディレイ、フィルターであります。サウンドをリアルタイムに生成していく上で重要な '一筆書き' のデザインに威力を発揮する絵筆こそ、これら '3種の神器' に求められる特性であり各々の個性を発揮する場でもあります。単なる道具を超えてサウンドを支配する '声' にまで高められるダブの魔力...。スペインでダブに特化した機器を専門に製作するBenidub Audioは、現在の市場に本場ダブの持つ原点ともいうべき音作りを開陳するべく貴重な存在。すべては '目の前にある' 反復した音のミキシング・コンソールによる '抜き差し' から、ライヴとレコーデッドされた素材を変調するために '換骨奪胎' する・・これぞダブの極意なり。














こちらはリアルタイムなダブの音響操作で活用したいと目論んでいる 'サイドチェイン' に特化した音作りの珍品、Neon EggのPlanetariumとRainger Fx Minor Concussionの2種。この怪しげなガレージ工房によるPlanetariumも基本設計はそのままに 'Ver.3' までアップデートされておりますが本機は、コンプレッサーをベースにステレオ・リヴァーブとコーラス・エコーを組み合わせた複合機能と共にVCAによる 'シンセサイズ' として孤高の存在です。そこから生成されるサウンドはAttack、Release、Ratioに加え、優秀なサイドチェイン・コントロールで 'ダッキング' による音作りを約束。わたしの所有品はレアな 'Ver.1' ですが、これも 'Ver.2' で従来のデュアル・モノからリアル・ステレオ仕様となりDC9VからDC15Vに上げられることでよりヘッドルームの広いコンプレッションを実現します。そして2つのリヴァーブとコーラスから3つの異なるアルゴリズムを選択して、Sizeツマミは2つのリヴァーブ・サイズとホール・リヴァーブを追加。EchoセクションはMix、Time、Feedbackに加えてモジュレーションの部分で正弦波と方形波の選択と共にワウフラッター的不安定な揺れまでカバーします。ちなみに本機に先駆けて同種の効果を製品化したものとして、英国の 'マッド・サイエンティスト'  である奇才David Rainger主宰の工房、Rainger FxからMinor Concussionがありまする。基本的なトレモロのほか、外部CVや付属のダイナミック・マイクをトリガーにした ' サイドチェイン' でVCAと同期させてReleaseによるエンヴェロープを操作できるなどかなりの '変態具合' です。そんな本機の後継機としては現在、同工房からより小型化したマイナーチェンジ版のDeep Space Pulserが用意されております。さあ、手許にある各種リズムボックスやスティールパンからトリガーでディレイやリヴァーブと組み合わせてみよう。


さて、そんなスティールパンと相性の良いヴォコーダーといえばやっぱり欲しいのはKorg往年の名機、VC-10 Vocoder。本機特有のザラついてモワッとした質感は例えば同時代のRoland VP-330に比べてとても太刀打ちできないチープなものだけど、逆にそのローファイさ加減が本機でしか出ない唯一無二のヴォイスを生成します。ちなみにわたしの所有物は英国のコレクターから入手したもので電源部と音声ボードに手が入っており、4558デュアルオペアンプへの交換、音声認識を向上するための重要な4バンド(17Hz〜20kHz)の帯域モディファイがなされております。これでオリジナル特有の篭り具合から大幅なアップグレードを達成しました。そして本機の人気を決定付けたのが、坂本龍一教授1979年の傑作 '千のナイフ' 冒頭でヴォコードされる毛沢東の詩でしょう。教授自らフランシス・レイからの影響を促すようなコードの響きに新たな電脳都市 'TOKIO' 到来を夢見たのはわたしだけじゃないハズ(笑)。そんな偉大な才能ももういなくなってしまったんだよな...(涙)。これらの音声合成による 'スピーチシンセシス' には、古くはトークボックスからヴォコーダーにやられちゃったYMO世代にAntares Audio Technologies Auto-Tuneから始まったケロケロヴォイスなど、リアルタイムに音声を加工することへの関心は過去から一貫して引き継がれております。なんとMoogは16チャンネルのヴォコーダーまで復刻させてしまいました...(そんな需要あるのか!?)。このような '加工サウンド' 全盛のなか、この椎名林檎によるケロケロヴォイスのリアルタイム処理はRolandのVT-4かな?。







さて、ダブと東京が先鋭的なカタチで交差した瞬間を捉えたという意味ではもう一度、時計の針を1980年の 'TOKIO' に巻き戻さなければなりません。アフリカ・バンバータの 'Planet Rock' ?ハービー・ハンコックの 'Rockit' ?マントロニクスの 'Bassline' ?サイボトロンの 'Clear' ?いやいや、YMOの '頭脳' ともいうべき '教授' ことRiuichi Sakamotoにご登場頂きましょう。ここでは 'ニューウェイヴ' の同時代的なアティチュードとして、最もとんがっていた頃の '教授' がブチかましたエレクトロ・ミュージックの 'Anthem' とも言うべきこれらを聴けば分かるはず!特に 'Riot in Lagos' のデニス・ボーヴェルによるUK的 メタリックなダブ・ミックスが素晴らしい。1980年はYMO人気のピークと共にメンバー3人が '公的抑圧' (パブリック・プレッシャー)に苛まれていた頃であり、メンバー間の仲も最悪、いつ空中分解してもおかしくない時期でした。そんなフラストレーションが '教授' の趣味全開として開陳させたのが、ソロ・アルバム 'B-2 Unit' と六本木のディスコのテーマ曲として制作した7インチ・シングル 'War Head c/w Lexington Queen' におけるダブの 'ヴァージョン' 的扱い方だったりします。名機Prophet 5によるガムラン風な音色からスティールパンでも挑戦してみたい一曲なんですが、この 'Riot in Lagos' をカバーするラッパ吹き、出て来ないかなー?。さて、そんな 'B-2 Unit' 制作のきっかけとなったのが当時、吉祥寺に構えていたレコード店 'ジョージア' の店主であった後藤義孝氏との出会いからでした。その後藤氏を中心に 'No New York' から触発されたかのように立ち上げたインディレーベルがPassであり、そのレーベルからデビューしたのが異才のニューウェイヴ集団であったGunjogacrayon(グンジョーガクレヨン)。坂本教授をして 'リアルタイムダブ・ギタリスト' と言わしめ 'B-2 Unit' にも参加した組原正氏を中心に、まるでオーネット・コールマンのプライムタイム・バンドを思わせるカテゴリー不能のアルバムは、教授自ら 'ダブ・ミックス' まで手がける(フラッとスタジオにやって来て勝手にダブミックスやってたらしい)ほどの異才を放っております。そういや両作品のジャケットの '色味' までよく似てる(笑)。





一昨年はRolandのSP-404 Mk.Ⅱ、そして去年の暮れにKorgから定番のKaossPadに新たなサンプラーとしての機能を強化したKaoss Replayなどが登場しましたが、ガジェット的なDAWとして大きな話題となったTP-1のTeenage EngineeringのEP-133 K.O. Ⅱ。まるで一昔前の電卓を思わせる懐かしいスタイルに感圧センサーt多機能フェーダーを駆使して46kHz/16Bitの強力なサンプラーとシーケンサーを搭載、ステレオ6ヴォイス/モノラル12ヴォイスで64MBのメモリーに999のサンプル・スロット、ステレオエフェクツにより多彩な音作りを約束。また、このブランドでお馴染みマイクとスピーカーを内蔵してどこでも気軽に持ち出せるモバイル性も発揮します。







リアルタイムでモジュラーを中心としたポップな音作りとしては、中華圏のYoutuberらしいですけどJeanieさんを推したいですけどね(笑)。Music Easel弾きながらフォークトロニカ風ポップで歌うJeanieさんの即興的音作りはもちろん、ポップ・ミュージックとして成立しているのが素晴らしい。モジュラーシンセ は 'CV/Gate' の電圧制御でどのようにコントロールするかにより、その剥き出しのノイズをどう '手懐けていく' かが醍醐味のひとつ。モジュールは絵の具、オーディオの変調を超えてキャンバスに絵筆を滑らせるめの 'デザイン' をどう生成していくかが重要なのです。動画のコメ欄読むとビョークっぽいという意見や素晴らしい、連絡くれー、みたいな業界人っぽいアプローチも散見されておりますが、誰かフックアップして上げれば良いのにな。どれも再生数があまり伸びてないのは残念(本人はマイペースで楽しくやってる模様...笑)。




さて、こちらは変わらずひとり大量のペダルと共にコツコツとやっているDennis Kyzerさん。いつも 'Effects Database' やネットの前を陣取り世界の片隅にある小さな工房の製品をチェック、収入のほとんどをこーいうガジェットに注ぎ込むマッドな 'ペダル廃人' ではないか?と想像するのですが、できましたら一度、彼の 'お宅拝見' 的にそのマッドな環境を公開して頂きたい(笑)。しかし最近はギリギリまで個々のペダルレビュー動画を上げてるからなのか、'Best Pedal' 動画の更新が年明けなんだよなあ...。これまでの一貫したスタンスだった 'ペダル廃人' から実は 'リア充' のバカンス満喫してんじゃないか!?。(追記。どうやら今年から単発動画視聴向上?のためなのか前年のランキング動画はヤメた模様...悲しい)。

 

 



 



そんなオタクなDennisさんから一転、デンマークから発信するThe Pedal ZoneさんはむしろSNSの恩恵をたっぷりと使ってメーカーと提携、オサレに世界各国のペダルをレビューしている感じがありまする。何か編集など、以前に人気を博していたPro Guitar Shopの動画あたりを参考にしてギタリストが望む情報を上手く掴んでますね。ちなみに同様のスタンスでは、カナダから発信するKnobsさんがエレクトロニカ限定ながらオサレな動画でレビューしているというイメージがあります。ここ数年は年越し後の更新が多かったけど今回はクリスマス前に動画が上がってきましたヨ!。




こちらも地道にコツコツ動画を上げていたTri Pedal Reviewさんの動画も2023年でもう3本目。最近はエンタメ的な喋りの内容であったりコラボなど単なる 'ペダル・レビュー' 以上の面白い動画が人気を集めておりますけど、この方はDennis Kyzerさん同様にペダルのスペック的なものに焦点を当てて淡々と紹介しているのが好感度大。ああ、エンタメ的なサービス精神よりペダルそのものが大好きな 'ペダル廃人' なんだなあ、って(笑)。









元PGS(Pro Guitar Shop)の名物レビューギタリストであったAndyが担当するReverb.comの '2023年ベストペダル' Top 5。しかし、誰かのコメントで "海外のAndy、日本の村田善行さん(フーチーズ)" と言っていたのを見かけたけどなるほど、なかなか旨い表現です(笑)。そして、Reverb.comのプロデュースで制作されたドキュメンタリー映画 'The Pedal Movie' も挙げておきましょう。これは日陰のようなこの業界に携わる人たち、ペダルの歴史に焦点を当てた素晴らしい内容でしたね。一方、続々と新興の工房が参入している昨今の状況でついつい見落としちゃいますが忘れちゃいけない、マイク・マシューズ御大率いる老舗 'エレハモ' のペダル群がもたらした革命的イノベーションをどーぞ。そして去年、ようやく状態良好の貴重なMicro SynthesizerのVer.1を2台手に入れたぜ!。このCTS社製の10本からなるロングスライダーも渋いデイヴィッド・コッカレルの傑作!。




2023年のリヴァーブ、ディレイを紹介する動画4本。ここ近年のコンパクトな空間系、特にリヴァーブの高品位な質感と奥行きは、もはや一昔前のマルチラックに搭載されていたアルゴリズムを凌駕するようなレベルが足下に置けるかと思うと感慨深いものがありまする(涙)。そんな数あるエフェクターの中でも '空間系' と呼ばれるものは地味にやっかいだ。いや、フツーにポンとスイッチを踏み、ディレイやリヴァーブの効果を現すツマミを回していけば気持ちの良い残響を付加してくれる管楽器の強い '相棒'。しかし、実際はライヴなどの会場における環境、またはバンドというアンサンブルの中で決定されるテンポなどにより、それらを使う前段階である程度の 'チューニング' を施しておく必要があるのです。楽曲ごとに違うテンポを合わせるべく、数値とタップテンポで決めたディレイタイムをプリセットして瞬時に呼び出すのが基本的な使い方。ここ最近の複数プログラム、MIDIに対応した機種に人気が集まるのは、まさにそんなライヴにおけるリアルタイム性を重視した結果でしょうね。







さて、そんなラックの空間系ディレイといえば1980年代を代表するふたつの名機、Roland SDE-3000とTC Electronic 2290が各々コンパクトな空間系マルチとして蘇りました!。ここに一足早くコンパクト化してそのまま 'ディスコン' から中古市場で高騰の対象となっているKorg SDD-3000 Pedalまで加えれば、往年の80's初期デジタル・ディレイの '質感' を誰もがお手軽に所有することが可能となったのは嬉しいですね。むしろ、ここまできたら1970年代後半に登場した数ある初期デジタル・ディレイの中の '迷機'、MusitronicsのMu-Tron Digital Delay Model 1173のペダル化を血迷ってマイク・ビーゲルがやらないかな?(笑)。









久しくこの 'Youtuber' Aldoさんの動画を見ていなかったんですが、久々に見返してみればやはりいろんなコトがハッキリとしてきます。それは、大仰なシンセサイザーなど持ち出さなくとも自身で吹くラッパからレコード盤などあらゆる外界に溢れる 'ノイズ' として採取、それを元にあれこれ 'サンプル' として弄っていく醍醐味こそサンプラーという機器で '目の前の音' と戯れることに直結します。まさにリアルタイムで目の前のテクノロジーから '取り出していく' 行為のダブが持つ審美眼と同等のものであり、そのまま音楽の取っ掛かりは何だって良いんですヨ。






このまったりとしたエレクトロニカ感を軸にして短い時間の中でちゃんと展開もある。動画ではそのAeros Loop StudioとDigitektの組み合わせを 'マルチトラック' の中心として、そこにEmpress Effects ZoiaやHologram ElectronicsのMicrocosm、Elektron Octatrackといった絶妙のスパイスでループに味付けするなど機材のチョイスが素晴らしい。何よりAldoさんの選んでくるコードセンスが単調なループから楽曲としての色彩を引き出します。洪水のような情報を前にして音楽との新たな '付き合い方' のひとつをこのAldoさんのアプローチから教えられた気持ちですね。

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