2019年3月5日火曜日

東京 'イエローマジックショウ'

"T・E・C・H・N・O・P・O・L・I・S........TOKIO!" わたしが小学生の頃に流行したもののひとつにYMOことイエロー・マジック・オーケストラがあります。いやあ、ピコピコピュ〜ンというシンセサイズされたサウンドが1980年の東京のBGMとして本当にハヤったなあ。





わたしもこれを聴いて育った1990年代以降の 'ベッドルーム・テクノ' 世代が体験したこととほぼ同義で、当時流行したインベーダ・ゲームの 'ピコピコ' サウンドの延長で耳に付き、子供心にヴォコーダーの未来的なトーンとハリウッド映画 'スターウォーズ' やアニメ '機動戦士ガンダム' のSF感覚、そして何でか、TVドラマ '西遊記' でのゴダイゴが主題歌を担当した '中華ライク' なエキゾ感覚もゴッチャになってる(笑)。わたしよりもうちょっと上の世代ならディスコからフュージョン、ニューウェイヴの感覚でハマっていたことも加味されるでしょうね。











YMOというといわゆる 'テクノポップ' のピコピコした未来的なトーンに耳が行きますけど、実は元々のコンセプトのひとつに無国籍なエキゾ感覚の '復権' があったと思うのです。これは米国から見るアジアやアフロの '間違った' 感覚のさらにアジア人による自虐的な毒というか、北京交響楽団から人民服(実際は戦前の国民スキー服らしい)やジャン・リュック・ゴダール監督作品の '中国女' など、ある種スノッブな '中華趣味' に至るまで誤解されたパロディのような感覚。その発起人にして '主犯' である細野晴臣さんは小学生たちがYMOを '駄菓子' のように貪り、自分たちを追っかけの対象として狂っていくのを見て戦慄したそーですヨ(苦笑)。それは、このYMOの遥か昔に流行した 'エキゾティック・サウンズ' の大家マーティン・デニーの 'Firecraker' をカバーしたことにも象徴されますね。'四畳半の楽園' を構築すべくある種のヴァーチャルな関係を結ぶことで物見遊山する 'エキゾ' とは、そのまま現在の 'ネット・サーフィン' することと同義であり、すでに本物とニセモノの境界など分からない人工的な '体験' に取り憑かれてアクセスすることだと思うのです。







さて、そんな 'エキゾ趣味' を 'テクノポップ' で蘇らせる一方で、当時、新たに台頭してきたヒップ・ホップの '解釈' の原点という意味ではもう一度、時計の針を1980年の東京に巻き戻さなければなりません。アフリカ・バンバータの 'Planet Rock' ?ハービー・ハンコックの 'Rockit' ?マントロニクスの 'Bassline' ?サイボトロンの 'Clear' ?いやいや、YMOの '頭脳' ともいうべき '教授' ことRiuichi Sakamotoにご登場頂きましょう。ここでいうヒップ・ホップとは(テクノ含めた)同時代的なアティチュードのことであり、それは、最もとんがっていた頃の '教授' がブチかましたエレクトロ・ミュージックの 'Anthem' と言うべきこれらを聴けば分かるはず!特に 'Riot in Lagos' のデニス・ボーヴェルによるUK的 'メタリック' なダブ・ミックスが素晴らしい。この1980年はYMO人気のピークと共にメンバー3人が '公的抑圧' (パブリック・プレッシャー)に苛まれていた頃であり、メンバー間の仲も最悪、いつ空中分解してもおかしくない時期でした。そんなフラストレーションが '教授' の趣味全開として開陳させたのが、ソロ・アルバム 'B-2 Unit' と六本木のディスコのテーマ曲として制作した7インチ・シングル 'War Head c/w Lexington Queen' におけるダブの 'ヴァージョン' 的扱い方だったりします。











いわゆる 'テクノポップ' の寵児として、史上稀に見るバブル期へと向かう 'Tokio' の原風景を描き出したYMO。しかし、その三者三様のバックグラウンドの違いがもたらす '引き出し' の広さこそ、現在に至るまで多くの '信者' を生み出す要因ではないかと思うのです。このYMOの感覚を現代に蘇らせたものとしては、高橋幸宏さんを中心に 'ベッドルーム・テクノ' 世代が引き継いだMetafiveを挙げなければなりませんね。あの活気と浮かれていた熱狂から40年近く経ってやってくる 'Tokyo 2020'・・東京の風景も人間も大きく変化しました。







個人的にYMOの元々のコンセプトである 'エキゾ感覚' という意味では、細野晴臣さん作の '南国趣味' 全開な 'Simoon' のような曲が生き残る気がしているのです。このモロにラテン一色なセニョール・ココナッツのカバーも素晴らしいけど、Youtubeで出会ったこのCMOことChiba MOというYMOカバーバンドの 'Simoon' が最高!多分 'YMO愛' が高じてやられている趣味人バンドなんだと思うのだけど渋い選曲はもちろん、アレンジ含めクオリティが高いというか、これはMetafive共々ちゃんと今の時代の音で鳴っておりますヨ。しかしこのYMOという稀有なユニット、そんな電脳都市 'Tokio' が史上最大のバブルへと向かう直前の1983年に '散開'・・。ホント、彼らの過ぎ去って行った '季節' が日本のポップ・ミュージック・シーンに与えた影響は大きかったのだ。

2019年3月4日月曜日

改稿: フィルター '変態' の掟

フィルター系ってエグいエフェクターの代名詞ながら、意外にもワウペダルほどにはギタリストが積極的に手を出す分野ではなかったりします('ジミヘン' の呪縛か?)。いわゆる 'オートワウ + アルファ' な性格もあってか、むしろベーシストとの親和性が高いようにも思えますけど、しかしベーシストもアンサンブルの土台をキープする役目ゆえ、こーいう '飛び道具' をバンドに持ち込んでくるのはほぼご法度状態(笑)。そういう意味では定期的に新製品が市場に現れるものの、一体どこで活躍しているのか皆目見当がつかない謎のアイテムだったりするのですヨ。









Filters Collection

一方でエフェクター製作者にとっては、ほぼ飽和状態のこの業界において好き勝手あれこれ機能てんこ盛り、ハイブリッドに色々な音作りの出来る 'ストレス発散!?' 的アイテムなんじゃないかと想像します。往年の名機復刻、もしくはそれらの 'プラス・アルファ' な代わり映えのしないペダルばかりの状況に風穴を開ける 'ニッチな' 分野。例えばZ.Vex Effectsの大ヒット作であるFuzz Factoryの '発振' ツマミの如く、元々のファズとしての評価を得ながら誰が喜ぶか分からない設計者のちょっとしたイタズラというか(笑)、ある意味で奏者に叩き付ける遊び心たっぷりの '挑戦状' のようにも受け取れるのです。


'フィルター話' に突入する前にわたしの現在の足元に収まっている '手のひら' ワウの先駆、シンガポールのガレージ工房が手がけたPlutoneium Chi Wah Wah。光学式センサーによる板バネを用いたワウペダルで通常のワウとは真逆の踵側をつま先で 'フミフミ' して操作します。専用のバッファーを内蔵して0.5秒のタイムラグでエフェクトのOn/Off、そして何より便利なのがワウの効果をLevel、Contour、Gainの3つのツマミで調整できるところ。特別、本機にしか出てこない優れたトーンを持っているとは思いませんが、基本的なワウのすべてをこのサイズで実現してしまったものとして重宝しております。ワウの周波数レンジは広いものの、ペダルの踏み切る直前でクワッと効き始めるちょっとクセのあるタイプ。また、2010年の初回生産分のみエフェクトOn/Offのタイムラグが1.1秒かかる仕様だったので、中古で購入される方はご注意下さいませ(2010年10月以降は0.5秒仕様)。本機はペダルボードの固定必須で使うことが安定する条件となり、普通に床へおいて使うと段々と前へズレていきます。個人的にはその踵側を踏む姿勢から、立って踏むより座って踏んだ方が操作しやすいですね。ちなみに上記のリンク先にあるPlutoneiumのHP、ええ、アジア色全開の怪しいサイトではございません(笑)。





Solidgold Fx Funkzilla ②
Solidgold Fx ①

さて、この手のフィルター系の代表的なものにエンヴェロープ・フィルターがあります。元祖であるMusitronics Mu-Tron Ⅲとその 'フォロワー' モデルはもちろん、'エレハモ' のカタログには実に多彩なフィルター系がラインナップされており、そんなMu-Tronのオリジナル設計者マイク・ビーゲルが手がけた 'エレハモ' の歪み内蔵フィルターRiddle。そしてカナダの工房Solidgold Fxの多目的なエンヴェロープ・フィルターFunkzilla。'電気ラッパ' の伝道師としてYoutubeでその啓蒙に頑張るJohn Bescupさん推薦の動画まであり、あまり楽器店の店頭では見かけない工房のものですがAmazonで気軽に入手可能。本機は基本的なエンヴェロープ・フィルターの機能を押さえつつここ最近のトレンド、タップテンポを装備してフィルター・スウィープからランダマイズのリズミックな効果に威力を発揮します。







Mu-Fx (by Mike Beigel) Tru-Tron 3X (discontinued)
Mu-Tron Micro-Tron Ⅲ
HAZ Laboratories Mu-Tron Ⅲ+

そんな '70'sオートワウ' の代表格、Mu-Tronがオリジナル設計者マイク・ビーゲルの手で復刻されました。これまでMu-Tronの '復刻' といえば元Musitronicsで働いていたエンジニア、ハンク・ザイジャックの手がけるMu-Tron Ⅲ+が有名ですけど、個人的にはオートワウにありがちな音痩せもなく太い質感と絶妙なかかり具合で良いものながら、なぜかオリジナルの設計者であるビーゲル氏からは随分と貶されておりました(苦笑)。そのビーゲル氏が 'エレハモ' の各種フィルター機を手がけながら自らの 'Mu-Tron復活' を目論んで登場させたのがこのTru-Tron 3XとMicro-Tron Ⅲ。やはりローパス・フィルターによるパウッ、ポワッとしたふくよかなフィルターの質感こそ '元祖Mu-Tron' ならでは、と思いますねえ。







Zorg Effects Love Philter ①
Zorg Effects Love Philter ②
Zorg Effects Zorgtaver ①
Zorg Effects Zorgtaver ②
Zorg Effects

昨日ご紹介した 'インサート付き' マイク・プリアンプBlow !により管楽器奏者の注目を集めるフランスの工房、Zorg Effectsですがその他、いろいろと面白いペダルをラインナップしております。特に管楽器向きと言えるのがエンヴェロープ・フィルターのLove Philterでして、通常の 'オートワウ' とエクスプレッション・コントロールはもちろん、CV入力を備えることでVCFに対して同期、変調のコントロールまで対応します。動画を見てもお分かりのようにエンヴェロープ・フォロワーの反応とVCFのレンジがかなり幅広い音作りに対応しているのが嬉しいですねえ。そしてこのLove Philterと一緒に使って欲しいのがオクターヴ・ファズ・フィルターのZorgtaver。いわゆるオクターバーなのですがエンヴェロープ・フォロワーも内臓しているようで、さらに本機の内部 'インサート' にLove Philterを繋ぐことでほとんど 'ギターシンセ' 的アプローチにまで対応!トランペットによる動画もありますが、なかなかオクターヴのトラッキング(追従性)が良いなあ。





Jacques Trinity - Filter Auto & Classic Wah
Eleven Electrix Human Sensor Wah

エンヴェロープ・フィルターの 'ヴィンテージ・ワウ' を意識した変わり種として、こちらもフランスの工房Jacquesから登場した 'Filter Auto & Classic Wah' のTrinity。エンヴェロープ・フィルターの中には外部エクスプレッション・ペダルを繋げることでペダル操作できるものもあるのですが、本機はエンヴェロープ・フィルターと 'ヴィンテージ・ワウ'、モジュレーション的フィルタースウィープな多機能を備える '三位一体'。ユニークなのはそのエクスプレッション・ペダルとして唯一無二なポンプ式の 'フミフミするヤツ' が付いてくること!コレ、多分この工房独自のアイデアなんじゃないかと思いますが、感触としては少々硬めで 'グリグリ' っとポンプの奥の方にスイッチがある感じ。見た目でパフパフするイメージ持っていると裏切られますけど(笑)、そんなに強く踏まなくてもちゃんとワウとして機能しますので好奇心旺盛な方はどーぞ。ちなみに、その '飛び道具' 的仕様に反して音色はオーソドックスなワウですね。そんな 'ポンプ式' の一方、イタリアのEleven Electrixからは 'テルミン・ワウ' ともいうべき踵支点の 'エア操作' でワウワウさせるHuman Sensor Wahがあります。同種のものとしてZ.Vex Effectsから銅板のカッパーアンテナを用いたWah Probeというヤツがありましたが、このHuman Sensor Wahもなかなかに楽しくもエグい感じ。ドヤ顔のオヤジによる動画が少々鼻に付くけど(苦笑)、その奇抜な発想からなかなかワウペダルの牙城を崩すことは出来なかったよーです(悲)。







Toshinori Kondo Equipments
Boss SY-300 Guitar Synthesizer

我らが '電気ラッパの師' ともいうべき近藤等則さんもまさに 'ワウ&フィルターマニア'。ラッパを電化した1979年から現在まで多様なペダルをあれこれ入れ替えております。印象的なのはIMAバンド後期のBoss PW-1 Rocker WahからMorleyのワウ、その後Musician Sound Disign(MSD)のSilver Machineといった比較的大柄なペダルを用いながら、現在はFulltone Clyde WahやRMCのPicture Wahといったクラシックなヤツをあれこれ踏んでおりまする。また、エンヴェロープ・フィルターの使用もお盛んで(笑)、Menatone The Mail BombやEmmaのDiscumBOBlatorなどを複数踏みながら現在はMaxon AF-9 Auto Filterでほぼ固定。そしてBossの 'ギターシンセ' SY-300がコンドーさんの新たなトーンとして加わっているのが見逃せないですねえ。







WMD Protostar ①
WMD Protostar ②

●Attack
エンヴェロープが信号に反応する速さを調整。このツマミでAttackとReleaseの両方をコントロールします。
●Threshold
信号に対してエンヴェロープが反応する敏感さを調整。
●Env Amt
エンヴェロープがフィルターの周波数にどの程度影響するかをコントロールするアッテネーターです。正負両方の設定が可能。
●Resonance
フィードバックやQと同様の意味を持つコントロール。カットオフ周波数周辺のブーストを調整します。
●Freq
フィルターのカットオフ周波数を設定します。
●LFO Rate
前うLFOのスピードを調整します。
●LFO Amt
LFOがフィルターの周波数にどの程度影響するかをコントロール。
●Compression
信号の最終段にあるコンプレッションの強さを調整。余計な音色や共振を抑えるために使用します。
●Dry / Wet
エフェクト音に原音をミックスします。
●Mode
本体の動作モードをボタンで切り替えます。4つのモードは上からノッチダウン、ハイパス、バンドパス、ローパスです。
●Send / Return
外部エフェクトループ。フィルターの前段に設置したいエフェクトを接続します。
●CV / Exp
エクスプレッションペダルを電圧制御(CV)でコントロール。この端子はExp Outに直結します。TRSフォン使用。
●Sidechain
エンヴェロープ・フォロワーへのダイレクト入力です。外部ソースを使用してエンヴェロープ・フォロワーをコントロール。
●Exp Out
CV / Exp入力の信号を出力します。ここからエクスプレションペダルで操作したいソースへと接続。
●Env Out
常時+5Vを出力し、エンヴェロープがトリガーされると0Vになります。
●LFO Out
トライアングルウェーブのLFOを出力します。スピードはLFO Rateでコントロール。
●LFO Rate
LFOのスピードをコントロールするためのCV入力。
●LFO Amt
LFO Amtコントロールを操作するためのCV入力。
●Freq
カットオフ周波数を操作するためのCV入力。
●Feedback
レゾナンスを操作するためのCV入力。

やはり挙げねばならないWMD究極のエンヴェロープ・フィルター、Protostar。現在このWMDを始め、それまでコンパクト・エフェクターを製作していた工房がこぞって 'ユーロラック・モジュラーシンセ' の分野に参入しているのですが、そのノウハウが本機Protostarにギュッと詰め込まれていると言えます。まずは本機内でEnv OutやLFO OutをLFO RateやLFO Amt、Freq、Feedbackにパッチしてみても 'プチ・モジュラー気分' を味わえるのでパッチングしてみましょう。さらに面白いのは本機に 'Send / Return' が備えられているので、ここに同じくCVを備えたエフェクターを繋げばさらに凝った音作りが可能な点。どうでしょう?単純ながら単体のエフェクターだけで音作りするのとは違う複雑な効果が聴こえて来ませんか?







Pigtronix Mothership 2 ①
Pigtronix Mothership 2 ②
Pigtronix Mothership
Korg MS-20 mini Monophonic Synthesizer
Korg MS-20M Kit + SQ-1 Monophonic Synthesizer Module Kit (discontinued)
Korg X-911 Guitar Synthesizer
vimeo.com/160406148

ちなみに変態的なトラッキングとフィルタリング、多彩な音作りに対応しているのがPigtronixの 'ギターシンセ' であるMothership。以前の大柄な筐体が小型で新装したMothership 2はエクスプレッション・ペダルのコントロールが出来ますが、大柄な '初代' に用意されていた各種CVが減ってしまったのは残念。このCVを活用して、例えばパッチング出来るアナログシンセKorg MS-20 Miniなどと組み合わせて楽しみたい方は 'ディスコン' となった '初代' Mothershipを探してみて下さいませ。しかし、このオクターヴとフィルターの 'シンセライク' な組み合わせとしてはKorg往年の名機、X-911を思い出しますね。











Seymour Duncan Fooz Analog Fuzz Synthesizer ①
Seymour Duncan Fooz Analog Fuzz Synthesizer ②
Glou Glou Pralines
Glou Glou Moutrade
Glou Glou ①
Glou Glou ②

こちらは去年暮れの新製品2点。まずはピックアップでお馴染みSymour Duncanが本格的にエフェクター市場へ参入!そのフラッグシップ機ともいうべき 'ギターシンセ' のFoozを送り込んで来ました。構成的にはLudwig Phase Ⅱと良く似ておりますが、あれほどエグい 'ヴォイス感' なワウの効果に特化しておらず、PigtronixのMothership 2やEarthquaker Devices Data Corupterなどの好敵手といった感じ。しかし、Chase Bliss Audioなどもそうだけど側面のDipスイッチが最近のトレンドなのかな?そして、ここ近年ちらほらと市場でその存在感を現してきたのがフランス産のペダル。エンヴェロープ・フィルターとモジュレーション、さらにはファズやリング・モジュレーションまでカバーするのはリヨンの新興工房、Glou Glouから真っ赤な筐体で '喋る' リゾナント・フィルターのPralinesと今年の新作、PLLを用いたMoutarde。このPLLとは 'Phased Locked Loop' (位相同期回路)という入力信号からフィードバックで制御したものを短形波に変換、その周波数をマルチプルまたは分割して元のピッチから倍音を生成するというシンセライクなもの。同種のものとしてはElta Music Devics PLL-4046やEarthquaker DevicesのData Corrupterなどもこの回路によるものです。そしてマルチ・モジュレーションの集大成的なRendez-Vousは、ギターやベース、キーボードはもちろん管楽器!まで含めてくれるという動画が嬉しい。いやあ、こういうモノの '有る無し' だけで管楽器奏者の懐事情は助かります(苦笑)。というか、名前が 'Rendez-Vous' → 'Deja-Vu' → 'Avant-Garde' の順で分かれているこの3種、ほぼ同じモデルですよね?





Death by Audio
Death by Audio Evil Filter
Death by Audio Deep Animation

ニューヨークで '飛び道具' ばかりなペダルを製作するOliver Ackermann主宰の工房、Death by Audioのフィルター系ペダル2種。どちらも '歪み' をベースとしたフィルターの変異系であり、よりギターシンセ風のEvil Filterとエンヴェロープ・フォロワーのトリガー機能でリズミックなアプローチにも対応するDeep Animationという '住み分け' が出来ております。フツーのフィルター系に飽きた人は是非とも手に取って頂きたい。



Triode Pedals Leviathan ①
Triode Pedals Leviathan ②

●Song
コントロールはフィルターのカットオフ周波数を設定します。クラシックなフィルタースウィープを作ることが出来ます。
●Feed
コントロールを調整すれば、レゾナンスフィードバックをコントロールしてエフェクトのかかりを最小から発振まで設定可能。
●↑/↓の3段階切り替えトグルスイッチ
上から順にハイパス、バンドパス、ローパスフィルターの設定です。
LFOセクションはSongコントロールの後に設置されます。ChurnコントロールはLFOスピード、WakeコントロールはLFOの深さを調整します。LFOをフルレンジでオペレートするには、Songを中央に設定し、Feed、Wakeを最大または最小に設定します。
●'Wake' と 'Churn' ツマミ間のトグルスイッチ
LFOの波形を三角波と短形波から選択できます。
●エクスプレッション・ペダル端子とDC端子間にあるトグルスイッチ
LFOのスピードレンジとレンジスイッチです。上側のポジションでFast、下側のポジションでSlowのセッティングとなります。

米国はメリーランド州ボルチモアで製作する工房、Triode Pedalsのリゾナント・フィルターであるLeviathan。アシッド・エッチングした豪華な筐体に緑のLEDとツマミが見事に映えますけど、その中身もハンドメイドならではの '手作り感' あふれるもので期待させてくれます。本機のちょっと分かりにくいパラメータの数々を取説で確認してみると、いわゆるその大半がリズミックにワウをかける 'オートワウ' というより、ゆったりとしたフィルター・スウィープ、LFOの音作りに特化した独特なものでギタリストやベーシストはもちろん、キーボーディストからDJに至るまで幅広い層をカバーしておりまする。









Earthquaker Devices Intersteller Orbiter
Earthquaker Devices Spatial Delivery

こちらは今や飛ぶ鳥を落とす勢いの工房、Eathquaker Devicesのデュアル・リゾナント・フィルターIntersteller Orbiterと多目的なエンヴェロープ・フィルターSpatial Delivery。こちらはいわゆる 'オートワウ' の他にゆったりとしたフィルター・スウィープの効果も出せますが、結構こだわっているのは 'Sample & Hold' のランダマイズ機能のレンジが広いことですね。古くはMaestroのFilter/Sample Hold FSH-1とその 'デッドコピー' であるXotic Guitars Robotalkにより広く普及した効果ながら、本機のランダマイズ機能はそれら '本家' より使いやすいかも。しかし、このフィルターの '変異系' ともいうべきエレクトロニカな効果は、今や 'グリッチ/スタッター' 系エフェクターとしてひとつのカテゴリーを築きましたね。







Source Audio SA143 Bass Envelope Filter (discontinued)
Sonuus Wahoo ①
Sonuus Wahoo ②

こちらはベース用ではありますが、ここまで帯域変化するのならトランペットでもイケるということを証明する動画ですね。'電気ラッパ' のYoutuberとしてその広報活動に精を出すJohn Bescupさんご愛用なのがこちら、Source Audio SA143 Bass Envelope Filter。その 'サイバーな' デザインが仇となったのか状態良好の中古がゴロゴロしており狙い目です。単純な 'オートワウ' からフィルタースウィープ、ピコパコとランダマイズするランダム・アルペジエイターやLFOなどフィルター系で出来ることはこれ一台で賄えます。また、このSouce Audio SA143のような多目的にデジタルの機能を備えたものとしては英国の新興メーカー、Sonuus Wahooというのもあります。とにかくデジタル・フィルターとして出来ないことはないくらい充実しており、細かな調整は本体のほかPCと繋ぐ専用エディターソフトでも操作出来るのですが、まあ、裏を返せばあまりに多機能過ぎて '迷子' になる可能性もありまする(苦笑)。とりあえず一台で偏執的に追い込みたい人はどーぞ。









Robert Keeley Engineering Bubble Tron - Dynamic Flanger / Phaser ①
Robert Keeley Engineering Bubble Tron - Dynamic Flanger / Phaser ②
Solidgold Fx Apollo Ⅱ Phaser
Pigtronix Envelope Phaser EP-2
Solidgold Fx
Pigtronix

フィルター系とモジュレーション系はほぼ '親戚関係' というか、お互いに重複する機能として混交したイメージで捉えられております。この手の製品が得意のお馴染み 'エレハモ' からはマルチ・モジュレーションの集大成として、アナログとデジタルの 'ハイブリッド' と言えるMod Rexが登場。キーボードにも対応したステレオ入出力を持ち、テンポ同期する4つの独立したMod、Trem、Pan、Filterモジュレーション・セクションを心臓部として、その揺れを司るLFOの波形にはRising Sawtooth、Triangle、Falling Sawtooth、Squareの4種を装備。ここからTempoコントロールをMIDIなどで同期させながら自由に独立して設定できることで無限のポリリズミックを約束してくれるとのことで、これは 'エレハモ' が1970年代に少量製作した珍品、Pulse Modulatorのぶっ壊れたトレモロの再現が可能かもしれませんヨ(笑)。もちろん、これらのプログラムは最大100個のプリセットとして保存、呼び出しが可能です。いや、そんな豊富なモジュレーションはいらない、もっと単純にフィルター、フェイザー、フランジャーの 'ハイブリッド' なヤツということならこちら、KeeleyのBubble Tronはいかがでしょうか?いわゆる 'ブティック・エフェクター' 黎明期を引っ張ったKeeleyも当初はスイッチ、ツマミ増築の '魔改造' 丸出しでしたが、今や製品としてここまで洗練されたパッケージとなりました。ちなみに本機に内蔵される 'Flange' モードはフランク・ザッパが愛用したMicMix Dyna Flangerをシミュレートしているとのこと。また、このようなモジュレーションとフィルターの '2 in 1' ということでは、フェイザーのスウィープを入力の感度によって変調するエンヴェロープ・フェイザーというものがあります。古くはRoland Phsse Five AP-5、ちょっと前ならAkai Proffesional Intelliphase P1、現行機ではElectro-Harmonix Stereo Poly PhaseとJohn Bescupさんご推薦のSolidgold Fx Apollo(現在はApollo Ⅱに仕様変更)、PigtronixのEnvelope Phaser EP-2などがあるくらい。しかし、こういうエンヴェロープの感度で作動するフェイザーってあまり一般的な人気はないのかな?







Lastgasp Art Laboratories Cyber Psychic - Parametric Oscillo Filter
Lastgasp Art Laboratories

この手の '飛び道具' 的製品はMasf Pedals始め、日本は陰ながら健闘しており、現在はオーストラリア在住で製品作りをしている 'LAL' ことLastgasp Art Laboratoriesのエフェクターもぶっ飛んだものばかり。'ニッチな' ジャンルとはいえ少量生産で欠品の多いのが玉に瑕ですけど、その 'LAL' のカタログの中でもぶっ飛んだ一台なのがオシレータの塊と言えるCyber Psychic。2基搭載した 'Parametric Oscillo Filter' からフィルターの変調よりも発振に主軸を置いたもので、エクスプレッション・ペダルを繋ぎそのフリケンシーをリアルタイムで操作することもできます。そういえば2012年頃の一時期、レッド・ホット・チリ・ペパーズのギタリスト、ジョシュ・クリングホッファーの足元にもコイツはありました。







U.S.S.R. Elektronika Synchro-Wah ①
U.S.S.R. Elektronika Synchro-Wah ②
U.S.S.R. Elektronika Synchro-Wah ③
U.S.S.R. Spektr

ここ近年、その怪しげな '流出もの' としてeBayやReverb.comを賑わせている旧ソビエト連邦製のペダル群。ファズやワウ、モジュレーション系から空間系にマルチ・エフェクツなど実に多岐に渡るそのラインナップに驚くのですが、これらは以前国家の備品としてきっちり管理されていたワケですね。そんな '不良債権' 的遺物の中からElektronika社のフィルター系ペダル、'Cnhxpo-Bay' こと'Synchro-Wah' はなかなかにエグい効果でたまりませんね。入出力が5pinの 'MIDI' 端子を用いたりという '西側' のエフェクターとは互換性のない仕様ではありますけど、それを直してでも使いたいほどの独特な個性がこれら '共産圏ペダル' 群にはありまする。本機の極端にゲート感の強いエンヴェロープ・フォロワーの '飛び道具' な感じは、どこかDODのFX-25を思い出すなあ。







Elta Music Devices Console (White)
Elta Music Devices Console (Black)
Elta Music Devices

さて、ロシアといえばわたしの注目株、Elta Music Devicesの各製品は常に注目しております。そんな同工房の代表作のひとつとして旧ソビエト時代のビザールなアナログシンセ、PolivoksのVCFを単体で抜き出したヤツがありますね。現在まで2回のモデルチェンジをして残念ながら 'ディスコン' となってしまいましたが、同社の人気機種The ConsoleのプログラムのひとつとしてSDカートリッジで供給されております。









Sherman Filterbank 2
Sherman Filterbank 2 Compact
Sherman

このような 'DJ向け' フィルターとしては、ベルギーでHerman Gillisさんが手がける現在でも孤高の存在のSherman Filterbank 2がやはり無視できない。流石に使われ過ぎて '飽きた' という声もありますけど、まだまだその潜在能力の全てを引き出すには奥が深過ぎますヨ、コイツは。個人的には無闇矢鱈に '発振' させない使い方で、このSherman Filterbank1台だけであれこれ探求したい欲求もあるんですよね。クラブ・ジャズ的なスリーピース・バンドPhatの活動でその存在を知られ、現在はソロでquartz-headやrabitooほか、いくつかのユニットで活動するサックス奏者藤原大輔さん。1990年代後半にテクノ界隈で人気を博したフィルターSherman Filterbank 2(現在2台使い!)とその下に置くラック型ディレイKorg DL8000RのHold機能を駆使して、過激に発振するエレクトロニカ的スタイルを披露します。これはわたしも '初代機' を所有しているのですが、ほとんどオシレータのないモジュラーシンセといっていい '化け物' 的機器で、どんな音をブチ込んでもまったく予測不能なサウンドに変調してくれます(動画途中の 'Intermission' は長く第2部は58:33〜スタート)。



Rodec / Sherman Restyler (discontinued)
Rodec / Sherman Restyler Review

そのShermanということでは、ループ・サンプラーのElectro-Harmonix 16 Second Digital Delayで生成したフレイズをグニャグニャと変調する為に導入したRestylerも素晴らしい一台。Shermanと同じベルギーの会社であるDJ機器メーカーRodecとの 'コラボ' で製作したDJ用エフェクターなのですが、その独特なクセから単純にギターや管楽器と一緒に使うにはひと工夫が必要ですね。とりあえず本機は、あくまでDJ用のフィルター・エフェクトとして 'モジュラーシンセ' 的アプローチをするFilterbankとは違います。Sherman特有の斜面型筐体の前面に陣取る3つのスライダーはLo-pass、Band-pass、Hi-passとその上の各フィルター・スロープの波形切り替えスイッチ。左右に配置された2つのツマミは右の青いのがマスター・カットオフ・フリケンシーでLo-pass、Band-pass、Hi-passすべてのフィルター・カットオフを調節、左の緑のツマミがスレーブ/トリガー・フリケンシーのツマミとして2つの機能を持ち、エンヴェロープ・フォロワーをトリガー信号にしてかかるBand-passのカットオフ周波数と、スレーブに設定されたフィルターのカットオフ周波数を共に調節するもの。そう、本機はこのエンヴェロープ・フォロワーによるユニークなトリガー・セクションがあり、このトリガーの入力レベルを調節するSensitivity、Speed、Transitionの3つのツマミと各フィルターに配置されるAMモジュレーション(Lo-pass、Band-pass、Hi-passの各音量をエンヴェロープ・フォロワーでコントロールする深さ)とFMモジュレーション(各フォルターのカットオフ・フリケンシーをエンヴェロープ・フォロワーで変調)、さらにResonanceのツマミを合わせることでフレイズを破壊的に変えることが可能なのです。









Snazzy Fx Effect Pedals
Snazzy Fx
Dwarfcraft Devices Happiness

現在、積極的に 'ユーロラック・モジュラーシンセ' への分野にも参入するDan Snazalle主宰の工房、Snazzy Fx。この工房を一躍有名にしたド派手な 'ペダル3種'、ピッチ・シフティングなモジュレーション・ディレイのWow and Flutter、オクターヴと歪みのMini Ark、そしてVCF&LFOのTracer CityがErica Synthsの協力により '復活' しました!もちろん各機種はCVによる外部機器との同期、連携が可能で 'モジュラーシンセ' への危険な招待状と言って良いでしょうね。そんなCVによる同期を得意とする一風変わったマルチモード・フィルター、Dwarfcraft Devices HappinessはFilter CVとScramble CVのほか、LFOのCV出力をマスターにArturiaのアナログシンセとKorgのサンプラーを同期し、ユニークなバックトラックにするという '離れワザ' を披露。このようにコンパクト・エフェクターは従来のギターから離れて、ドラムマシンやサンプラーなどとの多様な制作手法に対応するなど、そのニーズも時代に応じて大きく様変わりしました。







ちなみにモジュラーシンセとの連携という点で言えば、'エフェクト' と 'アコースティック' の境界をノイズにより曖昧にする '特殊奏法' を駆使したアクセル・ドーナーの試みが興味深いですね。Holtonの 'ST-303 Firebird' トランペットを用いて行う多様なノイズの '採取' は(実際、怪しげなピックアップする加速度センサー?が取り付けられている)、いわゆる旧来のフリー・ジャズよりエレクトロニカ以降の 'グリッチ' と親和性が高いように思うのです。それは、フリー・ジャズにあった 'マッチョイズム' 的パワーの応酬ではなく、まるで顕微鏡を覗き込み、微細な破片を採取する科学者のようなドーナーの姿からも垣間見えるのです。この、まるでフィルター発振の如く刻々と変化する微細なノイズの表情をそぎ落としていく行為がたまらない・・。





Performance Guitar TTL FZ-851 "Jumbo Foot" F.Zappa Filter Modulation
Performance Guitar F.Zappa Filter Modulation
Guitar Rig - Dweezil Zappa

ザッパのフィルタリングに対する音作りの研究に訴えた超絶 'ニッチな' ペダルとして、本機は父親の楽曲を再現する上で息子のドゥィージルがザッパと縁の深いPerformance Guitarにオーダーしたという、かなりマニアックな一台。Boss FV-500とFV-50の筐体を利用し、どでかい鉄板風アルミ板(軽い)を強引に乗っけてLo-pass、Band-pass、Hi-passを切り替えながらフィルター・スィープをコントロールするという荒削りさで実際、ペダル裏側には配線がホットボンドとマスキングテープで固定してレーシング用フォーミュラカーを見るような迫力がありまする。その肝心の中身なんですが・・ええ、この動画通りのほとんどVCFをノックダウンした 'シンセペダル' と呼びたいエグいもの。これを管楽器などで使ってしまい怒られやしないか(誰に?)とヒヤヒヤするけど、VCFを丸ごと抜き出してきたような帯域幅の広いQの設定で、半踏み状態によるフィルタリングの '質感生成' からワウペダルのリアルタイム性まで威力を発揮します。また本機はBoss FV-500の筐体を利用したことでタコ糸によるスムースな踏み心地なり。しかし、こういうペダルだとついついワウワウのエグい効果に耳が行きがちですけど、本機のLo-pass、Band-pass、Hi-passの帯域でフィルター・スィープを削りながら '質感' の変化を体感するとそのまま、各社フィルター専用機との違いなどが気になり、果てしない 'フィルター沼' に陥ることは間違いありません(怖)。








Fredric Effects
Fredric Effects Do The Weasel Stomp !
TWA Triskelion 2.0 Harmonic Energizer TK-02
Systech Harmonic Energizer ①
Systech Harmonic Energizer ②

ちなみにザッパの愛用したフィルターとしては、Oberheim VCF-200と並び現在ヴィンテージ市場で高騰しているSystech Harmonic Energizerが有名です。この英国の工房Fredric Effectsから登場したいかにもなネーミングの本機とTWAのものはディストーションを軸に 'Bandwidth' と 'Center Frequency'、'Gain' の3つのツマミの構成で、特に 'Center Frequency' のQの可変幅がワウの如く広いこと。そして、この両機はさらにそれをエクスプレッション・ペダルでコントロール可能にしたことで操作性も向上しました。しかし、そろそろジミ・ヘンドリクスのワウペダルばかりではなく、フランク・ザッパの音作りである 'フィルター探求' もギタリストたちの関心の的となって欲しいですねえ。





Maestro Parametric Filter MPF-1
Stone Deaf Fx

MaestroのParametric Filterは、同社でエフェクターの設計を担当していたトム・オーバーハイムが去り、CMI(Chicago Musical Instruments)からNorlinの傘下でラインナップを一新、設計の一部をモーグ博士が担当することで生み出されました。本機特有の 'フィルタリング' はやはり1990年代以降の '質感世代' に再評価されることとなり、とにかく何でも通してみる・・ジャリジャリと荒い感じとなったり、'ハイ落ち' する代わりに太い低域が強調されたりすれば、それはもう 'ベッドルーム・テクノ世代' の求める '質感' へと変貌します。後にMoogはこれを '歪み系' のエフェクターに特化したMinifooger MF Driveとして蘇らせましたが、英国の工房、Stone Deaf FxからもPDF-2として登場。本機は 'Clean' と 'Dirty' の2つのチャンネルで切り替えて使うことが可能でおお、便利〜。また、専用のエクスプレッション・ペダルを用いればエンヴェロープ・フィルターからフェイザー風の効果まで堪能できる優れモノ。管楽器においては適度なクランチは 'サチュレーション' 効果も見込まれますが、完全に歪ませちゃうとニュアンスも潰れちゃう、ノイズ成分も上がる、ハウリングの嵐に見舞われてしまうので慎重に '滲ませる' のがこれら設定の 'キモ' なのです。




Synthmonger
SviSound WahoZoid
SviSound - handmade guitar pedals and devices
SviSound
Nalbantov Electronics OC-2 eXtreme with Preamplifier
Nalbantov Electronics

また、このような歪みとVCFの 'ハイブリッド' な変態系としては入力した信号を2つのパルス波に変換、それらを合成して強制開閉するゲート感と強烈な '歪み' と '揺れ'、エンヴェロープ・フィルターにより生成するSynthmanger Fuzzmangerというのもありまする。'Fuzz' と 'Filter' をそれぞれエクスプレッション・ペダル及びCVでコントロール、変調出来る拡張性が素晴らしい。そして、ブルガリアから歪み系ペダルに特化したブランドとして登場してきたのがこのSviSound。その独特な 'スチームパンク' 的デザインセンスはこれまでの西欧圏エフェクターには無いもので、最近はオプティカル回路のOptical Phaser Techno-FAやコーラス&ディレイEchoZoidといった製品がラインナップに加わり華やかとなりました。このゲルマニウム・トランジスタによるWahozoidは上でご紹介したHarmonic Energizerっぽい趣きながら、残念にも日本未発売のモデルのようですね(悲)。ちなみにこんなブルガリア産のフィルターには同じくブルガリア産のこちら、Nalbantov Electronicsのプリアンプ内蔵オクターバー、OC-2 eXtremeを合わせてみたくなりまする。Boss OC-2 Octaveを元に?設計されたと思しき本機は、さすが管楽器用ピックアップを製作している工房だけに見事なチューニングが施されているのではないでしょうか。



さて、そんなフィルターと管楽器の 'アンプリファイ' による関係で触れたいのがマイルス・デイビスの試み。それまでモダン・ジャズの極北ともいうべき複雑なコード・プログレッションとインプロヴァイズの探求を行ってきたスタイルから一転、スーツを脱ぎ捨てヒッピー風の極彩色を纏い、ベルを真下に向けて屈み込みワウペダルを踏む姿は未だ '電気ラッパ' の 'アイコン' ではないでしょうか。しかし、アレが果たしてデイビスにとって '正解' だったのか何だったのかは分からない。実際、あのスタイルへと変貌したことで従来のジャズ・クリティクはもちろん、当時、デイビスが寄せて行ったロック、R&Bからの反応もビミョーなものだったのですヨ。ここ日本でも1973年の来日公演に寄せてジャズ批評の御大、油井正一氏が 'スイングジャーナル' 誌でクソミソに貶していた。ワーワー・トランペット?ありゃ何だ?無理矢理ラッパをリズム楽器に捻じ曲げてる、ワウワウ・ミュートの名手であるバッバー・マイリーの足元にも及ばないなどと、若干、あさってな方向の批評ではありましたけど、まあ、言わんとしていることは分かるのです。極端な話、別にデイビスのラッパ要らなくね?って感想があっても何となく納得できちゃったりするのだ(苦笑)。





まだ、デイビスが最初のアプローチとして開陳した1971年発表の2枚組 'Live-Evil' の頃は要所要所でオープンホーンとワウペダルを使い分け、何となくそれまでのミュートに加えて新たな 'ダイナミズム' の道具として新味を加えようとする意図は感じられました。しかし1972年の問題作 'On The Corner' 以降、ほぼワウペダル一辺倒となり、トランペットはまさに咆哮と呼ぶに相応しいくらいの 'ノイズ生成器' へと変貌・・。それはいわゆるギター的アプローチというほどこなれてはおらず、また、完全に従来のトランペットの奏法から離れたものだっただけに多くのリスナーが困惑したのも無理はないのです。これは同時期、ランディ・ブレッカーやエディ・ヘンダーソン、イアン・カーらのワウワウを用いたアプローチなどと比べるとデイビスの '奇形ぶり' がよく分かるでしょうね。そんなリズム楽器としてのトランペットの '変形' について個人的に大きな影響を受けたんじゃないか?と思わせたのがブラジルの打楽器、クイーカとの関係なんです。デイビスのステージの後方でゴシゴシと擦りながらラッパに合わせて裏で 'フィルイン' してくるパーカッショニスト、アイルト・モレイラの姿は、そのままワウペダルを踏むデイビスのアプローチと完全に被ります。その録音の端緒としては、1970年5月4日にヘルメート・パスコアール作の 'Little High People' でモレイラのクイーカやカズーと 'お喋り' する電気ラッパを披露しており、すでにこの時点で1975年の活動停止に至るラッパの 'ワウ奏法' を完成させていることにただただ驚くばかり。ちょっと管楽器とエフェクターのアプローチにおいて、ほんの少しその視点を他の楽器に移して見ると面白い刺激、発見がありまする。









鈍らせる、尖らせる、歪む、変調する・・そして発振。コレ、すべてVCFという名のフィルターの仕事であり、それを体感した者はその刻々と変化する音の '質感' に身悶え、まるで何物にも例えられないもうひとつの 'こえ' が生成する瞬間に慄きます。嗚呼、これぞフィルターの快感なり。

2019年3月3日日曜日

切り替えと '混ぜ混ぜ' の整理術 (再掲)

コンパクト・エフェクターをペダルボードに配置する、そもそもこれのメリットは何でしょうか?それを考えて見ます。まずは何と言っても利便性、これに尽きるでしょうね。エフェクターの1つや2つではそれほどメリットはないですが、これが5つ6つとなるとそれぞれを結線して足元に並べるだけでも手間がかかってしまいます。そこで、すべてをボードという場所に設置して予め結線しておけば、後は楽器とアンプをそのボードの入出力に繋ぐのみというお手軽さです。







そして、この結線にはもうひとつの利点、エフェクターに一括して電源を供給出来ることにあります。エフェクターは各製品に見合った電源供給を持ち、それに対応したACアダプターが必要になることからその煩雑さを解消したパワーサプライが活躍。一般的なセンターマイナスのDC9Vはもちろん、その他DC12VやDC18Vに厄介なセンタープラス、AC仕様のものはそのままACアダプターを差す為の電源タップとパッチ供給が一緒になったパワーサプライ、デジタルとアナログ機器を一括に電源供給する際に起こるノイズ問題を避けたアイソレート仕様のパワーサプライなど、使用するエフェクターに合わせて実に多岐に渡ります。





Radial Engineering Voco-Loco

ここでもう一度ボードを見渡してみれば、いくつまでのエフェクターを足元に置くか、という問題があります。これは置く数によってペダルボードが大きくなることを意味し、あまりに巨大なものだと持ち運びに不便となります。また、単純に複数機を直列で繋ぎ過ぎると音質が劣化するという問題に直面するでしょう。その為、必要なものをそのつど呼び出して用いるスイッチング・システムという機器で、このような複数機使用の弊害を解決することが可能です。ただ、どちらにしても足元はより煩雑で大きくなってしまうので、こういったものを導入する以前に、本当に自分にとって必要なエフェクターとは何かを見極める力が必要でしょうね。ちなみに、どうしても複数機使いたいけど音質劣化は嫌、尚且つ手軽に持ち運びたいという方はマルチ・エフェクターが最適です(デジタルにおける音質の好み、各種パラメータのエディット操作は煩雑ですけど)。







Audio-Technica VP-01 Slick Fly
Zorg Effects Blow !
Zorg Effects

こちらはフランスの新たな工房、Zorg Effectsの 'インサート' 付きマイク・プリアンプBlow !。ようやくというべきか、Audio-Technica VP-01 Slick FlyからRadial Engineering Voco-Locoをきっかけにして、Eventide Mixing LinkやこのBlow !のようなコンパクトによるマイクの 'アンプリファイ' なアプローチの敷居を低くしました。ま、相変わらず管楽器の '原理主義者' たちによるこの手のものに対する蔑視感情は根強いですけど、動画はここ最近の新製品を始めにマニアックなペダルの大試奏大会となったのは嬉しい(笑)。ホーン・プレイヤーの皆様いかがでしょう?刺激されましたでしょうか?







Eventide Mixing Link ①
Eventide Mixing Link ②

さて、このような増えてくるコンパクト・エフェクターの効果的な使い方の '救世主' として便利に使って頂きたいのがスイッチング・システムというもの。最近のコンパクト・エフェクターはいわゆるトゥルーバイパスが標準になったとはいえ、数が多くなるほど接点も増えることで 'ハイ・インピーダンス' による脆弱な信号のまま受け渡すことの弊害、バッファーとの併用が謳われております。またトゥルーバイパスの機械的構造からくる踏むと同時に鳴る 'ボンッ' というノイズも困りもの。ちなみに管楽器の 'アンプリファイ' の場合であれば、すでに信号がマイク・プリアンプを通っている時点で 'ロー・インピーダンス' 化されており、あまり管楽器の原音を重視した音作りに固執するよりもエフェクターを使うことを加味すれば、あくまでアンプやPAを通った上での 'クリーントーン' を作る、と発想を変えた方が良いと思います。





とりあえずスイッチング・システムとは、こういったトラブル含めて個別の 'ループ' に分けることで2つ、3つくらいのペダルをA/Bそれぞれのループで切り替えるA/Bライン・セレクターや、'A or B' のみならず 'A+B' の流れで並列にミックス出来るもの、さらにMIDIと統合してディレイやピッチ・シフターなどと連動した大掛かりなものに至るまで用意しております。個人的にはエレクトリック・ギターのようなソロとバッキングの使い分けなどしないので、例えばシーケンサーなどと同期して演奏する場合でもなければ管楽器でここまで緻密にプログラムするようなものは必要ないかな。ディレイなども単純にタップテンポぐらいのシンプルなヤツの方が使いやすいですね。


ギリシャのメーカーDreadboxの '1 Loop' なループ・ブレンダーCocktailを用いて、Z.VexのFuzz FactoryとDigitech Whammy、エレハモのリヴァーブCathedralをパラレル・ミックスで原音を '確保' した上でのミックス具合。エフェクターをかけただけで原音が潰れてしまったり(歪み系や '飛び道具' エフェクターなど)、音程が取りにくくなってしまったり、といったもの(モジュレーション系)には非常に効果的です。さらに本機は原音とエフェクト音をブレンドするMixツマミのほか、クリーンなトーンを持ち上げたり異なるインピーダンスを '底上げ' するBoostツマミを備えているのが便利。





Dwarfcraft Devices Paraloop

これらA、B2つのループの信号を 'パラレル' にミックスできる変わり種の 'ループ・ブレンダー' であるDwarfcraft Devices Paraloop。この手の製品で有名なのはCustom Audio Electronicsが製作していたハーフラック・サイズのCAE Dual / Stereo mini Mixerやそれの 'リプロダクト' モデルであるCAJ Custom Mixerがありますが、本機はその機能を '2ループ' に絞ったコンパクト版と言って良いですね。例えば片方のループにオクターバーを繋いで片方は原音を確保、またはディレイとリヴァーブ、コーラスとフィルターといった分離した '空間生成' で直列接続よりグッと効果的。これも色々なペダルを '抱き合わせて' 試してみると面白いでしょう。







Boardbrain Music Transmutron - Dual Fx Loop Crossover Filter

そしていよいよ出て来ましたね。コンパクト・エフェクターとエクスプレッションCV、'ユーロラック' モジュラーシンセのCVによる統合したスイッチング・システムがBoardbrainなる工房から登場!パラレル・ミックスで個別、同時に使用出来るほか 'Fission'、'Fusion'、Fallout' の3種モードにより、2つのLoopの機能を変更することが可能です。

●Fission
このモードでは、入力された信号の周波数帯を分割し、それぞれを2つのLoopにスプリットして再びミックスして出力出来ます。後述するUmbrella Company Fusion BlenderやVocuのMagic Blend Roomなどと同種の機能ですね。またエクスプレッション・ペダル及びモジュラーCVでのコントロールにも対応。

●Fusion
このモードでは、2つのLoopのバランスを調整してブレンドすることが出来ます。これらミックスのバランスは筐体真ん中にあるSplitpointツマミ、またはエクスプレッション・ペダル及びモジュラーCVでのコントロールにも対応。これは前述したDwarfcraft Devices Paraloopと同種の機能に当たります。

●Fallout
このモードでは、2つのLoopの前にワイドノッチ・フィルターを適用して、Splitpointツマミやエクスプレション・ペダル及びモジュラーCVでのコントロールにも対応。ペダル・コントロールすることでワウのような操作を付加することが出来ます。また本機には、これとは別にHicut、Locutのフィルターを搭載して音作りに適用することが出来ます。

ちなみに本機搭載のフィルターは12dB、24dB、48dB/Octのスロープ角度を選択出来、それぞれFission、Falloutモードのワイドノッチ・フィルターにも適用されます。もちろん、Ch.2のLoopでフェイズアウトが起こった際の位相反転にも対応出来るのは素晴らしい。そして2つのLoopからなる 'Send/Return' にはフォンと 'ユーロラック' モジュラーでお馴染み3.5mmミニプラグが同時対応し、さらにこの3.5mmのLoopには内部DIPスイッチにより楽器レベルとラインレベルで 'インピーダンス' を切り替えて使用することが出来ます。ふぅ、凄いなコレは。





Umbrella Company Fusion Blender
Vocu Magic Blend Room ①
Vocu Magic Blend Room ②
Vocu Magic Blend Room Spec. 2

こちらはある機能に特化した '上級編'。ライン・セレクターを用いて既存のペダルを複数繋いだ '実験' では、上でご紹介したParaloopのほか、Umbrella Companyの多目的セレクター、Fusion Blenderは通常のA/Bセレクターのほか、AとBのループをフィルターによる帯域分割で '同時がけ' を可能とするなど、コンパクト・エフェクターの使い方にいろいろなアイデアを提供する素敵な一品。同種の製品としてはVocuの多目的セレクター、Magic Blend Roomも多機能ながらお求めやすい価格で 'タンスの肥やし' となったペダル群を生き返らせて下さいませ。





Pigtronix Keymaster

こちらも '2 Loop' ながら 'A+B' のミックスでさらにTRSフォンのほかXLR入出力端子を備えるユニークな多目的ライン・セレクター、Pigtronix Keymaster。本機のアイデアとしてDJ用ミキサーを 'コンパクト化' したいという思いから、'Series/Parallel' のトグルスイッチを 'Parallel' にしてエクスプレッション・ペダルでコントロールすることで、AループとBループをシームレスに切り替えることが出来ます。コレ、例えば両ループにループ・サンプラーを繋いでワンショット的なフレイズをサンプリング、ブレイクビーツ的な遊びが出来るかもしれませんね。また本機のXLR入力はファンタム電源が使えないもののダイナミック・マイクを繋ぐことが出来るので、そのまま管楽器での使用が可能!そしてコンパクト・エフェクターからラインレベルの機器に至るまで、幅広い 'インピーダンス・マッチング' を取って統合したサウンド・システムを構成することが出来まする。







Earthquaker Devices Swiss Things

そしてあのEarthquaker Devicesからも多目的なライン・セレクター、Swiss Thingsが登場。本機は '2 Loop'を基本にしたトゥルーバイパス仕様でA/B-Y出力、バッファー搭載のチューナー出力、最大20dBまでのクリーン・ブーストとヘッドルームの高いバッファー出力、外部エクスプレッション・ペダルによるヴォリューム・コントロール、同社開発のフレキシスイッチは電子リレー式のトゥルーバイパスを元に踏み方の違いで通常のラッチスイッチ、アンラッチスイッチへの切り替えが可能です。









なかなかの '物量' で整然とブチ込んでおりますが(笑)、Meris、Chase Bliss Audio、Strymonと高品質かつMIDIによる同期に対応した製品を揃えることで統合したシステムを構築することが可能ですね。このような同期やプログラムに対応したものはこれまでラックやマルチ・エフェクターに特化した分野でしたが、ここ最近はコンパクト・エフェクターの分野でも充実したシステムで組めるようになりました。







繰り返しますが、これらスイッチング・システムという類いのものはあくまで数の多くなったエフェクターに対して利便性を図るものであるため、基本的に接続の '接点' が増える分、直列とは別の意味でトゥルーバイパスの仕様であろうが音質は変化(劣化)します。しかし、直列で数珠繋ぎにして増やしていくより個別のエフェクターを一括でOn/Off、もしくは複数のエフェクターを統合したスイッチング・システム1つで自在に入れ替えなど、単純に繋ぐだけでは体感出来ない操作性にその魅力あり。とりあえず手始めに '2 Loop' のループボックス1つ導入するだけでもそのアイデアは広がりますヨ!というか、管楽器でここまでやろうとする人・・いないだろうなあ。






Dr. Lake KP-Adapter
Umbrella Company Fusion Blender

さて、このようなループ・セレクターを用いるに際して、いわゆるコンパクト・エフェクターの中にラインレベルのアウトボードをミックスするやり方もあります。特にステレオ入出力を備えた機器などに有効なのが新潟の楽器店あぽろんプロデュースのDr. Lake KP-Adapter。そもそもはKorgのDJ用エフェクターであるKaosspadをギターで用いる為に製作されたものですが、あらゆるラインレベルの機器に対してキチンとした 'インピーダンス・マッチング' を取ってくれます。またモノラルでの使用なら前述したUmbrella Companyの多目的ループ・ブレンダー、Fusion Blenderも基板内部のジャンパ差し替えでインピーダンス対応することが可能。






Elektron Analog Heat HFX-1 Review
Elektron Analog Heat Mk.Ⅱ
OTO Machines Boum - Desktop Warming Unit

そんなKP-Adapterを用いて是非とも繋いでみたいのがElektronとOTO MachinesのDJ用マルチバンド・フィルター、と言ったらいいのだろうか、素晴らしいAnalog HeatとBoumをご紹介。Elektronにはギターに特化したAnalog Drive PFX-1という製品があるものの、こちらのAnalog Heatの方がシンセやドラムマシン、マイクからの音声などラインレベルにおける入力に対して幅広い 'サチュレーション' を付加、補正してくれます。その多様に用意されたプログラムの中身はClean Boost、Saturation、Enhancement、Mid Drive、Rough Crunch、Classic Dist、Round Fuzz、High Gainの8つのDriveチャンネルを持ち(もちろんアナログ回路)、そこに2バンドのEQとこれまた7つの波形から生成するFilterセクションで各帯域の '質感' を操作、さらに内蔵のエンヴェロープ・ジェネレーター(EG)とLFOのパラメータをそれぞれDriveとFilterにアサインすることで、ほとんど 'シンセサイズ' な音作りにまで対応します。また、現代の機器らしく 'Overbridge' というソフトウェアを用いることで、VST/AUプラグインとしてPCの 'DAW' 上で連携して使うことも可能。Elektronのデモでお馴染みCuckooさんの動画でもマイクに対する効果はバッチリでして、管楽器のマイクで理想的な 'サチュレーション' から '歪み' にアプローチしてみたい方は、下手なギター用 '歪み系' エフェクターに手を出すよりこのAnalog Heatが断然オススメです。一方のフランスOTO Machinesから登場する 'Desktop Warming Unit' のBoum。すでに '8ビット・クラッシャー' のBiscuit、ディレイのBimとリヴァーブのBamの高品質な製品で好評を得た同社から満を持しての '歪み系' です。その中身はディストーションとコンプレッサーが一体化したもので、18dBまでブーストと倍音、コンプレッションを加えられるInput Gain、Threshold、Ratio、Makeup Gainを1つのツマミで操作できるコンプレッション、低域周波数を6dB/Octでカットできるローカット・フィルター、4種類(Boost、Tube、Fuzz、Square)の選択の出来るディストーション、ハイカット・フィルター、ノイズゲートを備え、これらを組み合わせて36のユーザー・プリセットとMIDIで自由に入力する音色の '質感' をコントロールすることが出来ます。おお、これはAnalog Heatの 'ライバル機' といって良いでしょうね。









そんなフィルタリングのザラザラとした '質感' やワウを含めた変調感は、これらAnalog HeatやBoumの最も得意とするところであり、管楽器によるイメージとしてはラッパ吹きのBrownman率いるElectryc Trioの動画を参考にして頂ければ分かるはず。いわゆる 'サチュレーション' の飽和感をそのギリギリのところで 'クリーン' に太くする、荒くする、変調させるというのが設定の 'キモ' であり、慌てず騒がずハウらせず、ジックリとその倍音の変化に耳を傾けて頂きたいところです。









Gamechanger Audio

そしてこちらは番外編。サスティンの 'Freeze' という点ではループ・サンプラーのお仲間と言えるかもしれませんが、ここ最近は3400Vもの超高圧信号をキセノン管でスパークさせた新しいディストーション、Plasma Pedalで話題をさらっているラトビア共和国の新興工房Gamechanger Audio。このPlus Pedalは工房の第一弾ともいうべきピアノのダンパーペダルを模したコントローラーで踏んだ直前のサスティンをリアルタイム処理で 'Freeze'、ループによるロング・サスティンを実現した驚異のペダルです。サスティンは最大5つまでオーバーダブすることが可能でフェイドインの速度やディケイの細かな設定はもちろん、お手軽なループ・サンプリングとエフェクト音のみのWetへ瞬時に切り替えるフット・スイッチも付属するなど、ある意味、Electro-Harmonix Freezeをより音楽的に発展させたもののようです。





Electro-Harmonix Superego Synth Engine

そんなPlus Pedalと同種なものとして、Freezeの機能強化版とも言うべきSuperego Synth Engineは 'インサート' も備えており、オーバーダブしながらここにお好きなエフェクターを繋げばさらに過激な音作りに挑むことが出来まする。また、ピッチシフトとリヴァーブを軸に 'Freeze' 機能を備えた旧ロシアはクリミア自治共和国からのBlack Jack。特にリアルタイムで 'Hold' スイッチを踏んだ瞬間の音(Press)、一度スイッチを踏んで離した瞬間の音(Release)のどちらを 'Freeze' させるか、また 'Freeze' 時のトーンをクリーンにするか(Ice)、暖かくするか(Thaw)まで小まめに設定できるというこだわりがいいですね。










Lehle Little Lehle Ⅱ
Lehle

Sovtek、Spektr-4、Ezhi & Aka、Elta Music Devices…とりあえず、今回も 'プチ実験' ということで全て 'ロシア産' のペダルで揃えてみました。旧ソビエト製のSpektr-4が元々の '5pin' MIDI入出力端子からTRSフォン端子へのモディファイがされており、なぜか通常のアンバランスフォンを使えないことからLehleのTRS対応ループ・セレクターLittle Lehle Ⅱに 'インサート' して接続。とりあえず、この質実剛健で無愛想な '面構え' は国産や欧米のペダルにはない佇まいで格好良いですねえ。

2019年3月2日土曜日

コルネットは '電気ウナギ' で感電する

ディキシーランドの花形楽器、コルネット。ビックス・バイダーベックからスイング期のボビー・ハケットといった名手を経てしかし、その後はトランペットにその座を奪われて現在までいまいちパッとしないイメージがあります。手のひらサイズのポケット・トランペットやダークで木管的響きのフリューゲルホーンなどと比べて、何となく古臭くて差別化の乏しい '短いラッパ' の印象に留まっているのではないでしょうか?





いわゆるモダン・ジャズの全盛期においてこの楽器の '底上げ' に尽力したのがナット・アダレイ。フュージョンの一時期に日野皓正さんも凝って使っていた時がありましたけど、やっぱりトランペットの現代的なニュアンスに対し、どこかその丸く暖かい音色はシリアスになりにくい先入観があるのかもしれない。実際、そのナットも兄貴キャノンボールといつもセットで 'オマケ' 的扱いの印象が強いためか、尚更その '日陰ぶり'  に拍車をかけているのは否めません(苦笑)。そんなコルネットにはブリティッシュ・スタイルのショート・コルネットとアメリカン・スタイルのロング・コルネットの2種があり、ジャズではよりトランペット寄りな音色のロング・コルネットが好まれております。そのナットと言えばKingのロング・コルネットSuper 20で、純銀ベルの 'Silver Sonic' をOlds No.3マウスピースで吹くというのが最も有名なスタイルですね。一方、そんなベタッとしたナットのファンキーなスタイルとは真逆のウッディ・ショウのモーダルなコルネットもどーぞ。











H&A.Selmer Inc. Varitone ②

そんな 'モダン・コルネット' の第一人者ともいうべきナット・アダレイが1968年にアプローチした '電気コルネット'。いわゆるH&A Selmer Inc.のVaritoneを用いてA&M傘下のCTIからリリースしたこの '仏像ジャズ' は、前年にクラーク・テリーがアルバム 'It's What's Happnin'' でアプローチしたことを追いかけるかたちで 'サマー・オブ・ラヴ' の季節を謳歌した異色の一枚となりました。このVaritone、サックスの場合はマウスピースにピックアップを取り付けますが、トランペットやコルネットの場合はリードパイプ上部に穴を開けて取り付け、コントローラーは首からぶら下げるかたちとなります。まあ、効果的にはダークで丸っこい音色のコルネットが蒸し暑いオクターヴ下を付加して、さらにモゴモゴと抜けの悪いトーンになっているのですけど・・。上の動画はそんなVaritoneのコルネットをナットが吹く貴重なもの。不鮮明で見にくいですが、首からコントローラーをぶら下げて(2:39〜40)、ピエゾ・ピックアップはリードパイプの横に穴を開けて接合(4:29〜31)されているのが確認出来まする。



そしてナット・アダレイの奏法について述べれば、それほど難しいことをやっているワケではありませんが音域は広くテクニックもあり、やはり長年一緒にやってる兄キャノンボールと良く似たラインを吹いておりますね。そしてもう一点、かな〜りマイルス・デイビスからの影響濃いですヨ、この人は。いわゆるクリフォード・ブラウン的メカニカルな構成力に比べ、シンプルなリズム・フィギュアで中低域から一気にハイレンジへと跳躍するところなど、う〜ん確かにソレっぽい。'デイビス・フォロワー' のケニー・ドーハムやアート・ファーマー、チェットベイカーらが持つリリシズムに言及されることがないナットですけど、彼のソロ作を聴くと意外にうなだれているというか(笑)、特にハーモン・ミュートなどを使えば孤独感がアップ!案外と兄貴のハッピーな感じとは真逆の '根暗' な印象がナットの本音かもしれません。










Vox 'Ampliphonic' Woodwind and Brass Instruments
Vox / King Ampliphonic Stereo Multi-Voice
Vox / King Ampliphonic Octavoice Ⅰ and Ⅱ
Vox / King Ampliphonic Octavoice Ⅱ
Vox / King Ampliphonic Pick-up

こちらは同時期のVox 'Ampliphonic' シリーズとして登場した '電気コルネット'。コルネットのベル横側に穴を開けてピックアップを装着、腰に装着できるOctavoiceやアタッシュケースとして持ち運べるStereo Multi-Voiceと共に 'サウンド・システム' を構築することが出来ます。このStereo Multi-Voiceは同時期のConn Multi-ViderやMaestro Sound System for Woodwinds同様に1オクターヴ上の 'Soprano'、'Violin'、1オクターヴ下の 'Cello & Saxophone/Clarinet'、2オクターヴ下の 'Vox Bass & Saxophone/Clarinet'、そしてトレモロの組み合わせで 'アンプリアファイ' されたトーンを作っていきます。地味に面白いのは 'A.V.C.' というスイッチを入れることでビミョーにアタックやリリースの増減が出来ること。同時期、Voxでいわゆる 'オルガン・ギター' を製作していただけに多分、そちらからフィーチュアした初期シンセ的なパラメータのひとつではないでしょうか?









さてこのコルネット、意外にもフリー・ジャズの前衛的な世界では一定の需要があるようで、ポケット・トランペットと共に使用したドン・チェリーや、オーネット・コールマンやジョン・カーターらとの共演もあるボビー・ブラッドフォードもコルネット一筋の人。そしてブラッドフォードと同じくミシシッピー州出身でデイヴィッド・マレイやヘンリー・スレッギルらとの共演を経て、米国の 'ルーツ・ミュージック' への憧憬を志向するオル・ダラ。









こちらはブリティッシュ・ジャズ・ロックとしてソフト・マシーンにも参加したマーク・チャリグもコルネット愛用者のひとり。近年はさらにアルトホーンなどと併用してまだまだ 'フリー一筋' なんですね。続くドラマーのロイ・ヘインズの息子、グレアム・ヘインズは1980年代後半にスティーヴ・コールマンら 'M-Base' 一派との活動で注目されて、1990年代以降の 'ベッドルーム・テクノ' 世代との共闘を示すアルバム 'BPM' などを製作する一方、ライヴ・エレクトロニクスからラモン・テ・ヤングのようなドローン・ミュージック、そしてコレクティヴ・インプロヴィゼーションに至るまで幅広くやっておりまする。






こちらは1990年代のシカゴ音響派のシーンで注目されたロブ・マズレク。この人もトータスやアイソトープ217°、シカゴ・アンダーグラウンドの各ユニットでの多様な活動が知られており、現在はブラジルのアマゾンはマナウスを拠点にして活動しているようです。しかしこのマズレクさんは上述した各ユニットはもちろん、ザ・シー&ケイクとそれを主宰するリーダー、サム・プレコップのソロ作に至るまで多方面に参加しており、これはシカゴ音響派と呼ばれる一派が往年の 'カンタベリー・ミュージック' の如く強いシーンの繋がりを再確認させてくれまますね。







今、AACMから脈々と流れるシカゴのシーンより登場して大きな話題をさらっているのがこのベン・ラマー・ゲイ。前述したグレアム・ヘインズやロブ・マズレクもそうなんですけど、彼らに共通するのは器楽奏者としての主張ではなく、アンサンブルやエレクトロニクス全体の中でその 'サウンドスケイプ' を描き出していくこと。とりあえず・・もう、楽器としてのコルネットは関係ないな(苦笑)。

2019年3月1日金曜日

チェットの 'サマー・オブ・ラヴ'(再掲)

1950年代初め、鮮烈なイメージで米国西海岸に現れたラッパ吹き、チェット・ベイカー。彼の破天荒な人生と晩年の姿を捉えたブルース・ウェーバー監督のドキュメント映画 'Let's Get Lost' や、そんな彼を題材に取り上げたイーサン・ホーク主演の映画 'ブルーに生まれついて' なども公開されましたけど、マイルス・デイビスとは違う意味でラッパ吹きの格好良さを体現した人ではないかと思います。



暗く紫煙漂うジャズクラブの片隅から物悲しいミュートで緊張を走らせるのがデイビスなら、突き抜ける青い海岸線をコンバーチブルで疾走しながら、鼻歌を歌うようにラッパを吹くのがチェット、という感じ。こう書くと思わず '陰と陽' のイメージを付与してしまいそうになるのですが、共通するのはどちらも沈み込んだような 'ブルー' を湛えていること。血の通っていない '青白い' 感じで、体温低くひんやりとした 'Cool' でいることを美徳とする・・。これってルイ・アームストロング以降、ディジー・ガレスピーからクリフォード・ブラウン、フレディ・ハバードにまで受け継がれる '陽のラッパ吹き' の真逆を行くもので、このスタイルの創始者であるマイルス・デイビスはチェットにとってのアイドル的存在だったのは納得しますね。



さて、そんなチェットにとっての全盛期といえば 'ウェストコースト・ジャズ' の寵児として脚光を浴びた1950年代の 'Pacific Jazz' 時代と、クスリによって 'Cool' なルックスからテクニックの全てを失い、再びシーンへと復帰して耽美的なまでに 'ブルー' な絶望感を体現した1970年代半ばから80年代の '晩年' が、やはりこのチェット・ベイカーという人の '凄み' を描き出していると言えます。ではその間を取り持つべき1960年代は?この時代、ジャズの世界を始めとした米国のエンターテインメントすべてが引っくり返る10年であり、チェットのイメージも絶頂から奈落の底へと落ちていった10年でもあります。それまでデイビスに憧れて愛用していたMartin Committeeをパリで盗まれ、知人から '借り物' として使い出したSelmerのK-Modifiedフリューゲルホーンがこの頃のイメージですね。ちなみにそんなチェットが '堕落' していく姿を '暗示' したワケじゃないけど(苦笑)、この頃のチェットのライヴ音源のテープを用いてミニマル・ミュージックにしてしまったテリー・ライリーのコラージュ作品ともいうべき '珍品' をどーぞ。







The Mariachi Brass - feat. Chet Baker

スターダムへと押し上げられていったもののジャズの時代的変化に付いていけず、1950年代後半には自分への賞賛がまだ残るヨーロッパへ活動の拠点を移すチェット。しかし、度重なる麻薬癖の不祥事により1960年代半ばに再び米国の地を踏むこととなります。この時期、ジャズに変わって若者を虜にしていたのがロックであり、チェットらのスタンダードを中心としたジャズは古臭いものへと成り果てておりました。そんな仕事の急減を見かねて手を差し伸べたのが、かつてチェットのスターダムを仕掛けた 'Pacific Jazz' の社長、リチャード・ボック。ただし、そんなボックのレーベルも大手Libertyの傘下で 'World Pacific' と名を変えて、ジャズよりラヴィ・シャンカールのインド音楽やイージー・リスニングを手がけるなどすっかり様変わりし、チェットはジャズの奏者ではなく、当時A&Mでヒットを飛ばしていたハープ・アルバート率いるティファナブラスの向こうを張ったマリアッチブラスの 'ソリスト' としての起用でした。チェットのキャリアとしては最も '不毛' な時期とされ、当面の収入は増えたもののジャズ的な価値は一切なしとされているのが現状です。





ちなみに当時、同じくウェストコースト・ジャズのスターであったバド・シャンクも同様の再雇用となり、ザ・ビートルズの 'マジカル・ミステリー・ツアー' や 'ミッシェル' などをやらされていたっけ・・。そんなバドが大きなヒットの恩恵を受けたのがママス&パパス1965年の '夢のカリフォルニア'。オリジナルでのソロに呼ばれて吹いたフルートがまさに 'フラワーの風' となり、そのまま東海岸の人々を 'ゴーウェスト' の旅へと誘うきっかけとなりました。その直後にチェットと組んで再度吹き込んだ '夢のカリフォルニア'・・陽射し眩しい午後の昼下がりに聴いていたら気持ち良く眠ってしまいそうだ(笑)。この後、チェットの麻薬癖はますます酷いものとなり、売人たちとの支払いによるトラブルからこの時期、彼にとって大事な前歯を暴行により負傷してしばらく生活保護を受けるまでに転落・・。



彼はこれ以降のインタビューでこの事件をことさら最悪なものとして語り出すのですが、しかし、そもそも彼の前歯の1本はデビューの頃から欠けて無かったんですよね。どうやらチェットには憐れみを誘って同情を引く性向があり、この時のケガで仕事ができないということを理由に生活保護を申請して、不正受給でクスリを買っていたというのが真相のよう・・。





そんな失意のベイカーが1970年、久しぶりに大手Verveで吹き込んだのがこの 'Blood, Chet and Tears'。なんとチェットにブラスロック・バンド、ブラッド・スウェット&ティアーズのカバーをやらせる!というものなのですが、おお、この時期の 'ダメダメぶり' という世評に対してかなりラッパ吹きとして復調しているのではないでしょうか!?というか、そもそも調子は崩していなかったのでは?1970年代以降の復活で入れ歯による奏法へとスウィッチしたのは、むしろクスリのやり過ぎで歯がすべてダメになった、という風に解釈した方が腑に落ちますね。とりあえず本作は、ただジャズではないというだけで、むしろ、昨今の 'ソフトロック' 再評価の流れで見ればなかなかの佳作だと思います。なぜ今に至るまで再発しないのだろう?







この力強くもメロウな感じ。確かにボサノヴァなどに比べればチェットのイメージとはちょっとズレるかもしれないけれど、しかし、彼のソリストとしての '歌心' はどんなスタイルであろうとも全くスポイルしていないと思うんですよね。汲めども尽きぬ鼻歌のようなメロディ・・彼が終生クスリと共に手放さなかったものでもあります。



ジェリー・マリガンとの双頭カルテットでヒットした 'ロマンティックじゃない' とクールに装いながら、ここではジャック・ペルツァー(終生チェットのヤク仲間)を相手にまるで昼下がりのカフェで一服するようにスラスラと歌うチェット。彼の自叙伝を読むととてもまともに付き合え切れる人物ではないことが暴露されておりますが、しかし、彼のラッパはいつでも甘い囁きと共に多くの人を魅了するのでした。