2018年7月5日木曜日

'カリビアン・ファンク' 逃避行(再掲)

毎日猛暑・・ええ、夏なんだから当たり前。こんな時は、燦々と日差し降り注ぐマイアミ〜バハマのカリブ海沿岸の浜辺で寝そべっていたいもの。ホント、どうせ暑いのだからこのまま南国に逃避したい。

さて、そんなマイアミからバハマ一帯のカリブ海沿岸って、あまりブラック・ミュージックの匂いのしないイメージが昔からありました。同じカリブ海一帯でもニューオーリンズからハイチとドミニカ、そしてジャマイカの方が音楽的に豊かなイメージが強く、う〜ん、マイアミ? 'Get Down Tonight' のディスコヒットで有名なKC &ザ・サンシャイン・バンドの他には、一時、コンプレッサーでポップアップするアメ車に搭載したウーハーからブンブンとした超低音で踊らせる 'マイアミベース' なる頭の悪い音楽があったなあ、くらいの感じで縁のない印象・・。南国と音楽の関係性について勝手なイメージですけど、特にコンピュータ中心の制作環境で '宅録' をやっているイメージは、暖かい日差し溢れる日常より寒くて閉ざされた地域の方が活発なんじゃないか、という気がします。外に出て行く機会もなく、ひとり暗く自室に閉じこもってアレコレやっているというか・・毎日が澄み渡る青空と日差しの連続ならサンバ・カーニバル的 '夏祭り' な過ごし方をしますヨ。ま、ジャマイカの 'ダブ・マスター' たちはそんなセオリー?を覆した稀有な存在ですけど、しかし、リー・ペリーのように上半身裸でスプリフ片手に汗だくで '亜熱帯のサイケデリア' に塗れた人たちの姿は、単なる 'インドアー派' とは別の '不健康さ' に横溢しているとも言えますけど、ね(苦笑)。









そんなマイアミ〜バハマ一帯、実は音楽的に '不毛地帯' ではなかったことを証明する怪しいシリーズ 'West Indies Funk' 1〜3と 'Disco 'o' lypso' のコンピレーション、そして 'TNT' ことThe Night Trainの 'Making Tracks' なるアルバムがTrans Airレーベルから2003年、怒涛の如く再発されました・・。う〜ん、レア・グルーヴもここまできたか!という感じなのですが、やはり近くにカリプソで有名なトリニダード・トバゴという国があるからなのか、いわゆるスティールパンなどをフィーチュアしたトロピカルな作風が横溢しておりますね。実際、上記コンピレーションからはスティールパンのバンドとして有名なThe Esso Trinidad Steel Bandも収録されているのですが、その他は見事に知らないバンドばかり。また、バハマとは国であると同時にバハマ諸島でもあり、その実たくさんの島々から多様なバンドが輩出されております。面白いのは、キューバと地理的に近いにもかかわらず、なぜかカリブ海からちょっと降った孤島、トリニダード・トバゴの文化と近い関係にあるんですよね。つまりラテン的要素が少ない。まあ、これはスペイン語圏のキューバと英語圏のバハマ&トリニダードの違いとも言えるのだろうけど、ジェイムズ・ブラウンやザ・ミーターズといった '有名どころ' を、どこか南国の緩〜い '屋台風?' アレンジなファンクでリゾート気分を盛り上げます。ジャマイカの偉大なオルガン奏者、ジャッキー・ミットゥーとも少し似た雰囲気があるかも。しかし何と言っても、この一昔前のホテルのロビーや土産物屋で売られていた '在りし日の' 観光地風絵葉書なジャケットが素晴らし過ぎる!永遠に続くハッピーかつラウンジで 'ミッド・センチュリー・モダン' な雰囲気というか、この現実逃避したくなる 'レトロ・フューチャー' な感じがたまりません。







同じサムネ画ばかりで目がクラクラしているでしょうけど、この亜熱帯にラウンジな感じはまだまだ続きますヨ。誰かすぐにホテルを手配して航空機チケットをわたしに送ってくれ〜。今夜一眠りして、翌朝目が覚めたら一面、突き抜ける青空と青い海、降り注ぐ日差しを浴びながらプールサイドで寝そべっていたらどれだけ気持ち良いだろうか。







Steelpan

さて、カリブを象徴する楽器といえばトリニダード・トバゴのドラム缶で製作する創作楽器、スティールパン。このコロコロと南国ムード漂う音色をサイケデリックにファズの効いたギターとマリアージュし、まさに 'スティールパンのジミヘン' しちゃったのがこのヴィクター・ブラディ。別にパンを 'アンプリファイ' させたとかじゃなく、サイケロックに乗って惚けたパンの音色が疾走するという・・なぜソレでロックしちゃったの?と伺ってみたい '珍盤'。でも何かイイよね、こーいう '斜め上' のセンスでどーしてもロックやりたかったんだ、という迸る熱情が(笑)。ちなみにこのスティールパンは、それだけでオーケストラを組めるくらいいろいろな音域に合わせたものが用意されております。動画はジャコ・パストリアス・グループのカリプソ風ファンキーな 'The Chicken' でして、トリニダード・トバゴ出身のスティールパン奏者、オセロ・モリノーによる黒々とブルージーなスティールパンが素敵(何でも独特なキー配列のスティールパンなのだとか)。







さて、バハマといえば首都のナッソー(Nassou)、そしてナッソーといえば 'Funky Nassou' ということで、ここら辺で最も有名なのがバハマ出身のファンクバンド、The Bigining of The Endでしょうね。長いことその 'カリビアン・ファンク' を代表するバンドであり、1971年のヒット曲で聴こえる地元のカーニバル音楽、'ジャンカヌー' のリズムを取り入れたファンクは独特です。彼らのデビュー・アルバムは全編、優れたファンクを展開しながらこの後、ディスコ全盛期の1976年にバンド名そのままの2作目をリリースして消えてしまいました。







ハッキリいってこの 'Funky Nassou' だけで 'カリビアン・ファンク' はすべて片付いてしまうくらい影響力大なのだけど、う〜ん、さすがにこれだけ有名な曲だとYoutube以外では視聴制限をかけちゃうのか・・。んじゃ、この 'ジャンプアップ' するグルーヴを往年の 'Soul Train' でステップを踏む動画と共にどーぞ。そんな彼らのデビュー・アルバム 'Funky Nassou' はバラッド一切なしの極上ファンク・アルバムなのでまだ未聴な方はLet's Groove!ちなみにこのTrans Airのコンピレーション 'Disco 'O' Lypso' には、その 'Funky Nassou' のディスコ・カバーも収録されております。







上記Trans AIrレーベルのコンピレーション以外ではNumero Groupから登場の同種 'カリブ・ファンク' コンピレーション、'Cult Cargo Grand Bahama Goombay' もなかなかに暑い日差しの中で匂ってきそうな素晴らしい内容。ここにはデイヴ・ブルーベックの 'Take Five' やアイザック・ヘイズの 'Theme from Shaft' など名曲カバーもありますが、まあ、どれも見事に聞いたことのないB級、C級の 'ファンク・マスター' たちを詰め込んでおり、毎夜ターンテーブルに乗せてクラウドを踊らせるべく掘りまくる 'Digger' (掘り師)たちには感謝、ですね。ちなみにこれらコンピはカリブと銘打っておりますが、実際はカリブ海に面した米国フロリダ州マイアミ出身のバンドも多いので誤解無きように(苦笑)。





なぜか、この 'カリビアン・ファンク' の連中のレパートリーでよくやるのがザ・ミーターズのカバーでして、ここからカリブ海を前にメキシコ湾に面した港町、ニューオーリンズと汎カリブ文化の奇妙な結び付きを感じてしまうのはわたしだけでしょうか?ということでちょっとカリブから寄り道して、そんなシンコペイトするセカンドラインのグルーヴを確認すべく、プロフェッサー・ロングヘアによるファンクの源流 'Big Chief' と、アラン・トゥーサンのプロデュースでザ・ミーターズがバックを務めるアール・キングの 'Street Parade'。その '源流' として叩き出すスモーキー・ジョンソンと '直系' のジョゼフ 'ジガブー' モデリステによる両者セカンドライン、ぜひ聴き比べて頂きたい。





これらTrans Airからの一連の '再発' の中で、唯一単独のアルバムとしてリリースされたのがこの 'TNT' ことThe Night Trainの 'Maiking Tracks'。粘っこいセカンドライン風ファンクの蒸しっとしたグルーヴからワルター・ワンダレイのような 'エレベータ・ミュージック' 的オルガンの調べまで、ああ、プールサイドに寝そべって永遠の優雅な休日を過ごすべくウトウトと・・これぞ常夏の白日夢なり。









Cuica
Highleads 'Cube Mic' Electric Cuica

ちなみにこのスティールパンを始め、わたしは民俗楽器が大好きなのだけどその中米からグッと降って南米最大の '音楽大陸' ブラジルの打楽器、クイーカが大好きなのだ。そう、浅草サンバ・カーニバルなどで目にするキュッキュッ、フゴフゴと擬人化した笑い声というかある世代には懐かしい 'ゴン太くん' の鳴き声のアレですね。わたしのブログ的には(笑)マイルス・デイビスのバンドに在籍したブラジル人、アイルト・モレイラがデイビスのラッパの後ろで俯いて一心不乱にゴシゴシ擦ってる姿を思い出す人も多いのでは?また単純にゴシゴシと効果音を出しているだけ、と思われがちなこの打楽器ですが、さすがその道を極めるとこれで一曲 '口ずさむ' ように奏でることも出来るのだから奥が深い。わたし的には、デイビスのワウの使い方はジミ・ヘンドリクスのギターよりモレイラのクイーカが与えた影響の方が大きいと思っており、彼ら最初の '邂逅' ともいうべき未発表となった一曲 'Little High People' を是非聴いてみて欲しいですね。さらに追加で、メキシコ録音ながらピアニストのルイス・エサが率いた 'Sagrada Familia' のまさに 'ブラジルの奇跡' ともいうべき一枚 'Onda Nova do Brazil'。プログレ的な急速調のテンポで始まる一曲目 'O Homen da Sucursal / Barravento' でのクイーカと並ぶブラジル特有のパーカッション、ビリンバウの効果的な使い方が格好良い〜。そしてサイケな 'ブラジリアン・ファンク' の個人的お気に入り、Com Os Falcoes Reaisの 'Ele Seculo XX' でトリップして下さいませ。





そして、夏といえば忘れちゃいけないヴァイブの音色ってことで、スカ〜ロック・ステディ期を代表するジャマイカ唯一のヴァイブ奏者レニー・ヒバートと夏祭りの響き溢れるエチオピアン・グルーヴの重鎮、ムラトゥ・アスタトゥケをどーぞ。まるで日本の夏の風物詩を思わせる雰囲気・・ジャマイカやエチオピアなのにどこか懐かしい気持ちになるのはどうしてなんだろう?

0 件のコメント:

コメントを投稿