2021年1月4日月曜日

2021 - ペダルを踏み '世界' を巡る

世界が一変した2020年。それはこれまで誰も経験したことのなかった一年であり、端的に言えば '日常' から人の移動が消えてしまった一年でした。しかし、人が消えようとも一切の交流を絶ったところでそのまま '日常' は微動だにしない・・その絶対的な無力が怖かった。この '見えない恐怖' に慄いて未だ時計は2020年から止まったまま2021年を迎えるワケですけど、しかし、世界から毎年の如くペダルはその '踏みつける市場' に向かって次々と新製品を供給しているという不思議。人間よ、原点を見失うなよってことでしょうか?。












そんなペダル界隈で大きな変化だったのは、Juan AldereteとNick Reinhartのコンビによる 'Pedals And Effects' の '秘密基地' からのレビューが途絶えたこと。Juanが事故により一切の音楽活動を停止、現在も復帰に向けてリハビリ中だそうです。また、Dwarfcraft Devicesを主宰するBenjamin Hinzが新たな事業に乗り出すことでペダル製作を廃業、そのユニークなカタログが市場から消えてしまったことも残念でしたね。それは 'Pedals And Effects' 含め、この '魔法の小箱' に魅せられた者たちによる偏執的成果の集大成的全集 'Stompbox Book' を開けば、この世界の廃人たちによる '末路' がいかに凄まじいのかが理解出来るでしょう(というか、この '全集' を手に取ること自体その '予備軍' ですけど・・苦笑)。そして、ここ日本からもそんな '廃人' の集大成を '踏む or DIE' と名付けて記録した一冊 'Cult of Pedals' が刊行されました。




 

 






Pedal Shop Cult ①
BJF Electronics Pine Green Compressor Deluxe

その膨大なコレクションを開陳するのは一昨年、ここ日本から 'ヴィンテージ' の遺産を新たな解釈と共に展開したPedal Shop Cultの活躍が象徴的ですね。とにかくペダル好きな人たちの気持ちを熱くさせたというか、わたしはここの商品展開を見て初めて '瞬殺' という言葉の意味を知りました(笑)。現行品Pine Green Compressorの原型であるCultプロデュースによるBJFE Pale Green Compressorの '復刻' はホントに良いモノでしたヨ。いわゆる 'Re-Product' としてMad ProfessorやBearfootなどからもライセンス生産品が登場しておりますが、やはりBjorn Juhl本人の手がけたものは特別です。去年GETしたスウェーデン産新旧 '2大コンプ' の2ショット!。









この手の 'ペダル・レビュー' なYoutuberとしては早くからマニアックにやっていたDennis Kyzerさん。たぶん収入のほとんどをこーいうガジェットに注ぎ込む 'ペダル廃人' で、決してメーカーから支援されて '提灯レビュー' なんかしないゾ!という、こちらが勝手な人物像を思い描くくらいストイックな印象がありまする。実際、本人は動画に姿を現さないし、そんなことよりいつも 'Effects Database' やネットの前を陣取って、世界の片隅にある小さな工房の製品を真っ先に試すことに快感を覚えてるんじゃないだろうか?・・と思っていたら動画で顔隠してギターを弾く姿を晒してますね(笑)。











そんなマニアックなDennisさんから一転、デンマークから発信するThe Pedal ZoneさんはむしろSNSの恩恵をたっぷりと使ってメーカーと提携、オサレに世界各国のペダルをレビューしている感じがありまする。何か編集など、以前に人気を博していたPro Guitar Shopの動画あたりを参考にしてギタリストが望む情報を上手く掴んでますね。ちなみに同様のスタンスでは、カナダから発信するKnobsさんがエレクトロニカ限定ながらオサレな動画でレビューしているというイメージがあります。










こちらも 'Pedals And Effects' の代わりというワケではありませんが、積極的に 'ペダル・ジャンキー' ぶりを発揮するJHS Pedals主宰のJosh ScottとReverb.comで元PGS(Pro Guitar Shop)の名物レビューギタリストであったAndyによる各々 'ベストペダル' をお送りします。しかしJHSのJoshさんって自身の膨大なコレクションやユニークな視点からのセレクションによる 'ペダル・レビュー' はもちろん、その醸し出す風貌も見るからに 'オタク' って感じだ(笑)。今年からはその趣向も変わり、これまでの去年の 'ベストペダル' 選出を止めて、'Greatest Pedals of The 21st Century' と題し '2021年の期待株' であるEarthquaker Devices、Wampler Pedals、Alexander Pedalsのビルダー3人がそれぞれ選ぶ 'ベストペダル' をJoshさんがチェックします。そして、LAの楽器店Vintage King Audioが選ぶ(何故か2020年の6月にUPした動画だけど) 'DAW' 用含めた 'ベスト・エフェクター' もご一緒にどーぞ。



JHS Pedals主宰のJoshさんによる '2020ペダルの宴' とエレハモのレアなペダルのご紹介。背面の棚ビッシリに収納されたお馴染みの風景はもちろん、机の上もビッシリのまるで駄菓子のような '2020年ベスト' のペダル、ペダル、ペダル・・世界は未だ引き篭もって未曾有の危機に耐えておりますけど、一方ではこんな緩〜い感じでいいんじゃないでしょうか(笑)。とりあえず、いまやれることを見つけるしかありません。









また、いつも2人揃ってニコニコゲラゲラ、その画面の向こう側からも楽しい雰囲気が伝わってくるDanielとMickのコンビ 'That Pedal Show' もわたしが大好きなペダルYoutuber。嬉しい 'ギターシンセ' の特集をどーぞ。そしてピックアップでお馴染みSymour Duncanが本格的にエフェクター市場へ参入・・したのだけど、どうもイマイチその風が吹いて来ない(苦笑)。'ギターシンセ' のFoozはそのフラッグシップ機として構成的にはLudwig Phase Ⅱと似ておりますが、あれほどのエグさはない代わりにKeeley Electronics Synth-1やPigtronix Mothership 2、Source Audio SA249 C4 Synthの好敵手といった感じ。しかしChase Bliss Audioなどもそうだけど側面のDipスイッチが最近のトレンドなのかな?。そのC4 Synthは独立した4ボイスによりモノ/ポリフォニック・ピッチシフトからインテリジェント・ハーモナイズ、ディストーションからトレモロ、フィルターまで個別にアサインすることが可能。内蔵のオシレータはサイン波、スクエア波、ノコギリ波の波形3種をそれぞれ組み合わせて合成します。ADSRトリガーを備えたエンヴェロープ・フォロワーも11種から選択可能、VCFとLFOはそれぞれ25種と14種から選択、変調させることが可能でその揺れをサイン波、スクエア波、ノコギリ波、サンプル&ホールドによりランダムにアルペジオを走らせます。さらに、エクスプレッション・ペダルから同時使用可能な2つのプログラマブルな16ステップ・シーケンサーを備えるなど至れり尽くせり。またデジタルらしく6つのユーザー・プリセットとUSB端子により、MIDIで128のファクトリー・プリセットへとアクセス可能。また、本機で作成した膨大なプログラムをPC上で管理、エディットすべくメーカーから 'Neuro Desktop Editor & Neuro Mobile App' というフリーソフトが用意されており、さらに細かなパラメータをしつこく弄って、と・・う〜ん。何か '在りし日の優秀な日本家電' を彷彿とさせますけど、果たしてこーいう '技術者のこだわり' ってどのくらい実際のユーザー(多分、大半がギタリスト)に反映されてるんですかね?。ほとんどダウンロードされないまま 'ディスコン' になりそうな・・予感(汗)。そして、ペダル界の '仕事請負人' とも言うべき困った時の味方、Earthquaker Devicesには 'PLL' こと 'Phased Locked Loop' (位相同期回路)という入力信号からフィードバックで制御したものを短形波に変換、その周波数をマルチプルまたは分割して元のピッチから倍音を生成するData Corupterや 'ビット・クラッシャー' であるBit Commanderがありますね。










ちなみにその 'PLL' 回路を用いた究極ものとしてはこちら、現在Reverb.comで 'FT Elettronica' のブランド名により復活して販売中のSchumann PLLというものがあります。しかし、やはり手に入れたいのは 'Schumann Electronics' の名で少量製作された '初期モノ' が同じくReverb.comで複数出品中!。本機のレア度ゆえに '奇跡' の瞬間であることがそのあまりに '底上げ' された幅のある値付けに現れておりますが、ただ40万超えというのはやり過ぎ(汗)。一方の、クリッピング回路による 'トーン・シェイパー' な効果を生成して 'ワウ半踏み' 的ジューシーに歪ませたその名もスバリ 'LSD'。そして、ニューヨークで '飛び道具' のペダルばかりを製作するOliver Ackermann主宰の工房、Death by Audioからフィルター系ペダル2種。どちらも '歪み' をベースとしたフィルターの変異系であり、よりギターシンセ風のEvil Filterとエンヴェロープ・フォロワーのトリガー機能でリズミックなアプローチにも対応するDeep Animationという '住み分け' が出来ております。フツーのフィルター系に飽きた人は是非とも手に取って頂きたい。まだまだ面白いペダルが世界のあちこちから名乗りを上げてくるのは嬉しいですね。







Beetronics Swarm

米国カリフォルニア州ロスアンゼルスに工房を構えるBeetronics。アレ?この工房の製品はちょっと前にLep Internationalが代理店をやってたと思ってたけど、いつの間にかUmbrella Companyに移譲したんですね。とにかくその美しいレリックな '一点もの' 的デザインとハニカム・デザインなPCB基板による丁寧な配線は、このブランドがその中身のみならず所有する楽しみに至るまで考えられていることが分かります。結構、このスペシャルな 'アート' をコレクションしているユーザーも多いのでわ?このSwarmはBeetronics流の '擬似ギターシンセ' であり、まるで数千匹の蜂が襲ってくるような分厚くヒステリックなハーモナイズ・トーンに魅力があります。本機のキモであるSpiciesでそのハーモナイズを9種から選択、QueenとDroneツマミで2オクターヴのハーモニーをそれぞれ個別に調整、さらにFlightとStingツマミでそのハーモナイズに適用されるモジュレーションを設定します。





Korg MS-04 Modulation Pedal
Korg SDD-3000 Pedal - Programmable Digital Delay
vimeo.com/160406148

そんな、いささか '手垢' の付いた感のある 'ギターシンセ' のアプローチですけど、一昨年BossからSY-1 Synthesizerなども登場して一応業界的には盛り上げようという意志はあったみたい(笑)。そのRolandもやってるのだからKorgもそこに乗らない手はないでしょう、ということで、ここ数年ほどKorgは数々の '往年の名機' を復刻、リファインなどで市場に提供して現役若者から '在りし日の若者' (こっちがメインか・・笑)に至るまで '温故知新' に勤しみました。現Korgが誇る 'レジェンド'、三枝文夫氏が携わったNuvibe、SDD-3000 Pedal、MS-20 Mini、さらに海外の名機であるArp Odyssey・・その怒涛のラインナップはこれまでマニアの占有物であった音作りを幅広いニーズに開陳しましたね。そして・・忘れちゃいけいないX-911をそろそろ現代の市場に蘇らせてはどうでしょうか?。その名称からギター専用機と捉えられてしまいますが、本機のカタログでは管楽器やヴォーカルなどあらゆる入力に対応して新しい音作りを推奨しておりました。そんなX-911をサックスで吹いているRian ZoidisさんはどうやらKorg製品大好きなようで(笑)、X-911のほかレアなLFOのCVペダルMS-04やSDD-3000 Pedalなども愛用中。ちなみにわたしも過去に本機を所有しておりましたが、あのカラフルに並ぶタクトスイッチのタッチが次第に反応悪くなるのがイヤで手放しちゃった。もし復刻版が出るのであればそこら辺の品質も是非上げて頂きたい。







  



なかなかの '物量' で整然とブチ込んでおりますが(笑)、Meris、Chase Bliss Audio、StrymonそしてEmpress Effects ZoiaやSource AudioのC4 Synth、Eventide PitchFactor、Bossのプラグラマブル・スイッチャーES-5など、高品質かつMIDI同期に対応した仕様を備える製品で統合したシステムを構築することが可能ですね。これまでこのような同期やプログラムに対応したものはラックやマルチ・エフェクターに特化した分野でしたけど、ここ最近はコンパクト・エフェクターの分野でも充実したシステムで組めるようになりました。もちろん、このような大仰なシステムを組まずともループ・サンプラーやワンショットの 'Hold' 機能を持つペダルが一台あるだけでもより豊かな発想を刺激します。









RedShift Effects
Electro-Harmonix Attack Decay - Tape Reverse Simulator

さて、'シンセサイズ' とペダルの関係としてはここ近年の流れとして 'モジュラー' に触発されてきており、CV入出力を備えたペダルが市場を賑わせておりまする。CVとは 'Controlled Voltage' の略で電圧制御により同期、コントロールするモジュラーシンセではお馴染みの機能です。例えば、この2種の製品でも 'CV' により 'モジュラーシンセ' とのやり取りを推奨しているんですよね。まずは一風変わったディレイのRedshift Effects Mirage。DSPによる最大3秒のリバース、オクターヴアップリピート、パターンをユーザー自身でカスタマイズ出来るマルチタップ・ディレイを中心に4種のモジュレーション(トレモロ、ローパス、ハイパス、リゾナント)を備え、さらにスイッチ一発でフィードバック発振をコントロールするなど多彩な効果を発揮します。またDecay、Dep/Pat、Rate/Varの3つのツマミはそれぞれエクスプレッション・ペダル及びCVによる電圧制御!に対応しており、これはここ最近のペダルと 'モジュラーシンセ' の混合した関係を睨んだ機能だと言えるでしょう。そして最近のデジタル機器で当たり前となったUSBによるファームアップデートへも対応しており、本機で作成したパターンや細かな設定をPCとやり取りすることが可能です。そんなディレイにもう一味、さらに拡張した音作りに威力を発揮するのが現在ではあまり話題に登らなくなったエンヴェロープ・モディファイア。この手の 'ニッチな' アイテムならお任せの 'エレハモ' から往年の迷機、Attack Decayが現代的にパワーアップして再登場。シンセサイザーでお馴染みのADSR(Attack、Decay、Sustain、Release)と呼ばれるエンヴェロープを操作するもので、この新作ではそれをワンショットのモノラル、ポリフォニックの2つのモードに3つまでセーブ/リコールのプリセット可能です。また効果をより鮮明にすべくファズも内蔵し、いわゆる本機の効果で最も有効性のある 'ヴォリューム・エコー' に最適な 'センド・リターン' を搭載することで、ここにディレイやモジュレーションを繋いで積極的な音作りに活用出来ます。本機のツマミはエクスプレッション・ペダルのほか、これまた最近の風潮に則ったCVにも対応することで 'モジュラーシンセ' からもコントロールすることが可能。








BoardbrainのTransmutronは、パラレルで個別、同時にミックス出来るほか 'Fission'、'Fusion'、Fallout' の3種モードにより、2つのLoopの機能を変更することが可能なコンパクト・エフェクターとエクスプレッションCV、'ユーロラック' モジュラーシンセのCVによる統合したスイッチング・システム。

●Fission
このモードでは、入力された信号の周波数帯を分割し、それぞれを2つのLoopにスプリットして再びミックスして出力出来ます。Umbrella Company Fusion BlenderやVocuのMagic Blend Roomなどと同種の機能ですね。またエクスプレッション・ペダル及びモジュラーCVでのコントロールにも対応。

●Fusion
このモードでは、2つのLoopのバランスを調整してブレンドすることが出来ます。これらミックスのバランスは筐体真ん中にあるSplitpointツマミ、またはエクスプレッション・ペダル及びモジュラーCVでのコントロールにも対応。これはDwarfcraft Devices Paraloopと同種の機能に当たりますね。

●Fallout
このモードでは、2つのLoopの前にワイドノッチ・フィルターを適用して、Splitpointツマミやエクスプレション・ペダル及びモジュラーCVでのコントロールにも対応。ペダル・コントロールすることでワウのような操作を付加することが出来ます。また本機には、これとは別にHicut、Locutのフィルターを搭載して音作りに適用することが出来ます。

ちなみに本機搭載のフィルターは12dB、24dB、48dB/Octのスロープ角度を選択出来、それぞれFission、Falloutモードのワイドノッチ・フィルターにも適用されます。もちろん、Ch.2のLoopでフェイズアウトが起こった際の位相反転にも対応出来るのは素晴らしい。そして2つのLoopからなる 'Send/Return' にはフォンと 'ユーロラック' モジュラーでお馴染み3.5mmミニプラグが同時対応し、さらにこの3.5mmのLoopには内部DIPスイッチにより楽器レベルとラインレベルで 'インピーダンス' を切り替えて使用することが出来ます。





Spaceman Effects Mission Control on Reverb.com

こちらSpaceman EffectsのMission Controlは、オートフェーダー、エフェクトループ、Dry/Wetブレンダー、パラレル・スプリッター、2チャンネルミキサー、エンヴェロープ・ジェネレーター(EG)のCVコントロールにも対応するスイッチング・ユニット。本機の中核を成すのはVCAで7種のモード切り替えとエフェクトループ、CV In/Outを併用することで多彩な効果を生成します。通常のIn→Out接続ではモメンタリーなActuateスイッチをトリガーにしてオートフェーダーになり、さらに本機のエフェクトループに他のペダルを繋ぐことで原音とエフェクト音(Dry/Wet)のミックス、全面に並ぶEGのコントロールAttackとReleaseは65msから33秒までの広い範囲で設定可能で、素早い立ち上がりから長い減衰までエンヴェロープをコントロールします。また付属のCV-TRS変換ケーブルでエクスプレッション・コントロールも可能。

●Offset
ゼロ以下の最小音量レベルを設定します。最小の音量からエフェクトが始まるモードでは、Offsetツマミでその音量を設定し、最大の音量からエフェクトが始まるモードでは、最終的な音量を設定します。

●Attack
'Actuate' スイッチが押されてから効果が現れるまでのスピードを設定します。各モードにより、効果が現れるまでのスピードと効果が消えるまでのスピードをそれぞれ切り替わります。

●Release
'Actuate' スイッチの効果が終わるまでのスピードを設定します。各モードにより、その効果が終わるまでのスピードと効果が戻るまでのスピードにそれぞれ切り替わります。

●Blend
エフェクトループ使用時にDry/Wetのレベルのバランスを設定します。またこのコントロールはエフェクトループ使用に関わらずブースター的設定も可能。Dry信号は本機背面にある 'Phase' スイッチを通っており、これはどのような場合でも原音は常に入力時から確保されております。

●Phase
本機背面にある小さなスイッチで、Dry信号の位相をコントロールします。'Blend' ツマミ使用時にエフェクトループに繋いだエフェクターと位相を揃えたい時に使用します。

●Mode
本機は'Gate(GT)'、'One Shot(OS)'、'LFO(LF)'、'Trigger(TRG)' の4種モードを備えており、その内の3種類に 'Up' と 'Down' の選択肢があります。

:Gate ↑
'Acuate' スイッチが押されると最大音量('Offset' ツマミで設定された音量)から 'Attack' ツマミで設定されたスピードで音がフェイドインして最大音量となり、'Actuate' スイッチが押されている間は音量を保持します。'Actuate' スイッチを離すと 'Release' ツマミで設定されたスピードで、最大音量まで音がフェイドアウトします。

:Gate ↓
'Actuate' スイッチが押されると最大音量から 'Attack' ツマミで設定されたスピードで音が最小音量('Offset' ツマミで設定された音量)までフェイドアウトし、'Actuate' スイッチが押されている間は音量を保持します。'Actuate' スイッチを離すと 'Release' ツマミで設定されたスピードで最大音量まで音がフェイドインします。

:Oneshot↑
'Actuate' スイッチが一回押されると最小音量('Offset' ツマミで設定された音量)から 'Attack' ツマミで設定されたスピードで音がフェイドインし、自動的に 'Release' ツマミで設定されたスピードでフェイドアウトします。

:Oneshot ↓
'Actuate' スイッチが一回押されると最大音量から 'Attack' ツマミで設定されたスピードで音がフェイドアウトし、自動的に 'Release' ツマミで設定されたスピードでフェイドインします。

:LFO ↑
'Actuate' スイッチが一回押されるとLFOが働き、最小音量よりフェイドアウトします。LFOの波形とスピードは 'Attack' (増)と 'Release' (減)ツマミでそれぞれコントロール出来ます。再び 'Actuate' スイッチを押すとLFOが止まり最小音量に戻ります。

:LFO ↓
'Actuate' スイッチが一回押されるとLFOが働き、最大音量よりフェイドアウトします。LFOの波形とスピードは 'Attack' (減)と 'Release' (増)ツマミでそれぞれコントロール出来ます。再び 'Actuate' スイッチを押すとLFOが止まり最大音量に戻ります。

:Trigger
'Actuate' スイッチが一回押されると最小音量より 'Attack' ツマミで設定されたスピードで音がフェイドインし、最大音量を保持します。再び 'Actuate' スイッチが押すと 'Release' ツマミで設定されたスピードでフェイドアウトします。

:Actuate
全てのモードでトリガーとして機能するモメンタリースイッチ。選択されたモードに応じてシングルタップか、モメンタリーホールドに切り替わります。

Recovery Effects Cutting Room Floor V.2 (discontinued) ②
Recovery Effects Sound Destruction Device V.3

Mission Controlの次はピッチ・モジュレーションの変異系と呼ぶべきRecovery Effects Viktroluxをチョイス。米国ワシントン州はシアトルに工房を構えるGraig Markel主宰のRecovery Effectsはかなりユニークなラインナップを誇っているのですが、このViktroluxはディレイタイムに対してCVで 'Trigger' 入力がかかり、外部ドラムマシンのテンポと同期してリズミックな生成へと変調します。その構成する各種パラメータもかなりヘンテコなもので、いわゆるディレイとしてのTime、エフェクト音と原音のBlend、全体の音量であるVolumeを本機の特徴であるテープのグニャグニャしたFlutter、その波形を三角波からスクエア波まで可変するShape、Flutterをさらに '酔わせまくる' ツマミのWow、通常のディレイと '変態' 効果の切り替えを担うStability、ワンショットとマルチプルでディレイを切り替えるRepetitionと一筋縄ではいきません。取説にはわざわざ '究極の不安定化' と記載してある(汗)。ちなみにこのViktroluxはすでに 'ディスコン' となり、現在この機能は 'グリッチ' 系ペダルのCutting Room Floor V.2に '移植' され健在でございます。また、強烈なディストーションとVCF発振で 'シンセサイズ' するSound Destruction Deviceなどもラインナップしたりとちょっと変わったペダル好きにはたまらないでしょう。最近は 'モジュラーシンセ' 用のモジュール製作にも勤しんでおり、そりゃ、ここまでブッ飛んでいれば納得かも(笑)。


ペダルでこのような 'プチ・モジュラー気分' を味わう為にWMDから唯一無二の変態フィルター、ProtostarによるCVのパッチングを次に取り上げるJMT SynthのPWH-16と組み合わせてみたら面白いでしょうね。そのProtostarの筐体上面にズラッと並ぶ9つのCV/Gate端子の凄み。本機内でのEnv OutやLFO OutをLFO RateやLFO Amt、Freq、Feedbackにパッチングすればそのまま 'プチ・モジュラー気分' を味わえます(笑)。この手の音作りを 'ガジェット' として使いこなすコツは、各ツマミを一気にグイッとあれもこれも回し過ぎないこと(それやるとあっという間に飽きます)。その回し切る半分くらいに戻しながらその他ツマミ、スイッチと塩梅を取りながら '耳を澄ます' ことで、いま鳴っている音の表情が 刻々と変化している面白さに気が付くと思いますヨ。

●Attack
エンヴェロープが信号に反応する速さを調整。このツマミでAttackとReleaseの両方をコントロールします。
●Threshold
信号に対してエンヴェロープが反応する敏感さを調整。
●Env Amt
エンヴェロープがフィルターの周波数にどの程度影響するかをコントロールするアッテネーターです。正負両方の設定が可能。
●Resonance
フィードバックやQと同様の意味を持つコントロール。カットオフ周波数周辺のブーストを調整します。
●Freq
フィルターのカットオフ周波数を設定します。
●LFO Rate
前うLFOのスピードを調整します。
●LFO Amt
LFOがフィルターの周波数にどの程度影響するかをコントロール。
●Compression
信号の最終段にあるコンプレッションの強さを調整。余計な音色や共振を抑えるために使用します。
●Dry / Wet
エフェクト音に原音をミックスします。
●Mode
本体の動作モードをボタンで切り替えます。4つのモードは上からノッチダウン、ハイパス、バンドパス、ローパスです。
●Send / Return
外部エフェクトループ。フィルターの前段に設置したいエフェクトを接続します。
●CV / Exp
エクスプレッションペダルを電圧制御(CV)でコントロール。この端子はExp Outに直結します。TRSフォン使用。
●Sidechain
エンヴェロープ・フォロワーへのダイレクト入力です。外部ソースを使用してエンヴェロープ・フォロワーをコントロール。
●Exp Out
CV / Exp入力の信号を出力します。ここからエクスプレションペダルで操作したいソースへと接続。
●Env Out
常時+5Vを出力し、エンヴェロープがトリガーされると0Vになります。
●LFO Out
トライアングルウェーブのLFOを出力します。スピードはLFO Rateでコントロール。
●LFO Rate
LFOのスピードをコントロールするためのCV入力。
●LFO Amt
LFO Amtコントロールを操作するためのCV入力。
●Freq
カットオフ周波数を操作するためのCV入力。
●Feedback
レゾナンスを操作するためのCV入力。






そしていよいよFree The Toneからいわゆる '飛び道具' に属する 'グリッチ/スタッター' 系エフェクターのMotion Loop ML-1Lが登場。基本となる構成はLoopの長さ最大4秒、BPMのテンポ設定により7つのパターンからその長さを調整するかたちで、無段階ではBPM60を基準とした長さでRateが調整されます。パラメータはLoopの長さを調整するRate、E.Level、Filter、ParameterとSave、Homeに左右で操作するカーソルボタンから構成され、On/Offスイッチと保存するPreset用のフットスイッチの2つを搭載。面白いのは40dBを超える入力に反応してリトリガーされて新たなLoopを自動的に作成、その長さより短いLoopがオーバーダブされた場合でも常に元のテンポに従うよう設定されております。Filterはセンターより右でHipass、左でLopassにかかりエンヴェロープ、シンクロスピード、BPMの3種から選択可能。いわゆる 'グラニュラー' のモードとしてはPitch Shift、Delay、Fadecurve Effect、Reverse、Soft Clipping、Slowdown、Randomの8種で ユーザー・プリセット数128、ファクトリー・プリセット数35を備えております。

 







このFree The Tone以外では、S3NやMasf Pedalsと並び '国産グリッチ' の先鞭のひとつである '黄色い手のひらサイズ' でお馴染みBananana Effects。ミニサイズにしてデジタルでしか実現出来ない効果を発揮するこの工房の製品はどれも '飛び道具' ばかりなんだけど(笑)、いわゆる 'グリッチ' に的を絞ったMandalaと 'ピッチシフト' を中心に逆再生ディレイや 'グリッチ' 含めた変異系に寄せていったAuroraが素晴らしい。まずMandalaの8つのモードは入力直前の音を再生速度を可変させながら繰り返す 'Repeat'、そのリピート音をランダマイズにする 'Random'、逆再生モードである 'Reverse'、自動にループ再生する 'Triger'、いわゆる8ビット系サウンドに変換してルー日再生させる 'Square Triger'、それをオクターヴでミックスする 'Square'、ピッチシフトをそれぞれ上昇、下降で再生させる 'Up' と 'Down' と盛りだくさん。一方のAuroraはそこから 'ピッチシフト' に特化したもので、これまた8つのモードは繰り返す度にクロマチックでピッチが上昇、下降する 'Pitch Up' と 'Pitch Down'、Holdでサンプリングした音を倍速で再生させる 'Speed Up'、さらにそれをトリガーによる自動モードにした 'Speed Up Trigger'、逆再生モードの 'Reverse'、フィードバック・ディレイとして再生方向が反転する 'Cascade Reverse'、ループさせたフレイズを逆再生させる 'Multi Reverse'、それをトリガーで自動モードにした 'Reverse Trigger' と・・ふぅ、小さいのにこの満載感。また、この手の 'ニッチな' ペダルに共通する価格帯としては安価で気軽に試せるのが嬉しいですね。ちなみにこの2機種の効果を一台でまとめてしまったものとして、この手の 'グリッチ' 効果生成で一躍その名を馳せたRed Panda Particleがありまする。

 





Danelectro Back Talk BAC-1
Danelectro Back Talk DR-1 Reverse Delay on Reverb.com

コレもついに再登場!'Danelectro 60's Series' として発売時の無関心から早々に 'ディスコン'、その後に某アーティストが本機のトリッキーな効果を披露して競合機皆無の 'リヴァース・ディレイ専用機' であることから高騰、今風に言えば 'バズり' ました。いわゆる 'ダンエレ' のペダルといえばその古き良き50'sな香りをデザインに盛り込んだチープな作りとして、どうしても楽器店のワゴンセールか通販で気軽に買うものというイメージがありましたね。その中でもこの '60's Series' はエフェクター黎明期の雰囲気をペダルに落とし込み、まさにテープの逆再生効果を狙った本機のほか、強烈なテープ・フランジング効果のPsycho Flange DF-1、そしてインドの民俗楽器シタールをシミュレートしたDDS-1 Sitar Swamiの3種をラインナップ。その中でもこのBack Talkこそ一時のプレミア状態を乗り越えて現在の市場に復活、さあ、思う存分そのユニークな逆再生効果を堪能しようじゃありませんか!ちなみにこの '復活版' で面白いのはわざわざ筐体やツマミ、スイッチに傷や汚れを施す 'レリック仕様' であること。つまり一台一台ビミョーに '表情' が違うというか、工房のおじさんが '仕様書' に倣って?日頃のストレスを発散しながら傷付けているかと思うとちょっと面白い(笑)。

●Mix
このツマミはディレイの信号の出力レベルを調節します。右に回すと多く、左に回すと少なくなります。
●Speed
このツマミはディレイタイムを調節します。右に回すと長く、左に回すと短くなります。
●Repeats
このツマミでディレイのリピート音を調節します。右に回すと多く、左に回すと少なくなります。ディレイ・メモリーをクリアーする場合はRepeatsのツマミをゼロにし、Repeatsを希望のセッティングへ再度設定します。

Demedash Effects T-120 Video Tape Echo V1 'Hand Wired'

本機を見ておおっ、これは '昭和/平成前期世代' には懐かしいパッケージ。当時、今の世代にはピンと来ないであろうテレビの録画にはVHS/ベータのビデオテープというものが必須でした。その中でSonyが発売していたビデオテープがこのT-120であり、そのパッケージをまんま 'Video Tepe' 的質感のローファイなエコーとして落とし込んだのがカナダの新興工房Demedash Effects。そして本機は早くも 'Version 2' としてマイナーチェンジが行われ、モメンタリースイッチ変更と共にDepth、Speedの '同時操作' でそれぞれネジれたモジュレーションのGlide、グリッチ風LFO効果のRandomizeを生成します。実際はテープ特有の 'ワウ・フラッター' を再現したグリッチというにはちと地味な '隠れ機能' で、その曖昧さからリヴァーブの延長的な暖かいディレイ効果が本機の '売り' ですね。

●Time
ディレイタイムを調整し、最大で1.5秒まで設定できます。また左に回し切ることでモジュレートのエフェクトのみを使うことができます。
●Echo
原音とエフェクト音のミックスを調整します。
●Intensity
ディレイのリピートを調整します。また、ツマミを右に回していくとEchoの量次第で自己発振をします。
●Depth
エフェクト音にかかるモジュレートの強さを調整します。右に回すほど不安定で壊れたVCRのようなサウンドになります。
●Speed
モジュレートの速度を調整します。右に回すほど速度が強くなり、印象的なテープサウンドを生み出します。
●Tape Quality
ウェット音の劣化具合を調整します。
●Red LED
ペダルのOn/Off。
Yellow LED
モジュレートの強さ/速度を可視化します。
●Glide
モメンタリースイッチを踏み込みながら 'Depth' を操作することでモジュレーションのピッチを一時的に音が飛ぶようなサウンドから従来のスムースな揺れまで操作します。
●Randomize
スイッチを踏み込みながら 'Speed' を操作することで波形の周期、振幅をランダムにできます。右に回すほどランダムの度合いが増していきます。









Diamond Guitar Pedals Memory Lane MLN-2 (discontinued)
Line 6 DL4 Delay Modeler

ここからさらにディレイを2つ追加。まずはNOSのBBDチップPanasonic MN3005を盛り込み、タップテンポを備えたアナログ・ディレイDiamond Guitar Pedals Memory Lane 2の 'Feedback' に外部ペダルを 'インサート' します。本機を使ってアプローチしてみたいのはいわゆる 'ヴォリューム・エコー' の効果で、これはディレイの前にヴォリューム・ペダル、もしくは音のアタック、サスティンを操作するエンヴェロープ・モディファイアを繋ぐことで幻想的なエコーを生成するもの。エンヴェロープ・モディファイアは手持ちでPigtronix Philosoper Kingがあったので接続し、600msの短いタイムを持つディレイ音のアタック、サスティンをフワッと '逆回転風' に操作します。ちなみにここでの音作りのキモはMeet Maude、Philosoper King両方に内蔵されているコンプレッサーのかかり方。Meet MaudeのコンプはSoft、Hardのどちらかをディレイ音にのみかけて、さらにPhilosoper Kingのコンプを調整することでガッツリかつミチッとした量感でダイナミクスを演出します。このような空間系ペダルとエンヴェロープ・モディファイアの相性はかなり良くて、例えば 'エレハモ' のリヴァーブCathedralの前段に繋いでアタックをコントロールするだけでも面白いですね。安価なものとしてはMalekkoのA.D.やGuyatone SVm5などが狙い目ですけど、これらニッチなペダルはPigtronix Philosopher King同様にどれも 'ディスコン'・・(悲)。まあ、ちょっと検索すればデッドストックや中古などがすぐ見つかるとはいえその人気の無さがよく分かります。ちなみにこの効果で人気を博したのは 'アナログ・モデリング' なデジタル・ディレイで一世を風靡した名機、Line 6 DL4 Delay Modelerに搭載された 'Auto Volume Echo' のプログラムですね。













さて、このような外部ペダル使用の 'インサート' を備えたディレイでは、その端緒としてマニアックな人気を博したBlackbox Quicksilverを始めMoogerfooger MF-104 Analog Delay、Carl Martin Echotone、ここ最近の現行品としてはSkreddy Pedals EchoやFairField CircuitryのMeet Maude、JHS Pedals Panther Cub V1.5などが探すと意外に見つかりますヨ。ここではその 'ニッチな機能' の探求として上から動画順にピッチ・シフター、コーラス、フェイザー、リヴァーブ、ディストーションをそれぞれ 'インサート' しておりまする。ちなみにMemory Lane 2の取説、英文の方は記載があるものの日本語訳のものではこの 'Feedback' 端子使用でエクスプレッション・ペダルのコントロールのことしか書いてない(汗)。ギタリストには馴染みの薄い 'インサート・ケーブル' 使用ということで省いたんかな?(苦笑)。


そんなわたしの '手持ち' による環境としては、完全に原音とミックスされたディレイ音を外部ペダルと 'インサート' することに特化した攻撃的なディレイMoody Sounds Strange Devil Echoとエンヴェロープに特化した風変わりなループ・セレクター、Toadworks Enveloopによるそれぞれ 'インサート' 技。ディレイのエコー音に対してエンヴェロープが先か後か・・まさにニッチな実験です(笑)。


個人的に去年はかなりペダルを買ってしまった一年でして、これは結構な時間を家で過ごさざるを得なかったコロナ禍のせいにしておこう(苦笑)。新旧いろんなペダルを興味の趣くまま手にしましたけど、やはりスウェーデンの '秘境' とも言うべきElektronや奇才Bjorn Juhlが手掛けるBJFEの元祖的存在であるCarlin Electronicsのペダル2種が揃ったことは快挙!。2016年にMoody Soundsからの復刻によってその存在を知ったCarlinことNils Olof Carlinは、1970年代初めにPhase PedalとCompressorを各々100台弱の生産数で終了したことでスウェーデン最初の 'ペダル・デザイナー' となりました。そんなCarlinの残る当時の製品としては僅か3台のみ製作したというイレギュラー品のRing Modulatorが揃えばコンプリートなんですけど、まあ、こればかりはかなり望み薄の予感・・。とりあえず今後、引き寄せられるように初詣で願掛けしておきます(笑)。しかし、やたら 'Carlin推し' してるけど(苦笑)、そのくらい手に入れられたことが嬉しい出来事だったのだ。










2016年にMoody Soundsの手により復活したNils Olof Carlinのペダルはその本人の手のもと、当時の使いにくい仕様(左In/右Out、LED/DC入力無し、バッファードバイパス)を現代的なかたちに見直し、単なるヴィンテージの '復刻' ではなく新たな音楽シーンの中でも効果的な威力を発揮出来るものに仕上げてきました。その中で当時の仕様を現代的に最も新しい回路として 'リファイン' されたのが8ステージのフェイズシフト回路を持つPhase Pedal。本機の心臓部である8つのCdSセルと電球をプラスティックのチューブで囲って点滅させるモジュレートから一転、最新型の白色LEDによる仕様に変更してCarlin本人が最後に力を入れた '新作' として提示しております。この 'リファイン' の発想としては、三枝文夫氏がUni-Vibeを現代に蘇らせるべく有害な硫化カドミウムの環境汚染により不可となったCdSに代わり79個のトランジスタを組み合わせた回路を設計、若いエンジニアと共に完成させたNuvibeと近いエピソードがありますね。また米国ではそのブランドの商標を買い取ってVibe-Broとして復活させました。そんなUni-Vibeに比べて思いっきりマイナーなCarlin Phase Pedalですが、そのオリジナルと 'Moody Sounds版' の基板回路比較をどーぞ。






これまたかな〜り珍しいワウペダルのクローン化というべきか、デンマークの工房ReussがそのターゲットにしたのはDeArmond1970年代の地味な一台、Thunderboltというファズワウ・ペダル。この工房の製品といえば1960年代のVox Repeat Percussionにヒントを得たRF-02 Repeater Fuzzというマニアックなもので、そういう他社の工房には無い着眼点がこういう時代の彼方に埋れた一台のユニークさに気付いたのかも知れません。実際、在り来たりなクリーンのワウトーンにディストーションのスイッチを入れると一転、かなりの 'シンセサイズ' でエグいトーンに変化するのにはビックリ。なかなか良いですねえ。そして、これまたマニアックな一台としてあのU2のギタリスト、ジ・エッジが使ったとかで一部 'クローン' もちらほら現れているKayのFuzztone。黄色い筐体はプラスティック製ということでますますチープさに磨きがかかっておりますけど(笑)、その出音も国産ファズに代表されるビービー、ジージーな汚い歪み方でペダル・コントロールということからワウファズかと思いきや、こちらは歪みのトーン・コントロール(調整の幅が狭い)という中途半端な仕様です。しかし、世の中にはこーいうニッチな音色に惹かれる奇特な人がいるようで(苦笑)、ここ最近、歪み系ペダルで支持を集めている米国オクラホマ州の工房、Warlus Audioから登場したKangra。'Filter Fuzz' とあるようにKay譲りのファズに加えてエンヴェロープ・フィルターを搭載し、折角のオリジナルにある 'ペダル・コントロール' に敬意?を表したのかエクスプレッション・ペダルにまで対応させてしまった 'Kay機能強化版' ですね。単にクリーンでのエンヴェロープ・フィルターとしても素晴らしい効き具合ですけど、やはりファズと混ぜてエクスプレッション・コントロールでの 'オート・ヴォリューム' 風(あの 'マイクロシンセ' でお馴染みのヤツ)フィルタリング効果が格好良し!。しかしWarlus Audioを始めにEQD、JHS PedalsやOBNEとかのネーミングから筐体の絵柄など、ほぼ '意味不明' なものが多いのは何なんですかね?(苦笑)。









Seamoon Funk Machine V2
Seamoon Fx Funk Machine

この手のマニアックなリファインによる復刻ではSeamoonも来ました。デイヴィッド・タルノウスキーの手がけたStudio PhaseやFunk Machineはフュージョン・ブームを支え、その後、独立したA/DAで傑作FlangerやFinal Phase、Harmony Synthesizerなどを残します。今回、市場に蘇ったのはエンヴェロープ・フィルターのFunk Machineであり、その新生Seamoon Fxを主宰するのはセッション・ベーシストとして過去にザ・ブレッカー・ブラザーズの 'Heavy Metal Be-Bop' などに参加したニール・ジェイソン。ここではジェイソンのみならず当時の愛用者であるラッパ吹き、ランディ・ブレッカーなどの意見も反映させているようですね。ちなみに当時、ランディが使っていたのは無骨なデザインのVer.1の方です。









(4月11日追記・加筆)そして、個人的に今後地味にその価値がジワジワと上がってくるんじゃないか?と踏んでいるのがこちら、Halifaxのワウペダル。OEM品としてHofnerブランドでも販売されておりましたが、何と言ってもマイルス・デイビスのバンドのギタリスト、ピート・コージーがエンヴェロープ・フィルターのMusitronics  Mutron Ⅲと併用して愛用しておりました。'Forgotten Heros: Pete Cosey' というコージーの機材を詳細に解説する記事によれば以下、こう記されております。

"He Sat behind the table and put his effects - two wahs (a Morley for warm tones, a Halifax for solos, and Sometimes a Vox Clyde McCoy)"

MorleyやVoxのCryde McCoyなども使っていたようですが、Maestro Fuzz ToneやMXR Phase 90、EMS Synthi Aといったマニアックな機材を愛するコージーにとっていかにもニッチなHalifaxのワウペダルを選ぶのにはニヤリとさせられます。しかし、不恰好なサイドのフットスイッチはフィルターの 'Hi/Lo' の切り替えだったようで、ワウファズはその 'Hi/Lo' を廃する代わりにスイッチとして別でファズ用ツマミを設けたZというモデルが用意されておりまする。
Ross Audibles 'Grey' Compressor ②
Ross Audibles 'Tan' Distortion
Boss Compact Pedal 40th Anniversary Box-Set ①
Boss Compact Pedal 40th Anniversary Box-Set ②
Boss Compact Pedal 40th Anniversary Box-Set ③
Boss Compact Pedal 40th Anniversary Box-Set ④

定番ですが、遅ればせながらMXRが 'Custom Shop' の限定品として2007年と2008年に立て続けに発売した'74 Vintage Phase 90 CSP-026と'76 Vintage Dyna Comp CSP-028も買ってしまった。中古で購入した時点でどっかの工房がモディファイしたと思しきLEDとDC端子が増設されておりましたが、こういった往年の 'ヴィンテージトーン' が現代のシーンに復刻される意味を考えましたね。特に現代のエフェクターにおいて '原音重視' やナチュラルなコンプレッションなどが持て囃される昨今、いかにもダイナミズムをギュッと均すコンプは、時に演奏の細かなニュアンスを潰す '悪役' として敬遠されてしまうのも事実。そんな1970年代には当たり前であったコンプレッサーでしか出来ない圧縮を演出の '滲み' として捉えるとき、そのDyna Compが現在の市場でも変わらず製造されている意味とは何なのであろうか?。現在でも愛用者であるギタリストの土屋昌巳氏はこう述べております。

"ダイナコンプは大好きなんでいくつも持ってます。筆記体ロゴ、ブロック体ロゴ、インジケーター付きを持ってます。壊れてしまったものもあるし、5台以上は買ったんじゃないかな。やっぱり全然違いますしね。個人的にはインジケーターなしのブロック体という中期のモデルが好きですね。ダイナコンプを使うことで、ギターのボリュームのカーブがきれいになるんですよ。フル・ボリュームの時と、7〜8ぐらいにした時の差がすごくいい感じになる。ライブでも、レコーディングでも、ダイナコンプは必ずかけっぱなしにしています。コンプレッション効果よりも、ギターのボリュームのカーブをきれいにするために使うんですけどね。(中略)けっこう雑に設定してあるというか、変にハイファイに作っていない分、ツマミをほんの1ミリ調整するぐらいで音が全然変わってくるところとか僕は好きですね。特にダイナコンプは、ちょっとツマミを動かすだけでアタックがかなり変わってくる。本当、ダイナコンプは、完全に僕のスタイルに欠かせないものになっていますよね。あれがないと自分のギターの音が出せないと思う。"

コレ、Ross Audiblesからの 'Grey' Compressorと 'Tan' Distortionの '復刻' や同じく2017年にBossから 'Compact Pedal 40th Anniversary Box-Set' として1977年に初登場したSpectrum SP-1、Over Drive OD-1、Phaser PH-1の '箱詰めセット' にも言えるのだけど、単にオリジナルに極力近いパーツ、ハンド・ワイヤリングを駆使した '完全復刻' で懐かしむだけじゃなく、この初期のセッティングで完成されたトーンは時代を超越したメーカーの '回答' であることの再確認なんじゃないでしょうか。つまりバラして使うのも結構ですが、コレクターズ・アイテムを超えて他のペダル混ぜて使う必要など無いくらい '完璧' な組み合わせであることを御賞味下さいませ、と(笑)。Carlinも1970年代にPhase PedalとCompressorの2種で終了しましたけど、多分、あれだけで完結するトーンとして納得した布陣の結果だったんでしょうね。往年のロック/フュージョン・サウンドの再現とか関係なく、そもそもの設計意図であった効果を認識して使ってみること。こーいうことに '時代' は関係ないですね。




そんなBoss '2021年のお楽しみ' は、これまたJHS Pedalsに続く 'コラボ企画' でなんとあの 'Boss × Tone Bender'!。いわゆるハンドビルドの '技Craft' による限定品とのことでその気合いの入れ方が違いますが、1965年の登場以来、数々のロックの伝説に貢献したこのペダルを 'あえて' Bossがやってしまうという快挙(暴挙?)。その元祖であるSola Soundのブランドとして開始した英国ロンドンの楽器店 'Macari's Music Exchange' 協力のもと、ヴィンテージのトランジスタ選別してオリジナルと比較試聴しながら音決めして・・と完全に 'マス・プロダクト' のBossのやり方から逆行しておりまする(苦笑)。争奪戦だな、こりゃ。








Roger Mayer Octavio
Chicago Iron / Tycobrahe Octavia - Special Edition
Chicago Iron / Tycobrahe Pedal Flanger
Tycobrahe Engineering Pedal Flanger ①
Tycobrahe Engineering Pedal Flanger (Vintage) ②
Chicago Iron / Tycobrahe Parapedal
Tycobrahe Engineering Parapedal (Vintage) ①
Tycobrahe Engineering Parapedal (Vintage) ②
Tycobrahe Engineering Parapedal w/ PS-9 Type (Vintage) ③

そしてここまでご紹介した往年の 'ヴィンテージ・ペダル' にはある共通した一点がありました。まさにエフェクターと呼ばれる機器が全盛期を極めた1970年代、MXR、Tycobrahe Engineering、Carlin Electronicsは各々既存の製品を修理、解析しながらこの業界に参入したことが知られております。MXRの前身としてAudio Servicesというリペア工房を開いていたテリー・シェアウッドとキース・バールの2人の前に持ち込まれたのがフェイザーの大ヒット機、Maestro PS-1。そこから小型化と新たなフェイズ効果、スタリッシュなデザインで市場に開陳したのがご存知MXR Phase 90でした。また、遠くスウェーデンの地で工房を開いていたニルス・オロフ・カーリンが当時、世界を席巻した 'フェイザー・ブーム' と呼応するように製作したのはPhase Pedal。そこからさらに懇意のディーラーを通して持ち込まれた某コンプレッサー(多分、MXR Dyna Comp)を修理、解析したことで生まれたCarlin Compressorをきっかけに自社のCarlin Electronicsを本格化させます。一方、Tycobrahe Engineeringの名で開いていた工房に持ち込まれたのが、ロジャー・メイヤーの手により 'ワンオフ' で製作されたRoger Mayer Octavio。あのジミ・ヘンドリクスのステージで機材の盗難が頻発していた当時、この製品化されていない '特別な一品' がどういう経緯で持ち込まれたのかの是非はあるものの、そのOctavioを修理、解析することから生まれたのがアッパー・オクターヴの名機Tycobrahe Octavia。つまりこれは、いわゆる 'ブティック・ペダル' として既存の製品を解析、参考にしながら大きな市場を形成する現在のエフェクター製作の原点とも言うべきエピソードでもあります。このような数多の工房が抱える同様のエピソードはそのまま '栄枯盛衰' として、 その後、MXRがラインナップを拡大して成功を収めるのに対しCarlinはRing Modulatorの少量製作と4013オクターバーの試作、TycobraheはParapedalとPedal Flangerを製作してそれぞれ工房を閉めてしまいました。今も多くのビルダーと呼ばれる人たちが過去の名機、新たな市場の流行に刺激されて参入してくる活性化したこの業界の熱気の陰で、その原点とも言うべき1970年代を象徴するMXR、Carlin、Tycobraheのエピソードは大きな試金石となるでしょう。単なるコピーのままか、大成功するか、一矢報いるか、下手をすれば既存の無名ペダルに 'ラベリング' だけして偽装、そのまま人々の関心を失い消えて行く運命を辿るか・・玉石混交な世界でもあります。










'ペダル化' への拍車という点では 'シンセサイズ' からもたらされる可能性も今後注目されるかも知れません。すでにPigtronixがその一歩を踏み込みましたけど、こちらはあのアナログシンセの名機、Sequencial Circuit Prophet 5に搭載されたVCFのチップCurtis製SSM2040をベースに設計したエンヴェロープ・フィルター、Resotron。過激に発振させたオシレーティングの効果から、この手の製品によくある '音痩せ' とは無縁の太さやトラッキングの向上を獲得、そしてエクスプレッション・ペダルによりワウペダルとして使用することも可能です。しかし、やはり本家の 'DSI' ことデイヴ・スミスによる 'ペダル化' は誰しもが待ち望んでいるのではないでしょうか?。現状、Prophetシンセサイザーが '復活' している中でこの独特なVCFだけを製品化する意味は薄いと思いますが、すでに 'ディスコン' ながらアナログシンセとしてリードからベースまで幅広い音作りに対応するMophoの存在は希少です。ここではバリトン・サックス奏者Jonah-Parzen-Johnsonによるステップ・シーケンサーを用いた見事なデモ動画が参考になり、オシレータとは別に '外部入力' のAudio Inとギターを直接入力する為のInput Gainツマミを備えることでギタリストの皆さん、試す価値アリ。








Pioneer DJ Toraiz AS-1 Analog Synthesizer

また、Curtis製SSM2045チップを豪華なラック型ステレオ・フィルターとして1996年に登場した英国の工房MutronicsのMutator。当時、過激なフィルタリングで話題となったSherman Filterbankの好敵手として取り上げられましたが、むしろそのまったりとした出音はどんなチープなサンプルやドラムマシン、PCM音源にカマすだけでもたまらない '質感' にしてくれます。わたしもそんな 'ベッドルーム・テクノ' の時期、夜な夜なダブ製作に熱中していただけに本機のお世話になりましたけど、それが現在ではSoftubeの 'プラグイン' として蘇っております。ちなみにオリジナルの実機で面白いのはコレ、いわゆるInput Gainに当たるヘッドアンプ部が無いんですよね。つまり、フツーに使うには不便極まりないのですが、ミキサーの 'チャンネルインサート' に挿してそのヘッドアンプ部でゲインを稼ぐ、もしくは別途NeveやAPI、Altecなどお気に入りのプリアンプと組み合わせて使うことを想定するくらいVCFとしての音質にこだわっていたのですヨ。そして単体のエフェクターでは無いのですが、DJ機器の老舗として君臨するPioneer DJが新たにDAWの ' サウンド・プロダクション' 市場に初参入した16トラック内蔵のサンプラー、Toraiz SP-16にはデイヴ・スミス直々のアナログ・フィルターを搭載!。その独特なオーバードライブするフィルタリングは単体機としても発売して欲しいくらいの '質感' です。









さて、コンプレッサーの '質感' が好きなわたしとしては、このCarlin Compressorに見る '歪むコンプ' の系譜としていわゆる 'ファズ+サスティン' とは別にスタジオで使用するアウトボード機器で珍重された '飛び道具コンプ'、Spectra SonicsのModel 610 Complimiter (現Spectra 1964 Model C610)の 'ペダル化' をお願いしたいですね。これまでアウトボートとしてはAPIやNeveのモジュール、Urei 1176などの 'ペダル化' による新たな解釈がひとつのトレンドを作ってきました。そんな中でのComplimiterは1969年の発売以降、なんと現在まで同スペックのまま一貫したヴィンテージの姿で生産されており、-40dBm固定のスレッショルドによるインプットでかかり方を調整、その入力レベルの度合いでコンプからリミッターへと対応してアタック、リリース・タイムがそれぞれ変化します。クリーントーンはもちろんですが、本機最大の特徴はアウトプットを回し切ることで 'サチュレーション' を超えた倍音としての '歪み' を獲得出来ること。上のドラムの動画にも顕著ですけど一時期、ブレイクビーツなどでパンパンに潰しまくったような '質感' で重宝されたことがありました。このサチュレーション的な '歪むコンプ' ( '歪み+コンプ' では無い)ってコンセプトは結構ウケると思うんだけどな。ちなみに本機の解説としてはエンジニア、三好敏彦氏著の '素晴らしきビンテージ機材の歴史' (リットーミュージック刊)に詳述しております。





その他、'テープ・エミュレータ' としてはStrymon Decoなどもありますが、コンパクトにこだわらずVCFやコンプレッサー含めラインによる歪みの生成にDr. Lake KP-Adapterを用いて繋ぎたいElektron Analog HeatとOTO MachinesのBoum。これらのDJ用エフェクターはシンセやドラムマシン、マイクからの音声などラインレベルによる入力に対して幅広い 'サチュレーション' を付加します。その多様に用意されたプログラムの中身はClean Boost、Saturation、Enhancement、Mid Drive、Rough Crunch、Classic Dist、Round Fuzz、High Gainの8つのDriveチャンネルを持ち(もちろんアナログ回路)、そこに2バンドのEQとこれまた7つの波形から生成するFilterセクションで各帯域の '質感' を操作、さらに内蔵のエンヴェロープ・ジェネレーター(EG)とLFOのパラメータをそれぞれDriveとFilterにアサインすることで、ほとんど 'シンセサイズ' な音作りにまで対応。また、現代の機器らしく 'Overbridge' というソフトウェアを用いることで、VST/AUプラグインとしてPCの 'DAW' 上で連携して使うことも可能です。一方のフランスOTO Machinesから登場するのは 'Desktop Warming Unit' のBoum。すでに '8ビット・クラッシャー' のBiscuit、ディレイのBimとリヴァーブのBamの高品質な製品で好評を得た同社から満を持しての '歪み系' です。その中身はディストーションとコンプレッサーが一体化したもので18dBまでブーストと倍音、コンプレッションを加えられるInput Gain、Threshold、Ratio、Makeup Gainを1つのツマミで操作できるコンプレッション、低域周波数を6dB/Octでカットできるローカット・フィルター、4種類からなるBoost、Tube、Fuzz、Squareの選択出来るディストーション、ハイカット・フィルター、ノイズゲートを備え、これらを組み合わせて36のユーザー・プリセットとMIDIで自由に入力する音色の '質感' をコントロールすることが出来ます。







そして 'フィルタリング' からさらにもう一歩、実は思い出したように試しては挫折を繰り返している管楽器の 'アンプリファイ' における鬼門、トランペットを歪ませる探求があります。実はわたしがワウペダルと共に最初に購入したのはオーバードライブの名機、Ibanez TS-9 Tubescremer。この、ほとんどブースターと言って良いくらいクランチーな軽めの歪みでさえツマミ9時の位置でゲインアップ、あっという間のハウリングに悩まされたもんでした。また、1960年代後半に製品化された管楽器用オクターバーの大半には専用のファズが内蔵されていたのですが、これまたギター用のものとは別物のチープなもの。ということで未だ満足するセッティングは見つかっていないのですが、ここでは世界初のファズボックスとして有名なGibson製作のMaestro Fuzz Tone FZ-1のデモ音源からいくつかのヒントを頂きます。当初、メーカーが意図していたのはロック革命で求められたアンプのオーバーロードする歪みではなく、各種管楽器の模倣であるという奇妙な事実であり、音源では 'Sousaphone' 〜 'Tuba' 〜 'Bass Sax' 〜 'Cello' 〜 'Alto Sax' 〜 'Trumpet' という流れが 'ロック前夜' の模索した雰囲気を伝えます。さて、このFZ-1が爆発的なセールスを記録するのはザ・ローリング・ストーンズの大ヒット曲 'Satisfaction'。キース・リチャーズの頭の中にあったのはスタックスの豪華なホーン・セクションによる 'ブラス・リフ' を再現することであり、Maestroのブランドマークが 'ラッパ3本' をシンボライズしたのは決して伊達では無いでしょうね。ここではそのFZ-1の 'デッドコピー' であるAce Tone Fuzz Master FM-1なので相手に取って不足ナシ。








Maestroの管楽器をイメージしたファズはFZ-1からしばらく経った1970年代、まさにブラス・セクション的分厚さで唯一無二の歪みを獲得したBass Brassmasterに結実します。さて、それではトランペットに歪み系エフェクターを 'カマす' とどんな感じになるのかといえば、まさに直球でブチ込んでみたのが二つ目の動画に聴けるコントロール不能で、汚くヒビ割れたようなこの酷い音(苦笑)。ちなみに一風変わったものとして '人力' ですが、10年以上前に管楽器の彫金やアクセサリーなど小物を手掛けていたSixerJapanという工房から登場した 'Blues. Horn' なる 'エフェクト・マウスピース'。Barcus-berryピックアップのように穴を開けて開閉出来るスクリーンの蓋を取り付けては手動で '半開け' したりワウワウさせながら歪んだトーンを生成するという・・まあ、流行りませんでしたね(笑)。というか、そもそもサックスには 'ファズトーン' や 'グロウル' と呼ばれる重音奏法があり、これはトランペットによる息の掠れた感じを混ぜる 'サブトーン' やワウワウ・ミュートとワウペダルの関係含め、実はエフェクターが管楽器の電気的な模倣から始まったという説は間違った話ではありません。つまり管楽器なりにクラシックの対極にある '歪んだトーン' のニュアンスによるアプローチとして '先祖返り' しているワケで、これを何とか電気的 ' アンプリファイ' で再現、探求してみたいのですヨ。








とにかく音をぶっ潰すファズボックスがこの企画に叶うものであるのかは議論の余地がありますけど(汗)、最近、国産初のファズボックスであるAce Tone Fuzz Master FM-1を手に入れたのでいざ挑戦!。一見不釣り合いなチョイスに見えますがAce ToneはこのFM-1の翌年に管楽器用オクターバー、Multivox EX-100を製作しているんですよね。国産ファズ特有のジージーとした 'ホーンライク' な歪み方は案外とマッチングするのかも、という期待アリ。さらにそれをベースにしながら '各種アタッチメント' の力を借りてトランペットの為に '調教' して行きます。以下、箇条書きによる音作りの為のレシピ。

①ループ(パラレル)ブレンダーで混ぜる。
②エンヴェロープを弄る。
③EQ(フィルター)で削る。
③ローファイ・エフェクトで鈍らせる。
④テープ・エミュレータに縋る。

FM-1に備えられているツマミは電源On/Offを兼ねるVolumeと歪み成分をミックスするFuzz Adj.の2つのみ。もちろん、このVolumeはゲインアップも兼ねており上げていくほどある帯域がブーストされチリチリし始めます(汗)。そしてFuzz Adj.でフレイズがぶっ潰れていくんだけど、その前段階としてピックアップマイクから入力するところでかなりEQを弄ってやる必要あり。マイク・プリアンプ内蔵のEQでローをカットしてかなりカリカリしたトーンに補正、ミッドを強調してやると歪みの '乗り' とぶっ潰れた時に難渋する音程が倍音感と共に聴き取り安くなるのでは?。ということで、定番のEQで補正する音作りに 'プラス・アルファ' してここでは、単なるEQというよりそれこそ 'シンセサイズ' なフィルタリングまで対応するカナダの工房、Fairfiled CircuitryのLong Lifeを繋いでみます。エクスプレッション・ペダルの他にフィルター周波数のQとVCFをそれぞれCVでモジュラーシンセからコントロール出来るなど、なかなか凝った仕様です。さらにDwarfcraft DevicesのParaloopで原音を確保しながら歪み成分を混ぜていけば・・おお、バランスが取れました。そして、この時代のファズの大半に現れるゲート感の強いバッサリとしたニュアンスは、もうちょい管楽器からの入力感度に反映させてコントロールしたい。そこでエンヴェロープの演出をすべくToadworksの一風変わったループ・セレクター、Enveloopの 'Sensitivity' と 'Release' で弄ってやりたいのですが、この手のリアルタイムでエンヴェロープを操るデバイス(例えば上で紹介したDreadbox Epsilonなど)の大半がかなり極端なカーブの設定で難しいっすねえ。さて、ここまで歪み感を強調しておきながら一方では、その '痛い感じ'をもう少し柔らかく均してやるという矛盾したアプローチが必要になってきます。つまり歪みっ放しだとラッパでは演奏しにくいってことで、ここではIbanez LF7 Lo FiやZ.Vex Effects Instant Lo-Fi Junkyに代表される 'ローファイ・エフェクト' をカマしてみましょうか。チョイスしたのはHungry Robot PedalsのThe Wardenclyffeというヤツでして、いわゆる 'ローファイ' 効果を 'Wet' と 'Dry' の個別で操作出来るのは嬉しいですねえ。そしてLFOなどモジュレーション内蔵なのもナイス。また、もう一方の探求として 'アナログ感' では定番の 'テープ・エミュレータ' も試してみましょうか。Roger MayerがStuder A-80マルチトラック・レコーダーとAmpexのオープンリール・テープ456の組み合わせで起こる '質感' をエミュレートした本機は、そのバンドパス帯域で過大入力することから現れる飽和したサチュレーションの '鈍る感じ' が素晴らしい。大きなInputツマミに特徴があり、これを回していくとまさにテープの飽和する 'テープコンプ' の突っ込んだ質感となり、ここにBass、Treble、Presenceの3つのツマミで補助的に調整して行きます。本機にOn/Offスイッチはないのでバッファー的使用となるでしょう。結論。手間隙はかかりますが一度はやって頂きたい面白い効果となりまする。







ちなみにガレージな製品としてはこんな面白いファズが登場。岸田教団&THE明星ロケッツのギタリスト、hayapiさんが立ち上げたブランドFriendly Fire Fxの製品第一号であるその名もズバリ 'Rappa Fuzz' (笑)。hayapiさんと言えばグリッチ系ペダルとしてS3NからのSuper Flutterで自身のアイデアを盛り込んだことでも話題となりましたが、ここでのかなりニッチな '音決め' のセンスもなかなかのもの(笑)。万人受けせずともやりたいことやってる感が溢れ出ていて楽しいなあ。そして、ここ最近のいわゆる '飛び道具' 的な歪み系ペダルにはそれ自体で発振、奇妙な効果を生成する 'カテゴリー不能' なものがいくつか市場にございます。その中でもMattoverse Electronicsから 'ゴミのような音' がするというこのAir Trashの謎具合は、そのままToadworks Enveloopの 'センド・リターン' に繋いで試してみたいもの。本機で分かっているのは筐体上面に並ぶ3つのツマミのうち青いツマミがVolume、そして、後の黄色いツマミと赤いツマミは何か起こるか何も起こらないかはその日の気分(笑)・・どうぞご自由にという無責任極まりないモノ。その不安定なかかり具合に作用する入力感度が極めて重要とのことで、とにかくブジュブジュと汚い歪みと共に力尽きていくサスティンが・・最低だ(褒め言葉)。



 






一方、往年の '管楽器用エフェクター' の手法に倣って分厚いオクターヴで生成する歪みを利用し、既存の歪み系エフェクターとブレンドするのも有効でしょうね。H&A Selmer Inc. Varitoneをきっかけに始まった1オクターヴ/2オクターヴ下を付加するこの効果は単音ソロの 'オクターヴ奏法' として重宝され、基本単音の管楽器における 'アンプリファイ' の倍音生成に威力を発揮しました。ここではその黎明期的製品であるVox / KingのAmpliphonicシリーズから、クラリネット用のOctavoice Ⅰと日本ハモンドが展開したブランドであるBigJamのSE-4 Octaveをそれぞれチョイス。ちなみにOctavoice Ⅰの方は米国のポートランド州オレゴンにあるガレージ工房、Googly Eyes Pedals主宰のDylan Kassenbrock氏により、元々の腰に装着する使いにくい仕様から、トゥルーバイパス、LED、4つのトグルスイッチといった 'フットボックス' に変更してノックダウンされました。そしてBigJamのSE-4 Octave。そもそもは後にRolandを設立する梯郁太郎氏が手がけたAce Toneの血脈を受け継ぐ会社であり、このOctave SE-4も1オクターヴ下、2オクターヴ下、5度下を3種切り替えスイッチと3つのスライダーでブレンドする極悪オクターバーでございます。ちなみに海外へは 'Multi-Vox' のブランドで輸出されましたが、この名称の由来のひとつ?として、Ace Tone時代に手がけた国産初の管楽器用オクターバー、Multi-Vox EX-100の遺伝子が受け継がれているんじゃないか?と睨んでおりまする。そして、ここ近年のオクターバーと呼ばれるものの大半は 'アナログ・モデリング' や、回路はアナログだけどトラッキング精度向上の為にデジタルで構成されたハイブリッドな製品が市場に並んでおります。米国の工房Fuzzrocious PedalsのKnob Jawnは、筐体中央に位置する大きな足で回せるツマミをブレンドとして、右に回せばデジタルによる1オクターヴ下/1オクターヴ上のオクターバー、左に回すと歪んだアナログ回路のアッパー・オクターヴのトーンになる変わり種。また、左側のフットスイッチはモメンタリーとなっており、踏んでいる間だけオクターヴ下を付加することが可能で、かなりリアルタイム操作に攻めたオクターバーとなっているのが面白い。またここ近年、市場で流通するオクターバーの大半はデジタルによりトラッキングの精度を上げ、オクターヴ上を付加したり和音に対応するなど、デジタルとアナログの 'ハイブリッド' な仕様がほとんどですね。

Zorg Effects Blow !

ちなみにこのような単音楽器のハーモニクスは重音奏法のやりやすいサックスが得意とするものなのですが、構造的に苦手とする金管楽器においてはフリー系トロンボーンの重鎮、アルバート・マンゲルスドルフによる最大9音!ものハーモニクスを奏でるテクニックに驚嘆して頂きたい。これもカップが大きくて深いことから倍音を生成しやすいトロンボーン用マウスピースの賜物です。もちろん、生成しやすいからと言って誰でもたやすくマネ出来るものでは無いので(汗)、結局はこの手の '文明の利器' のお世話になるのです(笑)。こちらは、いわゆるループ・サンプラーのようなテンポに沿ってフレイズを小節単位で繰り返すリズム的アプローチではなく、音のサスティンの部分をHoldでオーバーダブしていくことで 'アンビエンス' の壁ともいうべき、分厚いアンサンブルを生み出してくれるのがElectro-Harmonix Superego Synth Engine。同社ではこの効果を 'Freeze' と称しておりますが、まさに固まったかの如くハーモニーのドローン(通奏低音)があなたのお供にどーぞ。また、本機内にはインサート端子が備えられているので、ここにお好きなエフェクター(動画ではリング・モジュレーターを繋いでます)を入れることでさらに奇妙な音作りに挑むことも出来ますね。










Stomp Audio Labs
Stomp Audio Labs Waves
MG Music Charles Bukowski Envelope Filter
MG Music Mono Vibe
MG Music That's Echo Folks with Pigstail
MG Music Lunatique Amp
MG Music

その一方でペダル界に対する南米からの '応答' も無視出来ません。ドミニカのCopilot Fx、アルゼンチンのDedaloとSonomatic、ウルグアイのManeco LabsにブラジルからはStomp Audio LabsやMG Musicなどの工房が頑張っております。その中でもわたしが現在所有するMG Musicのペダルは、Lovetone Meatballをベースにしたと思しきCharles Bukowski Envelope Filterからヴァイブ系ユニットのMono Vibe、攻撃的アナログ・ディレイThats Echo Folks !の3種。とにかくHammond製アルミケースがブラジルでは入手出来ない?のか、分厚い鉄板を万力で捻じ曲げたり雑に穴開けてるのがブラジル風 'DIY' な感じですね。燻んだピンクに可愛い子豚のキャラが目印のThats Echo Folks !は、その攻撃的フィードバックである 'Pigs Tail' がルックス通りの 'ブタの尻尾' 的エクスプレッション・コントロールながらわたしのものは欠品(涙)。そこでRainger Fxの感圧パッドセンサー 'Igor' で代用しておりまする。そして個人的に欲しいのがMG MusicがVox AC-15をモディファイで製作したと思しき真っ赤な 'Space Age' デザインの真空管アンプ、Lunatique。格好良い〜!。このブランドは以前、新潟の楽器店あぽろんが代理店となって扱っておりましたが、その不定期な入荷数で結局撤退・・。かなり面白いペダルやアンプなどを製作しているので再びどこかがやらないかなー?。




また、10年ほど前にそのラインナップがそっくりなところから '安価なBoss' として輸入されていたブラジルのMicrotonix Electronicaによるブランド、Onerr。パッと見でTech 21のKiller Wailそっくりの重厚な金属筐体で効きの良いCB-01 Cryin The Wah Wah。もちろんKiller WailのオリジナルこそOnerrによるOEMながら、その後期版?では 'Onerr表記' を隠して新たに 'Wah Selection' としてDeep、Extended、Highの3種切り替えモードを付加するなど謎は深まります。また 'Bossライク' なデザインの高品質24bitデジタル・ディレイのDGD-2は、10ms〜1250msのタップテンポとHold機能の2種を備えて、わたしはこのHold機能を簡易ループ・サンプラーとして愛用中。





Copilot Fx Simulcast - Glitch Sampler Repeater

一方、こちらは中米ドミニカで '熱帯のサイケデリア' に感染したかのような '飛び道具' ばかり製作するAdam Romeo主宰のCopilot Fxからこんな '2ループ' の攻撃的アタッチメントをどーぞ。とにかく '正常なペダル' というのがひとつも無い困った工房なのですが(笑)、そのカタログの中でもこのPortal Supremeはすでにタンスの肥やしと化したペダルの '資産活用' で良い仕事をしてくれます(なぜか動画は片チャンネル出てないけど)。本機の独立した2つのループは個別に設定出来るほか、PhaseスイッチやLFO/エンヴェロープへの同期の可否を決めるSyncスイッチで完全パラレル・ミックスから片側のみLFOやエンヴェロープでコントロールすることが可能。そのエンヴェロープはAttack、Decay、Sensコントロールと2つのエンヴェロープのツマミを備え、LFOモードではトレモロ、エンヴェロープモードではいわゆる 'オート・ヴォリューム' の効果を生成出来ます。LFOモードは波形選択とRate/Ratio、Tap/Rateスイッチがあり、タップテンポとRateの切り替えスイッチによりLFOスピードを切り替えることが可能。またTapモード時にはRateをサブディビジョンで切り替えます。なお本機の廉価版としては '1ループ' に特化したPortalというヤツもありまする。そして '真打' と言うべきか、'Hold' 機能によるグリッチ効果に特化したSimulcastがついに登場。しかし、この動画以前に同製品のV2やV3をテストしていたりと頻繁に仕様変更するのはこの工房が持つ南米特有の緩さ・・なのかな?(笑)。











Sonomatic Efectos ①
Sonomatic Efectos ②
Dedalo Effect Pedals mdt: Maquina Del Tiempo / Delay
Maneco Labs Sweet 16 Digital Delay Looper
Maneco Labs Minilooper
Maneco Labs ①
Maneco Labs ②

そんな南米産ペダルでは珍しく日本に正規輸入されているアルゼンチンのSonomaticから扱いやすいアナログ的質感を持つデジタル・ディレイCheddar。ココの製品はどれも奇をてらっていないスタンダードな作りで飽きのこないトーンを持っており、その小ぶりな筐体もMG Musicと同じく最近のペダルでは感じられないくらいズシッとした重さ・・良し。定番のBossも良いですけど、たまにはこんなペダルに手を出して遠い異国の地に思いを馳せてみるのも楽しいですヨ。また、同地ではほかにDedalo Effect Pedalsもユニークなラインナップを誇っており高品質なコンプレッサーやデジタル・ディレイはもちろん、なんとPixelという 'ギターシンセ' まで用意されているのにはビックリですね。そしてウルグアイからの新たな刺客Maneco Labs。あの 'エレハモ' の変態サンプラー、16 Second Digital DelayにインスパイアされたというSweet 16 Digital Delayと簡易的なMinilooperの2種を用意しておりますが、こういったデジタルの積極的活用にも熱心なのが今の中南米なのです。













わたしのループ・サンプラーの理解は未だこのElectro-Harmonix 16 Second Digital Delayで止まっておりまする。本機は16秒のサンプリング・タイムを持つループ・サンプラーとショート・ディレイ、モジュレーションの複合機で、小節数を設定してピッチとテンポ、逆再生でそれぞれ可変させることが出来ます。さらに2004年のヴァージョンアップした '復刻版' では、外部シーケンサーやドラムマシンをスレーヴにしてMIDIクロックで同期させることも可能。ループ・サンプラーは各社それぞれに使い勝手があり、その設計思想のクセを体得できるか否かで評価は大きく異なりますね。例えば、現在でも足下に置くユーザーの多いLine 6 DL4 Delay Modelerなどは、いかに本機でその使い勝手を体得してしまったユーザーが多いのかを如実に示しているのではないでしょうか。さて、この 'エレハモ' は本機以降、現在までに数々のループ・サンプラーをラインナップしております。2880、45000、95000、22500、720、ディレイとの複合機ではStereo Memory Man with Hazaraiというのもありました。そしていよいよ '95000' にまで到達・・'元祖' の威厳とはこういうことを言うのでしょうか。ほとんどリアルタイム操作のMTRというか、それでもあえてペダルという形態に拘っているというのが 'エレハモ' らしい。最長375分、最大100個のループをmicroSDカードと共に扱うことが可能で、ステレオ・トラック1つ、モノの6トラックと1つのミックスダウントラック搭載。もちろんクォンタイズのOn/Off、タップテンポによるBPM入力、2オクターヴの範囲でのピッチ調整、オーバーダブ、パンチイン/アウト録音・・しかし、話題となったり使っている人の見聞きは全く無いんですけど、ね(汗)。さらに去年新たに1440がラインナップに加わりましたが、果たしてこれら機器の向こう側にはどのくらいのユーザーがいるのだろうか?。いや、そろそろ生バンドなにそれ?、オレのバンドはコイツだよってループ・サンプラーを中心に組む連中が現れてきたら面白いかも、と思っているので(笑)。








Hologram Electronics

'飛び道具' 派ループ・サンプラーなら是非コイツに挑んで頂きたいですね。本機をエフェクターという範疇に入れるのは抵抗ある方もいるでしょうけど、しかし、今やシンセサイザーやサンプラーとエフェクターの境界はほぼ無効化され、録音したループの素材をオシレータ代わりとし、さらにVCFやエンヴェロープを操作して外部CVと同期・・このような複合的音作りを各々カテゴリーとして切り分けることは可能でしょうか?。まさに北欧ならではのスタイリッシュなデザインとインターフェイスでDAWの世界を盛り上げるElektronからこの変態サンプラー、Octatrackはそのアプローチの固定観念に揺さぶりをかけます。挫折した者を多く輩出する一方で苦闘の末に '免許皆伝' した者はもう他の機材必要ナシ、この 'オクタ' だけ(MIDIコントローラーもあれば完璧)で何時間でもパフォーマンス出来ると言わしめてしまうほど唯一無二な存在です。そんな変態サンプラーと組み合わせるのがDream Sequence、Infinite Jets Resynthesizerで一躍その名を馳せたHologram Electronicsからこれまた一癖のあるヤツ、Microcosmとのパフォーマンスをどーぞ。というか、このMicrocosmのグラニュラーがもたらす無限に湧き出すフレイズの生成が凄い・・。







Empress Effects Zoia ①
Empress Effects Zoia ②

バンドというよりかはまさに 'Covid 19以降' の世代を象徴する機器というべきか、去年、最も話題となったもののひとつであるEmpress Effects Zoia。その昔、Eventide DSP4000というラック型マルチ・エフェクターがありましたけど、コレ、まさに当時の 'エレクトロニカ' 黎明期を象徴するプラグインCycling 74 Max/Mspのハードウェア的端緒として話題となりました。DSP4000は 'Ultra-Harmonizer' の名称から基本はインテリジェント・ピッチシフトを得意とする機器なのですが、色々なモジュールをパッチ供給することで複雑なプロセッシングが可能なこと。リヴァーブやディレイなどのエフェクトそのものの役割を果たすものから入力信号を '二乗する'、'加える' といった数式モジュール、'この数値以上になれば信号を分岐する' といったメッセージの 'If〜' モジュールといった完全にモジュラーシンセ的発想で自由にパッチを作成することが出来るのです。当時で大体80万くらいの高級機器ではありましたが 'ベッドルーム・テクノ' 世代を中心に人気となりましたね。以下、当時のユーザーであったエンジニア渡部高士氏によるレビューをどうぞ。

"DSP4000シリーズって、リヴァーブやピッチ・シフトのサウンドが良いのはもちろんなんですが、自分でエフェクト・アルゴリズムを組めるところがいいんです。モジュールの種類ですが、ありとあらゆるものがあると言ってもいいですね。例えばディレイ・モジュールがありますから、これを使えばフランジャー、フェイザーなどのモジュレーション系が作れますよね。リヴァーブのモジュールもピッチ・チェンジャーも当然あります。普通のエフェクターに入っているものはモジュールとして存在していると考えればいいですね。例えば、ゲート・リヴァーブを作りたければリヴァーブのモジュールとゲートのモジュールを持って来て、ゲートにエンヴェロープ・ジェネレータを組み合わせて・・っていうように、簡単に作れるんですよ。

シーケンサー・モジュールとか、関数モジュールのようなものもあります。自分の頭で考えればどうにでもできるんです。例えば、Ureiのアタック感をどういうモジュールの組み合わせで真似しようかな・・なんて考えるのは楽しいですよ。それにシンセとしても使えます。波形が選べるオシレータもフィルターもアンプもあります。サンプリング・セクションを入れればサンプリングが可能ですから、その気になればE-Muのサンプラーだって作れます。E-Muにあるパラメータを自分で思い出して、それをモジュールの組み合わせで再現していくわけです。

以前、ローファイ・プロセッサーのパッチを作ったことがあったのですが、好評だったのでいろいろなところに配ったんです。都内のスタジオで使われているDSPシリーズに幾つか入っていますよ。LFOでサンプリング周波数が動くようになっていたりするんですが、'Info' っていう、文字を表示するモジュールに僕のE-Mailのアドレスがサイン代わりに入っています(笑)。また、マルチバンド・コンプレッサーを作ったこともあります。フィルター・モジュールでクロスオーバーを組んで、コンプのモジュールをつないで・・ってやるわけですね。こうするとTC ElectronicのFinalizerみたいになります(笑)。結局、エフェクターというよりはDSPをどう使うかを自分で設定できるマシンという感じ。単にエフェクターの組み合わせが変えられるのとは次元が違うんです。人が作ったパッチを見るのも面白いですよ。構成を見ていると「こりゃあんまり良いパッチじゃないな」とか思ったりするんです(笑)。"

そんなユーザーの好みに合わせて自由にモジュールの組めるシステムから20年後、まさにPCを使わず 'エフェクターを自由にカスタマイズ' 出来るZoiaの登場は待ち望んでいた方も多かったのではないでしょうか。各モジュールはカラフルにズラッと並んだ8×5のボタングリッド上に配置し、そこから複数のパラメータへとアクセスします。これらパラメータで制作したパッチはそれぞれひとつのモジュールとしてモジュラーシンセの如く新たにパッチングして、VCO、VCF、VCA、LFOといった 'シンセサイズ' からディレイやモジュレーション、ループ・サンプラーにピッチシフトからビット・クラッシャーなどのエフェクツとして自由に 'デザイン' することが可能。これらパッチは最大64個を記録、保村してSDカードを介してバックアップしながら 'Zoiaユーザーコミュニティ' に参加して複数ユーザーとの共有することが出来ます。


複雑な音作りに貢献するZoiaの一方でお手軽な '簡易マルチ' としては、ロシアの工房Elta Music DevicesのConsoleとCooper FxのArcadesも敷居が低くて良いですね。複数機能の同時使用は叶いませんが、そのSDカードで自社の機能をあれこれ入れ替えて、左手でジョイ・スティックをグリグリと動かすインターフェイスは良いですね。そのConsoleで用意されている12個のSDカード・カートリッジの中身は以下の通り(上のサイトでは 'Digital' の無い11種のもの)。

⚫︎Cathedral: Reverb and Space Effects
⚫︎Magic: Pitched Delays
⚫︎Time: Classic Mod Delays
⚫︎Vibrotrem: Modulation Effects
⚫︎Filter: Filter and Wah
⚫︎Vibe: Rotary Phase Mods
⚫︎Pitch Shifter: Octave and Pitch
⚫︎Infinity: Big Ambient Effects
⚫︎String Ringer: Audio Rate Modulation
⚫︎Synthex-1: Bass Synth
⚫︎Generator: Signal Generator
⚫︎Digital: Bit Crasher

'モジュレーション/空間系' 中心のメニューですけど、今後いろいろなヴァリエーションが増える予定などあるのでしょうか?。あくまで簡易的マルチなのでカートリッジを入れ替えるのみの同時使用出来ないものですが(ただし、カートリッジ入れ替え時に直前のプリセットは記憶する)、これで全然問題なく使えちゃいますね。個人的お気に入りは 'Synthex-1' の 'ベースシンセ' で、チューバでブッバ、ブッバとしゃくり上げる感じの効果が最高。Electro-Harmonix Micro Synthesizerに内蔵された 'Attack' スライダーでエンヴェロープのアタックを消して、Voiceセクションでフィルタースウィープさせる感じに近いですかね。そして、筐体に描かれたデザインが 'マレーヴィチ' 風ロシア・アヴァンギャルドな感じで格好良し!。またこのようなカートリッジ入れ替えによるマルチということでは、前述した 'ローファイ' ものGeneration Lossのヒットで一躍その名を知られたCooper Fxから今月登場するArcades。製品としては 'Ambient Package' (ReverbとDelayカートリッジ付)と 'Experience Package' (PitchとLo-Fiカード付)の2つのパッケージで用意されており、各カートリッジごとに8つのプログラムを搭載します。ここにはこのブランドを有名にしたGeneration Lossのプログラムもちゃんと用意されており、また各プログラムごとのプリセット保存はもちろん、エクスプレッション・コントロールを通じてCV/MIDIとの連携も行われるとのこと。そのアルゴリズムを司る 'Fx Pastiche Card' の8種プログラムは以下の通り。

⚫︎Pitch: Pitch Shift Delay
⚫︎Multi: Multi Tap Reverb
⚫︎Vinyl: Record Lo-Fi
⚫︎Arp: 2 Step Arpeggiator
⚫︎VHSDLY: VHS Video Tape Echo
⚫︎Mono: Analog Mono Synth
⚫︎Revrse: Reverse Delay
⚫︎Timest: Grain Shift


足下にズラッと並べて悦に入るのも良いのだけど(笑)、一方ではシンプルにまとまったマルチ・エフェクツ中心に外部ペダルを1つか2つ、お好みで賄えたらストレス無くて良いよな、なんて思っていたりします。そんな環境に効果的なプログラマブル・スイッチャーとして現在大ヒット中のBoss MS-3 Multi Effects Switcherをご紹介。すでに2017年の機材なんだけど、簡単に言ってしまえばマルチ・エフェクツ内蔵の3ループ・スイッチャーでこれが実によく出来ております。正直、管楽器の 'アンプリファイ' ではここまで大仰なシステム導入する必要ないよな、と思っていたのですが、何よりマルチとしての性能が素晴らしい上に個人的に面白いと思ったのはカレントナンバーという機能。基本となる '3ループ' の '隠しスイッチ' として、Onの状態の上にもう一度ソイツを踏むと同時使用6系統、112種のマルチが加わったサウンドが作れるのです。TRI4THというジャズバンドでウッドベースを担当する関谷友貴氏のMS-3の使い方が面白く、MS-3内蔵のエンヴェロープ・フィルターをかけたりEarthquaker Devicesのファズに加えて内蔵のオクターバーをかけたりと・・なるほど。とりあえず、このMS-3にお気に入りのペダルという少ない機材だけでも色々な音作りが出来ますね。ただし本音を言えば112種のマルチ・・実際、使うプリセットは '片手' 程度だったりする・・(汗)。毎度思うのだけど 'お得感' なのか技術者のエゴなのかはさておき、例えば空間系ならそれだけで5種のみからセレクト、と絞った方が使い勝手良いと思うなあ。使わなきゃいいじゃん、ということではなく、簡便にアクセス出来るというのがペダル・エフェクターの信条だと思うのですヨ。などと酷いクレーム?を付けてしまえば結局はマイク入力と 'Pre/Post' で選べる簡易マルチ、さらに '1ループ' を備えたOld Blood Noise Endeavors Mawを使えば?、ということになってしまいます(汗)。お、個性的な関谷氏のエフェクターボード内にNeotenicSoundのBassFlavorを発見!。

 







管楽器奏者、続々と参入中。ピックアップ・マイク、プリアンプ、DI、そしてたくさんのペダルを物色する楽しさを覚えてしまったらもはや、これまでこだわっていたマウスピースやリード探しよりハマってしまうのがこの 'アンプリファイ' の中毒性なのだ。特にお手軽なZoomのマルチやBossのコンパクト・エフェクターだけでは満足出来ず、人知れずマニアックな少量生産の 'ブティック' 系ペダルを漁り出してしまうともう '重症' です・・。ちなみに 'OBNE' ことOld Blood Noise EndeavorsのMawはマルチ・エフェクツ内蔵の便利なマイク・プリアンプ/DIですが、XLR入力にファンタム電源は無いのでダイナミック・マイク専用での使用となりまする(コンデンサー・マイク入力の場合は外部電源対応での使用)。







しかし、これからの世代にはYamahaの新製品、YDS-150 Digital Saxophoneの方が魅力を感じるのかもしれませんね。Yamahaと言えば 'ウィンドシンセ' のWXや同種のAkai Professional EWI、最近ではRoland AerophoneにEmeoのDigital Practice Horn、James Morrisonの開発したデジタル・トランペットなどありますけど、このYDS-150はある意味サクソフォンの 'デジタル化' というところで、そのままバリトン、テナー、アルト、ソプラノの音域をベースに73種の音色をアコースティックの器楽演奏のまま移行出来るところがコンセプト。やはり各レビューではいかにその 'アコースティック性' が再現されているのかが議論されておりますけど、実はこの楽器が想定するユーザーは未だサックスや 'ウィンドシンセ' を触ったことのない管楽器に敷居の高さを持ってる初心者、とのこと。そしてComputone Inc.のLyriconと並び、これら 'デジタル・ウィンド・インストゥルメンツ' のルーツ的機種でありAkai Professional EVI/EWIの出発点となったNyle Steiner製作の 'Steinerphone' がついに2020年、スウェーデンのBerglund InstrumentsからNuEVI/NuRADとして復活しました。









Earthquaker Devices主宰のJamie Stillmanの動画ってほっこりする。彼のマニアックなコレクションと壊れていくモノへのだらしない愛情(笑)、ペダル・メーカーとして日々ビジネスに勤しむ者としての矜持が実に良いバランスですね。続いて、今やデジマートによる往年の名機検証、分析で人気のある 'Deeper's View〜経験と考察〜' や、最高の機材レビューでお馴染みCrews/Hoochiesの村田善行氏がそのJamieと奇跡の '邂逅' を果たした!。ホント、この村田氏の動画は分かりやすい言葉で取り上げる機材の魅力を引き出すのが実に上手いですよねえ。









いつまでもガジェットがもたらす '駄菓子のような興奮' に熱狂するギタリスト、Nels Clineの飽くなき戯れはこれまでのギタリストが抱えていたステレオタイプから '足下' を解放します。ギターにペダルから 'シンセサイズ' や管楽器、音楽に至るまで全てが等価、これらが 'ひと繋がり' でアウトプットされたところに現れる個性こそ 'エフェクトロニクスの世界' そのものなのです。また、大手から小さなガレージ工房の垣根を超えて数々の 'コラボペダル' により活性化する市場から、さらに多くの 'マイスター' が新規参入して来る業界の流れを捉えたこの2021年、Reverb.comがお送りする集大成的ドキュメント 'The Pedal Movie' 公開が決定!。今年も素晴らしいペダルと出会えますように。


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