2019年8月4日日曜日

8月の '飛び道具' フリークショウ

俗に言う '飛び道具' と呼ばれるヘンテコなペダルたち。コレ、大別すれば二通りの解釈があり、ひとつは意図せず結果的に '飛び道具' となってしまったもの。例えば古のアナログ・オクターバーなどはこの範疇に入れられてしまうでしょう。そもそも単音ピッキングで一定の音量差がないトーンにより弾かなければ簡単に誤作動し、自分が意図しないエラーノイズを撒き散らすシロモノ。Boss OC-2 OctaveやYamaha OC-01 Octaverなどの自動追従コンパレータを搭載したもの、昨今のデジタルで制御するオクターバー以前はこれがほとんどのオクターバーに付いて回るアナログ的 '欠陥' でした。また、ディレイにおけるフィードバックの偶発的発振効果もこういう意図しない '飛び道具' 的機能に含まれますね。





もうひとつは初めから 'ニッチな' 需要に即して少量生産されるヤツで、これはここ近年市場を席巻する 'グリッチ/スタッター' 系エフェクターが代表的。基本的にディレイと 'Hold' 機能をランダマイズに '放置' した変異系で、最近の音楽シーンと呼応するようにその製品は賑やかとなりました。そしてこれらのペダルのアプローチは、いわゆるフツーの器楽的奏法を初めから放棄したところで成立しているところにその特徴があるのです。しっかしSimon The Magpieさんはペダル以上に本人がイっちゃってる感じですね(笑)。










Ezhi & Aka Fernweh

いくつか個別にあれこれペダルを数珠繋ぎにしていろいろツマミ、スイッチを触ってみる・・こーいうのもシンセの音作りと並んで手放せないくらい面白い。やはりどうしても替えの効かないヤツ、どう使っていいか分からんヤツ、ただ眺めているだけでシアワセになれるヤツ(笑)などなど・・このコンパクト・エフェクターというヤツは実に厄介で離れ難い '中毒性' を有しているのだ。一時期、ロシアや旧ソビエト産のペダルにもハマっていくつか手を出してしまいましたが、このキリル文字に塗れたヤツはホントに得体の知れない魅力に溢れている。他にNeotenicSoundさんの新製品も常にワクワクさせてくれるのだけど・・こーいう決して大げさではないけど '小さな箱' に詰まっているロマンってやっぱ大事だよなあ。とりあえず、個人的に潤沢な資金があれば 'Pedals And Effecs' の秘密基地ぶりやJHS Pedals主宰のJosh Scott、Earthquaker Devices主宰のJamie Stillmanのような 'ペダル・ジャンキー' を目指したい気持ちもあり、Daniel(メガネの人)とMickのコンビからなるThat Pedal Showが訪問するAnalogman主宰のAnalog Mikeの工房訪問記などは興奮してしまうのです。こりゃ見事な 'ペダル・ジャンキー' ぶりだ(笑)。Mikeさん、秋葉原のラジオデパートでパーツ巡りしてたんすね(笑)。





ちなみに個人的に興奮するのはMaestroのエフェクターでして、あの無駄に '工業製品' 的ルックスとそんな大げさなクセに "こんだけ?" っていうハッタリ具合が萌えてしまう(笑)。このブランドの集大成的マルチのUSS-1 Universal Synthesizer Systemなんて最高じゃないですか。シンセじゃないっていう(笑)。しかし、何か集めることに囚われてモノに占有され過ぎてしまうとある瞬間、全てのモノを手放したくなる衝動が襲ってくる(苦笑)。過去、一時の気の迷いで手放して後悔した機材は数知れず・・。そういう心境の中で、いつでも手放せるっていう '気楽さ' は何かにハマる上で大切ですけど、ね。





Death by Audio Total Sonic Annihilation 2
Death by Audio ①
Death by Audio ②

いわゆる 'フィードバック・ループ' に特化したものといえばこちら、Death by AudioのTotal Sonic Annihilation。この謎にぶっ飛んだ一台はOliver Ackermannが自らの会社立ち上げのキッカケとした記念碑的作品であり、これは入力をトリガーにして本体内でループさせることにより予想外のノイズを生成するもの。発想としてはノイズ系アーティストがライン・ミキサーの出力を再度チャンネルへ入力、EQなどでコントロールしながらノイズを生成するやり方を 'ペダル化' したもので珍しいものでは御座いません。しかし、放出されるノイズは実に多彩で 'インサート' に繋ぐペダルにより刻々と変化・・つまり、繋ぐペダルによってはぶっ飛んだり、全く反応しなかったりという '博打' のようなアタッチメントと言えるでしょうね。自宅の押し入れに燻っている使わなくなったペダルの 'リサイクル' として、その予測不能なアイテムにこーいうヤツを組み合わせてみるのは面白い。





Death by Audio Evil Filter
Death by Audio Deep Animation

そんな '飛び道具' 専門でペダルを製作するDeath by Audioからフィルターの変異系ペダル2種。どちらも '歪み' をベースとしたフィルターの変異系であり、よりギターシンセ風のEvil Filterとエンヴェロープ・フォロワーのトリガー機能でリズミックなアプローチにも対応するDeep Animationという '住み分け' が出来ております。フツーのフィルター系に飽きた人は是非とも手に取って頂きたい。





Mattoverse Electronics Air Trash

こちらも米国の工房、Mattovese Electronicsによる 'ゴミのような酷い音' を生成するというペダル、Air Trash。一切表記のない3つのツマミは青が全体の音量調整以外、黄と赤はまさに本機の 'ゴミのような' 音作りに貢献します。その黄はいわゆる 'ローファイ' にするもののようですが音の太さは維持しながらそこに何ともいえない '劣化具合' を付加。そして危険な赤はそのツマミを上げていくに従い、トレモロというか、フィルターというか、かなり入力の感度に左右されながら何とも言えない '動的効果' の変調を加えていきます。う〜ん、何だこれ?本機もまた上述したTotal Sonic Annhilation同様、接続順によってはその効果はバラバラで 'トライ&エラー' で見つけていくべきペダルのよーですね。







Ibanez LF7 Lo Fi ①
Ibanez LF7 Lo Fi ②
Z.Vex Effects Instant Lo-Fi Junky 'Vexter'
Cooper Fx Generation Loss

いわゆる 'ローファイ' という名称や機能をコンパクト・エフェクターで初めて具現化したIbanezの 'Tone-Lok' シリーズ中の迷機、LF7 Lo Fi。まさにギタリストからDJ、ラッパーのような人たちにまでその裾野を広げたことは、この入力部にGuitar、Drums、Micの3種切り替えスイッチを設けていることからも分かります。本機のキモは極端にカット方向で音作りのするLo CutとHi Cutの周波数ツマミでして、基本的にはAMラジオ・トーン、電話ヴォイス的 'ローファイ' なものながらその加工具合は地味。EQに比べて極端にカットしながらワウになるでもなく、歪み系エフェクターの範疇に入れるには弱い感じですけど、本機の動画の大半がどれもブースター的歪ませてばっかりでいわゆる 'ローファイ' の差異に迫ったものが少ないのは残念。その中で上にご紹介するものは本機の魅力を引き出しており、また個人で 'ビット・クラッシャー' 的ノイズのモディファイを施したヤツも楽しい。さらに現在の 'ローファイ' 専用機であるZ.Vex Effects Instant  Lo-Fi JunkyとCooper Fx Generation Lossの比較動画。とりあえず何でも轟音ばかりではなく、こういう効果がもたらす 'ビミョーな質感' に耳をそば立てるプレイヤーが登場して欲しいですね。



Keio Electronic Lab. Synthesizer Traveller F-1 ①
Keio Electronic Lab. Synthesizer Traveller F-1 ②

過去の遺産から '温故知新' 的に学んでみようということでこちら、日本が誇る偉大なエンジニア、三枝文夫氏が手がけた京王技研(Korg)のSynthesizer Traveller F-1。本機は-12dB/Octのローパス・フィルターとハイパス・フィルターがセットで構成された 'Traveller' を単体で搭載したもので、それぞれの動きを連携させて '旅人のように' ペアで移動させるという三枝氏のアイデアから名付けられた機能です。三枝氏といえば日本のエフェクター黎明期を象徴する2種、Honey Psychedelic Machine、Vibra Chorusの設計者としてすでに 'レジェンド' の立場におり、本機はちょうど京王技研からKorgへと移行する過渡期に設計者からユーザーへの '挑戦状' として遊び心いっぱいに提供されながら、結局は現在まで '発見' されることなく 'コレクターズ・アイテム' として捨て置かれております。本機の製品開発にはジャズ・ピアニストの佐藤允彦氏も携わっており、そんな当時のプロトタイプについてこう述べております。なんと当初はペダルの縦方向のみならず、横にもスライドさせてコントロールする仕様だったとは・・。

"三枝さんっていう開発者の人がいて、彼がその時にもうひとつ、面白い音がするよって持ってきたのが、あとから考えたらリング・モジュレーターなんですよ。'これは周波数を掛け算する機械なんですよ' って。これを僕、凄い気に入って、これだけ作れないかって言ったのね。ワウワウ・ペダルってあるでしょう。これにフェンダーローズの音を通して、かかる周波数の高さを縦の動きでもって、横の動きでかかる分量を調節できるっていう、そういうペダルを作ってくれたんです。これを持って行って、1972年のモントルーのジャズ・フェスで使ってますね。生ピアノにも入れて使ったりして、けっこうみんなビックリしていて。"







Synthmonger
Synthmonger Fuzzmonger Mk.Ⅰ
Seppuku Fx Octave Drone
Electrograve Ripper Fuzz

強烈な '飛び道具' として真っ先に思い出すのがスイッチ一発でグシャグシャに歪み、破壊してしまうファズ。その中でもフィルターと組み合わせた変態系はいつでも挑戦者を待ち構えておりまする。入力した信号を2つのパルス波に変換、それらを合成して強制開閉するゲート感と強烈な '歪み' と '揺れ'、エンヴェロープ・フィルターにより生成するSynthmonger Fuzzmonger、オーストラリアで 'Garbege' なペダルばかり少量製作するSeppuku FxのOctave Drone、そして名古屋発の新興な工房、ElectrograveからのRipper Fuzzの三連発。ちなみにElectrograveの製品は今後、Cult Pedal Shopが代理店として扱うとのことで手に入りやすくなるのではないでしょうか?しっかしどれもサスティン何それ?状態のパツパツしたゲート感全開で、グシャ〜っとフレイズが粉々に破壊・・。やっぱしペダルってこーいう '制御出来ない' 興奮を味わうもんですよね(笑)。







Metasonix KV-100 The Assblaster
Metasonix TS-21 Hellfire Modulator
Metasonix TS-22 Pentode Filterbank
Metasonix TS-23 Dual Thyratron VCO

このような粉砕される '歪み' がさらに先鋭化されると米国で真空管を得意とするEric Bahbour博士による工房、Metasonixへと行き着きます。現在は 'ユーロラック' 用のモジュール製作に完全にシフトしておりますが、この '真空管ギターシンセ' ともいうべきアタッシュケースに入ったKV-100 The Assblasterはもちろん、過去にはかなり怪しい '飛び道具' 的ユニットをいくつか製作していたという '前科' があります(笑)。個人的に思い出すのは2000年頃に登場したガレージ臭プンプンな4Uラック・ユニット、TS-21 Hellfire Modulator、TS-22 Pentode Filterbank、そしてTS-23 Dual Thyratron VCOの3種で当時、高円寺にあったDTM関連の 'Modern Tools' が代理店となり扱っておりました。上記リンク先の 'サンレコ' レビューにもありますが、音声信号を高電圧 'ビーム・モジュラー' で破壊するTS-21、4つのバンドパス・フィルターを内蔵したTS-22、2つのオシレータ内蔵のTS-23という荒々しくもマニア心くすぐる '宣伝文句' は、すぐにでもわたしを高円寺へと足を運ばせたことが昨日のことのように懐かしい(笑)。実際、試奏してこのレビュー通りの感想を持ちながら、製品としてコレは不良品なんじゃないか?というくらい、真空管機器特有のブ〜ンとしたハムノイズも盛大に撒き散らす手に負えないシロモノでしたね。デモ動画もこんなTS-21による '笑点のテーマ' ?のようなシンセベースで鳴らしたものしかなく、いまこれらと同種の効果を求めるのならWMD Geiger Counterなどを購入した方が満足出来ると思うのだけど、未だにわたしの記憶の片隅に引っかかっている機材でもあります。







U.S.S.R. Formanta Esko-100
U.S.S.R. Formanta Esko-100 Ver.2 on Reverb.com
Elta Music Devices PLL-4046 ①
Elta Music Devices PLL-4046 ②

ちなみにこの手の効果はロシアも負けておりません。旧ソビエトの時代に 'ギターシンセ' 含めてマルチ・エフェクツ' に集大成させたのがこちら、Formanta Esko-100。1970年代のビザールなアナログシンセ、Polivoksの設計、製造を担当したFormantaによる本機は、その無骨な '業務用機器' 的ルックスの中にファズ、オクターバー、フランジャー、リヴァーブ、トレモロ、ディレイ、そして付属のエクスプレッション・ペダルをつなぐことでワウにもなるという素晴らしいもの。これら空間系のプログラムの内、初期のVer.1ではテープ・エコーを搭載、Ver.2からはICチップによるデジタル・ディレイへと変更されたのですがこれが 'メモ用ICレコーダー' 的チープかつ 'ローファイ' な質感なのです。また、簡単なHold機能によるピッチシフト風 '飛び道具' まで対応するなどその潜在能力は侮れません。そんなEsko-100の伝統を引き継いだかどーかは分かりませんが、Elta Music Devicesのハーモニック・シンセサイザーPLL-4046。PLLとは 'Phased Locked Loop' (位相同期回路)という入力信号からフィードバックで制御したものを短形波に変換、その周波数をマルチプルまたは分割して元のピッチから倍音を生成するというシンセライクなもの。





Earthquaker Devices Data Corupter
Glou Glou Moutrade

このPLL-4046と同種のPLLを用いたものとしてEarthquaker DevicesのData Corupterやフランスはリヨンの新興工房、Glou Glou Moutardeなどがあります。どれも共通するのは4オクターヴもの帯域を持つ歪んだ 'ハーモニックシンセ' であり、いわゆる 'ファミコン・サウンド' に象徴される '8ビット・クラッシャー' 的センス、LFOからフィルター・スウィープに至るまで幅広い音作りを可能とします。







Beetronics Swarm

米国カリフォルニア州ロスアンゼルスに工房を構えるBeetronics。アレ?この工房の製品はちょっと前にLep Internationalが代理店をやってたと思ってたけど、いつの間にかUmbrella Companyに移譲したんですね。とにかくその美しいレリックな '一点もの' 的デザインとハニカム・デザインなPCB基板による丁寧な配線は、このブランドがその中身のみならず所有する楽しみに至るまで考えられていることが分かります。結構、このスペシャルな 'アート' をコレクションしているユーザーも多いのでわ?このSwarmはBeetronics流の '擬似ギターシンセ' であり、まるで数千匹の蜂が襲ってくるような分厚くヒステリックなハーモナイズ・トーンに魅力があります。本機のキモであるSpiciesでそのハーモナイズを9種から選択、QueenとDroneツマミで2オクターヴのハーモニーをそれぞれ個別に調整、さらにFlightとStingツマミでそのハーモナイズに適用されるモジュレーションを設定します。





Mid-Fi Electronics Organ Drone
Mid-Fi Electronics Clari (not)

このドローンという効果はエフェクターのもうひとつの側面、場を設定する '通奏低音' から奏者が喚起される存在として 'ペダルに弾かされてしまう' ものと言うことが出来ます。米国ニューハンプシャー州でDoug Tuttle氏によりひとり製作するMid-Fi Electronicsは、'Lo-FI' でも 'Hi-FI' でもなく 'Mid-Fi' であるという冗談のようなスローガンで '現場の発想' から奇妙なペダルばかりをラインナップ。このOrgan Droneはすでに生産終了ながらオルガンのドローン効果に特化したものとして、SpeedとDepthでオルガン音のトレモロ効果、入力する音とミックスしながらCourseとFineツマミでピッチとトーンを調整、2、4、8、16、32の各ツマミで入力する音とドローンをミックスしながら出力します。一方のClari (not) はレッド・ホット・チリ・ペパーズのギタリスト、ジョシュ・クリングホッファーが使用したことで話題となった変態ピッチ・モジュレーション・ファズ。いわゆるテープの 'ワウフラッター' 的揺れ感をベースにファズをミックス、ほとんどピッチがグニャグニャと上下するように飛びまくる本機はその使い所に悩む一台(笑)。いや、歪み系は他のペダルと併用して使いたいんだけど・・というユーザーにはファズを内蔵しない 'Clean' ヴァージョンのClari (not) も用意しているそうです。ちなみに製作者のDoug Tuttle氏によれば、本機製作のきっかけはキャプテン・ビーフハートが吹くバス・クラリネットをヒントにしたようで、そこからアイロニカルに "クラリネットじゃない"  というダジャレのような?ネーミングになったとのこと(笑)。





Electro-Harmonix Superego Synth Engine
Gamechanger Audio Plus Pedal

またドローンといえば、こんな 'Hold' 機能の変異系ともいうべき 'エレハモ' ならではの 'Freeze' 機能として登場したSuperego Synth Engineもなかなか楽しい一台。分厚いアンサンブルのバッキングを構築しながら 'インサート' も備えることでさらに過激な音作りに挑むことも可能。この 'エレハモ' の同種としてさらに高品質にしたGamechanger AudioのPlus Pedalも御座います。ピアノのダンパーペダルを模したコントローラーで踏んだ直前のサスティンをリアルタイム処理でループさせる 'Freeze'、ロング・サスティンを実現した驚異のペダルです。サスティンは最大5つまでオーバーダブすることが可能でフェイドインの速度やディケイの細かな設定はもちろん、お手軽なループ・サンプリングとエフェクト音のみのWetへ瞬時に切り替えるフット・スイッチも付属します。







Catalinbread Coriolis Effect
Pladask Elektrisk Fabrikat

さて、肝心の 'グリッチ/スタッター' 系エフェクターといえば、MalekkoやMr.Blackと並びエフェクター界で大きな存在感を誇るCatalinbreadから登場のCoriolis Effect。こちらはピッチシフトとテープ逆再生からターンテーブルの '電源落とし' 風効果、エクスプレッション・ペダルによるワウやフィルタリングからグリッチのランダマイズに至るまで奇妙な '飛び道具' を生成する面白いもの。この工房で同種の '飛び道具' としてはCsidmanが結構面白かったのだけど、本機の多機能ぶりもなかなかのもの・・う〜ん、まだまだこの手のペダルの勢いを止めることは出来ませんね。そしてノルウェーからの新たな '刺客' ともいうべきPladask Elektrisk Fabrikat。もう、ここまでくると正確な読み方が分かりませんけど(苦笑)、本機はRed Panda ParticleやRaster、The Montreal Assembly Count to Fiveなどと同様のディレイ、ピッチシフトによる 'グラニュラー' 応用系のひとつですね。







Bananana Effects Mandala
Bananana Effects Aurora

そんな 'グリッチ/スタッター' 系エフェクターといえば今や日本のみならず海外でも認知度の上がっているBananana Effects。このミニサイズにしてデジタルでしか実現出来ない '多機能ぶり' を発揮するここの製品も大体 '飛び道具' ばかりなんだけど(笑)、いわゆる 'グリッチ' な機能に的を絞ったMandalaとRed Panda Particleのような 'グリッチ/ピッチシフト' の変異系ともいうべきAurora。まずMandalaの8つのモードは入力直前の音を再生速度を可変させながら繰り返す 'Repeat'、そのリピート音をランダマイズにする 'Random'、逆再生モードの 'Reverse'、自動にループ再生する 'Triger'、いわゆる8ビット系サウンドに変換してルー日再生させる 'Square Triger'、それをオクターヴでミックスする 'Square'、ピッチシフトをそれぞれ上昇、下降で再生させる 'Up' と 'Down' と盛りだくさん。一方のAuroraはそこから 'ピッチシフト' に特化したもので、これまた8つのモードは繰り返す度にクロマチックでピッチが上昇、下降する 'Pitch Up' と 'Pitch Down'、Holdでサンプリングした音を倍速で再生させる 'Speed Up'、さらにそれをトリガーによる自動モードにした 'Speed Up Trigger'、逆再生モードの 'Reverse'、フィードバック・ディレイとして再生方向が反転する 'Cascade Reverse'、ループさせたフレイズを逆再生させる 'Multi Reverse'、それをトリガーで自動モードにした 'Reverse Trigger' と・・ふぅ、このサイズにしてかなり独創的な音作りへと誘う創造的ペダルでございます。個人的にここへもうひとつ特筆するのならば、この手の 'ニッチな' ペダルに共通する価格帯としては安価で気軽に試せるということ!素晴らしい。







Benidub Spring Amp
Benidub Spring Amp Ⅱ
Anasounds Element
Knas The Ekdahl Moisturizer

さて、空間系における '飛び道具' といえばディレイのフィードバック発振だけではございません。そう、ダブでおなじみスプリング・リヴァーブによる '破壊音' は最もプリミティヴなワザと言えるでしょう。直接バネを掴んだり、本体ごとぶっ叩いたりとそれはもう乱暴狼藉の限りを尽くします。最近、フランスから登場した新興の工房、AnasoundsのElementはBenidub Spring Amp同様に外部スプリング・ユニットと組み合わせて使用し、残響のディケイの長さに合わせて順々に 'Le Bon'、'La Brute'、'Le Truand' の3種が用意されております。また、ダブの世界ではキング・タビーの影響からフィルターと組み合わせるエンジニアが多いのですが、こちらはSpring Amp同様に深い残響をVCFとLFOで処理してバネで '飛ばす' Knas The Ekdahl Moisturizer。日本未発売ですけど欧米の '宅録家' を中心に結構な人気を集めておりまする。






Arp Odyssey Module ①
Arp Odyssey Module ②
Korg SQ-1 Step Sequencer

そして、強烈なフィルタリングで外部機器とあんなこと、こんなことという '妄想' が止まらないのならば・・もうアナログシンセ使っちゃいましょうヨ!いやいや、そんな大層なシンセなんて持ってないよ、などと萎縮する必要はありません。とりあえず、Korgから1万弱で発売されている8ステップ・シーケンサーのSQ-1とArpの名機、Odysseyをモジュール化したヤツを手にするのです。いや、シンセと言われても弾けないし・・などという前に本機後ろを覗いてみて頂きたい。そう、この外部オーディオ入力(Ext Audio Input)があるおかげで 'ペダル的' に楽器を突っ込み、オシレータ(VCO)の代わりにVCF、LFO、エンヴェロープ・ジェネレーター(EG)などでいろいろ加工、さらにSQ-1もCVで繋いでいろんなシーケンスの変調まで任せられるのはシンセでしか出来ない芸当です。どうです?試してみたくなったのでわ?









Dave Smith Instruments Mopho
Sherman
Sherman Filterbank 2 Compact
Gamechanger Audio Plasma Pedal

このような 'シンセサイズ' に特化した変態フィルター及び変態オシレータとしては、ベルギーでHerman Gillisさんが手がけるSherman Filterbank 2と残念ながら生産終了してしまったMoog博士のMoogerfooger MF-107 Freqboxが双璧でしょう。特にこの 'Filterbank使い' としてはクラブ・ジャズ的なスリーピース・バンドPhatの活動でその存在を知られ、現在はソロとしてquartz-headやrabitooほか、この動画のユニット 'びびび' で活動するサックス奏者藤原大輔さん。1990年代後半にテクノ界隈で人気を博したフィルターSherman Filterbank 2とその下に置くラック型ディレイKorg DL8000RのHold機能を駆使して、過激に発振するエレクトロニカ的スタイルを披露します。ほとんどオシレータのないモジュラーシンセといっていい '化け物' 的機器で、どんな音をブチ込んでもまったく予測不能なサウンドに変調してくれます(動画途中の 'Intermission' は長く第2部は58:33〜スタート)。そして超高圧信号をキセノン管でスパークさせたラトビア共和国の話題作、Gamechanger AudioのPlasma Pedalなんですが倍音の多いサックスならいざ知らず・・ラッパだとちょっと歪み過ぎて使いにくい、かな?ちなみに姉妹機としてオクターヴ・ファズのPlasma Coilというのも最近登場したよーですね。





そういえば 'ギターマガジン' 2014年7月号で特集された「謎のエフェクターを追え!〜そのペダル、凶暴につき」もなかなか面白かったなあ。ゆらゆら帝国やギターウルフを手がけたエンジニア、中村宗一郎氏(N)とエフェクターテックの菊地きんた氏(K)による対談がこーいうニッチなペダルに対する歪んだ愛情というか(笑)、ある種音楽の創造に孕む '本質' を浮き彫りにしているのが興味深い。ええ、これは 'ペダル・ジャンキー' が常に抱えている心情の代弁でございます。いや、これでも昔は真面目にバップを目指してラッパ吹いてたんだけど、な・・いつの間にやらこーいう 'ガジェット' な世界が楽器や奏法を追い越してしまった(苦笑)。

- まず最初に "なんでこんな効果の製品を作ったんだろう?" というような '変わり種' のペダルについて教えて下さい。

N - まず僕の中でグッとくるポイントというのが '見た目' なんですよね。"わざわざコイツのためだけに作った型なんだろうな" っていうバカでかい筐体とか、妙にツマミが多かったりするのが大好きなんです(笑)。レジスターくらい大きかったりすると特にうれしいですね。ボスやMXRが登場して、みんな 'コンパクト・エフェクター' って言い始めたけど、70年代中期までは 'アタッチメント' って呼んでいた人もいました。それから時代のニーズはコンパクト化と多機能へと向かっていきましたけど、僕としては 'このでかさでひとつの音しか出ない不自由さ' に惹かれるところは大いにありますね(笑)。

K - 中村さんが買う基準って '見た目' ですよね(笑)。"コイツ、なんかやらかしそうだな・・" っていう雰囲気を察知するというか。で手に入れてみても、予想どおりやらかす場合もありますし、まったく何もないこともある(笑)。"こんな見た目なのにこんな音しか出ないのか!" っていうパターンだったとしても "使うことに意味がある" というか・・例えばエレハモのパルス・モジュレーターを使うか?普通のトレモロを2個つなげて同じような効果を出すのか?で言ったら、断然 "パルス・モジュレーターを使いました!" ってほうに価値があると思うんですよね。今はマルチで音を作ろうと思えばどんな音でも作れてしまうのかもしれないけど、弾く側としては "このギター・パートはFY-6を通しました!" ってところに意味があるというか。そういう風にテンションを上げてくれる存在だとも思いますね。 "なんとか使いこなしてやろう!" みたいな。

N - たしかに。あと今、話に出たパルス・モジュレーターなんかは、見た目があんなにもゴツイのに派手な効果がないっていうのが謎ですよね(笑)。ほかにも "それ意味あるのか?" ってモデルは何かある?

K - エルクのビッグマフとかおもしろいですけどね・・というか 'ビッグマフ' って名乗ってしまっていること自体がすごいですけど(笑)。これは筐体は一緒でも中身を開けて調べてみると基板が何種か存在していて、そのうちの4種類は確保しています。外側からじゃどの基板なのかわからないんですよ。しかも同じ部品を使っているけど配列が違うから音も微妙に違ったりして・・あれは謎ですね(笑)。また同じ基板でも、当時はその時に手もとにある部品で作っているから、使われている部品が違ったりするんですよね。

N - そうそう(笑)。間違えて逆にプリントしちゃったけど・・まぁいいや〜って出荷しちゃったりね。そういうのがのちのち僕らを惑わせているんですけど。

K - そういえばグヤトーンみたいに当時、ファズのことを 'バズ' って言っていたメーカーもありましたよね。'ファズ=毛羽立つ' ですけど 'バズ=虫の羽音' ってニュアンスなんだと思います。2系統あるんですよ。で表記もグヤトーンだったらBuzz BoxがあったりBazz Boxがあったりとまちまちで(笑)。回路を見たらどちらも一緒でしたけど。

N - "正式名称どっちにする?とりあえずふたつ作っちゃう?" みたいな感じだったのかなぁ?(笑)。

K - 筐体に刻印しているからミスプリントみたいに間違えようがない気もするんですけどね(笑)。あと想像なんですが、GSが流行っていた頃のファズって、歪まないアンプで "いかに音を歪ませるか" ってところに力を注いでいたんではなかろうかと。・・で、結果ジャパニーズ・オリジナル・ファズ回路になってしまったんではなかろうかと・・。

N - そういう意味でも国産ファズは謎めいていますね(笑)。

- ほかにもおもしろい効果の謎のペダルはありますか?

K - FY-6なんかはメーカー違いでたくさんモデルが存在していますね。

N - そうそう。ユニヴァイブで有名なシンエイが、当時OEMでいっぱい同じ筐体の製品を作っているんですよ。

K - FY-6だけで検索しても、テスコからコンパニオンからいろんなブランドのものが出てくるんですよ。その中でもハニーとシャッフツベリーが人気ですね。プレートが違ったり、色が違うだけなんですけど。

N - 歪み系だと 'アグリーフェイス' なんかもおもしろいよね。

K - たしかに。海外の回路図のサイトにあったやつで、おもしろそうなので試しに作ってみたら、その日の内にゆらゆら帝国のレコーディングで使われたんですよね。それからいろんなバージョンをいくつ中村さんに作ったことか(笑)。ちなみに「ソフトに死んでいる」の12インチ・アナログの長いバージョンで聴けます。

N - 僕はそれにジョイスティックを付けてもらって、直感的にいじれるようにしてもらいました(笑)。

K - あと、それとは別に 'ノイジャー' っていうのもありましたよね(笑)。

N - そう!ノイジャーは本当に謎なんですよ(笑)。モダーン・ミュージックっていう明大前にあったレコード屋に、なぜかファズが一緒に売っていて、それがノイジャーって名前だったんです。

K - ファズではあまり見かけない回路なんですけど、ゆらゆら帝国の亀川さんが古い本から回路を見つけてきて、作ってみたらえらいことになりました(笑)。一応ファズなんですけど、爆発的な音が出ているらしくて、それをゆらゆら帝国のライヴで坂本さんが踏んだ瞬間に、ミキサーのインジケーターが一気にピークを振り切っちゃって(笑)。PAに "トぶからやめて下さい" って言われたくらいの代物ですね。本物は手もとにないんだけど、僕が作ったコピーは3台存在していて、亀川さんと坂本さんと中村さんがお持ちです(笑)。

- いつかぜひ体感してみたいです(笑)。では最後に謎のエフェクターが持つ魅力について教えて下さい。

N - やっぱり・・ '未知なる可能性' に尽きるんじゃないですかね。やっぱり "どんな音がするんだろう?" って気になったら、その音を聴いてみたいと思いますから。

K - 僕の場合は、ルックスで惹きつけられるものが多いってことですね。例え音がダメでも、'自己暗示' で良い音になるし、足下に並べているだけで 'ハッタリ' が効くし・・見た目からして何かやってくれそうな雰囲気を醸し出しているエフェクターには魅力があると思います。

N - どんな謎エフェクターでも "生きる場所を選ぶ" というか・・待っているんでしょうね、活躍の時を(笑)。"いつか俺を使ってくれー!!" みたいな。あとはやっぱり音や効果に引っ張られてフレーズが変わるっていうのは、個性の強いエフェクターの魅力ですよね。おもしろい効果があれば1曲できたみたいに、昔はエフェクターをひとつ買うと1曲作るみたいなノリがありましたから。あと組み合わせるエフェクターでかなり変わるじゃないですか。順番変えるだけでもいろんな音が出るし、中身もいじれるとなったらもう無限に楽しめちゃう(笑)。なので弾き手の '音の出し方' に影響与えるっていうのがすごいんじゃないかな。そういう意味では未だに多くの人達が "なにかおもしろい効果はないのかな?" って感じで '未知なる音' への探究心を失っていないんでしょうね。



何かにハマる、まるで '感電' するような衝撃を味わうという意味では、この 'ペダル' というヤツはある種の '幻覚体験' と同種のものではないかと思うのです。ケン・キージーが 'Can You Pass The Acid Test ?' を合言葉に主宰する一大イベント 'アシッド・テスト' で墨流しなどの舞台照明と共に普及したストロボライト。彼がサイケデリア集団メリー・プランクスターズと共に主宰したこのイベントは、まさに音響と照明が錯綜する '意識変革' の場であり、その中でもパッパッと焚かれるストロボライトの幻惑は、グニャグニャした墨流しの変調(今ならラバライトのイメージでしょうか)と対照的なサイケデリアの世界を増幅させます。トム・ウルフの著作「クール・クールLSD交換テスト」ではそんなストロボとLSD体験についてこう述べられております。

"ストロボともストロボ・スコープともいうが、それはもともと、人間の走っているときの脚の動きなどを観察、研究する器具だった。たとえば、暗くされた部屋で、点滅する明るいライトを走っている人の脚に当てる。ライトは、たぶん正常な心臓の鼓動の三倍の速さで点滅する。ライトが照射されるたびに、走っている脚の動きに新しい段階が生まれるのに気づく。この連続的な脚のイメージが脳に固着する。なぜなら、動きを示すかすんだ映像が眼に映らないうちにライトが消されるからだ。ストロボはLSDヘッドの世界でも、ある種の魔術的な特性をもたらす。ストロボから発したライトはある速度で点滅されると脳波のパターンとシンクロナイズされるので、てんかん症的な発作をあたえる。LSDを飲まずにLSD体験のもたらすおおくの感覚をストロボが生むのをヘッドたちは発見した。大きなストロボの下に立った人はすべてのものが断片化されたように見える。たとえば、恍惚として踊っている人たち - の腕は上に上げられたまま静止し - そのギラギラ光った顔はバラバラになる - ここに正方形に並んだ歯が光っているかと思えば、むこうの方にテカテカ光った頬骨が二つ浮かぶ - まるで、チカチカ '雨が降る' 昔の映画の映像のように人間のすべての部分が拡散し、断片化する -スライスされた人間だ!- 蝶の標本板に全歴史がピンでとめられるのだ。むろん、それがLSD体験だ。"



そんなストロボライトなのですが、その昔、Electro-Harmonixからいわゆる 'パーティーグッズ' としてEH-9203 Domino Theory Sound Sensitive Light Tubeというのがありました。これは赤い透明チューブの中に15個のLEDが並び、内蔵した小型マイクが音声信号を検出、音の変化に従ってLEDが異なるパターンで点滅するというもの。しかし、その10年以上前に日本のAce Toneから同様のストロボライト・マシーン、Psyche Light PL-125が発売されているんですヨ。時代はまさにサイケデリック全盛であり、本機は電源On/OffとストロボOn/Offのほか、ストロボのスピードを調節するツマミが1つあるシンプルなもの。ええ、'エレハモ' ほど凝った 'ハイテク' なものではございません(笑)。このPsyche Lightは、ストロボ前面に挿入する赤、青、黄の透明アクリル板フィルターと遠隔で操作できるようにスピード・コントローラーが付属しております。わたしもこの珍品を所有しており、残念ながらキャリングハンドルとアクリル板フィルターは欠品しているもののLEDではなく、アナログな電球によるパッパッパッと眩いばかりのフラッシュで体感するということで、コレがわたしの '飛び道具'(笑)。トレモロの変異系?とも言えます・・かね?。ちなみにテレビで注意喚起される '光過敏性発作' を誘発する恐れもあるので、そのままストロボ光を凝視するのはダメですヨ。





まさに離れられない中毒性。怪人ギタリストのピート・コージーはこのエフェクツの持つ魔力を 'Juice' と表現しておりましたが、まるで人工甘味料たっぷりの '駄菓子' を貪るようにアレコレ手を出すこの小さな 'ガジェット' は、いまも多くの 'ペダル・ジャンキー' の聴覚と懐具合と部屋の占有率を確実に蝕んでおりまする。皆さま、ご利用は計画的に(笑)。

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