ラテン・ヴァイブの王様、カル・ジェイダー、ファンキー・ヴァイブの王様、ビリー・ウッテン、アフロ・ヴァイブの王様ならさしずめムラトゥ・アスタトゥケになるでしょうか?そしてラガ・ヴァイブの王様?と言ってよいのか、ジャマイカにはこのレニー・ヒバートがおります。さて、一転してマーティン・デニーと並ぶエキゾチカの作曲家、レス・バクスターのキャリアの中で最も怪しい時期とされているのがこの 'KPMライブラリー・ミュージック' に提供していたもの。すでにAPIでロジャー・コーマン監督のヒッピーたちを題材にした 'B級バイカーズ' 映画でファンクに接近したバクスターは、このエキゾな 'KPM音源' でさらにもう一歩踏み込んだブラジル風 'エキゾぶり' を発揮します。
ここでの選曲の中心はマイアミ〜バハマ一帯、実は音楽的に '不毛地帯' ではなかったことを証明する怪しいシリーズ 'West Indies Funk' 1〜3のコンピレーション、そして 'TNT' ことThe Night Trainの 'Making Tracks' など一連のTrans Airレーベルからの再発でお送りします。う〜ん、レア・グルーヴもここまできたか!という感じなのですが、やはり近くにカリプソで有名なトリニダード・トバゴという国があるからなのか、いわゆるスティールパンなどをフィーチュアしたトロピカルな作風が横溢しておりますね。実際、上記コンピレーションからはスティールパンのバンドとして有名なThe Esso Trinidad Steel Bandも収録されているのですが、その他は見事に知らないバンドばかり。また、バハマとは国であると同時にバハマ諸島でもあり、その実たくさんの島々から多様なバンドが輩出されております。面白いのは、キューバと地理的に近いにもかかわらず、なぜかカリブ海からちょっと降った孤島、トリニダード・トバゴの文化と近い関係にあるんですよね。つまりラテン的要素が少ない。まあ、これはスペイン語圏のキューバと英語圏のバハマ&トリニダードの違いとも言えるのだろうけど、ジェイムズ・ブラウンやザ・ミーターズといった '有名どころ' を、どこか南国の緩〜い '屋台風?' アレンジなファンクでリゾート気分を盛り上げます。ジャマイカの偉大なオルガン奏者、ジャッキー・ミットゥーとも少し似た雰囲気があるかも。しかし何と言っても、この一昔前のホテルのロビーや土産物屋で売られていた '在りし日の' 観光地風絵葉書なジャケットが素晴らし過ぎる!永遠に続くハッピーかつラウンジで 'ミッド・センチュリー・モダン' な雰囲気というか、この現実逃避したくなる 'レトロ・フューチャー' な感じがたまりません。
同じサムネ画ばかりで目がクラクラしているでしょうけど、この亜熱帯にラウンジな感じはまだまだ続きますヨ。誰かすぐにホテルを手配して航空機チケットをわたしに送ってくれ〜。今夜一眠りして、翌朝目が覚めたら一面、突き抜ける青空と青い海、降り注ぐ日差しを浴びながらプールサイドで寝そべっていたらどれだけ気持ち良いだろうか。そして、バハマといえば首都のナッソー(Nassou)、そしてナッソーといえば 'Funky Nassou' ということで、ここら辺で最も有名なのがバハマ出身のファンクバンド、The Bigining of The Endでしょう。長いことその 'カリビアン・ファンク' を代表するバンドであり、1971年のヒット曲で聴こえる地元のカーニバル音楽、'ジャンカヌー' のリズムを取り入れたファンクは独特です。彼らのデビュー・アルバムは全編、優れたファンクを展開しながらこの後、ディスコ全盛期の1976年にバンド名そのままの2作目をリリースして消えてしまいました。
グッと陽射しの照り付ける7月の暑さを無視するようにチャカポコと一定のリズムで進行するリズムボックスの 'サイケ' 具合もなかなかのもの。一昔前はホテルのラウンジバンドでオルガンの伴奏用であったこのチープな機械は、あのスライ・ストーンがぶっ飛んだ状態でスイッチを入れて新たなファンクへと蘇生させました。また、ダブの巨匠であるリー・ペリーの 'Blackark' スタジオにもKorg Mini Pops 3リズムボックスのOEM、Uni-Vox SR-55でチクタクと亜熱帯のリズムを刻みます。そして '太陽神' として '宇宙の声' をゲットーに届けるサン・ラもフリーフォームにチャカポコとディスコ!しかし、無機質に何の感情もなく繰り返すリズムボックスの響きってサイケだよなあ。
さて、カリブ海に面した西インド諸島がコロンブスによる誤解から名付けられたことは有名ですが、そこからグイッと太平洋を超えてインドに寄り道してみましょうか。と言っても 'ホンモノ' は必要なくあくまで雰囲気だけ味わえれば良いのだからこんな 'インドmeetsボサノヴァ&ファンク' なんてのはどうでしょ?先ずは謎のグループ、ザ・ソウル・ソサエティの 'The Sidewinder' で、そう、一聴してお分かりのようにリー・モーガンのヒット曲ですね。これは1960年代後半に 'Satisfaction from The Soul Society' というアルバムをDotというレーベルからリリースしたグループで、その他、当時のヒット曲であるサム&デイヴ 'Soul Man' やザ・ローリング・ストーンズ 'Satisfaction'、ミリアム・マケバの 'Pata Pata' などをファンキーにカバーする '企画もの' 的一枚のようです。本曲のラテン・アレンジによるイントロで鳴るシタールの '響き'、ええ、たったこれだけのアレンジで濃厚な 'インド臭' を放ちます。続いて、インドの古典音楽が持つ即興演奏の '構造' を自らのビッグバンドに取り入れたドン・エリス謎のお宝音源。'Hindustani Jazz Sextet' という名の実験的グループによるライヴ音源のようで、ジョー・ハリオットよりもさらに早い1964年の時点でその後の 'インド化' の端緒を試行錯誤していたとは・・(驚)。しかしその中身はシタールとボサノヴァがラウンジに融合するという怪しげな展開・・コレ、もっと音源ないんでしょうか?ここでのタブラやシタールの演奏はHari Har Haoなるインド人?が担っているようですが、ヴァイブのエミル・リチャーズやベースのビル・プルマーなど、エリス同様にインドへかぶれてしまう連中が参加しているのも興味深い。さて、コリン・ウォルコットといえば類い稀なる無国籍グループ、オレゴンやマイルス・デイビス1972年の問題作 'On The Corner' への参加が知られておりますが、そのキャリア初期にはラヴィ・シャンカールに師事してシタールを習得、ビル・プルマーやカリル・バラクリシュナ、ビッグ・ジム・サリヴァンらと並び米国人の 'インド化' に大きく貢献しました。このアラン・ローバー・オーケストラもそんな 'サマー・オブ・ラヴ' の季節を象徴する一枚。シタールでボサノヴァな 'マシュ・ケ・ナダ' が怪しくも楽しい〜。最後はアシッド・ジャズからモンド・ミュージックへの流れで 'ラーガ・グルーヴ' きっかけの象徴的一曲となったザ・デイヴ・パイク・セットの 'Mather'。このグループでパイクと並ぶ '双頭' リーダーのひとり、ギター、シタール担当のフォルカー・クリーゲルは本曲収録のアルバム 'Noisy Silence - Gentle Noise' のライナーノーツでこう述べております。
"まだ2週間にしかならないけれど、インドの楽器シタールと取り組んでいるところなんだ。ご多分にもれず、この偉大な楽器のすばらしいサウンドに興味を持ったからね。'Mathar' っていうのは、ラヴィ・シャンカールが人前で演奏できるようになるまで、グルの元で14年間学んでいた北インドの村の名前なんだ。でも、それだけじゃない。この言葉には、'Mathar' が 'Mother' (母)と 'Sitar' という言葉も含んでいるように思えるんだ。"
"まだ2週間にしかならないけれど、インドの楽器シタールと取り組んでいるところなんだ。ご多分にもれず、この偉大な楽器のすばらしいサウンドに興味を持ったからね。'Mathar' っていうのは、ラヴィ・シャンカールが人前で演奏できるようになるまで、グルの元で14年間学んでいた北インドの村の名前なんだ。でも、それだけじゃない。この言葉には、'Mathar' が 'Mother' (母)と 'Sitar' という言葉も含んでいるように思えるんだ。"
さあ、そろそろ大団円の雰囲気が漂ってまいりました。ここでの選曲は2011年にTrans Airなるレーベルから登場したコンピレーション 'West Indies Funk' を中心にお送りしておりますが、そんな一連の '再発' の中で唯一単独のアルバムとしてリリースされたのがこの 'TNT' ことThe Night Trainの 'Maiking Tracks'。この粘っこいセカンドライン風ファンクの蒸しっとしたグルーヴには遠くニューオーリンズへの憧憬が詰まっておりまする。
そんなラウンジな 'TNT' に続いて、夏といえば忘れちゃいけないヴァイブの音色ってことで、再びスカ〜ロック・ステディ期を代表するジャマイカ唯一のヴァイブ奏者レニー・ヒバートに締めて頂きましょう。'TNT' のワルター・ワンダレイのような 'エレベータ・ミュージック' 的オルガンの調べやレニー・ヒバートの途中の '針飛び' 含め(笑)、ああ、プールサイドに寝そべって永遠の優雅な休日を過ごすべくウトウトと・・これぞ常夏の白日夢なり。
ご無沙汰しております、エフェクター写真館の細川です。一点、どうしても伝えたいことがあり(良いことなのでご安心ください)メールを差し上げたのですが、以前使われていたアドレスに現在は届かなくなっているようで、お手数ですがまた改めてご連絡いただいてもよろしいでしょうか?
返信削除以下、アドレスです。
y.hosokawa@cult-pedals.com
よろしくお願いします!
細川