2016年10月1日土曜日

コンデンサー・マイクの最高峰

管楽器用マイクとして一般的なクリップ式のグーズネック型コンデンサー・マイク。しかし一方で、管体のベルにクリップで挟むことを嫌がる奏者もいて、常にステージではマイクをスタンドに立てて収音することを要求します。特に金管楽器のようなマウスピースの振動をベルの先まで共鳴させてこそ、トランペット本来のブリリアントな響きが得られるという '信仰' は、管体のスライドに付けるOリング、チューニング・スライドの支柱、'唾抜き' のウォーター・キーすら、金管の響きを殺す余計な '煩雑物' として排除の対象とされているのだから・・凄すぎる。確かディジー・ガレスピーの45度アップライト・ベルのトランペットは、楽器の気密性を低下させ息のスピードが落ちるとして、ウォーター・キーを付けなかったんですよね。またアマド式ウォーター・キーというのもそんな気密性を落とさないためにボタンで '唾抜き' できるものだった気がします。これは、Monetteのような管体のあちこちに真鍮の板を貼り付け重量を増やし、余計な共振を抑えるヘヴィ・タイプのトランペットとは真逆な考え方(こちらは音の遠達性が目的のようですけど)。トランペットにとって吹奏の '抵抗感' はあり過ぎてもなさ過ぎてもダメなのですが、ハイノートへの飽くなき探求と並んでいかに 'ストレスフリー' な状態に持っていけるかは永遠の課題と言っていいでしょう。



Audio-Technica ATM 35
Audio-Technina ATM 350

こちらは一般的なグーズネック式のAudio-Technicaコンデンサー・マイク。しかしリヴァーブやディレイなどで空間を広げていくのを活かすトーンは、ダイナミック・マイクには求められないコンデンサー・マイクならではの持ち味ですね。個人的にこのATM 35は価格と音質の折り合い含め、とても良いものでした。わたしは2004年に購入して去年まで所有していましたけど、専用のポーチに乾燥剤と一緒に放り込んでいただけですが、音質が劣化することもなければ壊れることもないくらい耐久性はバッチリ!(さすがMaid in Japan)廉価版としてATM 350というのもありますが、ATM 35はバッテリーボックスAT 8532付属、ATM 350はそのままXLR端子が付いております。



DPA d:vote 4099T
DPA 4099 Microphones

ランディ・ブレッカーは高音質なマイクを製作するDPAの 'd:vote' シリーズから4099Tを用いております。従来のクリップ式より接地面の少ない、ゴムのボール2つでベルを挟むようにマウントするSTC 4099というユニークなクリップも用意。どうしても従来のクリップが苦手な方は試してみてはいかがでしょうか?





SD Systems LCM 77

マイルス・デイビス没後、市場に登場したのがこのSD Systems LCM 77。バッテリーボックスのLP Preamp付属で、ベルとマイクの間に十分な距離を空けることで、わざわざマイク部分をひねらずともミュートを装着することが出来るのが画期的でした。個人的には、音質も硬くて余計なピストンノイズを拾ったりと、(価格ほどの)良いものとは思わなかったのですが、たぶんわたしの使う環境が良くなかったのでしょうね・・。しかしクリス・ボッティ格好良いなあ。







AMT P 800

グーズネック式の管楽器用マイクとしては最高峰のコンデンサー・マイク、AMT P 800。クォン・ヴーも一時ユーザーだったようですが、これだけの大きなダイアフラムを持ったマイク・ユニットですから、ステージ上でもラッパの音質は妥協したくないという方にはまさにピッタリ。腰のベルトに装着してワイヤレス・システムと同時に使えるバッテリーボックスBP 40付きのP 800と、スタジオでミキサーにそのまま入力できるようプリアンプ/DIのAP 40付きP 800-Studioの2種類が用意されております。これ以上のものでは、スタジオ・レコーディングにおける管楽器収音の定番、Neumann U87Aiになってしまうのですが、このAMT P 800-Studioも・・10万超えますよ。さすがに日本代理店のHook Upもこの価格では売りにくいのではないでしょうか。



ただし、ベルとマイクの距離がこれだけ空いた状態で十分な感度を持つマイクということは、実際のステージでかなりイコライズが必要になるでしょうね。当然エフェクターもコンパクト・タイプではなく、ライン・レベルのラック・エフェクターをPAでかけてもらってこそ、その高品質な特性がスポイルすることなく活きると思います。


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