2015年10月3日土曜日

ランディ・ブレッカーの探求

わたしは特別熱心なリスナーというワケではなかったのですが、ある時代の世代にとってザ・ブレッカー・ブラザーズというのは大きな存在だったようです。1970年代後半のフュージョン・ブームはジャズやロック、R&Bにラテンといったあらゆる音楽のエッセンスが高度なスキルとテクノロジーの上に成り立っていたもので、別の言い方をするなら、それ以前の '反体制' な空気の中でロックに熱中していた世代が成熟し、もう少し音楽の深みと付き合ってみようとしたところでヒットしたのではないでしょうか。結局は、その深みというのがテクニックのひけらかしに走り過ぎたことで、次第に飽きられてしまったのですが、彼らザ・ブレッカー・ブラザーズは常にバップの伝統を根底に置いた上で、新しいことを探求していた存在でした。



わたしもランディ・ブレッカーのスタイルは好きで、正直その他 'レジェンド' とされているラッパ吹き(例えばリー・モーガンやフレディ・ハバードなど)ほど評価されていないことを残念に思っています。また、彼の作曲における奇妙なセンスも面白く、いまのジャズメンたちがもっと取り上げてくれたらその評価も今後上がっていくのでは、と期待しているのですが・・。

さて、上記動画の1993年ザ・ブレッカー・ブラザーズ '復活' ツアーの際に、来日公演時の 'Jazz Life' 誌とのインタビューによる機材話が興味深いので抜粋してみます。

ランディ "ここには特別話すほどのものはないけどね(笑)。"

− マイク・スターンのエフェクターとほとんど同じですね。

ランディ "うん、そうだ(笑)。コーラスとディレイとオクターバーはみんなよく使ってるからね。ディストーションはトランペットにはちょっと・・(笑)。でも、Bossのギター用エフェクツはトランペットでもいけるよ。トランペットに付けたマイクでもよく通る。"

− プリアンプは使っていますか?

ランディ "ラックのイコライザーをプリアンプ的に使ってる。ラックのエフェクトに関してはそんなに説明もいらないと思うけど、MIDIディヴァイスが入ってて、ノイズゲートでトリガーをハードにしている。それからDigitechのハーモナイザーとミキサー(Roland M-120)がラックに入ってる。"

− ステレオで出力してますね?

ランディ "ぼくはどうなってるのか知らないんだ。エンジニアがセッティングしてくれたから。出力はステレオになってるみたいだけど、どうつながっているのかな?いつもワイヤレスのマイクを使うけど、東京のこの場所だと無線を拾ってしまうから使ってない(笑)。生音とエフェクト音を半々で混ぜて出しているはずだよ。"

− このセッティングはいつからですか?

ランディ "このバンドを始めた時からだ。ハーモナイザーは3、4年使ってる。すごく良いけど値段が高い(笑)。トラック(追従性のこと)も良いし、スケールをダイアトニックにフォローして2声とか3声で使える。そんなに実用的でないけど、モーダルな曲だったら大丈夫だ。ぼくの曲はコードがよく変わるから問題がある(笑)。まあ、オクターヴで使うことが多いね。ハーマン・ミュートの音にオクターヴ上を重ねるとナイス・サウンドだ。このバンドだとトランペットが埋もれてしまうこともあるのでそんな時はエッジを付けるのに役立つ。"

− E-mu Proteus(シンセサイザー)のどんな音を使ってますか?

ランディ "スペイシーなサウンドをいろいろ使ってる。時間があればOberheim Matrix 1000のサウンドを試してみたい。とにかく、時間を取られるからね。この手の作業は(笑)。家にはAkai Professionalのサンプラーとかいろいろあるけど、それをいじる時間が欲しいよ。"

− アンプはRolandのJazz Chorusですね。

ランディ "2台をステレオで使ってる。"


この時のランディの足元には、Boss Octave OC-2、T-Wah TW-1、Digital Delay DD-3、Digital Delay/Sampler DSD-3、Super Chorus CH-1をパワーサプライPSM-5でまとめています。生音とエフェクト音を半々で混ぜて・・とある通り、まだBarcus-berry 1374マウスピース・ピックアップを使っていますね。8UのラックにはRolandのミキサーM-120、Alesis Quadlaverb、E-mu Proteus、Drawmer DS-201のノイズゲートのほか、Digitechとメーカー不詳のPitchriderなるハーモナイザーが入っています。この頃からすでに20年以上の時間が過ぎ、現在はRadial Engineering Voco Locoをベースに、Boss Dynamic Wah AW-3、Equalizer GE-7、Ernie Ballのヴォリューム・ペダル、そしてマルチ・エフェクターのME-70という簡便なセット、マイクはDPAのd:vote 4099Tを使っています。なんでも航空機の手荷物における重量オーバーに引っかかってしまうことで、より手軽なセットへ切り替えたとのこと。また、Barcus-berryのマウスピース・ピックアップについても、あのやり方はかなり調子が良かったから悪くなかった、と述べておられました。



ランディ・ブレッカーさん、今後もますますのご活躍を!

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