2020年5月3日日曜日

PiezoBarrel 'DIY' の休日

わたしも愛用するPiezoBarrelのマウスピース・ピックアップ。オーストラリアでSteve Fransisさんという方がひとり製作する管楽器用ピエゾ・ピックアップでeBayを中心に販売、その安価なお求め安さから世界で続々とユーザー増殖中でございます。同種の製品ではドイツのRamberger Sound Products、ブルガリアのNalbantov Electronics、ギリシャのTAP Pickupsのマウスピース・ピックアップなどがありますけど、コスト・パフォーマンスとトランペットなど金管楽器に対応している点でPiezoBarrelに軍配が上がりますね。ちなみに穴を開けずに装着出来るものとしてはサックス限定ではありますがフランスのViga Music Toolsがありまする。












Nalbantov Electronics
Nalbantov Electronics on eBay
Viga Music Tools intraMic
Viga Music Tools intraMic by HornFx

しかしこのマウスピース・ピックアップ。ひと昔前の管楽器による 'アンプリファイ' 全盛だった頃に比べてピックアップ自体の性能が上がったのかPAシステムの向上なのか分かりませんが、フツーに使う分にはプリアンプを入れてもEQなどで補正せずマイクと遜色なくそこそこ使えちゃってるのは凄いですね。ブルガリアのNalbantov Electronics、フランスのViga Music Tools、ドイツのRumberger Sound Products、そしてオーストラリアのPiezoBarrel(ギリシャのTAP Pickupsも頑張ってくれい!)の比較動画を見れば、確かに 'ニッチなアイテム' ではありますけど地味に世界の片隅で開発、製造する人たちがいることを素直に喜びたい。また、こういうピックアップを使い管楽器で 'エフェクティヴ' することに抵抗ない奏者が増えたことも素晴らしいなあ。









'PiezoBarrel広報大使' (笑)と呼んでも差し支えないくらいに楽しいパフォーマンスを披露するLinsey Pollakさん。一見、大道芸的展開ながら実はかなりのテクニックと表現力で聴かせてくれますね。今でも少ないPiezoBarrelの動画ですが、その初期においてほぼ皆無だった頃にわたしが初めて見たのもこのLinseyさんの動画。すぐ購入に向けてあれこれ調べ始めたのは言うまでもありません(笑)。








ちなみに、どうしてもトランペットやサックスに比べてクラリネットはジャズの世界でも日陰な存在に甘んじていると思うのですが、一時は超絶技巧のソロで沸かせたロルフ・キューンは是非聴いてみて下さい。冷戦期、ベルリンの壁を越え東ドイツから西側社会へやってきたロルフとヨアヒムのキューン兄弟。'クラリネットのコルトレーン' ともいうべきアドリブの粋を見せつけた1964年の傑作である 'Soralius' に続き、68年から69年の 'サマー・オブ・ラヴ' の季節、思いっきりヒッピーとサイケデリックの退廃的自由に塗れた 'Mad Rockers' 改め 'Bloody Rockers' の2作目。ここで 'アンプリファイ' をしたクラリネットには、たぶんGibson / MaestroかVox / KingのAmpliphonic Octavoice Ⅰとワウペダルを使っていると思います。いやあ、当時のゴーゴー喫茶を彷彿とさせるサイケな香りが心地良い。








●eBayで販売を開始した初期のもの。まだサックス/クラリネットの 'Sol' と呼ばれる木管楽器用のみの商品展開で、金管楽器用のものに比べると高域を落として中低域に振ったチューニングがなされております。基本的なPiezoBarrelのパッケージの中身としてはケーブル、自分でお気に入りのマウスピースに装着する 'DIY派' の為に複数のソケット部と蓋にゴムパッキン、ピックアップ本体のLevelツマミを回す為の小さなドライバーが付属します。






●続いて金管楽器用として登場したのがこちらの 'P6'。これまでピックアップ単体での販売からアダプター '加工済み' マウスピースを同梱してのパッケージが追加され飛躍的にユーザーが増えました。トランペット用マウスピースは 'Bachタイプ' のもので7C、5C、3Cの3種を用意。ただし基本的なピックアップ自体の音質は従来の木管楽器用 'Sol' と同じものです。








●現在、新たに展開するのは木管楽器用 'P5' と 'P7' に金管楽器用 'P9' のもので、ピックアップ本体底部にはメーカー名の刻印、全体の金や黒、青いアルマイト塗装が眩しいですね。さらに同梱するマウスピースが 'ショートシャンク' の中国製 '無印' やFaxx製となりサイズに1Cが追加。また付属するケーブルも金属製プラグとなり、ピックアップを着脱するアダプターがマウスピースのカーブに合わせた波形の加工が施されるなどグレードアップしております。このカーブ状に加工されたソケット部は大変ありがたく、以前は 'DIY' するに当たってマウスピースのシャンク部を平らに削り取っていた手間が不要になったこと。製品としては、ピックアップ本体を封入するフィルムケースをさらにデザインされたパッケージで包装し、PDFによる取扱説明書などを用意してきちんとした印象になりました。本機の開発に当たってはスティーヴさんによればバークリー音楽大学のDarren Barrett氏とのテスト、助言を得てデザインしたとのこと。その中身について以下の回答を頂きました。

"The P9 is different internally and has alot of upper harmonics. The P6 (which was the old PiezoBarrel 'Brass') was based on the same design as the 'Wood' but with more upper harmonics and a lower resonant frequency so they do not sound the same."

なるほど〜。実際、以前の 'P6' と比較して高音域がバランス良く出ているなあと感じていたのですが、かなり金管楽器用としてチューニングしてきたことが分かります。一方で以前の 'P6' は木管楽器用との差異は無いとのこと。






Piezo Barrel on eBay
Piezo Barrel Wind Instrument Pickups
Piezo Barrel Instructions
vimeo.com/160406148

基本的にはピックアップ本体、ソケット加工済みのマウスピース、ケーブル、ピックアップ内蔵のゲイン調整の為のミニ・ドライバー、複数のソケットが同梱されて販売されております。Bachタイプのマウスピース・サイズは7C、5C、3C、1Cの4種がありますが、このPiezoBarrel 5Cの新旧比較画像からもお判りのように、'P9' 以降は通常タイプのほかショートシャンクのギャップを持った '無印' と 'Faxx製' のBachタイプも用意。そして以前の製品では、真っ直ぐに切削されたアダプターをマウスピースのシャンクを平らに削り取る手間を経て接合しておりましたが、この波形に加工されたアダプターをハンダで接合した方がその強度面でも圧倒的に有利です。ちなみに以前は不定期でMonetteタイプ(画像はホンモノのMonetteですが)のものもラインナップしておりましたがSteveさん曰く、あの分厚い真鍮の切削加工が大変で止めてしまったとのこと(苦笑)。いやホント、金属の穴開け加工って地味に手間かかるんですヨ。しかし、今回発生した中国・武漢発の新型コロナウィルスの為にその材料の大半を頼っていたSteveさんも大打撃、今は一時的に製作数が滞っておりまする。





Learn to Flux

さて、このような既製品だけでは自分の 'お気に入り' で吹きたいユーザーにとって不満が募るばかり。実際、複数のソケットが同梱されているのを見ればSteveさんから 'DIY' を推奨しているように思います。じゃ、ということでSteveさんによるマウスピースへの取り付け動画を参考に自分で挑戦してみることにしました。いまいち動画の英語理解に乏しいのでお恥ずかしいのですけど(汗)、とりあえずシャンク上の取り付け位置を確定後ハンダで一滴垂らし、バーナーをちんちんに熱したところにハンダでソケット接合して、ドリルで穴を開けていくという流れのようです。まず、その下準備として金属表面の酸化膜の除去、再酸化防止をするべく軽くサンドペーパーで磨き、接合後はそのままにしていると錆が出てくるのでお湯とワイヤーブラシで余分なフラックスを除去します。そしてドリル加工ですけど、最初の3:27〜4:09のところで遅いドリル・スピードによる5mm径の工程。穴を貫通もさせずどういう意図なのかな?と思っていたらなるほど、要約するとわざわざ5mm径の穴を開けたいワケじゃなく、それはホール底面部をキレイな円錐形に加工すると説明しておりまする(3:55〜4:13)。そして、それが次の2mm〜2.5mmドリル加工に当たって位置確定すべくガイドの役目を果たしますヨ、と。ちなみに実際のドリル径としては最初の円錐形加工で4.8mm、貫通させる加工で2mmのドリルを使うのがベストです。

Steveさんによれば動画の取り付けに関する部分は冒頭5分弱に集約されており、残りはマウスピース本体を磨く作業に費やされているとのこと。以下は、PiezoBarrelピックアップの購入時にSteveさんから送られてくるピックアップ取り付けの為のpdf英文解説。

"First, the brass fitting should be heated with a soldering iron and the bottom surface 'tinned' with solder prior to attaching to the mouthpiece.

The Type E fittings provided are designed to fit around the stem of the trumpet mouthpiece to provide a good solder connection. Note that the fitting placement will depend on how far the stem of the mouthpiece fits into the lead pipe or receiver and the shape of the mouthpiece. It is advised to mark the desired position of the brass attachment with mouthpiece attached to the instrument to ensure the attachment will not prevent the mouthpiece from fitting the instrument correctly.

To attach the brass fitting to the mouthpiece you need to secure the mouthpiece so you can work on it without it moving. The mouthpiece will also need to be heated to approximately 300 degrees C depending on the solder, so it will need to be clamped in some material that can withstand this heat.

The mouthpiece needs to be heated until hot enough to melt the solder. Solder should be applied to a small area where the fitting will be attached. Once the solder has formed a smooth blob on the area and has adhered to the mouthpiece stem, you can carefully (and quickly) wipe the solder off with a clean damp cotton cloth. A little more solder should be carefully applied to wet the area and the fitting placed on the mouthpiece stem and kept hot until a good solder joint has been formed. Heat can them be withdrawn and the fitting and mouthpiece allowed to cool. Using a flux (either rosin or acid) during soldering is required to remove oxides and to get a smooth strong joint. The joint should be washed after cooling to remove any flux that may cause corrosion.

The last step is to drill a 2mm or 2.5mm hole into the mouthpiece to allow the sound from the instrument into the pickup. PiezoBarrel pickups work by sound pressure produced by the standing wave inside the instrument - not like a contact mic."











ちなみにこちらはNalbantov Electronics、Rumberger Sound Products、Viga Music Toolsそれぞれのマウスピースへの装着方法。Nalbantovさんのところは組み込み済み製品のほか、穴開け用のドリルをピックアップと共に梱包した 'DIY' キットも用意しております。しかし、サックスのネックを万力などで固定せずそのままドリル貫通・・振動でブレて穴がズレたり抑えている指いっちゃいそうで怖い(苦笑)。Rumbergerさんの方はさすがの几帳面なドイツ人らしく(笑)入念な準備を経て開孔、装着。Viga Music Toolsさんに至っては穴すら開けてない(笑)。固定する金属製ピンの付いたピックアップのセンサー部分をネックとマウスピースの間に挟み込むようにして取り付けます。そして付属のプリアンプも同じくネックに括り付けてさらにワイヤレスまで至極簡単・・おしまい、早い、お手軽!。


それでは 'DIY' による取り付けで動画を参考にいくつか用意してみます。今回わたしが取り付けるマウスピースはGiardinelli(旧刻印)のコルネット用マウスピース6VS。これを 'Cor→Tp' 変換アダプターとしてJK(ヨット・カー) A247でトランペット(新調しました)に装着します。この手の 'ニッチな' アイテムが必要となり調べてみれば、Galax、Bach、Bob Reeves、GR、Stomviなどで見つかりましたがGalax以外欠品。たまたまJK(ヨット・カー)のものがAmazonで一点残っていたので運よくゲットして手元に来てみれば・・Galaxのとおんなじやん!(苦笑)。てか、これどっちのOEM品なのかな?。え〜、とりあえず気を取り直して、こーいうのは各メーカーによる 'ギャップの違い' などもあって手元に来るまで不安だったのですが、早速合わせてみればマウスピース、トランペットのリードパイプとも完璧というくらいの '相性の良さ' でニンマリ。とりあえずソケットに蓋を締めて完成形・・というかアダプター乗っけてみただけの '仮組予想図' です。出来上がったらこんな感じ。


取り付ける為のGiardinelliのコルネット用マウスピース、わたしの手元には2本の6VS(1ピース)があるのだけどそれぞれ全長の違いがあります(汗)。この '旧刻印' 時代のGiardinelliは同じ型番でも製作時期によりビミョーな '個体差' のあるのが有名で(苦笑)、2本の6VSを並べると確かにビミョーな高低差が・・(汗)。この2本は 'GIARDINELLI NEW YORK' の刻印で各々 'ハイフン' 有る無しになっており 'ハイフン無し' (画像左)の方が1mmほど長いですね。そして6VSの口当たりとしては、2本とも共通でフラットリムながらリム内径幅の口当たりがタイトでえぐりがあります。また、タイトなバックボアと共に2本ともシャンクのテーパー角だけは(全長の違いを除けば)ほぼ誤差無しで、アダプターを装着して吹き比べてみても違和感は感じませんでした。ヨカッタ〜。








とりあえず取り付け動画を頼りに同種のものを揃えてみました。HakkoのFlux Paste FS120-01、Hozanの鉛フリーはんだ(Sn-Cu系)HS-374(線径1.0mm)、サカエ富士の1800度で60分噴射するスパークエースBT-20ZGというガストーチ、金属開孔の為の小型ボール盤Rexon DP2250Rという布陣で挑みます。あ、そうそう高熱を受ける土台として黒玄武製の「み尋 岩肌溶岩プレート」という3cm厚の溶岩の塊もAmazonで購入しました。この盤面の穴の開いたところに5mm径の六角レンチぶっ挿してマウスピースのシャンク部を固定させるものとします。あ、ここには写ってないけど余分なフラックスを洗浄する為のぬるま湯を入れたカップも用意しましょう。後はピンセットにアダプターをシャンク部に合わせる為のガイドのようなものをクリップで改造して製作。さあ道具は揃った、後は取り付けるのみ!。




ふぅ、なんとかでけた完成!。ちなみに、こちらがその '溶岩プレート' で穴の開いた盤面に5mm径の六角レンチ挿して根元をホットボンド固定、さらに家に転がっていた金属製のフックを置いて見たところ。使い方はこの六角レンチ棒にマウスピースをセット、さらにリム部分の '置き台' としてこのフックが活躍します。さあ、マウスピースを丸焼きにするゾ!。





しかし、こういうマウスピースへの加工であれこれヤキモキしているといよいよ、ラッパのベルに穴を開けてピックアップ取り付けたい欲望にかられてきます(笑)。マウスピースのサイズはもちろん、楽器本体のリードパイプとのギャップ調整など、結構トランペットのサウンドに重要なところでいろいろな悩みが出てくるのですヨ。ということで、どうせ接合するならこういうヘヴィで一風変わったデザインのラッパなど面白そう。このような従来のラッパとは違う'ぶっとい' ヤツが市場に現れたのは1990年代初め。当時、シカゴに工房を構えていたデイヴィッド・モネット製作のものをウィントン・マルサリスが吹いて話題となってからだと思います。ただしこの手のヘヴィタイプは、それこそコンサートホールの2階席後方あたりを目指して音を飛ばす '遠達性' の為に余計な共振を抑えた設計であり、実際は '側鳴り' がしにくく 'マイク乗り' の悪い楽器なんですけど、ね(苦笑)。









Inderbinen Wind Instruments
Inderbinen Silver Art
Inderbinen Inox
Inderbinen Da Vinci
Inderbinen Studie
Inderbinen Amarone
Inderbinen Toro
Inderbinen Wood
Inderbinen Prototype

一昨年、急逝してしまったロイ・ハーグローヴと言えばスイスのトマス・インダービネンが主宰する工房、Inderbinenを吹くイメージが強いのではないでしょうか。従来のラッパにはなかった奇抜な発想の先駆的メーカーとして、管体すべてに銀をダラダラと垂れ流しちゃうこのSilver Art。正直、ラージボアで銀の固めまくったベルは鳴らすのキツそう。またInoxやDa Vinciとか・・この 'やり過ぎ' な感じは一体何なんだ?。ほかにも英国のTaylorとか、もうふざけているとしか思えないくらい 'ぶっ飛んだ' ラッパのオンパレード・・。実際、ラッパ業界は 'Selmer信仰' の強いサックスに比べてヴィンテージへの執着が薄いと思います。特徴的なのは通常のチューニングスライドとは別にベルが可動式の 'チューニングベル' 式としてネジ止めされていること。また、ハーグローヴは同工房のWoodという独自のトーンを持つフリューゲルホーンも吹いておりましたね。








Spiri daCarbo Vario B♭ Trumpet
Spiri daCarbo Unica B♭ Trumpet
Spiri daCarbo 'Toni Maier' Model B♭ Trumpet
daCarbo

そしてロイ・ハーグローヴがInderbinen Silve Artの次に使い出したのがこの独特なカーボンファイバー製のベルを持つスイス産、Spiri daCarboです。'電気ラッパの伝道師' である近藤等則さんも現在のメインとして愛用しており、 ベル丸ごとカーボンのVarioと半分のみカーボンのUnica、そしてトニ・マイヤーなるトランペット奏者の ' シグネチュアモデル' (サターン・ウォーターキー付き!)の3種モデルがラインナップしております。Youtubeの動画からも伺えますけど、どこか '筒っぽい' コォ〜とした共鳴の抑えた鳴り方がカーボンっぽいな、と思いますね。









Taylor Trumpets
Taylor Custom 46 Super Lite Oval NL

現在、奇抜なラッパばかりを作るイメージの強いTaylorのフリューゲルホーンPhat Boyを僅か16歳が持ち、ケニー・ウィーラーの名曲 'Kind Fork' に挑戦。このPhat Boyも相当に管体がグニャグニャしておりますが、最近はさらに小型化されたPhat Puppyというヤツが結構人気だそうですね。とにかくこれまで従来のラッパに横溢していた先入観を英国の奇才、アンディ・テイラーの手により 'Custom Shop' 謹製で次々と破壊(笑)。そしてMonetteに対する英国からの '解答' として出ました、Phrumpet!。





さて、ヘンチクリンなデザイン過多のヤツ、ただただ重たい 'パクリMonette' のヤツはまったく興味なかったのですが、実は・・独自設計な楕円形 'Ovalベル' を備えたラッパの 'Custom 46 Shorty Oval' を買ってしまった(汗)。これまでヘヴィタイプのラッパをあまり良いとは思わず、個人的に好きなのはMartin Committeeのようなニュアンスの幅が広い楽器。しかし、このTaylorが2015年に製作した '46 Custom Shop Shorty Oval' は一目で惹かれてしまった・・。Taylorはこの前年辺りから 'Oval' と呼ばれる楕円形のベルを奮ったシリーズを展開しており、そのユニークかつ独創的なスタイルに注目していたのですが、それを短いサイズにしたトランペットとして新たな提案をしたことに意味があるワケです。ええ、これはロングタイプのコルネットではありません。トランペットを半分ちょいほど短くした 'Shorty' なのですが、ベルの後端を 'ベル・チューニング' にして '巻く' ことで全体の長さは通常のトランペットと一緒です。ちなみに 'Shorty' シリーズとしてはこの 'Oval' ベルのほか、通常のベル、リードパイプを備えたタイプも製作されました。だから総本数としてはわずか2本のみとなりますね。重さは大体1.4Kgほどなのですが、短い全長に比して重心がケーシング部中心に集まることからよりズシッと感じます。



Luttke / Elephant Brass Instruments

そんなTaylorの作風とよく似たものとしては、このWhisper-Pennyなるドイツの工房の一風変わったラッパにも波及しております。とにかくこの工房のラッパはかなりの '独自理論' で突っ走っとる・・。しかし、マウスピースのスロートから奇妙な金属棒を入れてスロート径を狭くし、ズズッと息の抵抗を強調する 'サブトーン' な 'エフェクト' は初めて聴きましたけど、ミュートとは別に新たなラッパの 'アタッチメント的' 音色として普及したら面白いですね。ちなみにこの工房のラッパと良く似たものとして、Luttkeという工房が製作するElephant Trumpetというのがあるのだけど何か関係あるのかな?(謎)



永らくその変わらないフォルムの伝統を引き継ぎ、ヨーロッパのクラシックの中で育まれてきたトランペットという金管楽器は、このMonetteを主宰するデイヴィッド・モネットを合図にして変貌・・近年、かなり独創的なラッパを好む層が増えてきました。それはアート・ファーマーの要望でMonetteが製作したトランペットとフリューゲル・ホーンの '混血' Flumpetに結実し、今やトランペットから違和感なく持ち替えられるようにひとつのスタイルとなりました。そしてすでに上の動画でご紹介しましたが、Taylorからもインスパイアされて同種のラッパが製作されましたけど、そっちはPhlumpetとのこと(笑)。




Van Laar Aquino B♭ Trumpet (GP)
Van Laar Aquino B♭ Trumpet (Raw Brass)
Van Laar Aquino B♭ Trumpet

オランダでAdamsと並ぶ高品位なラッパをハンドメイドで少量製作しているのがハブ・ヴァンラー主宰の工房、Van Laar。すでに規模を大きくして大量生産型のシステムになりつつあるAdamsに比べ、このVan Laarは未だ少量生産にこだわりOiramというラッパが一時ちょっとした話題となりましたね。ここではLuca Aquinoというジャズ・ラッパ吹きのシグネチュアモデル、Van Laar Aquinoをご紹介。この特徴的なシェファード・クルークの外観にその柔らかい音色はやはりフランペットを想起させますね。






Monette New Prana STC Flugelhorn
Monette - Decorated Horns
Monette

さて、Taylorやロータリー・トランペットで有名なドイツの工房、Weberを始めにグニャグニャした管体の流行は、いよいよヘヴィ・トランペットの元祖Monetteにも波及し始めました。ちなみに真鍮の塊とも言うべきMonetteに代表されるヘヴィなラッパの目的は、遠逹性を指向してホールの最後端辺りをスウィート・スポットにして狙うのが目的だそうで、逆にPAによる 'マイク乗り' との相性は良くないそうです。そんなヘヴィなラッパの中の最高峰、Monette Raja Samadhiは財力と体力に自信のあるラッパ吹きなら一度は所有、吹いてみたいものの一本ではないでしょうか(わたしの趣味ではないですけど)。










Schagerl Gansch-Horn
Schagerl Trumpet

さて、そんな独創的なラッパの中でも、ドイツやオーストリアなど一部のオーケストラでは、トランペットと言えばピストンをフレンチホルンと同じロータリーバルブの横置きにしたロータリー・トランペットのことを指すようです。ジャズでは構造的にハーフバルブなどの細かいニュアンスが出来ないとかで一般化しておりませんが、ブラジル出身のラッパ吹き、クラウディオ・ロディッティなどはロータリーでバップをやったりしております。そんなロータリーを今度はそのまま縦置きにして作ってしまったのが、発案者であるトマス・ガンシュの名を付けたSchagerlのガンシュホーン。柔らかいトーンと 'くの字' 型に曲げたベルがこれまた格好良し。












Adams Instruments by Christian Scott
Adams Musical Instruments

最近、メディアでその名前をよく聞くクリスチャン・スコットの最新作 'Stretch Music' のジャケットに現れる、フリューゲルホーンを上下引っくり返してしまったような?ヤツ(クレジットには 'Reverse Flugelhorn' となっている!)、これってオランダのAdamsでオーダーしたヤツなんですねえ。正直、かな〜り格好イイんですが、この人のやっている音楽も複雑なポリリズム構造でこれまた格好イイ!しかしスコットさん、いろんなタイプのアップライト・ベルなラッパが好みというか・・すべてメーカーのカタログには無い '一品もの' ばかり。とりあえず、その濃いキャラ、バリバリと鳴らす個性、ジャズという狭い範疇に捉われないスタイル・・このクリスチャン・スコットは、最近のラッパ吹きの中で一番勢いがあるんじゃないでしょうか。個人的にこのポリリスティックなラテンへの強い関心は素晴らしいなあ。

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