上の動画はクリミア自治共和国の工房、Mak Crazy Sound Technologyの簡易マルチ・モジュレーション、Guitar Fairyの動画。Chorus、Flanger、Phaser、Tremolo、Vibrato、Envelope Filterと実に分かりやすく教えて頂けます。この '揺れ' というヤツは変調しながらグニャグニャとうねり、捻れるモジュレーションの範疇でありながら機械回路的にはそれぞれ違う方式でそのような効果を生成しております。回転する 'ロータリー・スピーカー' のドップラー効果を端緒としたフェイザーは、'位相' という意味のフェイズをズラした音を元の音と重ね合わせることで波形の干渉を生じ、それぞれの音が強調されたり打ち消し合いながらショワ〜とした独特のフィルター効果を生成します。一方のフランジャーは、元々2台のオープンリール・デッキを用いて人力により位相変調を起こす 'テープ・フランジング' 効果を、BBD(Bucket-Brigade Device)というICで0〜20ms程度のショート・ディレイから生成するコーム・フィルターにより機械的にシミュレートしたもの。またコーラスはそんなフランジャーや同BBDを用いるアナログ・ディレイを 'ダブリング' に特化して製品化されました。そして入力感度をエンヴェロープ・フォロワーでかかり具合、VCF(Voltage Controled Filter)により 'ワウワウ' と変調させるエンヴェロープ・フィルターがありまする。ちなみにトレモロとヴィブラートも混同されがちな効果なのですが、大雑把に分ければ音量の強弱がトレモロ、音程の振れ幅がヴィブラートというイメージでしてこれがシンセサイザーの分野に入るとLFO(Low Frequency Oscillator)という言葉に集約されます。
→Source Audio SA224 Stingray Multi-Filter
→Pigtronix Envelope Phaser EP-2
さて、以下の製品はこれらのモジュレーション機能にいわゆるエンヴェロープ・フィルターからディレイ、ランダマイズするサンプル&ホールド、リング・モジュレーションや 'ローファイ' エフェクト、ピッチ・シフトなどを付加した風変わりな 'マルチ・エフェクツ' たち。ある意味、そのカテゴリーを '越境' して挑発的な音作りに挑ませる設計思想は未だ手つかずのままであり、そんな現在の市場に残された '宿題' ともいうべき '全部乗せ' 的機能で待ち構えております・・出でよ挑戦者たち!。
→Catalinbread Coriolis Effect
こちらは今やMalekkoやMr.Blackと並びエフェクター界で大きな存在感を誇るCatalinbreadから登場のCoriolis Effect。ピッチシフトとテープ逆再生からターンテーブルの '電源落とし' 風効果、エクスプレッション・ペダルによるワウやフィルタリングからグリッチのランダマイズに至るまで奇妙な '飛び道具' を生成する満載感が素晴らしい。この工房で同種の '飛び道具' としてはCsidmanが結構面白かったのだけど、本機の多機能ぶりもなかなかのもの・・う〜ん、まだまだこの手のペダルの勢いを止めることは出来ませんね。その聞きなれない各種ツマミ、スイッチの機能は以下の通り。
●Position
ドライシグナルとウェットシグナルのバランスを調整します。時計回りでフルウェット、反時計回り最小でフルドライとなります。
●Velocity
ウェットシグナルのピッチを調整します。時計回り最大でドライシグナルと同じ(ユニゾン)となり、真ん中付近でオクターヴ下、反時計回り最小に近づくに従い、0Hzへと向かってピッチが下がります。
●Acceleration
ウェットシグナルにかかる2軸ローパスフィルターをコントロールします。時計回り最大ではフィルターがかからず(オールパス)、そこから下げていくとウェットシグナルの高域が減衰し、反時計回り最小ではローパスフィルターとなります。
●Exp
このトグルスイッチでエクスプレッション・ペダルに割り当てるコントロールを設定します。'Vel' にすればVelocity、'Acc' にすればAccelerationのコントロールをペダルで行えます。
●Hold
このスイッチを踏むことでその瞬間の音をホールドします。そのまま操作しなければホールドは2分間続きます。再びHoldスイッチを踏めばそのホールドは解除されます。ホールドされるのはウェットシグナルのみとなります。その状態はVelocityやAccelerationツマミで操作することも可能で、またホールド中にPositionツマミでホールドしたシグナルと入力しているシグナルとのバランスを調整出来ます。
●Expression Pedal Polarity
基板内部にある右上のスイッチで通常はNormalに設定されております。このスイッチを 'Reverse' にするとエクスプレッション・ペダルの極性が反転し、一部のペダルではこちらの極性で正常に可変するものがあります。またペダルの手前側と奥側を入れ替えるように操作出来るので、あえて 'Reverse' ポジションにすることで好みのサウンドを作ることが出来るかもしれません。
●Bypass
基板内部の左下にあるスイッチです。バイパス時の設定を切り替えます。'TB' 側ではトゥルーバイパス、'Buff' 側ではバッファードバイパスとなります。こちら 'Buff' 側のポジションにすると単にバッファーを通るだけではなく、Positionツマミが常時有効となります。また反時計回りにすればバイパス時の音量も大きくなります。
→Blackout Effectors Whetstone on Reverb.com
続いてBlackout EffectorsのWhetstoneという4ステージ・フェイザーを中心にした 'マルチ・エフェクツ'。2009年の発売で当時日本でも話題となりましたけど、現在会社が存続しているのかは分からないもののとりあえずReverb.comで各種製品を購入することは出来まする。2ステージ/4ステージのクラシックなフェイザーやヴィブラートとしての機能はもちろん、リゾナンスをきつくすることでエンヴェロープ・フィルターから本機ならではのユニークな 'Pads'、'RIng'、'Fix' というかなりニッチな機能を付加したことで他の追随を許しません(他社に追随する気があるのか分からんけど・・笑)。
●Feedback
非常に幅広いレンジを持つコントロールです。1〜8のセッティングではクラシックなモジュレーションとなります。8以上のエクストリームなセッティングではフィードバックした信号が入力信号を超え、発振します。
●Rate & Range
RateツマミとRangeスイッチは連動しております。RangeスイッチはRateツマミで操作出来るLFOのスピードレンジを可変させます。通常の 'Normal' では適度にスロウ〜ファストの最も一般的なフェイザーになります。'Pads' ではスピードレンジを非常に遅く出来ます。最も遅いセッティングでモジュレーションの両ピークは約40秒となります。'Ring' は非常に速いスピードレンジとなります。このセッティングによる 'ウルトラファスト・フェイズ' にはリング・モジュレーション風や発振ノイズなど、様々な効果が付加。またこのモードでDepthツマミを下げるとオクターヴ風の効果になります。'Fix' はLFOをカットした効果となります。このモードでRateツマミは一般のフェイザーとは違ったマニュアルスウィープ・コントロールとなり、ワウ '半踏み' 風味から 'AMラジオ' 効果など、これまでには無かった新しいアプローチのトーンを生成します。
●Depth
ウェットシグナルをどのくらいドライシグナルにブレンドするのかを調整します。1〜3のセッティングではほんの少しのフェイズサウンドで、ドライシグナルにあまり強い効果を付加しません。このセッティングでは 'Ring' モードにおいて、オクターヴ下を作り出したり速いフェイザーでドライを際立たせたりする場合にも有効です。4〜6のセッティングでは、最も一般的なフェイズサウンドとなります。8〜10では強烈なフェイズサウンドへと変貌します。
●Level
過去のフェイザーはいわゆるヴォリューム調整を備えたものはありませんでしたが、本機ではこのLevelツマミによってバイパス時との音量差を無くした調整を行えます。このLevelツマミは基板内部のGainトリムポットと連動し、このトリムポットでさらにヴォリュームのレンジを調整、ブーストすることが出来ます。
●Stages
このトグルスイッチでフェイズサウンドを生成するオールパス・フィルターの段数を2ステージか4ステージで選択出来ます。2ステージは柔らかく、4ステージはより深く、ハッキリとしたフェイズらしい音色となります。
●Vibrato / Phased
通常、フェイザーのPhasedではドライシグナルとウェットシグナルをミックスして出力しますが、このVibratoではドライシグナルを遮断してウェットシグナルのみ出力します。こうすることでフェイザーがピッチヴィブラートの効果となります。このモード時はDepthツマミが10の位置を基本に調整して下さい。
●Asymmetrical / Symmetrical
このトグルスイッチはフェイザーのシュワシュワとしたサウンドとは違い、これまでにない新たなフェイズ効果を生成します。Asymmetricalはよりイレギュラーなスウィープとなり、ロータリー・スピーカーのような音色となります。これまでのフェイザーが上下運動的なかかり方とすれば、このモードは立体的でドップラー効果的なかかり方をします。このままVibratoモードにするとオートワウ〜トレモロ風な音色が生成出来ます。
●Low Pass / All Pass
このトグルスイッチは、フェイザーの持つオールパス・フィルターをローパス・フィルターへと切り替えることが出来ます。4ステージ・フェイズでは2つのオールパス・フィルターを通っておりますが、それをローパス・フィルターにする為、非常にダークなフェイズトーンを生成します。2ステージ・フェイズではメロウなフェイズトーンとなり、独特なフェイズ〜トレモロな効果となります。さらにVibratoやAsymmetricalモードと組み合わせてフィードバックを調整すると変貌するでしょう。
●Sweep
LFOの可変幅を切り替えることが出来ます。ShallowではLFOの可変幅を小さく設定することが出来ます。その為Rateは若干速くなります。WideはLFOの可変幅が大きく、少しRateが遅くなります。Rangeスイッチで 'Ring' モードとした時、このSweepスイッチはリング・モジュレーションやオクターヴ効果のヴァリエーションを増やすことが出来ます。
→Old Blood Noise Endeavors Dweller
新たなペダル界のスタンダードとして追撃する勢いのOld Blood Noise Endeavors(長い・・'OBNE' でいいだろ)。いわゆるアナログの遺産ともいうべき過去の名機の '美味しいところ' に忠実でありながら、現在のテクノロジーでより過激な効果へと昇華させていることを別名 'Phase Repeater' ことDwellerは証明します。
●Stretch
このツマミでフェイザーからディレイへのサウンドを調整します。反時計回り最小設定ではスタンダードなフェイザー、時計回りに回していくことで空間的な残響が付加されてフェイザーがストレッチしディレイへと可変します。Depthツマミを最小にするとスタンダードなディレイになります。
●Rate
このツマミでフェイザーのスピードを調整します。反時計回りで遅く、時計回りで早くなります。最小のポジションでフェイザーは停止します。
●Depth
フェイザーの効きの深さを調整します。反時計回り最小にするとフェイズシフトが無くなり、真ん中でクラシックなフェイザー、時計回り最大でかなりエグい効果へと変貌します。
●Regen
回路のフィードバックを調整します。フェイザーのセッティングではその効果の深さや厚み、ディレイのセッティングではその反復を調整します。
●Mix
ドライシグナルとウェットシグナルのブレンド・コントロールです。最小設定では100%ドライ、最大設定では100%ウェットとなります。真ん中のポジションでドライとウェットが1:1となります。
●Voice
このトグルスイッチで2タイプのフェイザーを切り替えられます。左側で4ステージ・フェイズ、右側で8ステージ・フェイズとなり、4ステージではソフトでヴィンテージなサウンド、8ステージはより複雑でモダンなサウンドとなっております。
●Shape
このトグルスイッチでフェイズの波形を3種類から切り替えられます。左側でサインウェイヴ、真ん中でトライアングルウェイヴ、右側でランダムステップウェイヴとなっております。
●Output Trim
基板内部のOutput Trimポットで出力の調整が出来ます。基本はユニティゲインに設定されており、このポットを時計回りでブースト、反時計回りでカットします。
●Exp
このExp端子からエクスプレッション・ペダルでStretchツマミのコントロールを操作、フェイズからディレイへの可変やランダマイズしたシーケンスをリアルタイムに弄れます。
→Sonuus Wahoo ①
→Sonuus Wahoo ②
→Source Audio SA143 Bass Envelope Filter (discontinued)
→Source Audio SA144 Poly-Mod Filter (discontinued)
また、多目的にデジタルの機能を備えたものとしては英国の新興メーカー、Sonuus Wahooというのもあります。とにかくデジタル・フィルターとして出来ないことはないくらい充実した機能を誇り、単純な 'オートワウ' からフィルタースウィープ、ピコパコとランダマイズするランダム・アルペジエイターやLFOなどフィルター系で出来ることはこれ一台で賄えます。細かな調整は本体のほかPCと繋ぐ専用エディターソフトでも操作出来るのですが、まあ、裏を返せばあまりに多機能過ぎて '迷子' になる可能性が無きにしもあらず(苦笑)。とりあえず一台で偏執的に追い込みたい人はどーぞ。そして、こんなサイバーなデザインで賛否あったSource Audioは、管楽器の 'アンプリファイ' 大使とも言うべきJohn Bescupさんがギター用のSA144 Poly-Mod Filterではなくベース用SA143で 'ランダマイズ' に試します。
→Korg FK-2 Mr. Multi ①
→Korg FK-2 Mr. Multi ②
ちなみにこの手の '全部乗せ' 的マルチ・モジュレーションの元祖としては、Korgの三枝文夫氏が1970年代に手がけたFK-2 Mr. Multi辺りが出発点ではないでしょうか。Phase、Wah、Double Wahの3種モードにそのフィルタリングはAutoとPedalコントロールとしてそれぞれ選択、リアルタイムに切り替えて複合的に用いることが可能。コレ、その設計思想は全く古びていないのでNuvibeのリベンジとしてKorgは '復刻' すべきだと思うなあ(動画のモノは一部 'モディファイ' されております)。
→Solidgold Fx Apollo Ⅱ
→Glou Glou Rendez-Vous
→Filters Collection
このようなモジュレーション、フィルター、ディレイといった複合的な機能を持つペダルはまさに管楽器の 'アンプリファイ' において最も相性の良いもの。しかし、例えば入力の感度によりその効果の生成、各社それぞれの製品にあるかかり方の '癖' に関与するエンヴェロープ・フォロワーから、実は '選び方' に注意が必要なのもこのカテゴリーの特徴です。その製品によっては管楽器で全くかかりの悪いヤツもあり本来の性能を発揮することが出来ないなど、これがまさに長い旅路の 'フィルター沼' に足を突っ込む第一歩となりまする(苦笑)。
→Rainger Fx
→Ezhi & Aka
→Gamechanger Audio
→Monster Mutilators: Vintage Guitar Synth Pedals
さて、その名もコンパクト・エフェクターというヤツは '和製英語' なんだそうです。海外では単にそのまま 'Pedal' や 'Stomp Box'、'Effects'、そしてこういう機器の黎明期にはアタッチメントという言い方もありました。コンパクトと言うだけあって現在ではまさに '手のひらサイズ'、なんならポケットにも入っちゃいそうなくらい小さいサイズのものが主流ですが、エフェクター全盛期の1970年代にはまさに機器という感じで昔のレジスターくらいのデカさ、足で踏むヤツなら健康器具くらいおっきなペダルで床に鎮座するものがフツーにありました。そして、未だその使い方はユーザーの手に放り出されたまま、時に何のリアクションも得られず手つかずのまま放置、記憶の片隅へと捨て置かれたものもたくさんあったと思うのです。どうしてもデザインというと '見た目重視' のキワモノ的評価に終始しそうな雰囲気がありますが、もう一歩踏み込んで 'インターフェイス' の新たな挑戦と捉えると違った発想が沸き起こるのではないでしょうか?。実際、KorgのKaosspadはそんなエフェクター界の常識を打ち破ったものでしたし、現在、大きな話題をさらっている英国のRainger FxやラトビアのGamechanger Audioに象徴される 'イレギュラー' な技術と筐体、操作性にこだわったブランドは従来のギタリスト的奏法をほとんど意識しておりません。以下、そんなペダルの '見た目' とサウンドを新たなインターフェイスを目指したデザインとして提示してきたものをご紹介致しましょう。
→Elektron Octatrack Mk.Ⅱ
→Elektron Octatrack DPS-1 (discontinued)
コイツをエフェクターという範疇に入れるのは抵抗ある方もいるでしょう。しかし、今やシンセサイザーやサンプラーとエフェクターの境界はほぼ無効化され、コンパクトタイプのループ・サンプラーで録音した素材をオシレータ代わりとし、さらにVCFやエンヴェロープを操作して外部CVと同期させる・・どうです?この複合的音作りを各々ジャンルとして切り分けることは可能でしょうか?。北欧といえばそのスタイリッシュなデザインとインターフェイスでDAWの世界を盛り上げるElektronからこの変態サンプラー、Octatrackを使いこなすことは機材と向き合う上でひとつの '通過儀礼' となっておりますね。挫折した者を多く輩出する一方で苦闘の末に '免許皆伝' した者はもう他の機材必要ナシ、この 'オクタ' だけで何時間でもパフォーマンス出来ると言わしめてしまうほど唯一無二な存在です。
→Keio Electronic Lab. Synthesizer Traveller F-1 ①
→Keio Electronic Lab. Synthesizer Traveller F-1 ②
日本が誇る偉大なエンジニア、三枝文夫氏手がける京王技研(Korg)のSynthesizer Traveller F-1。本機は-12dB/Octのローパス・フィルターとハイパス・フィルターがセットで構成された 'Traveller' を単体で搭載したもので、それぞれの動きを連携させて '旅人のように' ペアで移動させるという三枝氏のアイデアから名付けられた機能です。三枝氏といえば日本のエフェクター黎明期を象徴する2種、Honey Psychedelic Machine、Vibra Chorusの設計者としてすでに 'レジェンド' の立場におり、本機はちょうど京王技研からKorgへと移行する過渡期に設計者からユーザーへの '挑戦状' として遊び心いっぱいに提供されながら、結局は現在まで '発見' されることなく 'コレクターズ・アイテム' として捨て置かれております。ちなみに三枝氏によればこの 'F-1' 製作にあたってこんなエピソードを披露しておりました。
"(当時ヒットしたのかと聞かれて)いや〜、あまり「これは!」っていう反応はなかったように思います。'F-1' はその前に作っていたオルガンの 'Korgue' で使った型を使いまわして作ったと記憶しています。その 'Korgue' が後々なんとなくブランド名になっちゃたんですけど(笑)。これがね、売れなかったんですよ。そこで、その 'Korgue' の為に作ったりスタンドを作ったりして、いろんな金型を起こしちゃったんで、なにかこういうもの('F-1')を作らないとマズイんじゃないかなっていう流れになったんです。"
そんな本機の製品開発にはジャズ・ピアニストの佐藤允彦氏も携わっており、いくつかのアドバイスを元に製作した当時のプロトタイプについてこう述べております。なんと当初はペダルの縦方向のみならず、横にもスライドさせてコントロールする仕様だったというのは面白い。
"三枝さんっていう開発者の人がいて、彼がその時にもうひとつ、面白い音がするよって持ってきたのが、あとから考えたらリング・モジュレーターなんですよ。'これは周波数を掛け算する機械なんですよ' って。これを僕、凄い気に入って、これだけ作れないかって言ったのね。ワウワウ・ペダルってあるでしょう。これにフェンダーローズの音を通して、かかる周波数の高さを縦の動きでもって、横の動きでかかる分量を調節できるっていう、そういうペダルを作ってくれたんです。これを持って行って、1972年のモントルーのジャズ・フェスで使ってますね。生ピアノにも入れて使ったりして、けっこうみんなビックリしていて。"
→EMS Synthi Hi-Fli
→EMS Synthi Hi-Fli - Prototype
→Keio Electronic Lab. Synthesizer Traveller F-1 ②
日本が誇る偉大なエンジニア、三枝文夫氏手がける京王技研(Korg)のSynthesizer Traveller F-1。本機は-12dB/Octのローパス・フィルターとハイパス・フィルターがセットで構成された 'Traveller' を単体で搭載したもので、それぞれの動きを連携させて '旅人のように' ペアで移動させるという三枝氏のアイデアから名付けられた機能です。三枝氏といえば日本のエフェクター黎明期を象徴する2種、Honey Psychedelic Machine、Vibra Chorusの設計者としてすでに 'レジェンド' の立場におり、本機はちょうど京王技研からKorgへと移行する過渡期に設計者からユーザーへの '挑戦状' として遊び心いっぱいに提供されながら、結局は現在まで '発見' されることなく 'コレクターズ・アイテム' として捨て置かれております。ちなみに三枝氏によればこの 'F-1' 製作にあたってこんなエピソードを披露しておりました。
"(当時ヒットしたのかと聞かれて)いや〜、あまり「これは!」っていう反応はなかったように思います。'F-1' はその前に作っていたオルガンの 'Korgue' で使った型を使いまわして作ったと記憶しています。その 'Korgue' が後々なんとなくブランド名になっちゃたんですけど(笑)。これがね、売れなかったんですよ。そこで、その 'Korgue' の為に作ったりスタンドを作ったりして、いろんな金型を起こしちゃったんで、なにかこういうもの('F-1')を作らないとマズイんじゃないかなっていう流れになったんです。"
そんな本機の製品開発にはジャズ・ピアニストの佐藤允彦氏も携わっており、いくつかのアドバイスを元に製作した当時のプロトタイプについてこう述べております。なんと当初はペダルの縦方向のみならず、横にもスライドさせてコントロールする仕様だったというのは面白い。
"三枝さんっていう開発者の人がいて、彼がその時にもうひとつ、面白い音がするよって持ってきたのが、あとから考えたらリング・モジュレーターなんですよ。'これは周波数を掛け算する機械なんですよ' って。これを僕、凄い気に入って、これだけ作れないかって言ったのね。ワウワウ・ペダルってあるでしょう。これにフェンダーローズの音を通して、かかる周波数の高さを縦の動きでもって、横の動きでかかる分量を調節できるっていう、そういうペダルを作ってくれたんです。これを持って行って、1972年のモントルーのジャズ・フェスで使ってますね。生ピアノにも入れて使ったりして、けっこうみんなビックリしていて。"
→EMS Synthi Hi-Fli
→EMS Synthi Hi-Fli - Prototype
エフェクター界のロールスロイス。いわゆる '人間の声' を模したような効果に特化したフィルター効果。いや、これは原初的なエフェクツとも言えるトークボックス(マウスワウ)のことではなく、シンセサイズにおけるバンドパス帯域を複合的に組み合わせることで 'A、I、E、O、U' といった母音のフォルマントを強調、まるで喋っているようなワウの効果を生成するものです。古くは 'ギターシンセ' の元祖であるLudwig Phase Ⅱ SynthesizerやEMS Synthi Hi-Fliなど高級なサウンド・システムの一環として登場し、後にペダルタイプでColorsoundのDipthonizerや 'エレハモ' のTalking Pedalなどが市場に現れます。まあ、大抵は上述したバンドパス・フィルターとファズを組み合わせて 'ソレっぽく' (笑)聴かせているような印象に終始するんですけど、ね。本機はいわゆる '万博世代' やAppleの製品にゾクゾクする人なら喉から手が出るほど欲しいはず。このEMSは過去製品の 'リビルド' を中心に現在でも会社は存続しているのだからAppleが買収、電源Onと共に光る '🍏' マークを付けた復刻とかやってくんないかな〜?個人的に 'エフェクター・デザイン・コンテスト' が開催されたら三本の指に入る美しさだと思います。
→Ludwig Phase Ⅱ Synthesizer
1970年の新製品である初期の 'ギター・シンセサイザー' Ludwig Phase Ⅱ Synthesizerは当時、富田氏が手がけていた劇伴、特にTVドラマ「だいこんの花」などのファズワウな効果で威力を発揮しました。また、シンセサイザーを製作するEMSからも同時期、'万博世代' が喜びそうな近未来的デザインと共にSynthi Hi-Fliが登場、この時期の技術革新とエフェクツによる '中毒性' はスタジオのエンジニアからプログレに代表される音作りに至るまで広く普及します。
"あれは主に、スタジオに持っていって楽器と調整卓の間に挟んで奇妙な音を出していました。まあ、エフェクターのはしりですね。チャカポコも出来るし、ワウも出来るし。"
後にYMOのマニピュレーターとして名を馳せる松武秀樹氏も当時、富田氏に師事しており、映画のサントラやCM音楽などの仕事の度に "ラデシン用意して" とよく要請されていたことから、いかに本機が '富田サウンド' を構成する重要なものであったのかが分かります。また、この時期から1971年の 'Moogシンセ' 導入前の富田氏の制作環境について松武氏はこう述懐しております。
"「だいこんの花」とか、テレビ番組を週3本ぐらい持ってました。ハンダごてを使ってパッチコードを作ったりもやってましたね。そのころから、クラビネットD-6というのや、電気ヴァイオリンがカルテット用に4台あった。あとラディック・シンセサイザーという、フタがパカッと開くのがあって、これはワウでした。ギターを通すと変な音がしてた。それと、マエストロの 'Sound System for Woodwinds' というウインドシンセみたいなのと、'Rhythm 'n Sound for Guitar' というトリガーを入れて鳴らす電気パーカッションがあって、これをCMとかの録音に使ってました。こういうのをいじるのは理論がわかっていたんで普通にこなせた。"
そんなLudwig Phase Ⅱ Synthesizerに象徴される '喋るような' フィルタリングは、そのまま富田氏によれば、実は 'Moogシンセサイザー' を喋らせたかったという思いへと直結します。当時のモジュラーシンセでは、なかなかパ行以外のシビランスを再現させるのは難しかったそうですけど、ここから 'ゴリウォーグのケークウォーク' に代表される俗に 'パピプペ親父' と呼ばれる音作りを披露、これが晩年の '初音ミク' を用いた作品に至ることを考えると感慨深いものがあります。しかしこのLudwig Phase Ⅱは、もはやコンパクトの域を超えたペダルというより '装置' と呼んだ方が相応しい逸品ですけど、賑やかな各種LEDと共にパカッと蓋を開いて足を乗せる 'ゲーセン的コントローラー' 風デザインが秀逸ですよね。
→Maestro USS-1 Universal Synthesizer System
'ハッタリ度No.1' のブランドMaestro(笑)。当時の 'エレハモ' 製品などと比べればキチンとした回路設計と無駄に '工業製品' 的ルックスの見事な筐体で名機も数多く輩出しているのですが、そんな大げさな期待感から出てくる "こんだけ?" なハッタリ具合もなかなかのもの。このブランドの集大成的 'マルチエフェクツ' というか、'全部乗せ' のUSS-1 Universal Synthesizer Systemなんて最高じゃないですか。まさにレジスターサイズ!いや、シンセじゃないっていう(笑)。ファズを 'Waveform' と名付け、Filter Sample/Hold FSH-1、Mini Phase MP-2、Envelope Modifier ME-1、Octave Box OB-1をそれぞれ搭載したのも分かる。しかし 'シンセっぽい' 感じを出すのならまずRing Modulator RM-1を乗せないとダメでしょう。特にEnvelope Modifierはシンセの 'ADSR' を意識して乗せたと思うのだけど、これは動画でも分かりますがそんな立派な機能じゃございません(苦笑)。Tom Oberheimめ、ケチったな。
→Frogg Compu-sound - Digital Filterring Device
こんなカタチしてますけどペダルなんです。1970年代後半にFroggという会社がFoxxに依頼してわずか100台ほどしか製作しなかったエンヴェロープ・フィルターで、専用エクスプレッション・ペダルのほか、プログラマブルな100個のプリセットをいかにも '初期デジタル風' なEL管表示のデジタル・カウンターをテンキー操作する '電卓ライク' なルックスがたまりません。ちょうど同時代のYMOの使用で有名となったデジタル・シーケンサーRoland MC-8を彷彿とさせますが、実際の中身はアナログ回路で構成されているようです(笑)。当時の広告でも 'The Guitar Computer' と大々的に謳ってますけど(笑)、これってWMD Geiger Counterが登場した時も同じような 'デジアナ論争' ?というか、デジタル・カウンターが表示されれば人はすぐに中身もそうだと思い込んでしまう潜入意識がありますよね。こーいうハッタリ具合もそそられる魅力満点でして、Youtubeの動画で聴いてみれば実は地味なフィルタリングの '質感生成' に特化したヤツっぽいです。欲し〜。
→Metasonix TS-21 Hellfire Modulator
→Metasonix TS-22 Pentode Filterbank
→Metasonix TS-23 Dual Thyratron VCO
'番外編' というか少々反則ですが、未だに未練たっぷりで思い出すシロモノ。'真空管博士' と言われたEric Barbourが2000年頃に発売したガレージ臭満載の4Uラック・ユニット、TS-21 Hellfire Modulator、TS-22 Pentode Filterbank、そしてTS-23 Dual Thyratron VCOの3種で当時、高円寺にあったDTM関連の 'Modern Tools' が代理店となり扱っておりました。音声信号を高電圧 'ビーム・モジュラー' で破壊するTS-21、4つのバンドパス・フィルターを内蔵したTS-22、2つのオシレータ内蔵のTS-23という荒々しくもマニア心くすぐる '宣伝文句' は、すぐにでもわたしを高円寺へと足を運ばせたことが昨日のことのように懐かしい(笑)。実際、試奏してこのレビュー通りの感想を持ちながら、製品としては不良品なんじゃないか?というくらい、真空管機器特有のブ〜ンとしたハムノイズも盛大に撒き散らす手に負えないヤツでしたね。その後、よりコンパクトな 'TM' シリーズとして展開し、これら 'Beam Modular' の集大成的真空管 'ギターシンセ' としてKV-100 The Assblasterを製作しましたがこちらもレアとなりました。YoutubeではTS-21による '笑点のテーマ' ?のようなシンセベースで鳴らしたショボイものしかないのだけど、いまなら同種の歪んだ効果としてWMD Geiger Counterなどを購入した方が満足出来ると思います(笑)。
→U.S.S.R. Formanta Esko-100
→U.S.S.R. Elektronika PE-05 Flanger
→U.S.S.R. Elektronika PE-11 Flanger
→U.S.S.R. Spektr-3 Fuzz Wah & Envelope Filter
→U.S.S.R. Spektr-4 Fuzz Wah & Envelope Filter
→U.S.S.R. Spektr Volna Auto Wah
→Boomerang Musical Products Wholly Roller Volume / Expression Pedal
さて、デザインではこちらの旧ソビエトはSpektrの手がけるファズワウ&エンヴェロープ・フィルターも負けておりません。まさにファズ、ワウペダル、エンヴェロープ・フィルターを個別もしくは複合的に組み合わせて用いるマルチ的製品であり、そもそもはこれらを1つのペダルでコントロールするSpektr-4の '機能強化版' 的位置付けなのがこのSpektr-3に当たります。ちなみにオートワウ部分のみ単品にしたものは、そのうねりから 'Wave' という意味を持つVolna Auto Wahとして用意されております。そんな集大成的Spektr-3を考えると追加されたペダルの意味が自ずと分かるものでして、新たにフィルタースィープの周波数と歪みのヴァリエーションを切り替えるダイヤルが追加されたほか、もう片方のペダルはなんとヴォリューム・ペダル・・う〜ん、そっち要るか?(笑)。しかしそれは愚問。何でも大仰に '装置' の如く備え付けときましたヨ、というのが正しい 'デカいペダル' 道なのです。例えるならデカいエフェクターボードに必要ないペダル敷き詰める心理でしょうかね?(笑)。しかし、こういう 'ロール状' でダイヤルのようなパラメータって 'ペダルの世界' では見たことありません。ループ・サンプラーで有名なBoomerangがWholly Rollerっていうヴォリューム&エクスプレッション・ペダルで採用してましたけど結局、普及しませんでしたね。
→Roland EV-5 Expression Pedal
→Boss EV-30 Expression Pedal
→Moog EP-3 Expression Pedal
→Mission Engineering - Expression Pedals
→PolyFusion FP-2 Active Volume Pedal
ペダル市場の中ではかなりのコスト・パフォーマンスで削られてしまい、それこそ手のひらサイズでポケットに入っちゃうような小さいものがある一方、あくまでパラメータのひとつとして利便性のみに特化したヤツはプラスティック製で賄われていたりします。代表的なのがエクスプレッション・ペダルというものでして、モジュレーション系エフェクターであれば揺れの効果の強弱、エンヴェロープ・フィルターの補助的機能として周波数の増減をリアルタイムに足で操作する為のアイテム。いまお手軽に入手出来るものとしてはRoland EV-5やMoog EP-3などがありますね(ちなみにEV-5の後継機Boss EV-30はアルミダイキャスト製)。またMission EngineeringはOEM含めこの手のペダルを幅広く手がけておりますが、そのペダル筐体はCrybabyを流用したものです。しかし、この1970年代に製作されたE-Mu Systems VPDLは分厚いスチール製のボディで存在感が違います。E-Mu SystemsといえばサンプラーのEmulatorで有名ですけどこの筐体、どこかで見たなと思えば・・ありました。A/DAの強烈なフランジング効果で有名なFlangerを始め、当時のA/DA製品に対応するControl Pedal Aです。そしてもうひとつはシンセで有名なPolyFusionのFP-2というのがあり、これも同じ筐体を用いて 'Active Volume Pedal' と記した9V電池で駆動するヴォリューム/ゲイン・ブースター・ペダル。ペダル裏面にはドライバーで6dBのゲインアップ調整する 'Gain' と 'Tension' というペダルの踏み心地調整のトリマーがあり、入出力も右側にまとめられているのが便利ですね。そんな1970年代はMaestro BoomerangやColorsoundのペダル筐体を用いたOEM的製品が数多くあり、E-Mu SystemsやPolyFusionのペダルもそういった類いのものなのでしょう。とにかくシンプル・イズ・ベスト、この重厚でありながら素朴な安心感を醸し出すデザインで '手を抜いていない' のが嬉しいのです。
→Arbiter Soundimension
→Arbiter Add-A-Sound
→Vintage Fender Effects from The 1950's - 1980's
実は何気に一番レアなエフェクターってこのArbiterのシリーズかも知れない。磁気ディスク式エコーとして今やMaestro Echoplexと並んで名機の誉れ高いBinson Echorecに比べ、同じくArbiterから登場したSoundimensionとSoundette・・まったく市場で見かけたことがありません。他に 'ニッチなペダル名人' のフランク・ザッパも愛した同社のオクターバー、Add-A-Soundとかメチャクチャ欲しいですね。この取っ手を付けてポータブルに持ち運べる引き出し式の木製ケースというレトロな作りは、例えばレゲエやダブを愛する者ならすぐにレゲエ/ダブ創成期に多大な影響を与えたプロデューサー、コクソン・ドッドの名前が上がります。ドッドのSoundimentionに対する愛情はそのまま、自らが集めるセッション・バンドに対してわざわざ 'Sound Dimension' と名付けるほどでした。彼のStudio Oneでエンジニアを務めたシルヴァン・モリスが離れた後は、ドッド自身が 'Dub Specialist' を名乗ってダブ制作に従事しました。以下、そのシルヴァン・モリスが機器についてこう説明します。
"当時わたしは、ほとんどのレコーディングにヘッドを2つ使っていた。テープが再生ヘッドを通ったところで、また録音ヘッドまで戻すと、最初の再生音から遅れた第二の再生音ができる。これでディレイを使ったような音が作れるんだ。よく聴けば、ほとんどのヴォーカルに使っているのがわかる。これが、あのスタジオ・ワン独特の音になった。それからコクソンがサウンドディメンションっていう機械を入れたのも大きかったね。あれはヘッドが4つあるから、3つの再生ヘッドを動かすことで、それぞれ遅延時間を操作できる。テープ・ループは45センチぐらい。わたしがテープ・レコーダーでやっていたのと同じ効果が作れるディレイの機械だ。テープ・レコーダーはヘッドが固定されているけど、サウンディメンションはヘッドが動かせるから、それぞれ違う音の距離感や、1、2、3と遅延時間の違うディレイを作れた。"
Maestro Echoplex、Roland RE-201 Space Echo、The Fisher K-10とGrampianのスプリング・リヴァーブ、Musitronics Mu-Tron Bi-Phase、MXR M-129 Pitch Transposer、Arbiter Soundimensionなどなど。いつの時代でも 'ダブ・マスター' にとって機材は、ギタリストや管楽器奏者ら器楽演奏と全く同じ意味を持つほどこだわるのです。まさに 'エコーのサウンド・デザイナー' とも言うべきダブ職人なり。しかしSoundimensionの携帯用ラジオのような縦型のデザインセンス、好きだなあ。入出力が底面に配置されているのはビックリしますけど、そのポップさはEMS Synthi AKSやBuchla Music Easelに匹敵しますね。また、この磁気ディスク式と対になるかたちでやってきたTel-Ray 'オイル缶エコー' の世界。オイルで満たされた 'Adineko' と呼ばれる缶を電気的に回転させることでエコーの効果を生成するものなのですが、このオイルが今では有害指定されていることで物理的に再現することが不可能。このオイルの雫のイメージそのままドロッとした揺れ方というか、懐かしい 'オルガンライク' に沈み込む '質感' というか・・たまらんなあ。しかしFenderってどうしてもアンプのデザインから離れられないんですね(笑)。
→Strymon BigSky - Reverb Unit with 300 MIDI Presets
→Strymon BlueSky - Reverbrator
→Boss DD-7 Digital Delay
→Boss DD-500 Digital Delay
→Electrograve Search and Destroy SAD-1
→Electrograve
→Ludwig Phase Ⅱ Synthesizer
1970年の新製品である初期の 'ギター・シンセサイザー' Ludwig Phase Ⅱ Synthesizerは当時、富田氏が手がけていた劇伴、特にTVドラマ「だいこんの花」などのファズワウな効果で威力を発揮しました。また、シンセサイザーを製作するEMSからも同時期、'万博世代' が喜びそうな近未来的デザインと共にSynthi Hi-Fliが登場、この時期の技術革新とエフェクツによる '中毒性' はスタジオのエンジニアからプログレに代表される音作りに至るまで広く普及します。
"あれは主に、スタジオに持っていって楽器と調整卓の間に挟んで奇妙な音を出していました。まあ、エフェクターのはしりですね。チャカポコも出来るし、ワウも出来るし。"
後にYMOのマニピュレーターとして名を馳せる松武秀樹氏も当時、富田氏に師事しており、映画のサントラやCM音楽などの仕事の度に "ラデシン用意して" とよく要請されていたことから、いかに本機が '富田サウンド' を構成する重要なものであったのかが分かります。また、この時期から1971年の 'Moogシンセ' 導入前の富田氏の制作環境について松武氏はこう述懐しております。
"「だいこんの花」とか、テレビ番組を週3本ぐらい持ってました。ハンダごてを使ってパッチコードを作ったりもやってましたね。そのころから、クラビネットD-6というのや、電気ヴァイオリンがカルテット用に4台あった。あとラディック・シンセサイザーという、フタがパカッと開くのがあって、これはワウでした。ギターを通すと変な音がしてた。それと、マエストロの 'Sound System for Woodwinds' というウインドシンセみたいなのと、'Rhythm 'n Sound for Guitar' というトリガーを入れて鳴らす電気パーカッションがあって、これをCMとかの録音に使ってました。こういうのをいじるのは理論がわかっていたんで普通にこなせた。"
そんなLudwig Phase Ⅱ Synthesizerに象徴される '喋るような' フィルタリングは、そのまま富田氏によれば、実は 'Moogシンセサイザー' を喋らせたかったという思いへと直結します。当時のモジュラーシンセでは、なかなかパ行以外のシビランスを再現させるのは難しかったそうですけど、ここから 'ゴリウォーグのケークウォーク' に代表される俗に 'パピプペ親父' と呼ばれる音作りを披露、これが晩年の '初音ミク' を用いた作品に至ることを考えると感慨深いものがあります。しかしこのLudwig Phase Ⅱは、もはやコンパクトの域を超えたペダルというより '装置' と呼んだ方が相応しい逸品ですけど、賑やかな各種LEDと共にパカッと蓋を開いて足を乗せる 'ゲーセン的コントローラー' 風デザインが秀逸ですよね。
→Maestro USS-1 Universal Synthesizer System
'ハッタリ度No.1' のブランドMaestro(笑)。当時の 'エレハモ' 製品などと比べればキチンとした回路設計と無駄に '工業製品' 的ルックスの見事な筐体で名機も数多く輩出しているのですが、そんな大げさな期待感から出てくる "こんだけ?" なハッタリ具合もなかなかのもの。このブランドの集大成的 'マルチエフェクツ' というか、'全部乗せ' のUSS-1 Universal Synthesizer Systemなんて最高じゃないですか。まさにレジスターサイズ!いや、シンセじゃないっていう(笑)。ファズを 'Waveform' と名付け、Filter Sample/Hold FSH-1、Mini Phase MP-2、Envelope Modifier ME-1、Octave Box OB-1をそれぞれ搭載したのも分かる。しかし 'シンセっぽい' 感じを出すのならまずRing Modulator RM-1を乗せないとダメでしょう。特にEnvelope Modifierはシンセの 'ADSR' を意識して乗せたと思うのだけど、これは動画でも分かりますがそんな立派な機能じゃございません(苦笑)。Tom Oberheimめ、ケチったな。
→Frogg Compu-sound - Digital Filterring Device
こんなカタチしてますけどペダルなんです。1970年代後半にFroggという会社がFoxxに依頼してわずか100台ほどしか製作しなかったエンヴェロープ・フィルターで、専用エクスプレッション・ペダルのほか、プログラマブルな100個のプリセットをいかにも '初期デジタル風' なEL管表示のデジタル・カウンターをテンキー操作する '電卓ライク' なルックスがたまりません。ちょうど同時代のYMOの使用で有名となったデジタル・シーケンサーRoland MC-8を彷彿とさせますが、実際の中身はアナログ回路で構成されているようです(笑)。当時の広告でも 'The Guitar Computer' と大々的に謳ってますけど(笑)、これってWMD Geiger Counterが登場した時も同じような 'デジアナ論争' ?というか、デジタル・カウンターが表示されれば人はすぐに中身もそうだと思い込んでしまう潜入意識がありますよね。こーいうハッタリ具合もそそられる魅力満点でして、Youtubeの動画で聴いてみれば実は地味なフィルタリングの '質感生成' に特化したヤツっぽいです。欲し〜。
→Metasonix TS-21 Hellfire Modulator
→Metasonix TS-22 Pentode Filterbank
→Metasonix TS-23 Dual Thyratron VCO
'番外編' というか少々反則ですが、未だに未練たっぷりで思い出すシロモノ。'真空管博士' と言われたEric Barbourが2000年頃に発売したガレージ臭満載の4Uラック・ユニット、TS-21 Hellfire Modulator、TS-22 Pentode Filterbank、そしてTS-23 Dual Thyratron VCOの3種で当時、高円寺にあったDTM関連の 'Modern Tools' が代理店となり扱っておりました。音声信号を高電圧 'ビーム・モジュラー' で破壊するTS-21、4つのバンドパス・フィルターを内蔵したTS-22、2つのオシレータ内蔵のTS-23という荒々しくもマニア心くすぐる '宣伝文句' は、すぐにでもわたしを高円寺へと足を運ばせたことが昨日のことのように懐かしい(笑)。実際、試奏してこのレビュー通りの感想を持ちながら、製品としては不良品なんじゃないか?というくらい、真空管機器特有のブ〜ンとしたハムノイズも盛大に撒き散らす手に負えないヤツでしたね。その後、よりコンパクトな 'TM' シリーズとして展開し、これら 'Beam Modular' の集大成的真空管 'ギターシンセ' としてKV-100 The Assblasterを製作しましたがこちらもレアとなりました。YoutubeではTS-21による '笑点のテーマ' ?のようなシンセベースで鳴らしたショボイものしかないのだけど、いまなら同種の歪んだ効果としてWMD Geiger Counterなどを購入した方が満足出来ると思います(笑)。
→U.S.S.R. Formanta Esko-100
→U.S.S.R. Elektronika PE-05 Flanger
→U.S.S.R. Elektronika PE-11 Flanger
ちなみにこの手の効果はロシアも面白いものがあります。旧ソビエトの時代に 'ギターシンセ' 含めてマルチ・エフェクツ' に集大成させたのがこちら、Formanta Esko-100。1970年代のビザールなアナログシンセ、Polivoksの設計、製造を担当したFormantaによる本機は、その無骨な '業務用機器' 的ルックスの中にファズ、オクターバー、フランジャー、リヴァーブ、トレモロ、ディレイ、そして付属のエクスプレッション・ペダルをつなぐことでワウにもなるという素晴らしいもの。これら空間系のプログラムの内、初期のVer.1ではテープ・エコーを搭載、Ver.2からはICチップによるデジタル・ディレイへと変更されたのですがこれが 'メモ用ICレコーダー' 的チープかつ 'ローファイ' な質感なのです。また、簡単なHold機能によるピッチシフト風 '飛び道具' まで対応するなどその潜在能力は侮れません。そんなフランジャーって何でか '共産主義者' たちの興味を惹いていたようで(笑)、最近eBayやReverb.comなどにゾロゾロと現れている旧ソビエト時代の '遺物たち' からはやたらとフランジャー多し(謎)。
→U.S.S.R. Spektr-3 Fuzz Wah & Envelope Filter
→U.S.S.R. Spektr-4 Fuzz Wah & Envelope Filter
→U.S.S.R. Spektr Volna Auto Wah
→Boomerang Musical Products Wholly Roller Volume / Expression Pedal
さて、デザインではこちらの旧ソビエトはSpektrの手がけるファズワウ&エンヴェロープ・フィルターも負けておりません。まさにファズ、ワウペダル、エンヴェロープ・フィルターを個別もしくは複合的に組み合わせて用いるマルチ的製品であり、そもそもはこれらを1つのペダルでコントロールするSpektr-4の '機能強化版' 的位置付けなのがこのSpektr-3に当たります。ちなみにオートワウ部分のみ単品にしたものは、そのうねりから 'Wave' という意味を持つVolna Auto Wahとして用意されております。そんな集大成的Spektr-3を考えると追加されたペダルの意味が自ずと分かるものでして、新たにフィルタースィープの周波数と歪みのヴァリエーションを切り替えるダイヤルが追加されたほか、もう片方のペダルはなんとヴォリューム・ペダル・・う〜ん、そっち要るか?(笑)。しかしそれは愚問。何でも大仰に '装置' の如く備え付けときましたヨ、というのが正しい 'デカいペダル' 道なのです。例えるならデカいエフェクターボードに必要ないペダル敷き詰める心理でしょうかね?(笑)。しかし、こういう 'ロール状' でダイヤルのようなパラメータって 'ペダルの世界' では見たことありません。ループ・サンプラーで有名なBoomerangがWholly Rollerっていうヴォリューム&エクスプレッション・ペダルで採用してましたけど結局、普及しませんでしたね。
→Roland EV-5 Expression Pedal
→Boss EV-30 Expression Pedal
→Moog EP-3 Expression Pedal
→Mission Engineering - Expression Pedals
→PolyFusion FP-2 Active Volume Pedal
ペダル市場の中ではかなりのコスト・パフォーマンスで削られてしまい、それこそ手のひらサイズでポケットに入っちゃうような小さいものがある一方、あくまでパラメータのひとつとして利便性のみに特化したヤツはプラスティック製で賄われていたりします。代表的なのがエクスプレッション・ペダルというものでして、モジュレーション系エフェクターであれば揺れの効果の強弱、エンヴェロープ・フィルターの補助的機能として周波数の増減をリアルタイムに足で操作する為のアイテム。いまお手軽に入手出来るものとしてはRoland EV-5やMoog EP-3などがありますね(ちなみにEV-5の後継機Boss EV-30はアルミダイキャスト製)。またMission EngineeringはOEM含めこの手のペダルを幅広く手がけておりますが、そのペダル筐体はCrybabyを流用したものです。しかし、この1970年代に製作されたE-Mu Systems VPDLは分厚いスチール製のボディで存在感が違います。E-Mu SystemsといえばサンプラーのEmulatorで有名ですけどこの筐体、どこかで見たなと思えば・・ありました。A/DAの強烈なフランジング効果で有名なFlangerを始め、当時のA/DA製品に対応するControl Pedal Aです。そしてもうひとつはシンセで有名なPolyFusionのFP-2というのがあり、これも同じ筐体を用いて 'Active Volume Pedal' と記した9V電池で駆動するヴォリューム/ゲイン・ブースター・ペダル。ペダル裏面にはドライバーで6dBのゲインアップ調整する 'Gain' と 'Tension' というペダルの踏み心地調整のトリマーがあり、入出力も右側にまとめられているのが便利ですね。そんな1970年代はMaestro BoomerangやColorsoundのペダル筐体を用いたOEM的製品が数多くあり、E-Mu SystemsやPolyFusionのペダルもそういった類いのものなのでしょう。とにかくシンプル・イズ・ベスト、この重厚でありながら素朴な安心感を醸し出すデザインで '手を抜いていない' のが嬉しいのです。
→Arbiter Soundimension
→Arbiter Add-A-Sound
→Vintage Fender Effects from The 1950's - 1980's
実は何気に一番レアなエフェクターってこのArbiterのシリーズかも知れない。磁気ディスク式エコーとして今やMaestro Echoplexと並んで名機の誉れ高いBinson Echorecに比べ、同じくArbiterから登場したSoundimensionとSoundette・・まったく市場で見かけたことがありません。他に 'ニッチなペダル名人' のフランク・ザッパも愛した同社のオクターバー、Add-A-Soundとかメチャクチャ欲しいですね。この取っ手を付けてポータブルに持ち運べる引き出し式の木製ケースというレトロな作りは、例えばレゲエやダブを愛する者ならすぐにレゲエ/ダブ創成期に多大な影響を与えたプロデューサー、コクソン・ドッドの名前が上がります。ドッドのSoundimentionに対する愛情はそのまま、自らが集めるセッション・バンドに対してわざわざ 'Sound Dimension' と名付けるほどでした。彼のStudio Oneでエンジニアを務めたシルヴァン・モリスが離れた後は、ドッド自身が 'Dub Specialist' を名乗ってダブ制作に従事しました。以下、そのシルヴァン・モリスが機器についてこう説明します。
"当時わたしは、ほとんどのレコーディングにヘッドを2つ使っていた。テープが再生ヘッドを通ったところで、また録音ヘッドまで戻すと、最初の再生音から遅れた第二の再生音ができる。これでディレイを使ったような音が作れるんだ。よく聴けば、ほとんどのヴォーカルに使っているのがわかる。これが、あのスタジオ・ワン独特の音になった。それからコクソンがサウンドディメンションっていう機械を入れたのも大きかったね。あれはヘッドが4つあるから、3つの再生ヘッドを動かすことで、それぞれ遅延時間を操作できる。テープ・ループは45センチぐらい。わたしがテープ・レコーダーでやっていたのと同じ効果が作れるディレイの機械だ。テープ・レコーダーはヘッドが固定されているけど、サウンディメンションはヘッドが動かせるから、それぞれ違う音の距離感や、1、2、3と遅延時間の違うディレイを作れた。"
Maestro Echoplex、Roland RE-201 Space Echo、The Fisher K-10とGrampianのスプリング・リヴァーブ、Musitronics Mu-Tron Bi-Phase、MXR M-129 Pitch Transposer、Arbiter Soundimensionなどなど。いつの時代でも 'ダブ・マスター' にとって機材は、ギタリストや管楽器奏者ら器楽演奏と全く同じ意味を持つほどこだわるのです。まさに 'エコーのサウンド・デザイナー' とも言うべきダブ職人なり。しかしSoundimensionの携帯用ラジオのような縦型のデザインセンス、好きだなあ。入出力が底面に配置されているのはビックリしますけど、そのポップさはEMS Synthi AKSやBuchla Music Easelに匹敵しますね。また、この磁気ディスク式と対になるかたちでやってきたTel-Ray 'オイル缶エコー' の世界。オイルで満たされた 'Adineko' と呼ばれる缶を電気的に回転させることでエコーの効果を生成するものなのですが、このオイルが今では有害指定されていることで物理的に再現することが不可能。このオイルの雫のイメージそのままドロッとした揺れ方というか、懐かしい 'オルガンライク' に沈み込む '質感' というか・・たまらんなあ。しかしFenderってどうしてもアンプのデザインから離れられないんですね(笑)。
→Strymon BigSky - Reverb Unit with 300 MIDI Presets
→Strymon BlueSky - Reverbrator
→Boss DD-7 Digital Delay
→Boss DD-500 Digital Delay
→Electrograve Search and Destroy SAD-1
→Electrograve
さて、一般的にはこのような古臭い磁気テープ、磁気ディスク、オイル缶、スプリングなどの物理現象によるエコー効果ではなく、今やDSPテクノロジーで複雑に演算したデジタル・エコー/リヴァーブによる音作りが主流です。特にデジタル・リヴァーブは技術の進化とほぼシンクロして複雑かつナチュラルな空間生成を獲得してきており、それはプラグインで磨かれてきた 'コンボリューション・リヴァーブ' のペダル化と言って良いでしょうね。また、ステレオ・リヴァーブからの出力をこのような 'マルチアウト' のトレモロ・パンニングに通して 'サウンド・デザイン' してやることも面白いですね。こちらは名古屋でガジェット系シンセなどを製作するElectrograveから4チャンネル出力を持つパンニング・マシン、Search and Destroy SAD-1。ステレオ音源はもちろん、ギターからの入力をジョイスティックでグリグリとパンニングさせたり、Autoスイッチを入れてトレモロのテンポをSlowからFast、Normalからブツ切りにするRandomに切り替えることで 'グリッチ風' の効果まで幅広く対応。4つの出力はそれぞれ個別に切り替えることが可能で、50% Dutyスイッチを入れることでモノラルでも十分な空間変調を堪能することが出来ます。
→Bastl Instruments Thyme - Robot Operated Digital Tape Machine ①
→Bastl Instruments Thyme - Robot Operated Digital Tape Machine ②
さらにパンニング以外でいわゆる 'グリッチ' にまでその範囲を広げるべく、音像と定位をグシャッとステレオで変調させてやるのがこちら、その名も 'Robot Operated Digital Tape Machine' と題したThyme。'ガジェット' 全開な機器を製作する一方でCVやMIDIを統合しながらプログラマブルな本機を製作してしまう旧共産圏のチェコ共和国、恐るべし。本機筐体の真ん中辺りに並ぶDelayセクション3つのツマミCoarse、Fine、Spacingをテープの 'バリピッチ' の如く操作し、それをTape SpeedとFeedback、Filterで変調させながらフレイズが破壊されていきます。そしてもうひとつのRobotセクションではFM変調の如く金属質なトーンへと変調し、それを真下にズラッと並ぶ6つの波形とエンヴェロープ、外部CVから操作・・というかここでは説明しきれないほどの機能満載ですね。発売当初から "これは面白そうだ!" という予測と共に思い切って入手してBuchlaシンセと共に使ってますけど、その50ページ弱のマニュアル片手に未だ飽きることはありません。
→Empress Effects Zoia ①
→Empress Effects Zoia ②
その昔、Eventide DSP-4000というラック型マルチ・エフェクターがありましたけど、コレ、まさに当時の 'エレクトロニカ' 黎明期を象徴するプラグインCycling 74 Max/Mspのハードウェア的端緒として話題となりました。このDSP-4000は 'Ultra-Harmonizer' の名称から基本はインテリジェント・ピッチシフトを得意とする機器なのですが、色々なモジュールをパッチ供給することで複雑なプロセッシングが可能なこと。リヴァーブやディレイなどのエフェクトそのものの役割を果たすものから入力信号を '二乗する'、'加える' といった数式モジュール、'この数値以上になれば信号を分岐する' といったメッセージの 'If〜' モジュールといった完全にモジュラーシンセ的発想で自由にパッチを作成することが出来るのです。当時で大体80万くらいの高級機器ではありましたが 'ベッドルーム・テクノ' 世代を中心に人気となりましたねえ。
そんなユーザーの好みに合わせて自由にモジュールの組めるシステムから20年後、まさに 'エフェクターを自由にデザイン' したいユーザーの為の究極のアイテムがカナダの工房、Empress Effectsから登場です。各モジュールはカラフルにズラッと並んだ8×5のボタングリッド上に配置し、そこから複数のパラメータへとアクセスします。これらパラメータで制作したパッチはそれぞれひとつのモジュールとしてモジュラーシンセの如く新たにパッチングして、VCO、VCF、VCA、LFOといった 'シンセサイズ' からディレイやモジュレーション、ループ・サンプラーにピッチシフトからビット・クラッシャーなどのエフェクツとして自由に 'デザイン' することが可能。これらパッチは最大64個を記録、保村してSDカードを介してバックアップしながら 'Zoiaユーザーコミュニティ' に参加して複数ユーザーとの共有することが出来ます。
→Koma Elektronik Field Kit - Electro Acoustic Workstation
→Koma Elektronik Field Kit Expansion Pack
→Koma Elektronik on Reverb.com
ちなみにこのようなデジタルのアプローチに対して、いわゆる 'ライヴ・エレクトロニクス' の手法から製品化された 'ソレノイド・キット' のField Kit - Electro Acoustic Workstationも組み込んでみると面白いでしょう。これは現代音楽の世界でジョン・ケージやデイヴィッド・チュードアらがセンサーやモーター、コンタクトマイクなどを用いて身の回りの '具体音' を収集、それを電子変調した不確定音楽の為のアプローチを今のエレクトロニック・ミュージックの文脈で蘇らせたものです。 本機にはLFOやEG、AM/FMラジオのチューナーからビー玉、アッテネートされたケーブルなどを用いてあらゆる '具体音' をモジュラーシンセと組み合わせて用いることが可能。これぞ 'ダダイズム' の極致であり、いまなら噴飯もののケージの '耳を開く' 哲学とは、あらゆる環境で '息づいて' いるミクロな世界に '額縁' を用意することなのだ。
→Headrush Looperboard
ついに 'DAW' が足下にやってきた!と大騒ぎするワケではありませんが、いやあ、もうこういう時代到来なんですねとシミジミ・・。去年にHeadrushというメーカーからLooperboardという巨大なペダルボード・サイズのループ・サンプラーが発売されてましたけど、やはりこのコンパクト・サイズで簡便かつ '緻密なスタジオ' を所有出来るというのが嬉しいのです。本機は同社が発売していたプラグラマブルなドラムマシン、Beatbuddyと同期して拡張した音作りを可能とさせるもので、6つのトラック単位で録音、再生出来るループ・サンプラー。モノラル入力で最大3時間、ステレオ入力で最大1.5時間、SDカード使用時は最大48時間の大容量録音を可能とします。1つのソング・トラックに最大36個のループトラック、また各ループトラックへの無制限オーバーダビング、これらを大きな4.3インチのタッチスクリーンで波形を見ながら大きなホイールをスクロールしながらエディット、4つのフットスイッチで作成したソングをセーブ、エクスポートすることでリアルタイムに作業、演奏に反映させることが出来ます。もちろんWi-Fi/BluetoothやMIDIと連携して外部ネットワークからのファームウェア・アップデート、保存などにも対応します。
→Electro-Harmonix 16 Second Digital Delay 2004
→Electro-Harmonix 16 Second Digital Delay 2004 on Reverb.com
→Electro-Harmonix 2880 Super Multi-Track Looper
わたしのループ・サンプラーの理解は未だこのElectro-Harmonix 16 Second Digital Delayで止まっておりまする。本機は16秒のサンプリング・タイムを持つループ・サンプラーとショート・ディレイ、モジュレーションの複合機で、小節数を設定してピッチとテンポ、逆再生でそれぞれ可変させることが出来ます。さらに2004年のヴァージョンアップした '復刻版' では、外部シーケンサーやドラムマシンをスレーヴにしてMIDIクロックで同期させることも可能。ループ・サンプラーは各社それぞれに使い勝手があり、その設計思想のクセを体得できるか否かで評価は大きく異なりますね。例えば、現在でも足下に置くユーザーの多いLine 6 DL4 Delay Modelerなどは、いかに本機でその使い勝手を体得してしまったユーザーが多いのかを如実に示しているのではないでしょうか。
COVID-19はこれまでの 'あり方' を変えました。今まで当たり前に '消費' していたロールモデルを一掃すると同時に、一見バラバラであったものが限定的な環境の中で '細胞分裂' の如く結び付き、以前には見たことのなかった '風景' が表出することを暗示したのです。足下でギタリストの為のアイテムであったエフェクターの世界も同じ。それは大きな '間口' を開けながら、人とインターフェイスの関係を繋ぐ新たな 'デザイン' として未来を待ち構えているのかも知れません。
→Bastl Instruments Thyme - Robot Operated Digital Tape Machine ①
→Bastl Instruments Thyme - Robot Operated Digital Tape Machine ②
さらにパンニング以外でいわゆる 'グリッチ' にまでその範囲を広げるべく、音像と定位をグシャッとステレオで変調させてやるのがこちら、その名も 'Robot Operated Digital Tape Machine' と題したThyme。'ガジェット' 全開な機器を製作する一方でCVやMIDIを統合しながらプログラマブルな本機を製作してしまう旧共産圏のチェコ共和国、恐るべし。本機筐体の真ん中辺りに並ぶDelayセクション3つのツマミCoarse、Fine、Spacingをテープの 'バリピッチ' の如く操作し、それをTape SpeedとFeedback、Filterで変調させながらフレイズが破壊されていきます。そしてもうひとつのRobotセクションではFM変調の如く金属質なトーンへと変調し、それを真下にズラッと並ぶ6つの波形とエンヴェロープ、外部CVから操作・・というかここでは説明しきれないほどの機能満載ですね。発売当初から "これは面白そうだ!" という予測と共に思い切って入手してBuchlaシンセと共に使ってますけど、その50ページ弱のマニュアル片手に未だ飽きることはありません。
→Empress Effects Zoia ①
→Empress Effects Zoia ②
その昔、Eventide DSP-4000というラック型マルチ・エフェクターがありましたけど、コレ、まさに当時の 'エレクトロニカ' 黎明期を象徴するプラグインCycling 74 Max/Mspのハードウェア的端緒として話題となりました。このDSP-4000は 'Ultra-Harmonizer' の名称から基本はインテリジェント・ピッチシフトを得意とする機器なのですが、色々なモジュールをパッチ供給することで複雑なプロセッシングが可能なこと。リヴァーブやディレイなどのエフェクトそのものの役割を果たすものから入力信号を '二乗する'、'加える' といった数式モジュール、'この数値以上になれば信号を分岐する' といったメッセージの 'If〜' モジュールといった完全にモジュラーシンセ的発想で自由にパッチを作成することが出来るのです。当時で大体80万くらいの高級機器ではありましたが 'ベッドルーム・テクノ' 世代を中心に人気となりましたねえ。
そんなユーザーの好みに合わせて自由にモジュールの組めるシステムから20年後、まさに 'エフェクターを自由にデザイン' したいユーザーの為の究極のアイテムがカナダの工房、Empress Effectsから登場です。各モジュールはカラフルにズラッと並んだ8×5のボタングリッド上に配置し、そこから複数のパラメータへとアクセスします。これらパラメータで制作したパッチはそれぞれひとつのモジュールとしてモジュラーシンセの如く新たにパッチングして、VCO、VCF、VCA、LFOといった 'シンセサイズ' からディレイやモジュレーション、ループ・サンプラーにピッチシフトからビット・クラッシャーなどのエフェクツとして自由に 'デザイン' することが可能。これらパッチは最大64個を記録、保村してSDカードを介してバックアップしながら 'Zoiaユーザーコミュニティ' に参加して複数ユーザーとの共有することが出来ます。
→Koma Elektronik Field Kit - Electro Acoustic Workstation
→Koma Elektronik Field Kit Expansion Pack
→Koma Elektronik on Reverb.com
ちなみにこのようなデジタルのアプローチに対して、いわゆる 'ライヴ・エレクトロニクス' の手法から製品化された 'ソレノイド・キット' のField Kit - Electro Acoustic Workstationも組み込んでみると面白いでしょう。これは現代音楽の世界でジョン・ケージやデイヴィッド・チュードアらがセンサーやモーター、コンタクトマイクなどを用いて身の回りの '具体音' を収集、それを電子変調した不確定音楽の為のアプローチを今のエレクトロニック・ミュージックの文脈で蘇らせたものです。 本機にはLFOやEG、AM/FMラジオのチューナーからビー玉、アッテネートされたケーブルなどを用いてあらゆる '具体音' をモジュラーシンセと組み合わせて用いることが可能。これぞ 'ダダイズム' の極致であり、いまなら噴飯もののケージの '耳を開く' 哲学とは、あらゆる環境で '息づいて' いるミクロな世界に '額縁' を用意することなのだ。
ついに 'DAW' が足下にやってきた!と大騒ぎするワケではありませんが、いやあ、もうこういう時代到来なんですねとシミジミ・・。去年にHeadrushというメーカーからLooperboardという巨大なペダルボード・サイズのループ・サンプラーが発売されてましたけど、やはりこのコンパクト・サイズで簡便かつ '緻密なスタジオ' を所有出来るというのが嬉しいのです。本機は同社が発売していたプラグラマブルなドラムマシン、Beatbuddyと同期して拡張した音作りを可能とさせるもので、6つのトラック単位で録音、再生出来るループ・サンプラー。モノラル入力で最大3時間、ステレオ入力で最大1.5時間、SDカード使用時は最大48時間の大容量録音を可能とします。1つのソング・トラックに最大36個のループトラック、また各ループトラックへの無制限オーバーダビング、これらを大きな4.3インチのタッチスクリーンで波形を見ながら大きなホイールをスクロールしながらエディット、4つのフットスイッチで作成したソングをセーブ、エクスポートすることでリアルタイムに作業、演奏に反映させることが出来ます。もちろんWi-Fi/BluetoothやMIDIと連携して外部ネットワークからのファームウェア・アップデート、保存などにも対応します。
→Electro-Harmonix 16 Second Digital Delay 2004
→Electro-Harmonix 16 Second Digital Delay 2004 on Reverb.com
→Electro-Harmonix 2880 Super Multi-Track Looper
わたしのループ・サンプラーの理解は未だこのElectro-Harmonix 16 Second Digital Delayで止まっておりまする。本機は16秒のサンプリング・タイムを持つループ・サンプラーとショート・ディレイ、モジュレーションの複合機で、小節数を設定してピッチとテンポ、逆再生でそれぞれ可変させることが出来ます。さらに2004年のヴァージョンアップした '復刻版' では、外部シーケンサーやドラムマシンをスレーヴにしてMIDIクロックで同期させることも可能。ループ・サンプラーは各社それぞれに使い勝手があり、その設計思想のクセを体得できるか否かで評価は大きく異なりますね。例えば、現在でも足下に置くユーザーの多いLine 6 DL4 Delay Modelerなどは、いかに本機でその使い勝手を体得してしまったユーザーが多いのかを如実に示しているのではないでしょうか。
COVID-19はこれまでの 'あり方' を変えました。今まで当たり前に '消費' していたロールモデルを一掃すると同時に、一見バラバラであったものが限定的な環境の中で '細胞分裂' の如く結び付き、以前には見たことのなかった '風景' が表出することを暗示したのです。足下でギタリストの為のアイテムであったエフェクターの世界も同じ。それは大きな '間口' を開けながら、人とインターフェイスの関係を繋ぐ新たな 'デザイン' として未来を待ち構えているのかも知れません。
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