2019年1月3日木曜日

倍音とリング変調の世界 (再掲)

リング・モジュレーションといえば現代音楽の大家、カールハインツ・シュトゥックハウゼンが 'サウンド・プロジェクショニスト' の名でミキシング・コンソールの前に陣取り、'3群' に分かれたオーケストラ全体をリング変調させてしまった 'ライヴ・エレクトロニクス' の出発点 'Mixtur' (ミクストゥール)に尽きるでしょうね。





→ 'Mixtur' Liner Notes
Stockhausen: Sounds in Space: Mixtur
→ 'Mixtur' Liner Notes
Stockhausen: Sounds in Space: Mixtur

詳しいスコアというか解説というか '理屈' は上のリンク先を見て頂くとして、こう、何というか陰鬱な無調の世界でおっかない感じ。不条理な迷宮を彷徨ってしまう世界の '音響演出' においてリング・モジュレーターという機器の右に出るものはありません。映像でいうならフィルムが白黒反転して '裏焼き' になってしまった色のない世界というか、ゴ〜ンと鳴る濁った鐘の音、世界のあらゆる '調性' が捻れてしまったような金属的な質感が特徴です。以前にも ''飛び道具'の王様リング変調器' として取り上げましたけど、ほとんど制御不能ながらエフェクターの面白さを手軽に味合わせてくれるものということで、ここで再び取り上げます。





Oberheim Electronics Ring Modulator (Prototype)
Maestro Ring Modulator RM-1A
Maestro Ring Modulator RM-1B

そもそもは1960年代後半、後に 'オーバーハイム・シンセサイザー' で名を馳せるトム・オーバーハイムが同じUCLA音楽大学に在籍していたラッパ吹き、ドン・エリスより 'アンプリファイ' のための機器製作を依頼されたことから始まりました。この時少量製作した内のひとつがハリウッドの音響効果スタッフの耳を捉え、1968年の映画「猿の惑星」のSEとして随所に効果的な威力を発揮したことでGibsonのブランド、MaestroからRM-1として製品化される運びとなります。オーバーハイムは本機と1971年のフェイザー第一号、PS-1の大ヒットで大きな収入を得て、自らの会社であるOberheim Electronicsの経営とシンセサイザー開発資金のきっかけを掴みました。それまでは現代音楽における 'ライヴ・エレクトロニクス' の音響合成で威力を発揮したリング・モジュレーターが、このMaestro RM-1の市場への参入をきっかけにロックやジャズのフィールドで広く認知されたのです。







Gretsch / Jen HF Modulator ①
Gretsch / Jen HF Modulator ②
Heavy Electronics Saturn
Musitronics / Dan Armstrong Green Ringer -Frequency Multiplier-

そんなリング・モジュレーター唯一の操作法といっても過言ではない、エクスプレッション・ペダルによるフリケンシーのリアルタイム操作なイメージが強いのですが、一方では、ファズなどとは一風違う 'シンセライク' な歪みの '質感生成' にも威力を発揮。そんな地味そうな代表格が1970年代にJenが 'Gretch / Playboy' のブランドで発売していたHF Modulator。続く緑色のシンプルな面構えが渋いHeavey Electronics Saturnは、Sayer Payneが主宰するガレージ工房のもので、中身は一般的なリング変調の構成を備えながらDriveセクションにより強烈な歪みを生成します。ちなみに本機は、後述するCarlinのリング・モジュレーターをベースにした一台なのだとか。そして、このリング変調と近しい関係にあるのがアッパーオクターヴ・ファズによる1オクターヴ上の倍音生成。古くはRoger Mayerが特注で製作したOctavioをベースにその 'デッドコピー' となったTychobrahe Octaviaなどが代表的ですが、Mu-Tronでお馴染みMusitronicsが製作した 'アタッチメント' の一台、Dan Armstrong Green Ringerもそんな効果に特化したものですね。そもそもは英国のWereham Electronicsが手がけたものを米国のMusitronicsで生産したことで人気爆発、その後日本や韓国製のコピーが出回るほどポピュラーになりました。直接ギターの入力ジャック、または配線を変更してアンプの入力にそのまま 'プラグイン' する独特な仕様で、元々はMu-Tronの傑作オクターバー、Octave Dividerに内蔵されていたものを単体の 'アタッチメント' として仕上げたものでもあります。





Pigtronix Ringmaster -Analog Multiplier-

今年はPigtronixからリング・モジュレーターの新作であるRingmasterも登場。しかし、どういうワケかこの工房のものは 'ミニサイズ' になってからあまり話題に登らなくなった気が・・(汗)。'エレハモ' もそうなのだけどコスト削減、合理化、省エネがこういった仕様のニーズと直結しているのだと思いますが、やはりエフェクターが本来こだわってきた '何か' を失っているんじゃないか、と思うんですよね。それはさておき、本機は 'ギターシンセ' Mothershipのリング変調をベースにその緑色からDan Armstrong Green Ringerの '機能強化版' みたいなイメージなのかな?面白いのは本機に 'Sample + Hold' 機能を備えることで、Green RingerやOberheim VCF-200を愛したフランク・ザッパからインスパイアされていると示唆していること。





DOD Gonkulator
DOD FX13 Gonkulator Modulator (discontinued)

また、このようなディストーショナルなリング変調としてはこちら、DODから新装して再登場したGonkulatorがありますね。元々は1990年代後半に登場したFX13 Gonkulator Modulatorという '飛び道具' があり、当時ほとんど廃盤状態であったリング・モジュレーターの '復活' というかたちでニッチな層に売れました。わたしも興味本位で購入してみたのだけどスイッチをOnにした途端、高調波のピーッとしたノイズが発振状態でエグくも使いにくい一品だったことを思い出します(苦笑)。









Black Cat Products Ring Modulator
Electro-Harmonix Ring Thing
Dwarfcraft Devices Hax

1990年代後半、わたしが最初に購入したBlack Cat Products Ring Modulatorを皮切りに現在までいろんなタイプのリング・モジュレーターを試してきました。個人的に気に入ったのは名門Electro-Harmonixが満を持して復刻したFrequency Analyzer EH-5000。現在の小型となった 'Xo' シリーズではなく分厚い鉄板の大柄な1970年代の復刻ものなのですが、これはエクスプレッション・ペダルの操作ができないんですよねえ。現在ではより多目的なプログラム機能を備えるRing Thingであったり、'Clash' ツマミで電圧を可変させると共に歪ませながらTuneツマミでオシレータ演奏も可能なDwarfcraft Devices Haxといった '発展型' 機種も増えたものの、それ以前は、本当にフリケンシーのエクスプレッション・コントロールが唯一の '飛び道具' というイメージだったのです。そういう意味では、初めからエクスプレッション・ペダルのないこの仕様は、逆に本機のツマミを通してアンプの '箱鳴り' という一風変わったシミュレートの探求へと向かわせます。このリング変調による非整数倍音が生み出す '箱鳴り' に興味を持ったのは、ギタリストの土屋昌巳さんによる雑誌のインタビュー記事がきっかけでした。

"ギターもエレキは自宅でVoxのAC-50というアンプからのアウトをGroove Tubeに通して、そこからダイレクトに録りますね。まあ、これはスピーカー・シミュレーターと言うよりは、独特の新しいエフェクターというつもりで使っています。どんなにスピーカー・ユニットから出る音をシミュレートしても、スピーカー・ボックスが鳴っている感じ、ある種の唸りというか、非音楽的な倍音が出ているあの箱鳴りの感じは出せませんからね。そこで、僕はGroove Tubeからの出力にさらにリング・モジュレーターをうす〜くかけて、全然音楽と関係ない倍音を少しずつ加えていって、それらしさを出しているんですよ。"

なるほど。土屋さんは自宅という環境においてアンプを使えないというところからこのやり方を見つけたようですが、特別ギタリストと何の縁もないわたしにとって土屋さんと同じ結果になることはなくとも、こういう変わった音作りの話は大好きです(笑)。とりあえず、その興味深い話の続きを聞きましょう。

"僕が使っているリング・モジュレーターは、電子工学の会社に勤めている日本の方が作ってくれたハンドメイドもの。今回使ったのはモノラル・タイプなんですけれど、ステレオ・タイプもつい1週間くらい前に出来上がったので、次のアルバムではステレオのエフェクターからの出力は全部そのリング・モジュレーターを通そうかなと思っています。アバンギャルドなモジュレーション・サウンドに行くのではなくて、よりナチュラルな倍音を作るためにね。例えば、実際のルーム・エコーがどういうものか知っていると、どんなに良いデジタル・リバーブのルーム・エコーを聴かされても、'何だかなあ' となっちゃう。でもリング・モジュレーターを通すとその '何だかなあ' がある程度補正できるんですよ。"

このような土屋さんの言われる '箱鳴り' のシミュレータという発想は、そのまま '飛び道具' ではないリング・モジュレーターの再発見として嬉しい収穫でしたね。例えば、Frequency Analyzerの場合だとギュイ〜ンと変調するShiftを追っかけるように追従するFineというツマミが他社の製品にはない独特なものでして、これは結構 '箱鳴り' の演出において効果的なんじゃないか?などと妄想したことがありまする。そう、一通り 'エグい' 使い方で一周するとFrequency Analyzerのような 'シブい' ヤツの倍音生成にハマるのですヨ。



Free The Tone Ring Modulator RM-1S (discontinued)

こちらはそんな土屋氏とも親交のあるLuna Seaのギタリスト、Sugizo氏のシグネチュア・モデルともいうべきFree The Tone Ring Modulator RM-1S。2017年12月に280台限定で発売された本機は未だ彼のトーンを目指すユーザーから 'プレミア視' されております。特別Luna Seaに詳しくはないのだけど(汗)、この動画を見てみると他社の製品とはかなり異なったかかり方というか、いわゆる '飛び道具' というよりリードトーンの味付けとして独特な個性を備えておりますねえ。リング・モジュレーターでは必須のエクスプレッション・ペダル端子がないことからも 'ギュイ〜ン' とは真逆の方向性なのは明らかだ。







Colorsound Ring Modulator
Masf Pedals Swan Song (discontinued)
Bananana Effects

一方で、リング変調のフリケンシー・コントロールに重点を置いたものとしては、1970年代に登場したColorsoundのペダル内蔵型があります。大抵の製品は外部にエクスプレション・ペダルを接続する仕様にあって、むしろ 'ペダル内蔵' というのはリング・モジュレーターにとってもっと普及して良いと思うんですけどね。このColorsoundのは1990年代初めにズラッと復刻版が市場に現れた内のラインナップに入っていたのですが、その特殊な効果のためか早々と見なくなり、わたしがエフェクターを漁るようになった1990年代後半にはすでにプレミアが付いておりました。なかなかにささぐれ立った荒い変調具合で、この後に取り上げるCarlinのRing Modulatorと近い匂いを感じますね。その後、日本を代表するノイズ・メーカーであるMasf PedalsからもSwan Songという一体型が現れましたけど、ガレージ工房であるBananana Effects Growl 567はその 'エクスプレッション操作' を光センサーによりやってしまうナイスな一品!









Copilot Fx Planetoid
Copilot Fx Antenna
Copilot Fx Antenna 2 - 8 Knob Version ①
Copilot Fx Antenna 2 - 8 Knob Version ②
Copilot Fx Broadcast BC-2

そして、中南米のドミニカから '飛び道具' なエフェクターばかり小まめにモデル・チェンジしながら製作するCopilot Fx。当初のAndoroid Modulatorという名前からPlanetoidと変更、さらにヴァージョンアップされたAntennaは4つのツマミから8つへと大幅に強化されるなどこの工房を代表する一台。ここから 'モジュラー' 的音作りとして威力を発揮する 'エクスプレッション・ボックス' のBroadcast BC-2は、単なるフリケンシーの変調のみならず、ランダマイズなLFOなど多様な音作りを可能とします。






Keio Electronic Lab. Synthesizer Traveller F-1

このような 'ペダル・コントロール' のリング変調としては、その源流ともいうべき日本が誇る偉大なエンジニア、三枝文夫氏が手がけた京王技研(Korg)のSynthesizer Traveller F-1もご紹介しましょう。国産初のシンセサイザーKorg 700に搭載された 'Traveller' フィルターは、-12dB/Octのローパス・フィルターとハイパス・フィルターがセットで構成されたもので、それぞれの動きを連携させて '旅人のように' ペアで移動させるという三枝氏のアイデアから名付けられた機能です。このF-1はそんな 'Traveller' を単体で抜き出したものであり、ファズワウからオシレーター発振、VCFコントロールに至るまで未だ孤高の存在として奏者への挑戦状を叩き付けております。本機の製品開発にはジャズ・ピアニストの佐藤允彦氏が携わっており、そんな当時のプロトタイプについてこう述べております。なんと当初はペダルの縦方向のみならず、横にもスライドさせてコントロールする仕様だったとは・・。

"三枝さんっていう開発者の人がいて、彼がその時にもうひとつ、面白い音がするよって持ってきたのが、あとから考えたらリング・モジュレーターなんですよ。'これは周波数を掛け算する機械なんですよ' って。これを僕、凄い気に入って、これだけ作れないかって言ったのね。ワウワウ・ペダルってあるでしょう。これにフェンダーローズの音を通して、かかる周波数の高さを縦の動きでもって、横の動きでかかる分量を調節できるっていう、そういうペダルを作ってくれたんです。これを持って行って、1972年のモントルーのジャズ・フェスで使ってますね。生ピアノにも入れて使ったりして、けっこうみんなビックリしていて。"








Moody Sounds / Carlin Pedals

本来リング・モジュレーターとは、2つの入力の和と差をマルチプライヤー(乗算器)という回路で掛け合わせることで非整数倍音を生成するものです。大抵のリング・モジュレーターには掛け合わせるためのオシレータが内蔵されておりますが、このCarlinのヤツはそんな原点の構造に則って、A、Bふたつの入出力を掛け合わせて音作りを行える珍しい一台。オリジナルはスウェーデンのエンジニア、Nils Olof  Carlinの手によりたったの3台のみ製作されたという超レアもの。それを本人監修のもとMoody Soundsが復刻した本機、わたしも早速購入しましたが、ひと言で表現するならば '塩辛い'!いや、ヘンな表現で申し訳ないですけど(笑)、通常のリング変調にみるシンセっぽい感じとは違い、チリチリとした歪みと共にビーンッ!と唸る感じに柔らかさは微塵もありません。かなり独特というか、ステレオ音源を通しても良いし、B出力をB入力にパッチングしてA入力と掛け合わせても良いし、いろいろな発想を刺激してくれますヨ。ちょっと凝ったセッティングとしては、CarlinのB入力にMasf Pedalsのオシレータ発振を軸とした風変わりな一台。





Subdecay VM-1 Virtuvian Mod. ①
Subdecay VM-1 Virtuvian Mod. ②
Lastgasp Art Laboratories Sick Pitch King (discontinued)
Lastgasp Art Laboratories Sick Pitch King Jr.

そんな外部オシレータとの連携できる機器の一方、SubdecayのVM-1は、本体内に7つの切り替え式キャリア・オシレータを備え、それぞれE、A、D、G、B、E、Aと優れたピッチ変換で追従、Fineツマミで上下マイナー3度、EntropyスイッチがChaosモードの場合はCarrierとFineツマミ合わせて19Hzから2.5kHzの8オクターヴの範囲でレンジ調整し、変わった倍音構成を生成する音楽的アプローチの変調を得意とします。そして、日本発の 'ノイズ・メーカー' として特異な製品開発によるラインナップを展開する 'L.A.L.' ことLastgasp Art Laboratories。現在はオーストラリアに拠点を移しているようですが、このSick Pitch Kingは 'エレハモ' やMoogerfoogerが登場する前に市場で購入できた貴重なリング・モジュレーターでした。この初代機はCarlin同様、現在でも他社の製品ではあまり見ない 'Carrier' 入力が備えており、ここからいろんな音源を突っ込んでリング変調の実験に活躍したことを思い出します。









Moog Moogerfooger
Fairfield Circuitry Randy's Revenge
Way Huge Electronics Ring Worm WHE606 (discontinued)

現在の市場で高品質なリング・モジュレーターとして人気を集めているのが、'Moog博士の置き土産' ともいうべきMoogerfooger MF-102とカナダの工房、Fairfield CircuitryのRandy's Revengeでしょう。特にRandy's Revengeは、そのコンパクトなサイズに多様な機能を詰め込み、これまでの歪みきって 'ノイジーな' イメージのリング変調にあって、本機は実にクリアーで粒の際立った効果が特徴的です。ただ無調にギザギザと濁った '音響' になるだけと思い込んでいる人は、是非とも本機の高品質なサウンドにヤラれて下さいませ。また、高品質ということではJeorge Trippsの手がけるWay Hugeから登場したRing Wormも評価が高いですね。DC18Vという広いヘッドルームもそんな音質に貢献している思うのだけど、残念ながらすでに生産終了しているので中古で見つけるしかありません。







Z.Vex Effects

やっぱりZ.Vex Effects Ringtoneの動画は面白い。もう10年以上前の動画ながら未だに本機を使いこなすプレイヤーが現れていない現在の状況で、俗に 'エフェクター界の奇才' と呼ばれるZachary Vexさんの斜め上を行く発想は凄すぎます。デジマートなどで検索すれば安価な中古が出回っており、いつか試そうと思っているのだけどなかなか手を出す勇気がない(笑)。いや、でもエフェクターってそもそもこういう 'ぶっ飛んだ' 体験をするものですよね。エクスプレッション・ペダルでもなければ原音とのミックス具合でもなく、'歪み' 系との '2 in 1' でもない。8ステップ・シーケンスをリング・モジュレーターに組み合わせてペダルにしてしまうセンス、普通のシンセ・メーカーでも思いつきませんヨ。ザッカリーさん自らが解説するこの動画では、フリケンシーを司る8つの各ステップのエフェクト音と原音を調整し、微妙に狂ったオクターヴを合わせるというなかなかに面白い展開。現行品は倍の16ステップを備えてMIDI同期にも対応するSuper Ringtoneがラインナップされておりますが、この8ステップ・シーケンサーの '飛び道具' Ringtone、まだまだ探求する価値アリ、です。











Death by Audio Robot
Dreadbox Sonic Bits - LoFi Bit Crusher Delay
Dreadbox Kappa - 8 Step Sequencer + LFO
Koma Elektronik BD101 Analog Gate / Delay
Sherman Filterbank 2

リング・モジュレーターと類似性の高い効果として、いわゆるフランジャーの付加機能として 'エレハモ' 製品でお馴染み 'Filter Matrix' や、'ロービット' 系のゲーム・サウンドに聴かれるブチブチした 'MXR Blue Box風' ファズがあります。ギリシャ産のDreadboxとドイツ産Koma Elektronikはビット・クラッシャー系ディレイながら、どちらも十分リング・モジュレーターの代用、発展系としてその豊富な音作り含め使える優れた一品。また、思いっきり '暴走したロボット' をイメージした 'ロービット' 系のDeath by Audio Robotも狂ったピッチ・シフティングを披露します。そしてコンパクト・エフェクターではなく、アナログ・シンセサイザーにおいてリング・モジュレーションと同義語と言えるのがAM(Amplitude Modulation)とFM(Frequency Modulation)変調による音作りですね。アナログ・シンセKorg MS-20からの信号をSherman Filterbank 2のAM、FMそれぞれの入力から掛け合わせることで狂った非整数倍音を生成します。





Catalinbread Bicycle Delay

以前、リング・モジュレーターの '隠し味' 的な効果としてリヴァーブの後ろにかけるセッティングを試しておりました。いわゆるザラついた '質感' の生成とアンプの '箱鳴り' 感を狙ったものだったのだけど、じゃ、そんなふたつの効果を一緒にしちゃったものってないの?とことで見つけたのがこちら、Catalinbread Bicycle Delay。グニャリとサイケなフォントを施した本機は上で紹介したDreadbox Sonic Bitsと同様のディレイながら 'ロービット' 系のファミコンっぽい歪みではありません。リング変調と狂ったピッチシフト、フィードバックに至るまで幅広くカバーし、まさに '2台目のディレイ' としてアピールするに相応しい内容でございます。







Lovetone Ring Stinger
Elta Music Devices

1990年代にはほとんど新製品のなかったリング・モジュレーターですが、名門Electro-HarmonixとMoogerfoogerをきっかけにして今ではかなり小さな工房からも製品化されており、それだけコンパクト・エフェクターに対する多様化が広がったと見て良いと思います。もう 'ニッチ' でもなんでもなく、定番と一緒にちょっとぶっ飛びたいとき一台足元へ置いとく、という感じで、どれにしようか迷うくらい選択肢があるっていうのは嬉しいですヨ。こういう製品はやはりシンセサイザーの設計を得意とするメーカーが多く、ロシアでその手の製品を 'ペダル化' してラインナップするElta Music Devicesは今後の有望株。大体このString Ringerというのが、Lovetoneのリング・モジュレーターであるRing Stingerを 'デッドコピー' したものというから尋常じゃない。こう、何というか製品化のニーズを間違えてるというか(笑)、エフェクター好きの自分からしたらこの血迷ったセレクトに 'Good Job!' 以外の何ものでもないのだけど、市場調査的には完全に失敗でしょうね。しかし、どっかの誰かひとりにでもソレ欲しい!と思わせたなら完全に成功なのが、このリング・モジュレーターという存在なのです。

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