爽やかなヴァイブの涼風で不快指数0%の人工的な '楽園' を堪能した後は、一気に泥臭い 'アーシーな' エスノ空間の中で異国情緒に塗れてみたくなります。それがドスッとしたブレイクビーツにより再構築されているとしたら最高ではないでしょうか?
●Inspiration Information, Vol.3 / Mulatu Astatke & The Heliocentrics
まずは前回ご紹介したエチオピアン・グルーヴの重鎮、ムラトゥ・アスタトゥケの2009年奇跡の復活作。共演相手にマルカム・カットー率いる 'ディープ・ファンク' の異能集団であるザ・ヘリオセントリクスを指名し、もうサン・ラも 'エレクトリック・マイルス' も到達できなかったグルーヴの渦がエチオピアから叩き付けられます。
●Breakthrough / The Gaslamp Killer
続いてはフライング・ロータスのレーベルBrainfeederから鬼才、ザ・ガスランプ・キラーことウィリアム・ベンジャミン・ベンサッセンが2010年に放った一枚。ヒップ・ホップの再解釈ともいうべき多くのトラック・メイカーを輩出する 'LAビート' のシーンの中で、彼の出自であるトルコとレバノンのルーツを継いだ血脈は、明らかにこのネジれたブレイクビーツの中にも宿っております。しかし、ライヴだとザッパ風プログレッシヴなスタイルを展開していて単なる 'DJミュージック' という枠には収まりきらない人です。
●Midnight Menu / Tokimonsta
●Creature Dreams / Tokimonsta
同じくBrainfeederからもうひとり、在米コリアンの紅一点ジェニファー・リーことトキモンスタの 'Midnight Menu'。いや〜才気溢れてますねえ。この人は単なるトラック・メイカー以上にサウンドの引き出しが多いというか、作品ごとに持ってくるR&Bの '美メロウ' 感が素晴らしい。ライヴはAbleton Liveで制作したトラックを、MIDIコントローラーであるAkai Professional APC40でリアルタイムに呼び出してミックスするスタイルですね。
●William S. Burroughs in Dub / Dub Spencer & Trance Hill
さて、こちらはスイスのダブ・ユニット、ダブ・スペンサー&トランス・ヒルによる 'ウィリアム・バロウズのための' ダブ。カットアップの巨匠であり、未だ '解読不能' な存在として君臨するバロウズのスピーチを元にグニャリとしたダブで '再構築' したユニークな一枚。ルーツ・レゲエ系とは違う、UKダブと共通するメタリックな質感が特徴です。
●Trapeze / Noel McGhie & Space Spies
そして、おっと・・こんな珍しい発掘盤なぞはいかがでしょうか。ジャマイカ出身のドラマー、ノエル・マギーがフランスで結成したアフロ・ジャズファンク・グループ唯一の一枚。ユニークなのがラッパの沖至さんが参加されていること!1974年に日本での 'さよならコンサート' を記録した 'しらさぎ' の後に渡仏したことから、1975年の本盤は時期的にもピッタリ。しかしフリージャズ一直線の沖さんが、こんなコマーシャルな仕事をされていたとはビックリしました。当時のフランスといえばマヌ・ディバンゴの 'Soul Makossa' のヒットをきっかけに、ザ・ラファイエット・アフロ・ロック・バンドなどのアフロ・ジャズファンク・グループなどが活躍した頃。また、同種のスタイルとしてファラオ・サンダースやゲイリー・バーツ、ワンネス・オブ・ジュジュらもこんなアフロ志向のファンクをやっておりました。さて、ここで特筆したいのは、沖さんがワウペダルでかな〜りの 'エレクトリック・マイルス' なスタイルで攻めているのも異色!ライヴ盤の 'しらさぎ' では新映電気のワウペダルにAce Toneのテープ・エコーとスタックアンプで混沌としたフリージャズを展開しておりましたが、こういうファンクで抑えめなワウペダルの使い方も格好良いなあ。
暑〜い熱帯夜と共に腰とアタマに直撃する泥臭いグルーヴ、これは熱中症かサイケデリックな白日夢のフラッシュバックか・・まだまだ終わらない夏のお供にど〜ぞ。
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