2022年1月1日土曜日

'アンプリファイ' 謹賀新年

明けましておめでとうございます。

未だ世界で猛威を振るっているコロナ・ウィルスがここ日本では去年暮れから収束中。やれ集団免疫だ、ウィルス自体の変異の繰り返しによる自壊だ、などと噂だけが飛び交っており、もちろん、マスクを手放すことなく引き続き警戒は怠りませんけど・・一体どうしたというのだ?(謎)。そんな日常のまま新年を迎えているのですが、この除夜の鐘を聞きながらしんみりとした真夜中の空気が好き。ジャズの世界では仕事のはねた後、この零時を跨いで行われるジャム・セッションを自分たちの時間と定義して 'After Hours' と呼んでおります。そんなレイドバックした雰囲気のままクリス・ボッティとロニー・ジョーダン、ザ・ニュージャージー・キングスのファンキーなグルーヴを堪能しながらシャーデーによる 'いつもキスに溢れた生活' がやって来るのを期待(笑)して初日の出を待つ。さあ2022年のスタートです。









Juan AldereteとNick Reinhartのコンビによる '秘密基地' からのレビューが楽しみだった 'Pedals And Effects' の活動は完全に終了しましたけど、こちらは変わらずひとり大量のペダルと共にコツコツとやっているDennis Kyzerさん。いつも 'Effects Database' やネットの前を陣取り世界の片隅にある小さな工房の製品をチェック、収入のほとんどをこーいうガジェットに注ぎ込む 'ペダル廃人' ではないか?と想像するのですが、できましたら一度、彼の 'お宅拝見' 的にそのマッドな環境を公開して頂きたい(笑)。しかし段々とUPが遅くなる・・2021(←やっときた!)。


そんなオタクなDennisさんから一転、デンマークから発信するThe Pedal ZoneさんはむしろSNSの恩恵をたっぷりと使ってメーカーと提携、オサレに世界各国のペダルをレビューしている感じがありまする。何か編集など、以前に人気を博していたPro Guitar Shopの動画あたりを参考にしてギタリストが望む情報を上手く掴んでますね。ちなみに同様のスタンスでは、カナダから発信するKnobsさんがエレクトロニカ限定ながらオサレな動画でレビューしているというイメージがあります。こちらは未だUPが遅い・・2021(←やっときた!)。






こちらはLAの楽器店Vintage King Audioが選ぶ 'DAW' 用含めた '2019 & 2020ベスト・エフェクター' の過去セレクトと、元PGS(Pro Guitar Shop)の名物レビューギタリストであったAndyが現在担当するReverb.comから '2021ベストペダル' がやってきました!。しかし、AndyさんってYoutubeでこれまで長い間やってきた 'ペダル・レビュワー' としてはそのツボを押さえたプレイ含め、ホントに安定的な人気を誇ってますよねえ。誰かのコメントで "海外のAndy、日本の村田善行さん(フーチーズ)" と言っていたのを見かけたけどなるほど、なかなか旨い表現です(笑)。






さらにReverb.comからは追加で 'DAW' ユーザー向けの 'ベストギア' も取り上げておりますけど、やはり 'ユーロラック・モジュラーシンセ' 関連が多いなあという中で去年の暮れに 'ブッ込んで' きたRolandの 'ローファイ御用達' サンプラー、SP-404 Mk.Ⅱ。簡単なDAWとも言うべき機能UPしたことで、新年の 'お家時間' にコタツで遊ぼうというユーザーが予約殺到して品切れらしいですヨ(笑)。そしてもう3本の 'ベスト・ペダル' 動画もどーぞ。あれこれ '喋り' や弾き手がメインになってしまったような動画より、シンプルにペダルの特徴を見せてくれる方がありがたいですね。







そして新たにここ最近、ハープを 'アンプリファイ' にして 'グリッチ系ペダル' ばかりアプローチすることで人気を博しているお姉さん、Emily Hopkinsさんも素敵です。自身のハープに合う 'ペダル50選' とベストな 'Lo-Fiペダル'、そして去年Rainger Fxから登場した 'ドラムマシン・ペダル' のSnare Trapに加え、史上最低に上品!?な 'Poop Pedal' もとい 'The Fart Pedal' (笑)まで取り上げておりまする。こんな裾野を広げて行くアプローチは大歓迎なんで、日本の 'The EffectorBook' 誌も従来のギタリスト感性だけに囚われず面白い人や企画を取り上げて頂きたいですね。









積極的に 'ペダル・ジャンキー' ぶりを発揮するJHS Pedals主宰のJosh Scottさんによるペダル動画もコンスタントな人気を誇っております。背面の棚に収納された膨大な量のお馴染みなペダルの風景はもちろん、机の上もビッシリとまるで駄菓子のように散らかしまくるペダル、ペダル、ペダルばかり・・。この 'オタク感' 溢れる風貌のJoshさん含めて、これぞマニアの鑑(笑)。ただ、去年くらいからいわゆる 'ライヴ配信' で喋りが中心の動画となってきた感があり、ちと付いていけなくなりました(汗)。








一方、完全なる 'ビザール・マニア' でありながら頻繁にeBayやReverb.comなどでレアな機器の修理、売買も積極的に行なっているSoundgasもお気に入りのひとつ。複数で運営しているようですがその資金力と機材に対する '審美眼' もさることながら、この 'ガジェット類' を積み上げるやり方にそうそう、わたしも過去にダブを制作する環境の出発点ってこんな感じだったよな、と懐かしくなってしまった。あの頃はAllen & Heath WZ14:4:2+のミキシング・コンソールにステレオ・フィルターのMutronics Mutator、Binson Echorec EC3とHawk HR-45スプリング・リヴァーブのセッティングが '鉄板' でした。そういえばこのEMS Synthi AKSはReverb.comで売りに出されておりましたけど、余裕で200万超えながら売れちゃいましたね(汗)。






こちらは超大好きなセンス抜群Aldoさんのセットアップ。わたしも刺激されてElektron DigitaktとSingular Sound Aeros Loop Studio、Bastl Instruments Thyme中心によるセットアップを組んじゃいましたからね(笑)。このまったりとしたエレクトロニカ感を軸にして短い時間の中でちゃんと展開もあり、そのAeros Loop StudioとDigitektの組み合わせを 'マルチトラック' の中心として細かなシーケンスを積み上げ '作曲' していく。いかにも 'Youtube時代' らしいバンドとは違う発想からのアプローチだと思いまする。この何処となく '年末感' を漂わせる寂静な感じも日本人の美意識を刺激するんですよねえ(笑)。







そして、まだ 'ZeroHalliburton' として買収される前の1950年代に 'Halliburton' 時代として俗に '赤ハリ' と呼ばれるアタッシュケースに詰め込んだわたしのセットアップの満載感。JMT Synthのデュアル・フェイザーPHW-16に加えてRainger Fx Snare TrapとSoma Laboratoryの 'ヴォイスシンセ' The Pipe、トリガーとして内蔵パーカッションを鳴らすMaestro Rhythm 'n Sound for Guitar G-1にHologram ElectronicsのMicrocosmなどを組み込んでみました。'ヴォイスシンセ' のThe Pipeを取り外せばちゃんとケースの蓋は閉まりますヨ(笑)。






 



そんなわたしの '宅録' ともいうべきサウンド・システムの中枢を司るのはスウェーデンの頭脳、Elektron Digitakt DDS-8。今やAkai Professional MPCシリーズやRoland SP-404 Mk.Ⅱといったお手軽にビートメイク出来る多機能なライバル機がありますけど、やはりこのElektronの佇まいと質感が好きだなあ。本機は同社の '迷宮的存在' なOctatrackの操作を覚えるのに一苦労・・という声がスウェーデンのElektron技術陣に届いたかどーかは分かりませんが(笑)、シンプルなワンショットのループ・サンプラーと8ヴォイスのPCMドラムマシンをひとつにまとめたものとして、現在 '宅録野郎' たちを中心に人気を集めております。このサイズでサンプラーとドラムマシン、シーケンスが一括して打ち込めるという分かりやすさはイイですね。プリセットで81個、最大127個のサンプルをRAMで生成し、現時点のヴァージョンアップではサンプルのスライスやタイムストレッチは出来ず、あくまでエンヴェロープでサンプルのスタートとエンド、ループポイントとチューニング、その再生方向(逆再生など)を弄りながらElektronご自慢の 'パラメータロック' というトリガー機能で鳴らす(だからワンショット)だけのもの。それらがリアルタイムで動かせる為に、突発的なグラニュラー効果から 'ウェイヴテーブルシンセ' のオシレータなども内蔵しているので面白いことが出来ます(現状モノラルのみなので 'Ver. Up' でステレオ化してくれ〜)。

●オーディオトラック×8
●MIDIトラック×8
●各オーディオトラックに独立したマルチモード・フィルター&ディストーション搭載。
●各トラックに独立した1つのLFOを割り当て可能(オーディオトラックのみVer.Upで2つに拡大)。
●センド・エフェクツ(ディレイ、リヴァーブ)
●サンプリング機能(64MB + Driveストレージ1GB)
● - USB経由による 'Overbridge' 対応 -
:Digitakt本体にUSB経由でオーディオデータ読み込み可能。
:専用プラグインで本体を制御(VST、AU対応)。
:2 In/Outのオーディオドライバー機能(CoreAudio、ASIO、WDM対応)。
:DAWトラックへのDigitakt本体のトラックを読み込み可能(24Bit/48Khz)。
:DAWのプロジェクト情報にDigitakt本体の設定を保存可能。
:USBによるMIDI信号の送受信が可能。
:Digitakt本体のシーケンサーとDAWを保存可能。






ついに 'DAW' が足下にやってきた!と大騒ぎするワケではありませんが、いやあ、もうこういう時代到来なんですねとシミジミ・・。2019年にHeadrushというメーカーからLooperboardという巨大なペダルボード・サイズのループ・サンプラーが発売されてましたけど、このSingular Sound Aerosのコンパクト・サイズで簡便かつ '緻密なスタジオ' を所有出来るというのが嬉しいのです。本機は同社が発売していたプログラマブルなドラムマシン、Beatbuddyと同期して拡張した音作りを可能とさせるもので、6つのトラック単位で録音、再生出来るループ・サンプラー。モノラル入力で最大3時間、ステレオ入力で最大1.5時間、SDカード使用時は最大48時間の大容量録音を可能とします。1つのソング・トラックに最大36個のループトラック、また各ループトラックへの無制限オーバーダビング、これらを大きな4.3インチのタッチスクリーンで波形を見ながら大きなホイールをスクロールしながらエディット、4つのフットスイッチで作成したソングをセーブ、エクスポートすることでリアルタイムに作業、演奏に反映させることが可能。もちろんWi-Fi/BluetoothやMIDIと連携して外部ネットワークからのファームウェア・アップデート、保存などにも対応します。さて、そんな便利な 'フット・レコーダー' とも言うべきループ・サンプラー。実際のライヴ演奏では生のバンドのグルーヴに機械のループを同期させることに大変な労力を伴いますが、俗に 'YouTuber' なる動画を主なパフォーマンスの場とする 'ひとり演奏会' のお供としては、なくてはならない便利な機器だと言えますね。ここでちょっとサンプラーの特徴を上げておけば、主な機能は大体以下の5つになるだろうと思います。

①タイム・ストレッチ
②ループ/リヴァース
③キー・マッピング/ピッチ
④フィルタリング/エンヴェロープ
⑤ワンショット

①は、いわゆる 'ベッドルーム・テクノ' 黎明期においてサンプラーを触ったことのある方ならその苦労が分かるのではないでしょうか?昔は取り込んだサンプルのピッチとテンポを同時に調整するのが難しかった・・。ピッチを上げればテンポも早くなり、テンポを下げればピッチが下がる。そんな時代に登場したドラムンベースって実はこういう苦労を乗り越えた上で体現したジャンルであり、Steinberg ReCycleという編集ソフトで細かくスライスして思いっきりテンポを上げながらピッチシフトしてやると・・あの緻密な高速ブレイクビーツが出来上がるという '逆転の発想' から産み落とされました。それも今では、自在にオーディオをタイム・ストレッチしていろんなサンプルをPC内でくっ付けられるのだから良い時代になったもんです。ちなみに 'ワンショット・サンプラー' が基本なElektron Digitaktの 'Ver. Up' で早く導入して頂きたい機能のひとつがコレ。

②はサンプラーの基本、2小節なり4小節のサンプルをループ(反復)させたり、いわゆる逆再生させたりってヤツ。まあ、これも初期のサンプラーはとにかくメモリーがバカ高かったことから、少ないサンプルとループをベースにしたブレイクビーツ的手法として結実したんですけどね。

③は、そもそもサンプラーは取り込んだサンプルを楽器のように演奏できる、ってのが初期の '売り' だったのもあり(メロトロンのデジタル版ということ)、同時期に登場したMIDIでキーボードへ 'マルチ・サンプリング' して音程を付けて割り振ってくれます。

④は、実はサンプラーが現在でも生き残る理由のひとつであり、逆に言えばサンプラーを誤解させる要因のひとつとも言えるシンセサイズの機能のこと。そう、サンプラーの 'エディット' はほぼシンセサイザーのVCF、VCA、LFOと同義であり、外部から取り込むサンプルをVCO(オシレータ)の代わりにすることでいろんな音作りに対応します。いわゆるPCMシンセサイザーというのもコレ。

⑤はいわゆる 'ポン出し' というヤツで、今なら舞台音楽のSEなどでシーンに合わせてジャン!と鳴らすのが一般的でしょうか。ヒップ・ホップの連中に人気のあるBoss SP-303などが有名ですけど、ここで紹介するループ・サンプラーというのも基本的にはこの範疇に入ります。





 






そして、現在も50ページ近い取説片手に格闘中のチェコ共和国からやって来た 'Robot Operated Digital Tape Machine' ことThymeは、電気ラッパからBuchlaシンセサイザーの音作りのスパイスに至るまで現在広く活用中。とりあえず、本機の真ん中に整然と並ぶDelayセクション3つのツマミCoarse、Fine、Spacingをテープの 'バリピッチ' の如く操作してループ・サンプラーからTape SpeedとFeedback、Filterで変調させながらフレイズが破壊・・これで電気ラッパはもちろん、古臭いアナログが魅力のBuchlaも若返りますヨ。そしてもうひとつのRobotセクションではFM変調の如く金属質なトーンへと変調し、それを真下にズラッと並ぶ6つの波形とエンヴェロープ、外部CVやMIDIからの操作と同期・・もちろんこれらのサウンドを8つのプリセットとして保存と、ここでは説明しきれないほどの機能満載。ElektronやBastlの 'デジタル・ガジェット' でお馴染みCuckooの動画解説だって36分もあるのです、まったく(汗)。とにかく本機はやることいっぱいあって(苦笑)、各ボタンやツマミに複数パラメータが割り当てられることからその '同時押し'、'長押し' といったマルチに付きものの大嫌いな操作満載で大変・・なのだけど、大事なのは機能を覚えることじゃなくコレで何をやるのか?ってこと。足元にズラッと機材並べてあれこれ繋ぎ変えては足りない機能があれば不要な機材を放出、それを元手にネット漁ってポチッ、翌日には真新しいガジェットがその狭い部屋のスペースを占拠するという日常をこの一台で終止符・・を打てるのか!?。






Hologram Electronics

いわゆる 'ベッドルーム・テクノ' の時代に席巻したサンプラーから20年後、Dream Sequence、Infinite Jets Resynthesizerで 'グリッチ' とループ・サンプラーの分野に新たな価値観を提示するHologram Electronicsから 'グラニュラー・シンセシス' の奇跡とも言うべきMicrocosmもこの手のアプローチに必須ですね。発想的にはElektronのOctatrackやDigitaktなどを簡易的にペダルに落とし込んだ印象がありますが、まさに無尽に湧き出すように生成されるシーケンスの数々・・Aldoさんのセットアップにも常に鎮座しております。基本的な構成はステレオによる最大60秒の 'ループ・サンプラー' を軸に 'Preset Selector' を回して11種×4プリセットの44種からなる音作りを約束します。

【Micro Loop】フレイズの一部分を繰り返すモード
-Mosaic- 様々な速度で繰り返す
-Seq- リズムを再配置して繰り返す
-Glide- 繰り返すごとにピッチが変わる
【Granules】音の断片からドローンを生み出すモード
-Haze- ごく短い音の断片が次々入れ替わる
-Tunnel- 音の断片を周期的に繰り返す
-Strum- 最終入力音を繰り返す
【Glitch】入力音をリアルタイムに再配置するモード
-Blocks- 入力音を一定のパターンで再配置する
-Interrupt- エフェクト音が入力音に割り込む
-Arp- 入力音を分散和音のように散らす
【Multidelay】複雑な鳴らし方が出来るディレイ・モード
-Pattern- 4つの異なるリズムを持つディレイ
-Warp- フィルターとピッチ・シフトがかかるディレイ







去年新たに導入したSoma Laboratory The Pipe。いわゆる 'ヴォイスシンセ' というか、足下に置くループ・サンプラーの 'お供' として管楽器の 'シンセサイズ' に新たなスパイスを提供します。基本的にわたしのメインの足下はオクターバーとワウ、ループ・サンプラーにディレイと管楽器の 'アンプリファイ' では定番のセッティングなんですけど、この一見EWIのような 'ウィンドシンセ' 風コントローラーに見えるThe Pipeを加えることでリズミックなプレイが可能。本機は専用のコンタクトマイクによりブレスやヴォイスでトリガー、様々な効果を偶発的にコントロール出来るロシア製の音源モジュールとなります。そのコンタクトマイクは中高域のトーンを拾う 'Standard' とナチュラルな出音の 'Flat'、より低域を強調する 'Bassy' の3種が各々用意されており、それを軸にした内蔵の 'シンセサイズ' の為の12種からなるアルゴリズムの内訳は以下の通り。

●Orpheus
The Pipeの為に最初に作られたアルゴリズムです。声によって反応する2つのヴァーチャル・レゾネータによって構成されています。声の高さを変えることでレゾネータをコントロールし、様々な周波数で共振させることが出来ます。

●Filterra
ダイナミック・レゾネータとリヴァーブのコンビネーションです。美しいリード・サウンドやパーカッシヴなサウンド、ノイズまで演奏することが出来ます。Freezeセンサーを使用してリヴァーブのサウンドをフリーズし、合唱団のようなバックトラックを作成出来ます。

●Synth
シンセサイザーのようなリードサウンドを演奏します。カットオフ・フリケンシーを調整可能なダイナミック・ローパス・フィルターを備え、リヴァーブ/ディレイ、オクターバーと一緒に使用出来ます。

●Reverb
リヴァーブと調整可能なディストーション、ディレイのコンビネーションです。FXセンサーでディストーションをオンにし、サウンドに柔らかいドライブを加えるサチュレータとして使用出来ます。DLY DBツマミを回すとディストーションにディレイが追加され、最大値近くまで回すと自己発振します。

●Madelay
あるポイントから別のポイントへとリードポイントがリズミカルにジャンプするユニークなディレイです。ジャンプのスピードはTempoツマミでコントロールしてトラックや他のビートに同期出来ます。テンポは次のアルゴリズムと同期しているので、演奏中に次のアルゴリズムと切り替えでクリエイティヴな演奏が出来ます。Freezeセンサーはディレイのごく一部をフリーズさせ、シンセティックな効果を生み出します。

●Pulse
入力した声をリズミカルにアルペジエートされたシンセサイザーの様なサウンドに変えます。Decayツマミでパルスの長さを調整し、より明確なサウンドにすることが出来ます。このアルゴリズムにはリンギング・リヴァーブが含まれており、入力した声にメタリックなトーンを加えます。

●Bass Drum
ヴォイス・コントロールによるRoland TR-909風のバスドラムです。入力音に対し敏感に反応し、様々なヴァリエーションやアクセントを付けた演奏が可能で、ドラムマシンでプログラムするのが難しい複雑なリズムを直感的に作成出来ます。このアルゴリズムはスネアドラムの演奏も可能です。高域の量がしきい値を超えると、バスドラムのサウンドの代わりにマイクからの処理済みのサウンドが再生されるので、このサウンドをスネアドラムとして演奏できます。

●Switchable Bass Drum
Bass Drumアルゴリズムのヴァリエーションで、入力音の周波数ではなくFXセンサーでサウンドを切り替えます。通常時はマイクからのサウンドを出力し、FXセンサーをタッチしている間、バスドラムを演奏することが出来ます。

●Bass Drum + Snare
Bass Drumアルゴリズムにスネアドラムを追加したアルゴリズムです。FXセンサーを押さないとスネアドラムが鳴り、FXセンサーを押すとバスドラムに切り替わります。

●Oktava
オクターヴ・ピッチシフター、フィルター、ディレイのコンビネーションです。ディープなベース・パッドやシュールなリード・サウンド、唸り声や珍しい発声方法を使って、野獣の咆哮や不思議な生命体の歌を演奏することが出来ます。

●Generator
The Pipeの中でも最もユニークなアルゴリズムで、声でコントロールされたサウンド・ジェネレータ、フィルター、リング・モジュレーター、動的フィードバックを搭載したディレイで構成されています。長く大きなサウンドを入力するとディレイのフィードバック・レベルが100%を超え、入力レベルが下がるまでサウンドの一部が自己発振しフリーズします。FXセンサーに触れると、この自己発振を止めることが出来ます。

●Harcho
Harchoは、米、クルミ、トマリのサワーソースが入って、ジョージア(グルジア)王朝風の濃厚で美味しいビーフスープです。このアルゴリズムは3種類のデジタル・ディストーション、ディレイ/リヴァーブ、ローパス・フィルターを組みわせたThe Pipeの中でも最も極端なアルゴリズムです。グルジア語の 'Harcho' の語感は英語の 'Harsh' (耳障り、刺々しい、荒い)に似ており、エクストリームなノイズや強烈な電子音が必要な場合は、このアルゴリズムを選択すれば間違いありません。天使と悪魔の聖歌隊、エイリアン・カモメの叫び声、黄泉の国から響く声、そのほか身の毛もよだつようなサウンドはこのアルゴリズムで実現出来ます。

このThe Pipeを前にして、やはりテクノロジーはまだまだアナログの時代に発想されていたものを容易に '再現' することに汲々としているのだなあ、としみじみ思います。さて、今回このThe Pipeを導入するにあたり、新たにOld Blood Noise Endeavorsの3チャンネル・ミキサーSignal Blenderを搭載しました。まず 'エレハモ' のFoot Controllerの台へセットするようにThe Pipeをマウントする為のスタンドを自作、そして付属の電源供給ブレイクスルーボックスを介してこのSignal BlenderのReturnから入力、ミックスするのです。このSignal Blenderは 'Dry' を個別に調整出来ることからその音量を各々設定して、これまで繋いでいたNeotenicSound Purrepadの 'お仕事' が賄えるようになりました。というか、このピックアップに向けてラッパ吹いたり、口を付けてヒューマン・ビートボックス風に "ブンッ、チッ、パッ" とか言うのはちと間抜けな印象がありますけど(苦笑)、しかし、この未知数な本機の可能性について色々と探求してみたいと思います。








しかし、サンプラーと言えば1990年代後半の 'ベッドルーム・テクノ' 黎明期はその世紀末の空気と相まって本当に面白い時代でしたね。すでにバブルが弾けたとはいえ、まだまだその '貯金' で凌いでいた日本はMacや 'Windows '95' の登場と共に四畳半から世界の市場へと打って出るクリエイターが続出しました。アシッド・ジャズ、トリップ・ホップ、ジャングル/ドラムンベース、イルビエント、IDM/エレクトロニカに '4つ打ち' のハウスやテクノなど、今ではかなり懐かしい響きに聞こえるけど(笑)、いわゆる 'メジャー' とは真逆なところからリスナーとクリエイターの境界が消失したことの '一撃' が凄かった。そしてこれらのアプローチの根底には常にダブからの影響が色濃く漂っておりました。単純なフレーズ・サンプリング、もしくは未熟な 'タイム・ストレッチ' の機能を駆使しながら細かくドラムをバラしてMIDIシーケンスする程度のループ・ミュージックが基本で、手法的には大量にメモリーを消費するオーディオデータを扱う 'ProTools前夜' の時代。しかし、その '初期衝動' って音楽が真にクリエイティヴであった最後の時代であったと思うのです。今はそれがGaragebandやケータイのアプリで、よりお手軽に誰でもパズルのように作れるってだけであって、やはりあの頃の興奮をリアルタイムに体験出来たのは貴重な財産だと思っております。もう、トランペットの練習そっちのけでサンプラー弄ることが楽しかったもんなあ(今も大して変わらんけど)。








さて、車窓から眺める米国南部の長閑な田園風景や、色褪せたセピア色の写真を見ながら遠い過去に想いを馳せるなど、どこかノスタルジックな演出にかかせないのがユラユラとしたトレモロの音色。しかし一方で、まるでゲートでスパッと切り刻んでいくような 'マシンガン・トレモロ' からVCAにLFOをかけて 'シンセライク' に変調させるトレモロまで、実は結構、'古くて新しい' エフェクターではないかと思っております。ちなみによく似た効果であるトレモロとヴィブラートの定義は、音量の増減がトレモロ、音程の上下がヴィブラートであると考えるのですが、これは製品によって混同されている場合があるので注意が必要です。あ、そうそうトランペットでは右手で楽器を揺する、顎をアウアウさせる、リップトリルなど駆使する 'シェイク' というワザが同種の効果となりまする。ここでは 'エグい' 効果のトレモロを中心にご紹介したいのですけど、その出発点としてギターの入力ジャックに直接取り付けるVox Repeat Percussionという製品がありました。その名の如く、リズミックにフレイズを切り刻むことを目的として 'マシンガン・トレモロ' の異名も付けられた本機の魅力は、英国のFret-WareからそのVoxを元にMachine Gun Repeatを発売したことにも伺えます。通常の 'フット・ボックス' 型となったこの本機のユニークさは、フット・スイッチがモメンタリー仕様となっており、踏んだ状態でのみエフェクトがかかるリアルタイム性に寄っていること。上の動画はかなり '飛び道具' 的セッティングではありますけど、その切れ味のほどが分かると思います。そして英国の工房、Life is Unfairから登場するPale Spectreもそんな 'マシンガン・トレモロ' にインスパイアされたもの。本機にはトグルスイッチによる3種のモードが搭載されており、その内の2つはRepeat Percussionに似たレトロ感たっぷりのパルス的トレモロといわゆるClean Boostなのですが、わたしのお目当は3つ目の 'Heterodyne Modulator' と題した一風変わったリング・モジュレーション!。これも一般的に想像されるFrequencyをギュイ〜ンと変調するものとは違い、LFOに当たるツマミを回し切ることでジリジリとした 'リンギングトーン' へと変貌するのです。そして、トレモロと言えばアンプ内蔵のスプリング・リヴァーブと組み合わせてエフェクター黎明期を象徴する音作りの元祖と言えるものですが、それをDSPによる 'アナログ・モデリング' で再現したのがStrymon Flint。この名称から思い出すのは1960年代を賑わせたスパイ映画であり、特にジェームズ・ボンドが活躍する '007シリーズ' のテーマ曲はこの手の作品の雛形を提示しました。そこで弾いていたのは当時英国のセッション・ギタリストとして数々の作品に参加したヴィック・フリックでしたが、明らかにそれを模倣したハリウッド映画のひとつがジェームズ・コバーン主演の 'Our Man Flint' ですね。






一方、このチープな国産品もなかなかに侮れない存在です(笑)。まだまだ海外の下請け的存在であった日本の数多ある会社のひとつ、'Uecks' こと植木楽器。今では環境破壊の '悪者' としてSDGsの削減対象であるプラスティックも1970年代には、それまでの金属製品に変わる未来の素材として嘱望された存在でした。軽くて加工がしやすく大量生産に向いたこのプラスティックを筐体に利用するペダル群は、海外へは 'Kay' のブランド名によるOEM生産で安価なブリスターパックとして楽器店のワゴンセールの為に山積みされたのです。そのほとんどはギター入門のビギナー向けとして消費されましたが、ここではFuzz Tone、Tremolo、Wah Wahというエフェクターの定番3種をラインナップ。エフェクトの 'On/Off' がスライドスイッチという恐ろしくチープな仕様ながら、その作りに反してTremoloは明らかにVoxのRepeat Percussionに範を取ったような揺れ具合でちゃんと使えますヨ。Wah Wahも狭いペダルの可変域で音痩せはあるものの、定番のワウ効果からレスリー風 'ちりめんヴィブラート' に至るまでカバーし、Fuzz Toneはなんと後にU2のギタリスト、The Edgeが愛用したことで近年ミョーな再評価を受けているとのこと(ホンマか!?)。そんな人気を裏付けるようにこのFuzz Toneは、ヴィンテージのチープな作りを払拭したようなクローンがReverb.comで販売されておりまする。ちなみにこの 'Uecks' のエフェクターには、これらチープなペダル3種とは別にMini Fazerという金属筐体のものもラインナップ。これも 'Uecks' のほか 'Univox' や 'Fernandes' のブランド名が付いたOEM品を見つけることが出来ますけど、その製作はあの新映電気が請け負っていたというから '国産OEMの謎' は深い。ちなみにUecksのペダル3種に対する説明を当時のカタログから以下抜粋します。

●Uecks Tremolo Pedal
今迄にない全く新しい演奏効果ペダルマシーンです。トレモロ効果とは決められたセットでの一定周期の自動音量調節装置回路に依る効果ですが、この製品ではペダルの動作に依り、音量調節周期3Hzから10Hzまで連続変化させることができます。早い変化に依るマンドリン効果からゆっくりとしたトレモロ効果までを演奏目的に合わせて、コントロールすることに依り、変化にとんだ演奏の世界を創ります。

●Uecks Wah Wah Pedal
従来のワウペダルがペダル動作をボリュームで電気回路に伝えていた方法を改め、ペダルバネに取付けられた感度コントロール部品をコイルに遠近動作させることに依り音色変化させる方法です。この機構に依り、従来のメカニカルなトラブルやボリュームの破損に依るトラブルはなくなりました。

●Uecks Fuzz Tone Pedal
従来のファズマシーンに加えて、ファズトーンの変化をペダル操作に依り、プレーヤーが自由に変えることができます。このサウンドとフィーリングは従来のファズマシーンやファズワウペダルとも違う新しい演奏効果を生み出します。

Vox Model V251 Guitar Organ ①
Vox Model V251 Guitar Organ ②

そんなVox Repeat Percussionに惚れ込んでしまった設計者アンダース・ロイスが手がけた本機は、新興メーカーのReuss Musical Instruments(ロイス・ミュージカル・インストゥルメント)による古くさいファズとの '2 in 1' なRF-02 Repeater Fuzz。何でもVoxが製作したエフェクター内蔵のギター、Vox Starstream V269の機能をそのまま 'フット・ボックス' として抜き出したものだそうで、いかにも60'sロックの匂いを撒き散らすファズはTone Benderの回路を研究して組み込んだものとのこと。ちなみにそのVox Starstream V269というのもビザールなVoxらしい迷機で、内蔵するTreble Bass Boost、Distortion(Fuzz)、Repeat Percussionのほか、ピックアップ側にある手のひらで弦をワーミングするような器具でワウをかける 'Palm Wah' の人力具合が凄い(笑)。このようなエレキ黎明期のアイデア商品っぽいセンスがたまらなく良いですねえ。ちなみに、Repeater FuzzはMk.3が現行品で新たに 'Send / Return' を内蔵して攻撃的な音作りが可能です(残念ながらReuss製品の日本取り扱いは終了してしまいました)。 ちなみにVoxといえば専用ピックアップでトリガーする 'シンセサイズ' のルーツ的存在、V251 Guitar Organがありました。しかし、当時のデモンストレーション番組に顕著なように、結局は今弾いているのがオルガンなのか?ギターなのか?の '音当てゲーム' 的ブラインドフィールド・テストの域を出なかったところにその立ち位置が分かります(苦笑)。こーいうのはサンプラー登場時に猫の鳴き声で鍵盤弾けます、みたいな頃まで伝統的に引きづっていて(笑)、分かりやすいんだけど一方では使い方の範疇、発想を阻害する要因になってしまいましたね。

このVox以前のトレモロとしては、基本的にスプリング・リヴァーブと併用してアンプに内蔵されるエフェクトという位置付けでした。その中でもユニークな一品として存在したのが、ヴォリューム・ペダルの製作で有名なDeArmondのTrem-Trol。なんとペダル内部に組み込まれた電解液で満たした筒を、発動機により一定間隔で揺らして筒の壁に触れる面積の変化から音量を上下させるという・・なんとも原始的で、手の込んだ構造のトレモロですね。その下の動画は前身機にあたるModel 601の内部構造でこんな感じに揺らしております。今じゃその製作コストがかかり過ぎて大変だろうけど、エフェクター黎明期にはいろんな発想から電気的操作として取り出すという面白い時代でした。この丸くて暖かいレトロな雰囲気こそトレモロの真骨頂・・'ツイン・ピークス' のテーマとか弾きたくなりませんか?。また、このような機械的ギミックとしては磁気テープ・エコー、磁気ディスク・エコーに続いてやってきたTel-Ray 'オイル缶エコー' の世界。オイルで満たされた 'Adineko' と呼ばれる缶を電気的に回転させることでエコーの効果を生成するものなのですが、このオイルが今では有害指定されていることで物理的に再現することが不可能。このオイルの雫のイメージそのままドロッとした揺れ方というか、懐かしくも 'オルガンライク' に沈み込む '質感' というか・・トレモロと一緒に使うとたまりませんね。そして、いわゆる 'フット・ボックス' 以前のトレモロはアンプ内蔵というのが一般的でしたが、その中でも代表的なものがSuproのギターアンプ内蔵トレモロ。このSupro 1310 Tremoloは、そんな古くさい 'トレモロ感' をわざわざトランスによるサチュレーションを駆使し、真空管のバイアス可変による伝統的なSuproトレモロを再現する 'Amplitude' と、Fenderのギターアンプ内蔵のトレモロを再現した 'Harmonic' の2つのモードを搭載しております。また '揺れ' のスピードはエクスプレッション・ペダルにも対応します。

このような物理現象を機械的に取り出したものとしては、エフェクター界の奇才、ザッカリー・ヴェックスがなんとロウソクの炎のゆらぎからトレモロとヴィブラートの効果を取り出すZ.Vex Effects Candela Vibrophoneとして製作します。扇風機のような風車はヴィブラート効果のもの(扇風機にア〜と声を出すと変調するヤツ、昔やりませんでした?)で、これはレスリー・スピーカーを簡易的に再現するFender Vibratoneというギターアンプで製品化されましたね。ちなみに、この 'からくり時計' のようなプロトタイプは過去に製品としても販売しており、そのお値段6000ドル也。さて、そのトレモロ/ヴィブラートというヤツは、ファズ同様にヴィンテージな設計思想がそのまま独特な効果として認知されており、現代のテクノロジーが手を出しにくいエフェクターのひとつでもあります。ジミ・ヘンドリクスが使用したことで一躍有名となった日本が世界に誇る名機、Shin-ei Uni-Vibeのドクドクとした '揺れ' の効果を司るのは、その '心臓部' ともいえるフォトカプラー(CDS)という電球のような素子のおかげ。しかし、硫化カドミウムによる現在の環境規制で製品に組み込んで製作することができず、各社が電子的なシミュレートにより何とか再現しようとしているのが現状です。このAnalog Outfitters The Scannerは、壊れたハモンド・オルガンからヴィブラート&リヴァーブ・タンクの部分を取り外し、新たにエフェクト・ユニットとして 'リビルド' したもの。やはり電子的シミュレートな回路構成では味わえない、この物理的に変調させる '古くさい' 感じはたまりません。また、このトレモロはスプリング・リヴァーブと組み合わせることでさらにそのレトロな '揺れ感' は強調されます。そしてトレモロとヴィブラートの '混合' を現代風に仕上げてきたものとして、米国ニューハンプシャー州で製作するMid-Fi ElectronicsのElectric Yggdrasil(エレクトリック・ユグドラシル)。設計は 'MMOSS' というバンドのギタリストであったDoug Tuttle氏で、いわゆる '現場の発想' から一筋縄ではいかない '飛び道具' ペダルばかりをひとり製作しております。Mid-Fi Electronicsといえば、'変態ヴィブラート' ともいうべきPitch PirateやClari (Not)のぶっ飛んだ効果で一躍このブランドを有名にしましたが、本機は位相回路による 'フェイズ・キャンセル' の原理を応用し、Uni-Vibe風のフェイズの効いたトレモロでサイケデリックな匂いを撒き散らします。






NeotenicSound Turbine (Pocket Series)

トレモロといえばヴィブラートと近しい関係からも分かるように、いわゆるレスリー・スピーカーにおける 'Fast / Slow' のスピード・コントロールで操作するイメージがあります。これをスイッチ一発で自在に速度調整できたらどれほどいいか・・っていうのを実現させたのが、大阪のえふぇくたぁ工房、Effectronics Engineeringとそのブランド、Neotenic SoundによるトレモロTurbine-Ⅱ。2つのプリセット・コントロールによるSpeedをそれぞれ好きに設定、スイッチを踏む度にいい按配で 'Fast / Slow' が入れ替わります。また、歪んでこそトレモロ!という主張と共にLevelツマミを上げていけばブースター的に滲ませることが可能なこと、そしてトレモロの後ろにコーラスがけの 'Dimension' 効果な裏ワザを設計者のいっぺいさんが動画で力説します。しかし、ここ近年のアナログ部品の生産終了と高騰でパーツ供給が不可能となり惜しくもTurbine-Ⅱは廃盤。手のひらサイズの 'Pocket Series' として製作した超小型のTurbineも無くなった今、再度その '揺れ' をひとつに絞ったTurbine-Ⅰとして復活しておりまする。

Stomp Audio Labs Waves ②
Stomp Audio Labs - Boutique Guitar Pedals

欧米が中心のエフェクター業界でちょいちょいその存在感を出しているのが中南米の工房。ドミニカのCopilot Fx、アルゼンチンのDedaloやSonomatic、ウルグアイのManeco LabsにブラジルからはBossのパクリなどと言われたMicrotonix ElectronicaによるブランドOnerrやMG Musicといった工房が頑張っております。このStomp Audio Labsもそのブラジルから登場した新興の工房なのですが、日本に代理店がないにも関わらずなぜか中古市場でよく見かけるのがこのトレモロ・ペダルのWaves。11種の切り替えからなる多彩な '揺れ' はもちろん、'?マーク' のプリセットでエレクトロニカ的効果によるLightfoot Labs Goat Keeperのような '変態ワザ' にも対応、面白いのは気に入ったテンポをHold、もしくはBypassスイッチをがモメンタリーにしてリアルタイムに操作出来ることなど多機能に溢れております。







 





Z.Vex Effects Super Seek Trem
Anasounds Spinner - Expression Pedal ②

さて、時代はグッと駆け上がり、いわゆるLFOやVCAなど 'シンセサイズ' の発想により音量をコントロールする新しいトレモロを見ていきます。こちらのザッカリー・ヴェックスによるZ.Vex Effectsから、16ステップのシーケンサーを組み込んだ '変態トレモロ' のSuper Seek Trem。16のステップによるシーケンスから好きなステップを選択し、さらにその速度やタップテンポ、Glissと名付けられたツマミでランダムに設定することで予測不能な効果を生成。またMIDIで外部機器との同期をするなど、シンセで用いるアナログ・シーケンサーの発想ですね。一方のSonarは、このサイズにしてこれまた多様な揺れ方を設定できるもので、Clean/Machineのスイッチでクリアーなトレモロと極悪に歪んだトレモロ、Dutyツマミはタップテンポのスイッチと連動し、1、2、4のテンポ設定と合わせて等速、倍速、4倍速と変わり、Deltaツマミは上部のスイッチと合わせてスピードの可変を・・ふぅ、複雑過ぎるので各々動画を確認して頂きたい。しかし、Z.Vex Effectsほど、トレモロだけでこんなに面白いヤツ(その他TremoramaやTremolo Probeなどもあり)をラインナップしている会社はないですヨ。そして、オレゴンの片田舎から羊のイラストと共に突然その姿を現し、不定期な数量限定でGK.1〜GK.3までのシリーズを残して忽然と消えて行ってしまったLightfoot Labs Goat Keeper、多分、トレモロと名の付いたものとしては最も効果の拡張性と '飛び道具' の度合いが強いものでしょう。トレモロの波形やテンポはもちろんシーケンス的効果も出来るのですが、これがかなりエレクトロニカ風 '壊れた' 揺れまでカバーしており・・もう、何が何やら。また、Sync Inの端子を用いれば外部のドラム・マシーンとの同期もOKなのですが、一方、本機の6つからなる(後の6つはユーザー・プリセット)シーケンス・モードをLFOで出力し、CVで外部機器をコントロールすることが可能。まさに 'グリッチ/スタッター' 系エフェクターのジャンルに入れてもおかしくないですね。そんな '伝説' が過去の名機を発掘して送り出すMalekko Heavy Industryによりリファインされて再登場。さて、このGoatkeeperもそうなのですが、10年ほど前からトレモロに新たな解釈を見出す風潮が現れました。いわゆる 'グリッチ/スタッター' や 'グラニュラー・シンセシス' といったエレクトロニカに顕著の不規則な 'バグ効果' であり、それをBoss SL-20 Slicerを皮切りに登場するデジタルものではなく、疑似的なトレモロを軸に攻撃的かつリアルタイムな操作で表現する製品です。このPerfect Square Electronicsなる工房のHyperslicerもそんな折衷的な時代の産物で、本体に備えるデジタル制御の4つのモードスイッチとタップテンポ、モメンタリースイッチによるトリガーで踏むと同時に '揺れ' が1回、2回、4回と設定出来ます。タップテンポを不規則に設定すれば・・おお、この中途半端な 'グリッチ感'!(笑)。結局、これ以降のデジタルによる本格的な 'グリッチ・ペダル' の隆盛でこの手の製品は市場から消えていってしまいましたが、過去から連綿と続く 'エフェクター史' の中では '時代の徒花' を刻銘する珍品のひとつですね。そして、このようなトレモロのスピード・コントロールは、エクスプレッション・ペダルの新たなアプローチとしてフランスのAnasoundsからもたらされます。同社のトレモロSliver、Agesのレイト・コントロールに特化したものとのことで、そのSpinnerの羽の回転スピードに合わせて上げる、下げる、センサーがSpinnerを感知したタイミングでのみ信号をカットするキルスイッチの3種モードで使うことが出来ます。他社製品の外部コントロールで流用出来んかな?。しかしフランスってこのAnasoundsといいJacquesのエンヴェロープ・フィルターTrinityのポンプ式 '踏み踏み型コントロール' など、米国のペダルではまずアプローチしない奇妙なチャレンジ精神がありますね(笑)。




こちらはニュージーランドにある新興の工房、Lightning Waveから登場したデジタルとアナログの 'ハイブリッド' 全開による多目的トレモロGhost。最大252ステップのシーケンス、独特なリアルタイムで作動する 'フェーダー' を使用したビートの設定によりその波形を自由にプリセットすることが出来ます。その保存したプリセットは自動的なループ再生からフットスイッチをトリガーにしてワンショット再生、ステップ/ビートごとにトリガーして再生することが可能。タップテンポはフットスイッチからダイアル状のツマミ、さらに外部パルスやCVの同期、エクスプレッション・ペダルでのコントロールをDepthに至るまで調整することが出来ます。また、本体のトップ部、Input隣にはタッチセンサーが備えられており、触るだけで波形と 'フェーダー' 操作を反転させることが可能。そのタッチセンスは波形とかかりの深さが変わることでサウンドのバリエーションに反映します。





Dwarfcraft Devices Memento (discontinued)

このような折衷的な 'グリッチ感' によるトレモロ効果は、こんなアナログ操作満載のものにまで波及しました(笑)。Z.Vex EffectsによるLoop Gateはノイズ・ゲートでありながら、本機の 'キル・スイッチ' を用いた '力ワザ' として結果的にトレモロ効果となってしまったもの。'Send / Return' を備え、そこに歪み系などをインサートして何でもこのLoop Gateでブツ切りしてやろうという魂胆なのです。本機はNormalとChopの2つのモードを有し、Normalではインサートしたエフェクトに対して通常のゲートとして働き、その '切り加減' を入力感度のSens.と音のエンヴェロープに作用するReleaseで調整します。そしてトレモロ的 'ブツ切り' 感を演出するChop。この時のReleaseはゲートの開閉速度として、トレモロのSpeedツマミと同等の働きに変わります。このゲートによる 'ブツ切り' をもっとランダムに、例えば 'グリッチ/スタッター' 系エフェクターのように作用したら面白いんじゃないか?、じゃ、やってみようということで試してみたのが、今は無き工房のDwarfcraft Devices Memento。基本的にはミュートするための 'キル・スイッチ' を応用したもので、このカットするテンポを 'キル・パターン' としてKillスイッチにタップテンポで記憶させるだけ。後はRe-Killスイッチを踏めばその踏んだテンポの状態で 'ブツ切り' が再現されます。また、この再現中にKillスイッチを踏めばキル・パターンの速度を2倍、もしくは4倍にできます。









そして、こちらもリズミックなVCAの操作ということで、英国の鬼才David Raingerが手がけるこのMinor Concussionも地味に面白い。まるで "目覚めよ、フランケンシュタイン!" と叫びたくなるナイフ・スイッチを備えた 'シンセサイズ' のDr. Freakenstein Fuzzや様々な液体を封入して歪み量を変えるオーバードライブMinibarなど、そのぶっ飛んだ刺激的アイデアの源流とも言える本機は、いわゆる 'サイドチェイン' に特化したトレモロ/コンプレッサー。タップテンポやCVでランダマイズに揺らすトレモロのほか、付属のダイナミック・マイクを繋ぐことで外部から収音によるトリガーと共に揺れの '同期' をサポート(笑)。一体なぜ?という疑問は愚問です。こーいうアイデアを前にワクワクしながら、さあ、何かやってやろう!と思える人にのみ、本機は多くの可能性を開陳するのです。さて、一転してこちらはVCFの 'フィルタリング' がもたらすランダマイズした疑似的な 'グリッチ感' の元祖、Maestro Filter Sample/Hold FSH-1。1990年代後半にXotic Guitarsが本機のデッドコピーであるRobotalkにより発掘したこの不規則なトレモロ効果は、そのまま旧来のトレモロからフィルターへと至る概念を刷新しました。ちなみに当時、このFSH-1と並行して設計者のトム・オーバーハイムは自身のブランドからもVoltage Controlled Filter VCF-200として販売しております。そんなランダマイズなトレモロ再評価のきっかけを作ったフランク・ザッパの 'Ship Ahoy' は、まさにVCF-200全開でソロを弾く一曲として1976年の来日公演のステージから突発的に始まったのだ。これで当時、日本に入ってきていたMaestroの同製品が爆発的に売れまくった・・かどうなのかは知りません(笑)。










Spaceman Effects Mission Control on Reverb.com

VCAとエンヴェロープ・ジェネレータによるLFO的音作りを、CVによる 'モジュラーシンセ' の拡張性にまで広げたペダルの領域を '越境' したものたち。Spaceman EffectsのMission Controlは、オートフェーダー、エフェクトループ、Dry/Wetブレンダー、パラレル・スプリッター、2チャンネルミキサー、エンヴェロープ・ジェネレーター(EG)のCVコントロールにも対応するスイッチング・ユニット。本機の中核を成すのはVCAで7種のモード切り替えとエフェクトループ、そしてCV In/Outを併用することで多彩な効果を生成します。通常のIn→Out接続ではモメンタリーなActuateスイッチをトリガーにしてオートフェーダーになり、さらに本機のエフェクトループに他のペダルを繋ぐことで原音とエフェクト音(Dry/Wet)のミックス、全面に並ぶEGのコントロールAttackとReleaseは65msから33秒までの広い範囲で設定可能で、素早い立ち上がりから長い減衰までエンヴェロープをコントロールします。また付属のCV-TRS変換ケーブルでエクスプレッション・コントロールも可能です。一方、英国から新たに登場した何ともユーモラスなネーミングの工房、Life is Unfair。そのイメージを裏切らないように出してきたのが奇妙なトレモロという体裁を取った、CVを軸として 'モジュラー' と連携する音作りを目指すSynaptic Cleft。単純にトレモロとしての使い方であれば16種の波形の選択とタップテンポ、また3種のパラメータをアサインするエクスプレッション・ペダル繋いでリアルタイムにその '揺れ' を楽しめます。しかし、本領を発揮するのは8つからなる3.5mmのミニプラグ端子に電圧制御を与えて従来のトレモロを脱した新たな音作りを生成可能。まさに '樹木状に広がる神経細胞' のような様を現した 'Synaptic Cleft' の名に相応しくDepth、Multiplier、Waveform、Wave Distort、Synthesizer In/Out、Sync In、Clock Outを各々拡張させて自らのサウンドを見つけて下さいませ。





モジュレーションといえば英国から登場した新興の工房、Intensive Care Audioによるコーラス/ヴィブラート・ユニットの皮を被った '変態グリッチ' の変わり種、Fideleaterが面白い。'痩せ' と 'デブっちょ' のマークの付いた 'Untie' スイッチを 'デブっちょ' にすると一変、まるでテープを噛み砕いてブチブチと燃やしたようなグリッチ効果を8種のLFOと共に崩壊させます。そしてVena Cava Filterはオート・フィルターとリング・モジュレーション、ディストーショナルなトーンを生成する尖ったVCFの一種。こちらもFideleater同様に8種のLFO波形を選択する 'Wave Funcion' を軸にフリケンシーとリング変調で '飛び道具' へと変貌します。最近、新作のDeath Drive含め、中身はそのままに 'ブランドマーク' の付いたフットスイッチ・カバーと従来の '横型' 筐体から '縦型' 筐体のV.1へと各々仕様変更されました。








Diamond Guitar Pedals Memory Lane MLN-2 (discontinued)
Line 6 DL4 Delay Modeler

ここで取り上げるディレイとしては、NOSのBBDチップPanasonic MN3005を盛り込みタップテンポを備えたアナログ・ディレイDiamond Guitar Pedals Memory Lane 2の 'Feedback' に 'インサート' する使い方。いわゆる 'ヴォリューム・エコー' の効果で、ディレイの前にヴォリューム・ペダル、もしくは音のアタック、サスティンを操作するエンヴェロープ・モディファイアを繋ぐことで幻想的なエコーを生成するものです。'エレハモ' のリヴァーブCathedralの前段にMalekko A.D.を繋いで、アタックをコントロールする動画も面白いですね。VCAによりアタックとリリースをエンヴェロープでコントロールするエンヴェロープ・モディファイアは、その歴史を紐解けばMaestro ME-1、Electro-Harmonixの 'Tape Reverse Simulator' ことAttack Decay、Boss Slow Gear SG-1やGuyatone Slow Volume SV-2とSVm5、Morleyからは専用の三角ピックをタッチセンスにしてコントロールするACVなどがありました。近年ではPigtronixのPhilosopher King、MalekkoからA.DとSneak Attack.、Spaceman Effects Mission Controlに 'エレハモ' からリファインされたAttack Decayまで登場するなど地味に支持されている効果でもあります。本機はシンセサイザーでお馴染みのADSR(Attack、Decay、Sustain、Release)と呼ばれるエンヴェロープを操作するもので、それをワンショットのモノラル、ポリフォニックの2つのモードに3つまでセーブ/リコールのプリセット可能。また効果をより鮮明にすべくファズも内蔵し、いわゆる本機の効果で最も有効性のある 'ヴォリューム・エコー' に最適な 'センド・リターン' を搭載することで、ここにディレイやモジュレーションを繋いで積極的な音作りに活用出来ます。本機のツマミはエクスプレッション・ペダルのほか、CVにも対応することで 'モジュラーシンセ' と組み合わせた音作りは最近の風潮です。さて、わたしが所有するのはDODから僅か1年半弱しか生産されなかった珍品、FX15 Swell Pedal。Attack、ReleaseにCut/BoostのEQを備えながら、本機最大の特徴であるモメンタリースイッチでエンヴェロープをコントロールするのはかなり先取的。





この手の 'インサート付きディレイ' の端緒として人気となったBlackbox改めOoh La La QuicksilverとGuyatone SV-2の 'ヴォリューム・エコー' 技。とにかくその地味な機能ゆえあっという間に 'ディスコン' となってしまうエンヴェロープ・モディファイアの存在は悲しいですが、近年この効果の再評価を博したのは'アナログ・モデリング' なデジタル・ディレイで一世を風靡した名機、Line 6 DL4 Delay Modelerに搭載された 'Auto Volume Echo' のプログラムですね。





そんな 'オート・ヴォリューム' の効果を初めて単体の製品名として市場に開陳したのがこちら、Maestro Envelope Modifier ME-1。残念ながらその動画はありませんが、当時Maestro製品の設計を担当したトム・オーバーハイムの '詰め合わせ' 的マルチエフェクツUSS-1に 'Envelope' として内蔵されております。その他の内訳は 'Waveform' とされたFuzz Tone、Mini Phase MP-2、上でご紹介したFilter/Sample Hold FSH-1、'Sub Harmonic' とされたOctave Box OB-1を各々 '擬似シンセサイズ' と定義して(笑)音作りします。そんなUSS-1は超絶 'レアペダル' として普段は滅多にお目にかかれないモノなのですが、なんと現在Reverb.comに7台!も揃っているのでご予算に応じてお求め下さいませ(笑)。しかし、このコロナ禍で暮れの断捨離によりコレクションを手放している方がいるかと思うと・・寂しいっすね。ちなみに以前所有していたME-1の方は、通常のエンヴェロープを司る 'TRS Bow' と擬似的なトレモロになる 'Perc' の2種モードながら音作りの幅の狭さと設定の難しい '迷機' でした(汗)。












さて、このような外部ペダル使用の 'インサート' を備えたディレイでは、Moogerfooger MF-104 Analog Delay、Carl Martin Echotone、ここ最近の現行品としてはSkreddy Pedals EchoやFairfield CircuitryのMeet Maude、JHS Pedals Panther Cub V1.5などが探すと意外に見つかりますヨ。ここではその 'ニッチな機能' の探求として上から動画順にコーラス、フェイザー、リヴァーブ、ディストーションをそれぞれ 'インサート' しておりまする。ちなみにMemory Lane 2の取説、英文の方は記載があるものの日本語訳のものではこの 'Feedback' 端子使用でエクスプレッション・ペダルのコントロールのことしか書いてない(汗)。ギタリストには馴染みの薄い 'インサート・ケーブル' 使用ということで省いたんかな?(苦笑)。また、動画はありませんが2004年頃に米国ワシントン州にあった工房、Smart People Factoryのデジタル・ディレイ、Interstate i-5も狙い目です。いわゆる 'アナログ・モデリング' で2000年の発売以降、現在までベストセラーを記録するLine 6 DL4 Delay Modelerを契機にPT2399チップなど、アナログ的質感を持つデジタル・ディレイが流行し始めたのが2000年代初め〜中頃。真空管とデジタルのハイブリッドな製品も送り出すSIB !のMr. Echoと並び話題となったこのInterstate i-5は、いわゆるデジタル・ディレイながら 'Warm' ツマミを回すことでアナログ特有の質感を生成し、最大1秒(1000mS)のディレイタイムやエクスプレッション・ペダルによるコントロールなど、実に多機能でとても使い勝手の良い製品でしたね。それは現在でも状態良好の中古が市場に溢れており(ズラッと並べてみました・・笑)、とりあえずディレイの 'インサート技' を試す出発点としても最適かと思います。ちなみに本機はそのデジタル特有の仕様からこんな '注意書き' が書かれておりました。

"本機をご使用の際、TIMEコントロール・ノブが0の位置で入力ケーブルの接続およびフットスイッチをONにされますと稀にディレイ音が得られない場合がございます。これはディレイタイムを設定しているオシレータ回路が温度等の影響により正しく起動しない為で、故障ではありません。このような場合は一旦ケーブルを取り外し、TIMEコントロール・ノブを0位置以外に設定し直しケーブルを再接続した後スイッチ操作を行って頂きますと正常なディレイ音が得られます。"





さて、一方ではクリアーなデジタル・ディレイにアナログの味付けをするアイテムもあり、それはMaestro Echoplexのテープ・エコーがもたらす '質感' が象徴的ですね。このJ.Rockett Audio DesiginsのAPE (Analog Preamp Experiment)は本機を前後でプリアンプ的に配置するシリーズ接続、そして内蔵のループ接続によりディレイの 'キルドライ' で 'デジタル臭さ' を鈍らせます。ちなみに本機のプリアンプ使用ではRepeats、Mix、Rec各ツマミはそれぞれトレブル、アウトプット、ドライヴのコントロールとして機能しますが、ループ接続の際にはRec、Mixツマミでコントロールして行きます。また、このテープヘッドに録音したような '質感' の生成には、Ecoplex同様に内部電圧22.5VをDCコンバータで昇圧して駆動する ' シミュレート' にも対応します。ちなみにこの工房からは去年、全盛期のElectro-HarmonixやPigtronixを支えたエンジニアのハワード・デイヴィスと共同で開発した新作Clockwork Echoがラインナップに加わりました。



Ooh LaLa QuicksilverとBoss PS-3の組み合わせによる攻撃的 'ピッチ・シフト' 技。古くはUKダブの重鎮、マッド・プロフェッサーがMXR Pttch Transposerにディレイを 'インサート' することから広まったこの '階段状ランダマイズ' は、現在の 'グリッチ系ペダル' 隆盛と相まってさらに新たな音作りへと進化しております。そんな彼の愛するMXR Ptch Transposerは、現在の高品質なピッチ・シフターに比べると決して精度は高くないものの、この 'ハイ落ち' が独特な初期デジタル特有の '太さ' に繋がっていることからギタリストに愛されたのも分かります。ピッチ・チェンジの量をメモリーしてそれをフット・スイッチで呼び出すことも可能なのですが、ツマミはタッチ・センスのセンサーとなり回さずともトントンと叩くだけでピッチ・チェンジが変わります。おお、この 'ハイテク' (笑)こそ1970年代を巡ったアナログ時代の終焉を物語るものなのかも知れません。そして、わたしの環境ではスウェーデンの工房、Moody Soundsからディレイ音を 'インサート' することに特化したStrange Devil Echoとノルウェーの工房、Pladask Elektrisk Bakframや 'グリッチ・ペダル' の老舗的存在であるRed PandaのTensorと組み合わせたランダマイズな効果でチェック。この手の同種な効果では同工房のParticleやRasterなどを持ってきても良いでしょうね。







以前から積極的に 'ピッチシフト系ペダル' を製品化するElectro-Harmonixですが、Pitch Forkや2つの独立したピッチシフトとユーザー・プリセットを備えたその機能強化版Pitch Fork+、'Harmonic Octave Generator' ことHOG 2、市場で大きな人気を獲得した 'Polyphonic Octave Generator' ことPOG 2(なぜか公式HPの商品紹介が壊れとる)に続いて最新作、Inteligent Harmony Machineが登場。いわゆるポリフォニック・ピッチシフトと 'インテリジェント' の名の如くKeyセレクターとスイッチの組み合わせで、ダイアトニック・ハーモニーを生成する12キー全てにアクセスすることが出来ます。またポリフォニック・オーバーライド・モードでは、11ポジションのインターバル・セレクターのスイッチにより各ハーモニーを選択することが可能。フットスイッチはモメンタリーにも対応しており、ピッチシフトが上下にスイープするまでの時間を設定することが出来ます。そして、モールス信号でお馴染み '電鍵スイッチ' による 'Kill Switch' のTelegraphをベースにしたデジタル・オクターバー、Triplegraph。ギタリストであるジャック・ホワイトの 'シグネチュアモデル' として企画された本機は、高性能DSP 'Blackfin' によるレイテンシーゼロの上下オクターヴ、センド・リターンによる 'インサート' とラッチ/アンラッチによる3つの '電鍵スイッチ' で攻撃的なアプローチを実現しました。











いわゆるピッチシフターの分野でその端緒を切り開いたEventideは、ジョン・ハッセルのデビュー作 'Vernal Equinox' からトランペットによる独特な 'ヴォイス' として貢献したことを覚えている方はおられるでしょうか?。そんな元祖ピッチ・シフターであるEventide H910から出発したハッセルが晩年に愛したのが、その '末裔' に当たる最新作のH9 Harmonizerですね。この '弱音系ラッパ' の系譜はノルウェーのニルス・ペッター・モルヴェルなどに引き継がれましたが、後年ハッセルは自身のユニークなトランペットの音色と奏法について抽象的ながらこう述べております。

- あなたの音楽における別の「垂直的な」側面は、トランペット演奏にも存在するように思われます。とりわけ、あなたの複数の楽器が同時に演奏されているかのようなトランペット・サウンドを作るために、あなたはハーモナイザーやピッチ・シフターを長年活用してきました。

"ハーモナイザーに関していえば、最初に導入したのはおそらくEventide H910だったのではないだろうか?。モデル番号は忘れてしまったが、だんだん大型になっていき、最終的には最も大型なモデルを持っていたが、なにしろプログラムがとても難しかった。現在使用している新しいモデルのH9は、オールデジタルでMIDIコントロールなどを小さな筐体に収めた後継版だ。H9の機能性には本当に興奮しているし、そのサウンドの一部は最新作にも入っている。その可能性には実に興奮させられるね。私は常に平行進行やシーケンスといったものに魅了されてきた。つまり、ラヴェルやブラジル音楽の多くで見かける5度の和声の動きだ。私が敬愛してやまないラヴェルの音楽には独特の美しさがある。それは、まず1本の鉛筆で壁に曲線を描いた後、さらに2本の鉛筆を手に取り、2本か3本の鉛筆を持って同じことをするのに似ている。数年かかったとしても、やがてうまくいけば、平行する進行を追いながら実際のコードチェンジを行えるテクニックが身につくことになる。そんなわけで、私は平行進行という豊かさを愛してきたのさ。また、インド古典音楽の歌い手であるPandit Pran Nathとの演奏では発声法やカーブなど方法を学び、素晴らしい機会となった。私は常に落ち葉の例え話に立ち返る。そこが出発点であり、次にそれをあえて消し去り、再び呼び出すというわけだ。"



Zorg Effects

コード、スケールに合わせて積み上げていく効果としてピッチシフトがあるのなら、それを文字通り 'Freeze' させることで滞留、停滞させることで新たな時間軸を生成するエフェクターが登場したのもここ近年の傾向ですね。ラトビア共和国から世界を刺激するような製品を続々送り出すGamechanger AudioのPlus Pedalもそんなきっかけを作った一台。まるでピアノのダンパーペダルを模したようなアンラッチスイッチは、踏んだ直前のサスティンをリアルタイム処理でループさせることでロング・サスティンを実現した驚異のペダルです。サスティンは最大5つまでオーバーダブすることが可能でフェイドインの速度やディケイの細かな設定はもちろん、お手軽なループ・サンプリングとエフェクト音のみのWetへ瞬時に切り替えるフット・スイッチも付属します。さて、単音楽器におけるハーモニクスは重音奏法のやりやすいサックスが得意とするものなのですが、構造的に苦手とする金管楽器においてはフリー系トロンボーンの重鎮、アルバート・マンゲルスドルフによる最大9音!ものハーモニクスを奏でるテクニックに驚嘆して頂きたい。これもカップが大きくて深いことから倍音を生成しやすいトロンボーン用マウスピースの賜物です。もちろん、誰でもたやすくマネ出来るものでは無いので(汗)、結局はこの手の '文明の利器' のお世話になるのです(笑)。このElectro-Harmonix Superego Synth EngineもPlus Pedal同様、ループ・サンプラーのようなテンポに沿ってフレイズを小節単位で繰り返すリズム的アプローチではなく、音のサスティンの部分をHoldでオーバーダブしていくことで 'アンビエンス' の壁ともいうべき滞留したアンサンブルを生成します。まさに 'Freeze' したかの如くハーモニーのドローン(通奏低音)はもちろん、本機内にはインサート端子が備えられているので、ここにお好きなエフェクター(動画ではリング・モジュレーターを繋いでます)を入れることでさらに奇妙な音作りに挑むことも出来ますね。そして、今年こそは '祝代理店化' を期待して(笑)フランスの工房、Zorg EffectsのBlow !とステレオ仕様のBlow ! Blow !! Blow !!!をどーぞ。






一方、単純にオクターヴ下を付加していわゆる '擬似ギターシンセ' 風なトーンを生成するのも楽しいよね、という原点回帰の意も込めて、老舗MXR随一の '飛び道具' オクターヴ・ファズであるBlue Box。わたしは1974年の軽量 'Budケース' のものと1976年のそれぞれ 'スクリプト・ロゴ' なヤツを手に入れ、本機のウィークポイントである 'Output' の低さをクリーンブースト内蔵のループ・ブレンダー、Dreadbox Cocktailで底上げしながらミックスして愛用中。ジェフ・ベック1976年の作品 'Wired' 収録の一曲 'Come Dancing' で聴けるブリブリとしたソロこそ、まさに当時のアプローチを聴ける最良のリファレンスなのですが、Snarky Puppyのラッパ吹きであるMike 'Maz' Maherがフリューゲルホーンとワウペダルを組み合わせて 'ギターソロ' のように吹くスタイルも圧巻!。





そのMXR Blue Boxの不安定なオクターヴ音と原音をミックスする 'ループ・ブレンダー'。ここではクリーン・ブースト機能を擁するDreadbox Cocktailを使用しておりますが、この '便利アイテム' の中で 'A/Bループ・セレクター' と並び実用的な足下の 'フット・ミキサー' の世界。現行品ではXotic Effects X-Blenderや国産のOne Control Mosquite BlenderにTrial PalMixer Light、英国のThe GigRig Wet Boxなどがありますね。そして、この手の製品で最初に市場へ投入されたものとしては、Noahsark Compact Mini Mixerではないかと記憶しております。 今でこそ低価格帯のビギナー向けブランドとして定着したNoahsarkですが、そもそもはイケベ楽器プロデュースのハイエンドな '企画品' としてこのMini Mixerも確か6万くらいする高価なものでした。何より1990年代後半の時点で同様な機能を持った製品は無かったこともあり重宝したのですが、すでにこの時点で 'ブレンダー' としての基本的な仕様が備わっていたことに驚きます。当時、イケベ楽器が代理店となって扱っていたFulltone製品と共通する重い筐体を用いて、トゥルーバイパスにエフェクト音をエクスプレッション・コントロールするペダル端子、そして現在でもアドバンテージの高いエフェクト音と原音を個別で調整出来るのはミキサーと名乗るに相応しいですね。例えばX-Blenderなどは、エフェクト音と原音を1つのツマミでブレンドする為に分割してミックスしてしまうのですが、Mini Mixerは各々個別で調整することで原音を引っ込めることなくアンプの 'センド・リターン' に繋ぎ 'キルドライ' (原音カット)の設定が可能。ただフェイズ・スイッチが無いのは時代の先駆的製品ということで至らなかった部分ではありますね。

















そして原点回帰と言うべき 管楽器の 'アンプリファイ' の黎明期から分厚いオクターヴで生成するオクターバーの歪み。H&A Selmer Inc. Varitoneをきっかけに始まった1、2オクターヴ下を付加するこの効果は、後続のC.G Conn Multi-Vider、GibsonのMaestro Sound System for WoodwindsからVox 'Ampliphonicシリーズ' のOctavoiceとStereo Multi-Voice、Gretsch Tone Divider、HammondからInnovex Condor RSMやAce Tone Multi-Vox EX-100といった国産品に至るまで、単音ソロの 'オクターヴ奏法' として重宝され、基本単音の管楽器における倍音生成に威力を発揮しました。そして最近のものでは、オクターバーの設計において不自由であったトラッキングの機能のみデジタルとした 'ハイブリッド' なもの、またアッパー・オクターヴまでカバーするElectro-HarmonixのMicro POGなど、もはやアナログとデジタルによるその線引きは意味を成しません。ちなみに海外ではオスマン・トルコの軍楽隊の伝統なのか、バルカン半島近辺の工房でいわゆる管楽器の 'アンプリファイ' が細々とニッチな需要を繋いでおります。ブルガリアのNalbantov Electronicsでは、その 'OC-2' という型番からBossのアナログ・オクターバーの名機OC-2をベースにしたと思しき管楽器用オクターバーOC-2 eXtremeを製作。これは管楽器の 'アンプリファイ' 黎明期を彷彿させるC.G. Conn Multi-ViderやVox Ampliphonic Octavoiceと同様な奏者の腰へ装着するスタイルが懐かしいですね。そしてギリシャのTAP Pickupsでは、ピックアップ本体にオクターバーを内蔵させるOctaという製品が登場。1バンドEQ、ヴォリュームの3つのパラメータを持ち、USBによる90秒の急速充電により8時間ほどのパフォーマンスが可能という最近の流儀に則った仕様となります。















1965年に管楽器メーカーとしてお馴染みH&A.Selmer Inc.が手がけた元祖 'アンプリファイ' サウンド・システム、Varitone。Selmerブランドのほか、管楽器への市場拡大を狙ってなのかBuesherブランドでも販売されておりましたが、製作自体は現在でもPAの分野で大手のElectro Voiceが担当したようです。振動を感知して電気信号に変換するピエゾ・トランスデューサー方式のピックアップは、音源に対して理想的な取り付け位置を見つけるのが難しく、マウスピース部分はもちろん、金管楽器のリードパイプやベルの真横などいろいろ試しながら完成に漕ぎ着けたとのこと。また、俗に 'Coffee Can' と呼ばれるElectro-VoiceのSRO12という12インチのアルニコスピーカーを装備して、その 'ぶっとい低音' の再生を可能としました。Varitoneは通常の '3300 Auditorium Model' のほか、二番目の動画で登場する '3100 Club Model' の2種がラインナップされておりました。この 'Club Model' はライヴなどの汎用性を高めた '若干' 小ぶりな仕様で、'Auditorium Model' のアンプ正面に備えられていたTremoloの 'Speed' と 'Depth' は外部からのコントロールに移されております。そして、'モダン・コルネット' の第一人者ともいうべきナット・アダレイが1968年にアプローチした '電気コルネット'。いわゆるH&A SelmerのVaritoneを用いてA&M傘下のCTIからリリースしたこの '仏像ジャズ' は、前年にクラーク・テリーがアルバム 'It's What's Happnin'' でアプローチしたことを追いかけるかたちで 'サマー・オブ・ラヴ' の季節を謳歌した異色の一枚となりました。このVaritone、サックスの場合はマウスピースにピックアップを取り付けますが、トランペットやコルネットの場合はリードパイプ上部に穴を開けて取り付け、コントローラーは首からぶら下げるかたちとなります。まあ、効果的にはダークで丸っこい音色のコルネットが蒸し暑いオクターヴ下を付加して、さらにモゴモゴと抜けの悪いトーンになっているのですけど・・。上の動画はそんなVaritoneのコルネットでヒッチコック監督のサスペンス映画 'ダイヤルMを回せ!' のテーマをナットが吹く貴重なもの。首からコントローラーをぶら下げて(2:39〜40)、ピエゾ・ピックアップはリードパイプの横に穴を開けて接合(4:29〜31)されているのが確認出来まする。この管楽器の 'アンプリファイ' 黎明期において興味深いのは、木管奏者がマウスピースやネック部に簡単に穴を開けるのに対して、金管奏者はドン・エリスや日野皓正さん、クラーク・テリーやこのナット・アダレイらは皆、ベルの横側やリードパイプ上側などに穴を開ける代わりに、誰も音色の要であるマウスピース本体へ穴を開けることには慎重だったことですね(笑)。










そして管楽器用 'アンプリファイ' システムの最後発、Innovex Condor RSMをご紹介。Hammondは当時、エレクトリック・サックスで人気を博すエディ・ハリスや駆け出しの頃のランディ・ブレッカー、そして御大マイルス・デイビスへ本機の '売り込み' を兼ねた大々的なプロモーションを展開。デイビス邸にもこの大仰な機器が専用のアンプと共に送り付けられてきました。そんなデイビスとHammondの関係は、1970年の 'Downbeat' 誌によるダン・モーゲンスターンのインタビュー記事から抜粋します。

"そこにあったのはイノヴェックス社の機器だった。「連中が送ってきたんだ」。マイルスはそう言いながら電源を入れ、トランペットを手にした。「ちょっと聴いてくれ」。機器にはフットペダルがつながっていて、マイルスは吹きながら足で操作する。出てきた音は、カップの前で手を動かしているのと(この場合、ハーモンミュートと)たいして変わらない。マイルスはこのサウンドが気に入っている様子だ。これまでワウワウを使ったことはなかった。これを使うとベンドもわずかにかけられるらしい。音量を上げてスピーカー・システムのパワーを見せつけると、それから彼はホーンを置いた。機器の前面についているいろんなつまみを眺めながら、他のエフェクトは使わないのか彼に訊いてみた。「まさか」と軽蔑したように肩をいからせる。自分だけのオリジナル・サウンドを確立しているミュージシャンなら誰でも、それを変にしたいとは思っていない。マイルスはエフェクト・ペダルとアンプは好きだが、そこまでなのだ。"

このモーゲンスターンとのインタビューとほぼ同時期と思われる1970年5月4日に、デイビスは初めてワウペダルを用いたエルメート・パスコアール作 'Little High People' を披露。アイルト・モレイラのクイーカやカズーと 'お喋り' するようなフレイズと共に、よく聴けばワウペダルと並びこのInnovex Condor RSMを駆使しているのが確認出来ます。また、第一人者ともいうべき 'アンプリファイ' なサックスのイノベイターであるエディ・ハリスもHammondからこのInnovex Condor RSMを送りつけられてきたひとりであり、早速それまでのMaestro Sound System for Woodwindsから変更してより 'シンセサイズ' なトーンへ・・と思いきや、分厚いオクターヴのお馴染みな 'ハリス節' なのは変わりません(笑)。ランディ・ブレッカーはこの機器を出発点に現在まで、ずっとハーモナイズしたトーンでトランペットにエッジを付加するという効果にこだわっているのが伺えますね。ちなみにこのCondorには'Innovex' ブランドのほか、'ISC Audio' ブランドのものが存在します。そして、Innovex Condor RSMの為に用意されたShureの 'マウスピース・ピックアップ'ですが、以下は上記リンク先のShureのHPから質問コーナーに寄せられた本製品に対する回答。

Q - わたしはShurre CA20Bというトランペットのマウスピースに取り付けるピックアップを見つけました。それについて教えてください。

A - CA20Bは1968年から70年までShureにより製造されました。CA20BはSPL/1パスカル、-73dbから94dbの出力レベルを持つセラミックトランスデューサーの圧電素子です。それはHammond Organ社のInnovex部門でのみ販売されていました。CA20BはShureのディーラーでは売られておりませんでした。

CA20Bは(トランペット、クラリネットまたはサクソフォンのような)管楽器のマウスピースに取り付けます。穴はマウスピースの横に開けられて、真鍮のアダプターと共にゴムOリングで埋め込みます。CA20Bはこのアダプターとスクリューネジで繋がっており、CA20Bからアンバランスによるハイ・インピーダンスの出力を60'ケーブルと1/8フォンプラグにより、InnovexのCondor RSMウィンド・インストゥルメンツ・シンセサイザーに接続されます。Condor RSMは、管楽器の入力をトリガーとして多様なエフェクツを生み出すHammond Organ社の電子機器です。Condorのセッティングの一例として、Bass Sax、Fuzz、Cello、Oboe、Tremolo、Vibrato、Bassoonなどの音色をアコースティックな楽器で用いるプレイヤーは得ることができます。またCA20Bは、マウスピースの横に取り付けられている真鍮製アダプターを取り外して交換することができます。

Condorはセールス的に失敗し、ShureはいくつかのCA20Bを生産したのみで終わりました。しかし、いく人かのプレイヤーたちがCA20Bを管楽器用のピックアップとしてギターアンプに繋いで使用しました。その他のモデルのナンバーと関連した他の型番はCA20、CA20A、RD7458及び98A132Bがあります。

動画はギター用GSMのものですが、基本的構成はGSMと管楽器用RSMにそれほどの違いは無いのでほぼこのような出音となりますね。この世界初の 'ギターシンセ' と呼ばれるCondorはHammondがOvationと協業して開発したもので、あのジミ・ヘンドリクスも発売当時ニューヨークの馴染みの店Manny,sから本機(S/N1145)を480ドルで購入しております。














そして、このようなオクターヴをVCOの トーン・ジェネレーター' として 'Pitch to Voltageコンバータ' の延長線上にあるのが 'ギター・シンセサイザー' です。MIDI以前においては 'CV/Gate' によるトリガーで追従する単音を不器用に鳴らすのが基本仕様であり、HammondのInnovex Condor RSMからLudwig Phase ⅡやEMS Synthi Hi-FliなどのVCFを中心とした擬似的な 'シンセサイズ'、そしてRoland GR-500やArp Odysseyを 'ギターシンセ' に特化させたArp Avaterなどが登場することで本格的な管楽器と 'シンセサイズ' によるプレイヤビリティーを実現しました。つまり従来のワウペダルだけでは飽き足らず、VCFによる 'フィルタリング' やハーモナイズの音作りへと意識は移行しているのですヨ。X-911はそもそも単品で用意されていた 'Pitch to Voltageコンバータ' の機能を内蔵したMS-20のエフェクター版として、特別なセッティングを用意せずともギターからヴォーカル、管楽器に至るまで幅広い入力に対応したものです。この手の製品は当時のシンセサイザーに対する幻想からあらゆる音の加工、変調へと向かい、イタリアのJen Elettronicaから登場したSyntar、Moogと並ぶ名門Arpが社運を賭けて名機Odysseyを 'ギターシンセ' に特化させながらそれで会社倒産を決定付けた悲運の一台、Avatarなどが '栄枯盛衰' の1970年代を象徴しました。










ただ、この手のCV/Gateトリガーによる 'シンセサイズ' は、アナログ特有のピッチ検出とオシレータの精度が気温など外的要因から不安定になるので定期的なチューニングが必要ですね。それでもOdysseyと並びArpの名機である2600をKorgが復刻するなど、これまで敷居の高いイメージのあったモジュラーシンセなども臆せず 'エフェクツ化' して頂きたい。そして、Music Easel弾きながらフォークトロニカ風ポップで歌うJeanieさんですけど、こーいうスタイルって日本の女のコには凄い得意そうなジャンルに思えるんだけどなあ。近年は楽器が売れないって声があるけど、既存のJ-Popを離れたアプローチで 'ガジェット' から魅せるコトやったら興味持つ若いコが増えると思うんですよね。一方、現代音楽の分野からラッパとエレクトロニクスをCycling 74 Max/MSPでプログラムして作曲する紅一点、Sarah Belle Reidさんの動画も色々と楽しいなあ。そして個人的に遊んでみたいのはラトビア共和国からぶっ飛んだアイデア満載な工房、Gamechanger AudioのMotor Synth。これまでピアノのダンパーペダルを模して 'Freeze' させるPlus Pedal、キセノン管をスパークさせる異色のディストーションPlasma PedalとPlasma Coil、光学式スプリング・リヴァーブの変異系Light Pedalなどを製作してきましたが、このMotor Synthは8つのモーターを駆動させて '電磁誘導' により 'シンセサイズ' するもの。仕組みは小さな光学式ディスクを直流モーターで高速回転させ、そのディスクに印刷された波形を赤外線フォトセンサーで読み取って発音させるというもので、原理的にウェイヴテーブル・シンセなどと似た構造ですね。というか、単純にこのワクワクする 'ハッタリ感' がスゴいっす!。動画で見る限り音色に幅がないかなあ?という感じはありますけど(汗)、楽器って触ってみたい!、欲しい!と思わせるツボが重要ですよね。内蔵のオシレータをMIDIでコントロールできるほか、外部入力もちゃんと付いているのでVCFやLFOをエフェクター的にも使えますヨ。しかし、財布のヒモを緩めて待っているのですが・・なぜか一向にココ日本には入荷してきませんね(謎)。








現在ではKorg X-911同様にエフェクター感覚で扱える至極簡単な製品があり、現行品ではスウェーデンの新興工房、Parashit Studioから登場したMultiwave Mega。Korg Monologueシンセサイザーに触発されたようなオシロスコープ的波形のLEDの怪しげな魅力はもちろん、アナログとデジタルの 'ハイブリッド' による2つのVCOを 'Wavetable' 的に掛け合わせた 'サブ・ハーモニック' からローパス・フィルターによる変調、LFOやEGでトリガーさせてやることで奇妙に 'シンセサイズ' されたトーンを放つ・・のですが、残念ながら代理店のLep Internationalからは取説無し。ほとんどぶっつけ本番で挑んでおりますけど全く偶発的効果が飛び出るかと思えば反応一切無しの沈黙・・どれが '正解' なのか分かりませんね(苦笑)。一方、ピックアップの製作でお馴染み老舗Symour Duncanが、本格的にエフェクター市場へ参入したフラッグシップ機であるこのFooz。構成的にはLudwig Phase Ⅱと似ておりますが、あれほどの 'ヴォイス感' を持ったエグさはない代わりに 'ディストーショナル + VCF&LFO' と言った感じでしょうか。Keeley ElectronicsのSynth 1やPigtronix Mothership 2などの好敵手に相応しいですね。しかし、Chase Bliss Audioなどもそうだけど側面のDipスイッチが最近のトレンドなのかな?。そのロバート・キーリーが手がけるKeeley Synth 1は、その名も 'Reverse Attack Fuzz Wave Generator' ということからファズをベースにエンヴェロープとVCFをリアルタイムに操作していく 'ロービット感' 溢れるもの。そして、以前は日本の代理店経由で市場に並んでいたものの最近はとんとご無沙汰なニュージーランドの工房、Red Witchから登場したSynthotronもこれまた 'ロービット感' に溢れた一台。基本は2つのヴォイス・コントロールにより上下オクターヴをミックス出来るオクターバーながら、モジュレーションとエンヴェロープにサンプル&ホールドなどを駆使して 'シンセサイズ' するもの。カラフルなデザインが往年の 'Maestro' やイタリア産のTekson Color Soundを彷彿とさせますね。









'エレハモ' のMicro Synthesizerに触発されたと思しきTWA(Totally Wycked Audio)のGreat Devideは2011年の登場以降、コストダウンを図りながら 'Ver. 2.0' まで改良されてきました。特徴的な5つのスライダーでコントロールする 'ヴォイス' はオシレータ・シンセサイズ、+1オクターヴ、原音、-1オクターヴ、サブベースのミックスを司っているのですが、この 'サブヴォイス' と連携する 'Sub Clock' 5種(Off、-1Oct.、-1.5Oct.、-2Oct.、-2.6Oct.)と 'Syn Clock' 5種(0、-1、-1.5、-2、-2.6)からなるインターバルセレクターで各々コントロール出来ます。さらにその 'Syn' では4種の波形(Chopped Saw+Pulse、Saw+Pulse、Square、Modulated Square)を選択してエンヴェロープ・コントロールまで対応、エクスプレッション・ペダルと外部 'インサート' の攻撃的拡張性から基板内部に12個のトリマーを設けて微調整可能と至れり尽くせり。そしてC4 Synthは、独立した4ボイスによりモノ/ポリフォニック・ピッチシフトからインテリジェント・ハーモナイズ、ディストーションからトレモロ、フィルターまで個別にアサインすることが可能。内蔵のオシレータはサイン波、スクエア波、ノコギリ波の波形3種をそれぞれ組み合わせて合成します。ADSRトリガーを備えたエンヴェロープ・フォロワーも11種から選択可能、VCFとLFOはそれぞれ25種と14種から選択、変調させることが可能でその揺れをサイン波、スクエア波、ノコギリ波、サンプル&ホールドによりランダムにアルペジオを走らせます。さらに、エクスプレッション・ペダルから同時使用可能な2つのプログラマブルな16ステップ・シーケンサーを備えるなど至れり尽くせり。またデジタルらしく6つのユーザー・プリセットとUSB端子により、MIDIで128のファクトリー・プリセットへとアクセス可能。また、本機で作成した膨大なプログラムをPC上で管理、エディットすべくメーカーから 'Neuro Desktop Editor & Neuro Mobile App' というフリーソフトが用意されており、さらに細かなパラメータをしつこく弄って、と・・う〜ん。何か '在りし日の優秀な日本家電' を彷彿とさせますけど、果たしてこーいう '技術者のこだわり' ってどのくらい実際のギター・ユーザーに反映されてるんですかね?。という思いもメーカーには関係ないのか(笑)、さらにLFOやエンヴェロープをPCのエディットと連携した 'マルチウェイヴ・ディストーション' という名の '変態ギターシンセ' であるUltrawaveを投入してきました。実はSource Audio、このニッチな分野に本腰入れて取り組んでいるのか!?。









Strymon Bigsky

今や、2声のピッチシフトを重ねた 'Shimmer' のような効果もあるほどディレイと並び重要なリヴァーブなのですが、お気に入りは1978年の初期デジタル・リヴァーブLexicon 224の 'プレート・リヴァーブ' をモデリングしたVongon ElectronicsのUltraseer。木製のウォールナット材に嵌め込まれたこのステレオ・ユニットは、32bitのフローティングDSPで作られた残響を '初期デジタル' の質感の為にあえて16bitにダウンサンプリング。そして、いわゆる処理の甘さからくるが故の 'エラー的' な揺れを 'ヴィブラート' として、レスリー風効果を生成するサイン波の 'Cycle' と日焼けで反ったアナログ盤や劣化テープの 'Random' をリヴァーブ・アルゴリズムに追加します。そして新たにChase Bliss AudioとMerisの 'コラボ' からは、同じく1970年代後半のデジタル・リヴァーブの質感と共にスタジオの定番として未だ鎮座するLexicon 480Lをこんな価格帯で実現してしまったもの凄いヤツが登場。Tank Mod、Diffusion、Clockなど3種のリヴァーブ・アルゴリズムを備え、リヴァーブテイルを完全にシェイピングするディケイ・クロスオーバー、10プリセット×3バンクのユーザー・プリセットを6つのムーヴィング・フェーダーでトータル・リコール出来る再現性はもはやペダルの範疇を超えておりまする。また、高品質リヴァーブといえばEventide Spaceで極めたプログラムを 'インフィニットモード' と 'フリーズモード' のリヴァーブ2種を中心にコンパクトにまとめ、'H9シリーズ' 同様PCと連携してソフトウェア 'Eventide Divice Manager' でプリセットの追加、保存、エディットを行うBlackhole Pedalが登場。一方で、いやいやリヴァーブはやっぱりアナログだよって人は、残響のディケイの長さを順に 'Le Bon'、'La Brute'、'Le Truand' のスプリング・ユニットとして3種用意されたフランスの工房、AnasoundsのElementをどーぞ。一方、キセノン管をスパークさせて特異な歪みを生成するPlasma Pedalで市場に一石を投じた以降も革命的なアイデアで惹き付けるラトビアの変態、Gamechanger Audioの光学式スプリング・リヴァーブLight Pedal。いよいよここ日本にも上陸して参りましたけど・・さ、どう使いこなしましょうか?。そして最後は、ロシアのガレージ工房Lateral Phonicsからその危なげな雰囲気とは裏腹に '典型的' スプリング・リヴァーブのSeamark Reverb。単なる 'バネリバ' にこの価格はちと高いかなー?と思いますけど(汗)、一度鳴らしてみればそれまでの印象とは真逆の独特な響きがありますね。本機の入力部に位置する 'Amount' と 'Impact' を調整してサチュレーション的歪みまでカバーしており、特にアタックを強めに弾いた時の 'ギュワ〜' とした歪み感はたまりません。轟音系な歪みペダルと合わせ、モメンタリー・スイッチの 'Splash' を踏むことで 'シューゲイザー' 的音作りを目指しているようです。






 






魅力的な製品を続々市場に送り込むことですでに '老舗感' すら漂わせているのは、ここ日本でも知名度や人気共に高いEarthquaker Devices。同社の 'オルガン・トーン' を生成するOrganizerとディレイのSpace Spiral、そして 'ディスコン' ではありますがPitch Bayとピッチシフトの変異系である '飛び道具' Rainbow Machineをそれぞれサックスで '擬似シンセ' 化。とにかくココはユーザーが欲しがっている効果のツボを突いた製品が多いですね。さらに一昨年話題をさらったHologram Electronicsから 'グラニュラー・シンセシス' の異色作、Microcosmも面白い。そんな今の時代の空気感を象徴するようにここ最近、その名前をよく聞くサックス奏者サム・ゲンデルのセッションをどーぞ。おお、ドイツのRumberger Sound Productsによる 'マウスピース・ピックアップ' K1Xを使用しているのが嬉しいですね。というか、この工房はそろそろラッパ吹きの為の 'マウスピース・ピックアップ' をラインナップして頂きたい。

4 件のコメント:

  1. こんにちは。いつも大変興味深くブログを拝見しております。
    先日、米アマゾンでBarcus-Berryのフルート用マイク(6100)を単体で購入し、プリアンプ(3000AE)を使わずRCAからTSに変換して直接宅に繋いだのですが、音が出ませんでした。6100に関する資料が少ないためマイク自体が故障しているか、3000AEを使用していないため音が出ないのか当方では判別がつかず困っているのですが、6100には3000AEは必須なのでしょうか?よろしければご教授いただけると幸いです。

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  2. こんにちは。当ブログへの訪問ありがとうございます。
    Barcus-berry6100を検索してみて、これは9V電池で駆動させるエレクトレット・コンデンサー・マイクであることを確認しました。付属の3000AEというバッファー・プリアンプ/EQがそのマイクの電源を兼ねております。基本は6100マイク→3000AE→ミキサー卓へと繋ぐセッティングになると思われます。

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  3. ちなみに3000AEには本体を腰に装着するクリップが付属しているので、ワイヤレスなどを使う場合はその後ろに送信用のトランスミッターを繋ぐかたちとなりますね。

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  4. ご返信いただきましてありがとうございます。
    つまりはRCAケーブルを通じて3000AEから6100に電源供給がなされているということなのですね。RCAケーブルにファンタム(?)のような機能があることは存じ上げませんでした。

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