2022年1月15日土曜日

2022年のペダル '質感日和'

 さあて、またいつもの '実験ボード' を引っ張り出していろんなペダルを試してみる。EventideのMixinglinkとHatena ? SpiceCubeを各々トランペットの 'クリーントーン' におけるプリアンプとして、そのまま 'センド・リターン' に繋いだ各種ペダルの音作りに貢献する '縁の下の力持ち'。どうしても管楽器用ではグーズネック式のコンデンサー・マイク一択の雰囲気がありますけど、アンプを脇に置いて鳴らすセッティングではダイナミック・マイク使用も悪くないですヨ。











もう、この 'HornFX' の動画はテンプレです(笑)。わたしのメインボードはHeadway Music Audioの2チャンネル・プリアンプEDB-2からRadial EngineeringのパッシヴDIであるJDIの '直列型' 接続によるセッティングがひとつ。そして、2つのセッティングからなる 'インサート型' の '実験ボード' ではEventideのMixinglinkのほか、Hatena ?の2チャンネル・プリアンプSpiceCubeにCloud MicrophoneのCloudlifter CL-1を導入。これはダイナミック・マイクの '底上げ' の為に、本来なら厳禁の48Vファンタム電源を利用してお手軽に25dBものゲインアップをやってくれる優れもの。Y型の 'インサート・ケーブル' を利用して、2チャンネル入力を備えるHatena ? SpiceCubeになんとかマイク入力が出来ないものか・・。それがCL-1のゲインアップからTDCのMic Optionでフォンに変換、SpiceCubeで過不足なくゲインを稼げるのだから良い時代になりました。さらにこちらも 'インサート型' ながらSummit Audioの 'ハーフラック・サイズ'、2チャンネル真空管プリアンプ2BA-221のセッティングもご用意。-20dBのPadにHighpass Filter装備のマイク入力とLineとHi-Zに対応したフォン入力を 'インサート' を介してミックス出来る優れもので、真空管は標準の中国製12AX7からよりローノイズかつワイドレンジな 'エレハモ' の12AX7EH Goldに換装しております。まずはそのままバランス接続で同社のパッシヴ型パラメトリックEQのFeQ-50を繋いだり、Bastl InstrumentsのThymeを 'インサート' させてみましょうか。もちろん、この2BA-221のライン入力にはNeotenicSound AcoFlavorを介してPiezoBarrelの 'マウスピース・ピックアップ' をミックスしておりまする。








現在メインのマイク・プリアンプHeadway Music AudioのEDB-2。いわゆる 'エレアコ' のピックアップ・マイクにおいて 'ピエゾ + マグ' や 'ピエゾ + コンデンサー' であるとか、いかにしてPAの環境で 'アコースティック' の鳴りを再現できるのかの奥深い探求があり、本機EDB-2はフォンとXLRの2チャンネル仕様でEQをch.1、ch.2で個別及び同時使用の選択、2つのピックアップの '位相差' を揃えるフェイズ・スイッチと突発的なフィードバックに威力を発揮するNotch Filter、DIとは別にフォンのLine出力も備えるなど、高品質かつ '痒いところに手の届く' 精密な作りですね。ただしXLR入力のファンタム電源が48Vではなく18V供給となっているところは注意。そのEDB-2も新たにEDB-2 H.Eとしてモデルチェンジし、新たに 'H.E.A.T (Harmonic Enhanced Analog Technology)' としてプリアンプ、3バンドのEQ部が2チャンネル独立して刷新、本体には 'Send/Return' が装備されました。ただ、わたしの環境においてはパッシヴのDIからロー・インピーダンスのライン出力でアンプを鳴らしているのですが、ここで 'アッテネート' しているとはいえ、やはりマイク併用だとハウってしまうのです(悩)。その為にプリアンプ自体のゲインを思いっきり上げることが出来ず、後段に繋ぐNeotenicSound Magical ForceやTerry Audio The White Rabbit Deluxeなどで間接的にゲインアップした上での音作りとなります。







ちなみにですけどこの 'ハーフラック・サイズ' というヤツ。皆さま、そのインターフェイスのあり方についてどうお感じになりますでしょうか?。基本的に '1Uラック・サイズ' をちょうど半分の大きさにして可搬性の良さをアピールしていると思うのだけど、個人的には実に中途半端で使いにくいサイズだと思うのですヨ。このサイズにこだわったメーカーとしてはSummit Audioを始めJoemeek、FMR Audioやあのルパート・ニーヴのデザインした高価な 'Porticoシリーズ' がありましたね。確かにマウント用の耳の付いた '1Uラック・サイズ' に比べれば卓上に置いて使いやすいのを '売り' にしているものの・・逆に言えば、そのままドンと机に鎮座させるだけで本体に持ち手のようなものはありません。軽くて片手でヒョイと掴めるものであれば文句は無いですけど、真空管内蔵のSummit Audioなどは結構な重さと奥行きなのです(約2Kg)。じゃあラックに入れようと探してみれば、これがトレイの付いたブランクラックにちょうど 'ハーフラック・サイズ' を2台並べてマウント出来るもので、おいおい、それならフツーに '1Uラック・サイズ' やんけ!と慣れない関西弁でツッコミたくなってしまうのだ(苦笑)。いやいや、各メーカーの皆様方、そんな難しいことは言いません、フツーにこの 'ハーフラック・サイズ' の収納出来るラックケース作りましょうヨ。個人的な好みはウォールナット材で角のところを丸みにした手触りの良いもの、天面には持ちやすい取っ手を付けて下さい(真空管ものでは天面部に放熱用のスリットがあると嬉しい)。そして奥行きに合わせた各サイズを用意して欲しいのですが、'1Uラックサイズ' のラックケースで困るのもこの奥行きの深さ。ただでさえ本体の短い 'ハーフラック・サイズ' は、その深さからケーブルや電源の結線で結構手間取ります。いま市場にある '1Uラックサイズ' のケースで、最も奥行きの短いのはサウンドハウスが販売する20cmのもの。これでも 'ハーフラック・サイズ' には無駄に深いのだ。ということで、何とかならんもんか?と悩みながらAmazonで 'NBROSドリンクホルダー NB-DRHD01SC' という椅子や机にクランプで固定するものを発見。ん?このドリンクホルダーの幅って 'ハーフラック・サイズ' にピッタリなんじゃね?と直感で2個をポチッとし、薄いゴムシートを2個並べたホルダー下側に張って嵌めてみたら見事にピッタリ!。まるで純正品か?と驚くくらいのしっかりホールド&ジャストフィットでして、そのまま2本の棚用鉄製ブラケットを軸にこんな '片支持型ラックマウント' をDIYで作ってしまいました。一部、クランプの穴の位置が鉄製ブラケット側の穴と合わなくてドリルで開ける手間はありましたけど、2本の鉄製ブラケットをしっかり固定することで 'ハーフラック' 半分側のマウントだけでもガッチリこの2Kgの機器を支えますヨ。このマウントのキモは機器本体を乗せているのが鉄製ブラケット1本のみで、もう1本のブラケットを軸に固定クランプで 'テコの原理' として支えているところにあります。あ、そうそう、このネジ穴にピッタリな '穴だらけの鉄板' で構成されるTemple Audio Designのエフェクターボードも今回の製作に必須ですね。





Heavy Electronics Descend & Ascend (discontinued)

さらに 'エレアコ' にとってプリアンプと共に大事なのがヴォリューム・コントロール。以前はそれほどヴォリューム・コントロールに対して気にかけておりませんでしたが、自らの足元へ 'ループ・サンプラー' 導入によるダイナミズムの演出でヴォリューム・ペダルほど大げさじゃないものを何かないかと探しておりました。そんなヴォリューム・ペダルの使用に当たって注意したいのは、最初にベストな音量の設定をした状態から可動させた後、瞬時に元の設定位置へ戻すのが大変なこと。このようなニッチな不満に応えようと現れたのが、そんなヴォリュームの状態を視認できる '便利グッズ' と呼ぶべきレベル・インジケーター。音量の増減に合わせてググッとLEDが上がったり下がったり・・その視認性の高さ以外に見た目としても華やかで楽しく、チューナーアウトもしくはエクスプレッション・アウトの端子を持つヴォリューム・ペダルに対応しております。このOK Custom Designのものは、接続する製品によって極性を合わせる為に裏面のトリマーを調整してレベル・マッチングを図ることが出来るのも便利(現行品は筐体上面にトリマー装備)。そして現在愛用しているのが 'Pad' でダイナミズムを生成するNeotenicSoundのPurePad。これは2つに設定された 'プリセット・ヴォリューム' をスイッチ1つで切り替えるもので、ひとつは通常の状態(赤いLEDのSolo)、もうひとつが若干ヴォリュームの下がった状態(緑のLEDのBacking)となっており、'Pad' で音量を抑えながら全体のバランスを崩すことなく音量を上下できる優れもの。この切り替えによる音質の変化はありますが、音量を下げても引っ込みながらシャープなエッジは失われずまとまりやすい定位となります。わたし的には先頭でも後端でもなく真ん中に繋ぐのがポイントで、そんな工房による '取説' では以下の通り。

"ピュアパッドは珍しいタイプのマシンなので使用には少し慣れとコツが必要かもしれませんので、音作りまでの手順をご紹介します。アコースティックの場合は図のように楽器、プリアンプ、ピュアパッド、アンプの順に接続します。エレキギターなどの場合は歪みペダルなど、メインになっているエフェクターの次に繋ぐとよいでしょう。楽器単体でお一人で演奏される場合は、初めにピュアパッドをソロ(赤ランプ)にしておいて、いつものようにプリアンプやアンプを調整していただければ大丈夫です。ピュアパッドのスイッチを踏んで、緑色のランプになったら伴奏用の少し下がった音になります。複数の人とアンサンブルをする場合には、初めにピュアパッドをバッキング(緑のランプ)の方にして、他の人とのバランスがちょうどいいようにプリアンプやアンプで調整します。そしてソロの時になったらピュアパッドのスイッチを踏めば、今までより少し張りのある元気な音になってくれます。また、ピュアパッドを繋ぐと今までより少し音が小さくなると思いますが、プリアンプよりもアンプの方で音量を上げていただく方が豊かな音色になりやすいです。もしそれでアンプがポワーンとした感じとなったり、音がハッキリクッキリし過ぎると感じたら、アンプの音量を下げて、その分プリアンプのレベルを下げてみてください。ツマミを回すときに、弾きながら少しずつ調整するとよいでしょう。"

わたしの環境では 'ループ・サンプラー' でのオーバーダブする際、フレイズが飽和することを避ける為の導入のほか、宅録の際にもアンプのヴォリュームはそのままに全体の音像を一歩下げる、もしくは歪み系やディレイ、ワウのピーク時のハウリング誘発直前でグッと下げる使い方でとても有効でした。以前のPurePadはLED視認の為の電源以外はパッシヴの仕様なのですが、現在は新たにバッファー内蔵のアクティヴ版PurePadで新装してラインナップ。従来のパッシヴ版ではプリアンプや '歪み系' エフェクターの後ろに繋いでマスタープリセット的に使用することを想定していたようですが、このアクティヴ版は各種スイッチャーのチャンネルに組み込んだり、楽器の先頭に繋いでブースターの補助的アイテムとして用いるなど '使い勝手' の幅が広がりました。堂々の 'Dynamics Processor' という名と共にDC9Vアダプターのほか9V電池による駆動も可能です。








そんな管楽器の 'アンプリファイ' におけるヴォリューム・コントロールについては御大、マイルス・デイビスも重要なものとしてこのように述べております、その繊細なニュアンスの変化は1972年を境にヴォリューム・ペダルの老舗、DeArmondにトランペットでの音量カーブに合わせたパッシヴの 'Model 610' の特注品をオーダーしたことからも分かるでしょう。そんなダイナミズムがもたらす耳のポジションが音楽の新たな '聴こえ方' を提示しているのが興味深い。

"ああやって前かがみになってプレイすると耳に入ってくる音が全く別の状態で聴きとれるんだ。スタンディング・ポジションで吹くのとは、別の音場なんだ。それにかがんで低い位置になると、すべての音がベスト・サウンドで聴こえるんだ。うんと低い位置になると床からはねかえってくる音だって聴こえる。耳の位置を変えながら吹くっていうのは、いろんな風に聴こえるバンドの音と対決しているみたいなものだ。特にリズムがゆるやかに流れているような状態の時に、かがみ込んで囁くようにプレイするっていうのは素晴らしいよ。プレイしている自分にとっても驚きだよ。高い位置と低いところとでは、音が違うんだから。立っている時にはやれないことがかがんでいる時にはやれたり、逆にかがんでいる時にやれないことが立っている時にはやれる。こんな風にして吹けるようになったのは、ヴォリューム・ペダルとワウワウ・ペダルの両方が出来てからだよ。ヴォリューム・ペダルを注文して作らせたんだ。これだと、ソフトに吹いていて、途中で音量を倍増させることもできる。試してみたらとても良かったんで使い始めたわけだ。ま、あの格好はあまり良くないけど、格好が問題じゃなく要はサウンドだからね。"

そして、テナー・サックス奏者ジミー・ヒースの息子にしてマイルス・デイビス・グループのパーカッシヴなグルーヴを一手に担い、R&B/ソウル・ミュージック・マニアなわたしとしてはディスコ・ヒット 'Juicy Fruit' で有名でもあったジェイムズ・フォアマンこと 'ムトゥーメ' が冥界に旅立たれたようです。R.I.P.。













そしてDI出力から 'XLR→TRS' の変換ケーブルを介して繋ぎ 'アンプリファイ' するのはアコースティック用のコンボアンプ、SWR Calofornia Blonde Ⅱ。160W12インチ一発の本機とキャビネットのBlonde on Blondeをスタックさせて愛用中でして、2チャンネル用意されたBass、Mid Range、Trebleの3バンドEQ、アンサンブル中での '音抜け' を意識した高域を操作する 'Aural Enhncer' とハイファイ・ツイーターを背面に用意、そしてミキサー機能の 'センド・リターン' とスプリング・リヴァーブを装備しております。現在は 'ピエゾ+ダイナミック・マイク' のミックスとしてそのまま入力しておりますが、この2チャンネルを利用してもうひとつのマイク入力のみ 'アンビエンス' 用に分けてミックス出来るのは便利。また、このアンプ最大の特徴がハイ・インピーダンスによるアンバランス入力のほか、'Low Z Balanced' のスイッチを入れることでDI出力からTRSフォンのバランス入力に対応すること!。ちなみにこの機能はCalifornia Blonde Ⅱにのみ備えられており、初代機のⅠではDIのバランス出力からRadial Engineeringの 'リアンプ・ボックス' X-Amp Studio Reamperでインピーダンスを介して繋ぎます。このラインのバランス入力が他社のアンプにはない本機ならではの機能として重宝しており、取説ではこう述べております。

"ローインピーダンス仕様のギターのバランス出力を入力端子に接続するときは、このスイッチを押し下げてください。TRS端子による接続が必要なバランス接続では、最高のダイナミックレンジと低ノイスの環境が得られます。"





このSWRという会社の創業者Steve Rabe氏は元々Acoustic Control Corporationでアンプの設計に従事していた御仁。そのRabe氏がSWR退社直前に手がけていたアンプのひとつにこのアコースティック用アンプCalifornia Blondeがあり、これもAcoustic時代の設計思想を引き継いだものと言えるのかも知れません。The Doorsやサンタナ、ジャコ・パストリアスなどの使用で一斉を風靡したAcoustic Control Corporationのトランジスタアンプは、そのクリーンな出音からエディ・ハリスや駆け出しの頃のランディ・ブレッカー、そして御大マイルス・デイビスのステージの後方で壁の如く鎮座するほど愛用されておりました。ちなみに上の動画でもそうですが現在、一般的に管楽器の 'アンプリファイ' でよく使われているのはRolandのキーボード用アンプ 'KCシリーズ' です。









そして管楽器の 'アンプリファイ' 探求を旗印に、ちょこちょことやっているフィルターとコンプを組み合わせた '質感生成' の旨味。まあ、大雑把に言ってしまえばEQとコンプでどう音作りに反映させるか?という話になってしまうのだけど、最近は派手な効果や '飛び道具' でトランペットならざる音色を探求するよりこういう地味な感じが 'マイブーム' です。ともかく管楽器の 'アンプリファイ' でアンプやPAを用いる環境において、その 'サチュレーション' や 'クランチ' の倍音含めた管楽器の 'クリーントーン' を作ること。つまり、それはピックアップ・マイクからの '生音' の忠実な収音、再生ではなく、あくまで電気的に増幅した際に映える '生音を作る' という試みなのです。まずはKorgのSynthepedal FK-1とRoger Mayer 456という 'テープ・エミュレータ' による組み合わせ。このFK-1は日本が誇る偉大なエンジニア三枝文夫氏が手がけたもので、前身の京王技研で手がけたSynthesizer Traveller F-1に次いで単体のペダルとして製品化したもの。-12dB/Octのローパスとハイパス・フィルターがセットで構成された 'Traveller' とは、それぞれの動きを連携させて '旅人のように' ペアで移動させるという三枝氏の独創的なアイデアから名付けられた機能であり、これは国産初のシンセサイザーとして最近復刻されたminiKorg 700FSにも搭載されております。そして、Ampex 456テープとStuder A-80マルチトラック・レコーダーによる '質感' をアナログで再現したRoger Mayer 456は、いわゆるオープンリール・テープの訛る感じとバンドパス帯域でスパッとカットしたところに過大入力することから現れる飽和したサチュレーションに特徴があります。本機の大きなInputツマミを回すことで 'テープコンプ' の突っ込んだ質感となり、ここにBass、Treble、Presenceの3つのツマミで補助的に調整。本機にOn/Offスイッチはないのでバッファー的使用となるでしょう。とりあえず、この 'ヴィンテージな質感' の探求として 'Traveller' に特徴的なナローでイマイチ切れ味の悪いフィルタリングとRoger Mayerの 'テープ・エミュレータ' で味付けをすること。キモはRoger Mayer 456にある 'Presence' ツマミでの抜けの調整にあります。




Strymon Deco - Tape Saturation & Doubletracker

DSPの 'アナログ・モデリング' 以後、長らくエフェクター界の '質感生成' において探求されてきたのがアナログ・テープの '質感' であり、いわゆるテープ・エコーやオープンリール・テープの訛る感じ、そのバンドパス帯域でスパッとカットしたところに過大入力することから現れる飽和したサチュレーションは、そのままRoger Mayer 456やこのStrymon Decoのような 'テープ・エミュレーター' の登場を促しました。Studer A-80というマルチトラック・レコーダーの '質感' を再現した456 Singleは、大きなInputツマミに特徴があり、これを回していくとまさにテープの飽和する 'テープコンプ' の突っ込んだ質感となり、ここにBass、Treble、Presenceの3つのツマミで補助的に調整していきます。本機にOn/Offスイッチはないのでバッファー的使用となるでしょう。一方のDecoは、その名も 'Saturation' の飽和感と 'Doubletracker' セクションであるLag TimeとWobbleをブレンドすることで 'テープ・フランジング' のモジュレーションにも対応しており、地味な '質感生成' からエフェクティヴな効果まで堪能できます。また、このStrymonの製品は楽器レベルのみならずラインレベルで使うことも可能なので、ライン・ミキサーの 'センド・リターン' に接続して原音とミックスしながらサチュレートさせるのもアリ(使いやすい)。とりあえず、Decoはこれから試してみたい '初めの一歩' としては投げ出さずに(笑)楽しめるのではないでしょうか?。







この 'サチュレーション' と言えばKP-Adapterを用いて繋いでみたいのがElektronとOTO MachinesのDJ用マルチバンド・フィルター、と言ったらいいのだろうか、素晴らしいAnalog HeatとBoumをご紹介。Elektronにはギターに特化したAnalog Drive PFX-1という製品があるものの、こちらのAnalog Heatの方がシンセやドラムマシン、マイクからの音声などラインレベルにおける入力に対して幅広い 'サチュレーション' を付加、補正してくれます。その多様に用意されたプログラムの中身はClean Boost、Saturation、Enhancement、Mid Drive、Rough Crunch、Classic Dist、Round Fuzz、High Gainの8つのDriveチャンネルを持ち(もちろんアナログ回路)、そこに2バンドのEQとこれまた7つの波形から生成するFilterセクションで各帯域の '質感' を操作、さらに内蔵のエンヴェロープ・ジェネレーター(EG)とLFOのパラメータをそれぞれDriveとFilterにアサインすることで、ほとんど 'シンセサイズ' な音作りにまで対応します。また、現代の機器らしく 'Overbridge' というソフトウェアを用いることで、VST/AUプラグインとしてPCの 'DAW' 上で連携して使うことも可能。Elektronのデモでお馴染みCuckooさんの動画でもマイクに対する効果はバッチリでして、管楽器のマイクで理想的な 'サチュレーション' から '歪み' にアプローチしてみたい方は、下手なギター用 '歪み系' エフェクターに手を出すよりこのAnalog Heatが断然オススメです。一方のフランスOTO Machinesから登場する 'Desktop Warming Unit' のBoum。すでに '8ビット・クラッシャー' のBiscuit、ディレイのBimとリヴァーブのBamの高品質な製品で好評を得た同社から満を持しての '歪み系' です。その中身はディストーションとコンプレッサーが一体化したもので、18dBまでブーストと倍音、コンプレッションを加えられるInput Gain、Threshold、Ratio、Makeup Gainを1つのツマミで操作できるコンプレッション、低域周波数を6dB/Octでカットできるローカット・フィルター、4種類(Boost、Tube、Fuzz、Square)の選択の出来るディストーション、ハイカット・フィルター、ノイズゲートを備え、これらを組み合わせて36のユーザー・プリセットとMIDIで自由に入力する音色の '質感' をコントロールすることが出来ます。











そのFK-1の出発点とも言えるのがこちら、Korgの前身、京王技研によるSynthesizer Traveller F-1。三枝氏といえば日本のエフェクター黎明期を象徴する2種、Honey Psychedelic Machine、Vibra Chorusの設計者としてすでに 'レジェンド' の立場におり、本機はちょうど京王技研からKorgへと移行する過渡期に設計者からユーザーへの '挑戦状' として遊び心いっぱいに提供されながら、結局は現在まで '発見' されることなく 'コレクターズ・アイテム' として捨て置かれております。出でよ、挑戦者!。そんな本機の製品開発にはジャズ・ピアニストの佐藤允彦氏も携わっており、当時のプロトタイプについてこう述べております。なんと当初はペダルの縦方向のみならず、横にもスライドさせてコントロールする仕様だったというのは面白い。

"三枝さんっていう開発者の人がいて、彼がその時にもうひとつ、面白い音がするよって持ってきたのが、あとから考えたらリング・モジュレーターなんですよ。'これは周波数を掛け算する機械なんですよ' って。これを僕、凄い気に入って、これだけ作れないかって言ったのね。ワウワウ・ペダルってあるでしょう。これにフェンダーローズの音を通して、かかる周波数の高さを縦の動きでもって、横の動きでかかる分量を調節できるっていう、そういうペダルを作ってくれたんです。これを持って行って、1972年のモントルーのジャズ・フェスで使ってますね。生ピアノにも入れて使ったりして、けっこうみんなビックリしていて。"

余談ですが、佐藤氏がバークリー音楽大学から帰国した1968年、当時開発していた電気楽器のモニターとしてアプローチしてきたのが京王技研でした。面白いのは佐藤氏が目の前にした同社初のシンセサイザー 'Korgue' のプロトタイプに対して、'世界同時革命' 的(笑)に似たようなテクノロジーの進化のエピソードとしてこう述べております。

"8月に帰ってきた同じ年、京王技研(Korg)の社長さんから電話がかかってきたんです。アメリカに行く前からエレピやクラヴィネットを使っていたのを知っていて、「うちで今度、新しい電子オルガンを作ってみたんだけど、見に来て、ちょっと意見を聞かせてくれないか」っていうんですよ。それで行ったらば、ヤマハのコンボオルガンとかみたいなんだけど、音色を作れるようになっていたわけ。ここをこうすると音が変わるよ、というふうな。それで「これ、オルガンっていうより、シンセサイザーなんじゃないの?」って言ったら、シンセサイザーという言葉を誰も知らなかったの、その場にいる人が(笑)。

「なんだ、それは?」って言うんで、発振器からいろんな音が作れるっていうものを、シンセサイザーっていうらしいよって答えたら、「へえ、じゃあ、シンセサイザーっていうんだ、これは。そういう方に入るんだね」って。"





Frogg Compu-sound - Digital Filterring Device

ちなみに、このようなフィルタリングに特化した機能をマルチ・エフェクツ的に100個のプログラマブルで駆使するものとしては、1970年代後半にわずか100台ほどしか製作されなかった '初期デジタル風' な製品(中身のVCFはアナログらしい)のFrogg Compu-soundがありました。いかにも同時代的なEL管表示のデジタル・カウンターとテンキー操作はペダルというより '電卓風 シーケンサー' なルックスですけど、中身は意外に '飛び道具' とは真逆の実直なフィルター専用機であります。







フランク・ザッパのフィルタリングに対する音作りに訴えた超絶 'ニッチな' ペダルとして、本機は父親の楽曲を再現する上で息子のドゥイージルがザッパと縁の深いPerformance Guitarにオーダーしたマニアックな一台。Boss FV-500とFV-50の筐体を利用し、どでかい鉄板風アルミ板(軽い)を強引に乗っけてLo-Pass、Band-Pass、Hi-Passを切り替えながらフィルター・スウィープをコントロールするという荒削りさで実際、ペダル裏側には配線がホットボンドで固定されフォーミュラカーを見るような迫力がありまする。その肝心の中身なんですが・・ええ、この動画通りのほとんどVCFをノックダウンした 'シンセペダル' と呼べるほどエグい効果から、EQ的な操作をして帯域幅の広いQの設定、半踏み状態によるフィルタリングの '質感生成' やワウペダルのリアルタイム性まで威力を発揮します。また本機はBoss FV-500の筐体を利用したことでタコ糸によるスムースな踏み心地なり。こちらはKorgの 'Traveller' とは真逆の現行品らしい派手な切れ味で、それを後述するDyna Compでナローに抑えることにあります。そんなFZ-851と組み合わせる定番のDyna Comp!。現行品としていくつかの種類が用意されているこの古臭い効果ですが、ここでは2008年に復刻した 'MXR Custom Shop' 製の'76 Vintage Dyna Comp CSP-028をチョイス。どっかの工房がモディファイしたと思しきLEDとDC端子が増設されておりますけど、本機にはヴィンテージの心臓部とも言うべきIC、CANタイプのCA3080を搭載しております。このDyna Compに象徴されるダイナミズムをギュッと均すコンプの '質感' は、時に演奏の細かなニュアンスを潰す '悪役' として敬遠されてしまうのも事実。そんな1970年代のコンプでは当たり前であった圧縮の演出を '滲み' として捉えたとき、過去から現在までずっと本機の愛用者であるギタリスト土屋昌巳氏の発言は参考になります。

"ダイナコンプは大好きなんでいくつも持ってます。筆記体ロゴ、ブロック体ロゴ、インジケーター付きを持ってます。壊れてしまったものもあるし、5台以上は買ったんじゃないかな。やっぱり全然違いますしね。個人的にはインジケーターなしのブロック体という中期のモデルが好きですね。ダイナコンプを使うことで、ギターのボリュームのカーブがきれいになるんですよ。フル・ボリュームの時と、7〜8ぐらいにした時の差がすごくいい感じになる。ライブでも、レコーディングでも、ダイナコンプは必ずかけっぱなしにしています。コンプレッション効果よりも、ギターのボリュームのカーブをきれいにするために使うんですけどね。(中略)けっこう雑に設定してあるというか、変にハイファイに作っていない分、ツマミをほんの1ミリ調整するぐらいで音が全然変わってくるところとか僕は好きですね。特にダイナコンプは、ちょっとツマミを動かすだけでアタックがかなり変わってくる。本当、ダイナコンプは、完全に僕のスタイルに欠かせないものになっていますよね。あれがないと自分のギターの音が出せないと思う。"









Maestro Parametric Filter MPF-1
Stone Deaf Fx EP-1 Expression Pedal

MaestroのParametric Filterは、同社でエフェクターの設計を担当していたトム・オーバーハイムが去り、CMI(Chicago Musical Instruments)からNorlinの傘下でラインナップを一新、設計の一部をモーグ博士が担当することで生み出されました。本機特有の 'フィルタリング' はやはり1990年代以降の '質感世代' に再評価されることとなり、とにかく何でも通してみる・・ジャリジャリと荒い感じとなったり、'ハイ落ち' する代わりに太い低域が強調されたりすれば、それはもう 'ベッドルーム・テクノ世代' の求める '質感' へと変貌します。後にMoogはこれを '歪み系' のエフェクターに特化したMinifooger MF Driveとして蘇らせましたが、英国の工房、Stone Deaf FxからもPDF-2として登場。本機は 'Clean' と 'Dirty' の2つのチャンネルで切り替えて使うことが可能でおお、便利〜。また、専用のエクスプレッション・ペダルを用いればエンヴェロープ・フィルターからフェイザー風の効果まで堪能できる優れモノ。管楽器においては適度なクランチは 'サチュレーション' 効果も見込まれますが、完全に歪ませちゃうとニュアンスも潰れちゃう、ノイズ成分も上がる、ハウリングの嵐に見舞われてしまうので慎重に 'サチュらせる' のがこれら設定の 'キモ' なのです。

JHS Pedals Colour Box V.2 ②

今やNeveと並び、定評ある音響機器メーカーの老舗として有名なAPIが 'ストンプ・ボックス' サイズ(というにはデカイ)として高品質なプリアンプ/EQ、コンプレッサーで参入してきました。ギター用のTranZformer GTとベース用のTranZformer LXの2機種で、共にプリアンプ部と1970年代の名機API 553EQにインスパイアされた3バンドEQ、API525にインスパイアされたコンプレッサー(6種切り替え)と2520/2510ディスクリート・オペアンプと2503トランスを通ったDIで構成されております。ここまでくればマイク入力を備えていてもおかしくないですが、あえて、ギターやベースなどの楽器に特化した 'アウトボード' として '質感' に寄った音作りが可能。しかし 'Tone' や 'Comp' とは真逆にLEDのOnで光っている状態がバイパス、Offの消灯状態でOnというのはちょっとややこしい(苦笑)。そして、この巨大な 'アウトボード型' ペダルは 'ディスコン' となった代わりに新装登場したのがEQ/Boost部のプリアンプとコンプレッサーを個別に分けてリーズナブルな仕様となったGTR - EQ/BoostとCMP - Compressorです。また、そんな '質感生成' においてここ最近の製品の中では話題となったJHS Pedals Colour Box。音響機器において伝説的な存在として君臨するルパート・ニーヴのEQ/プリアンプを目指して設計された本機は、そのXLR入出力からも分かる通り、管楽器奏者がプリアンプ的に使うケースが多くなっております。本機の構成は上段の赤い3つのツマミ、ゲイン・セクションと下段の青い3つのツマミ、トーンコントロール・セクションからなっており、ゲイン段のPre VolumeはオーバードライブのDriveツマミと同等の感覚でPre Volumeの2つのゲインステージの間に配置、2段目のゲインステージへ送られる信号の量を決定します。Stepは各プリアンプステージのゲインを5段階で切り替え、1=18dB、2=23dB、3=28dB、4=33dB、5=39dBへと増幅されます。そして最終的なMaster Gainツマミでトータルの音量を調整。一方のトーンコントロール段は、Bass、Middle、Trebleの典型的な3バンドEQを備えており、Bass=120Hz、Middle=1kHz、Treble=10kHzの範囲で調整することが可能。そして黄色い囲み内のグレーのツマミは60〜800Hzの間で1オクターヴごとに6dB変化させ、高周波帯域だけを通過させるハイパス・フィルターとなっております(トグルスイッチはそのOn/Off)。現行品は、新たにファンタム電源を搭載したColour Box V2として 'ヴァージョンアップ' しております。


ちなみにこのDyna Compと並んで1970年代を代表する 'ペダルコンプ' として殿堂入り、現在に至るまで定番として新たなユーザーを獲得しているのがRossのCompressor。創業者Bud Rossの意志を継いだ孫らにより2019年に 'Ross Audibles' として復活させたのがこの 'Gray' Compressorです。未だにヴィンテージの米国製初期、後期、台湾製などが市場を賑わせておりますが、この復刻版もかなりの再現度ながら、世界的に枯渇するアナログのパーツやコロナ禍により市場への供給が不安定のまま少量入荷状態ですね。ともかくナチュラルなコンプレッションをお求めであればコレは外せない一台。さて、ここで巷に溢れるペダル型のコンプレッサーについて言わせてもらえれば、Empress、Becos、Origin Effects、FMR Audio etc...現在ではさらに細かなパラメータと高品質な音色が '売り' の製品が市場を賑わせております。大抵は従来の 'ヴィンテージコンプ' にあった圧縮メインでダイナミズムを変えてしまう効果を避けて、いわゆるUreiなどの 'スタジオ機器' に象徴されるスレッショルドやレシオ、機種によってはサイドチェインの機能などを盛り込み不自然にならないコンプレッションをペダルで実現しております。ここでわたしがセレクトしたのは基本的に単純で古臭いコンプレッションのペダルばかりなのですが、コンプレッサーはそのパラメータが増えるほど操作が扱いにくく目的とする音色に容易に近付けません。そして、ここでの目的はコンプを通すことによる '質感' が大事なのであり、むしろ製品ごとの個性が強いものほどフィルターと組み合わせたことによる '趣旨' に叶うものでもあります。ちなみにそのRossとDyna Compは回路的にはほぼ '従兄弟' のような関係ということで(笑)、ここでは日本を代表するギタリスト鈴木茂氏と佐橋佳幸氏による 'コンプ動画' をどーぞ。











定番のEQで補正する音作りに 'プラス・アルファ' してここでは、単なるEQというよりそれこそ 'シンセサイズ' なフィルタリングまで対応するカナダの工房、Fairfiled CircuitryのLong Lifeを繋いでみます。エクスプレッション・ペダルの他にフィルター周波数のQとVCFをそれぞれCVでモジュラーシンセからコントロール出来るなど、なかなか凝った仕様です。こちらでの音作りには、Long Lifeのブースター的アプローチと兼用しての '歪むコンプ' のアプローチによるサチュレーションに挑戦。そこで近年の製品としては珍しい1970年代にスウェーデンのエンジニア、Nils Olof Carlinの手により生み出されたコンプレッサーをチョイス。本機の特徴はコンプと銘打たれていながら 'Dist.' のツマミを備えることでファズっぽく歪んでしまうことで、当時、エフェクター黎明期においては 'ファズ・サスティナー' とクリーンにコンプ的動作をするものを単に 'サスティナー' として使い分ける傾向があったそうです。今でいうBJFEに象徴されるスウェーデン産 'ブティック・ペダル' のルーツ的存在であり、それを同地の工房Moody SoundsがCarlin本人を監修に迎えて復刻したもの。1960年代後半から70年代初めにかけてそのキャリアをスタートさせたNils Olof Carlinは、電球を用いたモジュレーションの独自設計によるPhase Pedalのほか、持ち込まれた既成の製品(多分MXR Dyna Comp)をベースにしたCompressor、わずか3台のみ製作された超レアなRing Modulatorを以ってスウェーデン初の 'ペダル・デザイナー' の出発点となりました。ここまではあくまでコンプレッサーを '質感' として補正する使い方でしたが、こちらは従来のセオリー通りな 'コンプ→EQ' のセッティングで狙いはCarlinの '歪み' をLong Lifeでコントロールすることにあります。

Spectra 1964 Model V610 Complimiter
Spectra Sonics Model 610 Complimiter Custom
Spectra Sonics Model 610 Complimiter 'Sequential Stereo Pair'

そんなCarlin Compressorに見る '歪むコンプ' の系譜は、いわゆる 'ファズ+サスティン' とは別にスタジオで使用するアウトボード機器で珍重された '飛び道具コンプ'、Spectra SonicsのModel 610 Complimiter (現Spectra 1964 Model C610)がございます。1969年に発売以降、なんと現在まで同スペックのまま一貫したヴィンテージの姿で生産される本機は、-40dBm固定のスレッショルドでインプットによりかかり方を調整、その入力レベルによりコンプからリミッターへと対応してアタック、リリース・タイムがそれぞれ変化します。クリーントーンはもちろんですが、本機最大の特徴はアウトプットを回し切ることで 'サチュレーション' を超えた倍音としての '歪み' を獲得出来ること。上のドラムの動画にも顕著ですけど一時期、ブレイクビーツなどでパンパンに潰しまくったような '質感' で重宝されたことがありました。こんな個性的に潰すコンプの味はAPIやNeveのモジュール、Urei 1176などの流れに続いてその内、Spectra 1964から 'ペダル化' することで新たなブームを期待したいですね。







このコンプをベースとした複合機では、ステレオ・リヴァーブとコーラス・エコーを組み合わせたNeon Eggという工房のPlanetarium 2がそのビザールな佇まいから興味をそそられます。ある意味 'ガレージ丸出し' なアナログシンセ的筐体から生成されるサウンドは、Attack、Release、Ratioに加えて優秀なサイドチェイン・コントロールで 'ダッキング' による音作りを約束します。これもV.2で従来のデュアル・モノからリアル・ステレオ仕様となりました。そして2つのリヴァーブとコーラスから3つの異なるアルゴリズムを選択して、Sizeツマミは2つのリヴァーブ・サイズとホール・リヴァーブを追加。EchoセクションはMix、Time、Feedbackに加えてモジュレーションの部分で正弦波と方形波の選択と共にワウフラッター的不安定な揺れまでカバー。こーいう作り手の趣味丸出しな製品が好きだなあ。








エコー繋がりということで、手持ちの '飛び道具' 的アプローチの変わり種デジタル・ディレイ3種。今やすっかり '曰くつき' (苦笑)のブランドとなってしまいましたがある時期、日本の 'ブティック・ペダル界' で気炎を吐いていたHonda Sound Worksが2007年に工房を閉じる最後の製品として送り出したFab Delay。PT2399チップを用いた 'アナログライク' のデジタル・ディレイなのですが、FeedbackとTimeをスライダーコントロールとすることでリアルタイムかつ攻撃的に扱うことに特化したもの。動画は静岡の工房Soul Power Instrumentsでディレイ音を残しながらOn/Offする 'Trail機能' をすべく、ミキサー回路内蔵のモディファイをしております。オリジナルは2つの小ぶりなプラスティック製のスライダーで操作しますが、現在、手許にあるのはゴム製の大ぶりで量感のあるスライダーに換装されているのが格好良し!。しかし主宰者の本田氏、わたしは1990年代後半の 'ヴィンテージ・エフェクター' ブームを牽引した専門店 'Ebisu Gang' で店長をしていた時に色々教えて頂いた頃が懐かしい(笑)。続いて米国メリーランド州ボルティモアの工房、Triode Pedalsから登場したHex Delay。その名の如く6角形を示す 'Hex' 状に配置された6つのツマミはWet、Dry、Fine、Coarse、Repeats、Feedback、Coarseとして、ディレイタイムのCoarseとFineを調整することで 'グリッチ' 効果からFeedbackによる爆音に至るまで実に幅広い音作りを約束します。この工房特有の 'アシッド・エッチング' による凝った筐体のデザインも個性的ですね。一方でギリシャの 'シンセサイズ' を得意とする工房Dreadboxからは、いわゆる 'ビット・クラッシャー' と組み合わせたディレイSonic Bitsがスタンバイ。通常のディレイから 'Bits' スイッチを入れることで一転、'ロービット' に荒れた世界へと変調します。最大1200msあるディレイタイムをエクスプレッション・コントロール出来るほか、さらにCV入力を備えることで 'モジュラーシンセ' と連携した音作りが可能。この 'ビット・クラッシャー' と近しい効果として、いわゆる 'PLL' (Phase Loked Loop)回路を用いた究極ものとしてはSchumann PLLというものがあります。現在、Reverb.comで 'FT Elettronica' から復活しておりますが、そのオリジナル 'Schumann Electronics' の名で少量製作された '初期モノ' がなんと3台Reverb.comで出品されておりまする。また、クリッピング回路による 'トーン・シェイパー' な効果を 'Color' と 'Sag' ツマミで生成して 'ワウ半踏み' 的ジューシーに歪ませたその名もスバリ 'LSD'。








そしてイタリアの新興工房であるTEFI Vintage Lab.のMs. Delaylette。Binson EchorecやMaestro Echoplexに象徴される磁気ディスク、磁気テープで生成する往年のテープの '質感'。本機はクラシックなEchoとNachhallの2つのモードがあり、大仰な機械的動作から '仮想再生ヘッド' として様々なエコーの反響を生成します。もちろんアナログならではの '訛り方' であるワウ・フラッターの挙動も再現しております。さて、そんなアナログならではの味をクリアーなデジタル・ディレイと組み合わせて用いるアイテムとして、このJ.Rockett Audio Desiginsから登場したAPE (Analog Preamp Experiment)がありますね。本機を前後で配置してプリアンプ的に配置するシリーズ接続、そして内蔵のループ接続によりディレイの 'キルドライ' で 'デジタル臭さ' を鈍らせるなど、実に多彩な組み合わせによる音作りに対応しているのは嬉しい。ちなみに本機のプリアンプ使用ではRepeats、Mix、Rec各ツマミはそれぞれトレブル、アウトプット、ドライヴのコントロールとして機能しますが、ループ接続の際にはRec、Mixツマミでコントロール。また、このテープヘッドに録音したような '質感' の生成には、Ecoplex同様に内部電圧22.5VをDCコンバータで昇圧して駆動する ' シミュレート' にも対応します。また、この手の最高峰としては英国のエンジニアであるピート・コーニッシュの手がけた 'TES' ことTape Echo Simulator。BossのDigital Delayをベースに徹底的なチューンアップを施したカスタムメイドですけど、少しでもその雰囲気を味わって頂きたいと名古屋の工房、BamBasicがBoss DD-6の 'ノックダウン' をベースにした同種品でカスタマイズしております。一方、今年最初の興奮するニュースはあの名門MaestroがGibsonの手により復活!して、その5種ラインナップのうちBBDを用いたアナログ・ディレイが登場。


 






カリフォルニア州オークランドから登場するフィルターの新たな刺客、Vongon Electronicsの多彩な機能満載なParagraphs。まさに 'フィルターフェチ' なわたしには打って付けな一台であり、'4 Pole' のエンヴェロープ・ジェネレータを備えたローパス・フィルターを基本にモメンタリースイッチでトリガーするエンヴェロープ、CVやMIDIによるモジュラーシンセとの同期など現在の多目的な音作りに対応しているのが良いですね。そのVCFの心臓部はAS3320のアナログチップを用いてLFOに相当するエンヴェロープ・ジェネレータは0.05Hzから始まり20秒のサスティン、300Hzのスレッショルドに至るまでうねるようなモジュレーションを付加します(もちろん自己発振可能)。また、入力部には楽器レベルからラインレベルまで幅広い信号を受け持つゲインを受け持っているのが近年の機器らしいですね。そして本機に合わせる現代のモダンなコンプとして、ナチュラルな効果で唯一無二のスウェーデン産BJF ElectronicsのPale Green Compressorをチョイス。このBJFEを主宰するBjorn Juhlの名を知らしめた代表的製品のひとつであり、ザ・ビートルズが当時のアビーロード・スタジオで用いたコンプレッサー、RS-124(Altec436BのEMIモディファイ)が本機製作のきっかけとのこと。最近のナチュラルなコンプレスの潮流に倣ったトーンから真ん中のツマミ 'Body' を回すことで空間的な幅の調整がイジれます。このBJFEの音は世界に認められてお隣フィンランドのブランド、Mad ProfessorからForest Green Compressor、さらに米国のブランドBear FootからPale Green Compressorとしてそれぞれライセンス生産による 'Re-Product' モデルが登場しております。動画はそのPale Greenの後継機に当たるPine Green CompressorとBear Footのものですが、本家BJFEとしては2002年の登場以降、淡いグリーンのニトロセルロースラッカーから深いグリーンへの変更と共にPine Green Compressorへ変わります。ここでフォトセルと 'Body' を司る単軸二連ポットが変更されて3ノブ、4ノブ、5ノブの仕様と共に現在に至ります。わたしのチョイスは不定期にPedal Shop Cultがオーダーする初期Pale Green Compressorの '2020復刻ヴァージョン' です。ここでのセッティングはまさに現行品ならではのモダンな '質感' が狙いで、BJFE特有の 'ム〜ン' とした密度のある艶っぽさこそ至宝!。






NeotenicSound Magical Force - Column

ちなみにわたしのメインのエフェクターボードで絶対に欠かせないのがNeotenicSoundのダイナミクス系エフェクターMagical Force。いわゆる 'クリーンの音作り' というのをアンプやDI後のライン環境にまで幅広く '演出' させたものなのですヨ。まさに '縁の下の力持ち' 的アイテムというか、実際の楽器本来が持つ '鳴り' や 'コシ'、'旨味?' のようなものを 'アコースティック' だけでは得られないトーンとして生成します。2011年頃に 'Punch'、'Edge'、'Level' の3つのツマミで登場した本機は一度目のリファインをした後、新たに音の密度を司るこの工房お得意の 'Intensity' を追加、4つのツマミ仕様へとグレードアップしたMagical Force Proへと到達しました。しかし不安定なパーツ供給の面で一度惜しむらく廃盤、その後、声援を受けて小型化と 'Intensity' から 'Density' に名称変更して根本的なリファイン、4回目の変貌を遂げたのが現行機Magical Forceとなりまする。また、惜しくも 'ディスコン' となりましたが、本機からそのコンプ的機能 'Density' だけを抜き出した単体機も用意されておりました。

本機はプリアンプのようでもありエンハンサーのようでもありコンプレッサーのような '迫力増強系' エフェクター。とにかく 'Punch' (音圧)と 'Edge' (輪郭)の2つのツマミを回すだけでグッと前へ押し出され、面白いくらいに音像を動かしてくれます。'Density' (密度)を回すと音の密度が高まり、コンプレスされた質感と共に散っていってしまう音の定位を真ん中へギュッと集めてくれます。コレはわたしの '秘密兵器' でして、Headway Music Audioの2チャンネル・プリアンプEDB-2でピックアップマイク自身の補正後、本機と最終的な出力の160Wコンボアンプの3バンドEQでバランスを取っております。本機の特徴は、DI後のラインにおける 'クリーンの音作り' を積極的に作り込めることにあり、おいしい帯域を引き出してくれる代わりにガラリとバランスも変えてしまうのでかけ過ぎ注意・・。単体のEQやコンプレッサーなどの組み合わせに対し、本機のツマミは出音の変化が手に取るように分かりやすいのが良いですね。設定はLevel (11時)、Punch (1時)、Edge (11時)、Density (9時)。ともかく、わたしのラッパにおける 'クリーン・トーン' はコイツがないと話になりません。ただし '魔法' とはいえ、かけ過ぎればコンプ特有の平べったい質感になってしまうのですが、あえてガッツリと潰しながらEdgeをナロウ気味、Punchで張り出すような '質感生成' してみるのが面白いかも。とりあえず、各自いろいろと研究しながらコイツを体感してみて下さいませ。








Hatena ? Active Spice A.S. - 2012

そんな '音場補正' に特化したプリアンプとして '緑色の筐体' でおなじみActive Spice。2000年代初め、ヴィンテージ・エフェクター再評価以後、いわゆる 'ブティック・ペダル' と呼ばれた個人によるペダル製作の工房が全国で勃興します。'Hatena ?' というブランドを展開したEffectronics Engineeringもその黎明期を象徴する工房で、特にActive Spiceはベーシストを中心にヒットしました。唯一動画としてUPされているThe Spiceはその最終進化形であり、すでに廃盤ではありますがダイナミクスのコントロールと '質感生成' で威力を発揮してくれます。後継機のMagical Forceも独特でしたがこのThe Spiceのパラメータも全体を調整するVolumeの他はかなり異色で、音圧を調整するSensitivity、Gainは歪み量ではなく音の抜けや輪郭の調整、Colorはコンプ感とEQ感が連動し、ツマミを上げて行くほどそのコンプ感を解除すると共にトレブリーなトーンとなる。さらにブースト機能とEQ感を強調するようなSolo !、そしてTightスイッチはその名の通り締まったトーンとなり、On/Offスイッチはエフェクトの効果ではなくSolo !のOn/Offとのことで基本的にバッファー的接続となります。ちなみに画像左側のものは初期のプロトタイプであり、Level、Wild !、Toneの3つのツマミという仕様でDC9Vのほか、9V電池ホルダーが基板裏側に内蔵?されるように装着しているのが面白いですね。ToneはそのままEQ的機能ですがこのWild !というツマミ1つを回すことでSensitivityとGainの効果を担っており、この後の製品版よりサチュレーション的飽和感の '荒さ' がいかにも初期モノっぽい。まだ南船場で工房を構える前の自宅で製作していた頃のもので、この時期の作業はエッチング液に浸した基板から感光幕を除去すべく玄関前?で干していたブログ記事を覚えております(笑)。Acitive Spiceはその 'クリーンの音を作り込む' という他にないコンセプトで今に至る '国産ハンドメイド・エフェクター' の嚆矢となり、さらに 'プリアンプ感' の強調した派生型Spice Landを始め、2009年、2011年、2012年と限定カラー版(2011年版はチューナー出力増設済み)なども登場しながら現在でも中古市場を中心にその古びないコンセプトは健在なり。




Terry Audio The White Rabbit Deluxe ①

そしてMagical Forceと並ぶわたしの隠れた '魔法' であるTerry Audio The White Rabbit Deluxe。こちらは1960年代のMcintoshのオーディオ・アンプがベースとなっており、いわゆるコンパクト・エフェクターにおいて 'ライン・アンプ' の発想から音作りをするものです。本機の '解説' を読んでみるとNeotenicSound Magical Forceと類似した効果を求めているようで、一切その表記のない3つのツマミは左から青い矢印と共にゲイン、赤い矢印の2つのツマミはメーカーによれば '回路の動作自体をコントロールし、シャッタースピードと絞り量で調整されるカメラの露出のように有機的に連動している' とのこと。何だかMagical ForceのPunchとEdgeを思わせるパラメータのように聞こえますが、これら2つのツマミの設定をフットスイッチで切り替えることが出来ます。また、ゲインを上げていくとファズの如く歪んでくるのもまさにギター用に特化した 'ブースト的' 音作りと言って良く、その歪み方としてはJHS Pedals Colour Boxのコンソールにおける 'ファズっぽい' 感じと同様です。後段にこのWhite Rabbit Deluxeを配置することでサチュレートした 'ハイ上がり' のトーンと共に一枚覆っていたような膜がなくなり、音抜けの良くなる 'マスタリングツール' のような位置にある機器ですね。













コンプレッサーを '質感' というテーマで特化させる上で、そこから派生していると思しき? 'ベッドルーム・テクノ' 世代とプラグインのDSPテクノロジーからもたらされた 'ローファイ' 系エフェクターも見て行きたいと思います。この名称、機能をコンパクト・エフェクターで初めて具現化したIbanezの 'Tone-Lok' シリーズ中の迷機、LF7 Lo Fi。まさにギタリストからDJ、ラッパーのような人たちにまでその裾野を広げたことは、この入力部にGuitar、Drums、Micの3種切り替えスイッチを設けていることからも分かります。それを引き継いだのか?、そのまま新たな 'ローファイ' の価値観によるモジュレーションのかたちとして提示したのがこちら、Z.Vex Effects Instant Lo-Fi Junky。さすがエフェクター界の奇才、Zachary Vexが手がけたその着眼点は、いわゆるアナログ・レコードの持つチリチリ、グニャリとした '訛る' 回転の質感に特化したものというから面白い。特に真ん中に配置された 'Comp ←→Lo-Fi' ツマミがもたらす '質感' はその気持ちの良い 'ツボ' をよく心得ている。しかし、この 'なまり具合' を聴いていると爽やかな陽気と共に遠い昔の記憶へ思いを馳せたくなりますねえ。さらに現在の 'ローファイ' 対決としてZ.Vex Effects Instant  Lo-Fi JunkyとCooper Fx Generation Lossの比較動画もありますが、このGeneration Lossはその後、Chase Bliss Audioとの 'コラボ' による限定版まで登場しました。続くRecovery Effects Cutting Room Floorはピッチ・モジュレーション・エコーの変異系で、モメンタリー・スイッチによる 'Freeze' 効果からCV入力によるシンセサイズの変調など、グリッチの音作りまでカバーする幅広いもの。そしてHungry Robot PedalsのThe Wardenclyffeではローパス、ハイパスのフィルタリングとリヴァーブの 'アンビエンス' 含めて演出します。さらにイタリアからTEFI Vintage Lab.なる新興の工房の新たな 'ローファイ・プロセッサー' であるGolden Eraが登場。TemplesのリーダーであるJames Edward Bagshawのアイデアから生み出されたとのことで、いわゆるテープにおけるアナログ・レコーディングの '質感' を生成します。6つのツマミのうち 'WOB.dpt' でテープの摩耗と不安定なワウ・フラッターの再現、'WRP.dpt' でその音ズレの深さを調整しながら 'Noise' を混ぜて行くことで歪んだ世界が表出します。こちらも個人工房ゆえの少量生産による入手難な人気ペダルとなりまする。







いわゆるEQとは違う一昔前の '質感生成器' であるUrei 565TやMoogのThree Band Parametric EQ、そして '飛び道具コンプ' としてスタジオで現在でも珍重されるSpectra SonicsのModel 610 Complimiter(現Spectra 1964 Model C610)など、その後のDJ用エフェクターとしてのフィルターの音作り含め、まだまだ探求すべき分野は幅広くあります。Lovetone Meatballはそんな 'ベッドルーム・テクノ' の価値観の時代に産み落とされた傑作のひとつでした。以下、その発想のきっかけとなる 'サウンド&レコーディングマガジン' 1996年11月号の記事 '質感製造器〜フィルターの可能性を探る' からエンジニアの杉山勇司氏(S)と渡部高士氏(W)の対談記事をどーぞ。この頃はまさに四畳半の一室から世界へと発信する 'ベッドルーム・テクノ' の黎明期で、アナログシンセによる 'シンセサイズ' の意識がサンプラーや 'ローファイ' の価値観を通じて、あらゆるものを '変調' させるのが面白い時代でした。

− そもそもフィルターを能動的に使おうと思ったきっかけはなんですか?。

S − 最初に白状しちゃうと、渡部君からトータルにフィルターをかけるって話を事務所で遊んでいたとき聞いて "あっ" って思ったんだ。それまでの僕にとってのフィルターは、シンセの延長でしかなくて、Analogue SystemsのFilterbank FB3を持ってたけど、LFOでフィルターが動くエフェクトと考えていた。だからEQを手で回すのとあまり変わらない感じだよね。でもそのころ渡部君は、2ミックスをフィルターに通すって馬鹿なこと言ってた。

− それはだれかが先にやってたんですか?。

W − 2ミックスのフィルタリングは4年前に考えたんです。ミックスしてて、音が固くてどうしようかなって思ったときに "フィルターでもかけてしまえ" と(笑)。Akai S1000のループがRolandの音したらいいなって思って、Roland System-100Mに通してみた。結果的にフィルターを通るだけで思った音になったんですよ。

S − 変わるんだよね。それでフィルターを絞れば、また味も付くし。でも僕がそれに気付いたのは大分後。シンセはいじってたけど、それはシンセらしい使い方で、VCOがあってVCFも音作りの順番の1つでしかなかった。でもArp 2600を触り始めて "ここに音を入れてもいいの" って思ったんだ(笑)。それでFB3にも "ドラム入れてもいいじゃん" って気付いた。

W − 簡単にできるのはDrawmerのノイズゲートDS-201なんですよ。これにはローパス/ハイパスが付いていて、ザクッと切れるんです。これならどのスタジオにもありますしね。

− しかしそれを実際の現場でやってみようと考えるのは大変だったんじゃないですか?。

S − 昔は音が汚くなることを考えるのはダメだったよね。例えばギターだったらSSLのプリアンプより、Focusrite通した方がいいに決まってると思ってた。

W − それは1ついい音ができたら、簡単だから次もそうしようってことだよね。

S − で、そうやって録ると、ハイが延びていい音になる。でもそれは値段が高いからいい音になるっていう意識だし、EQもハイがあればあるほどいい音って発想にも近いよね。フィルターなんて通したら、当然S/Nは悪くなるし、ハイもローも落ちる。でもあるときにEQでローを足すんじゃなくて、ハイをしぼったときに自分にとってのいい音になることに気付いたんだ。今はいらない部分を削ったら、必要な部分をうまく聴かせることができると思ってる。

W − 実際5kHz以上って倍音が崩れてるから、いらない場合も多いんだよね。デジタルで22kHz以上がなくて気になるのは、それ以上の帯域がないからじゃなくて、急激にそのポイントでカットされているからなんですよ。

S − ローファイって言葉は大嫌いなんだけど、ハイファイに縛られてはいたよね。

W − フィデリティ(Fidelity)って '正確' って意味だから、自分のやりたいことができてるんだったら、それはハイファイなんだと思いますよ。

− 渡部さんの場合そんな制約が最初からなかったのはどうしてですか?。

W − それはエンジニアリングの入り口が違ったからだと思います。値段の張る機材があまり周りになかったのと、シンセのオペレートとエンジニアリングの両方を一緒にやるんで、卓のEQをいじるよりシンセのフィルターでいじった方が、楽に欲しいサウンドが手に入れられることが分かったんです。

− フィルターとEQの違いは何ですか?。

S − 一緒なんだけど違うという部分が分からないと使わないよね。

W − 僕がお客の立場で、エンジニアがEQじゃなくフィルターに僕の音を入れようとしたら、嫌がるだろうな (笑)。EQってエフェクターなんだけど、エフェクター的に使っちゃいけないという部分があるじゃないですか。

S − エフェクター的に使うんだったら、フィルターの方が面白いよね。例えば、以前ウクレレの音をArp 2600にスルーして録音したことがあった。それはArpのプリアンプの音なんだろうけど、それがすごくいい音になったんだ。1度その音を知ってしまったら、EQを細かくいじって同じ音を作ろうとはしないよね。想像もできなかったハイ落ちをしてるその音が実にいい音なんだ。

− そんな想像もできない音になる可能性という部分がフィルターの魅力の1つでしょうか?。

W − お手軽にいい音になるというかね。

S − 1度通して音が分かってしまうと、もう自分の技になるから、想像できるんだけどね。

− しかしEQで作り込めばフィルターと同じ効果が期待できるのではないですか?。

W − それは無理です。NeveのEQをどうやってもSSLでシミュレーションできないのと同じこと。例えばSystem-100Mを通したら、こんな細いパッチケーブルを音が通るから、それだけでも音が変わるし。機材ごとに違う回路を通ることによって、それぞれの音になるんですよ。

− 機材ごとのそんな特性を、人間の耳は感知できるものだと思いますか?。

W − 瞬時に判断することはできないけど、音楽になると分かるでしょうね。それは紙を触ってツルツルしているものが、少しざらついた感触になるような、そんな判断ですけどね。

S − それはエンジニアの耳ではなくても分かる違いだろうね。

W − よくオーディオマニアの人が、レコードからCDに変わったとき、奥さんが急に "うるさい" って言うようになったって話がありますよね。それを考えるとだれもが分かるものなんでしょうね。実際、2ミックスをSystem-100Mにただ通して聴いているだけでは、その違いがあまり分からない人もいる。しかしそれを大音量で長時間聴いていると、それまで耳が疲れていたにもかかわらず楽になったりすることがあるんですよ。

− 2ミックスにフィルターをかけるエンジニアは結構いるんでしょうか。

W − ほとんどいない。トータル・フィルターって言葉自体僕が作ったんだもん(笑)。第一エンジニアがフィルターを持っていないでしょ。僕はここ(オア・スタジオ)にあるからSystem-100MやRoland SH-2を使ったりしてます。2ミックスを通すために、わざわざもう1台買ったんだけど、フィルターの性能が全然違うんですよ(笑)。

S − 僕もArp 2600のフィルターとアンプの音が好きで、それだけで売ってほしいくらい。でもこれも1台1台性能が違うんだよね。これじゃ2ミックスに使えないって。

W − System-100Mは1モジュールでステレオというか2チャンネルあるから大丈夫なんですよ。

S − 僕も1度片チャンネルずつ別々に1つのフィルターを通したことがあった(笑)。

W − 要するに歪んでるんですよ。コンプでたたいたような状態。だからモノ・ミックスにするしかないですよ。モノでフィルターかけて、後でPro Toolsで加工するのはどうでしょう(笑)。

− 質感が出来上がったものは、他のメディアに移してもそのまま残っていくんでしょうか?。

W − それは残りますね。FocusriteもNeveもヘッドアンプは音を持ち上げるだけでしょ。それだけなのに音が違う。エンジニアは音の入り口のアンプでまず音を作るわけで、卓で作るんだったらコンプでいじるんだろうけど、コンプレッションがいらない場合もある。だからサンプラーに通して、ピークをなくして、アタックを落としたりすることもあります。ADコンバータ通すこともフィルターですから。

− トータルにかなり強烈にフィルタリングすることもあるんですか?。

W − 向こうのテクノでは、モコモコしたサウンドからどんどんトータルにフィルターが開くものがありますね。

S − それはそんな音を理解できる人間がエンジニアリングしたり、アーティスト本人がエンジニアリングを担当したりしなくちゃできない。そんな作業は音楽性を選ぶんだろうけど、概念的には音楽性は全く選ばないと思う。

W − 例えばアコギをフィルターに通しても、普通に良くなるだろうし、暖かくなるだろうし、ワウにもなる。でも実際にフィルターで大きくカットするのは問題ですよね。それだったら、ローパスよりハイパスの方が使い手があるかもしれない。

S − Ureiにも単体フィルターがあったもんね。真空管のマイクを使って真空管のアンプを通ったいい音を、もっと味のある音にするために、EQで音を足すんじゃなくて、どこをカットするかという発想自体はずっと昔からあったものだと思いますね。

− エンジニアがどうしてこれまでフィルターという存在に目を向けなかったのでしょうか?。

W − エンジニアという職業自体、もともとは出音をそのままとらえるのが仕事だったでしょ。それだったらフィルターを通すなんてまず考えない。変えようと思えばフィルター1つで音楽性まで簡単に変えられますからね(笑)。

S − 確かにフィルターは面白いけど、それはやはり一部の意見で、一般的にはならないだろうね。こんな感覚が広まったらうれしいけど、そこまで夢を見てませんから(笑)。

W − 僕にとっては、コンソールのつまみもフィルターのつまみも一緒だけど、そうじゃないエンジニアもいる。でも一度でいいから、どのエンジニアもその辺のフィルターをいじってほしいと思いますね。本当に音が変わるから。

S − 使うか使わないかは別にして、この良さは大御所と呼ばれるエンジニアもきっと分かると思うな。僕も最近はUrei 1176とか使うんだけど、1178も用途によって使い分けている。これはフィルターに音を通し始めてから、それらの音の質感の違いが分かってきたんだ。

− 鍵盤が付いていてシンセの形をしているから使わないという部分もあるのでしょうか?。

S − それはあるだろうね。エンジニアには触れないと思いこんでいたのかもしれない。ハイパス/ローパスは知っていても、レゾナンスという言葉自体知らないエンジニアもいるだろうからね。

W − 僕がミックスしててもフィルター使うのは、単に差し込めるジャックが付いているからで、それだけのことです。

− ジャックがあったら挿し込んでみたい?。

S − 何もやみくもに挿さないけどさ(笑)。

W − ミックスしていてこの音を変えたいって思ったとき、スタジオを見渡してこれと思ったものに入れてみる。ダメだったらそれまでだし、良くなれば、次からそれは自分の音として使えるわけです。最初の1回はトライ&エラーですよ。

− 徐々に単体のフィルターが発売されていますが、時代的にフィルターは求められていますか?。

S − デジタル・フィルターでもSony DPS-F7みたいに面白いものもあるからね。

W − それからYamahaのSPXシリーズも、EQのモードの切り替えでダイナミック・フィルターにもなるし。これもいいんですよ。

S − 何か変な音にしてくれって言われて、それソフト・バレエ(のレコーディング)で使ったことあるな。

W − それからEventide DSP-4000が面白いんだ。自分でパッチを自由に作れるから面白いんだけど、この間作ったのが、サンプル・レートやビット数を自由に落とすパッチ。

S − どんな人たちもフィルターを使うという発想になった方がいいと思う。何ごとにもこだわりなくできるような状態にね。






このような '質感' へのこだわりとして、カリブ海の孤島ジャマイカで探求された '変奏' ともいうべき 'ルーツ・ダブ' の世界。1970年代にジャマイカはキングストンの貧しいスタジオであれこれ機材の過剰な実験、溢れ出る発想の塊であった数々の 'ダブマスター' たちの仕事ぶりに思いを馳せるのです。週末に大量のマスターテープと共に彼らのスタジオTubby's Hometown Hi-FiやBlack Ark、Studio Oneにやってくるプロデューサーのオーダーに従い、4トラック程度のリミックスとして過剰なエコーやスプリング・リヴァーブ、フィルターなどで '換骨奪胎' されたものをリアルタイムにダブプレートと呼ばれる鉄板をアセテートで包んだ盤面に刻む。その大量の 'ヴァージョン' はこの孤島を飛び出して、今や 'リミックス文化' におけるポップ・ミュージックのスタンダードとなりました。その 'ダブ発見' についてキング・タビーをフックアップしたプロデューサー、バニー・リーは間違えたミックスとダイレクト・カッティングによる最初の興奮と顛末についてこう述べております。

"ダブが始まったとき、それは本当の「ダブ」じゃなかった。ある日の夕方、俺とタビーがデューク・リード(プロデューサー)のスタジオにいると、スパニッシュタウンからルディ・レドウッドっていうサウンドマンがヴォーカルとリディムを使って曲をカットしてた。それをエンジニアがうっかりヴォーカルを入れ忘れたから、途中でカットを止めようとするとルディが言ったんだ。「待ってくれ、そのままやってくれ!」って。それで最初にヴォーカル無しのリディムだけのダブプレートが出来た。ルディは「今度はヴォーカル入りのをカットしてくれ」って言って、ヴォーカルが入ったのもカットした。その次の日曜日、ルディが回しているとき、俺は偶然そのダンスにいた。それで奴らがこないだカットしたリディムだけの曲をかけたらダンスが凄く盛り上がって、みんなリディムに合わせて歌い始めたんだ。あんまり盛り上がったもんで、「もう一回、もう一回」ってあの曲だけを一時間弱かけるハメになってたよ!。俺は月曜の朝、キングストンに戻ってタビーに言った。「タビー、俺らのちょっとした間違いがみんなに大ウケだったよ!」って。そしたらタビーは「よし、じゃあそれをやってみよう!」って。俺らはまず、スリム・スミスの「エイント・トゥ・ベック」とかで試してみたよ。タビーはヴォーカルだけで始めて途中からリディムを入れる。それからまたヴォーカルを抜いて、今度は完全にリディムだけにする。俺らはそうやって作った曲を「ヴァージョン」って呼び始めた。"










ダブの 'マッド・サイエンティスト' ことリー "スクラッチ" ペリーと 'BlackArk' スタジオの守護神的存在として彼の '魔術' に貢献した機器、Musitronics Mu-Tron Bi-Phaseとスプリング・リヴァーブのGrampian Type 636があるとすれば、一方のキング・タビーと 'Tubby's Hometown Hi-Fi' ではスプリング・リヴァーブのThe Fisher K-10とタビーがダイナミック・スタジオから払い下げてきたMCI特注による4チャンネル・ミキサー内蔵のハイパス・フィルターが殊に有名です。EQの延長としてダイナミック・スタジオがオーダーしたこの機器は、後にプロデューサーのバニー・リーが "ダイナミックはこのミキサーの使い方を知らなかったんじゃないか?" と言わしめたくらい、タビーにとっての 'トレードマーク' 的効果としてそのままダブの 'キング' の座を確かなものとしました。そう、この効果が欲しければタビーのスタジオに行くほかなく、また、ここからワン・ドロップのリズムに2拍4拍のオープン・ハイハットを強調する 'フライング・シンバル' という新たな表現を生み出すのです。そのハイパス・フィルターは、左右に大きなツマミでコンソールの右側に備え付けられており、70Hzから7.5kHzの10段階の構成で、一般的な1kHz周辺でシャット・オフする機器よりも幅広い周波数音域を持っていました。タビーの下でエンジニアとしてダブ創造に寄与、'Dub of Rights' のダブ・ミックスも手がけた二番弟子、プリンス・ジャミー(キング・ジャミー)はこう述懐します。

"ダイナミック・サウンズ用に作られた特注のコンソールだから、すごく独特だったよ。最近のコンソールには付いていないものが付いていた。周波数を変えるときしむような音がするハイパス・フィルターとか、私たちはドラムでもベースでもリディムでもヴォーカルでも、何でもハイパス・フィルターに通していた。ハイパス・フィルターがタビーズ独特の音を作ったんだ。"







Fender Soundette
Arbiter Soundette
Arbiter Soundimension

一方、Arbiterから登場したSoundimensionとSoundetteはBinson Echorecと同様の磁気ディスク式エコーであり、この会社はジミ・ヘンドリクスが愛用したファズ・ボックス、Fuzz Faceを製作していた英国のメーカーとしても有名です。そんなSoundimensionはジャマイカのレゲエ、ダブ創成期に多大な影響を与えたプロデューサー、コクソン・ドッドが愛した機器で、ドッドはよほどこの機器が気に入ったのか、自らが集めるセッション・バンドに対してわざわざ 'Sound Dimension' と名付けるほどでした。後には自らミキシング・コンソールの前を陣取り 'Dub Specialist' の名でダブ・ミックスを手掛けますが、そんな彼のスタジオStudio Oneでドッドの片腕としてエンジニアを務めたシルヴァン・モリスはこう説明します。

"当時わたしは、ほとんどのレコーディングにヘッドを2つ使っていた。テープが再生ヘッドを通ったところで、また録音ヘッドまで戻すと、最初の再生音から遅れた第二の再生音ができる。これでディレイを使ったような音が作れるんだ。よく聴けば、ほとんどのヴォーカルに使っているのがわかる。これが、あのスタジオ・ワン独特の音になった。それからコクソンがサウンディメンションっていう機械を入れたのも大きかったね。あれはヘッドが4つあるから、3つの再生ヘッドを動かすことで、それぞれ遅延時間を操作できる。テープ・ループは45センチぐらい。わたしがテープ・レコーダーでやっていたのと同じ効果が作れるディレイの機械だ。テープ・レコーダーはヘッドが固定されているけど、サウンディメンションはヘッドが動かせるから、それぞれ違う音の距離感や、1、2、3と遅延時間の違うディレイを作れた。"







そしてダブと言えばトランペットと最も親和性の高いエフェクツにディレイがあり、そんな '飛ばしワザ' を最大限に活用したのがダブにおける '空間生成' の拡張にあります。わたしがメインで使っているのはBBDチップによる '質感' をDSPテクノロジーで 'アナログ・モデリング' したStrymon Brigadierでして、その他、いくつかの製品も所有しております。流石に高価で嵩張るヴィンテージのテープ・エコーを買おうとは思いませんが(汗)、しかし、こればかりは幾つあっても全然無駄にならないくらいそれぞれの個性があり、それこそギタリストが歪み系ペダルばかり買い続けるのと同じ心理で '底なし沼' 的魅力があったりします。








Benidub Audio Digital Echo

このようなダブに必須の '飛び道具' ということで、大きなミキシング・コンソールと共に手に入れておきたいのが 'ダブ三種の神器' ともいうべきスプリング・リヴァーブ、ディレイ、フィルターであります。スペインでダブに特化した機器を専門に製作するBenidub Audioは、現在の市場に本場ダブの持つ原点ともいうべき音作りを開陳するべく貴重な存在。すべては '目の前にある' 反復した音のミキシング・コンソールによる '抜き差し' から、ライヴとレコーデッドされた素材を変調するために '換骨奪胎' する・・これぞダブの極意なり。












そして 'フィルタリング' からさらにもう一歩、実は思い出したように試しては挫折を繰り返している管楽器の 'アンプリファイ' における鬼門、トランペットを歪ませる探求があります。実はわたしがワウペダルと共に最初に購入したのはオーバードライブの名機、Ibanez TS-9 Tubescremer。この、ほとんどブースターと言って良いくらいクランチーな軽めの歪みでさえツマミ9時の位置でゲインアップ、あっという間のハウリングに悩まされたもんでした。また、1960年代後半に製品化された管楽器用オクターバーの大半には専用のファズが内蔵されていたのですが、これまたギター用のものとは別物のチープなもの。ということで未だ満足するセッティングは見つかっていないのですが、ここでは世界初のファズボックスとして有名なGibson製作のMaestro Fuzz Tone FZ-1のデモ音源からいくつかのヒントを頂きます。当初、メーカーが意図していたのはロック革命で求められたアンプのオーバーロードする歪みではなく、各種管楽器の模倣であるという奇妙な事実であり、音源では 'Sousaphone' 〜 'Tuba' 〜 'Bass Sax' 〜 'Cello' 〜 'Alto Sax' 〜 'Trumpet' という流れが 'ロック前夜' の模索した雰囲気を伝えます。さて、このFZ-1が爆発的なセールスを記録するのはザ・ローリング・ストーンズの大ヒット曲 'Satisfaction'。キース・リチャーズの頭の中にあったのはスタックスの豪華なホーン・セクションによる 'ブラス・リフ' を再現することであり、Maestroのブランドマークが 'ラッパ3本' をシンボライズしたのは決して伊達では無いでしょうね。ちなみに今年、その 'ラッパ3本' のブランドマークを引っ提げて 'Maestro by Gibson' として蘇ります!。まずはOverdrive、Distortion、Fuzz Tone、Delay、Chorusの5種がラインナップ。さて、そんな '歪み' について日本を代表する作曲家の富田勲氏によれば、自身が愛用したMoogシンセサイザーの単純な波形から生成される 'アンサンブル' について、その機器自体から発する歪んだ 'ノイズ' がとても有効であることを力説します。

"最近(の機器)はいかにノイズを減らすかということが重要視されていますが、僕が今でもMoogシンセサイザーを使っている理由は、何か音に力があるからなんですね。低音部など、サンプリングにも近いような音が出る。それはノイズっぽさが原因のひとつだと思うんです。どこか波形が歪んでいて、それとヴォリュームの加減で迫力が出る。だから僕はノイズをなるべく気にしないようにしているんです。デジタル・シンセサイザーが普及してノイズが減り、レコーディングもデジタルで行われるようになると、音が透明過ぎてしまう。ファズやディストーションもノイズ効果の一種だし、オーケストラで ff にあるとシンバルや打楽器を入れるというのも騒音効果です。弦楽器自体も ff になるとすごくノイズが出る。そうしたノイズは大切ですし、結果的にはエフェクターで出たノイズも利用していることになるんだと思います。"






そして続行中の 'リンギング・アプローチ' の為に建ててみた、エフェクターボードならぬ 'エフェクタータワー' (笑)。この 'タワー' となったのはオシャレに玄関先で靴を収納する金属製シェリフで、これは5段ですけどほかに7段もあります(笑)。ただ、あまり高くするとパワーサプライからの電源供給でDCケーブルが届かなくなるので注意。EX-Proのパワーサプライ内蔵4ループ・セレクターPSS-10に各種ペダルを繋いでおり、Loop 1はToadworksのエンヴェロープ・ジェネレータを内蔵したユニークなループ・セレクターEnveloopにBlackout Effectors Whetstone内蔵の 'Ring & Fix' モード(3:08〜4:20)とMid-Fi ElectronicsのScrape Flutterを各々接続。この2種モードにするとRateツマミは 'Ring' では非常に早い細切れスピードとなり、そのままDepthツマミを下げてLFOの可変幅を切り替えるSweepスイッチ(Shallow/Wide)と組み合わせると一風変わったオクターヴ効果に早変わり。一方の 'Fix' はモジュレーションを無効にした揺れということでまさに 'Filter Matrix' 効果であり、そのままRateツマミはマニュアルによるフィルター・スウィープとして 'ワウ半踏み' 風味からチリチリとしたローファイな 'AMラジオ' 効果などを生成します。そんな影のような倍音成分からなるアッパー・オクターヴの 'リンギング' 効果な出発点とも言うべき、Roger MayerとTycobraheによるOctaviaの挑戦。







Loop 2にはWMDの破壊的なマルチ・ディストーションGeiger CounterとDreadboxのエンヴェロープ・ジェネレータ内蔵フィルターEpsilonの組み合わせです。Geiger Counterといえば全てをぶっ潰す 'ビット・クラッシャー' 的歪みの集大成と思われるかも知れませんが、252種用意されているウェーブテーブル式波形の中にはクリーンな音作りで管楽器にハマるものがあります。例えば動画中の 'Clean Lo-Fi' (4:39〜5:23)などはまさに 'リンギング' の最たるものでしょう。Epsilonは歪みの効いたエンヴェロープ・フィルターより、'Playing with Manual Gate' (2:22〜)というラッチングスイッチによるリアルタイムなトリガーでアクセントを付けるのが目的です。'Loop 3は 'エレハモ' のFilter Matrixと同種の効果を出せるCV装備のDreadbox komorebi(木漏れ日)とSunfish Audioのマルチ・エフェクツでローファイな 'Old Vinyl' がオススメのIkigai(生きがい)。Komorebiは基本的にコーラス&フランジャーとしてDeluxe Electric Mistress辺りを参考にした機能がメインなのですが、Static、Rate、LFO OutのCV入出力と共に 'Ringi-SH' (3:27〜)として爽やかな効果から一転極悪な匂いが漂います。続くSunfish AudioのIkigai(生きがい)も国産の新たな工房として一味違うスパイスを効かせたラインナップを誇り、そのプリセットは1 - Tremolo/Ring Modulator、2 - Old Vinyl、3 - Filter Sample & Hold、4 - Fuzz、5 - Organ Simulator、6 - Crystal Delay、7 - Talking Filter、8 - Random Samplerの8種を用意。ここでのお気に入りは1の 'Tremolo/Ring Mod' と2の 'Old Vinyl' のザラ付いた質感ですね。そして最後のLoop 4にはアクセントとして、いわゆるターンテーブルの '電源落とし' 効果を備えるCatalinbread Coliolis Effect。基本的にはピッチシフトとエンヴェロープ・フィルター、Hold機能による 'グリッチ' 的効果に特化してリアルタイムにMission Engineering Expressionatorを介してエクスプレッション・ペダルを操作します。特にここでは 'Tape Stop & Stutters' (0:52〜2:28)でのギュイ〜ンとした時に逆再生風にも聴こえる感じがたまりませんね。ともかく、ここでの各種ペダルのチョイスは完全に原音を無調で狂わす '飛び道具' にすることではなく、あくまで原音は確保しながらその微かな倍音生成の演出として 'リンギング' させることにあるのです。










そしてループ・セレクターPSS-10の直前にもうひとつ、1970年代の謎多き '中途半端' なリング・モジュレーターとしてやたらタマ数だけは市場で多く見かけるJen Elettronica のHF Modulatorをスタンバイ。例えば同時代のMaestro、Electro-Harmonix、Colorsoundのリング・モジュレーターに比べるとイマイチ過激さとリアルタイム性で煮え切らない仕様なのですが、それがここでの 'リンギング' アプローチにおいてはちょうど良い塩梅なのです。Toneがきっちり確保されているというか、いわゆる不協和音の一歩手前で破綻せず非整数倍音を生成します。ここではDradboxのループ・ブレンダーCocktailに 'インサート' するかたちでミックスしておりまする。ちなみにこのループ・ブレンダーの変わり種としてはCooper Fxから限定で登場したのがSignal Path Selector。'ローファイ・ペダル' のGeneration Lossで大きな支持を得たCooper Fxは本機を最後に惜しまれつつその工房を閉めてしまいましたが、今後は過去に 'コラボ' したことのあるChase Bliss Audioに参入して新たな製品開発に勤しむとのこと。このSignal Path Selectorは2つの 'Send Return' を設けるライン・セレクターなのですが、これら 'A/B' を 'A→B'、'B→A'、'A+B' とスイッチ1つで自由にルーティングさせることが可能。ここに原音を個別でミックスするのはもちろん、これらはMIDIでコントロールすることが出来ます。







そんな 'リンギング' 効果の出発点と言うべき 'エレハモ' の名機、Deluxe Electric Mistress内蔵の 'Filter Matrix' モードは地味ではありますが使えますヨ。基本はフランジャーなのでほとんど無視されちゃいますけど、これが 'Range' ツマミ1つの機能ながらなかなかにハマってしまう。しかし同製品の動画を漁って見てもほぼフランジャーのみの解説ばかりで、もはやオマケですらなく完全に忘れ去られている・・(悲)。数少ないものでは最初の動画後半の4:42〜5:44、そして本機のデッドコピーであるHartmanの動画の3:30〜くらいで、改めて言うけどまあ、やっぱり忘れちゃうくらい地味ですよねえ(苦笑)。あ、そうそう、この機能は同社のPoly Chorusにも搭載されており、さらに触れるツマミが増えているのでこれまた地味に嬉しい(なぜか本機のヴィンテージと復刻版では 'Feedback'、'Width'、'Tune' の各ツマミ配置が変わってますけど)。とりあえず、この効果は 'Range' をリアルタイムで操作した時に '体感' 出来るので、やはりこのツマミをエクスプレッション・ペダルでコントロールしたい衝動に駆られるでしょうね。そして、このElectric Mistressの影響を受けたと思しきイタリア産Electronic Soundsから登場したFlanger / Filter Matrixは、あのTone Benderの設計でお馴染みGary Hurstがデザインしました。またその他、同時代のCarlsbro Flangerにも言えるのですが、いわゆる 'フェイズ・スイッチ' のようにOnすることで '揺れないフランジ' とも言うべきFilter Matrix風の効果をフランジャーの付加機能として備えていたんですね。









Oberheim Electronics Ring Modulator (Prototype)
Maestro Ring Modulator RM-1A
Maestro Ring Modulator RM-1B

そんなリング・モジュレーションといえば現代音楽の大家、カールハインツ・シュトゥックハウゼンが 'サウンド・プロジェクショニスト' の名でミキシング・コンソールの前に陣取り、'3群' に分かれたオーケストラ全体をリング変調させてしまった 'ライヴ・エレクトロニクス' の出発点 'Mixtur' (ミクストゥール)に尽きるでしょうね。詳しいスコアというか解説というか '理屈' は上のリンク先を見て頂くとして、こう、何というか陰鬱な無調の世界でおっかない感じ。不条理な迷宮を彷徨ってしまう世界の '音響演出' においてリング・モジュレーターという機器の右に出るものはありません。映像でいうならフィルムが白黒反転して '裏焼き' になってしまった色のない世界というか、ゴ〜ンと鳴る濁った鐘の音、世界のあらゆる '調性' が捻れてしまったような金属的な質感が特徴です。さて、この前衛的な現代音楽の分野で持て囃されたリング・モジュレーターの製品化は1960年代後半、後に 'オーバーハイム・シンセサイザー' で名を馳せるトム・オーバーハイムが同じUCLA音楽大学に在籍していたラッパ吹き、ドン・エリスにより 'アンプリファイ' のための機器製作を依頼されたことから始まります。この時少量製作した内のひとつがハリウッドの音響効果スタッフの耳を捉え、1968年の映画「猿の惑星」のSEとして随所に効果的な威力を発揮したことでGibsonのブランド、MaestroからRM-1として製品化される運びとなります。オーバーハイムは本機と1971年のフェイザー第一号、PS-1の大ヒットで大きな収入を得て、自らの会社であるOberheim Electronicsの経営とシンセサイザー開発資金のきっかけを掴みました。

さて、そんなマルチな音作りに威力を発揮するペダルがある一方、いわゆる昔ながらの限定された機能のみのペダルも大好きで特に 'ヴィンテージ・フェイザー' はついつい集めてしまいます。その全盛期とも言うべき1970年代はフェイザーの時代でした。いや、正確には 'フェイザーとワウ' の時代と言うべきか。これは大げさでもなんでもなく、とにかくあらゆるバンドの音からこのウネッた変調感満載のサウンドが垂れ流されておりました。個人的にはレゲエのギターによる16ビートのカッティング、クロスオーバーやフュージョンと呼ばれるサウンドの代名詞的効果としてギターやベース、キーボードから管楽器やドラムスなどあらゆるソロでその過剰な 'ジェット・サウンド' を堪能することが出来まする。まさに '亜熱帯のサイケデリア' ともいうべきスプリフ片手に、たゆたうマリワナの煙と共に力を与えるリー・ペリーの姿は、ほとんどギタリストがアプローチするのと同じ意識でMusitronicsの大型 'デュアル・フェイズ' Mu-Tron Bi-Phaseをミキサーに繋いで '演奏' しております!。そして強烈なファズやワウと組み合わせれば、そのエグい 'フェイズ感' はさらに強調されて聴く者の三半規管を司る定位を狂わせるのです。そんなサイケな残り香漂うクロスオーバー期の傑作、三保敬太郎率いる 'Jazz Eleven' の 'こけざる組曲' は最高峰でしょうね。特にこの '聞かざる' のファンクなビートとワウ、ハープシコードや女声コーラスの 'サイケ' な音色が渾然一体となって、3:28〜のグルグルと三半規管を狂わせるような強烈なパンニングとフェイジングの嵐。ぜひヘッドフォンで体感して頂きたい!。もう完全にトリップしますヨ、これは。そしてサイケ繋がりでピエール・アンリの 'Psyche Rock' もどーぞ。








世界初の 'コンパクト・フェイザー' (というには大きな筐体ですが)であるMaestro Phase Shifter PS-1をトム・オーバーハイムがデザインした1年後、その修理品をテリー・シェアウッドとキース・バールの2人からなる工房に持ち込まれたことで一念発起、まさにオレンジ色の '手のひらサイズ' にまでサイズダウンしたのがMXR Phase 90です。Maestroが市場を開拓しMXRの登場で火の付いたこの 'フェイザー・ブーム' は、それこそ名門Fenderの 'ツイストする' Phaserからスウェーデンで同地初の 'ペダル・デザイナー' となったNils Olf CarlinがUni-Vibeと同種の8つのCDSと電球の点滅により '揺れ' を生成する 'ペダル・フェイザー' を少量製作するまで、その広がりを世界的規模で見せました。ちなみにわたしが所有するPhase 90は1974年の初期 'Script' を基板からそのまま復刻したCSP026で、当時と同じくLEDもDC供給も無いことから不便だろうとどっかの工房によりモディファイしてありました(公式版ではCSP101SLとして用意されております)。ちなみにMaestroのPhase Shifterは今でも状態良好の中古が市場で容易に見つけられますが、フランスの工房HeptodeからよりコンパクトとなったVirtuoso Phase Shifterとしても 'クローン化' されておりまする。








PiezoBarrelの 'P9マウスピース・ピックアップ' 開発でアドバイザーを務めたバークリー音楽大学出身にして 'アウトサイダー' な(笑)ラッパ吹き、Darren BarrettさんによるMusitronicsの名機、Mu-Tron Phasorを始め、エンヴェロープ・フォロワーを搭載したPigtronix Envelope Phaser EP-2やカナダの工房SolidGold FxのApollo Ⅱ Phaserというワウとの複合的機能を持つもの、さらにはリング・モジュレーションに至るまでカバーするGlou Glou Rendez-Vousなど現在では実に多岐に渡ります。そして、1975年に活動停止したマイルス・デイビスのバンド・メンバーが大挙して菊地雅章氏の 'Kochi' に合流して再現した和風セッションでは、珍しく 'ヒノテル' のエンヴェロープ・フィルターによるデイビス風ソロを展開。一方、デンマーク産のジャズ・ロック・バンドTroubleの一員であったラッパ吹きのアラン・ボッチンスキーはC.G Conn Muli-ViderやMaestro Echoplexと並び、モーグ博士設計のMaestro MP-1 Phaserを使用していたようです(ちなみに 'After The War' ではMulti-Viderのみ使用)。レコーディング風景の画像を見るとYamahaのビザールなギターアンプTA-60を使っており、この古の国産アンプによる 'オーディオライク' なクリーンさはAcousticのアンプと並び管楽器の 'アンプリファイ' で重宝 されていたようですね。







EMS Synthi Hi-Fli - Prototype

1970年の新製品である初期の 'ギター・シンセサイザー' Ludwig Phase Ⅱ Synthesizerは当時、富田氏が手がけていた劇伴、特にTVドラマ「だいこんの花」などのファズワウな効果で威力を発揮しました。また、英国でシンセサイザーを製作するEMSからも同時期、'万博世代' が喜びそうな近未来的デザインと共にSynthi Hi-Fliが登場、この時期の技術革新とエフェクツによる '中毒性' はスタジオのエンジニアからプログレに代表される音作りに至るまで広く普及します。そんな時代の空気を吸ったような 'Moog前夜' の富田氏はLudwig Phase Ⅱについてこう述べておりました。

"あれは主に、スタジオに持っていって楽器と調整卓の間に挟んで奇妙な音を出していました。まあ、エフェクターのはしりですね。チャカポコも出来るし、ワウも出来るし。"

後にYMOのマニピュレーターとして名を馳せる松武秀樹氏も当時、富田氏に師事しており、映画のサントラやCM音楽などの仕事の度に "ラデシン用意して" とよく要請されていたことから、いかに本機が '富田サウンド' を構成する重要なものであったのかが分かります。また、この時期から1971年の 'Moogシンセ' 導入前の富田氏の制作環境について松武氏はこう述懐しております。

"「だいこんの花」とか、テレビ番組を週3本ぐらい持ってました。ハンダごてを使ってパッチコードを作ったりもやってましたね。そのころから、クラビネットD-6というのや、電気ヴァイオリンがカルテット用に4台あった。あとラディック・シンセサイザーという、フタがパカッと開くのがあって、これはワウでした。ギターを通すと変な音がしてた。それと、マエストロの 'Sound System for Woodwinds' というウインドシンセみたいなのと、'Rhythm 'n Sound for Guitar' というトリガーを入れて鳴らす電気パーカッションがあって、これをCMとかの録音に使ってました。こういうのをいじるのは理論がわかっていたんで普通にこなせた。"

この '喋るような' フィルタリングは、そのまま富田氏によれば、実は 'Moogシンセサイザー' を喋らせたかったという思いへと直結します。当時のモジュラーシンセでは、なかなかパ行以外のシビランスを再現させるのは難しかったそうですが、ここから 'ゴリウォーグのケークウォーク' に代表される俗に 'パピプペ親父' と呼ばれる音作りを披露、これが晩年の '初音ミク' を用いた作品に至ることを考えると感慨深いものがありますね。さて、古くは 'ギターシンセ' の元祖であるLudwig Phase Ⅱ SynthesizerやEMS Synthi Hi-Fliなど高級なサウンド・システムの一環として登場し、いわゆる通俗的な 'ギターシンセ' の初期のイメージとして流布するきっかけとなりました。中身は上述したバンドパス・フィルターとファズを組み合わせて 'ソレっぽく' (笑)聴かせているような印象に終始するものが大半の代物、しかしその効果が醸し出すロマンがあったのです。この、何度見てもたまらない '楽器界のロールスロイス' とも言うべきEMS。いわゆる '万博世代' やAppleの製品にゾクゾクする人なら喉から手が出るほど欲しいはず。現在、このEMSは過去製品の 'リビルド' をDigitana Electronicsを中心に会社は存続しているのだからAppleが買収して、電源Onと共に光る '🍏' マークを付けた復刻とかやって頂きたい。個人的に 'エフェクター・デザイン・コンテスト' が開催されたら三本の指に入る美しさだと思います。












EMS Synthi Hi-FliやLudwig Phase Ⅱ Synthesizerに象徴される '喋るような' フィルタリング。これは原初的なエフェクツとも言えるトークボックス(マウスワウ)のことではなく、VCFにおけるバンドパス帯域を複合的に組み合わせることで 'A、I、E、O、U' といった母音のフォルマントを強調、まるで喋っているようなワウの効果を生成するものです。いわゆる '擬似ギターシンセ' として巨大な 'シンセサイズの壁' を手に入れることは叶わないユーザーの関心を惹き、EMSやLudwigの大きなサウンド・システムからColorsoundのDipthonizerやElectro-Harmonix Talking Pedalなどの 'コンパクト・ペダル' が1970年代の市場に登場しました。そして、現在はそのアップデート版のStereo Talking Machine、フランスの工房Glou Glouのリゾナント・フィルターPralines、米国の工房SubdecayのVocawahやスウェーデンの工房Moody SoundsのWay、ベルギーからHarman Gillisさんがひとり製作するSherman Filterbankに到るまで機器を '喋らせる' ことへの興味は尽きることを知りません。






俗に 'オシレータの無いモジュラーシンセ' と呼ばれるVCFのバケモノFilterbankは、流石に現在では使われ過ぎて '飽きた' という声もあるもののその潜在能力の全てを引き出してはおりません。個人的には当時の主流であった無闇矢鱈に '発振' させない使い方でこそ、本機の新たなアプローチが光ると思っているんですけどね。そんな強烈なフィルタリングと発振、歪みからシンセやドラムマシン、ギターはもちろん管楽器にまでかけるモノとして、何と100台限定でFilterbankを4機搭載してしまったバケモノ、Quad Modular Filterに挑む挑戦者求む!。その強烈なフィルタリングと発振、歪みからシンセやドラムマシン、ギターはもちろん新たな要素として管楽器にまでかける猛者が現れます。クラブ・ジャズ的なスリーピース・バンドPhatの活動でその存在を知られ、現在はソロでquartz-headやrabitooほか、いくつかのユニットで活動するサックス奏者藤原大輔さん。1990年代後半にテクノ界隈で人気を博したフィルターSherman Filterbank 2(現在2台使い!)とその下に置くラック型ディレイKorg DL8000RのHold機能を駆使して、過激に発振するエレクトロニカ的スタイルを披露しております。ほとんど 'オシレータのないモジュラーシンセ' と言って良い '化け物' 的機器で、どんな音をブチ込んでも予測不能なサウンドに変調してくれますヨ(動画途中の 'Intermission' は長く第2部は58:33〜スタート)。






Elta Music Devices Console - Cartridge Fx Device w/ 11 Cartridges
Elta Music Devices

ここまでご紹介してきた個別の効果をひとつの機器で行うマルチ・エフェクツ。ロシアのElta Music Devicesから2018年に発売され話題となったカートリッジ交換式のマルチ・エフェクツ、Console。各々3種のモードを内蔵したカートリッジをあれこれ入れ替えて、左手でジョイ・スティックをグリグリ動かすインターフェイスはラクで良いですね。当初は10個のプログラムを備えたカートリッジが封入されており、その中身は以下の通り。

⚫︎Cathedral: Reverb and Space Effects
⚫︎Magic: Pitched Delays
⚫︎Time: Classic Mod Delays
⚫︎Vibrotrem: Modulation Effects
⚫︎Filter: Filter and Wah
⚫︎Vibe: Rotary Phase Mods
⚫︎Pitch Shifter: Octave and Pitch
⚫︎Infinity: Big Ambient Effects
⚫︎String Ringer: Audio Rate Modulation
⚫︎Synthex-1: Bass Synth

'モジュレーション/空間系' 中心のメニューですけど、'Vibe' や 'Vibrotrem'、'Magic' などのピッチを変調させるプログラムが多く、それをジョイ・スティックでグリグリと動かす為に何でもグニャグニャ・・。正直、もう少し幅広いプログラムがあっても良かったですけど今後に期待?。フィルターで期待したいのは、1970年代にFormantaが製作したビザールなアナログシンセPolivoksのVCFを 'シミュレート' したプログラムがあること!。その他、'Synthex-1' の 'ベースシンセ' でチューバの如くブッバ、ブッバとしゃくり上げる感じの効果が面白いですねえ。これは 'エレハモ' のMicro Synthesizerに内蔵された 'Attack' スライダーでエンヴェロープのアタックを消し、Voiceセクションでフィルタースウィープさせる感じと言えば分かって頂けるでしょうか。また、本機の筐体に描かれた 'マレーヴィチ' 風ロシア・アヴァンギャルドなデザインも格好良いのですヨ。



⚫︎Generator: Signal Generator
⚫︎Digital: Bit Crasher
⚫︎Ochre: Reverse Delays

ちなみにこのConsoleはその10種のプログラムに続き、現在までひっそりと3種カートリッジを追加しております。いわゆるデジタルのオシレータである 'Generator' に8ビット系の歪みとしてポピュラーとなったビット・クラッシャーの 'Digital'、そしてリヴァース・ディレイとHold機能のループを備えた 'Ochre' なのですが、なぜひっそりかと言えば公式HPで一切アナウンスされていないのです(謎)。突然、eBayやReverb.comなどのお店で在庫として少量登場し、慌てて注文して何とか確保出来たというアバウトさ・・。カートリッジ本体に穴が空いているのは全てをチェーンなどで繋ぎ、無くすことなく瞬時に入れ替えられるのは便利ですね。あ、そういえば互換性は無いものの同種のカートリッジ式マルチ・エフェクツArcadesを出した人気の工房、Cooper Fxは早々にペダル製作をヤメてしまいました(悲)。群雄割拠、栄枯盛衰といえば業界の '新陳代謝' が機能しているように見えますけど、このCooper FxにDwarfcraft DevicesやカナダのDiamond Guitar Pedalsなど、大きな支持を得たペダル・ビルダーたちが何のためらいもなく 'ドロップアウト' してしまうのは色々考えさせられますヨ。そろそろこの飽和した市場もひとつのピークに達しているようで、一部のSNSで作り出したトレンドだけで市場を回すやり方は機能しなくなっているように感じますね。









U.S.S.R. Spektr-3 Fuzz Wah & Envelope Filter
U.S.S.R. Spektr-4 Fuzz Wah & Envelope Filter
U.S.S.R. Spektr Volna Auto Wah
U.S.S.R. Elektronika Synchro-Wah

その 'ロシア繋がり' ということで、旧ソビエト時代のファズワウ、オートワウ、エンヴェロープ・フィルターの数々をどーぞ。初期のファズワウSpektr-1やSpektr-2、ファズ、ワウペダル、そしてエンヴェロープ・フィルターを個別もしくは複合的に組み合わせて用いるマルチ的製品Spektr-4は、そもそもこれらを2つのペダルでコントロールする '機能強化版' のSpektr-3から単品にして使いやすくしたもの。また、そこからオートワウのみ単品にした 'うねり' の効果として 'Wave' という意味を持つVolna Auto Wahも用意されております。昔のSF映画に出てくる小道具っぽさというか(笑)、こーいう 'ロール状' でダイヤルのようなパラメータって 'ペダルの世界' ではほぼ見ないですね。実際、使ってみると・・やはり官製品ならではのステージ使用を考慮しない仕様、限定的な効果のみ特化したのかレンジやパラメータの幅が狭いなあ。この時代の製品と仕様は、いわゆる '私有財産' の認めないソビエト共産党による国家の '備品' であると考えることが重要です。一方、Elektronikaによる 'Cnhxpo-Bay' こと'Synchro-Wah' はなかなかにエグい効果でたまりませんね。一説にはElectro-Harmonix Doctor Qの 'デッドコピー' とのことで、ロシア語全開のさっぱり読めない取説にも確かにそれっぽい単語が載ってる(笑)。しかし欧米の工業規格と全く違う旧ソビエト産エフェクターはまさにデザインの宝庫ですね。












さて、そんなロシアの 'ガジェット' と言えば現在活発に気炎を吐いているのがモスクワにあるガレージ工房Ezhi & Aka。バナナプラグによる巨大な 'モジュラーシステム' を擁したFernweh(フェルンヴェ)は、4種のローファイ・ディレイ&ピッチシフトの変異系としてMr. Nice、Mr. Glitchy、Mr. Clap、Mr. Arcadeとブッ壊れたファズ、モジュレーション、ローファイな20秒のループ・サンプラーのLoopeeで構成されております。とにかく何でも '汚い質感' にしてくれる複合機であり、本機の売り文句である 'テープを噛み砕いて燃やしたようなサウンド' という表現はなかなか的を射ておりまする。そして基板内部はご覧の通りの錯綜した 'スパゲティ状態' の酷い有様(笑)。もうひとつのPolarized Flutterはそのピッチシフトの効果を '飛び道具' として、Korg Kaosspadのようなタッチセンサーとツマミをリアルタイムに触ることで切り刻みます。勘違いされやすいのはパネル面をギュイ〜ンと指でズラすのではなく、グッと強弱で押し引きすることでその感度を操作すること。このPolarized Flutterはすでに 'ディスコン' となりましたが、現在は本機を2台分搭載した機能強化版Double Polarized Flutterに移行しております。しかし 'コンパクト・ペダル' なのに足では無く手で操作するパラメータが多過ぎ(苦笑)。ちなみに 'ローファイ' なこの手の機器は旧ソビエトの時代から、こんな 'ギターシンセ' 含めてマルチ・エフェクツ' に集大成させたFormanta Esko-100があります。1970年代のビザールなアナログシンセ、Polivoksの設計、製造を担当したFormantaによる本機は、その無骨な '業務用機器' 的ルックスの中にファズ、オクターバー、フランジャー、リヴァーブ、トレモロ、ディレイ、そして付属のエクスプレッション・ペダルをつなぐことでワウにもなるという素晴らしいもの。これら空間系のプログラムの内、初期のVer.1ではテープ・エコーを搭載、Ver.2からはICチップによるデジタル・ディレイへと変更されたのですがこれが 'メモ用ICレコーダー' 的チープかつ 'ローファイ' な質感なのです。また、簡単なHold機能によるピッチシフト風 '飛び道具' まで対応するなどその潜在能力は侮れません。Reverb.comで検索すると比較的状態の良い個体がロシアのセラーにより出品されているので是非お試しあれ(ロシアの電圧は240V)。そういえばフランジャーって何でか '共産主義者' たちの興味を惹いていたようで(笑)、こちらもReverb.comで検索すると旧ソビエト時代の '遺物たち' がやたらと出品されるほどフランジャー多し(謎)。













ちなみにこの 'フット・レコーダー' ともいうべきループ・サンプラーは、そのプレイヤビリティーと簡易的に音楽を構成する 'スタジオ' の意識が統合されたものとして画期的な存在でした。それは2小節単位のフレイズをループして、上下2オクターヴ程度のピッチとテンポ可変、オーバーダブや逆再生ができるものとして、Electro-Harmonixは16 Second Digital Delayや2 Second Digital Delayなどを初めてペダルとして実現させました。1980年代に流行した 'メガミックス' の時代、E-Mu Emulatorなど高級な機器を所有出来ないクリエイターにとっては、この簡易的なループ・サンプラーで '初期デジタル' 最初の恩恵を受けていたことは特筆して良いでしょうね。わたしのループ・サンプラーの理解も未だこのElectro-Harmonix 16 Second Digital Delayで止まっておりまして(汗)、本機は16秒のサンプリング・タイムを持つループ・サンプラーとショート・ディレイ、モジュレーションの複合機で、小節数を設定してピッチとテンポ、逆再生でそれぞれ可変させることが出来ます。オリジナルのヴィンテージものは唯一無二なアプローチのギタリスト、Nels Clineの愛機として活躍しており、2004年のヴァージョンアップした '復刻版' では、外部シーケンサーやドラムマシンをスレーヴにしてMIDIクロックで同期させることも可能。ループ・サンプラーは各社それぞれに使い勝手があり、その設計思想のクセを体得できるか否かで同種製品の評価は大きく異なりますね。



 










そして、もうひとつやっている実験がいわゆる 'Mono to Stereo' の '擬似ステレオ化'。あの近藤等則さんもある時期からPA用のパワードモニターを駆使してステレオ化し、一時期は自分を真ん中にしてグルッと4チャンネルで囲んでの 'サラウンド化'に挑んでおりましたね。まあ、確かに 'L-R' で分離よく音場を生成してロング・ディレイでもかければ気持ちの良いサウンドを生成してくれるのだけど、一方では左右に振り分ける代わりに真ん中がすっぽりと抜けることで音の芯の部分が薄くなりますね。特にワウのようなサウンドで試すと '食い付くような' エッジ感が乏しくなり、'モノ' で鳴らす時に比べてエグさが物足りないかも。それでも空間系エフェクターがもたらす恩恵は計り知れないものがあるので(笑)、あれこれ試して遊んでおりまする。しかし、管楽器にマイクとピエゾをそれぞれ取り付けて 'モノ' でブレンドしたものを再び2つに分割するというワケわからんことやってるけど(苦笑)、そのまま '2つ出し' でステレオ化してもマイクとピエゾの位相の問題もあってバランス悪いんですよ。そう言えば以前、PiezoBarrel主宰のスティーヴ・フランシスさんも複数ピエゾ装着によるステレオ化を実験してましたね(笑)。ちなみに近藤さんとプリアンプの '質感' では、2013年に懇意の関係であったイケベ楽器とのインタビューでこう述べておりました。

"1979年、ニューヨークでフレッド・フリス、ヘンリー・カイザー、ビル・ラズウェル、フレッド・マーと演奏した時、あまりの音のデカさにアコースティック・トランペットじゃあダメだと、翌日マンハッタンの楽器店でマウスピースの中にマイクを仕込んでもらい、Marshallのアンプにぶっ込んで吹いた。これが俺のエレクトリック・トランペットの始まりだった。それからしばらくはアコースティックとエレクトリックの両方でやっていたが1984年、東京に帰ってIMAバンドをやり始めてからエレクトリック一辺倒になった。

プリアンプを何度変えたか、もうだいぶ忘れてしまったが・・Alembic、Custom Audio・・とエレキギター用の機種を色々使った。いつも問題になったのが、エレキギターとトランペットじゃ周波数帯域が違うのでおいしいポイントがうまく決まらない。それでスタジオ用のプリアンプに切り替えた。これも色々試したが、落ち着いたのがRupert Neve Designs Portico 5032。ハーフラック・サイズなのでラックがコンパクトになったことも気に入った。そして同じ時期、マイクをデンマークのDPA4060に変えたら一挙に俺が求め、イメージしていた音に近づいた。Rupert Neve Designsの良さはアナログ特有の曖昧さ、いい意味でのいい加減さにあると思う。それに基本的に音がファット、ただハイの抜けがもうひとつ気に入らなかった。2011年の夏だったか、ヨーロッパ・ツアーの最中、リスボンの空港で機材のロストバゲージとなり結局出てこなかった。もう一度Neveの機種を買うのもシャクなので新機種を探した。それで見つかったのがAPIのChannnel Strip。音のファットさに少しかけるがハイの抜けは良くなった。EQのポイントがシャープだからかもしれない。いずれにしてもエレキラッパの最重要点はマイクとプリアンプ!!!。誰か俺が理想とするプリアンプを作ってくれないかな〜。"

IMAバンド末期からその後のプロジェクトである 'Blow The Earth - 地球を吹く' 初期の頃は、CAA (Custom Audio Amplifiers)の3チャンネル真空管プリアンプ3+SE Tube PreampやAlembicの2チャンネル真空管プリアンプF-2Bを軸にCAE(Custom Audio Electronics)のDual / Stereo Line Mixerと2台のラック型ディレイ、リヴァーブでステレオ化しておりました。最終的にプリアンプはNeveの '質感' を追ったPhoenix Audio DRS-Q4M Mk.2に落ち着きましたね。










その 'Mono to Stereo' の心臓部(大げさか・・笑)とも言えるのが、RT ElecTRonixの多目的 'ループ・セレクター' UBS-1とElectro-Harmonixの 'レアペダル' であるAmbitronの組み合わせ。このUBS-1はバッファーを軸としたループ・システムで、'インピーダンス・マッチング' を取りながらパラレルにステレオ出力へと変換してくれます。そのバッファーは '質感' をDark〜Brightの8種からなるトーンとして選択し、2つの 'センド・リターン' のうちメインとなるのが 'Mono to Stereo' に当たる 'Fx Send / Returns'、もうひとつの 'Volume Send / Return' は 'Fx Send / Returns' に対して 'Pre/Post' スイッチで前後への 'インサート' が選択可能。ちなみに同種のものではすでに 'ディスコン' ではありますが、バッファー搭載で2つのループと 'フル・ステレオ' なシステムを構築出来るEmpress EffectsのBuffer+ Stereoというのがありました。同じく 'ディスコン' ながら、Xotic Custom Shopの手がけるStereo X-Blender SXB-1を中心としたステレオ・システムで組んでみても良いかも知れません。ちなみに 'フーチーズ' の店長にして人気 'ペダル・レビュワー' の村田善行さんは、ステレオ接続による '逆相問題' についての動画を挙げておりました。個人的にはZorg Effectsの 'ステレオ・プリアンプ' であるBlow ! Blow !! Blow !!!を使ったステレオ・システムを構築したいんですけどね。








レアな 'エレハモ' の 'Mono to Stereo Exciter' ことAmbitron。過去、この手の地味な '音質補正' というか、ある時代の価値観として広まった解像度を上げる効果で '栄枯盛衰' を体現するエキサイターというものがありました。そもそもこの名称はAphexという会社により製品化された商品名 'Aural Exciter' であり、続くBBEからは 'Sonic Maximizer' など独自の技術で商品化された後、一般的には 'エンハンサー' というカテゴリーで他社が続々と追随します。共通するのは各社それぞれの回路により 'スパイス' 的に高域成分を原音へ混ぜるというもので、その混ぜ方にどこか '化学調味料' 的不自然なギラ付きがあること含め、今や 'DAW' のプラグインにオーディオやTVの音響効果に備えられた 'EQ的処理' の大半で耳にするのみです。1980年代にはTokai TXC-1のほか、Pearl TH-20 Thrillerやラック中心のBBEから珍しいペダル版のModel 601 Stinger、そしてBossのEH-2 EnhancerにDODから 'Psycho Acoustic Processor' ことFX87 Edgeというワンノブのヤツなど、いかにも 'ハイファイ' 志向の時代を象徴する製品が市場に用意されておりました。まさに原音重視のエフェクターが跋扈する現代では完全に '過去の遺物' と化しておりますが、実はEQのセッティングなどであれこれ悩んでいる方にはコイツを 'スパイス' 的に振りかけてやれば解決する場合も多いのです。何かエキサイターの解説って 'ドーピング' でも勧めているようなネガティヴなものが多いですね(苦笑)。ちなみにAmbitronを構成するショートディレイの 'ダブリング' と倍音の歪みによる音像の補正は、近年 'エレハモ' からThe Analogeizerなどで復活しておりまする。さて、このAmbitronを設計したハワード・デイビスによれば、きっかけはモノラルのレコードから '疑似ステレオ' を取り出すことにあったとのこと。以下、本機の英文取説からそのまま各パラメータの解説と共にどーぞ。

 "Ambitronを思いついたとき、わたしのコレクションのいくつかのレコードはモノラルのロックばかりでした。古いものでは45回転や78回転のものもあり、また当時のステレオ録音の中には実際の 'ステレオ・ミックス' がされていないものもありました。多くの場合、ミックスの '真ん中が抜けて' ('hole-in-the middle')おり、おそらくヴォーカルとベースを除いて楽器は真ん中もしくはその近くに無く、左右に振り分けられていました。モノラルのソースからリアルな疑似ステレオを生成して実際に部屋やスピーカーを変更することなく、より周囲の音響を合成したステレオ効果を強調する方法が必要でした。このようにして誕生したのがAmbitronです。"

●Input Level Control
This is set so the 'Overload' indicator. It should be set so the indicator blinks dimly on the loudest signal peaks it the indicator comes on brightly. distortion is occurring. The Ambitron is most sensitive to high frequency signals. and high notes or sections of program material with the most high frequency content should be used in setting the level.

●Ambience Control
Determines the amount of stereo ambience in the output signals.

●High Rolloff Control
This is a variable lowpass filter. when fully out (CCW) the frequency response of the unit is very wide: when brought in. the high frequency content in the ambience is reduced. This control does not affect the direct signal (the frequency response of which is 16Hz to 70kHz, +0 - 3dB). but only the synthesized ambience mixed with it. This permits "Tuning" the acoustics for a wide range of effects. Signal sources such as electric bass or unmodified guitar without much high frequency content require use of the 'High Rolloff' for greater realism and best signal -to- noise ratio, especially with high settings of 'Ambience' and 'Decay' or the use of 'Feedback'. With flat frequency music sources or microphone. 'High Rolloff' on percussive transients when 'Ambience' and 'Decay' are high or 'Feedback' is used.

●Feedback Switch
Introduces feedback for an echo effect which enhance spaciousness.

●Bypass
Alternately enables or bypasses the effect, when bypassed, unmodified input is connected to the outputs, its level set by the 'Input Level' control. 







こちらは、いわゆる 'ギターシンセ' としてポーランドの工房SonicSmithから2016年頃に登場したConVertor。独自の技術であるACO(Audio Controlled Oscallator)は特別なCV/Gateに寄らず、そのまま各種オーディオ入力でもってオシレータをトリガーして鳴らすことが出来ます。入力部はラインレベル、楽器レベル、マイクレベルをクリーンなプリアンプ・ゲインでもって+40dBのレンジで受け持つことが可能。さらにピッチの安定性を捉えるべくHPFと自動調整機能を持った2種の専用フィルターでピッチ検出を行っており、エンヴェロープもメイン入力のエンヴェロープ・フォロワーと 'サイドチェイン' に特化したエンヴェロープ・フォロワーの2段階で構成。用意された波形は短形波とノコギリ波で同時に出力し、Wave Mixツマミで連続的にブレンドしながらピッチを5オクターヴの範囲でコントロールします。また外部CVにも対応しており、別売りのModulor A1と組み合わせて 'プチ・モジュラーシンセ' 的な音作りにも対応しておりまする。すでに本機は 'ディスコン' となり、その後はVCFを追加して 'コンパクト・ペダル化' したSquaver P1なども用意しながら現在はやはり 'ユーロラック・モジュラーシンセ' のモジュール群が主力となりますね。ちなみにこのConVertorは、いわゆる 'Synth' と原音そのままを 'Thru' で並行して出力する為にOld Blood Noise EndeavorsのSignal Blenderでミックスしております(いつの間にか 'OBNE' の日本の代理店がLep InternationalからUmbrella Companyに移譲してた。現在新装準備中)。






そして、CVによる 'シンセサイズ' でさらに凝った音作りのアプローチではBoardbrain MusicのTransmutronと組み合わせるのもオススメです。本機は2つの 'Send Return' を個別、並列にミックス出来るほか 'Fission'、'Fusion'、Fallout' の3種モードとエクスプレッション・コントロールによるVCFのリアルタイム操作、外部CV Inで様々なセッティングに対応します。

●Fission
このモードでは、入力された信号の周波数帯を分割し、それぞれを2つのLoopにスプリットして再びミックスして出力出来ます。Umbrella Company Fusion BlenderやVocuのMagic Blend Roomなどと同種の機能ですね。またエクスプレッション・ペダル及びモジュラーCVでのコントロールにも対応。

●Fusion
このモードでは、2つのLoopのバランスを調整してブレンドすることが出来ます。これらミックスのバランスは筐体真ん中にあるSplitpointツマミ、またはエクスプレッション・ペダル及びモジュラーCVでのコントロールにも対応。これはDwarfcraft Devices Paraloopと同種の機能に当たりますね。

●Fallout
このモードでは、2つのLoopの前にワイドノッチ・フィルターを適用して、Splitpointツマミやエクスプレション・ペダル及びモジュラーCVでのコントロールにも対応。ペダル・コントロールすることでワウのような操作を付加することが出来ます。また本機には、これとは別にHicut、Locutのフィルターを搭載して音作りに適用することが出来ます。

ちなみに本機搭載のフィルターは12dB、24dB、48dB/Octのスロープ角度を選択出来、それぞれFission、Falloutモードのワイドノッチ・フィルターにも適用されます。もちろん、Ch.2のLoopでフェイズアウトが起こった際の位相反転にも対応出来るのは素晴らしい。そして2つのLoopからなる 'Send/Return' にはフォンと 'ユーロラック' モジュラーでお馴染み3.5mmミニプラグが同時対応し、さらにこの3.5mmのLoopには内部DIPスイッチにより楽器レベルとラインレベルで 'インピーダンス' を切り替えて使用すること可能。









古い 'Halliburton' 時代のアタッシュケースに配置し終えたばかりで、まだ電源のパッチングをやってなかった(汗)。ちなみに蓋に配置したペダルとパワーサプライは10本のネジで固定すべくドリルの '突貫工事' で穴だらけですが、ちゃんと蓋は閉まりますヨ(疲)。基本的なセッティングはUBS-1の 'Fx Send/Returns' にAmbitronを繋ぎ高域を中心に 'ダブリング' でエンハンスし、足りない中低域を 'Volume Send/Return' に繋いだNeotenicSound Magical Forceで補正しながらミックスします。このMagical Forceは 'Pre/Post' スイッチでAmbitronの前後を各々試しながらチェック。'Pre' と 'Post' で迷いますけど、わたしは 'Pre' のセッティングにしております。高域成分を原音に混ぜることでエッジと解像度を上げるのがエキサイターの仕事ですけど、それを '擬似ステレオ化' することで左右に振り分ける代わりに中低域がぽっかりと減ってしまうのが難点。AphexのAural Exciterも同社独自の効果である 'Big Bottom' と組み合わせてその難点を補正しており、わたしはそれをNeotenicSound Magical Forceに担当させているというワケです。その '擬似ステレオ化' された信号はBastl InstrumentsのマルチエフェクツThymeを通り、Flux Effectsによる高品質なステレオ・リヴァーブLiquid Ambienceで定位を整えるように '演出'。本機はおなじみ2声のピッチシフトを生成する 'Shimmer' で攻撃的な音作りにも対応しているのが良いですね。そして上述したように 'メイン・ヴォイス' であるSonicSmith ConVertorとOld Blood Noise Endeavorsの3チャンネル・ミキサー、Signal Blenderを組み合わせてミックスします。欲を言えばココにあともうひとつ、Soma Laboratoryの 'ヴォイス・シンセ' であるThe Pipeも組み込みたいなあ。

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