2017年7月4日火曜日

続・真夏の夜の夢

暑い。ああ、熱帯夜に手を伸ばしたラジオからこんな選曲が流れてきたら・・最近、日常からグッとくる '出会い' と遭遇することもホント無くなりましたねえ。ということで、架空の '真夜中の選曲' スタートです!





まずは、気怠い白昼の熱気がそのまま熱帯夜の乾いた '匂い' としてヒリヒリと肌に刺すように喚起させる、テッド・カーソンの 'ドルフィーの涙'。チャールズ・ミンガスのグループで共演したカーソンとドルフィーは、突然のドルフィー客死の訃報から1ヶ月後、まさに真夏の最中である1964年8月1日にこの曲を吹き込みました。これは完全に '葬送曲' といったものなのですが、個人的にはイタリアの詩人、映画監督であるピエロ・パゾリーニ監督作品 'Teorema' (1968)のオープニング曲として使われたイメージが鮮烈でしたね。この真夏の狂気という導入部に相応しいのではないでしょうか。さて、そんなジットリと汗ばんできた肌から吹き上がる玉の汗が踊り出す・・こんなブルージーなサンバはいかがでしょう?カウント・ベイシーのビッグバンドで活躍したテナー奏者、フランク・フォスターが 'ボス抜き' のメンツで吹き込んだ本作、ヒプノティックなピアノのコードと共にフルートのソロがたまりません。





熱帯夜の淀んだ空気をサッと一掃すべく、こんなファンキーなヴァイブで真夏の狂気を乗り切りましょうか。突如発掘され始めたこのファンキーなヴァイブ男、ビリー・ウッテンはジョニー・ライトルやフレディ・マッコイ同様ソウル・ジャズの枠にいながら、いかにも1970年代初めのファンク・アレンジでザ・スタイリクティクスの 'You Are Everything' やザ・ドラマティクスの 'In The Rain' をやってしまうなど、なかなかの通俗性で楽しませてくれます。ここではラテンな4ビートでアフターアワーズ的リラクシンを堪能したいですね。そしてヴァイブといえば元祖ラテンマン、カル・ジェイダーがファンク・マスター、バーナード 'プリティ' パーディと組んで参加したブラックスプロイテーション映画 'Fritz The Cat' のOSTから超ファンキーな 'Mamblues' を!







なになにモダン・ジャズは渋すぎる、もうちょっと真夏の夜を彩るようなヤツを・・なるほど。じゃあラリーとフォンスのマイゼル兄弟率いる 'スカイハイ・プロダクションズ' のライヴはいかがでしょう?すっかりR&B、ファンク路線へと '宗旨替え' をしたドナルド・バードはアルバム同様、マイゼル兄弟のアレンジされたアンサンブルの隅っこへ追いやられるように存在感は小さくなりましたけど、そこはジャズマンと大学教授の '兼業' だけにオトナの態度で時代のムードに応えます(なぜか動画最後のクレジットでバードと共にラッパを吹く弟、ラリー・マイゼルのクレジットがないのは悲しい・・)。





さあ、マイゼル兄弟の巻き起こした風はそのまま、ジョニー・ハモンド1975年の傑作 'Gears' から夜空へ一直線に飛翔する 'Fantasy' で真夏の夜を駆け抜けます。'アンプリファイ' したエレクトリック・ヴァイオリンの官能的なソロが、7月の熱帯夜に吹き溜まった熱気を吐き出す・・気持ち良い〜。さてさて、そんな熱気は月明かり射し込むカーテンの隙間から生暖かい夜風として室内を吹き抜けます。う〜ん、汗ばむように暑い。この 'Summer Madness' ばりに熱帯夜なムードをArpシンセサイザーのヒョロ〜っとした音色でクールダウンさせてくれるのは、マーヴィン・ゲイ 'Inner City Blues' の共作者であるケニー・ストーヴァーを中心にジョニー・シモーン、アルヴィン・ヒューアの3人からなるグループ、Leo's Sunshipp。





おっと!どこからともなく夏祭りの響きが聴こえてきました。まさに日本の夏の風物詩を思わせるそんな雰囲気は、エチオピアン・グルーヴの重鎮であるムラトゥ・アスタトゥケ1972年の作品 'Mulatu of Ethiopia' で奇妙な追体験をどーぞ。日本の夏とエチオピアが繋がった!さらに夏といえば 'お化け屋敷'。ええ、'怪談' ならぬ怨念めいた '横溝正史ジャズ・ファンク' でゾッと背筋を冷たくしてもらいましょうか。三保敬太郎率いるJazz Elevenの1971年作品 'こけざる組曲' の狂気は傑作!ぜひヘッドフォンでぐるぐると回るファズワウ、フェイズの効いたドラムや女声コーラスと共に三半規管を狂わされて下さいませ。







ファンクってヤツは一度味わい出すともう手放せないほどの中毒性というか、この繰り返しの魔術は強烈なエコーで意識を揺さぶってきますヨ。ジョージ・ベンソンも参加した謎のセッションからなる '真夏の夜の夢' というか、ええ、'Smokin Cheeba Cheeba' というのはこの幻覚的アレンジから察する通り煙モクモクの・・そんな意味でございます。さて、そこから 'エコー繋がり' でジャマイカのキングストンへと意識を飛ばしてみましょうか。ジョニー・クラーク歌う 'Declaration of Rights' からプリンス・ジャミー手がける 'Dub of Rights' の強烈なダブ・ミックス!ああ、この亜熱帯の電子的一夜は、そのままブラジルの 'トロピカリア' の熱気漲っていた頃へとトリップ、Com Os Falcoes Reais1969年の 'Ele Seculo XX' のサイケデリックな世界で強烈にイっちゃって下さいませ。







さあ、ここからは 'Ele Seculo XX' のサイケなムードに触発されて、真夏のインナートリップへとご招待しましょう。テッド・カーソンが 'ドルフィーの涙' を捧げるのならば、フランク・ザッパはこの 'The Eric Dolphy Memorial Barbecue' だ。第1期ザ・マザーズ1970年の傑作 'いたち野郎' で異彩を放っている本曲は、ザッパ特有の諧謔性を盛り込みながらクールと前衛の狭間を往復します。続く '太陽神' ことサン・ラが自主制作した1963年の作品 'Cosmic Tones for Mental Therapy' から '宇宙の声'。まさにダブ誕生の姿がジャマイカではなくニューヨークの裏寂れたスタジオだったことを証明し、チープなリヴァーブ・ボックスを手に入れ嬉々として過剰なエコーを施す '太陽神' の姿が微笑ましい。そして、フランスのカルチェ・ラタン闘争で荒れていた68年パリの雰囲気とアポロ月面着陸への希求が衝突してしまったようなLes Apollos & La Dance Cosmiqueのポップと電子音の奇妙な出会い。





ふぅ、流れは再び混沌と音響の世界からファンクへと回帰し、ここでもう一発、ニューヨークの 'バリオたち' によるブーガルーの一夜で騒ぎましょうか。Speedレーベル専属のThe Latin Blues Bandによる '(I'll Be A)Happy Man' はファンク・マスター、バーナード 'プリティ' パーディも参加して真夜中のダンスフロアーを染め上げます!続く同時代の 'OST・TVライブラリー' から英国のPeer International Library Limitedレーベルで1972年編集の 'Stringtronics - Mindbender' から1曲、Nino Nardiniの 'Tropicola'。この怪しい感じ満載のブレイクビーツでジワジワとクールダウン、たまりませんねえ。





さあて、いよいよ大団円。こんな旅行先の土産物店で売っていると思しきチープなスイス産ボサノヴァのブレイクビーツが、まったりとした '真夜中の蠢き' と白み始める空に晒されて、夏の青さへと変貌して行きます。そして 'Outro'・・夏の夜の余韻をたっぷりと満喫させてくれるロニー・リストン・スミスに締め括って頂きましょうか。また、やってくる真夏の夜のために。


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