2017年3月2日木曜日

60's グルーヴィーな一夜

狂乱の1960年代後半、それまでの 'モノクロ' なモダニズムから、ド派手な極彩色と共に怪しい出で立ちでサイケデリックなダンスフロアーに飛び出してきた若者たち。堅苦しいスーツを脱ぎ捨て、すべてがねじれた幻覚の中で何倍にも増幅した色彩と戯れ、まるで永遠の休日を繰り返す 'サマー・オブ・ラヴ' の季節を宣言します。



まずはそんな狂乱のLate 60'sを象徴するサイケデリックのダンスフロアーから、ジ・エレクトリック・フラッグの 'Fine Jug Thing' が人々の視覚と聴覚に訴えます!このチープなコンボ・オルガンはザ・ドアーズから当時のGSバンドに至るまで、まさにサイケデリックの一夜にかかせない絶妙なスパイス。反体制をきどる無軌道な若者像、みたいな退廃的なシーンとして当時至るところで再生産されましたね。





盲目のサックス奏者、エリック・クロスが 'イェイェ' な60'sガールズのコーラスに導かれてダンスフロアーの熱気に火を付けます!そしてカル・ジェイダーのヴァイブが、そのまま 'イェイェ' なコーラスを引き連れて熱いダンスフロアーをクールダウン。う〜ん、このヒップなノリというか、ほんとジョアン・ドナートは良い曲を書きますねえ。



さあ、グルーヴィーなダンスフロアーにかかせない60'sのファンキーなグルーヴの数々。いきなり強烈なテープ・フランジングの効いたハモンド・オルガンから、このズンドコしたノリがたまりません。いわゆるロックという 'ジャンル' として定型化する以前の、ロックンロールやツイストあり、R&Bやブーガルー、ラテンからジャズまで '異種交配' した初期のロック衝動の方がいま聴いても実に刺激的。なんでロック・バンドというと3ピースのお決まりなスタイルでギター掻き鳴らすものばかりなのか、イイ加減飽き飽きしませんか?





ラテン・ジャズの御大として1940年代からやってきたジョー・ロコもこの時期、まさに通俗的なブーガルーの世界に足を踏み入れます。エル・グラン・コンボによりヒットしたこの 'Chua Chua Boogaloo' もロコの手にかかるとさらに通俗度UP!エコーの効いた女性コーラスの怪しげな 'イェイェ' 度とクラップが増して、オリジナルの典型的にレイドバックしたノリに比べこのタイトな感じはオリジナルより好きかも。同じく御大ティト・プエンテもこの時代はブーガルーを 'やらされて' おり、大抵は皆、忘れたい忌まわしき過去の如く思っているようですけど・・いやいや、この 'HiT !' なノリは格好良すぎでしょ。







60'sニューヨーク・バリオの一夜を真っ赤に染めたラテン・ブーガルー狂熱の一夜。こんなライヴが毎夜繰り広げていたなんて素晴らし過ぎるブーガルーの帝王、ピート・テレス3連発!8ビートのヤクザなブーガルーのノリと熱い打楽器&ホーン・セクション、わいわいと賑やかな歓声と共にピート・テレスのヴァイブがひんやりとした夜の雰囲気を彩る・・もう、ここに足りないものはない!ってくらいの内容ですヨ、これは。未だCD化されていないのが不思議なほどの超名盤。





Eddie Palmieri & Cal Tjader

なになに、もっとブーガルーでノリノリしたい?じゃ、こんなホットなヤツはいかがでしょう?アレ、このホーンリフはどこかで聴いたことが・・そう、クリスティーナ・アギレラ2006年の全米ポップ・チャート第1位 'Ain't No Other Man' で丸々サンプリングされております。ってか、まんまだね。このThe Latin Blues BandはSpeedレーベルの専属バンドで、何とあのグルーヴ・マスター、バーナード 'プリティ' パーディも参加していたようです。なるほど、このファットバックしたファンキーなノリはやはり!本盤は当時のラテン・ブーガルーが持つヤクザなノリをアルバム一枚、丸ごと体現しております。そしてラテン・ヴァイブの大御所、カル・ジェイダーとラテン界の寵児として人気を博したエディ・パルミェーリ奇跡のコラボレーション!面白いのは、ジェイダー所属のVarveとパルミェーリ所属のTicoからそれぞれ 'El Sonido Nuevo' と 'Bamboleate' としてリリースしたこと。当時の様子はパリミェーリ本人による上記リンク先インタビューにありますが、この2作は、幾多のブーガルー盤を蹴散らすラテン・アルバム10選に入れてもおかしくない傑作ですね。う〜ん、やっぱ格が違うな。





こちらはTicoの異色グループにして 'レア・グルーヴ・クラシック' の一枚に数えられる謎のグループ、ザ・ヴィレッジ・カラーズ唯一のライヴ盤。ラテン・ブーガルー専門のレーベルであったTicoながら、ノリは完全にR&Bの 'どファンク一色' で盛り上がります。そうかと思えば、ボサノヴァもやったりと節操のないところもこの時代特有の猥雑な怪しさで良し!

この他、ブッカーT &ザMGズの 'Hip Hug Her'、エスキヴィルの 'Mini Skirt'、デイヴ・パイク1965年のアルバム 'Jazz for The Jet Set' などなど、この辺のグルーヴィーなノリにぴったりな音源はいっぱいあるのだけど、どれも視聴制限ばかり・・仕方がないとはいえ寂しいですが、どうぞYoutubeの方でご堪能あれ。







ブーガルーといえばジャズの界隈でも話題となり、Blue NoteやPrestigeなどの名門レーベルから8ビートを軸としたファンキーかつグルーヴィーなアルバムが粗製乱造されました。まあ、こちらは本業のジャズが立ちいかなくなり、渋々世の中の需要に合わせて 'やらされて' いたというのが本音のようですが・・。有名なのはルー・ドナルドソンによりヒットした 'Alligator Boogaloo' で、当時、日本のGSグループにまで歌詞を付けてカバーされたというのだからビックリ。お!ラテン・アレンジのハプニングス・フォーに比べて、ザ・ホワイト・キックスの方はアレンジがジャズ・ピアニストの三保敬太郎なのか。あの激烈サイケ・ジャズ盤 'こけざる組曲' の人だけにファズが効いていてエグいなあ。



このブーガルーの熱狂は日本のみならず遠くアフリカの地をも席巻し、その名もずばり 'Africa Boogaloo' として同時代にリリースされました。フェラ・クティに代表されるアフロビート的イメージからすれば、ここまでラテン色濃厚でビックリしますけど、実はキューバ革命の影響からルンバの流行と6/8拍子のポリリズム含め、アフリカとラテン・アメリカ圏の文化はかなり密接な繋がりがあるそうです。こちらはカメルーンから世界に打って出たマヌ・ディバンゴとコンゴ音楽の父、ル・グラン・カレことジョセフ・カバセレ、キューバ出身のフルート奏者ドン・ゴンサーロがパリで録音したもので、ここまでグァヒーラの香り濃厚なブーガルーをやるとはビックリ。





そして、やはり挙げねばならない・・当時のジミ・ヘンドリクスらロックと並ぶ '二大インフルエンス' のひとり、'Master of Funk' ことジェイムズ・ブラウン。R&Bにおけるブーガルー・ダンスを流行させたひとりであり、この1969年には新たにポップコーンというダンスを披露しますが、この鋭角的に突っ込んでくるノリこそJBそのもの!おお、まだメイシオ・パーカーも在籍中だ。また、1956年に 'Honky Tonk' のヒットを飛ばしたオルガニスト、ビル・ドゲットもこの時代には、JBのレーベルKingからJB流のファンク・アレンジによる 'Honky Tonk Popcorn' としてリメイク、ファンキーに迫ります。



しかしR&B界でブーガルーによるヒットを連発したのはジェリーOことジェリー・マレイのブーガルー・シリーズでしょう。最初のTom & Jerrio名義を出発点にしてもうブーガルーまみれ!'空手ブーガルー' とかいうインチキくさいノリは、この時期ハリウッドに現れたブルース・リー辺りからの影響でしょうか?TVドラマ 'グリーン・ホーネット' で、駆け出しのリー演じる日本人運転手役カトウが毎度繰り広げるカンフー・シーンは、ちょうどこの時期米国のお茶の間で人気を博しておりました。





そしてもうひとつ、このLate 60'sを代表するグルーヴが 'Tighten Up'!オリジナルはR&Bグループのアーチー・ベル&ザ・ドレルズですが、もうこのベースラインとギター・カッティングから始まるノリはあらゆるところでパクられましたね。オリジナルは超有名曲だけに視聴制限がかけられているので、ここではラテン・ブーガルーの人気バンド、TNTバンドによりパクった 'Musica Del Alma' をどーぞ。改めて聴いてみると結構カリプソっぽいノリもあるというか、ラテン界隈の人たちからも愛されたのは理解できますねえ。オルケストラ・ハーロウもイズマエル・ミランダをフロントに据えた1971年作で 'Horsin' Up' として取り上げているし、ね。





米国ベイエリアのラテン・コミュニティから現れたウォーは、元ザ・アニマルズのヴォーカルであるエリック・バードンを迎えて、サンタナとは別のラテンとロック、ファンクの濃厚なエッセンスを混ぜ合わせて成功した稀有な存在です。その諸説ある前身バンドのひとつ、セニョール・ソウルのクールにして怪しげなブーガルーは、当時のラテン及びR&B界からハミ出したウォー前夜を予兆させる、ユニークな個性を感じさせますね。


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