2022年4月1日金曜日

4月の '残響生成' アプローチ

数あるエフェクターの中でも '空間系' と呼ばれるものは地味にやっかいだ。いや、フツーにポンとスイッチを踏み、ディレイやリヴァーブの効果を現すツマミを回していけば気持ちの良い残響を付加してくれる管楽器の強い '相棒'。しかし、実際はライヴなどの会場における環境、またはバンドというアンサンブルの中で決定されるテンポなどにより、それらを使う前段階である程度の 'チューニング' を施しておく必要があるのです。楽曲ごとに違うテンポを合わせるべく、数値とタップテンポで決めたディレイタイムをプリセットして瞬時に呼び出すのが基本的な使い方。ここ最近の複数プログラム、MIDIに対応した機種に人気が集まるのは、まさにそんなライヴにおけるリアルタイム性を重視した結果でしょうね。管楽器の場合、ギターのようなリードもバッキングもというアンサンブルの重要なパートはなく、あくまでソロを吹く際の 'アンビエンス' として効果的であれば十分で、せいぜいリアルタイムにタップテンポのスイッチを踏み、大体のテンポで合わせられればOK。個人的には大仰かつ煩雑なプログラム機能のディレイよりタップテンポ程度のお手軽なディレイが好きです(シーケンサーをバックトラックにMIDIで同期させたい場合などはやはり必須ですけどね)。



そんな空間生成を生み出すと共にトリッキーな効果音にも威力を発揮するディレイ。デジタルの多機能かつクリアーな新製品が市場を賑わせる一方で、古の磁気テープを用いたテープ式エコー、磁気ディスクを用いたディスク式エコー、BBDチップを用いたアナログ・ディレイと '往年の名機' をシミュレートする 'アナログ・モデリング' の製品も相変わらず多くのニーズを満たしております。複数テープヘッドのリアルタイム操作とテープ・スピードの変調、フィードバックによる発振、グニャグニャに音程の狂うモジュレーションなど、単に '音を飛ばす' だけではないアプローチはそのままDSPの恩恵を受けて現在の音楽スタイルにおける '領域' を広げております。ちなみに近藤等則さんのフル・ステレオによるパラレル接続でのディレイ、リヴァーブのミックスでは、Custom Audio Japan (CAJ)のCustom Mixerを中心としたセットアップでしたがこれを大阪の工房、TrialのPALmixer Stereoを用いることで同種の音作りによるミックスが可能です。




そんな現在のディレイ/エコー市場に一石を投じたともいうべき大きな貢献を果たしたのが、まさに 'アナログ・モデリング' の端緒を開いたBoss RE-20 Space EchoとLine 6 DL4 Delay Modeler。その '現在の伝説' が20年の時を経て2022年にRE-2とRE-202、DL4 Mk.Ⅱとしてデザイン、機能共にリファインして再登場です。まず通常のBossシリーズであるRE-2はModeツマミにより再生ヘッドの組み合わせを11種から選択可能。もちろんテープの不安定な挙動を再現するWow&Flutterを調整しながらシミュレートしたSpring ReverbとEchoを独立して操作することが出来ます。一方、往年の名機であるDM-1やCE-1を模した筐体にSpace Echoのパネル面を再現したRE-202は、これまたRE-2をベースに4つの再生ヘッド組み合わせをシミュレートした12種から選択可能。Spring Reverbのほか、Hall、Plate、Room、Ambienceのリヴァーブ5種も用意し、さらにサチュレーションから '飛び道具' 的効果のWarp、Twistを装備。タップテンポやMIDIにより本体で4つ、MIDIでコントロールして最大127までプリセット保存、呼び出すなど拡張性にも優れております。そして満を持して登場したDL4 Mk.Ⅱは、これまでのDL4を象徴する優れたインターフェイスはそのままに新たに15種のプログラムとリヴァーブを個別で備えることで 'ディレイ+リヴァーブ' のパラレルによる出力が可能。さらに最近の製品に倣ったファームウェア・アップデートに対応することでいつでも最新ヴァージョンに刷新することを可能とし、また、本機最大の魅力のひとつであるループ・サンプリング機能は、最大240秒の録音(microSDカード使用で数時間までの録音時間拡張可)、もちろんMIDIや今回の仕様から入力部にXLRマイク入力を設けたことでダイナミック・マイクを直接繋いで使用可能となりました(ファンタム電源は不可)。これはラッパ吹きにとって朗報でしょうね(笑)。





ちなみにこの 'フット・レコーダー' ともいうべきループ・サンプラーは、そのプレイヤビリティーと簡易的に音楽を構成する 'スタジオ' の意識が統合されたものとして画期的な存在でした。それは2小節単位のフレイズをループして、上下2オクターヴ程度のピッチとテンポ可変、オーバーダブや逆再生ができるものとして、Electro-Harmonixは16 Second Digital Delayや2 Second Digital Delayなどを初めてペダルとして実現させました。1980年代に流行した 'メガミックス' の時代、E-Mu Emulatorなど高級な機器を所有出来ないクリエイターにとっては、この簡易的なループ・サンプラーで '初期デジタル' 最初の恩恵を受けていたことは特筆して良いでしょうね。ここでの 'エレハモ' はその16 Second Digital Delay以降、現在までに数々のループ・サンプラーをラインナップしております。2880、45000、22500、720、ディレイとの複合機ではStereo Memory Man with Hazaraiというのもありました。そしていよいよ '95000' にまで到達・・'元祖' の威厳とはこういうことを言うのでしょうか。ほとんどリアルタイム操作のMTRというか、それでもあえてペダルという形態に拘っているというのが 'エレハモ' らしいですね。そんなループ・サンプラーは各社それぞれに使い勝手があり、その設計思想のクセを体得できるか否かで同種製品の評価は大きく異なります。実際のライヴ演奏などでは、生のバンドのグルーヴに機械のループを同期させるとなると大変な労力を伴いますが、俗に 'YouTuber' なる動画を主なパフォーマンスの場とする 'ひとり演奏会' のお供としては、なくてはならない便利な機器だと言えますね。ここでちょっとサンプラーの特徴を上げておけば、主な機能は大体以下の5つになるだろうと思います。

①タイム・ストレッチ
②ループ/リヴァース
③キー・マッピング/ピッチ
④フィルタリング/エンヴェロープ
⑤ワンショット

①は、いわゆる 'ベッドルーム・テクノ' 黎明期においてサンプラーを触ったことのある方ならその苦労が分かるのではないでしょうか?昔は取り込んだサンプルのピッチとテンポを同時に調整するのが難しかった・・。ピッチを上げればテンポも早くなり、テンポを下げればピッチが下がる。そんな時代に登場したドラムンベースって実はこういう苦労を乗り越えた上で体現したジャンルであり、Steinberg ReCycleという編集ソフトで細かくスライスして思いっきりテンポを上げながらピッチシフトしてやると・・あの緻密な高速ブレイクビーツが出来上がってしまうという・・。それも今では、自在にオーディオをタイム・ストレッチしていろんなサンプルをPC内でくっ付けられるのだから良い時代になったもんです。ちなみにElektron Digitaktの 'Ver. Up' で早く導入して頂きたい機能のひとつがコレ。

②はサンプラーの基本、2小節なり4小節のサンプルをループ(反復)させたり、いわゆる逆再生させたりってヤツ。まあ、これも初期のサンプラーはとにかくメモリーがバカ高かったことから、少ないサンプルとループをベースにしたブレイクビーツ的手法として結実したんですけどね。

③は、そもそもサンプラーは取り込んだサンプルを楽器のように演奏できる、ってのが初期の '売り' だったのもあり(メロトロンのデジタル版ということ)、同時期に登場したMIDIでキーボードへ 'マルチ・サンプリング' して音程を付けて割り振ってくれます。

④は、実はサンプラーが現在でも生き残る理由のひとつであり、逆に言えばサンプラーを誤解させる要因のひとつとも言えるシンセサイズの機能のこと。そう、サンプラーの 'エディット' はほぼシンセサイザーのVCF、VCA、LFOと同義であり、外部から取り込むサンプルをVCO(オシレータ)の代わりにすることでいろんな音作りに対応します。いわゆるPCMシンセサイザーというのもコレ。

⑤はいわゆる 'ポン出し' というヤツで、今なら舞台音楽のSEなどでシーンに合わせてジャン!と鳴らすのが一般的でしょうか。ヒップ・ホップの連中に人気のあるBoss SP-303などが有名ですけど、ここで紹介するループ・サンプラーというのも基本的にはこの範疇に入ります。



そして、このLine 6から独立したエンジニアらにより設立されたDamage Controlの展開するブランド、Strymonの '空間系ペダル' も今や幅広いユーザーと共に定番の地位を築いております。デジタル・ディレイだけでもTime Line、El Capstan、Brigadier、DIG、ヴィンテージなトレモロとスプリンル・リヴァーブを 'モデリング' したFlintなど、実に多彩なラインアップを用意しておりますが、ここでは高品質なデジタル・リヴァーブのBigSkyに登場して頂きましょうか。ステレオ入出力による高品質な12種のリヴァーブ・アルゴリズムを搭載して、いわゆるギターアンプから放たれる 'アンビエンス' のキャビネット・エミュレーターと共にマルチ・エフェクツらしく最大300個のプリセットを保存可能です。また、リーズナブルかつ簡便なBlueskyも用意しておりまする。さらに 'シンセシス・リヴァーブ' と銘打ったNightSkyに至っては・・これだけのプリセット自体がもう 'ひとつの楽器' というか(汗)、まさに弾き手(吹き手)のセンスが問われますよねえ。







今回の新製品であるLine 6 DL4 Mk.Ⅱには高品質なリヴァーブを内蔵して 'ディレイ+リヴァーブ' のパラレルな音作りに対応したものもあるのですが、やはり単体のリヴァーブを一度は触って頂きたいですね。入手しやすいEQDのTransmiserや2声のピッチシフトを重ねた 'Shimmer効果' など、ディレイと並んで攻撃的な音作りにも威力を発揮するリヴァーブなのですが、わたしのお気に入りは1978年の初期デジタル・リヴァーブLexicon 224の 'プレート・リヴァーブ' をモデリングしたというVongon ElectronicsのUltraseer。木製のウォールナット材に嵌め込まれたこのステレオ・ユニットは、32bitのフローティングDSPで作られた残響を '初期デジタル' の質感の為にあえて16bitにダウンサンプリング。そして、いわゆる処理の甘さからくるが故の 'エラー的' な揺れを 'ヴィブラート' として、レスリー風効果を生成するサイン波の 'Cycle' と日焼けで反ったアナログ盤や劣化テープの 'Random' をリヴァーブ・アルゴリズムに追加します。そして新たにChase Bliss AudioとMerisの 'コラボ' からは、同じく1970年代後半のデジタル・リヴァーブの質感と共にスタジオの定番として未だ鎮座するLexicon 480Lをこんな価格帯で実現してしまったもの凄いヤツが登場。Tank Mod、Diffusion、Clockなど3種のリヴァーブ・アルゴリズムを備え、リヴァーブテイルを完全にシェイピングするディケイ・クロスオーバー、10プリセット×3バンクのユーザー・プリセットを6つのムーヴィング・フェーダーでトータル・リコール出来る再現性はもはやペダルの範疇を超えておりまする。また、高品質リヴァーブといえばEventide Spaceで極めたプログラムを 'インフィニットモード' と 'フリーズモード' のリヴァーブ2種を中心にコンパクトにまとめ、'H9シリーズ' 同様PCと連携してソフトウェア 'Eventide Divice Manager' でプリセットの追加、保存、エディットを行うBlackhole Pedalが登場。一方で、いやいやリヴァーブはやっぱりアナログだよって人は、残響のディケイの長さを順に 'Le Bon'、'La Brute'、'Le Truand' のスプリング・ユニットとして3種用意されたフランスの工房、AnasoundsのElementをどーぞ。一方、キセノン管をスパークさせて特異な歪みを生成するPlasma Pedalで市場に一石を投じた以降も革命的なアイデアで惹き付けるラトビアの変態、Gamechanger Audioの光学式スプリング・リヴァーブLight Pedal。いよいよここ日本にも上陸してきましたけど・・さ、どう '残響演出' しましょうか?。





Source Audio Nemesis Delay SA260

ギターアンプを始め、未だ真空管と並び重宝されている前時代的な物理現象を利用するスプリング・リヴァーブ。これがエコーの世界になれば磁気テープ式、磁気ドラム式の '質感' をデジタルにおけるDSPの 'アナログ・モデリング' で追求しているのがギター業界の習わしです(苦笑)。そんなアナログの曖昧さを求める人間の耳にもうひとつ、Tel-Ray 'オイル缶エコー' の世界が待ち構えております。オイルで満たされた 'Adineko' と呼ばれる缶を電気的に回転させることでエコーの効果を生成するものなのですが、このオイルが現在では有害指定されていることで物理的に再現することが不可能。じゃ、ひとつモデリングでもしてみっか?とやってみたのがCatalinbreadとOld Blood Noise Endeavorsの2つの工房からのもの。このオイルの雫のイメージそのままドロッとした揺れ方というか、懐かしくも 'オルガンライク' に沈み込む '質感' というか・・たまらんなあ。











あの数々の伝説的名機Ureiの復刻からプラグインに到るまで、今や定番のUniversal Audioから満を持して登場した 'Stomp Box 3種' の内のひとつであるヴィンテージ・エコーを高品質で再現したStarlight。そしてイタリアの新興工房であるTEFI Vintage Lab.のMs. Delaylette。Binson EchorecやMaestro Echoplexに象徴される磁気ディスク、磁気テープで生成する往年のテープの '質感'。本機はクラシックなEchoとNachhallの2つのモードがあり、大仰な機械的動作から '仮想再生ヘッド' として様々なエコーの反響を生成します。もちろんアナログならではの '訛り方' であるワウ・フラッターの挙動も再現しております。また、この手のアナログ・エミュレートによる最高峰としては英国のエンジニアであるピート・コーニッシュの手がけた垂涎の逸品、'TES' ことTape Echo Simulator。本機はBossのDigital Delayをベースに徹底的なチューンアップを施したカスタムメイドですけど、少しでもその雰囲気を味わって頂きたいと名古屋の工房、BamBasicがBoss DD-6の 'ノックダウン' をベースにした同種品でカスタマイズしているので '本物' に手の届かない方はどーぞ(笑)。ただ、オリジナルDD-6にあったタップテンポ・モード '長押し' の問題を 'Send / Kill Send' スイッチで解消しており、この 'Lo-Fi' ツマミと共に単なる 'ノックダウン' では終わりません。そしてKorgが往年の名機にしてU2のギタリスト、ジ・エッジにも愛されたラック型デジタル・ディレイSDD-3000のペダル版も素晴らしい。満を持しての新製品でも早々に 'ディスコン化' させてしまう謎の 'Korg商法' を跳ね除け、一度限定で再販せざるを得なかった稀有な一台でもあります。










ここからはフィードバックやローファイの機能に特化したデジタル・ディレイの変わり種です。まずは本機を見ておおっと驚く '昭和/平成前期世代' には懐かしいパッケージ。当時、今の世代にはピンと来ないであろうテレビの録画にはVHS/ベータのビデオテープというものが必須でした。その中でSonyが発売していたビデオテープがこのT-120であり、そのパッケージをまんま 'Video Tepe' 的質感のローファイなエコーとして落とし込んだのがカナダの新興工房Demedash Effects。そして本機は早くも 'Version 2' としてマイナーチェンジが行われ、モメンタリースイッチ変更と共にDepth、Speedの '同時操作' でそれぞれネジれたモジュレーションのGlide、グリッチ風LFO効果のRandomizeを生成します。実際はテープ特有の 'ワウ・フラッター' を再現したグリッチというにはちと地味な '隠れ機能' で、その曖昧さからリヴァーブの延長的な暖かいディレイ効果が本機の '売り' ですね。一方、米国はサウスカロライナ州コロンビアに本拠を置くCaroline Guitar CompanyのKilobyte Lo-Fi Delay。この手の 'Lo-Fi' とかアナログ・ディレイ、テープ・エコーをシミュレートしたデジタル・ディレイのほとんどに搭載されているのがPT2399というICチップであり、本機もそれを用いながら実に心地良い質感でなまります。こちらはStrymon Brigadier同様にスイッチひとつ踏む度に発振するフィードバック、'Havoc' スイッチが売りのようですが、結構、モジュレーションとその名の如く 'Lo--Fi' の 'なまり具合&荒れた質感' は独特です。今やすっかり '曰くつき' (苦笑)のブランドとなってしまいましたがある時期、日本の 'ブティック・ペダル界' で気炎を吐いていたHonda Sound Worksが2007年に工房を閉じる最後の製品として送り出したのがこのFab Delay。基本はPT2399チップを用いた 'アナログライク' のデジタル・ディレイなのですが、レトロなスライダーコントロールでFeedbackとTimeをリアルタイムに操作して攻撃的な音作りに特化させたもの。動画は静岡の工房Soul Power Instrumentsでディレイ音を残しながらOn/Offする 'Trail機能' をすべく、ミキサー回路内蔵のモディファイをしております。オリジナルは2つの小ぶりなプラスティック製のスライダーで操作しますが、現在、手許にあるのはゴム製の大ぶりで量感のあるスライダーに換装されているのが格好良し!。このようなスライダーのコントロールではIbanezのEcho Shfterも人気となった一台ですね。ES-2からES-3とモデルチェンジしながら好評を得ておりますが、初代ES-2を設計したのは独立して名古屋から 'ガジェット的ペダル' を製作するElectrograveの主宰、Kaz Koike氏です。そしてフィードバックといえばアナログ・ディレイということで、今年最初の興奮するニュースはあの名門MaestroがGibsonの手により復活しました。今のところ展開する5種ラインナップのうちBBDを用いたアナログ・ディレイのDiscovererが登場。

 





Danelectro Back Talk BAC-1
Danelectro Back Talk DR-1 Reverse Delay on Reverb.com

コレもついに再登場。'Danelectro 60's Series' として発売時の無関心から早々に 'ディスコン'、その後に某アーティストが本機のトリッキーな効果を披露して競合機皆無の 'リヴァース・ディレイ専用機' であることから高騰、今風に言えば 'バズり' ました。いわゆる 'ダンエレ' のペダルといえばその古き良き50'sな香りをデザインに盛り込んだチープな作りとして、どうしても楽器店のワゴンセールか通販で気軽に買うものというイメージがありましたね。その中でもこの '60's Series' はエフェクター黎明期の雰囲気をペダルに落とし込み、まさにテープの逆再生効果を狙った本機のほか、強烈なテープ・フランジング効果のPsycho Flange DF-1、そしてインドの民俗楽器シタールをシミュレートしたDDS-1 Sitar Swamiの3種をラインナップ。その中でもこのBack Talkこそ一時のプレミア状態を乗り越えて現在の市場に復活、さあ、思う存分そのユニークな逆再生効果を堪能しようじゃありませんか!ちなみにこの '復活版' で面白いのはわざわざ筐体やツマミ、スイッチに傷や汚れを施す 'レリック仕様' であること。つまり一台一台ビミョーに '表情' が違うというか、工房のおじさんが '仕様書' に倣って?日頃のストレスを発散しながら傷付けているかと思うとちょっと面白い(笑)。


こちらはここ近年、新たなカテゴリーとしてひとつの市場を形成しつつある '飛び道具ディレイ' の変わり種とも言うべき、'グリッチ' や 'グラニュラー・シンセシス' を生成するペダルたち。文字通りランダムに吐き出されるフレイズの羅列から次第に並び出すリズミックな '規則性' への欲求の中で、いかに新たなインプロヴァイズを獲得することが出来るのか?。これは、ここ近年市場に供給されるいわゆる 'グリッチ・ペダル' 各製品ごとのクセに左右されるものでもあり、個人的にはその不規則性から規則性へと耳が '矯正' されていくところで 'ループ' だとバレないことが大事。あ、実はこれランダマイズじゃないゾ!、と指摘されないギリギリのところでいかに吹奏の身体性と '手を握る' ことが出来るのか?。う〜ん、ちと抽象的な言い回しになっちゃいましたが(汗)、簡単に言えば皆、この手の機器を手にしたら 'ループ' を避けようとツマミを回し過ぎて飽きちゃうのも早いんですよね。だからじっくり、コトコト '弱火' で慌てず騒がず、回し過ぎたツマミは半周分戻して・・一音を顕微鏡で拡大、採取するような気持ちが大事なのですヨ。そして、今月は魅力的なエコーペダルが大量(笑)ということで、現在のエフェクター市場で気炎を吐くChase Bliss Audioから 'The echo Collector' を題されたHabbit登場。基本的には最大1分のディレイタイムと共にマルチタップ、2バンク×3種のモディファイア、ルーピングにより 'コレクター' の名の如く音をスキャンして即興的なシーケンスの '作曲' に威力を発揮します。まさにMood、Blooperに次ぐ第三の '飛び道具' 的な一台ですけど、このデモ動画に見るカナダ発のYoutuber、Knobsさんの美意識がこの手のペダルに対するイメージを触発、多大なる影響を与えたことの方が面白い(笑)。

 



そして 'グリッチ' や 'グラニュラー・シンセシス' 系サンプラーとしてはイレギュラーかも知れませんが、わたしも愛するスウェーデンの頭脳、Elektron Digitakt DDS-8。今やAkai Professional MPCシリーズやRoland SP-404 Mk.Ⅱといったお手軽にビートメイク出来る多機能なライバル機がありますけど、やはりこのElektronの佇まいと質感が好きだなあ。本機は同社の '迷宮的存在' なOctatrackの操作を覚えるのに一苦労・・という声がスウェーデンのElektron技術陣に届いたかどーかは分かりませんが(笑)、シンプルなワンショットのループ・サンプラーと8ヴォイスのPCMドラムマシンをひとつにまとめたものとして、現在 '宅録野郎' たちを中心に人気を集めております。このサイズでサンプラーとドラムマシン、シーケンスが一括して打ち込めるという分かりやすさはイイですね。プリセットで81個、最大127個のサンプルをRAMで生成し、現時点のヴァージョンアップではサンプルのスライスやタイムストレッチは出来ず、あくまでエンヴェロープでサンプルのスタートとエンド、ループポイントとチューニング、その再生方向(逆再生など)を弄りながらElektronご自慢の 'パラメータロック' というトリガー機能で鳴らす(だからワンショット)だけのもの。それらがリアルタイムで動かせる為に、突発的なグラニュラー効果から 'ウェイヴテーブルシンセ' のオシレータなども内蔵しているので面白いことが出来ます(現状モノラルのみのサンプリングなので 'Ver. Up' でステレオ化してくれ〜)。

●オーディオトラック×8
●MIDIトラック×8
●各オーディオトラックに独立したマルチモード・フィルター&ディストーション搭載。
●各トラックに独立した1つのLFOを割り当て可能(オーディオトラックのみVer.Upで2つに拡大)。
●センド・エフェクツ(ディレイ、リヴァーブ)
●サンプリング機能(64MB + Driveストレージ1GB)
● - USB経由による 'Overbridge' 対応 -
:Digitakt本体にUSB経由でオーディオデータ読み込み可能。
:専用プラグインで本体を制御(VST、AU対応)。
:2 In/Outのオーディオドライバー機能(CoreAudio、ASIO、WDM対応)。
:DAWトラックへのDigitakt本体のトラックを読み込み可能(24Bit/48Khz)。
:DAWのプロジェクト情報にDigitakt本体の設定を保存可能。
:USBによるMIDI信号の送受信が可能。
:Digitakt本体のシーケンサーとDAWを保存可能。








ディレイをヴォリューム・ペダルなどと組み合わせて、独特な空間生成の演出に威力を発揮する 'ヴォリューム・エコー' 技。近年この効果の再評価を博したのは 'アナログ・モデリング' なデジタル・ディレイで一世を風靡した名機、Line 6 DL4 Delay Modelerに搭載された 'Auto Volume Echo' のプログラムですね。そして、Boss SG-1 Slow Gearなど単体のエンヴェロープ・モディファイアと組み合わせて同種の効果を生成すべく、この手のニッチな 'インサート付きディレイ' の端緒として人気となったBlackbox改めOoh La La QuicksilverとGuyatone SV-2の組み合わせによる 'ヴォリューム・エコー' もどーぞ。








Diamond Guitar Pedals Memory Lane MLN-2 (discontinued)

ここで取り上げるディレイとしては、NOSのBBDチップPanasonic MN3005を盛り込みタップテンポを備えたアナログ・ディレイDiamond Guitar Pedals Memory Lane 2の 'Feedback' に 'インサート' する使い方。いわゆる 'ヴォリューム・エコー' の効果で、ディレイの前にヴォリューム・ペダル、もしくは音のアタック、サスティンを操作するエンヴェロープ・モディファイアを繋ぐことで幻想的なエコーを生成するものです。'エレハモ' のリヴァーブCathedralの前段にMalekko A.D.を繋いで、アタックをコントロールする動画も面白いですね。VCAによりアタックとリリースをエンヴェロープでコントロールするエンヴェロープ・モディファイアは、その歴史を紐解けばMaestro ME-1、Electro-Harmonixの 'Tape Reverse Simulator' ことAttack Decay、Boss Slow Gear SG-1やGuyatone Slow Volume SV-2とSVm5、Morleyからは専用の三角ピックをタッチセンスにしてコントロールするACVなどがありました。近年ではPigtronixのPhilosopher King、MalekkoからA.D.とSneak Attack.、Spaceman Effects Mission Controlに 'エレハモ' からリファインされたAttack Decayまで登場するなど地味に支持されている効果でもあります。本機はシンセサイザーでお馴染みのADSR(Attack、Decay、Sustain、Release)と呼ばれるエンヴェロープを操作するもので、それをワンショットのモノラル、ポリフォニックの2つのモードに3つまでセーブ/リコールのプリセット可能。また効果をより鮮明にすべくファズも内蔵し、いわゆる本機の効果で最も有効性のある 'ヴォリューム・エコー' に最適な 'センド・リターン' を搭載することで、ここにディレイやモジュレーションを繋いで積極的な音作りに活用出来ます。本機のツマミはエクスプレッション・ペダルのほか、CVにも対応することで 'モジュラーシンセ' と組み合わせた音作りは最近の風潮です。わたしが所有するのはDODの僅か1年半弱しか生産されなかったレアもの、FX15 Swell Pedal。Attack、ReleaseにCut/BoostのEQを備えながら、本機最大の特徴であるモメンタリースイッチでエンヴェロープをコントロールするのはかなり先取的。














さて、このような外部ペダルと組み合わせる 'インサート' を備えたディレイでは、その機能に特化した専用機としてスウェーデンのMoody SoundsからStrange Devil Echoがあります。その他、Moogerfooger MF-104 Analog DelayやCarl Martin Echotone、ここ最近の現行品としてはSkreddy Pedals EchoやFairfield CircuitryのMeet Maude、JHS Pedals Panther Cub V1.5などが探すと意外に見つかりますヨ。ここではその 'ニッチな機能' の探求として上から動画順にコーラス、フェイザー、リヴァーブ、ディストーションをそれぞれ 'インサート' しておりまする。ちなみにMemory Lane 2の取説、英文の方は記載があるものの日本語訳のものではこの 'Feedback' 端子使用でエクスプレッション・ペダルのコントロールのことしか書いてない(汗)。ギタリストには馴染みの薄い 'インサート・ケーブル' 使用ということで省いたんかな?(苦笑)。また、動画はありませんが2004年頃に米国ワシントン州にあった工房、Smart People Factoryのデジタル・ディレイ、Interstate i-5も狙い目です。いわゆる 'アナログ・モデリング' で2000年の発売以降、現在までベストセラーを記録するLine 6 DL4 Delay Modelerを契機にPT2399チップなど、アナログ的質感を持つデジタル・ディレイが流行し始めたのが2000年代初め〜中頃。真空管とデジタルのハイブリッドな製品も送り出すSIB !のMr. Echoと並び話題となったこのInterstate i-5は、いわゆるデジタル・ディレイながら 'Warm' ツマミを回すことでアナログ特有の質感を生成し、最大1秒(1000mS)のディレイタイムやエクスプレッション・ペダルによるコントロールなど、実に多機能でとても使い勝手の良い製品でしたね。それは現在でも状態良好の中古が市場に溢れており(ズラッと並べてみました・・笑)、とりあえずディレイの 'インサート技' を試す出発点としても最適かと思います。ちなみに本機はそのデジタル特有の仕様からこんな '注意書き' が書かれておりました。

"本機をご使用の際、TIMEコントロール・ノブが0の位置で入力ケーブルの接続およびフットスイッチをONにされますと稀にディレイ音が得られない場合がございます。これはディレイタイムを設定しているオシレータ回路が温度等の影響により正しく起動しない為で、故障ではありません。このような場合は一旦ケーブルを取り外し、TIMEコントロール・ノブを0位置以外に設定し直しケーブルを再接続した後スイッチ操作を行って頂きますと正常なディレイ音が得られます。"










さて、未だ 'アナログ・モデリング' に象徴されるヴィンテージ・トーンへの希求から、クリアーなデジタル・ディレイに対してアナログの味付けをするアイテムなども用意されております。最近、J.Rockett Audio Desiginsから全盛期のElectro-HarmonixやPigtronixを支えたエンジニアのハワード・デイヴィスと共同で開発した新作のClockwork Echoがラインナップに加わりましたが、このAPE (Analog Preamp Experiment)は、本機を前後でプリアンプ的に配置するシリーズ接続、そして内蔵のループ接続によりディレイの 'キルドライ' で 'デジタル臭さ' と言うべきキラッとした響きを鈍らせる一風変わったデバイス。ちなみに本機のプリアンプ使用ではRepeats、Mix、Rec各ツマミはそれぞれトレブル、アウトプット、ドライヴのコントロールとして機能しますが、ループ接続の際にはRec、Mixツマミでコントロールして行きます。また、このテープヘッドに録音したような '質感' の生成には、Ecoplex同様に内部電圧22.5VをDCコンバータで昇圧して駆動する ' シミュレート' にも対応します。そして、今さらながらBossやStrymon、Eventideと並びデジタル・ディレイの一時代を築くほど定番となったTC Electronicの 'Flashback 4兄弟' シリーズ。TC独自の技術により実現したケータイの無料アプリ 'TonePrint' を介しての膨大なプリセット供給は、やはりエフェクター史における大きな革命だったと思うのです。










そして、ディレイといえばダブへのアプローチがあるのですが、ここは楽器構えて左手の開くラッパ吹きならではの利点を生かし、片手でディレイを触りながらのリアルタイムな空間生成はいかがでしょうか。をと言えばトランペットと最も親和性の高いエフェクツにディレイがあり、そんな '飛ばしワザ' を最大限に活用したのがダブにおける '空間生成' の拡張にあります。これもいわゆるギター用ペダルからラインレベルのラック型、そしてDJ用に到るまで幅広く市場に用意されておりますが、やはりサウンドメイクの 'キモ' はミキサーと組み合わせて原音とエフェクト音のミックスを取るところにあります。安価なBehringerやMackie、Yamahaのライン・ミキサーなども良いのですが、ここではCrews Maniac Soundの3チャンネル・ミキサーで 'センド・リターン' を備えるCMX-3やDMA-3.2などがオススメです。








 



反復の 'サウンドスケイプ' ともいうべき深〜いリヴァーブ&エコーの音像から滲み出す '4つ打ち' の美学は、まさにジャマイカで育まれたダブの世界観がそのまま、暗く冷たく閉ざされたヨーロッパの地で隔世遺伝した稀有な例と言っていいでしょうね。1996年、ドイツでダブとデトロイト・テクノという真逆なスタイルから強い影響を受けたモーリッツ・フォン・オズワルドとマーク・アーネスタスは、自らBasic Channelというレーベルを設立してシリアスな 'ミニマル・ダブ' を展開するリズム&サウンドと、1970年代後半からニューヨークでダブを積極的に展開させたロイド "ブルワッキー" バーンズの作品を再発させるという、特異な形態でダブを新たな段階へと引き上げることに成功しました。この 'Basic Channel' と彼らダブの心臓部ともいうべき 'Dubplates & Mastering' の協同体制は、特にモーリッツとマークのふたりからなるRhythm & Soundの 'ルーツ志向' からワッキーズとの '共闘'、そしてMoritz Von Oswald Trioによるアフロビートの巨匠、トニー・アレンとのコラボから1990年代後半の 'イルビエント' に到るまでダブの隔世遺伝的な原点への配慮も忘れてはおりません。やはりこの硬質なダブの質感は、当然、亜熱帯の緩〜い気候と共に育まれたジャマイカ産の 'ルーツ・ダブ' とも、ニューウェイヴと共にメタリックな質感を持った 'UKダブ' とも違う、テクノを経過したドイツ産の 'Dubplates & Masterring' 特有のものでしょうね。

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