なんと久々なFriday Night Plansのmasumiさんのご登場!。すっかり音響派な世界へ旅立ってしまい戻ってこないかと思われましたが(苦笑)、リヴァーブたっぷり効かせた '海の中' をたゆたうように2018年作の一曲 'Fall in love woth you in every 4AM.' なども織り込みながら上手な落としどころ?を見つけたようです...内省的だけど(汗)。このまま心地よい眠りに就きそうではありますが、もうちょいサム・ゲンデル的な飄々とした諧謔性も欲しいかな?...まだ若いんだから(笑)。そういえばStutsらとのコラボで制作した一曲 'Prism' でフィーチュアした若きラッパー、JJJも逝ってしまいましたね...。そんな悲しみも込められてるのかな?(涙)。
そんな季節に 'プチ逃避' でやってる 'シンセ温泉'。そういうコンセプトで随分と前からやってるベッドルーム・テクノの御仁、サワサキヨシヒロさんもいらっしゃるようですが(なんとこのイベントにDe De Mouseも出てたとわ!)、わたしは特別凄いものを用意することもなくBuchla Music Easel一台で温泉宿の一夜を小さな小さな音色で '触っていく' だけ。怪しげな 'スピリチュアル野郎' と勘違いされそうだけど、そう、これはセラピー 'Therapy' なんです。その昔、サン・ラのアルバムで 'Cosmic Tones for Mental Therapy' というタイトルがありましたけど、ツマミやスイッチ、スライダーをひたすら触っていくことと小さな小さな音色に耳を開いていくこと。ここでの 'マイルール' はとにかくヴォリュームを小さく、耳を圧迫しない肩乗せ型の古いSonyのヘッドフォンで目の前に現れる音色との '対話' だけが頼りです。個人的にはこんな電気すら使わないスティールパンでそういうことやりたいけど、しかし、こういうヴォリュームの調整できる機器を使っていると最近の音楽がやたらラウドでうるさいことに気が付きます。ジョン・ケージじゃないけど、こーいう静かな温泉地にやってくるともう、ほかの音色はいらないくらいいろんな 'サウンドスケープ' に囲まれているんですヨ。川のせせらぎ、虫の声、かぽーんと鳴る風呂の桶、微かな夜風の匂い...そんな研ぎ澄まされていく五感に合わせてMusic Easelのチューニングをゆっくり合わせて行きます。大事なのは触ってソレを忘れることです...。その稀有な時間と '触れ合った' ことが大事であり、余計な心配事やストレスが入り込まなかったことに驚くでしょう。飽きたらやめて寝っ転がる、また、触りたくなったら手を伸ばす、根を詰めない...ハマらない。自分はなんでも熱狂するものはヘーキで資料探しやYoutubeのネットサーフィン始めるタイプだから、コレとっても大事ですね。SNSに苛まれるケータイの電源も切っときましょう...液晶の明かりは敵だ!(このスマホ依存症的ストレスは確実に目に来ますよ)。しかし、やっぱポータブル?とはいえアタッシュケース・サイズのMusic Easel...持ち運び可能ではあるけどデカくて重いわ(汗)。
W - 珍しい、高い、古い(笑)。僕は楽器屋で一回しか見たことがないんだよ。当時はパッチ・シンセを集め始めたころで、興味はあったんだけど、高過ぎて買えなかった。まあ、今も買えないんだけど(笑)。
U - BuchlaとSergeに関しては、普通のシンセとは話が違いますよね。
- あこがれのブランドという感じですか?。
U - そうですね。昨今はモジュラー・シンセがはやっていますが、EurorackからSynthesizer.comなどさまざまな規格がある中で、Buchlaは一貫して最高級です。
W - ほぼオーダーメイドだし、価格を下げなくても売れるんだろうね。今、これと同じ構成のシンセを作ろうとしたらもっと安く組めるとは思うけど、本機と似た構成のCwejman S1 Mk.2も結構いい値段するよね?。
- 実際に操作してみて、いかがでしたか?。
W - Sergeより簡単だよ。
U - 確かに、Sergeみたいにプリミティブなモジュールを使って "これをオシレータにしろ" ということはないです。でも、Music Easelは普通のアナログ・シンセとは考え方が違うので、動作に慣れるのが大変でした。まず、どのモジュールがどう結線されているのかが分からない・・。
W - そうだね。VCAが普通でないつながり方をしている。
U - 音源としては2基のオシレータを備えていて、通常のオシレータComplex OSCの信号がまずVCA/VCFが合体した2chのモジュールDual Lo Pass Gate(DLPG)に入るんですよね。その後段に2つ目のDLPGがあって、その入力を1つ目のDLPG、変調用のModulation OSC、外部オーディオ入力から選べるようになっている。
W - だから、そこでComplex OSCを選んでも、1つ目のDLPGが閉じていると、そもそも音が出ない・・でも、パッチ・コードで結線しなくてもできることを増やすためにこうした構成になっているわけで、いったん仕組みを理解してしまえば、理にかなっていると思ったな。Envelope Generator(EG)のスライダーの数値が普通と逆で、上に行くほど小さくなっていたのには、さすがにびっくりしたけど。
U - でも、こっちの方が正しかった。
- その "正しい" という理由は?。
W - Music EaselのEGはループできるから、オシレータのように使えるわけです。その際、僕らが慣れ親しんだエンヴェロープの操作だと、スライダーが下にあるときは、例えばアタックならタイムが速く、上に行くほど遅くなる。これをオシレータとして考えるとスライダーが上に行くほどピッチが遅くなってしまうよね?だからひっくり返した方がいいと言うか、そもそもそういうふうに使うものだった。時代が進むにつれてシンセに独立したオシレータが搭載されるようになり、エンヴェロープを発振させる考え方が無くなったわけ。
- 初期のシンセサイザーはエンヴェロープを発振させてオシレータにしていたのですか?。
W - そう。Sergeはもっとプリミティブだけどね。最近のシンセでも、Nord Nord Lead 3などはARエンヴェロープがループできますよ。シンセによってエンヴェロープ・セクションに 'Loop' という機能が付いているのは、そうした昔の名残なんでしょうね。Music Easelはエンヴェロープで波形も変えられるし、とても面白い。
- オシレータの音自体はいかがでしたか?。
W - とても音楽的な柔らかい音がして、良いと思いましたよ。
U - レンジはHigh/Lowで切り替えなければならないのですが、音が連続して変化してくのがいいですね。あとEMSのシンセのように "鍵盤弾かせません!" というオシレータではなくて、鍵盤楽器として作られているという印象でした。
W - EMSは '音を合成する機械' という感じ。その点Music Easelは '楽器' だよね。
U - 本機ではいきなりベース・ライン的な演奏ができましたが、同じようなことをEMSでやるのはすごく大変ですから。
W - 僕が使ったことのあるEMSは、メインテナンスのせいだと思うけど、スケールがズレていたり、そもそも音楽的な音は出なかったけどね。この復刻版は新品だからチューニングが合わせやすいし、音自体もすごく安定している。
U - 確かに、'Frequency' のスライダーには '440' を中心にAのオクターヴが記されていて、チューニングがやりやすいんですよ。
W - そもそも鍵盤にトランスポーズやアルペジエイターが付いていたりと、演奏することを念頭に作られている。
- オシレータのレンジ感は?。
W - 音が安定しているからベースも作れると思うよ。だけど、レゾナンスが無かったり、フィルターにCVインが無かったり、プロダクションでシンセ・ベース的な音色が欲しいときにまず手が伸びるタイプではないかな。
- リード的な音色ではいかがですか?。
W - いいんじゃないかな。特にFM変調をかけたときはすごくいい音だったよ。かかり方が柔らかいと言うか、音の暴れ方がいい案配だった。普通、フィルターを通さずにFMをかけると硬い音になるんだけど、Music Easelは柔らかい。
U - 僕はパーカッションを作るといいかなと思いました。
W - 'ポコポコ' した音は良かったよね。EGにホールドが付いているから、確かにパーカッションには向いている。でも、意外と何にでも使えるよ。
U - 信号の流れを理解すれば過不足無く使えますが、例えばオシレータをクロスさせることはできないし、万能なわけではないですね。
W - でも、他社の小型セミモジュラー・シンセより全然自由度は高いよ。'パッチ・シンセ' である意味がちゃんとある。
U - 確かに、変なことができそうですね。
W - Pulser/Sequencerのモジュールも入っているし、いろいろと遊べそうだよね。パッチングの色の分け方も分かりやすい。あとバナナ・ケーブルって便利だね!パッチング中に "あれどこだっけ?" と触診するような感じで、実際にプラグを挿さなくても音が確認できるのはすごく便利。ケーブルの上からスタックもできるし。
U - 渡部さんのスタジオにはRoland System 100Mがありますが、Music EaselでできることはSystem 100Mでも実現可能ですか?。
さて、そんなBuchlaをヒッピーの世界から一転、アカデミックな環境へと納入されるようになったのは 'San Francisco Tape Music Center' を設立したモートン・サボトニック。それまでテープ・レコーダーによる実験的音響に精を出していたこの優れた作曲家は、ドン・ブックラと共同で新たにBuchla 100 Series Modular Electronic Music Systemを生み出すこととなります。当初からブックラとサボトニックはこの新しいアイデアについて意見を闘わせており、それはBuchlaシンセサイザーの基本コンセプトとして現在まで受け継がれております。このようなアカデミックの流れではカールハインツ・シュトゥックハウゼンに師事し、テリー・ライリーのミニマリズムとブライアン・イーノのアンビエントをエキゾティックな '架空の楽園'として描き出した1977年のデビュー作 'Vernal Equinox' でBuchlaシンセサイザーを使用したジョン・ハッセル にも繋がります。このような発想の源にはサボトニック自身が元々クラリネット奏者であったことも含め、後年、この時の出会いと開発時のエピソードとしてこう述べております。
一方、こちらは在米ベトナム人のラッパ吹き、Cường Vũ(クォン・ヴー)2005年の第4作 '残像' こと 'It's Mostly Residual'。ちなみにこの2人は2017年の第7作 'Ballet (The Music of Michael Gibbs)' でも共演しております。わずか6歳でベトナムから家族と渡米しバークリー音大を経てパット・メセニーのグループへ大抜擢、その名を一躍ジャズ界に知らしめました。グッと顎を引き往年のウッディ・ショウを思わせるその特徴的な構え方から、'アンプリファイ' による歪んだエコーの音像と共にエレクトリック・トランペットの新たな可能性に挑むスタイルは刺激的です。1980年代初期のデジタル・ディレイ/サンプラーとしてあのジョン・フルシアンテが足下に置いたことから高騰したDigitech PDS-1002ですが、わたしとしては構えたラッパの空いた左手で机に置くPDS-1002を触るクォン・ヴーの姿が印象的ですね。