2017年5月5日金曜日

9連休のワウ選び

トランペットにワウ。いや、ワウワウ・ミュートのことではなく 'アンプリファイ' で用いるワウペダル、エンヴェロープ・フィルターのことなんですが、ある意味、ホーンの最も '電化した' イメージであり、パッと聴きではエレクトリック・ギターと混同するようにも聴こえますね。市場にある製品の大半が元祖であるVoxやCrybaby、Mu-Tron Ⅲのトーンを模倣したものが多く、また、現在ではシンセサイザーからVCFを抜き出してきたようなエグいものもあり、一概にワウと言っても実に多用で幅広いイメージがあります。そして、踏めばそのまま音の変わるエフェクターという 'ジャンル' の中でこの 'ワウ/フィルター' は、奏者のプレイヤビリティがそのまま奏法、効果と直結する面白さ、難しさがあり飽きないんですよね。ここでは個人的にトランペットで試してみてヨカッタもの、面白そうなものをエンヴェロープ・フィルター中心にいくつかご紹介しましょう。







Akai Professional Vari Wah W1

スペインでドラムスとのデュオ、Chupaconchaで活動するGiuliano Gius CobelliさんがDigitech Whammyやループ・サンプラーRoland RC-50と共に使っているのがAkai Professional Vari Wah W1。サンプラーやドラムマシンなどDTM製品が主の赤井電機だけに、このコンパクト・エフェクターのシリーズは一部、ベースシンセのDeep Impact SB1やディレイ/ループ・サンプラーHead Rush E1/E2を残して話題になることなく消えていった印象があります。しかし、意外にもワウペダル、エンヴェロープ・フィルター、スウィープ・ワウの3種を一台に内蔵した本機のようなものってないんですよね。筐体は大きめですが幅広な代わりに縦は短く、ペダルの広い足乗せ感も悪くありません。本機でよく言われるのが、トゥルーバイパスをうたっておきながらスルー状態で硬めの音質変化に変わってしまうこと。わたしの試奏した感想としては、とりあえず、多機能な音作りと引き換えにしてもそれほど気にはなりませんでした。すでに廃盤ながら、比較的状態の良い中古が1万以下でデジマートやイシバシ楽器でゴロゴロしているので、ワウでいろいろな音作りをやってみたい方、'狙い目品' としてオススメです。





Jacques Trinity 2 -Filter Auto & Classic Wah-

もう1台はフランスのJacquesというメーカーによる 'Filter Auto & Classic Wah' のTrinity。こちらもVari Wah同様、エンヴェロープ・フィルターとモジュレーション系のスウィープ・ワウ、伝統のVoxやCrybayのワウトーンをイメージしたクラシック・ワウ搭載の '三位一体' なヤツです。ユニークなのが付属するエクスプレッション・ペダルにポンプ式の '踏み踏みするヤツ' が付いていること。コレ、たぶんこのメーカー独自のアイデアなんじゃないかと思いますが、感触としては少々固めで 'グリグリ' っとポンプの奥の方にスイッチがある感じ。もうちょいパフパフっとしてもいいかなと思いましたが、そんなに強く踏まなくてもちゃんとワウとして機能しますヨ。







Maxon AF-9 Auto Filter
Emma DiscumBOBulator
Mu-Fx Tru-Tron 3X LTD

我らが '電気ラッパ' の師、コンドーさんは長らくMaxon AF-9 Auto Filterを愛用しており、時と場合によってはベーシストからの評価の高いEmma DiscumBOBulatorなどを入れ替えて用いておりますね。わたしの方は、これまで復刻版Mu-Tron Ⅲ+、Q-Tron、Robotalkといろいろなエンヴェロープ・フィルターを使ってきており、やはりラッパで選ぶコツとしては、VCFを動かすエンヴェロープ・フォロワーの開閉速度がちゃんとブレスからピックアップ・マイクの感度と連動して追従してくるかどうか、です。つまり感度調整の 'Sensitivity' ツマミを回しながらフィルターの反応速度をチェックしてみて下さい。また、入出力のダイナミズムを一定にすべくコンプレッサーをエンヴェロープ・フィルターの前後どちらかに繋ぐことで、より安定したかかり方になるのもコツですね。Farnell Newtonなるラッパ吹きが使っているのは、元祖Mu-Tron ⅢやQ-Tronの設計者であるマイク・ビーゲルが新たにデザインしたTru-Tron 3Xで、ダイナミズムを一定に潰しながらピャウピャウとまとわりつくようにかかります。



Lovetone Meatball

なぜか海外のミュージシャン、エンジニア辺りからの評価が高い英国の工房、Lovetoneのエンヴェロープ・フィルターであるMeatball。実はわたしも一時期所有してまして、確かに普通のエンヴェロープ・フィルターでは見かけない一風変わったパラメータが独立してあります。リズムマシンなどと同期させてトリガーするのに便利なエンヴェロープ・フォロワー3段切り替えや、LP、BP、HPとは別にVCFのフィルター帯域4段切り替え、本体内部に外部エフェクト用のインサートを設けるなど、かなり幅広い音作りに対応しているのがユニークですね。音色的には少々軽い感じでこもり気味、効きもオーソドックスなんですけど妙なプレミア感が付いてますねえ。



Dreadbox Epsilon - Distortion Envelope Filter

ユニークついでにもうひとつ、ギリシャでエフェクターからモジュラーシンセに至るまで幅広く製作する工房、Dreadbox。そこのフラッグシップ的エンヴェロープ・フィルターなのがこのEpsilonであり、通常のフィルターに加えて専用のディストーションを内蔵しております。下でご紹介する 'エレハモ' のRiddleも同様機種ではありますが、本機の '歪み' はいわゆるギター、ベース用のみならずDAWの環境に置いても使える感じなんですよね。実際、上の動画ではRolandのドラムマシンにかけてダブステップ風のトラックへと '変身' しております。また、ゲート・スイッチを別個に設けてフレイズに合わせてザクザクとシーケンス的に切るなど、発想がDJ用エフェクターに近いですね。





Pigtronix Envelope Phaser EP2
Electro-Harmonix Riddle

エンヴェロープ・フィルター的モジュレーションということでは、このPigtronixのエグいフェイザーであるEnvelope Phaser EP2は 'スウィープ・ワウ' に特化した機種と言えるでしょう。コントロールするパラメータは多いですが、エンヴェロープ・フィルターの宿命ともいうべき '音痩せ' がなく太さを残した音色なのは素晴らしい!そしてエンヴェロープ・フィルターの豊富なラインナップを誇る 'エレハモ' ことElectro-Harmonixですけど、このディストーションをブレンドできるマイク・ビーゲル設計のRiddleは多機能そうで試してみたいなあ。



Source Audio Soundblox Pro SA143 Bass Envelope Filter
Source Audio SA126 Bass Envelope Filter
Source Audio Soundblox 2 SA223 Manta Bass Filter

Youtuber的に '電気ラッパ' を積極的に普及させようと頑張るJohn Bescupさんは、ワウペダルからエンヴェロープ・フィルターを始め、エフェクター満載な音作りで楽しませてくれる稀有なひとり。そんなBescupさんの新たな一台がこちら、なぜかベース用エンヴェロープ・フィルターであるSource Audio SA143 Bass Envelope Filterをご紹介します。あえてベース帯域に特化したものを選んだのは、エンヴェロープ・フィルターに付きもののエグい効果がもたらす '音痩せ' 対策なのでしょうか?現在、日本ではひとつ前のモデルであるSA126やSA143同様に多機能なSA223が入手できるようですが、このメーカーはその独特なデザインでいまいち人気がないことからすぐディスカウントされる一方、実は、エグい効果満載の '隠れ名機' がラインナップされていて狙い目ですね。複数のプログラムにも対応し、通常のエンヴェロープ・フィルターからスウィープ・ワウ、Xotic Robotalkで有名となったランダム・アルペジエイターまで実に多機能です。



Umbrella Company Fusion Blender
DOD Envelope Filter 440

さて、そんなエンヴェロープ・フィルター使用による '音痩せ' 対策として '裏ワザ' とも言うべき、こんな一風変わったパラレル・スプリッターによるフィルターの '帯域分割' が可能です。ここではDOD Envelope Filter 440を用いて、エフェクト音に対し原音の 'ローパス' 成分のみを取り出してそれぞれ '分割 = ミックス' しております。





Moog Moogerfooger MF-101 Lowpass Filter
Sherman Filterbank 2 ①
Sherman Filterbank 2 ②
Arp Odyssey Module
Korg MS-20M Kit + SQ-1
Korg SQ-1 Step Sequencer

このフィルターはシンセサイザーにおけるVCFと同義語という点で、いわゆるDTMで用いる単体のアナログ・フィルターを管楽器で試してみるというのも面白いですね。この手の製品で有名なのはMoogerfooger MF-101 Lowpass FilterやSherman Filterbank 2などがありますが、やはりKorgから満を持して復刻されたアナログシンセの名機、Arp Odysseyのモジュール版を試さないワケにはまいりません。本機には外部入力があり、ここへラッパからの音を入力してVCF、VCA、LFOなどで加工していきます。もちろん、CV(電圧制御)で外部機器からコントロールすることも可能なので、Korgのステップ・シーケンサーSQ-1でアルペジエイターの効果を付加することもできます。上の動画では外部入力からギターを入力してフィルタリングする動画がありますが、いわゆるコンパクトのエンヴェロープ・フィルターで行うのとは一味違う効果なのがお分かり頂けたでしょうか。同様のものではこれまたアナログシンセの名機、Korg MS-20Mでも外部入力から加工することができますね。



Filters Collection
Korg X-911 Guitar Synthesizer
Boss SY-300 Guitar Synthesizer

ちなみに上のリンクは海外の 'フィルター単体機マニア' のコレクション。いやあ、海外は広いというか知らないメーカー、工房の製品もあるというか、現在もそのコレクションは増えていっているようです・・凄い。まあ、本音を言えばBoss SY-300のような 'ギターシンセ' とがっぷり向き合って音作りするのが '本道' だと思うのだけど(コンドーさんも現在使用中)、そういうことじゃないっていうか、やっぱりわたしは単にVCF抜き出してLFO付けました、みたいなこういう 'エフェクター然' とした不器用なヤツが好きだなあ。1970年代の 'ギターシンセ' であるKorg X-911などは、Boss SY-300に比べればトラッキングの精度が低く、音作りの幅も狭いのだけどやはり魅力的な出音として聴こえますねえ。また一方では、上述したKorg MS-20MやArp Odyssey Moduleなどの外部入力から突っ込んで、VCFやLFOなどで変調させるシンセの 'エフェクター的' 使い方など、実に多様な機器が安価になったと同時に使い手のアイデアでオリジナルなサウンドを探求できる余地が広がったのは嬉しい傾向。ホント、良い時代になったものです。





Plutoneium Chi Wah Wah
Performance Guitar TTL FZ-851 "Jumbo Foot" F.Zappa Filter Modulation

さて、わたしの現在の愛機は手のひらサイズの超小型ワウ、Plutoneium Chi Wah Wah。十分満足しているのですが、ホントはこんな分不相応なヤツをラッパで試してみたい!父フランク・ザッパの楽曲をステージで再現すべく、父親の好んだフィルター帯域を切り替えられる特殊なペダルを息子ドゥイージルがPerformance Guitarsにオーダー。Chi Wah Wahのウン十倍はあろうかという、こんなとんでもなく巨大なペダルが出来上がってしまいました。格好良い〜!



Catalinbread Csidman

あ、そうそう、最近このグリッチ/スタッター系のエフェクターを自分のエフェクターボードに追加しました。Catalinbread Csidmanは、いわゆるCDウォークマンの携帯時の振動による '針飛び' の不具合を再現したというヤツ('Discman' がエラーして引っくり返っちゃったから 'Csidman'!)で、これがなかなかに面白い。パラメータは最大725msまでのディレイタイムを設定するTime、ドライとウェットのバランスを取るMix、フィードバック・コントロールのFeed、Latchと連動してバッファメモリの長さを調整するCuts、グリッチ・エラー時のサイクルを調整するLatchの6つのツマミで操作します。構成としてはショート・ディレイ時のHold機能をランダムに動かすことに特化したものなのですが、以前、同様の機能で話題となったMasf Pedals Possessedのコントロール不能な 'ムチャクチャさ' に比べ、本機は入力するラッパの音はちゃんと保持しながら適度に '飛ばして' くれます。少々、リヴァーブっぽさが強いのは気になりますけど、ループ・サンプラーで繰り返すフレイズに対しグリグリとツマミを触ればもうカオスに刺激されますねえ。





まあこういう効果は、ニルス・ペッター・モルヴェルあたりならPCを持ち込み、Ableton Live内のプラグイン 'Max for Live' によるグラニュラー・シンセシスでリアルタイム処理するのがスマートなんでしょうけど、ね。また、これら 'グリッチ/スタッター' 系からピッチシフト、フィルターやディレイの効果を複数のマイクを使い分けながら '吹き分けて' いるところにも('電気ラッパ' 好きは)注目です。

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