毎日猛暑・・ええ、夏なんだから当たり前。こんな時は、燦々と日差し降り注ぐマイアミ〜バハマのカリブ海沿岸の浜辺で寝そべっていたいもの。ホント、どうせ暑いのだからこのまま南国に逃避したい。
さて、そんなマイアミからバハマ一帯のカリブ海沿岸って、あまりブラック・ミュージックの匂いのしないイメージが昔からありました。同じカリブ海一帯でもニューオーリンズからハイチとドミニカ、そしてジャマイカの方が音楽的に豊かなイメージが強く、う〜ん、マイアミ? 'Get Down Tonight' のディスコヒットで有名なKC &ザ・サンシャイン・バンドの他には、一時、コンプレッサーでポップアップするアメ車に搭載したウーハーからブンブンとした超低音で踊らせる 'マイアミベース' なる頭の悪い音楽があったなあ、くらいの感じで縁のない印象・・。南国と音楽の関係性について勝手なイメージですけど、特にコンピュータ中心の制作環境で '宅録' をやっているイメージは、暖かい日差し溢れる日常より寒くて閉ざされた地域の方が活発なんじゃないか、という気がします。外に出て行く機会もなく、ひとり暗く自室に閉じこもってアレコレやっているというか・・毎日が澄み渡る青空と日差しの連続ならサンバ・カーニバル的 '夏祭り' な過ごし方をしますヨ。ま、ジャマイカの 'ダブ・マスター' たちはそんなセオリー?を覆した稀有な存在ですけど、しかし、リー・ペリーのように上半身裸でスプリフ片手に汗だくで '亜熱帯のサイケデリア' に塗れた人たちの姿は、単なる 'インドアー派' とは別の '不健康さ' に横溢しているとも言えますけど、ね(苦笑)。
そんなマイアミ〜バハマ一帯、実は音楽的に '不毛地帯' ではなかったことを証明する怪しいシリーズ 'West Indies Funk' 1〜3と 'Disco 'o' lypso' のコンピレーション、そして 'TNT' ことThe Night Trainの 'Making Tracks' なるアルバムがTrans Airレーベルから2003年、怒涛の如く再発されました・・。う〜ん、レア・グルーヴもここまできたか!という感じなのですが、やはり近くにカリプソで有名なトリニダード・トバゴという国があるからなのか、いわゆるスティールパンなどをフィーチュアしたトロピカルな作風が横溢しておりますね。実際、上記コンピレーションからはスティールパンのバンドとして有名なThe Esso Trinidad Steel Bandも収録されているのですが、その他は見事に知らないバンドばかり。また、バハマとは国であると同時にバハマ諸島でもあり、その実たくさんの島々から多様なバンドが輩出されております。面白いのは、キューバと地理的に近いにもかかわらず、なぜかカリブ海からちょっと降った孤島、トリニダード・トバゴの文化と近い関係にあるんですよね。つまりラテン的要素が少ない。まあ、これはスペイン語圏のキューバと英語圏のバハマ&トリニダードの違いとも言えるのだろうけど、ジェイムズ・ブラウンやザ・ミーターズといった '有名どころ' を、どこか南国の緩〜い '屋台風?' アレンジなファンクでリゾート気分を盛り上げます。ジャマイカの偉大なオルガン奏者、ジャッキー・ミットゥーとも少し似た雰囲気があるかも。しかし何と言っても、この一昔前のホテルのロビーや土産物屋で売られていた '在りし日の' 観光地風絵葉書なジャケットが素晴らし過ぎる!永遠に続くハッピーかつラウンジで 'ミッド・センチュリー・モダン' な雰囲気というか、この現実逃避したくなる 'レトロ・フューチャー' な感じがたまりません。
同じサムネ画ばかりで目がクラクラしているでしょうけど、この亜熱帯にラウンジな感じはまだまだ続きますヨ。誰かすぐにホテルを手配して航空機チケットをわたしに送ってくれ〜。今夜一眠りして、翌朝目が覚めたら一面、突き抜ける青空と青い海、降り注ぐ日差しを浴びながらプールサイドで寝そべっていたらどれだけ気持ち良いだろうか。
→Steelpan
さて、カリブを象徴する楽器といえばトリニダード・トバゴのドラム缶で製作する創作楽器、スティールパン。このコロコロと南国ムード漂う音色をサイケデリックにファズの効いたギターとマリアージュし、まさに 'スティールパンのジミヘン' しちゃったのがこのヴィクター・ブラディ。別にパンを 'アンプリファイ' させたとかじゃなく、サイケロックに乗って惚けたパンの音色が疾走するという・・なぜソレでロックしちゃったの?と伺ってみたい '珍盤'。でも何かイイよね、こーいう '斜め上' のセンスでどーしてもロックやりたかったんだ、という迸る熱情が(笑)。ちなみにこのスティールパンは、それだけでオーケストラを組めるくらいいろいろな音域に合わせたものが用意されております。動画はジャコ・パストリアス・グループのカリプソ風ファンキーな 'The Chicken' でして、トリニダード・トバゴ出身のスティールパン奏者、オセロ・モリノーによる黒々とブルージーなスティールパンが素敵(何でも独特なキー配列のスティールパンなのだとか)。
さて、バハマといえば首都のナッソー(Nassou)、そしてナッソーといえば 'Funky Nassou' ということで、ここら辺で最も有名なのがバハマ出身のファンクバンド、The Bigining of The Endでしょうね。長いことその 'カリビアン・ファンク' を代表するバンドであり、1971年のヒット曲で聴こえる地元のカーニバル音楽、'ジャンカヌー' のリズムを取り入れたファンクは独特です。彼らのデビュー・アルバムは全編、優れたファンクを展開しながらこの後、ディスコ全盛期の1976年にバンド名そのままの2作目をリリースして消えてしまいました。
ハッキリいってこの 'Funky Nassou' だけで 'カリビアン・ファンク' はすべて片付いてしまうくらい影響力大なのだけど、う〜ん、さすがにこれだけ有名な曲だとYoutube以外では視聴制限をかけちゃうのか・・。んじゃ、この 'ジャンプアップ' するグルーヴを往年の 'Soul Train' でステップを踏む動画と共にどーぞ。そんな彼らのデビュー・アルバム 'Funky Nassou' はバラッド一切なしの極上ファンク・アルバムなのでまだ未聴な方はLet's Groove!ちなみにこのTrans Airのコンピレーション 'Disco 'O' Lypso' には、その 'Funky Nassou' のディスコ・カバーも収録されております。
上記Trans AIrレーベルのコンピレーション以外ではNumero Groupから登場の同種 'カリブ・ファンク' コンピレーション、'Cult Cargo Grand Bahama Goombay' もなかなかに暑い日差しの中で匂ってきそうな素晴らしい内容。ここにはデイヴ・ブルーベックの 'Take Five' やアイザック・ヘイズの 'Theme from Shaft' など名曲カバーもありますが、まあ、どれも見事に聞いたことのないB級、C級の 'ファンク・マスター' たちを詰め込んでおり、毎夜ターンテーブルに乗せてクラウドを踊らせるべく掘りまくる 'Digger' (掘り師)たちには感謝、ですね。ちなみにこれらコンピはカリブと銘打っておりますが、実際はカリブ海に面した米国フロリダ州マイアミ出身のバンドも多いので誤解無きように(苦笑)。
なぜか、この 'カリビアン・ファンク' の連中のレパートリーでよくやるのがザ・ミーターズのカバーでして、ここからカリブ海を前にメキシコ湾に面した港町、ニューオーリンズと汎カリブ文化の奇妙な結び付きを感じてしまうのはわたしだけでしょうか?ということでちょっとカリブから寄り道して、そんなシンコペイトするセカンドラインのグルーヴを確認すべく、プロフェッサー・ロングヘアによるファンクの源流 'Big Chief' と、アラン・トゥーサンのプロデュースでザ・ミーターズがバックを務めるアール・キングの 'Street Parade'。その '源流' として叩き出すスモーキー・ジョンソンと '直系' のジョゼフ 'ジガブー' モデリステによる両者セカンドライン、ぜひ聴き比べて頂きたい。
これらTrans Airからの一連の '再発' の中で、唯一単独のアルバムとしてリリースされたのがこの 'TNT' ことThe Night Trainの 'Maiking Tracks'。粘っこいセカンドライン風ファンクの蒸しっとしたグルーヴからワルター・ワンダレイのような 'エレベータ・ミュージック' 的オルガンの調べまで、ああ、プールサイドに寝そべって永遠の優雅な休日を過ごすべくウトウトと・・これぞ常夏の白日夢なり。
→Cuica
→Highleads 'Cube Mic' Electric Cuica
ちなみにこのスティールパンを始め、わたしは民俗楽器が大好きなのだけどその中米からグッと降って南米最大の '音楽大陸' ブラジルの打楽器、クイーカが大好きなのだ。そう、浅草サンバ・カーニバルなどで目にするキュッキュッ、フゴフゴと擬人化した笑い声というかある世代には懐かしい 'ゴン太くん' の鳴き声のアレですね。わたしのブログ的には(笑)マイルス・デイビスのバンドに在籍したブラジル人、アイルト・モレイラがデイビスのラッパの後ろで俯いて一心不乱にゴシゴシ擦ってる姿を思い出す人も多いのでは?また単純にゴシゴシと効果音を出しているだけ、と思われがちなこの打楽器ですが、さすがその道を極めるとこれで一曲 '口ずさむ' ように奏でることも出来るのだから奥が深い。わたし的には、デイビスのワウの使い方はジミ・ヘンドリクスのギターよりモレイラのクイーカが与えた影響の方が大きいと思っており、彼ら最初の '邂逅' ともいうべき未発表となった一曲 'Little High People' を是非聴いてみて欲しいですね。さらに追加で、メキシコ録音ながらピアニストのルイス・エサが率いた 'Sagrada Familia' のまさに 'ブラジルの奇跡' ともいうべき一枚 'Onda Nova do Brazil'。プログレ的な急速調のテンポで始まる一曲目 'O Homen da Sucursal / Barravento' でのクイーカと並ぶブラジル特有のパーカッション、ビリンバウの効果的な使い方が格好良い〜。そしてサイケな 'ブラジリアン・ファンク' の個人的お気に入り、Com Os Falcoes Reaisの 'Ele Seculo XX' でトリップして下さいませ。
そして、夏といえば忘れちゃいけないヴァイブの音色ってことで、スカ〜ロック・ステディ期を代表するジャマイカ唯一のヴァイブ奏者レニー・ヒバートと夏祭りの響き溢れるエチオピアン・グルーヴの重鎮、ムラトゥ・アスタトゥケをどーぞ。まるで日本の夏の風物詩を思わせる雰囲気・・ジャマイカやエチオピアなのにどこか懐かしい気持ちになるのはどうしてなんだろう?
2018年7月5日木曜日
2018年7月4日水曜日
ピックアップあれこれ
オーストラリアでスティーヴ・フランシスさんが手がけるピックアップの工房、PiezoBarrel。管楽器用のピックアップ・マイクとしては完全に '過去の遺物' となったマウスピース・ピックアップですけど、まだまだホーンでエフェクターを使いたい人には 'ニッチな' 需要があるのです。個人的に驚いたのがオスマン・トルコの軍楽隊の伝統なのか、バルカン半島一帯からトルコ、ギリシャにかけてクラリネットを中心に小さな工房が頑張っていること。とりあえず、ここでは管楽器の 'アンプリファイ' が始まった1960年代後半から70年代、そして最近の製品のいくつかを取り上げてみたいと思います。
→H&A.Selmer Inc. Varitone ①
→H&A.Selmer Inc. Varitone ②
1965年に管楽器メーカーとしてお馴染みH&A.Selmer Inc.が手がけた元祖 'アンプリファイ' サウンド・システム、Varitone。Selmerブランドのほか、管楽器への市場拡大を狙ってなのかBuesherブランドでも販売されておりましたが、製作自体は現在でもPAの分野で大手のElectro Voiceが担当したようです。振動を感知して電気信号に変換するピエゾ・トランスデューサー方式のピックアップは、音源に対して理想的な取り付け位置を見つけるのが難しく、マウスピース部分はもちろん、金管楽器のリードパイプやベルの真横などいろいろ試しながら完成に漕ぎ着けたとのこと。ちなみにVaritoneは通常の '3300 Auditorium Model' のほか、上の動画にある '3100 Club Model' の2種がラインナップされておりました。この 'Club Model' はライヴなどの汎用性を高めた '若干' 小ぶりな仕様で、'Auditorium Model' のアンプ正面に備えられていたTremoloの 'Speed' と 'Depth' コントロールは外部からのコントロールに移されております。
またSelmerはVaritone専用のほか、サックス用ネックと共に 'Cellule Microphonique' の名で単品でも販売しており、これは当時日本の管楽器店も輸入販売しておりましたが・・いやあ、ピックアップ本体で2万円、取り付け用器具込みのサックス用ネックが1万円と、そのまま現在の価格にしても半端ではない高価なものだったようです。これは売れなかっただろうなあ。ちなみにVaritoneのピックアップは真鍮製の台座をネックやリードパイプに接合し、ピックアップ本体は台座とスクリューネジで着脱することができます。
→C.G. Conn Multi-Vider
→C.G. Conn Model 914 Multi-Vider
続いて登場したのが管楽器の名門、C.G.ConnのMulti-Viderでして、Selmer Varitoneに比べると他社の製品、ギター用のエフェクター(当時は 'アタッチメント' という呼称が一般的)などとの互換が可能な汎用性に優れておりました。また、ピックアップ自体も後発のGibson /MaestroやAce Tone Multivox専用のピックアップと互換性のある2つのピンでピックアップ本体に差し込むもので、その普及という点ではVaritone以上の成功を納めます。こちらの設計はファズやワウなどの製作をするJodan Electronicsが担当し、それまでのVaritoneにあった不自由さから一転、後発のVox / King AmpliphonicやGibson / Maestroの製品にも採用される、マウスピース側に接合するソケット部とピックアップ本体をゴムパッキンで嵌め込む方式をMulti-Viderが最初に始めました。またメーカーからはカールコードと通常のケーブルの2種が用意されて、ピックアップを外した後は真鍮の蓋で覆い通常のマウスピースとして使用することが可能です。
→Gibson / Maestro W-1 Sound System for Woodwinds
→Gibson / Maestro W-2 Sound System for Woodwinds
→Gibson / Maestro W-3 Sound System for Woodwinds
ちなみにConnは自社製品のほか、Robert Brilhartさんという方が手がけるデンマーク製マウスピース・ピックアップ、'R-B Electronic Pick-Up' なども純正品として推奨していたようです。広告の写真を見るとピックアップとアンプの間にヴォリューム・コントロールの付いたプリアンプを腰に装着しておりますね。当時、サックスやトランペットはもちろん、フルートへの使用などかなり普及しておりました。一方でGibson / Maestroのものは、ピックアップの本体部分はサックスのリード、クラリネットのバレルに一体成型されており、そこへ2つのピンを差し込んで使用するかたちとなります。このMaestro Woodwindsは1967年のW-1から1971年のW-3に至るまでこの分野における最高のヒット作となりました。それは現在でも状態良好の中古がeBayやReverb.comなどに出品されていることがそれを裏付けます。
→Vox / King Ampliphonic
→Vox / King Ampliphonic Pick-Up
このMulti-Viderとほぼ同時期に登場したのが英国の名門ブランド、Voxが手がける 'Ampliphonic' のシリーズです。これまでのピックアップがパッシヴだったのに対してこの 'Ampliphonic' ピックアップは、'A〜B〜C' と可変するヴォリュームの付いたアクティヴの仕様が特徴。基本的な作りはSelmer Varitone同様スクリューネジの着脱(互換性はない)となりますが、一部、Multi-ViderやGibson /Maestroとの互換性に合わせてゴムパッキンのソケット部を持つ製品もラインナップされました。また、管楽器市場への拡大を狙ってか当時、Voxと同じく傘下であったKingのブランドでも販売して総合的なPA製品含め展開しました。
→Vox 'Ampliphonic' Woodwind and Brass Instruments
→Piezo Barrel on eBay
→Piezo Barrel Wind Instrument Pickups
→Piezo Barrel Instructions
→vimeo.com/160406148
さて冒頭でも触れましたが、このような旧態依然なマウスピース・ピックアップも一部、エフェクツを愛する管楽器奏者たちには需要があるようで(わたしです)、何故か古くはオスマン・トルコの軍楽隊に由来するのか、バルカン半島から地中海一帯において小さな工房が頑張っております。その中からブルガリアのNalbantov Electronics、ギリシャのTap ElectronicsなどがオーストラリアのPiezoBarrelのライバルとして今後注目されるかもしれません。というか、ワイヤレス・システムに対応していたり、オクターバー内蔵のピックアップを製作したりと製品開発の力の入れようはこちらの方が上かも・・。
→Nalbantov Electronics
Piezo Barrelのライバルその1。ブルガリアの工房Nalbantov Electronicsです。ガレージ臭たっぷりのPiezo Barrelに比べて、製品としてよりハイクオリティなパッケージとなっており、専用のオクターバーからDIYキット、ワイヤレス・システムに至るまで幅広く対応しております。動画は穴開け用のドリルなどがピックアップと共に梱包された 'DIY' キットの作り方ですが、いやあ、サックスのネックを万力などで固定せずそのままドリル貫通・・振動でブレて穴がズレたり抑えている指いっちゃいそうで怖い(苦笑)。
→TAP Electronics
→TAP Electronics Pick-Ups
Piezo Barrelのライバルその2。ギリシャのTAP Electronicsです。こちらもNalbantov同様に幅広いラインナップを揃えており、Piezo Barrelに比べ製品としてよりこなれた設計となっておりますね。昨日の項でも紹介しましたがピックアップ本体にオクターバーを内蔵させるとか、なかなかメンドくさがりな管楽器ユーザーの心理をよく読んでいる(笑)。この 'Octa' はオクターヴトーンのほか、1バンドEQ、ヴォリュームの3つのパラメータを持ち、USBによる90秒の急速充電により8時間ほどのパフォーマンスが可能。
→The Little Jake ①
Gibson / MaestroのSound System for Woodwinds用ピックアップはほとんどConnと大差ないので割愛して、管楽器用 'アンプリファイ' システムの最後発、Hammondが開発したInnovex Condor RSMのマウスピース・ピックアップをご紹介。と言ってもこちらはマイクの名門、Shureに外注として用意させた付属品で一般には手の入らない貴重なもの。つまり、Condor RSMのユーザーだけが手にすることができたもので、1971年のデイビスの動画及び上の写真にある緑のマークの付いたものがInnovexブランド専用、下のリンク先の写真が本家Shureのものでその他、上の写真にあるISC Musicのブランドのものが存在します。Hammondは当時、エディ・ハリスや駆け出しの頃のランディ・ブレッカー、そして御大マイルス・デイビスへ本機の '売り込み' を兼ねた大々的なプロモーションを展開。そんなデイビスとHammondの関係は、1970年の 'Downbeat' 誌によるダン・モーゲンスターンのインタビュー記事から抜粋します。
"そこにあったのはイノヴェックス社の機器だった。「連中が送ってきたんだ」。マイルスはそう言いながら電源を入れ、トランペットを手にした。「ちょっと聴いてくれ」。機器にはフットペダルがつながっていて、マイルスは吹きながら足で操作する。出てきた音は、カップの前で手を動かしているのと(この場合、ハーモンミュートと)たいして変わらない。マイルスはこのサウンドが気に入っている様子だ。これまでワウワウを使ったことはなかった。これを使うとベンドもわずかにかけられるらしい。音量を上げてスピーカー・システムのパワーを見せつけると、それから彼はホーンを置いた。機器の前面についているいろんなつまみを眺めながら、他のエフェクトは使わないのか彼に訊いてみた。「まさか」と軽蔑したように肩をいからせる。自分だけのオリジナル・サウンドを確立しているミュージシャンなら誰でも、それを変にしたいとは思っていない。マイルスはエフェクト・ペダルとアンプは好きだが、そこまでなのだ。"
残念ながら本機自体はデイビスのお眼鏡に叶わなかったものの、このShureのマウスピース・ピックアップはデイビスの愛用品、Giardinelliのマウスピースに穴を開けて接合されて1975年の活動停止まで突っ走ります。以下、リンク先のShureのHPから質問コーナーに寄せられたピックアップに対する回答。
→Shure CA20B Transducer Pick-Up
"Q - わたしはShurre CA20Bというトランペットのマウスピースに取り付けるピックアップを見つけました。それについて教えてください。"
"A - CA20Bは1968年から70年までShureにより製造されました。CA20BはSPL/1パスカル、-73dbから94dbの出力レベルを持つセラミックトランスデューサーの圧電素子です。それはHammond Organ社のInnovex部門でのみ販売されていました。CA20BはShureのディーラーでは売られておりませんでした。
CA20Bは(トランペット、クラリネットまたはサクソフォンのような)管楽器のマウスピースに取り付けます。穴はマウスピースの横に開けられて、真鍮のアダプターと共にゴムOリングで埋め込みます。CA20Bはこのアダプターとスクリューネジで繋がっており、CA20Bからアンバランスによるハイ・インピーダンスの出力を60'ケーブルと1/8フォンプラグにより、InnovexのCondor RSMウィンド・インストゥルメンツ・シンセサイザーに接続されます。Condor RSMは、管楽器の入力をトリガーとして多様なエフェクツを生み出すHammond Organ社の電子機器です。Condorのセッティングの一例として、Bass Sax、Fuzz、Cello、Oboe、Tremolo、Vibrato、Bassoonなどの音色をアコースティックな楽器で用いるプレイヤーは得ることができます。またCA20Bは、マウスピースの横に取り付けられている真鍮製アダプターを取り外して交換することができます。
Condorはセールス的に失敗し、ShureはいくつかのCA20Bを生産したのみで終わりました。しかし、いく人かのプレイヤーたちがCA20Bを管楽器用のピックアップとしてギターアンプに繋いで使用しました。その他のモデルのナンバーと関連した他の型番はCA20、CA20A、RD7458及び98A132Bがあります。"
そんなShure CA20Bも6年近い '沈黙' を経て再びステージに立った頃には、すでに '時代遅れの代物' と化したのか、ピックアップ本体は外されて蓋で閉じられた 'アコースティック・マウスピース' としてミュートと共に奏でます。こういう変化からもう、すでに 'ワウの時代' ではなくなったことを象徴する一コマと映るのですが、この蓋の形状からもしかすると 'エレクトリック・マイルス後期' はCA20Bだけではなく、Selmerの 'Cellule Microphonique' も使用していたのかもしれませんね(デイヴ・リーブマンはこちらを使用しておりました)。
さて、ここまではいわゆる管楽器用エフェクターの付属品として用意されていたマウスピース・ピックアップを見てきましたが、1970年代に入るとピックアップ単品として発売されて気軽にアプローチすることが可能となります。そのきっかけとなったのがピックアップの老舗、Barcus-berry。この会社の製品が革新的だったのはピックアップ本体の小型化であり、マウスピースという限られたスペースの邪魔にならない取り付けを実現したこと。しかし、個人的には製品の耐久性という点でイマイチな部分が多く、わたしの環境ではマウスピースに接合して一年ほど過ぎるとガクッと感度が落ちてエフェクツのかかりが悪くなります・・(2つダメにしました)。そもそもピエゾ・トランスデューサー式はマイク同様に湿気に弱く、定期的なピックアップ本体の着脱を通して製品の寿命へ貢献すると考えております。実際、猛烈な息の出入りにより熱気から急速に冷えた結露としてピックアップに対する負担は相当なもの・・結局、現在はカタログ落ちしているのを見ると製品としての設計に無理があったのでしょう。
ちなみにBarcus-berryはこの製品の特許を1968年3月27日に出願、1970年12月1日に創業者のLester M. BarcusとJohn F. Berryの両名で 'Electrical Pickup Located in Mouthpiece of Musical Instrument Piezoelectric Transducer' として取得しております。特許の図面ではマウスピースのシャンク部ではなく、カップ内に穴を開けてピックアップを接合しているんですねえ。しかし、カップ内で音をピックアップするとプシャ〜とした息の掠れる音が入り、動画はPiezoBarrelのものですが、こんな独特な音色となってイマイチ扱いにくいのでシャンク部に穴を開けた方が使いやすいと思います。
1982年のジャコ・パストリアス・グループ参加の頃はそんな '転換期' であり、モデルチェンジしたピックアップと共に中継コネクターをマウントする部分が、ベルとリードパイプ括り付けの 'タイラップ仕様' から専用のクリップでマウントする方式に変更。しかし動画のランディ・ブレッカーは、マウントするパーツが未だ従来のタイラップも付けたまま状態という、いかにも過渡期の勇姿を拝むことができます。また、ボブ・ミンツァーが吹くバス・クラリネットもBarcus-berryの1375-1で 'アンプリファイ'。後年、ランディ自身はこの頃のセッティングを振り返ってこう述べております。
"エフェクトを使い始めたころはバーカスベリーのピックアップを使っていたし、マウスピースに穴を開けて取り付けていた。ラッキなーことに今ではそんなことをしなくてもいい。ただ、あのやり方もかなり調子良かったから、悪い方法ではなかったと思うよ。"
最初の写真のものは1970年代初めに製品化された金管楽器用1374で、中継コネクターを介して2.1mmのミニプラグでフォンへと接続します。中継コネクターにぶら下がるタイラップはベルとリードパイプ部分をグルッと引っ掛けておくという仕様でして、この会社の製品はその '作り' という点でも結構荒っぽいんですよね。これ以後、1970年代後半には3.5mmのミニプラグに仕様変更され、金管楽器用は中継コネクターを専用のクリップでリードパイプに着脱できるようになったのが真ん中の写真のもの。この時期の製品を個人的に調べてみて分かったのは、1982年製造と1983年製造のものでピエゾの感度がかなり変わってしまったことでして、正直、1983年製は 'ハズレ' と言いたいくらいエフェクツのかかりが悪いですねえ(謎)。そして1990年代半ばに発売されるも少量で生産終了した 'エレクトレット・コンデンサー' 式の6001が同社 '有終の美' を飾ります。Barcus-berryが社運を賭けて開発したと思しき本品は同社で最も高価な製品となり、当時代理店であったパール楽器発行の1997年のカタログを見ると堂々の65,000円也!しかし、すでにグーズネック式のマイクがワイヤレスと共に普及する時代の変化には太刀打ちできませんでした。
この6001の代表的なユーザーとしては、近藤等則さんが1990年代終わり頃から 'DPA' 流用によるオリジナルなマウスピース・ピックアップへ換装する2007年頃まで使用しておりましたが、今や、同社を象徴していたマウスピース・ピックアップはカタログからその姿を消し、この老舗の '栄枯盛衰' と共にすっかり寂しいものとなったのは残念至極。やはり他社がやらないところで、この会社ならでの発想を活かす製品作りを継続してやって頂きたいですねえ。ちなみにこの6001使用時の近藤さんは、ベル側のマイクとマウスピース・ピックアップを2チャンネル真空管プリアンプの名機、Alembic F-2Bで 'モノ・ミックス' して出力しておりました。
珍しいBarcus-berryの 'エレクトレット・コンデンサー' 式ピックアップとしては、一時期、金管用の5300というのがラインナップされておりました。これはラッパのベルのリム縁にネジ止めしてマウントするもので、1981年に復帰したマイルス・デイビスもメーカーは違いますが同種のピックアップをステージで使用しておりましたね。当時、もの凄いお金のかけたワイヤレス・システムだったそうですが、このBarcus-berryの方はすでに '廉価版' としてリーズナブルなお求めやすい価格で提供されました。こんな構造ですけどオープンホーンはもちろんミュートもちゃんと拾うナチュラルな収音であるものの、ワウなどのエフェクツをかけると簡単にハウってしまいます。基本的にはリヴァーブやディレイ程度で '生音' の収音に適したピックアップなのですが、これもグーズネック式マイクの登場であっという間に '過去の遺物' に・・(デイビスもあの '傘の柄' のようなワイヤレス・マイクに変えちゃいましたしね)。
→Barcus-berry 1375 Piezo Transducer Pick-Up
→Barcus-berry C5200 (C5600) Electret Condenser Pick-Up ①
→Barcus-berry C5200 (C5600) Electret Condenser Pick-Up ②
その他の製品は、木管楽器用1375-1、穴は開けずにリード部分へ貼り付ける仕様の廉価版1375などがあり、現在では、元々フルートの 'アンプリファイ' に力を入れていた同社らしく頭管部に差し込む6100、サックス/クラリネット用としてベル内側にベルクロで貼り付ける(荒っぽい!) 'エレクトレット・コンデンサー' 式のC5200 (C5600)などの一風変わったピックアップを供給するなど、相変わらず '斜め上' のセンスで細々と展開しておりまする。動画はジャン・リュック・ポンティ、ジョージ・デュークらを擁したフランク・ザッパ1973年の全盛期のものですが、イアン・アンダーウッドのバス・クラリネットに貼り付け型1375を用いてエフェクティヴなソロを披露。しかしネック部にConn Multi-Vider用ピックアップのための穴も開けられて蓋で閉じられております。
→Barcus-berry 1333 Super Boost
ちなみにBarcus-berryの 'ピエゾ式' マウスピース・ピックアップはパッシヴなので、メーカーから別に汎用のプリアンプが用意されておりました。これも時代ごとのモデルチェンジが激しく、初期の1330S High Impedance 'Standard' Preamplifier、Super Boostの1333や1433-1、1980年代からは3Vのボタン型リチウム電池のプリアンプがピックアップと同梱して販売され、その後の1990年代頃からはUniversal Interface 3500Aなどが登場しました。また、'エレクトレット・コンデンサー' 式の6001に対応したBuffer Preamp/EQ 3000Aはこれらとインピーダンスが違うので共用することはできません。写真のものは1970年代後半の1430 Standard Pre-Ampと1432 Studio Pre-AmpというDI出力の付いたもので、9V電池のみならずDC9V電源の駆動も可能とします。
→DPA SC4060、SC4061、SC4062、SC4063
→DPA SC4060、4061 Review
→Phoenix Audio DRS-Q4M Mk.2
→Rumberger Sound Products K1X ①
→Rumberger Sound Products K1X ②
そんな我らが '電気ラッパ' の伝道師、近藤等則さんなのですが、永らく愛用したBarcus-berryからファンタム電源の供給可能なDPAの直径5.5mmな 'ミニチュア・マイロフォン' で一新!ピックアップ本体の着脱から防水としてポリプロピレンのシールドをソケット部に貼るなど、その構造はBarcus-berry 6001をほぼ踏襲しており、これを音響機器の世界で伝説化されているNeveの質感を再現したマイク・プリアンプPheonex Audio DRS-Q4M Mk.2と共に使用。また、ピックアップをマウスピースに装着するソケット部は新大久保のグローバルにオーダーして製作してもらったとのこと。このようなファンタム電源に対応しているマウスピース・ピックアップは、数は少ないですが他にドイツのRumberger Sound Productsのものがありますけど・・これもeBayなどで見つけたものの流石に高いなあ。
→NeotenicSound AcoFlavor ①
→NeotenicSound AcoFlavor ②
→H&A.Selmer Inc. Varitone ①
→H&A.Selmer Inc. Varitone ②
1965年に管楽器メーカーとしてお馴染みH&A.Selmer Inc.が手がけた元祖 'アンプリファイ' サウンド・システム、Varitone。Selmerブランドのほか、管楽器への市場拡大を狙ってなのかBuesherブランドでも販売されておりましたが、製作自体は現在でもPAの分野で大手のElectro Voiceが担当したようです。振動を感知して電気信号に変換するピエゾ・トランスデューサー方式のピックアップは、音源に対して理想的な取り付け位置を見つけるのが難しく、マウスピース部分はもちろん、金管楽器のリードパイプやベルの真横などいろいろ試しながら完成に漕ぎ着けたとのこと。ちなみにVaritoneは通常の '3300 Auditorium Model' のほか、上の動画にある '3100 Club Model' の2種がラインナップされておりました。この 'Club Model' はライヴなどの汎用性を高めた '若干' 小ぶりな仕様で、'Auditorium Model' のアンプ正面に備えられていたTremoloの 'Speed' と 'Depth' コントロールは外部からのコントロールに移されております。
またSelmerはVaritone専用のほか、サックス用ネックと共に 'Cellule Microphonique' の名で単品でも販売しており、これは当時日本の管楽器店も輸入販売しておりましたが・・いやあ、ピックアップ本体で2万円、取り付け用器具込みのサックス用ネックが1万円と、そのまま現在の価格にしても半端ではない高価なものだったようです。これは売れなかっただろうなあ。ちなみにVaritoneのピックアップは真鍮製の台座をネックやリードパイプに接合し、ピックアップ本体は台座とスクリューネジで着脱することができます。
→C.G. Conn Multi-Vider
→C.G. Conn Model 914 Multi-Vider
続いて登場したのが管楽器の名門、C.G.ConnのMulti-Viderでして、Selmer Varitoneに比べると他社の製品、ギター用のエフェクター(当時は 'アタッチメント' という呼称が一般的)などとの互換が可能な汎用性に優れておりました。また、ピックアップ自体も後発のGibson /MaestroやAce Tone Multivox専用のピックアップと互換性のある2つのピンでピックアップ本体に差し込むもので、その普及という点ではVaritone以上の成功を納めます。こちらの設計はファズやワウなどの製作をするJodan Electronicsが担当し、それまでのVaritoneにあった不自由さから一転、後発のVox / King AmpliphonicやGibson / Maestroの製品にも採用される、マウスピース側に接合するソケット部とピックアップ本体をゴムパッキンで嵌め込む方式をMulti-Viderが最初に始めました。またメーカーからはカールコードと通常のケーブルの2種が用意されて、ピックアップを外した後は真鍮の蓋で覆い通常のマウスピースとして使用することが可能です。
→Gibson / Maestro W-2 Sound System for Woodwinds
ちなみにConnは自社製品のほか、Robert Brilhartさんという方が手がけるデンマーク製マウスピース・ピックアップ、'R-B Electronic Pick-Up' なども純正品として推奨していたようです。広告の写真を見るとピックアップとアンプの間にヴォリューム・コントロールの付いたプリアンプを腰に装着しておりますね。当時、サックスやトランペットはもちろん、フルートへの使用などかなり普及しておりました。一方でGibson / Maestroのものは、ピックアップの本体部分はサックスのリード、クラリネットのバレルに一体成型されており、そこへ2つのピンを差し込んで使用するかたちとなります。このMaestro Woodwindsは1967年のW-1から1971年のW-3に至るまでこの分野における最高のヒット作となりました。それは現在でも状態良好の中古がeBayやReverb.comなどに出品されていることがそれを裏付けます。
→Vox / King Ampliphonic Pick-Up
このMulti-Viderとほぼ同時期に登場したのが英国の名門ブランド、Voxが手がける 'Ampliphonic' のシリーズです。これまでのピックアップがパッシヴだったのに対してこの 'Ampliphonic' ピックアップは、'A〜B〜C' と可変するヴォリュームの付いたアクティヴの仕様が特徴。基本的な作りはSelmer Varitone同様スクリューネジの着脱(互換性はない)となりますが、一部、Multi-ViderやGibson /Maestroとの互換性に合わせてゴムパッキンのソケット部を持つ製品もラインナップされました。また、管楽器市場への拡大を狙ってか当時、Voxと同じく傘下であったKingのブランドでも販売して総合的なPA製品含め展開しました。
→Vox 'Ampliphonic' Woodwind and Brass Instruments
→Piezo Barrel on eBay
→Piezo Barrel Wind Instrument Pickups
→Piezo Barrel Instructions
→vimeo.com/160406148
そして、こちらはVoxが 'Ampliphonic' シリーズのひとつとして展開した管楽器群。すでにクラリネットのバレルやコルネット、トランペットのベル横に穴開け加工を施し、そのままピックアップ装着してステージに直行できます。このコルネットなどは同じく傘下のKingのOEMじゃないかな、と思うのですけど、ベル横に開けられた穴はまず小さなピンで塞ぎ(失くしそう)、それからネジ式の蓋で閉じるという構造となっております。ドン・エリスなどもそうなのですけど、管楽器奏者にとってマウスピースというのは音色を司るものから加工を嫌がる人も一定数おり、このような場合にラッパのリードパイプ上やベル横に穴を開けて装着する場合があります。PiezoBarrelとエンドース契約していると思しき?ユーザーのひとり、Tony Dimitrioskiさんなるラッパ吹きもがっつりベル横に穴を開けて装着。
さて冒頭でも触れましたが、このような旧態依然なマウスピース・ピックアップも一部、エフェクツを愛する管楽器奏者たちには需要があるようで(わたしです)、何故か古くはオスマン・トルコの軍楽隊に由来するのか、バルカン半島から地中海一帯において小さな工房が頑張っております。その中からブルガリアのNalbantov Electronics、ギリシャのTap ElectronicsなどがオーストラリアのPiezoBarrelのライバルとして今後注目されるかもしれません。というか、ワイヤレス・システムに対応していたり、オクターバー内蔵のピックアップを製作したりと製品開発の力の入れようはこちらの方が上かも・・。
→Nalbantov Electronics
Piezo Barrelのライバルその1。ブルガリアの工房Nalbantov Electronicsです。ガレージ臭たっぷりのPiezo Barrelに比べて、製品としてよりハイクオリティなパッケージとなっており、専用のオクターバーからDIYキット、ワイヤレス・システムに至るまで幅広く対応しております。動画は穴開け用のドリルなどがピックアップと共に梱包された 'DIY' キットの作り方ですが、いやあ、サックスのネックを万力などで固定せずそのままドリル貫通・・振動でブレて穴がズレたり抑えている指いっちゃいそうで怖い(苦笑)。
→TAP Electronics
→TAP Electronics Pick-Ups
Piezo Barrelのライバルその2。ギリシャのTAP Electronicsです。こちらもNalbantov同様に幅広いラインナップを揃えており、Piezo Barrelに比べ製品としてよりこなれた設計となっておりますね。昨日の項でも紹介しましたがピックアップ本体にオクターバーを内蔵させるとか、なかなかメンドくさがりな管楽器ユーザーの心理をよく読んでいる(笑)。この 'Octa' はオクターヴトーンのほか、1バンドEQ、ヴォリュームの3つのパラメータを持ち、USBによる90秒の急速充電により8時間ほどのパフォーマンスが可能。
→The Little Jake ①
→The Little Jake ②
こちらは '番外編' というか、バスーンの 'アンプリファイ' として唯一無二な存在のピックアップ、The Little Jake。どちらといえばアンサンブルの楽器で即興演奏とは無縁のバスーンは、ポール・ハンソンさんの演奏と共にその鈍重なイメージをマイケル・ブレッカーばりに刷新しました。細いパイプに穴を開けて装着するピックアップとガムの空き缶を利用したプリアンプがセット。その下のJim Dunlopのデモ動画としてバリトン・サックスのマウスピースに接合されているのは、2010年前後に英国で製作していた工房、Pasoanaのマウスピース・ピックアップ。Nalbantov ElectronicsのNCM600との比較動画なども残されておりますが(ロシア語なんでサッパリ・・)、このグルグル渦巻き柄のPasoanaピックアップはワイヤレス・システムなど幅広く手がけていたものの残念ながら消滅・・。ああ、この 'ニッチな' 分野で生き残るのは生半可なことではないようです。
Gibson / MaestroのSound System for Woodwinds用ピックアップはほとんどConnと大差ないので割愛して、管楽器用 'アンプリファイ' システムの最後発、Hammondが開発したInnovex Condor RSMのマウスピース・ピックアップをご紹介。と言ってもこちらはマイクの名門、Shureに外注として用意させた付属品で一般には手の入らない貴重なもの。つまり、Condor RSMのユーザーだけが手にすることができたもので、1971年のデイビスの動画及び上の写真にある緑のマークの付いたものがInnovexブランド専用、下のリンク先の写真が本家Shureのものでその他、上の写真にあるISC Musicのブランドのものが存在します。Hammondは当時、エディ・ハリスや駆け出しの頃のランディ・ブレッカー、そして御大マイルス・デイビスへ本機の '売り込み' を兼ねた大々的なプロモーションを展開。そんなデイビスとHammondの関係は、1970年の 'Downbeat' 誌によるダン・モーゲンスターンのインタビュー記事から抜粋します。
"そこにあったのはイノヴェックス社の機器だった。「連中が送ってきたんだ」。マイルスはそう言いながら電源を入れ、トランペットを手にした。「ちょっと聴いてくれ」。機器にはフットペダルがつながっていて、マイルスは吹きながら足で操作する。出てきた音は、カップの前で手を動かしているのと(この場合、ハーモンミュートと)たいして変わらない。マイルスはこのサウンドが気に入っている様子だ。これまでワウワウを使ったことはなかった。これを使うとベンドもわずかにかけられるらしい。音量を上げてスピーカー・システムのパワーを見せつけると、それから彼はホーンを置いた。機器の前面についているいろんなつまみを眺めながら、他のエフェクトは使わないのか彼に訊いてみた。「まさか」と軽蔑したように肩をいからせる。自分だけのオリジナル・サウンドを確立しているミュージシャンなら誰でも、それを変にしたいとは思っていない。マイルスはエフェクト・ペダルとアンプは好きだが、そこまでなのだ。"
残念ながら本機自体はデイビスのお眼鏡に叶わなかったものの、このShureのマウスピース・ピックアップはデイビスの愛用品、Giardinelliのマウスピースに穴を開けて接合されて1975年の活動停止まで突っ走ります。以下、リンク先のShureのHPから質問コーナーに寄せられたピックアップに対する回答。
→Shure CA20B Transducer Pick-Up
"Q - わたしはShurre CA20Bというトランペットのマウスピースに取り付けるピックアップを見つけました。それについて教えてください。"
"A - CA20Bは1968年から70年までShureにより製造されました。CA20BはSPL/1パスカル、-73dbから94dbの出力レベルを持つセラミックトランスデューサーの圧電素子です。それはHammond Organ社のInnovex部門でのみ販売されていました。CA20BはShureのディーラーでは売られておりませんでした。
CA20Bは(トランペット、クラリネットまたはサクソフォンのような)管楽器のマウスピースに取り付けます。穴はマウスピースの横に開けられて、真鍮のアダプターと共にゴムOリングで埋め込みます。CA20Bはこのアダプターとスクリューネジで繋がっており、CA20Bからアンバランスによるハイ・インピーダンスの出力を60'ケーブルと1/8フォンプラグにより、InnovexのCondor RSMウィンド・インストゥルメンツ・シンセサイザーに接続されます。Condor RSMは、管楽器の入力をトリガーとして多様なエフェクツを生み出すHammond Organ社の電子機器です。Condorのセッティングの一例として、Bass Sax、Fuzz、Cello、Oboe、Tremolo、Vibrato、Bassoonなどの音色をアコースティックな楽器で用いるプレイヤーは得ることができます。またCA20Bは、マウスピースの横に取り付けられている真鍮製アダプターを取り外して交換することができます。
Condorはセールス的に失敗し、ShureはいくつかのCA20Bを生産したのみで終わりました。しかし、いく人かのプレイヤーたちがCA20Bを管楽器用のピックアップとしてギターアンプに繋いで使用しました。その他のモデルのナンバーと関連した他の型番はCA20、CA20A、RD7458及び98A132Bがあります。"
そんなShure CA20Bも6年近い '沈黙' を経て再びステージに立った頃には、すでに '時代遅れの代物' と化したのか、ピックアップ本体は外されて蓋で閉じられた 'アコースティック・マウスピース' としてミュートと共に奏でます。こういう変化からもう、すでに 'ワウの時代' ではなくなったことを象徴する一コマと映るのですが、この蓋の形状からもしかすると 'エレクトリック・マイルス後期' はCA20Bだけではなく、Selmerの 'Cellule Microphonique' も使用していたのかもしれませんね(デイヴ・リーブマンはこちらを使用しておりました)。
さて、ここまではいわゆる管楽器用エフェクターの付属品として用意されていたマウスピース・ピックアップを見てきましたが、1970年代に入るとピックアップ単品として発売されて気軽にアプローチすることが可能となります。そのきっかけとなったのがピックアップの老舗、Barcus-berry。この会社の製品が革新的だったのはピックアップ本体の小型化であり、マウスピースという限られたスペースの邪魔にならない取り付けを実現したこと。しかし、個人的には製品の耐久性という点でイマイチな部分が多く、わたしの環境ではマウスピースに接合して一年ほど過ぎるとガクッと感度が落ちてエフェクツのかかりが悪くなります・・(2つダメにしました)。そもそもピエゾ・トランスデューサー式はマイク同様に湿気に弱く、定期的なピックアップ本体の着脱を通して製品の寿命へ貢献すると考えております。実際、猛烈な息の出入りにより熱気から急速に冷えた結露としてピックアップに対する負担は相当なもの・・結局、現在はカタログ落ちしているのを見ると製品としての設計に無理があったのでしょう。
ちなみにBarcus-berryはこの製品の特許を1968年3月27日に出願、1970年12月1日に創業者のLester M. BarcusとJohn F. Berryの両名で 'Electrical Pickup Located in Mouthpiece of Musical Instrument Piezoelectric Transducer' として取得しております。特許の図面ではマウスピースのシャンク部ではなく、カップ内に穴を開けてピックアップを接合しているんですねえ。しかし、カップ内で音をピックアップするとプシャ〜とした息の掠れる音が入り、動画はPiezoBarrelのものですが、こんな独特な音色となってイマイチ扱いにくいのでシャンク部に穴を開けた方が使いやすいと思います。
1982年のジャコ・パストリアス・グループ参加の頃はそんな '転換期' であり、モデルチェンジしたピックアップと共に中継コネクターをマウントする部分が、ベルとリードパイプ括り付けの 'タイラップ仕様' から専用のクリップでマウントする方式に変更。しかし動画のランディ・ブレッカーは、マウントするパーツが未だ従来のタイラップも付けたまま状態という、いかにも過渡期の勇姿を拝むことができます。また、ボブ・ミンツァーが吹くバス・クラリネットもBarcus-berryの1375-1で 'アンプリファイ'。後年、ランディ自身はこの頃のセッティングを振り返ってこう述べております。
"エフェクトを使い始めたころはバーカスベリーのピックアップを使っていたし、マウスピースに穴を開けて取り付けていた。ラッキなーことに今ではそんなことをしなくてもいい。ただ、あのやり方もかなり調子良かったから、悪い方法ではなかったと思うよ。"
最初の写真のものは1970年代初めに製品化された金管楽器用1374で、中継コネクターを介して2.1mmのミニプラグでフォンへと接続します。中継コネクターにぶら下がるタイラップはベルとリードパイプ部分をグルッと引っ掛けておくという仕様でして、この会社の製品はその '作り' という点でも結構荒っぽいんですよね。これ以後、1970年代後半には3.5mmのミニプラグに仕様変更され、金管楽器用は中継コネクターを専用のクリップでリードパイプに着脱できるようになったのが真ん中の写真のもの。この時期の製品を個人的に調べてみて分かったのは、1982年製造と1983年製造のものでピエゾの感度がかなり変わってしまったことでして、正直、1983年製は 'ハズレ' と言いたいくらいエフェクツのかかりが悪いですねえ(謎)。そして1990年代半ばに発売されるも少量で生産終了した 'エレクトレット・コンデンサー' 式の6001が同社 '有終の美' を飾ります。Barcus-berryが社運を賭けて開発したと思しき本品は同社で最も高価な製品となり、当時代理店であったパール楽器発行の1997年のカタログを見ると堂々の65,000円也!しかし、すでにグーズネック式のマイクがワイヤレスと共に普及する時代の変化には太刀打ちできませんでした。
この6001の代表的なユーザーとしては、近藤等則さんが1990年代終わり頃から 'DPA' 流用によるオリジナルなマウスピース・ピックアップへ換装する2007年頃まで使用しておりましたが、今や、同社を象徴していたマウスピース・ピックアップはカタログからその姿を消し、この老舗の '栄枯盛衰' と共にすっかり寂しいものとなったのは残念至極。やはり他社がやらないところで、この会社ならでの発想を活かす製品作りを継続してやって頂きたいですねえ。ちなみにこの6001使用時の近藤さんは、ベル側のマイクとマウスピース・ピックアップを2チャンネル真空管プリアンプの名機、Alembic F-2Bで 'モノ・ミックス' して出力しておりました。
珍しいBarcus-berryの 'エレクトレット・コンデンサー' 式ピックアップとしては、一時期、金管用の5300というのがラインナップされておりました。これはラッパのベルのリム縁にネジ止めしてマウントするもので、1981年に復帰したマイルス・デイビスもメーカーは違いますが同種のピックアップをステージで使用しておりましたね。当時、もの凄いお金のかけたワイヤレス・システムだったそうですが、このBarcus-berryの方はすでに '廉価版' としてリーズナブルなお求めやすい価格で提供されました。こんな構造ですけどオープンホーンはもちろんミュートもちゃんと拾うナチュラルな収音であるものの、ワウなどのエフェクツをかけると簡単にハウってしまいます。基本的にはリヴァーブやディレイ程度で '生音' の収音に適したピックアップなのですが、これもグーズネック式マイクの登場であっという間に '過去の遺物' に・・(デイビスもあの '傘の柄' のようなワイヤレス・マイクに変えちゃいましたしね)。
→Barcus-berry 1375 Piezo Transducer Pick-Up
→Barcus-berry C5200 (C5600) Electret Condenser Pick-Up ①
→Barcus-berry C5200 (C5600) Electret Condenser Pick-Up ②
その他の製品は、木管楽器用1375-1、穴は開けずにリード部分へ貼り付ける仕様の廉価版1375などがあり、現在では、元々フルートの 'アンプリファイ' に力を入れていた同社らしく頭管部に差し込む6100、サックス/クラリネット用としてベル内側にベルクロで貼り付ける(荒っぽい!) 'エレクトレット・コンデンサー' 式のC5200 (C5600)などの一風変わったピックアップを供給するなど、相変わらず '斜め上' のセンスで細々と展開しておりまする。動画はジャン・リュック・ポンティ、ジョージ・デュークらを擁したフランク・ザッパ1973年の全盛期のものですが、イアン・アンダーウッドのバス・クラリネットに貼り付け型1375を用いてエフェクティヴなソロを披露。しかしネック部にConn Multi-Vider用ピックアップのための穴も開けられて蓋で閉じられております。
→Barcus-berry 1333 Super Boost
ちなみにBarcus-berryの 'ピエゾ式' マウスピース・ピックアップはパッシヴなので、メーカーから別に汎用のプリアンプが用意されておりました。これも時代ごとのモデルチェンジが激しく、初期の1330S High Impedance 'Standard' Preamplifier、Super Boostの1333や1433-1、1980年代からは3Vのボタン型リチウム電池のプリアンプがピックアップと同梱して販売され、その後の1990年代頃からはUniversal Interface 3500Aなどが登場しました。また、'エレクトレット・コンデンサー' 式の6001に対応したBuffer Preamp/EQ 3000Aはこれらとインピーダンスが違うので共用することはできません。写真のものは1970年代後半の1430 Standard Pre-Ampと1432 Studio Pre-AmpというDI出力の付いたもので、9V電池のみならずDC9V電源の駆動も可能とします。
→DPA SC4060、SC4061、SC4062、SC4063
→DPA SC4060、4061 Review
→Phoenix Audio DRS-Q4M Mk.2
→Rumberger Sound Products K1X ①
→Rumberger Sound Products K1X ②
そんな我らが '電気ラッパ' の伝道師、近藤等則さんなのですが、永らく愛用したBarcus-berryからファンタム電源の供給可能なDPAの直径5.5mmな 'ミニチュア・マイロフォン' で一新!ピックアップ本体の着脱から防水としてポリプロピレンのシールドをソケット部に貼るなど、その構造はBarcus-berry 6001をほぼ踏襲しており、これを音響機器の世界で伝説化されているNeveの質感を再現したマイク・プリアンプPheonex Audio DRS-Q4M Mk.2と共に使用。また、ピックアップをマウスピースに装着するソケット部は新大久保のグローバルにオーダーして製作してもらったとのこと。このようなファンタム電源に対応しているマウスピース・ピックアップは、数は少ないですが他にドイツのRumberger Sound Productsのものがありますけど・・これもeBayなどで見つけたものの流石に高いなあ。
→NeotenicSound AcoFlavor ①
→NeotenicSound AcoFlavor ②
→NeotenicSound Board Master (discontinued)
→NeotenicSound Pure Acoustic
→Headway Music Audio EDB-2
→Headway Music Audio EDB-2 Review
→NeotenicSound Pure Acoustic
→Headway Music Audio EDB-2
→Headway Music Audio EDB-2 Review
このような管楽器の 'アンプリファイ' が当時のロック、R&B、フュージョンやプログレなどのブームと不可分ではないワケでして、ここで挙げた製品以外にもその他、CountrymanやC-Ducerなどから発売していたという噂は聞いているのですが未だ見つからず・・。う〜ん、'エレクトロニクス万能' と信じられていた時代の熱気ってもの凄いですね。そして、ピエゾといえばその特有の '質感' を補正してくれる唯一無二の便利アイテム、NeotenicSound AcoFlavorが結構売れているそうですヨ。わたしも微力ながら本機モニターとしてお手伝いさせて頂いたので、やはりこういうアイテムが楽器は違えど同種のニーズを求められているのは嬉しいですねえ。本機は 'Acoustic-Pickup Signal Conditioner' と呼ばれており、さらに '生っぽい' 補正、増幅にPureAcousticを加えると良いそうです。わたしは本機の後ろにMagical Force、そしてHeadway Music AudioのEDB-2でダイナミック・マイクとミックスさせて愛用中。もうひとつ愛用している本機の前身に当たる '隠れた名機'、Board Masterに比べると間違いなく音に密度が増しており、ピックアップからの感度調整を司るFitとは別にLimitツマミを回すことで '暴れ感' を抑えることができます。現在のセッティングはMaster 1時、Fit 10時、Limitを9時にセット・・。以前はLimitは0だったのですが、やはり少し上げてやると格段に演奏がしやすくなりますねえ。わたしの場合、ここからさらに細かな補正は後段のMagical Forceにお任せ。ちなみに本機はプリアンプではなく、奏者が演奏時に感じるレスポンスの '暴れ' をピックアップのクセ含めて補正してくれるもの、と思って頂けると分かりやすいでしょうね。管楽器でPiezoBarrelなどのマウスピース・ピックアップ使用の方は絶対に試して頂きたい逸品です!
最後は日本を代表する楽器メーカーのひとつ、Roland。その創業者である故・梯郁太郎氏が1960年代からRolandとして独立するまで携わっていたのがAce Toneです。いわゆる 'GSブーム' においてはGuyatoneやElk、Tiesco、Honeyなどと並び 'エレキ' の代名詞的存在となったことは、その製品カタログにおいてオルガン、リズムボックス、エフェクター、アンプなどを総合的に手がけていたことからも分かります。そんな世界の新たな動きに呼応しようと奮闘した日本の 'Ace Tone' ことエース電子工業株式会社。まさに日本の電子楽器の黎明期を支えたメーカーと言って良いでしょう。
Ace Toneが鍵盤奏者やギター奏者のみならず、管楽器の 'アンプリファイ' にもアプローチしていたことはほとんど知られておりません。そもそも '電化アレルギー' の多い保守的なジャズの世界でこの手の機器にアプローチすることは '堕落' したことと同義であり、実際の効果はもちろん、それをステージ上で積極的に探求しようとした奏者もほぼ皆無であったと推測されます。しかしこれは、それまでバンド・アンサンブルの '主役' であった管楽器が '退場' する瞬間でもありました。ビッグバンドにおける4ブラスを始めとした豪華な '音量' は、些細なピッキングの振動がそのまま、ピックアップとアンプを通して巨大なスタジアム級のホールを震わせるほどの '音圧' に達する 'エレキ' に簡単に負けてしまったのですから。
このあたりは海外でもほぼ同じ状況ではありましたが、しかし巨大なスタックアンプの爆音によるアンサンブルの中で埋もれない為や、ジャズよりもプログレやR&Bのスタイルでの需要など、消極性と可能性の狭間で愛用の管楽器に穴を開けざるを得ませんでした。いわゆる 'ジャズの帝王' マイルス・デイビスですら、それまでのモダン・ジャズのキャリアを捨ててロックに色目を使った、ポップの軍門に降ったなどと頑固なジャズ・クリティクから罵詈雑言を浴びせられていたのにも関わらず、自らの新たな音楽の探求の為に 'アンプリファイ' の可能性に賭けたのです。Ace Toneがこういう海外の事情にいち早く飛び付き、例えコピーと言えどもひとつの製品として市場に送り出すのはHoneyと双璧の存在と言って良いでしょう。
1968年、当時としてはかなり高価な管楽器用 'アンプリファイ' サウンド・システムであったMulti-Vox。各種オクターヴを操作するコントローラー・ボックスEX-100は39,000円、マウスピースに穴を開けて接合するピックアップPU-10は3,000円と、その 'ニッチな' 需要と相まってなかなか手の出るものではなかっただろうと推測されます。当初の広告では、コレでジョン・コルトレーンのタッチやソニー・ロリンズの音色が再現出来るとのキャッチコピーが泣かせますね(笑)。またAce Toneは1968年にHammondと業務提携をして、本機もOEMのかたちで米国に輸出する旨がアナウンスされていたことを1969年のカタログで確認することが可能。しかし 'Inquire for details and prices' と強調されているのを見ると日本から現物が届いておらず、カタログでアナウンスされたものの米国では発売されなかった感じですね。実際、今までeBayやReverb.comなどに流れてきた記憶がないので、世界最大のエフェクター・サイトである 'Disco Freq's Effects Database' にもこれまで本機が掲載されることはありませんでした。
さて、このMulti-Vox EX-100。サックス用にはコントローラーをVaritone同様にキー・ボタンの側、ラッパでは奏者の腰に装着して用いるもので、日野皓正さんなどは同社のギターアンプSolid Ace SA-10にテープ・エコーEC-1 Echo Chemberの組み合わせをアルバム 'Hi-Nology' 見開きジャケットで拝むことが出来ます。当時、このようなスタックアンプといえばTeiscoやElkと並び総合的にPAを手がけていたAce Toneの土壇場だったのですが、海外製のギターアンプと比べると圧倒的に歪まなかった・・。しかし、それがこのような管楽器用アンプとしては十分に威力を発揮したのだと思います。
→Terumasa Hino Quintet 1968 - 69
このMulti-Voxをいち早く導入したのがマイルス・デイビスの '電化' に感化されていたトランペットの日野皓正氏とテナーサックスの村岡建氏のふたり。すでに本機発売の翌年、そのデモンストレーションともいうべき管楽器の可能性をいくつかのイベントで披露しております。
⚫︎1969年3月24日 初の日野皓正クインテット・ワンマン・コンサートを開催する(東京サンケイ・ホール)。'Love More Train'、'Like Miles'、'So What' などを演奏、それに合わせてあらかじめ撮影された路面電車の 種々のシーンをスクリーンに映写し、クインテットがインプロヴァイズを行う。日野さんのラッパには穴が開けられピックアップを取り付けて初の電化サウンドを披露した。
⚫︎1969年6月27、28日 クインテットによる「日野皓正のジャズとエレクトロ・ヴィジョン 'Hi-Nology'」コンサート開催(草月会館)。写真家の内藤忠行のプロデュースで司会は植草甚一。第一部を全員が 'Like Miles'、'Hi-Nology'、'Electric Zoo' を電化楽器で演奏。第二部は「スクリーン映像との対話」(映画の公開ダビング)。「うたかたの恋」(桂宏平監督)、「POP 1895」(井出情児監督)、「にれの木陰のお花」(桂宏平監督)、「ラブ・モア・トレイン」(内藤忠行監督)の5本、その映像を見ながらクインテットがインプロヴァイズを行い音楽を即興で挿入していった。コンサートの最後にクインテットで 'Time and Place' をやって終了。
→Ride and Tie / Takeru Muraoka & Takao Uematsu
日野皓正さん1969年の傑作 'Hi-Nology' の内ジャケットでは使用中の写真がありますけど音源には入っていない模様。本作で共演するサックス奏者、村岡建さんは、この時期から少し経って1971年の植松孝夫さんとの '2テナー' によるライヴ盤 'Ride and Tie' で全編、'アンプリファイ' なオクターヴ・トーンを堪能することが出来ます。実はコレ、Ace Tone Multi-Voxなのでは?と思っているのですが、取説での村岡さんの談によればヤマハから '電気サックス' 一式を購入したことが本盤制作のきっかけとなったそうで、その海外事業部を介して手に入れた '海外製品' (Varitone ?Multi-Vider ?)を使用したと理解する方が自然かもしれません。ちなみに日野さんは、この時期の '日野ブーム' と共に大きく影響を受けた 'エレクトリック・マイルス' 及び '電気ラッパ' に対してこう述べております。
- エレクトリック・トランペットをマイルスが使い始めた当時はどう思いましたか?
"自然だったね。フレイズとか、あんまり吹いていることは変わってないなと思った。1970年ごろにニューヨークのハーレムのバーでマイルスのライヴを観たんだけど、そのときのメンバーはチック・コリアやアイアート・モレイラで、ドラムはジャック・ディジョネットだった。俺の弟(日野元彦)も一緒に観に行ってたんだけど、弟はディジョネットがすごいって彼に狂って、弟と "あれだよな!そうだよな!" ってことになって(笑)。それで電気トランペットを俺もやり始めたわけ。そのころ大阪万博で僕のバンドがああいうエレクトリックのスタイルで演奏したら、ヨーロッパ・ジャズ・オールスターズで来日中だったダニエル・ユメールに "日野はマイルスの真似しているだけじゃないか" って言われたことがあるんだけどね。"
最後は日本を代表する楽器メーカーのひとつ、Roland。その創業者である故・梯郁太郎氏が1960年代からRolandとして独立するまで携わっていたのがAce Toneです。いわゆる 'GSブーム' においてはGuyatoneやElk、Tiesco、Honeyなどと並び 'エレキ' の代名詞的存在となったことは、その製品カタログにおいてオルガン、リズムボックス、エフェクター、アンプなどを総合的に手がけていたことからも分かります。そんな世界の新たな動きに呼応しようと奮闘した日本の 'Ace Tone' ことエース電子工業株式会社。まさに日本の電子楽器の黎明期を支えたメーカーと言って良いでしょう。
Ace Toneが鍵盤奏者やギター奏者のみならず、管楽器の 'アンプリファイ' にもアプローチしていたことはほとんど知られておりません。そもそも '電化アレルギー' の多い保守的なジャズの世界でこの手の機器にアプローチすることは '堕落' したことと同義であり、実際の効果はもちろん、それをステージ上で積極的に探求しようとした奏者もほぼ皆無であったと推測されます。しかしこれは、それまでバンド・アンサンブルの '主役' であった管楽器が '退場' する瞬間でもありました。ビッグバンドにおける4ブラスを始めとした豪華な '音量' は、些細なピッキングの振動がそのまま、ピックアップとアンプを通して巨大なスタジアム級のホールを震わせるほどの '音圧' に達する 'エレキ' に簡単に負けてしまったのですから。
このあたりは海外でもほぼ同じ状況ではありましたが、しかし巨大なスタックアンプの爆音によるアンサンブルの中で埋もれない為や、ジャズよりもプログレやR&Bのスタイルでの需要など、消極性と可能性の狭間で愛用の管楽器に穴を開けざるを得ませんでした。いわゆる 'ジャズの帝王' マイルス・デイビスですら、それまでのモダン・ジャズのキャリアを捨ててロックに色目を使った、ポップの軍門に降ったなどと頑固なジャズ・クリティクから罵詈雑言を浴びせられていたのにも関わらず、自らの新たな音楽の探求の為に 'アンプリファイ' の可能性に賭けたのです。Ace Toneがこういう海外の事情にいち早く飛び付き、例えコピーと言えどもひとつの製品として市場に送り出すのはHoneyと双璧の存在と言って良いでしょう。
1968年、当時としてはかなり高価な管楽器用 'アンプリファイ' サウンド・システムであったMulti-Vox。各種オクターヴを操作するコントローラー・ボックスEX-100は39,000円、マウスピースに穴を開けて接合するピックアップPU-10は3,000円と、その 'ニッチな' 需要と相まってなかなか手の出るものではなかっただろうと推測されます。当初の広告では、コレでジョン・コルトレーンのタッチやソニー・ロリンズの音色が再現出来るとのキャッチコピーが泣かせますね(笑)。またAce Toneは1968年にHammondと業務提携をして、本機もOEMのかたちで米国に輸出する旨がアナウンスされていたことを1969年のカタログで確認することが可能。しかし 'Inquire for details and prices' と強調されているのを見ると日本から現物が届いておらず、カタログでアナウンスされたものの米国では発売されなかった感じですね。実際、今までeBayやReverb.comなどに流れてきた記憶がないので、世界最大のエフェクター・サイトである 'Disco Freq's Effects Database' にもこれまで本機が掲載されることはありませんでした。
さて、このMulti-Vox EX-100。サックス用にはコントローラーをVaritone同様にキー・ボタンの側、ラッパでは奏者の腰に装着して用いるもので、日野皓正さんなどは同社のギターアンプSolid Ace SA-10にテープ・エコーEC-1 Echo Chemberの組み合わせをアルバム 'Hi-Nology' 見開きジャケットで拝むことが出来ます。当時、このようなスタックアンプといえばTeiscoやElkと並び総合的にPAを手がけていたAce Toneの土壇場だったのですが、海外製のギターアンプと比べると圧倒的に歪まなかった・・。しかし、それがこのような管楽器用アンプとしては十分に威力を発揮したのだと思います。
→Terumasa Hino Quintet 1968 - 69
このMulti-Voxをいち早く導入したのがマイルス・デイビスの '電化' に感化されていたトランペットの日野皓正氏とテナーサックスの村岡建氏のふたり。すでに本機発売の翌年、そのデモンストレーションともいうべき管楽器の可能性をいくつかのイベントで披露しております。
⚫︎1969年3月24日 初の日野皓正クインテット・ワンマン・コンサートを開催する(東京サンケイ・ホール)。'Love More Train'、'Like Miles'、'So What' などを演奏、それに合わせてあらかじめ撮影された路面電車の 種々のシーンをスクリーンに映写し、クインテットがインプロヴァイズを行う。日野さんのラッパには穴が開けられピックアップを取り付けて初の電化サウンドを披露した。
⚫︎1969年6月27、28日 クインテットによる「日野皓正のジャズとエレクトロ・ヴィジョン 'Hi-Nology'」コンサート開催(草月会館)。写真家の内藤忠行のプロデュースで司会は植草甚一。第一部を全員が 'Like Miles'、'Hi-Nology'、'Electric Zoo' を電化楽器で演奏。第二部は「スクリーン映像との対話」(映画の公開ダビング)。「うたかたの恋」(桂宏平監督)、「POP 1895」(井出情児監督)、「にれの木陰のお花」(桂宏平監督)、「ラブ・モア・トレイン」(内藤忠行監督)の5本、その映像を見ながらクインテットがインプロヴァイズを行い音楽を即興で挿入していった。コンサートの最後にクインテットで 'Time and Place' をやって終了。
→Ride and Tie / Takeru Muraoka & Takao Uematsu
日野皓正さん1969年の傑作 'Hi-Nology' の内ジャケットでは使用中の写真がありますけど音源には入っていない模様。本作で共演するサックス奏者、村岡建さんは、この時期から少し経って1971年の植松孝夫さんとの '2テナー' によるライヴ盤 'Ride and Tie' で全編、'アンプリファイ' なオクターヴ・トーンを堪能することが出来ます。実はコレ、Ace Tone Multi-Voxなのでは?と思っているのですが、取説での村岡さんの談によればヤマハから '電気サックス' 一式を購入したことが本盤制作のきっかけとなったそうで、その海外事業部を介して手に入れた '海外製品' (Varitone ?Multi-Vider ?)を使用したと理解する方が自然かもしれません。ちなみに日野さんは、この時期の '日野ブーム' と共に大きく影響を受けた 'エレクトリック・マイルス' 及び '電気ラッパ' に対してこう述べております。
- エレクトリック・トランペットをマイルスが使い始めた当時はどう思いましたか?
"自然だったね。フレイズとか、あんまり吹いていることは変わってないなと思った。1970年ごろにニューヨークのハーレムのバーでマイルスのライヴを観たんだけど、そのときのメンバーはチック・コリアやアイアート・モレイラで、ドラムはジャック・ディジョネットだった。俺の弟(日野元彦)も一緒に観に行ってたんだけど、弟はディジョネットがすごいって彼に狂って、弟と "あれだよな!そうだよな!" ってことになって(笑)。それで電気トランペットを俺もやり始めたわけ。そのころ大阪万博で僕のバンドがああいうエレクトリックのスタイルで演奏したら、ヨーロッパ・ジャズ・オールスターズで来日中だったダニエル・ユメールに "日野はマイルスの真似しているだけじゃないか" って言われたことがあるんだけどね。"
2018年7月3日火曜日
蒸し暑い '電化夜話' (再掲)
永遠に陽射し照りつける'サマー・オブ・ラヴ' の季節は、エレクトリック・ギターを持った若者たちを焚きつけるのみならず、それまでバンド・アンサンブルの主役であった 'ホーン' の連中をも 'アンプリファイ' に向かわせました。唯一の違いは、大半の奏者が '時代の要請' に倣って積極的ではなかったこと。それはこの熱気の過ぎ去った後、多くの管楽器に取り付けられていたピックアップは外され、穴の空いた楽器を再びハンダで埋めるべくリペア工房に列をなしていたことがその栄枯盛衰を物語ります。まさに '時代のあだ花' でありながら新たな可能性への扉を開く1960年代後半のホーンにプラグを繋いだ者たち。今の視点から見れば大したことはやっていないのだけど、'エレクトリック・マイルス以前' という黎明期において格闘していたその軌跡をいま、ここに開陳いたしましょう。
→C.G. Conn Multi-Vider
→C.G. Conn Model 914 Multi-Vider
まずは、スイス出身のサックス奏者にして 'マッド・サイエンティスト' でもあるブルーノ・スポエリが同じく同郷のラッパ吹き、ハンス・ケネルと共にConn Multi-Viderで 'アンプリファイ' した 'Jazz Rock Experience' からどーぞ。そのスポエリさんは同時期、日本の大阪万博でスイス館のためにThe Metronome Quintetとして来日、日本コロンビアでこの7インチ 'EXPO Blues' を吹き込んでおります。この、Multi-Viderのネロ〜ンとした電気サックスの音色がたまらない・・。
1950年代後半から活動するラスティ・ブライアントは、麻薬絡みでしばらく刑務所に服役した後、久しぶりのシャバの空気を吸ってビックリしたに違いありません。全ての価値観が引っくり返るようにあちこちで混乱していた1960年代後半は、そのままブライアントのアルト・サックスにも当時の '新兵器' を装着して、ジャズよりもR&B、ファンクだと言わんばかりに 'アンプリファイ' しながら街へ飛び出して踊ります!1990年代の 'アシッド・ジャズ' 再評価ではこの人のアルバムはどれも高濃度、高カロリーなコテコテ具合で本当に格好良かった。
→Hammond / Innovex Condor RSM
ジャズマンたちの 'アンプリファイ' には、当時のロック、ヒッピー世代を覆い尽くしていたサイケデリック、LSDがもたらす幻覚の誘惑がありました。'アンプリファイ' したサックスの第一人者、エディ・ハリスはGibson/MaestroのSound System for WoodwindsやEchoplexを駆使し、またギタリストのビリー・バトラーはベテランのテナーマン、セルダン・パウエルを 'アンプリファイ' でフィーチュアしながらワウワウ・ギターと共にスーツを脱ぎ捨てて 'サイケデリック・トレイン' へと乗り込みます。そしてこの分野のイノベイターとして君臨するエディ・ハリスは、元祖であるSelmer VaritoneからMaestro Woodwindsと逐一当時の '新製品' をチェックしながら新たな奏法で新境地を開拓しましたが、この1970年のライヴ盤 'Live At Newport' では '世界初のギターシンセ' として知られるHammondのInnovex Condor RSMを披露。まあ、一聴する限りはどれもネロ〜ンとしたオクターヴ・トーンなんですけど、ね。その他、ハリスはピックアップの付いたサックスのマウスピースをトランペットに装着して吹いたりと、もうやりたい放題(笑)。こういう人、正統的なジャズ史の中では無視されちゃうのが何とも残念なり・・。
→H&A.Selmer Inc. Varitone ①
→H&A.Selmer Inc. Varitone ②
そんな全てに蒸し暑〜いホーンの 'アンプリファイ' は、元祖 'ファンク男' のひとり、ナット・アダレイも動かします。それまで兄キャノンボール・アダレイの影に隠れるようにサポートしていたイメージのナットが心機一転、A&M傘下のCTIからリリースしたのがこの '仏像ジャズ'。いや、内容はそんな抹香臭いもんじゃありませんが、やはりサイケデリックな時代の空気を吸って自らのコルネットも 'アンプリファイ' しました。ここで登場するSelmer Varitoneは、一足先にクラーク・テリーがアルバム 'It's What's Happnin'' でアプローチしており、サックスの場合はマウスピースにピックアップを取り付けますが、トランペットやコルネットの場合はリードパイプ上部に穴を開けて取り付け、コントローラーは首からぶら下げるかたちとなります。まあ、効果的にはダークで丸っこい音色のコルネットが蒸し暑いオクターヴ下を付加して、さらにモゴモゴと抜けの悪いトーンになっているのですけど・・。そんな混迷の時代と共に 'You, Baby' は、ナットが 'サマー・オブ・ラヴ' の季節を謳歌した異色の一枚でもあります。
さて、そんなコルネットですけど当時、Voxの 'Ampliphonic' からもピックップを装着できるコルネットが発売されておりました。ちょうどベルの右横にピックアップ用の穴が開けられており、使用しない時はネジで閉じられているという仕様。この 'Ampliphonic' はVoxブランドのみならず同じ傘下のKingブランドとしても販売されており、実はこのコルネットも(たぶん)KingのOEMではないかと思われます。そのKingのロング・コルネットといえばナットが愛用するSuper 20、純銀ベルの 'Silver Sonic' をOlds No.3マウスピースで吹くというのが最も有名なスタイル。しかし、ちょうどナットが 'アンプリファイ' していた頃は、Selmer Varitoneを用いていたことからたぶんSelmerのコルネットだったんじゃないかな?と。いや、Selmerでコルネットというのはあまり聞かないのですが、上の動画はそんなVaritoneのコルネットを吹く貴重なもの。首からコントローラーをぶら下げて(2:39)、ピックアップはリードパイプの上に穴を開けて接合されております(不鮮明で見にくいですけど)。
世界最初の管楽器用 'アンプリファイ' システムであるSelmer Varitoneはナット・アダレイ、クラーク・テリーのほか、ソニー・スティットやエディ・ハリスらが一足早くアプローチしており、このSelmerブランドのほか、より管楽器の市場へと浸透すべく管楽器メーカーのBuesherブランドとしても販売されておりました。専用のコネクターを介して管楽器とアンプを直結、その可搬性や他社エフェクターとの連携の悪さから後発の同種製品(Conn、Maestro、Innovex)に比べて部が悪いものの、元祖として管楽器の 'アンプリファイ' を象徴する存在と言っていいでしょうね。1970年代にはMainstreamレーベルからアフロ色濃い作品をリリースするこのバディ・テリーも1960年代後半、すでにファンキーなR&B、ブーガルー一色となったPrestigeレーベルからその名もずばり 'Electric Soul !' で '感電' します。このネロ〜ンとした1オクターヴ下の 'デュエット' の蒸し暑い音色こそ電気サックスの醍醐味だ。
Selmer Varitoneということでもうひとつ。こちらはベルギーのプログレ・バンド、Mad Curry。おお、女性ヴォーカルのViona Westraを中心にVaritoneで '電化' したテナー・サックス、楽曲を一手に引き受けるDanny Rousseauのオルガンとベース、ドラムスで支えるというスタイルが素敵ですね。別にロック・バンドだからってギターをメインに持ってこなくたっていいんですヨ。'ロック=3ピース編成' ってのがひどく貧しい発想のように思えるのだけど、もう、一般的にはこのフォーマットから外れたらポップの法則で売れないと定義されちゃうんだろうなあ。わたしがプログレのバンドをイイなと思うのは、いわゆるギター、ベース、ドラムスという典型的ロックの '3ピース' にこだわらず、キーボードはもちろん管楽器、弦楽器、民俗楽器であろうが呼び込んで 'ロックしようぜ!' という間口の広さですね。言っちゃなんだがロックって排他的というか、勝手にギターがメインだと思い込んでませんか?たぶん、いまバンドやろうぜって集まってアコーディオンやクイーカ持ってやって来たらイヤがられると思う(苦笑)。しかし、そういうロックの曲をイメージできないなら、そういう楽曲を作ればイイだけのこと。ま、それがウケるかどーかは置いとくとして、作り手も聴き手もすでに出来上がったフォーマットの中で価値判断し、消費しているという現状がやっぱり寂しい・・。
→Mad Curry Web Site
1970年に真っ黒いジャケットのアルバム 'Mud Curry' を出し、後は数枚のシングルのみという謎のバンドなんですが、いま再評価みたいな流れはあるのだろうか?ちょっとジェファーソン・エアプレインがヨーロッパで 'プログレ' に感染しちゃった的 '二番煎じ' な感じはあるけれども、結局、こういう 'ごった煮' は奇を衒ったイロモノ・バンド以上の評価を得るのは難しいのかも。ちなみに上のリンク先はグループのHPのようで、彼らの活動の詳細と共に2006年に一度リユニオンしているようです。
→Vox / King Ampliphonic Pick-up
冷戦期、ベルリンの壁を越えて東ドイツから西側社会へやってきたロルフとヨアヒムのキューン兄弟。'クラリネットのコルトレーン' ともいうべき超絶技巧の粋を見せつけた1964年の傑作 'Soralius' に続き、68年から69年の 'サマー・オブ・ラヴ' の季節、思いっきりヒッピーとサイケデリックの退廃的自由に塗れた 'Mad Rockers' 改め 'Bloody Rockers' の2作目。ここでクラリネットに 'アンプリファイ' しているのは、たぶんVox / KingのAmpliphonic Octavoice Ⅰとワウペダルではないでしょうか。いやあ、当時のゴーゴー喫茶を彷彿とさせるサイケな香りが心地良い。お次は、エディ・ハリスと並んで 'アンプリファイ' なイノベイターのひとり、後にはウィンド・シンセサイザーの第一人者としてもその名を馳せるトム・スコット。まさにロック世代に登場したサックス奏者であり、コルトレーンを聴きながらR&Bからジミ・ヘンドリクス、ザ・バーズなども愛聴し、当時の 'バイショー' 的ジャズメンとは一線を画す存在と言ってよいですね。ヒッピー色全開なデビュー作 'The Honeysuckle Breeze' から全編、Conn Multi-Viderで 'アンプリファイ' したサックスによりジャズ・ロック世代との親和性を表明しておりました。同世代のブレッカー兄弟も述べていましたけど、やはりロックやR&Bは自分たちの世代に共通するアイデンティティとして、先輩世代のジャズメンが持っていた拒否感はまったく無かったそうです。そして、ウッディ・ハーマンやベニー・グッドマンのビッグバンドにも参加したトロンボーン奏者、アービー・グリーンの強力ジャズ・ファンク盤 'Green Power' は、ジャケット裏にもマウスピースにAmpliphonicのピックアップ装着して堂々登場。ちなみに、そんなVox / King Ampliphonicなんですが、腰に装着する木管楽器用のOctavoice Ⅰ、金管楽器用のOctavoice Ⅱと上級機のStereo Multi Voiceからアンプ、各種PA機器に到るまで幅広くラインナップしておりました。
→Oberheim Electronics Ring Modulator (Prototype)
→Maestro Ring Modulator RM-1A
→Maestro Ring Modulator RM-1B
さて、この手の 'アンプリファイ' に熱狂したのはジャズ奏者よりR&Bやプログレッシヴ・ロックの連中だったのですが、'本家' 以上のプログレっぽさという意味では、この完全に狂ってしまったようなザ・ビートルズの名曲カバーを披露するドン・エリスの方が 'らしい' ですね。ここでその狂った効果を最大限に発揮するリング・モジュレーターは、エリスがUCLA音楽大学の同窓であったトム・オーバーハイムと出会ったことで手に入れたもの。すでにこの時点でオクターヴ・トーンを出すMaestro Sound System for Woodwindsやテープ・エコーのEchoplexと共にステージで用いていたワケで、これはマイルス・デイビスよりかなり先駆的な存在だったことはもっと特筆してよいと思います。カリブ風味な 'Tears of Joy' では、そのリング・モジュレーターをオクターバーっぽく濁らせて 'オーボエ風' お惚け気味なトーンで鳴らしているのが面白い。
→Gibson / Maestro W-1 Sound System for Woodwinds
→Gibson / Maestro W-2 Sound System for Woodwinds
→Gibson / Maestro W-3 Sound System for Woodwinds
この手の管楽器用 'アンプリファイ' システムの中で最も売れたのがGibsonがMaestroのブランドで販売したSound System for Woodwindsでしょう。1967年のW1からバリトンのファズトーンを搭載したW2、専用のフットスイッチを取り付けたW3まで、今でもeBayを覗くとよく出品されております。エディ・ハリス1968年の 'Plugs Me In !' やチャールズ・ミンガスのグループで活躍したポール・ジェフリー1968年の 'Electrifying Sounds of Paul Jeffrey ' のジャケットで堂々登場、このカラフルなボタンと3本ラッパのMaestroマークが目印ですね。このW-1〜W-3各シリーズの差異ですが、初代のW-1では、W-2以降のオレンジ色のバリトン帯域を付加する '6VA - Contra - 16VA' スイッチではなく、'Jazz Tone' なる青いスイッチを装備。W-3はW-2に専用のフットスイッチを追加したモデルとなります。
→Acoustic Control Corporation
→Gibson / Maestro Rhythm 'n Sound for Guitar G-1
そしてもう、何度紹介したか分からないフランク・ザッパ1968年のスタジオ・ライヴ。しかし何度見てもホントにたまらない!やっぱ 'King Kong' はプログレ界3本の指に入る超名曲だなあ。イアン・アンダーウッドとバンク・ガードナー2人からなるMaestro Woodwindsを駆使したアンサンブルも怪しくて最高!ちなみにこの時期のザッパの足元は、VoxのワウペダルとAcoustic Control Corporationのヘッドアンプ、Model 260の上にGibson / Maestroのマルチ・エフェクター、Rhythm 'n Sound for Guitar G-1を使用していたんですねえ。多分Model 260内蔵のファズ含めて基本的な歪みを作り、G-1の 'チャカポコ' なリズムボックス(笑)はさすがに使わないと思いますが、本機のColor Tone 1〜3の 'フィルター' でトーンのニュアンスを変えるのがこの時期のザッパなのかな?後年のObierheim VCF-200やSystech Harmonic Energizerで求めるトーンの原点を見る思いですね。
→Korg X-911 Guitar Synthesizer
→Korg MS-03 Signal Processor
→EMS Pitch to Voltage Converter ①
→EMS Pitch to Voltage Converter ②
→Computone Lyricon
ここまではエフェクター黎明期の頃にアプローチしたオクターバーの技術から生成する原始的なものでしたが、1970年代に入るとシンセサイザーが本格化することでその減算、加算合成から電圧とピッチ、フィルタリングの音作りを 'アンプリファイ' な管楽器に応用する技術が登場します。Moogシンセサイザーで一般化した 'V/Oct' やKorgでお馴染み 'Hz/Oct' の電圧制御のトリガーは、そのままEMS Pitch to Voltage ConverterやKorg MS-03 Signal Processorといった '変換' でアナログシンセをモジュールでコントロール。そしてこのMS-03を内蔵したギターシンセ、Korg X-911 Guitar Synthesizerが1970年代後半に登場して 'フュージョン・ブーム' に対応するあらゆる楽器の後押しを約束しました。ここ日本では 'ウィンド・シンセサイザー' の第一人者として、EWIの源流に当たるComputone Lyriconを使用した村岡建さんの音作りが象徴的であり、このカウント・バッファローズで聴ける 'エフェクティヴ' なサックスからもかなりの 'シンセライク' な印象。そして、まだ 'エレクトリック・マイルス' の影響下で模索していたランディ・ブレッカー初期のアプローチは、そのままデイビスやドン・エリスとも違う 'アンプリファイ' なラッパのスタイルを提示する素養を垣間見せます。
そして夏本番に相応しい '熱帯夜' のお供として、トム・スコットやランディ・ブレッカーら 'ロック世代' のサックス奏者、ジョン・クレマーの幻想的なこちらをどーぞ。この浮遊する 'エコーな' ホーンの響きは夏バテ対策にバッチリ。クレマーにとってこの 'エコーたっぷり' なスタイルは1970年代を通してトレードマークとなり、そのまま現在の 'スムース・ジャズ' に到る源流としてグローバー・ワシントンJr、ケニーGと並び称される存在と言っていいでしょうね。
→Ride and Tie / Takeru Muraoka & Takao Uematsu
しかし '国産初' の管楽器用エフェクター、Ace Tone Multivoxが未だにeBayやReverb、ヤフオクに出てこないなあ・・。本当に当時発売していたのか?という疑念も湧き出しておりますが(苦笑)、まあ、定価39,000円の超絶 'ニッチ' な製品ですからね・・一体、いくつ売れたのやら。日野皓正さん1969年の傑作 'Hi-Nology' の内ジャケットでは使用中の写真がありますけど音源には入っていない模様。本作で共演するサックス奏者、村岡建さんも日野さんと一緒に同時期のイベントで使用していたらしいのですが、作品としては1971年の植松孝夫さんとの '2テナー' によるライヴ盤 'Ride and Tie' で全編、'アンプリファイ' なオクターヴ・トーンを堪能することが出来ます。実はコレ、Ace Tone Multivoxなのでは?と思っているのですが、取説での村岡さんの談によればヤマハから '電気サックス' 一式を購入したことが本盤制作のきっかけになったとのことで、ヤマハの海外事業部を介して手に入れた '海外製品' (Varitone ?Multi-Vider ?)を使用したと理解する方が自然かもしれません。ちなみに日野さんは、この時期の '日野ブーム' と共に大きく影響を受けた 'エレクトリック・マイルス' 及び '電気ラッパ' に対してこう述べております。
- エレクトリック・トランペットをマイルスが使い始めた当時はどう思いましたか?
"自然だったね。フレイズとか、あんまり吹いていることは変わってないなと思った。1970年ごろにニューヨークのハーレムのバーでマイルスのライヴを観たんだけど、そのときのメンバーはチック・コリアやアイアート・モレイラで、ドラムはジャック・ディジョネットだった。俺の弟(日野元彦)も一緒に観に行ってたんだけど、弟はディジョネットがすごいって彼に狂って、弟と "あれだよな!そうだよな!" ってことになって(笑)。それで電気トランペットを俺もやり始めたわけ。そのころ大阪万博で僕のバンドがああいうエレクトリックのスタイルで演奏したら、ヨーロッパ・ジャズ・オールスターズで来日中だったダニエル・ユメールに "日野はマイルスの真似しているだけじゃないか" って言われたことがあるんだけどね。"
もちろん、このような 'アンプリファイ' の新しいアプローチは当時の '若手' の専売特許ではなく、シャープス&フラッツの原信夫さんも同時期にSelmer Varitoneを試しております。チャールズ・ロイドの 'ヒッピー賛歌' ともいうべき大ヒット曲 'Forest Flower' に挑戦して、ネロ〜ンとした蒸し暑いテナートーンが時代の空気を代弁します。
→Nalbantov Electronics
→TAP Electronics Pick-up
→Electro-Harmonix HOG 2
この手の 'アンプリファイ' なサウンド・システムもすっかり旧態依然となりましたけど、しかし、ブルガリアのNalbantov ElectronicsやギリシャのTAP Electronicsでは未だ健在でございます。Nalbantov ElectronicsはBoss OC-2をベースにしたと思しき管楽器用オクターバーOC-2 eXtremeを製作。一方のTAP Electronicsではピックアップ本体にオクターバーを内蔵!いやあ、古のConn Multi-ViderやVox Ampliphonic Octavoiceに見る奏者の腰へ装着するスタイルから、わずか2オクターヴ下のトーンを付加する機能がここまで小さくなりました(笑)。特にギリシャのTAP Electronicsによる 'Octa' はオクターヴ、1バンドEQ、ヴォリュームの3つのパラメータを持った現代的なスタイルでして、USBによる90秒の急速充電により8時間ほどのパフォーマンスを可能とします。とにかく、こういう世界でも地味にいまのテクノロジーを導入して 'アップデート' しているのは個人的に嬉しいなあ。そして 'エレハモ' の 'ハーモニック・シンセ' ともいうべきHOG 2では10のハーモニー/オクターヴ・トーンを生成することが可能で、これで 'ひとりアンサンブル' もバッチリですヨ!
→C.G. Conn Multi-Vider
→C.G. Conn Model 914 Multi-Vider
まずは、スイス出身のサックス奏者にして 'マッド・サイエンティスト' でもあるブルーノ・スポエリが同じく同郷のラッパ吹き、ハンス・ケネルと共にConn Multi-Viderで 'アンプリファイ' した 'Jazz Rock Experience' からどーぞ。そのスポエリさんは同時期、日本の大阪万博でスイス館のためにThe Metronome Quintetとして来日、日本コロンビアでこの7インチ 'EXPO Blues' を吹き込んでおります。この、Multi-Viderのネロ〜ンとした電気サックスの音色がたまらない・・。
1950年代後半から活動するラスティ・ブライアントは、麻薬絡みでしばらく刑務所に服役した後、久しぶりのシャバの空気を吸ってビックリしたに違いありません。全ての価値観が引っくり返るようにあちこちで混乱していた1960年代後半は、そのままブライアントのアルト・サックスにも当時の '新兵器' を装着して、ジャズよりもR&B、ファンクだと言わんばかりに 'アンプリファイ' しながら街へ飛び出して踊ります!1990年代の 'アシッド・ジャズ' 再評価ではこの人のアルバムはどれも高濃度、高カロリーなコテコテ具合で本当に格好良かった。
→Hammond / Innovex Condor RSM
ジャズマンたちの 'アンプリファイ' には、当時のロック、ヒッピー世代を覆い尽くしていたサイケデリック、LSDがもたらす幻覚の誘惑がありました。'アンプリファイ' したサックスの第一人者、エディ・ハリスはGibson/MaestroのSound System for WoodwindsやEchoplexを駆使し、またギタリストのビリー・バトラーはベテランのテナーマン、セルダン・パウエルを 'アンプリファイ' でフィーチュアしながらワウワウ・ギターと共にスーツを脱ぎ捨てて 'サイケデリック・トレイン' へと乗り込みます。そしてこの分野のイノベイターとして君臨するエディ・ハリスは、元祖であるSelmer VaritoneからMaestro Woodwindsと逐一当時の '新製品' をチェックしながら新たな奏法で新境地を開拓しましたが、この1970年のライヴ盤 'Live At Newport' では '世界初のギターシンセ' として知られるHammondのInnovex Condor RSMを披露。まあ、一聴する限りはどれもネロ〜ンとしたオクターヴ・トーンなんですけど、ね。その他、ハリスはピックアップの付いたサックスのマウスピースをトランペットに装着して吹いたりと、もうやりたい放題(笑)。こういう人、正統的なジャズ史の中では無視されちゃうのが何とも残念なり・・。
→H&A.Selmer Inc. Varitone ①
→H&A.Selmer Inc. Varitone ②
そんな全てに蒸し暑〜いホーンの 'アンプリファイ' は、元祖 'ファンク男' のひとり、ナット・アダレイも動かします。それまで兄キャノンボール・アダレイの影に隠れるようにサポートしていたイメージのナットが心機一転、A&M傘下のCTIからリリースしたのがこの '仏像ジャズ'。いや、内容はそんな抹香臭いもんじゃありませんが、やはりサイケデリックな時代の空気を吸って自らのコルネットも 'アンプリファイ' しました。ここで登場するSelmer Varitoneは、一足先にクラーク・テリーがアルバム 'It's What's Happnin'' でアプローチしており、サックスの場合はマウスピースにピックアップを取り付けますが、トランペットやコルネットの場合はリードパイプ上部に穴を開けて取り付け、コントローラーは首からぶら下げるかたちとなります。まあ、効果的にはダークで丸っこい音色のコルネットが蒸し暑いオクターヴ下を付加して、さらにモゴモゴと抜けの悪いトーンになっているのですけど・・。そんな混迷の時代と共に 'You, Baby' は、ナットが 'サマー・オブ・ラヴ' の季節を謳歌した異色の一枚でもあります。
さて、そんなコルネットですけど当時、Voxの 'Ampliphonic' からもピックップを装着できるコルネットが発売されておりました。ちょうどベルの右横にピックアップ用の穴が開けられており、使用しない時はネジで閉じられているという仕様。この 'Ampliphonic' はVoxブランドのみならず同じ傘下のKingブランドとしても販売されており、実はこのコルネットも(たぶん)KingのOEMではないかと思われます。そのKingのロング・コルネットといえばナットが愛用するSuper 20、純銀ベルの 'Silver Sonic' をOlds No.3マウスピースで吹くというのが最も有名なスタイル。しかし、ちょうどナットが 'アンプリファイ' していた頃は、Selmer Varitoneを用いていたことからたぶんSelmerのコルネットだったんじゃないかな?と。いや、Selmerでコルネットというのはあまり聞かないのですが、上の動画はそんなVaritoneのコルネットを吹く貴重なもの。首からコントローラーをぶら下げて(2:39)、ピックアップはリードパイプの上に穴を開けて接合されております(不鮮明で見にくいですけど)。
世界最初の管楽器用 'アンプリファイ' システムであるSelmer Varitoneはナット・アダレイ、クラーク・テリーのほか、ソニー・スティットやエディ・ハリスらが一足早くアプローチしており、このSelmerブランドのほか、より管楽器の市場へと浸透すべく管楽器メーカーのBuesherブランドとしても販売されておりました。専用のコネクターを介して管楽器とアンプを直結、その可搬性や他社エフェクターとの連携の悪さから後発の同種製品(Conn、Maestro、Innovex)に比べて部が悪いものの、元祖として管楽器の 'アンプリファイ' を象徴する存在と言っていいでしょうね。1970年代にはMainstreamレーベルからアフロ色濃い作品をリリースするこのバディ・テリーも1960年代後半、すでにファンキーなR&B、ブーガルー一色となったPrestigeレーベルからその名もずばり 'Electric Soul !' で '感電' します。このネロ〜ンとした1オクターヴ下の 'デュエット' の蒸し暑い音色こそ電気サックスの醍醐味だ。
Selmer Varitoneということでもうひとつ。こちらはベルギーのプログレ・バンド、Mad Curry。おお、女性ヴォーカルのViona Westraを中心にVaritoneで '電化' したテナー・サックス、楽曲を一手に引き受けるDanny Rousseauのオルガンとベース、ドラムスで支えるというスタイルが素敵ですね。別にロック・バンドだからってギターをメインに持ってこなくたっていいんですヨ。'ロック=3ピース編成' ってのがひどく貧しい発想のように思えるのだけど、もう、一般的にはこのフォーマットから外れたらポップの法則で売れないと定義されちゃうんだろうなあ。わたしがプログレのバンドをイイなと思うのは、いわゆるギター、ベース、ドラムスという典型的ロックの '3ピース' にこだわらず、キーボードはもちろん管楽器、弦楽器、民俗楽器であろうが呼び込んで 'ロックしようぜ!' という間口の広さですね。言っちゃなんだがロックって排他的というか、勝手にギターがメインだと思い込んでませんか?たぶん、いまバンドやろうぜって集まってアコーディオンやクイーカ持ってやって来たらイヤがられると思う(苦笑)。しかし、そういうロックの曲をイメージできないなら、そういう楽曲を作ればイイだけのこと。ま、それがウケるかどーかは置いとくとして、作り手も聴き手もすでに出来上がったフォーマットの中で価値判断し、消費しているという現状がやっぱり寂しい・・。
→Mad Curry Web Site
1970年に真っ黒いジャケットのアルバム 'Mud Curry' を出し、後は数枚のシングルのみという謎のバンドなんですが、いま再評価みたいな流れはあるのだろうか?ちょっとジェファーソン・エアプレインがヨーロッパで 'プログレ' に感染しちゃった的 '二番煎じ' な感じはあるけれども、結局、こういう 'ごった煮' は奇を衒ったイロモノ・バンド以上の評価を得るのは難しいのかも。ちなみに上のリンク先はグループのHPのようで、彼らの活動の詳細と共に2006年に一度リユニオンしているようです。
→Vox / King Ampliphonic Pick-up
冷戦期、ベルリンの壁を越えて東ドイツから西側社会へやってきたロルフとヨアヒムのキューン兄弟。'クラリネットのコルトレーン' ともいうべき超絶技巧の粋を見せつけた1964年の傑作 'Soralius' に続き、68年から69年の 'サマー・オブ・ラヴ' の季節、思いっきりヒッピーとサイケデリックの退廃的自由に塗れた 'Mad Rockers' 改め 'Bloody Rockers' の2作目。ここでクラリネットに 'アンプリファイ' しているのは、たぶんVox / KingのAmpliphonic Octavoice Ⅰとワウペダルではないでしょうか。いやあ、当時のゴーゴー喫茶を彷彿とさせるサイケな香りが心地良い。お次は、エディ・ハリスと並んで 'アンプリファイ' なイノベイターのひとり、後にはウィンド・シンセサイザーの第一人者としてもその名を馳せるトム・スコット。まさにロック世代に登場したサックス奏者であり、コルトレーンを聴きながらR&Bからジミ・ヘンドリクス、ザ・バーズなども愛聴し、当時の 'バイショー' 的ジャズメンとは一線を画す存在と言ってよいですね。ヒッピー色全開なデビュー作 'The Honeysuckle Breeze' から全編、Conn Multi-Viderで 'アンプリファイ' したサックスによりジャズ・ロック世代との親和性を表明しておりました。同世代のブレッカー兄弟も述べていましたけど、やはりロックやR&Bは自分たちの世代に共通するアイデンティティとして、先輩世代のジャズメンが持っていた拒否感はまったく無かったそうです。そして、ウッディ・ハーマンやベニー・グッドマンのビッグバンドにも参加したトロンボーン奏者、アービー・グリーンの強力ジャズ・ファンク盤 'Green Power' は、ジャケット裏にもマウスピースにAmpliphonicのピックアップ装着して堂々登場。ちなみに、そんなVox / King Ampliphonicなんですが、腰に装着する木管楽器用のOctavoice Ⅰ、金管楽器用のOctavoice Ⅱと上級機のStereo Multi Voiceからアンプ、各種PA機器に到るまで幅広くラインナップしておりました。
→Oberheim Electronics Ring Modulator (Prototype)
→Maestro Ring Modulator RM-1A
→Maestro Ring Modulator RM-1B
さて、この手の 'アンプリファイ' に熱狂したのはジャズ奏者よりR&Bやプログレッシヴ・ロックの連中だったのですが、'本家' 以上のプログレっぽさという意味では、この完全に狂ってしまったようなザ・ビートルズの名曲カバーを披露するドン・エリスの方が 'らしい' ですね。ここでその狂った効果を最大限に発揮するリング・モジュレーターは、エリスがUCLA音楽大学の同窓であったトム・オーバーハイムと出会ったことで手に入れたもの。すでにこの時点でオクターヴ・トーンを出すMaestro Sound System for Woodwindsやテープ・エコーのEchoplexと共にステージで用いていたワケで、これはマイルス・デイビスよりかなり先駆的な存在だったことはもっと特筆してよいと思います。カリブ風味な 'Tears of Joy' では、そのリング・モジュレーターをオクターバーっぽく濁らせて 'オーボエ風' お惚け気味なトーンで鳴らしているのが面白い。
→Gibson / Maestro W-1 Sound System for Woodwinds
→Gibson / Maestro W-2 Sound System for Woodwinds
→Gibson / Maestro W-3 Sound System for Woodwinds
この手の管楽器用 'アンプリファイ' システムの中で最も売れたのがGibsonがMaestroのブランドで販売したSound System for Woodwindsでしょう。1967年のW1からバリトンのファズトーンを搭載したW2、専用のフットスイッチを取り付けたW3まで、今でもeBayを覗くとよく出品されております。エディ・ハリス1968年の 'Plugs Me In !' やチャールズ・ミンガスのグループで活躍したポール・ジェフリー1968年の 'Electrifying Sounds of Paul Jeffrey ' のジャケットで堂々登場、このカラフルなボタンと3本ラッパのMaestroマークが目印ですね。このW-1〜W-3各シリーズの差異ですが、初代のW-1では、W-2以降のオレンジ色のバリトン帯域を付加する '6VA - Contra - 16VA' スイッチではなく、'Jazz Tone' なる青いスイッチを装備。W-3はW-2に専用のフットスイッチを追加したモデルとなります。
→Acoustic Control Corporation
→Gibson / Maestro Rhythm 'n Sound for Guitar G-1
そしてもう、何度紹介したか分からないフランク・ザッパ1968年のスタジオ・ライヴ。しかし何度見てもホントにたまらない!やっぱ 'King Kong' はプログレ界3本の指に入る超名曲だなあ。イアン・アンダーウッドとバンク・ガードナー2人からなるMaestro Woodwindsを駆使したアンサンブルも怪しくて最高!ちなみにこの時期のザッパの足元は、VoxのワウペダルとAcoustic Control Corporationのヘッドアンプ、Model 260の上にGibson / Maestroのマルチ・エフェクター、Rhythm 'n Sound for Guitar G-1を使用していたんですねえ。多分Model 260内蔵のファズ含めて基本的な歪みを作り、G-1の 'チャカポコ' なリズムボックス(笑)はさすがに使わないと思いますが、本機のColor Tone 1〜3の 'フィルター' でトーンのニュアンスを変えるのがこの時期のザッパなのかな?後年のObierheim VCF-200やSystech Harmonic Energizerで求めるトーンの原点を見る思いですね。
→Korg X-911 Guitar Synthesizer
→Korg MS-03 Signal Processor
→EMS Pitch to Voltage Converter ①
→EMS Pitch to Voltage Converter ②
→Computone Lyricon
ここまではエフェクター黎明期の頃にアプローチしたオクターバーの技術から生成する原始的なものでしたが、1970年代に入るとシンセサイザーが本格化することでその減算、加算合成から電圧とピッチ、フィルタリングの音作りを 'アンプリファイ' な管楽器に応用する技術が登場します。Moogシンセサイザーで一般化した 'V/Oct' やKorgでお馴染み 'Hz/Oct' の電圧制御のトリガーは、そのままEMS Pitch to Voltage ConverterやKorg MS-03 Signal Processorといった '変換' でアナログシンセをモジュールでコントロール。そしてこのMS-03を内蔵したギターシンセ、Korg X-911 Guitar Synthesizerが1970年代後半に登場して 'フュージョン・ブーム' に対応するあらゆる楽器の後押しを約束しました。ここ日本では 'ウィンド・シンセサイザー' の第一人者として、EWIの源流に当たるComputone Lyriconを使用した村岡建さんの音作りが象徴的であり、このカウント・バッファローズで聴ける 'エフェクティヴ' なサックスからもかなりの 'シンセライク' な印象。そして、まだ 'エレクトリック・マイルス' の影響下で模索していたランディ・ブレッカー初期のアプローチは、そのままデイビスやドン・エリスとも違う 'アンプリファイ' なラッパのスタイルを提示する素養を垣間見せます。
そして夏本番に相応しい '熱帯夜' のお供として、トム・スコットやランディ・ブレッカーら 'ロック世代' のサックス奏者、ジョン・クレマーの幻想的なこちらをどーぞ。この浮遊する 'エコーな' ホーンの響きは夏バテ対策にバッチリ。クレマーにとってこの 'エコーたっぷり' なスタイルは1970年代を通してトレードマークとなり、そのまま現在の 'スムース・ジャズ' に到る源流としてグローバー・ワシントンJr、ケニーGと並び称される存在と言っていいでしょうね。
→Ride and Tie / Takeru Muraoka & Takao Uematsu
しかし '国産初' の管楽器用エフェクター、Ace Tone Multivoxが未だにeBayやReverb、ヤフオクに出てこないなあ・・。本当に当時発売していたのか?という疑念も湧き出しておりますが(苦笑)、まあ、定価39,000円の超絶 'ニッチ' な製品ですからね・・一体、いくつ売れたのやら。日野皓正さん1969年の傑作 'Hi-Nology' の内ジャケットでは使用中の写真がありますけど音源には入っていない模様。本作で共演するサックス奏者、村岡建さんも日野さんと一緒に同時期のイベントで使用していたらしいのですが、作品としては1971年の植松孝夫さんとの '2テナー' によるライヴ盤 'Ride and Tie' で全編、'アンプリファイ' なオクターヴ・トーンを堪能することが出来ます。実はコレ、Ace Tone Multivoxなのでは?と思っているのですが、取説での村岡さんの談によればヤマハから '電気サックス' 一式を購入したことが本盤制作のきっかけになったとのことで、ヤマハの海外事業部を介して手に入れた '海外製品' (Varitone ?Multi-Vider ?)を使用したと理解する方が自然かもしれません。ちなみに日野さんは、この時期の '日野ブーム' と共に大きく影響を受けた 'エレクトリック・マイルス' 及び '電気ラッパ' に対してこう述べております。
- エレクトリック・トランペットをマイルスが使い始めた当時はどう思いましたか?
"自然だったね。フレイズとか、あんまり吹いていることは変わってないなと思った。1970年ごろにニューヨークのハーレムのバーでマイルスのライヴを観たんだけど、そのときのメンバーはチック・コリアやアイアート・モレイラで、ドラムはジャック・ディジョネットだった。俺の弟(日野元彦)も一緒に観に行ってたんだけど、弟はディジョネットがすごいって彼に狂って、弟と "あれだよな!そうだよな!" ってことになって(笑)。それで電気トランペットを俺もやり始めたわけ。そのころ大阪万博で僕のバンドがああいうエレクトリックのスタイルで演奏したら、ヨーロッパ・ジャズ・オールスターズで来日中だったダニエル・ユメールに "日野はマイルスの真似しているだけじゃないか" って言われたことがあるんだけどね。"
もちろん、このような 'アンプリファイ' の新しいアプローチは当時の '若手' の専売特許ではなく、シャープス&フラッツの原信夫さんも同時期にSelmer Varitoneを試しております。チャールズ・ロイドの 'ヒッピー賛歌' ともいうべき大ヒット曲 'Forest Flower' に挑戦して、ネロ〜ンとした蒸し暑いテナートーンが時代の空気を代弁します。
→Nalbantov Electronics
→TAP Electronics Pick-up
→Electro-Harmonix HOG 2
この手の 'アンプリファイ' なサウンド・システムもすっかり旧態依然となりましたけど、しかし、ブルガリアのNalbantov ElectronicsやギリシャのTAP Electronicsでは未だ健在でございます。Nalbantov ElectronicsはBoss OC-2をベースにしたと思しき管楽器用オクターバーOC-2 eXtremeを製作。一方のTAP Electronicsではピックアップ本体にオクターバーを内蔵!いやあ、古のConn Multi-ViderやVox Ampliphonic Octavoiceに見る奏者の腰へ装着するスタイルから、わずか2オクターヴ下のトーンを付加する機能がここまで小さくなりました(笑)。特にギリシャのTAP Electronicsによる 'Octa' はオクターヴ、1バンドEQ、ヴォリュームの3つのパラメータを持った現代的なスタイルでして、USBによる90秒の急速充電により8時間ほどのパフォーマンスを可能とします。とにかく、こういう世界でも地味にいまのテクノロジーを導入して 'アップデート' しているのは個人的に嬉しいなあ。そして 'エレハモ' の 'ハーモニック・シンセ' ともいうべきHOG 2では10のハーモニー/オクターヴ・トーンを生成することが可能で、これで 'ひとりアンサンブル' もバッチリですヨ!
2018年7月2日月曜日
身軽な 'アンプリファイ' 入門
管楽器奏者って身軽を好む人が多い気がする。楽器ケース小脇に抱えてサッとあちこち移動できるフットワークの良さというか、ギタリストがギターケースやエフェクターボード、人によっては 'MYアンプ' (ヘッドアンプだったりコンボだったり)まで持ち込む強者がいるのとは真逆の人種。つまり、こういうところから管楽器の 'アンプリファイ' に対する認識もその効果の是非のほか、単にメンドくさそうっていうイメージが先行してアプローチしない人が多いんじゃないかと思うのですヨ。
じゃ、身軽な 'アンプリファイ' って何ぞやという話になるのだけど正直、管楽器においてそんな大量のエフェクターって必要ないのです。せいぜいワウとオクターバー(ピッチ・シフター)、空間系くらいで十分だし、これらをマルチ・エフェクターひとつで賄ってしまえば、ほぼマイクとエフェクツだけの便利なセッティングとなります。実際のステージではDI含めてPAの扱いとなり、ほぼヴォーカルと同じ環境でモニターすることとなります。また、移動でよく飛行機を利用する場合などでは、テロ対策により手荷物制限が厳しくなって小さいセットを組まなければならないという状況も考えねばなりません(わたしには関係ないけど・・笑)。とりあえず、ここではそんな身軽かつ '最低限' な道具を中心に提案してみたいと思います。
→K&K Sound Dual Channel Pro Preamp ①
→K&K Sound Dual Channel Pro Preamp ②
→Sennheiser Evolution e608
→Sennheiser Microphone
→Piezo Barrel on eBay
→Piezo Barrel Wind Instrument Pickups
わたしにとって2つのピックアップ・マイク使用による 'アンプリファイ' は譲れないのですが、この英国の 'エレアコ' な工房、K&K Soundから2つのピックアップをブレンドするミキサー機能の付いたプリアンプは素晴らしい。この手の分野は 'エレアコ' の世界では何年も前からいろいろと探求されており、そのノウハウを同じ 'アコースティック' 楽器である管楽器に応用しないのは勿体ない。ちなみに本機は2つの入力をそのままミックスする 'Dual Channel Pro Preamp' のほか、姉妹機としてTRSフォンひとつで 'ステレオ入力' できる 'Dual Channel Pro 'ST' Preamp' があり(上掲動画下のもの)、これらはよく似ているので購入の際はご注意下さいませ。蓋を開けるとその基板上にはGain、Treble、Mid、Bassの3バンドEQを2チャンネル分備えており、ケース内にベルクロで貼り付けてあるマイナス・ドライバーで調整できるのは便利。そして、2つのピックアップ・マイクの内、マイク側のXLR端子はClassic Proの600Ωから50kΩに変換する 'インピーダンス・トランスフォーマー' のZXP212Tでフォンにして入力します。
→Classic Pro ZXP212T
→Rycote XLR Holder Mk.Ⅱ ①
→Rycote XLR Holder Mk.Ⅱ ②
さて、K&K Sound Dual Channel Pro Preampは奏者の腰に装着できることから、そのプリアンプと共にXLR端子をうまくまとめるべく 'プチDIY' してみました。XLR端子を保持できるホルダーを用いてフォン側も固定すべくホルダー側の穴をガリガリとヤスリで拡張、瞬間接着剤とホットボンドで固定してみたのが上の写真。XLR端子とフォンの間にネジで固定された金具が見えますけど、これはプリアンプに装着した際にグルッとこのホルダーが回ってしまわないようにするストッパーとして入れたもの。'豆カン' と呼ばれる額縁を引っ掛けるフックをL字に開きドリルで穴を開けてこのホルダーに装着しました。
そしてプリアンプに装着してみたのがこちらの完成形。このままプリアンプの蓋を開けて電池交換や基板上のEQなどを操作することができます。ちなみにK&K Soundのプリアンプは出力にフォンを 'ジャックイン' することで電源が入る仕様です。また、ここでワイヤレス・システムと組み合わせることでさらに煩雑なケーブル類から解放されると思います。あ、そうそう、ここでのマイクはダイナミック・マイクのことであり、電源供給の必要なコンデンサー・マイクの場合だと別途電源を用意するなど、少々煩雑となりますのであしからず。
→Headway Music Audio EDB-2
→Headway Music Audio EDB-2 Review
本当はコイツを使いたいんですけどねえ・・高い!'エレアコ' のピックアップ・マイクのミックスにおいて、'ピエゾ + マグ' とか 'ピエゾ + 'コンデンサー' とか、いかにしてPAの環境で 'アコースティック' の鳴りを再現できるのかの奥深い世界。このEDB-2こそまさに至れり尽くせりの決定版というか、細かな内容は動画を見て頂くとして、フォンとXLRの2チャンネル仕様でEQをch.1、ch.2で個別及び同時使用の選択、2つのピックアップの '位相差' を揃えるフェイズ・スイッチと突発的なフィードバックに威力を発揮するNotch Filter、DIとは別にフォンのLine出力も備えるなど、おお、高品質かつ '痒いところに手の届く' 精密な作りですね。個別にミキサーとマイクプリ、EQをあれこれ中途半端なヤツ買って散財するのなら、思い切ってコイツを買ってしまうというのもアリかも(しかし何度も言うが高い!)。
→Sennheiser Evolution e608
→Sennheiser Microphone
→SD Systems LDM94C
ちなみにそのマウスピース・ピックアップとミックスするマイクはこちら、Sennheiserの珍しいグーズネック式ダイナミック・マイクEvolution e608。サックスであればSD SystemsのLDM94も良いでしょうね。通常、管楽器の '生音' が持つアンビエンスを余すところなく収音してくれるのはコンデンサー・マイクに軍配が上がりますが、エフェクターを積極的に使う場合ではダイナミック・マイクの方がガツッとしたエフェクターの 'ノリやすさ'、帯域の限定的な収音に対するハウリング・マージンの確保の点で有利なことが多いのです。
→Zoom MS-50G Multi Stomp for Guitar
→Zoom MS-70CDR Multi Stomp
さあ、ここからはエフェクツを物色してみたいのですが、価格と機能、サイズにおいてZoomの 'Multi Stomp' と呼ばれるMS-50Gとモジュレーション/空間系に特化したMS-70CDRはいかがでしょうか。この2機種のプリセットは現在もZoomから 'ファームウェア・アップデート' により追加、更新されているのですが、やはりMS-50Gは 'for Guitar' とあって 'アンプ・モデリング' のシミュレータが多い印象ですねえ。ここら辺は管楽器だと単に潰れてノイジーなサウンドになってしまうので注意が必要ですが、それでもフィルター系でランダム・アルペジエイターやギターシンセ風のエグい効果などもあってかなり楽しめますヨ。
また、MS-70CDRの煌びやかさはほぼこれ一台で 'アンビエンス' の設定が賄っちゃうくらい高品質。去年にV 2.0へアップデートされ、従来のモジュレーション、空間系のほか、ダイナミクス系含めてさらに51のプリセットが追加されてトータル137種ものエフェクツが使用できます(選ぶだけで大変・・)。そしてMS-50G、MS-70CDR共に最大6つまでのエフェクトを同時使用することが可能なのですが、当然各プリセットのパラメータも細かく用意されているのでこの小さなLED相手に格闘することは覚悟して下さいませ。
→Mak Crazy Sound Technology Guitar Fairy
→Mak Crazy Sound Technology Temporal Time Machine
一方、そんな膨大なプリセットも要らなければプログラムするのもメンドくさい、いちいちパラメータの階層を開いて・・というマルチ特有の '使いにくさ' が苦手な人は、むしろ、こちらの単純かつ高品質なモジュレーション系マルチで十分なんじゃないでしょうか。実際、ギターと違ってソロとバッキングを管楽器で使い分ける場面はほぼ無いワケでして、このクリミア自治共和国製Guitar Fairyの6つのプリセット(Chorus、Flanger、Phaser、Tremolo、Vibrato、Envelope Filter)で切り替えて、各々の設定に従いReverb、Speed、Depthを調整するという至極簡単な本機の方が煩わしくなくて良いと思いますヨ。個人的に6つのプリセットに対してReverbだけ個別に調整、ミックスできるのは便利な機能。もちろん6つのプリセットの内のひとつしか使用できないので不自由と感じるかもしれませんが、複数のモジュレーションを同時にかける場面はほぼ無いので問題ないでしょう。
→ZCat Pedals Q-Mod
→ZCat Pedals Poly Octaver 2
こちらも旧ロシア圏のラトビア共和国からQ-ModとPoly Octaver 2。ここの製品も日本には早くから入ってきており、モジュレーション、空間系に特化したペダルを少量生産している稀有な工房です。Q-Modはその名の如くChorus、Flanger、Phaser、Tremoloの4種切り替えとリヴァーブを個別に付加できるもので、フットスイッチと電源抜き差しでトゥルーバイパスとバッファードバイパスに切り替えられるほか、リヴァーブを常時有効にするモードを選ぶことで、バイパス時でもリヴァーブだけはかかった状態にできるというかなり凝った仕様となっております。一方のPoly Octaver 2はChorusとReverbに上下1オクターヴのオクターバーをミックスできるという変わり種。
→Electro-Harmonix The Worm
こんなお手軽な '全部載せ' はエフェクター界の老舗である 'エレハモ' の得意とするところであり、Phaser、Tremolo、Vibrato、Wahの4種を搭載し、さらにワウはAutoとManualの2モード切り替えでAutoによる 'モジュレーション・ワウ'、Manualでは外部エクスプレッション・ペダルを繋いでワウペダルのように使うことが出来るThe Wormがお得。ここではそのワウ・コントロールをエクスプレッション 'ペダル' ならぬ 'ツマミ' で操作しておりますが、あえてツイストのようにツマ先でグリグリさせるのも面白いかも。下の動画はその '新旧比較' ですけどスペースさえ気にしなければ、やはり 'エレハモ' はこの弁当箱サイズの方がテンション上がりますねえ(この旧モデルでエクスプレッション・ペダルは使えません)。
→Hotone
→Hotone Tape Eko
→Hotone Xtomp mini - DSP Processing Pedal
→Hotone Xtomp & Xtomp mini Review
ここまで紹介したものはモジュレーションに特化したものが多いため、やはり個別にディレイやリヴァーブを用意しておきたいのは確か。そこで最近メキメキとコストダウンを図りながらその品質を上げている中国製エフェクターをチェック。特に 'Maid in Hong Kong' としていま一番元気の良いHotoneの '手のひらサイズ' なディレイ、Tape Ekoを追加で入れてみましょう。と思っていたら、早速サックスでHotoneやZoom MS-50Gによるエフェクター試奏の動画を発見。あまりあれこれ追加しちゃうとこの項本来の趣旨を離れちゃうけど(汗)、やっぱりこの小さなサイズだと色々試したくなりますよね。また、HotoneはZoomに負けず劣らずのマルチ・エフェクツ、Xtomp、Xtomp miniなどがあります。これらはスマホを介して自由にアルゴリズムを入れ替えられるDSPプロセッシング・ペダルなのですが、個人的にZoom含めてこの手の 'ファームアップ' ものはメーカーの技術と供給次第というか、初期の不安定なソフト、新たなライバル機や状況の変化でそのモデリング技術が一気に古臭くなり、パタッと製品開発を止めちゃう危険性があること。とりあえず便利かつ多機能、コスト・パフォーマンス最高なデジタルの '新製品' が出た時は慌てて飛びつかないで下さいませ(今のところZoomは安定してますけど)。
→Benidub Digital Echo
個人的にはディレイも演奏の一部と考えるのであれば、マルチ・エフェクターで '省エネ' をした分、小型のライン・ミキサーのセンド・リターンにBenidub Digital Echoのようなダビーなディレイを繋いで操作するってのも面白いかも。普通のディレイだと精々タップテンポかフィードバックを操るくらいしか出来ませんが、このBenidubのダブに特化したヤツならさらに複雑でリズミックな '空間生成' が可能。もっと凝ったことをやりたければディレイの前にループ・サンプラーを繋いで・・とすでに身軽ではなくなってきてますけど(汗)、しかしラッパ吹きならせっかく空いている左手を使わないのは勿体無い!
→The Montreal Assembly 856 for Zellersasn
→The Montreal Assembly
そんなついつい追加したくなるループ・サンプラーですが、この 'グリッチ' に特化したカナダの製品、The Montreal Assemblyの856 for Zellersasnという謎めいたヤツは面白そうです。しかし、今やカナダは多くの工房が集まるエフェクター界の一大聖地と化しており、特にアナログとデジタルの高品質でハイブリッドな 'もの作り' はこの業界を盛り上げる存在にまで成長しました。本機はすでに2016年に登場し、最大20秒のループをランダマイズしてエンヴェロープ、テンポ、ピッチを操作しながら 'グリッチ' を生成するもので、Red Panda Particleのように破綻せず音楽的 'エラー' として吐き出せるのが特徴。またMIDI同期やユーザー・プリセットにも対応しているところは、Hologram ElectronicsのDream SequenceやInfinite Jets Resynthesizerのライバル機として比較してみたいですね。
→Electrograve Search and Destroy SAD-1
→Electrograve
ここでもひとつ '変わり種' を追加。名古屋でガジェット系シンセなどを製作するElectrograveから4チャンネル出力を持つパンニング・マシン、Search and Destroy SAD-1。ステレオ音源はもちろん、ギターからの入力をジョイスティックでグリグリとパンニングさせたり、Autoスイッチを入れてトレモロのテンポをSlowからFast、NormalからRandomに切り替えることで 'グリッチ風' の効果まで幅広く対応します。4つの出力はそれぞれ個別に切り替えることが可能で、50% Dutyスイッチを入れることでモノラルでも十分な空間変調を堪能することが出来ます。実はパンニング機能だけでここまで遊べるものって意外に無いんですよね。
→Death by Audio Echo Master ①
→Death by Audio Echo Master ②
→Electro-Harmonix Oceans 11 Reverb
いや、もっと簡単にマイクとディレイだけでいいよ、たまに気が向いた時だけワウやオクターバーもインサートできれば、という 'ものぐさ' な管楽器奏者には、奇才オリヴァー・アッカーマンが主宰するニューヨークのガレージ工房、Death by AudioのEcho Masterはいかがでしょうか。いわゆるマイク(ファンタム電源不可)、DI、インサート付きのプリアンプでRadial EngineeringのVoco-Locoなんかと似た構成ではあるのですが、すでにディレイが搭載されているというのが '売り'。30msec〜620msecまでのディレイタイムとフィードバック、原音とディレイのミックスするツマミという基本的な構成を備えております。もちろん、ここにワウやオクターバーなどを 'インサート' することも出来るのですが、結構ハウリやすそうな感じ(ノイズ系ブランドなのでそこが狙いでもある)なのでEQを 'インサート' するのが現実的かもしれませんね。また、この内蔵ディレイを補うように 'エレハモ' の新製品リヴァーブを加えてみるのも面白いかも。最近のリヴァーブは従来のスプリング、プレート、ルームやホールといった 'アンビエンス' の環境をモデリングしたものだけではなく、'Shimmer' に代表されるエフェクティヴな音作りに対応した幅広いものへと変わりました。
⚫︎Hall
⚫︎Spring
⚫︎Plate
⚫︎Revrs - Reverse Reverb
⚫︎Echo - Reverb plus Delay
⚫︎Trem - Reverb plus Tremolo
⚫︎Mod - Modulated Reverb
⚫︎Dyna - Swell, Gate and Duck
⚫︎Auto - INF - Auto-Infinite Reverb
⚫︎Shim - Shimmer - Octave-Shifted Reverb
⚫︎Poly - Polyphonic Reverb
その名の如く11種のリヴァーブ・モードを搭載、堪能することができます。また3つのツマミにはそれぞれ '隠しパラメータ' があり、これと基板上のTailsスイッチ、外部からのモメンタリー・スイッチを繋ぐことでさらに細かな音作りに対応しているところは今の時代ならではですねえ。
→Bananana Effects
→Bananana Effects Abracadabra
→Bananana Effects Matryoshka
このような多目的リヴァーブとして 'グリッチ' な音作りにまでカバーしているのがこちら、関西発で現在は東京に拠点を移して活動するBananana EffectsのAbracadabra。エグいベースシンセのMatryoshka共々いよいよ 'Pedals And Effects' にも堂々登場しておりますが、本機の備える8つのモードは以下の通り。
⚫︎Exotic Oct Up
残響音にフィルタリングされた倍音を加え、様々な効果音を生成
⚫︎Exotic 5th
残響音に5度上のフィルタリングされた倍音を加え、様々な効果音を生成
⚫︎Oct Up + Vib
倍音の加わった残響音のピッチを不安定に揺らし、サイデリックな音色を再現
⚫︎Shimmer + 5 th + Vib
さらに多くの倍音が加わった残響音のピッチを不安定に揺らし、よりサイケデリックな音色を再現
⚫︎Inf + Cho + Oct Up
エフェクトがオンになった瞬間の音を保持したまま、コーラス、ピッチシフトを加えることが可能
⚫︎Inf + Cho + Oct Dn
エフェクトがオンになった瞬間の音を保持したまま、コーラス、ピッチシフトを加えることが可能
⚫︎Error Delay
ディレイ、倍速リヴァース・ディレイの二つを交互に出力し、ランダムグリッチしたような残響音を作成
⚫︎SH + Noise
2種類の異なるエレクトロニカノイズを混合した、何だかセンチメンタルなムードを作る残響音
すっかり黄色いブランド・イメージも定着、小サイズにして安価で '飛び道具' な効果を試せるのは嬉しい限り。特に、従来の 'アンビエンス' という枠に収まらない 'エフェクティヴ' なリヴァーブは管楽器奏者も積極的にアプローチすべし。
→Elta Music Devices Console (White)
→Elta Music Devices Console (Black)
わたしは個人的に気になっていたロシアの新たな才能、Elta Music DevicesのConsoleをチョイス。コンパクトのマルチ・エフェクツながらSDカードで自社の機能をあれこれ入れ替えて、左手でジョイ・スティックをグリグリ動かすデザインにまとめ上げるなんて素敵過ぎる!その10個のSDカード・カートリッジの中身は以下の通り。
⚫︎Cathedral: Reverb and Space Effects
⚫︎Magic: Pitched Delays
⚫︎Time: Classic Mod Delays
⚫︎Vibrotrem: Modulation Effects
⚫︎Filter: Filter and Wah
⚫︎Vibe: Rotary Phase Mods
⚫︎Pitch Shifter: Octave and Pitch
⚫︎Infinity: Big Ambient Effects
⚫︎String Ringer: Audio Rate Modulation
⚫︎Synthex-1: Bass Synth
'モジュレーション/空間系' 中心のメニューですけど、今後いろいろなヴァリエーションが増える予定などあるのでしょうか?こちらもGuitar Fairy同様あくまでカートリッジを入れ替えるのみの同時使用出来ないものなのですが(ただし、カートリッジ入れ替え時に直前のプリセットは記憶する)、しかしこれで全然問題なく使えちゃいますね。ちなみに、筐体に描かれたデザインが 'マレーヴィチ' 風ロシア・アヴァンギャルドな感じで格好良し!
→Boss VE-20 Vocal Processor
→Boss VE-5 Vocal Performer
もちろん、このマウスピース・ピックアップは使わずグーズネック式マイクだけで 'アンプリファイ' したい人はBossのVE-20 Vocal Processorが一番手っ取り早く、コンデンサー・マイクでのお手軽セッティングとしても本機はオススメです。マイク入力とDI出力を備えたマルチ・エフェクツであり、オクターヴからハーモニー、モジュレーション、ディレイにリヴァーブ、ループ・サンプラーまで満載の便利な一品。というか、管楽器の 'アンプリファイ' 人口において本機のユーザーが一番多いんじゃないでしょうか?(Youtubeの動画でもよく見かけます)。そしてもっとお手軽な廉価版として用意されたVE-5 Vocal Performer。流石にVE-20やZoomのマルチと比較するとプリセット的に見劣りしますけど、サイズ的にはほぼポケットに入っちゃいますね。工夫して楽器に装着してみるというのも面白いかも。
→Neotenic Sound Magical Force ②
→Radial Engineering Pro DI / D2
さて、わたしの場合はこんな感じとなりました。やはりラッパの 'アンプリファイ' における 'クリーン・トーン' としてなくてはならないNeotenic Sound Magical Forceは必須なのですが、その他はElta Music Devices ConsoleとRadial EnigneeringのパッシヴDI、Pro DIのみのシンプルなセッティング。しかし、Magical Forceが無いと物足りなくなってしまうくらいコレは本当に重要なアイテム。意外に中古で出回る率が高いのは本機の機能を理解していないか、もしくは体感する前に手放しちゃうユーザーが多いということでしょうか(残念)。管楽器の 'アンプリファイ' でアンサンブル中どうにも音が抜けてこない、貧弱な 'クリーン・トーン' に不満のある方は是非とも手に取って頂きたい逸品でございます。ちなみにK&KのプリアンプからMagical Forceの間をワイヤレス・システムに組み込み使用すれば、さらに快適な 'ケーブルレス' の環境で自由に動き回れます。
→HornFX
→Zorg Effects Blow !
→Zorg Effects
ここで、話はガラッと変わって現在唯一の 'アンプリファイ' な管楽器サイト、HornFXがいよいよ専門の動画チャンネルを始めましたヨ!ちょっと前に登場した 'Effects for The Horn Player' やお馴染み 'Pedals And Effects' を始めとして現在、数多くのYoutuberによるエフェクター・レビュー動画が溢れておりますが、ギター人口の頭打ちと相対化しているのか、こんな 'ニッチな' 層のための 'お助け' 動画が登場したのだから面白い時代になったものです。第一回目らしくマイクからアンプ、特にエフェクツ使用のためのインピーダンスの説明などもしっかり述べているようで、これからこの手の音作りにアプローチしたい奏者にとっては嬉しいのではないでしょうか?(英語なんでほとんど理解してませんが・・)。そんなニッチ過ぎる管楽器の 'アンプリファイ' は、Youtubeのおかげで伝播したとはいえまだまだ層が薄いのは悩みですが、フランスの工房、Zorg Effectsが手がける 'インサート付き' プリアンプ、Blow !が新登場!従来のAudio-Technica VP-01 Slick Fly、Radial Engineering Voco-Loco、Eventide Mixing Linkに続いてこのシーンを盛り上げて頂きたいですね。
じゃ、身軽な 'アンプリファイ' って何ぞやという話になるのだけど正直、管楽器においてそんな大量のエフェクターって必要ないのです。せいぜいワウとオクターバー(ピッチ・シフター)、空間系くらいで十分だし、これらをマルチ・エフェクターひとつで賄ってしまえば、ほぼマイクとエフェクツだけの便利なセッティングとなります。実際のステージではDI含めてPAの扱いとなり、ほぼヴォーカルと同じ環境でモニターすることとなります。また、移動でよく飛行機を利用する場合などでは、テロ対策により手荷物制限が厳しくなって小さいセットを組まなければならないという状況も考えねばなりません(わたしには関係ないけど・・笑)。とりあえず、ここではそんな身軽かつ '最低限' な道具を中心に提案してみたいと思います。
→K&K Sound Dual Channel Pro Preamp ①
→K&K Sound Dual Channel Pro Preamp ②
→Sennheiser Evolution e608
→Sennheiser Microphone
→Piezo Barrel on eBay
→Piezo Barrel Wind Instrument Pickups
わたしにとって2つのピックアップ・マイク使用による 'アンプリファイ' は譲れないのですが、この英国の 'エレアコ' な工房、K&K Soundから2つのピックアップをブレンドするミキサー機能の付いたプリアンプは素晴らしい。この手の分野は 'エレアコ' の世界では何年も前からいろいろと探求されており、そのノウハウを同じ 'アコースティック' 楽器である管楽器に応用しないのは勿体ない。ちなみに本機は2つの入力をそのままミックスする 'Dual Channel Pro Preamp' のほか、姉妹機としてTRSフォンひとつで 'ステレオ入力' できる 'Dual Channel Pro 'ST' Preamp' があり(上掲動画下のもの)、これらはよく似ているので購入の際はご注意下さいませ。蓋を開けるとその基板上にはGain、Treble、Mid、Bassの3バンドEQを2チャンネル分備えており、ケース内にベルクロで貼り付けてあるマイナス・ドライバーで調整できるのは便利。そして、2つのピックアップ・マイクの内、マイク側のXLR端子はClassic Proの600Ωから50kΩに変換する 'インピーダンス・トランスフォーマー' のZXP212Tでフォンにして入力します。
→Classic Pro ZXP212T
→Rycote XLR Holder Mk.Ⅱ ①
→Rycote XLR Holder Mk.Ⅱ ②
さて、K&K Sound Dual Channel Pro Preampは奏者の腰に装着できることから、そのプリアンプと共にXLR端子をうまくまとめるべく 'プチDIY' してみました。XLR端子を保持できるホルダーを用いてフォン側も固定すべくホルダー側の穴をガリガリとヤスリで拡張、瞬間接着剤とホットボンドで固定してみたのが上の写真。XLR端子とフォンの間にネジで固定された金具が見えますけど、これはプリアンプに装着した際にグルッとこのホルダーが回ってしまわないようにするストッパーとして入れたもの。'豆カン' と呼ばれる額縁を引っ掛けるフックをL字に開きドリルで穴を開けてこのホルダーに装着しました。
そしてプリアンプに装着してみたのがこちらの完成形。このままプリアンプの蓋を開けて電池交換や基板上のEQなどを操作することができます。ちなみにK&K Soundのプリアンプは出力にフォンを 'ジャックイン' することで電源が入る仕様です。また、ここでワイヤレス・システムと組み合わせることでさらに煩雑なケーブル類から解放されると思います。あ、そうそう、ここでのマイクはダイナミック・マイクのことであり、電源供給の必要なコンデンサー・マイクの場合だと別途電源を用意するなど、少々煩雑となりますのであしからず。
→Headway Music Audio EDB-2
→Headway Music Audio EDB-2 Review
本当はコイツを使いたいんですけどねえ・・高い!'エレアコ' のピックアップ・マイクのミックスにおいて、'ピエゾ + マグ' とか 'ピエゾ + 'コンデンサー' とか、いかにしてPAの環境で 'アコースティック' の鳴りを再現できるのかの奥深い世界。このEDB-2こそまさに至れり尽くせりの決定版というか、細かな内容は動画を見て頂くとして、フォンとXLRの2チャンネル仕様でEQをch.1、ch.2で個別及び同時使用の選択、2つのピックアップの '位相差' を揃えるフェイズ・スイッチと突発的なフィードバックに威力を発揮するNotch Filter、DIとは別にフォンのLine出力も備えるなど、おお、高品質かつ '痒いところに手の届く' 精密な作りですね。個別にミキサーとマイクプリ、EQをあれこれ中途半端なヤツ買って散財するのなら、思い切ってコイツを買ってしまうというのもアリかも(しかし何度も言うが高い!)。
→Sennheiser Evolution e608
→Sennheiser Microphone
→SD Systems LDM94C
ちなみにそのマウスピース・ピックアップとミックスするマイクはこちら、Sennheiserの珍しいグーズネック式ダイナミック・マイクEvolution e608。サックスであればSD SystemsのLDM94も良いでしょうね。通常、管楽器の '生音' が持つアンビエンスを余すところなく収音してくれるのはコンデンサー・マイクに軍配が上がりますが、エフェクターを積極的に使う場合ではダイナミック・マイクの方がガツッとしたエフェクターの 'ノリやすさ'、帯域の限定的な収音に対するハウリング・マージンの確保の点で有利なことが多いのです。
→Zoom MS-50G Multi Stomp for Guitar
→Zoom MS-70CDR Multi Stomp
さあ、ここからはエフェクツを物色してみたいのですが、価格と機能、サイズにおいてZoomの 'Multi Stomp' と呼ばれるMS-50Gとモジュレーション/空間系に特化したMS-70CDRはいかがでしょうか。この2機種のプリセットは現在もZoomから 'ファームウェア・アップデート' により追加、更新されているのですが、やはりMS-50Gは 'for Guitar' とあって 'アンプ・モデリング' のシミュレータが多い印象ですねえ。ここら辺は管楽器だと単に潰れてノイジーなサウンドになってしまうので注意が必要ですが、それでもフィルター系でランダム・アルペジエイターやギターシンセ風のエグい効果などもあってかなり楽しめますヨ。
また、MS-70CDRの煌びやかさはほぼこれ一台で 'アンビエンス' の設定が賄っちゃうくらい高品質。去年にV 2.0へアップデートされ、従来のモジュレーション、空間系のほか、ダイナミクス系含めてさらに51のプリセットが追加されてトータル137種ものエフェクツが使用できます(選ぶだけで大変・・)。そしてMS-50G、MS-70CDR共に最大6つまでのエフェクトを同時使用することが可能なのですが、当然各プリセットのパラメータも細かく用意されているのでこの小さなLED相手に格闘することは覚悟して下さいませ。
→Mak Crazy Sound Technology Guitar Fairy
→Mak Crazy Sound Technology Temporal Time Machine
一方、そんな膨大なプリセットも要らなければプログラムするのもメンドくさい、いちいちパラメータの階層を開いて・・というマルチ特有の '使いにくさ' が苦手な人は、むしろ、こちらの単純かつ高品質なモジュレーション系マルチで十分なんじゃないでしょうか。実際、ギターと違ってソロとバッキングを管楽器で使い分ける場面はほぼ無いワケでして、このクリミア自治共和国製Guitar Fairyの6つのプリセット(Chorus、Flanger、Phaser、Tremolo、Vibrato、Envelope Filter)で切り替えて、各々の設定に従いReverb、Speed、Depthを調整するという至極簡単な本機の方が煩わしくなくて良いと思いますヨ。個人的に6つのプリセットに対してReverbだけ個別に調整、ミックスできるのは便利な機能。もちろん6つのプリセットの内のひとつしか使用できないので不自由と感じるかもしれませんが、複数のモジュレーションを同時にかける場面はほぼ無いので問題ないでしょう。
→ZCat Pedals Q-Mod
→ZCat Pedals Poly Octaver 2
こちらも旧ロシア圏のラトビア共和国からQ-ModとPoly Octaver 2。ここの製品も日本には早くから入ってきており、モジュレーション、空間系に特化したペダルを少量生産している稀有な工房です。Q-Modはその名の如くChorus、Flanger、Phaser、Tremoloの4種切り替えとリヴァーブを個別に付加できるもので、フットスイッチと電源抜き差しでトゥルーバイパスとバッファードバイパスに切り替えられるほか、リヴァーブを常時有効にするモードを選ぶことで、バイパス時でもリヴァーブだけはかかった状態にできるというかなり凝った仕様となっております。一方のPoly Octaver 2はChorusとReverbに上下1オクターヴのオクターバーをミックスできるという変わり種。
→Electro-Harmonix The Worm
こんなお手軽な '全部載せ' はエフェクター界の老舗である 'エレハモ' の得意とするところであり、Phaser、Tremolo、Vibrato、Wahの4種を搭載し、さらにワウはAutoとManualの2モード切り替えでAutoによる 'モジュレーション・ワウ'、Manualでは外部エクスプレッション・ペダルを繋いでワウペダルのように使うことが出来るThe Wormがお得。ここではそのワウ・コントロールをエクスプレッション 'ペダル' ならぬ 'ツマミ' で操作しておりますが、あえてツイストのようにツマ先でグリグリさせるのも面白いかも。下の動画はその '新旧比較' ですけどスペースさえ気にしなければ、やはり 'エレハモ' はこの弁当箱サイズの方がテンション上がりますねえ(この旧モデルでエクスプレッション・ペダルは使えません)。
→Hotone
→Hotone Tape Eko
→Hotone Xtomp mini - DSP Processing Pedal
→Hotone Xtomp & Xtomp mini Review
ここまで紹介したものはモジュレーションに特化したものが多いため、やはり個別にディレイやリヴァーブを用意しておきたいのは確か。そこで最近メキメキとコストダウンを図りながらその品質を上げている中国製エフェクターをチェック。特に 'Maid in Hong Kong' としていま一番元気の良いHotoneの '手のひらサイズ' なディレイ、Tape Ekoを追加で入れてみましょう。と思っていたら、早速サックスでHotoneやZoom MS-50Gによるエフェクター試奏の動画を発見。あまりあれこれ追加しちゃうとこの項本来の趣旨を離れちゃうけど(汗)、やっぱりこの小さなサイズだと色々試したくなりますよね。また、HotoneはZoomに負けず劣らずのマルチ・エフェクツ、Xtomp、Xtomp miniなどがあります。これらはスマホを介して自由にアルゴリズムを入れ替えられるDSPプロセッシング・ペダルなのですが、個人的にZoom含めてこの手の 'ファームアップ' ものはメーカーの技術と供給次第というか、初期の不安定なソフト、新たなライバル機や状況の変化でそのモデリング技術が一気に古臭くなり、パタッと製品開発を止めちゃう危険性があること。とりあえず便利かつ多機能、コスト・パフォーマンス最高なデジタルの '新製品' が出た時は慌てて飛びつかないで下さいませ(今のところZoomは安定してますけど)。
→Benidub Digital Echo
個人的にはディレイも演奏の一部と考えるのであれば、マルチ・エフェクターで '省エネ' をした分、小型のライン・ミキサーのセンド・リターンにBenidub Digital Echoのようなダビーなディレイを繋いで操作するってのも面白いかも。普通のディレイだと精々タップテンポかフィードバックを操るくらいしか出来ませんが、このBenidubのダブに特化したヤツならさらに複雑でリズミックな '空間生成' が可能。もっと凝ったことをやりたければディレイの前にループ・サンプラーを繋いで・・とすでに身軽ではなくなってきてますけど(汗)、しかしラッパ吹きならせっかく空いている左手を使わないのは勿体無い!
→The Montreal Assembly 856 for Zellersasn
→The Montreal Assembly
そんなついつい追加したくなるループ・サンプラーですが、この 'グリッチ' に特化したカナダの製品、The Montreal Assemblyの856 for Zellersasnという謎めいたヤツは面白そうです。しかし、今やカナダは多くの工房が集まるエフェクター界の一大聖地と化しており、特にアナログとデジタルの高品質でハイブリッドな 'もの作り' はこの業界を盛り上げる存在にまで成長しました。本機はすでに2016年に登場し、最大20秒のループをランダマイズしてエンヴェロープ、テンポ、ピッチを操作しながら 'グリッチ' を生成するもので、Red Panda Particleのように破綻せず音楽的 'エラー' として吐き出せるのが特徴。またMIDI同期やユーザー・プリセットにも対応しているところは、Hologram ElectronicsのDream SequenceやInfinite Jets Resynthesizerのライバル機として比較してみたいですね。
→Electrograve Search and Destroy SAD-1
→Electrograve
ここでもひとつ '変わり種' を追加。名古屋でガジェット系シンセなどを製作するElectrograveから4チャンネル出力を持つパンニング・マシン、Search and Destroy SAD-1。ステレオ音源はもちろん、ギターからの入力をジョイスティックでグリグリとパンニングさせたり、Autoスイッチを入れてトレモロのテンポをSlowからFast、NormalからRandomに切り替えることで 'グリッチ風' の効果まで幅広く対応します。4つの出力はそれぞれ個別に切り替えることが可能で、50% Dutyスイッチを入れることでモノラルでも十分な空間変調を堪能することが出来ます。実はパンニング機能だけでここまで遊べるものって意外に無いんですよね。
→Death by Audio Echo Master ①
→Death by Audio Echo Master ②
→Electro-Harmonix Oceans 11 Reverb
いや、もっと簡単にマイクとディレイだけでいいよ、たまに気が向いた時だけワウやオクターバーもインサートできれば、という 'ものぐさ' な管楽器奏者には、奇才オリヴァー・アッカーマンが主宰するニューヨークのガレージ工房、Death by AudioのEcho Masterはいかがでしょうか。いわゆるマイク(ファンタム電源不可)、DI、インサート付きのプリアンプでRadial EngineeringのVoco-Locoなんかと似た構成ではあるのですが、すでにディレイが搭載されているというのが '売り'。30msec〜620msecまでのディレイタイムとフィードバック、原音とディレイのミックスするツマミという基本的な構成を備えております。もちろん、ここにワウやオクターバーなどを 'インサート' することも出来るのですが、結構ハウリやすそうな感じ(ノイズ系ブランドなのでそこが狙いでもある)なのでEQを 'インサート' するのが現実的かもしれませんね。また、この内蔵ディレイを補うように 'エレハモ' の新製品リヴァーブを加えてみるのも面白いかも。最近のリヴァーブは従来のスプリング、プレート、ルームやホールといった 'アンビエンス' の環境をモデリングしたものだけではなく、'Shimmer' に代表されるエフェクティヴな音作りに対応した幅広いものへと変わりました。
⚫︎Hall
⚫︎Spring
⚫︎Plate
⚫︎Revrs - Reverse Reverb
⚫︎Echo - Reverb plus Delay
⚫︎Trem - Reverb plus Tremolo
⚫︎Mod - Modulated Reverb
⚫︎Dyna - Swell, Gate and Duck
⚫︎Auto - INF - Auto-Infinite Reverb
⚫︎Shim - Shimmer - Octave-Shifted Reverb
⚫︎Poly - Polyphonic Reverb
その名の如く11種のリヴァーブ・モードを搭載、堪能することができます。また3つのツマミにはそれぞれ '隠しパラメータ' があり、これと基板上のTailsスイッチ、外部からのモメンタリー・スイッチを繋ぐことでさらに細かな音作りに対応しているところは今の時代ならではですねえ。
→Bananana Effects
→Bananana Effects Abracadabra
→Bananana Effects Matryoshka
このような多目的リヴァーブとして 'グリッチ' な音作りにまでカバーしているのがこちら、関西発で現在は東京に拠点を移して活動するBananana EffectsのAbracadabra。エグいベースシンセのMatryoshka共々いよいよ 'Pedals And Effects' にも堂々登場しておりますが、本機の備える8つのモードは以下の通り。
⚫︎Exotic Oct Up
残響音にフィルタリングされた倍音を加え、様々な効果音を生成
⚫︎Exotic 5th
残響音に5度上のフィルタリングされた倍音を加え、様々な効果音を生成
⚫︎Oct Up + Vib
倍音の加わった残響音のピッチを不安定に揺らし、サイデリックな音色を再現
⚫︎Shimmer + 5 th + Vib
さらに多くの倍音が加わった残響音のピッチを不安定に揺らし、よりサイケデリックな音色を再現
⚫︎Inf + Cho + Oct Up
エフェクトがオンになった瞬間の音を保持したまま、コーラス、ピッチシフトを加えることが可能
⚫︎Inf + Cho + Oct Dn
エフェクトがオンになった瞬間の音を保持したまま、コーラス、ピッチシフトを加えることが可能
⚫︎Error Delay
ディレイ、倍速リヴァース・ディレイの二つを交互に出力し、ランダムグリッチしたような残響音を作成
⚫︎SH + Noise
2種類の異なるエレクトロニカノイズを混合した、何だかセンチメンタルなムードを作る残響音
すっかり黄色いブランド・イメージも定着、小サイズにして安価で '飛び道具' な効果を試せるのは嬉しい限り。特に、従来の 'アンビエンス' という枠に収まらない 'エフェクティヴ' なリヴァーブは管楽器奏者も積極的にアプローチすべし。
→Elta Music Devices Console (White)
→Elta Music Devices Console (Black)
わたしは個人的に気になっていたロシアの新たな才能、Elta Music DevicesのConsoleをチョイス。コンパクトのマルチ・エフェクツながらSDカードで自社の機能をあれこれ入れ替えて、左手でジョイ・スティックをグリグリ動かすデザインにまとめ上げるなんて素敵過ぎる!その10個のSDカード・カートリッジの中身は以下の通り。
⚫︎Cathedral: Reverb and Space Effects
⚫︎Magic: Pitched Delays
⚫︎Time: Classic Mod Delays
⚫︎Vibrotrem: Modulation Effects
⚫︎Filter: Filter and Wah
⚫︎Vibe: Rotary Phase Mods
⚫︎Pitch Shifter: Octave and Pitch
⚫︎Infinity: Big Ambient Effects
⚫︎String Ringer: Audio Rate Modulation
⚫︎Synthex-1: Bass Synth
'モジュレーション/空間系' 中心のメニューですけど、今後いろいろなヴァリエーションが増える予定などあるのでしょうか?こちらもGuitar Fairy同様あくまでカートリッジを入れ替えるのみの同時使用出来ないものなのですが(ただし、カートリッジ入れ替え時に直前のプリセットは記憶する)、しかしこれで全然問題なく使えちゃいますね。ちなみに、筐体に描かれたデザインが 'マレーヴィチ' 風ロシア・アヴァンギャルドな感じで格好良し!
→Boss VE-20 Vocal Processor
→Boss VE-5 Vocal Performer
もちろん、このマウスピース・ピックアップは使わずグーズネック式マイクだけで 'アンプリファイ' したい人はBossのVE-20 Vocal Processorが一番手っ取り早く、コンデンサー・マイクでのお手軽セッティングとしても本機はオススメです。マイク入力とDI出力を備えたマルチ・エフェクツであり、オクターヴからハーモニー、モジュレーション、ディレイにリヴァーブ、ループ・サンプラーまで満載の便利な一品。というか、管楽器の 'アンプリファイ' 人口において本機のユーザーが一番多いんじゃないでしょうか?(Youtubeの動画でもよく見かけます)。そしてもっとお手軽な廉価版として用意されたVE-5 Vocal Performer。流石にVE-20やZoomのマルチと比較するとプリセット的に見劣りしますけど、サイズ的にはほぼポケットに入っちゃいますね。工夫して楽器に装着してみるというのも面白いかも。
→Radial Engineering Pro DI / D2
さて、わたしの場合はこんな感じとなりました。やはりラッパの 'アンプリファイ' における 'クリーン・トーン' としてなくてはならないNeotenic Sound Magical Forceは必須なのですが、その他はElta Music Devices ConsoleとRadial EnigneeringのパッシヴDI、Pro DIのみのシンプルなセッティング。しかし、Magical Forceが無いと物足りなくなってしまうくらいコレは本当に重要なアイテム。意外に中古で出回る率が高いのは本機の機能を理解していないか、もしくは体感する前に手放しちゃうユーザーが多いということでしょうか(残念)。管楽器の 'アンプリファイ' でアンサンブル中どうにも音が抜けてこない、貧弱な 'クリーン・トーン' に不満のある方は是非とも手に取って頂きたい逸品でございます。ちなみにK&KのプリアンプからMagical Forceの間をワイヤレス・システムに組み込み使用すれば、さらに快適な 'ケーブルレス' の環境で自由に動き回れます。
→HornFX
→Zorg Effects Blow !
→Zorg Effects
ここで、話はガラッと変わって現在唯一の 'アンプリファイ' な管楽器サイト、HornFXがいよいよ専門の動画チャンネルを始めましたヨ!ちょっと前に登場した 'Effects for The Horn Player' やお馴染み 'Pedals And Effects' を始めとして現在、数多くのYoutuberによるエフェクター・レビュー動画が溢れておりますが、ギター人口の頭打ちと相対化しているのか、こんな 'ニッチな' 層のための 'お助け' 動画が登場したのだから面白い時代になったものです。第一回目らしくマイクからアンプ、特にエフェクツ使用のためのインピーダンスの説明などもしっかり述べているようで、これからこの手の音作りにアプローチしたい奏者にとっては嬉しいのではないでしょうか?(英語なんでほとんど理解してませんが・・)。そんなニッチ過ぎる管楽器の 'アンプリファイ' は、Youtubeのおかげで伝播したとはいえまだまだ層が薄いのは悩みですが、フランスの工房、Zorg Effectsが手がける 'インサート付き' プリアンプ、Blow !が新登場!従来のAudio-Technica VP-01 Slick Fly、Radial Engineering Voco-Loco、Eventide Mixing Linkに続いてこのシーンを盛り上げて頂きたいですね。
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