2019年8月5日月曜日

'UK Blak' は世界を巡る ('45' edit)

ピーター・バラカンさんがどこかで言われておりましたが、思春期に影響を受けたものはその後の '自分' を形成する上でずっと残っていく(相当意訳しておりますが)そうで、聴いてきた音楽体験も大体そこに引っ張られていくらしいです。なるほど、確かにわたしにとってのR&Bやソウル・ミュージック、特にファンクの持つグルーヴの中毒性は、いまに至ってもなお自分を惹きつけるんですよね。だから 'ジャズ原理主義者' が毛嫌いするアシッド・ジャズ系のものなど、むしろ、わたしにとってはジャズを聴く上での良い '入り口' だったと思っております。一方で、それまで米国産の音楽ばかり嗜んできた自分が、ある音楽をきっかけにUK産やヨーロッパのものにシフトするグループがいました。



ジャジーBなる、レゲエやレア・グルーヴを中心に回していたDJを中心に結成されたユニットSoul Ⅱ Soulです。ブラック・ミュージックとして、米国からカリブ海のものをいろいろ物色していた当時のわたしにとり、英国というのはいまいちピンと来なかったのですが、そもそも英国に住む黒人の大半が旧植民地であったジャマイカなど、西インド諸島からの移民で構成されております。特に、彼らが持ち込んだダブの血脈はザ・ビートルズ以降のUK産ポップ・ミュージックの下地に流れ込み、このSoul Ⅱ Soulというグループ登場へと到達、現在のクラブ・ミュージック全盛の 'ターニング・ポイント' を象徴します。また、この英国という国は日本と似て、米国のポップ・ミュージックに対する偏愛的な影響や '収集癖' でもって自らの文化と上手に溶け込ませる術を心得ておりました。米国という国は比較的過去を振り返らず、全体的に新しいもの好きな傾向が強いのですが、英国人はすでに過去の遺物となった米国のサイケデリック、R&B、ジャズやラテンなどのレコードを収集しては、そこからレア・グルーヴやアシッド・ジャズといったムーヴメントを仕掛け、まさに '温故知新' の如く古いものから新しい '聴き方' を提示してきたのです。もちろん古いものばかりではなく、ニューヨーク・ガラージやシカゴ・ハウスから派生してアシッド・ハウス、ブリープ・テクノといった '4つ打ち' によるレイヴ文化を生み出したのもUKです。このSoul Ⅱ Soulには米国のR&Bやジャズ、ジャマイカ産のダブから大きな影響を受けながら、しかし、英国という場所でのみ可能となった独自の存在だと言って良いでしょうね。





さて、そんな 'UKダブ' は、マッド・プロフェッサーやエイドリアン・シャーウッド、ジャー・シャカらがジャマイカのサウンド・システムを持ち込みながら 'ニューウェイヴ' の影響を受けて独自に発展、その中の象徴的な存在なのが 'ダブ・ポエトリー' の巨匠、リントン・クウェシ・ジョンソンと彼の代表作 'LKJ in Dub' を手がけた元マトゥンビのベーシスト、デニス・ボーヴェルでしょう。このあたりのスモーキーな '煙たい' 感覚は、英国の港町で多くの 'UK Blak' が住み着いていたブリストルを中心に継承されてスミス&マイティやマッシヴ・アタックの登場とトリップ・ホップ、ジャングル/ドラムンベースやブレイクビーツからダブの '換骨奪胎' が1990年代を通して提示されていきます。こーいうウェッティな体温低い女性ヴォーカル+ブレイクビーツのユニットの出発点は間違いなくSoul Ⅱ Soulの貢献大でしょうね。



そんな 'UKレゲエ/ダブ' のコミュニティの中からラヴァーズ・ロックの3人組コーラス・グループ、ブラウンシュガーで1970年代半ばにデビューしたのが当時わずか12歳のキャロン・ウィーラー。すでにこの時点でその洗練された声はレゲエという狭いフィールドを飛び出し、その後、ロンドンの小さなクラブ、'Africa Center' で自身のサウンド・システム 'Soul Ⅱ Soul' を主宰してレゲエからレア・グルーヴまで幅広く回していたDJ、ジャジーBと合流して大きなムーヴメントを発動させます。



'Keep On Movin'' のいきなりドスッとぶっとく鳴る(たぶん)Roland TR-909のキック一発。もう、この瞬間こそわたしにとっての大きな最初の 'パラダイム・シフト' でした。時代もまさに1989年ということで、それまで世の中から聴こえてきた80's的 'プラスティックな' サウンドから、急にリアルな音像が目の前に現れた衝撃というか・・。そして 'Back To Life' の土着的なコール&レスポンスとレア・グルーヴ感覚。すでに70'sファンクの熱狂的な信者であったわたしにとって、こういうかたちでファンクの黒い感覚が蘇るとは・・。同時代、すでに米国で流行していたニュージャック・スイングと呼ばれるダンス・ミュージックに比べれば、レゲエ・フィルハーモニック・オーケストラの奏でるストリングスを加え、もっとずっと落ち着いていて、そこにちょっとジャジーな大人っぽい雰囲気さえ漂わせている。ともかく、ある時代の米国が持っていたR&Bの伝統を昇華させた 'やり方' としては、個人的に '英国もの' の方が好みであったことをこのSoul Ⅱ Soulは教えてくれましたね。そして、ここでフィーチュアされる女性ヴォーカルのキャロン・ウィーラー。このハスキーにしてどこかウェットな質感のする声に一発で参ってしまいました。それまでの米国産R&Bシンガーに共通するゴスペル・ライクなスタイルに対し、彼女はレゲエのラヴァーズ・ロック出身ということで、暑苦しくなる一歩手前で抑えるクールな印象が完全にこの '打ち込み' とぴったりハマっておりました。





彼らが打ち出したグラウンドビートというグルーヴは、'大地' という意味での 'Ground' ではなく '擦り付ける' という意味 'Grind' の他動詞 'Ground' から来ているようで、これは、レゲエのダンスに男女が股間を擦り付けるようにして踊る 'ラバダブ' というのがあり、この辺りから派生した言葉ではないかと思います。それはともかく、ある意味 '大地' と言い換えても良いくらい、この地を這うようなベースラインとキックのぶっとい感じがダブの血統を強く主張し、また、この緻密なビート・プログラミングに当時英国在住であった日本人ドラマー、屋敷豪太氏(元メロン、ミュートビート)が深く携わっていたのは興味深いです。それは、このカッチリとした構成に日本人的な '職人感' があるというか、屋敷氏にとってはSoul Ⅱ Soulの '屋台骨' 的存在であったネリー・フーパーとの出会いが大きかったようですね。他にメジャーどころではD.N.A. feat. Suzanne Vegaの 'Tom's Diner' とか、耳ダコになるくらい聴いたグラウンドビートの代表的一曲。また、ジャジーB&ネリー・フーパーが 'True Love'、'1-2-3' の2曲プロデュースに携わった 'Soul Ⅱ Soulフォロワー' 的ユニットのThe Chimesなんかも話題となりましたね。彼らのサウンドに通底する 'ジャジー' な響きはそのまま、Soul Ⅱ Soulと並んで人気を得ていたUKジャズの新星、コートニー・パインのサックスをフィーチュアした 'Courtney Blows' を2作目 '1990 : A New Decade' で披露するなど、この後のアシッド・ジャズ・ムーヴメントへの予兆を匂わせます。しかし、後述しますけど一躍躍り出たSoul Ⅱ Soulのフロントに歌姫キャロン・ウィーラーの姿はなく、彼女がジャジーBと '和解' して戻ってくるのは1995年の 'Vol.V : Believe' まで待たねばなりません。まあ、グラウンドビートとは結局、Soul Ⅱ Soulで始まり終わった短いムーヴメントではありましたが、それまでの 'UK産R&B' というイミテーションを脱してクラブ・ミュージックの新しいスタイルを提示したことに意味があったワケです。そして、このグルーヴにはダブに加えてもうひとつ、そもそもレア・グルーヴを回すDJであったジャジーBが '見つけてきた' と思われる一曲も元ネタとして強く結び付いております。



ワシントンDC出身のグループ、チャック・ブラウン率いるザ・ソウル・サーチャーズが1974年にリリースした作品 'Salt of The Earth' からの1曲 'Ashley's Roachclip' です。当時彼らは完全なるB級ファンク・バンドでして、この後1978年に 'Bustin' Loose' で全米R&Bチャート1位を記録。その後、またしばし音沙汰もなく1984年に 'We Need Some Money' と共にワシントンDC産のファンク・ムーヴメント、ワシントン・ゴーゴーの創始者としてR&B界に大きくその名を轟かすこととなりました。それはともかく、本曲の実にアフロっぽい雰囲気とレア・グルーヴ的怪しい濃度を持った70'sな下地には、確かにグラウンドビートと共通するクールにビートをキープする感覚が漲っています。ちなみにこのグループからは、ゴーゴーのムーヴメントに注目したマイルス・デイビスによりリッキー・ウェルマンという凄腕ドラマーを発掘、晩年のデイビスのバンドを牽引する存在としてアピールしました。



そんなキャロン・ウィーラーも参加するSoul Ⅱ Soulなのですが、1989年の大ヒットでさあ世界ツアーだ、と意気込んだ矢先にジャジーBとウィーラーの間でグループを巡る諸々のトラブルが起こりウィーラーは脱退、いきなりSoul Ⅱ Soulはグループとしての '声' を失うこととなります。その理由のひとつに、そもそもこのユニットのコンセプトに深く携わっていたウィーラーへ正統なクレジットと対価が支払われず、ほぼジャジーB中心で事が進んでいくことに彼女が強く反発したことが発端となりました。そんなウィーラーが脱退後すぐさま自らのコンセプトを元に1990年、ソロとしてリリースしたのが 'UK Blak'。わざわざスペルから 'Black' のCを抜いたのは、ジャマイカ移民のアフリカン・ブリティッシュとして米国の黒人とは違うアイデンティティを表明してとのことで、単なるポップ・シンガーではない強いこだわりが伺えます。また、グラウンドビートのアイデアも元は私にあると主張したいのか、'Blue' や元ネタの 'Ashley's Roachclip' をサンプリングした 'Never Lonely' で、自分こそグラウンドビートのオリジネイターであると訴えているような完成度です。この 'Never Lonely' に聴こえるアフロっぽい雰囲気が、そのままウィーラーの思想であるカリブ海から汎アフリカ主義的なスピリチュアリズムへの志向と結び付けるようにアレンジしたのはさすがですねえ。







このような 'アフリカ回帰' 的なユートピア思想は、特に想像上の 'アフリカ' というルーツを観念的に捉える一部のアーティストたちに共通するものです。例えばジョン・コルトレーンからアーチー・シェップ、ファラオ・サンダースらのフリー・ジャズとアフロ・スピリチュアリズムの関係や、ヒップ・ホップにおけるアフリカ・バンバータと 'ズールー・ネイション' といったかたちで、スローガン的に連呼して自らの立ち位置を再確認することは彼らにとって意味があるのだと思います。ちなみにソロ後、立て続けでジミー・ジャム&テリー・ルイスのプロデュースにより映画 'Mo' Money' OST中の一曲 'I Adore You' をきっかけにして、'UK Blak' のプライドは持ちながらも障害を抱える自身の子供のために米国へと活動の拠点を移すキャロン・ウィーラー。







その米国の地ではビズ・マーキーやグールー、ピート・ロックら、ヒップ・ホップ勢とのコラボレーションを行いますが、やはり米国R&Bの歌手たちとは一味違う '体温低め' のウェットな歌声はラップとの相性もバッチリ。もちろん、英国での活動も忘れることなく、アシッド・ジャズ・ムーヴメントを覚えている人には懐かしいオマーとのコラボレーション 'Treat You' を2013年にリリースします。しかしキャロンの好むハーモニーって一聴してすぐ分かる・・ホント、この人の持つエキゾチシズムなトーンが凄い好き。1990年のデビュー・アルバム 'UK Blak' と1992年のセカンド・アルバム 'Beach of The War Goddess' はその懐かしい音作り含め、未だに好きでよく聴いておりますヨ。







ちなみにSoul Ⅱ Soulと同時期、そんな 'アフリカ回帰' のメッセージを軽やかに打ち出したヒップ・ホップ・ユニットとして、アフリカ・ベイビー・バム、マイクG、サミーBの3人からなるジャングル・ブラザーズがいます。1988年の 'Straight Out The Jungle' はまさにヒップ・ホップ黎明期を飾る1曲。ここでサンプリングされる1970年代のファンク・グループ、マンドリルの 'Mango Meat' もこれまたアフロ志向とレア・グルーヴ感覚の強いもの。このジャングル・ブラザーズは当時のヒップ・ホップ界を覆い始めていた 'マッチョイズム' (銃やドラッグ、暴力など)を志向しない 'ネイティブ・タン' と呼ばれる一派の 'はしり' であり、これ以降に登場したデ・ラ・ソウル、ア・トライブ・コールド・クエストといった連中が続くことでヒップ・ホップの音楽的探求を試みていました。そういえばアフリカ・ベイビー・バムはキャロン・ウィーラー1990年のデビュー・アルバム 'UK Blak' からのシングル・カット 'Livin' In The Right' のプロデュースをしているんですよね。おお、ここでようやくふたりの '想像上のアフリカ' がぶっといダビーなベースラインと共に繋がった!






そして、世界は再び '動き続けろ'とばかりに目まぐるしく '45回転' で回り出します。何度でも '地を這う' ようなビートにノッてクールを 'Keep' し続けろとSoul Ⅱ Soulは歌う。キャロンもジャジーBも歳は取りましたがそのグルーヴは永遠に変わらない。あ、そんなキャロン・ウィーラーの最も新しい仕事は、Children of Zeusなる2人組のユニットがフリーで配信したシングル 'U Alone' のリミックスへの参加。このソリッドなグルーヴに乗って哀調ある '体温低め' でウェットな歌声は健在です。さあ、2019年8月の 'サマー・オブ・ラヴ' は猛暑と共にキャロン・ウィーラーの歌声で始まります〜。

2019年8月4日日曜日

8月の '飛び道具' フリークショウ

俗に言う '飛び道具' と呼ばれるヘンテコなペダルたち。コレ、大別すれば二通りの解釈があり、ひとつは意図せず結果的に '飛び道具' となってしまったもの。例えば古のアナログ・オクターバーなどはこの範疇に入れられてしまうでしょう。そもそも単音ピッキングで一定の音量差がないトーンにより弾かなければ簡単に誤作動し、自分が意図しないエラーノイズを撒き散らすシロモノ。Boss OC-2 OctaveやYamaha OC-01 Octaverなどの自動追従コンパレータを搭載したもの、昨今のデジタルで制御するオクターバー以前はこれがほとんどのオクターバーに付いて回るアナログ的 '欠陥' でした。また、ディレイにおけるフィードバックの偶発的発振効果もこういう意図しない '飛び道具' 的機能に含まれますね。





もうひとつは初めから 'ニッチな' 需要に即して少量生産されるヤツで、これはここ近年市場を席巻する 'グリッチ/スタッター' 系エフェクターが代表的。基本的にディレイと 'Hold' 機能をランダマイズに '放置' した変異系で、最近の音楽シーンと呼応するようにその製品は賑やかとなりました。そしてこれらのペダルのアプローチは、いわゆるフツーの器楽的奏法を初めから放棄したところで成立しているところにその特徴があるのです。しっかしSimon The Magpieさんはペダル以上に本人がイっちゃってる感じですね(笑)。










Ezhi & Aka Fernweh

いくつか個別にあれこれペダルを数珠繋ぎにしていろいろツマミ、スイッチを触ってみる・・こーいうのもシンセの音作りと並んで手放せないくらい面白い。やはりどうしても替えの効かないヤツ、どう使っていいか分からんヤツ、ただ眺めているだけでシアワセになれるヤツ(笑)などなど・・このコンパクト・エフェクターというヤツは実に厄介で離れ難い '中毒性' を有しているのだ。一時期、ロシアや旧ソビエト産のペダルにもハマっていくつか手を出してしまいましたが、このキリル文字に塗れたヤツはホントに得体の知れない魅力に溢れている。他にNeotenicSoundさんの新製品も常にワクワクさせてくれるのだけど・・こーいう決して大げさではないけど '小さな箱' に詰まっているロマンってやっぱ大事だよなあ。とりあえず、個人的に潤沢な資金があれば 'Pedals And Effecs' の秘密基地ぶりやJHS Pedals主宰のJosh Scott、Earthquaker Devices主宰のJamie Stillmanのような 'ペダル・ジャンキー' を目指したい気持ちもあり、Daniel(メガネの人)とMickのコンビからなるThat Pedal Showが訪問するAnalogman主宰のAnalog Mikeの工房訪問記などは興奮してしまうのです。こりゃ見事な 'ペダル・ジャンキー' ぶりだ(笑)。Mikeさん、秋葉原のラジオデパートでパーツ巡りしてたんすね(笑)。





ちなみに個人的に興奮するのはMaestroのエフェクターでして、あの無駄に '工業製品' 的ルックスとそんな大げさなクセに "こんだけ?" っていうハッタリ具合が萌えてしまう(笑)。このブランドの集大成的マルチのUSS-1 Universal Synthesizer Systemなんて最高じゃないですか。シンセじゃないっていう(笑)。しかし、何か集めることに囚われてモノに占有され過ぎてしまうとある瞬間、全てのモノを手放したくなる衝動が襲ってくる(苦笑)。過去、一時の気の迷いで手放して後悔した機材は数知れず・・。そういう心境の中で、いつでも手放せるっていう '気楽さ' は何かにハマる上で大切ですけど、ね。





Death by Audio Total Sonic Annihilation 2
Death by Audio ①
Death by Audio ②

いわゆる 'フィードバック・ループ' に特化したものといえばこちら、Death by AudioのTotal Sonic Annihilation。この謎にぶっ飛んだ一台はOliver Ackermannが自らの会社立ち上げのキッカケとした記念碑的作品であり、これは入力をトリガーにして本体内でループさせることにより予想外のノイズを生成するもの。発想としてはノイズ系アーティストがライン・ミキサーの出力を再度チャンネルへ入力、EQなどでコントロールしながらノイズを生成するやり方を 'ペダル化' したもので珍しいものでは御座いません。しかし、放出されるノイズは実に多彩で 'インサート' に繋ぐペダルにより刻々と変化・・つまり、繋ぐペダルによってはぶっ飛んだり、全く反応しなかったりという '博打' のようなアタッチメントと言えるでしょうね。自宅の押し入れに燻っている使わなくなったペダルの 'リサイクル' として、その予測不能なアイテムにこーいうヤツを組み合わせてみるのは面白い。





Death by Audio Evil Filter
Death by Audio Deep Animation

そんな '飛び道具' 専門でペダルを製作するDeath by Audioからフィルターの変異系ペダル2種。どちらも '歪み' をベースとしたフィルターの変異系であり、よりギターシンセ風のEvil Filterとエンヴェロープ・フォロワーのトリガー機能でリズミックなアプローチにも対応するDeep Animationという '住み分け' が出来ております。フツーのフィルター系に飽きた人は是非とも手に取って頂きたい。





Mattoverse Electronics Air Trash

こちらも米国の工房、Mattovese Electronicsによる 'ゴミのような酷い音' を生成するというペダル、Air Trash。一切表記のない3つのツマミは青が全体の音量調整以外、黄と赤はまさに本機の 'ゴミのような' 音作りに貢献します。その黄はいわゆる 'ローファイ' にするもののようですが音の太さは維持しながらそこに何ともいえない '劣化具合' を付加。そして危険な赤はそのツマミを上げていくに従い、トレモロというか、フィルターというか、かなり入力の感度に左右されながら何とも言えない '動的効果' の変調を加えていきます。う〜ん、何だこれ?本機もまた上述したTotal Sonic Annhilation同様、接続順によってはその効果はバラバラで 'トライ&エラー' で見つけていくべきペダルのよーですね。







Ibanez LF7 Lo Fi ①
Ibanez LF7 Lo Fi ②
Z.Vex Effects Instant Lo-Fi Junky 'Vexter'
Cooper Fx Generation Loss

いわゆる 'ローファイ' という名称や機能をコンパクト・エフェクターで初めて具現化したIbanezの 'Tone-Lok' シリーズ中の迷機、LF7 Lo Fi。まさにギタリストからDJ、ラッパーのような人たちにまでその裾野を広げたことは、この入力部にGuitar、Drums、Micの3種切り替えスイッチを設けていることからも分かります。本機のキモは極端にカット方向で音作りのするLo CutとHi Cutの周波数ツマミでして、基本的にはAMラジオ・トーン、電話ヴォイス的 'ローファイ' なものながらその加工具合は地味。EQに比べて極端にカットしながらワウになるでもなく、歪み系エフェクターの範疇に入れるには弱い感じですけど、本機の動画の大半がどれもブースター的歪ませてばっかりでいわゆる 'ローファイ' の差異に迫ったものが少ないのは残念。その中で上にご紹介するものは本機の魅力を引き出しており、また個人で 'ビット・クラッシャー' 的ノイズのモディファイを施したヤツも楽しい。さらに現在の 'ローファイ' 専用機であるZ.Vex Effects Instant  Lo-Fi JunkyとCooper Fx Generation Lossの比較動画。とりあえず何でも轟音ばかりではなく、こういう効果がもたらす 'ビミョーな質感' に耳をそば立てるプレイヤーが登場して欲しいですね。



Keio Electronic Lab. Synthesizer Traveller F-1 ①
Keio Electronic Lab. Synthesizer Traveller F-1 ②

過去の遺産から '温故知新' 的に学んでみようということでこちら、日本が誇る偉大なエンジニア、三枝文夫氏が手がけた京王技研(Korg)のSynthesizer Traveller F-1。本機は-12dB/Octのローパス・フィルターとハイパス・フィルターがセットで構成された 'Traveller' を単体で搭載したもので、それぞれの動きを連携させて '旅人のように' ペアで移動させるという三枝氏のアイデアから名付けられた機能です。三枝氏といえば日本のエフェクター黎明期を象徴する2種、Honey Psychedelic Machine、Vibra Chorusの設計者としてすでに 'レジェンド' の立場におり、本機はちょうど京王技研からKorgへと移行する過渡期に設計者からユーザーへの '挑戦状' として遊び心いっぱいに提供されながら、結局は現在まで '発見' されることなく 'コレクターズ・アイテム' として捨て置かれております。本機の製品開発にはジャズ・ピアニストの佐藤允彦氏も携わっており、そんな当時のプロトタイプについてこう述べております。なんと当初はペダルの縦方向のみならず、横にもスライドさせてコントロールする仕様だったとは・・。

"三枝さんっていう開発者の人がいて、彼がその時にもうひとつ、面白い音がするよって持ってきたのが、あとから考えたらリング・モジュレーターなんですよ。'これは周波数を掛け算する機械なんですよ' って。これを僕、凄い気に入って、これだけ作れないかって言ったのね。ワウワウ・ペダルってあるでしょう。これにフェンダーローズの音を通して、かかる周波数の高さを縦の動きでもって、横の動きでかかる分量を調節できるっていう、そういうペダルを作ってくれたんです。これを持って行って、1972年のモントルーのジャズ・フェスで使ってますね。生ピアノにも入れて使ったりして、けっこうみんなビックリしていて。"







Synthmonger
Synthmonger Fuzzmonger Mk.Ⅰ
Seppuku Fx Octave Drone
Electrograve Ripper Fuzz

強烈な '飛び道具' として真っ先に思い出すのがスイッチ一発でグシャグシャに歪み、破壊してしまうファズ。その中でもフィルターと組み合わせた変態系はいつでも挑戦者を待ち構えておりまする。入力した信号を2つのパルス波に変換、それらを合成して強制開閉するゲート感と強烈な '歪み' と '揺れ'、エンヴェロープ・フィルターにより生成するSynthmonger Fuzzmonger、オーストラリアで 'Garbege' なペダルばかり少量製作するSeppuku FxのOctave Drone、そして名古屋発の新興な工房、ElectrograveからのRipper Fuzzの三連発。ちなみにElectrograveの製品は今後、Cult Pedal Shopが代理店として扱うとのことで手に入りやすくなるのではないでしょうか?しっかしどれもサスティン何それ?状態のパツパツしたゲート感全開で、グシャ〜っとフレイズが粉々に破壊・・。やっぱしペダルってこーいう '制御出来ない' 興奮を味わうもんですよね(笑)。







Metasonix KV-100 The Assblaster
Metasonix TS-21 Hellfire Modulator
Metasonix TS-22 Pentode Filterbank
Metasonix TS-23 Dual Thyratron VCO

このような粉砕される '歪み' がさらに先鋭化されると米国で真空管を得意とするEric Bahbour博士による工房、Metasonixへと行き着きます。現在は 'ユーロラック' 用のモジュール製作に完全にシフトしておりますが、この '真空管ギターシンセ' ともいうべきアタッシュケースに入ったKV-100 The Assblasterはもちろん、過去にはかなり怪しい '飛び道具' 的ユニットをいくつか製作していたという '前科' があります(笑)。個人的に思い出すのは2000年頃に登場したガレージ臭プンプンな4Uラック・ユニット、TS-21 Hellfire Modulator、TS-22 Pentode Filterbank、そしてTS-23 Dual Thyratron VCOの3種で当時、高円寺にあったDTM関連の 'Modern Tools' が代理店となり扱っておりました。上記リンク先の 'サンレコ' レビューにもありますが、音声信号を高電圧 'ビーム・モジュラー' で破壊するTS-21、4つのバンドパス・フィルターを内蔵したTS-22、2つのオシレータ内蔵のTS-23という荒々しくもマニア心くすぐる '宣伝文句' は、すぐにでもわたしを高円寺へと足を運ばせたことが昨日のことのように懐かしい(笑)。実際、試奏してこのレビュー通りの感想を持ちながら、製品としてコレは不良品なんじゃないか?というくらい、真空管機器特有のブ〜ンとしたハムノイズも盛大に撒き散らす手に負えないシロモノでしたね。デモ動画もこんなTS-21による '笑点のテーマ' ?のようなシンセベースで鳴らしたものしかなく、いまこれらと同種の効果を求めるのならWMD Geiger Counterなどを購入した方が満足出来ると思うのだけど、未だにわたしの記憶の片隅に引っかかっている機材でもあります。







U.S.S.R. Formanta Esko-100
U.S.S.R. Formanta Esko-100 Ver.2 on Reverb.com
Elta Music Devices PLL-4046 ①
Elta Music Devices PLL-4046 ②

ちなみにこの手の効果はロシアも負けておりません。旧ソビエトの時代に 'ギターシンセ' 含めてマルチ・エフェクツ' に集大成させたのがこちら、Formanta Esko-100。1970年代のビザールなアナログシンセ、Polivoksの設計、製造を担当したFormantaによる本機は、その無骨な '業務用機器' 的ルックスの中にファズ、オクターバー、フランジャー、リヴァーブ、トレモロ、ディレイ、そして付属のエクスプレッション・ペダルをつなぐことでワウにもなるという素晴らしいもの。これら空間系のプログラムの内、初期のVer.1ではテープ・エコーを搭載、Ver.2からはICチップによるデジタル・ディレイへと変更されたのですがこれが 'メモ用ICレコーダー' 的チープかつ 'ローファイ' な質感なのです。また、簡単なHold機能によるピッチシフト風 '飛び道具' まで対応するなどその潜在能力は侮れません。そんなEsko-100の伝統を引き継いだかどーかは分かりませんが、Elta Music Devicesのハーモニック・シンセサイザーPLL-4046。PLLとは 'Phased Locked Loop' (位相同期回路)という入力信号からフィードバックで制御したものを短形波に変換、その周波数をマルチプルまたは分割して元のピッチから倍音を生成するというシンセライクなもの。





Earthquaker Devices Data Corupter
Glou Glou Moutrade

このPLL-4046と同種のPLLを用いたものとしてEarthquaker DevicesのData Corupterやフランスはリヨンの新興工房、Glou Glou Moutardeなどがあります。どれも共通するのは4オクターヴもの帯域を持つ歪んだ 'ハーモニックシンセ' であり、いわゆる 'ファミコン・サウンド' に象徴される '8ビット・クラッシャー' 的センス、LFOからフィルター・スウィープに至るまで幅広い音作りを可能とします。







Beetronics Swarm

米国カリフォルニア州ロスアンゼルスに工房を構えるBeetronics。アレ?この工房の製品はちょっと前にLep Internationalが代理店をやってたと思ってたけど、いつの間にかUmbrella Companyに移譲したんですね。とにかくその美しいレリックな '一点もの' 的デザインとハニカム・デザインなPCB基板による丁寧な配線は、このブランドがその中身のみならず所有する楽しみに至るまで考えられていることが分かります。結構、このスペシャルな 'アート' をコレクションしているユーザーも多いのでわ?このSwarmはBeetronics流の '擬似ギターシンセ' であり、まるで数千匹の蜂が襲ってくるような分厚くヒステリックなハーモナイズ・トーンに魅力があります。本機のキモであるSpiciesでそのハーモナイズを9種から選択、QueenとDroneツマミで2オクターヴのハーモニーをそれぞれ個別に調整、さらにFlightとStingツマミでそのハーモナイズに適用されるモジュレーションを設定します。





Mid-Fi Electronics Organ Drone
Mid-Fi Electronics Clari (not)

このドローンという効果はエフェクターのもうひとつの側面、場を設定する '通奏低音' から奏者が喚起される存在として 'ペダルに弾かされてしまう' ものと言うことが出来ます。米国ニューハンプシャー州でDoug Tuttle氏によりひとり製作するMid-Fi Electronicsは、'Lo-FI' でも 'Hi-FI' でもなく 'Mid-Fi' であるという冗談のようなスローガンで '現場の発想' から奇妙なペダルばかりをラインナップ。このOrgan Droneはすでに生産終了ながらオルガンのドローン効果に特化したものとして、SpeedとDepthでオルガン音のトレモロ効果、入力する音とミックスしながらCourseとFineツマミでピッチとトーンを調整、2、4、8、16、32の各ツマミで入力する音とドローンをミックスしながら出力します。一方のClari (not) はレッド・ホット・チリ・ペパーズのギタリスト、ジョシュ・クリングホッファーが使用したことで話題となった変態ピッチ・モジュレーション・ファズ。いわゆるテープの 'ワウフラッター' 的揺れ感をベースにファズをミックス、ほとんどピッチがグニャグニャと上下するように飛びまくる本機はその使い所に悩む一台(笑)。いや、歪み系は他のペダルと併用して使いたいんだけど・・というユーザーにはファズを内蔵しない 'Clean' ヴァージョンのClari (not) も用意しているそうです。ちなみに製作者のDoug Tuttle氏によれば、本機製作のきっかけはキャプテン・ビーフハートが吹くバス・クラリネットをヒントにしたようで、そこからアイロニカルに "クラリネットじゃない"  というダジャレのような?ネーミングになったとのこと(笑)。





Electro-Harmonix Superego Synth Engine
Gamechanger Audio Plus Pedal

またドローンといえば、こんな 'Hold' 機能の変異系ともいうべき 'エレハモ' ならではの 'Freeze' 機能として登場したSuperego Synth Engineもなかなか楽しい一台。分厚いアンサンブルのバッキングを構築しながら 'インサート' も備えることでさらに過激な音作りに挑むことも可能。この 'エレハモ' の同種としてさらに高品質にしたGamechanger AudioのPlus Pedalも御座います。ピアノのダンパーペダルを模したコントローラーで踏んだ直前のサスティンをリアルタイム処理でループさせる 'Freeze'、ロング・サスティンを実現した驚異のペダルです。サスティンは最大5つまでオーバーダブすることが可能でフェイドインの速度やディケイの細かな設定はもちろん、お手軽なループ・サンプリングとエフェクト音のみのWetへ瞬時に切り替えるフット・スイッチも付属します。







Catalinbread Coriolis Effect
Pladask Elektrisk Fabrikat

さて、肝心の 'グリッチ/スタッター' 系エフェクターといえば、MalekkoやMr.Blackと並びエフェクター界で大きな存在感を誇るCatalinbreadから登場のCoriolis Effect。こちらはピッチシフトとテープ逆再生からターンテーブルの '電源落とし' 風効果、エクスプレッション・ペダルによるワウやフィルタリングからグリッチのランダマイズに至るまで奇妙な '飛び道具' を生成する面白いもの。この工房で同種の '飛び道具' としてはCsidmanが結構面白かったのだけど、本機の多機能ぶりもなかなかのもの・・う〜ん、まだまだこの手のペダルの勢いを止めることは出来ませんね。そしてノルウェーからの新たな '刺客' ともいうべきPladask Elektrisk Fabrikat。もう、ここまでくると正確な読み方が分かりませんけど(苦笑)、本機はRed Panda ParticleやRaster、The Montreal Assembly Count to Fiveなどと同様のディレイ、ピッチシフトによる 'グラニュラー' 応用系のひとつですね。







Bananana Effects Mandala
Bananana Effects Aurora

そんな 'グリッチ/スタッター' 系エフェクターといえば今や日本のみならず海外でも認知度の上がっているBananana Effects。このミニサイズにしてデジタルでしか実現出来ない '多機能ぶり' を発揮するここの製品も大体 '飛び道具' ばかりなんだけど(笑)、いわゆる 'グリッチ' な機能に的を絞ったMandalaとRed Panda Particleのような 'グリッチ/ピッチシフト' の変異系ともいうべきAurora。まずMandalaの8つのモードは入力直前の音を再生速度を可変させながら繰り返す 'Repeat'、そのリピート音をランダマイズにする 'Random'、逆再生モードの 'Reverse'、自動にループ再生する 'Triger'、いわゆる8ビット系サウンドに変換してルー日再生させる 'Square Triger'、それをオクターヴでミックスする 'Square'、ピッチシフトをそれぞれ上昇、下降で再生させる 'Up' と 'Down' と盛りだくさん。一方のAuroraはそこから 'ピッチシフト' に特化したもので、これまた8つのモードは繰り返す度にクロマチックでピッチが上昇、下降する 'Pitch Up' と 'Pitch Down'、Holdでサンプリングした音を倍速で再生させる 'Speed Up'、さらにそれをトリガーによる自動モードにした 'Speed Up Trigger'、逆再生モードの 'Reverse'、フィードバック・ディレイとして再生方向が反転する 'Cascade Reverse'、ループさせたフレイズを逆再生させる 'Multi Reverse'、それをトリガーで自動モードにした 'Reverse Trigger' と・・ふぅ、このサイズにしてかなり独創的な音作りへと誘う創造的ペダルでございます。個人的にここへもうひとつ特筆するのならば、この手の 'ニッチな' ペダルに共通する価格帯としては安価で気軽に試せるということ!素晴らしい。







Benidub Spring Amp
Benidub Spring Amp Ⅱ
Anasounds Element
Knas The Ekdahl Moisturizer

さて、空間系における '飛び道具' といえばディレイのフィードバック発振だけではございません。そう、ダブでおなじみスプリング・リヴァーブによる '破壊音' は最もプリミティヴなワザと言えるでしょう。直接バネを掴んだり、本体ごとぶっ叩いたりとそれはもう乱暴狼藉の限りを尽くします。最近、フランスから登場した新興の工房、AnasoundsのElementはBenidub Spring Amp同様に外部スプリング・ユニットと組み合わせて使用し、残響のディケイの長さに合わせて順々に 'Le Bon'、'La Brute'、'Le Truand' の3種が用意されております。また、ダブの世界ではキング・タビーの影響からフィルターと組み合わせるエンジニアが多いのですが、こちらはSpring Amp同様に深い残響をVCFとLFOで処理してバネで '飛ばす' Knas The Ekdahl Moisturizer。日本未発売ですけど欧米の '宅録家' を中心に結構な人気を集めておりまする。






Arp Odyssey Module ①
Arp Odyssey Module ②
Korg SQ-1 Step Sequencer

そして、強烈なフィルタリングで外部機器とあんなこと、こんなことという '妄想' が止まらないのならば・・もうアナログシンセ使っちゃいましょうヨ!いやいや、そんな大層なシンセなんて持ってないよ、などと萎縮する必要はありません。とりあえず、Korgから1万弱で発売されている8ステップ・シーケンサーのSQ-1とArpの名機、Odysseyをモジュール化したヤツを手にするのです。いや、シンセと言われても弾けないし・・などという前に本機後ろを覗いてみて頂きたい。そう、この外部オーディオ入力(Ext Audio Input)があるおかげで 'ペダル的' に楽器を突っ込み、オシレータ(VCO)の代わりにVCF、LFO、エンヴェロープ・ジェネレーター(EG)などでいろいろ加工、さらにSQ-1もCVで繋いでいろんなシーケンスの変調まで任せられるのはシンセでしか出来ない芸当です。どうです?試してみたくなったのでわ?









Dave Smith Instruments Mopho
Sherman
Sherman Filterbank 2 Compact
Gamechanger Audio Plasma Pedal

このような 'シンセサイズ' に特化した変態フィルター及び変態オシレータとしては、ベルギーでHerman Gillisさんが手がけるSherman Filterbank 2と残念ながら生産終了してしまったMoog博士のMoogerfooger MF-107 Freqboxが双璧でしょう。特にこの 'Filterbank使い' としてはクラブ・ジャズ的なスリーピース・バンドPhatの活動でその存在を知られ、現在はソロとしてquartz-headやrabitooほか、この動画のユニット 'びびび' で活動するサックス奏者藤原大輔さん。1990年代後半にテクノ界隈で人気を博したフィルターSherman Filterbank 2とその下に置くラック型ディレイKorg DL8000RのHold機能を駆使して、過激に発振するエレクトロニカ的スタイルを披露します。ほとんどオシレータのないモジュラーシンセといっていい '化け物' 的機器で、どんな音をブチ込んでもまったく予測不能なサウンドに変調してくれます(動画途中の 'Intermission' は長く第2部は58:33〜スタート)。そして超高圧信号をキセノン管でスパークさせたラトビア共和国の話題作、Gamechanger AudioのPlasma Pedalなんですが倍音の多いサックスならいざ知らず・・ラッパだとちょっと歪み過ぎて使いにくい、かな?ちなみに姉妹機としてオクターヴ・ファズのPlasma Coilというのも最近登場したよーですね。





そういえば 'ギターマガジン' 2014年7月号で特集された「謎のエフェクターを追え!〜そのペダル、凶暴につき」もなかなか面白かったなあ。ゆらゆら帝国やギターウルフを手がけたエンジニア、中村宗一郎氏(N)とエフェクターテックの菊地きんた氏(K)による対談がこーいうニッチなペダルに対する歪んだ愛情というか(笑)、ある種音楽の創造に孕む '本質' を浮き彫りにしているのが興味深い。ええ、これは 'ペダル・ジャンキー' が常に抱えている心情の代弁でございます。いや、これでも昔は真面目にバップを目指してラッパ吹いてたんだけど、な・・いつの間にやらこーいう 'ガジェット' な世界が楽器や奏法を追い越してしまった(苦笑)。

- まず最初に "なんでこんな効果の製品を作ったんだろう?" というような '変わり種' のペダルについて教えて下さい。

N - まず僕の中でグッとくるポイントというのが '見た目' なんですよね。"わざわざコイツのためだけに作った型なんだろうな" っていうバカでかい筐体とか、妙にツマミが多かったりするのが大好きなんです(笑)。レジスターくらい大きかったりすると特にうれしいですね。ボスやMXRが登場して、みんな 'コンパクト・エフェクター' って言い始めたけど、70年代中期までは 'アタッチメント' って呼んでいた人もいました。それから時代のニーズはコンパクト化と多機能へと向かっていきましたけど、僕としては 'このでかさでひとつの音しか出ない不自由さ' に惹かれるところは大いにありますね(笑)。

K - 中村さんが買う基準って '見た目' ですよね(笑)。"コイツ、なんかやらかしそうだな・・" っていう雰囲気を察知するというか。で手に入れてみても、予想どおりやらかす場合もありますし、まったく何もないこともある(笑)。"こんな見た目なのにこんな音しか出ないのか!" っていうパターンだったとしても "使うことに意味がある" というか・・例えばエレハモのパルス・モジュレーターを使うか?普通のトレモロを2個つなげて同じような効果を出すのか?で言ったら、断然 "パルス・モジュレーターを使いました!" ってほうに価値があると思うんですよね。今はマルチで音を作ろうと思えばどんな音でも作れてしまうのかもしれないけど、弾く側としては "このギター・パートはFY-6を通しました!" ってところに意味があるというか。そういう風にテンションを上げてくれる存在だとも思いますね。 "なんとか使いこなしてやろう!" みたいな。

N - たしかに。あと今、話に出たパルス・モジュレーターなんかは、見た目があんなにもゴツイのに派手な効果がないっていうのが謎ですよね(笑)。ほかにも "それ意味あるのか?" ってモデルは何かある?

K - エルクのビッグマフとかおもしろいですけどね・・というか 'ビッグマフ' って名乗ってしまっていること自体がすごいですけど(笑)。これは筐体は一緒でも中身を開けて調べてみると基板が何種か存在していて、そのうちの4種類は確保しています。外側からじゃどの基板なのかわからないんですよ。しかも同じ部品を使っているけど配列が違うから音も微妙に違ったりして・・あれは謎ですね(笑)。また同じ基板でも、当時はその時に手もとにある部品で作っているから、使われている部品が違ったりするんですよね。

N - そうそう(笑)。間違えて逆にプリントしちゃったけど・・まぁいいや〜って出荷しちゃったりね。そういうのがのちのち僕らを惑わせているんですけど。

K - そういえばグヤトーンみたいに当時、ファズのことを 'バズ' って言っていたメーカーもありましたよね。'ファズ=毛羽立つ' ですけど 'バズ=虫の羽音' ってニュアンスなんだと思います。2系統あるんですよ。で表記もグヤトーンだったらBuzz BoxがあったりBazz Boxがあったりとまちまちで(笑)。回路を見たらどちらも一緒でしたけど。

N - "正式名称どっちにする?とりあえずふたつ作っちゃう?" みたいな感じだったのかなぁ?(笑)。

K - 筐体に刻印しているからミスプリントみたいに間違えようがない気もするんですけどね(笑)。あと想像なんですが、GSが流行っていた頃のファズって、歪まないアンプで "いかに音を歪ませるか" ってところに力を注いでいたんではなかろうかと。・・で、結果ジャパニーズ・オリジナル・ファズ回路になってしまったんではなかろうかと・・。

N - そういう意味でも国産ファズは謎めいていますね(笑)。

- ほかにもおもしろい効果の謎のペダルはありますか?

K - FY-6なんかはメーカー違いでたくさんモデルが存在していますね。

N - そうそう。ユニヴァイブで有名なシンエイが、当時OEMでいっぱい同じ筐体の製品を作っているんですよ。

K - FY-6だけで検索しても、テスコからコンパニオンからいろんなブランドのものが出てくるんですよ。その中でもハニーとシャッフツベリーが人気ですね。プレートが違ったり、色が違うだけなんですけど。

N - 歪み系だと 'アグリーフェイス' なんかもおもしろいよね。

K - たしかに。海外の回路図のサイトにあったやつで、おもしろそうなので試しに作ってみたら、その日の内にゆらゆら帝国のレコーディングで使われたんですよね。それからいろんなバージョンをいくつ中村さんに作ったことか(笑)。ちなみに「ソフトに死んでいる」の12インチ・アナログの長いバージョンで聴けます。

N - 僕はそれにジョイスティックを付けてもらって、直感的にいじれるようにしてもらいました(笑)。

K - あと、それとは別に 'ノイジャー' っていうのもありましたよね(笑)。

N - そう!ノイジャーは本当に謎なんですよ(笑)。モダーン・ミュージックっていう明大前にあったレコード屋に、なぜかファズが一緒に売っていて、それがノイジャーって名前だったんです。

K - ファズではあまり見かけない回路なんですけど、ゆらゆら帝国の亀川さんが古い本から回路を見つけてきて、作ってみたらえらいことになりました(笑)。一応ファズなんですけど、爆発的な音が出ているらしくて、それをゆらゆら帝国のライヴで坂本さんが踏んだ瞬間に、ミキサーのインジケーターが一気にピークを振り切っちゃって(笑)。PAに "トぶからやめて下さい" って言われたくらいの代物ですね。本物は手もとにないんだけど、僕が作ったコピーは3台存在していて、亀川さんと坂本さんと中村さんがお持ちです(笑)。

- いつかぜひ体感してみたいです(笑)。では最後に謎のエフェクターが持つ魅力について教えて下さい。

N - やっぱり・・ '未知なる可能性' に尽きるんじゃないですかね。やっぱり "どんな音がするんだろう?" って気になったら、その音を聴いてみたいと思いますから。

K - 僕の場合は、ルックスで惹きつけられるものが多いってことですね。例え音がダメでも、'自己暗示' で良い音になるし、足下に並べているだけで 'ハッタリ' が効くし・・見た目からして何かやってくれそうな雰囲気を醸し出しているエフェクターには魅力があると思います。

N - どんな謎エフェクターでも "生きる場所を選ぶ" というか・・待っているんでしょうね、活躍の時を(笑)。"いつか俺を使ってくれー!!" みたいな。あとはやっぱり音や効果に引っ張られてフレーズが変わるっていうのは、個性の強いエフェクターの魅力ですよね。おもしろい効果があれば1曲できたみたいに、昔はエフェクターをひとつ買うと1曲作るみたいなノリがありましたから。あと組み合わせるエフェクターでかなり変わるじゃないですか。順番変えるだけでもいろんな音が出るし、中身もいじれるとなったらもう無限に楽しめちゃう(笑)。なので弾き手の '音の出し方' に影響与えるっていうのがすごいんじゃないかな。そういう意味では未だに多くの人達が "なにかおもしろい効果はないのかな?" って感じで '未知なる音' への探究心を失っていないんでしょうね。



何かにハマる、まるで '感電' するような衝撃を味わうという意味では、この 'ペダル' というヤツはある種の '幻覚体験' と同種のものではないかと思うのです。ケン・キージーが 'Can You Pass The Acid Test ?' を合言葉に主宰する一大イベント 'アシッド・テスト' で墨流しなどの舞台照明と共に普及したストロボライト。彼がサイケデリア集団メリー・プランクスターズと共に主宰したこのイベントは、まさに音響と照明が錯綜する '意識変革' の場であり、その中でもパッパッと焚かれるストロボライトの幻惑は、グニャグニャした墨流しの変調(今ならラバライトのイメージでしょうか)と対照的なサイケデリアの世界を増幅させます。トム・ウルフの著作「クール・クールLSD交換テスト」ではそんなストロボとLSD体験についてこう述べられております。

"ストロボともストロボ・スコープともいうが、それはもともと、人間の走っているときの脚の動きなどを観察、研究する器具だった。たとえば、暗くされた部屋で、点滅する明るいライトを走っている人の脚に当てる。ライトは、たぶん正常な心臓の鼓動の三倍の速さで点滅する。ライトが照射されるたびに、走っている脚の動きに新しい段階が生まれるのに気づく。この連続的な脚のイメージが脳に固着する。なぜなら、動きを示すかすんだ映像が眼に映らないうちにライトが消されるからだ。ストロボはLSDヘッドの世界でも、ある種の魔術的な特性をもたらす。ストロボから発したライトはある速度で点滅されると脳波のパターンとシンクロナイズされるので、てんかん症的な発作をあたえる。LSDを飲まずにLSD体験のもたらすおおくの感覚をストロボが生むのをヘッドたちは発見した。大きなストロボの下に立った人はすべてのものが断片化されたように見える。たとえば、恍惚として踊っている人たち - の腕は上に上げられたまま静止し - そのギラギラ光った顔はバラバラになる - ここに正方形に並んだ歯が光っているかと思えば、むこうの方にテカテカ光った頬骨が二つ浮かぶ - まるで、チカチカ '雨が降る' 昔の映画の映像のように人間のすべての部分が拡散し、断片化する -スライスされた人間だ!- 蝶の標本板に全歴史がピンでとめられるのだ。むろん、それがLSD体験だ。"



そんなストロボライトなのですが、その昔、Electro-Harmonixからいわゆる 'パーティーグッズ' としてEH-9203 Domino Theory Sound Sensitive Light Tubeというのがありました。これは赤い透明チューブの中に15個のLEDが並び、内蔵した小型マイクが音声信号を検出、音の変化に従ってLEDが異なるパターンで点滅するというもの。しかし、その10年以上前に日本のAce Toneから同様のストロボライト・マシーン、Psyche Light PL-125が発売されているんですヨ。時代はまさにサイケデリック全盛であり、本機は電源On/OffとストロボOn/Offのほか、ストロボのスピードを調節するツマミが1つあるシンプルなもの。ええ、'エレハモ' ほど凝った 'ハイテク' なものではございません(笑)。このPsyche Lightは、ストロボ前面に挿入する赤、青、黄の透明アクリル板フィルターと遠隔で操作できるようにスピード・コントローラーが付属しております。わたしもこの珍品を所有しており、残念ながらキャリングハンドルとアクリル板フィルターは欠品しているもののLEDではなく、アナログな電球によるパッパッパッと眩いばかりのフラッシュで体感するということで、コレがわたしの '飛び道具'(笑)。トレモロの変異系?とも言えます・・かね?。ちなみにテレビで注意喚起される '光過敏性発作' を誘発する恐れもあるので、そのままストロボ光を凝視するのはダメですヨ。





まさに離れられない中毒性。怪人ギタリストのピート・コージーはこのエフェクツの持つ魔力を 'Juice' と表現しておりましたが、まるで人工甘味料たっぷりの '駄菓子' を貪るようにアレコレ手を出すこの小さな 'ガジェット' は、いまも多くの 'ペダル・ジャンキー' の聴覚と懐具合と部屋の占有率を確実に蝕んでおりまする。皆さま、ご利用は計画的に(笑)。

2019年8月3日土曜日

身軽な 'アンプリファイ' 入門 (再掲)

管楽器奏者って身軽を好む人が多い気がする。それは今月最初の記事 '来るか電化楽器時代!' の中でテナーサックス奏者の松本英彦氏が発した言葉からも分かります。あの専用アンプとフルセットのSelmer Varitone担いで移動、搬入、セッティングの連続はさぞ大変だったことか、と。

"それに運ぶのがどうもねェ。いままではサックスひとつ持ってまわればよかった。ギターなんかじゃ最初からアンプを持って歩かなければ商売にならないとあきらめがあるんですが、ぼくはなにもこれがなくたってと考えるから・・。そういうつまらないことのほうが自分に影響力が大きい・・(笑)。"

楽器ケース小脇に抱えてサッとあちこち移動できるフットワークの良さというか、ギタリストがギターケースやエフェクターボード、人によっては 'MYアンプ' (ヘッドアンプだったりコンボだったり)まで持ち込む強者がいるのとは真逆の人種。つまり、こういうところから管楽器の 'アンプリファイ' に対する認識もその効果の是非のほか、単にメンドくさそうっていうイメージが先行してアプローチしない人が多いんじゃないかと思うのですヨ。








じゃ、身軽な 'アンプリファイ' って何ぞやという話になるのだけど正直、管楽器においてそんな大量のエフェクターって必要ないのです。せいぜいワウとオクターバー(ピッチ・シフター)、空間系くらいで十分だし、これらをマルチ・エフェクターひとつで賄ってしまえば、ほぼピックアップ・マイクとエフェクツだけの便利なセッティングとなります。実際のステージではDI含めてPAの扱いとなり、ほぼヴォーカルと同じ環境でモニターすることになる。また、移動でよく飛行機を利用する場合などでは、テロ対策により手荷物制限が厳しくなって小さいセットを組まなければならないという状況も出てくるでしょう(わたしには関係ないけど・・笑)。とりあえず、ここではそんな身軽かつ '最低限' な道具を中心に提案してみたいと思います。







Sennheiser Evolution e608
Sennheiser Microphone
SD Systems LDM94C

わたしにとって2つのピックアップ・マイク使用によるセッティングは譲れないのですが、その手軽さという点ではグーズネック式マイクだけでも十分に 'アンプリファイ' を堪能することが出来ます。このマイクも探してみるとほとんどで電源の必要なコンデンサー・マイクがズラッとラインナップされておりますが、むしろお手軽さと頑丈な構造、エフェクターとの相性という点ではダイナミック・マイクの方が扱いやすいと思いますね。Sennheiserの珍しいグーズネック式ダイナミック・マイクEvolution e608、サックスであればSD SystemsのLDM94も良いでしょうね。下の動画でのBeyerdynamic TG I52Dはちょっと音痩せが目立つかな?(Amazonで検索するとまだ買えるようです)。通常、管楽器の '生音' が持つアンビエンスを余すところなく収音してくれるのはコンデンサー・マイクに軍配が上がりますが、エフェクターを積極的に使う場合ではダイナミック・マイクの方がガツッとしたエフェクターの 'ノリやすさ'、限定的な帯域の収音に対するハウリング・マージンの確保の点で有利なことが多いのです。コンデンサーに比べてマイクを駆動する為の電源は要りませんが、プリアンプを挟むことで好みの音質に補正すればかなり追い込むことが可能ですね。もっとAudio-TechnicaやAKGといった大手メーカーもグーズネック式のダイナミック・マイクを手がけるべきですヨ。






K&K Sound Dual Channel Pro Preamp ①
K&K Sound Dual Channel Pro Preamp ②
Classic Pro ZXP212T
Piezo Barrel on eBay
Piezo Barrel Wind Instrument Pickups

いや、やっぱりマウスピース・ピックアップも併用して使いたい!というか、個人的にはコッチを猛烈にプッシュしたい当方としては、この英国の 'エレアコ' な工房、K&K Soundから2つのピックアップをブレンドするミキサー機能の付いたプリアンプを試してみるのはいかがでしょう?この手のマイクとピエゾをミックスする分野は 'エレアコ' の世界では何年も前からいろいろと探求されており、そのノウハウを同じ 'アコースティック' 楽器である管楽器に応用しないのは勿体ない。このK&Kには2つの入力をそのままミックスする 'Dual Channel Pro Preamp' のほか、姉妹機としてTRSフォンひとつで 'ステレオ入力' できる 'Dual Channel Pro 'ST' Preamp' があり(上掲動画下のもの)、これらはよく似ているので購入の際はご注意下さいませ。蓋を開けるとその基板上にはGain、Treble、Mid、Bassの3バンドEQを2チャンネル分備えており、ケース内にベルクロで貼り付けてあるマイナス・ドライバーで調整できるのは便利。そして、2つのピックアップ・マイクの内、マイク側のXLR端子はClassic Proの600Ωから50kΩに変換する 'インピーダンス・トランスフォーマー' のZXP212Tでフォンにして入力します。ちなみにSennheiser e608にはXLR端子に腰へ装着する為のクリップが付属しているので凄い便利。










Viga Music Tools intraMic

いや、マウスピース・ピックアップ使ってみたいんだけど、やはりガッツリと楽器に穴を開けるのはなあ・・というお悩みの方にはサックス限定ですがこちら、フランスのViga Music ToolsからintraMicがございます。固定する金属製ピンの付いたピックアップ本体とプリアンプがセットになったものですが、なるほど、そのセンサー部分をネックとマウスピースの間に挟み込むようにして取り付けるんですね。挟み込むことによる耐久性は分かりませんが、これは楽器に穴を開けたくない人には朗報的ピックアップなんじゃないでしょうか!また管楽器の収音では順にコンデンサー、ダイナミック、グーズネック式、そしてintraMicでのGuillaume Perretさんによる 'キーノイズ' や '被り' とフィードバック含めた音質比較動画が分かりやすい。





Zoom MS-50G Multi Stomp for Guitar
Zoom MS-70CDR Multi Stomp

さあ、ここからはエフェクツを物色してみたいのですが、価格と機能、サイズにおいてZoomの 'Multi Stomp' と呼ばれるMS-50Gとモジュレーション/空間系に特化したMS-70CDRはいかがでしょうか。この2機種のプリセットは現在もZoomから 'ファームウェア・アップデート' により追加、更新されているのですが、やはりMS-50Gは 'for Guitar' とあって 'アンプ・モデリング' のシミュレータが多い印象ですねえ。ここら辺は管楽器だと単に潰れてノイジーなサウンドになってしまうので注意が必要ですが、それでもフィルター系でランダム・アルペジエイターやギターシンセ風のエグい効果などもあってかなり楽しめますヨ。





また、MS-70CDRの煌びやかさはほぼこれ一台で 'アンビエンス' の設定が賄っちゃうくらい高品質。いまはV 2.0へアップデートされ、従来のモジュレーション、空間系のほか、ダイナミクス系含めてさらに51のプリセットが追加されてトータル137種ものエフェクツが使用できます(選ぶだけで大変・・)。そしてMS-50G、MS-70CDR共に最大6つまでのエフェクトを同時使用することが可能なのですが、当然各プリセットのパラメータも細かく用意されているのでこの小さなLED相手に格闘することは覚悟して下さいませ。





Mak Crazy Sound Technology Guitar Fairy
Mak Crazy Sound Technology Temporal Time Machine

一方、そんな膨大なプリセットも要らなければプログラムするのもメンドくさい、いちいちパラメータの階層を開いて・・というマルチ特有の '使いにくさ' が苦手な人は、むしろ、こちらの単純かつ高品質なモジュレーション系マルチで十分なんじゃないでしょうか。実際、ギターと違ってソロとバッキングを管楽器で使い分ける場面はほぼ無いワケでして、このクリミア自治共和国製Guitar Fairyの6つのプリセット(Chorus、Flanger、Phaser、Tremolo、Vibrato、Envelope Filter)で切り替えて、各々の設定に従いReverb、Speed、Depthを調整するという至極簡単な本機の方が煩わしくなくて良いと思いますヨ。個人的に6つのプリセットに対してReverbだけ個別に調整、ミックスできるのは便利な機能。もちろん6つのプリセットの内のひとつしか使用できないので不自由と感じるかもしれませんが、複数のモジュレーションを同時にかける場面はほぼ無いので問題ないでしょう。





ZCat Pedals Q-Mod
ZCat Pedals Poly Octaver 2

こちらも旧ロシア圏のラトビア共和国からQ-ModとPoly Octaver 2。ここの製品も日本には早くから入ってきており、モジュレーション、空間系に特化したペダルを少量生産している稀有な工房です。Q-Modはその名の如くChorus、Flanger、Phaser、Tremoloの4種切り替えとリヴァーブを個別に付加できるもので、フットスイッチと電源抜き差しでトゥルーバイパスとバッファードバイパスに切り替えられるほか、リヴァーブを常時有効にするモードを選ぶことで、バイパス時でもリヴァーブだけはかかった状態にできるというかなり凝った仕様となっております。一方のPoly Octaver 2はChorusとReverbに上下1オクターヴのオクターバーをミックスできるという変わり種。





Electro-Harmonix The Worm

こんなお手軽な '全部載せ' はエフェクター界の老舗である 'エレハモ' の得意とするところであり、Phaser、Tremolo、Vibrato、Wahの4種を搭載し、さらにワウはAutoとManualの2モード切り替えでAutoによる 'モジュレーション・ワウ'、Manualでは外部エクスプレッション・ペダルを繋いでワウペダルのように使うことが出来るThe Wormがお得。ここではそのワウ・コントロールをエクスプレッション 'ペダル' ならぬ 'ツマミ' で操作しておりますが、あえてツイストのようにツマ先でグリグリさせるのも面白いかも。下の動画はその '新旧比較' ですけどスペースさえ気にしなければ、やはり 'エレハモ' はこの弁当箱サイズの方がテンション上がりますねえ(この旧モデルでエクスプレッション・ペダルは使えません)。







Hotone
Hotone Tape Eko
Hotone Xtomp mini - DSP Processing Pedal
Hotone Xtomp & Xtomp mini Review

ここまで紹介したものはモジュレーションに特化したものが多いため、やはり個別にディレイやリヴァーブを用意しておきたいのは確か。そこで最近メキメキとコストダウンを図りながらその品質を上げている中国製エフェクターをチェック。特に 'Maid in Hong Kong' としていま一番元気の良いHotoneの '手のひらサイズ' なディレイ、Tape Ekoを追加で入れてみましょう。と思っていたら、早速サックスでHotoneやZoom MS-50Gによるエフェクター試奏の動画を発見。あまりあれこれ追加しちゃうとこの項本来の趣旨を離れちゃうけど(汗)、やっぱりこの小さなサイズだと色々試したくなりますよね。また、HotoneはZoomに負けず劣らずのマルチ・エフェクツ、Xtomp、Xtomp miniなどがあります。これらはスマホを介して自由にアルゴリズムを入れ替えられるDSPプロセッシング・ペダルなのですが、個人的にZoom含めてこの手の 'ファームアップ' ものはメーカーの技術と供給次第というか、初期の不安定なソフト、新たなライバル機や状況の変化でそのモデリング技術が一気に古臭くなり、パタッと製品開発を止めちゃう危険性があること。とりあえず便利かつ多機能、コスト・パフォーマンス最高なデジタルの '新製品' が出た時は慌てて飛びつかないで下さいませ(今のところZoomは安定してますけど)。






Elta Music Devices Console - Cartridge Fx Device w/ 11 Cartridges

わたしは個人的に気になっていたロシアの新たな才能、Elta Music DevicesのConsoleをチョイス。コンパクトのマルチ・エフェクツながらSDカードで自社の機能をあれこれ入れ替えて、左手でジョイ・スティックをグリグリ動かすデザインにまとめ上げるなんて素敵過ぎる!その12個のSDカード・カートリッジの中身は以下の通り(上のサイトでは 'Digital' のない11種のもの)。

⚫︎Cathedral: Reverb and Space Effects
⚫︎Magic: Pitched Delays
⚫︎Time: Classic Mod Delays
⚫︎Vibrotrem: Modulation Effects
⚫︎Filter: Filter and Wah
⚫︎Vibe: Rotary Phase Mods
⚫︎Pitch Shifter: Octave and Pitch
⚫︎Infinity: Big Ambient Effects
⚫︎String Ringer: Audio Rate Modulation
⚫︎Synthex-1: Bass Synth
⚫︎Generator: Signal Generator
⚫︎Digital: Bit Crasher

'モジュレーション/空間系' 中心のメニューですけど、今後いろいろなヴァリエーションが増える予定などあるのでしょうか?こちらもGuitar Fairy同様あくまでカートリッジを入れ替えるのみの同時使用出来ないものなのですが(ただし、カートリッジ入れ替え時に直前のプリセットは記憶する)、しかしこれで全然問題なく使えちゃいますね。ちなみに、筐体に描かれたデザインが 'マレーヴィチ' 風ロシア・アヴァンギャルドな感じで格好良し!





Boss VE-20 Vocal Processor
Boss VE-5 Vocal Performer

もちろん、このマウスピース・ピックアップは使わずグーズネック式マイクだけで 'アンプリファイ' したい人はBossのVE-20 Vocal Processorが一番手っ取り早く、ダイナミック・マイクはもちろんコンデンサー・マイクとしても本機はオススメです。マイク入力とDI出力を備えたマルチ・エフェクツであり、オクターヴからハーモニー、モジュレーション、ディレイにリヴァーブ、ループ・サンプラーまで満載の便利な一品。というか、管楽器の 'アンプリファイ' 人口において本機のユーザーが一番多いんじゃないでしょうか?(Youtubeの動画でもよく見かけます)。そしてもっとお手軽な廉価版として用意されたVE-5 Vocal Performer。流石にVE-20やZoomのマルチと比較するとプリセット的に見劣りしますけど、サイズ的にはほぼポケットに入っちゃいますね。工夫して楽器に装着してみるというのも面白いかも。

2019年8月2日金曜日

1969年のジミ・ヘンドリクス (再掲)

ジミ・ヘンドリクスの 'インプロヴァイザー' としての側面を捉えた一枚、'Message from Nine To The Universe' を聴く。コレ、元々は1980年にRepriseからアラン・ダグラスのプロデュースでリリースされたもので、その後、本盤だけは '未CD化' ということもあって永らくマニア垂涎の一枚と珍重されてきたものでした。それが2007年に突然、Reciamationなるレーベルにより5曲のボーナストラックを追加して初CD化。ようやく市場に流通したと思いきや、ジミ・ヘンドリクスの遺族たちが音源の権利に対する管理を強くしたことで、またもやこの 'ブートまがい' は公式盤から廃盤の憂き目に遭い、現在に至っております。ちなみにこの 'Nine To The Universe' は、あの伝説 'Woodstock' のステージのオープニングを飾るいかにもヒッピー世代に向けた 'Anthem' と呼ぶに相応しい一曲です。



本盤の参加クレジットは以下の通りなのですが、これも1980年の初リリース時に比べて決して正確なものではないそうです・・。

Jimi Hendrix - Guitar / Vocal
Billy Cox - Bass
Dave Holland - Bass (Tracks 2,4,6,7)
Buddy Miles - Drums (Tracks 1,2,8,9,10)
Mitch Mitchell - Drums (Tracks 3,4,5,6,7)
Jim McCarty - Guitar (Track 5)
Larry Young - Organ (Tracks 3,4)
Larry Lee - Guitar (Track 10)
Juma Sultan - Percussion (Track 10)

ここには1969年に解散した 'Experience' 以降、ヘンドリクスが組織したコミューン的色彩の強いジャム・セッション・バンド 'Gypsy & The Rainbows' から 'Band of Gypsys' に至るまで、特にアラン・ダグラスがプロデュースしていた時期の音源が中心となっております。本盤だけの特徴として、ダグラスの 'ツテ' で揃えられたジャズ・ミュージシャンたちとの出会いがあり、当時、マイルス・デイビスの 'Bitches Brew' に参加したデイヴ・ホランド、ラリー・ヤング、ジュマ・サルタン('Bitches Brew' 参加時の名はJim Riley)らがヘンドリクスのサウンドに新たな響きをもたらすという面白い展開。ちなみに同時期、どこかの 'クラブギグ' ではあのラーサーン・ローランド・カークやサム・リヴァースともジャムったそうで・・ああ、どこかの誰かが客席でオープン・リール・デッキなどを回していなかったかとため息が出るなあ。







本盤にはジム・マッカーシーとのジャム 'Jimi / Jimmy Jam' も収められておりますが、やはり気になるのはこの時期、同じく 'デイビス組' で名を馳せた英国人ギタリスト、ジョン・マクラフリンとのジャム・セッションも行っていたこと。そのヘンドリクスとマクラフリンのジャム・セッションが上記のブートレグ音源。うん、特別何かを作り上げようという意思もなく、とにかく畑の違うギタリストふたりが相乗効果的にジャムっているだけ、ではあるのですが、もし、この時期にヘンドリクスを引っ張り上げるような凄腕プロデューサーがいたのならば、その後の彼のキャリアはもっとずっと違うものになっていたかもしれません。アラン・ダグラスはヘンドリクスに違う世界の人たちとのコネクションは繋げたかもしれませんが、結局はただ、スタジオでジャムっているものを記録したテープをうず高く積み上げるだけで終わってしまいました。しかし、これは彼の責任ではなく、やはりギタリストとしてのスタンスを抜け出せなかったヘンドリクスの限界と、彼をスターダムに乗せて大金を稼いだ 'ロック・ビジネス' (を操ったマネージャーのマイク・ジェフリー、レコード会社など)の軋轢から自由になれなかったことに起因していると思われます。特に 'Experience' の成功体験を持つジェフリーにとって、ヘンドリクスがジャズを軸とした実験的スタンス、よりファンク/R&B色を強めることに向かうことは良しとせず、このGypsy & The RainbowsやBand of Gypsysは精々ヘンドリクスへの一時的 '休暇'、または以前のレコード会社と残っていた契約義務を果たすための妥協的産物でした。もちろん、この '休暇' からヘンドリクスが何がしかの成果を掴めれば良かったのですが、やはり、単なるジャムに終始してしまったところに1968年の傑作 'Electric Ladyland' 以降、彼が音楽面である壁にぶつかっていたことは間違いない。



ちなみにそんな時期に新たな 'Experience' として交流を持ったのがジャズの帝王、マイルス・デイビスの存在。しかし、この出会いはむしろヘンドリクス以上に音楽的なターニング・ポイントに差し掛かっていたデイビスの意向の方がずっと強く、当時、ヘンドリクスのプロデュースを担当したアラン・ダグラスに一緒にやらせてくれと懇願していたそうです。ジョン・スウェッド著によるマイルス・デイビス伝記本のひとつ 'マイルス・デイビスの生涯' (シンコーミュージックエンタテイメント刊)によれば、そんなデイビスの意向を汲み4ヶ月をかけてCBSとワーナー・ブラザーズを口説き落とし、ワーナーから4曲入りの '共演盤' の契約を取り付けることに成功します。レコーディングのギャラはミュージシャンの間で4等分することが決まりますが、しかしレコーディングの当日、開始30分前になってデイビスのエージェントからダグラスの元に電話が入ります。何とスタジオ入り前に追加で5万ドル上乗せして欲しいと・・。

"私は自宅にいるマイルスに電話をかけた。ようやく受話器に出てきたマイルスは「いいだろ、あるんだろ?(金を)とりつけてくれよ。"と言うんだ。私は電話を切り、ジミに「なにか食いにいこう」と誘った。出ようとした瞬間、また電話が鳴ったので、てっきりマイルスが謝罪の電話をかけてきたんだろうと思った。ところが電話の主はトニー・ウィリアムズで、トニーは「マイルスに5万ドル払うって聞いた。オレにも5万ドルくれ!」と言ったんだ。"

ダグラスはデイビスのエゴはもの凄く、これはうまく行かないだろうと悟ったとのことなのですが、う〜ん、デイビス本人が望んだプロジェクトだったというのに何という仕打ち(呆)。以後、事の真相はデイビス本人やヘンドリクスの口から述べられることはなかったのですが、まあ、ヘンドリクス急逝の報を聞いてデイビスが深く悔やんだことは間違いないでしょうね。ギャラが4等分ということはベース(オルガン?)が誰なのか気になるところですが、この顛末をもう少し冷静に観察してみると、当時の底無しなほどに '狂った' ロック・ビジネスに対するデイビスなりの勘違い、もしくは業界が '食いもの' にするロックスターへの扱いに対するデイビスなりの警戒心だったのかな?という気がしております。実際、ヘンドリクスはそんな業界の '犠牲者' ともいうべき扱いに苦しんでいたし、今の 'ブラックな' 芸能界以上に莫大な利益を吸い上げる連中に対し、デイビスなりのもっと正当な権利をアーティストに寄越せ!という声だったのかな?と・・。ま、想像ですけどね。



しかし、'Jack Johnson' ばりにハードなギターとタイトなリズムに乗ってデイビスのラッパが咆哮する、みたいな共演・・聴いてみたかったなあ。多分、ヘンドリクスが求めていたイメージとしてはここで登場するメンツ、ジョン・マクラフリン、ラリー・ヤング、トニー・ウィリアムズを中心としたTony Williams Lifetimeのサウンドがかなり近かったんじゃないかな、と。







この時期のジャムの延長線上にあったのが、あのウッドストックのステージに立ち伝説的な存在となったGypsy & The Rainbowsなのですが、やはりリハーサル不足と旧友ラリー・リーやビリー・コックス、 'Experience' 時代からのミッチ・ミッチェル、ジェリー・ヴェレスやジュマ・サルタンら雑多なパーカッションを配置して、ひとつのバンドとしてまとめ上げられなかったのは残念でした。このステージでも披露した 'Jam Back At The House' はまさにこの時期のヘンドリクスの音楽的アプローチを象徴する一曲で、何とかヘッドアレンジと共に現場のインプロヴァイズから練り上げようとするも、結局はそれぞれの実力不足と共にジミの顔色がただただ曇っていくだけに終始していくのを垣間見ることが出来ます。ちなみに最初の音源は 'ウッドストック' フェス直前の8月10日、同地のティンカー・ストリート・シネマという映画館で行われた仲間内のジャムを録音したもの。まるでロニー・ヤングブラッド・バンドの '下積み時代' に舞い戻ったかのようなR&Bスタイルで、トランペットは残念ながらマイルス・デイビスじゃなく(笑)、Earl Crossなる黒人のラッパ吹きとのこと。しかしジャム最後にはあの 'アメリカ国家' も飛び出し、ヘンドリクスが入手した新兵器Uni-Vibeの初お披露目となりました。






Honey Vibra Chorus
Shin-ei / Uni-Vox Uni-Vibe
Companion SVC-1 Vibra Chorus

当時足元に置かれた '新兵器'、Uni-Vox Uni-Vibeの蛇の如くのたうち回ったトーンこそこの時期のヘンドリクスを象徴するものでしょう。時期的には1969年3月に倒産直後のHoneyで生産され、Unicord社へ輸出された初期ロット品の一台であり、たぶん行きつけの楽器店、Manny'sで5月頃には入手していたものだと思われます。ちなみにHoneyは倒産直後からそれまでピックアップ製作などを行なっていた新映電気により製作、販路業務を一手に引き渡し1970年代半ばまで '存命'。その新映が 'Companion' の名で輸出した '卓上版' の一台、SVC-1 Vibra Chorusを1970年にはすでに入手していたという話もあるのですが・・う〜ん、どうなのかな?この 'フェイザー前夜' ともいうべき1969〜70年のステージでヘンドリクスが見せつけたサイケデリックな効果、そして貢献する 'Maid in Japan' の先駆的存在はもっと広く知られてよい事実でしょうね。







ヘンドリクスのジャズに対する希求を捉えたと思しきジャム 'Easy Blues'。ゆったりとした4ビートのテンポでブルージーにキメるスタイルは、あの傑作 'Electric Ladyland' 時の収録ながらボツとなってしまったホーンを従えての異色曲 'South Saturn Delta' (動画のは勝手にリミックスされているけど)含め、当時ロックというフィールドを超えて試そうとしていたヘンドリクスのもうひとつの '顔' が垣間みれるでしょう。そして、当時の 'ファンク革命' と触発されることにも積極的で、こちらもアラン・ダグラスのプロデュースでバディ・マイルス、ヒップ・ホップのルーツ的グループとして名高い 'ストリートの詩人' The Last Poetsのジャラールが 'Lightnin' Rod' の変名で制作した謎のシングル 'Dorriella du Fontaine'。ヘンドリクスはギターとベースのオーバーダブで参加。






Jimi Hendrix Gear
Gibson / Maestro Rhythm n Sound for Guitar G1
Gibson / Maestro Rhythm n Sound for Guitar G2
Melvin Jackson / Funky Skull (Limelight)

この1969年はヘンドリクスにとって新しいテクノロジーとの出会いでもあり、特にエフェクター黎明期において当時の最新デバイスへの興味も高かったと思われます。'ウッドストック' のステージでお披露目したUni-Vox Uni-Vibeのほか、当時、ニューヨークに建設中であった自らのスタジオ 'Electric Lady' での音作りの一環として想定していたと思しき、Gibsonから発売されたMaestroのマルチ・エフェクター、Rhythm n Sound for Guitarなども手にしていたとのこと。リンク先にある画像は1969年に 'ヴァージョンアップ' したRhythm n Sound for Guitar G2で、G1にあったパーカッションの 'Bass Drum' とオクターバー 'Fuzz Bass' は廃し、トーン・コントロールの 'Color Tone' は2種になった分、新たに 'Wow Wow' と 'Echo Repeat' が追加されてよりマルチ・エフェクターっぽい仕様となりました。このG2で特筆したいのは 'Wow Wow' がちゃんとオートワウしていること!これ、Mu-Tron Ⅲ以前では最も早く製品化されたエンヴェロープ・フィルターじゃないでしょうか。そして、一見エコーの効果を付加してくれるように思われる 'Echo Repeat' は、VoxのRepeat Percussion同様のトレモロですね。このMichael Heatleyなる著者の 'JimiHendrix Gear' はイマイチその根拠に怪しい匂いを感じるのですが、しかし、当時のエフェクター黎明期においていろいろな機器に対する嗅覚はあったであろうと仮定しながら眺め、考察するという意味では興味深い一冊ではないでしょうか。ちなみに一風変わった本機の効果を堪能したい人は、ソウル・ジャズのベーシスト、メルヴィン・ジャクソンの 'Funky Skull' (Limelight) をどーぞ。このカラフルなヤツがEchoplexと共にジャケットにも堂々登場で、全編ちゃんとウッドベースをワウワウ、チャカポコさせております。また、Fuzz Faceやロジャー・メイヤーの手がけるOctavioのイメージの強いヘンドリクスですが、当時、マイク・マシューズが興した会社Electro-Harmonixの '新製品'、Big Muffをヘンドリクス御用達の楽器店Manny'sを通して購入していたという話もあります。




Manny's Music Receipts
Hammond / Innovex Condor GSM ①
Hammond / Innovex Condor GSM ②
Hammond / Innovex Condor RSM
Hammond / Innovex Condor SSM
Shure CA20B

そしてこの時期、世界初のギター・シンセサイザーとしてHammondがOvationと協業して開発した機器Innovex Condor GSMもヘンドリクスはニューヨークの馴染みの店、Manny,sで購入しております。こちらはManny'sの領収書が残っており、ヘンドリクスは1969年11月7日にシリアル・ナンバー1145のInnovex Condor GSMを480ドルでMaestro Echoplexと共に購入。本機はギター用のGSMのほか、キーボード用のステレオ仕様SSMと管楽器用のRSMもラインナップされて、そのRSMの方はHammondからマイルス・デイビスの元へも売り込みを兼ねて送られてきました。そういえばヘンドリクス没後に発売された未発表曲集 'Rainbow Bridge' の中に「アメリカ国家」のスタジオ録音版が収録されており、これの 'シンセライク' にキラキラしたトレモロのギターによるオーバーダビングで本機が使われているのでは?という噂があるのですがどうなのだろう?この曲のベーシックトラックは1969年3月18日にニューヨークのレコード・プラント・スタジオで収録され、同年11月7日にヘンドリクスがManny,sでCondor GSMを購入、さらにオーバーダブの作業を経て完成させた、というのがわたしの '見立て' なのですが・・う〜む。実際、このGSMのデモ動画と同曲を聴き比べてみてもかなりの確率でそれっぽい。






Vox The Clyde McCoy '1967'

そんな 'ジミの衣鉢' ともいうべき 'Clyde McCoy' を踏む1971年のマイルス・デイビス。ヘンドリクスにとっての最も安心できるフォーマットはギター、ベース、ドラムスからなる '3ピース' 編成だったそうで、一時的にサイド・ギターやパーカッションなどを導入して多様化させる試みを行ったものの、結局はBand of GypsysからExperience '復帰' でその創造は尽き果ててしまいました。一方では、そのシンプルな編成に多彩な 'いろ' ともいうべきギターのアンサンブルの演出において、ヘンドリクスのエフェクターとアンプを用いた '轟音' ともいうべきアプローチは、現在に至るロックの音作りの基本を型作ったと言っても過言ではありません。そんな 'ヴォイス' の演出にファズと共に一躍トレードマークとなったのが英国のブランド、Voxのワウペダル。特にこの1969年に愛用していたのは1967年の元祖 'Clyde McCoy'。ジャズ・トランペット奏者で ' ワウワウ・ミュート' の名手クライド・マッコイにちなんで名付けられており 'ウッドストック' のステージでも大活躍しましたが、コイツをヘンドリクスからそのまま手渡されたのが誰あろう帝王、マイルス・デイビス。1969年の大晦日、Band of Gypsysのニューイヤー・コンサートを見に行ったデイビスは、楽屋で久しぶりの再会を果たし、お前らのMarshallのアンプをラッパで使いたいから送ってくれと冗談を飛ばしながら、しばらくしてデイビスの元に愛用の 'Clyde McCoy' ワウペダルが送られてきたそうです。

完全にジャズのフォーマットを捨て去り、何とも形容し難い奇形的 'ファンク・ロック' でバンドをまとめ上げるデイビスの手腕、是非ともヘンドリクスに薫陶して頂きたかったと残念でなりません。

2019年8月1日木曜日

来るか電化楽器時代!

ホントは9月に更新する予定でしたけど、真夏の猛暑に巻き込まれるかたちで記事をアップ致します〜。6月初めからずーっとジメジメ、シトシトした毎日だっただけにこの遅い '梅雨明け' は待ち遠しかった!やっぱし夏の雰囲気は1年の中で特別ですね。

'温故知新' - 古きをたずねて新しきを知る。5月に ''電化ジャズ' - 可能性と問題点 (再掲)' をお送りしましたが、さらにその '続編' ともいうべき、'スイングジャーナル' 誌1969年3月号に掲載された座談会 '来るか電化楽器時代! - ジャズとオーディオの新しい接点 -' をお送りしたいと思います。こちらは4名の識者、'スイングジャーナル ' 誌編集長の児山紀芳氏、テナーサックス奏者の松本英彦氏、オーディオ評論家の菅野沖彦氏、そして当時Ace Toneことエース電子工業専務、後に独立してRolandを設立した梯郁太郎氏らが 'ジャズと電気楽器の黎明期' な風景について興味深く語り合います。特にAce Toneの製品群の中で、最も謎めいているであろう管楽器用オクターバーMulti-Vox EX-100&ピックアップPU-10について開発者の梯さんから述べられるというのは貴重な証言!







-電化楽器の原理を探る-

- 児山
今回の座談会は、去年あたりから市販されて非常に話題になっているエレクトリック・インストゥルメントとしてのサックスやドラムといったようなものが開発されていますが、その電気楽器の原理が一体どうなっているのか、どういう特性をもっているのか、そしてこういったものが近い将来どうなっていくだろうかといったようなことを中心にお話を聞かせていただきたいと思います。そこでまずエース電子の梯さんにメーカーの立場から登場していただき、それからテナー奏者の松本英彦さんには、現在すでにエレクトリック・サックスを時おり演奏していらっしゃるという立場から、菅野沖彦さんには、ジャズを録音していくといった、それぞれの立場から見たいろんなご意見をお伺いしたいと思うんです。

まず日本で最初にこの種の製品を開発市販された梯さんに電化楽器というものの輪郭的なものをお話願いたいと思うんですが。

- 梯
電気的に増幅をして管楽器の音をとらえようというのは、もう相当以前からあったんですが、実際にセルマーとかコーンとかいった管楽器の専門メーカーが商品として試作したのは3年ぐらい前です。それが2年ぐらい前から市販されるようになったわけです。

- 児山
これは結局いままでのエレクトリック・ギターなどとは別であると考えていいわけですか。

- 梯
ええ、全然別なんです。これらの電化管楽器が、ギターなどと一番違うところは、コードのない単音楽器だけができる電気的な冒険というのが一番やりやすいわけです。といいますのは、コードになった時点からの増幅段というのは絶対に忠実でなければならない。ところが単音というのはどんな細工もできるわけです。この単音のままですと、これはまだ電子音なんです。そこに人間のフィーリングが入って初めて楽音になりますが、そういった電気的な波形の冒険というのが、単音楽器の場合いろいろなことができるわけです。その一例として、オクターブ上げたり下げたりということが装置を使うと簡単に実現することができるんです。コードの場合はその一音づつをバラバラにしてオクターブ上げたり下げたりしてまた合接する・・これはちょっと不可能なわけですね。

- 児山
これら電化楽器のメリットというか特性的なことをいまお話し願いましたが、そこでいかにして電気的な音を出しているのかという原理をサックスに例をとってわかりやすくお願いしたいんですが。

- 梯
現在市販されているものを見ますと、まずマイクロフォンを、ネックかマウスピースか朝顔などにとりつける。そのマイクもみんなエア・カップリング・マイク(普通のマイク)とコンタクト・マイク(ギターなどについているマイク)との中間をいくようなそういったマイクです。ですからナマのサックスの音がそのまま拾われてるんじゃなくて、要するに忠実度の高いマイクでスタジオでとらえた音とはまったく違うものなんですよ。むしろ音階をとらえてるような種類のマイクなんです。音色は、そのつかまえた電気のスペースを周波数としてとらえるわけです。それを今度はきれいに波を整えてしまうわけです。サックスの音というのは非常に倍音が多いものですから基本波だけを取り出す回路に入れて今度はそれを1/2とか1/4とか、これは卓上の計算機のほんの一部分に使われている回路ですけど、こういったものを使ってオクターブ違う音をつくったりするわけですよ。これらにも2つのモデルがあって、管楽器にアタッチメントされている物ですと、むしろ奏者が直ちに操作できることを主眼に置いて、コントロール部分を少なくして即時性を求めてるものと、それから複雑な種々の操作ができるということに目標を置いた、据え置き型(ギブソンのサウンド・システム)といったものがあるわけです。

- 児山
これで大体原理的なことはわかりますが。

- 菅野
わかりますね。

- 松本
ところが、これから先がたいへんなんだ(笑)。

- 児山
じゃ、そのたいへんなところを聞かせてください。それに現在松本さんはどんな製品を・・。

- 松本
現在セルマーのヴァリトーンです。しかし、これどうも気に入らないので半年かかっていろいろ改造してみたんだけど、まだまだ・・。サックスは、サックスならではの音色があるんですよ。それがネックの中を通して出る音はまず音色が変わるんですね。それから、音が出てなくてもリードなどが振動していたり、息の音などが拾われて、オクターブ下がバァーッと出るんですよ。

- 梯
それはコンタクト・マイクの特性が出てくるわけなんです。

- 菅野
わずかでもエネルギーがあればこれは音になるわけですね。

- 梯
ですから、マウス・ピースに近いところにマイクをつけるほど、いま松本さんのいわれたような現象が起るわけなんです。かといって朝顔につけるとハウリングの問題などがあるわけなんです。

- 松本
ちっちゃく吹いても、大きなボリュームの音が出るというのは、サックスが持つ表情とか感情というものを何か変えてしまうような気がするねェ。一本調子というのかなあ。それに電気サックスを吹いていると少し吹いても大きな音になるから、変なクセがつくんじゃないかなんて・・。初めオクターブ下を使ってたとき、これはゴキゲンだと思ったけど、何回かやってると飽きちゃうんだね。しかし、やっぱりロックなんかやるとすごいですよ。だれにも音はまけないし、すごい鋭い音がするしね。ただ、ちょっと自分自身が気に入らないだけで、自分のために吹いているとイージーになって力いっぱい吹かないから、なまってしまうような・・。口先だけで吹くようになるからね。

- 児山
それもいいんじゃないですか。

- 松本
いいと思う人もありますね。ただぼくがそう思うだけでね。電気としてはとにかくゴキゲンですよ。

- 児山
いま松本さんが力強く吹かなくても、それが十分なボリュームで強くでるということなんですが、現在エレクトリック・サックスの第一人者といわれるエディ・ハリスに会っていろんな話を聞いたときに、エレクトリック・サックスを吹くときにはいままでのサックスを吹くときとはまったく別のテクニックが必要であるといってました。

- 松本
そうなんですよ。だからそのクセがついてナマのときに今度は困っちゃうわけ。

- 児山
だから、ナマの楽器を吹いているつもりでやると、もうメチャクチャになって特性をこわしてしまうというわけです。結局エレクトリック・サックスにはそれなりの特性があるわけで、ナマと同じことをやるならば必要ないわけですよ。その別のものができるというメリット、そのメリットに対して、まあ新しいものだけにいろんな批判が出てると思うんですよね。いま松本さんが指摘されたように音楽の表情というものが非常に無味乾燥な状態で1本やりになるということですね。

- 松本
ただこの電気サックスだけを吹いていれば、またそれなりの味が出てくるんだろうと思うんですが、長い間ナマのサックスの音を出していたんですからね・・。これに慣れないとね。

- 児山
やっぱりそういったことがメーカーの方にとっても考えていかなきゃならないことなんですかね。

- 梯
ええ。やはり電子楽器というのは、人間のフィーリングの導入できるパートが少ないということがプレイヤーの方から一番いやがられていたわけです。それがひとつずつ改良されて、いま電子楽器が一般に受け入れられるようになった。しかし、このエレクトリック・サックスというのはまだ新しいだけに、そういう感情移入の場所が少ないんですよ。

- 松本
ぼくが思うのは、リードで音を出さないようなサックスにした方がおもしろいと思うな。だって、実際に吹いている音が出てくるから、不自然になるわけですよ。

- 梯
いま松本さんがいわれたようなものも出てきてるわけなんですよ。これは2年前にフランクフルトで初めて出品された電気ピアニカなんですが・・。

- 松本
吹かなくてもいいわけ・・。

- 梯
いや吹くんです。吹くのはフィーリングをつけるためなんです。これは後でわかったのですが、その吹く先に風船がついていて、その吹き方の強弱による風船のふくらみを弁によってボリュームの大小におきかえるという方法なんです。ですから人間のフィーリングどうりにボリュームがコントロールされる。そして鍵盤の方はリードではなく電気の接点なんです。ですからいままでのテクニックが使えて、中身はまったく別のものというものも徐々にできつつあるわけなんです。

- 松本
電気サックスの場合、増幅器の特性をなるべく生かした方が・・いいみたいね。サックスの音はサックスの音として、それだけが増幅されるという・・。

- 菅野
いまのお話から、われわれ録音の方の話に結びつけますと、電子楽器というものは、われわれの録音再生というものと縁があって近いようで、その実、方向はまったく逆なんですよね。電子楽器というのは新しい考え方で、新しい音をクリエートするという方向ですが、録音再生というのは非常に保守的な世界でして、ナマの音をエレクトロニクスや機器の力を使って忠実に出そうという・・。というわけで、われわれの立場からは、ナマの自然な楽器の音を電気くさくなく、電気の力を借りて・・という姿勢(笑)。それといまのお話で非常におもしろく思ったのは、われわれがミキシング・テクニックというものを使っていろいろな音を作るわけですが、電子楽器を録音するというのは、それなりのテクニックがありますが、どちらかというと非常に楽なんです。電子楽器がスタジオなりホールなりでスピーカーからミュージシャンが音を出してくれた場合には、われわれはそれにエフェクトを加える必要は全然ない。ですからある意味ではわれわれのやっていた仕事をミュージシャンがもっていって、プレーをしながらミキシングもやるといった形になりますね。そういうことからもわれわれがナマの音をねらっていた立場からすれば非常に残念なことである・・と思えるんですよ。話は変わりますが、この電化楽器というのは特殊なテクニックは必要としても、いままでの楽器と違うんだと、単にアンプリファイするものじゃないんだということをもっと徹底させる必要があるんじゃないですか。

- 梯
現在うちの製品はマルチボックスというものなんですが、正直な話、採算は全然合ってないんです。しかし、電子楽器をやっているメーカーが何社かありますが、管楽器関係のものが日本にひとつもないというのは寂しいし、ひとつの可能性を見つけていくためにやってるんです。しかし、これは採算が合うようになってからじゃ全然おそいわけですよ。それにつくり出さないことには、ミュージシャンの方からご意見も聞けないわけですね。実際、電子管楽器というのは、まだこれからなんですよ。ですからミュージシャンの方にどんどん吹いていただいて、望まれる音を教えていただきたいですね。私どもはそれを回路に翻訳することはできますので。






-電気サックスを振り回すエディ・ハリス-

- 菅野
松本さん、サックスのナマの音とまったく違った次元の音が出るということがさきほどのお話にありましたね。それが電子楽器のひとつのポイントでもあると思うんですがそういう音に対して、ミュージシャンとしてまた音楽の素材として、どうですか・・。

- 松本
いいですよ。ナマのサックスとは全然違う音ならね。たとえば、サックスの「ド」の音を吹くとオルガンの「ド」がバッと出てくれるんならばね。

- 菅野
そういう可能性というか、いまの電気サックスはまったく新しい音を出すところまでいってませんか。

- 梯
それはいってるんですよ。こちらからの演奏者に対しての説明不十分なんです。要するに、できました渡しました・・そこで切れてしまってるわけなんです。

- 菅野
ただ、私はこの前スイングジャーナルで、いろんな電化楽器の演奏されているレコードを聴いたんですが、あんまり変わらないのが多いんですね。

- 児山
どういったものを聴かれたんですか?

- 菅野
エディ・ハリスとか、ナット・アダレーのコルネット、スティーブ・マーカス・・エディ・ハリスのサックスは、やっぱりサックスの音でしたよ。

- 梯
あのレコードを何も説明つけずに聴かせたら、電子管楽器ということはわからないです。

- 児山
そうかもしれませんが、さきほど菅野さんがおっしゃったようにいまそういったメーカーの製品のうたい文句に、このアタッチメントをつけることによってミュージシャンは、いままでレコーディング・スタジオで複雑なテクニックを使わなければ創造できなかったようなことをあなた自身ができる、というのがあるんです。

- 菅野
やはりねェ。レコーデットされたような音をプレイできると・・。

- 梯
これはコマーシャルですからそういうぐあいに書いてあると思うんですが、水準以上のミュージシャンは、そういう使い方はされていないですね。だからエディ・ハリスのレコードは、電気サックスのよさを聴いてくださいといって、デモンストレーション用に使用しても全然効果ないわけです。

- 菅野
児山さんにお聞きしたいんですが、エディ・ハリスのプレイは聴く立場から見て、音色の問題ではなく、表現の全体的な問題として電子の力を借りることによって新しい表現というものになっているかどうかということなんですが・・。

- 児山
そもそもこの電気サックスというのは、フランスのセルマーの技師が、3本のサックスを吹く驚異的なローランド・カークの演奏を見てこれをだれにもできるようにはならないものかと考えたことが、サックスのアタッチメントを開発する動機となったといわれてるんですが、これもひとつのメリットですよね。それに実際にエディ・ハリスの演奏を聴いてみると、表情はありますよ。表情のない無味乾燥なものであれば絶対に受けるはずがないですよ。とにかくエディ・ハリスは電気サックスを吹くことによってスターになったんですからね。それにトランペットのドン・エリスの場合なんか、エコーをかけたりさらにそれをダブらせたりして、一口でいうならばなにか宇宙的なニュアンスの従来のトランペットのイメージではない音が彼の楽器プラス装置からでてくるわけなんです。それに音という意味でいうならば、突然ガリガリというようなノイズが入ってきたり、ソロの終わりにピーッと鋭い音を入れてみたり、さらにさきほど松本さんがいわれたように吹かなくても音がでるということから、キーをカチカチならしてパーカッション的なものをやったりで・・。

- 松本
私もやってみましたよ。サックスをたたくとカーンという音が出る。これにエコーでもかけると、もうそれこそものすごいですよ(笑)。

- 児山
エディ・ハリスの演奏の一例ですが、初め1人ででてきてボサ・ノバのリズムをキーによってたたきだし、今度はメロディを吹きはじめるわけなんです。さらに途中からリズム・セクションが入るとフットペダルですぐにナマに切り換えてソフトな演奏をするというぐあいなんですよ。またコルトレーンのような演奏はナマで吹くし、メロディなんかではかなり力強くオクターブでバーッと・・。つまり、彼は電気サックスの持つメリットというものを非常に深く研究してました。

- 菅野
それが電化楽器としてのひとつのまっとうな方法なんじゃないですか。でも、あのレコードはあんまりそういうこと入ってなかったですよね。

- 児山
つまり、エディ・ハリスのレコードは完全にヒットをねらったものでして、実際のステージとは全然別なんです。また彼の話によると、コルトレーンのようなハード・ブローイングを延々20分も吹くと心臓がイカレちゃうというわけです(笑)。そしてなぜ電気サックスを使いだしたかというと、現在あまりにも個性的なプレイヤーが多すぎるために、何か自分独自のものをつくっていくには、演奏なり音なりを研究し工夫しなければならない。たとえば、オーボエのマウス・ピースをサックスにつけたりとかいろんなことをやっていたが、今度開発された電気サックスは、そのようないろいろなことができるので、いままでやってたことを全部やめてこれに飛び込んだというんですよ。

- 菅野
非常によくわかりますね。





-ハウリングもノイズも自由自在-

- 児山
ラディックというドラム・メーカーが今度電化ヴァイブを開発して、ゲーリー・バートンが使うといってましたが、彼の場合は純粋に音楽的に、そのヴァイブがないと自分のやりたいことができないというわけですよ。なぜかというと、自分のグループのギター奏者が、いままでのギター演奏とは別なフィードバックなどをやると、ほかの楽器奏者もいままで使ってなかったようなことをやりだした。そういう時にヴァイブのみがいままでと同じような状態でやっているというのは音楽的にもアンバランスであるし、グループがエレクトリック・サウンズに向かったときには自分もそうもっていきたいというわけなんですよ。もしそれをヴァイブでやることができれば、どういう方向にもっていけるかという可能性も非常に広いものになるわけですよね。

- 梯
それから、いままでの電子楽器というのは、とにかくきれいな音をつくるということだけから音が選ばれた。ところが音の種類には不協和音もあればノイズもある。そのことをもう一度考えてみると、その中に音の素材になりうるものがたくさんあるわけです。たとえばハウリングですが、以前にバンクーバーのゴーゴー・クラブへいったとき、そこでやってたのがフィードバックなんです。スピーカーのまん前にマイクをもってきてそいつを近づけたり離したりして、そこにフィルターを入れてコントロールして、パイプ・オルガンの鍵盤でずっとハーモニーを押さえ続けてるようなものすごく迫力のある音を出すんです。そんなものを見て、これはどうも電子楽器の常識というものをほんとうに捨てないと新しい音がつくれないと思いましたね。

- 児山
そうですね。ですから、いまこういう電子楽器、あるいは楽器とは別なエレクトリックな装置だけを使って、ジャズだといって演奏しているグループもあるわけです。まあそれにはドラムやいろいろなものも使ったりするわけですが、いわゆる発振器をもとに非常に電気的な演奏をしているわけなんですよ。

- 松本
ただ音は結局電子によってでるんだけど、オルガン弾いてもサックス吹いても同じ音が出るかもしれない。弾いてる人の表情は違うけれども、そういうのがあったらおもしろいと思いますね。

- 菅野
それにもうひとつの問題は、発振器をもとにしたプレーは、接点をうごかしていくといった電子楽器と根本的に違うわけだ。電気サックスなどは、松本さんがいわれているようにナマの音が一緒に出てくるという。そこが問題ですね。だからナマの音も積極的に利用して、ナマの音とつくった音を融合して音楽をつくっていくか、それともナマの音はできるだけ消しちゃって電子の音だけでいくか・・。

- 児山
それはミュージシャン自身の問題になってくるんじゃないかな。たとえばリー・コニッツなどのようにだれが聴いてもわかる音色を持っている人は変えないですね。自分の音を忠実に保ちながらオクターブでやるとか・・。

- 梯
しかしその場合、音色は保ち得ないんです。つまりその人その人のフィーリング以外は保ち得ないんですよ。

- 児山
なるほど、そうすると音楽的な内容がその個性どうりにでてくるということなんですね。

- 菅野
一般に音というものはそういうものの総合なんで、物理的な要素だけを取り上げるのは困難なわけです。そういったすべてのものがコンバインされたものをわれわれは聴いているわけですから、その中からフィーリングだけを使っても、リー・コニッツ独特なものが出てくれば、これはやはりリー・コニッツを聴いてるわけですよ。

- 松本
それならいいけどサックスというのはいい音がするわけですよ。それをなまはんかな拡声装置だといけない。それだとよけいイヤになるんですよ。





-ついに出現した電気ドラム-

- 児山
ニューポートに出演したホレス・シルヴァー・クインテットのドラマー、ビリー・コブハムがハリウッド社のトロニック・ドラムという電気ドラムを使用していましたが、あれはなんですか。

- 梯
うちでも実験をやっています。ロックなどの場合、エレキのアンプが1人に対して200W、リードが200Wならベースは400Wくらい。そうなってくるといままで一番ボリュームがあったドラムが小さくなってきたわけですよ。最初はドラムの音量をあげるだけだったのですが、やってみるとマイクのとりつけ方によって全然ちがった効果が出てきたわけですよ。

- 菅野
それは具体的に各ドラム・セットの各ユニットに取り付けるわけですか。

- 梯
最初は単純に胴の中にマイクを取り付けただけでしたが、いまはコンタクト・マイクとエア・カップリング・マイクの共用でやっていますね。

- 菅野
シンバルなんかは・・。

- 梯
バスドラム、スネア、タム・タムにはついていますが、シンバルはちょっとむずかしいのです・・。でもつけてる人もいるようですね。

- 菅野
ではいまの形としては、新しい音色をつくろうとしているわけですね。

- 梯
そうですね。現在ははっきりと音色変化につかってますね。

- 松本
でもやはりこの電気ドラムとてナマの音が混じって出るわけですよね。ナマの音がでないようにするにはできないのですか。

- 梯
それはできるんですよ。市販はしてないんですが、ドラムの練習台のようなものの下にマイクをセッティングするわけなんですよ。いままでのドラム以外の音も十分でますがシンバルだけはどうもね。らしき音はでるんですが。

- 松本
いままでの何か既成があるからでしょう。

- 梯
そうですね。だからシンバルはこういう音なんだと居直ってしまえばいいわけ・・。それぐらいの心臓がなきゃね(笑)。

- 菅野
本物そっくりのにせものをつくるというのはあまりいいことではない。あまり前向きではないですよ。よくできて本物とおなじ、それなら本物でよりいいものを・・。

- 松本
だから電気サックスでも、ナマの音をだそうとしたんじゃだめですね。これじゃ電気サックスにならない。

- 梯
松本さんにそういわれるとぐっとやりやすくなりますよ(笑)。

- 児山
電気サックスというのはだいたいいくらぐらいなんですか?

- 松本
ぼくのは定価85万円なんですよ。でもね高いというのは輸入したということからですからね。そのことから考えると・・。

- 梯
松本さんの電気サックスはニューオータニで初めて聴いたんです。これは迫力がありましたね。

- 松本
すごい迫力です。でも、それに自分がふりまわされるのがいやだから・・。

- 梯
こちらから見たり聴いたりしていると松本さんが振り回しているように見えるから、それは心配いらないですよ(笑)。

- 松本
それに運ぶのがどうもねェ。いままではサックスひとつ持ってまわればよかった。ギターなんかじゃ最初からアンプを持って歩かなければ商売にならないとあきらめがあるんですが、ぼくはなにもこれがなくたってと考えるから・・。そういうつまらないことのほうが自分に影響力が大きい・・(笑)。

- 児山
やはりコンサートなどで、おおいにやっていただかないと、こういった楽器への認識とか普及とかいった方向に発展していかないと思いますので、そういう意味からも責任重大だと思います。ひとつよろしくお願いします。それに、いまアメリカあたりでは電子楽器が非常に普及してきているわけなんですよ。映画の音楽なんかも、エレクトリック・サウンズ、エレクトリック・インスツルメントで演奏するための作曲法なんていうのはどうなるんですかねェ・・。

- 松本
これがまたたいへんな問題ですが、非常にむずかしいですね。

- 児山
それがいまの作曲家にとって一番頭のいたいことになってるんですね。

- 菅野
あらゆる可能性のあるマルチプルな音を出しうる電化楽器が普及すれば、新しい記号をつくるだけでもたいへんですね。

- 松本
そのエレクトリック・インスツルメントのメーカーだって指定しなければならないし・・。作曲家もその楽器も全部こなさなきゃならないですからね。

- 児山
そのように色々な問題もまだあるわけなんですが、現実にはあらゆる分野の音楽に、そしてもちろんジャズの世界にも着々と普及してきつつあるわけなんです。この意味からも電化楽器の肯定否定といった狭い視野ではなく、もっと広い観点から見守っていきたいですね。







'アンプリファイ' における電気的特性、その '使いづらさ' とナマのサックスにおける音色へのこだわり、一方で電化における新しい音色、奏法を探求することで '新たな楽器' を見つけて欲しいことが技術者から提起されるなど、すでにこの時点で相当のアプローチと対立点として開陳されていることが伺えます。プレイヤーの立場から松本英彦氏が提起するのはこれからしばらくして登場したウィンド・シンセサイザーに当てはまるものですけど、氏が後にコレにアプローチしたという話は聞かない・・(笑)。やはり三枝文夫氏と同じく梯郁太郎氏もこの '新たな楽器' に対してなかなか従来の奏者やリスナーが持つ価値観、固定観念を超えて訴えるところまで行かないことにもどかしさがあったのでしょうね。しかし、この頃からすでにRoland V-DrumsやAerophoneの原初的アイデアをいろいろ探求していたんすね・・梯さん凄い!


そして、オクターバーは同時代のエフェクターであるファズのヴァリエーションとも言えるものなのですが、そんなファズについて後年、梯さんがAce ToneからRolandにかけて手がけた流れを述べた 'ギターマガジン' 誌2003年5月号のインタビューをどうぞ。当時のロックと '世界同時革命' 的にエレクトロニクスの分野であらゆる音の発見、可能性が探求されていた一端を垣間見ることが出来まする。

- 梯さんが 'ファズ' と言われて真っ先に連想することは何でしょうか?

- 梯
あのね、三味線なんですよ。三味線のルーツは中国だけど、日本独特のアイディアが加わったんです。日本の三味線は、一の糸(最も低音の弦、ギターとは数え方が逆)だけが上駒(ギターで言うナットにあたる部分)がなくて指板に触れている。だから、二の糸、三の糸の弦振動は楕円運動で上下左右対称に振動するのに対して、一の糸は非対称の波形で振動して、なおかつ弦が指板に当たることで独特の歪み音を作っていたわけです。それが三味線の演奏上、非常に生きていた。そしてその後、三味線を見習ったわけじゃなく、ギタリストがそういう音を欲しがったんです。耳で見つけ出してね。あとから考えると、昔の人もファズ的な音の必要性を感じたんでしょう。3本の弦のうち1本を犠牲にするほどの意味を持っていたわけですから。

- 1960年代当時は、どうやってあの音を模索したんですか?

- 梯
プレイヤーの皆さんはいろんなことを試しましたよ。スピーカーのコーン紙を破ってみたりしてね。もちろんどれも結果的には失敗だったんですけど、音としては、弾いたものが非対称に振動して、その時に原音とまったく異なった倍音構成を持つ音をともなって出てくるというのがファズの概念だったんじゃないかな。そもそもファズの定義がありませんでしたし、電気回路として考えたら無着苦茶な回路なんです。でも音楽家の耳がその音を要求したことでそれが生まれた。頭の堅い電気屋にはとうてい出てこない回路ですよ。

- 当時すでにアンプに大入力を入れたオーバードライブ・サウンドは発見されてましたよね?

- 梯
ありましたよ。ただ、オーバードライブは入力信号が左右対称で、ギターの音っていうのはバーン!と弾いた時が振幅が大きくて、だんだん小さくなっていきますよね。その上下のピークがアンプ側によって削られる、これが技術的に見たオーバードライブの音だった。特にギターは、バーンと弾いた時の振幅が非常に大きいから歪むことが多かったんです。で、当時のアンプはすべて真空管ですよね。真空管はセルフ・バイアスという機能をちゃんと持っていて、大きな信号が入ってくるとバイアス点が変わって歪むポイントも変わるんですよ。そうすると独特の歪みになる。これが、同じ歪みでもトランジスタと比べて真空管の歪みの方が柔らかいとか、耳あたりがいいと感じる理由なんです。まぁ、オーバードライブとかディストーションとか、呼び分けるようになったのはもっとあとの話でね、中でもファズは波形を非対称にするものだから、独立した存在でした。


- マエストロのファズ・トーンが発売された1962年頃、梯さんはすでにエース電子を設立していますが、その当時日本でファズは話題になったんですか?

- 梯
ほとんど使われなかったですね。ジミ・ヘンドリクスが出てきてからじゃないかな、バーっと広まったのは。GSの人たちはそんなに使ってなかったですよ。使っていたとしても、使い方がまだ手探りの段階だったと思います。

- 国内ではハニーが早くからファズを製作していましたよね。ハニーはトーンベンダー・マークⅠを参考にしたという説もありますが。

- 梯
いやいや、そんなことはないんですよ。彼ら自身が耳で決めたのだと思います。ハニーを設計した人物はその後にエーストーン、ローランドに入社した人ですからその辺の事情は聞いてますけど、ハニーは歪んだ音にエッジをつけて微分する・・要するに低音部を抑えて、真ん中から上の音を強調する回路になっていて、当時としては新しい種類の音でしたね。


- エーストーンも今や名機とされるファズ・マスターFM-2、そしてFM-3を発売しています。これらは70年代に入った頃に発売されていますが、当時の売れ行きはどうでしたか?

- 梯
両方ともよく売れてましたよ。よくハニーとの関連について聞かれるんだけど、設計者は別の人です。

- そしてその後にローランドを設立するわけですが、ローランド・ブランドではBeeGeeやBeeBaaといったファズを早々に発表しています。やはり需要はあったということですよね?

- 梯
ありましたね。鍵盤なんかとは違って店頭で売りやすい商品だったのと、その頃にはファズがどういうものかということをお客さんもわかってきていたから。あと面白い話があって、ローランドのアンプ、JC-120の開発もファズと同時期に進めていたんです。根本に戻るとこのふたつは同時発生的に始まっていて、片一方は歪み、片一方はクリーンという対極的な内容のものを作ろうとしていたんですね。そしてJCのコーラスのエンジン部分を抜き出したのが、単体エフェクターのCE-1なわけです。

- そうだったんですね。また、当時の特徴として、ファズとワウを組み合わせたモデルも多かったですよね?ローランドだとDouble Beat (AD-50)なんかも出てますし。

- 梯
そうですね。ファズを使うことでサスティンが伸びるでしょ。そのサスティンを任意に加工できるのがワウだったんです。音量を変えたり、アタックを抑えてだんだん音が出るようにしたりできたから。

- 当時を改めて振り返って、思うところはありますか?

- 梯
ハードとソフト、要するにメーカーとプレイヤーの関係は、ハードが進んでいる場合もあるし、ソフトが進んでいる場合もあるんですけど、ファズに関しては音楽家が一歩先を行っていたということですね。それを実現するのに、たまたま半導体が使えたことでこれだけ普及したんだと思います。

- なるほど。その後70年代後半〜90年頃まで 'ファズ' 自体が消える時代がありますが。

- 梯
いや、消えたんじゃなくて、ハード・ロックが出てきて音質がメタリックなものに変わっただけなんです。当初のファズのようにガンガン音をぶつけるんではなく、メロディを弾くためにああいう音に変わった。メタル・ボックスとか、メタライザーとかって名前をつけてましたけど、あれはファズの次の形というか、ファズがあったからこそ見つかった音なわけです。時代で考えてもそうで、ファズがあれだけ出回ったことで、次にハード・ロックが出てきたという自然な流れがあったんだと思います。

- そして90年代にはグランジ/オルタナの流行によって、ファズが再評価されるようになりますね。

- 梯
それは音楽の幅が広がったからですよ。当初、ファズは激しい音楽の部類にしか使われなかったけど、ギターの奏法面でも向上とともに、最初にあった音が見直された。メタリックに歪むものより、あえて昔のファズであったり、OD-1であったりの音でメロディックに弾こうとしたんでしょうね。

- 今ファズを製作している各メーカー、ガレージ・メーカーに対して、梯さんが思うことは?

- 梯
新しい人が新しい目標でやられるのはいいことです。でも、特定のプレイヤーの意見だけではダメ。10人中10人に受け入れられる楽器なんてないですけど、10人のうち3人か4人が賛同してくれるなら作る意味があると思います。それに、流行があとからついてくるパターンもたくさんあって、ローランドのCE-1なんてまさにそのパターン。1年半売れなかったのに、ハービー・ハンコックがキーボードに使っている写真が雑誌に出たのがきっかけで爆発的に売れたんです。もともとギタリスト向けに作ったのに(笑)。そういう風に、使い道をミュージシャンが見つけた時に真価が出てくることもありますよ。

- ありがとうございました。最後にファズを使っているギタリストに何かメッセージを。

- 梯
何のためにファズを使うのか、もしくは使おうとしているのか、それをもう一度考えてほしいなぁと思います。そして、演奏技法をクリエイトしてもらえると、楽器を作っている者としては嬉しいですね。