⚫︎限られた予算で多機能なヤツが欲しい。
管楽器でエフェクターを使ってみたい!という '初めの一歩' としては、やはりBoss VE-20 Vocal Processorが良いのではないでしょうか。マイク(コンデンサー及びダイナミック)を本体に繋ぐだけで、オクターバーからハーモナイザー、モジュレーション、ディストーション、ディレイ、リヴァーブにループ・サンプラーといった機能が一台で楽しめちゃいます。また本機にはヘッドフォン端子も備えられているので、とりあえずマイクと本機さえあればそのまま自宅でヘッドフォンによるモニターができ、アンプや簡易PA一式は必要ありません。
→Boss VE-20 Vocal Processor
とかくマイクからプリアンプ、ミキサーやパワーアンプなどの '初期投資' で散財しやすい管楽器の 'アンプリファイ' ですが、コイツは自宅からライヴ、レコーディングにまで一台で多方面に活躍してくれますヨ。難点としてはいわゆるマルチ・エフェクターの仕様なので、音作りからプログラムの手間を小さなLED画面や取説と睨めっこしながらやらなければならないこと。まず、自分の使いやすいようにセッティングをして、初めてその機能の真価を発揮する機材ですね。実売価格は25,000円ほどではありますが、ネットで中古良品を検索すれば16,000円〜19,000円前後で見つかると思います。
⚫︎少々の '豊かな予算' があり音質も落としたくない。
→Radial Engineering EXTC-SA
→Radial Engineering Voco-Loco
→Audio-Technica VP-01 Slick Fly
→Eventide Mixing Link
マイク入力の備えた機器を用いるのならいざ知らず、マイクからアンバランス・フォンで直接エフェクターへと接続する場合、インピーダンス・マッチングの面で不具合が出てくるものです。管楽器の 'アンプリファイ' にはいくつかの接続法があり、PAの観点から一般的なのは、まずマイクの音声をそのままPAミキサーへ入力、ミキサーのバスアウトからステージ上へDIを用いて出力してコンパクト・エフェクター、そして再びDIを介してミキサーに戻して各種モニターに振り分けていくやり方が多いです。この際に用いるDIとしては、Radial Engineering EXTC-SAのようなライン・レベルと楽器レベルの信号をインサートでやり取りできるもの、もしくは同社のVoco-Loco、Eventide Mixing Linkなど特化したものが便利ですね。いやあ、Radial製品はさすがに高いよ・・という方には、Audio-Technica VP-01が安価ながら日本製の堅実な作りでオススメします。PAの考え方としてはまず管楽器からの原音を確保しておくということで、間に挟むエフェクター類の不備などがあった場合、すぐに原音を確保してステージ上の進行を妨げないことにあります。また、一度ライン・レベルにインピーダンス・マッチングをした上で楽器レベルやマイク・レベルの各種信号とやり取りをすることは、モニターからのハウリング・マージン確保の意味合いもあるでしょう。マイクはファンタム電源の必要なコンデンサー・マイクが一般的です。
⚫︎最も '安価' かつ気軽にやってみたい。
インピーダンスの説明はあまりに専門的で手に余る為(汗)、ここでは 'ロー出しハイ受け' の公式を覚えておくだけで十分。これは '低いインピーダンスで出力して高いインピーダンスで受ける' というもので、マイクやラインなどの 'ロー・インピーダンス' は、直接ギターを接続できるよう設計されたコンパクト・エフェクターなどの 'ハイ・インピーダンス' 入力で受ける限り、基本的に問題はないということです。もちろん、'基本的に' という言葉の通り、何事もセオリーはそうだということであって、実際は各機器の条件や設計思想によりこのインピーダンス・マッチングには微妙な 'バラツキ' があります。ものによっては歪んでしまったり、一応使えるけどゲインは低かったりという場合が往々にして現れるんですよね・・。以下は、電源不要のダイナミック・マイクからアンバランスでエフェクターに出力する場合、そのインピーダンス・マッチングを図る個人的なやり方3選。
①インピーダンス・トランスフォーマーを使う。
②プリアンプを使う。
③ 'Board Master' を使う。
→Sennheiser Evolution e608
→Hosa MIT176
→Classic Pro ZXP212T
→Classic Pro APP211L
わたしの '対処法' は以上の通り。①は最もお手軽かつ安価に済ませられる方法で、サウンドハウス・プロデュースのClassic ProやHosaのインピーダンス・トランスフォーマーを用いるものです。電源を必要としないダイナミック・マイク限定ではありますが、マイクのXLR(オス)端子からこのインピーダンス・トランスフォーマーに繋ぎ、そのままコンパクト・エフェクターへ入力して下さい。それぞれHosa XLR(メス)200Ω - TSフォン(オス)50kΩ、Classic Pro XLR(メス)600Ω - TSフォン(オス)50kΩの値となりますが、単なる 'インピーダンス変換' なので音色的には可もなく不可もなし。ちなみにClassic Pro APP211LはフォンとXLR(オス)の変換アダプターなのですが、これはPiezo Barrelの出力の高いアクティヴ・ピックアップでインピーダンス・トランスフォーマーを用いる場合に使います。
→TDC-You
→TDC by Studio-You Mic Option
→Neotenic Sound Buff-Cannon
また、このようなインピーダンス・マッチングをパッシヴのエフェクター型ボックスにしたのがTDC by Studio-YouのMic Option。以前にNeotenic Soundからも同様のコンセプトの製品が発売されておりましたが(というか、試作されていた管楽器用プリアンプPure Windの発売はまだでしょうか?)、このTDC-Youは、関西でハンドメイドにより各種エフェクターやライン・セレクター、DIなどを高品位に少量生産している工房で、エフェクターボードなどに固定させるインピーダンス・トランスフォーマーとして便利に使えますね(ファンタム電源対応のコンデンサー・マイクは不可)。すでにBuff-Cannonが手に入れられない者にとって有難い一品。
→Joemeek Three Q
→Neotenic Sound Board Master
そして、もう少し自分好みの音色に補正できないか、ということではやはり②が便利。マイクプリは正直、価格帯によってそれぞれの製品によるキャラクターの違いがあり、こだわるほど高価となるのですが、仕様としてはXLR入力でフォンのライン出力を備えた機種が条件となり、わたしとしてはJoemeek Three Qが使いやすいですね。本機はマイクプリ、オプティカル式のコンプレッサー、3バンドEQを備えた 'チャンネル・ストリップ' で、特に-10dBvと+4dBuのPad切り替えの付いたライン出力が重宝します。ここでは-10dBvにしてコンパクト・エフェクターへ接続して下さい。③はすでに廃盤製品なのが残念なものの、この①②を統合してやってくれる便利なものです。'困った時のNeotenic頼み' というワケではありませんが、ホントに '痒いところへ手の届く' ブツをいろいろ製作してくれる有難い工房でございます。このようなマイクから直列でコンパクト・エフェクターに繋ぐやり方の場合、別個にDIを最終段に置いてPAのミキサーへと送ります。
⚫︎気軽だけど音質はそこそこ確保したい。
→Pigtronix Keymaster
単純にダイナミック・マイクでコンパクト・エフェクターも一緒に使えて、そのままDIとしても機能できるライン・セレクターはないの?という場合、このPigtronix Keymasterはいかがでしょう?上で紹介したVP-01 Slick FlyやVoco Loco、Mixing Linkなども同種製品ではあるのですが、特別ファンタム電源は必要ないな、というのならこのKeymasterが便利。マイクからインピーダンス・トランスフォーマー及びマイクプリを直列で繋いでも音は出ますが、このようなライン・セレクターを用いれば不要なエフェクターは一発でOn/Offして、そのまま劣化させることなく原音をPAへ送ることが可能なのです。また入出力にBoost機能を有しており、これがそのまま 'プリアンプ' としてあらゆるインピーダンスの機器に対応します。またXLR入出力のほか、フォンの入出力はアンバランスのTSフォン及びバランスのTRSフォンにそれぞれ対応します(同時使用は出来ません)。
とりあえず、ピックアップ・マイクを買ってみたけどどう組んでみればよいか分からない皆さま、それぞれの予算に応じて参考にして頂ければ幸いです。
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