さて、とディレイですねえ。早い話が谷山で叫ぶ 'こだま' の効果を機械的に再現するものでございます。1969年のマイルス・デイビスによる 'Bitches Brew' でのタップ・ディレイの効果が最も分かりやすいでしょうか。
ジェレミー・ペルトとランディ・ブレッカーによる 'Bitches Brew' のトリビュート・コンサートでしょうか。やっぱりこのタップ・ディレイの効果は再現しないと雰囲気でませんよね。ランディのオクターヴかけた感じはベニー・モウピンのバスクラ役!?
エフェクターの世界ではリヴァーブと並んで '空間系' というジャンルに括られており、同時に用いることによってそれこそ狭い四畳半のお部屋が広大な空間へと早変わりします。なんというか、荘厳な雰囲気の中でちと上手くなった気分というか。基本的にこのディレイというエフェクターはデジタルで設計されているものがほとんどです。もちろん、どうしても古臭い効果が欲しいのであれば、テープ式の真空管エコーであるFulltone Tube Tape Echoや、元Binson社でエンジニアをやっていたマルセロ・パトゥルノ氏がNOSパーツを使ってリビルドするEchorec 2 Special EVOといった磁気ディスク式エコーを購入することもできます。
まさに超アナログ!Maestro Echoplex EP-2をモデルにFulltoneのマイク・フラーが設計した真空管式テープ・エコーで、単に通すだけでも太い質感にしてくれるプリアンプとしての評価も高い逸品です。姉妹機としてトランジスタによるソリッドステート式のテープ・エコーもあります。下の動画は、マルセロ・パトゥルノが手がけるNOSパーツを用いたリビルド・モデルのEchorecでして、つまりBinson社閉鎖の際に、残されたパーツや工作機械の一部などを買い取り、現在のパーツと組み合わせてリビルドする '再生品' ということになります。特にEchorecの心臓部である磁気ディスク部分は当時のストック品をそのまま使っているので、ストック切れ次第リビルド終了ということでしょうね。
また、1970年代後半に現れたBBDチップによる電子式エコーのアナログ・ディレイなども未だ市場に用意されています。それでも使い勝手や可搬性、多機能という点ではデジタル・ディレイに勝るものはありません。最近の傾向としては、複数のディレイのパターンをプログラムし、スイッチング・システムと組み合わせてMIDIで呼び出して用いる多機能型が主流です。Eventide TimefactorやStrymon Timeline、Free The Tone FT-1Y Flight TimeにBoss Digital Delay DD-500、Korg SDD-3000 Pedalといったものが代表的ですね。ディレイ・タイムに数値が必要ないならTC Electronic Flashback X4というヤツもあります。共通しているのはとにかく高品位なディレイのトーン。デジタル・ディレイというのは皆どれもクリアーでキラキラとした空間を生成してくれるのですが、ここで上げたものはもうコンパクト・タイプにおいては最高峰と言っていいでしょう。
わたしが最初に購入したのがアナログ・ディレイの名機、Electro-Harmonix Deluxe Memory Manでした。太く荒い質感は最高ではありましたが、さすがに多彩なディレイの効果も欲しくなり続けて購入したのが、ちょうどKorgが 'Tone Works' シリーズの名で発売したデジタル・ディレイ、301 dl Dynamic Echo。コンパクトのサイズにして2つのディレイ・プログラムが組めるのと 'Hi-Fi / Lo-Fi' のディレイの質感を選択できるのは、当時の製品としてはかなり先取りしたものでした。何より、当時のコンパクト・タイプでは珍しい 'Ducking Delay' の機能(弾いたフレイズが終わると同時にディレイがかかるもの)は重宝しましたね。しかし、このサイズで行う2つのプラグラム設定が少々難しかった・・。
さて、それでも管楽器でここまで大げさなものが必要となる場面は少なく、単にタップ・テンポが付いていれば十分に力を発揮してくれます。Boss Digital Delay DD-7やTC Electronic Flashback Delay、Strymon Dual Digital Delay DIGなどはとても使いやすいと思いますね。また、'アナログ' 的質感が欲しいという方なら、Rolandのテープ式エコーの名機RE-201 Space Echoをまんま再現したRE-20 Space Echoを始め、Strymonによるテープの質感をシミュレートしたdTape Echo El Capistanや、BBDチップのアナログ・ディレイの質感をシミュレートしたdBucket Delay Brigadierなどがオススメ。そう、このBrigadierこそわたしが現在愛用しているものです。
このStrymonに行き着くまでのわたしの変遷は、一番最初に買ったElectro-Harmonixのアナログ・ディレイであるDeluxe Memory Man。ちょうどエレハモの復刻と合わせてヴィンテージ・エフェクターの人気が盛り上がり始めた頃で、たぶん雑誌のレビューを元に買ったと思います。その後、デジタル・ディレイが欲しくなりBoss DD-20 GigadelayやDigitechが新たにHardwireのブランドで出したDL-8 Delay / Looper、そしてSIB ! Mr. Echoという、デジタルながら 'アナログ・モデリング' の 'はしり' のような機種が足元を飾りました。このMr. Echoにも採用されているPT2399というデジタルICは、ほぼアナログ・ライクな質感を再現するチップとして、ここ最近の 'アナログ' や 'テープ' を '売り' にしたデジタル・ディレイの大半で使われるくらいポピュラーなものとなっています。BrigadierにはStrymon独自の技術であるDSPのテクノロジー 'dBucket' を用いて、BBDチップのアナログ・ディレイの質感をリアルに再現しています。おおよそデジタル・ディレイらしからぬ丸いくぐもったトーンを持ちながら、決して埋もれないデジタル的エッジを併せ持った 'ハイブリッドさ' は絶妙だと思いますね。約5秒ものロング・ディレイ、モジュレーション、スイッチひとつで発振する太いフィードバック、4分音符、付点8分音符、3連符からなるタップ・テンポ、アナログ・ディレイの特徴であるエイリアシング・ノイズを再現するBucket Lossというツマミ、エフェクトOn時のブーストレベルを+/-3dBの範囲で調整可、AD/DAを通らない原音の確保、トゥルーバイパス及びバッファードバイパスの選択可と至り尽くせりな作りです。
こちらはOoh La La Quicksilver Delayという、'アナログ・モデリング' ではなく本物のBBDチップを用いたアナログ・ディレイによるラッパのソロです。このくらいのショート・ディレイのテンポに合わせて吹くのがラッパにはピッタリですね。
前述のOoh La La Quicksilver Delayのようなショート・ディレイの効果というのは、ある意味ではリヴァーブ的な使い方とも言えます。このような単なるエコーをお手軽にペダルのみで全てのパラメータを担い、ディレイ・タイムからフィードバックまで足だけで賄おうという発想に特化してしまったのがこちら、Eye Rock Electronics O.K. Delayですね。タップ・テンポの機能はないですが、650msという短いディレイ・タイムはむしろソロには絶妙なタイム感覚で、自在にフィードバックやタイムを操作しながら '演奏' に組み込むという点でラッパ向き、かも。おっと、もちろんどうしても高品質かつ多機能なディレイが欲し〜という方は、こちらFree The Tone FT-1Y Flight Timeはいかがでしょうか?数値でディレイ・タイムの表示をしてくれるのでMIDIでシーケンサーとの正確な同期はもちろん、生ドラムとのズレてしまったテンポを自動で修正してくれるBPMアナライザーの搭載など、管楽器ではもったいないくらいの豊富なテクノロジーを備えております。ツマミ類がないので使いにくい印象はありますが、予め決まっている楽曲のどのパートで使うかなどが決まっている場合、各々プログラムして順次スイッチで呼び出して使う 'マルチ・エフェクト' 的使い方を身に付けると便利でしょう。
さて、それでは 'Pedal Geek' でおなじみDennis Kayzerさんの新旧デジタル&アナログ・ディレイ総勢25台レビューをどうぞ。しかしもの凄い数のコレクションというか、いかに現在 'ペダル業界' が活況を見せているかということを垣間見せてくれますね(その分、熾烈な競争と淘汰も多いのでしょうケド)。
そして、ディレイといえばダブなのですが、なんとニルス・ペッター・モルヴェルがジャマイカ最強のリズム・セクション、スライ&ロビーと共演してしまう時代なんですね。モルヴェルのみならず、バンド全体がタップ・ディレイとフィードバックに '飛ばされ' てダビーな空間の渦にズブズブ・・たまりません。
Nilsのバンド,とてもいいですね.本サイトもなんだかとてつもないアーカイブの様を呈してきました.消さないでくださいよ.てか死ぬまでずっと更新し続けて下さい.ひろぽんでした.
返信削除ひろぽんさん、ありがとうございます。
返信削除いや〜、そろそろネタが尽きそうなんですが(汗)この手のスタイルなり資料はまとまったサイトがないので、関心を持った方がアーカイブス的にサッと取り出せればという感じで書いています。ちょこょちょこ加筆・訂正しながら趣旨は変わるかもしれません(笑)