2020年1月4日土曜日

2020年のペダル見本市

さあ2010年代も終わり、新年恒例の '2019年ベスト・ペダル' が2020年の一発目を賑わせます。わたし的にはPedals And Effectsさん、Dennis Kyzerさん、The Pedal Zoneさんの動画がお気に入りなのですけど、こーいうのは満載感が大事なので2017年くらいからのランキングを物量的に反復、しつこく攻めていくのが正しい姿勢です(笑)。夏以降、かなりネットから遠ざかっていたのでここ数日いろんな情報を漁っておりました(笑)。









しかし斜陽化する音楽産業の影で、こんな '電気仕掛けの小箱' の市場がこれほどまでに活況を呈するなんてことが過去あったでしょうか?名機の誉れ高い最高の一台からどう使ってよいのかワカラン最低の迷機・・それらは日本や米国、西欧のみならず中華圏からロシアや東欧、北欧、豪州、南米に至るまで広く世界を駆け巡る勢いなのですヨ。また、ここ最近の '往年の名機' 発掘ブームのみならず、これまで謎に包まれていた '鉄のカーテン' の向こう側である旧共産圏はソビエト製ペダルの発掘がeBayやReverb.comを賑わせておりまする。










偏見ではありますが、特にこういった電子機器と無縁そうな中南米はドミニカのCopilot Fx、アルゼンチンのDedaloとSonomatic、ブラジルのStomp Audio LabsやMG Musicといった工房から続々登場する新製品にも驚かされます。この南米大陸からの '新作' としてはウルグアイから新興の工房、Maneco Labsによる 'エレハモ' の16 Second Digital Delayにインスパイアされたと思しきループ・サンプラー、Sweet 16 Digital Delay Looperがかなり面白そうですね。また、さらに小型で使いやすくなったMinilooperもラインナップ中なり。何より積極的にデジタルへと挑むその情熱は凄く、亜熱帯のジャマイカで育まれたダブの '飛び道具' 的エコーの酩酊感が南米で '異種交配' したのかもしれません。そんな電子工学のスペシャリストからITのベンチャー企業による参入、SNSを中心に昨日、半田ごて持った 'シロウト' に至るまでまさにペダル界は群雄割拠の '玉石混交' な状況でございます。









→Adventure Audio Again
→Dwarfcraft Devices Twin Stags

Juan AldereteさんとNick Reinhartさんのコンビによる彼らの '秘密基地' からのペダルショウ。こーいうズラッと並べた棚からあれこれペダルを物色して結線、いろいろ実験してみるというのが正しい 'ペダル道' なんじゃないかと思うのですがいかがでしょうか。このふたりでギターとベースという役割分担があるのも見事だし、ここにゲストでキーボードやノイズ系、エフェクター製作に従事するビルダーたちが直々に顔をのぞかせるのも楽しいですね。ここ数年は 'ベストペダル' のUPする日が遅くなっているのだけど(汗)、そんな2019年にレビューしたペダルの中で興味深いのが 'ゴミのように' 歪むペダルとしてChase Bliss Audio Brothers、Jam Pedals Lucy Dreamer Supreme、Spiral Electric Fx Black Spiral Fuzz、Death by Audio Intersteller Overdriver DXのニッチ過ぎる4機種をラインナップ。そしてAdventure AudioのAgain。こちらは 'ユーロラック・モジュラーシンセ' のモジュールを 'ペダル化' したもののようで、おとといの項にご紹介した「新年の 'CVペダル始め'」で取り上げるべきものです。Depth、Rate、Feedback、Delay Time、Blendの5つのパラメータをCVでグニャグニャするということで、ここではDwarfcraft Devicesから2つのトレモロを搭載したTwin StagsでLFOを出力して同期、あれこれ変調の素材作りなきっかけとしておりまする。



-2020年1月8日追記-
ふぅ、やっときました 'Pedals And Effects Best of 2019'。遅いよ〜。他の 'ベスト・ペダル' とそう大差ないランキングだけどRainger FxのDrone Raingerはマニアックですな。







この手の 'ペダル・レビュー' なYoutuberとしては早くからマニアックにやっていたDennis Kyzerさん。たぶん収入のほとんどをこーいうガジェットに注ぎ込む 'ペダル廃人' で、決してメーカーから支援されて '提灯レビュー' なんかしないゾ!という、こちらが勝手な人物像を思い描くくらいストイックな印象がありまする(笑)。実際、本人は動画に姿を現さないし、そんなことよりいつも 'Effects Database' やネットの前を陣取って、世界の片隅にある小さな工房の製品を真っ先に試すことに快感を覚えてるんじゃないだろうか?







そんなマニアックなDennisさんから一転、デンマークから発信するThe Pedal ZoneさんはむしろSNSの恩恵をたっぷりと使ってメーカーと提携、オサレに世界各国のペダルをレビューしている感じがありまする。何か編集など、以前に人気を博していたPro Guitar Shopの動画あたりを参考にしてギタリストが望む情報を上手く掴んでますね。ちなみに同様のスタンスでは、Knobsさんがエレクトロニカ限定ながらオサレな動画でレビューしているというイメージがあります。









さらにJHS Pedals主宰の 'ペダル・ジャンキー' ともいうべきJosh Scottさんの動画も上げておきましょうか。とにかくペダルにまつわるテーマやジャンルを個別にまとめて動画にする 'オタクっぽい' 見た目もツボなJoshさんなんだけど(笑)、ここでは2018年の 'ベストペダルTop 10' ('2019年版' は無し?)と 'Modern Modulation'  の6種、'Weirdな' ペダルTop 10の特集をどーぞ。そして、今は無きPGS(Pro Guitar Shop)の名物レビューギタリストであったAndyが担当するご存知Reverb.comからの '2019ベストペダルTop 5'。











→Seymour Duncan Fooz - Analog Fuzz Synthesizer ①
→Seymour Duncan Fooz - Analog Fuzz Synthesizer ②
→Seymour Duncan Fooz - Analog Fuzz Synthesizer ③
→Keeley Electronics Synth-1 - Reverse Attack Fuzz Wave Generator
→Elta Music Devices PLL-4046 Analog Harmonic Synthesizer ①
→Elta Music Devices PLL-4046 Analog Harmonic Synthesizer ②
→Parashit Studio The Multiwave Mega Guitar Synthesizer

こちらはいつもニコニコゲラゲラ、画面の向こうから楽しい雰囲気が伝わってくるDanielとMickのコンビによるThat Pedal Showによるわたしも大好きな 'ギターシンセ' をどーぞ。これに便乗して、エフェクター市場へ参入したピックアップの老舗Seymour Duncanが手がけながらあまり話題になってない(苦笑) 'ギターシンセ'、Foozをここでもう一度 'テコ入れ' しておきましょうか。またKeeleyから去年の '新作' は一昨年のBubble Tronに続いて 'ギターシンセ' のSynth-1が登場しました。そして現在ロシアで気炎を吐いているElta Music Devicesのハーモニック・シンセサイザーPLL-4046。PLLとは 'Phased Locked Loop' (位相同期回路)という入力信号からフィードバックで制御したものを短形波に変換、その周波数をマルチプルまたは分割して元のピッチから倍音を生成するというシンセライクなもの。あ、そうそう2019年の暮れに 'ガジェットフェチ' の心を鷲掴みにしたスウェーデンの新興工房、Parashit StudioからMultiwave Mega Guitar Synthesizerも面白い。Korg Monologueシンセサイザーに触発されたようなオシロスコープ的波形のLEDの怪しげな魅力はもちろん、アナログとデジタルの 'ハイブリッド' による2つのVCOを 'Wavetable' 的に掛け合わせた 'サブ・ハーモニック' からローパス・フィルターによる変調、LFOやEGでトリガーさせてやることで奇妙に 'シンセサイズ' されたトーンを放ちます。







→Source Audio SA249 C4 Synth
→Source Audio SA143 Bass Envelope Filter (discontinued)

そしてSource Audioからも飛び込んできたその名もズバリ、C4 Synthという 'ギターシンセ' に特化したマルチ・エフェクター。独立した4ボイスによりモノ/ポリフォニック・ピッチシフトからインテリジェント・ハーモナイズ、ディストーションからトレモロ、フィルターまで個別にアサインすることが可能。その 'エンジン' ともいうべきオシレータはサイン波、スクエア波、ノコギリ波の波形3種をそれぞれ組み合わせて合成します。ADSRトリガーを備えたエンヴェロープ・フォロワーも11種から選択可能、VCFとLFOはそれぞれ25種と14種から選択、変調させることが可能でその揺れをサイン波、スクエア波、ノコギリ波、サンプル&ホールドによりランダムにアルペジオを走らせます。そして、エクスプレッション・ペダルから同時使用可能な2つのプログラマブルな16ステップ・シーケンサーを備えるなど至れり尽くせり。またデジタルらしく6つのユーザー・プリセットとUSB端子により、MIDIで128のファクトリー・プリセットへとアクセス可能。さらにその膨大なプログラムをPC上で管理、エディットすべくメーカーから 'Neuro Desktop Editor & Neuro Mobile App' というフリーソフトが用意されており、さらに細かなパラメータをしつこく弄るという・・ええ、ペダル派の皆さんはここまでやりますかね?(笑)。ちなみにSource Audioのフィルターの感じはすでに 'ディスコン' ですが、そのサイバーなデザインで同社を象徴したベース用エンヴェロープ・フィルターSA143を管楽器の 'アンプリファイ' 広報に精を出すJohn Bescupさんが試されておりまする。







→Mastro Valvola

そして年末ギリギリの滑り込みセーフ。'ギターシンセ' ではないけれど、それらと組み合わせて使うにはピッタリのマルチ・ディレイ&ピッチシフトによる変異系として、いわゆる 'グリッチ/スタッター' なイタリア産Mastro Valvolaの 'Lysergic Emotions Module' ことLEM。8種のリヴァーブ/ディレイ、モジュレーションを軸に 'グラニュラーシンセシス' を生成するその姿は、Red PandaのParticleやRaster、Tensorを想起させますが、新製品として日本に入って来るのはこれからでしょうね。こーいうニッチな効果のペダルを挟み '擬似シンセ' 風なアプローチでガチャガチャいろんなペダルを繋いでみるのも楽しいのだ。









→Pladask Elektrisk Fabrikat
→Alexander Pedals Syntax Error

さて、肝心の 'グリッチ/スタッター' 系エフェクターといえば、MalekkoやMr.Blackと並びエフェクター界で大きな存在感を誇るCatalinbreadから登場のCoriolis Effect。こちらはピッチシフトとテープ逆再生からターンテーブルの '電源落とし' 風効果、エクスプレッション・ペダルによるワウやフィルタリングからグリッチのランダマイズに至るまで奇妙な '飛び道具' を生成する面白いもの。この工房で同種の '飛び道具' としてはCsidmanが結構面白かったのだけど、本機の多機能ぶりもなかなかのもの・・う〜ん、まだまだこの手のペダルの勢いを止めることは出来ませんね。そしてノルウェーからの新たな '刺客' ともいうべきPladask Elektrisk Fabrikat。もう、ここまでくると正確な読み方が分かりませんけど(苦笑)、本機もRed Panda ParticleやThe Montreal Assembly Count to Fiveなどと同様のディレイ、ピッチシフトによる 'グラニュラー' 応用系のひとつですね。そろそろどこかのお店が代理店となって取り扱いそうな予感。もうひとつ、米国のガレージ工房からAlexander PedalsのSyntax Error。'ガジェット' 的ポップな面構えからは想像もつかないくらい、実に多彩な音色を備えており、グリッチ/スタッターからディレイはもちろん、ロービット系、リング・モジュレーター、モジュレーション、ピッチ・シフトと・・ちょっとRed PandaのParticleをもう少し荒くしたような魅力に溢れておりますねえ。








→Keio Electronic Lab. Synthesizer Traveller F-1 ①
→Keio Electronic Lab. Synthesizer Traveller F-1 ②
→Monster Mutilators: Vintage Guitar Synth Pedals

さて、何も新製品ばかりが '新作' ということではなく、過去の遺産から '温故知新' 的に学んでみるということでこちら、日本が誇る偉大なエンジニア、三枝文夫氏が手がけた京王技研(Korg)の '珍品' Synthesizer Traveller F-1。本機は-12dB/Octのローパス・フィルターとハイパス・フィルターがセットで構成された 'Traveller' を単体で搭載したもので、それぞれの動きを連携させて '旅人のように' ペアで移動させるという三枝氏のアイデアから名付けられた機能です。三枝氏といえば日本のエフェクター黎明期を象徴する2種、Honey Psychedelic Machine、Vibra Chorusの設計者としてすでに 'レジェンド' の立場におり、本機はちょうど京王技研からKorgへと移行する過渡期に設計者からユーザーへの '挑戦状' として遊び心いっぱいに提供されながら、結局は現在まで '発見' されることなく 'コレクターズ・アイテム' として捨て置かれております。出でよ、挑戦者!。そんな本機の製品開発にはジャズ・ピアニストの佐藤允彦氏も携わっており、当時のプロトタイプについてこう述べております。なんと当初はペダルの縦方向のみならず、横にもスライドさせてコントロールする仕様だったというのは面白い。

"三枝さんっていう開発者の人がいて、彼がその時にもうひとつ、面白い音がするよって持ってきたのが、あとから考えたらリング・モジュレーターなんですよ。'これは周波数を掛け算する機械なんですよ' って。これを僕、凄い気に入って、これだけ作れないかって言ったのね。ワウワウ・ペダルってあるでしょう。これにフェンダーローズの音を通して、かかる周波数の高さを縦の動きでもって、横の動きでかかる分量を調節できるっていう、そういうペダルを作ってくれたんです。これを持って行って、1972年のモントルーのジャズ・フェスで使ってますね。生ピアノにも入れて使ったりして、けっこうみんなビックリしていて。"


余談ですが、佐藤氏がバークリー音楽大学から帰国した1968年、当時開発していた電気楽器のモニターとしてアプローチしてきたのが京王技研でした。面白いのは佐藤氏が目の前にした同社初のシンセサイザー 'Korgue' のプロトタイプに対して、'世界同時革命' 的(笑)に似たようなテクノロジーの進化のエピソードとしてこう述べております。

"8月に帰ってきた同じ年、京王技研(Korg)の社長さんから電話がかかってきたんです。アメリカに行く前からエレピやクラヴィネットを使っていたのを知っていて、「うちで今度、新しい電子オルガンを作ってみたんだけど、見に来て、ちょっと意見を聞かせてくれないか」っていうんですよ。それで行ったらば、ヤマハのコンボオルガンとかみたいなんだけど、音色を作れるようになっていたわけ。ここをこうすると音が変わるよ、というふうな。それで「これ、オルガンっていうより、シンセサイザーなんじゃないの?」って言ったら、シンセサイザーという言葉を誰も知らなかったの、その場にいる人が(笑)。

「なんだ、それは?」って言うんで、発振器からいろんな音が作れるっていうものを、シンセサイザーっていうらしいよって答えたら、「へえ、じゃあ、シンセサイザーっていうんだ、これは。そういう方に入るんだね」って。"





→Earthquaker Devices Swiss Things

そしてエフェクター本体ではありませんが、それらを複数組み合わせることで効果的な '便利アイテム' としてお馴染みライン・セレクター。あのEarthquaker Devicesからも多目的なライン・セレクター、Swiss Thingsが登場です。本機は '2 Loop'を基本にしたトゥルーバイパス仕様でA/B-Y出力、バッファー搭載のチューナー出力、最大20dBまでのクリーン・ブーストとヘッドルームの高いバッファー出力、外部エクスプレッション・ペダルによるヴォリューム・コントロール、同社開発のフレキシスイッチは電子リレー式のトゥルーバイパスを元に踏み方の違いで通常のラッチスイッチ、アンラッチスイッチへの切り替えが可能。












→Zoom A1 Four / A1X Four Multi-Effects Processors ①
→Zoom A1 Four / A1X Four Multi-Effects Processors ②
→Old Blood Noise Endeavors Maw

あ、そうそう、管楽器に関係した2019年の新製品では、多機能かつリーズナブルなマルチ・エフェクターを製作するZoomからA1 Four/A1X Fourという 'アコースティック' 用マルチが登場。本機が画期的なのはその 'アコースティック' 楽器の中でトランペットやサックスなど管楽器に特化したプリセットを備えていること!いや、この手の機器として '管楽器専用' を謳ったものは初めてじゃないですかね?2つの図はそれぞれギター、管楽器で使用した際のワウの帯域変化を示したもので、管楽器ではより幅広い帯域に対してローパスとバンドパスを組み合わせてナチュラルなピークポイントでワウ効果を付加、コントロールさせていることが分かります。もちろん、その他のプリセットも幅広いアコースティック楽器に特化したものとして開発されておりまする。そんなメーカーの意気込みは、管楽器に必須のダイナミックマイクやコンデンサーマイクからフォンへと変換する 'アッテネータ' 内蔵(Gain調整、単3電池2本使用)の変換アダプター、MAA-1を付属させていることからも分かるでしょう。そしてOld Blood Noise EndeavorsからXLRマイク入力(コンボタイプ)&DIに 'マルチ・エフェクツ' を搭載した管楽器奏者垂涎の逸品、Mawが登場。本機の構成はChannel Aにオクターバーとモジュレーション、空間系、Channel Bにモジュレーションと空間系をそれぞれ10種配置、このA、B間にその他コンパクト・エフェクター(例えばワウペダルなど)を組み合わせるべく 'センド・リターン' を搭載して、さらにToneツマミからSaturationまで個別に用意するなど至れり尽くせりな作りが嬉しい。しかし、あれこれいろんな機器の流用による 'トライ&エラー' で散財していた頃を知っている自分からしたら良い時代になったもんですね。







→Zorg Effects
→Zorg Effects Blow !
→Flux Effects Liquid Ambience
→Electro-Harmonix Micro Synthesizer
→Anasounds Utopia
→Retro Mechanical Labs 432k Distortion Box
→Meris Ottobit Jr.
→Death by Audio Reverberation Machine
→Digitech FreqOut
→Glou-Glou Pralines
→Electro-Harmonix Synth 9

そんなOld Blood Noise Endeavors Mawのような市場を開拓して見せたのがこちら、フランス新興の工房、Zorg Effectsの 'インサート' 付きマイク・プリアンプBlow !。すでにAudio-Technica VP-01 Slick FlyやRadial Engineering Voco-Loco、Eventide Mixing Linkなど同等製品が市場に現れておりますが、こーいう機器がある程度出揃っているかでそのアプローチする敷居の高さは変わりますヨ。そういえば、この動画ではZorg EffectsのみならずAnasoundsのディレイUtopia、フィルターの変異系ともいうべきGlou Glou Pralinesも皆フランスの製品・・。今後この手のアプローチはフランスを中心に世界を駆け巡るかもしれませんね。



さて、2020年ということで後半は以前の記事 'フェイズの源流 - その黎明期 (再掲)' を一部抜粋、再編集してお送りしたいと思います。やはり1960年代後半〜70年代にかけてのエレクトロニクスがもたらした '熱気'・・もの凄いものがありましたね。それは欧米でいくつかのメーカーから 'アタッチメント' と呼ばれるエフェクター黎明期が到来、当時のLSD服用による '意識の拡張' と相まってレコーディング技術が飛躍的に進歩したことの証左となりました。そんな 'パラダイム・シフト' の中、日本が世界に誇る作曲家、富田勲氏の音作りは音楽の発想を鍛える上でとても重要な示唆を与えてくれます。







いわゆる 'モジュレーション' 系エフェクター登場前夜は、まだこの手の位相を操作して効果を生成するにはレスリー社のロータリー・スピーカーに通す、2台のオープンリール・デッキを人力で操作して、その位相差を利用する 'テープ・フランジング' に頼らなければなりませんでした。富田氏はこのような特殊効果に並々ならぬ情熱を持っており、いわゆる 'Moogシンセサイザー' 導入前の仕事でもいろいろ試しては劇伴、CM曲などで実験的な意欲を垣間見せていたのです。

"これは同じ演奏の入ったテープ・レコーダー2台を同時に回して、2つがピッタリ合ったところで 'シュワーッ' って変な感じになる効果を使ったんです。原始的な方法なんだけど、リールをハンカチで押さえるんです。そしたら抵抗がかかって回転が遅くなるでしょ。'シュワーッ' ってのが一回あって、今度は反対のやつをハンカチで押さえると、また 'シュワーッ' ってのが一回なる。それを僕自身が交互にやったんです。キレイに効果が出てるでしょ。"






→Ludwig Phase Ⅱ Synthesizer
→Colorsound Dipthonizer

1970年の新製品である初期の 'ギター・シンセサイザー' Ludwig Phase Ⅱ Synthesizerは当時、富田氏が手がけていた劇伴、特にTVドラマ「だいこんの花」などのファズワウな効果で威力を発揮しました。また、シンセサイザーを製作するEMSからも同時期、'万博世代' が喜びそうな近未来的デザインと共にSynthi Hi-Fliが登場、この時期の技術革新とエフェクツによる '中毒性' はスタジオのエンジニアからプログレに代表される音作りに至るまで広く普及します。

"あれは主に、スタジオに持っていって楽器と調整卓の間に挟んで奇妙な音を出していました。まあ、エフェクターのはしりですね。チャカポコも出来るし、ワウも出来るし。"

後にYMOのマニピュレーターとして名を馳せる松武秀樹氏も当時、富田氏に師事しており、映画のサントラやCM音楽などの仕事の度に "ラデシン用意して" とよく要請されていたことから、いかに本機が '富田サウンド' を構成する重要なものであったのかが分かります。また、この時期から1971年の 'Moogシンセ' 導入前の富田氏の制作環境について松武氏はこう述懐しております。

"「だいこんの花」とか、テレビ番組を週3本ぐらい持ってました。ハンダごてを使ってパッチコードを作ったりもやってましたね。そのころから、クラビネットD-6というのや、電気ヴァイオリンがカルテット用に4台あった。あとラディック・シンセサイザーという、フタがパカッと開くのがあって、これはワウでした。ギターを通すと変な音がしてた。それと、マエストロの 'Sound System for Woodwinds' というウインドシンセみたいなのと、'Rhythm 'n Sound for Guitar' というトリガーを入れて鳴らす電気パーカッションがあって、これをCMとかの録音に使ってました。こういうのをいじるのは理論がわかっていたんで普通にこなせた。"

そんなLudwigやColorsound Dipthonizerに象徴される '喋るような' フィルタリングは、そのまま富田氏によれば、実は 'Moogシンセサイザー' を喋らせたかったという思いへと直結します。当時のモジュラーシンセでは、なかなかパ行以外のシビランスを再現させるのは難しかったそうですが、ここから 'ゴリウォーグのケークウォーク' に代表される俗に 'パピプペ親父' と呼ばれる音作りを披露、これが晩年の '初音ミク' を用いた作品に至ることを考えると感慨深いものがありますね。さて、冒頭の1969年のNHKによるSF人形劇「空中都市008」では、まだ電子的な 'モジュレーション' 機器を入手できないことから当時、飛行場で体感していた 'ジェット音' の再現をヒントに出発します。

"その時、ジェット音的な音が欲しくてね。そのころ国際空港は羽田にあったんだけど、ジェット機が飛び立つ時に 'シュワーン' っていう、ジェット機そのものとは別の音が聞こえてきたんです。それはたぶん、直接ジェット機から聞こえる音と、もうひとつ滑走路に反射してくる音の、ふたつが関係して出る音だと思った。飛行機が離陸すれば、滑走路との距離が広がっていくから音が変化する。あれを、同じ音を録音した2台のテープ・レコーダーで人工的にやれば、同じ効果が出せると思った。家でやってみたら、うまく 'シュワーン' って音になってね。NHKのミキサーも最初は信じなくてね。そんなバカなって言うの。だけどやってみたら、これは凄い効果だなって驚いてた。これはNHKの電子音楽スタジオからは出てこなかったみたい。やったーって思ったね(笑)。"

まだ、日本と欧米には距離が開いていた時代。直接的なLSD体験もなければザ・ビートルズが用いたADT (Artificial Double Tracking)の存在も知られていなかったのです。つまり、世界の誰かが同時多発的に似たようなアプローチで探求していた後、いくつかのメーカーから電子的にシミュレートした機器、エフェクターが発売される流れとなっていたのがこの黎明期の風景でした。ちなみにそのADTについてザ・ビートルズのプロデューサーでもあるジョージ・マーティンはこう述べております。興味深いのは、三枝文夫氏がHoneyのPsychedelic MachineやVibra Chorusを開発するにあたりインスパイアされた 'フェーディング' と呼ばれる電波現象にも言及していることです。

"アーティフィシャル・ダブル・トラッキング(ADT)は、音像をわずかに遅らせたり速めたりして、2つの音が鳴っているような効果を得るものだ。写真で考えるといい。ネガが2枚あって、片方のネガをもう片方のネガにぴったり重ねれば1枚の写真でしかない。そのように、ある1つのサウンド・イメージをもう1つのイメージにぴったり重ねれば、1つのイメージしか出てこない。だがそれをわずか数msecだけズラす、8〜9msecくらいズラすことによって、電話で話してるような特徴ある音質になる。それ以下だと、使っている電波によってはフェイジング効果が得られる。昔オーストラリアから届いた電波のような・・一種の "ついたり消えたり" するような音だ。さらにこのイメージをズラしていき、27msecくらいまで離すと、われわれがアーティフィシャル・ダブル・トラッキングと呼ぶ効果になる・・完全に分かれた2つの声が生まれるんだ。"






→EMS Synthi Hi-Fli
→EMS Synthi Hi-Fli - Prototype

さて、そんないわゆる '人間の声' を模したような効果に特化したフィルター効果。いや、これは原初的なエフェクツとも言えるトークボックス(マウスワウ)のことではなく、シンセサイズにおけるバンドパス帯域を複合的に組み合わせることで 'A、I、E、O、U' といった母音のフォルマントを強調、まるで喋っているようなワウの効果を生成するものです。古くは 'ギターシンセ' の元祖であるLudwig Phase Ⅱ SynthesizerやEMS Synthi Hi-Fliなど高級なサウンド・システムの一環として登場し、後によりコンパクトなペダル・タイプでColorsoundのDipthonizerや 'エレハモ' のTalking Pedalなどが市場に現れます。まあ、大抵は上述したバンドパス・フィルターとファズを組み合わせて 'ソレっぽく' (笑)聴かせているような印象に終始するんですけど、ね。しかし、何度見てもたまらない '楽器界のロールスロイス' とも言うべきEMS。いわゆる '万博世代' やAppleの製品にゾクゾクする人なら喉から手が出るほど欲しいはず。このEMSは過去製品の 'リビルド' を中心に現在でも会社は存続しているのだからAppleが買収、電源Onと共に光る '🍏' マークを付けた復刻とかやってくんないかな〜?個人的に 'エフェクター・デザイン・コンテスト' が開催されたら三本の指に入る美しさだと思います。











→Foxx Guitar Synthesizer Ⅰ Studio Model 9
→Korg VCF FK-1 'Synthpedal'
→Maestro FP-1 Fuzz Phazzer
→Maestro FP-2 Fuzz Phazzer
→Maestro USS-1 Universal Synthesizer System

毛羽立った筐体が特徴のFoxxの 'ギター・シンセサイザー' ペダルとKorgの 'Traveller' フィルターを搭載したVCF FK-1 'Synthpedal'。基本的に黎明期の製品はエンヴェロープ・フィルター、ファズワウ、フェイザー、フランジャー、LFOといった重複する機能が混交した状況であり、後にカテゴリー化される名前より先に話題となっていたもの、一部、類似的な効果を強調して付けるというのが習慣化しておりました。Shin-ei Uni-Vibeの 'Chorus' (当初は 'Duet')も後のBoss Chorus Ensemble CE-1とは別物ですし、LudwigやFoxx、Maestroから登場した 'Synthesizer' というのもRoland GR-500以降の 'ギターシンセ' とは合成、発音方式などで別物。それはMaestroのその名もずばりFuzz Phazzerから集大成的 'エセ・ギターシンセ' なUSS-1に到るまでこの時代を象徴しました。 さて、富田氏によれば、このような 'モジュレーション' 系エフェクターはMoogシンセサイザーの単純な波形に揺らぎを与えて 'なまらせる' 為に用いており、そこには機器自体から発する 'ノイズ' がとても有効であることを力説します。

"最近(の機器)はいかにノイズを減らすかということが重要視されていますが、僕が今でもMoogシンセサイザーを使っている理由は、何か音に力があるからなんですね。低音部など、サンプリングにも近いような音が出る。それはノイズっぽさが原因のひとつだと思うんです。どこか波形が歪んでいて、それとヴォリュームの加減で迫力が出る。だから僕はノイズをなるべく気にしないようにしているんです。デジタル・シンセサイザーが普及してノイズが減り、レコーディングもデジタルで行われるようになると、音が透明過ぎてしまう。ファズやディストーションもノイズ効果の一種だし、オーケストラで ff にあるとシンバルや打楽器を入れるというのも騒音効果です。弦楽器自体も ff になるとすごくノイズが出る。そうしたノイズは大切ですし、結果的にはエフェクターで出たノイズも利用していることになるんだと思います。"





→Inside The Fender Vibratone
→Maestro RO-1 Rover

こちらは、そんな超重量級の 'レスリー・スピーカー' をいわゆる 'ロータリー' 部のキャビネットとして、ギターアンプをパワーアンプにして駆動させるFender Vibratone。その '銀パネ' のグリルを外すとスピーカー本体の前に回転する風車を配置するものでして、これは当時、Fenderの親会社であるCBSがLeslieのパテントを所有していたことから実現しました。そしてMaestroからはドラムロール状のロータリー・スピーカーとしてRoverが製品化されます。しかし、こんな 'ドップラー' 効果を大きなアンプとしてFenderやMaestroが製作していた当時、日本のHoneyから電子的シミュレートで(当時としては)可搬性のよい '卓上型' 及び 'フットボックス' の製品として開発していたのですから、その世界的な技術力とセンス、恐るべし。このような黎明期における状況の中で「空中都市008」における 'テープ・フランジング' の効果は、当時、すでに製品化されていたHoneyのVibra Chorus、Psychedelic Machineなど伺い知らぬまま物理的な法則と手持ちの機器や録音環境を応用、組み合わせながら富田氏の飽くなき実験精神を呼び起こすきっかけとなりました。なければ作る・・この 'DIY' 精神はそのまま未知の楽器、'Moogシンセサイザー' の膨大なパッチングによる音作りへと直結します。また、1970年代後半には 'レスリー・スピーカー' の効果を即席で生成すべく、スピーカーをターンテーブルに乗せて屏風で囲い、マイクで集音するという '荒技' に挑みます。今なら同じセッティングをBluetoothのスピーカーをワイヤレスで飛ばすことで簡単に再現することが出来ますが、当時はかなり苦労したとのこと。

"レスリー・スピーカーというのがハモンド・オルガンに付いているでしょ。ただコードを押さえるだけで、うねるようなドップラー効果が起こる。ブラッド・スウェット&ティアーズとかレッド・ツェッペリンがさんざん使ってたんですが、その回転スピーカーというのが日本ではなかなか手に入らなくてね。それにものすごく高かった。それで '惑星' や 'ダフニスとクロエ' で使った方法なんだけど、FとSというスピードが可変できる古いレコード・プレイヤーがあったんです。その上にスピーカーを置いて、向こうに屏風を立てて回したら、レスリーのいい感じがするんですよ。じゃあ、スピーカーにどうやって音を送るかってことで、1本はエナメル線を吊るして、それで回したんです。このやり方だと、3分ぐらいでエナメル線はブチッて切れるんだけど、その間に仕事をしちゃうんですよ。このやり方はレスリーよりも効果があったと思いますよ。レスリーはあれ、回っているのは高音部だけだからね。"









→Tel-Ray / Morley RWV Rotating Wah
→Tel-Ray / Morley EVO-1 Echo Volume
→De-Armond Model 800 Trem-Trol
→De-Armond Model 601 Tremolo Control

一方、そんなレスリー・スピーカーの効果を、Tel-Ray / Morleyによる 'オイル缶' を用いた独特な構造の 'RWV Rotating Wah' とディレイの 'EVO-1 Echo Volume' という巨大なペダルで結実したもの。このMorleyのペダルというのは昔からどれも巨大な 'アメリカン・サイズ' なのですが、そのペダル前部に備えられた巨大な箱に秘密があり、オイルの入ったユニットを機械的に揺することでモジュレーションやエコーの遅れなどを生成するという、何ともアナログかつ手の込んだギミックで作動します。また、このような 'オイル缶' を揺するモジュレーション機構は既に1950年代から存在しており、その中でもユニークな一品として有名なのが、ヴォリューム・ペダルの製作で有名なDe-ArmondのTrem-Trol。なんとペダル内部に組み込まれた電解液で満たした筒を、発動機により一定間隔で揺らして筒の壁に触れる面積の変化から音量を上下させるという・・なんとも原始的で、手の込んだ構造のトレモロですね。その下の動画は前身機にあたるModel 601の内部構造でこんな感じに揺らしております。今じゃその製作コストがかかり過ぎて大変だろうけど、エフェクター黎明期にはいろんな発想から電気的操作として取り出すという面白い時代でした。この丸くて暖かいレトロな雰囲気こそトレモロの真骨頂・・'ツイン・ピークス' のテーマとか弾きたくなりませんか?





→Vintage Fender Effects from The 1950's - 1980's

さて、今や主流であるデジタル・ディレイではありますが、一方では相も変わらず '往年の名機' 再現に挑む為のDSPによる 'アナログ・モデリング' 探求が盛んです。まだまだ人間の耳はアナログの曖昧さを求めているワケですけど、磁気テープ・エコー、磁気ディスク・エコーに続いてやってきたTel-Ray 'オイル缶エコー' の世界。オイルで満たされた 'Adineko' と呼ばれる缶を電気的に回転させることでエコーの効果を生成するものなのですが、このオイルが今では有害指定されていることで物理的に再現することが不可能。このオイルの雫のイメージそのままドロッとした揺れ方というか、懐かしくも 'オルガンライク' に沈み込む '質感' というか・・たまらんなあ。











Gamechanger Audio Motor Synth -A New Method of Analog Audio Synthesis-
●8 Motors
●4 Note Polyphony with 2 Voices Per Key (with Separate Envelope and Portamento)
●4 Analog Filters with Envelope and Distortion
●4 Optical and Inductive Waveshapes with Cross-Modulation
●Arpeggiator, Sequencer and Loop Modes
●Performance Mode with Built-In Keys
●Full MIDI Control
●9 CV Ins and Outs

→Z.VexEffects The Candela Vibrophase
→Gamechanger Audio

ちなみにこのような原初的な物理現象によるエフェクツということでは近年、エフェクター界の奇才Zachary Vex主宰のZ.Vex Effectsからロウソクの炎によるフェイズの '揺らぎ' を生成したThe Candela Vibrophaseがありましたね。まさに古のレスリー・スピーカーやトークボックス、オイル缶のトレモロ、エコーの時代に舞い戻った音作りは、エフェクターの原点においてその発想を鍛える重要な示唆となりますヨ。そしてバルト三国のひとつラトビア共和国からいま世界で最も挑戦的な工房であるGamechanger Audioは、ピアノのダンパーペダルを模して 'Freeze' させるPlus Pedal、キセノン管をスパークさせる異色のディストーションPlasma PedalとPlasma Coil、そして8つのモーターを駆動させて '電磁誘導' により 'シンセサイズ' するMotor Synthとその 'エフェクツ版' ともいうべきMotor Pedalを準備しております。仕組みとしてはエレクトリック・ギターのピックアップと電動ドリルの回転を例にしているところから 'E-Bow' っぽい匂いも感じるのですが、単純にこのワクワクする 'ハッタリ感' がスゲー!。






→Binson Echorec
→Arbiter Soundimension

さて、そんなエコーにおける富田氏の好奇心、想像力は群を抜いており、まだ、オーケストラを相手とした駆け出しの作曲家時代、エンジニア的視点からその擬似的な '空間合成' に対して注意深く耳を澄ませていました。

"(映画の効果として)不気味な忍び寄る恐怖みたいなものを出すのにどうしてもエコーが欲しかった。その時、外を歩いていたら水槽があったんだよ。重い木の蓋を開けて、石ころを拾って放ってみたら「ポチャーン」って、かなり伸びのいい音がするわけ。好奇心旺盛なミキサーさんと共にそこへスピーカーとマイクを吊るしてやろうってことになった。スタジオの楽団の前にエコー用のマイクを立てておいて、その音を水槽に流して、その残響をマイクで拾ってミキサーの開いているチャンネルに戻す。そのエコー用マイクというのをストリングスに近づけるとブラスにエコーがかかる。両方にかけたいときは中間に置けばいい。"

その後、エフェクターとして出回った磁気ディスク式エコーのBinson Echorecも '富田サウンド' の重要なアイテムとなり、その '秘密' ともいうべき物理的 'エラー' から生成される 'モジュレーション' について富田氏は以下のように語っております。

"Binsonは鉄製の円盤に鋼鉄線が巻いてあって、それを磁化して音を記録するという原理のものでした。消去ヘッドは、単に強力な磁石を使っているんです。支柱は鉄の太い軸で、その周りにグリスが塗ってあるんですが、回転が割といい加減なところが良かったんです。そのグリスはけっこうな粘着力があったので、微妙な回転ムラによっては周期的ではない、レスリーにも似た '揺らぎ' が生まれるんです。4つある再生ヘッドも、それぞれのヘッドで拾うピッチが微妙に違う。修理に出すと回転が正確になってしまうんで、そこには手を入れないようにしてもらっていました。2台使ってステレオにすると微妙なコーラス効果になって、さらにAKGのスプリング・リヴァーブをかけるのが僕のサウンドの特徴にもなっていましたね。当時、これは秘密のテクニックで取材でも言わなかった(笑)。Binsonは「惑星」の頃までは使っていましたね。"

一方、Arbiterから登場したSoundimensionとSoundetteもBinson Echorecと同様の磁気ディスク式エコーであり、この会社はジミ・ヘンドリクスが愛用したファズ・ボックス、Fuzz Faceを製作していた英国のメーカーとしても有名です。本機はジャマイカのレゲエ、ダブ創成期に多大な影響を与えたプロデューサー、コクソン・ドッドが愛した機器で、ドッドはよほどこの機器が気に入ったのか、自らが集めるセッション・バンドに対してわざわざ 'Sound Dimension' と名付けるほどでした。そんな彼のスタジオ、Studio Oneでエンジニアを務めたシルヴァン・モリスはこう説明します。

"当時わたしは、ほとんどのレコーディングにヘッドを2つ使っていた。テープが再生ヘッドを通ったところで、また録音ヘッドまで戻すと、最初の再生音から遅れた第二の再生音ができる。これでディレイを使ったような音が作れるんだ。よく聴けば、ほとんどのヴォーカルに使っているのがわかる。これが、あのスタジオ・ワン独特の音になった。それからコクソンがサウンドディメンションっていう機械を入れたのも大きかったね。あれはヘッドが4つあるから、3つの再生ヘッドを動かすことで、それぞれ遅延時間を操作できる。テープ・ループは45センチぐらい。わたしがテープ・レコーダーでやっていたのと同じ効果が作れるディレイの機械だ。テープ・レコーダーはヘッドが固定されているけど、サウンディメンションはヘッドが動かせるから、それぞれ違う音の距離感や、1、2、3と遅延時間の違うディレイを作れた。"






→Honey Special Fuzz

"Maid in Japan !"

時はザ・ビートルズの来日公演に揺れ、その影響で全国に 'GSブーム' の巻き起こった1967年2月に東京都新宿で設立されたHoney。元Teiscoのスタッフにより独立したこの小さな会社は、エレクトリック・ギター、ベース、アンプ、マイクやPAシステムなどと共にエフェクター(当時はアタッチメントという呼称が一般的でした)の製造にも乗り出します。当時のロックを代表する 'アタッチメント' として話題となっていたファズは、Baby Cryingの名前で製品化、海外へもOEMのかたちで輸出されて '流行の東洋の神秘、Honeyの効果装置' のキャッチコピーで好評を得たそうです。他にもAce Tone、Royal、Guyatone、Voiceなどから登場し、1970年代に入ってからはMiranoやElkが後に続くようにファズを製作しました。そんな高度経済成長期の真っ只中、このHoneyを筆頭に多くの日本の会社は欧米の下請け企業としてOEMの輸出に勤しみ英国のRose-Morrisや米国の大手Unicordと提携、そこからさらに細かなブランドとして店頭に並びました。Shaftesbury、Uni-Vox、Appolo、National、Elektra、Jax、L.R.E.、Cromwell、Sam Ash、Sekova etc..。また、輸出のみならず国内では独立元のTeiscoやGrecoへも納入し、Idolという別ブランドでも販売するなど、とにかく 'GSブーム' と呼応するようにフル生産の状況であったことが伺えます。

このBaby Cryingは当時、英国のRoger Mayerの手により開発され、ジミ・ヘンドリクスの使用で有名となったOctavioに先駆けたアッパー・オクターヴの効果を持っており、それはサイケデリックの時代、どこかシタールの音色にも例えられるほどユニークなものでした。ちなみに同時期、Ace Toneで楽器製作に従事していた梯郁太郎氏はそんなHoneyの進取性に着目しており、彼ら自身が英国のTone Bender Mark Ⅰを参考にしてBaby Cryingを製作していたことを打ち消してこう述べております。

"いやいや、そんなことはないんですよ。彼ら自身が耳で決めたのだと思います。ハニーを設計した人物はその後にエーストーン、ローランドに入社した人ですからその辺の事情は聞いてますけど、ハニーは歪んだ音にエッジをつけて微分する・・要するに低音部を抑えて、真ん中から上の音を強調する回路になっていて、当時としては新しい種類の音でしたね。"







→Honey Psychedelic Machine
→Honey Vibra Chorus

1968年にはそんなHoneyのカタログも一挙に拡大、ファズに加えワウペダルのCrierはもちろん、テープやスプリング式ではないトランジスタ7石、ダイオード1個、CDS2個からなるソリッドステート式のEcho Reverb ER-1P、ファズとオートワウ!を一緒にまとめてしまったようなSpecial Fuzz、ワウペダルとヴォリューム・ペダルに波(Surf)と風(Tornado)とサイレンの効果音!を発生させる '飛び道具' のSuper Effect HA-9P、そして、いよいよ同社を世界的な名声へと押し上げる名機、Vibra ChorusとHoneyの集大成的 'マルチ・エフェクター' の元祖、Psychedelic Machineが登場します。特筆したいのはここまでのラインナップを誇るのはこの時点で世界においてHoneyだけ、だったのです。








→Shin-ei Companion / Uni-Vox Uni-Vibe Pt.1
→Shin-ei Companion / Uni-Vox Uni-Vibe pt.2
→Shin-ei Companion SVC-1 Vibra Chorus
→Korg Nuvibe ①
→Korg Nuvibe ②

そんな日本のエフェクター黎明期を支えたHoney / Shin-ei Companion。当時、ファズとワウがその市場の大半を占めていた中でいち早く 'モジュレーション' 系エフェクターの開発に成功したことで、現在までその技術力と先見性は高く評価されております。1968年のPsychedelic MachineとVibra Chorus、Special Fuzzをきっかけにして翌年3月のHoney倒産後、引き継いだShin-eiの時代になってからはUnicordへのOEM製品として本格的に生産されたUni-Vibe、Shin-eiのOEMブランドCompanionのVibra Chorus VC-15(SVC-1)、Resly Tone RT-18(Phase Tone PT-18)、最終型となったPedal Phase Shifter PS-33などが会社の倒産する1970年代半ばまで用意されました。








→Shin-ei Companion Resly Tone RT-18
→Shin-ei Companion Phase Tone PT-18
→Shin-ei Companion Pedal Phase Shifter PS-33
→Shin-ei Companion Resly Machine RM-29 ①
→Shin-ei Companion Resly Machine RM-29 ②
→Blackfield Orchester Elektronik Flying Sound (Rotor Effekt) ①
→Blackfield Orchester Elektronik Flying Sound (Rotor Effekt) ②

途中、自社のResly Tone RT-18の名称がPhase Tone PT-18に変更されたことからも象徴されるように1971年、トム・オーバーハイムが手がけたPhase Shifter PS-1をきっかけにして起こった 'フェイザー・ブーム' は、Honey / Shin-eiの先駆的な存在を闇に葬るきっかけとなってしまったのが悔やまれます。これはそもそも先駆的製品であったこの 'Maid in Japan' が、まだまだ海外では安価なOEM製品以上の評価を受けていなかったことの証左と言ってよいでしょうね。少量生産していた 'アタッチメント' と呼ばれる機器は、ロック全盛とエレクトロニクスの革新により市場が活況、より生産体制を拡大すべくアジアなどの下請け企業へ発注し、大量生産と共にビギナー層への安価な製品供給を拡充してその裾野を広げていく・・。まさにHoney / Shin-ei Companionはそんな時代の真っ只中で興隆し、消え去ってしまった幾多ある会社のひとつだったのです。そんな '屈辱的' な先見性と 'フェイザー・ブーム' の狭間で産み落とされたと思しき珍品のひとつがコレ、Resly Machine RM-29。そもそも1968年にHoneyから三枝文夫氏によって開発された本機の '源流' に当たるVibra Chorusの製品コンセプトは、レスリー社のロータリー・スピーカーを電子的にシミュレートすることでした。それがShin-ei以降もずっと製品名として生き残ってきたワケなんですが、時代が一気に 'フェイザー' という新たな名称と共に普及したことで、Shin-eiはそのきっかけとなったMaestro Phase Shifter PS-1のデザインをそのままパクるという暴挙に出ます。しかし中身は従来の '源流' としたヴィブラート色濃い独特な効果ながら、Uni-Vibeに代表される渦巻くようなサイケデリック的強烈な揺れ感は薄められた廉価版として、何とも折衷的なモジュレーション系エフェクターの範囲に留まってしまいました。ちなみに最後の動画は西ドイツ製ファズワウ+フェイザーと謳いながら 'ダブルラバー' のペダルからShin-eiのOEMではないか?と睨んでいる実に怪しげな一品、Flying Sound (Rotor Effekt)。







そんなResly Machineに象徴される 'フェイザー・ブーム' からオクターバーやMusitronics Mu-Tronをきっかけに普及した 'オートワウ・ブーム' に何とか食らい付いたShin-eiはオクターバーのOB-28やエンヴェロープ・フィルターのMB-27といった新たな製品開発に着手しましたが、いよいよ会社として次なる一手を打ち出さなければならない状況へと追い込まれます。Resly ToneからPhase Toneへ、さらにはペダルに内蔵してリアルタイム性に寄ったPedal Phase Shifterへとバリエーションを展開してみたものの、多分、その中身は古くさい 'Vibra Chorus' の資産を手を替え品を替えの状態だったのだろうなあ、ということで、ほとんど製品開発の資金を捻出できなかったのだろうと想像します。ちなみにそのShin-eiをOEMで抱えていたUnicord社はKorgにも下請けを出しており、そんな '国産フェイズ' としてこんな怪しげな '据え置き型' も輸出しておりました。米国上陸後はUnicord社からUni-Vox PHZ-1のほかMonacor PZ-100、Melos PS-1000、BST LM-200といったブランドで販売されており、それぞれのブランド名を表示するLED('Video Counter' って何だ?)がフェイズの揺れに合わせて点滅する仕様が素敵です。そして、Shin-ei MB-27に先駆けて国産初のエンヴェロープ・フィルターとして登場したRoland AG-5 Funny Cat。弱めの 'ソフト・ディストーション(SDS)' と3段階切り替えの 'ハーモニック・ムーヴァー' を組み合わせて、まさに猫のような '鳴き声' を生成する・・のかな?この1970年代初めの実験精神にはただただひれ伏すばかり。








→Maestro Phase Shifter PS-1A
→Maestro Phase Shifter PS-1B
→Maestro MP-1 Phaser
→MXR Phase 90 '75
→MXR CSP026 '74 Vintage Phase 90

デカイMaestro PS-1も数年後にはMXRからPhase 90というカラフルな一品の登場で旧態然な製品となり、ここにきてそれまでの '大型なアタッチメント' という形態から '手のひらサイズ' のコンパクト化が始まります。このMaestroと共にフェイザー市場拡大に貢献したMXR Phase 90自体、そもそもがMXR創業者であるテリー・シェアウッドとキース・バーのふたりが経営していた修理会社に持ち込まれたMaestro PS-1を見て一念発起、MXR起業へのきっかけとなったことは有名な話。これは、ロジャー・メイヤーがジミ・ヘンドリクスの為にカスタムで製作していたOctavioを修理する機会のあったTycobraheがデッドコピー、新たにOctaviaとして製品化したというエピソードにも通じることで、どこまでがコピー、どこからが影響なのかというのはヒジョーに線引きの難しい話でもありますね。ちなみにMaestro PS-1シリーズは当時の 'フェイザー・ブーム' の出発点となるべく大ヒット、未だに状態良好な中古があちこちで散見されておりますが、1970年代後半にはそれまで中心となって携わっていたC.M.I.からNorlinへと移譲、俗に 'Tankシリーズ' とも呼ばれる筐体で新たにモーグ博士がデザインしたMP-1 Phaser、MSP Stage Phaserへと変貌します。



→Schaller Electronic

こちらもほぼ 'Uni-Vibe' と同時期の初期フェイザー、というかロータリー・シミュレーターと呼ぶべきでしょうかドイツのSchaller Rotor Sound。このSchallerといえば '文鎮' のような筐体にハンマートーン仕上げのファズやトレモロ、'Yoy Yoy/Bow Wow' という謎な2つのトーン切り替えを持つワウペダルが有名ですが、こちらはキーボードの上に鎮座させて緑のLEDを光らせながら付属フットスイッチで切り替えさせる業務用機器的ルックスがシブい。







→Farfisa Sferasound
→Montarbo PB-2 Phase Shifter / Buzzer ①
→Montarbo PB-2 Phase Shifter / Buzzer ②
→Jen Elettronica Variospectra ①
→Jen Elettronica Variospectra ②

また、こちらもHoneyの製品とほぼ同時期ではないかと思われる 'レスリー・シミュレーター' というべきFarfisa Sferasound。コンボ・オルガンなどを手がけていたFarfisaがその可搬性から開発したと思しき本機は、オルガンはもちろんギターにも使用可能でVibra Chorusに比べるとかなりヴィブラート色濃いものですね。こんな古臭いイタリア産による 'ペダル・フェイズ' の原初的な方向性は、Maestro PS-1やMXR Phase 90をきっかけにして広まった 'フェイザー・ブーム' によりそのフェイズの深さ、効き具合をフット・コントロールする 'ペダル・フェイザー' という形態への需要に繋がります。ある意味これはUni-Vibeがもたらした '資産' のひとつでもあり、Greco Pedal PhaserやFoxx Foot Phaser、'エレハモ' からもBad Stoneのペダル版が発売されるなど、元々がギタリストではなくキーボーディストを対象とした製品の名残りと言ってもよいでしょうね。そんなイタリアでもFarfisaからフェイザーの時代となりMontarboからファズ内蔵の 'Buzzer' とミックス出来るPB-2やJenのVariospectraなどの製品が市場に現れます。しかしどれも '装置' と呼ぶに相応しいくらいのデカさですね。










→Carlin Electronics Phase Pedal
→Moody Sounds Carlin Phase Pedal Clone
→Moody Sounds / Carlin Pedals
→Carlin Electronics Kompressor & Phase Pedal Original

そして、こちらは1970年代にスウェーデンのエンジニア、Nils Olof Carlinが手がけたペダル・フェイザーとそれを同地の工房、Moody Soundsが本人監修の元に '復刻' させた 'クローン' モデル。オリジナルはUni-Vibe同様に電球の点滅から生成していた '揺らぎ' が、現在ではLEDによってシュワシュワと再現されております。このCarlin Electronicsによる隠れた逸品の存在からも当時、世界を駆け巡った 'フェイザー・ブーム' の一端を垣間見ることができるのではないでしょうか。今やシンセサイザーの世界でその存在感を示すNordやElektron、ペダル界の革命児としてBJFEの遺伝子を世界にばら撒くBjorn Juhlを輩出するスウェーデンですが、そんな同国最初の 'ペダル・デザイナー' にして天文学にも造詣が深かったCarlin本人は惜しくも2017年に亡くなられたそうです。そのNils Olof Carlinとの出会いについてMoody Soundsからは以下の如く述べられております。

"I got to know him when a customer sent a schematic and asked if I could clone a Swedish pedal classic, the carlin compressor. The schematic also had an email address to the designer so I contacted Nils Olof and checked if ok.

We met and it lead to much interesting talks about electronics. He used to come by every august when an annual meeting for astronomers is held here. Was he the first Swedish pedal designer, history and so... not sure if I can tell so much about it. We did not talk so much about the past but more new circuits. I saw that Peps Person has a thank you line to Nils Olof Carlin on the Hög 
Standard LP from 1975.

He also designed a 4013 octave down pedal long ago that he didn't make a commercial product. The ring modulator, also 70's, is a cool circuit. He did that one too only a few copies, back then, but we upgraded the circuit and the kit is appreciated by many. The only two pedals that he made "many of" were the compressor and the phaser. He gave me a number of how many that were made, and I think he said about 100 compressors and almost as many phasers."









→Arp Avatar
→Arp Odyssey Module
→Korg SQ-1 Step Sequencer

そして強烈なフィルタリングで外部機器とあんなこと、こんなことという '妄想' が止まらないという場合はアナログシンセ使っちゃいましょうヨ!1970年代半ば以降、Roland GR-500を始めに各社がアプローチし始めた 'ギター・シンセサイザー' ですが、その中でも珍しい一台として登場したのがアナログシンセの名機、Odysseyを 'ギターシンセ' へと特化させたAvatar。残念ながらコレのセールス失敗がそのままArp倒産へと繋がってしまった 'いわくつきの一台' ではあるのだけど、そのOdysseyが現在Korgの手により '復刻' されて気軽に楽しむことが出来るのは嬉しいですね。とりあえず、Korgの1万弱で発売されている8ステップ・シーケンサーSQ-1とOdysseyから鍵盤を省いてモジュール化したヤツを手にしてちょっとその雰囲気を味わってみる。オリジナルは 'Hexaphonic Pick-Up' というアタッチメントを装着してトリガーするものでしたが、このOdyssey Moduleには外部オーディオ入力(Ext Audio Input)があるので 'ペダル的' に楽器を突っ込んでみましょうか。オシレータ(VCO)の代わりにVCF、LFO、エンヴェロープ・ジェネレーター(EG)などでいろいろ加工、さらにSQ-1もCVで繋いでいろんなシーケンスの変調まで任せられるのはシンセでしか出来ない芸当です。









→Sherman
→Sherman Filterbank 2 Compact ①
→Sherman Filterbank 2 Compact ②
→Sherman Filterbank Prototype - 1996: S/N 31

まさに 'オシレータのないアナログシンセ' ともいうべき変態フィルターとして、ベルギーでひとりHerman Gillisさんが手がけるSherman Filterbank 2などもお手軽に 'シンセサイズ' 出来る発想でアプローチすべきもの。クラブ・ジャズ的なスリーピース・バンドPhatの活動でその存在を知られ、現在はソロとしてquartz-headやrabitooほか、この動画のユニット 'びびび' で活動するサックス奏者の藤原大輔さんはそんな 'Filterbank使い' の代表格。Sherman Filterbank 2とその下に置くラック型ディレイKorg DL8000RのHold機能を駆使して、どんな音をブチ込んでもまったく予測不能なサウンドに変調しながら、過激に発振するエレクトロニカ的スタイルを披露します(動画途中の 'Intermission' は長く第2部は58:33〜スタート)。







→Moog MKPH 12 Stage Phaser
→Gerd Schulte Audio Electronik Compact Phasing 'A'
→Mode Machines KRP-1 Krautrock Phaser

このような黎明期を経ながら同じ位相を操作する効果を 'フェイザー' と 'フランジャー' としてカテゴリー分けされることで、ようやくエフェクターの市場に数多くの製品が登場します。その中でも特筆したいのが2台分のフェイザーを装備したMusitronics最大の 'フェイズ・ユニット'、Mu-Tron Bi-Phase。まるで '亜熱帯のサイケデリア' を象徴するマリワナの煙と共にたゆたうリー・ペリーに力を与えたその姿は、ほとんどギタリストがアプローチするのと同じ意識でミキサー、フェイザーを '演奏' している!一方、後に 'Moogerfooger' シリーズでも復活したMoog博士が手がけたラック版の12 Satage Phaser。エグいフェイズはもちろんですが、ステレオの音響生成において '3Dディメンジョン' 的定位にミックスで用いてやると効果てき面!ダブを作ることに熱中していたその昔、コイツが本当に欲しくて怪しげな中目黒のマンションの一室にあった楽器店で、外人オーナーとその彼女らしい通訳相手に本機の値段交渉をしたことが実に懐かしい(笑)。そして、Bi-Phaseと同じく強烈な '卓上' フェイズ・サウンドで時代を席巻したのがドイツ産Gerd Schulte Compact Phasing A。クラウス・シュルツェやディープ・パープルのリッチー・ブラックモアらが愛用したことで大変なプレミアものですね。こんなCompact Phasing AもMode Machinesからその名もずばり 'Krautrock Phaser' として生まれ変わりました。しかしその筐体は '本家' に負けず劣らずあまりにもデカイ・・。









→Vermona Engineering PH-16 Dual Analog Phaser
→Chicago Iron Tycobrahe Parapedal
→Chicago Iron Tycobrahe Pedal Flanger
→Musitronics Mu-Tron Flanger

こちらは今や 'ユーロラック・モジュラーシンセ' の分野でも老舗のVermona Engineering。しかし元々は東ドイツの国営企業であり、そんな '共産圏' 真っ只中の1980年に登場した '据え置き型' であるPhaser 80。Phase ShiftのOn/OffスイッチとSpeed、Feedback、背面にIntensityとSensibilityツマミという至極シンプルな設計ながら、これがその後のVermona製品の出発点なのかと思うと感慨深い。そして1970年代を代表するTychobraheとMusitronics Mu-Tronの 'ペダル・フランジャー' 2種。ちなみにヒジョーにレアだったTychobraheの各製品は現在、Chicago Ironによる忠実な '復刻' でそのPedal Flangerと 'フェイズワウ' ともいうべき独特なトーンを持つParapedalはお手軽に試すことが出来まする。









→U.S.S.R. Formanta Esko-100
→U.S.S.R. Elektronika PE-05 Flanger
→U.S.S.R. Elektronika PE-11 Flanger

ちなみにこの手の効果はロシアも負けておりません。旧ソビエトの時代に 'ギターシンセ' 含めてマルチ・エフェクツ' に集大成させたのがこちら、Formanta Esko-100。1970年代のビザールなアナログシンセ、Polivoksの設計、製造を担当したFormantaによる本機は、その無骨な '業務用機器' 的ルックスの中にファズ、オクターバー、フランジャー、リヴァーブ、トレモロ、ディレイ、そして付属のエクスプレッション・ペダルをつなぐことでワウにもなるという素晴らしいもの。これら空間系のプログラムの内、初期のVer.1ではテープ・エコーを搭載、Ver.2からはICチップによるデジタル・ディレイへと変更されたのですがこれが 'メモ用ICレコーダー' 的チープかつ 'ローファイ' な質感なのです。また、簡単なHold機能によるピッチシフト風 '飛び道具' まで対応するなどその潜在能力は侮れません。そんなフランジャーって何でか '共産主義者' たちの興味を惹いていたようで(笑)、最近eBayやReverb.comなどにゾロゾロと現れている旧ソビエト時代の '遺物たち' からはやたらとフランジャー多し(謎)。




→Irmin Schmidt's Alpha 77 Effects Unit.

さて、このエフェクター黎明期から全盛期を迎える1970年代、個別にカテゴリー化される流れからすべてを統合し、'マルチ・エフェクツ' 化する方向へも加速します。ここではクラウト・ロックの雄として有名なCanのキーボーディスト、イルミン・シュミット考案の創作サウンド・システム、Alpha 77も述べておきたいですね。Canといえば日本人ヒッピーとして活動初期のアナーキーなステージを一手に引き受けたダモ鈴木さんが有名ですけど、こちらはダモさん脱退後の、Canがサイケなプログレからニューウェイヴなスタイルへと変貌を遂げていた時期のもの。イルミン・シュミットが右手はFarfisa Organとエレピ、左手は黒い壁のようなモジュールを操作するのがそのAlpha 77でして、それを数年前にシュミットの自宅から埃を被っていたものを掘り起こしてきたジョノ・パドモア氏はこう述べます(上のリンク先にAlpha 77の写真と記事があります)。

"Alpha 77はCanがまだ頻繁にツアーをしていた頃に、イルミンがステージ上での使用を念頭に置いて考案したサウンド・プロセッサーで、いわばPAシステムの一部のような装置だった。基本的には複数のエフェクター/プロセッサーを1つの箱に詰め込んであり、リング・モジュレーター、テープ・ディレイ、スプリング・リヴァーブ、コーラス、ピッチ・シフター、ハイパス/ローパス・フィルター、レゾナント・フィルター、風変わりなサウンドの得られるピッチ・シフター/ハーモナイザーなどのサウンド処理ができるようになっていた。入出力は各2系統備わっていたが、XLR端子のオスとメスが通常と逆になっていて、最初は使い方に戸惑ったよ・・。基本的にはOn/Offスイッチの列と数個のロータリー・スイッチが組み込まれたミキサー・セクションを操作することで、オルガンとピアノのシグナル・バスにエフェクトをかけることができる仕組みになっていた。

シュミットは当時の市場に出回っていたシンセサイザーを嫌っていた為、オルガンとピアノを使い続けながら、シュトゥックハウゼンから学んだサウンド処理のテクニック、すなわちアコースティック楽器のサウンドをテープ・ディレイ、フィルター、リング・モジュレーションなどで大胆に加工するという手法を駆使して独自のサウンドを追求していったのさ。"





またシュミット本人もこう述べております。

"Alpha 77は自分のニーズを満たす為に考案したサウンド・プロセッサーだ。頭で思い付いたアイデアがすぐに音に変換できる装置が欲しかったのが始まりだよ・・。考案したのはわたしだが、実際に製作したのは医療機器などの高度な機器の開発を手掛けていた電子工学エンジニアだった。そのおかげで迅速なサウンド作りが出来るようになった。1970年代初頭のシンセサイザーは狙い通りのサウンドを得るために、時間をかけてノブやスイッチをいじり回さなければならなかったから、わたしはスイッチ1つでオルガンやピアノのサウンドを変更できる装置を切望していた。Alpha 77を使えば、オルガンやピアノにリング・モジュレーションをかけたりと、スイッチひとつで自在に音を変えることができた。そのおかげでCanのキーボード・サウンドは、他とは一味違う特別なものとなったんだ。"










→Marshall Electronics Time Modulator Model 5402
→Keeley Electronics Bubble Tron

珍しいラック型モジュレーションの究極なのがこちら、Marshall ElectronicsのTime Modulatorをご存知ですか?。1970年代後半にMarshall(ギターアンプのMarshallとは別の会社)から登場したこの1Uラックの本機は、まるで土管の中に頭を突っ込んでしまった時に体感できる 'コォ〜ッ' とした金属的変調感を体感することが可能。また 'CV/Gate' を備えることでモジュレーションからLFOのオシレータ発振まで、モジュラーシンセ的にコントロールする機能を備えるなど、コンパクトなフランジャーでは再現出来ない強烈なフランジングがたまりません。こんなラック・エフェクターの世界もRoland SBF-325 Stereo FlangerやMXRのFlanger / Doubler、フランク・ザッパが愛用したMicMix Dynaflangerを始め、コンパクトとは別の意味で '掘っていく' ともの凄い機材がありまする。そして、そんなMicMixのフランジ効果をシミュレートしたとされるKeeleyのBubble Tronもなかなかにエグいのだ。しかしこーいうの、どういう層に求められているんだろうなあ?(笑)。





→MXR / ART M-129 Pitch Transposer

そしてラック・エフェクターの '番外編'。ピッチ・シフターの 'インサート' へディレイを挟んで風変わりな '飛び道具' としたのがUKダブの巨匠、マッド・プロフェッサー。そんな彼が愛したMXR Ptch Transposerによるこの 'インサート' 技は、80's的なキラキラと階段状にピッチが変わっていくのが面白い。現在の高品質なピッチ・シフターに比べると決して精度は高くありませんが、この 'ハイ落ち' が独特な初期デジタル特有の '太さ' に繋がっていることからギタリストに愛されたのも分かります。ピッチ・チェンジの量をメモリーすることが出来て、それをフット・スイッチで呼び出すことも可能なのですが、格好良いのがツマミがタッチ・センスのセンサーとなっており、それを回さずともトントンと叩くだけでピッチ・チェンジが変わるのです!おお、ハイテクだ(笑)。








→Glou Glou Moutrade
→Glou Glou Rendez-Vouz
→Glou Glou Pralines

そんなKeeley Bubble Tron同様、ゲコ〜っと '喋る' ようなリゾナント・フィルターの変異系ばかりラインナップしているのがフランスはリヨンの新興工房、Glou Glou。PLLこと 'Phased Locked Loop' (位相同期回路)という入力信号からフィードバックで制御したものを短形波に変換、その周波数をマルチプルまたは分割して元のピッチから倍音を生成するMoutrade、リング・モジュレーションをベースにしてマルチモード・フィルターで変調させるRendez-Vouz、そして真っ赤なリゾナント・フィルターのPlalinesをそれぞれラインナップしております。しかし、扱いやすく定番であるHammondのケースや省スペースによる 'ミニ化' された筐体ばかりが席巻するペダル界の中、まるで1970年代の 'エフェクター全盛期' が蘇ったようなデカイ筐体はもちろん、Glou Glouの製品はその出音まで共通した匂いを感じますね。

2020年1月3日金曜日

またもや '質感生成' の旅に出る

わたしのペダルボードをジッと眺めているとその大半のペダルがトランペットのトーン、電気的に増幅した際の '質感' に関わるもので占有していることに気付きます。2チャンネルのプリアンプHeadway Music Audio EDB-2やNeotenicSound AcoFlavorはもちろん、Magical ForceにPurepadからTerry Audio The White Rabbit Deluxeに至るまで単にスイッチをOnにしただけでは一聴して効果の分からないヤツら・・。




こういう '周辺機器' を揃えないと管楽器の 'アンプリファイ' が物足りないのは歯痒いですけど、派手に変調させる各種エフェクツを活かすも殺すもこれら '周辺機器' の調整、補正に掛かっているのだから無視出来ません。ともかく管楽器の 'アンプリファイ' において、この '質感' というやつを個人的に追求してみたい欲求があるんですよね。目的はアンプやPAを用いる環境において、その 'サチュレーション' や 'クランチ' の倍音含めた管楽器の 'クリーントーン' を作ること。つまり、ピックアップ・マイクからの '生音' の忠実な収音、再生ではなく、あくまで電気的に増幅した際に映える '生音を作る' という試みなのです。





→Moog MKPE-3 Three Band Parametric EQ
→Urei / Universal Audio 565T Filter Set
→Filters Collection

以下、個人的にそういう発想のきっかけとなった 'サウンド&レコーディングマガジン' 1996年11月号の記事 '質感製造器〜フィルターの可能性を探る' からエンジニアの杉山勇司氏(S)と渡部高士氏(W)の対談記事。いわゆる 'ベッドルーム・テクノ' の全盛期で、アナログシンセによる 'シンセサイズ' の意識がサンプラーや 'ローファイ' の価値観を通じて、あらゆるものを '変調' させるのが面白い時代でした。

− そもそもフィルターを能動的に使おうと思ったきっかけはなんですか?

S − 最初に白状しちゃうと、渡部君からトータルにフィルターをかけるって話を事務所で遊んでいたとき聞いて "あっ" って思ったんだ。それまでの僕にとってのフィルターは、シンセの延長でしかなくて、Analogue SystemsのFilterbank FB3を持ってたけど、LFOでフィルターが動くエフェクトと考えていた。だからEQを手で回すのとあまり変わらない感じだよね。でもそのころ渡部君は、2ミックスをフィルターに通すって馬鹿なこと言ってた。

− それはだれかが先にやってたんですか?

W − 2ミックスのフィルタリングは4年前に考えたんです。ミックスしてて、音が固くてどうしようかなって思ったときに "フィルターでもかけてしまえ" と(笑)。Akai S1000のループがRolandの音したらいいなって思って、Roland System-100Mに通してみた。結果的にフィルターを通るだけで思った音になったんですよ。

S − 変わるんだよね。それでフィルターを絞れば、また味も付くし。でも僕がそれに気付いたのは大分後。シンセはいじってたけど、それはシンセらしい使い方で、VCOがあってVCFも音作りの順番の1つでしかなかった。でもArp 2600を触り始めて "ここに音を入れてもいいの" って思ったんだ(笑)。それでFB3にも "ドラム入れてもいいじゃん" って気付いた。

W − 簡単にできるのはDrawmerのノイズゲートDS-201なんですよ。これにはローパス/ハイパスが付いていて、ザクッと切れるんです。これならどのスタジオにもありますしね。

− しかしそれを実際の現場でやってみようと考えるのは大変だったんじゃないですか?

S − 昔は音が汚くなることを考えるのはダメだったよね。例えばギターだったらSSLのプリアンプより、Focusrite通した方がいいに決まってると思ってた。

W − それは1ついい音ができたら、簡単だから次もそうしようってことだよね。

S − で、そうやって録ると、ハイが延びていい音になる。でもそれは値段が高いからいい音になるっていう意識だし、EQもハイがあればあるほどいい音って発想にも近いよね。フィルターなんて通したら、当然S/Nは悪くなるし、ハイもローも落ちる。でもあるときにEQでローを足すんじゃなくて、ハイをしぼったときに自分にとってのいい音になることに気付いたんだ。今はいらない部分を削ったら、必要な部分をうまく聴かせることができると思ってる。

W − 実際5kHz以上って倍音が崩れてるから、いらない場合も多いんだよね。デジタルで22kHz以上がなくて気になるのは、それ以上の帯域がないからじゃなくて、急激にそのポイントでカットされているからなんですよ。

S − ローファイって言葉は大嫌いなんだけど、ハイファイに縛られてはいたよね。

W − フィデリティ(Fidelity)って '正確' って意味だから、自分のやりたいことができてるんだったら、それはハイファイなんだと思いますよ。

− 渡部さんの場合そんな制約が最初からなかったのはどうしてですか?

W − それはエンジニアリングの入り口が違ったからだと思います。値段の張る機材があまり周りになかったのと、シンセのオペレートとエンジニアリングの両方を一緒にやるんで、卓のEQをいじるよりシンセのフィルターでいじった方が、楽に欲しいサウンドが手に入れられることが分かったんです。

− フィルターとEQの違いは何ですか?

S − 一緒なんだけど違うという部分が分からないと使わないよね。

W − 僕がお客の立場で、エンジニアがEQじゃなくフィルターに僕の音を入れようとしたら、嫌がるだろうな (笑)。EQってエフェクターなんだけど、エフェクター的に使っちゃいけないという部分があるじゃないですか。

S − エフェクター的に使うんだったら、フィルターの方が面白いよね。例えば、以前ウクレレの音をArp 2600にスルーして録音したことがあった。それはArpのプリアンプの音なんだろうけど、それがすごくいい音になったんだ。1度その音を知ってしまったら、EQを細かくいじって同じ音を作ろうとはしないよね。想像もできなかったハイ落ちをしてるその音が実にいい音なんだ。

− そんな想像もできない音になる可能性という部分がフィルターの魅力の1つでしょうか?

W − お手軽にいい音になるというかね。

S − 1度通して音が分かってしまうと、もう自分の技になるから、想像できるんだけどね。

− しかしEQで作り込めばフィルターと同じ効果が期待できるのではないですか?

W − それは無理です。NeveのEQをどうやってもSSLでシミュレーションできないのと同じこと。例えばSystem-100Mを通したら、こんな細いパッチケーブルを音が通るから、それだけでも音が変わるし。機材ごとに違う回路を通ることによって、それぞれの音になるんですよ。

− 機材ごとのそんな特性を、人間の耳は感知できるものだと思いますか?

W − 瞬時に判断することはできないけど、音楽になると分かるでしょうね。それは紙を触ってツルツルしているものが、少しざらついた感触になるような、そんな判断ですけどね。

S − それはエンジニアの耳ではなくても分かる違いだろうね。

W − よくオーディオマニアの人が、レコードからCDに変わったとき、奥さんが急に "うるさい" って言うようになったって話がありますよね。それを考えるとだれもが分かるものなんでしょうね。実際、2ミックスをSystem-100Mにただ通して聴いているだけでは、その違いがあまり分からない人もいる。しかしそれを大音量で長時間聴いていると、それまで耳が疲れていたにもかかわらず楽になったりすることがあるんですよ。

− 2ミックスにフィルターをかけるエンジニアは結構いるんでしょうか。

W − ほとんどいない。トータル・フィルターって言葉自体僕が作ったんだもん(笑)。第一エンジニアがフィルターを持っていないでしょ。僕はここ(オア・スタジオ)にあるからSystem-100MやRoland SH-2を使ったりしてます。2ミックスを通すために、わざわざもう1台買ったんだけど、フィルターの性能が全然違うんですよ(笑)。

S − 僕もArp 2600のフィルターとアンプの音が好きで、それだけで売ってほしいくらい。でもこれも1台1台性能が違うんだよね。これじゃ2ミックスに使えないって。

W − System-100Mは1モジュールでステレオというか2チャンネルあるから大丈夫なんですよ。

S − 僕も1度片チャンネルずつ別々に1つのフィルターを通したことがあった(笑)。

W − 要するに歪んでるんですよ。コンプでたたいたような状態。だからモノ・ミックスにするしかないですよ。モノでフィルターかけて、後でPro Toolsで加工するのはどうでしょう(笑)。

− 質感が出来上がったものは、他のメディアに移してもそのまま残っていくんでしょうか?

W − それは残りますね。FocusriteもNeveもヘッドアンプは音を持ち上げるだけでしょ。それだけなのに音が違う。エンジニアは音の入り口のアンプでまず音を作るわけで、卓で作るんだったらコンプでいじるんだろうけど、コンプレッションがいらない場合もある。だからサンプラーに通して、ピークをなくして、アタックを落としたりすることもあります。ADコンバータ通すこともフィルターですから。

− トータルにかなり強烈にフィルタリングすることもあるんですか?

W − 向こうのテクノでは、モコモコしたサウンドからどんどんトータルにフィルターが開くものがありますね。

S − それはそんな音を理解できる人間がエンジニアリングしたり、アーティスト本人がエンジニアリングを担当したりしなくちゃできない。そんな作業は音楽性を選ぶんだろうけど、概念的には音楽性は全く選ばないと思う。

W − 例えばアコギをフィルターに通しても、普通に良くなるだろうし、暖かくなるだろうし、ワウにもなる。でも実際にフィルターで大きくカットするのは問題ですよね。それだったら、ローパスよりハイパスの方が使い手があるかもしれない。

S − Ureiにも単体フィルターがあったもんね。真空管のマイクを使って真空管のアンプを通ったいい音を、もっと味のある音にするために、EQで音を足すんじゃなくて、どこをカットするかという発想自体はずっと昔からあったものだと思いますね。

− エンジニアがどうしてこれまでフィルターという存在に目を向けなかったのでしょうか?

W − エンジニアという職業自体、もともとは出音をそのままとらえるのが仕事だったでしょ。それだったらフィルターを通すなんてまず考えない。変えようと思えばフィルター1つで音楽性まで簡単に変えられますからね(笑)。

S − 確かにフィルターは面白いけど、それはやはり一部の意見で、一般的にはならないだろうね。こんな感覚が広まったらうれしいけど、そこまで夢を見てませんから(笑)。

W − 僕にとっては、コンソールのつまみもフィルターのつまみも一緒だけど、そうじゃないエンジニアもいる。でも一度でいいから、どのエンジニアもその辺のフィルターをいじってほしいと思いますね。本当に音が変わるから。

S − 使うか使わないかは別にして、この良さは大御所と呼ばれるエンジニアもきっと分かると思うな。僕も最近はUrei 1176とか使うんだけど、1178も用途によって使い分けている。これはフィルターに音を通し始めてから、それらの音の質感の違いが分かってきたんだ。

− 鍵盤が付いていてシンセの形をしているから使わないという部分もあるのでしょうか?

S − それはあるだろうね。エンジニアには触れないと思いこんでいたのかもしれない。ハイパス/ローパスは知っていても、レゾナンスという言葉自体知らないエンジニアもいるだろうからね。

W − 僕がミックスしててもフィルター使うのは、単に差し込めるジャックが付いているからで、それだけのことです。

− ジャックがあったら挿し込んでみたい?

S − 何もやみくもに挿さないけどさ(笑)。

W − ミックスしていてこの音を変えたいって思ったとき、スタジオを見渡してこれと思ったものに入れてみる。ダメだったらそれまでだし、良くなれば、次からそれは自分の音として使えるわけです。最初の1回はトライ&エラーですよ。

− 徐々に単体のフィルターが発売されていますが、時代的にフィルターは求められていますか?

S − デジタル・フィルターでもSony DPS-F7みたいに面白いものもあるからね。

W − それからYamahaのSPXシリーズも、EQのモードの切り替えでダイナミック・フィルターにもなるし。これもいいんですよ。

S − 何か変な音にしてくれって言われて、それソフト・バレエ(のレコーディング)で使ったことあるな。

W − それからEventide DSP-4000が面白いんだ。自分でパッチを自由に作れるから面白いんだけど、この間作ったのが、サンプル・レートやビット数を自由に落とすパッチ。

S − どんな人たちもフィルターを使うという発想になった方がいいと思う。何ごとにもこだわりなくできるような状態にね。



さて、ここでご紹介するのはいわゆる 'シンセサイズ' によるフィルタリングとは違い、一聴して直ぐにその効果を把握できるものではないのだから悩ましい・・。面白そうだと慌てて購入して、何だよコレ、変わんねーじゃねーかよ!と直ぐに投げ出してしまいたくなるものばかりですが(苦笑)、ずーっと使ってみて突然 'Off' にした時、実はその恩恵を受けていたことを強く実感するもの。特に管楽器のピックアップ・マイクからの収音を '活かす' 為の '縁の下の力持ち' 的アイテムとしてここにお届けします。





→JHS Pedals Colour Box

そんな '質感生成' においてここ最近の製品の中では話題となったJHS Pedals Colour Box。音響機器において伝説的な存在として君臨するルパート・ニーヴのEQ/プリアンプを目指して設計された本機は、そのXLR入出力からも分かる通り、管楽器奏者がプリアンプ的に使うケースが多くなっております。本機の構成は上段の赤い3つのツマミ、ゲイン・セクションと下段の青い3つのツマミ、トーンコントロール・セクションからなっており、ゲイン段のPre VolumeはオーバードライブのDriveツマミと同等の感覚でPre Volumeの2つのゲインステージの間に配置、2段目のゲインステージへ送られる信号の量を決定します。Stepは各プリアンプステージのゲインを5段階切り替え、1=18dB、2=23dB、3=28dB、4=33dB、5=39dBへと増幅されます。そして最終的なMaster Gainツマミでトータルの音量を調整。一方のトーンコントロール段は、Bass、Middle、Trebleの典型的な3バンドEQを備えており、Bass=120Hz、Middle=1kHz、Treble=10kHzの範囲で調整することが可能。そして黄色い囲み内のグレーのツマミは60〜800Hzの間で1オクターヴごとに6dB変化させ、高周波帯域だけを通過させるハイパス・フィルターとなっております(トグルスイッチはそのOn/Off)。



→API TranZformer GT
→API TranZformer LX

今やNeveと並び、定評ある音響機器メーカーの老舗として有名なAPIが 'ストンプ・ボックス' サイズ(というにはデカイ)として高品質なプリアンプ/EQ、コンプレッサーで参入してきました。ギター用のTranZformer GTとベース用のTranZformer LXの2機種で、共にプリアンプ部と1970年代の名機API 553EQにインスパイアされた3バンドEQ、API525にインスパイアされたコンプレッサー(6種切り替え)と2520/2510ディスクリート・オペアンプと2503トランスを通ったDIで構成されております。ここまでくればマイク入力を備えていてもおかしくないですが、あえて、ギターやベースなどの楽器に特化した 'アウトボード' として '質感' に寄った音作りが可能。しかし 'Tone' や 'Comp' とは真逆にLEDのOnで光っている状態がバイパス、Offの消灯状態でOnというのはちょっとややこしい(苦笑)。





→Roger Mayer 456 Single
→Strymon Deco - Tape Saturation & Doubletracker

DSPの 'アナログ・モデリング' 以後、長らくエフェクター界の '質感生成' において探求されてきたのがアナログ・テープの '質感' であり、いわゆるテープ・エコーやオープンリール・テープの訛る感じ、そのバンドパス帯域でスパッとカットしたところに過大入力することから現れる飽和したサチュレーションは、そのままこのRoger Mayer 456やStrymon Decoのような 'テープ・エミュレーター' の登場を促しました。Studer A-80というマルチトラック・レコーダーの '質感' を再現した456 Singleは、大きなInputツマミに特徴があり、これを回していくとまさにテープの飽和する 'テープコンプ' の突っ込んだ質感となり、ここにBass、Treble、Presenceの3つのツマミで補助的に調整していきます。本機にOn/Offスイッチはないのでバッファー的使用となるでしょう。一方のDecoは、その名も 'Saturation' の飽和感と 'Doubletracker' セクションであるLag TimeとWobbleをブレンドすることで 'テープ・フランジング' のモジュレーションにも対応しており、地味な '質感生成' からエフェクティヴな効果まで堪能できます。また、このStrymonの製品は楽器レベルのみならずラインレベルで使うことも可能なので、ライン・ミキサーの 'センド・リターン' に接続して原音とミックスしながらサチュレートさせるのもアリ(使いやすい)。とりあえず、Decoはこれから試してみたい '初めの一歩' としては投げ出さずに(笑)楽しめるのではないでしょうか?





→Pettyjohn Electronics Filter Deluxe
→Pettyjohn Electronics Filter Standard ①
→Pettyjohn Electronics Filter Standard ②
→Pettyjohn Electronics Filter Standard ③

こちらはPettyjohn Electronicsのその名もFilter。と言っても 'シンセサイズ' のフィルターではなくEQ的発想からギターの '質感' を整えていくもの。中身を覗くとなかなかにレアなオペアンプ、コンデンサーなど豪華なパーツがずらりと並びこだわりが感じられます。本機もまた、JHS Pedals Colour Box同様にアナログ・コンソールのEQ回路(たぶんNeveでしょう)をベースに設計されたようで、ギターの帯域に向けながら、あえて 'EQ' ではなく 'Filter' と称して極端な '位相乱れ' を廃し、あくまで '質感' の生成に特化したものだということが分かります。







→Terry Audio The White Rabbit Deluxe

そんなPettyjohnとは真逆なガレージ臭プンプンのTerry Audio The White Rabbit Deluxe。こちらは1960年代のMcintoshのオーディオ・アンプがベースとなっており、いわゆるコンパクト・エフェクターにおいて 'ライン・アンプ' の発想から音作りをするものです。本機の '解説' を読んでみるとNeotenicSound Magical Forceと類似した効果を求めているようで、一切その表記のない3つのツマミは左から青い矢印と共にゲイン、赤い矢印の2つのツマミはメーカーによれば '回路の動作自体をコントロールし、シャッタースピードと絞り量で調整されるカメラの露出のように有機的に連動している' とのこと。何だかMagical ForceのPunchとEdgeを思わせるパラメータのように聞こえますが、これら2つのツマミの設定をフットスイッチで切り替えることが出来ます。また、ゲインを上げていくとファズの如く歪んでくるのもまさにギター用に特化した 'ブースト的' 音作りと言って良く、その歪み方としてはJHS Pedals Colour Boxのコンソールにおける 'ファズっぽい' 感じと同様ですね。本機はわたしのセッティングでも愛用しているのですが、まさに効果てき面!'ハイ上がり' なトーンと共に一枚覆っていたような膜がなくなって音抜けが良くなり、確かに 'マスタリング・プロセッサー' で整えたような '魔法' をかけてくれます・・素晴らしい。







→Audio Kitchen The Small Trees ①
→Audio Kitchen The Small Trees ②
→Audio Kitchen The Small Trees ③
→Audio Kitchen The Big Trees

こちらはそんなTerry Audioとよく似たコンセプトの英国の工房Audio KitchenからのThe Small Trees。1本の真空管ECC82をベースにしたクラスAのクリーン・ブーストで、中にでっかいトランスが鎮座するその姿はいかにも '良い味付け' をしてくれるんじゃないか、と期待が高まります。2段階の回路でプッシュするその構成はクリーンからクランチまでシンプルに対応。さらにデラックス版のThe Big Treesも用意しておりまする。








→NeotenicSound Magical Force - Column
→NeotenicSound Magical Force - Dynamic Processor ②
→NeotenicSound Magical Force Pro - Linear Compressor (discontinued)

さて、わたしが愛用するNeotenicSoundのダイナミクス系エフェクターMagical Forceもまさにそんな '質感生成' の一台でして、いわゆる 'クリーンの音作り' というのをアンプやDI後のライン環境にまで幅広く '演出' させたものなのですヨ。つまり、実際の楽器本来が持つ '鳴り' や 'コシ'、'旨味?' のようなものを引き出してやるというか、EQのようなものとは別にただ何らかの機器を通してやるだけで '付加' する '質感' こそ、実際の空気振動から '触れる' アコースティックでは得られない 'トーン' がそこにはあるのです。2011年頃に 'Punch'、'Edge'、'Level' の3つのツマミで登場した本機は一度目のリファインとカラーチェンジをした後、新たに音の密度を司るこの工房お得意の 'Intensity' を追加、4つのツマミ仕様へとグレードアップしたMagical Force Proへと到達。しかし、不安定なパーツ供給の面で一度惜しむらく廃盤、その後、声援を受けて小型化と根本的なリファイン、'Intensity' から 'Density' へと名称変更して4回目の変貌を遂げたのが現行機Magical Forceとなりまする。

本機はプリアンプのようでもありエンハンサーのようでもありコンプレッサーのような '迫力増強系' エフェクター。とにかく 'Punch' (音圧)と 'Edge' (輪郭)の2つのツマミを回すだけでグッと前へ押し出され、面白いくらいに音像を動かしてくれます。'Density' (密度)を回すと音の密度が高まり、コンプレスされた質感と共に散っていってしまう音の定位を真ん中へギュッと集めてくれます。コレ、わたしの '秘密兵器' でして、プリアンプの3バンドEQで控えめな補正をしている分、本機と最終的な出力の160Wコンボアンプの3バンドEQでバランスを取っております。本機の特徴は、DI後のラインにおける 'クリーンの音作り' を積極的に作り込めることにあり、おいしい帯域を引き出してくれる代わりにガラリとバランスも変えてしまうのでかけ過ぎ注意・・。単体のEQやコンプレッサーなどの組み合わせに対し、本機のツマミは出音の変化が手に取るように分かりやすいのが良いですね。設定はLevel (11時)、Punch (1時)、Edge (11時)、Density (9時)。ともかく、わたしのラッパにおける 'クリーン・トーン' はコイツがないと話になりません。ただし '魔法' とはいえ、かけ過ぎればコンプ特有の平べったい質感になってしまうのですが、あえてガッツリと潰しながらEdgeをナロウ気味、Punchで張り出すような '質感生成' してみるのが面白いかも。とりあえず、各自いろいろと研究しながらコイツを体感してみて下さいませ。


ちなみに本機の '機能強化版' としてエレクトリック・ギターに特化して新登場したTinyStructureも準備しておりまする。従来のLevel、Punch、Edge、Densityはそのままにベース用プリアンプDynaForceに搭載された 'Divarius' 回路の 'Body'、'Wood' という '鳴り' のコントロールを、今度はギターアンプからの出音としてチューニングさせてきました。まさに 'アンプに足りないツマミを補う' 工房さんならではの面目躍如。




→Hatena ? The Spice ①
→Hatena ? The Spice ②
→Hatena ? The Spice ③
→Hatena ? Active Spice A.S. - 2012 ①
→Hatena ? Active Spice A.S. - 2012 ②
→Hatena ? Active Spice A.S. - 2012 ③

この 'えふぇくたぁ工房' はNeotenicSoundの前にHatena?というブランドを展開、Magical Forceの源流ともいうべきActive Spiceという製品で一躍その名を築きました。このThe Spiceはその最終進化形であり、すでに廃盤ではありますがダイナミクスのコントロールと '質感生成' で威力を発揮してくれます。Magical Forceも独特でしたがこのThe Spiceのパラメータも全体を調整する音量のVolumeの他はかなり異色なもの。音圧を調整するSencitivity、Gainは歪み量ではなく音の抜けや輪郭の調整、Colorはコンプ感とEQ感が連動し、ツマミを上げて行くほどそのコンプ感を解除すると共にトレブリーなトーンとなる。さらにブースト機能とEQ感を強調するようなSolo !、そしてTightスイッチはその名の通り締まったトーンとなり、On/Offスイッチはエフェクトの効果ではなくSolo !のOn/Offとのことで基本的にバッファー的接続となります。





そんなAcitive Spiceは2004年頃に市場へ登場し、個人工房ゆえの少量生産とインターネット黎明期の '口コミ' でベーシストを中心に絶賛、その 'クリーンの音を作り込む' という他にないコンセプトで今に至る '国産ハンドメイド・エフェクター' の嚆矢となりました。より 'プリアンプ感' の強調した派生型Spice Landを始め、2009年、2011年、2012年と限定カラー版(2011年版はチューナー出力増設済み)なども登場しながら現在でも中古市場を中心にその古びないコンセプトは健在。エレアコ用プリアンプの代用としても評価が高く、わたしの分野である管楽器の 'アンプリファイ' においても十分機能しますヨ(今はNeotenicSound Magical Forceに任せているけど)。


こちらは緑色の筐体でおなじみ初代Active Spiceと超珍しいプロトタイプActive Spice ! AS-1の2ショット。Level、Wild !、Toneの3つのツマミという仕様でDC9Vのほか、9V電池ホルダーが基板裏側に内蔵?されるように装着されているのが面白い。ToneはそのままEQ的機能ですがこのWild !というツマミ1つを回すことでSensitivityとGainの効果を担っており、この後の製品版よりサチュレーション的飽和感の '荒さ' がいかにも初期モノっぽいですね。まだ南船場で工房を構える前の自宅で製作していた頃のもので、この時期の作業はエッチング液に浸した基板から感光幕を除去すべく玄関前?で干していたブログ記事を覚えております(笑)。




→Cuica
→Highleads Electric Cuica + New Cube Mic-W

ちなみにわたしは '電気ラッパ' とは別にピックアップを装着した '電気クイーカ' なんぞも嗜んでいるのですが、そっちのプリアンプとしてこのHatena ? Active Spiceを愛用中。このクイーカというヤツはバケツや樽に山羊や水牛などの皮を張り(近年はプラスティック打面もあり)、その真ん中へおっ立てた竹ひごを濡れた布(ウェットティッシュなども最適)でゴシゴシ擦ると例の "クック、フゴフゴ・・" と鳴るブラジルの民俗楽器です。皮の打面をチューニングしながら指でミュートすることで音程を変えることも可能で、大きさで人気のあるのは大体8インチ、9.25インチ、10インチのもので大きいほど音量も大きくなります。ここで取り上げている 質感' ということでは、昔はバケツ側の素材に樽を用いたこともありましたが、その他ブリキ、真鍮、アルミ、擦る手元の見える透明のアクリル樹脂、そしてステンレスなどがありそれ自体の音色も異なります。上の '音比べ' の動画では順にContemporaneaの9.25インチステンレス胴(プラスティック打面)、Lescomの9.25インチ真鍮胴(山羊革)、Art Celsiorの9.25インチブリキ胴(水牛革)で鳴らしておりますが、これだけでも結構な音質の違いがお判り頂けたでしょうか。しかしSovtek Bassballsとクイーカとの相性は抜群で、擦ると共にゲコ〜ッとカエルの如く鳴きながらブラジル産MG Musicのヴァイブ系ペダルMono Vibeとアナログ・エコーThat's Echo Folksで '埃っぽい' 余韻を付加、そして同じくブラジル産Audio Stomp LabsのトレモロWavesを左右に 'ステレオ' で広げて揺らしておりおりまする。






→Sennheiser Evolution e608
→Sennheiser Microphone
→Headway Music Audio EDB-2 Review

こちらは '電気ラッパ' で愛用中のプリアンプ。'エレアコ' のピックアップ・マイクのミックスにおいて、'ピエゾ + マグ' とか 'ピエゾ + コンデンサー' とか、いかにしてPAの環境で 'アコースティック' の鳴りを再現できるのかの奥深い世界。このEDB-2こそまさに至れり尽くせりの決定版というか、細かな内容は動画を見て頂くとして、フォンとXLRの2チャンネル仕様でEQをch.1、ch.2で個別及び同時使用の選択、2つのピックアップの '位相差' を揃えるフェイズ・スイッチと突発的なフィードバックに威力を発揮するNotch Filter、DIとは別にフォンのLine出力も備えるなど、おお、高品質かつ '痒いところに手の届く' 精密な作りですね。個別にミキサーとマイクプリ、EQをあれこれ中途半端なヤツ買って散財するのなら、思い切ってコイツを買ってしまうというのもアリかも。ただし、XLR入力のファンタム電源は48Vではなく18V供給となっているので、ここはコンデンサー・マイク使用の汎用性において今後の改善点になりますね。とりあえず、本機は内蔵のEQ含め触るところがいっぱいあってセッティングに時間はかかりますけど、やはり 'エレアコ' にとってプリアンプって大事だと思いますヨ。


→Neotenic Sound PurePad ①
→Neotenic Sound PurePad ②

そして 'エレアコ' にとってプリアンプと共に大事なのがヴォリューム・コントロール。わたしはヴォリューム・ペダルの代わりに 'Pad' でダイナミズムを生成するNeotenicSoundのPurePadをスタンバイ。これは2つに設定された 'プリセット・ヴォリューム' をスイッチ1つで切り替えるもので、ひとつは通常の状態(赤いLEDのSolo)、もうひとつが若干ヴォリュームの下がった状態(緑のLEDのBacking)となっており、'Pad' で音量を抑えながら全体のバランスを崩すことなく音量を上下できる優れもの。この切り替えによる音質の変化はありますが、音量を下げても引っ込みながらシャープなエッジは失われずまとまりやすい定位となります。そんなメーカーの '取説' は以下の通り。

"ピュアパッドは珍しいタイプのマシンなので使用には少し慣れとコツが必要かもしれませんので、音作りまでの手順をご紹介します。アコースティックの場合は図のように楽器、プリアンプ、ピュアパッド、アンプの順に接続します。エレキギターなどの場合は歪みペダルなど、メインになっているエフェクターの次に繋ぐとよいでしょう。楽器単体でお一人で演奏される場合は、初めにピュアパッドをソロ(赤ランプ)にしておいて、いつものようにプリアンプやアンプを調整していただければ大丈夫です。ピュアパッドのスイッチを踏んで、緑色のランプになったら伴奏用の少し下がった音になります。複数の人とアンサンブルをする場合には、初めにピュアパッドをバッキング(緑のランプ)の方にして、他の人とのバランスがちょうどいいようにプリアンプやアンプで調整します。そしてソロの時になったらピュアパッドのスイッチを踏めば、今までより少し張りのある元気な音になってくれます。また、ピュアパッドを繋ぐと今までより少し音が小さくなると思いますが、プリアンプよりもアンプの方で音量を上げていただく方が豊かな音色になりやすいです。もしそれでアンプがポワーンとした感じとなったり、音がハッキリクッキリし過ぎると感じたら、アンプの音量を下げて、その分プリアンプのレベルを下げてみてください。ツマミを回すときに、弾きながら少しずつ調整するとよいでしょう。"

わたしの環境では 'ループ・サンプラー' でのオーバーダブする際、フレイズが飽和することを避ける為の導入のほか、宅録の際にもアンプのヴォリュームはそのままに全体の音像を一歩下げる、もしくは歪み系やディレイ、ワウのピーク時のハウリング誘発直前でグッと下げる使い方でとても有効でした。


以前のPurePadはLED視認の為の電源以外はパッシヴの仕様なのですが、現在は新たにバッファー内蔵のアクティヴ版PurePadで新装してラインナップ。従来のパッシヴ版ではプリアンプや '歪み系' エフェクターの後ろに繋いでマスタープリセット的に使用することを想定していたようですが、このアクティヴ版は各種スイッチャーのチャンネルに組み込んだり、楽器の先頭に繋いでブースターの補助的アイテムとして用いるなど '使い勝手' の幅が広がりました。堂々の 'Dynamics Processor' という名と共にDC9Vアダプターのほか9V電池による駆動可。









→BJF Electronics Pine Green Compressor (3 Knobs)
→BJF Electronics Pine Green Compressor (4 Knobs)
→Ross Audibles 'Grey' Compressor

こんなActive Spiceの 'コンプ感' やMagical Forceに搭載される 'Density' のナチュラルなコンプレッションに聴けるクリーントーンの '質感' にハマった人には、スウェーデンでBJF Electronicsを主宰するBjorn Juhlの名を知らしめた製品のひとつPine Green Compressorをご紹介。ザ・ビートルズが当時のアビーロード・スタジオで用いたコンプレッサー、RS-124(Altec436BのEMIモディファイ)が本機製作のきっかけだそうで、最近のナチュラルなコンプレスの潮流に倣ったトーンから真ん中のツマミ 'Body' を回すことで空間的な広がりを演出することが可能。このBJFEの音は世界に認められてお隣フィンランドのブランド、Mad ProfessorからForest Green Compressor、さらに米国のブランドBear FootからPale Green Compressorとしてそれぞれライセンス生産による 'Re-Product' モデルが登場しております。そしてナチュラルなコンプレッションの出発点として蘇ったRossの 'Grey Box' ともいうべき伝説の 'Grey' コンプレッサー。これはロバート・キーリー主宰のKeeley Electronicsが見出して数々の 'デッドコピー' を市場に送り出してきましたが、いよいよ '本家' の名前を引っさげてオリジナルのかたちで復活です。







→MXR CSP028 '76 Vintage Dyna Comp
→MXR CSP102SL Script Dyna Comp
→MXR M102 Dyna Comp

さて、このような '質感生成' においてフィルターやプリアンプと並び取り上げられるのがコンプレッサーの世界。しかしダイナミズムをギュッと均すコンプは、時に演奏の細かなニュアンスを潰す '悪役' として敬遠されてしまうのも事実。そんなコンプというエフェクターでしかできない圧縮を演出の '滲み' として捉えてみても良いのではないでしょうか?管楽器ではカナダのラッパ吹き、Blair YarrantonさんがBossの 'グライコ' GE-7と一緒にエンヴェロープ・フィルターの後ろへ繋いでいるのがご存知、MXRの名機Dyna Comp。そんな代表的コンプならではの '質感' は現在でも多くの愛用者がおり、ギタリストである土屋昌巳氏はこう述べております。

"ダイナコンプは大好きなんでいくつも持ってます。筆記体ロゴ、ブロック体ロゴ、インジケーター付きを持ってます。壊れてしまったものもあるし、5台以上は買ったんじゃないかな。やっぱり全然違いますしね。個人的にはインジケーターなしのブロック体という中期のモデルが好きですね。ダイナコンプを使うことで、ギターのボリュームのカーブがきれいになるんですよ。フル・ボリュームの時と、7〜8ぐらいにした時の差がすごくいい感じになる。ライブでも、レコーディングでも、ダイナコンプは必ずかけっぱなしにしています。コンプレッション効果よりも、ギターのボリュームのカーブをきれいにするために使うんですけどね。(中略)けっこう雑に設定してあるというか、変にハイファイに作っていない分、ツマミをほんの1ミリ調整するぐらいで音が全然変わってくるところとか僕は好きですね。特にダイナコンプは、ちょっとツマミを動かすだけでアタックがかなり変わってくる。本当、ダイナコンプは、完全に僕のスタイルに欠かせないものになっていますよね。あれがないと自分のギターの音が出せないと思う。"








→Carlin Electronics Compressor / Fuzz
→Moody Sounds Carlin Compressor Clone
→Moody Sounds / Carlin Pedals
→Carlin Electronics Kompressor & Phaser Original

そんなエフェクティヴに 'パッコン' とした効果で有名なMXR Dyna Compの影響は、1970年代にスウェーデンのエンジニア、Nils Olof Carlinの手により生み出されたこのコンプレッサーに結実します。本機の特徴はコンプと銘打たれていながら 'Dist.' のツマミを備えることでファズっぽく歪んでしまうこと。あの 'エレハモ' のBig Muffもサスティンの効いたファズのニーズがあるというところから始まったようで、エフェクター黎明期においては 'ファズ・サスティナー'、クリーンにコンプ的動作をするものを単に 'サスティナー' として使い分ける傾向があったそうです。当時、本機はスウェーデンの音楽シーンにおいて人気を博していたらしく、それを同地の工房Moody SoundsがCarlin本人を監修に迎えて復刻したもの。こんな '辺境' の地においても大きな影響をもたらしたコンプの世界は、そのまま同地の奇才、Bjorn Juhlの手がけるBJFEのPine Green Compressorや最近の傾向として '本家' Rossにより復刻された 'Grey' のコンプ、そしてスタジオの定番Ureiのコンプをコンパクト化するナチュラルな圧縮感へと受け継がれております。いま一度このようなコンプ本来の '質感' に立ち返って見るのも面白いかもしれません。






→Spectra 1964
→Spectra Sonics on Reverb.com
→Spectra Sonics Model 610 Complimiter Custom
→Spectra Sonics Model 610 Complimiter 'Sequential Stereo Pair'

ちなみにCarlin Compressorに見る '歪むコンプ' の系譜は、いわゆる 'ファズ+サスティン' とは別にスタジオで使用するアウトボード機器で珍重された '飛び道具コンプ'、Spectra SonicsのModel 610 Complimiter (現Spectra 1964 Model C610)がございます。1969年に発売以降、なんと現在まで同スペックのまま一貫したヴィンテージの姿で生産される本機は、-40dBm固定のスレッショルドでインプットによりかかり方を調整、その入力レベルによりコンプからリミッターへと対応してアタック、リリース・タイムがそれぞれ変化します。クリーントーンはもちろんですが、本機最大の特徴はアウトプットを回し切ることで 'サチュレーション' を超えた倍音としての '歪み' を獲得出来ること。上のドラムの動画にも顕著ですが一時期、ブレイクビーツなどでパンパンに潰しまくったような '質感' で重宝されたことがありました。こんな個性的なコンプの味はAPIやNeveのモジュール、Urei 1176などの流れに続いてその内、Spectra 1964から 'ペダル化' する需要が生まれるかも知れませんね。





エフェクターの世界においていろいろな '売り文句' を謳って製品化、その需要があれば一気にひとつの市場として波及するものが定期的に現れます。例えばスタジオでのFETコンプレッサーの定番、Urei 1176LNの 'コンパクト化' やNeveのプリアンプ、EQの 'コンパクト化' などはここ近年のトレンドでした。そして遊び心という点では、こんな珍品こそ 'エフェクター好き' がワクワクして手を伸ばしたくなる感じがありまする。繋ぐだけで 'モータウンの質感' を付与してくれるというMoSound・・何すか、コレ?(笑)。まず 'モータウンの質感' という、およそ一般的とは言い難い価値観を共有しないといけないのだけど(汗)、これは、あのモータウン全盛期を支えたジェイムズ・ジェマーソンら 'ファンク・ブラザーズ' が奏でる1960年代のコンプレスされたレコードの音のことなのだろうか?こういうのは、ザ・ビートルズのレコードから聴こえてくるガッツリとかかったリミッター・サウンドなんかと近い感じかもしれないですねえ。初代の小さいヤツと筐体を大きくした2代目があり、初代では基板内部にあったセンスを司る 'Deep' トリムを2代目では 'Oldies' ツマミとして外部に装備、アクティヴからパッシヴなど各種入力に対して調整出来ます。とりあえず、本機を踏むことで上の帯域がフィルタリングされて丸くなる感じ・・いい感じにトーンの '耳に痛い感じ' が緩和されるのでわたしの 'ヴィンテージ・セット' で愛用しております。



→Acme Audio Motown D.I. WB-3 ①
→Acme Audio Motown D.I. WB-3 ②
→Acme Audio Motown D.I. WB-3 ③

ちなみにこんな '伝説のモータウン・サウンド' を '売り' にしている機器としては、Acme AudioのパッシヴDIであるWB-3というヤツもありますヨ。う〜ん、分かったようでその筋のマニア以外にはいまいちピンとこない 'モータウンの質感' というヤツ。単なる 'ローファイ' というワケではなさそーではありますが、確かにグッとミドルに寄りコンプレスした感じが 'モータウンっぽい' ってこと?。DI本来の仕事は 'インピーダンス・マッチング' の変換であり、それ以外の要素はアクティヴ、パッシヴを除けばほぼ考慮する必要はないのだけど、それでもこんな独特の '質感' にこだわったヤツが登場するのだから機材の世界は面白いのだ。





→Lovetone Meatball
→Chase Bliss Audio Warped Vinyl Hi Fi
→Chase Bliss Audio

さて、ここからはもう少し 'エフェクターライク' なペダルを取り上げます。エンヴェロープ・フィルターの機能を中心に地味な 'フィルタリング' の効果を発揮するもので1990年代後半に欧米のギタリストやベーシストはもちろん、DJやエンジニアにも好まれた英国の名機、Lovetone Meatballがありまする。とにかく豊富なパラメータを有しており、いわゆる 'オートワウ' からフィルタースィープによるローパスからハイパスへの '質感生成'、フィルター内部への 'センド・リターン' による攻撃的 'インサート'、2つのエクスプレッション・ペダル・コントロールと至れり尽せりな音作りでハマれます。そして現在の注目株Chase Bliss Audio Warped Vinylの登場。米国ミネソタ州ミネアポリスに工房を構えるJoel Korte主宰のChase Bliss Audioは、この細身の筐体にデジタルな操作性とアナログの質感に沿った高品質な製品を世に送り出しております。このWarped Vynal Hi Fiは従来のモデルに 'Hi Fi' 的抜けの良さを加味したもので、アナログでありながらデジタルでコントロールする 'ハイブリッド' な音作りの密度に感嘆。Tone、Volume、Mix、RPM、Depth、Warpからなる6つのツマミと3つのトグルスイッチが、背面装備の 'Expression or Ramp Parameters' という16個のDIPスイッチでガラリと役割が変化、多彩なコントロールを可能にします。タップテンポはもちろんプリセット保存とエクスプレッション・ペダル、MIDIクロックとの同期もするなど、まあ、よくこのMXRサイズでこれだけの機能を詰め込みましたねえ。







→Triode Pedals Leviathan ①
→Triode Pedals Leviathan ②
→Frogg Compu-sound - Digital Filterring Device

また、このLovetone Meatball的フィルタリングを得意とするものとしては米国はメリーランド州ボルチモアで製作する工房、Triode Pedalsのリゾナント・フィルターLeviathanがあります。アシッド・エッチングした豪華な筐体に緑のLEDとツマミが見事に映えますけど、その中身もハンドメイドならではの '手作り感' あふれるもので期待させてくれます。本機のちょっと分かりにくいパラメータの数々を取説で確認してみると、いわゆるその大半がリズミックにワウをかける 'オートワウ' というより、ゆったりとしたフィルター・スウィープ、LFOの音作りに特化した独特なものでギタリストやベーシストはもちろん、キーボーディストからDJに至るまで幅広い層をカバーしておりまする。

●Song
コントロールはフィルターのカットオフ周波数を設定。クラシックなフィルタースウィープを作ることが可能。
●Feed
コントロールを調整すれば、レゾナンスフィードバックをコントロールしてエフェクトのかかりを最小から発振まで設定可能。
●↑/↓の3段階切り替えトグルスイッチ
上から順にハイパス、バンドパス、ローパスフィルターの設定。
LFOセクションはSongコントロールの後に設置されます。ChurnコントロールはLFOスピード、WakeコントロールはLFOの深さを調整します。LFOをフルレンジでオペレートするには、Songを中央に設定し、Feed、Wakeを最大または最小に設定。
●'Wake' と 'Churn' ツマミ間のトグルスイッチ
LFOの波形を三角波と短形波から選択可能。
●エクスプレッション・ペダル端子とDC端子間にあるトグルスイッチ
LFOのスピードレンジとレンジスイッチ。上側のポジションでFast、下側のポジションでSlowのセッティングとなる。

ちなみに、このようなスウィープするフィルタリングからエンヴェロープ・フィルターまで100個のプログラマブルを駆使するものとしては、たぶん1970年代後半〜80年代初め頃までの '初期デジタル風' な製品(中身はアナログらしい)であるFrogg Compu-soundが最高。いかにも同時代的なEL管表示のデジタル・カウンターとテンキー操作はペダルというより '電卓風 シーケンサー' なルックスですけど、当時、わずか100台ほどしか製作されなかったレア機がいまeBayとReverb.comでそれぞれ出品されているなんて素敵過ぎますヨ!。











→Ibanez LF7 Lo Fi (discontinued) ①
→Z.Vex Effects Instant Lo-Fi Junky 'Vexter'
→Z.Vex Effects Instant Lo-Fi Junky 'Clear' S/N 24
→Z.Vex Effects Instant Lo-Fi Junky 'Clear' S/N 25
→Cooper Fx Generation Loss 2016
→Cooper Fx Generation Loss

いわゆる 'ローファイ' という名称や機能をコンパクト・エフェクターで初めて具現化したIbanezの 'Tone-Lok' シリーズ中の迷機、LF7 Lo Fi。まさにギタリストからDJ、ラッパーのような人たちにまでその裾野を広げたことは、この入力部にGuitar、Drums、Micの3種切り替えスイッチを設けていることからも分かります。本機のキモは極端にカット方向で音作りのするLo CutとHi Cutの周波数ツマミでして、基本的にはAMラジオ・トーン、電話ヴォイス的 'ローファイ' なものながらその加工具合は地味。EQに比べて極端にカットしながらワウになるでもなく、歪み系エフェクターの範疇に入れるには弱い感じですけど、本機の動画の大半がどれもブースター的歪ませてばっかりでいわゆる 'ローファイ' の差異に迫ったものが少ないのは残念。その中で上にご紹介するものは本機の魅力を引き出しており、また個人で 'ビット・クラッシャー' 的ノイズのモディファイを施したヤツも楽しい。このようなフィルタリングを 'ローファイ' の価値観で新しいモジュレーションのかたちとして提示したのがこちら、Z.Vex Effects Instant Lo-Fi Junky。さすがエフェクター界の奇才、Zachary Vexが手がけたその着眼点は、いわゆるアナログ・レコードの持つチリチリ、グニャリとした '訛る' 回転の質感に特化したものというから面白い。特に真ん中の 'Comp ←→Lo-Fi' ツマミがもたらす '質感' はその気持ちの良い 'ツボ' をよく心得ている。しかし、この 'なまり具合' を聴いていると爽やかな陽気と共に遠い昔の記憶へ思いを馳せたくなりますねえ。さらに現在の 'ローファイ' 対決としてZ.Vex Effects Instant  Lo-Fi JunkyとCooper Fx Generation Lossの比較動画もありますが、このGeneration Lossはここ最近のヒット作のようでChase Bliss Audioとの 'コラボ' による限定版まで登場しました。とりあえず何でも轟音ばかりではなく、こういう効果がもたらす 'ビミョーな質感' に耳をそば立てるプレイヤーが登場して欲しいですね。







→Holowon Industries Tape Soup
→Holowon Industries

永らく書棚に仕舞われていた反ったレコード盤の 'グニャリ' とした質感はもちろん、この手の効果のきっかけとも言うべき、テープの伸び切った 'ローファイ' の鈍ったような '質感' ということでは、こんなアナログテープの 'ワウフラッター' に特化したエフェターもありまする。ニューヨーク州ロチェスターに構えるこの小さな工房で製作する本機は、Volume、Fidelity、Saturation、Speed、Biasというまるでオープンリール・デッキの 'バリピッチ' 的ツマミの構成から歪ませて何でもグニャグニャとピッチ・シフティングしてしまいます。





→J.Rocket Audio Designs APE (Analog Preamp Experiment)

そして、こーいう 'テープもの' ではJ.Rocket Audio DesiginsのAPE (Analog Preamp Experiment)というテープ・エコーの '質感' を付加するものが登場。通常のプリアンプとしての使用もOKですが、本機が本領発揮するのは 'センド・リターン' にデジタル・ディレイを繋ぐことでその 'デジタル臭さ' を鈍らせること。特にディレイ音を 'キル・ドライ' 出来るヤツを選ぶことで本機の 'Ape' ツマミでディレイ音をコントロール、いかにもテープヘッドに録音したような '質感' を生成することが出来ます。またオリジナルEcoplex同様の内部電圧22.5Vで動作すべく、DCコンバータで昇圧してDC9Vアダプターで駆動させることが可能。






→Performance Guitar TTL FZ-851 "Jumbo Foot" F.Zappa Filter Modulation
→Performance Guitar F.Zappa Filter Modulation
→Guitar Rig - Dweezil Zappa

ザッパのフィルタリングに対する音作りの研究に訴えた超絶 'ニッチな' ペダルとして、本機は父親の楽曲を再現する上で息子ドゥィージルがザッパと縁の深いPerformance Guitarにオーダーしたマニアックな一台。Boss FV-500とFV-50の筐体を利用し、どでかい鉄板風アルミ板(軽い)を強引に乗っけてLo-pass、Band-pass、Hi-passを切り替えながらフィルター・スィープをコントロールするという荒削りさで実際、ペダル裏側には配線がホットボンドとマスキングテープで固定してレーシング用フォーミュラカーを見るような迫力がありまする。その肝心の中身なんですが・・ええ、この動画通りのほとんどVCFをノックダウンした 'シンセペダル' と呼べるほどエグい効果から、EQ的な操作をして域幅の広いQの設定、半踏み状態によるフィルタリングの '質感生成' やワウペダルのリアルタイム性まで威力を発揮します。また本機はBoss FV-500の筐体を利用したことでタコ糸によるスムースな踏み心地なり。








→Gibson / Maestro Rhythm n Sound for Guitar G1
→Oberheim Electronics Voltage Controlled Filter VCF-200
→Musitronics / Dan Armstrong Green Ringer -Frequency Multiplier-
→Systech Harmonic Energizer
→Arbiter Add-A-Sound

しかし、他のギタリストでは選ばないだろうGibson / MaestroのRhythm 'n Sound for Guitar G-1からOberheim Voltage Controlled Filter VCF-200、Dan Armstrong Green RingerやSystech Harmonic Energeizer、MicMix Dynaflanger、そしてArbiter Add-A-Soundといった人知れずニッチな製品を見出して 'フィルター愛' を貫いたフランク・ザッパには 'エフェクター発掘大賞' を差し上げたいですね。そろそろジミ・ヘンドリクスだけではなくフランク・ザッパの '足下' の探求、盛り上げている 'ペダル界隈' の皆さま必要ですヨ。







→Maestro Parametric Filter MPF-1
→Moog Minifooger MF Drive (discontinued)
→Stone Deaf Fx

MaestroのParametric Filterは、同社でエフェクターの設計を担当していたトム・オーバーハイムが去り、CMI(Chicago Musical Instruments)からNorlinの傘下でラインナップを一新、設計の一部をモーグ博士が担当することで生み出されました。本機特有の 'フィルタリング' はやはり1990年代以降の '質感世代' に再評価されることとなり、とにかく何でも通してみる・・ジャリジャリと荒い感じとなったり、'ハイ落ち' する代わりに太い低域が強調されたりすれば、それはもう 'ベッドルーム・テクノ世代' の求める '質感' へと変貌します。後にMoogはこれを '歪み系' のエフェクターに特化したMinifooger MF Driveとして蘇らせましたが、英国の工房、Stone Deaf FxからもPDF-2として登場。本機は 'Clean' と 'Dirty' の2つのチャンネルで切り替えて使うことが可能でおお、便利〜。また、専用のエクスプレッション・ペダルを用いればエンヴェロープ・フィルターからフェイザー風の効果まで堪能できる優れモノ。管楽器においては適度なクランチは 'サチュレーション' 効果も見込まれますが、完全に歪ませちゃうとニュアンスも潰れちゃう、ノイズ成分も上がる、ハウリングの嵐に見舞われてしまうので慎重に '滲ませる' のがこれら設定の 'キモ' なのです。






→Elektron Analog Heat HFX-1 Review
→OTO Machines Boum - Desktop Warming Unit
→Dr. Lake KP-Adapter

そしてKP-Adapterを用いて是非とも繋いでみたいのがElektronとOTO MachinesのDJ用マルチバンド・フィルター、と言ったらいいのだろうか、素晴らしいAnalog HeatとBoumをご紹介。Elektronにはギターに特化したAnalog Drive PFX-1という製品があるものの、こちらのAnalog Heatの方がシンセやドラムマシン、マイクからの音声などラインレベルにおける入力に対して幅広い 'サチュレーション' を付加、補正してくれます。その多様に用意されたプログラムの中身はClean Boost、Saturation、Enhancement、Mid Drive、Rough Crunch、Classic Dist、Round Fuzz、High Gainの8つのDriveチャンネルを持ち(もちろんアナログ回路)、そこに2バンドのEQとこれまた7つの波形から生成するFilterセクションで各帯域の '質感' を操作、さらに内蔵のエンヴェロープ・ジェネレーター(EG)とLFOのパラメータをそれぞれDriveとFilterにアサインすることで、ほとんど 'シンセサイズ' な音作りにまで対応します。また、現代の機器らしく 'Overbridge' というソフトウェアを用いることで、VST/AUプラグインとしてPCの 'DAW' 上で連携して使うことも可能。Elektronのデモでお馴染みCuckooさんの動画でもマイクに対する効果はバッチリでして、管楽器のマイクで理想的な 'サチュレーション' から '歪み' にアプローチしてみたい方は、下手なギター用 '歪み系' エフェクターに手を出すよりこのAnalog Heatが断然オススメです。一方のフランスOTO Machinesから登場する 'Desktop Warming Unit' のBoum。すでに '8ビット・クラッシャー' のBiscuit、ディレイのBimとリヴァーブのBamの高品質な製品で好評を得た同社から満を持しての '歪み系' です。その中身はディストーションとコンプレッサーが一体化したもので、18dBまでブーストと倍音、コンプレッションを加えられるInput Gain、Threshold、Ratio、Makeup Gainを1つのツマミで操作できるコンプレッション、低域周波数を6dB/Octでカットできるローカット・フィルター、4種類(Boost、Tube、Fuzz、Square)の選択の出来るディストーション、ハイカット・フィルター、ノイズゲートを備え、これらを組み合わせて36のユーザー・プリセットとMIDIで自由に入力する音色の '質感' をコントロールすることが出来ます。










→Pigtronix Disnortion ①
→Pigtronix Disnortion ②
→Pigtronix Disnortion Micro
→Gamechanger Audio Plasma Pedal
→Gamechanger Audio Plasma Rack

Youtubeでも積極的にラッパの 'アンプリファイ' を推奨するカナダのラッパ吹き、Blair YarrantonさんがPigtronixのアッパー・オクターヴなディストーション、Disnortionでのデモ動画。しかし、さすがにコンデンサー・マイクのセッティングではほとんど歪ませることが出来ず、ほぼサチュレーション的倍音の '質感生成' に終始した音作りですね。ワウも踏んでおりますがかなりコンプでピークを潰しながらハウる寸前・・。本機の特徴はアッパーオクターヴ・ファズの 'スパイス' として、6種切り替えからなる 'Shape' というフィルターを搭載していること。1. フルレンジ、2. ファット(ミッドブースト)、3. スムース、4. トレブル、5. ミッドスクープ、6. ベースの構成となっております。すでにこの 'でっかいヴァージョン' は廃盤ですが、現在はより小型なDisnortion Microとしてラインナップ。本製品で面白いのは通常の 'In/Out' とは別に 'Clean' という 'バイパス音' が確保されていることで、この出力を例えば同社のEnvelope Phaser EP-2の 'Trigger' 入力に繋いでそのかかり方を調整出来ること。これは結構 'シンセサイズ' の発想から設けられたユニークな仕様ではないかと思います(Disnortion Microには無し)。ちなみに一見、管楽器とは '真逆' な志向に見える '歪み系' のペダルですけど、そもそもファズの元祖として1962年にGibsonから登場したFuzz Tone FZ-1のデモ音源ではいわゆるギターアンプを 'オーバードライブ' させるという発想ではなく、'Sousaphone' 〜 'Tuba' 〜 'Bass Sax' 〜 'Cello' 〜 'Alto Sax' 〜 'Trumpet' という流れで各種管楽器の模倣から始まっているのは興味深いですね。このファズを一躍有名にしたザ・ローリング・ストーンズの 'Satisfaction' でキース・リチャーズの頭の中にあったのは、あのスタックスの豪華なホーン・セクションによる 'ブラス・リフ' を再現することでした。Maestroのブランドマークが 'ラッパ3本' をシンボライズしたのは決して伊達ではないのです。そして超高圧信号をキセノン管でスパークさせたラトビア共和国の話題作、Gamechanger AudioのPlasma Pedalはラッパだと少々歪み過ぎて使いにくいのですが、倍音の多いサックスなら完全に破壊されたトーンとしてブッ飛べるのでわ?







→Empress Effects Zoia ①
→Empress Effects Zoia ②

さて、上の 'フィルター対談' の中でエンジニアの渡部氏が最後にEventide DSP-4000というラック型マルチ・エフェクターで自由にサンプル・レートやビット数を落とすパッチを組めるモジュールが面白いという話をしておりますが、コレ、まさに当時の 'エレクトロニカ' 黎明期を象徴するプラグインCycling 74 Max/Mspのハードウェア的端緒として話題となりました。このDSP-4000は 'Ultra-Harmonizer' の名称から基本はインテリジェント・ピッチシフトを得意とする機器なのですが、色々なモジュールをパッチ供給することで複雑なプロセッシングが可能なこと。リヴァーブやディレイなどのエフェクトそのものの役割を果たすものから入力信号を '二乗する'、'加える' といった数式モジュール、'この数値以上になれば信号を分岐する' といったメッセージの 'If〜' モジュールといった完全にモジュラーシンセ的発想で自由にパッチを作成することが出来るのです。当時で大体80万くらいの高級機器ではありましたが 'ベッドルーム・テクノ' 世代を中心に人気となりましたねえ。

そんなユーザーの好みに合わせて自由にモジュールの組めるシステムから20年後、いよいよそれのコンパクト版ともいうべきペダルがカナダの工房、Empress Effectsから登場です。各モジュールはカラフルにズラッと並んだ8×5のボタングリッド上に配置し、そこから複数のパラメータへとアクセスします。これらパラメータで制作したパッチはそれぞれひとつのモジュールとしてモジュラーシンセの如く新たにパッチングして、VCO、VCF、VCA、LFOといった 'シンセサイズ' からディレイやモジュレーション、ループ・サンプラーにピッチシフトからビット・クラッシャーなどのエフェクツとして自由に 'デザイン' することが可能。これらパッチは最大64個を記録、保村してSDカードを介してバックアップしながら 'Zoiaユーザーコミュニティ' に参加して複数ユーザーとの共有することが出来ます。




→SWR California Blonde Ⅱ

ここまでご紹介した 'ペダル類' はその 'アウトプット' における変化を聴き取れることが重要で、わたしはアコースティック/PA用のコンボアンプをDIからラインで繋いでおりまする。現在のわたしのメインはSWRの12インチ一発、最大160W出力のCalifornia Blonde Ⅱでして、いかにも 'エレアコ' 用といった仕様のマイクとAux入力、またアンサンブル中での '音抜け' を意識して高域を中心に '横へ拡げる' 機能の 'Aural Enhancer' を備えるなど、ライヴにおける使い勝手を意識したデザインとなっております。EQはBass、Mid Range、Trebleの3バンドでリアにハイのツィーターをコントロールするツマミが個別に用意、外部エフェクツ用 'センド・リターン' とスプリング・リヴァーブを内蔵(ちょっとノイズ多目ですが)。

このアンプ最大の特徴が、ハイインピーダンスによるアンバランス入力のほか 'Low Z Balanced' のスイッチを入れることでTRSフォンのバランス入力に対応すること。ちなみにこの端子の隣に 'Stereo Input' というTRSフォンの入力もあり、こちらに入れても使えなくはないのですが・・なぜかビミョーに 'ノイズ成分' が上がってしまうので 'Low Z Balanced' の方を選んでおります。このバランス入力が他社のアンプにはない本機ならではの機能として実に重宝しており、取説での説明は以下の通り。

"ローインピーダンス仕様のギターのバランス出力を入力端子に接続するときは、このスイッチを押し下げてください。TRS端子による接続が必要なバランス接続では、最高のダイナミックレンジと低ノイスの環境が得られます。"



このアンプの各ツマミは少々ガリの出やすいところが玉に瑕で、重量も堂々の24Kgと重たいものの、アンプとしての音色は後述するGenz-Benz UC4よりかなり好みですね。そしてスタック化するべく、California Blondeのオプションとして用意されていた高域ツイーターである80W12インチの外部キャビネット、Blonde On Blondeが欲しくて探しておりまする(こんな '二段積み' したらもう自宅で鳴らせないけど・・苦笑)。








→Acoustic Control Corporation
→Acoustic Control Corporation 360 + 361
→Acoustic Control Corporation 115

あ、そうそう、このSWRという会社の創業者Steve Rabe氏は元々Acoustic Control Corporationでアンプの設計に従事していた御仁。Acousticのアンプといえばギターやベースのほか、1960年代後半〜70年代の 'アンプリファイ' でクリーンなアンプとして管楽器奏者にも重宝されておりました。260+261の組み合わせはマイルス・デイビスや初期のランディ・ブレッカーはもちろん、フランク・ザッパ1968年のステージで吹くイアン・アンダーウッド、バンク・ガードナーらの背後にAcousticのアンプが鎮座しておりました。またベース用の360+361はあのジャコ・パストリアスが愛した組み合わせとして有名ですね。こーいうところからラッパとSWRのアンプは相性良いのかな?(しかしCalifornia BlondeはRabe氏独立後の製品だけど)。



→Acoustic Amplification AG30

ちなみに現在のAcoustic AmplificationからはこちらのPA風ウェッジシェイプ型30Wの 'エレアコ' 用コンボアンプ、AG30などがかなり管楽器に最適な仕様となっておりまする。通常のアンバランスフォンとXLRフォンの2チャンネルコンボ端子に3バンドEQ、16種のマルチエフェクツ内蔵とピックアップからプリアンプを介して繋げばすぐに 'アンプリファイ' 出来ますヨ。












→Genz-Benz UC4-112T
→Ashly LX-308B 8 Channel Mic / Line Mixer
→Acus Sound Engineering
→Acus Sound Engineering Oneforstrings AD
→Roland Jazz Chorus JC-120
→40 Years of Roland Jazz Chorus

最近はイタリアのAcusのようなデザインの格好良い高級 'エレアコ/PA' 用アンプが登場しておりますが、PAの用途を謳っている通りミキサー機能を備えてあらゆる楽器やマイクからの入出力に対応しております。この最大135W出力なPA用コンボアンプというかなり変わった仕様のGenz-Benz UC4もそういった用途に適したもの。スプリング・リヴァーブと4つの入力というミキサー機能を備え、その内のひとつがライン入力なのでAshlyのライン・ミキサーLX-308Bと組み合わせて使用中。内蔵空冷ファンが少々うるさいものの、キャビネット内部の吸音材を廃材の古布を利用したニードフェルトに入れ替えたことでハッキリした定位とタイトな音色に変わりましたが、基本的な出音はPAライクな素っ気ないもの(苦笑)。UC4の4チャンネル・ミキサーとは別にAshlayのライン・ミキサーを使用しているのは、一度エフェクターからの出力をパッシヴDIでローインピーダンスのバランス出力へと変換、AshlayのミキサーからUC4のラインへとアンバランスで入力する為です。改めて言えば、管楽器というと今やヴォーカルと同じくPAのラインで鳴らすのが常識となっておりますが、わたし的には同じくラインで鳴らすとはいえ、やはり 'アンプという箱' をそばに置いて 'エレキ' 的に鳴らしたいのですヨ。生楽器本来のダイナミックレンジの再生より、クリーンとはいえアンプで飽和する '歪み' こそ重要なのです。ちなみに管楽器の 'アンプリファイ' としてはマイルス・デイビスと並び早くから探求していたランディ・ブレッカー。古くはAcoustic Control Corporationのサウンド・システムから出発し、1993年のザ・ブレッカー・ブラザーズ '復活' ツアーの際にはクリーンなギターアンプの定番、Roland Jazz Chorus JC-120を2台ステレオで鳴らしていたとのこと。ギターやキーボードなどでの使用はもちろん、その '裏ワザ' として後方の 'Return' からプリアンプをスルーしてラインでパワー・アンプをステレオで鳴らせます。そんな 'JC' についてランディ・ブレッカーは、来日公演時の 'Jazz Life' 誌とのインタビューによる機材話が興味深いので抜粋します。

ランディ − ここには特別話すほどのものはないけどね(笑)。

− マイク・スターンのエフェクターとほとんど同じですね。

ランディ − うん、そうだ(笑)。コーラスとディレイとオクターバーはみんなよく使ってるからね。ディストーションはトランペットにはちょっと・・(笑)。でも、Bossのギター用エフェクツはトランペットでもいけるよ。トランペットに付けたマイクでもよく通る。

− プリアンプは使っていますか?

ランディ − ラックのイコライザーをプリアンプ的に使ってる。ラックのエフェクトに関してはそんなに説明もいらないと思うけど、MIDIディヴァイスが入ってて、ノイズゲートでトリガーをハードにしている。それからDigitechのハーモナイザーとミキサー(Roland M-120)がラックに入ってる。

− ステレオで出力してますね?

ランディ − ぼくはどうなってるのか知らないんだ。エンジニアがセッティングしてくれたから。出力はステレオになってるみたいだけど、どうつながっているのかな?いつもワイヤレスのマイクを使うけど、東京のこの場所だと無線を拾ってしまうから使ってない(笑)。生音とエフェクト音を半々で混ぜて出しているはずだよ。"

− このセッティングはいつからですか?

ランディ − このバンドを始めた時からだ。ハーモナイザーは3、4年使ってる。すごく良いけど値段が高い(笑)。トラック(追従性のこと)も良いし、スケールをダイアトニックにフォローして2声とか3声で使える。そんなに実用的でないけど、モーダルな曲だったら大丈夫だ。ぼくの曲はコードがよく変わるから問題がある(笑)。まあ、オクターヴで使うことが多いね。ハーマン・ミュートの音にオクターヴ上を重ねるとナイス・サウンドだ。このバンドだとトランペットが埋もれてしまうこともあるのでそんな時はエッジを付けるのに役立つ。

− E-mu Proteus(シンセサイザー)のどんな音を使ってますか?

ランディ − スペイシーなサウンドをいろいろ使ってる。時間があればOberheim Matrix 1000のサウンドを試してみたい。とにかく、時間を取られるからね。この手の作業は(笑)。家にはAkaiのサンプラーとかいろいろあるけど、それをいじる時間が欲しいよ。

− アンプはRolandのJazz Chorusですね。

ランディ − 2台をステレオで使ってる。









さて、California Blonde ⅡやUC4には 'ロー・インピーダンス' のライン入力のみならずギターや高出力のピエゾ・ピックアップなどを直接繋げられる 'ハイ・インピーダンス' 入力を備えております。これを 'ロー出しハイ受け' の原則に従ってコンパクト・エフェクターから低いインピーダンスで出力しアンプ側の高いインピーダンスで受けると・・ノイジーに歪みまくり、ゲインのバランスも取れずにハウリングの嵐に見舞われる(汗)。これが機材のセオリー通りではない各社機器間の '不都合な真実' (笑)であり、つまりきちんとインピーダンス整合が取れていないのですね。ということで一旦、エフェクターからの出力をパッシヴのDIで 'ロー・インピーダンス' に変換、そこから '逆DI' ことリアンプ・ボックスで再び 'ハイ・インピーダンス' の信号にしてアンプへと繋いで実験・・結論。コイツをDIとの間に挟めば 'ハイインピーダンス' 入力のアンプでもちゃんと管楽器で鳴らせますヨ。Snarky Puppyのラッパ吹き、Mike 'Maz' MaherもFenderのギターアンプでワウを踏んでおりますが(現在PiezoBarrelのマウスピース・ピックアップを使用)、これも古くはドン・エリスがFender Pro Reverbで鳴らしておりその広告にまで遡ることが出来まする。そしてブリティッシュ・ジャズ・ロックの雄、ニュークリアスのイアン・カーはDynacordのアンプでラッパを鳴らしておりますすね。







→Radial Engineering Reamp JCR
→Radial Engineering Reamp X-Amp
→Dumble Amp Overdrive Special
→Alembic F-2B Stereo Tube Preamp

そんな '逆DI' の実験として、ここでパッシヴのReamp JCRとアクティヴのReamp X-Ampで比較してみれば、パッシヴ(黒いヤツ)ではハムノイズっぽいのが低くブ〜ンと拾ってしまったのでローカット・フィルターを入れて対処、一方のアクティヴ(黄色いヤツ)では問題なくちゃんと 'インピーダンス変換' されました。やはりオススメは黄色いReamp X-Ampの方ですね。ただ、'Low Z Balanced' の完全ローインピーダンスに比べるとこの 'やり方' は少しだけタッチノイズに対してセンシティヴかな?このリアンプってヤツは、素の状態で録音されたギターを再びラインからギターアンプで再生、爆音で再録音する為のエンジニア・アイテム。ふぅ、実験とはいえ本当に '電気ラッパ' の 'アンプリファイ' は金も機材も増えてイヤになる(苦笑)。ちなみにギターの世界ではカナダの個人的アンプビルダー、ハワード・ダンブル氏製作のアンプが半ば伝説化されておりますけど、このFenderのアンプからインスパイアされたと思しきクリーントーンは管楽器でも鳴らしてみたくなります。そんな真空管のドライブする倍音の '質感' は、近藤等則さんも以前にAlembicの2チャンネル・プリアンプF-2Bを愛用していたことにも繋がるのですが、これもAlembic主宰のロン・ウィッカーシャム氏がFenderのDual Showmanのプリ部を1Uラックにノックダウンするところから始まってますからね。








→Vintage Kustom Amplification
→Kustom Amplification Bass 150-1 + 2-12B

エレクトリック・ギター用のアンプは中域に特徴の歪ませること前提としたモノであり、クリーンで鳴らす管楽器では不要なノイズも目立ち上手く行きません。一方、低域という幅広い帯域を確保すべく鳴らすベース・アンプはクリーンであることが前提であり、そのオーディオアンプ的特性から実は 'エレアコ' 用アンプの代用としても十分機能します。フランスで活動するGuillaume Perretさんはテナーサックスでかなり歪ませるタイプのようですが(汗)、ここではAmpegのベース用スタックアンプで気持ち良く鳴らしておりまする。さらに続く 'メリーさんの羊' オジサン(笑)のクラリネットによる動画では、モコモコしたビニール地のソファ風アンプで有名なKustomのスタックアンプを鳴らしており、リンク先の 'Kustomファン' によるサイトによれば150W12インチ2発によるBass 150というモデルとのこと。






→Carvin AG100D ①
→Carvin AG100D ②

こちらはすでに 'ディスコン' ですが 'エレアコ/PA' 用コンボアンプ、Carvin AG100D。12インチ一発の100W出力で3つの独立した入力チャンネルとデジタル・エフェクツ、5バンドのグラフィックEQを内蔵しております。Ch.1はアコギやエレキ、Ch.2はドラムマシンにキーボードなど、そしてCh.3はマイク/ライン入力となっているのですが、その3チャンネルのミキサー機能が管楽器の 'アンプリファイ' を行う上で非常に重宝した使い方が出来るのですヨ。まず、グーズネック式マイクであれば腰に装着するバッテリーパックからXLR(メス)→フォンの変換ケーブル、もしくはワイヤレス・システムなどを用いてCh.2に入力して下さい。そしてアンプ後部の 'Stereo Line Out' からEQ前の信号を取り出して足元のペダル群に接続、その出力をCh.1かCh.2へ戻します。このようなチャンネル間を 'インサート' するかたちでマイクとペダルのインピーダンスを整合、調整することが可能になります。また、このAG100Dにオプションの外部キャビネットが用意されており 'スタック化' も可能ですが、これ以上の音圧を求める場合ではCarvinも簡易PAのサウンド・システムを用意していたようです。この会社の製品は以前サウンドハウスが代理店として扱っておりましたが、その後Carvinが楽器製作をやめてしまったことで現在は中古を探さなければならないのが残念なり。










→Behringer K900FX Ultratone
→Roland New 'KC' Series
→Roland KC-150 - 4 Channel Mixing Keyboard Amplifier
→Roland KC-350 - 4Channel Stereo Mixing Keyboard Amplifier 

現在、一般的に入手しやすいアンプとしては管楽器の 'アンプリファイ' にも向いているBehringerの12インチ一発、最大90W出力のキーボード用アンプK900FXも評判が良いですね。そして、この手のアンプで最も入手しやすいのがRolandの12インチ一発、最大65W出力のキーボード用アンプKC-150や最大120W出力のKC-350などはお手軽に試すことが出来まする(2018年にこの 'KCシリーズ' はラインアップを一新してKC-200 & KC-400となりました)。ここでご紹介している管楽器の 'アンプリファイ' 動画のほとんどで、この 'KCシリーズ' のアンプが活躍しているところからもその '定番ぶり' が分かるかと思います。






→C.G. Conn Multi-Vider
→C.G. Conn Model 914 Multi-Vider

他にヴィンテージのアンプだとC.G. Connの 'アンプリファイ' システムであるMulti-Viderの付属として用意された500 Amplifierも所有しております。最大定格出力500Wというところから名付けられた75W12インチ一発のこのアンプは、3つの入力(1つはMulti-vider専用)とTrebele、Bassの2バンドEQ、トレモロ、スプリング・リヴァーブをそれぞれ備えたシンプルなもの。1台のアンプで複数の入力を備えているのは、まだバランスよく聴かせる為のPAという音場以前でひとつのアンプから 'すべて鳴らす' という発想だったのだ(笑)。そして、この時代の管楽器専用アンプはいまの 'エレアコ/PA' 用アンプとは全く違う設計思想を持っており、基本的に管楽器に装着したピックアップからオクターバーを介してそのままアンプを鳴らします。これとベルからの生音をラインでPAに出力したものを各々ステージ上で 'ミックス' させていた為か、とにかくアンプからの出音がバカでかい!確かにこれならエレクトリック・ギターの音圧にも負けないのですが、これでは自宅で使いにくいのでアンプに入力する前にNeotenicSoundのBoard Masterという 'インピーダンス整合' を取るアッテネータを繋いでおりまする。てかSelmer Varitoneもそうですが、このぶっとい地を這うようなオクターヴ音を聴いていると今のピッチ・シフターとかオモチャみたいに軽い。





→Vox / King Ampliphonic Nova Amplifier ①
→Vox / King Ampliphonic Nova Amplifier ②
→Vox / King Ampliphonic Nova Amplifier ③

ちなみにC.G. Connと同じく管楽器用サウンド・システムを展開するVox Ampliphonicから登場した25WのアンプNovaには、'Bright/Dark' のToneスイッチとは別に 'Woodwind〜Brass〜Special' と可変させるVoiceというツマミが気になります。Voxのギターアンプに装備されていた 'Tone X' なる 'パライコ' を元にしたというこのツマミの '質感生成'・・どんな感じなんだろ?









我らが '電気ラッパの師' である近藤等則さんとDJクラッシュのコラボレーションによる1996年の傑作 'Ki-Oku (記憶)'。コレ、いつもの 'コンドー節' ともいうべき派手にエフェクティヴなトーンは鳴りを潜め、マイルス・デイビス的ミュートのトーンを主軸としながら全てに電気的な加工を施しているのがミソなのです。慌てず騒がずジックリと・・この '人工甘味料' 的艶っぽいラッパのトーンを体感して頂きたいですね(上のボードにはLehleのJulian Parametric BoostとFulltone OCDを入れている!)。ちなみにソロのみならず、DJクラッシュが拾い集めたバックトラックの細かなサンプル全てコンドーさんのフレイズの '再構成' なのが本盤のキモだ!そんなコンドーさん(K)がアプローチした電気ラッパの葛藤について以下、このように述べておりまする。

− 近藤さんの電気トランペットは、レコードですと「Metal Position」から正式にクレジットされてますけど、その前から色々と研究されていたと思うんですが、その最初の頃に組み上げていたところから、今の電気トランペットのシステムまで、かなり色々と改良されていると思いますが、そのあたりの大きな違いとか、近藤さんが開発されてきたところとかはありますか?

K − 電気トランペットにしようとしたのは1979年頃だったかな。ビル・ラズウェルたちと 'World Mad Music' ってバンドを作ったんだ。フレッド・フリス、ヘンリー・カイザー、ビル・ラズウェル、フレッド・マー、オレっていう、このメンツでね。あいつらは完全にフリー・ロックやろうってことで、ニューヨークでやり始めたらとにかくあいつらは音がデカい。ヘンリーもデカいギターアンプ鳴らしてるわ、フレッド・フリスもあんなヤツだし、ビルもこんなデカいベースアンプでブウゥン!って弾くし、フレッド・マーも元気だったからね、スクリッティ・ポリッティの前で。で、オレがどんなにトランペットをマイクにぶっ込んでも全然音が聴こえないんで頭にきて、「もうこれは電気だ」って次の日に40何丁目行ってピックアップ買ってきてブチ込んでやり始めたんだ。'必要は発明の母' っていう(笑)。

やり始めたら、そこから悩みの始まりでね。電気ラッパ用の機材なんて売ってないわけだから。ピックアップだけ売っていてね。だからどうやってチューニングするのか分からないし、えらい試行錯誤があったよ。すでにマイルスは70年代前半にそれをやってて、マイルスのその電気のやり方を参考にはしたけど、あれじゃ気に入らないからもうちょっとオレなりの、ってことをやりだすとね。

− マイルスもあんまりやらなくて、ちょっとで止めちゃったようなイメージがありますが。

K − でも、あの3年間ぐらいはマイルスは素晴らしい探求をしたわけだけどね。

− 期間的には短い間ですよね。

K − ピックアップを入れて、マイルスは基本的にはワウを使った。ディレイとか複雑なものは使わなかった。基本的にワウの発想だった。

ちょっと話は変わるけど、ワウこそ、あれはトランペットだからね。ギターがワウを作ったのは、トランペットでワウをやってたのを真似したんだから。アコースティックトランペットに、トイレを掃除するゴムの丸いヤツがあるだろ?あれをアメリカの黒人達がトランペットに当てて、ワォンワォンってやり出したんだ。それをギターに応用した。基本的にはトランペットからワウはスタートしたんだ。サックスじゃできないんだから。

(電気トランペットの開発には)家一軒建つぐらいの金は遣ったね。