→Keio Electronic Lab. Synthesizer Traveller F-1 ①
→Keio Electronic Lab. Synthesizer Traveller F-1 ②
"(リング・モジュレーターは)使い方が難しいですからね。誰かスーパースターがリング・モジュレーターをうまく使えば、また光り輝く時代が来るでしょうけど。素晴らしい効果ですからね。それと 'F-1' には 'Singing' という発振のスイッチがありましてね。「誰かうまく使う人が出てくるんじゃないかな」くらいの軽い気持ちで、そういう機能をつけちゃいましたね、当時は。今は作る段階で細かい使い方を想定しますよね。量産することが前提だからどうしても身構えてしまう。その反面、昔はもっと気楽でした。金型はほとんど使わないから失敗しても傷が浅くて済む。たまにヒットすれば、こりゃ嬉しいねって感じで(笑)。〜中略〜 エフェクトに関して言うと、新しいエフェクトが生まれないのはなぜか?と思います。物や情報が有り余り、既存の商品に囚われ、かえって発想が制限されるからでしょうか。昔はとにかく物もなく、情報もなく、実現する素材も貧弱で、そして機能を表す言葉もなかった。今は空間系とか歪み系とか、なにかとジャンル分けしようとするでしょ。ジャンル分けしようとすると、かえって考える範囲を狭くしちゃうんじゃないかと私は思うんです。例えば歪み系と言われたら歪みの中でしかものを考えないですよね。言葉があると重しになってくる。昔は言葉がなかったから、何をやっても良かったんですよ。"
本機Synthesizer Traveller F-1は、-12dB/Octのローパス・フィルターとハイパス・フィルターがセットで構成された 'Traveller' を単体で搭載したもので、それぞれの動きを連携させて '旅人のように' ペアで移動させるという三枝氏のアイデアから名付けられた機能です。三枝氏といえば日本のエフェクター黎明期を象徴する2種、Honey Psychedelic Machine、Vibra Chorusの設計者としてすでに 'レジェンド' の立場におり、ちょうど京王技研からKorgへと移行する過渡期に設計者からユーザーへの '挑戦状' として遊び心いっぱいに提供されながら、結局は現在まで '発見' されることなく 'コレクターズ・アイテム' として捨て置かれております。ある時代までコピーを繰り返しながらより精度を高め、期せずして 'オリジナル' な製品を世に送り出していた '在りし日の日本'。この 'Guitar meets Rhythmbox' というコンセプトのMaestro Rhythm 'n Sound for Guitarも、そんな 'ものつくり' の米国が最盛期に咲かせた '時代のあだ花' 的未来を見据えた迷機だったと思うのですヨ。どう考えたって合いそうにないチャカポコしたリズムとギターを一緒に鳴らしてみる・・さあ、この '挑戦状' に対していまの人たちならどう応えるでしょうか?チープ!オモチャと断罪するのは簡単。スライ&ザ・ファミリー・ストーン1971年の傑作 '暴動' (There's A Riot Goin' On)で聴けるリズムボックス・ファンクは、そのまま 'ホンモノ' に固執する '王道' ロックの世界からは出て来ないくらい音楽の歴史を変えました。
→Acoustic Control Corporation 260 + 261
→Gibson / Maestro Rhythm 'n Sound for Guitar G-1
→Gibson / Maestro Rhythm 'n Sound for Guitar G-2
まさに ' サイケな時代' を象徴するカラフルなスイッチを備えたRhythm 'n Sound for Guitarは、ファズとオクターバー、3種のトーン・フィルターを備えながらギターのトリガーで鳴らすリズムボックスを加えたことで、現在まで異色のユニットとして時代の評価に埋もれたままの存在となっております。1968年登場のG1は当時のフランク・ザッパがVoxワウペダル(と後2つほど歪み系?エフェクターを確認)やヘッドアンプのAcoustic 260と共にステージで使用しているのが動画で確認されており、多分ザッパは本機内蔵の3種からなる 'Color Tones' に強い関心を示していたのではないでしょうか?そんなザッパのトーンに対するフィルター効果への関心は、そのまま1970年代にOberheim Electronics Voltage Controlled Filter VCF-200からSystech Harmonic Energizerの探求へと繋がります。ちなみに本機はMu-Tron Bi-Phaseのように筐体前面に被せてセッティングをメモするチートシートが付属しておりました。
そんな初代G1ではBass Drum、Bongo、Brush、Tam-bourine、Claveの5つのパーカッションを搭載し、この時代では先駆だったオクターバーにして 'ウッドベース' のシミュレートとも言うべきString Bass、Fuzz Bassの2種、そして 'ワウ半踏み' 風なトーン・フィルターのColor Tonesを3種備えておりました。このG1も翌69年にはG2として大々的にヴァージョンアップし、当時のHoney Psychedelic Machineと並んでより 'マルチ・エフェクツ化' します。G2ではパーカッションからBass Drumを省きオクターバーもString Bassひとつになった代わりにMaestro伝統のFuzz Toneを搭載、Color Tonesも2種に絞られました。そしてトレモロのEcho Repeatに加えて1969年にして先駆的な機能がもうひとつ搭載されます。ちなみにG2のユーザーとしてはエディ・ハリスのグループに在籍したベーシスト、メルヴィン・ジャクソンがLimelightからのアルバム 'Funky Skull' でジャケットにもEchoplexと共に堂々登場。全編、先駆的な 'オートワウ' を活かした変態的ウッドベースを奏でております。
Vox Repeat Percussionに影響を受けたトレモロのEcho Repeatと本機最大の先駆的機能、Wow Wowが登場して本機は 'マルチ・エフェクツ' 的色彩が強くなりました。そう、コレってエンヴェロープ・フィルターの元祖と言われたMusitronics Mu-Tron Ⅲ(1972年発売)よりずっと早くに実現されたものなのですヨ!むしろ本機以降、MaestroがFilter/Sample Hold FSH-1以前にこの機能だけを単体で発売しなかったのが不思議なくらい。しかし、パーカッションはほとんど冗談みたいな作りなのに、このWow Wowはいわゆる 'なんちゃってワウ風' でもなければ効きが悪いわけでもなく、たった1つのツマミだけでちゃんとピッキングに追従するワウなんですねえ。素晴らしい!
ちなみにパーカッションの音源自体は、当時Maestroが発売していたRhythm Kingというリズムボックスからのものを流用しており、現在の基準で見ればおおよそリアルな音源とは程遠いチープなものです。ちなみにこのRhythm Kingは、あのスライ・ストーンの名盤 '暴動' (There's A Riot Goin' On)で全面的にフィーチュアされるリズムボックスでもあります。単にホテルのラウンジ・バンドとして、オルガン奏者が伴奏に用いていたリズムボックスをこのようなかたちでファンクに応用するとは設計者はもちろん、誰も想像すらしなかったことでしょう。スライ本人はスタジオの片隅に捨て置かれていたコイツを見つけて、ひとりデモ用として都合が良いことから使い出したらしいですけどね。また、ダブの巨匠であるリー・ペリーの 'Blackark' スタジオにもKorg Mini Pops 3リズムボックスのOEM、Uni-Vox SR-55と一緒にこのG2が置いてありましたね。これは、ジ・アップセッターズに演奏させたというよりもペリーのミキシングボードの隣りでSR-55の上に乗せられていたので、このリズムボックスをトリガーにして鳴らしていたのかな?そして土星からやって来た '太陽神' ことサン・ラもこの 'Disco 3000' でチクタクと怪しげなオルガンと共に登場!しかし、無機質に何の感情もなく繰り返すリズムボックスの響きってサイケだよなあ。スライがぶっ飛んだ状態でスイッチを入れて新たなファンクを創造したのも納得。
このいなたい感じ。まさに存在もその音色も 'ビザール' 感満載というか、やはりエフェクター黎明期の製品って日本的に言えば '万博感' とでも言うべきワクワクする感じがあって良いですねえ。実際、そんな夢想は使ってみて 'え、コレだけ?' みたいなハッタリ具合に終始するんですけど・・(苦笑)。実はこのG2を以前所有していたことがあり、特にパーカッションのトリガーの繊細さと言うか、きちんとスタッカート気味に一定のタッチで入力してやらないと 'ダダッ' みたいな二度打ちするエラーが味わえます。こちらは、そんな '時代遅れ' にユニゾンで鳴らすだけの使いにくさを現代の '文明の利器' であるループ・サンプラーを駆使して '一人アンサンブル' を展開します。おお、コレは本機のパーカッション内蔵を考えるとむしろ有利というか、ま、やってることは現在の 'Youtuber' 的アプローチではありますが(笑)楽しいですね。ギターの音色はファズにトーン・コントロール2種で変化を付けて、オクターバーはベースにしてエンヴェロープ・フィルターでソロ弾き、マシンガン・トレモロを空間系のディレイの味付けとして合わせてみる・・なるほど。いま、'Youtuber' 向けにMIDI同期の機能も追加して '復刻' したら売れるんじゃないか?未だにMaestroの '復刻' は実現しませんが、'エレハモ' のマイク・マシューズならようやく時代が我々に追い付いたとか言い出してやるのは間違いない(笑)。
→Shin-ei Companion 4 in the Floor Percussion Combo
→Akai Professional MPC One - Standalone Music Production Center
いわゆる 'ドンカマ' の語源となったリズムボックス。それこそ一冊の本に出来るくらい、ある時代の音楽のスタイルを反映した機器が市場に溢れとてもここで全てを網羅することは出来ませんが、Maestro Rhythm King以外で個人的に良いなと思ったのがビザールなBaldwinのTempo-Maticと国産リズムボックスの老舗、Ace ToneのFR-2L。高価な家具調の筐体に譜面立てが付いていることからオルガンの上に載せるレトロな作りがたまりません。そして未だに謎というか、1960年代後半から70年代半ばにかけて、あの伝説の名機Uni-Vibeの開発、製造に携わった新映電気が(たぶん)輸出用に製造していた電気パーカッション、4 In The Floor Percussion Combo。たぶん、オルガン奏者が足で踏んで伴奏する為のものだったと想像しますが、この時代ならではの '木目調' の筐体から出てくる音色はほとんど 'シンセドラム' ですね。そして、こういった単発やプリセットの音源ばかりで飽きてくると手を出してしまうのが、いわゆるAkai Professional MPCに代表されるサンプリング機能とシーケンス編集を持ったドラムマシン。ここまでの '古臭い話' から一気に若返っていよいよ新作MPC Oneが登場です。
→Taal Tarang Digital Tabla Machine
→Radel Taalmala digi-100 Plus
さて、そんなリズムボックスはあの1970年代のマイルス・デイビスも虜?にしていたようで、ちょうど札幌からスタートした1973年の来日公演の際、当時Uni-Voxブランドとして製作していた新映電気製リズムボックスがデイビスの元に到着。ホテルでひとしきり遊び倒した後にムトゥーメへ明日のステージから使え!と渡したそーですね。しかし、この時代にタブラのリズムボックスがあったら 'On The Corner' 以降に抜けたバダル・ロイに変わり、間違いなくコイツをメンバーの一員として迎えたのは間違いない。ラーガのリズムのお勉強にも良いかもしれないとわたしも電気ラッパの 'お供' に愛用しておりまする。
0 件のコメント:
コメントを投稿