2025年6月1日日曜日

真夏(初夏)の夜の夢

"とつぜんバーの向こうの端にあるジューク・ボックスのようなものから、ウーだの、イーだのという音のコーラスが響いてきた。だれもが話をやめた。バーテンが飲みものを持って、忍び足で戻ってきた。

「どうしたの?」とエディパは小声で言った。

「あれはシュトゥックハウゼンの作品」とクールな灰色の顎ひげが教えてくれた - 「早いうちの客は、こういうケルン放送局ふうなサウンドが好きな傾向がある。遅くなってからだよ、ほんとにいかすのは。この近辺じゃこれが唯一の、厳密な意味で、電子音楽で通すバーなんだ。土曜日に来てみなよ、真夜中から 〈サイン波セッション〉 を始めるから。これはライヴでやる集まりさ。カリフォリニアのいたるところからやってきてジャム・セッションだよ - サン・ノゼ、サンタ・バーバラ、サン・ディエゴ...」

「ライヴ?」とメツガー - 「電子音楽のライヴ?」

「この店でテープに入れるのさ、ライヴだよ。奥の部屋にいっぱい入ってるんだ、オーディオ・オシレータ、ガンショット・マシン、コンタクト・マイク、何でもあるよ。そういうのは自分の楽器をもってこなかったひとのために置いてあるのさ。だって、聞いてるうちにフィーリングが乗っちゃってさ、いっしょにスイングしたくなっちゃうんだ、それでいつも何か使えるものが置いてあるんだ」

                                                 '競売ナンバー49の叫び' トマス・ピンチョン著/志村正雄訳 










そういや、今年に入ってから '片手レベル' の数える程度でしかペダル買ってない...ヤバイなあ(って何が!?笑)。まあ、それほど触手が伸びなかった&部屋が手狭になってきたってのもあるけど、実は次の夢に向かっていろいろと '入り用' のモノがありそちらへと化けてます(苦笑)。とりあえずこのRoget That、ワケわからんコイツは 'ぶっ壊れたファズ' というべき代物ながらその放出されるサウンドがかなり格好良し!。シンプルなパラメータだけどその説明は難しい...ということで取説から頂きましょう。

R - Tuneパラメータの可変幅を切り替える。(1,ノーマル、2.拡張)
F - Wetにかかるヴォイスフィルター(300〜3kHz)のOn/Offを切り替える。(0.Off、1.On)
T - 1/8インチミニプラグCV Input

Tune、Shift、Drive、Rコントロールは非常にインタラクティヴである。
Driveツマミを高くすると多くのアーティファクトが生成される。
Tuneは最も広く非線形なコントロールであり、最小から最大まで大きな可変幅を持つ。
TuneとShiftは相互に依存したパラメータであり、両方を微調整するとサウンドが変化する。
Rスイッチは可能性のパレットを切り替える。
Wetは意図的に位相がずらされており、WetとDryがフィルターにより相互作用を行う。
元の信号がWet側に存在する場合、Dryを加えると原音がキャンセルされ歪みの
アーティファクトだけが残る。同じ条件でフィルターを加えるとバンドパスフィルターの
Midスウィープのように変調する。

え〜っと、どうでしょう?わかりましたか?わたしはわかりませんでした(笑)。
とにかく動画を見れば、TuneとShiftを微調整することでラジオのチューニングを弄るかのようにジリジリとしたノイズが放出されます。この変調に合わせるのは先日購入したばかりの'Pedal Shop Cult Presents' によるElectrograve謹製のステレオ・ノイズマシン、Superposer  SP-1。設計者のKaz Koike氏曰く '半導体の絶叫' を具現化したノイズマシンとのことで、本機はレギュラーモデルのQuad Osscillatorから移植されたオシレータをL-Rそれぞれに4つずつ、計8つ搭載して個別にOn/Off(キルスイッチ)しながら加算、減算合成により生成させて行きます。さて本機で重要なのはステレオL-Rにより干渉させていくことにあり、周波数帯域を変調させるFilterとモジュレーションのLFOを司るRateとStabilityにより音色のヴァリエーションが変わります。まあ、いわゆる原始的なオシレータの塊なので好き勝手にあれこれツマミを触って 'ちょうど良いところ' を一期一会的に発見、チューニングしていくのが '正解' ですね(笑)。この手のガジェット的なノイズマシンというのは大抵、シンプルにしてお手軽に作ってあるもの(失礼)が多いのだけど、本機はさすがCultと思わせるこだわりの作りなのが素晴らしい。その弁当箱サイズの筐体から受ける見た目そのまま...ズッシリとめちゃくちゃ重いです!。この重厚感にして、筐体を開ければギッシリと詰まった基板の塊にニンマリしながら所有欲を満たすと共に本機がひとつの創造的な '楽器' であるというコンセプトに嘘はありません。







かれこれ 'アンプリファイ' したトランペット用のエフェクターボードを足下に置いてから15年以上は経過しております。その前から単品のペダル集めてはずっとやってたのだけど、Pedal Trainというスノコ状の強固なボードを置き機種を選びズラッと結線してから15年以上経っていると思う(具体的に何が最初だったのかは忘れちゃった...)。そう、Pedal Train Jr.をたまたま在庫で置いていた高円寺の楽器店に伺い、何を思ったのかそのお店がエフェクターボード製作も行なっていたことから自前のパワーサプライVoodoo Lab. Pedol Power 2 Plusも持参して付けて欲しいとお願いしたのでした。Pedal Train Jr.には装着用ブラケットは付属しているものの、ユーザーが装着の為にドリルで穴空け加工を施す必要があります。そのお店もペダル購入者にのみ取り付けサービスをやってるとのことでしたが、わざわざ足を運びボードを購入してくれたとのことで無料で取り付け加工して頂きました。以後、あれこれいろんなペダルを試しながら基本的なセッティングが固まったのが今から5、6年ほど前...。

現在ではRadial Engineering Voco-LocoやEventide Mixinglinkなど、管楽器にも特化したギターペダルを 'インサート' 出来るマイクプリアンプがあるし、類家心平さんやランディ・ブレッカーのようにマルチエフェクツのBoss ME-80一台で済ませちゃう場合もありますね。後は管楽器奏者に向けた初のマルチエフェクツであるZoomのA1X/A1X Fourなどなど...。その昔、わたしが単純に管楽器へ装着したピックアップからコンパクトペダルに接続したものの上手く機能しなかった時点でこの手のアプローチに対する機器は皆無でした。2009年にAudio-Technicaから嚆矢ともいえるVP-01 Slick Flyが発売れたことでようやく '認知' された、これで '散財' せず自在にアプローチ出来ると小躍りしたことが昨日のことのように懐かしい。では、それ以前の 'アンプリファイ' はどうやっていたのか?。一時期、DTMから 'ダブミックス' 制作に凝っていたこともあり、Mackieの卓上ラインミキサーである1202VLZ-Proはとても重宝しました。また、2000年代初めに廉価な卓上の真空管プリアンプが出回り始めたこともあり、ARTのTube MP Studio V3やBehringerのTube Ultragain Mic100など増幅した後にコンパクトペダルを繋ぐやり方で試していたりしました。ちなみにラインミキサー内でコンパクトペダルを接続するやり方ですけど、当然そのままではインピーダンスが違うので上手くいきません...。そこでミキサーのチャンネルにあるインサート端子、もしくはセンド・リターン端子からリアンプボックスとパッシヴのDIで 'インサート' するかたちでコンパクトペダルを繋ぎます。基本的にはSlick Flyや現在のVoco-Loco、Mixing Linkなどと同じやり方なのですが、それをもっと煩雑で大掛かりにやっていたという話です。しかし、ドン・エリスの変拍子オーケストラとマイルス・デイビスの 'In A Silent Way' や 'Big Fun' 以降、ジョン・ハッセルからニルス・ペッター・モルヴェル、そして最近の 'アンプリファイ' したラッパによるアンビエント風アプローチは健在です(皆、蝋燭の火を灯すかのように画面が暗いしね...笑)。これが一番、ラッパの恰好良さを捉えているというか、どこまでいってもまだまだマイルス・デイビスの隔世遺伝って根強いんだなと思わせますヨ。イノベイターを超えるのは手強いのです...。


自宅での最小な 'お手軽セット' (という割りにはゴチャッとしてますが)。モバイルなデジタル・ミキサーTeenage EngineeringのTX6を中心としたセットアップは、本機内蔵の 'マルチエフェクツ' でEQやコンプのダイナミクス系から空間系、ループ・サンプラー機能などを担わせております。また 'センド・リターン' を利用して 'リアンプ接続' によるワウなど、ラインの環境で外部コンパクトペダルとの連携も目指しました。具体的にはその 'リアンプボックス' (逆DIとも言う)の生みの親であるエンジニア、John Cuniberti(ジョン・クニバーティ)氏設計によるオリジナルReampの 'センド出力' からワウなど各種コンパクトペダルを経由し、Radial Engineering JDIの 'リターン受け' でTX6へと信号がラインで戻るセッティングとなります。私の所有品はプロトタイプの完成から2年後の1995年に 'Reamp' として特許出願中のまだ手作りしていた頃のモノで、UTC製小型トランス '0-10' を搭載した黒い筐体横に特許出願中の意である 'Patent Pending' の表記があります(1999年12月に特許取得済み)。ちなみにそのクニバーティ氏設計のReampは、現在アップデートされたモノがRadial EngineeringからReamp JCRとして製品化されております。そう、現在管楽器の 'アンプリファイ' に特化したVoco-LocoやMixinglinkが市場へ製品化される以前は、このような煩雑なセッティングで管楽器にエフェクターを繋いでいたんですヨ。






Fish Circuits Astronomie Envelope Reverb

ギタリストが歪み系ペダルばっか買う感覚に近いかも...(苦笑)。

MXR Dyna Comp、Carlin Compressor、BJFE Pale Green Compressor、Shigeru Suzuki C2 Compressor、Vox Smooth Impact、Roger Mayer 456 Single、Humback Engineering Spakling Gem、Strymon Deco、そして一応のメインであるNeotenicSound Magical Forceなどなど、いわゆるコンプレッションやサチュレーションの '質感生成' に特化したダイナミクス系ペダルばかりが手許に集まってしまった(汗)。ラインでの音作りが基本の管楽器による 'アンプリファイ' において、そのクリーンな音色に艶、コシ、倍音といった '意匠' を施すことが重要なんですヨ、ホント。そんな管楽器の 'アンプリファイ' において、この '質感' というやつを個人的に追求してみたい欲求があるんですよね。目的はアンプやPAを用いる環境において、その 'サチュレーション' や 'クランチ' の倍音含めた管楽器の 'クリーントーン' を作ること。もう、何度も口酸っぱくして書きまくってますけど(笑)、それはピックアップ・マイクからの '生音' の忠実な収音、再生を目指すより、あくまで電気的に増幅した際に映える '生音を作る' こと、自分にとってのフラットである管楽器の音を追求することに主眼を置くべき、と考えております。また、拡大解釈で '質感' をコントロールするという意味では、Korgの 'Traveller' を単体で抜き出したVCF FK-1 Synthepedalに象徴される 'フィルタリング' の発想にも繋がります。そんな 'エレアコ' な管楽器の音作りとしてはリヴァーブが重要なんですけど、渋谷の楽器店フーチーズがこんな面白いペダルを見つけてきましたねえ。個人的に大好きなダッキング機能を持つディレイですけど市場で滅多に見かけない機能から珍重されていたのが、なんとダッキング機能(それもかなり特異なサイケデリック風なヤツ!)のリヴァーブを作ってしまったとは...Fish Circuits Astronomie!。古くはエンヴェロープの内蔵したHoneyのSpecial Fuzzにまで遡るトリガーでダイナミクスを操作するこの機能は、そのトリガーコントロールのピッキングに対する '感度' 調整に各々の個性があります。Boss SG-1 Slow Gearなどエンヴェロープ・モディファイアに匹敵する極端なトリガーの動作は、本機のキモである 'Trigger' と対を成す 'Recovery' ツマミの挙動として反映されるようです。この減衰から復帰までの 'フェードイン' こそエンヴェロープによるダイナミクス・コントロールの醍醐味です。さて以下、個人的にそういう発想のきっかけとなった 'サウンド&レコーディングマガジン' 1996年11月号の記事 '質感製造器〜フィルターの可能性を探る' からエンジニアの杉山勇司氏(S)と渡部高士氏(W)の対談記事。いわゆる 'ベッドルーム・テクノ' の全盛期で、アナログシンセによる 'シンセサイズ' の意識がサンプラーや 'ローファイ' の価値観を通じて、あらゆるものを '変調' させるのが面白い時代でした。




− そもそもフィルターを能動的に使おうと思ったきっかけはなんですか?。

S − 最初に白状しちゃうと、渡部君からトータルにフィルターをかけるって話を事務所で遊んでいたとき聞いて "あっ" って思ったんだ。それまでの僕にとってのフィルターは、シンセの延長でしかなくて、Analogue SystemsのFilterbank FB3を持ってたけど、LFOでフィルターが動くエフェクトと考えていた。だからEQを手で回すのとあまり変わらない感じだよね。でもそのころ渡部君は、2ミックスをフィルターに通すって馬鹿なこと言ってた。

− それはだれかが先にやってたんですか?。

W − 2ミックスのフィルタリングは4年前に考えたんです。ミックスしてて、音が固くてどうしようかなって思ったときに "フィルターでもかけてしまえ" と(笑)。Akai S1000のループがRolandの音したらいいなって思って、Roland System-100Mに通してみた。結果的にフィルターを通るだけで思った音になったんですよ。

S − 変わるんだよね。それでフィルターを絞れば、また味も付くし。でも僕がそれに気付いたのは大分後。シンセはいじってたけど、それはシンセらしい使い方で、VCOがあってVCFも音作りの順番の1つでしかなかった。でもArp 2600を触り始めて "ここに音を入れてもいいの" って思ったんだ(笑)。それでFB3にも "ドラム入れてもいいじゃん" って気付いた。

W − 簡単にできるのはDrawmerのノイズゲートDS-201なんですよ。これにはローパス/ハイパスが付いていて、ザクッと切れるんです。これならどのスタジオにもありますしね。

− しかしそれを実際の現場でやってみようと考えるのは大変だったんじゃないですか?。

S − 昔は音が汚くなることを考えるのはダメだったよね。例えばギターだったらSSLのプリアンプより、Focusrite通した方がいいに決まってると思ってた。

W − それは1ついい音ができたら、簡単だから次もそうしようってことだよね。

S − で、そうやって録ると、ハイが延びていい音になる。でもそれは値段が高いからいい音になるっていう意識だし、EQもハイがあればあるほどいい音って発想にも近いよね。フィルターなんて通したら、当然S/Nは悪くなるし、ハイもローも落ちる。でもあるときにEQでローを足すんじゃなくて、ハイをしぼったときに自分にとってのいい音になることに気付いたんだ。今はいらない部分を削ったら、必要な部分をうまく聴かせることができると思ってる。

W − 実際5kHz以上って倍音が崩れてるから、いらない場合も多いんだよね。デジタルで22kHz以上がなくて気になるのは、それ以上の帯域がないからじゃなくて、急激にそのポイントでカットされているからなんですよ。

S − ローファイって言葉は大嫌いなんだけど、ハイファイに縛られてはいたよね。

W − フィデリティ(Fidelity)って '正確' って意味だから、自分のやりたいことができてるんだったら、それはハイファイなんだと思いますよ。

− 渡部さんの場合そんな制約が最初からなかったのはどうしてですか?。

W − それはエンジニアリングの入り口が違ったからだと思います。値段の張る機材があまり周りになかったのと、シンセのオペレートとエンジニアリングの両方を一緒にやるんで、卓のEQをいじるよりシンセのフィルターでいじった方が、楽に欲しいサウンドが手に入れられることが分かったんです。

− フィルターとEQの違いは何ですか?。

S − 一緒なんだけど違うという部分が分からないと使わないよね。

W − 僕がお客の立場で、エンジニアがEQじゃなくフィルターに僕の音を入れようとしたら、嫌がるだろうな (笑)。EQってエフェクターなんだけど、エフェクター的に使っちゃいけないという部分があるじゃないですか。

S − エフェクター的に使うんだったら、フィルターの方が面白いよね。例えば、以前ウクレレの音をArp 2600にスルーして録音したことがあった。それはArpのプリアンプの音なんだろうけど、それがすごくいい音になったんだ。1度その音を知ってしまったら、EQを細かくいじって同じ音を作ろうとはしないよね。想像もできなかったハイ落ちをしてるその音が実にいい音なんだ。

− そんな想像もできない音になる可能性という部分がフィルターの魅力の1つでしょうか?。

W − お手軽にいい音になるというかね。

S − 1度通して音が分かってしまうと、もう自分の技になるから、想像できるんだけどね。

− しかしEQで作り込めばフィルターと同じ効果が期待できるのではないですか?。

W − それは無理です。NeveのEQをどうやってもSSLでシミュレーションできないのと同じこと。例えばSystem-100Mを通したら、こんな細いパッチケーブルを音が通るから、それだけでも音が変わるし。機材ごとに違う回路を通ることによって、それぞれの音になるんですよ。

− 機材ごとのそんな特性を、人間の耳は感知できるものだと思いますか?。

W − 瞬時に判断することはできないけど、音楽になると分かるでしょうね。それは紙を触ってツルツルしているものが、少しざらついた感触になるような、そんな判断ですけどね。

S − それはエンジニアの耳ではなくても分かる違いだろうね。

W − よくオーディオマニアの人が、レコードからCDに変わったとき、奥さんが急に "うるさい" って言うようになったって話がありますよね。それを考えるとだれもが分かるものなんでしょうね。実際、2ミックスをSystem-100Mにただ通して聴いているだけでは、その違いがあまり分からない人もいる。しかしそれを大音量で長時間聴いていると、それまで耳が疲れていたにもかかわらず楽になったりすることがあるんですよ。

− 2ミックスにフィルターをかけるエンジニアは結構いるんでしょうか。

W − ほとんどいない。トータル・フィルターって言葉自体僕が作ったんだもん(笑)。第一エンジニアがフィルターを持っていないでしょ。僕はここ(オア・スタジオ)にあるからSystem-100MやRoland SH-2を使ったりしてます。2ミックスを通すために、わざわざもう1台買ったんだけど、フィルターの性能が全然違うんですよ(笑)。

S − 僕もArp 2600のフィルターとアンプの音が好きで、それだけで売ってほしいくらい。でもこれも1台1台性能が違うんだよね。これじゃ2ミックスに使えないって。

W − System-100Mは1モジュールでステレオというか2チャンネルあるから大丈夫なんですよ。

S − 僕も1度片チャンネルずつ別々に1つのフィルターを通したことがあった(笑)。

W − 要するに歪んでるんですよ。コンプでたたいたような状態。だからモノ・ミックスにするしかないですよ。モノでフィルターかけて、後でPro Toolsで加工するのはどうでしょう(笑)。

− 質感が出来上がったものは、他のメディアに移してもそのまま残っていくんでしょうか?。

W − それは残りますね。FocusriteもNeveもヘッドアンプは音を持ち上げるだけでしょ。それだけなのに音が違う。エンジニアは音の入り口のアンプでまず音を作るわけで、卓で作るんだったらコンプでいじるんだろうけど、コンプレッションがいらない場合もある。だからサンプラーに通して、ピークをなくして、アタックを落としたりすることもあります。ADコンバータ通すこともフィルターですから。

− トータルにかなり強烈にフィルタリングすることもあるんですか?。

W − 向こうのテクノでは、モコモコしたサウンドからどんどんトータルにフィルターが開くものがありますね。

S − それはそんな音を理解できる人間がエンジニアリングしたり、アーティスト本人がエンジニアリングを担当したりしなくちゃできない。そんな作業は音楽性を選ぶんだろうけど、概念的には音楽性は全く選ばないと思う。

W − 例えばアコギをフィルターに通しても、普通に良くなるだろうし、暖かくなるだろうし、ワウにもなる。でも実際にフィルターで大きくカットするのは問題ですよね。それだったら、ローパスよりハイパスの方が使い手があるかもしれない。

S − Ureiにも単体フィルターがあったもんね。真空管のマイクを使って真空管のアンプを通ったいい音を、もっと味のある音にするために、EQで音を足すんじゃなくて、どこをカットするかという発想自体はずっと昔からあったものだと思いますね。

− エンジニアがどうしてこれまでフィルターという存在に目を向けなかったのでしょうか?。

W − エンジニアという職業自体、もともとは出音をそのままとらえるのが仕事だったでしょ。それだったらフィルターを通すなんてまず考えない。変えようと思えばフィルター1つで音楽性まで簡単に変えられますからね(笑)。

S − 確かにフィルターは面白いけど、それはやはり一部の意見で、一般的にはならないだろうね。こんな感覚が広まったらうれしいけど、そこまで夢を見てませんから(笑)。

W − 僕にとっては、コンソールのつまみもフィルターのつまみも一緒だけど、そうじゃないエンジニアもいる。でも一度でいいから、どのエンジニアもその辺のフィルターをいじってほしいと思いますね。本当に音が変わるから。

S − 使うか使わないかは別にして、この良さは大御所と呼ばれるエンジニアもきっと分かると思うな。僕も最近はUrei 1176とか使うんだけど、1178も用途によって使い分けている。これはフィルターに音を通し始めてから、それらの音の質感の違いが分かってきたんだ。

− 鍵盤が付いていてシンセの形をしているから使わないという部分もあるのでしょうか?。

S − それはあるだろうね。エンジニアには触れないと思いこんでいたのかもしれない。ハイパス/ローパスは知っていても、レゾナンスという言葉自体知らないエンジニアもいるだろうからね。

W − 僕がミックスしててもフィルター使うのは、単に差し込めるジャックが付いているからで、それだけのことです。

− ジャックがあったら挿し込んでみたい?。

S − 何もやみくもに挿さないけどさ(笑)。

W − ミックスしていてこの音を変えたいって思ったとき、スタジオを見渡してこれと思ったものに入れてみる。ダメだったらそれまでだし、良くなれば、次からそれは自分の音として使えるわけです。最初の1回はトライ&エラーですよ。

− 徐々に単体のフィルターが発売されていますが、時代的にフィルターは求められていますか?。

S − デジタル・フィルターでもSony DPS-F7みたいに面白いものもあるからね。

W − それからYamahaのSPXシリーズも、EQのモードの切り替えでダイナミック・フィルターにもなるし。これもいいんですよ。

S − 何か変な音にしてくれって言われて、それソフト・バレエ(のレコーディング)で使ったことあるな。

W − それからEventide DSP-4000が面白いんだ。自分でパッチを自由に作れるから面白いんだけど、この間作ったのが、サンプル・レートやビット数を自由に落とすパッチ。

S − どんな人たちもフィルターを使うという発想になった方がいいと思う。何ごとにもこだわりなくできるような状態にね。



で、最近のメインセッティングはこんな感じ...。こちらはBoardbrain Musicの多目的ループ・セレクターTransmutronを中心に 'スピーチシンセ' のFlame Instruments Talking Synth(とそれを発音させるHikari InstrumentsのAnalog Sequencer ⅡにEuchrhymといったシーケンサー群)やループ機能も持つ 'Digital Tape Machine' のBastl Instruments Thyme、Electro-Harmonix 16 Second Digital Delayを駆使して '一人アンサンブル' からラッパによる音作りを探求しております。2チャンネルの 'エレアコ' 用プリアンプをEDB-2からEDB-2 H.E.に切り替え、本機の 'センド・リターン' はピエゾ側のチャンネル1にのみインサート出来るのでココにNeotenicSound AcoFlavorを接続。そして音色のコシと張りを演出出来るエンハンサーを搭載していることから、これまで愛用してきたNeotenicSound Magical Forceを泣く泣く外します。また、Transumutronから2チャンネルで出力してBastl Instruments Thymeを経て永らく足下のディレイで頑張ってきたStrymon Brigadierを外し新たに導入したGamechanger Audio Auto Delay、そこからRadial Engineering JDIの 'Mono to Stereo Merge' 機能によりDI出力という流れ。ここではなぜか 'Mono→Stereo→Mono' という奇妙な構成ではありますが(汗)、実はTransmutronの '2出力' とBrigadierやAuto Delay搭載の優秀な 'ミキサー機能' を利用する 'パラレル・ミックス' でラッパと 'スピーチシンセ' を渾然一体にさせてみようという算段なんです。もちろん、Thymeでグチャグチャにしてやる、という前提ではありますけど(笑)。いわゆる通常の 'ステレオ出力' も考えたのですが、どうも '音の芯' を担う密度が薄れてしまう感じで却下...(特にワウの食い付きが弱い)。基本的にラッパに使うペダル・セッティングはもう何年も前から '上がり状態' なのでほぼ入れ替えナシだったのですが、ペダルとユーロラック ・モジュラーを同時にミックスするやり方としてTransmutronを足下に導入して色々と '加速' しました(笑)。てか、'足下' が重過ぎ...まるで要塞(汗)。











そもそもは 'アンプリファイ' したラッパをワウやフィルターで '喋らせたい' という思いを拗らせて、それがそのままこのイビツなセッティングに至ってしまったのです...。正直、上記のペダル群でそのままラッパが '喋って' くれたら以後の煩雑なセッティングに手を出すこともなかったのです...。つまり、この手の効果に特化したペダルElectro-Harmonix Talking PedalやStereo Talking Machine、さらに1970年代のヴィンテージであるColorsound DipthonizerからLudwing Phase Ⅱ Synthesizerなど超レアものまで手広く集めたものの...喋ってくれなかった(汗)。これはエレクトリックギターとピックアップを通して収音する管楽器では効果に対する入力感度、レスポンスの違いからキチンとかからなかったんですね。この手のペダルはいわゆる原初的なトークボックス(マウスワウ)とは別に、VCFにおけるバンドパス帯域を複合的に組み合わせ 'A、I、E、O、U' といった母音のフォルマントを強調、まるで喋るようなワウの効果を生成するものです。その 'エレハモ' からはすでに 'ディスコン' だけど新たな 'Next Step' シリーズとして加速度センサーを利用したユニークなTalking Pedalや多目的なStereo Talking Machineなどが用意されております。そして、この手の効果のルーツ的存在である老舗ドラムメーカー製作の '擬似ギターシンセ' Ludwig Phase Ⅱ Synthesizerや英国のシンセメーカーEMSでデイヴィッド・コッカレルの手がけたSynthi Hi-Fli、現行品としてベルギーの奇才Herman Gillisさんによる傑作Sherman Filterbank 2などなど...。さて、このようなリゾナンスの強調はLudwig Phase Ⅱを 'ラデシン' と呼び愛された日本を代表する作曲家の富田勲氏によれば、いわゆるMoogシンセサイザーを '喋らせたかった' という思いからノコギリ波とシーケンサーによる '口腔の開閉' をシミュレートする音作りに機器自体の発する 'ノイズ' がとても有効であることを力説します(結局、Moogでは 'パ行' しか生成出来なかったとのこと)。

"最近(の機器)はいかにノイズを減らすかということが重要視されていますが、僕が今でもMoogシンセサイザーを使っている理由は、何か音に力があるからなんですね。低音部など、サンプリングにも近いような音が出る。それはノイズっぽさが原因のひとつだと思うんです。どこか波形が歪んでいて、それとヴォリュームの加減で迫力が出る。だから僕はノイズをなるべく気にしないようにしているんです。デジタル・シンセサイザーが普及してノイズが減り、レコーディングもデジタルで行われるようになると、音が透明過ぎてしまう。ファズやディストーションもノイズ効果の一種だし、オーケストラで ff にあるとシンバルや打楽器を入れるというのも騒音効果です。弦楽器自体も ff になるとすごくノイズが出る。そうしたノイズは大切ですし、結果的にはエフェクターで出たノイズも利用していることになるんだと思います。"

そんなSherman Filterbankといえば、ベルギーでHerman Gillisさんがひとり手がける '孤高の存在' ともいうべきフィルターの化け物的機器。流石に現在では使われ過ぎて '飽きた' という声もありますけど、それくらい大ヒットした機種としてまだまだその潜在能力の全てを引き出してはおりません。個人的には当時の主流であった無闇矢鱈に '発振' させない使い方でこそ、本機の新たなアプローチが光ると思っているんですけどね。その強烈なフィルタリングと発振、歪みからシンセやドラムマシン、ギターはもちろん新たな要素として管楽器にまでかける猛者が現れます。クラブ・ジャズ的なスリーピース・バンドPhatの活動でその存在を知られ、現在はソロでquartz-headやrabitooほか、いくつかのユニットで活動するサックス奏者藤原大輔さん。1990年代後半にテクノ界隈で人気を博したフィルターSherman Filterbank 2(現在2台使い!)とその下に置くラック型ディレイKorg DL8000RのHold機能を駆使して、過激に発振するエレクトロニカ的スタイルを披露しております。ほとんど 'オシレータのないモジュラーシンセ' と言って良い '化け物' 的機器で、どんな音をブチ込んでも予測不能なサウンドに変調してくれますヨ(動画途中の 'Intermission' は長く第2部は58:33〜スタート)。











しばらく、この手のアプローチは棚上げしていたのですが、ドイツのFlame Instrmentsというモジュラーシンセの工房からガジェットな機器としてMIDI Talking Synthという製品が出ていたことを思い出します。古の 'Speak and Spell' で有名となったMagnevation LLC製造の 'Speakjet Chip' を2つ搭載したこのFlame製品第一号は、そもそも生産台数が少なかったこともありわたしが探し始めた時点で相当のプレミアが付いておりました。そして、これまたレアなこのTalking Synthの 'ユーロラック・モジュール' を中古で見つけたことから、ドドッと事態が急変していく怒涛の展開...。まさか自分が 'モジュラーシンセ' の世界に足を踏み入れてこのTalking Synthをどう発音させよう?、どのモジュールと組み合わせよう?などと考えてるとは思わなかったな(苦笑)。何よりこの時点でこのモジュールがどう発音し、どうトランペットの 'アンプリファイ' と連携した世界になるか?なんて何ひとつ分からなかった...。あくまで各モジュールのスペック読みながらアタマの中で観念的に組み上げ、想像してただけだったんだから...テキトー過ぎますヨ。とりあえず、あの日本を代表する作曲家、冨田勲氏は相当な思いで購入したMoogのモジュラーシンセを喋らせたかった、という思いからノコギリ波をローパスでフィルタリングしてステップシーケンサーにより '口腔の広がり' を制御、模倣させるというパッチングだった記事を思い出します。とりあえず、まずはトリガーして '発音' させようとHikari InstrumentsのAnalog Sequnecer Ⅱを手に入れたことから、この日本の工房製品に焦点を絞り最低限の '4Uラックサイズ' 程度で組み始めました。






電化してリズミックにワウワウと吼えるラッパと同時に使っているのが 'スピーチシンセシス'。ちょうど運良く 'ユーロラック版' のTalking Synth入手が叶ったことから、この 'スピーチシンセ' を発音させるべくシーケンサーをベースにした最少サイズのモジュラーシステムを思案する...。'ユーロラック' は全くの門外漢なのでそれこそペダル・エフェクターとはまた違う実に奥行きの深い世界があり、これまた大手から限定モジュールにプレミアの付く個人製作モノまで幅広く用意されているんですよね。古の 'Speak and Spell' や1980年代のアーケードゲームでおなじみなメモリーカード 'Atarivox' で有名となった 'Speech Synthesis Chip' ですけど、このFlameの第一号製品であるTalking SynthにもMagnevation LLCにより製造された古いアナログの 'Speakjet Chip' を2つ搭載していることからプレミアが付いておりまする。当初のセッティングではTalking SynthをBastl InstrumentsのThymeなどMIDIで発音含め、緻密にプログラミングしてコントロールしたかったもののMIDI to CV Converterなど大掛かりになりそうなので断念...。モジュラーならではのCV/Gateによるランダマイズなシーケンスの '飛び道具' として、ThymeとのCV同期も活かしながら簡単な使い方に終始しております。また、ケースの電源スロットをもう1つ追加してエンヴェロープ・フォロワー(例えばSynthrotek ADSRなど)も入れたかったのですが、これもThymeにCVで同期してこっちのエンヴェロープでソレっぽくかけるだけに留めました(笑)。インスパイアとしてはやはり、現代音楽の作曲家にしてオノ・ヨーコの元旦那でもある一柳慧氏のブッ飛んだ1969年の作品 'Music for Living Space'。ここでの京大工学部が作製した初期コンピュータによる辿々しい ' スピーチ・シンセシス' のヴォイスとグレゴリアン・チャントの錯綜が面白い効果を上げておりまする。ちなみにここで読まれるテキストは建築家、黒川紀章氏による1970年の著作「黒川紀章の作品」から 'Capsule'、'Metabolism'、'Spaceflame'、'Metamorphose' の章を各々読み上げたもの。ジョン・ケージの不確定性音楽を元にして、ラジオのチューニングから変調していくような 'Tokyo 1969' と対になる作品でもありまする(ベトナム戦争の状況を伝えるモスクワ放送に時代を感じます)。また、翌70年には同様の手法による短いシーケンスのヴァリエーションをエコーやテープ編集などで変調する3分弱の小品 'Computer Space' も制作されました。



そんな人声合成技術といえば '初音ミク' を初めに今や生成AIなど多岐に渡る分野で日常社会に溶け込んでおりますが、それ以前の黎明期として京都発の孤高の音楽家、竹村延和氏の試みは興味深かったです。Sony Aiboのプログラミングにも携わりながら当初は声を失った者に対する医療用の 'スピーチ・シンセシス' で、いかに '人声' から感情を脱して音楽と 'こえ' の境界を曖昧な領域に溶けませるかのアプローチ。2002年、事実上の '最終作' 的存在である(以後はより現音寄りな手法による2014年の 'Zaitraum' などあり) '10th' から 'Falls Lake' とソレを竹村氏と懇意の関係であったシカゴ音響派の代表的バンド、トータスによる同曲カバーをどーぞ。 









あ、そうそう、1968年に東京赤坂で開業しサイケなライトショーでも話題となった日本初のディスコ 'MUGEN' や 'Byblos' と並び、ギラギラのメタリックな 'Space Age' 風装飾で '宇宙船クラブ' とも呼ばれた 'SPACE CAPSUEL' のプロデュースで一柳氏が設計の黒川紀章氏、グラフィックデザイン粟津潔氏と共に盛り上げていたのも確か、この70年大阪万博前夜の頃でしたね。そんな 'ブッ飛んだ時代' の寵児であった一柳慧氏(一番ブッ飛んでたのはオノヨーコの元旦那だったってこと!)がこの時代にプロデュースで手がけたのがこちら、怪作というべき '一柳慧作曲オペラ横尾忠則を歌う'。コラージュのグラフィックデザインで注目され大島渚監督の映画 '新宿泥棒日記' で主演も務めるなど、そのカテゴリーを逸脱した 'フリークアウト' の2人による実験精神が横溢しております。彼らの '裏方' として唐十郎の状況劇場や寺山修司の天井桟敷といった 'アングラ演劇' の世界観があり、これは隔世遺伝するかたちで椎名林檎などに受け継がれているものと言って良いでしょうね。ここでは、デビュー前夜の内田裕也率いるザ・フラワーズのサイケなロックサウンドを一柳氏が 'ミュージック・コンクレート' で引き裂きます(笑)。この時代、このようなジャンル横断的なカテゴリー不能の '企画モノ' (って言ったら怒られそうだが)がどういうリスナー層を想定してるのか分からないまま、当時の混迷した時代を切り取るカタチで投げ付けてくるモノが多かった...。バークリー音大帰りでフリージャズに身を投げながら片手ではEMSのシンセサイザーVCS3を操作し、一方で京王技研ことKorgのデモンストレーターとして日本初のシンセサイザー開発に向け設計者の三枝文夫氏に助言するジャズピアニスト、佐藤允彦氏。そんな狂った '政治の季節' を総括するように '祭り' の終わった1971年、'Amalgamation - 恍惚の昭和元禄' というタイトルでロックからフリージャズ 、コラージュ、さらに当時引く手数多だったスキャットの名手、伊集加代子氏やオーケストレーションまで集めての異色の一枚となっております。ロックサウンドには水谷公生のエレクトリック・ギター、Food Brainの柳田ヒロらが参加。ちなみにこの佐藤允彦氏とは先に触れたKorg Synthesizer Traveller F-1を始め、京王技研の時代からデモンストレーターとして米国留学の経験含め多くの助言を行ってきたその人です。何より国産初のシンセサイザーであるMiniKorg 700開発の初期段階で、その '世界同時革命' 的に探求されていたシンセサイザーという言葉や概念も知らずにシンクロニシティとしてのエピソードを披露します。

"(1968年)8月に帰ってきた同じ年、京王技研(Korg)の社長さんから電話がかかってきたんです。アメリカに行く前からエレピやクラヴィネットを使っていたのを知っていて、「うちで今度、新しい電子オルガンを作ってみたんだけど、見に来て、ちょっと意見を聞かせてくれないか」っていうんですよ。それで行ったらば、ヤマハのコンボオルガンとかみたいなんだけど、音色を作れるようになっていたわけ。ここをこうすると音が変わるよ、というふうな。それで「これ、オルガンっていうより、シンセサイザーなんじゃないの?」って言ったら、シンセサイザーという言葉を誰も知らなかったの、その場にいる人が(笑)。

「なんだ、それは?」って言うんで、発振器からいろんな音が作れるっていうものを、シンセサイザーっていうらしいよって答えたら、「へえ、じゃあ、シンセサイザーっていうんだ、これは。そういう方に入るんだね」って。"











この 'スピーチシンセ' へCV/Gateのコントロールによる '息吹き' で命を与えるべく、ランダマイズにトリガーするユークリッド・シーケンサーのHikari Instruments Eucrhythmと8ステップのAnalog Sequencer Ⅱを各々チョイス。これらのCVとオーディオを取りまとめるのは同工房の7チャンネル入力Atten/Mixerであり、各モジュールは全て4msの電源付きラックケースPod48Xに組み込んでおります。Hikari Instrumentsといえば国産の新しい工房でデスクトップ型ノイズ・シンセサイザーのMonos、Duosで話題となったことから頭角を現しました。気にはなっていた工房の製品ということもありますが、たまたま格安でお目当の機能のモジュールを各々市場で発見したことから揃えてみたのが本音...いや、初心者なので全くこっちの分野には疎いのです(汗)。Analog Sequencer Ⅱは各ステップごとにCV入力があり、その各ステップ個別に外部のCVから制御することが可能。上昇、下降各々の調整と独立したGride(ポルタメント)を内蔵しているので、ピッチ上昇のみのポルタメント、Gateを入力すればARエンヴェロープとしても使えますね。Gate出力はPWM(内部クロック時のみ有効)によりGateの長さが調整可能です。とりあえずルーレットのようにクルクルと回るLEDがカワイイ(笑)。そしてグリッチ系のリズムに威力を発揮するユークリッド・シーケンサーのEucrhythmは 'デュアル' ということで2つのシーケンスを搭載し、各々StepsとPulesの2つのツマミによりループの長さと1ループの出力数を設定してポリリズミックなリズムを生成。Pulse Width横のスライダーでGateの長さの変更、Gate Delayによりクロックの1/16のタイミングでその出力が遅延してクロックからズレたリズムを吐き出します。またこれらはCVコントロールが可能。A、Bの2チャンネル出力、AとBのORとAND(論理和)のロジック出力により合計4種類のパターンを生成し組み合わせることで様々なリズムを堪能することが出来まする。ちなみにEucrhythmは内部クロックを備えていないのでAnalog Sequencer Ⅱからクロックを貰って駆動させるかたちとなります。そして、これらの信号をまとめるAtten/Mixerはオーディオ信号とCVをミックス可能な7チャンネルのミキサー兼アッテネータ・モジュールです。1チャンネル〜4チャンネルを各々パラアウトに繋げばミックスアウトから切り離されたパッシヴ・アッテネータ、また、1チャンネル〜4チャンネルから最大5VのCV信号を吐き出します。この各チャンネルは全てMuteスイッチでOn/Offが可能です。ちなみに、この工房からは昔ながらの8ステップによるゲート・シーケンサーも用意されており、Atten/Mixerと組み合わせることで7ステップのCVシーケンサーに代わりこんなテクノ・シーケンスも楽しめます。とりあえず、この2つのシーケンサーをTalking Synthと組み合わせるだけでもかなりイビツな 'ヴォイス' で喋らせることが出来るでしょう(笑)。理想はワウペダルと同期してラッパのフレイズに追従しながらTaling Synthを '喋らせる' ことが出来れば最高なんですけど、どこかの工房がCV/Gateも出力できるワウペダルとか作りませんかね?(謎)。






そして、この 'ユーロラック・モジュール'とコンパクト・ペダルのミックス、融合ということで便利なのがBoardbrain Musicの多目的セレクター、Transmutron。本機はパラレルで個別、同時にDry/Wetのミックスが出来るほか 'Fission'、'Fusion'、Fallout' の3種モードにより、2つのLoopの機能を変更することが可能なコンパクト・ペダルとエクスプレッションCV、'ユーロラック' モジュラーシンセのCVによる統合したスイッチング・システム。今後、エレクトリック・ギターとモジュラーシンセにおけるCV/Gateを同期する統合システムを見据えた一台として、このBoardbrain Musicの挑戦はもっと注目されることになるでしょう。

●Fission
このモードでは、入力された信号の周波数帯を分割し、それぞれを2つのLoopにスプリットして再びミックスして出力出来ます。Umbrella Company Fusion BlenderやVocuのMagic Blend Roomなどと同種の機能ですね。またエクスプレッション・ペダル及びモジュラーCVでのコントロールにも対応。

●Fusion
このモードでは、2つのLoopのバランスを調整してブレンドすることが出来ます。これらミックスのバランスは筐体真ん中にあるSplitpointツマミ、またはエクスプレッション・ペダル及びモジュラーCVでのコントロールにも対応。これは廃盤になりましたがDwarfcraft Devices Paraloopと同種の機能に当たります。

●Fallout
このモードでは、2つのLoopの前にワイドノッチ・フィルターを適用して、Splitpointツマミやエクスプレション・ペダル及びモジュラーCVでのコントロールにも対応。ペダル・コントロールすることでワウのような操作を付加することが出来ます。また本機には、これとは別にHicut、Locutのフィルターを搭載して音作りに適用することが出来ます。

本機Transmutron搭載のフィルターは12dB、24dB、48dB/Octのスロープ角度を選択出来、それぞれFission、Falloutモードのワイドノッチ・フィルターにも適用されます。もちろん、Ch.2のLoopでフェイズアウトが起こった際の位相反転にも対応出来るのは素晴らしい。そして2つのLoopからなる 'Send/Return' にはフォンと 'ユーロラック' モジュラーでお馴染み3.5mmミニプラグが同時対応し、さらにこの3.5mmのLoopには内部DIPスイッチにより楽器レベルとラインレベルで 'インピーダンス' を切り替えて使用することが出来ます。ちなみにこのTransmutronの 'Loop 2' へTalking SynthをLineモードで繋いでいるのですが、せっかくもうひとつの 'Loop 1' が空いていることからこちらにVoxの真空管 'Nutube' を用いた新たなシリーズ 'Valve Energy 2nd' からコンプレッサーSmooth Impactを接続!。以前はNeotenicSound Magical Forceに担わせていたラッパの '音質補正' をこちらでやってもらうことにしました。ええ、やはり '最高のペダルレビュワー' であるフーチーズ村田善行氏の動画で 'お財布のヒモ' が緩みました(笑)。その思惑通り?本機の狙いと美味しいツボの引き出し方、その言語能力が的確ですね。こちらは3種のモード 'VTG'、'NAT'、'SAG' を駆使しジャキッとしたアタックと纏まりのある飽和感から、特に管楽器の 'アンプリファイ' でライン出力前に置きたいペダル筆頭でしょう!。従来のVCA、光学式、FETなどのクリッピング回路とは一線を画し、真空管の非線形領域を利用しながら高調波によるナチュラルなコンプレッションを実現します。ただ、パワーサプライに1つ100mAのDC9V端子が空いていたので繋いでみたものの消費電流不足...(汗)、本機のみ別個でBossのDC9V200mAアダプターPSA-100P(トランス式)で供給しております。





そんなSmooth Impactが満載のエフェクターボードからハミ出してしまう為に何とかならんもんか?、と思案していたところ、お!こんな便利なアイテムで流用できるかも...と思って導入したのがこちら。Amazonで販売している 'lifacralab. マイクスタンド スマホ固定ホルダー配信用' というもので、棒状のスタンドにクランプで固定して '自撮り' 的に角度調整したスマホをフリーハンドで見れるホルダーです。ABS樹脂とアルミの2種がありわたしはアルミ製をチョイスしましたが、金属のホルダー部分は剥き出し状態なので薄いゴムシートで筐体の保護と滑り止めをすべく張り付けました。iPhoneの各サイズに対してアジャスト出来るマウント部はちょうど 'MXRサイズ' ですので、両側の 'In/Out端子' に注意しながらマウントしましょう。筐体真上に 'In/Out端子' のあるペダルだとよりしっかりマウント出来ると思います。ただ、あくまで低いホルダーで浅くマウントしてるだけなので足でOn/Offするとすぐ外れちゃいます...。ですから手でOn/Offするか、わたしのようにずっとOn状態のペダルに適したアイテムですね。コレが何より良かったのはPedal Trainという 'すのこ状ペダルボード' の柱の部分に対し、縦にしっかりと締め付け土台をマウント出来るという利点が功を奏したこと!。ひとつだけ後からどうしても追加したいけどボード外に置かざるを得ない状況はあるので、コレをアイデアにした '増補用ペダルホルダー' とか、どこか企画しないかな?(笑)。









このFlame Talking Synthのラッパからのトリガーという意味では、古くはKorg MS-03の機能を内蔵したギター・シンセサイザーX-911やMS-04モジュレーション・ペダルとの音作りなどがありました。そういえば一昨年、英国のeBayから過去40年近くエンジニアとして従事したという謎のビルダーが製作するFogas Pedals Envelope FollowerというCV/Gateコンバータも買ったことを思い出した。これはコンパクトペダル型の仕様によりスイッチのOn/OffやIn/Outの入出力と上部に並ぶCVの入出力は、Envelope、Gate、Triger、別途オーディオ入出力などを装備。その下に並ぶ3つのツマミはLevelと感度調整によるSensitivity、原音とCV入出力のMixというシンプルな構成をハンド・ワイアードで組み込み中身はかなり過密に詰め込まれております。リタイア寸前最後のお仕事として出品した '一期一会' 的モノらしく、もはや本機を入手することは叶いません(一緒に出品していたWatkinsのCopycatテープエコーをモデリングしたというデジタル・ディレイ 'Kopykat' も買っとけば良かったな...)。リンクとしてその製作者である英国のFogasさんによるSoundCloudが残されておりますので、本機によるBehringerのアナログシンセCraveでの効果をどーぞ。ここではそのエンヴェロープ・フォロワーによるVCF、Gate、シーケンサーのStart/Stopなどを制御しております。







               "Good Morning, Vietnam !"

今年、アジアの経済成長著しい新興国であるベトナムは南北統一50周年を盛大に祝いました。そこにはフランスの植民地からの独立を目指すインドシナ戦争での勝利から、北緯17度線を境に南北の統一を目指し米国と戦うベトナム戦争と長きに渡り血を流した小国ベトナムの歴史があります。当初は 'ドミノ理論' を盾に米国が10年もの泥沼に嵌り敗北、双方に多くの損害をもたらしながらいま生きていることの価値と平和を世に問い続けます。まるで官軍気取りを嘲笑するように "向こう側へ突き抜けろ" と歌うザ・ドアーズからママス&パパスは陽射し溢れるカリフォルニアの地を目指し 'Go West' (と、その先の太平洋を見据えた 'Far East')の旅に出発、混迷する泥沼の銃声をウッドストックで '星条旗' を引き裂くような国歌に象徴させたジミ・ヘンドリクス、ジャズの巨人である 'サッチモ' ことルイ・アームストロングはそんな血生臭い毎日をなんと '素晴らしい世界' なのだというアイロニーで平穏な絶え間ない日常のありがたさを訴えるのです...。


- 6月9日追記 -

そんなベトナム戦争を象徴する '混迷の米国' を歌ったトリックスターでありイノベイター、スライ・ストーンが逝った。わたしがファンクにハマるきっかけをくれた一人であり、その泥沼の季節を過ぎた大半を失意と酩酊のまま '伝説' として生き残ってしまったスライ、スライ、スライことシルヴェスター・スチュアート...R.I.P.

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