あけましておめでとうございます。
Chúc mừng năm mới.
タイトルに意味はありませんっ(笑)。
なんというか、去年の夏前後からあまり変わらない日々を過ごしていたりします。身の回りの環境を思い切ったというか、いろいろ断捨離する代わりに奮発して '一点買い' のような '大物' をピンポイントで手許に揃えちゃったからあまりその他の物欲が湧かなくなってしまった...(フーチーズ村田氏の動画にヤラレてFjord FuzzのLokeとMimeは買ってしまったけど)。むしろ目の前のその厳選した機材、楽器の習熟や扱い方に集中していたら年を越してしまったという感じです。マウスピースのギャップ調整に時間のかけたトランペットのほか、新調した重厚でリッチかつ響きの良いローテナーのスティールパン、KorgのヴォコーダーVC-10、思い切って買い換えた1年越しのBuchlaシンセサイザーMusic Easel '50周年Special Edition' などなど...。だから毎年暮れにチェックしていた '2024ペダルランキング' も今年はナシです(汗)、と言いたいところだけど、ペダル大好きなハープのお姉さんのEmily Hopkinsさん動画は面白く見ていたのでその 2023&2024総決算' ともいうべき 'the EMMAs 授賞式' をどーぞ。
ずっと気になっていたGamechanger Audioの 'モジュラーシンセ' との連携を図るコーラス、リヴァーブ、ディレイ3種ラインナップの 'AUTO Series' からAuto Delayが気になっております。ずっとStrymonのBBDチップの質感を模したアナログモデリング・ディレイのBrigadierをメインのボードで愛用していたのですが(本機のミキサー機能も秀逸!)、やはり 'ユーロラック・モジュラーシンセ' やBastl Instruments Thymeとの連携した音作りを目指すべくこのAuto Delayを使わない手はないな、ということで...導入、したいなあ。Tape、Analog、Digital3種のアルゴリズムを搭載し、いわゆるディレイのコントロールでは定番のパラメータ(ディレイタイムは)のほか、タップテンポ機能に革新的なアプローチの 'Track Tempo and Panning' はダッキング・ディレイの為のダイナミックトラッキング機能を利用してテンポ検出、それに呼応してTimeのパラメータを設定可能。ステレオによる空間生成のパンニングモードではOff、50%、100%(ピンポン)の3種切り替え、そして本機最大の '売り' である筐体真ん中に陣取った3.5mmパッチケーブルを用いての 'パッチ・ルーティング' ではダイナミクス、ピッチ、専用のモードスイッチと組み合わせての音作りが可能です。その他、MIDIやアナログのクロックにも対応するなど、そのディレイ音もさることながら攻撃的なアプローチを志向するユーザー待望のペダルと言えるでしょう。
真夏大好き、真冬大嫌いなわたしにとってこの一瞬だけ、除夜の鐘を聞きながらしんみりとした年越しを迎える真夜中の空気は好きなんだ...。その厳かな一瞬を通り過ぎたら、猛烈な勢いで日常へと回帰しなければならない喪失感に虚しく耐えなきゃならないことを毎年イヤというほど知っているというのに、ね(苦笑)。日本は東アジア儒教文化圏のように旧正月も無いので...花粉舞い散る春先まであっさりしたもんです。さて、ジャズの世界では仕事のはねた後、この零時を跨いで行われるジャム・セッションを自分たちの時間と定義して 'After Hours' と呼んでおります。そんなレイドバックした雰囲気のままクリス・ボッティとロニー・ジョーダン、ザ・ニュージャージー・キングスからマスターズ・アット・ワークの 'Nuyorican Remix' によるファンキーに咽び泣くラテンの一夜を過ごした後、やがてモダージが漆黒の闇を照らす陽射しを引き連れ '日付変更線' を反芻しながら初日の出を待ち...そして、繰り返す真夜中を連れてやってくるDJカムで黄昏れてばかりもいられないと '教授' の 'Riot in Lagos' で今年の勢いを付けるというこの曲順...(何のこっちゃ?)。さあ、2025年のスタートです。
"Etio + Viet"
坂本龍一 '教授' の 'Riot in Lagos' や 'The Last Emperor' を聴いてフュージョンからペンタトニックの演歌や沖縄民謡、ベトナムなどに頒布する5音音階、そこから北アフリカのエチオピアで '隔世遺伝' の如く '昭和歌謡の哀愁を持つ男' (笑)ことムラトゥ・アスタトゥケの 'Etio Jazz' へ至る長い旅路に想いを馳せるのです('End of Asia' のコーダは中国の '東方紅' のモチーフらしい)。この懐かしくも夏祭りの叙情溢れる 'Etio jazz' はわたしの目指す音楽の未来です。師匠もこの 'エチオ・ジャズ' の 'ハチロク' なアレンジで取り入れた 'Ney Ney' という格好良い曲をスティールパンで挑みました!。ジャマイカで推進されたラスタファリ運動の神ジャーの '化身' として推戴されていたのがエチオピアの皇帝、ハイレ・セラシエ一世だったということで、エチオピアからジャマイカ、アジアへと至る彼らと日本の音楽が持つ '歌謡性' の親和感って一体どこで繋がっているのだろうか?(謎)。夏の盆踊りや東映任侠映画演歌とムラトゥ・アスタトゥケが奏でる和モノ感覚のマリアージュ...いや、これは汎アジア・オリエンタリズムと言うべきか!?さらに日本からエチオピアを経て、インドシナのベトナムはトラディショナルな歌謡性の根底にある一弦琴、ダン・バウ(đàn bầu)のように倍音を含んだ響きとコブシを持つ歌唱の二人、Tú TriとLương Vĩという人たちの歌い方へ行き着きます。例えばジャズ・ヴォーカルがスキャットなどアドリブへと挑む器楽性の限界に対し、モンゴルのホーミーにも似た独特の倍音とベトナム語の6つからなる声調とリズム、ハーモニーがそのままダン・バウの音色に接近しているのは興味深いですね。そんなベトナムの一弦琴、ダン・バウはここ日本でも購入することが可能です(演奏法を学ぶのは大変だろうけど)。そんなベトナムとジャジーな出会いは、サイゴン生まれで後にフランス・パリへ移住してボーダーレスに活動する歌手Hương Thanhが、ヴァイブをフューチュアして1930年代〜47年までのベトナム大衆歌謡をジャジーにカバーした2017年のアルバム 'SÀI GÒN SAIGON' が最高なんです。他には同じくパリ在住でジミ・ヘンドリクスのトリビュート・アルバムも制作したベトナムを代表するギタリスト、Nguyên Lêと2007年に 'コラボ' したアルバム 'Fragile Beauty' も素晴らしい。そして最近、ダブやエチオ・ジャズについての '良本' が立て続けに刊行されているのは嬉しい限り。2010年に翻訳されたマイケルEヴィール著の「DUB論」(水声社)が一昨年暮れ、改訂の新訳により復刊し、去年はティボー・エレンガルト著「キング・タビー: ダブの創始者、そしてレゲエの中心にいた男」(Pヴァイン/Ele-King Books)が発刊、さらに 'エチオ・ジャズ' についての初の書籍である川瀬慈著「エチオジャズの蛇行」(音楽之友社)も書店に並びました。その著作からムラトゥ・アスタトゥケのインタビューで日本と 'エチオ' の相関性について興味深くこう述べております。
- そういえば、エチオピアの音楽は日本の音楽に似ているなんていう話があるけど、あなたはそのあたりをどう考える?。
- ムラトゥ
私は、まさにその一点についていつも考えてきた。日本がエチオピアの音楽の影響を受けたのかもしれないし、エチオピア側が日本の影響を受けてきたのかもしれない。この問題を考えるということは、いかに我々が、音を通してコミュニケーションを行ってきたか、ということを考えることだ。数年前、日本に行ったとき、何人かのミュージシャンと、エチオピア北部の音階と日本の伝統的な音楽の類似性について議論した。話は盛り上がったけど、この点については謎だらけだね。
ベトナムの一弦琴、ダン・バウを聴きさらにテクノロジーとミックスした '創作楽器' として蘇ったら面白いだろうな、などと妄想していたら、こんな謎の '創作楽器' を見つけてしまいました。何なの?コレ?。ターンテーブルの定番Technics SL-1200 Mk.ⅡとDJミキサーを組み込んだボディは、大きなアコギかピアノの共鳴弦のように放射状へ弦が貼られている。最初、スティックで叩くノイズを拾いサンプリングしていたのでドイツの実験音楽家、ハンス・ライヒェル発案の創作楽器 'ダクソフォン' の一種か?と思ってしまったのですが、とにかく得体の知れないこの発想には驚かされます。てか、スティールパンや電化した管楽器などもそうなんだけど、こういう創作楽器の世界がたまらなく愛おしい...(笑)。
さて、米国でも既成の様式美から外れた 'アウトサイダー' による越境者たちの試みとしてその地位を築いたサム・ゲンデル。ロスアンジェルス在住のサックス奏者にしてクリエイターの彼が眺める暖かな世界は、ドイツ製Rumberger Sound Productsの 'マウスピース・ピックアップ' K1Xを装着し各種ペダルでサックスを 'アンプリファイ' させながら '非マッチョ' な世界を遊泳しております。ちょうど1990年代後半にトータスやThrill Jockeyレーベルなど 'シカゴ音響派' 周辺の匂いと共通するというか、何やらレイ・ハラカミのようなポルタメントを軸としたサウンドスケープを聴かせてくれるなど、この従来のジャズからハミ出した感性が良いなあ。そうそう、このゲンデルさんもタブラマシーンやリズムボックスを用いて緩〜いグルーヴを好んでるんだよなあ。しかし、現代音楽専門であったNenesuchレーベルも随分とポップな意匠へと変貌しましたね(笑)。
ちょうど去年の10月〜11月にかけて盟友、サム・ウィルクスとのデュオで日本ツアーを周ったサム・ゲンデル。そんなゲンデルさん、最新のトピックは細野晴臣さんのアルバム 'Hosono House' 50周年を記念して制作されたカバーアルバム 'Hosono House Cover' に '恋は桃色' で参加。まさか自分で歌うとは思わなかったほどの 'ゲンデル節'!?(笑)というか、ちょっと '教授' の 'Thatness and Thereness' を思わせるような歌い方だね、似てる...。しかし、今こそゲンデルさん招集してティン・パン・アレイ続編の '泰安洋行' サウンドに行って欲しいな〜。今度はベトナムの雰囲気も加えながら、さらに無国籍風味にスティールパンで奏でる 'Simoon' も聴きたい!。週末の中華街でビール片手に夜風浴びながらこんな一夜を過ごせる 'TOKYO' だったら楽しいかもね。最後の音源は、まだベトナム統一前に南ベトナム政権下のサイゴンのダンスホールで流れていたようなオールドジャズ('Nhạc Phim' と書いてあるので映画音楽の挿入歌でしょう)。特にこの一曲目のCarol Kimが歌う 'Sài Gòn Đẹp Lắm' (サイゴンは美しい)は有名ですね。絶対に細野さんが好きそうなヤツだし、この古いラジオから流れてくるサウンド聴きながらコーヒーとバインミー噛り付きベトナムの朝の喧騒を感じたい...。このような流れから、これは思わずベトナムのピチカート・ファイブ!?と思ってしまったTrangのオシャレな渋谷系と歌謡性の絶妙な出会い(笑)。こういういなたい小洒落感こそスティールパンで叩いてもっと南国っぽくしてみたい。そういえば細野さんもそんな渋谷系の時代の1996年、越美晴さんとSwing Slowというオシャレなユニットやってましたね。ジャズクラブのようにしかめっ面でアドリブに聴き耳立てるでもなく、子供の遊び場でもない(昭和世代なら分かる) '半ドン' 的オトナの社交場のような '逃避空間' が欲しいと思う今日この頃です(笑)。
今や管楽器の 'アンプリファイ' 体験においてスタンダードになりつつあるオーストラリア発スティーヴ・フランシスさんの工房、PiezoBarrel。わたしも愛用しております。そのラインナップも各楽器ごとに色々と出揃ってきており、さらにこれまで簡素なジップロックのビニール袋で梱包してきたものがかなり丁寧なパッケージへと変貌していることに驚きます。その内訳の中に新たなパーツが追加されており、それはマウスピースへドリルによる穴空けの際に中心部へ刃を当てるための 'ドリルガイド' が封入されていること!。しかも別途、複数の予備アダプターやミニドライバーと一緒に保管する為の専用ケースまで用意されているという丁寧さ!。とりあえずこれで、永田こーせーさんのようなマウスピース穴空けの '中心ズレ' で四苦八苦する姿とは無縁になるでしょう(笑)。一方、ドイツのユーザー動画ではハンダ無しのフラックスだけ付けてマウスピースに針金固定、バーナーで炙っておりますね...(付けば良いんだろうけど)。ただ、ガストーチのバーナーをキャンプやバーベキューに使うヤツは炎の調整で大変だと思う。わたしはPrinceの定番ガストーチGB-2001を愛用しております。後は、できればシャンク部に乗せるアダプターの '位置決め' の為の '固定パーツ' を用意することが今後の課題でしょうか(実際、こーせーさんもサックスの湾曲するネック上で四苦八苦しとる)。あ、そうそう、気になった点をひとつ...ピックアップ本体とアダプター部の間に嵌めるゴムパッキンがあるのだけど、なんと加水分解によりボロボロとヒビ割れておりました(悲)。コレ、昨今のゴムパーツ全体にいえるのだけど、昔の不純物いっぱいなゴム製品(例えばエフェクターのゴム足とか)に比べ環境へ配慮した代償として 'ヤワな作り' になっちゃいましたね。あくまで消耗品としてユーザーはチェックしておきましょう(だから予備が封入されているんです)。というか、C.G.Conn Multi-Viderのゴムパッキンなんて50年以上過ぎても丈夫なんだから驚きですヨ(苦笑)。それでもフランシスさんがこのニッチな分野でここまで急成長するとは思わなかったな...素晴らしいお仕事です!。ちなみに、このちょっとハイに酔っ払った?ように見える陽気な黒メガネのおじさんは(笑)、PiezoBarrelのトランペット用 'P9' ピックアップのアドバイザーでありジャズメンにして現バークリー音大教授のラッパ吹き、Darren Barrettさんです。
Batcus-berry Model 5300、Sennheiser Evolution e608、Beyerdynamic TG I52dといったライヴ用のマイクも集めてみましたヨ。基本的にこのグーズネック式マイクはコンデンサー・マイクが主流の中、e608とTG I52dは珍しいダイナミック・マイクでラインナップされております(TG I52dはすでに 'ディスコン')。また、3点支持のワイヤーによるベルマウントで一風変わったSG SystemsのLDM94もありますね。わたしは自宅でスタンドマイクとしてElectro-Voice RE-20やSennheiser MD441-Uなどの定番ダイナミック・マイクを愛用しているのですが、ここでは 'モバイル性' としてこれらベルマウントのマイクをチョイスしました。ちなみにe608は現在最も入手しやすいグーズネック式マイクなのですが、これに採用されているベルマウントのゴムパーツが発想は面白いものの使いにくいのが難点...。極力共振を抑えながらベルの倍音を殺さないという意図は分かるのだけど、片手で手軽に着脱しにくい設計の為わたしはコンデンサー・マイクの姉妹機、e908Bに標準で採用されているクリップのMZH 908 B-Ⅱへ換装してしまいました。やはり片手で摘み着脱できる仕様はラクだわ〜。そして、Barcus-berryのエレクトレット・コンデンサー・ピックアップModel 5300は同社カタログの中でもあまり知られておりません。トランペットのベルのリム縁にネジ留めで挟み込み、一見ピエゾ式に見えますが電池駆動する簡易型の 'エレクトレット・コンデンサー' 式でベルからの振動と倍音を収音します。こんな形状ですがちゃんとミュートの音色も収音出来ますヨ。1981年に6年もの沈黙を経て復活したマイルス・デイビスのステージで星と月の彫刻の施された黒いMartin Committeeには、それまでGiardinelliのマウスピースへ開けられていた穴に蓋がされる代わりにこの '挟み込む' ピックアップがワイヤレス黎明期と共に装着されたことから注目を浴びました。デイビス使用のものは、かなりの開発費をかけてニューヨークにあったKen Schaeffer Group Inc.という会社が手がけたもの。正確には 'Schaeffer-Vega Wireless System' というもので当時、デイビスのロード・マネージャーであったクリス・マーフィーによれば「あれは同社が作ったトランペット用の第一号システムで6000ドル(当時のレートで100万ほど)はかかった」とのこと。それからしがなくしてBarcus-berryからよりリーズナブルな価格帯で用意されたものがこの同種品。その名も 'Electret Mic System for Brass' と題した本品は発売時期により2つの型番があり当初はModel 1574、後にModel 5300へと変更されます。また、付属の腰に装着するバッテリーパックも9V電池で駆動するModel 1586 Power Supplyのほか3Vのリチウムボタン電池による小型のもの、その後はRCA端子の入力部と共に 'Timbre' と 'Level' の2つのツマミの仕様に変更されて最終的には 'Buffer/Preamp EQ' のModel 3000Aが付属となりました。そんなデイビスのピックアップ・マイクはこれ以降、晩年のステージでお馴染みあの '傘の柄' のようなワイヤレスマイクへと改良を重ねていったようですね(後にSD SystemsからLCM77として市販品も登場します)。しかし、6年もの沈黙を経て棺桶に片足突っ込んだような状態で弱々しいラッパ吹くデイビスのなんと痛々しいことよ(悲)。立ち止まったら動けなること危惧してずっとステージ上をウロウロ動いてたらしい...。季節外れの寒風吹きすさぶ10月の東京に現れた1981年のマイルス・デイビスです。
'アンプリファイ' したスティールパン用として、Aspen Pittmanという方が製作するSpacestation V.3というステレオアンプを手に入れた。本機は100W出力による小型アンプながらまるでレスリースピーカーのような配置でL/Rのみならず300度に渡るステレオ音像を再生してしまうというもの。もちろん、パンだけじゃなくラッパでも鳴らせるのですが、そのステレオの中核を担うこのTX6という '手のひらサイズ' の超小型ミキサー、高い、もうひたすら...高い(汗)。昨今のオシャレな 'DTM女子' にウケたいのかは知らんけど、一貫してスタイリッシュなガジェット満載のデザインながらどんどん市場価格が高級品の部類に入っていくTeenage Engineering。このTX6が手許に来た時もまるでApple製品のiPhoneを開封するような気持ちになりましたヨ(苦笑)。この狂った価格のTX6はそのサイズとは真逆のズシッとした重量感、アルミ削り出しの各ツマミやフェーダー、有機ELディスプレイ、そして筐体裏側には滑り止めの役割も果たす合成皮革が貼られるなどゴージャスな作りとなっております(ま、そのくらいのお値段だから当然でしょうね)。しかしこのTX6はさすがデジタルなだけにミキサー機能のほか、2系統の独立した高品質エフェクツ搭載。FXⅠはReverb、Chorus、Delay、FXⅡにはTremolo、Freeze、Tape、Filter、Distortion、Crush、そして去年のファームウェア1.2.12より以下の機能が追加されました。
●Sumpler Function
サンプラー機能。楽器やマイクを接続して録音、6つのトラック・ボタンがそれぞれサンプル・スロットとして使用できます(各スロット最大5.5秒のサンプリングタイム)。
●Loop Function
ルーパー機能。最大22秒のループを録音し、演奏中のトラックにリフを加えることが可能になり、録音したループはUSBドライブに保存することもできます。
●Split Aux
モノAuxセンド機能。ステレオAuxセンドがより多機能に。Aux出力は2つのモノラルのAuxセンドにも設定可能で、エフェクトループやエンヴェロープのトリガーなどに使用することができます。
●Detuning
ディチューン機能。シンセサイザーの設定内に新しいディチューン機能が追加。細かい単位でデチューニングができます。不調和なドローンサウンドのプロジェクトにも最適です。
マイクの方はグーズネック式のSennheiser Evolution e608やBeyerdynamicのTG i57といったダイナミック・マイクをベルにクリップで挟み込みます。もしくはSG SystemsのLDM94をベルのリムに引っ掛けても面白い(ミュートは使えないけど...)。Bastl InstrumentsのThymeはTX6の 'Send' 出力からステレオのまま 'Return' としてステレオでチャンネルに返しております。このTX6が優れているのは、ミニプラグの各入力がモノ、ステレオと差し込む状況において各々その切り替えをミキサーで認識して接続の '変換' をしてくれること。しかし、この6チャンネル分並ぶ3.5mmミニプラグの間隔はもうちょい空けてくれ。本機唯一のウィークポイントで 'ユーロラックモジュラー' のパッチケーブルを意識したのかも知れんが、ちょっと太めのプラグになると6チャンネル分挿さらないんだよな...(困)。そんなTX6の後段にもうひとつ 'おしゃれアイテム' としてカナダの工房、Dr. Scientistから登場の 'スペアナ' ことSpectrum Analyzerでビカビカと出力のダイナミズムを7列のLEDメーターで監視します。ま、これは実用性というより派手な 'ファッションアイテム' ですね(笑)。
そして以前に箱付きで購入したまま部屋に転がっていたプリアンプ機能を持つBarcus-berryの6チャンネルミキサー、Model M-6 Mixerを見付けたので、このM-6からTeenage Engineering TX-6へとバランス接続(XLRメス→3.5mmステレオミニ)をします。本機は1970年代初めに発売された9V電池で駆動するポータブルミキサーで、中身は手の込んだハンドワイアードの 'ポイント・トゥ・ポイント' によりいかにも古めかしい空中配線となっております。ちなみに上位機種である10チャンネルミキサー、Model M-10 Mixer(Treble、Bassの2バンドEQ搭載)の方は当時フランク・ザッパが愛用していたとのこと。しかし、当時からBarcus-berryは一貫して製品としての '作り' が雑だったんだな、という感想なのは変わりませんね...。あのマウスピースに穴を開けて接合するピエゾ式ピックアップに対しても、ソレを着脱して保管するという発想がないから一年後に湿気で劣化したら '買い換え' を推奨?する使い捨て感覚...。ずっと 'エレアコの老舗' だったモノが現在まで生き残れなかった理由(細々と継続してますけど)もなんとなく分かりますヨ。安価で煩雑なセッティングを嫌うお手軽ユーザー向けの製品が信条です(苦笑)。
あくまで 'ライン・ミキサー' であるTX6へ入力する前にマイクのゲインを稼ぐという意味で、こちらの一風変わったマイク・プリアンプを入手したので試してみます。Humpback Engineeringという日本の工房が製作するゲルマニウム・トランジスタ使用のブースター、と言って良いのかな?EQ的効果に当たる 'Focus' とそのブーストアップと共に 'Overtone' のツマミでサチュレーションの質感生成まで担ってくれる優れモノ、Sparkling Gemです。通常版?はいわゆるギターペダル仕様なのですが、わたしの手許にあるのは個人オーダーによるXLRのマイク入出力仕様ということでマイクプリの機能に準じておりまする。正確には 'Overtone' で中低域の倍音量、'Focus' は超高域の倍音量を各々調整して '倍音の密度' を生成変化させるというエンハンス的効果を狙ったモノと言えば良いでしょうか。しかし、この動画のタイトルはネタでやってるのかな? 'Kentauros' ってなんなんだ?。コレは日本人にしか分からない〜(苦笑)。そして、ピエゾによる 'マウスピース・ピックアップ' 使用にあたって必須の唯一無二なアイテム、NeotenicSound AcoFlavor。ホント、こういうエフェクターって今まで無かったんじゃないでしょうか。というか、いわゆる ' エレアコ' のピックアップの持つクセ、機器間の 'インピーダンス・マッチング' がもたらす不均衡感に悩まされてきた者にとって、まさに喉から手が出るほど欲しかった機材がコレなんですヨ。そもそも本機は '1ノブ' のPiezoFitというプロトタイプからスタートしており、それをさらにLimitとFitの '2ノブ' で感度調整の機能を強化した製品版AcoFlavorへと仕上げ始めたのが2017年の暮れのこと。そのいくつかの意見を反映すべく微力ながらお手伝いをさせてもらったのですが、多分、多くの 'エレアコ楽器' のピックアップ自体が持つ仕様の違いからこちらは良いけどあちらはイマイチという感じで、細かな微調整を工房とやり取りしながら煮詰めて行きました。当初、送られてきたのはMaster、Fit共に10時以降回すと歪んでしまって(わたしの環境では)使えませんでした。何回かのやり取りの後、ようやく満足できるカタチに仕上がったのが今の製品版で、現在はLimit 9時、Master 1時、Fit 11時のセッティングにしてちょうど良いですね。ちなみに本機はプリアンプではなく、奏者が演奏時に感じるレスポンスの '暴れ' をピックアップのクセ含めて補正してくれるもの、と思って頂けると分かりやすいと思います。その出音以上に奏者が演奏から体感するフィードバックの点で本機の 'あると無し' じゃ大きく違い、管楽器でPiezoBarrelなどのマウスピース・ピックアップ使用の方は絶対に試して頂きたい逸品です。そう言えば以前、PiezoBarrel主宰のスティーヴさんに下手な英語で本機の 'プレゼン' 含めオススメしたのだけどプリアンプと勘違いしたのか、このピックアップはSSLコンソール(スタジオにあるでっかいミキサー)のEQやヘッドアンプを参考にした内蔵のGainツマミ調整だけでもそのまま使えるよ、ただAcoFlavorのデザインは良いね!という '評価' をもらってしまった(苦笑)。やはり言葉だけでは伝わらず、これは使ってみて初めてその '威力' が体感出来るものだと思うのですヨ。ちなみにPiezoBarrelピックアップにはミニ・ドライバーで調整するGainツマミがあるのですが、このAcoFlavor使用の場合はそのGainをフルにして本機のMasterでピックアップの調整を行います。具体的な使い方としては、ピエゾの感度調整であるFitと出力レベルのMasterが相関関係にあること。そもそも 'Acoustic Pickup Signal Conditioner' の名でピエゾのクセともいうべき過剰なレスポンスをフィルタリングすることから始まったそのコンセプトは、ピックアップのタッチと音量の増減、そこからマイクとの距離による '近接効果' をシミュレートすることにあります。リミッター的効果のLimitはそのタッチのバラ付き具合を抑えて奏者の弾き具合に効果をもたらします。聴き手より弾き手にとって一助となる絶大な効果をぜひ体感して頂きたいですね!(モニターとして参加したわたしの意見も多少入っております...笑)。ちなみに2022年〜現行版では、一部パーツの変更と共に各アコースティック楽器に対する入力感度とよりレスポンスとしての '生々しさ' の演出を見直した 'マイナーチェンジ' が行われました。動画ではそれを新旧各々のヴァージョンで弾き比べているのですが、あくまで従来の 'Ver.1' からそのまま触るツマミを変えず反映させたところにこのAcoFlavorの完成度の高さが伺えます。いっぺいさん、お一人の製作で大変でしょうがいつまでも市場にあることを願っております。
これまでの 'ヴォイスシンセ' モジュールを中心にした要塞のような足下から一転、というかもう一台手許にあるチェコの工房、Bastl InstrumentsのThymeとTeenage Engineeringの '手のひらサイズ' なデジタル・ミキサーTX6を中心としたポータブルな環境を構築しました。近年のコロナ禍と戦争による半導体不足の煽りを受けて早々に 'ディスコン' となってしまいましたが(涙)、ああ、こういう '変態の発想' がまた人知れず時代の彼方に消えていってしまうかと思うとやり切れないなあ。ちなみにわたしの足下には、このTyhmeにMu-Tronの名機Octave DividerのクローンであるSalvation Mods Vividerなど2つもチェコ製品が置いてあります(笑)。とりあえずご新規さんがこの面白さを体感出来ないのは残念ですけど、本機の真ん中に整然と並ぶDelayセクション3つのツマミCoarse、Fine、Spacingをテープの 'バリピッチ' の如く操作してループ・サンプラーからTape SpeedとFeedback、Filterで変調させながらフレイズを破壊・・これで電気ラッパはもちろん、取るに足らない具体音の 'サンプル' ですら新たなイメージで若返りますヨ。そして本機を象徴するもうひとつのRobotセクションではFM変調の如く金属質なトーンへと変調し、それを真下にズラッと並ぶ6つの波形とエンヴェロープ、外部CVやMIDIからの操作と同期・・もちろんこれらのサウンドを8つのプリセットとして保存と、ここでは説明しきれないほどの機能満載。ちなみにマニュアルは50ページ強もあるのだ...(汗)。ホントは本機を16 Second Digital DelayとMIDIクロックで同期させたいのだけど(Thymeをスレイヴでしか使えんのが残念)、残念ながらエレハモ側のMIDI端子が隠れてしまって繋げられません(涙)。とにかく本機はやることいっぱいあって(苦笑)、各ボタンやツマミに複数パラメータが割り当てられることからその '同時押し'、'長押し' といったマルチに付きものの大嫌いな操作満載で大変・・ではあるのだけど、大事なのはその膨大な機能を覚えることじゃなくコレで '何をやるのか?' ってこと。
そのThymeも衝撃のデビューから7年、コロナ禍と戦争による半導体不足により 'ディスコン' となったものの高騰する中古市場と一部のマニアたちによる熱いエール?がチェコの天才たちに届いたのか去年、ついに 'Thyme+' として復活しました!。基本的な機能はそのまま?によりスタイリッシュなデザインとして洗練されました。大きなツマミに初代のTRSフォン1つによるステレオ入力もちゃんとデュアルのステレオ仕様に変更、しかしMIDIがTRSミニプラグのスレーヴ入力のみで本機の特徴でもあった木製サイドパネルは廃止されちゃったのが残念なり...(Thymeをマスターで走らせるユーザーが少なかったんだと思う)。とりあえず、本機の '面白さ' が去年ようやく復活したことを素直に祝いたい!。
さて、これら 'ポータブルセット' をZero Halliburtonのアルミ製小型アタッシュケース(W300mm × H120mm × D230mm 重量1,300g)に詰め込んでみました!さらに、これはマニアックな 'Zero' がまだ付かない1959年以前の 'Halliburton' 時代(赤いフォントから '赤ハリ' とも呼ばれる)に製造されたヴィンテージケースとなりまする。なんともレトロなアンティーク調のパープル生地内装が素晴らしい...。Zero Halliburtonのアタッシュケースといえば、あのアポロ月面着陸の宇宙飛行士が採取した '月の石' を持ち帰る為の月面採取標本格納器(標準ケース内側を少し改造しただけのモノ)として御用達となったことは有名な話です。さて、今回のセッティングはワウペダルも使いたかったんだけど、まあ、Thyme中心のセットアップで空間系(ディレイ、リヴァーブなど)はTX6に任せる超シンプルなコイツでいいかな、という気持ちで組んでみました。TX6には他にも面白いエフェクツが用意されており、あれこれモノ増やし悩まなくてもいい...。あ、今回この局限なサイズ(W300mm × H120mm × D230mm)に各種機器を詰め込むべく、省スペースゆえ場所を取るプラグ分の 'デッドスペース' は 'L型' 必須なのです。ここでは3.5mmステレオミニプラグの変換アダプターを4つ用意しました。そのうち2つはDr. ScientistのSpectrum Analyzerからの入力と出力に1つずつ、そしてTX6のメイン出力とSend出力に各々1つずつセット。とりあえず、この3.5mmステレオミニプラグはヘッドフォンなど需要があるので良いのですが、一方の 'L型' TRSケーブルやアダプターというものが...市場のどこを探してもないのだ。一部、Oyaideから小型のTRSフォン 'L型プラグ' というのが販売されており自作する人のための 'DIYアイテム' となっております。などと、思っていたら唯一発見したのがClassic Proから 'L型TRSフォン' の変換アダプターASS221Rを発見!さっそく取り寄せてみたところ...デカッ、いやXLRキャノンくらいのサイズでこりゃダメだ(汗)。というか、TSモノフォンのL型アダプターでもこんなデカくないぞ、と(苦笑)。とりあえず、悩ましかったThymeの 'TRSフォン'ステレオ 端子に対し、奇跡的にもDr. ScientistのSpectrum Analyzerに付属で入っていた '3.5mmミニプラグ→TRSフォン' ケーブルは柔らかいプラグで40cmの短い長さもありそのまま使うことにしました。とにかく、選択肢のほぼない '変換ケーブル' だらけで長さもまちまちな '有りモノ' ばかりだからこれは何とかしたい...(悩)。
ちなみにこのThymeの 'In/Outフォン端子' について苦言をひとつ。一部のフォン製品に対してなんですが奥まで挿さらず1mmほど空いた状態になっちゃんうんですよねえ(困)。Dr. Scientist付属で入っていた '3.5mmミニプラグ→TRSフォン' ケーブルも同じく1mm空いちゃいます。う〜ん、こういうところで(あまり言いたくはないけど) '辺境' チェコ製品とその他、欧州製品との整合性のズレのようなものを感じますね...。チェコのフォンって標準よりちと短いのかな?(苦笑)。一方、困った時の強い味方、CABLECRAFT音光堂さんのAmazonショップからMogami2893を用いたXLRメス→3.5mmミニプラグL型変換ケーブルを発見!それの短い35cmのヤツを注文しSparkling GemからTX6へと無事接続。そしてもう一点、この古いHalliburtonケース使用の注意点として、開けた時に支えの役目を果たすヒンジが軽く蓋に触れただけでパタッと閉じてしまう困りモノ...そう、ケースからAcoFlavorとTX6やアンプへと向かうべくハミ出すケーブルが各々挟まってしまうのです。仕方がないので急遽、クリップをケースの淵へ挟み途中で閉まるのを防止...ただ、傷付くんですよね(何か良いストッパーが欲しい)。今回のセッティングでアタマを使ったのはいわゆる 'デッドスペース' と言われる機器間の入出力部と邪魔な各種プラグをどう配置するか、ということ。理想的な配置であれこれケース内を移動させながらThymeとSparkling Gem各々の入出力部を '向かい合わせ' にすることで、ちょうど左右対称的にギリギリ確保することで無事収納。正直、Oyaideで全てのケーブルをオーダーしてスッキリさせたいなあ...。
上でご紹介したHumpback Engineeringのプリアンプ、Sparkling Gemにも顕著ですが、最終的なラインレベルによる 'ステレオアンプ' に対してエッジ、質感生成の '演出モノ' として最終段に入れてみたのがこのStrymon Deco。本機はサチュレーションやテープコンプの '質感' をDSPテクノロジーにより再現した 'tape saturation & double tracker' であり、現行品はその音質をブラッシュアップしてMIDIにも対応したV2にマイナーチェンジしております。これまでの 'Saturation' の飽和感と 'Doubletracker' セクションであるLag TimeとWobbleの 'テープ・フランジング' に加え、新たに搭載された 'Cassette' モードが好評とのこと。このStrymon各製品は楽器レベルからラインレベル、'インサート・ケーブル' を用いることでステレオ入出力にも対応とあらゆる環境で威力を発揮します。
Old Blood Noise EndeavorsからXLRマイク入力&DIに 'マルチ・エフェクツ' を搭載した管楽器奏者垂涎の逸品Mawを試してみました(ずっとこの機器の存在が気になっていたのだ)。このMawの構成はChannel Aにオクターバーとモジュレーション、空間系、Channel Bにモジュレーションと空間系をそれぞれ10種配置、このA、B間にその他コンパクト・エフェクター(例えばワウペダルなど)を組み合わせるべく 'センド・リターン' を搭載して、さらにToneツマミからSaturationまで個別に用意するなど至れり尽くせりな作りが嬉しい。ちなみにMawのXLR入力はファンタム電源には対応しておりません(ダイナミックマイク使用に適しています)。
そういや、ここ半年近く新製品のペダル買ってない...ヤバイなあ(って何が!?笑)。まあ、それほど触手が伸びなかった&部屋が手狭になってきたので意識的に物欲を控えていたのだけど、このワケわからんブツは 'ぶっ壊れたファズ' というべき代物ながらその放出されるサウンドがかなり格好良し。シンプルなパラメータだけどその説明は難しい...ということで取説から頂きましょう。
R - Tuneパラメータの可変幅を切り替える。(1,ノーマル、2.拡張)
F - Wetにかかるヴォイスフィルター(300〜3kHz)のOn/Offを切り替える。(0.Off、1.On)
T - 1/8インチミニプラグCV Input
Tune、Shift、Drive、Rコントロールは非常にインタラクティヴである。
Driveツマミを高くすると多くのアーティファクトが生成される。
Tuneは最も広く非線形なコントロールであり、最小から最大まで大きな可変幅を持つ。
TuneとShiftは相互に依存したパラメータであり、両方を微調整するとサウンドが変化する。
Rスイッチは可能性のパレットを切り替える。
Wetは意図的に位相がずらされており、WetとDryがフィルターにより相互作用を行う。
元の信号がWet側に存在する場合、Dryを加えると原音がキャンセルされ歪みの
アーティファクトだけが残る。同じ条件でフィルターを加えるとバンドパスフィルターの
Midスウィープのように変調する。
え〜っと、どうでしょう?わかりましたか?わたしはわかりませんでした(笑)。とにかく動画を見れば、TuneとShiftを微調整することでラジオのチューニングを弄るかのようにジリジリとしたノイズが放出されます。
テクノと言ったらテクノポップからエレクトロとシカゴハウス、ガラージュを経て隔世遺伝の如く1980年代後半に開花するレイヴやブリープの嚆矢としてのアシッドハウス、あのRoland TB-303のビヨビヨするビープな 'Bass Line' だったりするのです。それまでワゴンセールの中に在庫一掃の二束三文で放り込まれていたTB-303が、なんと(大げさではなく)一夜にして最強の 'アシッドベース' として高騰、まさに祭壇に祀られる勢いでダンスフロアーに君臨するのです。そんな影響下で出てきた日本を代表するユニット、電気グルーヴの石野卓球さんの 'Acid愛' となんとShin's Musicがコラボして完成させてしまったのがこちら、真っ黄色に眩しいAcid Driveだ!。アシッドハウス以降のTB-303改造で人気を博したのが 'Devil Fish' と呼ばれる強烈なディストーション内蔵のModで、本機Acid Driveはそのサウンドに対するリスペクトとなっておりまする。ただ、ギターやベースなどバンド層なのかテクノ層を狙ったモノなのか、イマイチ '宙ぶらりん' 的キワモノ?で話題にはなってないのが惜しい...(汗)。そんな電気グルーヴといえば 'デトロイトテクノ・マナー' な一曲として、五島良子さんのウィスパーヴォイスと共にひたすら連呼する 'Nothing's Gonna Change' をどーぞ。お互いが重力で引き寄せ合いながら軌道を周り、まるで月と地球のように何も変わらないこの関係...卓球さんのヴォコードする感じ、好きだわ〜 "My heart is like a satellite of yours..."。
KorgのMini Pops 3を買ったゾ。ええ、ダブ・マスターの奇才、リー・ペリーのBlackArkスタジオにGibsonのMaestro Rhythm 'n Sound for Guitarと積み重ねて鎮座していたモノへの憧れです。正確にはMini Pops 3のUni-VoxへのOEMであるSR-55、MaestroはG-2がBlackArkスタジオの所有品で、わたしの手許にあるのは本家KorgのMini Pops 3とG-1になりまする。ちなみにG-2の方にはトレモロのEcho Repeatに加え、1969年にして先駆的な機能が人知れず搭載されたことは特筆したいですね。それが1972年のMusitronics Mu-Tron Ⅲに先駆けて製品化された世界初のエンヴェロープ・フィルター、Wow Wowなんです。世界初のオートワウ?ということでは1968年のHoney Special Fuzzと争いたいところですが、あちらは周期的なフィルタリングでこちらはエンヴェロープの感度を 'ワンノブ' で調整出来るということでビミョーに違うのですヨ。このG-2のユーザーとしてはエディ・ハリスのグループに在籍したベーシスト、メルヴィン・ジャクソンがLimelightからのアルバム 'Funky Skull' でジャケットにもEchoplexと共に堂々登場。全編、そのトボけた風味の 'Wow Wow' 効果をファンキーでオクターヴな音色にブレンドする変態的ウッドベースを奏でております。個人的には 'エフェクター史ベスト5' に入るほど大好きなペダル(ユニットと言うべきか)ですね。リズム、アンサンブル、組み合わせ、デザイン...そのエフェクター黎明期ゆえのムチャな設計者の過剰な思想が溢れていると思いますヨ。本機には多くの思い出もあり、都内楽器店での捜索から入手、そして一度手放し再度コレクションするという経緯があるほどなのです。最初は恵比寿の怪しげな蚤の市的雑貨屋?にG-2が置いてあり、売ってくれと言うも一部動作不良から直して売るの一転ばりで願い叶わず...学生運動崩れの頑固なヒッピー風店主でした(苦笑)。その後、某ノイズアーティスト放出の委託品であるG-2をゲット、続いてスペースエイジ、ミッドセンチュリーモダンな家具を扱うお店でなぜかG-1も見つけてゲットしましたが一度コレクター終了宣言して全て放出...。そして現在の再コレクションとなりまする。というか、Gibsonは2022年に '復活Maestro' で展開したBossに倣ったようなつまらんラインナップなどヤメて本機の復刻をMIDI、ループ・サンプラー内蔵の仕様でやってくれ。そういう意味では、2004年に 'エレハモ' が限定でやった16 Second Digital Delayのブラッシュアップした復刻は最善のやり方でしたね。
しかし、このビザールなトリガーするパーカッション・ユニットも今や3000ドル超えの高騰でもはや簡単には手の出せないシロモノでございます。そんな需要?を見越してか、珍品を愛する奇特な集団というべきカナダの工房、Templo DevicesからT2 Multi-Effectとして立派なクローンを完成させました!。あえてMIDIクロックやループ・サンプラー機能とか付けずオリジナルのレイアウトに則り、その '出自' に敬意を評しているのも潔い。こーいう機材と向き合ったときに "うわ、こりゃ使えねえ〜" と放り出すんじゃなく "何だコレ?一体何が出来るんだろ?" というマインドへと変えていって欲しいですね。これまで日本は優秀な電子楽器を作っても、日本から音楽の '現場' を生み出しインフルエンスのように世界へ伝播したものはありませんでした。Roland TR-808、TB-303、Casiotone MT-40、Akai Professional MPC-60、Technics SL-1200 Mk.Ⅱ...これらが想像を上回る発想で '剽窃と誤用' により世界の音楽市場を '占拠' したのは貧しい層の黒人たちだったのです。一方、日本では間違った使い方をしないよう丹念に取り扱い説明書を読み込み、発売された製品のスペックから "何が出来るのか?" より "何が出来ないのか?" というネガティヴなアラ探しに向かう気質が強いように思います。本物、定番、王道...いま一番捨てて欲しい言葉であり、固執した価値観と排他的思考に揺さぶりをかけるのがこの 'Rhythm 'n Sound for Guitar' が叩き付けてくる挑戦状なのです。一方、中古でなんと箱付き状態(というか販売店のデッドストックのまま40年近く眠ってた状態!)で見付けたのが1980年代のNextエフェクツシリーズ中の珍品、Clapper CL-1700。密封してピカピカの筐体はもちろん、粘っこいトルク感のツマミなどずっと回していなかったことが良く分かります。当時、コレの元ネタともいうべきBossのこれまた珍品であるHC-2 Hand Clapperという製品がありました。OEMのキットとしてAmdekブランドからも販売されていた本機は当時のブームであるディスコブギーのサウンドメイクに欠かせない 'ハンドクラップ音' をトリガーで鳴らすものでして、ドンパン!ドンパン!という例のアレですね(笑)。基本、人力でドラムパッドやスイッチ踏む度に 'パン!'とトリガーさせるほか、外部からのトリガー信号に同期できるHC-2と同等の機能を含むCL-1700。まさにショボさの極致なんですけど、いや、こーいう 'ワンパターン' に力注いじゃったような擬似的なヤツが好きなんだよな。スイッチ下にピエゾの圧電素子を簡易的に組み込んだこのNext Clapper、さすがにショボすぎたのかYoutubeに動画はありませんでした...(涙)。
さて、そんな 'Rhythm 'n Sound for Guitar' をトリガーすべくHikari Instrumentsの8ステップ・シーケンサーAnalog Sequencer Ⅱとユークリッド・シーケンサーのEucrhythmをスタンバイ。その '音源' として同ブランドのPing Filterでトリガーさせてやるのですが、その名の如く "ピン!" と鳴る磨き上げた球のような質感がたまりません。Analog Sequencer Ⅱは各ステップごとにCV入力があり、その各ステップ個別に外部のCVから制御することが可能です。上昇、下降各々の調整と独立したGride(ポルタメント)を内蔵しているので、ピッチ上昇のみのポルタメント、Gateを入力すればARエンヴェロープとしても使えますね。Gate出力はPWM(内部クロック時のみ有効)によりGateの長さが調整可能です。とりあえずルーレットのようにクルクルと回るLEDがカワイイ。そしてグリッチ系のリズムに威力を発揮するユークリッド・シーケンサーのEucrhythmは 'デュアル' ということで2つのシーケンスを搭載し、各々StepsとPulesの2つのツマミによりループの長さと1ループの出力数を設定してポリリズミックなリズムを生成。Pulse Width横のスライダーでGateの長さの変更、Gate Delayによりクロックの1/16のタイミングでその出力が遅延してクロックからズレたリズムを吐き出します。またこれらはCVコントロールが可能。A、Bの2チャンネル出力、AとBのORとAND(論理和)のロジック出力により合計4種類のパターンを生成し組み合わせることで様々なリズムを堪能することが出来まする。このユークリッド系Eucrhythmは内部クロックを備えていないので、Analog Sequencer Ⅱからクロックを貰って駆動させるかたちとなります。そして、AttackとDecayのエンヴェロープをコントロールすべくTriple ADのモジュールも入れておこう。ここでのBastl Instruments Hendriksonはその 'Rhythm 'n Sound' をインサートすべく用意し、さらにそこから怪しげなVUメーターも眩しいError Instruments Broken Tape Trackerと 'スタッター系' モジュールの2hp Freezでグシャグシャに崩壊させます...(笑)。
"「だいこんの花」とか、テレビ番組を週3本ぐらい持ってました。ハンダごてを使ってパッチコードを作ったりもやってましたね。そのころから、クラビネットD-6というのや、電気ヴァイオリンがカルテット用に4台あった。あとラディック・シンセサイザーという、フタがパカッと開くのがあって、これはワウでした。ギターを通すと変な音がしてた。それと、マエストロの 'Sound System for Woodwinds' というウインドシンセみたいなのと、'Rhythm 'n Sound for Guitar' というトリガーを入れて鳴らす電気パーカッションがあって、これをCMとかの録音に使ってました。こういうのをいじるのは理論がわかっていたんで普通にこなせた。"
これは作曲家の富田勲氏の下、後にYMOのマニピュレーターとして活躍する松武秀樹氏が下積み期に眺めた富田氏の制作環境に対する述懐です。特に松武氏の代表作である日本テレビのドキュメント番組 '驚異の世界' のテーマ曲は、まさにプログレのELPも真っ青な(笑)変拍子バリバリのカッコ良い一曲!。そのデモ音源では一転して早過ぎたテクノポップとして 'Rhythm 'n Sound' 全開の素晴らしい内容となっておりまする。う〜ん、こっちのヴァージョンはYMO時代に再現しても良かったかも、という出来栄えですねえ。
これまで基本的には 'リファイン' によるリイシューで、それとは別に個別オーダーとしてヴィンテージ・スタイルでの '特注品' を手がけていたBuchla Music Easel。ヴィンテージのオリジナルは1973年にわずか25台が製造され、その後は個別オーダー?への対応をすべく1978年まではカタログに記載されていたようです。最近ではタッチセンサー型鍵盤をカットしたEasel Commandへと生産体制は移りましたが、なんと本機誕生50周年を記念して 'オリジナル風リイシュー' (MIDIなど現代的 'リファイン' の機能はそのまま)を限定復刻するとのこと。これまでの黒いポリカーボネード樹脂によるアタッシュケースから粉体塗装を施した青いアルミ製ケースに組み込み、Model218のタッチセンサーTouch Activated Voltage Sourceのプレートが金色のメタリックなヴィンテージを踏襲したものになっております。そしてヴィンテージならではの監視用の電圧メーター装備、と。これまでにも 'Roman Clone' と呼ばれるEric Loganにより組み込まれたヴィンテージ復刻ものはありましたが、やっぱこのヴィンテージのスタイルは格好良い。ほんとBuchlaは最初からこのカタチで出せよ、と。そんなBuchlaを代表するMusic Easelは、オリジナル機が1973年から1980年代半ばまで製作された超レアもの。同時期のMoogやArp、EMSなどに比べてBuchlaの製作する 'モジュラーシンセ' は一部電子音響作家、大学などの教育機関を除いてほぼ市場で流通することのないものでした。昨今の 'ユーロラック・モジュラーシンセ' の世界で基本的とされるMoogの構成に対して '西海岸系' と呼称されるモジュールには、その同地に拠点を置いていたBuchlaの構成にインスパイアされていることを意味します。以下は最初に復刻されたMusic Easelの対談形式によるレビューとして、'サウンド&レコーディングマガジン' 2015年4月号でエンジニア、渡部高士氏(W)とマニピュレーターの牛尾憲輔氏(U)によるもの。こちらは前モデルの 'Music Easel 2016' 版のレビューとなりまする(基本構成は一貫して同じだけど)。
- まずお2人には、Buchlaシンセのイメージからお伺いしたいのですが。
W - 珍しい、高い、古い(笑)。僕は楽器屋で一回しか見たことがないんだよ。当時はパッチ・シンセを集め始めたころで、興味はあったんだけど、高過ぎて買えなかった。まあ、今も買えないんだけど(笑)。
U - BuchlaとSergeに関しては、普通のシンセとは話が違いますよね。
- あこがれのブランドという感じですか?。
U - そうですね。昨今はモジュラー・シンセがはやっていますが、EurorackからSynthesizer.comなどさまざまな規格がある中で、Buchlaは一貫して最高級です。
W - ほぼオーダーメイドだし、価格を下げなくても売れるんだろうね。今、これと同じ構成のシンセを作ろうとしたらもっと安く組めるとは思うけど、本機と似た構成のCwejman S1 Mk.2も結構いい値段するよね?。
- 実際に操作してみて、いかがでしたか?。
W - Sergeより簡単だよ。
U - 確かに、Sergeみたいにプリミティブなモジュールを使って "これをオシレータにしろ" ということはないです。でも、Music Easelは普通のアナログ・シンセとは考え方が違うので、動作に慣れるのが大変でした。まず、どのモジュールがどう結線されているのかが分からない・・。
W - そうだね。VCAが普通でないつながり方をしている。
U - 音源としては2基のオシレータを備えていて、通常のオシレータComplex OSCの信号がまずVCA/VCFが合体した2chのモジュールDual Lo Pass Gate(DLPG)に入るんですよね。その後段に2つ目のDLPGがあって、その入力を1つ目のDLPG、変調用のModulation OSC、外部オーディオ入力から選べるようになっている。
W - だから、そこでComplex OSCを選んでも、1つ目のDLPGが閉じていると、そもそも音が出ない・・でも、パッチ・コードで結線しなくてもできることを増やすためにこうした構成になっているわけで、いったん仕組みを理解してしまえば、理にかなっていると思ったな。Envelope Generator(EG)のスライダーの数値が普通と逆で、上に行くほど小さくなっていたのには、さすがにびっくりしたけど。
U - でも、こっちの方が正しかった。
- その "正しい" という理由は?。
W - Music EaselのEGはループできるから、オシレータのように使えるわけです。その際、僕らが慣れ親しんだエンヴェロープの操作だと、スライダーが下にあるときは、例えばアタックならタイムが速く、上に行くほど遅くなる。これをオシレータとして考えるとスライダーが上に行くほどピッチが遅くなってしまうよね?だからひっくり返した方がいいと言うか、そもそもそういうふうに使うものだった。時代が進むにつれてシンセに独立したオシレータが搭載されるようになり、エンヴェロープを発振させる考え方が無くなったわけ。
- 初期のシンセサイザーはエンヴェロープを発振させてオシレータにしていたのですか?。
W - そう。Sergeはもっとプリミティブだけどね。最近のシンセでも、Nord Nord Lead 3などはARエンヴェロープがループできますよ。シンセによってエンヴェロープ・セクションに 'Loop' という機能が付いているのは、そうした昔の名残なんでしょうね。Music Easelはエンヴェロープで波形も変えられるし、とても面白い。
- オシレータの音自体はいかがでしたか?。
W - とても音楽的な柔らかい音がして、良いと思いましたよ。
U - レンジはHigh/Lowで切り替えなければならないのですが、音が連続して変化してくのがいいですね。あとEMSのシンセのように "鍵盤弾かせません!" というオシレータではなくて、鍵盤楽器として作られているという印象でした。
W - EMSは '音を合成する機械' という感じ。その点Music Easelは '楽器' だよね。
U - 本機ではいきなりベース・ライン的な演奏ができましたが、同じようなことをEMSでやるのはすごく大変ですから。
W - 僕が使ったことのあるEMSは、メインテナンスのせいだと思うけど、スケールがズレていたり、そもそも音楽的な音は出なかったけどね。この復刻版は新品だからチューニングが合わせやすいし、音自体もすごく安定している。
U - 確かに、'Frequency' のスライダーには '440' を中心にAのオクターヴが記されていて、チューニングがやりやすいんですよ。
W - そもそも鍵盤にトランスポーズやアルペジエイターが付いていたりと、演奏することを念頭に作られている。
- オシレータのレンジ感は?。
W - 音が安定しているからベースも作れると思うよ。だけど、レゾナンスが無かったり、フィルターにCVインが無かったり、プロダクションでシンセ・ベース的な音色が欲しいときにまず手が伸びるタイプではないかな。
- リード的な音色ではいかがですか?。
W - いいんじゃないかな。特にFM変調をかけたときはすごくいい音だったよ。かかり方が柔らかいと言うか、音の暴れ方がいい案配だった。普通、フィルターを通さずにFMをかけると硬い音になるんだけど、Music Easelは柔らかい。
U - 僕はパーカッションを作るといいかなと思いました。
W - 'ポコポコ' した音は良かったよね。EGにホールドが付いているから、確かにパーカッションには向いている。でも、意外と何にでも使えるよ。
- 本機はオーディオは内部結線されていて、パッチングできるのはCVのみとなりますが、音作りの自由度と言う観点ではいかがですか?。
U - 信号の流れを理解すれば過不足無く使えますが、例えばオシレータをクロスさせることはできないし、万能なわけではないですね。
W - でも、他社の小型セミモジュラー・シンセより全然自由度は高いよ。'パッチ・シンセ' である意味がちゃんとある。
U - 確かに、変なことができそうですね。
W - Pulser/Sequencerのモジュールも入っているし、いろいろと遊べそうだよね。パッチングの色の分け方も分かりやすい。あとバナナ・ケーブルって便利だね!パッチング中に "あれどこだっけ?" と触診するような感じで、実際にプラグを挿さなくても音が確認できるのはすごく便利。ケーブルの上からスタックもできるし。
U - 渡部さんのスタジオにはRoland System 100Mがありますが、Music EaselでできることはSystem 100Mでも実現可能ですか?。
W - できると思う。System 100Mにスプリング・リヴァーブはついてないけどね。
- 復刻版の新機能としては、MIDI入力が追加されて、ほかのシーケンサーでMusic Easelをコントロールできるようになりました。
U - 僕が個人的に面白いと思ったのは、オプションのIProgram Cardをインストールすると、Apple iPadなどからWi-Fi経由でMusic Easelのプリセットを管理できるところ。ステージなどで使うには面白いと思います。
W - それはすごくいいアイデアだね。
- テスト中、お2人からは "これは入門機だね" という発言が聞こえましたが。
W - 独特のパラメータ名やしくみを理解してしまえば、決して難しいシンセではないという意味だよ。よく "モジュラー/セミモジュラー・シンセは難しそう" という人がいるけど、ケーブルのつなぎ方さえ分かってしまえば、完全に内部結線されているシンセより、自分が出したい音を作るのは簡単だからね。
U - 1つ目のDLPGにさえ気付けば、取りあえず音は出せますしね。
W - Music Easelで難しいのはオシレータとDLPGの関係とエンヴェロープだね。でも逆に言えば、特殊なのはそこだけとも言える。エンヴェロープが逆になっているのを発見したときは感動したな。シンセの歴史を見た気がしますよ。
U - 音作りの範囲はモノシンセに比べたら広いし、その領域がすごく独特です。
W - このシンセの対抗機種はArp OdysseyやOSC Oscarなどのモノシンセだよ。シーケンサーでSEっぽい表現もできるし、8ビット的な音も出せる。もう1つMIDIコンバータを用意すれば、2オシレータをパラで鳴らしてデュオフォニックになるし。
- ちなみにモジュラー・シンセというと、ノイズやSEというイメージが強かったりしますよね。
U - 確かに、モジュラー系の人はヒステリックな音色に触れがちですよね。
W - 僕はポップスの仕事でもガンガン使っていますよ。モジュラー・シンセはグシャグシャした音を作るものだと思っている人も多いようですが、アナログ・シンセの自由度が広いだけ。まあでも、オシレータに変調をかけていくと、ヒステリックな音にはなりがちだよね。
U - 変調を重ねていく方向にしか目が行かないということもあると思います。
W - でもモジュラー・シンセで本当に面白いのはオーディオの変調ではなくて、CVやトリガーをどうコントロールするかなんだよ。その意味でMusic Easelはちゃんとしている。
- 本機をどんな人に薦めますか?。
W - お金に糸目を付けず、ちょっと複雑なモノシンセが欲しい人(笑)。
U - 小さくてデスクの上に置けるのはいいと思います。例えばラップトップだけで作っている人が追加で導入するシンセとしてはどうですか?。
W - いろいろなパートを作れていいんじゃないかな。これ一台あれば演奏できるわけだから、その意味で楽器っぽいところが僕はいいと思ったな。鍵盤付きだし、音も安定している。
U - 確かにこれ一台で事足りる・・Music Easelが1stシンセで、"俺はこれで音作りを覚えた!" という人が出てきたら最高ですね(笑)。
W - で、ほかのシンセ触って "エンヴェロープが逆だよ!" って怒るという(笑)。
- BEFORE -
- AFTER -
さて、代理店であるFive Gの商品ページを見ると 'Modern' と 'Retro' の2機種展開による通常版に加え、50周年記念の限定ヴィンテージ仕様はアナウンスされた時点で約160万...(後述しますが増額します...)。こりゃ高えなあ(汗)、と思いつつ待てど暮らせどの1年による月日を経て...なんと買い替えちまった(汗汗)。ええ、随分と身の回りのモノを処分しましたヨ。この待たされた月日の中で当然、為替と円安の影響から当初の予算は乱高下しましたけど(涙)、その間に些細な?仕様変更なのかようやくやって来たMusic Easelのケースを開けた途端目に入って来た丸型のVUメーター...おいおい、なんなのコレ!?(呆然)。当初、メーカーからアナウンスされていた四角い形のVUメーターがなぜか丸型VUメーターって...ダ、ダサい(沈黙)。あのアタッシュケース型シンセサイザーの名機、EMS Synthiにも備えられていた四角い形のVUメーターこそ皆が求めた '本来の顔' でしょう!!!!!!!(怒)。これは 'メーカーあるある' の散々NAMMショーやYoutubeで見せびらかしてきたデモ機から量産体制に入ったことで、四角い形のVUメーターが確保出来なかったことによる勝手な仕様変更らしい...。てか、そもそも受注生産なんだからまずオーダー分のVUメーターくらい確保しとくべきでは!?。いや、もちろん機能に問題はないんですヨ。ないんだけどあくまで1970年代のオリジナル(コレもいろんな仕様があり '正解' が分からない)に準じてたった一回だけの再生産モデル 'The 50th Anniversary' なんだから、そこは一番手を抜いちゃダメでしょ。とりあえず、こんな '陳情' を代理店のFive G様に穏やかな口調でお願いしてみたところ、お待ち頂いた上にこちらのアナウンス不足から仕様変更をお伝え出来なかったということで、なんとヴィンテージ風の格好良いVUメーターを探してきてもらい無償で換装して頂きました!。この粋な計らいに感謝しかありません(涙)。もう、これぞ大満足の世界で一台だけによる 'Music Easel 2024決定版' の完成です!。しかし、なんでBuchla本社はこんなセンスのない丸型VUメーターなんかにしちゃったかなあ?ほんと台無しだわ(謎)。この丸型VUメーター見てると今から20年くらい前、いわゆる廉価な '卓上真空管プリアンプ' としていくつか製品化されていた頃の時代を思い出す(皆さま、覚えてますかね?)。当時はレトロっぽいイメージだった丸型VUメーターのART Tube MP Studio V3、Presonus TubePre、真空管コンプのKorg TP-2...この安っぽいイメージが未だ横溢しております(好きな人スミマセンっ)。ちなみに当初、極東のオーダー分は欧米に比べ遅かったことから四角い形のVUメーターがこちらに行き届かなかった結果だと思っていたのですが、イタリアのユーザーが早々にほぼ新品状態の本機をReverb.comで出品していたのには笑ってしまった。多分、届いたケースを開けてガッカリしたに違いない...(苦笑)。
旋律打楽器のスティールパンということから、ここは叩いてシンセサイザーもトリガーしてみたい、ということでCVとエンヴェロープ・ジェネレータによる 'ユーロラック・モジュール' を物色してみます。あまり大仰なシステムにはしたくないのでモジュールのケースは4msのPod34Xをチョイス、JoranalogueのReceive 2とTransmit 2の各々6HPと10HP分にエンヴェロープでコントロールするCG ProductsのPeak+Holdを入れてみました。そして、もう一方のマイク側へは外部に用意したペダルや 'アウトボード' 類と連携すべく5HP分のスペースにBastl InstrumentsのHendriksonというモジュールをチョイス。コイツを導入することで手持ちの各種ペダルをインサートすることが可能となりまする。これでReceive 2からトリガーで出力してPeak+Holdをエンヴェロープ・フォロワーに変換、Buchla Music Easelを発音させていく流れ...という感じでしょうか。ちなみに電圧による動作の安定性から、Buchlaとのグラウンドを共通にするべくアースプラグをPeak+HoldのInput 2に繋ぎます。そんなユニークなモジュールを製作する工房、CG Productsを主宰するChristian Guenther氏は元々ジャズ・ミュージシャンということで、ラッパから各種パーカッションと電子機器によるパフォーマンスを自ら披露しておりまする。まるでブルーノ・スポエリかギル・メレのような立ち位置にいる人だな(笑)。
新調したスティールパンのピカピカなメッキと '鳴り' が眩しい〜!
やっぱ去年最高のお買い物はこのローテナーパンなのだ!。もう、そろそろこの動画もいいだろうとは思うのだが(汗)、とりあえず、スティールパンではかなりプログレッシヴなアプローチでやってるお2人だと思いますヨ。従来のモノよりリッチかつ重厚な響きのおニューなパンは、トリニダード・トバゴ出身で日本在住の名パン奏者、マニッシュさんとわたしの師匠で選んでもらった逸品です。毎年一回、故国から懇意のチューナーを呼び寄せ 'チューニング検診' を行うのですが、パンは頻繁な演奏や気温によりチューニングが狂うので調律師がチューニングメーターとハンマー片手に調整するのが習わしとなっております。わたしの師匠は複数のローテナーからダブルセコンド、ドラム缶丸出しなベースパンに至るまで錚々たる数のパンのチューニングを施したので出費も相当なものでした...(苦笑)。さらにこのパンに愛用するペダル内蔵型エコー、Eye Rock Electronics O.K. Delayも2台 '手許' にやってきました(もちろん '足下' で使うのは1台です...笑)。この手の 'ローファイ' な質感をシミュレートしたデジタル・ディレイに搭載されているのがPT2399というICチップであり、それを650msという短いディレイタイムながら筐体両側面にある2つの大きなホイールで原音→エフェクツのMixとRepeat、そしてペダル・コントロールをDelay TimeとフィードバックのRepeatsツマミ型スイッチで各々入れ替えることで全て足下により操作可能です。この今は無きテキサス州オースティンにあった工房からは、他にデイヴィッド・ギルモアがワウとエコーのフィードバックを組み合わせ音作りする 'カモメの鳴き声' サウンドをシミュレートしたエンヴェロープ・フィルターのGullmour Wahを製作するなど、かなりニッチな層に訴えていたのが面白かったですね。意外にどこの工房もフィードバックのリアルタイム操作でペダル内蔵型エコーってやらないんだよな(謎)。その代わりわたしが愛用するStrymon Brigadierもそうですが、一発踏んで発振させるフィードバック用スイッチ搭載のエコーペダルは市場に溢れてますけどね...。そんなO.K. DelayはJim Dunlop Crybaby筐体を利用しているものの、中身もしっかり作っているからかズシッとかなりの重量感がありまする。そんな 'アナログライク' なショートディレイでは去年、これまた '村田さん案件' だけど(笑)ノルウェーの工房Fjord Fuzz(フィヨルド・ファズ)のLokeと 'Chat GPT' により音決めをしたとされるデジタルリヴァーブのMimeを買った。その工房名からファズなど歪み系ペダルの多いラインナップにあって、本機はデジタルによる 'アナログライク' な往年のエコーを再現するということで、そろそろ市場で飽和する 'お腹いっぱい' な雰囲気がその仕様から漂ってくる...(苦笑)。しかし、そこは日本を代表する名レビュワーにして購買欲を刺激するプレイと商品説明能力の高さから安心安定のフーチーズ、村田善行氏に持って行かれます(笑)。スラップバックからタップテンポと最大400msのショートディレイによるコーラス効果は一転して80'sのニューウェイヴ風味(Devoとか弾きたくなるでしょ!)が漂い、入力ゲインを突っ込むとブースターにもなりエクスプレッション・コントロールによるディレイタイム変調の '飛び道具' なグニャグニャ具合まで多機能に対応(もうちょいディレイタイムは欲しかったかな)。面白いのは封入されるセッティング表の中に、ショート・ディレイによる 'リンギング' からの 'Steel Drums' セッティングがあることです(笑)。そういえば古い機種ですが、国産BigJamのフランジャーSE-5 Flanjamにも 'Steel Drums' セッティングが封入されてましたね...。個人的にはこのサイズにしてエコー音と原音を個別に調整出来るミキサー機能があるのは素晴らしい!。
さて、そんな 'アナログライク' なデジタル・エコーといえば今やすっかり '曰くつき' (苦笑)のブランドとなってしまったものの一時期、日本の 'ブティック・ペダル界' で気炎を吐いていたHonda Sound Works。その工房が2007年に閉じる最後の製品として送り出したのがこのFab Delayです。基本はPT2399チップを用いた 'アナログライク' のデジタル・ディレイなのですが、レトロなスライダーコントロールでFeedbackとTimeをリアルタイム操作して攻撃的な音作りに特化させたもの。古くはDanelectro DTE-1 Reel Echo、最近ではGecko Pedalsのアナログとデジタルの一挙両得な機能を併せ持つGeckoplex EP-5 V.2やMr.Black SS-850、Old Blood Noise EndeavorsのBL-44 Reverseなどがスライダー装備のエコーペダルとして市場にその '風貌' を主張します。特筆したいのが10年以上の歳月を経て完成させたGeckoplex EP-5 V.2でその名の通り、Maestro Echoplexを現代的にブラッシュアップしてタップテンポスイッチにより自在にスライダーを自動で移動させながら以下の機能を有しております。
●アナログFETインプットプリアンプゲイン(Gainツマミで0〜+11dBまで増幅)
●高品質な24bit/96kHzデジタル・オーディオ
●3つのプリセット保存可能(MIDI経由で64)でシームレスな自動プリセットチェンジ
●8分音符、4分音符、付点8分音符のサブディビジョンをタップテンポで選択可、
ホールドによる自己発振
●TrailsスイッチでエフェクトOff時の残響残し可
●最大64のMIDIアクセス可能なプリセット、クロック同期、クロックマスターモード
●トゥルーバイパス、アクティヴのバッファードバイパス選択可
●ディレイタイム選択可(650ms/1sec/2sec)
●Sound on Soundによる40秒のループ・サンプラー・モード
●Loopの再生速度と方向をスイッチで変更可能
●ループ・サンプラー・モードでのエクスプレッション・ペダルによる機能選択可
(音量、スピード、Lo-Fiモード)
●デュアルによるステレオセットアップに対応するWet/Dryアウトプット
●MIDI経由でリヴァーブを独立して制御可能(Mix、Decay、Time、Tone)
そして、なぜかFab Delayの動画は静岡の工房Soul Power Instrumentsでディレイ音を残しながらOn/Offする 'Trail機能' をすべく、ミキサー回路内蔵のモディファイしたモノでしか確認出来ません。オリジナルは2つの小ぶりなプラスティック製のスライダーで操作しますが、現在、手許にある2つのFab Delayを見比べてみれば...なぜかその内の一台は大ぶりで量感のあるゴム製のスライダーに換装されていて格好良し!。足下で操作しやすいよう前オーナーが後から付け替えられたのかも知れません。しかし、まだ世の 'ブティックペダル' がハモンド製のアルミケースにテプラ貼付の大半だった時代にオリジナルのヴィンテージ風なケース、スライダー装備のマニア心をくすぐる仕様だったのは素晴らしいですね。筐体後方と底に設けられた放熱用?スリットはダミーだけど(笑)、この工房のペダルを手がけたmt'Lab(aka Katana Sound)らしく缶タイプのオペアンプを備えるなど中身も手を抜いておりません。ちなみに、なぜか欧米の '宅録野郎' たちのお部屋でよく見かける 'ガレージ臭丸出し' な謎の一台、Knas The Ekdahl Moisturizerと並べれば筐体デザインや色合いで良い感じです。
そしてスティールパンの 'アンプリファイ' に強い味方、The Coradoの高品質なピエゾ・トランスデューサー・ピックアップを底面に磁石で貼り付けております。クラスAによるプリアンプ内蔵の完全バランス型であり、その高いS/N比のピックアップ特性を別途DC24〜48Vのファンタム電源により駆動します。本体裏面のDipスイッチは-10dBのPadや50Hz〜17kHzの帯域でBass/Boostのハイパスフィルターを搭載するなど、ピックアップ単体で基本的な音作りにも対応しているのが嬉しいですね。そのピックアップ駆動に必要なファンタム電源とプリアンプ機能として、Zoom A1マルチエフェクツ付属で単三電池2つ使用のMAA-1を愛用しております。また米国ではこのスティールパン専用のピックアップとして、'The EnSoul Pan Pickup' という製品が用意されておりますね。ちなみに、わたしの師匠はパンの収音で一番キライなのが底面からマイクを立てて狙うやり方とのこと...え、アカンやん(苦笑)。
そういえばラジオで山下達郎さんの口からも飛び出した '細野伝説' のひとつとして、若かりし頃の細野さんが渋谷のヤマハでスティールパンを物色し、ものの30分ほどで初対面のそのパンを弾きこなしてしまった、という話があるらしい(笑)。細野さん曰く、誰がそんなウワサ吹聴してんだ?と呆れながら、細野さん憧れのヴィン・ダイク・パークス経由でトリニダード出身の人からドラム缶輪切りの荒削りなパンを300ドルくらいで購入したとのこと。汚いペンキで湾曲面に音階名を記しながら配列はテキトーな代物だったそうで...(苦笑)、すぐ飽きてしまったのか誰かに上げちゃったらしいですね。トリニダードまで行って製作して貰ったヤン富田さんはこの後の世代だから、日本でパンを叩いたひとりとして細野さんは相当早かったですね!。
ラッパを 'ヴォイス' のようなサウンドで奏でる、というニュアンスとしては、古くはベル前に手をかざして開閉させるプランジャーミュートやワウワウミュート、それを '電化' によりペダルを踏んで咆哮するようなノイズを生成したマイルス・デイビスとワウペダルなどがトランペットの歴史においてありました。その独特な 'シビランス' を強調する金管の 'こえ' は、エアーをたっぷり含む掠れた 'サブトーン' の音色でも強調されます。古くは晩年の '入れ歯奏法' などと揶揄?されながら絶望の極北ともいうべきチェット・ベイカー、そして、頰を膨らませることでダークトーンを生成する日野皓正さんや類家心平さんの音色が有名でしょう。マーカス・ヒルが披露する 'サブトーン・テクニック' 講座や、あの左頬が大きく膨らむ 'ガレスピーズ・パウチーズ' と共に枯れたサブトーンこそ類家さんのトレードマークでもあります。その類家さんが自身の愛用するRoy Lowlerのラッパを手始めにBenchmark、AR Resonance、Martin、Monette、Mandala(サブのVan Laar Oiramを吹かないのは惜しい)といった豪華な試奏動画をどーぞ。マウスピースはこれまたラッパ同様、20年以上の付き合いだというGreg BlackのNY7Cです(一度、シャンクが磨り減り被せる修正を施してるとのこと!)。そして類家さんによる的確なMonetteの感想というか、ヘヴィ系ラッパに共通するニュアンスの嗜好ってのはよく現れる指摘でもありまする。あのミッドにミチッとした音像の崩れないピッチの安定感と高音域にスラーで吹き上がっていく時の幅の狭さ..。最高峰の楽器に頼れない...ってことではトップ・プレイヤーが一度は手にして、その '離職率' (笑)の高さも一定数いる好き嫌いの激しい楽器でもありまする。しかし惚れ惚れするほどの試奏だわ...(汗)。一方、そんなサブトーンを物理的に生成出来ないもんか?というアタッチメント的発想から生み出されたと思しき、こんな '曲がった釘' はいかがでしょうか(笑)。このWhisper-Pennyなるドイツの工房の一風変わった工房はかなりの '独自理論' で突っ走っており、マウスピースのスロートから奇妙な金属棒を入れてスロート径を狭くしてズズッと息の抵抗を強調する 'サブトーン' な 'エフェクト' を生成。かなり息は取られるとのことですが、ミュートとは別に新たなラッパの 'アタッチメント的' 音色として普及したら面白いですね。ちなみにこの動画でWhisper-Pennyのラッパとして吹いてるものが、実はLuttkeという工房の製作するElephant Trumpetというのに良く似ているのだけどOEMなのかな?(謎)。というか、せっかくのユニークな発想によるアイテムなのに現在でもこの工房が製作しているのかは分かりません...(汗)。
フランスでBobby Denicolaさんという方が短いサイズの 'ショート・トランペット' (ロング・コルネットじゃない!)にこだわって少量製作していたというPuje Trumpets。そんなPujeにインスパイアされたと思しきTaylorの46 Custom Shop Shorty Ovalなんですが、これまで騙し騙し使ってきたマウスピースの 'ギャップ調整' に対しついに本腰を据えました。いわゆるTaylorのラッパ唯一のウィークポイントなのが 'Taylor Fit' と呼ばれる独自のギャップサイズにあります。つまり自社のヘヴィタイプ・マウスピース以外の選択肢が限られてしまうのですヨ。Taylorはなぜか広く市販体制の取っていない自社のマウスピースに対して 'Taylor Fit' のほか、BachやYamahaなど通常のラッパに対応した 'Universal Fit' というマウスピース2種を用意しております。しかし、それならいっそのことギャップ自体を全て 'Universal Fit' の規格で作ってくれと言いたくなる(苦笑)。ただ、これは同じくヘヴィ仕様で製作するMonetteのラッパにも言えるのですが、ピッチセンター理論など各々工房マイスター独自の考え方に起因するものだったりするから悩ましい...。だからTaylorのラッパに他社のマウスピースを合わせようとする考え方自体がおかしいとされてしまうのだけど(汗)、一方でどうしても理論より先にラッパは良くてもそのヘヴィなマウスピースは使いずらい、という個々の奏者側の要望もこれまた生じてしまうのですね...。わたしはC.G. Connが50年代末から60年代にかけて製作していたヴィンテージのマウスピースが好きです。そのデザインはなんとMonetteのヘヴィタイプのマウスピースUnityを先駆けており、そのUnityほどではないにしてもこのC.G. Connのマウスピースもヴィンテージとしてはそこそこの '密度' があります(あえて '重さ' とは言わない)。手許にあるサイズは深めなVカップのNo.1、中庸でタイトなNo.3、そして最も '密度' がありバランスの取れたNo.6の3本となります。Bachの5C〜3Cに近いカップ内径ですね。ただ、これをそのままTaylorのラッパに差し込むとやはり浅い...。下は安定しておりますが、音域を上げると音が細くなると共に上ずりピッチのツボが外れてしまいます。で、実はこのシャンクとギャップの刺さり具合からなる関係については、トランペット以上にシビアな選択肢を取っているのがフリューゲルホーンのマウスピースなんですよね。ま、わたしはこの楽器を吹かないんだけど...(汗)。近年、そんなギャップ調整についてリードパイプ自体交換の出来るトランペット、2分割出来るマウスピースでシャンク部の 'スリーヴチェンジ' を可能にしたBob Reevesなど他社から工夫を凝らしたものがあります。そのシャンクとリードパイプの 'ギャップ調整' を測る為にノギスを使用する場合が多いのですが、HarrelsonやWarburtonからこんな便利グッズも登場...わたしは9,000円ちょいで購入したものがいまこんな高騰してんのか!?。
さて、そんなわたしの愛機である短いラッパのTaylor。このTaylorといえばヘンチクリンなデザイン過多のヤツ、ただただ重たい 'パクリMonette' なヤツには全く興味なかったのですが、アンディ・テイラー氏が2014年に独自設計の楕円形 'Ovalベル' で手がけたラッパ '46 Custom Shop' Shorty Ovalは一目で惹かれてしまった。Taylorはこの年を境に 'Oval' と呼ばれる楕円形のベルを備えたシリーズを 'Custom Shop' で展開しており、それを短いサイズにしたトランペットとして新たな提案をしたことに意味があるワケです(そもそも彼はホルンの名門、Paxmanでベル職人として研鑽を積んでおります)。ええ、これは吹奏感含めロングタイプのコルネットではありません。トランペットを半分ちょいほど短くした 'Shorty' なのですが、ベルの後端を 'ベル・チューニング' にして '巻く' ことで全体の長さは通常のトランペットと一緒です。その 'Shorty' シリーズとしてはこの 'Oval' ベルのほか、通常のベル、リードパイプを備えたタイプも楽器ショーの為に製作されたので総本数は2本となりますね。重さは大体1.4kgほどなのですが、短い全長に比して重心がケーシング部中心に集まることからよりズシッと感じます。また、普段この 'Shorty Oval' はマウスピースに穴を開けてPiezoBarrelピックアップ装着の 'アンプリファイ' で鳴らしておりますが、そのままアコースティックのオープンホーンで吹いてみても通常のラッパと何ら遜色無くパワフルに音が飛びますヨ。ただ、その 'Oval' ベルの大きさからHamonのミュートでは嵌まらずJoralのバブルミュート必須となりまする(汗)。そして、本機にはハンドメイド系工房のラッパでは 'MAWピストン' と並びフェザータッチによる操作性で好評の 'Bauerfeind' ピストンが備えられております。そのBauerfeindバウアーファイント社とはドイツ南ヴィスバーデンのナウハイムにある会社でTaylorやInderbinenにWeber、そのほか海外にある多くの工房へピストンブロックをOEM供給しております。過去、そのオーナー会社が何度か変わりWilson傘下の時期に製作された品質の評価が高いですけど、現在はオランダの大手管楽器工房Adamsの傘下に入っております。ちなみにTaylorでは、コレとは別にかなりの '巻き' の入ったショート・トランペットを 'Custom Shop謹製' で製作していたりします。そんなショート・トランペットにおけるルーツ的存在として知られているのは、過去フランスで製作され近年再評価からそのPujeのファンだったブレント・ピーターズ氏による '復刻Puje' のトランペットがあるのですヨ。大久保管楽器店のリペアーさんが試奏もせず一目惚れの 'ジャケ買い' でオーダーし手に入れたそーですが(笑)、いくつかのレギュラーモデルのほか、動画ではGetzen製のピストンを組み込んだ4 and 3/4のコパーベルの 'Shorty' と5 and 1/8のアンディ・テイラー謹製によるコパーベルを組み込んだ 'Shortay' ('Tay' はTaylorのTay)の比較が面白い。さらにヴィンテージベルを流用した最新作として、まるでわたしのヘヴィなTaylorショート・トランペットを研究したと思しき管体の '巻き' までそっくりな 'Super-T' なる短いラッパも登場...。こちらはOldsスーパーコルネットのOEMベルを用いて5本のみ製作されたモノとのこと。ちなみにPujeやわたしのShorty Ovalもそうなんですが、ベル側から最初に '巻く' ところでトリガーによりスライドさせることからクォータートーンなどマイクロ・チューニングに対応しているところは面白いですね。
そして、このようなTaylorのショートサイズのラッパといえば、そもそもは 'Custom Shop' 謹製のフリューゲルホーンPhat Boyをギュッと圧縮させたPhat Puppyのヒットで台湾の工房Carol Brassとライセンス契約を結び新たなカテゴリーを定着させました。最近は量産ラインでJohn PackerとのコラボによるJP Taylorやアダム・ラッパ・プロデュースの少量ハンドメイド製作品Lotus、そしてPuje Trumetsにベル供給をするなど、従来のハンドメイド体制一辺倒から脱してきております...(賛否ありますけど)。また、Phat Boyの変形として 'Custom Shop謹製' から真四角のベルを持った奇異なフリューゲルホーン、トランペットなども製作しておりまする。
金管ながらいわゆる '木管楽器族' のホルン(そもそもは角笛をルーツに持つ)から派生したフリューゲルホーンを別とすれば、トランペットとコルネットの '似て非なるモノ' の違いについてニューヨークで活動されるジャズのラッパ吹き、Ryo Sasakiさんがご説明されております。ここではその好例として1940年代後半の名機、Martin Committeeのトランペットとほぼ共有するパーツ(ベルフレアー、バルブケーシング)を持つミディアムボアのコルネット、そして同時代のモノとしては珍しいラージボアで 'リビルド' を施したもう一本のコルネットとの比較です。いわゆる 'ロング・コルネット' (ブリティッシュ・スタイルのショート・コルネットではない)として一聴、トランペットっぽい音色ながらその短いサイズから丸く詰まった音色、音量の小ささなどの特徴が分かります。一方、ラージボアになると出音の速さなど、ほぼトランペットと変わらない張りのある音色と '鳴り' でより現代っぽい印象となりますね。これらヴィンテージに比べると、名匠Monetteのこれまた珍しいシカゴに工房があった時代の頃の 'STC-1' タイプのコルネット(プロトタイプ?)はかなりモダンな仕様となりますね。さらに現行品である近年の '真鍮無垢材' 丸出しを金メッキした 'Cornette' なる豪華なコルネットは、完全に進化したラッパへと変貌していることが分かるでしょう。Monetteのラッパ全般に言えることですが、特徴的なパッと急激に開く灰皿のようなベルフレアーはもちろん、一般的なラッパに比べてそのサイズ感は重量級です(苦笑)。当然、デイヴィッド・モネット氏の提唱する 'ピッチセンター' 理論に従い、いわゆるヘヴィタイプ特有のミチッとした破綻の無い '音像' と均一なピッチの 'ツボ' を指定してくる吹奏感には慣れが必要です。
Holton Firebird、Schagerl Ganschhorn、Puje、そしてMonette Frumpet...これらの面白そうな楽器はとりあえず 'ウチの味付け' で一度は作ってしまう節操のない!?Taylor Trumpetsの職人、アンディ・テイラーさん(笑)。ま、こういうオーダーをしてくるユーザーってのもどうなんだ?という気はしますけど、ね...(苦笑)。わたしの 'Shorty Oval' にも象徴されるトランペットであり、コルネットのようでもありフリューゲルホーンのような表現力も備えるソロ向けの '良い感じ' なラッパの出発点として、アート・ファーマーの要望でMonetteにより製作されたトランペットとフリューゲルホーンの '混血' Flumpetからインスパイアを受けます。そんな独創的な 'Flumpet' へのTaylorからの '回答' (要するにパクリ)として結実した、その名も 'Phrumpet' (笑)。ロング・コルネットから持ってきた 'シェファードクルーク' と共に、今やトランペットやフリューゲルホーンから違和感なく持ち替えられるソロ楽器としてひとつのスタイルとなりました。また近年、もうちょいトランペット寄りな 'Balladeer' というコパーベルやブロンズなどハイブリッドな素材を組み合わせたカスタムも製作してTaylorとしてのオリジネイターも発揮しております。
ラッパ界の 'キワモノ' 2トップの座をTaylorと争うように占守する(笑)スイスのトマス・インダービネンが主宰する工房、Inderbinen。2018年に急逝してしまったロイ・ハーグローヴがココの楽器を特に愛好していたことで、今でも世界に多くの '信者' を抱えているラッパでもあります。従来のラッパにはなかった奇抜な発想の先駆として、管体すべてに銀をダラダラと垂れ流しちゃうこのSilver Artの衝撃。正直、ラージボアで銀の固めまくったベルは鳴らすのキツそうで、さらにInoxやDa Vinciとか・・この 'やり過ぎ' な感じは一体何なんだ?。通常のチューニングスライドとは別にベルが可動式の 'チューニングベル' 式でネジ止めされて、管体の大半をそのスクリューネジの '締め具合' による組み上げから鳴りを調整するなど、実にユニークな構造となっております。伝統的なラッパと比較すればふざけているとしか思えないほどブッ飛んでおり実際、ラッパ業界はその 'Selmer信仰' の強いサックスに比べてヴィンテージへの執着が薄いことからチャレンジ精神旺盛のマイスターを輩出する背景となっております(音響工学とカーボンベル、管体の焼き鈍し処理など)。このSilver ArtのベースとなっているのがInderbinenのフラッグシップともいうべき定番機、EXラージボアのAlpha100とラージボアのAlpha 110の2種が用意されており、このAlpha 100はここ日本では川崎太一朗氏の愛機でもありますね。しかし、エクストラ・ラージボアの管体に銀をダラダラ垂れ流しの固めまくり...鳴らし切るのはキツそうだなあ。
そんなInderbinenのラッパの中でもキワモノ度としてSilverart以上に珍重?されているのが、何やら管体にゴテッと焼き物?の如く塗り固められているInoxと成金趣味全開のド派手なDa Vinciの2種。特にこの真っ黒いInoxはキミョーなリードパイプのデザイン含め、昔からずっと気になってたんですよねえ...いつか欲いてみたい!と思いながら、現在まで拝んだことのないラッパです。製品ページによれば鋼粉と特殊な接着剤を混ぜ合わせたものを分厚く管体にコーティングしているようで、ダイナミクスの強弱から共振を極力抑えた設計にしているとのこと。ちなみに1.7kgもあるということで...現在Taylorのラッパ吹いておきながら実はヘヴィタイプ、苦手だったりするんだよなあ(苦笑)。コレの通常ヴァージョン?と言うべきか、薄いスティール・コーティングで1.2kgの仕様としたのがToroなんですが、どちらもエクストラ・ラージボアということからパワフルでオープンな吹奏感が特徴です。
また同工房のWoodというフリューゲルホーンは、古のSelmer K-Modifiedフリューゲルホーンにインスパイアされながら独自のトーンで唯一無二の個性で人気がありますね。そして、この工房のカタログの中でもレアな一品であるコルネット、Rondoを購入された日本の方がいるようです。個人によるカスタムオーダーということで、現状この一本でのみ処理してもらったという黒く酸化したベルが格好良いですね!。ショート・コルネットとはいえ、そこはボアサイズのデカいラッパばかりラインナップするInderbinenだけにズシッとした140mmのベルサイズはわたしのTaylorの 'Shorty Oval' と良い勝負です(笑)。
そんな独創的なラッパの中でもドイツやオーストリアなど一部のオーケストラでは、トランペットと言えばピストンをフレンチホルンと同じロータリーバルブの横置きにしたロータリー・トランペットのことを指すようです。ジャズでは構造的にハーフバルブなどの細かいニュアンスが出来ないとかで一般化しておりませんが、ブラジル出身のラッパ吹き、クラウディオ・ロディッティなどはロータリーでバップをやったりしております。そのロータリーを今度はそのまま縦置きにしてピストンと同じ感覚で吹けるように作ってしまったのが、発案者であるトマス・ガンシュの名を付けたSchagerlの 'Gansch-Horn' とフリューゲルホーンの 'Killer Queen'。柔らかいトーンとロータリーならではのメカニカルな操作、そして 'くの字' 型に曲げたベルがこれまた格好良し。ロータリーでジャズやラテンが出来ないって誰が言った?。
最後は現在その勢いを誇っているクリスチャン・スコット。彼の作品 'Stretch Music' のジャケットに現れるラッパを上下引っくり返したような?ヤツ(クレジットは 'Reverse Flugelhorn' となっている)は正直、かな〜り格好イイんですが、このスコットさんはいろんなタイプのアップライト・ベルなラッパをAdamsに '一品モノ' でオーダーしております。お気に入りなフリューゲルホーンの 'Reverse' のみならず、'Sirenette' というこれまた独創的なコルネットもユニークですね。トレント・オースティンさんのお店ACBでもコパーの一品モノをReverb.comで販売していたようですが、コレは無理してでも手に入れたかったなあ...。そんな最近のスコットといえば強烈なトラップのリズムで新たなジャズの即興演奏に挑む創造性を発揮しておりますが、いよいよラッパの 'アンプリファイ' においてAuto-Tune、Pitch Correctなどいろんな名称が与えられている 'ケロ声' ラッパの登場です(笑)。スコットのステージ後方にチラッと見えるPCの画面からプラグインのAuto-Tuneで処理しているっぽいですね。
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