2020年9月4日金曜日

9月のワウ選び (再掲)

エフェクターってひとつひとつは小さいですが、これがいくつか溜まってくるとスペースを占拠して生活を圧迫する(苦笑)。そんな '圧迫' の最たるものがワウペダルでして、これが床に置きっ放しのまま不意に躓くと突き指するくらい痛かったりするんですよね・・。しかし、管楽器の 'アンプリファイ' でディレイと並び最も満足度が高いのもこのワウペダル。





単純に分ければワウペダル、エンヴェロープ・フィルター、VCFという種類があり、そこからワウワウ、ピャウピャウ、ギュイ〜ンとブレスと共に踏んだり入力感度によりベンドしてリアルタイムな反応に繋がる。数あるエフェクターの中でもその効果と 'プレイヤビリティ' がダイレクトにもたらすものってコレしかないんですよね。鈍らせる、尖らせる、歪む、変調する・・そして発振。コレ、すべて 'フィルタリング' としての仕事であり、それを体感した者はその刻々と変化する音の '質感' に身悶え、まるで何物にも例えられないもうひとつの 'こえ' が生成する瞬間に慄きます。嗚呼、これぞ 'ワウワウ' の快感なり。


わたしの現在の足元に収まっている '手のひら' ワウの先駆、シンガポールのガレージ工房が手がけたPlutoneium Chi Wah Wah。光学式センサーによる板バネを用いたワウペダルで通常のワウとは真逆の踵側をつま先で 'フミフミ' して操作します。専用のバッファーを内蔵して0.5秒のタイムラグでエフェクトのOn/Off、そして何より便利なのがワウの効果をLevel、Contour、Gainの3つのツマミで調整できるところ。特別、本機にしか出てこない優れたトーンを持っているとは思いませんが、基本的なワウのすべてをこのサイズで実現してしまったものとして重宝しております。ワウの周波数レンジは広いものの、ペダルの踏み切る直前でクワッと効き始めるちょっとクセのあるタイプ。また、2010年の初回生産分のみエフェクトOn/Offのタイムラグが1.1秒かかる仕様だったので、中古で購入される方はご注意下さいませ(2010年10月以降は0.5秒仕様)。本機はペダルボードの固定必須で使うことが安定する条件となり、普通に床へおいて使うと段々と前へズレていきます。個人的にはその踵側を踏む姿勢から、立って踏むより座って踏んだ方が操作しやすいですね。ちなみに上記のリンク先にあるPlutoneiumのHP、ええ、アジア色全開の怪しいサイトではございません(笑)。





G-Lab Wowee-Wah WW-1 ①
G-Lab Wowee-Wah WW-1 ②

Chi Wah Wahが超小型ならこちらはスイッチのOn/Offを '足乗せ' な感圧式センサーにしたポーランドG-Lab製ワウペダル、Wowee-Wah WW-1。実際、このような機械式スイッチの '踏み外し' によるOn/Offの不具合はよくあるのですが、それを単にペダル面に足を乗せるだけでセンサーが感知してOn/Offしてくれるという有り難い逸品。もちろん、通常の機械式スイッチとの切り替え可能でさらにトーン調整用としてQ-Factor、Bass、Deep、Volumeの各スイッチも備えて多様な音作りに対応します。また本機にはウォーレン・ヘインズのシグネチュア・モデルWH-1も用意され、WW-1に比べてQ-Factorスイッチのみの特化したワウとなっております。











Crybaby Mini CBM95 VS. Crybaby GCB95

こちらはわたしが一番最初に購入したワウペダル。時代はちょうど1990年代半ばの 'ヴィンテージ・エフェクター' 再評価と復刻が始まっていた頃でして、それまで管楽器店しか知らなかったわたしにとりエレクトリック・ギターのお店は完全に未知の世界。全くの門外漢から見ればズラッと並んだ楽器の違いなど分かるハズもないのだけど、それは管楽器店にズラッと並ぶ金色や銀色のラッパを見てどれも同じじゃん、という感想と一緒ですね(笑)。このワウペダルというヤツも皆一様に黒いペダル状の物体が並んでおり、どれを選んだら良いのか分からなかったのですが、一応頭の中にあったのはマイルス・デイビスが使用したVoxのもの。しかしここで、そもそもギター用の機器を管楽器で使うにあたって大丈夫なのか?かかる帯域によってハズレもあるのでは?という '警報' が鳴り出します。もちろん試奏なんて出来ない環境でいくら悩んだって答えは出ないのだけど、そんな黒い物体の中で一台だけ 'スペシャル' なヤツを発見!見た目はCrybabyながら、中身はRoger Mayerという会社の 'ワウキット' をお店で組み込んで販売しているとのこと。価格もそこに並んである中でかなり高いものだったことから悩みましたが、購入の決め手は横に付いている3段階切り替えスイッチ(動画のものは7段階切り替え式)。今でこそこういうワウペダルは珍しくないですが、当時はこのRoger Mayer以外で見たことのない仕様でして、これならギター以外の楽器でもいけるんじゃないか、と・・。音色的には 'ドンシャリ' ながらラッパでもかなりエグい効き方で満足したことが昨日のことのように懐かしい。まあ、残念ながらこのRoger Mayerのものは今では入手できないものの、いわゆるノーマルのCrybabyでも十分に管楽器で威力を発揮してくれます。色々なモデルを展開しており、On/Offスイッチを省いて板バネで踏めばそのままOn、離せばOffになるGCB95Qなどは便利なのですが、その中でも '手のひら' サイズのCBM95 Crybaby Mini Wahはサイズ感と機能で申し分ないのでは?ちなみに過去には英国の 'マイルス・デイビス・フォロワー' のひとりであったニュークリアス率いるイアン・カーが、イタリアのJen Elettronicaで製作していた頃のCrybabyを踏んでおりますね。











Vox Clyde McCoy Wah Wah Pedal

'エレクトリック・マイルス' のアイコンであり、いわゆる管楽器の 'アンプリファイ' の象徴として踏んだのがマイルス・デイビスのVoxワウペダル。そもそもはVoxのエンジニアがトレブル・ブースターの開発中に偶然発見した効果であり、それを 'ワウワウ・ミュート' の名手であったクライド・マッコイに肖って名付けたのが 'Clyde McCoy' ワウペダルなのです。これはあくまで噂話の域ではありますが、バンド・オブ・ジプシーズ大晦日公演のバックステージで再会したジミ・ヘンドリクスからデイビスの元に送られてきたのがこちらの 'Clyde McCoy' ワウペダル。これを1970年から71年にかけて自身のステージで踏んでおりましたが、バンド・メンバーを一新した1972年以降、活動停止する75年にかけて足元にあったのが続く 'King Vox Wah' というもの。本機は、それまでイタリアEME社での生産をしていたVoxが米国カリフォルニア州のThomas Organ社の工場に移して生産した当時の新製品です。わたしがラッパを 'アンプリファイ' にしたいと思う原風景こそまさにコレ。ベルを真下に向けて屈み込むようにワウペダルを踏み、咆哮する歪んだトーンを吐き出すマイルス・デイビスの姿にヤラれてしまいました。












Chicago Iron / Tycobrahe Parapedal
Tycobrahe Engineering Parapedal (Vintage) ①
Tycobrahe Engineering Parapedal (Vintage) ②
Tycobrahe Engineering Parapedal w/ PS-9 Type (Vintage) ③
Farfisa Sferasound
Electro-Harmonix Bad Stone Phase Shifter Pedal
Greco PT-950 Pedal Phaser
Foxx Studio Model 7 Foot Phaser
Maestro FP-1 Fuzz Phazzer
Maestro FP-2 Fuzz Phazzer
Korg FK-2 Mr. Multi
MXR Custom Shop Variphase CSP-001 on Reverb.com
Moody Sounds Carlin Phaser Clone
Carlin Electronics Phase Pedal

一風変わった 'ヴィンテージトーン' を持つワウペダルとしてはこちら、Chicago Ironがお届けするTycobrahe Parapedalはいかがでしょうか。幻の70'sブランドとして君臨するTycobraheの完全復刻はChicago Ironにとってひとつの大きなチャレンジでした。Octavia、Pedal Flangerと共にラインナップされたこのParapedalは、まだTycobraheのブランド名を買い戻すまでは正式の名称が使えず 'Parachute' なるパロディ名で我慢し、現在ではようやく正規の 'Parapedal' としてそのモジュレーションの掛かった独特の 'フェイズワウ' を市場に開陳します。こちらはDC9Vながらオリジナル同様の 'ポジティヴ・グラウンド' の極性を持っているので、一般的な 'ネガティヴ・グラウンド' のペダルと同一のパワーサプライから電源供給する場合は注意が必要です。ちなみにこの手の 'フェイズワウ' という効果は、より大きい括りとして 'ペダル・フェイザー' という市場が席巻した時代でもあります。その元祖的製品である 'Maid in Japan' のShin-ei Uni-Vibe以降、そもそも位相シフト回路(オールパス・フィルター)により変調するフェイザーはワウと類縁性のある効果として、オルガンの老舗FarfisaのSferasound、MaxonのOEMであるGreco PT-950 Pedal Phaser、クイーンのブライアン・メイも愛用したFoxx Studio Model 7 Foot Phaser、Electro-Harmonix Bad StoneのペダルタイプからMaestro Fuzz Phazzer FP-1/FP-2、そして 'エンヴェロープ・フェイザー' の元祖であるKorg FK-2 Mr. Multiなどがありました。まさに1970年代に流行したと思われるこの効果、現行製品としてはMXRのVariphase CSP-001というのがありまする。足を乗せて踏み込むだけでかかる便利モノですけど、何故かこの 'Custom Shop' モノは日米共に正規の製品ページが無いんですよね・・(謎)。ちなみにわたしの所有するCarlin Electronics Phase Pedalはそんな 'ペダル・フェイザー' ブームが当時の北欧にまで波及した一例として、スウェーデン最初の 'ペダル・デザイナー' であるNils Olof Carlinが設計したもの。現在は同地のMoody Soundsからクローンも製作されておりますがオリジナルは超レアです。














Moog Moogerfooger (discontinued)
Source Audio SA143 Bass Envelope Filter (discontinued)
Source Audio SA224 Stingray Multi-Filter (discontinued)
Electro-Harmonix Micro Q-Tron
Zoom A1 Four / A1X Four Multi-Effects Processors ①
Zoom A1 Four / A1X Four Multi-Effects Processors ②

そんな管楽器にワウをかけること。ちなみに、ワウと言えば大半の製品はVoxやCrybabyに代表される 'ヴィンテージ・ワウ' のトーンを意識したものが多いのですが、一方では音量の感度調整によりかかるエンヴェロープ・フィルターなども用意されております。これらは '似て非なるもの' ではありますが、製品によってはエクスプレッション・ペダルを用いての両立した操作性、一聴しただけではワウペダルと判別をしにくいものがあります。どうしてもペダル操作が煩わしい、苦手だという方はこのエンヴェロープ・フィルターを選んで見るというのも一考です。管楽器の 'アンプリファイ' 広報に精を出すJohn Bescupさんは色々なワウを試されておりますけど、現在 '手元' に置いているSouce Audio SA143は新たに追加した多機能な一台。どうもそのサイバーな(オモチャっぽい?)デザインからここ日本ではイマイチ人気に乏しく、最近そのラインナップを一新してStrymonのようなアルミ筐体にヘアラインを施したものに変更されました。このSA143はデジタルならではの多彩な効果と扱いやすさ、安価な中古市場において狙い目。また後継機的機種として 'Soundblox' シリーズの一台SA224 Stingray Multi-Filterもありますね。そして管楽器に関係した2019年の新製品では、多機能かつリーズナブルなマルチ・エフェクターを製作するZoomからA1 Four/A1X Fourという 'アコースティック' 用マルチが登場。本機が画期的なのはその 'アコースティック' 楽器の中でトランペットやサックスなど管楽器に特化したプリセットを備えていること!いや、この手の機器として '管楽器専用' を謳ったものは初めてじゃないですかね?2つの図はそれぞれギター、管楽器で使用した際のワウの帯域変化を示したもので、管楽器ではより幅広い帯域に対してローパスとバンドパスを組み合わせてナチュラルなピークポイントでワウ効果を付加、コントロールさせていることが分かります。もちろん、その他のプリセットも幅広いアコースティック楽器に特化したものとして開発されておりまする。そんなメーカーの意気込みは、管楽器に必須のダイナミックマイクやコンデンサーマイクからフォンへと変換する 'アッテネータ' 内蔵(Gain調整、単3電池2本使用)の変換アダプター、MAA-1を付属させていることからも分かるでしょう。しかし、あれこれいろんな機器の流用による 'トライ&エラー' で散財していた頃を知っている自分からしたら良い時代になったもんですね。









Pigtronix Resotron ①
Pigtronix Resotron ②
Solidgold Fx Funkzilla
Solidgold Fx Apollo Ⅱ Phaser

さて、足でリアルタイムに踏むワウペダルに対してギターならピッキングの強弱、管楽器ならブレスの強弱によりエンヴェロープ・フォロワーを作動させるのが俗に 'オートワウ' と呼ばれたエンヴェロープ・フィルター。本機はあのアナログシンセの名機、Sequencial Circuit Prophet 5に搭載されたVCFのチップCurtis製SSM2040をベースに設計されており、過激に発振させたオシレーティングな効果から、この手の製品によくある '音痩せ' とは無縁の太さやトラッキングの向上を獲得。またエクスプレッション・ペダルによりワウペダルとして使用することも可能です。そしてカナダの工房Solidgold Fxの多目的なエンヴェロープ・フィルターFunkzilla。'電気ラッパ' の伝道師としてYoutubeでその啓蒙に頑張るJohn Bescupさん推薦の動画まであり、本機は基本的なエンヴェロープ・フィルターの機能を押さえつつここ最近のトレンド、タップテンポを装備してフィルター・スウィープからランダマイズのリズミックな効果に威力を発揮します。また同社からは 'エンヴェロープ・フェイザー' としてより複合的な効果を生成出来るAppolo Phaser(現在のカタログではAppolo Ⅱに変更)も用意されておりまする。









Xotic Custom Shop Robotalk-RI ①
Xotic Custom Shop Robotalk-RI ②
Xotic Custom Shop Robotalk-RI ③
Xotic Custom Shop Robotalk-RI ④
Pigtronix Envelope Phaser EP-2
Glou Glou Rendez-Vous
BJF Electronics VCF - Voltage Controlled Filter ①
BJF Electronics VCF - Voltage Controlled Filter ② 
BJF Electronics VCF - Voltage Controlled Filter ③

1990年代後半、突如市場に現れたXotic Guitars Robo Talkはそれまでのエンヴェロープ・フィルターとは一味違う '隠し味' で瞬く間に席巻しました。その一風変わった効果を持つ本機の出所は、1970年代にトム・オーバーハイムによりデザインされたMaestro Filter Sample/Hold FSH-1。特にフランク・ザッパがSystech Harmonic Energizerと共に愛用したことで現在まで大きな付加価値が付いております。また、本機の評価は単なる '懐古趣味' に留まらず、同時代の新たな 'ジャンル' ともいうべきエレクトロニカの 'グリッチ' と本機の 'ランダム・アルペジエイター' の見事な呼応性にありました。初代及び2代目までは2つの個別供給であるDC18V仕様でしたが、現在のRobotalk-RIは一般的なDC9V仕様として使いやすくなったのは便利。特筆したいのは本機のエンヴェロープ・フォロワーの追従性が非常に優れており、Rangeの 'ワンノブ' ひとつで見事にワウとしての仕事をこなしてくれる 'シンプル・イズ・ベスト' !。そしてPigtronixやGlou Glouからはフェイザーやリング・モジュレーターとエンヴェロープ・フィルターを組み合わせた多目的モジュレーション、Envelope Phaser EP-2やRandez-Vousなどが面白い。ちなみに個人的に試してみたいのがスウェーデンの奇才、Bjorn Juhlの手掛けるBJFEのVCFこと 'Voltage Controlled Filter'。この完全なるハンドメイドは世界で広く認められて隣国フィンランドのMad Professor、米国Bearfootへのライセンス生産による 'Re-Peoduct' モデル、そして日本のOne Controlへの製品協力とそのユニークな設計思想がもたらす影響力は計り知れません。








Seamoon Funk Machine (Vintage)
Seamoon Funk Machine V1 (Vintage)
Seamoon Fx Funk Machine

そしてエンヴェロープ・フィルターの使い方ならこの人に聞け!と言っても過言ではないくらいの達人、ランディ・ブレッカー。ラッパを 'アンプリファイ' した初期はCrybabyなどを使っておりましたが、その後のザ・ブレッカー・ブラザーズや現在に至るソロ活動ではBoss T-Wah TW-1やDynamic Wah AW-3などを愛用。しかしその全盛期である1970年代後半から80年代初めにかけて愛用していたのが知る人ぞ知る名機、Seamoon Funk Machineなのだ。ランディが使っていたのは無骨なデザインのVer.1の方ですが、何とこの隠れた名機が現在の市場にリファインされて再登場したというのだからビックリ。今回製作するSeamoon Fxを主宰するのはセッション・ベーシストとして過去に 'Heavy Metal Be-Bop' や動画の 'Some Skunk Funk' にも参加したニール・ジェイソンだそうで、そりゃ本機の愛用者であったランディの意見は聞くでしょ!という短い動画も公開しておりまする。










Mu-Tron: Mike Beagel
Mu-Fx Tru-Tron 3X by Mike Beagel (discontinued)
Electro-Harmonix Riddle: Qballs for Guitar
HAZ Laboratories Mu-Tron Ⅲ+

最後は '70'sオートワウ' の代表格、Mu-Tronがオリジナル設計者マイク・ビーゲルの手により復刻されました。これは最初にMu-FxブランドからTru-Tron 3Xの名で蘇ったものなのですが、現在はMu-Tronブランドの名も復活し、さらにコンパクトなMicro-Tron Ⅲとして使いやすくなっております。ちなみにビーゲルは自身のブランドのほか、あの 'エレハモ' へも設計者として協力してこれまで多くの 'Q-Tronシリーズ' はもちろん、このRiddle: Qballsなども手掛けておりまする。そして、どうしてもあのカラフルなデザインじゃないと盛り上がらない!という御仁には元Musitronicsのエンジニアであったハンク・ザイジャック氏が手掛けるHAZ Laboratories Mu-Tron Ⅲ+がありまする。














EMS Synthi Hi-Fli
Ludwig Phase Ⅱ Synthesizer
Colorsound Dipthonizer
Electro-Harmonix Talking Pedal - A Speech Synthesizer
Electro-Harmonix Stereo Talking Machine
Glou Glou Pralines / Moutarde
Glou Glou Pralines
Subdecay Vocawah
Moody Sounds Way
Sherman

EMS Synthi Hi-FliやLudwig Phase Ⅱ Synthesizerに象徴される '喋るような' フィルタリング。これは原初的なエフェクツとも言えるトークボックス(マウスワウ)のことではなく、VCFにおけるバンドパス帯域を複合的に組み合わせることで 'A、I、E、O、U' といった母音のフォルマントを強調、まるで喋っているようなワウの効果を生成するものです。例えば日本を代表する作曲家、富田勲氏は 'Moogシンセサイザー' を喋らせたかったという思いが強かったようです。Moog導入前から愛用していたLudwig Phase Ⅱを出発点に当時のモジュラーシンセでは、なかなかパ行以外のシビランスを再現させるのは難しかったそうですが、ここから 'ゴリウォーグのケークウォーク' に代表される俗に 'パピプペ親父' と呼ばれる音作りを披露、これが晩年の '初音ミク' を用いた作品に至ることを考えると感慨深いものがありますね。さすがにその巨大な 'シンセサイズの壁' を手に入れることは叶いませんけど、EMSやLudwigの大きなシステムからColorsoundのDipthonizerやElectro-Harmonix Talking Pedalなどが1970年代にはありました、そして、現在はそのアップデート版のStereo Talking Machine、フランスの工房Glou Glouのリゾナント・フィルターPralines、米国の工房SubdecayのVocawahやスウェーデンの工房Moody SoundsのWay、ベルギーからHarman Gillisさんがお届けするSherman Filterbankに到るまで機器を '喋らせる' ことへの興味は尽きることを知りません。









ワウペダルやエンヴェロープ・フィルターなどのリアルタイムな可変、変調からさらに一歩踏み込んでいわゆるフィルタリングによる '質感生成' に興味はありませんか?。プリアンプやブースターの機能も持ち合わせながら、その '質感' を過剰にさせることでファズっぽく、ドライブっぽく歪ませたトーンを作り出すことも可能。'サチュレーション' の飽和感を管楽器でそのギリギリのところまで 'クリーン' に太くする、荒くするというのが設定の 'キモ' であり、慌てず騒がずハウらせず、ジックリとその倍音の変化に耳を傾けてみるとフィルターの面白さがさらに広がります。







Elektron Analog Heat HFX-1 Review
Dr. Lake KP-Adapter

そんなBrownmanの音作りに肉迫出来るんじゃないか?と思わせるのがDJ用マルチバンド・フィルターとして人気の機器Analog Heat。このElektronにはギターに特化したAnalog Drive PFX-1という製品があるものの、こちらのAnalog Heatの方がシンセやドラムマシン、マイクからの音声などラインレベルにおける入力に対して幅広い 'サチュレーション' を付加、補正してくれます。その多様に用意されたプログラムの中身はClean Boost、Saturation、Enhancement、Mid Drive、Rough Crunch、Classic Dist、Round Fuzz、High Gainの8つのDriveチャンネルを持ち(もちろんアナログ回路)、そこに2バンドのEQとこれまた7つの波形から生成するFilterセクションで各帯域の '質感' を操作、さらに内蔵のエンヴェロープ・ジェネレーター(EG)とLFOのパラメータをそれぞれDriveとFilterにアサインすることで、ほとんど 'シンセサイズ' な音作りにまで対応します。また、現代の機器らしく 'Overbridge' というソフトウェアを用いることで、VST/AUプラグインとしてPCの 'DAW' 上で連携して使うことも可能。是非ともDr. Lakeの 'インピーダンス・マッチング' を取ってくれる便利アイテムKP-Adapterに 'インサート' して挑戦して頂きたいですね。この辺りを突き詰めていくと例えば、ニルス・ペッター・モルヴェルの音作りなどに興味が湧いて来るかと思われます。








Korg MS-04 Modulation Pedal
Korg SDD-3000 Pedal - Programmable Digital Delay
vimeo.com/160406148
Moog Moogerfooger (discontinued)
Seymour Duncan Fooz Analog Fuzz Synthesizer ①
Seymour Duncan Fooz Analog Fuzz Synthesizer ②

このような 'シンセサイズ' のアプローチとしてはずっと以前からあった 'ギターシンセ' を用いる方法もあり、最近ではBoss Synthesizer SY-1、ちょっと古いものとしてKorgのGuitar Synthesizer X-911による管楽器のアプローチがありましたね。このX-911をサックスで吹いているRian ZoidisさんはどうやらKorg製品大好きなようで(笑)、X-911のほかレアなLFOのCVペダルMS-04やSDD-3000 Pedalなども愛用中。もちろん、この手の機器ではおなじみ 'Moogerfoogerシリーズ' をズラッと足下に並べて同様のアプローチをするのもアリ、ですヨ。メイシオ・パーカーの "ドヤッ" なポーズが気持ち良い(笑)。そして、ピックアップでお馴染みSymour Duncanが本格的にエフェクター市場へ参入!。そのフラッグシップ機ともいうべき 'ギターシンセ' のFoozを送り込んで来ました。構成的にはLudwig Phase Ⅱと良く似ておりますが、あれほどエグい 'ヴォイス感' なワウの効果に特化しておらず、Pigtronix Mothership 2やEarthquaker Devices Data Corupterの好敵手といった感じ。しかしChase Bliss Audioなどもそうだけど側面のDipスイッチが最近のトレンドなのかな?。









Sonuus Wahoo ①
Sonuus Wahoo ②

さて、多目的にデジタルの機能を備えたものとしては英国の新興メーカー、Sonuus Wahooというのもあります。とにかくデジタル・フィルターとして出来ないことはないくらい充実した機能を誇り、単純な 'オートワウ' からフィルタースウィープ、ピコパコとランダマイズするランダム・アルペジエイターやLFO、そして '喋るような' フィルタリングに至るまでおおよそフィルターとして出来ることはこれ一台で賄えます。細かな調整は本体のほかPCと繋ぐ専用エディターソフトでも操作出来るのですが、まあ、裏を返せばあまりに多機能過ぎて '迷子' になる可能性が無きにしもあらず(苦笑)。シンプルにハマる単純なワウを中心に複数の効果のペダルをズラッと並べるか、このような多目的に音作り出来るものを買って好みのセッティングを追求するかは、いつも悩むところなんですよねえ・・。

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