2017年7月5日水曜日

真夏の蜃気楼: エコーの囁き

数あるエフェクターの中でも '空間系' と呼ばれるものはやっかいだ。いや、フツーにポンとスイッチを踏み、ディレイやリヴァーブの効果を現すツマミを回していけば気持ちの良い残響を付加してくれる。が、実際はライヴなどの会場における環境、またはバンドというアンサンブルの中で決定されるテンポなどにより、それらを使う前段階である程度の 'チューニング' を施しておく必要があります。楽曲ごとに違うテンポを合わせるべく、数値とタップテンポで決めたディレイをプリセットして瞬時に呼び出して使う。Eventide TimefactorやStrymon Timeline、Free The Tone FT-2Y Flight TimeにBoss DD-500 Digital Delayなどの複数プログラム、MIDIに対応した機種が人気を集めるのは、まさにそんなライヴにおけるリアルタイム性を重視した結果でしょうね。管楽器の場合、ギターのようなリードもバッキングもというアンサンブルの重要なパートはなく、あくまでソロを吹く際の 'アンビエンス' として効果的であれば十分で、せいぜいリアルタイムでタップテンポのスイッチを踏み、大体のテンポに合わせられればOK。大仰かつ煩雑なプログラム機能のディレイは個人的に必要ないというスタンスです(シーケンサーをバックトラックにMIDIで同期させたい場合などはやはり便利ですけどね)。







Strymon Bigsky
Eventide Space
OTO Machines BAM
Schaller Reverb Unit

こちらはStrymon Timelineの姉妹機で多目的リヴァーブのBigsky。管楽器の 'アンプリファイ' 向上を目指すYoutuber、John Bescupさんによるデモ動画ですけど、一昔前なら20万円以上のラック型マルチ・エフェクター並みのクオリティが今や5万円前後の製品として手に入ってしまうのです。Eventide Spaceもそうですがリヴァーブの演算処理とアルゴリズム、AD/DAの設計はここ数年で格段に高品質とコストダウンが達成されましたね。特にピッチシフトされた2声が付加された幻想的な 'Shimmer Reverb' など、近年の音楽にやたら使われてさすがに食傷気味となったほどです。また、デジタルと言われるものでもその黎明期とされる1980年代初期のデジタル・リヴァーブの質感を再現したフランスOTO Machines製BAM。こんな最先端なデジタルの一方で、昔ながらのスプリングに周波を流してピックアップするスプリング・リヴァーブというのも味があります。わたしもコンボ・アンプ内蔵のものをラッパにかけておりますが、強めにかけなければダブでお馴染み 'バネくさい' ビシャビシャした感じにならず、結構上品に 'アンビエンス' の演出を担ってくれます。ヴィンテージものですが、ドイツのSchaller製スプリング・リヴァーブは比較的チープな匂いの強い 'バネリバ' の中ではかなり使える一品ですね。



わたしが愛用するStrymon Brigadier - dBucket Delayは本当に良くできており、特別アナログ・ディレイ信仰はないのですが、気持ちの良い質感でデジタルとアナログの 'イイとこ取り' をした機種という印象です。一時期、BBDチップを乗せた '本物の' アナログ・ディレイが再評価され、ヴィンテージからBBDチップを乗せた '新製品' までこの分野を賑わせました。しかし、せいぜい最長600ms程度の短いディレイ・タイムは使いにくく、また太くハイカットしたような質感は暖かいと表現されましたが、逆にいえば音がこもって抜けが悪かったりするんですよね。こちらの本機BrigadierはStrymon独自のDSPテクノロジー 'dBucket Delay' により、アナログ・ディレイならではのエイリアシング・ノイズの度合い 'Bucket Loss' を増減させながら、デジタル・ディレイの持つエッジと8秒までの長いディレイ・タイム、4分音符、付点8分音符、3連符に対応したタップテンポと両方の良いところが合わさっております(もちろん、Feedbackを回せばちゃんと発振するという芸の細かさ!)。





Strymon Brigadier - dBucket Delay
Strymon El Capistan - dTape Echo

まあ、それでもギタリストにとってのアナログ信仰というのは 'こだわり' が深いようで、Electro-Harmonix Deluxe Memory Man、Maxon AD-900 Analog Delay、Boss DM-2 Delayなどのアナログ・ディレイ '往年の名機' は、未だにそこそこのプレミア的価格で取り引きされております。さらにBossなどは '技 claft' というハンドメイド・シリーズで 'DM-2w' として復刻までしてしまいましたからね。一方、アナログということではテープを用いたテープ・エコーも未だ求められる質感ということで、これまたStrymon独自のテクノロジー 'dTape Echo' を用いたEl Capistanに人気が集まっております。この会社は '往年の名機' をデジタル・ディレイとして蘇らせた定番機、Line 6 DL4 Delay Modelerを開発した技術陣が独立して起こしただけに、そのノウハウの蓄積はコスト・パフォーマンス含め他社の追随を寄せ付けませんねえ。上の動画は 'ペダル・ジャンキー' でお馴染みDennis Kayzerさんの 'Brigadier VS El Capistan' の比較ですけど、それぞれの特色ともいうべきテープ・エコーの 'ワウ・フラッター' VSアナログ・ディレイの 'モジュレーション' の再現度は見事。もちろん '本物' とは違うといえばキリがないのですが、これはこれで十分過ぎるほどの質感ではないかと思います(使い勝手も良いしね)。



Dawner Prince Electronics Boonar
Gurus Amp Echosex 2
Catalinbread Echorec

BBDチップを用いたアナログ・ディレイ、テープを用いたテープ・エコーをそれぞれシミュレートしたデジタル・ディレイがひとつの市場として活況しておりましたが、ここにもうひとつ、イタリアのBinsonで製作された磁気ドラム式エコー、Echorecへの再評価が世界的に始まっております。CatalinbreadのEchorec、イタリアのアンプ・メーカーGurus AmpからのEchosex 2、そしてクロアチアの新興メーカー、Dawner Prince ElectronicsのBoonarと目白押し。どれもEchorecに共通する4つのスイッチからなるマルチヘッドのタップ・ディレイがちゃんと再現されているか、が各社シミュレートの 'キモ' と言っていいでしょうね。



Carl Martin Echotone

こちらはTC ElectronicやEmmaと同じくデンマークのブランド、Carl Martin。ハイゲインなオーバードライブのPlexitoneを始めとして多様なラインナップを誇りますが、ここ日本では少々マイナーなイメージでしょうか。すでにあったDelaylaやDelayla XLをベースによりアナログライクなチューニングを施されたのがこのEchotone。基本的な構成はDelayla XLに倣って1.2秒のディレイ・タイムを備えながら、バイパス時にディレイ音を残すTrailスイッチ、ディレイ音を外部のエフェクターで加工できる内部インサートのLoop装備と、なかなかに魅力的なスペックを誇っております。また 'Select' スイッチを踏むことで隣のアンラッチ式スイッチのタップテンポを用いることができるのですが、Tempoの青色LEDがテンポに合わせて点滅しないのはちょっと意外(笑)。最近のタップテンポを備えたデジタル・ディレイはほぼ点滅して目で確認できるものが多いだけに、この手の製品ではすでに古株の本機はまだまだシンプルな作りです。

さて、ここでは個人的にちょっと気になった他社の新作ディレイをいくつか見ていきたいと思います。最近、この分野も新しい競合ブランドが入り乱れて面白いものを作っておりますヨ。



Sunfish Audio Autoscopy

日本の新興ブランドであるSunfish Audioの新製品、Autoscopy。なかなかデジタル・ディレイというのは小さな個人工房にはハードルが高かったのですが、本機はタップテンポやモジュレーション、フィードバックのみならず、昨今のエフェクター界でディレイの付加機能として注目を集める 'Glitch' モードまで備えるという嬉しい仕様です。中身はPT2399チップを用いたものと予想しますが、このブチブチと千切れるような 'グリッチ' がタップテンポと共に表情を変える姿は格好良いですねえ。しかもこういった '飛び道具' が制御不能にならず、ちゃんと音楽的ポイント内で良いアクセントとなる設定が施されているのもグッド!



Caroline Guitar Company Kilobyte Lo-Fi Delay

米国はサウスカロライナ州コロンビアに本拠を置くCaroline Guitar CompanyのKilobyte Lo-Fi Delay。この手の 'Lo-Fi' とかアナログ・ディレイ、テープ・エコーをシミュレートしたデジタル・ディレイのほとんどに搭載されているのがPT2399というICチップであり、本機もそれを用いながら実に心地良い質感でなまります。こちらはStrymon Brigadier同様にスイッチひとつ踏む度に発振するフィードバック、'Havoc' スイッチが売りのようですが、結構、モジュレーションとその名の如く 'Lo--Fi' の 'なまり具合&荒れた質感' は独特です。Brigadier内蔵のモジュレーションはかなりグニャグニャしてしまうのですが、このKilobyteの '揺れ方' は品があって好みかも・・。



Death by Audio Ghost Delay - 3 Stage Digital Echo①
Death by Audio Ghost Delay - 3 Stage Digital Echo②

ニューヨークはブルックリンを拠点に活動する奇才、オリヴァー・アッカーマン主宰のブランド、Death by Audio。この新作ディレイは日本未発売ながら、3つのディレイ・タイムとフィードバックを個別に操作することでその名も '幽霊のような' フィードバックに特化したディレイですね。ユラユラとなかなかに幻想的というか、単純に3つのディレイを個別に繋いだだけでは味わえない効果が面白い。'発振' って一発芸的にフレイズの始まり、もしくは終わりに鳴らすことで瞬間的なアクセントとして活きる 'ギミック' だと思っていたんだけど、本機のように崩壊寸前の設定にしてループ・サンプラーなどで 'シューゲイザー的に' オーバーダブしていけば、ラッパ一本でかなり分厚いアンサンブルを描くことができるんじゃないでしょうか?







Benidub Digital Echo
Vestax DDG-X2 Digital Delay
Vermona Engineering Cross Filter

こちらはダブに特化した機器を製作するスペインのBenidubから 'ヴァージョンアップ' したデジタル・ディレイ、Digital Echo。ライン・ミキサーのSend/Returnなどで用いるラインレベルの卓上エフェクターで、ラッパなら左手でミキサー共々リアルタイム操作しながら音を飛ばしたいですねえ。本機はLoop(Hold)機能も備えているので短いフレイズをループさせながらフィードバックとか、かなりリアルタイムで遊べる一台ですね。続くダビーなDJプレイは、Vestaxの '隠れた名機' ともいうべきDDG-X2とVermonaのDJミキサー型アナログ・フィルターのリアルタイムな '飛ばし技'。そしてダブとラッパということでまたしつこく貼ってしまおう・・スライ&ロビーとニルス・ペッター・モルヴェルのダビーな共演!





Strymon DIG - Dual Digital Delay
OTO Machines BIM
Korg SDD-3000 Pedal

そして1980年代初期、一斉に開花した初期デジタル・ディレイの '荒い' 質感を再現したStrymonとOTO Machinesの2機種。当時は高級機としてEventideやLexicon、コンシューマ・モデルではKorg SDD-2000やRoland SDE-2000がスタジオに導入されて、それまでのテープ式やディスク式、BBDチップを用いたアナログ・ディレイから飛躍的にミックスと空間生成で複雑な処理を可能としました。そういえばKorgがこのラック版SDD-2000の上位機、SDD-3000のペダル版を以前に発売しましたが、生産終了後にジワジワとプレミア的価格が付いてしまっております・・。なぜ人は現行品の時に買わず、生産終了とアナウンスされるや群がるのだろうか?(苦笑)売れていれば廃盤にしなかったと思うんだけど、ね・・。





Red Panda
Red Panda Raster
Electro-Harmonix HOG 2

UKダブの巨匠、マッド・プロフェッサーの得意技として、2Uラック型ピッチ・シフターであるMXR Pitch Transposer内のインサート端子にディレイを繋いで階段状にピッチが上がるエコーがありました。Digitech Whammyを始め、ディレイとピッチ・シフターを組み合わせるとさらに音楽的表現が広がるのですが、それを一台に収めてしまったのがこのRed PandaのRaster。'グリッチ/スタッター' 系エフェクターのParticleで一躍エフェクター界にその名を売ったRed Pandaは、最大750msのデジタル・ディレイをベースにピッチシフト・アルゴリズムをフィードバック・ループ内に備え、上下オクターヴから半音単位でシフトさせることが可能。コーラスのデチューンモードでは4度下からマイナー3度上の範囲でピッチチェンジ、もちろん '飛び道具' として無限上昇的なピッチチェンジ、リヴァース・ディレイなど幅広い機能に対応します。ここの製品が優秀なのは破綻することなく音楽的に '飛ばして' くれる品質の高さがありますね。その下の動画は 'エレハモ' のギターシンセ型ピッチ・シフターともいうべきHOG(Harmonic Octave Generator)の 'ヴァージョン2'。





Hologram Dream Sequence
Meris Effects Ottobit Jr.①
Meris Effects Ottobit Jr.②

そうそう 'グリッチ/スタッター' 系エフェクターといえば、最近、Hologram Dream Sequenceを手に入れたというのにまたまたこんな新製品が登場しましたヨ。ここら辺はシーンの需要の高さ故か、続々と新規参入、機能のアップデートと共にコストダウンの競争で目白押しなのが嬉しいですね。何故にハングル表記?と思うでしょうけど、Meris Effectsは別に韓国のブランドではなく、元Strymonのスタッフが独立して立ち上げた会社のようです。価格もこの手の 'ニッチ' な需要による割高な従来機に比べて、かなり頑張っているのではないでしょうか。さて、効果としてはピッチ・シフター、ビット・クラッシャー的フィルター、ステップ・シーケンス、リング・モジュレーション、ショート・ディレイの '全部乗せ' 応用型機といったところ。MIDIにも対応しているようですが、デジタルものの日進月歩ぶりはもの凄い速さでビックリします。





Earthquaker Devices Space Spiral
Earthquaker Devices

しかし、今年に入ってから管楽器奏者による 'アンプリファイ' な動画が増えました。やはり積極的なのはサックス奏者なんですけど、こちらは米国のEarthquaker Devicesのエフェクターを用いたもの。以前にはMXR、Moogerfooger、Electro-Harmonixなどがそれまでのギター市場にこだわらず管楽器奏者を起用した動画を作りましたが、これから新たなニーズとしてエフェクター会社が管楽器奏者と組んで続々 'アンプリファイ' してくれるんじゃないか、とワクワクしております。この動画はThe Kandinsky Effectというトリオからなる、エフェクターを駆使した音響的バンドのアプローチが格好良い!そして、その下の動画は今回の 'エコー編' の主役であるモジュレーション・ディレイのSpace Spiralですが、まだ日本未発売のようですね。



Earthquaker Devices Avalanche Run

こちらもEarthquaker Devicesの新製品ながら日本未発売のAvalanche Run。タップテンポを備えたディレイ+リヴァーブの複合機で、何でも2016年に米国で売れまくったペダルのひとつらしいです。やはり 'エレクトロニカ以降'  の質感を持った空間系エフェクターというか、その多彩なラインナップ含めてPigtronixと並び 'ポスト・エレハモ' に位置するブランドだと思いますね。





Jim Dunlop / MXR M169 Carbon Copy
Jim Dunlop / MXR M269SE Carbon Copy Bright
Jim Dunlop / MXR Carbon Copy Deluxe
TC Electronic Flashback X4 Delay & Looper

そして、これまた何度もご紹介したSnarky Puppyのラッパ吹き、Mike 'Maz' MaherさんのMXRエフェクターによるデモ動画。ここでは本物のBBDチップを用いたアナログ・ディレイの定番機Carbon Copyが素晴らしい。これはホントに売れまして、このM169の限定版としてPGSがオーダーした抜けの良い 'Bright' 版もラインナップしたほどです(追記: この記事を上げた直後に本家のJim Dunlopから本機の拡大版、Carbon Copy Deluxeがアナウンスされました。ノーマルと 'Bright' のトーン切り替え、1.2秒まで伸びたディレイ・タイム、タップテンポとプログラム機能の追加と、何だかTC ElectronicのFlashback Delayと同じ展開を見せております)。さて、冒頭でも紹介したPeter Knightさんなる方のライヴ・エレクトロニクス・アート。冒頭では '本物' のテープを用いたと思しきディレイ効果で、Revoxのオープンリール・デッキからテープを引っ張り出してロング・ディレイ、ループ、テープ・スピードの変調などを聴かせてくれますが、こちらは、さらにエディ・ハリスばりのサックスのリードを取り付けたフリューゲルホーン、ラッパの '内部奏法' ともいうべきプリペアードなノイズを採取して、PC内のグラニュラー・シンセシスでオーバーダブ、変調させているようです。





Boomerang Ⅲ Phrase Sampler
Boomerang Musical Products

エコーといったら発振させるフィードバックということで '番外編' というか、やはりループ・サンプラーとピッチ・シフター、フィードバックの壁を駆使したパフォーマンスにおけるセクシーなNovellerさんの動画が大好き。Boomerangの4トラックを備えたループ・サンプラーはその使いやすいユーザー・インターフェイス含め、この手の機器では非常に高い評価を得ております。


え〜、ちょうどこの記事でブログ100回目となりました。

2017年7月4日火曜日

続・真夏の夜の夢

暑い。ああ、熱帯夜に手を伸ばしたラジオからこんな選曲が流れてきたら・・最近、日常からグッとくる '出会い' と遭遇することもホント無くなりましたねえ。ということで、架空の '真夜中の選曲' スタートです!





まずは、気怠い白昼の熱気がそのまま熱帯夜の乾いた '匂い' としてヒリヒリと肌に刺すように喚起させる、テッド・カーソンの 'ドルフィーの涙'。チャールズ・ミンガスのグループで共演したカーソンとドルフィーは、突然のドルフィー客死の訃報から1ヶ月後、まさに真夏の最中である1964年8月1日にこの曲を吹き込みました。これは完全に '葬送曲' といったものなのですが、個人的にはイタリアの詩人、映画監督であるピエロ・パゾリーニ監督作品 'Teorema' (1968)のオープニング曲として使われたイメージが鮮烈でしたね。この真夏の狂気という導入部に相応しいのではないでしょうか。さて、そんなジットリと汗ばんできた肌から吹き上がる玉の汗が踊り出す・・こんなブルージーなサンバはいかがでしょう?カウント・ベイシーのビッグバンドで活躍したテナー奏者、フランク・フォスターが 'ボス抜き' のメンツで吹き込んだ本作、ヒプノティックなピアノのコードと共にフルートのソロがたまりません。





熱帯夜の淀んだ空気をサッと一掃すべく、こんなファンキーなヴァイブで真夏の狂気を乗り切りましょうか。突如発掘され始めたこのファンキーなヴァイブ男、ビリー・ウッテンはジョニー・ライトルやフレディ・マッコイ同様ソウル・ジャズの枠にいながら、いかにも1970年代初めのファンク・アレンジでザ・スタイリクティクスの 'You Are Everything' やザ・ドラマティクスの 'In The Rain' をやってしまうなど、なかなかの通俗性で楽しませてくれます。ここではラテンな4ビートでアフターアワーズ的リラクシンを堪能したいですね。そしてヴァイブといえば元祖ラテンマン、カル・ジェイダーがファンク・マスター、バーナード 'プリティ' パーディと組んで参加したブラックスプロイテーション映画 'Fritz The Cat' のOSTから超ファンキーな 'Mamblues' を!







なになにモダン・ジャズは渋すぎる、もうちょっと真夏の夜を彩るようなヤツを・・なるほど。じゃあラリーとフォンスのマイゼル兄弟率いる 'スカイハイ・プロダクションズ' のライヴはいかがでしょう?すっかりR&B、ファンク路線へと '宗旨替え' をしたドナルド・バードはアルバム同様、マイゼル兄弟のアレンジされたアンサンブルの隅っこへ追いやられるように存在感は小さくなりましたけど、そこはジャズマンと大学教授の '兼業' だけにオトナの態度で時代のムードに応えます(なぜか動画最後のクレジットでバードと共にラッパを吹く弟、ラリー・マイゼルのクレジットがないのは悲しい・・)。





さあ、マイゼル兄弟の巻き起こした風はそのまま、ジョニー・ハモンド1975年の傑作 'Gears' から夜空へ一直線に飛翔する 'Fantasy' で真夏の夜を駆け抜けます。'アンプリファイ' したエレクトリック・ヴァイオリンの官能的なソロが、7月の熱帯夜に吹き溜まった熱気を吐き出す・・気持ち良い〜。さてさて、そんな熱気は月明かり射し込むカーテンの隙間から生暖かい夜風として室内を吹き抜けます。う〜ん、汗ばむように暑い。この 'Summer Madness' ばりに熱帯夜なムードをArpシンセサイザーのヒョロ〜っとした音色でクールダウンさせてくれるのは、マーヴィン・ゲイ 'Inner City Blues' の共作者であるケニー・ストーヴァーを中心にジョニー・シモーン、アルヴィン・ヒューアの3人からなるグループ、Leo's Sunshipp。





おっと!どこからともなく夏祭りの響きが聴こえてきました。まさに日本の夏の風物詩を思わせるそんな雰囲気は、エチオピアン・グルーヴの重鎮であるムラトゥ・アスタトゥケ1972年の作品 'Mulatu of Ethiopia' で奇妙な追体験をどーぞ。日本の夏とエチオピアが繋がった!さらに夏といえば 'お化け屋敷'。ええ、'怪談' ならぬ怨念めいた '横溝正史ジャズ・ファンク' でゾッと背筋を冷たくしてもらいましょうか。三保敬太郎率いるJazz Elevenの1971年作品 'こけざる組曲' の狂気は傑作!ぜひヘッドフォンでぐるぐると回るファズワウ、フェイズの効いたドラムや女声コーラスと共に三半規管を狂わされて下さいませ。







ファンクってヤツは一度味わい出すともう手放せないほどの中毒性というか、この繰り返しの魔術は強烈なエコーで意識を揺さぶってきますヨ。ジョージ・ベンソンも参加した謎のセッションからなる '真夏の夜の夢' というか、ええ、'Smokin Cheeba Cheeba' というのはこの幻覚的アレンジから察する通り煙モクモクの・・そんな意味でございます。さて、そこから 'エコー繋がり' でジャマイカのキングストンへと意識を飛ばしてみましょうか。ジョニー・クラーク歌う 'Declaration of Rights' からプリンス・ジャミー手がける 'Dub of Rights' の強烈なダブ・ミックス!ああ、この亜熱帯の電子的一夜は、そのままブラジルの 'トロピカリア' の熱気漲っていた頃へとトリップ、Com Os Falcoes Reais1969年の 'Ele Seculo XX' のサイケデリックな世界で強烈にイっちゃって下さいませ。







さあ、ここからは 'Ele Seculo XX' のサイケなムードに触発されて、真夏のインナートリップへとご招待しましょう。テッド・カーソンが 'ドルフィーの涙' を捧げるのならば、フランク・ザッパはこの 'The Eric Dolphy Memorial Barbecue' だ。第1期ザ・マザーズ1970年の傑作 'いたち野郎' で異彩を放っている本曲は、ザッパ特有の諧謔性を盛り込みながらクールと前衛の狭間を往復します。続く '太陽神' ことサン・ラが自主制作した1963年の作品 'Cosmic Tones for Mental Therapy' から '宇宙の声'。まさにダブ誕生の姿がジャマイカではなくニューヨークの裏寂れたスタジオだったことを証明し、チープなリヴァーブ・ボックスを手に入れ嬉々として過剰なエコーを施す '太陽神' の姿が微笑ましい。そして、フランスのカルチェ・ラタン闘争で荒れていた68年パリの雰囲気とアポロ月面着陸への希求が衝突してしまったようなLes Apollos & La Dance Cosmiqueのポップと電子音の奇妙な出会い。





ふぅ、流れは再び混沌と音響の世界からファンクへと回帰し、ここでもう一発、ニューヨークの 'バリオたち' によるブーガルーの一夜で騒ぎましょうか。Speedレーベル専属のThe Latin Blues Bandによる '(I'll Be A)Happy Man' はファンク・マスター、バーナード 'プリティ' パーディも参加して真夜中のダンスフロアーを染め上げます!続く同時代の 'OST・TVライブラリー' から英国のPeer International Library Limitedレーベルで1972年編集の 'Stringtronics - Mindbender' から1曲、Nino Nardiniの 'Tropicola'。この怪しい感じ満載のブレイクビーツでジワジワとクールダウン、たまりませんねえ。





さあて、いよいよ大団円。こんな旅行先の土産物店で売っていると思しきチープなスイス産ボサノヴァのブレイクビーツが、まったりとした '真夜中の蠢き' と白み始める空に晒されて、夏の青さへと変貌して行きます。そして 'Outro'・・夏の夜の余韻をたっぷりと満喫させてくれるロニー・リストン・スミスに締め括って頂きましょうか。また、やってくる真夏の夜のために。


2017年7月3日月曜日

1969年の宇宙遊泳

久しぶりにマイルス・デイビスの 'Bitches Brew' を聴く。確か高校卒業の前後、わたしが初めて手を伸ばしたジャズのアルバムがこれでした。マイルス・デイビスが何者でジャズが何であるのか一切予備知識もなく、奇妙なジャケットと共に初めてCD化された2枚組本盤・・高かった(涙)。




きっかけは、当時どっぷりとハマっていたR&Bの解説本にR&B、ファンクの他ジャンルへの影響の一枚として本盤が挙げられていたからです。何となくですが当時、ジャズという、黒人音楽にしてどこか小難しそうな音楽が凄い気になっていたんですよね。それまではアース・ウィンド&ファイアやクール&ザ・ギャング、オハイオ・プレイヤーズなどのアルバムに '小品' として小耳に挟んできたジャジーな響き、その大人っぽい感じが思春期のわたしの感性をビリビリと刺激してきたのでした。あくまでジャズではなくジャジーである、というのが当時のわたしの理解だったんだけど、この 'Bitches Brew' は終始 '何なんだろう?' という不思議な感想として支配される結果に・・。確かに小難しい雰囲気いっぱいながら、かろうじて音楽としての構造はある、しかし楽曲の '主題' のような中心はなく、2枚組全体で一曲というような '組曲' として響くなど・・う〜ん。デイビスのラッパがどうとか各自のソロが、みたいなところは全然耳に入ってこなくて、とにかく全体から提示される '響き' に呑まれるばかりで、特に3台のフェンダーローズ・エレクトリック・ピアノの麻薬的なレイヤーは、分からないなりの中毒性で以って夜眠るときの '睡眠剤' の役割を果たしてくれましたね。まあ、端的に理屈は分からなくとも気持ち良かったのですヨ。



"これは単にもっと美しいの話ではない。ただ違うのだ。新しい美、異なる美、また別の美しさ。それでも美は美なのだ。これは新しいし、新しさのキレがある。宇宙船から、まだ誰も踏み入れたことのない場所に出た時に感じる、あの急にこみあげてくる熱さがある。"

'Bitches Brew' のライナーノーツを担当したジャズ評論家、ラルフJグリーソンのこの一節が本作の魅力を見事なまでに看破しております。それは本作を聴いて当惑するであろう従来のジャズ・クリティク、古くからのリスナーに対する '注意書き' のように、当時流行のLSD服用による '意識の拡張' やアポロ11号の月面着陸、前年公開のスタンリー・キューブリック監督のSF映画 '2001年宇宙の旅' のイメージを借用してまで説き伏せる勢いなのだから・・今の何倍もの衝撃があったであろうことは想像に難くない。




1969年のマイルス・デイビスは最も精力的かつ創造的な時期であったことは間違いありません。新たにジャック・ディジョネットを擁したクインテットを率いて、いわば 'Pre Bitches Brew' 的なアプローチをライヴで試行錯誤しながら、2月に 'In A Silent Way'、8月に 'Bitches Brew'、11月にアイアート・モレイラやカリル・バラクリシュナらブラジル、インドの民族楽器を導入したセッションから 'The Little Blue Flog c/w Great Expectations' という、それぞれ全く異なるコンセプトのサウンドを完成させてしまうのだから・・。また、この年は全米で猛威を奮っていた 'サマー・オブ・ラヴ' 最後の一年でもあり、7月のアポロ11号月面着陸、8月のウッドストック・フェスティヴァル開催という激動の瞬間が世界を駆け巡りました。世界中の学生たちはゲバ棒振り回して大学を占拠し、権力に楯突いて暴れ廻っていた季節。そんな時代の雰囲気を如実に感じ取ったであろう変貌するデイビスの姿は、そのまま ''レコードでは静的に、ライヴでは獰猛なほど動的に" という志向へと現れます。これはダブル・アルバムとして、それぞれ1970年に連続でリリースされた 'Bitches Brew' と 'Miles Davis At Fillmore' の両面 '合わせ鏡' のような関係性からも伺えるでしょうね。個人的にこの2作品は '4枚組' の組曲的大作として捉えており、ここに上述した '先行シングル' ともいうべき 'The Little Blue Flog c/w Great Expectations' で全く違う世界をも提示するのだから、いかにこの69年から70年という年がデイビスにとって豊饒なる一年であったか。まさにアブドゥル・マティ・クラーウェイン描く 'Bitches Brew' のジャケットが暗示する如く、すべてにテオ・マセロの編集作業が施されて '静と動' のコントラストが目まぐるしく切断、再生されていくという無重力の世界がそこにあるのです。




1969年の 'In A Silent Way' と 'Bitches Brew' からデイビスの 'アンプリファイ'、エレクトリック・サウンドへの希求がより本格化したことも特筆したいですね。本作 'Bitches Brew' では、エンジニアにより8トラックを用いて4チャンネル方式で録音、編成の大型化したアンサンブルに対抗すべくデイビスのトランペットも3通りのやり方で収音しております。それは、いよいよデイビスのMartin Committeeにも穴が開けられピエゾ・ピックアップを装着、それをアンプから出力した音をマイクを立てて収音、そのアンプへと出力する直前にDIによって分岐されたラインの音をミキサーへ入力、そしてベルからの生音をマイクを立てて収音され、デイビスの目の前には小型のモニターが置かれてほぼライヴ形式でのレコーディングとなりました。これら3つの音をエンジニアの手により混ぜ合わせることで、デイビスの 'ヴォイス' は自由に加工できる余地が生まれ、それはタイトル曲で印象的なタップ・ディレイの効果に顕著ですね。これはCBSの技術部門の手により製作されたカスタムメイドのテープ・エコーで 'Teo 1' と名付けられました。1998年にCBSが大々的にマイルス・デイビスのカタログを手直した際にデジタル・リマスタリングとリミックスを担当したマーク・ワイルダーの言によれば、本機はテープ・ループ1本に録音ヘッド1つと再生ヘッドが最低4つは備えられたものだったそうです。そして、この 'Bitches Brew' が従来のジャズのレコード制作と決定的に違う視点を持った作品として、後に 'アンビエント' の作曲家として大きな影響力を振るうブライアン・イーノの発言はとても重要な示唆をしています。それは 'アンプリファイ' (電化)を超えた 'マグネティファイ' (磁化)によるスタジオの密室的な 'マジック' においてのみ、その表現が大きく貢献していることを見抜いております。

"彼のやったことが極めて新しい、レコードでしかできないことだった、という点だ。すなわち、パフォーマンスを空間的に分解したんだ。レコーディングの段階では、ミュージシャン達はひとつの部屋の中、お互いが近い距離に座っていた・・でもオンマイクだったこともあり、各自の音はそれぞれに独立して録音されていた。それをテオ・マセロがミックスの段階で、何マイルも引き離して見せた。だから音楽を聴いているとすごく楽しいんだ。コンガ奏者は道をまっすぐ行った先あたりで叩いているし、トランペット奏者はかなたの山のてっぺんで吹いているし、ギタリストの姿は・・双眼鏡でのぞきこまなきゃ見えないんだからね!そんな風に皆の音が遠くに置かれているので、小さな部屋で大勢の人間が演奏しているという印象はまるでなくて、まるで広大な高原かどこか、地平線の彼方で演奏しているかのようなんだ。テオ・マセロはそれぞれの音をあえて結びつけようとはしていない。むしろ、意図的に引き離しているかのようだよ。"



Hammond / Innovex Condor RSM
Shure CA20B

またこの時期、世界初のギター・シンセサイザーとしてHammondが開発した機器Innovex Condor RSMもデイビスの元に届けられて、同年11月から再び始まるインド、ブラジルの民族楽器を導入したセッション中の1曲 'Great Expectations' において不気味なオクターヴの効果をトランペットに付加しております(デイビス本人はこの機器を気に入らなかったようですけど)。この曲は13分弱からなるヒプノティックに反復するテーマと少しづつ前後するポリリズムの絡みで構成されており、通奏低音のタンプーラをバックにデイビスのトランペットはソロに変わってオープン、ミュート、エコー、オクターヴ、ディストーション、フェイズ、トレモロと多岐に渡り、刻々とその反復の表情を変えていきます。Hammondはエレクトリック・ギター用GSMと管楽器用RSM、キーボードなどステレオ機器用SSMの3種を用意し、本機は晩年のジミ・ヘンドリクスも購入したようですね。以下、1970年の 'Downbeat' 誌によるダン・モーゲンスターンの記事から抜粋。

"そこにあったのはイノヴェックス社の機器だった。「連中が送ってきたんだ」。マイルスはそう言いながら電源を入れ、トランペットを手にした。「ちょっと聴いてくれ」。機器にはフットペダルがつながっていて、マイルスは吹きながら足で操作する。出てきた音は、カップの前で手を動かしているのと(この場合、ハーモンミュートと)たいして変わらない。マイルスはこのサウンドが気に入っている様子だ。これまでワウワウを使ったことはなかった。これを使うとベンドもわずかにかけられるらしい。音量を上げてスピーカー・システムのパワーを見せつけると、それから彼はホーンを置いた。機器の前面についているいろんなつまみを眺めながら、他のエフェクトは使わないのか彼に訊いてみた。「まさか」と軽蔑したように肩をいからせる。自分だけのオリジナル・サウンドを確立しているミュージシャンなら誰でも、それを変にしたいとは思っていない。マイルスはエフェクト・ペダルとアンプは好きだが、そこまでなのだ。"

さて、先に述べましたが、実は現在発売中の 'Bitches Brew' はこの1998年にリミックスされたもの、俗に '1998年マスター' と呼ばれているものが基本となっております。つまり、テオ・マセロ及びCBS専属のエンジニア、スタン・トンケルの手によるオリジナル・ミックスではなく、改めて8トラックのマスターテープから '再現' させたものなのです(つまりリミックス)。これは1999年に発売されたボックスセット 'The Complete Bitches Brew Sessions' に合わせて元々の2ミックス・マスターを検証した際、長年のコピーと保管状態含め相当に劣化していたことが原因となっておりました。ここで他国から質の落ちるコピーをもらうか、オリジナルの8トラックに戻って再度リミックスに挑み、ジェネレーション落ちを避けるか・・。CBSの判断は結局、より際立ったエッジとダイナミクスを獲得する代わりに各曲それぞれ秒数の違う長さの新たな 'Bitches Brew'  を完成させました。リミックスを担当したジョー・ワイルダーの言によれば、LPのミックスは質にかなりのばらつきがあり、ボトムを持ち上げる代わりにハイエンドをカットしてクリアーさがかなり失われていると述べます。わたしの手にあるのは1996年に日本でのみ 'Master Sound' としてリマスタリングされた紙ジャケット仕様(Sony SRCS9118-9)のものなのですが、とりあえずリミックス前のオリジナル・ミックスとして聴くことができる '最後' のもの。確かに全体的なダイナミックレンジは狭く、リマスタリングされたとはいえ分離の悪さとだんご状態の低音、シンバルの鈍い音像などが聴き取れますね。それでも8トラック・マスターからテオ・マセロになりきって改めてテープを繋いだり、エコー処理を施すというのはかなり危険な賭けであり現在に至るまで賛否両論出ております・・。

"バランス、そして編集された箇所には凄く注意を払った。僕らのミックスと編集をオリジナルLPヴァージョンと一緒に流して、時には片方のスピーカーを僕らのヴァージョン、もう片方をオリジナルにして比較し、見逃したりズレたりしている編集箇所がないように確認したんだ。これにはもの凄い労力を費やしたよ。編集は大問題で、テオのやったことに敬意を表するのは僕らにとっては重要なことだった。ミックス中は、まるで優先順位割当に従って作業をやっているような感じで、ボブ・ベルデン(今回の企画プロデューサー)と僕は、何を最優先させるか、あれをコピーするかしないか、といったことを常に考えていたんだ。"

また、この作業を通じて 'Bitches Brew' のセッション・テープ全体が再検討されることとなって、そこから流出した編集前の音源が 'Deep Brew' という2枚組ブートレグとして市場に出回り、このセッションに焦点を絞ったジョージ・グレラ・ジュニア著の研究本 'Miles Davis Bitches Brew' (スモール出版)も2016年に邦訳されました。ちなみに、オリジナル・ミックスを手がけたテオ・マセロはこの作業を認めてはおらず、オリジナルを毀損して大人しくなってしまった(常識的な?)リミックス、'The Bitches Brew Complete Sessions' の名で不必要かつ関係のない未発表曲と一緒にまとめたこと、その未発表曲がリリースする水準のないものであると喝破しております。確かに、異様なまでの編集作業と 'ローファイな' 質感こそ 'エレクトリック・マイルス' の音楽性と不可分であることを鑑みれば、果たしてどこまでリミックスという作業が有効であるのかは考えてみる必要がありますね。このあたりの詳しい話は 'サウンド&レコーディング・マガジン' 1999年4月号に載っておりますので、気になった方はどうぞバックナンバーでチェックを。



Betty Davis: The Columbia Years 1968 - 69

そして、この時期のデイビスに多大な影響をもたらした 'ミューズ' ともいうべき触媒的存在となったのが当時の妻、ベティ・デイビス。アルバム 'キリマンジャロの娘' のジャケットに初めて登場し、'Bitches Brew' レコーディングの3ヶ月前にデイビスとテオ・マセロのプロデュースで制作されながら 'お蔵' となったのがこの2016年の本作!ここに参加するメンツも凄いのですが、何しろ 'Bitches Brew' に至る多くの 'Hype' をデイビスに教えて上げた張本人こそベティなのです。そりゃ 'Bitches Brew' レコーディング時に、ベティ自身を目の前に座らせてラッパ吹くワケですヨ(ベティ本人はジャズに興味なかったみたいだけど)。




しかし、マイルス・デイビスのライヴ動画も 'The Bootleg Series' としてどんどん公式化されていくほど、そのままブログへの直接リンクが不可になってくるなあ・・(悲)。Youtubeで 'Bitches Brew' と検索して出てくる関連動画のほとんどが、このワードと引っかかってリンク不可になるのが本当に残念・・どうぞ、Youtubeの方でいろいろ聴いてみて下さいませ。さて、この電気楽器のアンサンブルを率いて '明日への予兆' を示唆する1969年のマイルス・デイビスの姿は、そのまま髪と髭を伸ばし、'ゴーウェスト' の旅へとドロップアウトしながら泥沼のベトナムに 'No' を突きつけ、遥か頭上の月面着陸に思いを馳せていた1969年の風景と不可分ではいられませんね。まあ、今の耳ではロックやR&B、電気楽器がスパイスとして構造は未だジャズの範疇にあるのが微笑ましいのだけど、やはり、'Pharaoh's Dance' のひたひたと忍び寄ってくる '足音' から描き出される本作の魅力はいつまでも色褪せないのです。

2017年7月2日日曜日

蒸し暑い '電化夜話'

陽射し照りつける永遠の'サマー・オブ・ラヴ' の季節は、エレクトリック・ギターを持った若者たちを焚きつけたのみならず、それまでバンド・アンサンブルの主役であった 'ホーン' の連中をも 'アンプリファイ' に向かわせました。唯一の違いは、大半の奏者が '時代の要請' に倣って積極的ではなかったこと。それはこの熱気の過ぎ去った後、多くの管楽器に取り付けられていたピックアップは外され、穴の空いた楽器を再びハンダで埋めるべくリペア工房に列をなしていたことがその栄枯盛衰を物語ります。まさに '時代のあだ花' でありながら新たな可能性への扉を開く1960年代後半のホーンにプラグを繋いだ者たち。今の視点から見れば大したことはやっていないのだけど、さあ、ここに開陳いたしましょう。







白人のサックス奏者ジョン・クレマーとトム・スコットはまさにロック世代に登場したサックス奏者であり、コルトレーンを聴きながらR&Bからジミ・ヘンドリクス、ザ・バーズなども愛聴し、当時の 'バイショー' 的ジャズメンとは一線を画す存在でしょう。クレマーは1970年代には今でいうスムース・ジャズの旗手としてエコーのかけたサックスがトレードマークとなり、トム・スコットは後にEWIウィンド・シンセサイザーへ手を出す出発点として、ヒッピー色全開なデビュー作 'The Honeysuckle Breeze' から全編、Conn Multi-Viderで 'アンプリファイ' したサックスによりジャズ・ロック世代との親和性を表明しておりました。同世代のブレッカー兄弟も述べていましたけど、やはりロックやR&Bは自分たちの世代に共通するアイデンティティとして、先輩世代のジャズメンが持っていた拒否感はまったく無かったそうですね。こういう話を聞くと当時のアタマの固いジャズ・クリティクが奮った 'ペンの暴力' って、ジャズが曲がり角を迎える時期にデビューした新人に対して相当な罪作りだったと思いますヨ。







1950年代後半から活動するラスティ・ブライアントは、麻薬絡みでしばらく刑務所に服役した後、久しぶりのシャバの空気を吸ってビックリしたに違いありません。全ての価値観が引っくり返るようにあちこちで混乱していた1960年代後半は、そのままブライアントのアルト・サックスにも当時の '新兵器' を装着して、ジャズよりもR&B、ファンクだと言わんばかりに 'アンプリファイ' しながら街へ飛び出して踊り出します!





ジャズマンたちの 'アンプリファイ' には、当時のロック、ヒッピー世代を覆い尽くしていたサイケデリック、LSDがもたらす幻覚の誘惑がありました。'アンプリファイ' したサックスの第一人者、エディ・ハリスはGibson/MaestroのWoodwindsやEchoplexを駆使し、またギタリストのビリー・バトラーは、ベテランのテナーマン、セルダン・パウエルを 'アンプリファイ' でフィーチュアしながら、トリップするワウワウ・ギターと共にスーツを脱ぎ捨てて時代の空気へと溶け込みます。







Selmer Varitone ①
Selmer Varitone ②

そんな全てに蒸し暑〜いホーンの 'アンプリファイ' は、元祖 'ファンク男' のひとり、ナット・アダレイも動かします。それまで兄キャノンボール・アダレイの影に隠れるようにサポートしていたイメージのナットが心機一転、A&M傘下のCTIからリリースしたのがこの '仏像ジャズ'。いや、内容はそんな抹香臭いもんじゃありませんが、やはりサイケデリックな時代の空気を吸って自らのコルネットも 'アンプリファイ' しました。ここで登場するSelmer Varitoneは一足先にクラーク・テリーがアルバム 'It's What's Happnin'' でアプローチしており、続くナットの姿は同時期の貴重な上の動画で、Varitoneのコントローラーを首からぶら下げているのが確認できますね。ちなみにVaritoneは、ピックアップをサックスの場合はマウスピースに取り付けますが、トランペットやコルネットの場合はリードパイプ上部に穴を開けて取り付けます。まあ、効果的にはダークで丸っこい音色のコルネットが蒸し暑いオクターヴ下を付加して、さらにモゴモゴと抜けの悪いトーンになっているのですけど・・。'You, Baby' はナットが 'サマー・オブ・ラヴ' の季節を謳歌した異色の一枚でもあります。





世界最初の管楽器用 'アンプリファイ' システムであるSelmer Varitoneはナット・アダレイ、クラーク・テリーのほか、ソニー・スティットやエディ・ハリスらが一足早くアプローチしておりました。1970年代にはMainstreamレーベルからアフロ色濃い作品をリリースするこのバディ・テリーも1960年代後半、すでにR&B、ブーガルー一色となったPrestigeレーベルからその名もずばり 'Electric Soul !' で '感電' します。このネロ〜ンとした1オクターヴ下の 'デュエット' の蒸し暑い音色こそ電気サックスの醍醐味だ。



そして冷戦期、ベルリンの壁を越えて東ドイツから西側社会へやってきたロルフとヨアヒムのキューン兄弟。'クラリネットのコルトレーン' ともいうべき超絶技巧の粋を見せつけた1964年の傑作 'Soralius' に続き、68年から69年の 'サマー・オブ・ラヴ' の季節、思いっきりヒッピーとサイケデリックの退廃的自由に塗れた 'Mad Rockers' 改め 'Bloody Rockers' の2作目。ここでクラリネットに 'アンプリファイ' しているのは、たぶんVox / KingのAmpliphonic Octavoice Ⅰとワウペダルではないでしょうか。いやあ、当時のゴーゴー喫茶を彷彿とさせますねえ。









そんな米国のカウンター・カルチャーの波は大西洋を渡り、英国のこんな '企画もの' バンドにおけるジャズ・ロックにも波及します。メンツはトランペットのハンス・ケネルとサックスのブルーノ・スポエリを中心としたスイスのジャズメンで、それが当時プログレを積極的にリリースしていたレーベル、Deramから登場したというのは面白い。内容的にはエディ・ハリスの名曲としてお馴染み 'Listen Here' のカバーを始め、プログレというよりかはR&B色濃い典型的ジャズ・ロックで、ソフト・マシーンのぶっ飛んだ感じを期待してはいけません。ちなみにホーンの2人は揃ってConn Multi-Viderとワウで 'アンプリファイ' しております。さて、むしろプログレっぽいという意味では、この完全に狂ってしまったようなザ・ビートルズの名曲カバーを披露したドン・エリスの方が 'らしい' ですね。ここでその狂った効果を最大限に発揮するリング・モジュレーターは、エリスがUCLA音楽大学の同窓であったトム・オーバーハイムと出会ったことで手に入れたもの。いやあ、これは当時のマイルス・デイビスよりさらに先を行ったアプローチでしょう。







この手の管楽器用 'アンプリファイ' システムの中で最も売れたのがGibsonがMaestroのブランドで販売したSound System for Woodwindsでしょう。1967年のW1からバリトンのファズトーンを搭載したW2、専用のフットスイッチを取り付けたW3まで、今でもeBayを覗くとよく出品されております。エディ・ハリス1968年の 'Plugs Me In !' やチャールズ・ミンガスのグループで活躍したポール・ジェフリー1968年の 'Electrifying Sounds of Paul Jeffrey ' のジャケットで堂々登場、このカラフルなボタンと3本ラッパのMaestroマークが目印ですね。そしてもう、何度紹介したか分からないフランク・ザッパ1968年のスタジオ・ライヴ。しかし何度見てもホントにたまらない!やっぱ 'King Kong' はプログレ界3本の指に入る超名曲だなあ。イアン・アンダーウッドとバンク・ガードナー2人からなるMaestro Woodwindsを駆使したアンサンブルも怪しくて最高です!


2017年7月1日土曜日

コンデンサー 'DIY' ピックアップ

長らくBarcus-berry のマウスピース・ピックアップを用いてきた近藤等則さんは2007年、DPAのミニチュア・マイクロフォンを流用して、オリジナルのマウスピース・ピックアップに換装しました。直径5.5ミリからなるDPAの無指向性超小型コンデンサーマイク。





Toshinori Kondo Equipments
DPA SC4060、SC4061、SC4062、SC4063
DPA SC4060、4061 Review
Phoenix Audio DRS-Q4M Mk.2

"今年を振り返ってみると、いくつかよかったことの一つが、トランペットのマウスピースの中に埋めるマイクをオリジナルに作ったんだ。それが良かったな。ずっとバーカスベリーってメーカーのヤツを使ってたんだけど、それはもう何年も前から製造中止になってて、二つ持ってるからまだまだ大丈夫だと思ってたんだけど、今年の4月頃だったかな、ふと「やべえな」と、この二つとも壊れたらどうするんだ、と思って。なおかつ、バーカスベリーのをずっと使ってても、なんか気に入らないんだよ。自分で多少の改良は加えてたんだけど、それでも、これ以上いくらオレががんばっても電気トランペットの音質は変えられないな、と。ピックアップのマイクを変えるしかない、と。それで、まずエンジニアのエンドウ君に電話して、「エンちゃん、最近、コンデンサーマイクで、小さくて高性能なヤツ出てない?」って訊いたら、「コンドーさん、最近いいの出てますよ。デンマークのDPAってメーカーが、直径5.5ミリのコンデンサーマイクを作ってて、すごくいいですよ」って言うんで、すぐそれをゲットして。"

"それをマウスピースに埋めるにしても、水を防ぐことと、息の風を防ぐ仕掛けが要るわけだ。今度は、新大久保にあるグローバルって楽器屋の金管楽器の技術者のウエダ君に連絡して、「このソケットを旋盤で作ってくれないかな」ってお願いして、旋盤で何種類も削らして。4ヶ月ぐらいかけてね。で、ソケットが出来ても、今言ったように防水と風防として、何か幕を張ってシールドしないといけないわけだ。それをプラスチックでやるのか、セロファンでやるのか、ポリプロピレンでやるのか。自分で接着剤と6ミリのポンチ買ってきて、ここ(スタジオ)で切って、接着剤で貼り付けて、プーッと吹いてみて、「ダメだ」また貼り付けて、また「良くねーなぁ」って延々やってね(笑)。で、ポリプロピレンのあるヤツが一番良かったんだ。そうすると今度は、ポリプロピレンを接着できる接着剤って少ないんだよ。だから東急ハンズに行って、2種類買ってきたら一つは役に立たなくて、もう一つの方がなんとかくっつきが良くてね。その新しいピックアップのチューニングが良くなってきたのは、ごく最近なんだけどね。音質もだいぶ変わってきた。音質が変わると、自分も吹きやすくなるからね。"

こういうトライ&エラーな '苦労話' にはそうそうと頷きたくなるのですが(笑)、これは2007年にそのピックアップへ換装した頃のインタビューから抜粋しました。そもそも、このオリジナルへ換装する前にコンドーさんが10年ほど愛用してきたBarcus-berryのコンデンサー・ピックアップ、6001はわたしもそのセッティングにかなり手を焼いたものです。大体、感度の良いコンデンサーマイクを最も振動の拾う口元、マウスピースに穴を開けて接合するというのが考えられなかった・・。実はコンドーさんがオリジナルで製作したというマウスピース・ピックアップの構造は、そのままこのBarcus-berry 6001を踏襲したものなんですよね。ピックアップ本体のマウスピースとの着脱、防水、風防としてソケット部にポリプロピレンでシールドするなど、まんま流用しておりますね。これで大体想像がつくと思いますけど、このままプーッと吹けばまさに 'バジング' 練習の時に出るあの音が飛び出してきます。ギザギザとラッパらしからぬノイズ音で '鳴り' もなければ音程も定まらない代物・・。Barcus-berry 6001は専用のプリアンプ3500AでEQするのですが、これはほとんど音質補正としては意味がなく、わたしは、このプリアンプの後にコンプレッサーやコーラスなどを繋いで何とか凌ぎましたね。コンドーさんはNeveのプリアンプをイメージした4バンドEQ、DI及びラインアウト搭載のPhoenix Audio DRS-Q4M Mk.2でピックアップの補正を行っており、一聴した限りでは近接効果によるローの膨らみや不要なノイズをうまく処理しているようです。しかし、当初はソケット部にシールドを施しながら "ダメだ、良くねーなぁ" と何度も試行錯誤していただけに、プリアンプの4バンドEQ及び120Hzでカットするハイパス・フィルターだけでこれら不要なノイズを均せるのかは疑問。たぶんDPAのミニチュア・マイクが無指向性というところに秘密があるのかも・・。



さて、DPAのコンデンサー型マウスピース・ピックアップ。確かにピエゾ型のマウスピース・ピックアップと比べて、アコースティック楽器の持つ '鳴り' の空気感、豊かな倍音の再生などはよく捉えていると思います。しかし一方で鋭くなった感度の分、余計なノイズの増幅やハウリングの誘発にシビアとなることは覚えておいた方が良いでしょうね。楽器を握ったり触ったりするだけで 'ギュッ、サワサワ、カチャカチャ' とBarcus-berryのヤツは結構耳障りに '増幅'・・。基本的にこれらはアコースティック用アンプなどの再生には向かず、DIからPAミキサーへラインで引き回してパワード・モニターで再生するのがベターです。

実はこのDPAやBarcus-berry 6001のほか、マウスピース・ピックアップにコンデンサーマイクを採用したものとしてドイツのRumberger Sound Products K1Xというのがあります。eBayからも購入することが可能ですが、さすがにコンデンサーマイクだけに価格は5万弱と結構しますねえ。

Rumberger Sound Products K1X ①
Rumberger Sound Products K1X ②

DPAのもそうですが、このRumberger K1Xもワイヤレス・システムに組み込み使うことが可能なので、ステージ上を電気楽器のアンサンブルの中で派手に動き回りたい場合、ベルに取り付けるグーズネック式のコンデンサーマイクに比べてある程度のハウリングに威力を発揮するかもしれませんね。真ん中のRumberger K1X、スタンドにセットしたダイナミック・マイクSM58、ビデオカメラ内蔵のマイクによる収音での比較では、K1Xの近接ながらピエゾよりエアー感ある音色なのが分かります。コンドーさんが本製品の情報を知っていたら、たぶんオリジナルで試行錯誤せずこっちを使っていたかも。

Barcus-berry C5600①
Barcus-berry C5600②

こちらは厳密にはコンデンサーマイクではなく、9V電池で駆動するエレクトレット・コンデンサー・ピックアップ。'エレアコ' 用ピックアップやプリアンプ製作の老舗であるBarcus-berryは、このベルクロで管楽器のベル内に取り付けるピックアップを唯一現行製品としてハーモニカ用はC5600、サックス/クラリネット用はC5200の型番でラインナップしております。ただし、ピックアップと9V電池内蔵のバッファー・プリアンプ3000Aの接続にRCA端子を使うなど、頻繁に抜き差しする箇所で 'ヤワな作り' (RCAは耐久性が低い)となっており、ホント、結構な価格設定のくせにここだけがこの会社の製品に共通する不満ですねえ。





PiezoBarrel on eBay

そして、わたしも現在愛用中のオーストラリア在住Steve Fransisさんのブランド、PiezoBarrelから、いよいよMonette型(Monette製ではない)のヘヴィタイプに装着されたマウスピース・ピックアップ登場です!従来のBach型(Bach製ではない)マウスピースへのソケット加工では、どうしてもサックス用マウスピースのような肉厚に穴を開けてマウントすることができず、マウスピースのシャンク部分を平らに削り、その上から半田で '乗せて' 固定するしかありませんでした(実際、わたしのは一度半田が取れた)。この肉厚なMonette型であれば、もう少しシャンク部分を削ることが可能だと思うのですが・・ムム。気になった方は是非eBayから注文して試してみて下さいませ。また、PiezoBarrelを用いた管楽器奏者による動画も僅かながらYoutubeに上り始めておりますが、このヴァルブ・トロンボーンの方は興味深いですねえ。マウスピースのシャンク部分のスペースが取れなかったのか、カップ部分に穴を開けて装着した為、当然ながらプシャ〜っと息の混じったトーンで拾っております。'アコギ' でもそうなんですがピエゾ・ピックアップは取り付ける位置により収音が激変するんですよね。このカップ部分への穴を開けた取り付けは、実はBarcus-berryのマウスピース・ピックアップでも推奨されていた取り付け方でして、創業者のLester M. BarcusとJohn F. Berryのふたりの名で1968年出願、1970年に公開された図面でもこのかたちで特許を取っておりました。う〜ん、こういう 'サブトーン' ぎみなサウンドを狙うのでなければ、個人的には、やはりシャンク部分に穴を開けて取り付けた方が扱いやすいですヨ。