ラテン・アメリカの文化圏の中でもブラジルは特別な存在ではないでしょうか。唯一ポルトガル語を公用語としているほか、俗に ‘音楽大陸ブラジル’ などと呼ばれるように、そこにはアフリカとヨーロッパからの影響が ‘異種交配’ した独自の血脈を誇っています。伝統的なショーロやサンバ、ブラジル最初の ‘新世代’ とも呼べるボサノヴァといった下地が、そのまま現在まで豊富なポップ・ミュージックの ‘前衛’ として息づいているのです。アントニオ・カルロス・ジョビンとジョアン・ジルベルトのボサノヴァによる産声は、より大衆的なスタイルで世界から愛されたセルジオ・メンデス、ロック世代と ‘共闘’ するかたちでマルコス・ヴァーリやジルベルト・ジル、カエターノ・ヴェローゾらMPB世代に引き継がれ、新たなブラジル流 ‘ポップ’ を世界に証明しました。
ブラジル北東部はペルナンブーコ州の土着音楽をルーツに、ボサノヴァなどとミックスしたスタイルでMPBを代表するエドゥ・ロボ。アマゾン出身で現在はニューヨークを拠点に活動するヴィニシウス・カントゥアリアのルーツ的存在とも言えますね。
このPerfumeの30年先を行ったような、ヴォコーダー全開のエグベルト・ジスモンチによる異色エレクトロ・ポップ 'Coracao Da Cidade' を始め、ミルトン・ナシメント、エルメット・パスコアールといったプログレッシヴなスタイルで世界へ打って出る者たち、ジャズやフュージョンのアレンジで1970年代に活躍したデオダートなど、ブラジルから発信されるその ‘引き出しの多さ’ は世界的にも類を見ません。そのプログレッシヴさが 'サマー・オブ・ラヴ' の空気と濃密に溶け合った奇跡の一枚として、タンバ・トリオのピアニスト、ルイス・エサが 'Familia Sagrada' というコミューン的グループで1970年に制作したのがコレ。1曲目のミルトン・ナシメントのカバー、'Homen Da Sucursal / Barravento' による変拍子全開の疾走感からヤラレてしまいます!一方で、ザ・ビートルズに代表されるロックがもたらした ‘世界同時革命’ 的な影響は、ブラジルのシーンからも奇妙なフォロワーたちが続出したことはもっと特筆してもよいと思います。彼らは、マルコス・ヴァーリやカエターノ・ヴェローゾほど世界的な成功を手にすることはありませんでしたが、しかしブラジルという土壌においてのみ可能となった ‘捩れたポップ’ を世に問い、それは音楽産業の停滞した現代において新たな道標ともいうべき光を投げかけています。サンバ、ボサノヴァ、ジャズ、ロックンロール、サイケデリック、R&B、ラテン、現代音楽といったあらゆる要素を飲み込み、今の耳で聴いてみてもこれほどプログレッシヴなものはありません。それでは、ブラジル流 ‘捩れたポップ’ の一端を覗いてみましょう。
ブラジル北東部はペルナンブーコ州の土着音楽をルーツに、ボサノヴァなどとミックスしたスタイルでMPBを代表するエドゥ・ロボ。アマゾン出身で現在はニューヨークを拠点に活動するヴィニシウス・カントゥアリアのルーツ的存在とも言えますね。
このPerfumeの30年先を行ったような、ヴォコーダー全開のエグベルト・ジスモンチによる異色エレクトロ・ポップ 'Coracao Da Cidade' を始め、ミルトン・ナシメント、エルメット・パスコアールといったプログレッシヴなスタイルで世界へ打って出る者たち、ジャズやフュージョンのアレンジで1970年代に活躍したデオダートなど、ブラジルから発信されるその ‘引き出しの多さ’ は世界的にも類を見ません。そのプログレッシヴさが 'サマー・オブ・ラヴ' の空気と濃密に溶け合った奇跡の一枚として、タンバ・トリオのピアニスト、ルイス・エサが 'Familia Sagrada' というコミューン的グループで1970年に制作したのがコレ。1曲目のミルトン・ナシメントのカバー、'Homen Da Sucursal / Barravento' による変拍子全開の疾走感からヤラレてしまいます!一方で、ザ・ビートルズに代表されるロックがもたらした ‘世界同時革命’ 的な影響は、ブラジルのシーンからも奇妙なフォロワーたちが続出したことはもっと特筆してもよいと思います。彼らは、マルコス・ヴァーリやカエターノ・ヴェローゾほど世界的な成功を手にすることはありませんでしたが、しかしブラジルという土壌においてのみ可能となった ‘捩れたポップ’ を世に問い、それは音楽産業の停滞した現代において新たな道標ともいうべき光を投げかけています。サンバ、ボサノヴァ、ジャズ、ロックンロール、サイケデリック、R&B、ラテン、現代音楽といったあらゆる要素を飲み込み、今の耳で聴いてみてもこれほどプログレッシヴなものはありません。それでは、ブラジル流 ‘捩れたポップ’ の一端を覗いてみましょう。
まずは、ブラジルで吹き荒れた 'ビートルズ・ショック' を受けて、カエターノ・ヴェローゾやジルベルト・ジルを中心に音楽、美術、映画などアート全般で起こったムーヴメント 'トロピカリア(トロピカリズモ)' の一端を担うグループ、オス・ムタンチス。アルナルドとセルジオ・ヂアスのバチスタ兄弟と紅一点ヒタ・リーによるこのトリオは、ブラジルにおけるサイケデリックやプログレッシヴ・ロックの先駆けとして、この後に続くブラジルの 'カウンター・カルチャー' 世代に強い影響を及ぼしています。
●Love, Peace & Poetry: Brazilian Psychedelic Music Vol.6
→Love, Peace & Poetry: Brazilian Psychedelic Music Vol.6
まずはこちら、’Love, Peace & Poetry’ シリーズのひとつであるコンピレーション ‘Brazilian Psychedelic Music Vol.6’。サイケデリックな音源を得意とするNormal Recordsが1998年から2008年まで断続的にリリースしてきたもので、いわゆる ‘辺境グルーヴ’ などと呼ばれる南米やアフリカ、トルコといった珍しい国々はもちろん、欧米から見た日本やアジアの音源をコンパイルした独自のものでした。残念ながら本作は視聴制限のため貼り付けられませんが(マルコス・ヴァーリの曲が引っかかっているのかも)、Youtubeの方ではフル・アルバムが視聴できますのでそちらでどーぞ。ちなみに全10作からなるシリーズのラインナップは以下の通り。
→Love, Peace & Poetry: Brazilian Psychedelic Music Vol.6
まずはこちら、’Love, Peace & Poetry’ シリーズのひとつであるコンピレーション ‘Brazilian Psychedelic Music Vol.6’。サイケデリックな音源を得意とするNormal Recordsが1998年から2008年まで断続的にリリースしてきたもので、いわゆる ‘辺境グルーヴ’ などと呼ばれる南米やアフリカ、トルコといった珍しい国々はもちろん、欧米から見た日本やアジアの音源をコンパイルした独自のものでした。残念ながら本作は視聴制限のため貼り付けられませんが(マルコス・ヴァーリの曲が引っかかっているのかも)、Youtubeの方ではフル・アルバムが視聴できますのでそちらでどーぞ。ちなみに全10作からなるシリーズのラインナップは以下の通り。
●American, Vol.1 (1998年)
●Latin American, Vol.2 (1998年)
●Asian, Vol.3 (2000年)
●Japanese, Vol.4 (2001年)
●British, Vol.5 (2001年)
●Brazilian, Vol.6 (2003年)
●Mexican, Vol.7 (2003年)
●African, Vol.8 (2004年)
●Turkish, Vol.9 (2005年)
●Chilean, Vol.10 (2008年)
どれも1960年代後半のプレイボーイ誌あたりからのガーリーな60’sガールのピンナップをジャケットにしていて、これだけでも集めてみようか、という気にさせてくれます。しかしこの ‘ブラジル編’ は見事にどれも知らない名前ばかり。
この 'Love, Peace & Poetry: Brazilian Psychedelic Music' からOs Brazoesの 'Tao Longe De Mim' をどうぞ、って言ってもまったく説明する術を持ちません。このコンピレーションからは、かろうじて17曲目にマルコス・ヴァーリの ‘Revolucao Organica’ が入っていますが、これもヴァーリがサイケでプログレしていた頃のアルバム ‘Vento Sul’ からの選曲ということで、さすがのマニアぶり。いよいよレア・グルーヴもここまで発掘するかと感服します。ともかくファズやワウワウ、深いリヴァーブやエコーというサイケデリックな音像を振りまきながら、どこか亜熱帯的な陽気さと呪術的なおどろおどろしさが同居しているようで、その裾野はこれほど深かったのかと驚くばかりです。これらの持つサイケデリックな要素は、同時代の日本のバンドで、水谷孝の裸のラリーズや早川義夫のザ・ジャックスなどと呼応するでしょうね。
この 'Love, Peace & Poetry: Brazilian Psychedelic Music' からOs Brazoesの 'Tao Longe De Mim' をどうぞ、って言ってもまったく説明する術を持ちません。このコンピレーションからは、かろうじて17曲目にマルコス・ヴァーリの ‘Revolucao Organica’ が入っていますが、これもヴァーリがサイケでプログレしていた頃のアルバム ‘Vento Sul’ からの選曲ということで、さすがのマニアぶり。いよいよレア・グルーヴもここまで発掘するかと感服します。ともかくファズやワウワウ、深いリヴァーブやエコーというサイケデリックな音像を振りまきながら、どこか亜熱帯的な陽気さと呪術的なおどろおどろしさが同居しているようで、その裾野はこれほど深かったのかと驚くばかりです。これらの持つサイケデリックな要素は、同時代の日本のバンドで、水谷孝の裸のラリーズや早川義夫のザ・ジャックスなどと呼応するでしょうね。
●Brazilian Guitar Fuzz Banas: Tropicalia Psychedelic Masterpieces 1967 - 1976
→Brazilian Guitar Fuzz Bananas: Tropicalia Psychedelic Masterpieces 1967 - 1976
これまた強烈なブラジルの 'サマー・オブ・ラヴ' の季節を記録したコンピレーション。本盤はエンハンストCDとなっており、このコンピレーションのバックグラウンドなどをいろいろと解説してくれています。しかし、1曲目のテレビ・ドラマ「バットマン」のテーマ曲など、ここまで時代の空気を受けてサイケな感じになるとは・・面白い!
そんな 'Brazilian Guitar Fuzz Bananas' の中でもお気入りなのがこの曲、1969年に7インチ・シングルとしてリリースされたCom Os Falcoes Reaisの 'Ele Seculo XX'。いや〜、トリップしそうなくらいに強烈なエコーとワウギター、チープなコンボ・オルガンの疾走感がたまりません。
●Soul Braza: Brazilian, 60's & 70's Soul Psych Vol.1
→Soul Braza: Brazilian, 60's & 70's Soul Psych Vol.1
→Soul Braza: Brazilian, 60's & 70's Soul Psych Vol.2
こちらも 'Brazilian Guitar Fuzz Bananas' の姉妹編のような内容で、ポルトガルのNosmokeなるレーベルからのコンピレーション、それも2枚に渡ってブラジル流サイケの真髄を味わうことができます。タイトルに 'Soul Braza' とあるように、こちらはR&Bやファンクのエッセンスを抽出する '黒い' ブラジルが漲っています(リンク先視聴可)。
いきなりジミ・ヘンドリクス的なワウファズ・ギターから、ブラジル風爽やかなフォークっぽい歌を挟みつつサイケな展開で進むThe Jonesの 'Hey Mina (Foul)'。ちょっとチャーリー•コーセイが歌う 'ルパン三世' の世界と同質なものを感じてしまいました。
●Culture of Soul presents The Brasileiro Treasure Box of Funk & Soul→Soul Braza: Brazilian, 60's & 70's Soul Psych Vol.2
こちらも 'Brazilian Guitar Fuzz Bananas' の姉妹編のような内容で、ポルトガルのNosmokeなるレーベルからのコンピレーション、それも2枚に渡ってブラジル流サイケの真髄を味わうことができます。タイトルに 'Soul Braza' とあるように、こちらはR&Bやファンクのエッセンスを抽出する '黒い' ブラジルが漲っています(リンク先視聴可)。
いきなりジミ・ヘンドリクス的なワウファズ・ギターから、ブラジル風爽やかなフォークっぽい歌を挟みつつサイケな展開で進むThe Jonesの 'Hey Mina (Foul)'。ちょっとチャーリー•コーセイが歌う 'ルパン三世' の世界と同質なものを感じてしまいました。
こちらは去年リリースされたコンピレーション。1曲目こそジージーしたファズが唸るサイケ調ギターによるAntonio Carlos & Jocafiの 'Quem Vem La' で始まるものの、本盤は 'Funk & Soul' のタイトル通り、サイケデリックから1970年代のブラジリアン・フュージョンを通過したようなブラジル流R&Bスタイルまで、幅広い選曲となっております(リンク先視聴可)。
Francoの 'El, Voce, Psiu !' って誰?って感じですが、すでに1974年ということでディスコの足音が聴こえてくる頃ですね。クール&ザ・ギャング風ファンク・ブギーという感じでミラーボールが回ります。
お、ブラジルといえばボサノヴァは・・ということで、こんなマニアックなヤツを。1970年にPete Jacques Orchesterがリリースした 'Round Trip To Rio' から 'Fata Morgana'。実はブラジル産ではなくスイス産の 'なんちゃって' ボサノヴァ。ワルター・ワンダレイを例に出すまでもなく、ボサノヴァは世界中のリゾート地で '粗製乱造' された 'エレベータ・ミュージック' としての役割も担っていたのです。しかし、本曲はボサノヴァ+ブレイクビーツといった感じのかなり先駆的な作りで、今やダンスフロアーの隠れた 'キラーチューン' で御座います。そして、そんなボサノヴァとブレイクビーツの親和性が '化学反応' し、英国のダンスフロアーから火が付いたドラムンベースを、ニューヨークの '吟遊詩人' にしてブラジルの血を滴らせるアート・リンゼイがナナ・バスコンセロスのビリンバウと共に '換骨奪胎' してみせた 'Mundo Civilizado' から 'Complicity' を。さて、そんなブラジルは今年リオでオリンピックを開催します。経済最悪、治安最悪なブラジルではありますが、世界はそんな '音楽大陸' の中で見つけるでしょう・・
"何を?" "永遠を!"
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