2018年3月4日日曜日

'On The Corner' - 前編 (再掲)

1972年の ‘On The Corner’ から出発しよう。この錯綜するポリリズムの喧噪をどう表現すればよいのだろうか?まるで、カーステを唐突に触って耳に飛び込んできたような衝撃、助走のないグルーヴの混沌は、しばし身体を預けるためのチューニングに時間を要するだろう。その長いイントロダクションの間、主役’ は勿体つけたように引きつったリズムの影に隠れながら、むしろ積極的に打楽器としての役割で混じり合おうとしている。



早速、自叙伝から本人による ‘取り扱い説明書’ を開いてみる。

オレが「オン・ザ・コーナー」でやった音楽は、どこにも分類して押し込むことができないものだ。なんて呼んでいいのかわからなくて、ファンクと思っていた連中がほとんどだったけどな。あれは、ポール・バックマスター、スライ・ストーン、ジェイムズ・ブラウン、それにシュトゥックハウゼンのコンセプトと、オーネットの音楽から吸収したある種のコンセプト、そいつをまとめ上げたものなんだ。あの音楽の基本は、空間の扱い方にあって、ベース・ラインのバンプと核になっているリズムに対する、音楽的なアイデアの自由な関連づけがポイントだった。オレは、バックマスターのリズムと空間の扱い方が気に入っていた。シュトゥックハウゼンが好きになったのも、同じ理由だった。これが、「オン・ザ・コーナー」に持ち込もうとしたコンセプトだった。それは、新しいベース・ラインに合わせて、足でリズムが取れるような音楽だ。

この音楽は、当初から多くの ‘記号’ を纏いながら、あらゆる ‘ジャンル’ という括弧からこぼれ落ちるような存在として自立している。インドの民俗楽器、ファンクの黒いストリート感覚とジェイムズ・ブラウン、スライ・ストーン、オーネット・コールマン、ヒップ・ホップのルーツ的グループと呼ばれるザ・ラスト・ポエッツ、そして、ポール・バックマスターを通じてもたらされたカールハインツ・シュトゥックハウゼンとヨハン・シュトゥラウス・バッハら錚々たる ‘振れ幅’ は、この ‘謎解き’ に用意された地図であると同時に、深い迷宮へと誘う ‘だまし絵’ の役割を果たす。マイルス・デイビスなど知らない黒人のガキどもへ届けとばかりに送り出されながら、しかし、ほとんど聴衆不在となった ‘黄色いジャケット’ の意匠。このアルバムの ‘共犯者’ として選ばれたポール・バックマスターでさえ、まるで躊躇われるように近づくことができない。ただ、焚きつけるような ‘アフォリズム’ を宙に放っただけだ。


それでもこの、一切自立しているような ‘黄色いジャケット の周りにあらゆる点と線を結び付ける ‘地図’ を描き出すことは可能だ。なぜなら、このアルバムは40年以上経った現在においても強烈にその匂いを放ち、多くの ‘越境者’ を虜にする魅力を纏っている。

すでに、このアルバムに付随するダブ、ヒップ・ホップ、ドラムンベースといった ‘ジャンル’ の先駆者としての位置づけで語ることも陳腐化し、’On The Corner’ を巡る語彙とバックグラウンドは拡大したが、それは ‘言説化’ されなかったタームがテクノロジーの進化と共に鮮明となったにすぎない。もちろん、デイビス本人も現在のストリートの潮流を見越して ‘先取り’ したわけではないだろう。しかし面白いのは、現在のストリートを占拠しているダブやヒップ・ホップの手法が、この1972年の ‘On The Corner’ と並行して勃興していることである。’On The Corner’  ‘秘術的な’ ミックスを手がけたテオ・マセロの頭の中にあったのは、むしろ、ピエール・シェフェール以降のミュージック・コンクレートなどのカットアップやテープ編集の手法であった。それらは現代音楽における緻密なコンテクストと編集作業によって進められるものだが、キングストンの限られた環境においてリディムのリサイクルからミックスの ‘換骨奪胎’ に挑むダブや、ニューヨークのストリートに二台のターンテーブルを引っ張り出し、剽窃と誤用’ によりレコードの意味を変えたブレイクビーツの手法と比べても、そのバックグラウンドは異なれ、驚くほど近似的なアプローチを取っている。また、ミュージック・コンクレートやシュトゥックハウゼンのライヴ・エレクトロニクスによる密室的な作業に比べ、ダブやヒップ・ホップの手法は、貧しい環境と編集による再生産の解釈がそのまま、音楽市場の商業主義に対する ‘批評的行為’ として機能したことに意味があった。それは孤立無援であった ‘On The Corner’ の惨敗に対し、ダブはレゲエのマーケットを超えて生み出される副産物の ‘リミックス’ として発展し、ヒップ・ホップのブレイクビーツにおける ‘再生産’ は、1980年代以降のサンプラーやシーケンサーなどのテクノロジーと共に ‘ループ’ という概念へと変化したことからも明らかだ。このような黒人の身体感覚と限定的なテクノロジーによるダブ、ヒップ・ホップと、スタジオの密室的な実験精神から生み出される ‘On The Corner’ の手法は、現在の袋小路なポップ・ミュージックの突端にそびえ立つ ‘前衛’ そのものとして未だ有効である。





また、’On The Corner’ のグルーヴとの ‘相似性’ として、これらと並行するように展開していたアフリカのフェラ・クティを始めとする ‘アフロ産ファンク’ との共通項がある。’On The Corner’ 惨敗の要因のひとつが、当時の米国の潮流であるファンクとの ‘連帯感’ の無さだ。アフリカン・アメリカンでありながら、ジェイムズ・ブラウンやスライ・ストーンを聴いて出来上がったのが ‘On The Corner’ というアルバムであるところに、マイルス・デイビスの深い闇がある。これは、同じように孤立しながら独自の手法を深化させ、後に ‘ハーモロディクス’ という概念へと統合させたオーネット・コールマンと被さる。彼らはまさに ‘異邦人としての米国’ を体現した存在であり、ブルーズやファンキーというレッテルと共にこの問題の根は深い。我々が現在認識している黒人音楽のグルーヴと呼んでいるものの大半は米国産だが、当然、米国の黒人に対してジャマイカの黒人とナイジェリアの黒人ではリズムの取り方が違う。アフロビートと呼ばれるグルーヴの元にジェイムズ・ブラウンのファンクとの関係があるが、ある意味でそれは ‘誤用’ による多様性の現れである。レゲエのルーツであるスカやロック・ステディが、そもそもはカリブ海を隔ててラジオから流れてくるR&B ‘ジャマイカ流’ 解釈として始まったのも同様だ。





’On The Corner’  ‘誤用’ は未だフォロワーを持たない自立した存在だけに、アフロ’ という感覚的なニュアンスに対する ‘反語’ として、これら特異なグルーヴを並べてみることには意味があるだろう。すでに1975年、ドイツの評論家兼音楽家であるマンフレット・ミラーは ’Stereo’ 誌のレビューで “サウンドストリーム(音の潮流)及び、断片的なソロに代わって、リード・シンガー役を努める合唱隊の礎として、幾重にも織られたリズム・ライン(ドラム合奏)がある、西アフリカの儀式舞の原理に基づいた音楽” であると、’On The Corner’ について卓見した内容を述べている。おおよそ、ファンキーな連帯感やアフロという観念的な印象からも遠いように聴こえるいびつな ‘On The Corner’ を前に、そのリズム構造とアフロの感覚に着目しているのはさすがだ。

‘On The Corner’ 最大のアフォリズムとして、現在までほとんど触れられていないのがドイツの現代音楽作曲家、カールハインツ・シュトゥックハウゼンの影響である。このアルバム以降、ことあるごとにデイビスは自らの音楽の源泉としてその名前を口にするが、このふたりの関係を結び付ける言説は未だ登場していない。むしろ、スライ・ミーツ・シュトゥックハウゼン’ というスローガンだけが一人歩きして、それがクールだという素振りに終始している。


1966年、東京の内幸町にあったNHK電子音楽スタジオを訪れたシュトゥックハウゼンが、そこの電子機器を用いて '作曲・初演' した作品 'Telemusik'。シュトゥックハウゼンによれば、本作は '多チャンネルの特殊な再生方法による音響空間の造型' と '演奏という、ある意味での不確定な要素を電子音楽に持ち込むことによるある種の人間性復活' にあるとしている。タイトルの 'Telemusik' の 'tele' は、telephone、televisionの 'tele' であり、時間的、空間的、精神的、内容的にも '隔たり' または '違い' を意味する。本作の再生にあたり、5台のスピーカーを非対称の5点に(5角形)配置し、その向きは、あるスピーカーに対する反対側の2台のスピーカーを結ぶ直線の中心に向ける(それぞれの方向は中心の1点には結ばれない)。そして、再生時にはシュトゥックハウゼン自身が5台のスピーカーの中心で、5チャンネル・ミキシング回路を操作し、聴衆はスピーカーの内側で中心に向かって位置する。大掛かりな3群オーケトラによるアコースティックでの音響生成と空間音楽を目指す 'Gruppen' のエレクトロニクス版ともいうべき本作だが、その制作手法のひとつに、日本を始めとした世界各地で録音された音の断片をコラージュ的に用いている。それは、奈良のお水取りや雅楽、薬師寺、高野山、アマゾン、南サハラ、スペインの片田舎、ハンガリー、バリ島、ヴェトナムの山奥、あるいは中国からの音素材を基にしているという。このような手法についてシュトゥックハウゼンはこう述べている。

"電子音楽を作るとき、これらの音をすべて一緒にして、それぞれを同じ次元で考えようとする。つまりそこで時間、歴史(伝統)、空間という3つの異なった要素を一緒にすることができる。わたしの作った作品はユートピアへの志向であり、予想であって、そこには時間も空間も存在しない。"

ちなみにこの 'Telemusik' は、バックマスターが差し出したシュトゥックハウゼンのレコードのうち、'Gruppen' と共にあった一枚 'Mixtur' (Grammophon 137 012)とのカップリングによるA面に収録されていたものだ。まさに '混合' と題されたこの 'Mixtur' こそライヴ・エレクトロニクスの端緒とされる作品で、オーケストラ編成から 'モメント' と呼ばれる20のブロックとして取り出したものをフィルター処理やリング・モジュレーターで変調、音響合成するものである。果たして、'On The Corner' におけるA面を占める1曲 'On The Corner (2:58)〜New York Girl (1:32)〜Thinkin' One Thing and Doin Another (6:45)〜Vote for Miles (8:45)' の連続する主題の転換と、同一曲のベーシック・トラックを用いながら '断片' として切り分けていく 'Black Satin' と 'One and One'、そしてこれらの主題が混ぜ合わされていく 'Helen Butte〜Mr. Freedom X' という 'ふたつ' の対照的な様式に 'モメント' は影響を与えているのか、その興味は尽きない。また、アルバムのコンセプトなどにも多くのサジェッションを与えたと言われているバックマスターは、アイデアの源泉としてデイビスにこんな '哲学' をぶちまけている。

要するに、抽象性をおおいに取り入れ、一種の ‘宇宙的パルス’ を生み出すことだった。マイルスには「物事というのは、オンかオフか、そのどちらか一方だ。現実とはオンとオフの連続によって成り立っているんだ。」というようなことを話した。なんともクレイジーなアイデアだがね。私が言いたかったのは、音というのはその前後、もしくは隣に静寂さを伴っていなければ、何の意味も持たないということさ。静寂が音楽を作り、音楽の一部だということを言いたかったんだ。シュトゥックハウゼンもかつてこう言っていた。「おまえに聞こえる音の隣にある音を出せ」と。そこで私もマイルスに「オンかオフの宇宙的パルスを持つストリート・ミュージック」というようなことを言ったわけさ。マイルスはそのアイデアを気に入り、アルバムのタイトルだけでなく、表ジャケットには「オン」、裏ジャケットには「オフ」という言葉を使ったよ。

1960年代、ビートニクらカウンター・カルチャーの世代からフラワー・ムーヴメントに至る影響まで、インド哲学や東洋思想などが過度に持て囃され、それまでのキリスト教的価値観に対する大きな疑問符が突きつけられた。知識人の中からも、哲学とフロイト精神分析における権威であったジャック・ラカンや、現代音楽におけるジョン・ケージが鈴木大拙を通じて理解する禅の思想、そしてシュトゥックハウゼンもまた、理論を超えた誇大妄想的な宗教的言説に塗れていく頃でもあり、バックマスターの発言にはそんな時代の雰囲気が大きく作用している。また、デイビスのシュトゥックハウゼンへの理解が、あくまでバックマスターというフィルターを通して見ていたことにも留意したい。



そんな ‘On The Corner’ に強い影響を及ぼしたシュトゥックハウゼンだが、その逆に、シュトゥックハウゼンへはどのように波及したのだろうか。この1975年の小品は 直観音楽’ と称して、従来のセリーや図形楽譜からのコンテクストを脱し、即興演奏をさらに ‘直観’ なる哲学に基づいたコレクティヴ・インプロヴィゼーションにより イメージの具象’ へ挑んだものである。1970年の大阪万国博の帰りに立ち寄ったスリランカでの体験を元に書いた ‘Ceylon’ と、1975年の ‘Bird of Passage’ B面に配されているが、その ‘Bird of Passage’ の方に、息子のマルクスが ‘On The Corner’ に触発されたような ‘アンプリファイ’ によるトランペットで参加している。クラシックと現代音楽を専攻し、父親の難しいスコアも吹きこなすマルクスだが、一方でジャズにも強い関心を持ち、当時、自らのジャズ・ロックのグループで活動していた。また、本盤ではカールハインツ自らも民俗楽器のKandy Drumやフルートを持ち、演奏に参加しており、ワウワウの効いたトランペットと無調によるエレクトロニクスが錯綜する中、まるでデイビスとシュトゥックハウゼンの ‘擬似共演’ を聴いているようでもある。



‘On The Corner’ は、その不可解な構成を伴ったアルバムであることに反し、制作の元となっている素材やアイデアなどについては広く流布する希有な一枚でもある。前述したように錚々たる名前が彼の自叙伝を飾り、それでも出来上がった内容に関して誰も批評することができないことに、デイビスはある種の快感と苦痛を伴っていたはずだ。快感とは、批評家を混乱させることであり、苦痛とは、これがどこのマーケットにも届かなかったという無理解である。しかし、シュトゥックハウゼンを単なる戦略的なタームで煙に巻いたものとして見るべきなのか。デイビスはご丁寧にも、まるで ‘On The Corner’ 解読の ‘処方箋’ の如く ‘Gruppen’  ‘Telemusik’ ’Mixtur’ のレコードを繰り返し聴いて ‘On The Corner’ を制作したことを述べているのである。そこにはデイビスの ‘On The Corner’ 創作の前後として、最も近しい関係であったスライ・ストーンの ‘暴動’ から ‘Fresh’ の創作期間が対を成す。頻繁にスライのスタジオに顔を出し、彼の制作過程も目の当たりにした上で、そこに差し出されたシュトゥックハウゼンのレコードを繋げたところに ’On The Corner’ 接近の鍵が隠されている。薬物とスターの軋轢により自我が崩れ始め、延々として制作の進行しないスライを訪ねる1970年の精力的なデイビスと、自動車事故の後遺症から再び薬物に溺れ始め、片や健康を取り戻しつつあるスライのスタジオに度々顔を出す1973年の病み始めたデイビス。この交差する関係性が ‘On The Corner’ に落とす影響は甚大だ。作品というひとつの枠組みの中にあらゆるパースペクティヴを内包するデイビスの音楽の特徴にあって、’On The Corner’ はその枠組み自体をファンクから現代音楽、インドの民俗楽器などがエレクトロニクスを通じてまき散らしたまま、あちこちで放棄されている。むしろ、その散りばめられたピースを積極的に聴き手自身で組み立てることを奨励しているようにさえ聴こえるのだ。ちなみにここで無機質にテンポを刻むリズム・ボックスは、スライが失った 'ザ・ファミリー・ストーン' に代わりスライ流 '冷たいファンク' の出発点となり、これは、そのままデイビス自身も1973年の来日公演を機にバンドへ導入、ムトゥーメの担当する打楽器のひとつとなった。


シュトゥックハウゼンを持ち込んだ ‘張本人’ であるポール・バックマスターは、デイビスにとって ‘On The Corner’ のコンセプトを手順よく進めて行く上での ‘設計者’ であり、多くの偶発的な要素を呼び込む ‘触発的存在’ であった。シュトゥックハウゼンのレコードを聴き、いくつかのアイデアの交換を元に設計図をバックマスターが書き上げ、そこから実際の現場で取捨選択していく ‘指揮者’ としてのデイビス。さらに、そのラフなスケッチ的セッションを元にデイビスの指示した ‘完成図’ に従い、テオ・マセロがテープを編集する。これが ‘On The Corner’ 制作プロセスのすべてである。’In A Sirent Way’  ‘Bitches Brew’ のカバーに小さく書かれた ‘マイルス・デイビス監督による音楽’ という ‘注意書き’ は、むしろこの ‘On The Corner’ においてこそ徹底していると言っていいだろう。もちろん、テクスト先行の現代音楽を教条的に受け取り ‘On The Corner’ へ結び付けてしまう愚行を犯す恐れはあるが、しかし、単なる ‘マイルス・デイビス流ファンク’ とするだけでは片手落ちなほど、アイデアの源泉としてのシュトゥックハウゼンの影響は濃いと見るべきだ。ちなみにバックマスターは、レコーディング・セッションのアイデアをデイビスに求められて、デイビス近年の作品に提示されて、またシュトゥックハウゼンの作品にも顕著な不規則テンポ(アウト・オブ・タイムのパッセージ)を活用したらどうなるか見てみたい、と答えている。厳密なシュトゥックハウゼンのテクストに従っていなくとも、混乱するアイデアの状況を前に、デイビスにとってシュトゥックハウゼンの ‘ガイド’ は制作を進めていく上での大きな指針となった。

以下は、バックマスターが詳述する ‘セッション’ の中身。

あらかじめ記譜しておいたのは、ベース・フィギュアとドラムのリズムと、あとはそれに合わせてタブラとコンガと、キーボードのフレーズが1、2個。実際、まるまる一曲譜面にしておいても、いざスタジオに入ってみると、キーボードはそれらのフレーズに一応触れはしても、しまいにはすっかり変えてしまう。最初は大体正確に弾いているんだけれども、そのうちだんだんシュトゥックハウゼン流に変形してしまうんだ。少しずつ元のフレーズがわからなくなって最後にはまったく別のものになっていくわけだ。転調する場所も書いておいたのに、リハーサルしないから、転調もされない。僕は譜面のコピーをとって、ミュージシャン達に配ったし、マイルスがそう言うから、ベースのパートやドラムのパートを彼らに歌って聴かせたり、キーボードのフレーズをチェックしたりしていたんだ。ところが、それもろくろく済まないうちに、マイルスが「オーケー、それで充分だ!」と言って、指を鳴らしてテンポをとり出した。そうして始まって、「オーケー、それまで。聴き返してみよう」とマイルスが言うまで30分も延々と続いたかな。もしも、もっとリズムがはねて欲しい、もしくはだらっとして欲しいと思った時は、肩をすくめるあの独特の仕草で表現するのさ。曲をおしまいに持っていくのもやっぱり動作、手のジェスチャーでね。





ポール・バックマスターがデイビスと知り合い、そこで自らのデモテープを聴かせてお墨付きをもらったのは1969年であった。この年、バックマスターはキーボードのティム・マイクロフトと共にSounds Niceの名義で、いわゆるレコード会社の ‘企画もの’ 的イージー・リスニングなロック・アルバム ‘Love At First Sight’ において早くも野心的な試みを探求する。また、ブライアン・ジョーンズ追悼の意でトリを務めたザ・ローリング・ストーンズや、鮮烈なデビューを果たすキング・クリムゾンらと共に 'チェンバー・ロック' でプログレの新機軸を打ち出したサード・イヤー・バンドの一員として、ハイドパークのフリー・コンサートに出演するバックマスター。これ以後、デイビスの ’In A Silent Way’  ‘Bitches Brew’ の革命的な ‘転向’ はバックマスターの血肉となり、1972年の ‘On The Corner’ に至る長い準備期間となった。1970年に制作され翌年リリースされたアルバム ‘Chitinous’ は、バックマスターが指揮を取り、ブリティッシュ・ジャズ・ロックの錚々たるメンツを集めた壮大なオーケストラ作品である。弦楽とジャズ・ロックのエレクトリックな響き、インドのタブラなどが融合し、そこかしこに当時のデイビスからの影響がある。そして1972年の5月にニュー・ヨークの自宅に呼ばれ、その後一ヶ月近くをデイビスと共同生活を送るバックマスターは、毎朝、チェロを取り出してバッハの無伴奏チェロ組曲第一番のプレリュードを弾いていたという。そして、バックマスターが旅行鞄の中に割れないようにして持ってきたシュトゥックハウゼンのレコードは、すぐさまデイビス邸のBGMとなり、それを貪るように聴き続ける中から ‘継続的プロセスとして音楽を捉えるという考え方’ のテーゼを獲得する。デイビスが ‘Chitinous’ を耳にしていたかどうか定かではないが、本アルバムがまるで ‘On The Corner’ への長いイントロダクションとして響くのは偶然であろうか。デイビス邸では、デイビスがピアノ、バックマスターはチェロで応答しながら ’On The Corner’ のスケッチとなるべき最初のアイデアを交換していく。

僕が、マイルスが使ったコードやらスケールやらを基にフレーズを弾くと、マイルスはよく「待った!それだ!それ書いといてくれ!」と言った。僕は急いで書き留めた。

実際のセッションでは、バックマスター自らもチェロにBarcus-berryピックアップを取り付けてワウペダルを踏むかたちの ‘アンプリファイド・チェロ’ で、積極的に ‘On The Corner’ における打楽器の一部として溶け込んでいる。バックマスターが用意していったスケッチの大半は、現場でほとんど変形させられ跡形も無くなってしまったというが、’Chitinous’ はそんな ‘On The Corner’ のスケッチの ‘青写真’ として重要な考察を与えてくれる。



また、このような傾向からデイビスがプレリュードに関心を示していたことは明らかで、基本的にリズムとテクスチャー、色彩、そしてストラクチャーから成り立ち、メロディのない音楽に惹かれていたこと。そしてデイビス自身がバッハを通じて、オーネット・コールマンの言う 'ハーモロディクス' の根幹である "グループ内の全楽器は同時にソロを取る自由がある" という趣旨の理解へと至ったことを認めている。



参考文献
完本 マイルス・デイビス自叙伝
マイルス・デイビス / クインシー・トゥループ著 中山康樹訳 (JICC出版局)
マイルス・デイビス物語
イアン・カー著 小山さち子訳 (スイングジャーナル社)
マイルス・デイビスの生涯
ジョン・スウェッド著 丸山京子訳 (シンコーミュージック・エンタテイメント)
音の始原を求めて - 塩谷宏の仕事 -ライナーノーツ: 佐藤茂 (元NHKチーフ・エンジニア)
エレクトリック・マイルス 1972 - 1975 〈ジャズの帝王〉が奏でた栄光と終焉の真相
中山康樹著 (ワニブックス【PLUS】新書)

2018年3月3日土曜日

アンプ!アンプ!アンプ!

さて、管楽器でアンプっていうのはあまりイメージが湧かないのではないでしょうか。一般的には管楽器に取り付けたマイクの信号はそのままPAのミキサーに引き回されて、ミキサー内蔵のリヴァーブやディレイ、EQなどで処理されたものがパワード・モニターへ振り分けられていくという流れになります(ヴォーカルと同じセッティングですね)。



もし、管楽器で個別にエフェクターを用いたいという場合では、ミキサーのバスアウトからDIでステージ上に送り足元のコンパクト・エフェクターを通り、再びDIでミキサーのチャンネルへ返すという流れとなります。最近、管楽器のマイクに最適化された 'インサート付き' のマイク・プリアンプ、Audio-Technica Slick Fly VP-01やRadial Engineering Voco-LocoなどもPAからはそのようなセッティングで繋いで欲しいと指示されるのではないでしょうか?もしくはエフェクツ用と '生音' で2つのマイクを分けてセッティングするなど。つまり、PAとしては管楽器自体の '生音' は確保したいという思いが強く、これは足元のエフェクターに不具合が生じた場合、ミキサー側でエフェクツに送るバスアウトを切っていつでも '生音' に戻れることでステージ上の進行を妨げないことを優先します。また、エフェクツのバランスなどをPAがミキサーでコントロールしたいという思いも強いでしょう(突発的なハウリングなど)。







Yamaha Stagepas 400i / 600i

こういうところで、ひと昔前の 'アンプリファイ' な管楽器奏者が好んでいたアンプを用いてのセッティングは、その他電気楽器とのアンサンブルや複数マイクを立てることによる煩雑さから現代ではイヤがられるでしょうね(苦笑)。また、客席側に聴こえるPAを通した '外音' に対して、いわゆる '返し' と呼ばれるステージ上の '中音' を司るパワード・モニターの音量も限度があることから、最近のステージでは管楽器奏者の耳に直接インイヤー・モニターを推奨するPAも多くなってきております(ヴォーカルは完全にコレですね)。







ま、特別こういう状況とまったく縁のないわたし(笑)は、心置きなくコンボ・アンプを自分の真横に置いて鳴らしているワケなのですが、こっちはこっちでむしろ自宅であるだけに家人、近隣の方への配慮を気にしなければなりません(というか基本、アパート、マンションでヘッドフォン使えない楽器の演奏はムリだと思うけど)。ここで管楽器に適したアンプとは何ぞや?と考えてみれば、とりあえずクリーンであることは重要ですね。いわゆるギター・アンプのような '歪み' というのはピックアップ・マイクを用いる場合では弊害が大きく、やはりレンジの広い再生環境である方が気持ちよく演奏できます。そしてアンプのワット数よりもスピーカーの口径の方が重要でして、自宅という環境で気は引けますけど12インチ程度のスピーカーは欲しいですねえ。





ZT Amp Lunchbox

最近は小さいものでも結構パワフルに鳴らせるデジタル・アンプを用いた小型アンプなどが登場しておりますが、どうしても生音とのバランスを考えると12インチのスピーカーから再生させる方がバランスよく聴こえます。そんな中、デジタル駆動により 'お弁当箱' 気分で持ち運べる可搬性ながらラウドな音量で一世を風靡したZT Amp Lunchbox。また、小型とはいえ、このラッパの人(なぜかC管だけど)がPiezo Barrelのピックアップを用いて、Ampegの15W程度のアンプをPA併用してこのくらいの部屋でも十分に鳴らせます。


Genz Benz UC4-112T
Ashly LX-308B Stereo Mixer

2000年頃に登場した米国Genz Benzの135Wコンボ・アンプ。本機はコンボ・アンプながら '転がし' の如く足元で傾けて設置できるウェッジ・シェイプのデザインをしており、3つの楽器/マイク入力と1つのライン/マイク入力のミキサー機能を備えた 'PAライク' な仕様です。'Enclosures' の表記があるようにリアバスレフの構造で室内はもちろん、屋外でも威力を発揮すべく音はやはりデカイ・・。Active Bandpass EqualizationとしてLow、Low-Mid、High-Mid、Highのそれぞれ15dBで増減する4バンドEQ、スプリング・リヴァーブと1つの外部エフェクツ用 'センド・リターン' を装備。非常に重宝しておりますが、空冷用のファンが少々耳障りなのとライン用のフォン入力がTRSフォンのバランス入力に対応していないのだけが残念ですねえ(あ、後は21.4Kgの重量か)。このUC-4-112Tのライン入力の前にAshlyのライン・ミキサー、LX-308Bでレベル・コントロールを行い、'XLR→TRS' のバランス信号として変換しているのですが、なぜかこのアンプではマウスピース・ピックアップ側で高音域を吹き込むとプチッとクリップノイズを拾うのが悩み。同じPiezo Barrelで高域を少し落とした 'Woodinds' 用のピックアップで試してみようかと思案中です・・。


SWR California Blonde Ⅱ

米国でベース用アンプで一躍その名を知らしめたSWRの160W 'アコースティック' 用コンボ・アンプ。以前はマーカス・ミラーなどがユーザーとして名を連ね、ここ日本では神田商会が代理店となって取り扱っておりましたがすでに終了、市場からも見かけなくなりました。アンプ自体の音質は、Genz Benzよりこっちの方がいかにも箱が鳴っている感じがあって好きです。わたしはコイツにShure SM57を立てて集音し、サンプラーなどでいろいろ加工したりするのに重宝しております。このアンプのユニークな部分で、通常のアンバランス入力の他に 'Low Z Balanced' のスイッチを入れることでTRSフォンのバランス入力に対応すること。取説にもこんな解説があります。

"ローインピーダンス仕様のギターのバランス出力を入力端子に接続するときは、このスイッチを押し下げてください。TRS端子による接続が必要なバランス接続では、最高のダイナミックレンジと低ノイスの環境が得られます。"

いかにも 'アコースティック' 用という感じでマイクとAux入力、またアンサンブル中での '音抜け' を意識して 'ドンシャリ' にする機能 'Aural Enhancer' を備えるなど、ライヴにおける使い勝手を意識したデザインとなっております。EQはBass、Mid Range、Trebleの3バンドでリアにハイのツィーターをコントロールするツマミが個別に用意、外部エフェクツ用 'センド・リターン' とスプリング・リヴァーブを備えます(ちょっとノイズ多目ですが)。ちなみに各ツマミは少々ガリの出やすいところが玉に瑕で、重量はこちらもGenz Benzを超えた堂々の24Kg・・。自宅でのヴォリュームは12時が限度なのですが、バランス接続では最高のダイナミックレンジと低ノイズの環境・・とうたっている割には12時以降回すと結構ノイジーになってきますね・・(出力が大きいってそういうことなんだろうけど)。わたしはRadial EngineeringのパッシヴDI、JDIからバランス接続しているのだけど、こちらはGenz Benz UC4とは逆にアクティヴDIだとプリアンプを二重にかけた状態となり・・歪む(悲)。こういうラインであるとか、ロー・インピーダンスだからというスペックだけでは計り知れない 'マッチングの掟' は本当にケース・バイ・ケース・・散財を覚悟した 'トライ&エラー' で挑まなければならないのがツライところ。







The Little Jake ①

とりあえず、このSWRのような 'アコースティック' 用アンプというのは結構お手軽に自宅でも使えます(アパート、マンションは除く)ので、例えばFishmanやFenderなどの中型アンプは最初の一台として手を出しやすいと思います。Loudbox Miniは60Wの6.5インチ、Acoustasonicは90Wの8インチということでラウドに鳴らせますヨ。まあ、これでも十分過ぎるほどのデカイ音なので鳴らす時間帯を決めて家人、お隣さんから怒鳴り込まれないようご注意を(汗)。もちろん、ステージでもアンプにマイクを立ててPAと併用すれば立派に 'アンプリファイ' な環境を構築することが出来まする。ちなみに最後の動画は、そのAcoustasonicを2台ステレオで使用したループ・サンプラーDigitech JamMan Delayでのパフォーマンス。こういうループ・サンプラーによるオーバーダブのアンサンブルでソロやる場合は、アンプ2台でやった方が分離よく聴こえますね。







Roland KC-350
Behringer K900 Fx Ultratone

管楽器を鳴らすにあたり、例えばDTMをやっている人たちのようにそこそこのパワード・モニターをライン・ミキサーと共にセットすれば、フツーに小さい音量から比較的パワフルに鳴らすことが可能なのですが、やはり 'アンプリファイ' って真横にドン!と鎮座させるように '大箱' 置いて音圧を感じないとダメでしょう。こう、スピーカーのコーンの奥から飛び出してくる感じ、大きな箱がジ〜と電源入れたノイズと共に '鳴っている' 感じというか。まあ、わたしの所有アンプはどちらも 'ディスコン' なので入手は難しいのですが、最近だとやはりRolandの 'KC' キーボード・アンプ、BehringerのK900Fx Ultratoneなどが手っ取り早く使えるのかな?動画のちょっとコワモテおじさん&インテリ・メガネな若者のRoland KC-350を用いた '新旧オクターヴ系エフェクター' 対決は、やっぱりスピーカーが12インチくらいあると満足できることを教えてくれまする。



Neotenic Sound Magical Force ②
Neotenic Sound Purepad ①
Neotenic Sound Purepad ②

そして、アンプの音作りにおいて重宝するのがこちらNeotenic Soundのダイナミック・プロセッサーであるMagical Force。もう何度も取り上げているのでご興味の方はリンク先をご覧頂きたいですが、本機はプリアンプのようでもありエンハンサーのようでもありコンプレッサーのような '迫力増強系' エフェクター。とにかく 'Punch' (音圧)と 'Edge' (輪郭)の2つのツマミを回すだけでグッと前へ押し出され、面白いくらいに音像を動かしてくれます。'Density' (密度)を回すと音の密度が高まり、コンプレスされた質感と共に散っていってしまう音の定位を真ん中へギュッと集めてくれる。コレ、わたしの '秘密兵器' でして、プリアンプの3バンドEQで控えめな補正をしている分、本機と最終的な出力の160Wコンボアンプの3バンドEQでバランスを取っております。本機の特徴は、DI後のラインにおける 'クリーンの音作り' を積極的に作り込めることにあり、おいしい帯域を引き出してくれる代わりにガラリとバランスも変えてしまうのでかけ過ぎ注意・・。単体のEQやコンプレッサーなどの組み合わせに対し、本機のツマミは出音の変化が手に取るように分かりやすいのが良いですね。ここでのツマミの設定はLevel (11時)、Punch (1時)、Edge (11時)、Density (9時)。ともかく、わたしのラッパにおける 'クリーン・トーン' はコイツがないと話になりません。ただし '魔法' とはいえ、かけ過ぎればコンプ特有の平べったい質感になってしまうので、EQを加えてさらなる音抜けや帯域補正など、各自いろいろと研究しながらコイツを体感してみて下さいませ。そして、音量の補助的なコントロールとして 'アンプ派' は非常に重宝する同社のPurepad。'Solo' と 'Bucking'、2つのプリセットした音量を切り替えるものなのですが、例えば、ワウを踏んだときのピーク時に発生するハウリング抑制、オクターバーでの単調なトーンや張り付くようなキャビネットからの出音に対するダイナミズムの演出など、正直ヴォリューム・ペダルより便利に使えると思いますヨ。


Neotenic Sound AcoFlavor
Neotenic Sound Board Master (discontinued)
Neotenic Sound Pure Acoustic

ちなみに、わたしのPiezo Barrelピックアップに無くてはならない 'インピーダンス・トランスフォーマー' のNeotenic Sound Board Master。それがさらに 'Acoustic-Pickup Signal Conditioner' としてパワーアップ、AcoFlavorの名で新登場しました!実は去年の暮れには入手しており、いろいろNeotenic Soundさんとやり取りさせてもらいながら完成・・。今日まで従来のBoard Masterと取っ替え引っ換えしつつ自分の環境の中で探求していたのです。正直、最初に手にしたヴァージョンはまったくピックアップとのマッチングが上手くいかなかった・・(汗)。ようやく三度目にして納得のいくかたちに仕上がってきたのだけど、本機はBoard Masterに比べると間違いなく音に密度が増しており、ピックアップからの感度調整を司るFitとは別にLimitツマミを回すことで '暴れ感' を抑えタイトにすることができます。わたしはMaster1時、Fitを9時にしてLimitも場合によって9時くらいまで上げますが、基本は後段に繋ぐMagical Forceで補正。Piezo Barrelのピックアップ買ってはみたものの手持ちのエフェクターとミスマッチ、もしくはもうちょっとピエゾの音質をどうにかしたいとお嘆きの貴方、ぜひぜひこのAcoFlavorがその救世主となりまする。あるとないとじゃ大違いですヨ。そんな本機は、あくまで 'Signal Conditioner' という名のインピーダンス・マッチングをするものなので、さらなる '生っぽさ' の追求をしてみたい場合は同社のプリアンプ、Pure Acousticとの組み合わせを推奨とのこと。一見、取っ付きにくそうな整然と並ぶ6つのツマミに怯みますが・・どれどれ。

⚫︎Master: 出力される最終的な音量を調節します。
⚫︎Body: 楽器本体のサイズ感を豊かに増強させます。右に回すほど楽器の存在感がしっかり押し出されるようになります。
⚫︎Lo: Bodyツマミで決めた位置に対して、低域の膨らみ感を調節します。左に回すほどスッキリとしたタイトなサウンドになります。
⚫︎Hi: 弦を弾いたときの音の硬さを調節します。右に回すほど硬い音に、左に回すほど柔らかい音になります。
⚫︎Wood: 楽器の持つ木の鳴りの成分を電気的に強調させたり抑えたりします。左に回すと共振部分が抑えられた大人しい落ち着いた雰囲気に、右に回すと木が響いているような広がりが得られます。演奏する楽曲の楽器編成などに合わせて調節して下さい。
⚫︎Density: 弦を弾いたときのタッチに対するレスポンスの立ち上がり比率を決めます。左に回すと過度に立ち上がり、右に回すほどその感度が圧縮されます。タッチとレスポンスのバランス点を越えると音の雑味や暴れはさらに抑えることが出来ますが、音の表情は均一化されていきます。

なるほど。特に 'Body' と 'Wood' というアコースティックの '鳴り' に特化した2つのツマミがキモのようです。このあたりをEQのLoとHiを補助的に配置して、あえて '鳴り' というイメージで2つのツマミに落とし込んだのは見事ですね。Magical Forceもそうなんだけど、Neotenic Soundの製品は視覚的に把握させながら耳で音を決めていくセンスが抜群だと思います。EQの何kHzをブーストして・・なんて言われてもよく分からないけど、こっちのツマミが '箱鳴り' で隣のツマミで 'エッジ' を出して、そこにローかハイが足りてないと思ったらEQしてという方が把握しやすく音が目の前にある感じ。また本機は、ダイナミックレンジ確保の為にDC18Vの専用電源でヘッドルームを広く取った設計もグッド。ツマミの構成から 'アコギ' 専用と捉えられがちですが、いわゆるアコースティック楽器全般に対応しているそうです。


K&K Sound Dual Channel Pro Preamp ①
K&K Sound Dual Channel Pro Preamp ②
Classic Pro ZXP212T
Sennheiser Evolution e608
Sennheiser Microphone
Piezo Barrel on eBay
Piezo Barrel Wind Instrument Pickups

さて、このAcoFlavorとは別に簡易的な 'ピエゾ + マイク' のミックスでK&K SoundのDual Cannel Pro Preampがとても良い結果をもたらしてくれました!9V電池駆動の腰に装着するプリアンプながら、2つのヴォリュームのほか、基板上に配置されたGain、Treble、Mid、Bassを小さなドライバーを使って補正することが可能。あらゆるピックアップ・マイクのダイナミックレンジに対応しており、Piezo Barrel愛用者は是非ともSennheiserのダイナミック・マイク、e608などとのミックスに活用してみて下さいませ(e608からはClassic Pro ZXP212Tを用いてフォンへ変換)。そして、ワイヤレス・システムで鳴らしたい人にもトランスミッターと共に腰へ装着するだけの手間要らず。



あ、そうそう、本機には2つの入力をTRSフォンによる 'ステレオ1本' で行うDual Cannel Pro 'ST' Preampというのもあり、見た目は非常によく似ているのでお間違いのないように・・。一応、このK&K Soundはモリダイラ楽器が代理店となって取り扱っているようですけどあまり店頭では見かけないですねえ。







Radial Engineering Voco-Loco
Pigtronix Keymaster

そして、最もお手軽に管楽器の 'アンプリファイ' で威力を発揮してくれるRadial Engineeringの 'インサート付き' マイク・プリアンプ、Voco-Loco。Low、Highの2バンドEQを備えた高品質なプリアンプ部はもちろんですけど、'インサート' に対して効くToneは管楽器で使うにあたってかなり重宝するのではないでしょうか。使うエフェクターによっては結構 '抜け' が悪くなることってありますので・・。また、ファンタム電源使用のコンデンサー・マイクは使わずダイナミック・マイクで十分。もしくはPiezoBarrelのマウスピース・ピックアップだけでやります、って人なら、こちらPigtronixのKeymasterが重宝しますヨ。XLR(ファンタム電源不可)とフォンの同時入出力はできませんが、2つの 'インサート' をそれぞれ 'A or B'、'A + B' と切り替え、ミックスして使えるのが便利。 





Eventide Mixing Link
Zorg Effects Blow !
Zorg Effects

こちらはRadial Engineering Voco-Locoの対抗機として登場したEventide Mixing Link。そして去年、フランスのZorg Effectsという工房からアナウンスされていた 'インサート付き' マイク・プリアンプBlow !が堂々完成!このサイズで 'センド・リターン' のほかファンタム電源対応のXLR入力、Padを備えるという至れり尽くせりな仕様!おお、こういった製品が続々市場に参入してくるのを見ても、コンパクト・エフェクターがギタリストやベーシスト以外の分野に普及するんじゃないかとワクワクしますねえ。その他、ユニークなエンヴェロープ・フィルターなども製作しているこのZorg Effects、まだ日本には入ってきていないブランドなのでどこかがやらないかなあ?









Fender '65 Twin Reverb
Roland Jazz Chorus JC-120
Hughes & Kettner Tube Meister 20 Head ①
Hughes & Kettner Tube Meister 20 Head ②

もちろん、ギターアンプだからと '使っちゃダメ' ってことはないワケで、ランディ・ブレッカーも日本が誇るRolandの名機、Jazz Chorus JC-120を2台ステレオで使っておりました。JCもクリーン・トーンに定評のあるアンプとしてもはや定番ですけど、本機の '裏ワザ' として後ろに備える 'Return' からプリアンプを通らずパワーアンプのスピーカーだけを利用することで、例えばアンプ・シミュレーターを用いてのラインによる音作りにも活用できます。そして、イアン・カー率いるジャズ・ロック・グループ、ニュークリアスのステージではドイツのアンプ、PAメーカーDynacordのアンプがチラッと映っておりますね。ここでもベルからの  '生音' は会場内のPA、ワウペダル踏む 'アンプリファイ' の場合はDynacordのアンプにマイク立てて集音というかたちで分けておりますが、昔はこれが一般的な管楽器の 'アンプリファイ' による再生方法でした。そしてSnarky Puppyのラッパ吹き、Mike 'Maz' MaherさんもスタジオではFenderのギターアンプ(Twin Reverbかな?)にダイナミック・マイクを立ててワウやオクターヴ・ファズによるワイルドなトーンを実践!しかし、一転してディレイの柔らかいトーンの場合は繊細なリボン・マイクでそのままライン録音とそれぞれの使い分けによる違いがよく分かるのではないでしょうか。バリトン・サックスのJonah Parzen-JohnsonさんはHughes & Kettnerの20W真空管ヘッドアンプをキャビネットと組み合わせて使用。










Acoustic Control Corporation
Vox Ampliphonic Nova Amplifier
Vox Ampliphonic Powered Music Stands: Satellite, Galaxie, Orbiter
Vox Ampliphonic Orbiter
Vox Ampliphonic Galaxie

1960年代後半、管楽器用のエフェクターによる 'サウンド・システム' を発売したSelmer Varitoneを始め、Gibson / MaestroやConn、Vox / Kingなどはオプションとして専用のアンプ、PAシステムなども用意したものの、大音量なロック・バンドのアンサンブルにおいてほとんど太刀打することが出来ず、当時、クリーンな音作りでギターからヴォーカルまで対応できたAcoustic Control Corporationのスタックアンプを用いる管楽器奏者が数多くおりました。上の画像は1967年発売のConn Multi-Viderの付属として用意されたTreble、Bassの2バンドEQ、トレモロ、スプリング・リヴァーブを備えるコンボアンプ、"500" Amplifier。そして世界初の 'ギター・シンセサイザー' を開発したHammondがInnovex Condorの付属として用意したPAシステム。1968年のフランク・ザッパ率いるザ・マザーズ・オブ・インヴェンションのライヴからは、イアン・アンダーウッド、バンク・ガードナーらホーン陣の後ろにそびえ立つAcoustic 260 + 261の壁を築いており、これは、そのまま1970年に 'アンプリファイ' したマイルス・デイビスのステージにも登場します。ここでは260 + 261に加えて361のキャビネットもリンク、相当な大音量でエレクトリック・ギターにも負けない音圧だったことでしょう。また、ピーター・ハミル率いるヴァンダー・グラーフ・ジェネレイターのデイヴィッド・ジャクソンは、Vox / King Ampliphonic Octavoiceを装着したサックスをHiwattのアンプで再生。







Kustom Amplification
Kustom Bass 150
Trace Elliot 7215SMC GP7

また、歪みなくダイナミックレンジの広い帯域の再生としてベースアンプを 'エレアコ' に代用する場合もあり、特に低域から中域にかけてのクリアーな再生などでサックス奏者には好まれるでしょうね。上の 'メリーさんの羊' オジサン(笑)の動画では、モコモコしたビニール地のソファ風アンプで有名なKustomのスタックアンプを鳴らしており、リンク先の 'Kustomファン' によるサイトによれば150W12インチ2発によるBass 150というモデルのようです。その下の 'アンビエント' 風ドローンなサックスは、Trace Elliotの150WベースアンプGP7によるもの。しかし、Trace ElliotもSWRも肝心のベーシストからの評価はどちらもビミョーというか、評価の分かれるアンプのようです・・。まあ、今ならわざわざ選ばない時代遅れの匂いが強いというか。





Yamaha PE-200A + TS-110
Yamaha PE-200A + TS-100
Yamaha PE-200A
Yamaha TS-200

そして、'アンプリファイ' といえば1960年代後半から70年代全般にかけての連中、特に 'エレクトリック・マイルス' なのですが、当時、多くの管楽器奏者に好まれたAcoustic Control Corporationのスタックアンプはもちろん、1973年のマイルス・デイビス来日を機にエンドース契約をして使い始めたYamahaのPAシステムへの関心が集まります。デイビスも使用したヘッドアンプ部のYamaha PE-200Aはスプリング・リヴァーブ、トレモロのほかにオートワウ!も内蔵されており、そのオートワウも 'Wah Wah Pedal' という端子にエクスプレッション・ペダルを繋ぐことでペダル・コントロールできるというかなり変わった仕様。案外、デイビスはワウペダルだけじゃなくこのオートワウも 'On' にしていたのでは?そしてパワーアンプ内蔵のTS-110キャビネット部分を縦に赤、黒、緑と'アフロカラー' で染め上げ、上から 'MILES、DAVIS、YAMAHA' とレタリングをすれば、もう気分は70年代の 'エレクトリック・マイルス' 一色です!メチャクチャ欲しいけれど上下合わせて60Kg強、12インチ2発ということでこんな '冷蔵庫' のようなスタックアンプ、置き場所もなければ自宅で鳴らすレベルのものでもなく・・厳しー。