2026年6月10日水曜日

Less is more...

建築、芸術、デザイン、文学、哲学など幅広い分野で使われているこの概念、"Less is more"。デザインの世界ではドイツの芸術運動バウハウスの第3代校長であるモダニズムの建築家ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ('Barcelona Chair' で有名)の言葉「余計なものはいらない」「最小なものほど豊穣である」という趣旨の言葉で発したのが有名かな。これを拡大解釈してわたしは "ものごとをシンプルにする" 環境へと向かって行ってます...。







さて、今年もやってくる暑い夏、蒸すような狂気で照り付けてくる陽射し...ここは亜熱帯の楽園、ニッポン。今やバンコクよりホーチミンよりハノイより蒸し暑い、ニッポンのトーキョー。汗かいて陽に焼けて蝉は精一杯鳴き続ける...ビールが美味い。アスファルトは昼間の照り付けた熱気の '記憶' として真夜中の散歩道となる...その渇いた独特の匂い。これが夏本番を迎えて街中がソワソワし出す初夏の雰囲気、毎年訪れる夏の装いだ。そんな暑い季節の到来に乾杯🍺

もう10年以上前からひとり 'ミッドセンチュリーモダン' な世界を生きる 'Exoticaオジサン' のフェイバリット 'Exotica' アルバム選をどーぞ。例えばジョン・ハッセルがブライアン・イーノとやった 'アンビエント' の仮想空間による '秘境' の演出は、そのまま遠いエキゾチカの時代からサイケデリックの体験を経て、現在の 'コロナ・ウィルス' による切断を経験した世界の事象へとダイレクトに繋がるものと言って良いでしょう。まさに自宅に籠り世界との '距離' をやり過ごそうとする層にとってインターネットは、そんなヴァーチャルな結び付きに耽溺する為の支配的存在として君臨します。わたしはその 'VR' の端緒となった昭和の 'ラウンジ感覚' というべきクールな雰囲気が大好き。それは日活の無国籍映画などを見ていても現れる眺めの良いホテル、百貨店、空港などのカフェやバー。そうそう、昔は飛行機に乗るのにもキチッとスーツにネクタイを締め、航空会社のネームの入った飛行機バッグをぶら下げておりました。そんな搭乗前のリラックスできるカフェの一角にジュークボックス、そして、ゴージャスな夜の社交場では小編成のジャズ・コンボによる生演奏がこのラウンジのムードを高めるよう、または会話の妨げにならないような演奏で空間を '演出' します。実際、こういった場所をリアルタイムでは知らない世代ですが、しかし、今やジャズだろうが 'アニソン' だろうが、何でもお店のBGMとして有線から一方的に音楽を '聴かされる' 時代に比べたら、昔のお店はもっとずっと '大人' であったと思うのです。そして、ラグジュアリーな自宅の一室の延長となった 'マイカー' の生活は、そのまま高速化した移動空間と共にいつかやってくる宇宙への憧憬を反映したようなロケットの流線型で視覚へと訴えます。








エフェクター黎明期特有の現象として技術者の実験、暴走、戯れ、勘違いから奇妙な効果が続々と市場に投げ付けられては時代の彼方に埋もれてしまったものが数多あります。例えば、この時代に現れた技術者の 'レジェンド' として君臨し、あの数々の革新をもたらしたカタログを誇るHoneyの製品開発に携わった三枝文夫氏は後に京王技研(Korg)で製品化した '飛び道具' ペダル、Synthesizer Traveller F-1の 'Singing' 効果についてこう述べます。

"F-1には 'Singing' という発振のスイッチがありましてね。「誰かうまく使う人が出てくるんじゃないかな」くらいの軽い気持ちでそういう機能を付けちゃいましたね、当時は。今は作る段階で細かい使い方を想定しますよね。量産することが前提だからどうしても構えてしまう。その反面、昔はもっと気楽でした。金型はほとんど使わないから失敗しても傷が浅くて済む。たまにヒットすれば、こりゃ嬉しいねって感じで(笑)。 - 中略 -  エフェクターに関して言うと、新しいエフェクトが生まれないのはなぜか?と思います。物や情報が有り余り、既存の製品に囚われ、かえって発想が制限されるからでしょうか。昔はとにかく物もなく、情報もなく、実現する素材も貧弱で、そして機能を表わす言葉もなかった。今は空間系とか歪み系とか、なにかとジャンル分けしようとするでしょ。ジャンル分けしようとすると、かえって考える範囲を狭くしちゃうんじゃないかと私は思うんです。例えば歪み系と言われたら歪みの中でしかものを考えてないですね。言葉があるとそれが重しになってくる。昔は言葉がなかったから、何をやっても良かったんですよ。"

この 'レジェンド' 三枝文夫氏のお言葉は重い。現在の音楽の状況を巡る  '付加価値' と市場原理から呼応するように毎年、飽和するほど新興の '歪みペダル' (TS系、ケンタ系、マフ系、NOSゲルマファズクローン...etc)がアナウンスされユーザーが飽くことなく食い付く姿を見ていると尚更そう思えてしまう。三枝氏の土壌で言えば、未だ未知の物体であったシンセサイザー前夜ともいうべき時代にあれこれ試行錯誤の実験精神は、すでに海の向こうで始まっていたMoog、Buchla、EMS、Arpの考え方と全く違うところから '世界同時革命' に参加していたということ。三枝氏自身が名付けた 'Traveller' という言葉ひとつ取っても、欧米のVCFとは似て非なるところで未知の市場に風穴を開けたのです。国産シンセサイザーの第一号でもあるMini Korg 700で結実した '三枝VCF' はそのF-1以降、VCF FK-1、Mr. Multi FK-2、X-911 Guitar Synthesizerへ到るまで面々と受け継がれて行きます。ちなみに上記F-1の広告にも堂々登場するジャズ・ピアニストの佐藤允彦氏は本機F-1の開発にも製品アドバイザー的に携わっており、その '三枝VCF' の出発点の風景からプロトタイプについてこう述べております。なんと当初はペダルの縦方向のみならず、横にもスライドさせてコントロールする仕様だったというのは面白い。

"三枝さんっていう開発者の人がいて、彼がその時にもうひとつ、面白い音がするよって持ってきたのが、あとから考えたらリング・モジュレーターなんですよ。'これは周波数を掛け算する機械なんですよ' って。これを僕、凄い気に入って、これだけ作れないかって言ったのね。ワウワウ・ペダルってあるでしょう。これにフェンダーローズの音を通して、かかる周波数の高さを縦の動きでもって、横の動きでかかる分量を調節できるっていう、そういうペダルを作ってくれたんです。これを持って行って、1972年のモントルーのジャズ・フェスで使ってますね。生ピアノにも入れて使ったりして、けっこうみんなビックリしていて。"

そんな佐藤氏とKorgの接点となった原風景はバークリー音楽大学から帰国した1968年、当時開発していた電気楽器のモニターとしてアプローチしてきたのが京王技研でした。面白いのは佐藤氏が目の前にした同社初のシンセサイザー 'Korgue' のプロトタイプに対し、'世界同時革命' 的な現場で繰り広げられる(笑)テクノロジーのエピソードとしてこう述べております。

"8月に帰ってきた同じ年、京王技研(Korg)の社長さんから電話がかかってきたんです。アメリカに行く前からエレピやクラヴィネットを使っていたのを知っていて、「うちで今度、新しい電子オルガンを作ってみたんだけど、見に来て、ちょっと意見を聞かせてくれないか」っていうんですよ。それで行ったらば、ヤマハのコンボオルガンとかみたいなんだけど、音色を作れるようになっていたわけ。ここをこうすると音が変わるよ、というふうな。それで「これ、オルガンっていうより、シンセサイザーなんじゃないの?」って言ったら、シンセサイザーという言葉を誰も知らなかったの、その場にいる人が(笑)。

「なんだ、それは?」って言うんで、発振器からいろんな音が作れるっていうものを、シンセサイザーっていうらしいよって答えたら、「へえ、じゃあ、シンセサイザーっていうんだ、これは。そういう方に入るんだね」って。"

しかし、この京王技研のF-1、エフェクターのカテゴリー的には `ファズワウ` に振り分けられますね。そして何より黎明期特有の巨大な筐体という、基板回路より筐体にコスト掛かっちゃってるのでは?と言いたくなるほど "デカいことは良いことだ" という高度経済成長期ならではのセンス。そういえば同時期のAce Tone Twin Ace FW-1や未だ謎に包まれるLeo.Co.Ltd.なる国産のFuzz king Model FK-11もこれまたムダに巨大な筐体にお金かけちゃった一台(コレ、東京初台で日本初の楽器レンタル会社を同時期創業したレオミュージックと関係ないんだろうか?)。さて、世の中にはそんな思い付いたようにパッと市場に現れては何の説明もなく捨て置かれ、彗星の如く消え去ってしまう機材というのが一定数あったりします。もちろん、製作者は当初からそんな '扱い' で置き去りにしようとは考えていなかったと思うのだけど、なんでかメーカー側の説明不足、矮小な市場の成熟度、そもそも '目測' を誤ったがゆえに過剰な製作者の思い付きだけがそのまま将来の '発掘' を待ち望む結果として忘れられているのです。しかし、ここにクリエイティヴとマーケティングの齟齬が生まれます。平成の30年間で日本が凋落した原因のひとつに技術者目線による過剰な機能増加とコスト高騰に対し、そこそこの内容でそこそこに使える市場へとシフトして行ってしまったこと。そして、機器に対するイマジネーションの部分でユーザーはいつまでも親切丁寧な説明書を捨てず、発想から音楽を生み出すという価値観に日本人自身が思考転換出来なかったという点です。それは新製品に対しソコで何が出来るのか?より、ソレには何が不足しているのか?という '買わない' 為の粗探しに終始する点からも理解できるでしょうね。Technics SL-1200Mk.2もRoland TR-808もTB-303もCasio MT-40も(Linnのパテントとはいえ)Akai Professional MPCもどれも優れた日本製品として市場を席巻しましたが、ソレらを使って音楽の革命を起こしたのは海外の貧しい環境に身を置く黒人の若者たちでした。




こちらはまさにその存在自体がアウトサイダーであり、生粋のアバンギャルドであり続けたフランク・ザッパと第1期マザーズ・オブ・インベンションの諧謔的な '破片' を拾うようなアンサンブルの試み。ロックンロールの様式美から逃れ続けサイケリックな耽溺をも拒否し(ザッパはアンチドラッグの筆頭)、常に自身のスコアからステージで起こるハプニングをもコントロールするその手腕は未だ他の追随を寄せ付けません。ザッパもまた、その巨大なネームバリューに比して死してなお '発見' されることを待ち構えている音楽家でもあります。








                                 - Oberheim Electronics Voltage Controlled Filter VCF-200 -


1970年代にトム・オーバーハイムにより設計されたVoltage Controlled Filter VCF-200は、Maestro Filter/Sample Hold FSH-1含め一風変わったエンヴェロープ・フィルターとして市場に開陳されました。当時、シンセサイザーという '未来の響き' と共にいわゆるギターペダルにおいても疑似的にその手の効果を生成しようと目論んだ本機は、フランク・ザッパが1976年の来日公演のステージから突発的に弾かれたギターソロで使用。それを 'Ship Ahoy' として1981年のアルバム '黙ってギターを弾いてくれ' に収録することで世に問いました。そこから20年近い月日を経て1990年代後半、突如Xotic Guitarsから発売されたRobotalkなるペダルは当時台頭してきたエレクトロニカ黎明期による 'グリッチ' から 'ランダム・アルペジエーター' と呼ばれる新たな効果で再評価されました。本機登場をきっかけにその後、他社からも多くの同種モデルが市場に開陳され広まった効果となりましたけど、しかし本機が1970年代のOberheim / Maestro製品のクローンであることを知る者は少なかったのでした。現在ではザッパのギタープレイよりレッド・ホット・チリ・ペパーズのギタリスト、ジョン・フルシアンテが同効果をモデリングしたマルチエフェクツLine 6 FM-4 Filter Modelerのプリセット 'Seeker' や 'Obi-Wah' (その名の如く 'Oberheimのワウ' という意)で認識してる人の方が多いかも知れませんね。

そういえば今さらな話題ですが、Voxからワウペダルとエンヴェロープ・フィルターの '2 in 1' なヤツ、V863-CAというペダルがあるんですよね。でもなあ、やっぱギタリストは相変わらずReal McCoy VRM-1の方に食い付いてんだろうね...(苦笑)。それが汎用性とヴィンテージ高騰の反動に呼応する市場の原理とはいえ、未だ '令和のTS、令和のケンタ、令和のビッグマフ、令和のユニヴァイブ、令和のクライドマッコイ商法が跋扈するペダル業界なのがなんとも...。あ、ジョンフルさん絡みで '令和のCE-1' 商法もあったか。`エバーグリーン` を見出すことは素晴らしいけど、いったい何匹目まで追い続けるのか...。シンセ界隈でも何匹目かのTR-808、TB-303、教授のプロフェット5よ再び的な '伝説商法' で食い繋いでますけどね(苦笑)。それだけ20世紀の大量消費社会はその '余剰' と共に多くの '天才' を生み出していたのでした。




ノイズバンドENDONの 'ノイジャン' Taro Aiko氏が自らの器楽演奏の為に主宰する工房、MASF。ノイズに特化した歪み系ペダルやオシレータ発振器、ユーロラックモジュラーシンセのモジュールから本工房を象徴するRaptioやPossessedといったグリッチ系ペダル2種を市場に開陳するなど一部、熱狂的支持者に迎えられております。そんなMASFの中でもいわゆる 'ギターペダル' の体裁を取りながら、一瞬市場に開陳して誰からも理解されることなく 'ディスコン' と共に捨て置かれてるのが本稿の主役、Tortam。以下、その製品説明を拾ってみよう。

"MASF Pedals TortamはLPG(ローパス・ゲート)とVCA(ボルテージ・コントロール・オーディオ)と、その2つをミックスした3サウンドからお好みの音色を選択出来ます。サイドにCV(-5v/+5v)InとEXP Inが付いており、フリケンシーを外部からコントロールする事が可能です。EXPを使用する際は付属の3.5mm/6.3mmステレオケーブルをご利用下さい。コントローラーはKorg EXP-2を推奨します。※CV用のケーブルは付属しません。"

明らかにユーロラックモジュラーシンセとの連携が図られたCV(電圧制御)による3.5mmのミニプラグ端子を備えながら、そもそもコレで何が出来るのかの説明はこの 'ペダル' を手にするであろうギターユーザーにとって意味不明の言葉足らず過ぎる取説...。この製品を購入しレビューするブログ記事も見付かるのだけど、それも本機を通しての(3種切り替えによる) '歪み具合' であるとかフリケンシーのツマミを回して発振など、あくまでギタリスト的目線ばかりでCVコントロールについては試しておりません(汗)。







ギターとシンセサイザーのCV(電圧制御)ということでは過去にKorgからPitch to CV Convertorとして名機MS-20やX-911にも内蔵されたMS-03のような機器なのか?と思えば、そこまで賢いことができるワケじゃなさそうです。そりゃ小さなペダル単体でFreqツマミ1つに3種切り替え、CV1つの機能しかないもんね...(苦笑)。一応、MASFのFacebookでKorgの16 ステップシーケンサーSQ-1とTortam、Raptioをギターで同期させてる短い動画が上がってたけど、それも具体的説明もなければなぜか本機の製品説明として広報もされなかったという点がさらに謎を深めます...。MASFといえばギターペダルの他にユーロラック・モジュールの製作もしていたのだけど、このTortamを主宰するTaro Aiko氏が本機をどこの層に売りたかったのか未だ分かりません...。今は亡きHonda Sound Worksの迷機 'Spice' と並び、今昔のペダル市場へ放たれた '正解の分からない' 珍品でしょうね。













そこでこのTortamで同期、駆動させるのが 'ギターシンセ' としてポーランドの工房SonicSmithから2016年頃に登場したConVertor。独自の技術であるACO(Audio Controlled Oscallator)は特別なCV/Gateに寄らず、そのまま各種オーディオ入力でもってオシレータをトリガーして鳴らすことが出来ます。入力部はラインレベル、楽器レベル、マイクレベルをクリーンなプリアンプ・ゲインでもって+40dBのレンジで受け持つことが可能。さらにピッチの安定性を捉えるべくHPFと自動調整機能を持った2種の専用フィルターでピッチ検出を行っており、エンヴェロープもメイン入力のエンヴェロープ・フォロワーと 'サイドチェイン' に特化したエンヴェロープ・フォロワーの2段階で構成。用意された波形は短形波とノコギリ波で同時に出力し、Wave Mixツマミで連続的にブレンドしながらピッチを5オクターヴの範囲でコントロールします。また外部CVにも対応しており、別売りのModulor A1と組み合わせて 'プチ・モジュラーシンセ' 的な音作りにも対応しておりまする。すでに本機は 'ディスコン' となり、その後はVCFを追加して 'コンパクト・ペダル化' したSquaver P1なども用意しながら現在はやはり 'ユーロラック・モジュラーシンセ' のE1モジュールへと移行しております。群が主力となりますね。そしてTortamのFreqツマミをEXPコントロールすべくRainger Fxのユニークな感圧式センサー、Igor Mk.2を繋いでみましょうか。そんなポーランド産のニッチな 'ギターシンセ' からウン十年、なんと久々な我ら国産の '飛び道具' ブランド、Bananana EffectsからQuimera Guitar Synthesizer Pedalの登場です!。確か 'グリッチ系' エフェクツのTararira登場がコロナ禍の2021年で、すぐさまその続編としてポリフォニックのピッチシフト系エフェクツのアナウンスがSNSでなされていたと記憶しているのですが、(多分)それが紆余曲折があったのかどーなのか?こんな 'ギターシンセ' へと変貌しましたヨ。本機はこの手の 'ギターシンセ' 登場から永年の課題であったトラッキングと発音ニュアンスにおける "Near-Zero Latency - Tracking every 5 ms" を堂々と謳っており、特別な機器を必要とせずとも遅れることなくギターや音声入力に対して最適なリアルタイムの演奏性をお約束します...とのこと。派手なLEDがカラフルで楽しいですね。





あのマイルス・デイビスのバンドで特異なギターや各種パーカッション、EMSシンセサイザーなどを縦横無尽に弾きまくっていた怪人ギタリスト、ピート・コージーの愛機であるHalifax Wah Pedal。ユニークなのは踵側にOn/Offスイッチがあり、さらにギターやベース使用による帯域切り替えのスイッチが筐体左側から蹴って使え!というかなりの荒くれ仕様(苦笑)。1960年代後半から存在する本機はどこかワゴンセール品的なVoxの廉価版イメージがありましたけどピート・コージー使用による脚光もあってか、ペダルの可変幅は狭いものの実は '隠れ名機' と言っていいくらい古臭いワウとしての良い音色を持っておりまする。ちなみに本機の姉妹機として、筐体横に歪み量のツマミを備えたファズワウのZというモデルもラインナップされておりました。コージーは足下へワウと共にMisitronicsのエンヴェロープ・フィルターの名機、Mu-Tron Ⅲを配置、そしてなぜかMXR Phase 90、Maestro Fuzz Tone FZ-1などをシンセサイザーのEMS Synthi Aと共に大きなテーブルの上に鎮座させたセッティングで使用します(これらに追加してSonyのポータブル・カセット・レコーダーDensukeも必須)。Phase 90は時期的に 'Script Logo' の初期型、Fuzz Toneは時期的にFZ-1BやFZ-1Sなのか?と思いきやSynthi Aを机に鎮座させた画像ではなんと茶色筐体の初期型Fuzz Toneであることが判明しました(単3電池2本使用の3V仕様FZ-1か単3電池1本使用の1.5V仕様FZ-1Aのどちらかは不明)。またFender Stratocaster以外で、TelecasterやLes Paul、Voxの12弦Vox Phantom Ⅻや日本のモリダイラ楽器プロデュースによるMorrisの希少なセミアコMando Maniaなどギター出力部の構造からアタッチメント装着可能なJordan Electronics Boss Toneも使用しております。上記画像をチェックすればLes Paulを弾く出力部にBoss Tone発見!。しかし個人的に興味深いのは、あの 'Maiysha' 後半に飛び出してくるピート・コージーの奇怪なギターソロってどうやって鳴らしているんだろ?ってくらい、飛びまくった怪しげな音作りが謎なんですよね。ファズとワウ、MXRのPhase 90をヴィブラート気味にかけた音色ではあるのだけど、実はEMS Synthi Aの外部入力からギターを突っ込み内蔵のスプリング・リヴァーブとLFOでシンセシスに変調しているんじゃないか?と妄想しております。ちなみに上記画像で見えるギラッとした銀色のメタルボックスのペダルは、後ろにAcousticのスタックアンプと並び置かれてるLeslieスピーカー付属のプリアンプ兼Hi/Loフットスイッチだと思われます。

Guitar
Jordan Electronics Boss Tone
Halifax(Höfner) Wah Pedal
Musitronics Mu-Tron Ⅲ
MXR Phase 90
Gibson/Maestro Fuzz Tone FZ-1
Guitar Amp

ピート・コージー1973年〜75年の足下(机上)は多分、上記セッティングでほぼ間違いないと思われます(汗)。ちなみにマイルス・デイビスのグループ参加以前、シカゴのChessでセッション・ギタリストとしてマディ・ウォーターズの 'Electrric Mud' やハウリン・ウルフの 'The Howlin' Wolf Album' など、サイケデリックなジミ・ヘンドリクス流のブルーズ・ロックを展開していた頃はまだファズとワウペダルだけでした(シカゴということで多分、イリノイ州シカゴに 'C.M.I' の本拠地のあったMaestro Fuzz Toneとはこの頃からの付き合いでしょう)。そういう意味ではコージーがシンセサイザー含めた各種ペダルによる音作りを 'Juice' (麻薬的な意のスラング)と呼んだように、突然変異的にマイルス・デイビスのグループに招集されて経験したサウンドを以下のように表現しておりまする。

"それは人生そのものの音楽だった。つまり浄化であり、蘇生であり、堕落だった。とてつもなく知的でありながら、野卑でもあった。俺たちはある種の世界を作り出し、リスナーにいろんな経験をしてもらい客席との思考交換を目指したよ。"








こちらはピート・コージーがHalifaxのワウペダルと共に使用していたエンヴェロープ・フィルターの名機、Musitronics Mu-Tron Ⅲ。本機発売が1972年であることを考えると市場へ製品が開陳されたと同時に購入したモノであり、当時加入したマイルス・デイビス・グループの音作りに対しコージーの並々ならぬ探究心が伺えます。名匠マイク・ビーゲルが自身の工房Beigel Sound Labを立ち上げGuildのために製作していたシンセサイザー(頓挫)の 'スピンオフ' 的に製品化された先駆的エフェクターであり、フェイザーと並びファンクなど1970年代音作りの一翼を担った '時代のサウンド' を象徴するものでもあります。その後、製品化したMusitronicsで働いていたハンク・ザイジャック氏がHaz Laboratoriesを立ち上げ復刻したMu-Tron Ⅲ+などもありましたが、現在ではビーゲル自身により工房を復活させて現代版にアップデートされたものなどが用意されております。









EMS Synthi AKS
EMS on Reverb.com

現代音楽からジャズ、プログレッシヴ・ロックの分野で大成功した英国のEMS。1969年のデスクトップ・シンセサイザーVCS 3に続き、1971年に登場したポータブル型のSynthi Aは多くのユーザーを獲得しましたがそのユーザーの中の1人にマイルス・デイビスと共演した巨漢の奇才ギタリスト、ピート・コージーがいます。まだまだモノフォニックのアナログシンセ黎明期、1975年の来日公演時に記憶媒体のない本機をSonyのカセット・レコーダー 'Densuke' と共に用いることで、実に前衛的な 'ライヴ・エレクトロニクス' の効果を生み出しておりました。上の画像は1975年の来日公演を様子を捉えた貴重な一枚で、そのSynthi Aを覗き込むマイルス・デイビスのほか横に楔形の筐体が特徴のGibson /Maestro Fuzz Tone(FZ-1?FZ-1A?)が鎮座しておりまする。しかし、Fuzz Tone FZ-1の開発者であるグレン・スヌッディとレヴィ・ホッブスの2人によりミキシング・コンソールの接触不良から '過剰な歪み' を取り出すという技術的側面で具現化されたファズは、そのままこのFZ-1の音色を象徴するザ・ローリング・ストーンズ1965年の大ヒット 'Satisfaction' で、スタックスの豪華なホーン・セクションによる 'ブラス・リフ' を再現することでした。それはFZ-1のデモ音源で聴ける各種管楽器の模倣として、'Sousaphone' 〜 'Tuba' 〜 'Bass Sax' 〜 'Cello' 〜 'Alto Sax' 〜 'Trumpet' という流れから後のMaestroのブランドマークが 'ラッパ3本' をシンボライズに結実します。つまり、このような管楽器の電気的な模倣のファズボックスからそのままアナログ・シンセシスによる模倣のEMS Synthi Aに至るまで、音楽における '世界同時革命' の歴史がこの机上に乗せられていると考えてしまうのは大袈裟でしょうか?(笑)。

さて現在、オリジナルのEMS製品はeBayやReverb.comなどでそれこそ '天井知らず' なほど高騰しておりとても手の出るものではありませんが(汗)、会社自体は現在も存在しております。新製品ではなく修理とリビルドが基本でDigitana Electronicsが請け負っており、それらの中古品は全てS/Nとギャランティカードで管理され前所有者など過去の来歴を遡って把握することが可能。現状、EMSのウェイティングリストには世界から多くの購入希望者が順番待ちで何年も列を成しております。そんなコージーとEMS Synthi Aについて1975年のマイルス・デイビス来日公演時、'スイングジャーナル' 誌ではこう取り上げられております。

"果たせるかな、マイルスの日本公演に関しては「さすがにスゴい!」から「ウム、どうもあの電化サウンドはわからん」まで賛否両論、巷のファンのうるさいこと。いや、今回のマイルス公演に関しては、評論家の間でも意見はどうやら真っ二つに割れた感じ。ところで今回、マイルス・デイビス七重奏団が日本公演で駆使したアンプ、スピーカー、各楽器の総重量はなんと12トン(前回公演時はわずかに4トン!)。主催者側の読売新聞社が楽器類の運搬に一番苦労したというのも頷ける話だ。その巨大な音響装置から今回送り出されたエレクトリック・サウンドの中でファン、関係者をギョッとさせたのが、ギターのピート・コージーが秘密兵器として持参した 'Synthi' と呼ばれるポータブル・シンセサイザーの威力。ピートはロンドン製だと語っていたが、アタッシュケースほどのこの 'Synthi' は、オルガン的サウンドからフルートやサックスなど各種楽器に近い音を出すほか、ステージ両サイドの花道に設置された計8個の巨大なスピーカーから出る音を、左右チャンネルの使い分けで位相を移動させることができ、聴き手を右往左往させたのも実はこの 'Synthi' の威力だったわけ。ちなみにピートは、ワウワウ3台、変調器(注・フェイザーのMXR Phase 90のこと)、ファズトーン(注・Maestro Fuzz Toneのこと)などを隠し持ってギターと共にそれらを駆使していたわけである。"





また、このEMSシンセサイザーを世界で誰よりも知り尽くしている男、ブライアン・イーノのお言葉も拝聴しなければなりません。'アンビエント' を提唱し、常に音響設計とその作用、インターフェイスとの関係性についてポップ・ミュージックの分野で研究してきた者の着眼点は音楽を聴く上での良い刺激をもたらしてくれます。しかし日本製品のインターフェイスをこき下ろしてEMSの簡便なアプローチを賞賛しながら、実は超難易度なFM音源を持つ日本の名機、Yamaha DX-7のFMシンセシス・オペレートにも精通しているのがイーノらしい(笑)。

- 今でもEMSを使っていますか?。

E - 使っている。これにしかできないことがあるんでね。よくやるのは曲の中でダダダダダといったパルスを発生させたいとき、マイクを使って楽器の音をこのリング・モジュレーターに入れるんだ。それから・・(ジョイスティックを操作しながら)こうやって話すこともできるんだよ。

- プロデュースやセッションをする際にはいつもEMSを持ち込んでいるのでしょうか?。

E - ("YES" とシンセで答えている)。

- 最後までそれだと困るのですが・・。

E - (まだやっている)・・(笑)。でも本当に重宝な機械だよ。フィルターもリング・モジュレーターも素晴らしく、他の楽器を入れるのに役立つ。

- 大抵エフェクターとして使うのですか?。

E - これはノイズを発生させるための機械、あるいは新しい音楽のための楽器なんだ。これをキーボードのように弾こうと思わない方がいい。でも、これまではできなかったものすごくエキサイティングで新しいことがたくさんできる。

- どこが他のシンセサイザーと違うのでしょう?。

E - ほかのシンセサイザーでは失われてしまった設計原理が生きているからだ。原理は3つある。第1の原理は、これがノンリニアであるということ。現代のシンセサイザーは、すべて既に内蔵されたロジックがあって、大抵はオシレータ→フィルター→エンヴェロープといった順序になっている。だが、EMSだとオシレータからフィルターへ行って、フィルターがLFOをコントロールし、LFOがエンヴェロープをコントロールし、エンヴェロープがオシレータをコントロールするといったことができるんだ。とても複雑なループを作ることができるので、複雑な音を出すことができるんだよ。現実の世界というのもまさにそうやって音が生み出されている。決まった順序によってのみ物事が起こるわけではなく、とても複雑なフィードバックや相互作用があるんだ。

第2の原理はやっていることが目に見えるということ。シンセサイザーのデザインを台無しにしてしまったのは日本人だ。素晴らしいシンセサイザーは作ったが、インターフェイスの面ではまるで悪夢だよ。ボタンを押しながら15回もスクロールしてやっと求めるパラメータに行きつくなんてね。それに比べるとEMSは使いやすい。パフォーマンスをしている最中にもいろんなことができるから、即座に違った感じの音楽が出来上がるんだ。ボディ・ランゲージが音楽に影響を及ぼすんだよ。ボディ・ランゲージがあまりないと、窮屈で細かくて正確で退屈な音楽しか生まれないし、豊かだとクレイジーな音楽が生まれるんだ。

第3の原理は、これにはスピーカーを含めてすべてが組み込まれているので他のものを接続する必要がないということ。私がいかに早くこれをセットアップしたか見ただろう?もしもこれが現代のシンセサイザーだったら、まずケーブルを探して、オーディオセットの裏側に回って配線しないといけない。あれこれグチャグチャやってるうちに、恐らく私は出て行ってしまうだろうね。私はもう歳だから気が短いんだよ。









                                                                 - EMS Synthi Hi-Fli -


ちなみにEMSといえば忘れちゃいけないあのデイヴィッド・コッカレルの手がけた初期ギターシンセサイザーもあります。レアものですが '資金繰り' で手放すユーザーもいることから市場でたまに見かけるものの、伝説的なEMS製品ということもあり基本的にどれも100万オーバーにより手が出ません...。ほぼ '投機物件' 扱いのペダルという範疇を超えたスーパーカー的存在と言って良いでしょう。その価格は年々高騰しており下がることはなく、当時のパーツを中心に 'リビルド' で復刻するDigitana Electronics(EMSのリビルド部門会社)のモノも長い順番待ち状態...(現在、過去のEMS製品には所有履歴の追跡できるギャランティカード必携)。まさにこれぞ '世界で一番美しいペダル' なんですが、個人的にはこのデザインを見て確実に萌えるだろうAppleとのコラボで電源Onと共に '🍏マーク' の光る 'Apple / EMS Synthi Hi-Fli' の復刻版を期待したい(笑)。そして、いまReverb.comに出品されているのは記念すべきシリアルNo.001の博物館レベルなお宝モノがありまする。価格も8,500ドル(125万超え!)ということで、もはや恐れ多くて使えませんね...。








                                                - Ludwig Electronics Phase Ⅱ Synthesizer -


こちらは作曲家の富田勲氏が1971年の 'Moogモジュラーシンセ' 導入直前に入手していたドラム・メーカーのLudwig製作による初期ギターシンセ、Phase Ⅱ Synthesizer。これは原初的なエフェクツとも言えるトークボックス(マウスワウ)のことではなく、シンセシスにおけるバンドパス帯域を複合的に組み合わせることで 'A、I、E、O、U' といった母音のフォルマントを強調、まるで喋っているようなワウの効果を生成するものです。いわゆるVCFをベースにした '擬似ギターシンセ' でして本機に続き、英国のEMSからデイヴィッド・コッカレルの設計により同種の効果を持つSynthi-Hi-Fli、Electro-Harmonix Talking Pedalなどが登場しました。以下、そのPhase Ⅱについて富田氏はこう述懐しております。

"あれは主に、スタジオに持っていって楽器と調整卓の間に挟んで奇妙な音を出していました。まあ、エフェクターのはしりですね。チャカポコも出来るし、ワウも出来るし。"

また、後にYMOのマニピュレーターとして名を馳せる松武秀樹氏も1971年4月から1年半ほど富田氏に 'ボーヤ' として師事しており、映画のサントラやCM音楽など仕事の度に "ラデシン用意して" とよく要請されていたとのこと。そんな 'Moogシンセ導入前夜' の富田氏の制作環境について松武氏はこう述懐しております。

"「だいこんの花」とか、テレビ番組を週3本ぐらい持ってました。ハンダごてを使ってパッチコードを作ったりもやってましたね。そのころから、クラビネットD-6というのや、電気ヴァイオリンがカルテット用に4台あった。あとラディック・シンセサイザーというフタがパカッと開くのがあって、これはワウでした。ギターを通すと変な音がしてた。それと、マエストロの 'Sound System for Woodwinds' というウインドシンセみたいなのと、'Rhythm 'n Sound for Guitar' というトリガーを入れて鳴らす電気パーカッションがあって、これをCMとかの録音に使ってました。こういうのをいじるのは理論がわかっていたんで普通にこなせた。"

このLudwig Phase Ⅱで聴ける '喋るような' フィルタリングは、そのまま富田氏によれば、実は 'Moogシンセサイザー' を喋らせたかったという思いへと直結します。当時のモジュラーシンセでは、なかなかパ行以外のシビランスを再現させるのは難しかったそうですが、ここから 'ゴリウォーグのケークウォーク' に代表される俗に 'パピプペ親父' と呼ばれる音作りを披露、これが晩年の '初音ミク' を用いた作品に至ることを考えると感慨深いものがありますね。ちなみに今、なんとこのLudwig Phase Ⅱのケースのみ!がeBayで出品されております(表に木目調パネルの付いた重厚な鋳物のペダル部分は無いけど)。エフェクターの自作をするR.G. Keenという方のサイト 'geofex' で本機を解析した回路図が公開されており、これをベースに個人、ガレージ工房などが本機の 'クローン化' に挑みました。過去にはDead End Fxという工房がそのR.G. Keenに感謝を述べながらプリント基板のみを販売したり、Kep Fxなる工房がクローン製品として少量販売しました。わたしもヴィンテージ購入以前にどっかの米国人製作による 'クローン' を入手、それは個人製作とは思えないほど製品として良く出来ておりました。その回路図を元にこの 'オリジナルケース' へブチ込み精巧なクローン製作に誰か挑戦して下さい(笑)。あ、そうそう、オタ的トリビア?として、今ではエフェクターボードで定番のように見かけるペダルのスイッチ部に被せる 'トップハット' は、1970年代に英国のエンジニアのピート・コーニッシュが自身の製作するエフェクターボードとセットで普及したアイテムとされております。が、実はどこよりも早かったのはこのLudwig Phase Ⅱだったんですよねえ。重厚なアルミ削り出しの大きな4つのスイッチはカラフルなLEDと共に本機の特徴をさらに印象付けます。











しばらく、この手のアプローチは棚上げしていたのですが、ドイツのFlame Instrmentsというモジュラーシンセの工房からガジェットな機器としてMIDI Talking Synthという製品が出ていたことを思い出します。古の 'Speak and Spell' で有名となったMagnevation LLC製造の 'Speakjet Chip' を2つ搭載したこのFlame製品第一号は、そもそも生産台数が少なかったこともありわたしが探し始めた時点で相当のプレミアが付いておりました。そして、これまたレアなこのTalking Synthの 'ユーロラック・モジュール' を中古で見つけたことから、ドドッと事態が急変していく怒涛の展開...。まさか自分が 'モジュラーシンセ' の世界に足を踏み入れてこのTalking Synthをどう発音させよう?、どのモジュールと組み合わせよう?などと考えてるとは思わなかったな(苦笑)。何よりこの時点でこのモジュールがどう発音し、どうトランペットの 'アンプリファイ' と連携した世界になるか?なんて何ひとつ分からなかった...。あくまで各モジュールのスペック読みながらアタマの中で観念的に組み上げ、想像してただけだったんだから...テキトー過ぎますヨ。とりあえず、あの日本を代表する作曲家、冨田勲氏は相当な思いで購入したMoogのモジュラーシンセを喋らせたかった、という思いからノコギリ波をローパスでフィルタリングしてステップシーケンサーにより '口腔の広がり' を制御、模倣させるというパッチングだった記事を思い出します。とりあえず、まずはトリガーして '発音' させようとHikari InstrumentsのAnalog Sequnecer Ⅱを手に入れたことから、この日本の工房製品に焦点を絞り最低限の '4Uラックサイズ' 程度で組み始めました。







電化してリズミックにワウワウと吼えるラッパと同時に使っているのが 'スピーチシンセシス'。ちょうど運良く 'ユーロラック版' のTalking Synth入手が叶ったことから、この 'スピーチシンセ' を発音させるべくシーケンサーをベースにした最少サイズのモジュラーシステムを思案する...。'ユーロラック' は全くの門外漢なのでそれこそペダル・エフェクターとはまた違う実に奥行きの深い世界があり、これまた大手から限定モジュールにプレミアの付く個人製作モノまで幅広く用意されているんですよね。古の 'Speak and Spell' や1980年代のアーケードゲームでおなじみなメモリーカード 'Atarivox' で有名となった 'Speech Synthesis Chip' ですけど、このFlameの第一号製品であるTalking SynthにもMagnevation LLCにより製造された古いアナログの 'Speakjet Chip' を2つ搭載していることからプレミアが付いておりまする。当初のセッティングではTalking SynthをBastl InstrumentsのThymeなどMIDIで発音含め、緻密にプログラミングしてコントロールしたかったもののMIDI to CV Converterなど大掛かりになりそうなので断念...。モジュラーならではのCV/Gateによるランダマイズなシーケンスの '飛び道具' として、ThymeとのCV同期も活かしながら簡単な使い方に終始しております。また、ケースの電源スロットをもう1つ追加してエンヴェロープ・フォロワー(例えばSynthrotek ADSRなど)も入れたかったのですが、これもThymeにCVで同期してこっちのエンヴェロープでソレっぽくかけるだけに留めました(笑)。インスパイアとしてはやはり、現代音楽の作曲家にしてオノ・ヨーコの元旦那でもある一柳慧氏のブッ飛んだ1969年の作品 'Music for Living Space'。ここでの京大工学部が作製した初期コンピュータによる辿々しい ' スピーチ・シンセシス' のヴォイスとグレゴリアン・チャントの錯綜が面白い効果を上げておりまする。ちなみにここで読まれるテキストは建築家、黒川紀章氏による1970年の著作「黒川紀章の作品」から 'Capsule'、'Metabolism'、'Spaceflame'、'Metamorphose' の章を各々読み上げたもの。ジョン・ケージの不確定性音楽を元にして、ラジオのチューニングから変調していくような 'Tokyo 1969' と対になる作品でもありまする(ベトナム戦争の状況を伝えるモスクワ放送に時代を感じます)。また、翌70年には同様の手法による短いシーケンスのヴァリエーションをエコーやテープ編集などで変調する3分弱の小品 'Computer Space' も制作されました。

そして現在の '足下&手元' はこんなシステムとなりました。
古くは具体音のテープ編集によるミュージック・コンクレートの時代から既成の器楽音などを模倣、シンセシスにより変調させるアナログ・シンセサイザーの黎明期に至るまで、この手のアプローチは多くの歴史を積み重ねてきました。ここではピックアップ装着の電気ラッパやスティールパンをSynovatronのコンバーターCVGT1やCG Products のPeak+Holdでトリガーさせます。ラッパからの収音はマウスピースに穴を開けて接合したPiezoBarrel P9とベルからの生音をダイナミックマイクのElectro-Voice RE-20を立て、それらを2チャンネルのJoranalogue Receive RX-2の入力部と出力部TX-2でコンバーターを挟むカタチでBuchla Music Easelと '同期' させます。これまで 'ユーロラックモジュール' 版のFlame Instruments Talking SynthをHikari Instrumentsの各種モジュールやギターペダル類のシステムの中に組み込みやってたことが、ようやく '元祖' MIDI Talking Synthを入手したのでMusic EaselとMIDIで繋ぎコントロールさせる方向へと転換...。もう、足下にズラッとペダル類を並べて満載の煩雑さよりこっちの統合させた探求でいいかも(笑)。
















さて、こちらスティールパンばかりに '浮気' してるワケじゃないよ、ということで(笑)、愛機であるTaylorの短いラッパをご紹介。このTaylorといえばヘンチクリンなデザイン過多のヤツ、ただただ重たい 'パクリMonette' なヤツには全く興味なかったのですが、アンディ・テイラー氏が2014年に独自設計の楕円形 'Ovalベル' で手がけたラッパ '46 Custom  Shop' Shorty Ovalは一目で惹かれてしまった。Taylorはこの年を境に 'Oval' と呼ばれる楕円形のベルを備えたシリーズを 'Custom Shop' で展開しており、それを短いサイズにしたトランペットとして新たな提案をしたことに意味があるワケです(そもそも彼はホルンの名門、Paxmanでベル職人として研鑽を積んでおります)。ええ、これは吹奏感含めロングタイプのコルネットではありません。トランペットを半分ちょいほど短くした 'Shorty' なのですが、ベルの後端を 'ベル・チューニング' にして '巻く' ことで全体の長さは通常のトランペットと一緒です。その 'Shorty' シリーズとしてはこの 'Oval' ベルのほか、通常のベル、リードパイプを備えたタイプも楽器ショーの為に製作されたので総本数は2本となりますね。重さは大体1.4kgほどなのですが、短い全長に比して重心がケーシング部中心に集まることからよりズシッと感じます。また、'Shorty Oval' はマウスピースのシャンクに穴を開け装着の 'アンプリファイ' で鳴らしておりますが、そのままアコースティックのオープンホーンで吹いてみても通常のラッパと何ら遜色無くパワフルに音が飛びますヨ。ただ、その 'Oval' ベルの大きさからHamonのミュートでは嵌まらずJoralのバブルミュート必須となりまする(汗)。そして、本機にはハンドメイド系工房のラッパでは 'MAWピストン' と並びフェザータッチによる操作性で好評の 'Bauerfeind' ピストンが備えられております。そのBauerfeindバウアーファイント社とはドイツ南ヴィスバーデンのナウハイムにある会社でTaylorやInderbinenにWeber、そのほか海外にある多くの工房へピストンブロックをOEM供給しております。過去、そのオーナー会社が何度か変わりWilson傘下の時期に製作された品質の評価が高いですけど、現在はオランダの大手管楽器工房Adamsの傘下に入っております。ちなみにTaylorでは、コレとは別にかなりの '巻き' の入ったショート・トランペットを 'Custom Shop謹製' で製作していたりします。そんなショート・トランペットにおけるルーツ的存在として知られているのは、過去フランスで製作され近年再評価からそのPujeのファンだったブレント・ピーターズ氏による '復刻Puje' のトランペットがあるのですヨ。大久保管楽器店のリペアーさんが試奏もせず一目惚れの 'ジャケ買い' でオーダーし手に入れたそーですが(笑)、いくつかのレギュラーモデルのほか、動画ではGetzen製のピストンを組み込んだ4 and 3/4のコパーベルの 'Shorty' と5 and 1/8のアンディ・テイラー謹製によるコパーベルを組み込んだ 'Shortay' ('Tay' はTaylorのTay)の比較が面白い。さらにヴィンテージベルを流用した最新作として、まるでわたしのヘヴィなTaylorショート・トランペットを研究したと思しき管体の '巻き' までそっくりな 'Super-T' なる短いラッパも登場...。こちらはOldsスーパーコルネットのOEMベルを用いて5本のみ製作されたモノとのこと。ちなみにPujeやわたしのShorty Ovalもそうなんですが、ベル側から最初に '巻く' ところでトリガーによりスライドさせることからクォータートーンなどマイクロ・チューニングに対応しているところは面白いですね。


一方、スイスのトーマス・インダービネン氏による工房Inderbinenのカタログの中でもレアな一品であるコルネット、Rondoを購入された日本の方がいるようです。個人によるカスタムオーダーで処理してもらったという黒く酸化したベルが格好良いですね!。ショート・コルネットとはいえ、そこはボアサイズのデカく重いラッパばかりラインナップするInderbinenということから、ズシッとした140mmのベルサイズはTaylorの 'Shorty Oval' と良い勝負です(笑)。そして、このトランペットとコルネット、フリューゲルホーンなどの '音色良いところ取り' ともいうべきショート・トランペットの出発点として、モダン・コルネットでジャズのトランペッターらと勝負した第一人者のナット・アダレイがいます。そのナットが1968年にアプローチした '電気コルネット'。いわゆるH&A SelmerのVaritoneを用いてA&M傘下のCTIからリリースしたこの '仏像ジャズ' は、前年にクラーク・テリーがアルバム 'It's What's Happnin'' でアプローチしたことを追いかけるかたちで 'サマー・オブ・ラヴ' の季節を謳歌した異色の一枚となりました。このVaritone、サックスの場合はマウスピースにピックアップを取り付けますが、トランペットやコルネットの場合はリードパイプ上部に穴を開けて取り付け、コントローラーは首からぶら下げるかたちとなります。まあ、効果的にはダークで丸っこい音色のコルネットが蒸し暑いオクターヴ下を付加して、さらにモゴモゴと抜けの悪いトーンになっているのですけど・・。そんなVaritoneのコルネットでなぜ動画のタイトルがヒッチコック監督のサスペンス映画 'ダイヤルMを回せ!' なのかは解らないものの(笑)、このCTI盤から '電気うなぎ' こと 'Electric Eel' の貴重なライヴ。首からコントローラーをぶら下げて(2:39〜40)、ピエゾ・ピックアップはリードパイプの横に穴を開けて接合(4:29〜31)されているのが確認出来まする。この管楽器の 'アンプリファイ' 黎明期において興味深いのは、木管奏者がマウスピースやネック部に簡単に穴を開けるのに対して、金管奏者はドン・エリスや日野皓正さん、クラーク・テリーやこのナット・アダレイらは皆、ベルの横側やリードパイプ上側などに穴を開ける代わりに、誰も音色の要であるマウスピース本体へ穴を開けることには慎重だったことですね(笑)。












Buchla Music Easelをベースにして 'エレクトロ・アコースティック' による 'アンプリファイ' したスティールパンと電気ラッパのセット。Music EaselにはFlame Instruments MIDI Talking SynthをMIDIで駆動させてたまにKorgのVC-10 Vocoderも活躍しますが、まあ、そもそもこれらセットをそんな触ってる時間自体がない(汗)。Music EaselとはCV/Gateの電圧制御により各々CG Products Peak + HoldとSynovatron CVGT1をコンバーターにして活躍中...。ラインレベルの環境の中で外部にギターペダルを使いたいので、インピーダンス・マッチングを図るべくBastl InstrumentsのHendriksonを介してEye Rock Electronics OK DelayやKorg FK-1 Synthepedalなどを足下にセット。FK-1はラッパで使うワウペダルなのだけど、自称 'フィルターフェチ' なほどコレクションしていたエグいペダル類を大量に放出して残ったのがこのイマイチ 'ぬるい感じ' のコイツだけ...。また、どうでもいい?豆知識だが、わたしの手許にあるのは 'VCF' 表記の前の貴重な 'Synthepedal' 表記のレアな仕様です。名匠、三枝文夫謹製によるこのKorg Travellerフィルター特有の '張り切ってない質感' がなんでか好きなんですよねえ...(笑)。









もう、手許に残ってるペダルも僅かばかり...(涙)。
そんな中でも管楽器の音色へ付加する '質感' に艶、張り、圧、歪みなどを生成してくれる 'サチュレーション系' ペダルはわたしが最後まで探求したい分野なのかもしれない。これまでHatena ? Active Spiceやその後継機のNeotenicSound Magical Forceなどを愛用しておりましたが、結局残っているのは 'プリ機能' と組み合わせたHumpback EngineeringのSparkling Gem。コレもギター用のスタンダード版ではなく、XLR仕様でオーダーされた 'ワンオフ' ものをヤフオクで見つけました。本機はゲルマニウム・トランジスタ使用のブースターで、EQ的効果に当たる 'Focus' とそのブーストアップと共に 'Overtone' のツマミでサチュレーションの質感生成まで担ってくれる優れモノ。正確には 'Overtone' で中低域の倍音量、'Focus' は超高域の倍音量を各々調整して '倍音の密度' を生成変化させるというエンハンス的効果を狙ったモノと言えば良いでしょうか。さて、そんな 'サチュレーション' の妙味はフーチーズの村田善行氏も刺激したようで、アナログによる 'チャンネル・ストリップ' の発想を真空管でギター向けに再現させたものと言われるこのLove Bombもご紹介。そもそもの発端はPA機器や往年のFairchildコンプレッサーのクローン製作で評価を得るAnaloguetubeとエンジニアのGareth Johnsonがタッグを組みLove Bombとしてプロデュース、その心臓部と言えるのがシルバニア/フィリップス社製のNOS品である6948サブ・ミニチュア真空管を搭載しております。いわゆる '歪み系ペダル' ではなく、その挙動は1960年代のレコーディング・コンソールの入力ゲインをオーバーロードさせた時に生じる良い塩梅の歪みを得ることに特化しております。そして、ここにきてもうひとつ新たな '質感生成' デバイスが来たゾ!ということで、'build by Korg' によるVoxの真空管 'Nutube' を用いた新たなシリーズ 'Valve Energy 2nd' からコンプレッサーSmooth Impactの登場です。いわゆる 'エレアコ派' には本機と '6バンドグライコ' のTone Scluptorが気になるところですが、やはり '最高のペダルレビュワー' であるフーチーズ村田氏の動画がユーザーの 'お財布のヒモ' を緩めます(笑)。いや、やっぱり本機の狙いと美味しいツボの引き出し方、その言語能力が的確ですね。3種のモード 'VTG'、'NAT'、'SAG' を駆使しジャキッとしたアタックと纏まりのある飽和感から、特に管楽器の 'アンプリファイ' でライン出力前に置きたいペダル筆頭でしょう!。従来のVCA、光学式、FETなどのクリッピング回路とは一線を画し、真空管の非線形領域を利用しながら高調波によるナチュラルなコンプレッションを実現しております。実は、わたしもこの村田氏の秀逸な動画を見て購入してしまったクチです(笑)。これぞお買い物効果の 'ジャパネットムラタ' !?。そして、これまた多くの 'Pedal Digger' たちを刺激するラインナップを少数精鋭で揃えてくるPedal Shop Cultから名古屋の工房、Electrograveとの 'コラボ' で面白いもんを出してきました、いわゆる '飛び道具' 的ペダルの多いこの工房にあってA Drop of Blessingと名付けられた本機は、クリーンブーストを基本にDC9Vから内部昇圧の±12Vでダイナミックレンジを確保すると共に 'コンプレッション感' (回路設計としてのコンプレッサーではない)を付与する質感生成を目指したペダルとなりまする。どこかHatena? Active Spiceを思わせる設計思想ではありますが、ツマミはシンプルにGainとDriveの2つ。そのDriveを上げていけばチリチリとした 'サチュレーション' を付加しながらギュッとまとまりのあるトーンの音作りに貢献してくれる、とのこと。唯一、コンプレッサーらしい挙動をしてくれるのがOnによる通常の青色LEDではクリップせず倍音が足されている状態を示し、これが赤色LEDになると信号がクリップして歪みの生成が始まっていることを視認できます。








おお、今は亡きDwarfcraft Devices A.R.FやDreadbox Hypnosisに次いでまた、こんな '80`s風チック' なペダルが市場に現れましたね。IbanezのディレイといえばBBDチップを用いたEcho Shifter ESシリーズ(設計は元社員であったElectrograveのKaz Koike氏とのこと)が地味に有名でしたが、こちらはデジタルでリズミックでギターからDAW、テクノ野郎にまで射程を広げた多目的ディレイということから興味をそそられます。その昔、アラン・ホールズワースのインスパイアに基づきYamahaからディレイ8台分を組み込んだUD-Stompという化け物マルチディレイがありましたけど、本機もまたディレイの特徴であるリズミックな要素をディレイタイム4分音符の長さから1st、2nd/4、3rd/4、4th/4を16分音符、1st、2nd/3、3rd/3の3連符として音のレイヤーによるディレイ空間を生成します。それらはデジタル、アナログ。テープエコーのToneとして個別にブースト可能、さらにあのロバート・モーグ特許によるローパスのラダーフィルターをエミュレートすることで、レゾナンスとカットオフによる質感の効いた音作りに威力を発揮します。その他、テイルディレイ、オートパンニング、MIDIにも対応。う〜ん、こういうのを面白がれるアーティストがもっと出てきて欲しいなあ。








必ずV-Popを忍び込ませるわたくし(汗)。
小難しいヤツや深刻ぶった求道的なもの、コードプログレッションだの早弾きだのに疲れた耳に、紛れ込んで聴こえてくるのが日常を生きる 'ポップの中毒性' なのだ。このChi Xêさんという歌手がどういう人なのか詳しくないですけど、サウンドアプローチはなかなかオシャレかつ凝ったアレンジで良し。"お茶とコーヒー" という曲がどこかCity Pop風なセンスで夏向きなのも素晴らしい。MVもファッショナブルで面白いですね。で、今回は 'vs J-Pop対決'ということで、ここ最近のお気に入りであるぷにぷに電機の一十三十一(ひとみとい)さん。それもDÉ DÉ MOUSEとKan Sanoさん各々との 'コラボ作' です。蒸しっとした夏の夜に吹き抜ける夜風浴びながら聴きたい雰囲気、良いよなあ。そういえば動画のコメント欄で "日本の音楽シーンで、埋もれるには惜しすぎる楽曲が多いことが切なく悲しい" の切実な一文が胸に突き刺さります...。すでにチャートもメディアの啓蒙も死んで、自ら掘っていく以外に辿り着けないポップ受難の時代なのでした。













真夏の夜の夢...。
革命的であったMaestroのリズムボックスといえばRhythm King。その名器を用いてファンクの新たなアプローチを開陳させたスライ&ザ・ファミリー・ストーンの傑作 '暴動'。そのスライ本人は惜しくも先週に冥界へと旅立たれてしまいましたが(涙)、そのスライへのトリビュートともいうべき!?なんとジャズのラッパ吹き、ニコラス・ペイトンがこのリズムボックスを用いてユニークなシティポップ感溢れる作品を2020年にリリースしておりました(驚)。これまで伝統的バップの語法で吹いていたジャズマンがこんなの作れるんだ、とビックリです。ペイトンの 'どジャズ' を期待してたファンから次の新作としてコレ聴かされたら、失望と共に石投げ付けられるだろうな(苦笑)。それでもシリアスで求道的な音楽よりこういうサウンドで埋め尽くされるような世の中であって欲しいな、と切に思いまする。そして今年、ビートメイカーもフィンガードラム野郎も賑わうであろうAkai Professionalから真打ち、MPC Sampleが登場しましたヨ。