2016年12月1日木曜日

トレモロで挑発する

車窓から眺める米国南部の長閑な田園風景や、色褪せたセピア色の写真を見ながら遠い過去に想いを馳せるなど、どこかノスタルジックな演出にかかせないのがゆらゆらとしたトレモロの音色。しかし一方で、まるでゲートでスパッと切り刻んでいくようなマシンガン・トレモロからVCALFOをかけてシンセライクに 変調させるトレモロまで、実は結構、奥の深いエフェクターではないかと思っております。ちなみによく似た効果であるトレモロとヴィブラートの定義は、音量の増減がトレモロ、音程の上下がヴィブラートであると考えるのですが、これは製品によって混同されている場合もあるので注意が必要です。


ここではエグい効果のトレモロを中心にご紹介したいのですけど、その出発点としてギターの入力ジャックに直接取り付けるVox Repeat Percussionという製品がありました。その名の如く、リズミックにフレイズを切り刻むことを目的として マシンガン・トレモロの異名も付けられた本機の魅力は、英国のFret-WareからそのVoxを元にMachine Gun Repeatを発売したことにも伺えます。通常の 'フット・ボックス' 型となったこの本機のユニークさは、スイッチがモメンタリー仕様となっており、踏んだ状態でのみエフェクトがかかるリアルタイム性に寄っていること。上の動画はかなり飛び道具的セッティングではありますが、その切れ味のほどが分かるかと思います。

このVox以前のトレモロとしては、基本的にスプリング・リヴァーブと併用してアンプに内蔵されるエフェクトという位置付けでした。その中でもユニークな一品として存在したのが、ヴォリューム・ペダルの製作で有名なDe-ArmondTrem-Trol。なんとペダル内部に組み込まれた電解液で満たした筒を、発動機により一定間隔で揺らして筒の壁に触れる面積の変化から音量を上下させるという・・なんとも原始的で、手の込んだ構造のトレモロですね。その下の動画は前身機のModel 601の内部構造でこんな感じに揺らしております。今じゃその製作コストがかかり過ぎて大変だろうけど、エフェクター黎明期にはいろんな発想から電気的操作として取り出すという面白い時代でした。この丸く暖かいレトロな雰囲気こそトレモロの真骨頂・・'ツイン・ピークス' のテーマとか弾きたくなりませんか?



Z.Vex Candela Vibrophase

このような物理現象を機械的に取り出したものとしては、エフェクター界の奇才、ザッカリー・ヴェックスがなんとロウソクの炎のゆらぎからトレモロとヴィブラートの効果を取り出すZ. Vex Candela Vibrophaseとして製作します。扇風機のような風車はヴィブラート効果のもの(扇風機にア〜と声を出すと変調するヤツ、昔やりませんでした?)で、これはレスリー・スピーカーを簡易的に再現するFender Vibratoneというギターアンプで製品化されましたね。ちなみに、この 'からくり時計' のようなプロトタイプはそのまま製品としても販売中・・お値段6000ドルなり。



Analog Outfitters The Scanner

トレモロ/ヴィブラートというヤツは、ファズ同様にヴィンテージな設計思想がそのまま独特な効果として認知されており、現代のテクノロジーが手を出しにくいエフェクターのひとつでもあります。ジミ・ヘンドリクスが使用したことで一躍有名となった日本が世界に誇る名機、Shin-Ei Uni-Vibeのドクドクした '揺れ' の効果を司るのは、その '心臓部' ともいえるフォトカプラー(CDS)という電球のような素子のおかげ。しかし、硫化カドミウムによる現在の環境規制で製品に組み込んで製作することはできず、各社が電子的なシミュレートにより何とか再現しようとしているのが現状です。このAnalog Outfitters The Scannerは、壊れたハモンド・オルガンからヴィブラート&リヴァーブ・タンクの部分を取り外し、新たにエフェクター・ユニットとして 'リビルド' したもの。やはり電子的な回路構成では味わえない、この物理的に変調させる '古くさい' 感じはたまりませんね。



Mid-Fi Electronics Electric Yggdrasil ①

Mid-Fi Electronics Electric Yggdrasil ②

そんなトレモロとヴィブラートの '混合' ということならこちら、米国ニューハンプシャー州で製作するMid-Fi Electronicsの新製品、Electric Yggdrasil (エレクトリック・ユグドラシル)。設計は 'MMOSS' というバンドのギタリスト、Doug Tuttle氏で、いわゆる '現場の発想' から一筋縄ではいかない '飛び道具' エフェクターばかりをひとり製作しております。Mid-Fi Electronicsといえば、'変態ヴィブラート' ともいうべきPitch PirateやClari (Not)の 'ぶっ飛んだ' 効果で一躍このメーカーを有名にしました。本機は位相回路による 'フェイズ・キャンセル' の原理を応用し、Uni-Vibe風のフェイズの効いたトレモロでサイケデリックな匂いを撒き散らします。



Supro 1310 Tremolo


いわゆる 'フットボックス' になる以前のトレモロはアンプ内蔵というのが一般的でしたが、その中でも代表的だったのがSuproのギターアンプ内蔵のもの。このSupro 1310 Tremoloは、そんな古臭い 'トレモロ感' をわざわざトランスによるサチュレーションを駆使し、真空管のバイアス可変による伝統的なSuproトレモロを再現する 'Amplitude' と、Fenderのギターアンプ内蔵のトレモロを再現した 'Harmonic' の2つのモードを搭載しております。また、'揺れ' のスピードはエクスプレッション・ペダルにも対応。
さて、時代はグッと駆け上がり、いわゆるシンセサイザーの発想により音量をコントロールする新しい発想のトレモロを見ていきます。こちらのザッカリー・ヴェックスによるZ.Vexから、16ステップのシーケンサーを組み込んだ変態トレモロSuper Seek Trem16のステップによるシーケンスから好きなステップを選択し、さらにその速度やタップテンポ、Glissと名付けられたツマミでランダムに設定することで予測不能な効果を現します。またMIDIで外部機器との同期をするなど、トレモロというよりシンセで用いるアナログ・シーケンサーの発想です。Sonarの方は、このサイズにしてこれまた多様な揺れ方を設定できるぶっ飛んだもの。Clean/Machineのスイッチでクリアーなトレモロと極悪な歪んだトレモロ、dutyツマミはタップテンポのスイッチと連動し、1、2、4のテンポ設定と合わせて等速、倍速、4倍速と変わり、Deltaツマミは上部のスイッチと合わせてスピードの可変を・・うん、複雑すぎるので動画で確認してみて下さい。しかしZ.Vexほど、トレモロだけでこんなに面白いヤツをラインナップしている会社はないですヨ。





Lightfoot Labs

突然その姿を現し、数量限定でGK.1GK.3までのシリーズを残して忽然と消えて行ってしまったLightfoot Labs Goat Keeper。たぶん、トレモロと名の付いたものとしては最も飛び道具的色彩の強いものでしょう。 ウムム・・これもSuper Seek Trem同様に説明するのが大変なくらいぶっ飛んだもの。トレモロの波形やテンポはもちろんシーケンス的効果も出来るのですが、かなりエレクトロニカ風壊れた揺れまでカバーしており・・なにがなにやら。正直グリッチ/スタッター系エフェクターのジャンルに入れてもおかしくないですね。またSync Inの端子を用いれば外部のドラムマシーンとの同期もOKです。しかしオレゴンの片田舎からこんなネーミング・センスと羊のイラストで疾風の如く駆け抜けた本機、本当に謎のまま 'Pedal Geek' たちを狂喜乱舞させた存在でした。
Dreadbox Kappa - LFO + 8 Step Sequencer

ギリシャでモジュラーシンセ的発想によりエフェクター製作をするDreadboxTaff。一見すると通常のトレモロと共通するものながら、メーカーも ‘Scientific Tremolo’ と名付けて従来のトレモロ感に捉われない音作りを推奨しております。本体自体はDepthSpeed、四種類からなる波形選択と深さを調整する一般的なパラメータを持ちながら、やはりLFO8ステップ・シーケンサーを備えるKappaに電圧制御(VC)で繋ぐことで、MoogMoogerfoogerシリーズやKoma Elektronikのエフェクターと共通するシンセライクな音作りに変貌します。

前述しましたが、トレモロはスプリング・リヴァーブと併用することであの古臭い揺れを演出するエフェクターです。そんな2つの効果を現代のDSPテクノロジーで1つにまとめてしまったのがStrymon Flint。基本的にアナログ回路で構成されるトレモロにあって、このStrymonの再現性は目を見張るものがあります。リヴァーブ部は1960年代のバネ臭いものから70年代のプレート・リヴァーブ、80年代のデジタルなホール・リヴァーブまで再現しており、このサイズのエフェクターから実に多様なセッティングを引き出すことが可能。



Z.Vex Loop Gate

ここからは番外編。結果的にトレモロの効果ではあるものの、機能としてはノイズ・ゲートを利用したキルスイッチの変異系をご紹介しましょう。まずはお馴染みZ.VexLoop Gate。本体にSend/Returnを備え、そこに歪み系などをインサートし、なんでもLoop Gateでぶつ切りしてやろうというもの。本機はNormalChop2つのモードを有し、Normalではインサートしたエフェクトに対し通常のゲートとして働き、その切り加減を入力感度のSens.と音のエンヴェロープに作用するReleaseで調整します。そして本稿の目的であるトレモロ的ブツ切れ感を演出するChop。この時のReleaseはゲートの開閉速度として、トレモロのSpeedツマミと同等の働きに変わります。



Dwarfcraft Devices Memento

このゲートによるブツ切れ感をもっとランダムに、例えばグリッチ/スタッター系エフェクターのように作用したら面白いのではないか?じゃ、やってみようということで試してみたのが、新たな ‘変態エフェクターとして頭角を現しているDwarfcraft DevicesMemento。基本的にはミュートするためのキルスイッチを応用したもので、このカットするテンポをキルパターンとしてKillスイッチにタップテンポで記憶させるだけ。後はRe-Killスイッチを踏めばその踏んだテンポの状態で ブツ切れ感が再現されます。またこの再現中にKillスイッチを踏めば、キルパターンの速度を2倍、または4倍にできます。



Selmer Varitone ①
Selmer Varitone ②

管楽器においては、世界初の管楽器用エフェクターであるSelmer Varitoneにもオクターバーと共にアンプに内蔵されていたのがトレモロでした。この素朴な効果の為だけにこんな大仰なサウンド・システムを稼働させなければいけないという可搬性の悪さ・・。しかし、こんなぶっとい感じのトーンは今のデジタルでは再現できないでしょうね。


モジュレーション系エフェクターの元祖として、ゆらゆらと空間を震わせるトレモロの音色・・揺れるって案外と人間の感情と近いところにあるのかもしれません。

2016年11月5日土曜日

秋の夜長に耽る・・

目の前にあるもので十分だと分かっているのに、ついつい暇な秋の夜長になるといろいろなものを試したくなってくる今日この頃です・・。今まで個別の項目で取り上げてきた機種はもちろん、ここ最近の気になる新製品なども集めて、ここで '総集編' というカタチでまとめてみます。さあ、陽の沈みと共にミニマル・ダブに乗ってスタート!


今のエフェクターボードはもう満載。プリアンプとDI、ミキサーとプリセット・ヴォリュームといった地味に仕事系アウトボードを搭載した上で、そこにダイナミクス系エフェクター、オクターバー、ワウ、ループ・サンプラー、ディレイが並びます。パワーサプライにDC9Vの供給端子が1つ余っており、ぶっ飛んだ 飛び道具系エフェクターを置きたい願望などあったりしますが、どうもこの手のものは飽きるのも早いので躊躇しちゃうんですよね。これでも過去にはいくつかの飛び道具’ を試しており、Digitech Whammyやリング・モジュレーター、グリッチ系エフェクターなどが足元を駆け抜けました。リアルタイム・ピッチベンドのWhammyは近藤等則さんのトレードマーク的エフェクターでもあり、これがなかなかオリジナリティを発揮するのは難しい。リング・モジュレーターも似たような傾向で、これは単にエグくかけちゃうと何やっても一緒というか、あまりプレイヤビリティを発揮する余地がありません。むしろループ・ブレンダーのようなものを活用し、原音に対してスパイス的に混ぜるだけでも十分効果があります。また ‘グリッチ/スタッター系エフェクターは、何が飛び出てくるか分からない一期一会的面白さはあるものの、トレモロ的なブツ切れ感がアンプでは耳障りになってしまうのが難点。う〜ん、こうやって書いてみるともう、あまり楽しめるエフェクターの類いがないなあ。個人的にはVCFやVCAに作用するエンヴェロープ・モディファイアやゲート、フィルターなどで、地味に質感をコントロールできるヤツが 'MYブーム' なんですケドね。と言ってモジュラーシンセに手を出し始めるとヤバイですが・・。





Z.Vex Effects
Dave Smith Instruments Mopho
Moog Moogerfooger

それでもザッカリー・ヴェックスが手がける、Z.Vexの '変態三兄弟' ともいうべき16ステップ・シーケンス付き 'Super Seekers' シリーズは夜更かしで遊んでみたいですねえ。シーケンス・パターンはもちろんグリッチ風効果、そしてMIDIも備えているのでドラムマシンやサンプラーなどと一緒に盛り上がれるでしょう。上の動画のバリトン・サックスの方は、5ポリのアナログシンセの名機、Prophet 5の設計で有名なDave Smith Instruments Mophoのランダム・アルペジエイターで同様の効果を行っておりますね。この方はライン・セレクターやループ・ブレンダーを上手に活用して、効果的にサックスとエフェクターのバランスを取っているのが見事です。



Keeley Blue Box Stabilizer Mod.

そうそう歪み系があった。現在、わたしはGibson / Maestro Sound System for Woodwindsを愛用しておりますが、個人的に管楽器にはローゲイン系の歪みが合うと思うので、MXR M103 Blue Boxはユニークなオクターヴ・ファズとして推奨できますヨ。Snarky Puppyのトランペット奏者、Mike ‘Maz’ Maherによるデモ動画もありますが、一聴しただけではまるでエレクトリック・ギターを弾いているように聴こえます。すでに何度もご紹介しているMaherさんの動画なんですが、簡潔に 'アンプリファイ' なラッパの魅力を伝えていて好きだなあ、コレ。ただし欠点も述べれば、いくらローゲイン系の歪みが合うとはいえ、本機のOutputゲインの低さは管楽器でもちょっと物足りない。デモ動画の場合、CrybabyワウペダルとFenderのギターアンプを併用することで上手くセッティングしている感じで、わたしの場合、Root 20という工房でOutputにブースト機能を足すモディファイを施してもらいました。と思ったらリンク先に、モディファイで有名なKeeleyが同様の手を入れたBlue Boxの中古を発見、希少!



Recovery Effects Bad Comrade
Radial Engineering EXTC SA

なになに、Blue Box程度じゃ生温い・・もっと激しい歪みをくれ!ってことなら、こんな 'グリッチ/スタッター' 系とファズ、リング・モジュレーターにディレイまで入れてしまった、ラーメンで言うところの '全部入り' なヤツはいかがでしょう。エクスプレッション・ペダル含めて、足だけの操作でここまで攻撃的にぶっ飛んでいるのは凄すぎ。しかし、歪み系って単に管楽器のマイクでかけてしまうと音は潰れちゃって何吹いているか分からないわ、余計なノイズが増えてハウリングを誘発するわで、はっきり言って '鬼門' です。原音とエフェクト音をミックスするループ・ブレンダーを使うか、マウスピース・ピックアップとマイクをミックスして用いるなど、何かとセッティングに一工夫が必要なのです。このような '歪み系' は、後ろにグライコ(例えばBoss GE-7など)を繋いで音抜けやブーミーになった帯域を補正すれば、ハウリング防止はもちろん積極的なサウンド・メイキングも可能など、実は探求してみると奥の深いジャンルでもあります。また、MaherさんのワウとBlue Boxの動画に現れておりますが、ダイナミックマイクのShure SM58で収音しているところにも留意して欲しいですね。もしくは、マイクをそのままライン・ミキサーへ接続した後、ミキサーのバスアウトから出力して、'リアンプのエフェクター版' ともいうべきアッテネータRadial Engineering EXTC SAを介して '歪み系' を使うとバランスが取れるかと思います(最も劣化の少ない繋ぎ方と言えるかも)。





Ezhi & Aka Fernweh ①
Ezhi & Aka Fernweh ②
Ezhi & Aka Moomindrone+
Ezhi & Aka The Flutter
Ezhi & Aka Mr. Glitchy

さてさて、Masf Pedalsの製品以降、すっかり市場で '市民権' を得たのが 'グリッチ/スタッター' 系エフェクター。大抵はディレイとピッチ・シフターの回路をベースに製作しているものがほとんどなのですが、このEzhi & Akaというロシア発の新興メーカーのもぶっ飛んだもの!赤外線操作のThe Flutterやモメンタリースイッチ装備のMr. Glitchyも面白そうなのですが、個人的に気に入ったのが、まるでモジュラーシンセの '化け物' 的な超ローファイ・サンプラー&ディレイ& 'グリッチ' のFernwehと 'グリッチ' &ピッチ・モジュレーションが一緒になったMoomindrone+。説明するには一筋縄ではいかないので、動画とリンク先の解説で想像を膨らませて下さいませ。



Hologram Dream Sequence
Red Panda Particle

'グリッチ/スタッター' 系エフェクターでも激しさより柔らかい感じで、牧歌的なエレクトロニカっぽいものとして、日本未発売のその名もHologram Dream Sequence。おお、なんとなくこれからの寒々しい季節にぴったりな感じじゃないですか?寒いのは大嫌いだけど、こういう '心象風景' の意識をくすぐる '飛び道具' は好きですね。デジタルながらローファイっぽい質感も持ち、全体の印象はちょっとRed Panda Particleと似ているかな。









Electro-Harmonix Micro Synthesizer
Dreadbox Square Tides - Square Wave Micro Synth
Dreadbox Kappa - 8 Step Sequencer + LFO
Ludwig Phase Ⅱ Synthesizer
Kep FX Phase Ⅱ.2
Moog Moogerfooger

では、ここでちょっと名前の出てきたフィルター系はどうだろうか。エンヴェロープ・フィルターもワウのヴァリエーションとして繋いでおけば面白いのだけど、何かコレ!っていう惹かれるものがない。ほとんどがMu-Tron的なヤツばかりでちょっと飽きたというか、もっとシンセ的にヘンなヤツを試してみたいですね。この辺も物色するとマイナーな怪しいヤツが出てきて無駄に散財しそうで怖いのですが、やはり注意すべきは極端に音痩せしちゃうのとラッパとのタッチセンスの相性でしょうか。そういう意味では以前所有したElectro-Harmonix Micro Synthesizerを再び試奏してみたい。しかし、わざわざ同じものを買い直すのもシャクなので、Dreadboxのエグそうなヤツが面白そう!別売りの8ステップ・シーケンサーKappaから電圧制御(VC)することで、モジュラーシンセ的アプローチも可能です。また、1970年代にドラム・メーカーのLudwigから発売されたビザールな擬似ギターシンセ、Phase Ⅱ SynthesizerをデッドコピーしたKep FX Phase Ⅱ.2も日本未発売ながらイイ感じ。この後に出てくる 'ヒューマン・ワウ' 的ニュアンスのぶっ飛んだヤツで、オリジナルは、Moogシンセサイザーの大家として有名な故・富田勲氏も 'ラデシン' のアダ名で作曲によく利用されていたそうです。富田氏によれば "あれは主に、スタジオに持ってって、楽器と調整卓の間に挟んで奇妙な音を出してました。まあ、エフェクターのはしりですね。チャカポコもできるし、ワウもできるし" とのこと。いわゆるMoogシンセサイザーに喋らせたかったということで、ノコギリ波とフィルター、アナログ・シーケンサーにより生み出した 'パピプペ親父' の音作りから晩年の '初音ミク' を用いた作品へ至る出発点として、この 'ヒューマン・ワウ' 的なエフェクターがあることを考えると非常に興味深いですね。とりあえず、いま手っ取り早く擬似シンセ風にやるのなら、Moog博士のMoogerfoogerシリーズを足元にズラッと並べれば 'それっぽく' なります。ザJBズ、Pファンクのホーニー・ホーンズを渡り歩いてきた重鎮、メイシオ・パーカーも吹きまくり(最後のドヤ顔)!



Electro-Harmonix Talking Pedal
Electro-Harmonix Stereo Talking Machine


フィルターといえば原初的なヤツであるワウですけど、あまり各社がやらなかった特殊な一品として 'ヒューマン・ワウ' というのがあります。そもそもワウは人間が喋るような効果として生まれた経緯があり(赤ちゃんが泣き叫ぶから 'Crybaby')、またその昔、楽器からの出力を小型スピーカーとして '咥えて'、口の開閉により骨振動で 'マウスワウ' させるトーキング・モジュレーターというのがありました。さすがにラッパでは口はマウスピースで塞がっているので(笑)、それでも同様の効果が欲しい人に試して頂きたいのがこの 'ヒューマン・ワウ'。もちろん、このような製品が出ているワケではなく、Boss AW-3 Dynamic Wahというエンヴェロープ・フィルターに 'Humanizer'という機能がありました。こちらは残念ながらディスコンとなってしまいましたが、'変態エフェクター' の百貨店であるエレハモではこの効果に特化したStereo Talking Machineというのがあります。しかし、もう少し安価で面白いヤツとして同社のTalking Pedalというのもあるんですよね。まるでシーソーのようなカタチは、ペダル本体を傾けることでセンサーが作動してOn/Offはもちろんワウとしての効果が現れます。イマイチ安定性に欠け(安定させる為の専用の '底板' も用意されております)、またエフェクターボードにも固定しにくいことで人気がない為か、安価に入手することができるのでちょっと試してみたいですねえ。



Electro-Harmonix Pitch Fork
Electro-Harmonix HOG 2
Digitech Whammy Ricochet
vimeo.com/160406148

アナログ・オクターバー大好きな私ではありますが、このエレハモのPitch Forkの動画を見ると試したくなりますねえ。Whammyほど '飛び道具' 感でもなく、エレハモのHOG 2ほど大仰な 'ギターシンセ' 感でもなく・・絶妙です。ピッチ・シフターって、デジタルならではのレイテンシーの処理からくる '発音の遅れ' があって今まで好きじゃなかったんだけど、最近のは技術の進歩でどれも遜色ないと思います。そしてリンク先にあるPiezo Barrelピックアップを用いての、Ryan ZoidisさんによるKorgのギター・シンセサイザーX-911のデモ動画。アナログシンセならではのオクターヴUPの古臭い感じがたまりません。



Noisy Mic - Gizmo Music Deluxe Edition
JMT Synth HP

また、ちょっと変わった 'ノイズ' 系ではこんなのはどうだろうか。個人で製作していると思しきJMT SynthのNoisy Mic (Gizmo Music Deluxe Edition)なるマイクとフィルターのセットになっているもの。このマイクに向けてトランペット吹きながらフィルターのツマミひねってグシャグシャさせる・・もちろん、管楽器用マイクから入力してみてもOKです。昔、Rolandの古いモジュラーシンセであるSystem 100の外部入力から突っ込んで、VCFとVCA、LFOでいろいろと変調させて遊んでみたことを思い出しました。しかし、ここまで取り上げたのはフィルターと歪みとオクターバーの一緒くたになった 'アナログシンセ' 風なものばかり。やっぱし、こういうのが好きなんだな・・としみじみ。



Strymon Deco
Korg Nuvibe

後は 'モジュレーション' 系・・昔は 'Uni-Vibe' 系をいろいろ探求するくらい好きだったんですケドね。まるでトランペットを水中で吹いているような気持ち良さがあったのですが、何でかすっかり興味は失せてしまいました。それと、わたしが愛用するディレイのStrymon Brigadierにはグニャグニャと音痴になるモジュレーションが搭載されているのでそれで事足りるというか(いや、使いませんケド)。しかし、そんな最近の機種の中でStrymon Decoの 'テープ・フランジング' 効果は興味ありますねえ。単体のフェイザーやフランジャー、コーラスとは違う 'テープ' ならではの飽和感がよく再現されているというか、この歪むサチュレーションの効いた変調はクセになるかも。









Eventide Space
Eventide Timefactor
OTO Machines BIM
Benidub Digital Echo
Knas The Ekdahl Moisturizer

ディレイやリヴァーブなどの空間系はどうだろうか?リヴァーブはアンプに内蔵のスプリング・リヴァーブを浅めにかけているだけですが、デジタルでアルゴリズムの複雑なヤツ、例えばコンドーさん愛用のEventide Spaceなんかにするとかなり今っぽい空間生成が可能です。リヴァーブって奥が深いというか、実際の空間における響きと人工的な 'アンビエンス' の生成の間でどうバランスを取るかだと思うんですよね。あと価格に比例するというか、やっぱり安いのはそれ相応の内容で、良い(情報量の多い)リヴァーブは高いですヨ(苦笑)。ディレイははっきり言って複雑なテンポを複数プログラムして、プリセットを呼び出して使うようなヤツはラッパでは勿体ない。しかし、この手の機種には大抵MIDIが付いているので、例えばシーケンサー内蔵のドラムマシンやループ・サンプラーなどとテンポ同期させて演奏する、みたいな場合だと確かに必須になると思います。ここ最近のギタリストの足元には、Boss DD-500 Digital DelayやFree The Tone FT-1Y Flight Time、Strymon Timelineなどがプログラマブル・スイッチャーと組み合わされています。個人的に気になるのは、初期デジタル・ディレイの荒い12bitの質感を再現したOTO Machines BIM。このスタイリッシュなデザインも格好良いですが、(Normal,Dual Head,Disto,Lo-Fi)の4つのキャラクター、フィードバックフィルター、4つの波形を搭載したモジュレーション用のLFOを用意、MIDIにも対応します。Gainの変更が可能なので過大入力させてサチュレーションさせるなど、直感的に操作することが可能です。そして、スペインでダブに特化した機材を製作しているBenidubから、スプリング・リヴァーブのSpring Ampに続いて登場した 'ダブ専用' デジタル・ディレイ。数値でテンポ入力して呼び出すヤツより、こういう耳で聴いてツマミを合わせていく 'アナログな' ヤツは好きですねえ。もちろん、単に古い仕様を真似ているワケじゃなく、入力するリズムに合わせるタップテンポ的なBeat Quantizeや、ショート・ディレイの状態をサンプリングしてループさせるLoopモードなど、現代的なスタイルにも対応します。管楽器で使うならループ・サンプラーでフレイズ・サンプリングしたものを本機のフィルターやタップ・ディレイ、フィードバックなどでいろいろダブ操作するだけでも十分面白いパフォーマンスが可能かと。さて、いわゆる '宅録派' が好む卓上エフェクターとして、一昔前はベルギー産のSherman Filterbankや英国のLovetone Meatballなどが多くの 'ガジェット類' と共に置かれておりましたが、近年よく見かけるのがこの日本未発売のエフェクター、Knas The Ekdahl Moisturizer。中身はVCFとLFOで変調させたものを本体上面のスプリング・リヴァーブに送ってドシャ〜ン、バシャ〜ンと '飛ばして' やるという、素晴らしく乱暴な一台。しかしホントよく見かけるなあ、コレ。







Noveller HP
Boomerang Musical Products Ⅲ Phrase Sampler E-156

こちらはNovellerというひとりユニット?な方のエフェクターボード、なんですが、ええ、単にキレイな美脚でエフェクター踏んでいるな、という動画に釣られましたヨ。ていうかこうやって、あれこれエフェクター取っ替え引っ替えしながら夜な夜なエフェクターボード組むのが楽しいんですよね。しかし、こういうセクシーなギタリストもっと増えないかな〜、などと思って演奏を聴いてみたら、おお、ジミー・ペイジも真っ青なボーイング奏法も駆使し、ループ・サンプラーで歪んだアンビエンスを積み重ねていくシューゲイザーっぽいことやってるんですね。この人かなりの 'Pedal Geek' なようでいろんなヤツを取っ替え引っ替えしているようですが、サウンドの 'キモ' は珍しいループ・サンプラーのBoomerang Ⅲ Phrase Sampler E-156ですね。日本では京都のきんこう楽器が代理店で扱っており、以前から試してみたいと思っているんですけど・・常に入荷数が少ない。





Elektron Analog Heat HFX-1
Elektron Octatrack DPS-1

Elektronがドラムマシンやシンセサイザー、サンプラーと共に使って欲しいと用意した新製品、マルチ・エフェクターのAnalog Heat HFX-1は気になる存在です。強烈なフィルターとディストーションでもって '質感' を変えるそれは 'Audio Enhancer / Destroyer' と名付けられて、いわゆる二次、三次倍音の生成と破壊的な歪みで潰してしまいます。バッサリとカットするフィルターの切れ味はもちろん、ブーストしたときのふくらみ具合、そして滲むような歪み方とシンセのキックに変調してくれる発振は、管楽器ならライン・ミキサーのインサートで使ってみたいですね。そして、'ど変態' な 'Dynamic Paformance Sampler' として孤高の存在のElektron Octatrack DPS-1。ループ・サンプラー機能である 'Pickup Machine' を用いて、BehringerのMIDIフットコントローラーに繋いでのリアルタイム・サンプリングによるパフォーマンス。多機能ゆえに難解な操作で挫折者続出のOctatrackですが、この多様なアプローチはちょっと面白そうなアイデアが浮かんできちゃいます。



実際、夜中にこんなことやっていたら苦情が殺到すると思うケド、ま、あれこれ考えている時間が実は楽しかったりするんですよね。と、なんだかんだ '耽って' いる内に外はうっすらと白み始めてきた・・そんな空気を代弁する、再びこのクールにミニマル・ダブな感じ。ミックスのバランスも良いですね。古いRolandのテープ・エコーRE-201と最新の 'デジタル・ガジェット' 群が交差して、次々と現れるサウンドスケープで静かに朝を迎えたいと思います・・。

2016年11月4日金曜日

ブートレグのマイルス・デイビス

またマイルス・デイビスかよ・・いや、そう言わずにおつき合い下さいませ。

ここ近年のSony / Legacyによるマイルス・デイビスの ‘The Bootleg Series’ は、過去マニアの間で話題となった高音質のブートレグを公式盤としてリリースすることで、広くデイビスの音楽性を大衆に伝える役目を負っています。逆にいえば、これは高価なボックスセットとして詰め合わせ状態で出荷されているワケで、コレクションのほかに果たしてどのくらいの人に聴かれているのだろうかという不安もありますね。そもそもブートレグの根底には公式盤では満足できない聴き手のもっと聴きたいという声の表れがあり、個人の私家録音、放送用音源のエアチェック・テープというのが主な発掘対象でした。また、公式盤ではフォローしていないミッシングリンクな時期の音源などは、それらを聴くことで公式盤だけでは埋められない音楽的連関を考察する鍵を提供してくれるものでもあります。

そんなマイルス・デイビスのブートレグで彼の没後、大手CDショップの棚でよく見かけた初期ブートレグ2枚を久しぶりに見つけたので購入。当時、タワーレコードやHMVCD棚で、公式盤より明らかに割高で怪しげなジャケットを見つけては訝しげに買って帰ったことを思い出します。ガイドとなるのは積極的にデイビスのブートレグをフォローした評論家、故・中山康樹氏の著書マイルスを聴け。ほんと音質からデータの記載、演奏内容などを考察する上で無駄銭を防止する有難い一冊でしたね。


今でこそブートレグといえばCD-Rが当たり前ですが、当時は普通にプレスCD。しかし、レコード時代にはガサガサ、ゴソゴソとノイズの彼方から微かに聴こえてくるような音質が当たり前であったブートレグは、CDの時代になってからは高音質の音源をパッケージすることが多くなりました。特に、レコード時代から評価の高かった1967年の 'No Blues' (JMY)や1969年の 'ロスト・クインテット' を収めた 'Double Image' (Moon)、そして1971年のキース・ジャレット在籍時の2枚組 'Neue Stadthalle, Switzerland' (JMY)などは、当時、公式盤でフォローしていない時期のものだけに感動もひとしお・・これは凄い、と。しかし、そんな入手のしにくいブートレグも今では公式盤としてリマスタリングされて、いつでも耳にできるようになった反面、ちょっとした '宝探し' の気分が味わえなくなったのは寂しいですね。店頭の棚をチェックし、冴えないジャケットをドキドキしながら開封する・・おお、こんな 'お宝' が眠っていたんだ、っていう密かな楽しみ。



さて、①はジョン・コルトレーンとの最後のヨーロッパ・ツアーを記録したものからスイスはチューリッヒのライヴ。なぜかこのツアーからのものは公式盤でフォローしておらず、名盤 ‘Kind of Blue’ の次は後釜で加入したハンク・モブレイとの ‘Miles Davis in Person At The Blackhawk, San Francisco’ なのだから・・アレ?って感じ。まさにコルトレーンとデイビスの蜜月時代を聴きたい人にとっては待望の音源ではありますが、しかし、やはりこの二人って水と油 なんだな、というのが分かるのもこのヨーロッパ・ツアーのもの。ちなみにブートレグではありますが、ジャズの評伝書きとしても有名なJan Lohmannがライナーノーツを書いているのも良いですね。ちなみに現在では、ビル・エヴェンス在籍時のセクステットでニューヨークの 'Cafe Bohemia' に出演(1958年5月17日)した4曲を追加した 'Live in Zurich' としてiTunesで購入できます。



①を気に入ったという方は、同じく高音質のブートレグ?と言っていいのか、フランスの放送局Europe 1による4枚組②をおすすめします。コルトレーンとのヨーロッパ・ツアー2枚に後釜のソニー・スティットとのヨーロッパ・ツアー2枚という、もうお腹いっぱいな内容です。しかし、さすがにコルトレーンの後のスティットは古すぎる・・。モード奏法も分かっていない先輩スティットなだけに、さすがにデイビスもこちらは消化試合のようなものだったのでしょう。さて、ともかくグループの一員であることを無視して、ブヒバヒとソロになってやりたいことを好き勝手に開陳するコルトレーンと、そんなこと一切お構い無しに自分の仕事に徹するデイビス、その二人の水と油ぶりに右往左往しながらひたすらキープするリズム・セクションというチグハグさが①と②の聴きどころ、ですかね。いや、ハッキリ言ってデイビスはそんなコルトレーンの無法ぶりに腹を立てていたはず・・しかし、クビにせずにこのツアーまで残留をお願いしたのもデイビス本人なのだから泣くに泣けませんよ、コレは。自叙伝を開いてみるとコルトレーンの退団は了解していたものの、彼の後釜を見つけられずに四苦八苦していたのが当時のデイビスの悩みでした。すでにこのグループの二大看板であり、何とかコルトレーンを連れていかなければツアーは成功しなかった・・。そこでコルトレーンを宥めながら欲しがっていたソプラノ・サックスを買ってやり、ソロとして大手アトランティック・レコードとの契約をまとめてやりとご機嫌を伺うデイビスの心情が微笑ましくもおかしいのです。そもそもマイルス・デイビス・スクールとは、彼のお眼鏡に叶った連中をピックアップし、デイビスの音楽を理解させ、駄目ならクビ、ソロとして独り立ちできるようなら卒業というのが一貫した姿勢でした。コルトレーンも間違いなくデイビスのグループとは相容れなくなった個性を確立しており、普段ならとっとと出て行け!と追い出していたハズが、くだんの件で頭が上がらなかったのが①と②の音源だと覚えておくと、いろいろ想像できて楽しくなるでしょう。



③はご存知、当時若干18歳の天才ドラマー、トニー・ウィリアムズを擁した第2期クインテットのもの。これはフランスのアンティーヴ・ジャズ・フェスティバルに出演したもので、公式盤 ‘Miles in Europe’ を残しております。公式盤は1963727日の音源ですが、こちらは前日26日のもの。コルトレーンを擁した1960年のクインテットによる重複したレパートリー、‘So What’ や ’If I Were A Bell’ をそれぞれ聴き比べてみて下さい。もう、ウィリアムズの半拍先を叩くシンバル・レガートの速いこと!デイビスもこの新鮮なリズム・セクションの熱気を受けて一気に若返りました。バラッドの解釈においてもウィリアムズによるメリハリの効いたチェンジ・オブ・ペースを受けて、デイビスがまったく新しいやり方でスタンダードを換骨奪胎させていきます。ちなみにこの③、CDのインデックスでは1曲目が 'All Blues' となっておりますが、実際は急速調な 'So What' でスタート。ラストの5曲目でもさらに速度UPした 'So What' が再び登場するということで、つまり2ヴァージョンの 'So What' を堪能することできます(残念ながら誤植の 'All Blues' は収録されておりません)。んが!さらにマニアとは恐ろしいもの・・そのまた前々日の7月25日と公式盤の翌日28日の音源を発掘し2枚組とした 'Another in Europe' (So What)でドカンとすべてを吐き出しました!全11曲収録。というか、もうこのレベルであればSonyから公式盤としてリリースするべき内容ですけどね。つまらない既存の '抱き合わせボックス' で暴利を貪るのならちゃんと仕事をしてくれ・・Sony / Legacy。残念ながらiTunesでは 'Cote Blues' が購入できるのみで、フル・コンプリートの 'Another in Europe' は渋谷の専門店まで足を運ばなければならないようです。







そんなブートレグ事情が公式盤とシンクロした一例として、マイルス・デイビス没後、'事件' ともいうべき最初の '発掘作業第一弾' となった '1969 Miles'。それまで 'Double Image' という高音質のブートレグを聴いていた者にとって、これほどタイムリーかつターニング・ポイントな時期のデイビスを堪能できる音源はないと言っていいでしょう。元はフランスのテレビ局が収録したものということで上のモノクロの映像も後に出回りましたが、やはり冒頭のジャック・ディジョネットによるドシャメシャな、ジャズなのかロックなのかフリーなのか分からないドラム連打が胸踊らせます!カバーアートは晩年のデイビスと親交のあったファッション・デザイナー、佐藤孝信氏を起用し、プロデュースに1983年以降 '絶縁' 状態であったテオ・マセロを再び立てて、いわゆる 'マイルスの音' を作り出す手腕を発揮するなど、ある意味、ブートレグで '想像の耳' を広げていたユーザーの思いと見事に合致した傑作だと思います。個人的に、本盤でのスモーキーで黒々としたぶっといMartin Committeeの音は最高ですね。ちなみに、この '1969 Miles' の音源は翌日の音源と共にフランスの放送局が記録し、それらは 'The Bootleg Series' のボックスセット 'Miles Davis Quintet: Live in Europe 1969' としてまとめられております。実は、このボックスセットの音源はテオ・マセロの '加工前' のもの(モノラル)ということで、これと '1969 Miles' を聴き比べてみればマセロがいかに優れた手腕を発揮していたかが分かるでしょうね。





さて、そんなデイビスの 'ブートレグ' の中で 'ミッシングリンク' として今後の発掘と評価の対象とされているのが、プリンスとの共演ものでしょうね。実はプリンスもデイビスのラッパも 'ソックリさん' だったとか、いろんな噂が出ましたけど、プリンスの '流出モノ' として話題となり、結局ワーナーから正式に発売された 'Black Album' とひっかけたタイトルのブートレグで一部マニアの耳に届きます。しかし、この 'Can I Play with U ?' 1曲が陽の目を見ているのみで、この時のレコーディング・セッションの全貌がどのようなものだったのか、未だその興味は尽きません。時期的には当時発売中止となった 'Black Album' や、アルバム 'Sign O' The Times' 〜 'Lovesexy' の音源と被るということで、プリンス全盛期なだけに悪いワケありません!しかし、プリンスのライヴに飛び込んだデイビス、誰が聴いてもすぐ分かる 'この一発' で良いフレイズ吹くなあ〜。





この1980年代後半は、デイビスとR&Bの距離もスライ・ストーンなどと連んでいた1970年代に比べたらグッと近いところに居て、プリンスはもちろん、ワシントン・ゴーゴーの影響やチャカ・カーンとの共演など、割とすぐ 'ノッてしまう' ところがありましたね。また、デニス・ホッパー監督の映画 'The Hot Spot' のサントラでブルーズの大御所、ジョン・リー・フッカーやタジ・マハールらとの共演など、それまでは考えられないような組み合わせをフットワーク軽く決めてしまう。このキャミオとの共演 'In The Night' もそうで、ゴーゴーのリズム(by リッキー・ウェルマン!)で軽やかなファンクを吹くデイビスは時代の空気にぴったりハマっていたと思います。

2016年11月3日木曜日

ワシントン・ゴーゴーの衝撃

ソウル・ミュージックどっぷりだった高校生の頃、突如ワシントンDCという '辺境' (首都なんですが)から賑やかに飛び出してきたのがワシントン・ゴーゴーなるストリート・ミュージックでした。ちょうどニューヨークはサウス・ブロンクスから飛び出してきたヒップ・ホップがポップ・ミュージックの世界で '市民権' を得た頃でもあり、このゴーゴーもそんな '勢い' に乗ろうと英国の大手レコード会社、Islandのクリス・ブラックウェルが仕掛けたムーヴメントだったのです。Islandといえば、同じくジャマイカの孤島から世界に向けてビッグヒットを放ったボブ・マーリィとレゲエ・ミュージックを仕掛けた張本人でもあり、当時このゴーゴーも勝算の見込みあり、と踏んだのでしょう。しかし、残念ながら現地米国ではヒップ・ホップを凌駕するほどの力は振るわず、英国と日本の一部R&B愛好家に好まれたのみでほとんど忘れられてしまいました。







そもそもワシントンDCに黒人が流入してきたのが1970年代初め。表向き人種差別撤廃の動きと相まって安く住居施設を提供したことから瞬く間にゲットーが構成され、黒人との同居を嫌がる白人層は郊外へと忌避していったことでDCの中心部は 'チョコレート・シティ' の異名を得ることとなります。またアフリカの旧植民地やカリブ海からの移民も移り住むことで独自の文化圏を形成し、1970年代後半にはいわゆる 'ゴーゴー・ミュージック' の基盤が定着します。1970年代初めからザ・ソウル・サーチャーズを率いて活動するチャック・ブラウンは 'Godfather of Go-Go' として知られており、ステージで演奏するオリジナルや 'Top 40' ものをファンク・アレンジする中で、曲間をドラム・ブレイクとコール&レスポンスで繋ぎながらノンストップで展開する 'ゴーゴー・スタイル' を生み出しました。この 'DC産ファンク' はアフリカやカリブ海の血脈を受けて、ラテン・パーカッションを過度にドラム・ブレイクと共に強調しながら、二拍三連のハーフタイム・シャッフルで進行するのが特徴です。そして基本はライヴ・ミュージックということで、1曲が優に1時間を超える地域コミュニティに沿ったローカル性を発揮します。その為、物理的にレコード文化が育たずラジオ局でもかけられることがない為、長い間この 'DC産ファンク' の存在が外部に知られることはありませんでした。








1978年に全米R&Bチャート1位を記録したチャック・ブラウンの 'Bustin Loose' や1982年のレア・エッセンスによる 'Body Moves' といったヒットはあるものの、それらが 'DC産ファンク' として 'ワシントン・ゴーゴー' というひとつの特異なムーヴメントとして知られるには、後述する1985年のIsland Recordsからのコンピレーション 'Go-Go Crankin'' を待たねばなりません。また、同コンピレーションと同時期にLondon Recordsからも 'Go-Go - The Sound of Washington D.C.' という2枚組コンピレーションでレッズ&・ザ・ボーイズ、シェイディ・グルーヴ、ペットワースといった地元のローカルなゴーゴー・バンドを紹介しております。これ以降で集大成的なものとしては、1987年にワシントンDCのキャピタル・センターで開催された 'Go-Go Live At The Capitol Centre' のVHSビデオとそれをそのまま2枚組CDにしたものがありました。この現地の熱気を余すところなく伝えるVHSビデオはそれこそ擦り切れるくらい見まくったなあ...(遠い目)。








1984年に米国で小ヒットとなった1曲にチャック・ブラウンの 'We Need Some Money' というのがあり、これに異常に食いついたのがIslandのクリス・ブラックウェル社長。直ぐさまDCのマイナー・レーベルであったD.E.T.T. / T.T.E.D.のマックス・キッドと契約し、この隠れた 'DC産ファンク' を世界に向けて発信することとなります。すでにこの時点で、DCにはチャック・ブラウンの他にレア・エッセンスとそこから独立したリトル・ベニー&ザ・マスターズ、レッズ&ザ・ボーイズ、トラブル・ファンク、E.U. (Experience Unlimited)といった実力派のバンドが街の人気者となっていました。この独特なストリートの空気を伝えようとIsland主導で、アート・ガーファンクルを主役!としたB級映画 'Good To Go' を制作、しかし、レゲエを紹介する為にジミー・クリフを主役にしてヒットさせた映画 'The Herder They Come' の '二匹目のドジョウ' を狙うも見事に惨敗。すでに翌年には英国での人気も陰りを見せ始めます。ところが、日本は世界でもこのゴーゴーを愛した特異な国となり、上で述べたゴーゴーの主要バンドはほぼ日本公演を行うほど盛況となりました。わたしも当時チャック・ブラウンの公演を観に行きましたが、もう、これぞ 'DCスタイル' と言わんばかりの熱狂的なノリに踊りまくっていたのが昨日のことのように懐かしい。当時、日本に入荷していたゴーゴーのレコード、CDの類いはすべて購入しており、また地元DCで流通する 'PAテープ' なるカセットテープをDisk Unionが少量入荷したときも、これまたすべて購入して貪り聴いていたというくらいのマニアでしたね。一方、このD.E.T.T. / T.T.E.D.との配給契約を通じてクリス・ブラックウェルのIsland / 4th. & Broadwayから世界に発信されたトラブル・ファンク、E.U.、チャック・ブラウンに対し、ヒップ・ホップの震源地ニューヨークでリック・ルービンの名門Def Jamと契約したのがザ・ジャンクヤード・バンド。その名の如くドラムセットにポリバケツを組み込んだ 'ジャンクな' 彼らは、結局1986年の12インチ 'Sardines' 一枚でメジャーへの挑戦は終わってしまったものの、このブーミーなベースラインを持つタフなゴーゴー・スタイルはいま聴いてみても格好良い!。






そして 'Bustin' Loose' やトラブル・ファンクの 'Drop The Bomb' と並び、そんな 'ゴーゴー前夜' を捉えたレア・エッセンス1982年の 'Body Moves' も抑えておきましょう。チャック・ブラウン始め多くのバンドがワシントンDCを飛び出し世界を駆け巡る中、地元DCに根城を築き一貫して伝統的な 'DCスタイル' のライヴバンドとして活動していたのがレア・エッセンス。このバンドからはメガネ男のリトル・ベニーがThe Mastersとして独立するなど地元の登竜門的存在としても君臨しましたが、ゴーゴー・ムーヴメント過ぎ去りし後の1995年に 'ターザン' の叫び声のサンプリングした 'Work The Walls' で時流のヒップ・ホップ的手法にも対応しておりまする。そのリトル・ベニーはもういないけど(涙)、もちろん、このグループは現在も世代を超えて活動中です。結局、ゴーゴーというムーヴメントの音楽的成功は叶えられませんでしたが、しかしその特異なファンクの構造は当時新たなプロデューサーとして登場したテディ・ライリーの心を捉えて、新しいダンス・ミュージックの 'ニュージャック・スイング' に多大な影響を及ぼすこととなります。また、後述しますが英国から一躍世界に躍り出たソウルⅡソウルの 'グラウンドビート' にもチャック・ブラウンのレア・グルーヴ 'Ashley's Roachclip' が影響を及ぼすなど、ある意味ではファンクの最もプリミティヴな要素を再認識させたものがワシントン・ゴーゴーでした。




'Keep On Movin'' のいきなりドスッとぶっとく鳴る(たぶん)Roland TR-909のキック一発。もう、この瞬間こそわたしにとっての大きな最初の 'パラダイム・シフト' でした。時代もまさに1989年ということで、それまで世の中から聴こえてきた80's的 'プラスティックな' サウンドから、急にリアルな音像が目の前に現れた衝撃というか・・。そして 'Back To Life' の土着的なコール&レスポンスとレア・グルーヴ感覚。すでに70'sファンクの熱狂的な信者であったわたしにとって、こういうかたちでファンクの黒い感覚が蘇るとは・・。同時代、すでに米国で流行していたニュージャック・スイングと呼ばれるダンス・ミュージックに比べれば、レゲエ・フィルハーモニック・オーケストラの奏でるストリングスを加え、もっとずっと落ち着いていて、そこにちょっとジャジーな大人っぽい雰囲気さえ漂わせている。ともかく、ある時代の米国が持っていたR&Bの伝統を昇華させた 'やり方' としては、個人的に '英国もの' の方が好みであったことをこのSoul Ⅱ Soulは教えてくれましたね。彼らが打ち出したグラウンドビートというグルーヴは、'大地' という意味での 'Ground' ではなく '擦り付ける' という意味 'Grind' の他動詞 'Ground' から来ているようで、これは、レゲエのダンスに男女が股間を擦り付けるようにして踊る 'ラバダブ' というのがあり、この辺りから派生した言葉ではないかと思います。それはともかく、ある意味 '大地' と言い換えても良いくらい、この地を這うようなベースラインとキックのぶっとい感じがダブの血統を強く主張し、また、この緻密なビート・プログラミングに当時英国在住であった日本人ドラマー、屋敷豪太氏(元メロン、ミュートビート)が深く携わっていたのは興味深いです。それは、このカッチリとした構成に日本人的な '職人感' があるというか、屋敷氏にとってはSoul Ⅱ Soulの '屋台骨' 的存在であったネリー・フーパーとの出会いが大きかったようですね。他にメジャーどころではD.N.A. feat. Suzanne Vegaの 'Tom's Diner' とか、耳ダコになるくらい聴いたグラウンドビートの代表的一曲。また、ジャジーB&ネリー・フーパーが 'True Love'、'1-2-3' の2曲プロデュースに携わった 'Soul Ⅱ Soulフォロワー' 的ユニットのThe Chimesなんかも話題となりましたね。そんなグラウンドビートの '元ネタ' として、そもそもレア・グルーヴを回すDJであったジャジーBが '見つけてきた' と思われるのがこちら。チャック・ブラウンがまだザ・ソウル・サーチャーズ単体で名乗っていた頃の1974年にリリースした作品 'Salt of The Earth' からの一曲 'Ashley's Roachclip' です。当時彼らは完全なるB級ファンク・バンドでして、この後1978年に 'Bustin' Loose' で全米R&Bチャート1位を記録。その後、再び1984年に 'We Need Some Money' と共にワシントンDC産のファンク・ムーヴメント、ゴーゴーの創始者としてR&B界に大きくその名を轟かすこととなりました。本曲の実にアフロっぽい雰囲気とレア・グルーヴ的怪しい濃度を持った70'sな下地には、確かにグラウンドビートと共通するビートをクールにキープする感覚が漲っております。









そんな当時、最先端のニュージャック・スイングをワシントンDCに '逆輸入' した一例として、こちらE.U.1990年の 'I Confess'。まあ、この '日和って' しまった態度がゴーゴー・ムーヴメント終焉を決定付けてしまったんですが、ゴーゴー全盛期の 'E.U. Freeze' から比べると見事に垢抜けてますね。そもそもは1970年代後半にフュージョン色の濃いファンクバンドとしてベースのオヤジ臭いヴォーカルが魅力のシュガーベアを中心に活動し、トラブル・ファンクやレア・エッセンスと並んでDCのストリートで頭角を表しました。メジャーのVirginから前作 'Livin' Large' に比べて2作目 'Cold Kickin' It !' はちとゴーゴー的に評判悪いですが、しかし、この 'Funky Like A Monkey' などかなり意欲的かつプログレッシヴなスタイルでゴーゴーの発展に寄与したことはもっと評価して良いですね。そのE.U.最大のヒット作のひとつがスパイク・リー監督の映画 'School Days' 挿入曲の 'Da Butt' であり、プロデュースは当時マイルス・デイビスのグループにも参加したマーカス・ミラー。また、ウィリアム "ジュジュ" ハウスの強力なゴーゴーリズムに目が奪われますけど、彼らEUはバラッドとしての実力も評価したいグループでもあります。





ちなみにマーカス・ミラーからの縁?なのか、このストリート・ミュージックに魅せられたのが 'ジャズの帝王' マイルス・デイビス。デイビスが自らのバンドに迎えた最後の凄腕ドラマー、リッキー・ウェルマンはチャック・ブラウンのザ・ソウル・サーチャーズで叩いていたその人でもあります。そんなデイビスが、このゴーゴーについて述べていたインタビュー記事を読んだことがあるのですが、残念ながら手元に残っていないのでうろ覚えながらこんな内容だったと思います。

"ゴーゴーは昔、ディジー・ガレスピーがマックス・ローチらとやっていたものと同じだよ。ソルト・ピーナッツ!ソルト・ピーナッツ!な?同じだろ。"

たぶん、この "ソルト・ピーナッツ!" という尻上がりな 'かけ声' がゴーゴーのドラム・パターンを代表する二拍三連のハーフタイム・シャッフルのノリと一緒だ、ということを言いたかったのでしょう。ゴーゴーの魅力は、このパワフルなドラマーが牽引するグルーヴに秘訣があり、ウェルマンのほかE.U.のドラマー、ウィリアム 'ジュジュ' ハウスなどの凄腕が揃っております。そういえば、わたしがチャック・ブラウンのライヴを見に行ったとき、ドラマーがウェルマンの 'トラ' として参加したジュジュでして、そのときステージから投げたスティックの1本が未だ手元にあったりします(笑)。そんなマイルス・デイビスが晩年のコンサート・バンドに引っこ抜いてきたのがザ・ソウル・サーチャーズの凄腕ドラマー、リッキー・ウェルマン。このバンドで 'モロにゴーゴー' をやってる曲というのはあまり無いのだけど(汗)、1985年に 'Rubber Band' というカバー中心のアルバム候補曲としてジャズ・シンガー、アル・ジャロウの参加を想定した 'Al Jarreau' は完全にゴーゴー・スタイルですね。叩いているのはデイビスの甥っ子であるヴィンセント・ウィルバーン。そして、ゴーゴーのテンポを意識しながらラリー・ブラックモンを中心に '打ち込み' で制作されたキャミオとの共演 'In The Night' にも微かな影響が聴き取れますヨ。









この 'ゴーゴー界隈' でキャッチーなヒットを飛ばして人気となったのがビッグ・トニー率いるトラブル・ファンク。初期のオールドスクール・ヒップ・ホップとして人気を博したカーティス・ブロウやシュガーヒル・ギャングを生んだSugar Hillレーベルとも交流があり、Drop The Bomb' や 'Say What' のタフなノリは忘れられません。また、'ワシントン・ゴーゴー' ブーム直前、クラフトワークの 'Trance Europe Express' へのヒップ・ホップの返答ともいうべきアフリカ・バンバータの 'Planet Rock' があれば、ワシントンDCからはトラブル・ファンクのエレクトロな 'Trouble Funk Express'!。さらにお返しとばかりにバンバータの 'Go Go Pop' という曲で共演もしております。そして、1980年代といえば 'メガ・ミックス' ブームということで、英国のチャド・ジャクソンなるDJが手がけた 'Still Smokin'' の 'Razor Mix'。これは当時の新曲 'Still Smokin'' を3つにぶった切ってロンドンでのライヴ音源、'It's In The Mix'〜 'Drop The Bomb'〜'Say What ?' を強引に繋げてしまいました。いや〜、このノリにノッていた時期の 'パーティ・ミックス' がたまりません。その後、1987年にビル・ラズウェルのプロデュースで意欲作 'Trouble Over Here, Trouble Over There' を制作するものの時流の 'テクノ・ファンク' スタイルに寄り掛かりすぎ、長引くワールドツアーで地元DCをお留守にしたことから一時的にその人気に陰りが出てしまいました...。





さて、この 'ワシントン・ゴーゴー'。1990年頃にはメジャーからその名を聞くこともなくなり、地元DCでもその規模は縮小されたと聞きましたが(そもそもシーン全体が犯罪の温床と紙一重なところがあった)、最初のドキュメンタリー動画をご覧でもお分かりの通り、何と現在でもこの '熱病' のようなコミュニティは健在だそうです。すでに時代はコンピュータが普及し、画面と向き合いながらトラック制作するヒップ・ホップのクリエイターが多い時代にあって、彼の地DCでは未だにドラムスやパーカッションを志す若者が多いのだとか。この恐るべきローカルな '地域性' というか、日本だとちょっと河内音頭なんかの祝祭性と通じる部分があると思うのですがいかがでしょうか?そんなローカル臭さ丸出しのゴーゴーにおいて、ちょっとユニークな試みでヒットしたのが1991年の 'Go-Go Mario'。E.U.のキーボーディストであるアイヴァン・ゴフが 'Double Agent Rock' のソロ名義として自らのレーベルからリリースしたこの曲は、なんと今年のリオ・オリンピックでも話題となった 'マリオ・ブラザーズ' の音楽をサンプリングしてゴーゴーに乗せたもの。当時、全米各地でこのゲームの中毒者が続出し、'Nintendo症候群' なる社会問題にまで発展しましたが、それはDCの黒人キッズたちをも捉えたことをこの曲は証明しています。そこからさらに30年近い時間を経て・・これは最近のバンドかな。Go-Go Mickeyって確かレア・エッセンスにいた人じゃなかったか?。まさにこれぞファンク、ファンク、ファンク!!!ファンクの連続である純度100%!!!。というか、昔も今も変わることなくこのグルーヴで押し切っているんですね(笑)。ヒップ・ホップのような時代のテクノロジーを駆使して進取的なスタイルとは真逆ですが、この永遠の反復するグルーヴの連続には理屈じゃなく首と腰が動きます!。