2022年3月1日火曜日

春の 'MNG' ツアー

満開な桜と共に暖かな春の訪れ・・って、花粉症キャリア20年以上を保持するわたしにとっては '地獄の季節' 以外の何ものでもない(苦笑)。戦後に杉の木植え過ぎなんだよ!今時こんな杉の家に住む人なんてどんだけいんだよ!?と・・マスク越しに虚しい叫びを上げながら今日も目薬とティッシュを山のように消費しておりまする(涙)。そんなグシュグシュと行き場のないストレスを発散すべく?、今日もインターホンの向こう側からやってくる素晴らしい 'MNG' で淀んだ気持ちを紛らわせるのだ!。というか、このレゾナンスの切れ味鋭い 'フィルター' で微細な花粉を洗い落としてくんないかな?。あ、ここでの 'MNG' ってのは全て手に入れた機材っていうワケじゃなく、まあ一部、気になったモノも入れときましたくらいの意味合いまで含まれますね(苦笑)。とりあえず、この '春の嵐' をメタファーにして世界があらゆる '怒り' に満ちた季節を迎えております。

その前に、この春の訪れと言うべき忍び寄る '足音' を感じるような私的 'R&Bコレクション' をどーぞ。まずはデレゲーションからジ・アイズレー・ブラザーズ、チャカポコとリズムボックス従えてやって来るフランキー・ビヴァリー率いるメイズに奇才、ウェルダン・アーヴァインから若きマイケル・ジャクソン、そしてトークボックスのファンクマン、ロジャー・トラウトマンなど、この暖かくも穏やかにほんのり 'うら寂しい' 感じ、分かりますかね?(笑)。完全にあったかいワケじゃなく、ちとまだひんやりとした '冬の残り香' 漂うのが今の季節の風景です。満開の桜並木の下を聴きながら歩けばその季節の移り変わりを感じられるかも知れませんヨ(わたしはとっとと自宅に '避難' しますけど)。





こちらは新たな日本発の工房、Lemon & Gingerから 'そそる感じ' 満載のローパス・フィルターmyomyomyooon(ミョミョミョ〜ン?)。ギターと無縁なわたしにとってギタリスト必須の歪み系ペダルは全く入る余地ナシですが(汗)、だからなのか、こーいうニッチな 'フィルター系ペダル' にアプローチする工房は無条件で応援したくなってしまいます。とりあえず、もうモディファイ含めて乱発される◯◯系はそろそろ市場でも飽和してませんか?。コレっていわゆる 'ラーメン屋商法' を彷彿とさせており、ひとつヒット作を出した有名店の近所に競合店を出店してそこで並ぶお客(パイ)を奪い合う構図に似ているというか(苦笑)。本機は基本的なDepth、Rate、VCFのトーンを調整するToneCutやResonanceを中心に6種の波形選択とタップテンポでRateのリアルタイム可変、エクスプレッション・ペダルでワウからフィルター・スウィープと幅広い音作りに対応しております。基本的なエンヴェロープ・フィルターからそれこそサンプルにかけて 'フィルタリング' させても面白いですね。そんなmyomyomyooonも実はゲットしたのがちょうど1年前のこと(汗)。他に触るモノが多くてずっと積んでおいたのを1年越しで開封したのですが、すでに本機は 'ディスコン' と共に現在 'V.2' となり、さらにLine 6 FM4 Filter Modelerのプログラムに入っている 'Obi-Wah' をペダル化(大元はOberheim VCF-200)したというpicopicopicooonなど、そのフィルター系の充実からギタリスト以外のマーケットも意識しているのが分かります。









そして、そのpicopicopicooonの '元ネタ' としてランダマイズなフィルタリングから現在の疑似的な 'グリッチ感' の元祖、Oberheim Voltage Controlled Filter VCF-200もついに手に入れた!。そもそもはMaestroのペダルを手がけるトム・オーバーハイムが同社でFilter/Sample Hold FSH-1として商品化したものを1990年代後半、Xotic GuitarsがそのままデッドコピーしたRobo Talkにより奇妙なランダマイズ効果で '発掘' したことから再評価されました。VCF-200はそのFSH-1と並行してオーバーハイム自身がOberheimブランドでも販売したもの。この効果を世に知らしめた第一人者であるフランク・ザッパの 'Ship Ahoy' は、まさにVCF-200全開でソロを弾く一曲として1976年の来日公演のステージから突発的に始まったものを1981年のアルバム '黙ってギターを弾いてくれ' に収録して世界に問いました。こんな古臭いペダルを 'MNG' として上げるのもどうかと思いますが、個人的にはヴィンテージも現行品も一切関係なく使った人が初めて体験して得られた感動の時点で 'MNG' なのですヨ。そして、明らかにこのMaestroの製品を 'ロールモデル' にしてOctave Box OB-28やMute Box MB-27などを製作したのが日本の新映電気。いわゆる 'ランダマイズ' な 'Sample/Hold' 機能はありませんが、2つの9V電池による18V駆動のエンヴェロープ・フィルターMB-27はHoney Special FuzzやRoland AG-5 Funny Catと並び国産オートワウの先駆と言って良いでしょうね。




ちなみに、そんな 'ランダム・アルペジエイター' も現在ではMIDIを備えて和音から多目的なシーケンスまで生成する '黄色いバナナ' が目印の本機、Bananana Effects Tarariraに進化しました。以前に同名でラインナップしていた 'Tararira' がポップなデザイン、機能共に全て一新したその内容は、その可愛らしいグラフィカルなLEDはもちろん、8ステップ・シーケンサーと9種のシーケンス、8種のエフェクツを中心に27種のスケールと3種のエディット可能なユーザー・スケール、9種のプリセット保存によりエレクトロニカの新たな世界を開陳するでしょう。










さて、そんなフランク・ザッパの 'フィルタリング' として長らく言われてきたユニット。愛用のFender Stratocaster(個人的にはGibson SGのイメージが強い)に組み込んだとされるそのユニットは色々な憶測含め言われており、ある特定の帯域がブースト/カットされるパラメトリックEQにDan ArmstrongのGreen Ringerを組み合わせたものとされております。その 'フィルタリング' の範型的なものとしてMoogが設計に携わったMaestro Parametric Filter MPF-1、その他、Arbiterのアッパー・オクターヴAdd-A-SoundやSystech Harmonic Energeizerなども併用しながらザッパ特有のトーンと 'チューニング' の生成に威力を発揮しました。この手のアッパー・オクターヴではわざわざTycobrahe Octaviaのような本格的なものではなく、あくまでツマミ、スイッチ一切無しで倍音強調のアッパー成分に 'リンギング・トーン' を付加するだけの本家Green RingerやBelieve、Dominoのようなお手軽なヤツが好ましいですね。そしてタイムリーと言うべきか、アレックス・ウィンター監督のドキュメンタリー伝記的作品 'Zappa' が4月22日にここ日本で全国公開されます!。





そのザッパの 'フィルタリング' 再評価の煽りでOberheim VCF-200と並びヴィンテージ市場で高騰しているのがSystech Harmonic Energizer。もちろんクローンの市場も活気を呈しており、英国の工房Fredric Effectsから登場したニヤリとするネーミングのDo The Weasel Stomp !が入手しやすいですね。そしてTWAのものは 'Center Frequency' に当たる' 'Variant Mass' のQを触ることその可変幅がワウの如く広いのが特徴。また、この両機共にオリジナルSystechには無いエクスプレッション・コントロールすることでリアルタイムな音作りにも対応します。一方、わたしも所有するPerformance Guitar製作のTTL FZ-851はそんな 'ザッパ・フィルタリング' の再現を息子のドゥイージルから要請された特注品であり、本機は父親の楽曲を再現する上で息子のドゥイージルがザッパと縁の深いPerformance Guitarにオーダーしたマニアックな一台。Boss FV-500とFV-50の筐体を利用し、どでかい鉄板風アルミ板(軽い)を強引に乗っけてLo-Pass、Band-Pass、Hi-Passを切り替えながらフィルター・スウィープをコントロールするという荒削りさで実際、ペダル裏側には配線がホットボンドで固定されフォーミュラカーを見るような迫力がありまする。その肝心の中身なんですが・・ええ、この動画通りのほとんどVCFをノックダウンした 'シンセペダル' と呼べるほどエグい効果から、EQ的な操作をして帯域幅の広いQの設定、半踏み状態によるフィルタリングの '質感生成' やワウペダルのリアルタイム性まで威力を発揮します。また本機はBoss FV-500の筐体を利用したことでタコ糸によるスムースな踏み心地なり。というか、そろそろ毎度の 'ジミヘン' や 'ツェッペリン' ばかりではなく、現在のペダル市場に貢献するザッパの特集を 'The EffectorBook' 誌あたりで組んでくれ〜。











そして、こちらのSon of Kongも同様のコンセプトでザッパの音作りに迫る一台となりますね。本機の構成としては、ルパート・ニーヴの '質感' に迫ったプリアンプEQ/DIのJHS Pedals Color Boxと類似しておりますが、'DI/+20dB' の切り替え可能なEQ、ゲイン・チャンネルV1、V2をベースにしたプリアンプ/DIとなります。特徴的なのはそのEQが、ほぼVCFに匹敵する 'フィルタリング' からディストーショナルな歪みまでカバーしており、ここに本機が求められている個性が隠されていると言って良いでしょう。わたしは本機の 'デッドコピー' として、英国のハンドメイド・ビルダーが丁寧に 'リプロダクト' した 'KINGKONGWHIPSITOUT' というものを所有しております。そんなザッパの特異な 'フィルタリング' の出発点なのが、ザ・マザーズ・オブ・インベンション初期に愛用していたMaestroのRhythm 'n Sound for Guitar G-1搭載の3種からなる 'Color Tones'。アンプヘッドのAcoustic 260の上に鎮座させておりましたが、しかし、別の画像からはホーン陣のバンク・ガードナー、イアン・アンダーウッドらが使うMaestro Sound System for Woodwindsのツマミを同時に触ってまで音作りの '指揮' をするザッパに驚く(苦笑)。このG-1と組み合わせてみたいのが、Gibsonの手により名門Maestroを復活させて登場したDiscoverer Delay。そういえばテープ・エコーの名機Echoplexに固執して1970年代の 'BBD競争' に乗らなかったMaestroは、実は今回のDiscoverer Delayが同社初のBBDディレイなんだと気が付きました。中身の方はまあ、フツーに想定通りの良いハイブリッドなアナログ感ですけど、とりあえず新生Maestro復活の 'ご祝儀代' 含め(笑)安価だったので買ってみました。今後、Gibsonからは過去のカタログからオリジナル通りの '復刻' (すでに2002年にはFZ-1Aを完全復刻済み)もあるとアナウンスしているので期待しておりまする。







せっかくのフランク・ザッパなので 'Eric Dorphy Memorial Barbecue' から本家、エリック・ドルフィーとチャールズ・ミンガスのアンサンブルの音作りに見る 'エフェクツ' することの刺激をどーぞ。ドルフィーってそのキャリアの始めからずーっと自身のバンドに恵まれなかった人だったと思うのだけど、それはオーネット・コールマンやセロニアス・モンク、マイルス・デイビスのようにバンドで自らの音楽を構築していくタイプではなく、すでにドルフィーの身体がそのまま木管と合一することで現れる '異物なアンサンブル' として完結していたと思うのですヨ。駆け出しの頃のチコ・ハミルトンからオーネット・コールマン、ジョン・コルトレーンらと一緒の時でもどこか '疎外感' の如くハミ出してしまう個性。その孤立から '居場所' を放浪するドルフィーの音楽性と親和性を保っていたのがチャールズ・ミンガスのグループ在籍時であり、そこにはエレクトロニカと共通する '顕微鏡のオーケストラ' ともいうべき微細な破片を拾い集めるような静寂と統率力を垣間見るんですよね。つまりミンガスのどっしりとした指揮が、そのままドルフィーを自由に羽ばたかせる為の '土台' として機能しているのです。しかし元祖 'DV男' として、後ろから手に持った弓でバシバシ叩かれるような威圧感を与えるミンガスのご機嫌取るのは大変だったろうな(苦笑)。そして、ザッパ1969年の傑作 'Hot Rats' から盟友として参加するキャプテン・ビーフハートが新たなインスパイアの源となります。








まるで酔っ払ったような 'ビーフハートのクラリネット' という尋常ならざるコンセプトで、カテゴリー不能なひとつのペダルとして具現化させてしまったのがMid-Fi ElectronicsのClari(Not)。米国のインディーバンドMMOSSのギタリストを経て現在ソロ活動中のDoug Tuttleが主宰するこの工房は、存在自体が '飛び道具' とばかりに 'クラリネットじゃない' というネーミングと共に調子外れな木管具合から伸び縮みするテンポ、ぶっ壊れたハーモニーとファズの如くザラついた 'ヴォイス' で奇妙なヴィブラート、ピッチシフト、ディレイ、ファズ、エンヴェロープ全ての '調性' を解放します。ここではそのClari(Not)とPitch Pirateを組み合わせたClari(Pirate)を取り上げますが、本機搭載の 'Envelope' (Lumpy Envelope Followerという名にニヤリ)がこの '飛び具合' に相当貢献しております。なおClari(Not)はファズ内蔵とファズ無しの2ヴァージョンをそれぞれオーダーすることが可能。これはビーフハートかザッパに似てるかどーか?というより、その '連想ゲーム' のような発想のぶっ飛び具合が嬉しいのです。そんなMid-Fiの新作はLSD1820 Propaganda Moduleというローファイなサンプラー。Z.Vex Effectsが製作したLo-Fi Loop Junkyなどと似たコンセプトながらLo-Fi Loop JunkyがチープなICレコーダーのメモリー利用に対し、このLSD1820は内蔵のチープなコンタクトマイクで拾いそのサンプルレートで '質感' を変えられるもの。またGateを入れることでサンプルのDecayを操作してリズムメイクにまで変調します。








この手のシブいフィルターでは実はこんなレアなのも所有しておりまする。ドイツでテクノ系の '痒いところに手の届く' 機器を少量製作するSNDから登場した1UラックサイズのFilter Bank FB-14。2000年頃にこれまたレアな16ステップのアナログ・シーケンサーSAM16と共に登場して少量製作した後、いわば 'レア機器' 的扱いで市場から長らく消えておりましたが現在Mk.2として再登場。いわゆるジャーマン・テクノやミニマル・ダブのベーシック・チャンネル御用達と言っても良い質実剛健な '質感' を持っており、同時期のSherman Filterbankの過激さをイメージすると別の意味で裏切られます。本機は14バンドに分割されたバンドパス帯域を持つ 'Extended Range Fixed Filter Bank' であり、各ツマミを35Hzから12kHzまでの帯域で-20dBから+20dBの範囲に渡りブースト、カットします。いわゆるDJ用フィルターに顕著なカットオフ周波数をスイープさせたりレゾナンスを発振させて、という派手な使い方とは真逆の厳選されたコイルとコンデンサーの共振回路による極端なEQですね。もちろん+20dBのブーストから生じるオーバーロードの独特なサチュレーションにも対応。そして、TM-1といえば俗に '真空管博士' と呼ばれるEric Barbour主宰の工房Metasonixの '迷機' たち。2000年頃に発売したガレージ臭満載の4Uラック・ユニットの3種は、音声信号を高電圧 'ビーム・モジュラー' で破壊するTS-21 Hellfire Modulator、4つのバンドパス・フィルターを内蔵したTS-22 Pentode Filterbank、そして2つのオシレータを内蔵したTS-23 Dual Thyratron VCOという荒々しくもマニア心くすぐるものでした。その後、よりコンパクトな 'TM' シリーズとして展開したのがこのTS-21の廉価型である 'Vacuum-Tube Wave Shaper/Ring Mod' のTM-1とTS-22の廉価版とも言うべき 'Vacuum-Tube Dual Bandpass Filter plus VCA' のTM-2となります。











Pribor Pedals F-1 Dynamic Filter

今の欧州で起きてる事態から取り上げるのに少々気が引けるんですが・・(汗)、大事なのは動じない '日常' の大切さとロシアが正気を取り戻すことです。さて、こちらはロシアのサンクトペテルブルグに工房を構えながら未だHPは持たずFacebookでのみ不定期に発信するPribor Pedals。2017年から散発的な製品開発をしており、Youtubeの発表も積極的ではなくやる気があるのか無いのか分かりません(苦笑)。いわゆるファズとリング変調をベースにしたVCFからフェイザーやガジェット的ノイズシンセなど、まさにロシア版ElectrograveかJMT Synthかといった感じでございます。わたしが手に入れたのは旧ソビエト産アナログシンセの名機、PolivoksのVCFを単体で抜き出してペダル化させたF-7 Envelope Filterという 'ワンオフ' もの。この無骨なハンマートーン仕上げの筐体と共に、L字型に配置された4つのツマミと3つのトグルスイッチ、2つのCV入力(LFOモジュレーションとフィルター・カットオフ)が 'イイ面構え' ですねえ。











いわゆるVCFとして見るとそれほど切れ味鋭いとは思えないPolivoksフィルターですけど、その独特にナロウな質感は同じロシアの工房、Elta Music Devicesから単体のPolivoks FilterやConsoleのプログラムのひとつである 'Filter' として製品化されております。そういえばElta MusicやSoma Laboratoryは 'No War !' を表明されてましたね。そして同じくロシアはモスクワのガレージ工房、Lateral Phonicsからその危なげな雰囲気とは裏腹に '典型的' スプリング・リヴァーブのSeamark Reverbを加えてみましょうか。単なる 'バネリバ' にこの価格はちと高いかなー?と思いますけど(汗)、一度鳴らしてみればそれまでの印象とは真逆の独特な響きがありますね。本機の入力部に位置する 'Amount' と 'Impact' を調整してサチュレーション的歪みまでカバーしており、特にアタックを強めに弾いた時の 'ギュワ〜' とした歪み感はたまりません。轟音系な歪みペダルと合わせ、モメンタリー・スイッチの 'Splash' を踏むことで 'シューゲイザー' 的音作りを目指しているようです。






                                                              "What's Going On"
              
                                                 "Let's Make Peace and Stop The War"

                     "Where Are We Going ?"


                                                                                                            from Japan.

ちょうどウクライナ事態のニュースを聞き、今から50年も前の支持を失ったベトナム戦争末期にマーヴィン・ゲイの歌う 'What's Going On' や 'Where Are We Going ?' をカバーして平和を願ったファンク・バンド、Funk Inc.の曲が現れます。いったい私たちはどこに向かうのだろうか?。っていうか・・こんな世界が未曾有の時期にロシアは '揉め事' を起こすなよ!(怒)。





 





一方で大阪の工房JMT Synthからさらに凝った音作りへの挑戦。いわゆるステレオがもたらす 'デュアル・フェイズ' の定位はMusitronics Mu-Tron Bi-Phaseを始めとして、ミキシング・テクニックの妙を体感させる定番でもあります。流石にその高級機器を手に入れることは叶いませんが、ここではJMT SynthのPHW-16で同様のアプローチを '擬似ステレオ' で再現出来るのです。モノラルの入力をそれぞれ 'Out A' と 'Out B' に振り分けて、PHW-16のLFOやResonanceによる発振させたドラムシンセとしてG-1のパーカッションをトリガーさせることが可能。PHW-16には2つのCV InにLFO OutやWave Outなど2つのCV Inがあり、さらに複雑な音作りにも威力を発揮します(本機はラインレベルのエフェクターです)。











そしてJMT Synthの代表的な機種のひとつ、TVCO-2は2つのMain とSub VCOにVCFを組み合わせた発振式 'オシレータ・シンセ' があります。各々 'CV In' を備えて外部との連携、拡張性も備えますが、特徴的なのはリアルタイムにその変調具合を操作する5つの球形状からなるタッチセンサーですね。また、往年の 'シンセドラム' をガジェット化した石橋楽器のBias BS-2や 'エレハモ' のSpace Drumに触発されたElectrograveのBeat Happningも面白い。DJミキサーのクロスフェーダーの如く擦ることでPitch、Sweepとエンヴェロープの効きを操作するSensとDecayを弄りながらパッド叩いてピュンピュン・・お、外部からのCV(電圧制御)もあるのでトリガーさせてみようか?など、とにかく理屈とは真逆のプリミティヴな衝動をぶつけるのが '正しい' 使い方です(笑)。そして、Hikari Instrumentsからノイズとローパス・フィルターを組み合わせてCV(電圧制御)の拡張性を備えたMonos CVとローパス・ゲイトを搭載したステレオのDuosなど、国産の小さな工房からガジェットの遊び心によりその 'シンセサイズ' の敷居を下げます。そして、1976年にスウェーデンでJohnny Roslundという開発者により設計されて阿鼻叫喚の '産声' を上げたBaby Boxは、このV.4で 'ノイズボックス' としてひとつの完成形を見せます。いわゆる 'ラジオを拾う' ゲルマニウムダイオードを利用した 'AMレシーバー' を内蔵し、本体のオシレータのみならず外部からのノイズも積極的な音作りで活用しながらバンドパス・フィルターで変調させます。もちろん、Trigモードにすることでギターでトリガーしながらコントロールすることも可能。さらに 'センド・リターン' も挟みながらディレイ回路を組み込んでステレオ出力にも対応します。











そして伊達に 'ジャパノイズ' の国ではないということで、この手の 'ノイズペダル' は国産も負けておりません。すでに50年以上前のペダル・エフェクター黎明期にその名を刻んだHoneyから登場したSuper Effect HA-9P。まだまだアジアの下請けであった高度経済成長期の日本から市場に現れた本機は、その '本家' であるHoneyを始めに英国のRose-Morrisや米国の大手Unicordと提携。そこからShaftesbury、Uni-Vox、Appolo、National、Greco、Elektra、Jax、L.R.E.、Cromwell、Sam Ash、Sekova etc..といった数々のブランド名と共にOEMとして海を渡って行きました。このHA-9Pはワウペダルとヴォリューム・ペダルに加えて、'発想の源' である波(Surf)と風(Wind)とサイレンの効果音を発生させる漲ったアイデアが素晴らしい!。その 'Wind' は新映電気(Companion)以降に 'Tornado' や 'Hurricane' の表記でも輸出されておりましたが、こーいう '飛び道具' をシンセサイザーでやらず本機を触ってやることに意味があるのですヨ。もう意地でも使い倒します(笑)。ちなみにこの 'Surf' はほぼ同時期、Guyatoneが当時のハワイアン・ブームに乗っかり発売したスチール・ギター搭載の 'Surf' 効果と同じなんじゃないですか!?。多分、この 'Surf' スイッチ押して波の効果音をバックにウィ〜ンとやるのが目的なんだろうけど期せずして初の 'エフェクト内蔵ギター' になりました(笑)。もしかしてコレはHoneyのOEM製品?。






原初的な '歪み' の出発点であるファズは、そのまま暴力的なエレクトリック・ギターによる '初期衝動' の演出として時代を超えた刺激を与えてくれます。一方で、その音形を保ち得ないギザギザとした波形をシンセサイザーでいう 'ノコギリ波' と見立てて、単純でありながら新たな 'シンセサイズ' の音作りと同調しようとする動きが僅かながらあります。ギリシャの工房Dreadboxの手がけたDIsorderは古典的なファズをベースにローパス・フィルターを搭載して外部とのエクスプレッション・ペダルやCV(電圧制御)による連携を目指すことで、いわゆるファズワウからVCF、外部からのLFOなどと組み合わせて強烈なサウンドを生成します。そして、名古屋の工房Electrograveからはバッサリと切り刻む強烈なゲートを搭載したRipper Fuzzをどーぞ。Rolandの古い国産ファズBeeGeeをベースにしたというRipper Fuzzは、いわゆるVCAのサイドチェインに範を取った超強力なゲート回路を組み込むことで弾き手の意思をハミ出します。そのゲートを働かせる 'Ripper' スイッチと効きを調整する 'Sensitivity' という最小限のコントロールは、そのままザクザクと切り刻むようなトリガーとしてサスティンの代わりにリズミカルな 'キック' へと変貌。もう少し使いやすい仕様としてDry(原音)をブレンドする 'Ripper Fuzz Dry Blend' も用意しておりまする。一方、その切り取ったようなゲート感と真逆な 'だらしないサスティン' からカテゴリー不能な奇妙な効果を生成するMattoverse ElectronicsのAir Trash。まさに 'ゴミのような音' がするというこのAir Trashの謎具合は、その筐体上面に並ぶ3つのツマミのうち青いツマミがVolume、後の黄色いツマミと赤いツマミは何か起こるか?何も起こらないか”はその日の気分(笑)・・どうぞご自由にという無責任極まりないモノ。その不安定で予測不能なかかり具合に作用する入力感度が極めて重要とのことで、とにかくブジュブジュと汚い歪みと共に力尽きていくサスティンが・・最低だ(褒め言葉)。一方で 'ビット・クラッシャー' と近しい効果として、いわゆる 'PLL' (Phase Loked Loop)回路を用いた究極ものとしてはSchumann PLLがあります。現在、FT Elettronicaからも復活しておりますが、そのオリジナル 'Schumann Electronics' の名で少量製作された '初期モノ' がなんと3台Reverb.comで出品されておりまする。










そうそう、コイツもようやく手に入れたんだった。なぜか日本では流通しておりませんが、現在でも欧米の '宅録野郎' たちのお部屋でよく見かける 'ガレージ臭丸出し' な謎めく一台、Knas The Ekdahl Moisturizer。中身はVCFとLFOで変調させたものを本体上面のスプリング・リヴァーブに送ってドシャ〜ン、バシャ〜ンと乱暴に '飛ばす' だけ(笑)。しかし外部CVでモジュラーシンセとのやり取りなど音作りの拡張性はバッチリです。もう発売から10年以上は経ちながらその設計は初期からずっと変わらないものの、最近の仕様は筐体後方の特徴的な放熱用?スリットに遠目から見て 'Knas' と読めるような加工が施されてる!(笑)。そのレトロな筐体が醸し出す類似性からHonda Sound WorksのFab Delayと並べるとイイ感じです(幅もピッタリ!)。今やすっかり '曰くつき' (苦笑)のブランドとなってしまいましたがある時期、日本の 'ブティック・ペダル界' で気炎を吐いていたHonda Sound Worksが2007年に工房を閉じる最後の製品として送り出したのがこのFab Delay。基本はPT2399チップを用いた 'アナログライク' のデジタル・ディレイなのですが、レトロなスライダーコントロールでFeedbackとTimeをリアルタイムに操作して攻撃的な音作りに特化させたもの。動画は静岡の工房Soul Power Instrumentsでディレイ音を残しながらOn/Offする 'Trail機能' をすべく、ミキサー回路内蔵のモディファイをしております。オリジナルは2つの小ぶりなプラスティック製のスライダーで操作しますが、現在、手許にあるのはゴム製の大ぶりで量感のあるスライダーに換装されているのが格好良し!。










何かここ最近、街中やメディアから '1980's' の雰囲気やデザインを受け取るように感じます。音楽でいえばいわゆる 'City Pop' の再評価があり、デザインで言えば漫画 'ストップ!ひばりくん' (知ってるかな?)でお馴染み江口寿史の画集発売など、あの時代の街中を飾っていた 'テクノポップ' でC調(うわっ死語だ)のセンス。サウンドで言えばあの頃に聴こえてきたのはゲートリヴァーブに突っ込んだドラムスやフランジャーの効いたギター、キラキラしたDX-7のデジタルエレピに 'メガミックス' で定番のオーケストラヒットなど、ああ、書いている内に懐かしさと恥ずかしさでクラクラしそうなほど 'プラスティックで軽薄な感じ' があったんです(笑)。そんな時代のデザインをまんま写し取ったようなDreadbox Hypnosisと今は無きDwarfcraft DevicesのARF。まっピンクとか雑誌の切り抜きコラージュからネオンサイン風フォントとか、明らかにあの時代の空気を知っている人が手がけてる(笑)。そのHypnosisは 'Time Effects Processor' と呼称されるマルチ・エフェクツで、BBDのコーラス/フランジャー、3種のモードと 'Freeze' 機能を備えたステレオのデジタル・ディレイ、そしてNowい小窓(笑)からLEDの点滅と共に揺れるスプリング・リヴァーブ搭載と7種のプリセットから最大49個のユーザー・プリセットとして保存可能。一方、残念ながらその工房を畳んでしまったDwarfcraft Devicesから地味なエンヴェロープ操作を中心にいまいちウケの悪かった?ARF。Freq、Rez、Dpth、Attack、RlsというVCFとしては一般的な5つのパラメータに加えて歪ませるDrvツマミも装備。そしてエンヴェロープを操作するモメンタリー・スイッチでリアルタイム・コントロールしながら本機お待ちかねの拡張機能、Freq.、Env.Out、Trigger InのCVでモジュラーとの同期を楽しむことが出来まする。う〜ん、このトリガーによるエンヴェロープのリアルタイム性は訴求力が弱いっすね(苦笑)。個人的に思うのはどれもエンヴェロープのカーブが極端過ぎるというか、むしろ単体でヴォリューム機能に特化したエンヴェロープ・モディファイアの方が使いやすいのかも知れません。










そんな '80's' とダブが先鋭的なカタチで交差した瞬間を捉えたという意味ではもう一度、時計の針を1980年の 'TOKIO' に巻き戻さなければなりません。アフリカ・バンバータの 'Planet Rock' ?ハービー・ハンコックの 'Rockit' ?マントロニクスの 'Bassline' ?サイボトロンの 'Clear' ?いやいや、YMOの '頭脳' ともいうべき '教授' ことRiuichi Sakamotoにご登場頂きましょう。ここでは 'ニューウェイヴ' の同時代的なアティチュードとして、最もとんがっていた頃の '教授' がブチかましたエレクトロ・ミュージックの 'Anthem' とも言うべきこれらを聴けば分かるはず。この1980年はYMO人気のピークと共にメンバー3人が '公的抑圧' (パブリック・プレッシャー)に苛まれていた頃であり、メンバー間の仲も最悪、いつ空中分解してもおかしくない時期でした。そんなフラストレーションが '教授' の趣味全開として開陳させたのが、'ロシア・アヴァンギャルド' のエル・リシツキーをオマージュした意匠のソロ・アルバム 'B-2 Unit' と六本木のディスコのテーマ曲として制作した7インチ・シングル 'War Head c/w Lexington Queen' におけるダブの 'ヴァージョン' 的扱い方だったりします。そして、その 'B-2 Unit' のダブ・ミックスを手がけたUKダブの巨匠、デニス・ボーヴェルが1978年に手がけた一枚 'Row, Row, Row c/w River Dub' によるルーツ・ダブをどーぞ。











ちなみにマニアックなフィルターの 'リファイン' による復刻ではSeamoonも来ました。デイヴィッド・タルノウスキーの手がけたStudio PhaseやFunk Machineはフュージョン・ブームを支え、その後、独立したA/DAで傑作FlangerやFinal Phase、Harmony Synthesizerなどを残します。今回、市場に蘇ったのはエンヴェロープ・フィルターのFunk Machineであり、その新生Seamoon Fxを主宰するのはセッション・ベーシストとして過去にザ・ブレッカー・ブラザーズの 'Heavy Metal Be-Bop' や動画のライヴにも参加するニール・ジェイソン。ここではジェイソンのみならず当時の愛用者であるラッパ吹き、ランディ・ブレッカーなどの意見も反映させているようですね。当時、ランディが使っていたのは無骨なデザインのVer.1の方ですが、1993年に '復活ブレッカーズ' としてリユニオン的な活動をし始めた頃はBossのT-Wah TW-1を愛用しておりました。そんなランディが初めてワウを使い出した時のエピソードをこう述べております。

"1970年当時、私たちはドリームズというバンドをやっていた。一緒にやっていた(ギターの)ジョン・アバークロンビーはジャズ・プレイヤーなんだけど、常にワウペダルを持ってきていたんだよ。彼はワウペダルを使うともっとロックな音になると思っていたらしい。ある日、リハーサルをやっていたときにジョンは来られなかったけど、彼のワウペダルだけは床に置いてあった。そこで私は使っていたコンタクト・ピックアップをワウペダルに繋げてみたら、本当に良い音になったんだ。それがワウを使い始めたきっかけだよ。それで私が「トランペットとワウって相性が良いんだよ」とマイケルに教えたら、彼もいろいろなエフェクターを使い始めたというわけだ。それからしばらくして、私たちのライヴを見にきたマイルス・デイビスまでもがエフェクターを使い出してしまった。みんなワウ・クレイジーさ(笑)。"






Irmin Schmidt's Alpha 77 Effects Unit.

今やあらゆる過去のペダルがその発掘、再評価の対象とされておりますが、その中でも謎めいた 'ワンオフ' のシグネチュアモデルとしてクラウト・ロックのバンドCanのキーボーディスト、イルミン・シュミット考案による巨大な創作サウンド・システム、Alpha 77は早く解明して頂きたいですね。Canといえば日本人ヒッピーとして活動初期のアナーキーなステージを一手に引き受けたダモ鈴木さんが有名ですけど、動画はダモさん脱退後の、Canがサイケなプログレからニューウェイヴなスタイルへと変貌を遂げていた時期のもの。シュミットが弾く右手はFarfisa Organとエレピ、左手は黒い壁のようなモジュールを操作するのがそのAlpha 77であり、製作を請け負ったのはスイス・チューリヒにあったHogg Labsという会社でした。それを数年前にシュミットの自宅から埃を被っていたものを掘り起こしてきたJono Podmore氏はこう述べます。

"Alpha 77はCanがまだ頻繁にツアーをしていた頃に、イルミンがステージ上での使用を念頭に置いて考案したサウンド・プロセッサーで、いわばPAシステムの一部のような装置だった。基本的には複数のエフェクター/プロセッサーを1つの箱に詰め込んであり、リング・モジュレーター、テープ・ディレイ、スプリング・リヴァーブ、コーラス、ピッチ・シフター、ハイパス/ローパス・フィルター、レゾナント・フィルター、風変わりなサウンドの得られるピッチ・シフター/ハーモナイザーなどのサウンド処理ができるようになっていた。入出力は各2系統備わっていたが、XLR端子のオスとメスが通常と逆になっていて、最初は使い方に戸惑ったよ・・。基本的にはOn/Offスイッチの列と数個のロータリー・スイッチが組み込まれたミキサー・セクションを操作することで、オルガンとピアノのシグナル・バスにエフェクトをかけることができる仕組みになっていた。シュミットは当時の市場に出回っていたシンセサイザーを嫌っていた為、オルガンとピアノを使い続けながら、シュトゥックハウゼンから学んだサウンド処理のテクニック、すなわちアコースティック楽器のサウンドをテープ・ディレイ、フィルター、リング・モジュレーションなどで大胆に加工するという手法を駆使して独自のサウンドを追求していったのさ。"







またシュミット本人もこう述べております。

"Alpha 77は自分のニーズを満たす為に考案したサウンド・プロセッサーだ。頭で思い付いたアイデアがすぐに音に変換できる装置が欲しかったのが始まりだよ・・。考案したのはわたしだが、実際に製作したのは医療機器などの高度な機器の開発を手掛けていた電子工学エンジニアだった。そのおかげで迅速なサウンド作りが出来るようになった。1970年代初頭のシンセサイザーは狙い通りのサウンドを得るために、時間をかけてノブやスイッチをいじり回さなければならなかったから、わたしはスイッチ1つでオルガンやピアノのサウンドを変更できる装置を切望していた。Alpha 77を使えば、オルガンやピアノにリング・モジュレーションをかけたりと、スイッチひとつで自在に音を変えることができた。そのおかげでCanのキーボード・サウンドは、他とは一味違う特別なものとなったんだ。"

この手の大掛かりなサウンド・システムは、例えばEmpress Effects Zoiaのようなヴァーチャルなモジュールを組み合わせてシミュレートするやり方では再現出来ないんですよねえ。つまり、アナログのペダルをひとつずつセレクトしながらそれらの信号をシリーズ、パラレルで自在にミックス出来るミキサーを軸にした音作りが重要なのです。ここまで挙げたもので言えばMaestro Filter/Sample Hold FSH-1やSMD Filterbank FB-14の強力かつ微細なフィルタリング、Knas The Ekdahl MoisturizerにA/DA Harmony Synthesizerなどをリング・モジュレーター、テープ・エコーで味付けして統合したスタイルを提示することに近い。ある意味、ガジェット的面白さの最たるものではないでしょうか。









そんなAlpha 77を再現すべく構築するサウンド・システムの中核として、こんなコンパクト・タイプのミキサーはいくつあっても困らない。一昔前はNobels MIX-42CやCrews Maniac SoundのDMA-3.2 Discrete 3ch Mixer、その現行ヴァージョンであるCMX-3などがありましたが、現在はさらに需要を増したのかOld Blood Noise Endeavors Signal BlenderやCAE/CAJのCustom Mixerに影響を受けたパラレルにミックスするTrialのTriplex PALmixer、そしてLand Devicesの新製品であるLand Mixerで市場を賑わせているのは嬉しい限りです。ちなみにこのミキサー使用では名古屋の工房、Electrograveから4チャンネル出力を持つパンニング・マシンSearch and Destroy SAD-1(ディスコン?)の 'マルチアウト' と組み合わせてみたいですね。ステレオ音源はもちろん、ギターからの入力をジョイスティックでグリグリとパンニングさせたり、Autoスイッチを入れてトレモロのテンポをSlowからFast、Normalからブツ切りにするRandomに切り替えることで 'グリッチ風' の効果まで幅広く対応。4つの出力はそれぞれ個別に切り替えることが可能で、50% Dutyスイッチを入れることでモノラルでも十分な空間変調を堪能することが出来まする。












例えば、こういうミキサーと組み合わせてみたいのがCarlinの攻撃的な音作りに対応するリング・モジュレーター。本来リング・モジュレーターとは、2つの入力の和と差をマルチプライヤー(乗算器)という回路で掛け合わせることで非整数倍音を生成するものです。大抵のリング・モジュレーターには掛け合わせるためのオシレータが内蔵されておりますが、このCarlinのヤツはそんな原点の構造に則って、A、Bふたつの入出力を掛け合わせて音作りを行える珍しい一台。オリジナルはスウェーデンのエンジニア、Nils Olof  Carlinの手によりたったの3台のみ製作されたという超レアもの。それを本人監修のもとMoody Soundsが復刻した本機をわたしも購入してみましたが、ひと言で表現するならば '塩辛い'!いや、ヘンな表現で申し訳ないですけど(笑)、通常のリング変調にみるシンセっぽい感じとは違い、チリチリとした歪みと共にビーンッ!と唸る感じに柔らかさは微塵もありません。かなり独特というか、ステレオ音源を通しても良いし、B出力をB入力にパッチングしてA入力と掛け合わせても良いし、いろいろな発想を刺激してくれますヨ。俗に '飛び道具' と呼ばれるカテゴリー不明、取り扱い説明書不要の扱い切れない各種ペダルもこの手の機器と組み合わせれば '創造' の幅が広がります。そして、BBDを用いた100msという超最短のディレイタイムによるアナログ・ディレイとゲートを組み合わせて、いわゆる 'ビット・クラッシャー' からADSRによるエンヴェロープ・モディファイア、まるで土管の中にアタマを突っ込んでしまったような 'コォ〜ッ' とする金属的変調感の 'Intergalactic Sounds' を体感出来るKoma Elektronik BD101。赤外線センサーや外部とのCV(電圧制御)による 'モジュラー的' 音作りまで対応するので、CarlinのRing Modulatorと 'CV' で組み合わせて威力を発揮させます。また、ここにもうひとつ変態モジュレーションとしてローファイな 'リンギングトーン' までカバーするSeppuku FxのMind Warpも追加。しかしこのオーストラリアの謎めく工房、Seppuku Fxってバスキア的アート作品と近い匂いがありますね。





モジュレーションといえば英国から登場した新興の工房、Intensive Care Audioによるコーラス/ヴィブラート・ユニットの皮を被った '変態グリッチ' の変わり種、Fideleaterも面白い。'痩せ' と 'デブっちょ' のマークの付いた 'Untie' スイッチを 'デブっちょ' にすると一変、まるでテープを噛み砕いてブチブチと燃やしたようなグリッチ効果を8種のLFOと共に崩壊させます。そしてVena Cava Filterはオート・フィルターとリング・モジュレーション、ディストーショナルなトーンを生成する尖ったVCFの一種。こちらもFideleater同様に8種のLFO波形を選択する 'Wave Funcion' を軸にフリケンシーとリング変調で '飛び道具' へと変貌します。最近、新作のDeath Drive含め、中身はそのままに 'ブランドマーク' の付いたフットスイッチ・カバーと従来の '横型' 筐体から '縦型' 筐体のV.1へと各々仕様変更されました。


ここ最近、管楽器と 'グリッチ' や 'グラニュラー・シンセシス' の関係についてあれこれ考えております。上でご紹介した 'ランダム・アルペジエイター' のMaestro FSH-1やその 'デッドコピー' であるXotic Effects Robo Talkなどの先駆的効果もそうなのですが、文字通りランダムに吐き出されるフレイズの羅列から次第に並び出すリズミックな '規則性' への欲求の中で、いかに新たなインプロヴァイズを獲得することが出来るのか?。これは、ここ近年市場に供給されるいわゆる 'グリッチ・ペダル' 各製品ごとのクセに左右されるものでもあり、個人的にはその不規則性から規則性へと耳が '矯正' されていくところで 'ループ' だとバレないことが大事。あ、実はこれランダマイズじゃないゾ!、と指摘されないギリギリのところでいかに吹奏の身体性と '手を握る' ことが出来るのか?。う〜ん、ちと抽象的な言い回しになっちゃったな(苦笑)。簡単に言えば皆、この手の機器を手にしたら 'ループ' を避けようとツマミを回し過ぎて飽きちゃうのも早いんですよね。だからじっくり、コトコト '弱火' で慌てず騒がず、回し過ぎたツマミは半周分戻して・・一音を顕微鏡で拡大、採取するような気持ちが大事なのですヨ。そんな 'グリッチ' の革命的オリジネイターである 'オヴァル' ことマーカス・ポップの痙攣するような一撃の連続、ほんとに素晴らしい。











先にフランク・ザッパを取り上げたのでもうひとつ、ピート・コージーの異才ぶりもここでご紹介しましょうか。

1970年代の 'エレクトリック・マイルス' 活動時期、ひとり強烈な異彩を放っていたのがシカゴ出身のギタリスト、ピート・コージーでしょう。ある意味、この人の印象はこのわずか3年ほどの活動がすべてであり、そういう意味では非常に謎めいた存在でもありますね。あのジミ・ヘンドリクスがメジャーデビュー前に追っかけをしていたとか、晩年は、母親の元でほとんどニート的生活をしていたとか、別れた奥さんとの子供に対する養育権不履行で米国から出国できなかったとか、いろいろな憶測が飛び交っておりますが、その謎めいたキャリア含めて唯一無二の怪人ギタリストと言って良いでしょうね。そんなコージーの活動として比較的よく知られているところでは、1968年にブルーズの巨匠、マディ・ウォーターズがヘンドリクス流サイケデリック・ロックにアプローチした 'Electric Mud' へフィル・アップチャーチと共に参加したことです。ある意味、この2人に 'ジミヘン役' をやらせていたとも言えます。それから長い月日を経て、マーティン・スコセッシ製作総指揮によるブルーズ・ムーヴィー 'Godfathers and Sons' は、そんなシカゴの名門レーベル 'Chess' の栄枯盛衰と現在のヒップ・ホップへと続くストリートの空気をぶつけた異色作。ヒップ・ホップ側からはコモンとパブリック・エネミーのチャックDが参加しますが、白眉は1968年の 'Electric Mud' 再会セッション。すっかり真っ白くなった髪とヒゲをたくわえて 'グル' な雰囲気のピート・コージーも渋い存在感を醸し出します。ちなみに 'Electric Mud' と同時期、マディ・ウォーターズのみならずハウリン・ウルフもCadetでサイケデリックなギターをフィーチュアした一枚 'This is Howlin' Wolf's New Album' を製作。そちらにもコージーはレーベルの 'お雇いギタリスト' として参加しておりました。このコージー&アップチャーチのコンビは 'Chess' のみならずシカゴのジャズ系レーベル 'Argo / Cadet' にも関わり、1970年代にフュージョン界のスターとなるサックス奏者、ジョン・クレマーのデビュー作 'Blowin' Gold' にも参加します。1969年らしくクレマーも全編で 'アンプリファイ' したサックスによるグルービーなブーガルー、ジミ・ヘンドリクスの名演でお馴染み 'Third Stone from The Sun' を披露。また本作にはモーリス・ジェニングスなるドラマーも参加、そう、後のアース・ウィンド&ファイアのモーリス・ホワイトその人なのです。コージーとはこの後のザ・ファラオズでも一緒に連むこととなりますが、そのルーツ的グループなのが、サン・ラ&アーケストラの一員であったフィリップ・コーランが率いて1967年に自主制作した 'Philip Cohran & The Artistic Heritage Ensemble' です。







Morris Mando Mania

使用するギターはFenderのStratocasterやTerecaster、ピグスビーアーム付きのGibson Les Pallなど一般的ではありますが、一方で1973年のオーストリアはウィーン公演の動画を見るとVoxのPhantom Ⅻという12弦ギターによるビザールなセレクトが泣かせます。また、この時期のコージーのトレードマーク的存在なのがこちら、日本のモリダイラ楽器のブランドMorrisが少量製作した透明アクリルのピックガード付き木目調のセミアコ、Morris Mando Mania。現在ではEastwood Guitarsという工房からピート・コージーのイメージに当て込んで '復刻' していたようです。









"初演を待つ東京・新宿厚生年金ホールの舞台では、午後、一番にやってきたロード・マネージャーのクリス・マーフィーが、バンドのサウンド・システムをひとつひとつたん念にチェックしている。なにしろ、7人のミュージシャンたちが演奏に使用するペダル類のアンプへの接続だけでもひと仕事だ。マイルスがトランペットに接続しているペダルは、オハイオ州トレドにあるパワー・インダストリーズ社製の「De Armond」とキング製「Vox-Wah」というワーワー・ペダルの2種。マイルスは今回、マーティンの新しいトランペット(ブルーのメタリック塗装がほどこしてある)を持参したが、マウスピースはGiarnelli Specialと刻印のある古いもの。これは、マイルスが12才(!)のときから使ってきた愛器。このマウス・ピースに無造作にガムテープでピックアップ・マイクがくっつけてあった。ヤマハ・オルガンには、パワー・ペダルとCry Bofyというペダルがついている。ソニー・フォーチュンが使っているペダルは「De Armond」。レジー・ルーカスはモーレイ社製の「Sho-Bud」というペダル。ムトゥーメは「Univox」というリズムボックスにMu-Tron Ⅲという変調器を接続している。ピート・コージーはマエストロ社製のFuzz-Tron、それにPhase 90という変調器、さらにSynthiというアタッシュ・ケースの形をした小型シンセサイザーを用い、テーブルの下に3台のペダルを用意している。ベースのマイケル・ヘンダーソンはマエストロ社製のPhase Shifterを用いている。"

まあ、ジャズ専門誌なのでいくつか表記の怪しいものもあるのですが(苦笑)、上の記述は当時の 'スイングジャーナル' 誌による1975年の来日公演からのもの。ここでの関心事であるピート・コージーのセッティングはMaestro Fuzz Tone、MXR Phase 90、ワウペダル含めた3台のペダルを足下に置いているのですが、'Fuzztron' などと表記が混交しているもののMusitronicsのエンヴェロープ・フィルター、Mu-Tron Ⅲも置いてあるのは確実ですね。シカゴ出身のコージーがMaestro製品を製作していたC.M.I. (Chicago Musical Instruments)ということから選ぶのは自然のことですが、ここで問題はFuzz ToneでもFZ-1BとFZ-1Sのどちらだったのか?ということ。しかし、なんと1975年のステージ写真を捉えた一枚から後述するEMS Synthi Aと並びFZ-1Aを愛用していたとは!。ま、これも単三電池2本使用で3V駆動のFZ-1と単三電池1本使用で1.5V駆動FZ-1Aのどちらなのか?という疑問はあるのですけど(汗)、とりあえずFZ-1Aということにしておきましょうか(笑)。そしてリンク先で詳細する 'Forgotten Heros: Pete Cosey' によれば、Jordan ElectronicsのBoss Toneというアタッチメント的なファズも使用していたとのこと。Phase 90は現在でもフェイザーの名機として定番のMXR製であり、時期的にはいわゆるスクリプト・ロゴの軽いBud筐体の入った初期のものだと思います。当時のステージ写真を見るとFuzz ToneやPhase 90は足下ではなく机の上に置いて手でOn/Offして使用していたようですね。









さあ、ここまでくると肝心のワウペダルが気になりますが、エンヴェロープ・フィルターの名機であるMu-Tron Ⅲ以外では'Forgotten Heros: Pete Cosey' の記事によればコージーのワウについてこう記されております。

"He Sat behind the table and put his effects - two wahs (a Morley for warm tones, a Halifax for solos, and Sometimes a Vox Clyde McCoy)"

なるほど。コージーは足元に2つのワウを置いていたようで、一つがMorleyの暖かなトーンを持つワウ、そしてワウペダルの名機、Vox Clyde McCoyをたまに切り替えて使っていたそうです。しかし、基本的なセッティングとしては左足でMu-Tron Ⅲを踏み込み、右足で彼のリードトーンを司るHalifaxのマニアックなワウペダルをセレクトするところにシビレます。上記の 'スイングジャーナル' 誌から抜粋したステージ写真で確かにそのHalifaxのペダルを踏んでおりますね。このHalifaxはOEMとして 'Hofner' ブランドでも製造していたようですが、本機の特徴としてワウペダルではベースとの 'Hi/Lo' 帯域切り替え、ファズワウのZではその 'Fuzz' スイッチを筐体真横にそのまま取り付けちゃう乱暴さが面白い。そんなコージーも全盛期の巨大なアフロヘアーとその巨漢ぶりに比べれば、晩年の彼は若干 '縮んだ' ように見えます。とにかく 'エレクトリック・マイルス' 期のプレイの印象が強く、エレクトリック・ギターはもちろん、各種パーカッション、そして1975年の来日時には執拗なデイビスの指示にキレてしまったアル・フォスターに変わりドラムを叩き、晩年にはシタールも奏でるなど、そのマルチ・プレイヤーぶりもアピールしました。 そしてピート・コージーの最もユニークなアイテムとして、Sonyのカセット・レコーダー 'Densuke' と共に1975年の来日時に持ち込んだアタッシュケース型のポータブル・シンセサイザーがあります。







1971年に英国のEMSが開発したSynthi A。まだまだモノフォニックのアナログ・シンセ黎明期、記憶媒体のない本機をSonyのカセット・レコーダー 'Densuke' と共に用いることで、実に前衛的な 'ライヴ・エレクトロニクス' の効果を生み出しておりました。1975年の 'スイングジャーナル' 誌でもこう取り上げられております。

"果たせるかな、マイルスの日本公演に関しては「さすがにスゴい!」から「ウム、どうもあの電化サウンドはわからん」まで賛否両論、巷のファンのうるさいこと。いや、今回のマイルス公演に関しては、評論家の間でも意見はどうやら真っ二つに割れた感じ。ところで今回、マイルス・デイビス七重奏団が日本公演で駆使したアンプ、スピーカー、各楽器の総重量はなんと12トン(前回公演時はわずかに4トン!)。主催者側の読売新聞社が楽器類の運搬に一番苦労したというのも頷ける話だ。その巨大な音響装置から今回送り出されたエレクトリック・サウンドの中でファン、関係者をギョッとさせたのが、ギターのピート・コージーが秘密兵器として持参した 'Synthi' と呼ばれるポータブル・シンセサイザーの威力。ピートはロンドン製だと語っていたが、アタッシュケースほどのこの 'Synthi' は、オルガン的サウンドからフルートやサックスなど各種楽器に近い音を出すほか、ステージ両サイドの花道に設置された計8個の巨大なスピーカーから出る音を、左右チャンネルの使い分けで位相を移動させることができ、聴き手を右往左往させたのも実はこの 'Synthi' の威力だったわけ。ちなみにピートは、ワウワウ3台、変調器(注・フェイザーのMXR Phase 90のこと)、ファズトーン(注・Maestro Fuzz Toneのこと)などを隠し持ってギターと共にそれらを駆使していたわけである。"


このシンセサイザーについては世界で誰よりも知り尽くしている男、ブライアン・イーノのお言葉を拝聴しなければなりません。'アンビエント' を提唱し、常に音響設計とその作用、インターフェイスについてポップ・ミュージックの分野で研究してきた者の着眼点は音楽を聴く上での良い刺激をもたらしてくれます。しかしEMSの簡便なアプローチを賞賛しながら、一方では超難度なFM音源を持つ日本の名機、Yamaha DX-7のオペレートにも精通しているのがイーノらしい(笑)。

- 今でもEMSを使っていますか?

E - 使っている。これにしかできないことがあるんでね。よくやるのは曲の中でダダダダダといったパルスを発生させたいとき、マイクを使って楽器の音をこのリング・モジュレーターに入れるんだ。それから・・(ジョイスティックを操作しながら)こうやって話すこともできるんだよ。

- プロデュースやセッションをする際にはいつもEMSを持ち込んでいるのでしょうか?

E - (「YES」とシンセで答えている)

- 最後までそれだと困るのですが・・。

E - (まだやっている)・・(笑)。でも本当に重宝な機械だよ。フィルターもリング・モジュレーターも素晴らしく、他の楽器を入れるのに役立つ。

- 大抵エフェクターとして使うのですか?

E - これはノイズを発生させるための機械、あるいは新しい音楽のための楽器なんだ。これをキーボードのように弾こうと思わない方がいい。でも、これまではできなかったものすごくエキサイティングで新しいことがたくさんできる。

- どこが他のシンセサイザーと違うのでしょう?

E - ほかのシンセサイザーでは失われてしまった設計原理が生きているからだ。原理は3つある。第1の原理は、これがノンリニアであるということ。現代のシンセサイザーは、すべて既に内蔵されたロジックがあって、大抵はオシレータ→フィルター→エンヴェロープといった順序になっている。だが、EMSだとオシレータからフィルターへ行って、フィルターがLFOをコントロールし、LFOがエンヴェロープをコントロールし、エンヴェロープがオシレータをコントロールするといったことができるんだ。とても複雑なループを作ることができるので、複雑な音を出すことができるんだよ。現実の世界というのもまさにそうやって音が生み出されている。決まった順序によってのみ物事が起こるわけではなく、とても複雑なフィードバックや相互作用があるんだ。

第2の原理はやっていることが目に見えるということ。シンセサイザーのデザインを台無しにしてしまったのは日本人だ。素晴らしいシンセサイザーは作ったが、インターフェイスの面ではまるで悪夢だよ。ボタンを押しながら15回もスクロールしてやっと求めるパラメータに行きつくなんてね。それに比べるとEMSは使いやすい。パフォーマンスをしている最中にもいろんなことができるから、即座に違った感じの音楽が出来上がるんだ。ボディ・ランゲージが音楽に影響を及ぼすんだよ。ボディ・ランゲージがあまりないと、窮屈で細かくて正確で退屈な音楽しか生まれないし、豊かだとクレイジーな音楽が生まれるんだ。

第3の原理は、これにはスピーカーを含めてすべてが組み込まれているので他のものを接続する必要がないということ。私がいかに早くこれをセットアップしたか見ただろう?もしもこれが現代のシンセサイザーだったら、まずケーブルを探して、オーディオセットの裏側に回って配線しないといけない。あれこれグチャグチャやってるうちに、恐らく私は出て行ってしまうだろうね。私はもう歳だから気が短いんだよ。







ちなみに今、このEMS Synthi AKSと並んで猛烈に所有意欲を刺激されているのが1972年にイタリアのEkoで製作されたプログラミング機能を持つリズムマシン、Computerhythm。この1970年代のSF映画の小道具に出てきそうなズラッと並ぶ 'ウルトラ警備隊' 的ボタン(笑)にパンチカードを読み込んで鳴らすビザールな仕様は、現代のPolyend TrackerやSeqのような機器にときめくユーザーなら興奮すること間違いなし(やれることは全く比較になりませんが・・苦笑)。アシュラ・テンペルのマニュエル・ゲッチングやフランスの作曲家ジャン・ミッシェル・ジャールが愛用していたことも影響してか、当然eBayやReverb.comでも余裕で100万を超える超レアものですね。そんなビザールな機材紹介でお馴染みHainbachさんの 'お宅紹介' とも言うべき、これまたヨダレ垂涎の '宅録スタジオ' でございます。もう、動画から溢れる機材を隈なく探してしまう '機材廃人' の悲しい性・・(苦笑)。



 


Sitar & Resonator: Danelectro Guitars
Kartar Music House Electric Sitar

Jerry JonesによるCoral / Dan ElectroのElectric SitarとBaby Sitarそれぞれの復刻は、この特異な 楽器の存在を再評価する上で大きな貢献をしたのではないでしょうか。1967年から69年にかけて販売されたこの 'シタール・ギター' は、1960年代後半の季節である 'サマー・オブ・ラヴ' を象徴するアイテムとしてひとつの市場を生み出しました。こちらの動画はDanelectroがCoralのブランドで1967年にヴィンセント・ベルの手により開発、発売したエレクトリック・シタール。シタールの共鳴にも似た 'Buzz' 音を出すブリッジ部を備えることで 'シタール風' の音色を出すエレクトリック・ギターの一種です。また、このようなエレキギターの 'シタール化' は、そのまま本場インドでシタールの 'エレキ化' のような動きが起こり、インドのKartar Music House社製ほか、こんなピックアップやツマミを備えた 'エレクトリック・シタール' もございます。


そんなシタールの 'お供' として、施法のラーガと共にインドの変拍子なリズム構造ターラをさらうに当たって便利なのがこちらのタブラマシンですね。ティーンタール(16拍子)、エクタール(12拍子)、ルーパクタール(7拍子)、ジャクタール(10拍子)などなど・・とターラの基礎ビートを学ぶことが可能。プリセットの機能も備えられているので、これらパターンの 'ソング' を組んだりハチャメチャなパターンの 'グリッチ' 遊ぶなど(笑)楽しめますヨ。もちろん、シタールのみならず電気ラッパの 'お供' としても最適でございます。ワウペダルを踏みながら鳴らせば、ちとマイルス・デイビスの 'On The Corner' の気分を味わえるかも(笑)。











ちなみにDanelectroといえば一時、エレクトリック・シタールとは別に奇妙な 'シタール・シミュレーター' を発売していた時期がありました。Sitar Swamiと命名されたソレは、シタールを彷彿させる茶色い筐体にサイケな尊師(グル)の下手な似顔絵、そしてスライド・バーが一緒に封入されていた気がする。効果はオクターヴ・ファズにフランジャーかけたような感じで、これをウィ〜ンとスライド・バーで弾くとソレっぽく聴こえるのかな?動画のもこれをシタールと言うのはどうかと思えますが(苦笑)、しかし、新たなエフェクトと言えば面白いのかも。それでもこのシリーズ、他にPsycho FlangeやBack Talkとかなかなか侮れないモノもあって無視できないんですけどね。このような '空耳' っぽくシタールに聴こえるということでは、そんなシタールの流行した1960年代後半、同じく時代を席巻したファズの音色もどこかシタールに例えられることがありました。日本のHoneyが1967年に発売したアッパーオクターヴ・ファズの名機 'Baby Crying' は '流行の東洋の神秘、Honeyの効果装置' のキャッチコピーと共に輸出され、「従来のファズ・トーンに加えて世界的流行のインド楽器、シタールの音色を新たに付け加えた2種類の音色を持つデラックス・ファズ・マシーン」という評価を頂きました。Freakshow Effectsの 'Maharishi' やBurford Electronicsの 'Sitar Sound' といったアッパーオクターヴをベースに 'シタール風' な音色に特化させた '空耳' っぽいファズは、そのお手軽さと共にワンポイントな音作りで威力を発揮します。残念ながら 'Sitar Sound' の方は良い動画が無いので、この 'シタール演出' に振りかけるスパイスとして相応しい同社のRobot Ring Modulatorをご紹介。その後、いわゆる 'ギターシンセ' のプログラムとして各社からシミュレートされて、現代ではDSPテクノロジーにより 'アナログ・モデリング' されたシタール・エミュレーター、Electro-HarmonixのRavish Sitarに行き着きました。しかし、その元祖であるHammondのInnovex Condor GSMにはすでに 'Sitar' のプログラムが搭載されていたのです。いかにも 'サマー・オブ・ラヴ' の季節に呼応した機能ではありましたが、それが実際のシタールの代用品となったかどーか?はまた、別のお話ですね(笑)。というか、わたしはギター弾けないのになんでコレ持ってるんだろ???(汗)。

Danelectro Free Speach Talk Box DTB-1 (discontinued)

こちらはそのSitar Swamiと同じ 'Danelectro 60's Series' として登場した 'リヴァース・ディレイ専用機' のBack Talk。発売時の無関心から早々に 'ディスコン' した後、同種の競合機が市場に無かったことから高騰、今風に言えば 'バズちゃった' わけです 。'ダンエレ' のペダルといえば古き良き50'sな香りを盛り込んだチープな作りで楽器店のワゴンセールに積まれたイメージがありましたけど、この '60's Series' は 'サマー・オブ・ラヴ' の雰囲気を落とし込んだものとして '企画賞大賞' を進呈したいですね。このSitar Swami、Back Talkのほか強烈なテープ・フランジング効果をシミュレートしたPsycho Flangeの3種、そしてトークボックスのFree Speach Talk Boxを各々ラインナップ。その中でもこの唯一無二なBack Talkは一時のプレミア状態を乗り越えて現在の市場に復活しており、さあ、思う存分そのユニークな逆再生効果を堪能しようじゃありませんか。現在、市場にある '復活版' で面白いのはわざわざ筐体やツマミ、スイッチに傷や汚れを施す 'レリック仕様' であること。つまり一台一台ビミョーに '表情' が違うというか、工房のおじさんが '仕様書' に倣って?日頃のストレスを発散しながら傷付けているかと思うとちょっと面白い(笑)。










いつまでもガジェットがもたらす '駄菓子のような麻薬' に熱狂する奇特なギタリスト、Nels ClineやHenry Kaizerの飽くなき戯れはこれまでのギタリストが抱えていたステレオタイプから '足下' を解放します。ギターや管楽器からペダルと 'シンセサイズ' による変調、そこで生成される音楽に至るまで全てが等価、これらが 'ひと繋がり' でアウトプットされたところに現れる個性こそ 'エフェクトロニクスの世界' そのものなのです。また、大手から小さなガレージ工房などの垣根を超えた 'コラボレーション' で多くの 'マイスター' が新規参入する業界の流れなど、すでに飽和した市場ながらその '新陳代謝' も激しいのがここ近年の特徴です。斜陽化する音楽産業の影で、こんな '電気仕掛けの小箱' の市場がこれほどまでに活況を呈するなんてことが過去あったでしょうか?。まさに往年の名機と呼ばれる '伝説' の一台から、どう使ってよいのかワカラン最低の '迷機' に至るまで百科絢爛。それらが焚き付ける興奮は人知れず消えていった '時代の遺物' 含め、今や朽ち果てたマルクスとエンゲルスの共著 '共産党宣言' の冒頭の書き出しをもじってこう言いたいのです。

"ひとつの妖怪が世界を徘徊している。それはペダルという妖怪である" と。

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