2017年3月4日土曜日

'ジャンク' な生成装置作成法

音の実験が好きだ。とにかく機材と向き合い勝手気ままにツマミやスイッチをいじりながら出てくる音の流れに身を任せてみる。もちろん、既存の機器をあれこれ組み合わせてみたって '想定内' の結果の中で戯れているのだから、これを以って '前衛だ!新しい' などと無邪気に騒ぐ気はございません。むしろそんなスノッブさより、目の前のイメージからただ喚起されるという体験の方がずっと重要なのです。音の出るものだったら、コンパクト・エフェクターを大量に繋いでもハウリングさせて延々と鳴り続けるフィードバックでも剥き出しのオシレータの塊でも何でもOK。すべては目の前にある!



音の源ともいうべきオシレータ(発振器)。単なるノイズの生成から偶発的な '行為' を生み出していく様は、少し彫刻や陶芸などと似たアプローチかもしれません。実はその昔、最初の 'ノイズ・セット' を組んだことがありました。3Uのラック・マウントを購入し、1Uの引き出しラックの上にオシレータやコンパクト・エフェクターを並べ、そこに1Uのラック型エフェクターを組み合わせる。オシレータはFlower Electronics LBBというパッチ式の簡易シンセサイザーで、そこからWMD Geiger Counter、Pigtronix Attack Sustainを経てVocuの多機能セレクターMagic Blend Roomで逆相の擬似ステレオ出力、そしてVermonaのPH-16 Dual Analog Phaserで左右に揺さぶりながら変調させて、と。ここでは、そんな過去の記憶を思い出しながら再び 'ブラッシュアップ' して挑んでみたいと思います。









Skychord Electronics
Moody Sounds Baby Box
Electro-Faustus EF109 Drone Thing
JMT Synth

まずは肝心の音の源というべきオシレータ選びですけど、大阪で 'ノイズ・シンセ' に特化したガジェットを製作するJMT Synthは特筆したい。以前はこの手のガジェットといえば、Skychord Electronics Sleepdrone 5やMoody Sounds Baby Box、Electro-Faustus EF109 Drone Thingなどがありましたが、わたしが選んだのはTVCO-2というオシレータとVCF、タッチセンサーの機能が一緒になったもの。VCOとVCFはCVで同期することができ、Korg SQ-1とSyncでVCFを繋いでおります。基本的に数量限定の '一品モノ' なので、欲しいと思ったらお早めの購入が吉ですね。











Electro-Faustus EF103 Guitar Disruptor V.2
Vulcan Mulcider Argo Navis
Devi Ever FX Truly Beautiful Disaster

オシレータが決まったらソイツを強烈に歪ませる '歪み系' エフェクターを物色します。基本的にコンパクト・エフェクターの大半はこの '歪み系' に寄っており、真面目に探そうとすると大変な目にあうことは確実なので、ここは直感でシンセっぽいもの、ファズっぽくジリジリと歪むんだけどどこかフィルターがスィープして、発振する機能に特化したものに狙いを定めます。Electro-Faustus EF103 Guitar DisruptorとVulcan Mulcider Argo Navisの2機種はかなりマニアックなセレクトではありますが、Youtubeの動画ではなかなかにエグい感じでイイですねえ。Argo Navisは本体の中にフィードバックの回路を備えており、これはノイズ系アーティストがライン・ミキサーを用いて '発振' させるやり方を応用したもの。つまりセンドから出力したものをリターンで返したチャンネルのセンドにもう一度入力することで、フィードバックのループを生み出しています。まあ、機材的にはかなり負荷をかけた扱い方ではありますが(汗)、同様の構造を持った '飛び道具' 系歪みとしては奇才、デヴィ・エヴァー女史の手がけるDevi Ever FX(旧Effector 13) Truly Beautiful Disasterがありますね。


Excel EFLB-550

さて、ここからはエフェクターボード製作に取り掛かりましょう。ボードはイケベ楽器プロデュースのExcel EFLB-550でサイズは540(W)×340(D)。まずは '大物' ともいうべきパワーサプライのVoodoo Lab. Pedal Power 2とステップ・シーケンサーKorg SQ-1を上方の両端に設置。額縁を吊るす為の豆カンを加工して木ネジで固定します。とりあえず、こうやってサイズを決めてしまってからあれこれセレクトしていくというのも手です。たくさん繋げるのもイイのですが、実はサウンドのキモとなるのは大体3つ程度の機材を組み合わせた時に発揮するもので、後に数珠繋ぎしていくほど案外効果は薄かったりします・・。







Next Signal Gate SG-100
Korg SQ-1 Step Sequencer

ボードの両端にパワーサプライとKorg SQ-1を配置したら、Nextのノイズ・ゲート、Signal Gate SG-100を繋ぎます。本機には他社のゲートにはないユニークなGate Inがあり、ここにKorgのステップ・シーケンサーSQ-1からゲート信号をトリガーしてリズミックなパターンを吐き出すことが可能。まあ、あくまでSG-100はゲート出力を受けるだけなのでピッチとか複雑な変調は無理ですけど、実は上の動画を見て影響されました(笑)。さて、どんな感じになるでしょうか・・。ここでの目的は不規則で面白いパターンと '出会う' ことにあります。







Masf Pedals Possessed
Masf Pedals Raptio
Catalinbread Csidman
Malekko Heavy Industry Charlie Foxtrot


最近はエレクトロニカに代表される 'グリッチ/スタッター' 系エフェクターも市場に現れて、それらを用いれば簡単に奇妙で面白いパターンを吐き出してくれます。例えばMasf Pedals PossessedやRaptio、Catalinbread Csidmanなどは人気があり、新しいところではMalekkoのCharlie Foxtrotも登場しました。こんな新しい 'ガジェット' 群もSG-100の後ろへ繋ぐことでさらにカオス、おお、あちこちへ狂った音の破片が飛び散りました。









Csidman VS. Charlie Foxtrotふたつの '共演' 動画もありますけど、このSimon The Mapgieさんはここ最近、Youtubeで狂った '飛び道具' エフェクターばかりを積極的に紹介しておりますね。例えば自作のピエゾ・ピックアップを内蔵したカリンバで 'グリッチ風' ノイズとか、かなりグッとくるアプローチで '飛び道具' の面白さを伝えてくれます。また、ロシアの新興ノイズ系エフェクター工房、Ezhi & Akaの 'グリッチ/スタッター' 系エフェクターThe Blobも光るトラックボールで操作するなど面白そう!たぶん毎月、世界中から大量の '段ボール' がこのMapgieさんの所に送られているんじゃないか、と思うんだけど、とりあえず奇妙なものにはすぐ反応する人だってのは間違いないです。





Ibanez ES2 Echo Shifter
Vestax DDG-X2 Digital Delay
Dr. Lake KP-Adapter

お次は空間系エフェクターの定番ディレイなのですが、これも星の数ほどある製品の中から選ぶのに苦労しました。MIDIやユーザー・プログラムを組める複雑なディレイよりシンプルなヤツが好きなので、個別にオシレータの発振On/Offを備えるIbanez ES2 Echo Shifterなどが候補に登りましたが、結局は意外な製品、Vestaxのハーフラック型デジタル・ディレイDDG-X2を中古でゲット!いやあ、想定外の拾い物というか、このような 'DJプレイ' に特化したディレイを選ぶとは思いませんでしたね。本機の前身DDG-1は、一部のダブマニアたちからその荒い質感が好まれてちょっとしたプレミアが付いておりますが、このDDG-X2はハーフラック型という '使いにくさ' なのか不人気機種となり、Vestax倒産直後は在庫品が5,000円弱(定価39,800円)で投げ売りされていたという悲しい歴史があります。機能的にはタップテンポはもちろん、BPMカウンターとメトロノームのLEDによりBPMとディレイタイムを小数点第一位まで設定可能。ディレイタイムは4秒でモジュレーションとHold機能も有します。うん、安価なのでスペアでもう一機確保しましたヨ。ここではインピーダンス・マッチングの為、新潟の楽器店あぽろんプロデュースのDr. Lake KP-Adapterにインサートするかたちで用いております。これは元々Korg Kaosspadをエレクトリック・ギターで用いる為の機器で、ラインレベルと楽器レベルのものを問題なく接続できる便利なもの。さて、ここまでで一体どんなサウンドが生成されるのでしょうか?気になった方はどうぞ、ご自身で是非とも挑んで体感してみて下さいませ・・。



Toshinori Kondo Equipments

ラッパだとこういうのはどうなんだろ?まあ、収拾がつかなくなるのは分かっておりますけど(汗)、例えば、1970年代の 'エレクトリック・マイルス' のアプローチなんてラッパを 'ジャンクに' 扱うやり方のひとつとも言えるし、あれはすべてがリズムとして機能していれば何でも良かったのかもしれない・・。んで、我らがコンドーさんもポーランド?のオルタナ風ノイズ・バンドとの共演・・相変わらずの孤高の存在ですね。







Hair Stylistics Interview

膨大なガジェット群、ノイズ生成の名機EMS Synthi AやKorg MS-20などを駆使して放出される轟音と戯れる・・ケーブルまみれ、LEDまみれ、スイッチとツマミまみれ、ノイズまみれ・・ただひたすらに戯れるのみ。

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