2015年11月1日日曜日

パコパコで '先祖返り'

ワウワウというよりパコパコ・・。



上記の動画はラッパにPigtronix Envelope Phaser EP-2をかけたサウンドです。本機はエンヴェロープ・フィルターとフェイザーの複合機で、ワウがかかりながらシュワ〜としたモジュレーションが追従します。結構タッチに対する感度も高く正確ですね。



こちらはSolid Gold FXのFunkzillaというエンヴェロープ・フィルター。たぶん日本には入荷していないものだと思います。'Gozilla' にかけて 'Funkzilla' というネーミングがアメリカっぽいんですが、これまた細かくピャウピャウと追従する反応の良さですね。

このようにエンヴェロープ・フィルターは、ワウペダルと一味違う感じが分かると思いますが、ペダル以上に早いパッセージのフレイズにも有効など、ある意味管楽器奏者向けのエフェクターですね。ただし、シビアな入力感度と周波数帯域の広さでワウペダル以上に設定は繊細です。全体的に 'コンパクトな鳴らし方' で、ブレスをコントロールしながら吹かないときれいにパコパコと鳴ってくれません。そのため本機の前段または後段にコンプレッサーを繋ぎ、入力のダイナミズムを一定にした方がかかりは良いと思います。これも思いっきり圧縮して潰してしまうようなDyna Comp的ものより(上のYarrantonさんは使っておりますが)、原音に対してナチュラルにピークその他を揃えてくれるような機種が望ましいですね。わたしも愛用しているNeotenic Soundの製作者の方が、自らのメーカーの設計理念を司る 'リニア・コンプレッサー' の概念とワウのかかり方について考察されているのが参考になるのでぜひお読み下さい。

Magical Force and Wah Wah
Neotenic Sound Magical Force 2

さて、わたしもいくつかの機種を試してきましたが、残念ながら今は足元にワウペダルしか使用していません。そういう意味ではあまり説得力はないのですが、過去わたしが試してきたエンヴェロープ・フィルターについて簡単にレビューしたいと思います。



Boss T Wah TW-1
'Jazz Life' 誌のザ・ブレッカー・ブラザーズ '復活' ツアーにおける機材写真を見て、最初に購入したのが本機です。実にオーソドックスなフィルター効果で、設定の幅としては狭いと感じました。エフェクト全体もどこかコンパクトな鳴りというか、ちょっと物足りない感じがあります。ラッパでのサウンドは、'復活' ツアーにおけるランディ・ブレッカーのプレイを少し前の 'ランディ・ブレッカーの追求' で上げてあるのでご覧下さい。ちなみに本機は生産時期により 'Touch Wah TW-1' という表記のものもありますが中身は同じです。



HAZ Laboratories Mu-tron Ⅲ+
元Musitronicsのエンジニアであったハンク・ザイジャック氏を中心に復刻された '元祖' エンヴェロープ・フィルター。もう、これは素晴らしい!の一言です。エンヴェロープ・フィルターの基本を一通り備えているのはもちろん、何と言ってもその '太さ' は特筆したい。大体、フィルターというのは原音を削っていくことでその効果を現す反面、音痩せしてしまうものが多いのですが、これは基本としての原音を確保した上でキチンとフィルターとしての仕事をしてくれます。たまに、もう少しエグくかかって欲しいなあ、などと他メーカーのものに浮気したくなる衝動が起こりますが、本機のベーシックな設定が絶妙であることを思い出し必ず戻ってくるのです。難点はその大きな筐体ですが、Mu-tron特有のポップで格好良いデザインがすべてを帳消しにしてくれます。大き過ぎるということで結構中古で出回ることも多いですが、是非試して頂きたい本命ですね。



Electro-Harmonix Q-tron
そんなオリジナルMu-tron Ⅲの設計を担当したマイク・ビーゲル氏をエレハモが招聘し、新たにデザインしたのが本機Q-tronです。ビーゲル氏は復刻版のMu-tron Ⅲ+をまったくオリジナルには及ばないとして、本機こそMu-tronの血統を受け継いだベストであると豪語していました。正直、わたしの評価は悪くはないけど特別 'コレだ!' というオリジナルを凌駕するものが見当たらず、その印象は非常に薄いです。動画で久々に見ると効きは良い反面、全体的に音痩せする感じもあるかな?ブースト・スイッチはその為のゲインアップなのだろうけど、ラッパで使うとノイズが増えます。ちなみに現行機はこの動画のような大きなものではなく、MXRサイズのコンパクトなものに変更されています。



DOD FX-25 Envelope Filter
俗に 'エフェクターに弾かされて' しまうという言い方があり、弾き手がその強烈な個性に四苦八苦している姿を目にするのですが、本機こそまさにその最右翼!これは完全に '飛び道具' 系エフェクターのジャンルに入れられるものです。フィルターというよりも完全にゲートと言っていいくらい、エンヴェロープ・フォロワーが極端に設定されており、もう演奏するそばからピャウピャウと '持っていかれ' ます。そう、完全に暴れ馬を調教しているといった感じ。動画はループ・サンプラーで録音したと思しきコード・カッティングが邪魔ですが、もの凄い速さでフィルターが開閉しているのが分かると思います。ちなみに、後継機としてFX-25Bという原音を個別に調整できるものもありました。話の種として中古で見つけたらぜひ挑んでみて頂きたい。



Xotic Robo Talk
1970年代のユニークな名機Maestro Filter Sample/Hold FSH-1をデッドコピーしたもの。エンヴェロープ・フィルターの機能に加えて、当時はSample/Hold、本機ではRandom Arpegiatorという表記で、いわゆるエレクトロニカ的にフレイズをチャカポコと変調する '飛び道具' の機能が付いています。オリジナルを設計したのはオーバーハイム・シンセサイザーで有名なトム・オーバーハイムということから、このようなシンセ的発想が持ち込まれているんですね。本機が絶妙なのはRangeとVolume(動画の後継機ではDecayという名称に変わっています)というたった2つのツマミで実に幅広い周波数帯域をカバーしていること。ほとんどピャウピャウという発振すれすれなフィルター効果を持ちながら、ここまでタッチセンスの感度調整における追従性の良さを発揮したものは他にないでしょう。わたしが所有していたのは、DC9Vをふたつ利用してDC18Vで駆動させるヴァージョンのものなのですが、こちらはDC9Vヴァージョンとしてリファインされた現行機のRobo Talk RIを上げておきます。また、Random Arpegiator不要という方にはその機能を省き、エンヴェロープ・フィルターの機能を強化したRobo Talk 2という機種も用意されています。ともかくMu-tron Ⅲ+と並んで管楽器奏者にオススメしたい一台です。

比較的高価なものばかりになってしまいましたが、最近は安価で高品質なMooer Funky MonkeyやBehringer FM600 Filter Machineといった中国製エンヴェロープ・フィルターもあるので、気軽に試すことも可能です。もしくは、このエンヴェロープ・フィルターとワウペダルをそれぞれ切り替えられる '一台二役' の便利なものもあるので、これを選んで見るというのも手ですね。



ワウ・ペダルとエンヴェロープ・フィルターに加え、ヴォリューム・ペダルとステレオ・イン&アウトの機能まで備えた独特なデザインによる変わり種ワウ、Gig-FX Mega Wahのデモ動画。



ワウペダル、エンヴェロープ・フィルター、そしてXotic Robo Talkにも内蔵されているランダム・アルペジエイターも装備の '一台三役'、Voodoo Lab. Wahzooのデモ動画。



Akai Professional Vari Wah W1
Chupaconcha

すでに 'ディスコン' ではありますが、会社が傾き始めていた赤井電機がコンパクト・エフェクターの業界へと足を踏み入れた迷走的一台のVari Wah、こちらもワウペダルとエンヴェロープ・フィルター、トレモロと切り替えることのできる複合機です。現在も中古市場では6000〜1万弱で購入できるので手軽に試しすことが可能。ラッパではスペインでデュオとしての活動を行っているChupaconchaのGiullano Gius Cobelliが用いております。このVari Wahはいくつかネット上にあるレビューを拾ってみると、ローノイズで基本的なワウながら、トゥルーバイパスをうたっている割にバイパス音は硬めの音質になるという意見が多いですね。こだわる人なら、モディファイとしてトゥルーバイパスにはせず、良質なバッファーを入れた方が良いかもしれません。


ペダルかフィルターか・・ワウもいろいろ、選ぶのに迷います。


0 件のコメント:

コメントを投稿