マイルス・デイビスの ‘Little High People’ という曲(Youtubeでの視聴制限のため貼り付けられません)、現在のところデイビスがワウペダルを用いた最も古いものだと思います。録音は1970年6月ということで、ちょうど ‘Miles
Davis At Fillmore’ の裏で次なるスタイルを模索していた頃です。かなりファンキーな要素もあるが、面白いのはデイビスのワウペダルと掛け合うようにアイアート・モレイラによるカズーが、まるでストリートの喧騒を切り取ったかのような ‘おしゃべり’ でユーモラスな空気を生み出しています。そう、コーキー・マッコイ描く ‘On The Corner’ のジャケットそのままの世界。また、バックでチック・コリアがリング・モジュレーターを駆使し、加入したばかりのキース・ジャレットが控えめにオルガンをジャラジャラと鳴らしてカオスな世界を創出しています。デイビスのトランペットに対する考え方はユニークで、ちょうどこの時期から顕著となるカラフルな色彩に包まれたMartin Committeeに対してこう述べております。
"金色のトランペットは吹く気がしない。ブラスのトランペットを見るとトランペットしか見えないんだ。緑色のトランペットだとトランペットが消えてしまう感じで、見えるのは音楽だけだ。"
この1970年6月頃というのはデイビスにとって変貌する真っ只中であり、すでにステージ上には、黒いトランペットが電源に繋がれれたままアンプの上に置かれていたものの、なかなか人前で吹こうという勇気が出せなかったようです。噂ですが、1970年のジミ・ヘンドリクスらバンド・オブ・ジプシーズによるニューイヤー・コンサートをデイビスが見に行ったことで、ヘンドリクスからデイビスの元にVoxのワウペダル ‘The Clyde McCoy’ が贈られてきたことが何かを決断させたのでしょう。ヘンドリクスは数え切れないほどのエフェクターを持ち歩いては、その日調子の良い個体をステージで使っていたそうで、この1967年に発売されたワウペダルもそんなヘンドリクス 'お気に入り' の一台。開発はアメリカのトーマス・オルガン社で行われ、イタリアのEME社で短期間製造された世界初のVoxのワウペダル。ヘンドリクスも1969年の ‘ウッドストック’ のステージで駆使していたことから、現在のヴィンテージ・エフェクターの市場では10万越えのプレミアを誇っています。
→Vox The Clyde McCoy
ヘンドリクスが踏み、さらにデイビスが引き継ぎ踏んで・・もし、この動画にあるそのものがオークションに登場したら一体いくらの値段が付けられるのやら。筐体前面にVoxのロゴがないことから最初期のもので、筐体裏面には製品名の由来となったワウワウ・ミュートの名手であるジャズ・トランペット奏者 'Clyde McCoy' 氏のイラストが描かれています(俗に 'ピクチャーワウ' などと称される)。そんなデイビスのワウに対する感想は、ちょうどこの時期の ’ダウンビート’ 誌によるダン・モーゲンスターンのインタビュー記事に詳しく載っています。( ‘マイルス・デイヴィス・リーダー’ シンコー・ミュージック刊)
"金色のトランペットは吹く気がしない。ブラスのトランペットを見るとトランペットしか見えないんだ。緑色のトランペットだとトランペットが消えてしまう感じで、見えるのは音楽だけだ。"
この1970年6月頃というのはデイビスにとって変貌する真っ只中であり、すでにステージ上には、黒いトランペットが電源に繋がれれたままアンプの上に置かれていたものの、なかなか人前で吹こうという勇気が出せなかったようです。噂ですが、1970年のジミ・ヘンドリクスらバンド・オブ・ジプシーズによるニューイヤー・コンサートをデイビスが見に行ったことで、ヘンドリクスからデイビスの元にVoxのワウペダル ‘The Clyde McCoy’ が贈られてきたことが何かを決断させたのでしょう。ヘンドリクスは数え切れないほどのエフェクターを持ち歩いては、その日調子の良い個体をステージで使っていたそうで、この1967年に発売されたワウペダルもそんなヘンドリクス 'お気に入り' の一台。開発はアメリカのトーマス・オルガン社で行われ、イタリアのEME社で短期間製造された世界初のVoxのワウペダル。ヘンドリクスも1969年の ‘ウッドストック’ のステージで駆使していたことから、現在のヴィンテージ・エフェクターの市場では10万越えのプレミアを誇っています。
→Vox The Clyde McCoy
ヘンドリクスが踏み、さらにデイビスが引き継ぎ踏んで・・もし、この動画にあるそのものがオークションに登場したら一体いくらの値段が付けられるのやら。筐体前面にVoxのロゴがないことから最初期のもので、筐体裏面には製品名の由来となったワウワウ・ミュートの名手であるジャズ・トランペット奏者 'Clyde McCoy' 氏のイラストが描かれています(俗に 'ピクチャーワウ' などと称される)。そんなデイビスのワウに対する感想は、ちょうどこの時期の ’ダウンビート’ 誌によるダン・モーゲンスターンのインタビュー記事に詳しく載っています。( ‘マイルス・デイヴィス・リーダー’ シンコー・ミュージック刊)
“そこにあったのはイノヴェックス社の機器だった。「連中が送ってきたんだ」。マイルスはそう言いながら電源を入れ、トランペットを手にした。「ちょっと聴いてくれ」。機器にはフットペダルがつながっていて、マイルスは吹きながら足で操作する。出てきた音は、カップの前で手を動かしているのと(この場合、ハーモンミュートと)たいして変わらない。マイルスはこのサウンドが気に入っている様子だ。これまでワウワウを使ったことはなかった。これを使うとベンドもわずかにかけられるらしい。音量を上げてスピーカー・システムのパワーを見せつけると、それから彼はホーンを置いた。機器の前面についているいろんなつまみを眺めながら、他のエフェクトは使わないのか彼に訊いてみた。「まさか」と軽蔑したように肩をいからせる。自分だけのオリジナル・サウンドを確立しているミュージシャンなら誰でも、それを変にしたいとは思っていない。マイルスはエフェクト・ペダルとアンプは好きだが、そこまでなのだ。”
→Hammond / Innovex Condor RSM
ほとんど、イノヴェックス社の機器ではなくワウペダルについての賞賛が述べられていますが、これがデイビスの ‘回答’ なのでしょう。ちなみにここで述べられているイノヴェックス社の機器とは、1969年にハモンド・オルガン社が開発したCondor RSMというもの。世界最初のギター・シンセサイザーという触れ込みでヘンドリクスも購入したCondor GSMの管楽器版です。デイビスのお眼鏡には叶いませんでしたが、エディ・ハリスやランディ・ブレッカーらは同時期好んで使い始めました。下記の動画は1974年、ビリー・コブハム・グループ在籍時のランディ・ブレッカーの動画です。ランディがMaestro Echoplexの下に置きスイッチを操作しているのがCondor RSMで、マウスピースにはShure CA20Bが接合されています。バックで弾くギターはジョン・アバークロンビーですが、ランディが初めてトランペットにワウペダルを試したのは、彼と一緒にレコーディング・セッションを行った際に彼から借りたものがきっかけだったそうです。
’Sax & Brass Magazine’ 誌2012年24号のインタビューで、ランディ本人はラッパにエレクトリックを通そう思った動機についてこう述べています。
“1970年当時、私たちはドリームスというバンドをやっていた。一緒にやっていたジョン・アバークロンビーはジャズ・プレイヤーなんだけど、常にワウ・ペダルを持ってきたんだよ。彼はワウ・ペダルを使うともっとロックな音になると思っていたらしい。ある日、リハーサルをやっていたときにジョンは来られなかったけど、彼のワウ・ペダルだけは床に置いてあった。そこで私は使っていたコンタクト・ピックアップをワウ・ペダルにつなげてみたら、本当に良い音になったんだ。それがワウを使うきっかけだよ。それで私が 'トランペットとワウって相性が良いんだよ' とマイケルに教えたら、彼もいろいろなエフェクターを使い始めたというわけだ。それからしばらくして、私たちのライヴを見に来たマイルスまでもがエフェクターを使い出してしまった。みんなワウ・クレイジーさ(笑)”
おっと、黎明期といったらこの人、'アンプリファイ' 初期のイノベイターであるエディ・ハリスを忘れちゃダメですね。Gibson / Maestro Sound System for WoodwindsとEchoplexを駆使して聴衆をサイケデリックな旅へと誘います。また、サックスのマウスピースをトランペットに取り付けた 'リード・トランペット' なる創作楽器を試したり、この人の探究心には頭が下がります。1970年のライヴ盤 'Live At Newport' から強烈にファンクな一曲 'Carry On Brother' をどうぞ。前作 'Plug Me In !' で堂々とGibson / Maestro Sound System for Woodwindsをひけらかしていたのが、レス・マッキャンとの共演でさらに '真っ黒い' 頃にはHammond / InnovexのCondor RSMに換装しておりますね。と言っても、フツーに聴いている分には単にオクターヴかけたトーンで鳴っているだけなんですが、しかしフレイズの組み立て方はまさに唯一無二の 'ハリス節' !
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