→Yamaha Stagepas 400i / 600i
ある意味、現在の日本の住宅環境においてレコーディングでアンプを鳴らすのは難しく、また、今どきのステージ上でもギター以外はPAからは避けられるやり方であり、正直理解を得るのは難しいでしょうね。管楽器は基本的にマイクで収音する以上、ハウリングや周囲の楽器からもたらされる '被り' に苛まれることとなり、極力ステージ上の 'ころがし' と呼ばれるモニターへ返される音量も限度があります。電気楽器主体のアンサンブルの中では、ほとんど管楽器の音量などPAの側で絞られ、まったくエフェクターの音が聴こえないステージなどざらにあります。ちなみにわたしは、基本的に自宅でひとりサンプラーなどへ録音するためにアンプへマイク(Shure SM57)を立てて鳴らしているだけなので、残念ながらライヴにおけるアンプでの '音作り' に対するノウハウは持ち合わせておりません。さて、アンプということになるといわゆるエレクトリック・ギター用ではなく、キーボード、アコースティック・ギター(及びヴァイオリンやその他アコースティック楽器)、PA用の ‘オーディオライクな’ ものが相応しいですね。歪むことなく、クリーンでダイナックレンジの広い再生を誇りながらコンボ・アンプ特有の ‘箱鳴り’ と中域のエッジを感じさせるもの。特にここ近年、’アコギ’ に特化したアンプは各社から目白押しで発売されております。また、キーボードやPAに特化したものとしては、Roland KCシリーズやBehringer Ultratoneのシリーズがあります。
Roland KCシリーズ
KC-60 (30W)
KC-150 (65W)
KC-350 (120W)
KC-550 (180W)
KC-880 (320W: 160W+160W)
Behringer Ultratoneシリーズ
K450FX Ultratone (45W)
K900FX Ultratone (90W)
わたしが現在使用中なのは以下の2台。
●SWR California Blonde Ⅱ
2004年の発売。アコースティック・ギターやヴァイオリン、ハーモニカなどのアコースティック楽器向け160Wのコンボ・アンプ。当初、アンプへの入力に際してRadial Engineering J48というアクティヴDIで、アンプからファンタム電源で駆動できるものだと思っていましたが、逆にゲインが持ち上がり過ぎてノイジーに。では、とそのままエフェクターからアンバランスでフォンに入力してみたものの、こちらも同じくツマミを10時程度の位置でノイズのレベルがグッと上がります。う〜ん、これはまいったなあとしばし悩んだ後、フォン入力の下に ‘Low Z Balanced’ なる小さなスイッチを発見。なになにと取説を開いてみればこのように記載されておりました。
“ローインピーダンス仕様のギターのバランス出力を入力端子に接続するときは、このスイッチを押し下げてください。TRS端子による接続が必要なバランス接続では、最高のダイナミックレンジと低ノイズの環境が得られます。”
バランス出力のギターというのは馴染みが薄いですが、’エレアコ’ においてDIからバランスでPAのミキサーへ入力することが、そのままミキサーを必要とすることなく直でアンプに繋げることが可能なのです!注意すべきはアクティヴではなく電源不要のパッシヴDI。おお!嘘のようにジ〜と鳴っていたノイズが消え、クリーンなトーンがアンプのキャビネットから鳴り出しました。まあ、ヴォリュームのツマミは12時〜2時が使用上の許容範囲で、フルに回し切るとやはりノイズ成分が持ち上がりますね。しかし、このような気の利いたスイッチってその他アコースティック用アンプでは聞いたことがないので、これだけでもSWRの株がグン!と上がりましたヨ。つくづく会社自体が生産を止めてしまったのは惜しいばかりです・・。
●Genz-Benz UC4
●Genz-Benz UC4
2000年発売のキーボードやアコースティック・ギター、PA用の135Wコンボ・アンプです。通常の据え置きのほか、モニターしやすいように傾けて ‘ころがし’ たり、専用の三脚スタンドに乗せるなどPA用モニターとしても機能するユニークなもの。4つのマイク/フォン/ライン入力によるミキサー機能を備え、あくまで簡易PA的なスタイルに特化しております。あらゆる環境に対応できる堅屈さと放熱用の空冷ファンが備えているものの、正直狭い室内でこのファンの風切り音は少々耳障りです(真空管アンプほどではないですが)。パッシヴのDIからのバランス出力はそのままUC4のマイク入力へ。通常、この手のマイク入力は常にファンタム電源がかかっているものですが、コイツは4チャンネル一括ながらOn/Offできる嬉しい仕様。ただし4つある入力のうち、4チャンネルのみライン入力であり、パッシヴのDIからバランスで入力する場合はこちらのXLR入力が最適。ほかのチャンネルのXLRだとマイク・プリアンプのゲインが高いのか少々歪んでしまいます。リア・バスレフのエンクロージャー仕様で、アンプ後方も十分空間を取って豊かな低域を確保するところなどはPA用という感じでしょうか。
この2台のコンボ・アンプ。どちらもクリーンな再生を得意とする ‘オーディオライク’ な出音ですが、その感じは結構違います。簡単にまとめれば、SWRは正面から真っ直ぐに飛び出してくる力強さがあり、Genz-Benzはクセなく横に広がっていく感じ。アンプ的な '箱っぽさ' と色気という点ではSWRに軍配が上がりますねえ。Genz-Benzはやはりモニターっぽい素っ気なさというか、ステレオではないけど空間の広がっていく感じがあります。
いわゆるエレクトリック・ギター用のアンプは、基本クリーンな再生という条件の中ではヴォリュームと同時にGainも増幅することで 'ジー' というスタンバイ・ノイズが目立ち歪んでしまいます。そのため、これからアンプで管楽器を鳴らしたい!という人は 'エレアコ' を再生するためのアコースティック用アンプをお薦めしたいですね。そして、12インチ口径のスピーカーと出力は100W前後のものが最低限必要で、自宅ではノイズ面含めヴォリュームのツマミも12時の位置が限界ですが、コンボ・アンプ特有の中域にピークのある '箱鳴り' を堪能することができます。また、1960年代後半のドン・エリスなどはFenderの代表的なギター・アンプTwin Reverbを複数リンクさせて用いており、各種口径のスピーカー部を交換することでガラッと音のキャラクターが変わる改造が行われているので、これを用いて管楽器用にチューニングすることも可能。1960年代から1970年代のものでもJensen、Oxfored、EMINENCE、JBLのスピーカーに換装されており、特に、JBLのスピーカー部などはワイドレンジとクリーンな特性で 'オーディオライク' な再生を得意とします(真空管アンプなのでスタンバイ・ノイズは避けられませんが・・)。
いわゆるエレクトリック・ギター用のアンプは、基本クリーンな再生という条件の中ではヴォリュームと同時にGainも増幅することで 'ジー' というスタンバイ・ノイズが目立ち歪んでしまいます。そのため、これからアンプで管楽器を鳴らしたい!という人は 'エレアコ' を再生するためのアコースティック用アンプをお薦めしたいですね。そして、12インチ口径のスピーカーと出力は100W前後のものが最低限必要で、自宅ではノイズ面含めヴォリュームのツマミも12時の位置が限界ですが、コンボ・アンプ特有の中域にピークのある '箱鳴り' を堪能することができます。また、1960年代後半のドン・エリスなどはFenderの代表的なギター・アンプTwin Reverbを複数リンクさせて用いており、各種口径のスピーカー部を交換することでガラッと音のキャラクターが変わる改造が行われているので、これを用いて管楽器用にチューニングすることも可能。1960年代から1970年代のものでもJensen、Oxfored、EMINENCE、JBLのスピーカーに換装されており、特に、JBLのスピーカー部などはワイドレンジとクリーンな特性で 'オーディオライク' な再生を得意とします(真空管アンプなのでスタンバイ・ノイズは避けられませんが・・)。
→SWR California Blonde Ⅱ
→SWR Strawberry Blonde Ⅱ
→Calvin AG100D
→Fishman Loudbox Artist
→Laney AH80
→Laney AH300
→Roland KC-350
→Behringer K900FX Ultratone
→Neotenic Sound Magical Force
アンプからの出音、もしくはバンドのアンサンブルの中で埋もれないようにEQで補正するのは 'エレアコ' の必須条件なのですが、これがなかなかノウハウを見つけるのは難しいものです。ヘタなEQはかえって逆効果にもなりやすく、ほとんどPA任せにしてしまう方もいるでしょう。上記のNeotenic Sound Magical Forceは、まさに 'アンプに足りないツマミを補う' というコンセプトの 'リニア・コンプレッサー' という概念で、アンプから出力される音が散ってしまうのをギュッと纏めて音圧と密度、エッジを付加して聴きやすくしてくれる '縁の下の力持ち' 的なアイテムになります。わたしも使用しているのですが、この動画通りに 'Punch' と 'Edge' のふたつのツマミをグイッと回すだけで音像を気持ちの良いポイントに持っていってくれます。もちろん 'Density' はギュッとまとめてくれる縁の下の力持ち的存在であり、Joemeek Three Qの3バンドEQと併用することでかけっ放しです。EQを補正と考えるなら、コイツは積極的な音作りに威力を発揮すると言ったらいいでしょうか。また管楽器のみならず 'エレアコ' など、バンドのアンサンブルの中の音作りで迷路に嵌ってしまった場合、コイツに手を出してみると早い解決法が見つかるかもしれません(わたしはバンドをやっておりませんケド)。
→Gibson / Maestro Sound System for Woodwinds
→Kustom Amplification
最初の人は、The Little Jakeというハンドメイドのピエゾ・ピックアップを取り付けたクラリネットでメーカー不詳のアンプを鳴らしています。そして、次のお二人はどちらもGibson / MaestroのSound System for Woodwindsによる動画ですが、最初の 'アンプリファイ' なクラリネットのおじさんは、1960年代のKustomのベース用スタックアンプBass 250で 'メリーさんの羊' をあやふやに奏でています。ベース用アンプは、歪まずにその豊かな低音を鳴らせるダイナミック・レンジの広さで、'エレアコ' の代用アンプとして用いられることも多いのです。続けて一転、今度はいきなり顔の怖いおじさんがしゃべり出しますが、RBなるデンマーク製のピエゾ・ピックアップが気になりますね。こちらはRolandのキーボード用アンプKC-350で鳴らしています。ちなみに、上記のKustomファンサイトで当時のカタログを見てみるとPA用システムなども用意されていたことから当時、管楽器の 'アンプリファイ' におけるサウンド・システムとして広く使われていたと思います。
→Roland Jazz Chorus JC 1
→Roland Jazz Chorus JC 2
→Line 6 Pod HD
ちなみに、1993年のザ・ブレッカー・ブラザーズ '復活' ツアーのステージでは、ランディ・ブレッカーはRoland Jazz Chorus JC-120を二台ステレオにして鳴らしており、このクリーンなトーンが '売り' のギターアンプも試してみて良いかもしれません。上の '復活' ツアーの動画でランディの後ろに傾けて置かれたJC-120、アレはランディ専用です。最近もRolandからJC-40という自宅でも十分に使えるサイズのJazz Chorusが発表されました。このRoland JCシリーズにおける音作りの '裏ワザ' として、アンプ後方にあるリターン端子に入力してJCのプリアンプ部分をバイパスする、いわゆる60W+60W(JC-120の場合)のステレオ・キャビネットとして使うことができます。コレ正確には、リターン端子に繋ぐ前にLine 6 Pod HDなどのアンプ・シミュレーターから入力し、あくまで 'アンプ・サウンド' の細かなパラメータはPod HDで行い、JCは単なる2チャンネルのスピーカーでしかないということ(その為、JC前面のツマミ類は無効)。むしろ管楽器などの接続では、ギター向けにチューニングされたアンプのツマミ類で設定するよりこちらのセッティングで鳴らした方が、クリーンでステレオな定位と出音を確保した上で、クランチかつ細かな音作りが出来るのではないでしょうか。
↓流れとしてはこんな感じ。
⚫︎Mic → Radial Engineering Voco Loco → Line 6 Pod HD → ×2 Roland Jazz Chorus JC (Return in)
→Acoustic Control Corporation
このように管楽器のアンプによる再生は、まだまだ貧弱なPAシステムしかなかったロック黎明期においては一般的なやり方でした。特に当時管楽器の連中に好まれていたのが、アメリカの音響機器メーカーAcoustic Control Corporation社のギター、ベース用アンプを用いることです。当時Marshallのようなアンプに対して、比較的クリーンで再生できることから選ばれたのだと思います。マイルス・デイビス、エディ・ハリス、ランディ・ブレッカーや、フランク・ザッパのマザーズに在籍するイアン・アンダーウッド、バンク・ガードナーらサックス奏者は皆、そのステージのほとんどでこのAcousticのアンプを確認することができます。ちなみに、このアンプにおける最も有名なユーザーはベーシストのジャコ・パストリアスであり、360+361のスタックアンプのセット(約80Kg !)を常にツアーに持ち出して愛用しておりました。上記Acoustic社の当時のカタログを見れば、デイビスが用いていたのはギター用スタックアンプの260+261、361のキャビネットの組み合わせで鳴らしていたことが分かります。そして、1973年の来日公演を境にしてYamahaとエンドース契約を結び、そのサウンド・システムすべてが一新されました。
ステージのど真ん中に、まるで祭壇の如くそそり立つAcoustic 261+361のキャビネットをバックに演奏する1971年のマイルス・デイビス。しかし真下でドラムを叩くレオン 'ウンドゥク' チャンクラーにいつ落っこちてきやしないか、とヒヤヒヤしますね。
→Acoustic 260+261
そして、この1970年代の 'エレクトリック・マイルス' の環境を '完コピ' したい方、上記リンクのアンプはいかがでしょう?こちらのベース版であるAcoustic 360+361がジャコ・パストリアスの愛用セットなら、YamahaのPAセットに換装する前の1970〜73年にマイルス・デイビスが愛用していたセットがこちらAcoustic 260+261なのです。状態の良いVox The Clyde McCoyワウペダルとShure CA20Bマウスピース・ピックアップを見つけるのは至難のワザですが・・これは鳴らしてみたい!。