2018年3月4日日曜日

'On The Corner' - 前編 (再掲)

1972年の ‘On The Corner’ から出発しよう。この錯綜するポリリズムの喧噪をどう表現すればよいのだろうか?まるで、カーステを唐突に触って耳に飛び込んできたような衝撃、助走のないグルーヴの混沌は、しばし身体を預けるためのチューニングに時間を要するだろう。その長いイントロダクションの間、主役’ は勿体つけたように引きつったリズムの影に隠れながら、むしろ積極的に打楽器としての役割で混じり合おうとしている。



早速、自叙伝から本人による ‘取り扱い説明書’ を開いてみる。

オレが「オン・ザ・コーナー」でやった音楽は、どこにも分類して押し込むことができないものだ。なんて呼んでいいのかわからなくて、ファンクと思っていた連中がほとんどだったけどな。あれは、ポール・バックマスター、スライ・ストーン、ジェイムズ・ブラウン、それにシュトゥックハウゼンのコンセプトと、オーネットの音楽から吸収したある種のコンセプト、そいつをまとめ上げたものなんだ。あの音楽の基本は、空間の扱い方にあって、ベース・ラインのバンプと核になっているリズムに対する、音楽的なアイデアの自由な関連づけがポイントだった。オレは、バックマスターのリズムと空間の扱い方が気に入っていた。シュトゥックハウゼンが好きになったのも、同じ理由だった。これが、「オン・ザ・コーナー」に持ち込もうとしたコンセプトだった。それは、新しいベース・ラインに合わせて、足でリズムが取れるような音楽だ。

この音楽は、当初から多くの ‘記号’ を纏いながら、あらゆる ‘ジャンル’ という括弧からこぼれ落ちるような存在として自立している。インドの民俗楽器、ファンクの黒いストリート感覚とジェイムズ・ブラウン、スライ・ストーン、オーネット・コールマン、ヒップ・ホップのルーツ的グループと呼ばれるザ・ラスト・ポエッツ、そして、ポール・バックマスターを通じてもたらされたカールハインツ・シュトゥックハウゼンとヨハン・シュトゥラウス・バッハら錚々たる ‘振れ幅’ は、この ‘謎解き’ に用意された地図であると同時に、深い迷宮へと誘う ‘だまし絵’ の役割を果たす。マイルス・デイビスなど知らない黒人のガキどもへ届けとばかりに送り出されながら、しかし、ほとんど聴衆不在となった ‘黄色いジャケット’ の意匠。このアルバムの ‘共犯者’ として選ばれたポール・バックマスターでさえ、まるで躊躇われるように近づくことができない。ただ、焚きつけるような ‘アフォリズム’ を宙に放っただけだ。


それでもこの、一切自立しているような ‘黄色いジャケット の周りにあらゆる点と線を結び付ける ‘地図’ を描き出すことは可能だ。なぜなら、このアルバムは40年以上経った現在においても強烈にその匂いを放ち、多くの ‘越境者’ を虜にする魅力を纏っている。

すでに、このアルバムに付随するダブ、ヒップ・ホップ、ドラムンベースといった ‘ジャンル’ の先駆者としての位置づけで語ることも陳腐化し、’On The Corner’ を巡る語彙とバックグラウンドは拡大したが、それは ‘言説化’ されなかったタームがテクノロジーの進化と共に鮮明となったにすぎない。もちろん、デイビス本人も現在のストリートの潮流を見越して ‘先取り’ したわけではないだろう。しかし面白いのは、現在のストリートを占拠しているダブやヒップ・ホップの手法が、この1972年の ‘On The Corner’ と並行して勃興していることである。’On The Corner’  ‘秘術的な’ ミックスを手がけたテオ・マセロの頭の中にあったのは、むしろ、ピエール・シェフェール以降のミュージック・コンクレートなどのカットアップやテープ編集の手法であった。それらは現代音楽における緻密なコンテクストと編集作業によって進められるものだが、キングストンの限られた環境においてリディムのリサイクルからミックスの ‘換骨奪胎’ に挑むダブや、ニューヨークのストリートに二台のターンテーブルを引っ張り出し、剽窃と誤用’ によりレコードの意味を変えたブレイクビーツの手法と比べても、そのバックグラウンドは異なれ、驚くほど近似的なアプローチを取っている。また、ミュージック・コンクレートやシュトゥックハウゼンのライヴ・エレクトロニクスによる密室的な作業に比べ、ダブやヒップ・ホップの手法は、貧しい環境と編集による再生産の解釈がそのまま、音楽市場の商業主義に対する ‘批評的行為’ として機能したことに意味があった。それは孤立無援であった ‘On The Corner’ の惨敗に対し、ダブはレゲエのマーケットを超えて生み出される副産物の ‘リミックス’ として発展し、ヒップ・ホップのブレイクビーツにおける ‘再生産’ は、1980年代以降のサンプラーやシーケンサーなどのテクノロジーと共に ‘ループ’ という概念へと変化したことからも明らかだ。このような黒人の身体感覚と限定的なテクノロジーによるダブ、ヒップ・ホップと、スタジオの密室的な実験精神から生み出される ‘On The Corner’ の手法は、現在の袋小路なポップ・ミュージックの突端にそびえ立つ ‘前衛’ そのものとして未だ有効である。





また、’On The Corner’ のグルーヴとの ‘相似性’ として、これらと並行するように展開していたアフリカのフェラ・クティを始めとする ‘アフロ産ファンク’ との共通項がある。’On The Corner’ 惨敗の要因のひとつが、当時の米国の潮流であるファンクとの ‘連帯感’ の無さだ。アフリカン・アメリカンでありながら、ジェイムズ・ブラウンやスライ・ストーンを聴いて出来上がったのが ‘On The Corner’ というアルバムであるところに、マイルス・デイビスの深い闇がある。これは、同じように孤立しながら独自の手法を深化させ、後に ‘ハーモロディクス’ という概念へと統合させたオーネット・コールマンと被さる。彼らはまさに ‘異邦人としての米国’ を体現した存在であり、ブルーズやファンキーというレッテルと共にこの問題の根は深い。我々が現在認識している黒人音楽のグルーヴと呼んでいるものの大半は米国産だが、当然、米国の黒人に対してジャマイカの黒人とナイジェリアの黒人ではリズムの取り方が違う。アフロビートと呼ばれるグルーヴの元にジェイムズ・ブラウンのファンクとの関係があるが、ある意味でそれは ‘誤用’ による多様性の現れである。レゲエのルーツであるスカやロック・ステディが、そもそもはカリブ海を隔ててラジオから流れてくるR&B ‘ジャマイカ流’ 解釈として始まったのも同様だ。





’On The Corner’  ‘誤用’ は未だフォロワーを持たない自立した存在だけに、アフロ’ という感覚的なニュアンスに対する ‘反語’ として、これら特異なグルーヴを並べてみることには意味があるだろう。すでに1975年、ドイツの評論家兼音楽家であるマンフレット・ミラーは ’Stereo’ 誌のレビューで “サウンドストリーム(音の潮流)及び、断片的なソロに代わって、リード・シンガー役を努める合唱隊の礎として、幾重にも織られたリズム・ライン(ドラム合奏)がある、西アフリカの儀式舞の原理に基づいた音楽” であると、’On The Corner’ について卓見した内容を述べている。おおよそ、ファンキーな連帯感やアフロという観念的な印象からも遠いように聴こえるいびつな ‘On The Corner’ を前に、そのリズム構造とアフロの感覚に着目しているのはさすがだ。

‘On The Corner’ 最大のアフォリズムとして、現在までほとんど触れられていないのがドイツの現代音楽作曲家、カールハインツ・シュトゥックハウゼンの影響である。このアルバム以降、ことあるごとにデイビスは自らの音楽の源泉としてその名前を口にするが、このふたりの関係を結び付ける言説は未だ登場していない。むしろ、スライ・ミーツ・シュトゥックハウゼン’ というスローガンだけが一人歩きして、それがクールだという素振りに終始している。


1966年、東京の内幸町にあったNHK電子音楽スタジオを訪れたシュトゥックハウゼンが、そこの電子機器を用いて '作曲・初演' した作品 'Telemusik'。シュトゥックハウゼンによれば、本作は '多チャンネルの特殊な再生方法による音響空間の造型' と '演奏という、ある意味での不確定な要素を電子音楽に持ち込むことによるある種の人間性復活' にあるとしている。タイトルの 'Telemusik' の 'tele' は、telephone、televisionの 'tele' であり、時間的、空間的、精神的、内容的にも '隔たり' または '違い' を意味する。本作の再生にあたり、5台のスピーカーを非対称の5点に(5角形)配置し、その向きは、あるスピーカーに対する反対側の2台のスピーカーを結ぶ直線の中心に向ける(それぞれの方向は中心の1点には結ばれない)。そして、再生時にはシュトゥックハウゼン自身が5台のスピーカーの中心で、5チャンネル・ミキシング回路を操作し、聴衆はスピーカーの内側で中心に向かって位置する。大掛かりな3群オーケトラによるアコースティックでの音響生成と空間音楽を目指す 'Gruppen' のエレクトロニクス版ともいうべき本作だが、その制作手法のひとつに、日本を始めとした世界各地で録音された音の断片をコラージュ的に用いている。それは、奈良のお水取りや雅楽、薬師寺、高野山、アマゾン、南サハラ、スペインの片田舎、ハンガリー、バリ島、ヴェトナムの山奥、あるいは中国からの音素材を基にしているという。このような手法についてシュトゥックハウゼンはこう述べている。

"電子音楽を作るとき、これらの音をすべて一緒にして、それぞれを同じ次元で考えようとする。つまりそこで時間、歴史(伝統)、空間という3つの異なった要素を一緒にすることができる。わたしの作った作品はユートピアへの志向であり、予想であって、そこには時間も空間も存在しない。"

ちなみにこの 'Telemusik' は、バックマスターが差し出したシュトゥックハウゼンのレコードのうち、'Gruppen' と共にあった一枚 'Mixtur' (Grammophon 137 012)とのカップリングによるA面に収録されていたものだ。まさに '混合' と題されたこの 'Mixtur' こそライヴ・エレクトロニクスの端緒とされる作品で、オーケストラ編成から 'モメント' と呼ばれる20のブロックとして取り出したものをフィルター処理やリング・モジュレーターで変調、音響合成するものである。果たして、'On The Corner' におけるA面を占める1曲 'On The Corner (2:58)〜New York Girl (1:32)〜Thinkin' One Thing and Doin Another (6:45)〜Vote for Miles (8:45)' の連続する主題の転換と、同一曲のベーシック・トラックを用いながら '断片' として切り分けていく 'Black Satin' と 'One and One'、そしてこれらの主題が混ぜ合わされていく 'Helen Butte〜Mr. Freedom X' という 'ふたつ' の対照的な様式に 'モメント' は影響を与えているのか、その興味は尽きない。また、アルバムのコンセプトなどにも多くのサジェッションを与えたと言われているバックマスターは、アイデアの源泉としてデイビスにこんな '哲学' をぶちまけている。

要するに、抽象性をおおいに取り入れ、一種の ‘宇宙的パルス’ を生み出すことだった。マイルスには「物事というのは、オンかオフか、そのどちらか一方だ。現実とはオンとオフの連続によって成り立っているんだ。」というようなことを話した。なんともクレイジーなアイデアだがね。私が言いたかったのは、音というのはその前後、もしくは隣に静寂さを伴っていなければ、何の意味も持たないということさ。静寂が音楽を作り、音楽の一部だということを言いたかったんだ。シュトゥックハウゼンもかつてこう言っていた。「おまえに聞こえる音の隣にある音を出せ」と。そこで私もマイルスに「オンかオフの宇宙的パルスを持つストリート・ミュージック」というようなことを言ったわけさ。マイルスはそのアイデアを気に入り、アルバムのタイトルだけでなく、表ジャケットには「オン」、裏ジャケットには「オフ」という言葉を使ったよ。

1960年代、ビートニクらカウンター・カルチャーの世代からフラワー・ムーヴメントに至る影響まで、インド哲学や東洋思想などが過度に持て囃され、それまでのキリスト教的価値観に対する大きな疑問符が突きつけられた。知識人の中からも、哲学とフロイト精神分析における権威であったジャック・ラカンや、現代音楽におけるジョン・ケージが鈴木大拙を通じて理解する禅の思想、そしてシュトゥックハウゼンもまた、理論を超えた誇大妄想的な宗教的言説に塗れていく頃でもあり、バックマスターの発言にはそんな時代の雰囲気が大きく作用している。また、デイビスのシュトゥックハウゼンへの理解が、あくまでバックマスターというフィルターを通して見ていたことにも留意したい。



そんな ‘On The Corner’ に強い影響を及ぼしたシュトゥックハウゼンだが、その逆に、シュトゥックハウゼンへはどのように波及したのだろうか。この1975年の小品は 直観音楽’ と称して、従来のセリーや図形楽譜からのコンテクストを脱し、即興演奏をさらに ‘直観’ なる哲学に基づいたコレクティヴ・インプロヴィゼーションにより イメージの具象’ へ挑んだものである。1970年の大阪万国博の帰りに立ち寄ったスリランカでの体験を元に書いた ‘Ceylon’ と、1975年の ‘Bird of Passage’ B面に配されているが、その ‘Bird of Passage’ の方に、息子のマルクスが ‘On The Corner’ に触発されたような ‘アンプリファイ’ によるトランペットで参加している。クラシックと現代音楽を専攻し、父親の難しいスコアも吹きこなすマルクスだが、一方でジャズにも強い関心を持ち、当時、自らのジャズ・ロックのグループで活動していた。また、本盤ではカールハインツ自らも民俗楽器のKandy Drumやフルートを持ち、演奏に参加しており、ワウワウの効いたトランペットと無調によるエレクトロニクスが錯綜する中、まるでデイビスとシュトゥックハウゼンの ‘擬似共演’ を聴いているようでもある。



‘On The Corner’ は、その不可解な構成を伴ったアルバムであることに反し、制作の元となっている素材やアイデアなどについては広く流布する希有な一枚でもある。前述したように錚々たる名前が彼の自叙伝を飾り、それでも出来上がった内容に関して誰も批評することができないことに、デイビスはある種の快感と苦痛を伴っていたはずだ。快感とは、批評家を混乱させることであり、苦痛とは、これがどこのマーケットにも届かなかったという無理解である。しかし、シュトゥックハウゼンを単なる戦略的なタームで煙に巻いたものとして見るべきなのか。デイビスはご丁寧にも、まるで ‘On The Corner’ 解読の ‘処方箋’ の如く ‘Gruppen’  ‘Telemusik’ ’Mixtur’ のレコードを繰り返し聴いて ‘On The Corner’ を制作したことを述べているのである。そこにはデイビスの ‘On The Corner’ 創作の前後として、最も近しい関係であったスライ・ストーンの ‘暴動’ から ‘Fresh’ の創作期間が対を成す。頻繁にスライのスタジオに顔を出し、彼の制作過程も目の当たりにした上で、そこに差し出されたシュトゥックハウゼンのレコードを繋げたところに ’On The Corner’ 接近の鍵が隠されている。薬物とスターの軋轢により自我が崩れ始め、延々として制作の進行しないスライを訪ねる1970年の精力的なデイビスと、自動車事故の後遺症から再び薬物に溺れ始め、片や健康を取り戻しつつあるスライのスタジオに度々顔を出す1973年の病み始めたデイビス。この交差する関係性が ‘On The Corner’ に落とす影響は甚大だ。作品というひとつの枠組みの中にあらゆるパースペクティヴを内包するデイビスの音楽の特徴にあって、’On The Corner’ はその枠組み自体をファンクから現代音楽、インドの民俗楽器などがエレクトロニクスを通じてまき散らしたまま、あちこちで放棄されている。むしろ、その散りばめられたピースを積極的に聴き手自身で組み立てることを奨励しているようにさえ聴こえるのだ。ちなみにここで無機質にテンポを刻むリズム・ボックスは、スライが失った 'ザ・ファミリー・ストーン' に代わりスライ流 '冷たいファンク' の出発点となり、これは、そのままデイビス自身も1973年の来日公演を機にバンドへ導入、ムトゥーメの担当する打楽器のひとつとなった。


シュトゥックハウゼンを持ち込んだ ‘張本人’ であるポール・バックマスターは、デイビスにとって ‘On The Corner’ のコンセプトを手順よく進めて行く上での ‘設計者’ であり、多くの偶発的な要素を呼び込む ‘触発的存在’ であった。シュトゥックハウゼンのレコードを聴き、いくつかのアイデアの交換を元に設計図をバックマスターが書き上げ、そこから実際の現場で取捨選択していく ‘指揮者’ としてのデイビス。さらに、そのラフなスケッチ的セッションを元にデイビスの指示した ‘完成図’ に従い、テオ・マセロがテープを編集する。これが ‘On The Corner’ 制作プロセスのすべてである。’In A Sirent Way’  ‘Bitches Brew’ のカバーに小さく書かれた ‘マイルス・デイビス監督による音楽’ という ‘注意書き’ は、むしろこの ‘On The Corner’ においてこそ徹底していると言っていいだろう。もちろん、テクスト先行の現代音楽を教条的に受け取り ‘On The Corner’ へ結び付けてしまう愚行を犯す恐れはあるが、しかし、単なる ‘マイルス・デイビス流ファンク’ とするだけでは片手落ちなほど、アイデアの源泉としてのシュトゥックハウゼンの影響は濃いと見るべきだ。ちなみにバックマスターは、レコーディング・セッションのアイデアをデイビスに求められて、デイビス近年の作品に提示されて、またシュトゥックハウゼンの作品にも顕著な不規則テンポ(アウト・オブ・タイムのパッセージ)を活用したらどうなるか見てみたい、と答えている。厳密なシュトゥックハウゼンのテクストに従っていなくとも、混乱するアイデアの状況を前に、デイビスにとってシュトゥックハウゼンの ‘ガイド’ は制作を進めていく上での大きな指針となった。

以下は、バックマスターが詳述する ‘セッション’ の中身。

あらかじめ記譜しておいたのは、ベース・フィギュアとドラムのリズムと、あとはそれに合わせてタブラとコンガと、キーボードのフレーズが1、2個。実際、まるまる一曲譜面にしておいても、いざスタジオに入ってみると、キーボードはそれらのフレーズに一応触れはしても、しまいにはすっかり変えてしまう。最初は大体正確に弾いているんだけれども、そのうちだんだんシュトゥックハウゼン流に変形してしまうんだ。少しずつ元のフレーズがわからなくなって最後にはまったく別のものになっていくわけだ。転調する場所も書いておいたのに、リハーサルしないから、転調もされない。僕は譜面のコピーをとって、ミュージシャン達に配ったし、マイルスがそう言うから、ベースのパートやドラムのパートを彼らに歌って聴かせたり、キーボードのフレーズをチェックしたりしていたんだ。ところが、それもろくろく済まないうちに、マイルスが「オーケー、それで充分だ!」と言って、指を鳴らしてテンポをとり出した。そうして始まって、「オーケー、それまで。聴き返してみよう」とマイルスが言うまで30分も延々と続いたかな。もしも、もっとリズムがはねて欲しい、もしくはだらっとして欲しいと思った時は、肩をすくめるあの独特の仕草で表現するのさ。曲をおしまいに持っていくのもやっぱり動作、手のジェスチャーでね。





ポール・バックマスターがデイビスと知り合い、そこで自らのデモテープを聴かせてお墨付きをもらったのは1969年であった。この年、バックマスターはキーボードのティム・マイクロフトと共にSounds Niceの名義で、いわゆるレコード会社の ‘企画もの’ 的イージー・リスニングなロック・アルバム ‘Love At First Sight’ において早くも野心的な試みを探求する。また、ブライアン・ジョーンズ追悼の意でトリを務めたザ・ローリング・ストーンズや、鮮烈なデビューを果たすキング・クリムゾンらと共に 'チェンバー・ロック' でプログレの新機軸を打ち出したサード・イヤー・バンドの一員として、ハイドパークのフリー・コンサートに出演するバックマスター。これ以後、デイビスの ’In A Silent Way’  ‘Bitches Brew’ の革命的な ‘転向’ はバックマスターの血肉となり、1972年の ‘On The Corner’ に至る長い準備期間となった。1970年に制作され翌年リリースされたアルバム ‘Chitinous’ は、バックマスターが指揮を取り、ブリティッシュ・ジャズ・ロックの錚々たるメンツを集めた壮大なオーケストラ作品である。弦楽とジャズ・ロックのエレクトリックな響き、インドのタブラなどが融合し、そこかしこに当時のデイビスからの影響がある。そして1972年の5月にニュー・ヨークの自宅に呼ばれ、その後一ヶ月近くをデイビスと共同生活を送るバックマスターは、毎朝、チェロを取り出してバッハの無伴奏チェロ組曲第一番のプレリュードを弾いていたという。そして、バックマスターが旅行鞄の中に割れないようにして持ってきたシュトゥックハウゼンのレコードは、すぐさまデイビス邸のBGMとなり、それを貪るように聴き続ける中から ‘継続的プロセスとして音楽を捉えるという考え方’ のテーゼを獲得する。デイビスが ‘Chitinous’ を耳にしていたかどうか定かではないが、本アルバムがまるで ‘On The Corner’ への長いイントロダクションとして響くのは偶然であろうか。デイビス邸では、デイビスがピアノ、バックマスターはチェロで応答しながら ’On The Corner’ のスケッチとなるべき最初のアイデアを交換していく。

僕が、マイルスが使ったコードやらスケールやらを基にフレーズを弾くと、マイルスはよく「待った!それだ!それ書いといてくれ!」と言った。僕は急いで書き留めた。

実際のセッションでは、バックマスター自らもチェロにBarcus-berryピックアップを取り付けてワウペダルを踏むかたちの ‘アンプリファイド・チェロ’ で、積極的に ‘On The Corner’ における打楽器の一部として溶け込んでいる。バックマスターが用意していったスケッチの大半は、現場でほとんど変形させられ跡形も無くなってしまったというが、’Chitinous’ はそんな ‘On The Corner’ のスケッチの ‘青写真’ として重要な考察を与えてくれる。



また、このような傾向からデイビスがプレリュードに関心を示していたことは明らかで、基本的にリズムとテクスチャー、色彩、そしてストラクチャーから成り立ち、メロディのない音楽に惹かれていたこと。そしてデイビス自身がバッハを通じて、オーネット・コールマンの言う 'ハーモロディクス' の根幹である "グループ内の全楽器は同時にソロを取る自由がある" という趣旨の理解へと至ったことを認めている。



参考文献
完本 マイルス・デイビス自叙伝
マイルス・デイビス / クインシー・トゥループ著 中山康樹訳 (JICC出版局)
マイルス・デイビス物語
イアン・カー著 小山さち子訳 (スイングジャーナル社)
マイルス・デイビスの生涯
ジョン・スウェッド著 丸山京子訳 (シンコーミュージック・エンタテイメント)
音の始原を求めて - 塩谷宏の仕事 -ライナーノーツ: 佐藤茂 (元NHKチーフ・エンジニア)
エレクトリック・マイルス 1972 - 1975 〈ジャズの帝王〉が奏でた栄光と終焉の真相
中山康樹著 (ワニブックス【PLUS】新書)

2018年3月3日土曜日

アンプ!アンプ!アンプ!

さて、管楽器でアンプっていうのはあまりイメージが湧かないのではないでしょうか。一般的には管楽器に取り付けたマイクの信号はそのままPAのミキサーに引き回されて、ミキサー内蔵のリヴァーブやディレイ、EQなどで処理されたものがパワード・モニターへ振り分けられていくという流れになります(ヴォーカルと同じセッティングですね)。



もし、管楽器で個別にエフェクターを用いたいという場合では、ミキサーのバスアウトからDIでステージ上に送り足元のコンパクト・エフェクターを通り、再びDIでミキサーのチャンネルへ返すという流れとなります。最近、管楽器のマイクに最適化された 'インサート付き' のマイク・プリアンプ、Audio-Technica Slick Fly VP-01やRadial Engineering Voco-LocoなどもPAからはそのようなセッティングで繋いで欲しいと指示されるのではないでしょうか?もしくはエフェクツ用と '生音' で2つのマイクを分けてセッティングするなど。つまり、PAとしては管楽器自体の '生音' は確保したいという思いが強く、これは足元のエフェクターに不具合が生じた場合、ミキサー側でエフェクツに送るバスアウトを切っていつでも '生音' に戻れることでステージ上の進行を妨げないことを優先します。また、エフェクツのバランスなどをPAがミキサーでコントロールしたいという思いも強いでしょう(突発的なハウリングなど)。







Yamaha Stagepas 400i / 600i

こういうところで、ひと昔前の 'アンプリファイ' な管楽器奏者が好んでいたアンプを用いてのセッティングは、その他電気楽器とのアンサンブルや複数マイクを立てることによる煩雑さから現代ではイヤがられるでしょうね(苦笑)。また、客席側に聴こえるPAを通した '外音' に対して、いわゆる '返し' と呼ばれるステージ上の '中音' を司るパワード・モニターの音量も限度があることから、最近のステージでは管楽器奏者の耳に直接インイヤー・モニターを推奨するPAも多くなってきております(ヴォーカルは完全にコレですね)。







ま、特別こういう状況とまったく縁のないわたし(笑)は、心置きなくコンボ・アンプを自分の真横に置いて鳴らしているワケなのですが、こっちはこっちでむしろ自宅であるだけに家人、近隣の方への配慮を気にしなければなりません(というか基本、アパート、マンションでヘッドフォン使えない楽器の演奏はムリだと思うけど)。ここで管楽器に適したアンプとは何ぞや?と考えてみれば、とりあえずクリーンであることは重要ですね。いわゆるギター・アンプのような '歪み' というのはピックアップ・マイクを用いる場合では弊害が大きく、やはりレンジの広い再生環境である方が気持ちよく演奏できます。そしてアンプのワット数よりもスピーカーの口径の方が重要でして、自宅という環境で気は引けますけど12インチ程度のスピーカーは欲しいですねえ。





ZT Amp Lunchbox

最近は小さいものでも結構パワフルに鳴らせるデジタル・アンプを用いた小型アンプなどが登場しておりますが、どうしても生音とのバランスを考えると12インチのスピーカーから再生させる方がバランスよく聴こえます。そんな中、デジタル駆動により 'お弁当箱' 気分で持ち運べる可搬性ながらラウドな音量で一世を風靡したZT Amp Lunchbox。また、小型とはいえ、このラッパの人(なぜかC管だけど)がPiezo Barrelのピックアップを用いて、Ampegの15W程度のアンプをPA併用してこのくらいの部屋でも十分に鳴らせます。


Genz Benz UC4-112T
Ashly LX-308B Stereo Mixer

2000年頃に登場した米国Genz Benzの135Wコンボ・アンプ。本機はコンボ・アンプながら '転がし' の如く足元で傾けて設置できるウェッジ・シェイプのデザインをしており、3つの楽器/マイク入力と1つのライン/マイク入力のミキサー機能を備えた 'PAライク' な仕様です。'Enclosures' の表記があるようにリアバスレフの構造で室内はもちろん、屋外でも威力を発揮すべく音はやはりデカイ・・。Active Bandpass EqualizationとしてLow、Low-Mid、High-Mid、Highのそれぞれ15dBで増減する4バンドEQ、スプリング・リヴァーブと1つの外部エフェクツ用 'センド・リターン' を装備。非常に重宝しておりますが、空冷用のファンが少々耳障りなのとライン用のフォン入力がTRSフォンのバランス入力に対応していないのだけが残念ですねえ(あ、後は21.4Kgの重量か)。このUC-4-112Tのライン入力の前にAshlyのライン・ミキサー、LX-308Bでレベル・コントロールを行い、'XLR→TRS' のバランス信号として変換しているのですが、なぜかこのアンプではマウスピース・ピックアップ側で高音域を吹き込むとプチッとクリップノイズを拾うのが悩み。同じPiezo Barrelで高域を少し落とした 'Woodinds' 用のピックアップで試してみようかと思案中です・・。


SWR California Blonde Ⅱ

米国でベース用アンプで一躍その名を知らしめたSWRの160W 'アコースティック' 用コンボ・アンプ。以前はマーカス・ミラーなどがユーザーとして名を連ね、ここ日本では神田商会が代理店となって取り扱っておりましたがすでに終了、市場からも見かけなくなりました。アンプ自体の音質は、Genz Benzよりこっちの方がいかにも箱が鳴っている感じがあって好きです。わたしはコイツにShure SM57を立てて集音し、サンプラーなどでいろいろ加工したりするのに重宝しております。このアンプのユニークな部分で、通常のアンバランス入力の他に 'Low Z Balanced' のスイッチを入れることでTRSフォンのバランス入力に対応すること。取説にもこんな解説があります。

"ローインピーダンス仕様のギターのバランス出力を入力端子に接続するときは、このスイッチを押し下げてください。TRS端子による接続が必要なバランス接続では、最高のダイナミックレンジと低ノイスの環境が得られます。"

いかにも 'アコースティック' 用という感じでマイクとAux入力、またアンサンブル中での '音抜け' を意識して 'ドンシャリ' にする機能 'Aural Enhancer' を備えるなど、ライヴにおける使い勝手を意識したデザインとなっております。EQはBass、Mid Range、Trebleの3バンドでリアにハイのツィーターをコントロールするツマミが個別に用意、外部エフェクツ用 'センド・リターン' とスプリング・リヴァーブを備えます(ちょっとノイズ多目ですが)。ちなみに各ツマミは少々ガリの出やすいところが玉に瑕で、重量はこちらもGenz Benzを超えた堂々の24Kg・・。自宅でのヴォリュームは12時が限度なのですが、バランス接続では最高のダイナミックレンジと低ノイズの環境・・とうたっている割には12時以降回すと結構ノイジーになってきますね・・(出力が大きいってそういうことなんだろうけど)。わたしはRadial EngineeringのパッシヴDI、JDIからバランス接続しているのだけど、こちらはGenz Benz UC4とは逆にアクティヴDIだとプリアンプを二重にかけた状態となり・・歪む(悲)。こういうラインであるとか、ロー・インピーダンスだからというスペックだけでは計り知れない 'マッチングの掟' は本当にケース・バイ・ケース・・散財を覚悟した 'トライ&エラー' で挑まなければならないのがツライところ。







The Little Jake ①

とりあえず、このSWRのような 'アコースティック' 用アンプというのは結構お手軽に自宅でも使えます(アパート、マンションは除く)ので、例えばFishmanやFenderなどの中型アンプは最初の一台として手を出しやすいと思います。Loudbox Miniは60Wの6.5インチ、Acoustasonicは90Wの8インチということでラウドに鳴らせますヨ。まあ、これでも十分過ぎるほどのデカイ音なので鳴らす時間帯を決めて家人、お隣さんから怒鳴り込まれないようご注意を(汗)。もちろん、ステージでもアンプにマイクを立ててPAと併用すれば立派に 'アンプリファイ' な環境を構築することが出来まする。ちなみに最後の動画は、そのAcoustasonicを2台ステレオで使用したループ・サンプラーDigitech JamMan Delayでのパフォーマンス。こういうループ・サンプラーによるオーバーダブのアンサンブルでソロやる場合は、アンプ2台でやった方が分離よく聴こえますね。







Roland KC-350
Behringer K900 Fx Ultratone

管楽器を鳴らすにあたり、例えばDTMをやっている人たちのようにそこそこのパワード・モニターをライン・ミキサーと共にセットすれば、フツーに小さい音量から比較的パワフルに鳴らすことが可能なのですが、やはり 'アンプリファイ' って真横にドン!と鎮座させるように '大箱' 置いて音圧を感じないとダメでしょう。こう、スピーカーのコーンの奥から飛び出してくる感じ、大きな箱がジ〜と電源入れたノイズと共に '鳴っている' 感じというか。まあ、わたしの所有アンプはどちらも 'ディスコン' なので入手は難しいのですが、最近だとやはりRolandの 'KC' キーボード・アンプ、BehringerのK900Fx Ultratoneなどが手っ取り早く使えるのかな?動画のちょっとコワモテおじさん&インテリ・メガネな若者のRoland KC-350を用いた '新旧オクターヴ系エフェクター' 対決は、やっぱりスピーカーが12インチくらいあると満足できることを教えてくれまする。



Neotenic Sound Magical Force ②
Neotenic Sound Purepad ①
Neotenic Sound Purepad ②

そして、アンプの音作りにおいて重宝するのがこちらNeotenic Soundのダイナミック・プロセッサーであるMagical Force。もう何度も取り上げているのでご興味の方はリンク先をご覧頂きたいですが、本機はプリアンプのようでもありエンハンサーのようでもありコンプレッサーのような '迫力増強系' エフェクター。とにかく 'Punch' (音圧)と 'Edge' (輪郭)の2つのツマミを回すだけでグッと前へ押し出され、面白いくらいに音像を動かしてくれます。'Density' (密度)を回すと音の密度が高まり、コンプレスされた質感と共に散っていってしまう音の定位を真ん中へギュッと集めてくれる。コレ、わたしの '秘密兵器' でして、プリアンプの3バンドEQで控えめな補正をしている分、本機と最終的な出力の160Wコンボアンプの3バンドEQでバランスを取っております。本機の特徴は、DI後のラインにおける 'クリーンの音作り' を積極的に作り込めることにあり、おいしい帯域を引き出してくれる代わりにガラリとバランスも変えてしまうのでかけ過ぎ注意・・。単体のEQやコンプレッサーなどの組み合わせに対し、本機のツマミは出音の変化が手に取るように分かりやすいのが良いですね。ここでのツマミの設定はLevel (11時)、Punch (1時)、Edge (11時)、Density (9時)。ともかく、わたしのラッパにおける 'クリーン・トーン' はコイツがないと話になりません。ただし '魔法' とはいえ、かけ過ぎればコンプ特有の平べったい質感になってしまうので、EQを加えてさらなる音抜けや帯域補正など、各自いろいろと研究しながらコイツを体感してみて下さいませ。そして、音量の補助的なコントロールとして 'アンプ派' は非常に重宝する同社のPurepad。'Solo' と 'Bucking'、2つのプリセットした音量を切り替えるものなのですが、例えば、ワウを踏んだときのピーク時に発生するハウリング抑制、オクターバーでの単調なトーンや張り付くようなキャビネットからの出音に対するダイナミズムの演出など、正直ヴォリューム・ペダルより便利に使えると思いますヨ。


Neotenic Sound AcoFlavor
Neotenic Sound Board Master (discontinued)
Neotenic Sound Pure Acoustic

ちなみに、わたしのPiezo Barrelピックアップに無くてはならない 'インピーダンス・トランスフォーマー' のNeotenic Sound Board Master。それがさらに 'Acoustic-Pickup Signal Conditioner' としてパワーアップ、AcoFlavorの名で新登場しました!実は去年の暮れには入手しており、いろいろNeotenic Soundさんとやり取りさせてもらいながら完成・・。今日まで従来のBoard Masterと取っ替え引っ換えしつつ自分の環境の中で探求していたのです。正直、最初に手にしたヴァージョンはまったくピックアップとのマッチングが上手くいかなかった・・(汗)。ようやく三度目にして納得のいくかたちに仕上がってきたのだけど、本機はBoard Masterに比べると間違いなく音に密度が増しており、ピックアップからの感度調整を司るFitとは別にLimitツマミを回すことで '暴れ感' を抑えタイトにすることができます。わたしはMaster1時、Fitを9時にしてLimitも場合によって9時くらいまで上げますが、基本は後段に繋ぐMagical Forceで補正。Piezo Barrelのピックアップ買ってはみたものの手持ちのエフェクターとミスマッチ、もしくはもうちょっとピエゾの音質をどうにかしたいとお嘆きの貴方、ぜひぜひこのAcoFlavorがその救世主となりまする。あるとないとじゃ大違いですヨ。そんな本機は、あくまで 'Signal Conditioner' という名のインピーダンス・マッチングをするものなので、さらなる '生っぽさ' の追求をしてみたい場合は同社のプリアンプ、Pure Acousticとの組み合わせを推奨とのこと。一見、取っ付きにくそうな整然と並ぶ6つのツマミに怯みますが・・どれどれ。

⚫︎Master: 出力される最終的な音量を調節します。
⚫︎Body: 楽器本体のサイズ感を豊かに増強させます。右に回すほど楽器の存在感がしっかり押し出されるようになります。
⚫︎Lo: Bodyツマミで決めた位置に対して、低域の膨らみ感を調節します。左に回すほどスッキリとしたタイトなサウンドになります。
⚫︎Hi: 弦を弾いたときの音の硬さを調節します。右に回すほど硬い音に、左に回すほど柔らかい音になります。
⚫︎Wood: 楽器の持つ木の鳴りの成分を電気的に強調させたり抑えたりします。左に回すと共振部分が抑えられた大人しい落ち着いた雰囲気に、右に回すと木が響いているような広がりが得られます。演奏する楽曲の楽器編成などに合わせて調節して下さい。
⚫︎Density: 弦を弾いたときのタッチに対するレスポンスの立ち上がり比率を決めます。左に回すと過度に立ち上がり、右に回すほどその感度が圧縮されます。タッチとレスポンスのバランス点を越えると音の雑味や暴れはさらに抑えることが出来ますが、音の表情は均一化されていきます。

なるほど。特に 'Body' と 'Wood' というアコースティックの '鳴り' に特化した2つのツマミがキモのようです。このあたりをEQのLoとHiを補助的に配置して、あえて '鳴り' というイメージで2つのツマミに落とし込んだのは見事ですね。Magical Forceもそうなんだけど、Neotenic Soundの製品は視覚的に把握させながら耳で音を決めていくセンスが抜群だと思います。EQの何kHzをブーストして・・なんて言われてもよく分からないけど、こっちのツマミが '箱鳴り' で隣のツマミで 'エッジ' を出して、そこにローかハイが足りてないと思ったらEQしてという方が把握しやすく音が目の前にある感じ。また本機は、ダイナミックレンジ確保の為にDC18Vの専用電源でヘッドルームを広く取った設計もグッド。ツマミの構成から 'アコギ' 専用と捉えられがちですが、いわゆるアコースティック楽器全般に対応しているそうです。


K&K Sound Dual Channel Pro Preamp ①
K&K Sound Dual Channel Pro Preamp ②
Classic Pro ZXP212T
Sennheiser Evolution e608
Sennheiser Microphone
Piezo Barrel on eBay
Piezo Barrel Wind Instrument Pickups

さて、このAcoFlavorとは別に簡易的な 'ピエゾ + マイク' のミックスでK&K SoundのDual Cannel Pro Preampがとても良い結果をもたらしてくれました!9V電池駆動の腰に装着するプリアンプながら、2つのヴォリュームのほか、基板上に配置されたGain、Treble、Mid、Bassを小さなドライバーを使って補正することが可能。あらゆるピックアップ・マイクのダイナミックレンジに対応しており、Piezo Barrel愛用者は是非ともSennheiserのダイナミック・マイク、e608などとのミックスに活用してみて下さいませ(e608からはClassic Pro ZXP212Tを用いてフォンへ変換)。そして、ワイヤレス・システムで鳴らしたい人にもトランスミッターと共に腰へ装着するだけの手間要らず。



あ、そうそう、本機には2つの入力をTRSフォンによる 'ステレオ1本' で行うDual Cannel Pro 'ST' Preampというのもあり、見た目は非常によく似ているのでお間違いのないように・・。一応、このK&K Soundはモリダイラ楽器が代理店となって取り扱っているようですけどあまり店頭では見かけないですねえ。







Radial Engineering Voco-Loco
Pigtronix Keymaster

そして、最もお手軽に管楽器の 'アンプリファイ' で威力を発揮してくれるRadial Engineeringの 'インサート付き' マイク・プリアンプ、Voco-Loco。Low、Highの2バンドEQを備えた高品質なプリアンプ部はもちろんですけど、'インサート' に対して効くToneは管楽器で使うにあたってかなり重宝するのではないでしょうか。使うエフェクターによっては結構 '抜け' が悪くなることってありますので・・。また、ファンタム電源使用のコンデンサー・マイクは使わずダイナミック・マイクで十分。もしくはPiezoBarrelのマウスピース・ピックアップだけでやります、って人なら、こちらPigtronixのKeymasterが重宝しますヨ。XLR(ファンタム電源不可)とフォンの同時入出力はできませんが、2つの 'インサート' をそれぞれ 'A or B'、'A + B' と切り替え、ミックスして使えるのが便利。 





Eventide Mixing Link
Zorg Effects Blow !
Zorg Effects

こちらはRadial Engineering Voco-Locoの対抗機として登場したEventide Mixing Link。そして去年、フランスのZorg Effectsという工房からアナウンスされていた 'インサート付き' マイク・プリアンプBlow !が堂々完成!このサイズで 'センド・リターン' のほかファンタム電源対応のXLR入力、Padを備えるという至れり尽くせりな仕様!おお、こういった製品が続々市場に参入してくるのを見ても、コンパクト・エフェクターがギタリストやベーシスト以外の分野に普及するんじゃないかとワクワクしますねえ。その他、ユニークなエンヴェロープ・フィルターなども製作しているこのZorg Effects、まだ日本には入ってきていないブランドなのでどこかがやらないかなあ?









Fender '65 Twin Reverb
Roland Jazz Chorus JC-120
Hughes & Kettner Tube Meister 20 Head ①
Hughes & Kettner Tube Meister 20 Head ②

もちろん、ギターアンプだからと '使っちゃダメ' ってことはないワケで、ランディ・ブレッカーも日本が誇るRolandの名機、Jazz Chorus JC-120を2台ステレオで使っておりました。JCもクリーン・トーンに定評のあるアンプとしてもはや定番ですけど、本機の '裏ワザ' として後ろに備える 'Return' からプリアンプを通らずパワーアンプのスピーカーだけを利用することで、例えばアンプ・シミュレーターを用いてのラインによる音作りにも活用できます。そして、イアン・カー率いるジャズ・ロック・グループ、ニュークリアスのステージではドイツのアンプ、PAメーカーDynacordのアンプがチラッと映っておりますね。ここでもベルからの  '生音' は会場内のPA、ワウペダル踏む 'アンプリファイ' の場合はDynacordのアンプにマイク立てて集音というかたちで分けておりますが、昔はこれが一般的な管楽器の 'アンプリファイ' による再生方法でした。そしてSnarky Puppyのラッパ吹き、Mike 'Maz' MaherさんもスタジオではFenderのギターアンプ(Twin Reverbかな?)にダイナミック・マイクを立ててワウやオクターヴ・ファズによるワイルドなトーンを実践!しかし、一転してディレイの柔らかいトーンの場合は繊細なリボン・マイクでそのままライン録音とそれぞれの使い分けによる違いがよく分かるのではないでしょうか。バリトン・サックスのJonah Parzen-JohnsonさんはHughes & Kettnerの20W真空管ヘッドアンプをキャビネットと組み合わせて使用。










Acoustic Control Corporation
Vox Ampliphonic Nova Amplifier
Vox Ampliphonic Powered Music Stands: Satellite, Galaxie, Orbiter
Vox Ampliphonic Orbiter
Vox Ampliphonic Galaxie

1960年代後半、管楽器用のエフェクターによる 'サウンド・システム' を発売したSelmer Varitoneを始め、Gibson / MaestroやConn、Vox / Kingなどはオプションとして専用のアンプ、PAシステムなども用意したものの、大音量なロック・バンドのアンサンブルにおいてほとんど太刀打することが出来ず、当時、クリーンな音作りでギターからヴォーカルまで対応できたAcoustic Control Corporationのスタックアンプを用いる管楽器奏者が数多くおりました。上の画像は1967年発売のConn Multi-Viderの付属として用意されたTreble、Bassの2バンドEQ、トレモロ、スプリング・リヴァーブを備えるコンボアンプ、"500" Amplifier。そして世界初の 'ギター・シンセサイザー' を開発したHammondがInnovex Condorの付属として用意したPAシステム。1968年のフランク・ザッパ率いるザ・マザーズ・オブ・インヴェンションのライヴからは、イアン・アンダーウッド、バンク・ガードナーらホーン陣の後ろにそびえ立つAcoustic 260 + 261の壁を築いており、これは、そのまま1970年に 'アンプリファイ' したマイルス・デイビスのステージにも登場します。ここでは260 + 261に加えて361のキャビネットもリンク、相当な大音量でエレクトリック・ギターにも負けない音圧だったことでしょう。また、ピーター・ハミル率いるヴァンダー・グラーフ・ジェネレイターのデイヴィッド・ジャクソンは、Vox / King Ampliphonic Octavoiceを装着したサックスをHiwattのアンプで再生。







Kustom Amplification
Kustom Bass 150
Trace Elliot 7215SMC GP7

また、歪みなくダイナミックレンジの広い帯域の再生としてベースアンプを 'エレアコ' に代用する場合もあり、特に低域から中域にかけてのクリアーな再生などでサックス奏者には好まれるでしょうね。上の 'メリーさんの羊' オジサン(笑)の動画では、モコモコしたビニール地のソファ風アンプで有名なKustomのスタックアンプを鳴らしており、リンク先の 'Kustomファン' によるサイトによれば150W12インチ2発によるBass 150というモデルのようです。その下の 'アンビエント' 風ドローンなサックスは、Trace Elliotの150WベースアンプGP7によるもの。しかし、Trace ElliotもSWRも肝心のベーシストからの評価はどちらもビミョーというか、評価の分かれるアンプのようです・・。まあ、今ならわざわざ選ばない時代遅れの匂いが強いというか。





Yamaha PE-200A + TS-110
Yamaha PE-200A + TS-100
Yamaha PE-200A
Yamaha TS-200

そして、'アンプリファイ' といえば1960年代後半から70年代全般にかけての連中、特に 'エレクトリック・マイルス' なのですが、当時、多くの管楽器奏者に好まれたAcoustic Control Corporationのスタックアンプはもちろん、1973年のマイルス・デイビス来日を機にエンドース契約をして使い始めたYamahaのPAシステムへの関心が集まります。デイビスも使用したヘッドアンプ部のYamaha PE-200Aはスプリング・リヴァーブ、トレモロのほかにオートワウ!も内蔵されており、そのオートワウも 'Wah Wah Pedal' という端子にエクスプレッション・ペダルを繋ぐことでペダル・コントロールできるというかなり変わった仕様。案外、デイビスはワウペダルだけじゃなくこのオートワウも 'On' にしていたのでは?そしてパワーアンプ内蔵のTS-110キャビネット部分を縦に赤、黒、緑と'アフロカラー' で染め上げ、上から 'MILES、DAVIS、YAMAHA' とレタリングをすれば、もう気分は70年代の 'エレクトリック・マイルス' 一色です!メチャクチャ欲しいけれど上下合わせて60Kg強、12インチ2発ということでこんな '冷蔵庫' のようなスタックアンプ、置き場所もなければ自宅で鳴らすレベルのものでもなく・・厳しー。

2018年3月2日金曜日

トレモロで挑発する (再掲)

以前にお送りした 'トレモロで挑発する' を一部加筆、訂正して再掲。

車窓から眺める米国南部の長閑な田園風景や、色褪せたセピア色の写真を見ながら遠い過去に想いを馳せるなど、どこかノスタルジックな演出にかかせないのがユラユラとしたトレモロの音色。しかし一方で、まるでゲートでスパッと切り刻んでいくような 'マシンガン・トレモロ' からVCAにLFOをかけて 'シンセライク' に変調させるトレモロまで、実は結構、奥の深いエフェクターではないかと思っております。ちなみによく似た効果であるトレモロとヴィブラートの定義は、音量の増減がトレモロ、音程の上下がヴィブラートであると考えるのですが、これは製品によって混同されている場合があるので注意が必要です。あ、そうそうラッパでは右手で楽器を揺する、顎をアウアウさせる、リップトリルなど駆使する 'シェイク' というワザが同種の効果となりまする。



Vox Repeat Percussion V809
Fret-Ware Machine Gun Repeat

ここでは 'エグい' 効果のトレモロを中心にご紹介したいのですけど、その出発点としてギターの入力ジャックに直接取り付けるVox Repeat Percussionという製品がありました。その名の如く、リズミックにフレイズを切り刻むことを目的として 'マシンガン・トレモロ' の異名も付けられた本機の魅力は、英国のFret-WareからそのVoxを元にMachine Gun Repeatを発売したことにも伺えます。通常の 'フット・ボックス' 型となったこの本機のユニークさは、フット・スイッチがモメンタリー仕様となっており、踏んだ状態でのみエフェクトがかかるリアルタイム性に寄っていること。上の動画はかなり '飛び道具' 的セッティングではありますけど、その切れ味のほどが分かると思います。





Reuss Musical Instruments RF-02 Repeater Fuzz ①
Reuss Musical Instruments RF-02 Repeater Fuzz ②

そんなVox Repeat Percussionに惚れ込んでしまった設計者アンダース・ロイスが手がけた本機は、新興メーカーのReuss Musical Instruments(ロイス・ミュージカル・インストゥルメント)による古くさいファズとの '2 in 1' なRF-02 Repeater Fuzz。何でもVoxが製作したエフェクター内蔵のギター、Vox Starstream V269の機能をそのまま 'フット・ボックス' として抜き出したものだそうで、いかにも60'sロックの匂いを撒き散らすファズはTone Benderの回路を研究して組み込んだものとのこと。ちなみにそのVox Starstream V269というのもビザールなVoxらしい迷機で、内蔵するTreble Bass Boost、Distortion(Fuzz)、Repeat Percussionのほか、ピックアップ側にある手のひらで弦をワーミングするような器具でワウをかける 'Palm Wah' の人力具合が凄い(笑)。このようなエレキ黎明期のアイデア商品っぽいセンスがたまらなく良いですねえ。



Walrus Audio Janus - Tremolo / Fuzz ①
Walrus Audio Janus - Tremolo / Fuzz ②

また、このような 'Fuzz + Tremolo' ということでは、2つのジョイ・スティックでグリグリとX/Y軸に独立して操作する現代的な一台、Walrus Audio Janusもあります。トレモロとファズはそれぞれ独立したユニットとして2つのスイッチで切り替え、まるで空間合成の如くこの2つの音色をジョイ・スティックでコントロール!そのルックスは '飛び道具' のように見えますが出てくる音色はかなりの正統派だ。



Triode Pedals
Triode Pedals Neptune ①
Triode Pedals Neptune ②

'歪み' といえばファズだけではなく飽和した時の滲むようなサチュレーション、特に真空管の持つ '質感' は特別なものでしょう。そんな真空管をこのコンパクト・サイズに搭載してしまったトレモロ、Triode Pedals Neptuneの 'なまり具合' は見事に応えてくれます。米国メリーランド州ボルチモアで製作するTriode Pedalsの製品は、アシッドエッチングによる独特なデザインの筐体でファズからリゾナント・フィルター、'グリッチ/スタッター' 系のディレイに至るまで、かなりユニークなラインナップを披露。しかし、このNeptuneはトレモロの揺れに合わせて真空管がユラユラと点滅するのが美しい。





De-Armond Model 800 Trem-Trol
De-Armond Model 601 Tremolo Control

このVox以前のトレモロとしては、基本的にスプリング・リヴァーブと併用してアンプに内蔵されるエフェクトという位置付けでした。その中でもユニークな一品として存在したのが、ヴォリューム・ペダルの製作で有名なDe-ArmondのTrem-Trol。なんとペダル内部に組み込まれた電解液で満たした筒を、発動機により一定間隔で揺らして筒の壁に触れる面積の変化から音量を上下させるという・・なんとも原始的で、手の込んだ構造のトレモロですね。その下の動画は前身機にあたるModel 601の内部構造でこんな感じに揺らしております。今じゃその製作コストがかかり過ぎて大変だろうけど、エフェクター黎明期にはいろんな発想から電気的操作として取り出すという面白い時代でした。この丸くて暖かいレトロな雰囲気こそトレモロの真骨頂・・'ツイン・ピークス' のテーマとか弾きたくなりませんか?



Z.Vex Effects Candela Vibrophase

このような物理現象を機械的に取り出したものとしては、エフェクター界の奇才、ザッカリー・ヴェックスがなんとロウソクの炎のゆらぎからトレモロとヴィブラートの効果を取り出すZ.Vex Effects Candela Vibrophoneとして製作します。扇風機のような風車はヴィブラート効果のもの(扇風機にア〜と声を出すと変調するヤツ、昔やりませんでした?)で、これはレスリー・スピーカーを簡易的に再現するFender Vibratoneというギターアンプで製品化されましたね。ちなみに、この 'からくり時計' のようなプロトタイプはそのまま製品としても販売中・・お値段6000ドル也。


トレモロ/ヴィブラートというヤツは、ファズ同様にヴィンテージな設計思想がそのまま独特な効果として認知されており、現代のテクノロジーが手を出しにくいエフェクターのひとつでもあります。ジミ・ヘンドリクスが使用したことで一躍有名となった日本が世界に誇る名機、Shin-ei Uni-Vibeのドクドクとした '揺れ' の効果を司るのは、その '心臓部' ともいえるフォトカプラー(CDS)という電球のような素子のおかげ。しかし、硫化カドミウムによる現在の環境規制で製品に組み込んで製作することができず、各社が電子的なシミュレートにより何とか再現しようとしているのが現状です。このAnalog Outfitters The Scannerは、壊れたハモンド・オルガンからヴィブラート&リヴァーブ・タンクの部分を取り外し、新たにエフェクト・ユニットとして 'リビルド' したもの。やはり電子的シミュレートな回路構成では味わえない、この物理的に変調させる '古くさい' 感じはたまりませんね。そして、トレモロはスプリング・リヴァーブと組み合わせることでさらにそのレトロな '揺れ感' は強調されます。



Mid-Fi Electronics Electric Yggdrasil ①
Mid-Fi Electronics Electric Yggdrasil ②

そんなトレモロとヴィブラートの '混合' ということなら、米国ニューハンプシャー州で製作するMid-Fi ElectronicsのElectric Yggdrasil(エレクトリック・ユグドラシル)。設計は 'MMOSS' というバンドのギタリスト、Doug Tuttle氏で、いわゆる '現場の発想' から一筋縄ではいかない '飛び道具' エフェクターばかりをひとり製作しております。Mid-Fi Electronicsといえば、'変態ヴィブラート' ともいうべきPitch PirateやClari (Not)のぶっ飛んだ効果で一躍このブランドを有名にしましたが、本機は位相回路による 'フェイズ・キャンセル' の原理を応用し、Uni-Vibe風のフェイズの効いたトレモロでサイケデリックな匂いを撒き散らします。



Supro 1310 Tremolo

いわゆる 'フット・ボックス' になる以前のトレモロはアンプ内蔵というのが一般的でしたが、その中でも代表的なのがSuproのギターアンプ内蔵のもの。このSupro 1310 Tremoloは、そんな古くさい 'トレモロ感' をわざわざトランスによるサチュレーションを駆使し、真空管のバイアス可変による伝統的なSuproトレモロを再現する 'Amplitude' と、Fenderのギターアンプ内蔵のトレモロを再現した 'Harmonic' の2つのモードを搭載しております。また、'揺れ' のスピードはエクスプレッション・ペダルにも対応。





Locustom Fx & Fun The Parasite

さて、最近少しずつ市場に現れているフランスのエフェクターからこちらのブランド、Locustom Fx & FunのThe Parasite。トレモロに 'センド・リターン' を設けてその他エフェクターと組み合わせながら揺らし、さらにSpeedとMixどちらかをエクスプレッション・ペダルにアサインしてリアルタイム・コントロールにも対応する変わり種。効果としては、LEDの点滅に合わせてDryとWetが交互に入れ替わりながら揺れるといった感じで、これでステレオなら一種のパンニング効果に近いものですね。彫金による手間のかかった筐体といい、ちょっとフランスのペダルって他国の製品にはないオリジナルな感じがあるなあ。





Neotenic Sound Turbine-Ⅱ ①
Neotenic Sound Turbine-Ⅱ ②
Neotenic Sound Turbine

トレモロといえばヴィブラートと近しい関係からも分かるように、いわゆるレスリー・スピーカーにおける 'Fast / Slow' のスピード・コントロールで操作するイメージがあります。これをスイッチ一発で自在に速度調整できたらどれほどいいか・・っていうのを実現させたのが、大阪のエフェクター工房、Effectronics Engineeringとそのブランド、Neotenic SoundによるトレモロTurbine-Ⅱ。2つのプリセット・コントロールによるSpeedをそれぞれ好きに設定、スイッチを踏む度にいい按配で 'Fast / Slow' が入れ替わります。また、歪んでこそトレモロ!という主張と共にLevelツマミを上げていけばブースター的に滲ませることが可能なこと、そしてトレモロの後ろにコーラスがけの 'Dimension' 効果な裏ワザを設計者のいっぺいさんが動画で力説しまっす。







Chase Bliss Audio

おっと、毎度おなじみ 'Pedals And Effects' さんもいつもの '秘密基地' で2部に渡ってトレモロ特集やってたんですねえ。バッバッバッと音量の 'On / Off' だけで揺さぶられるているだけなのに、この滲み出る快感って一体何なのだろうか?シンプルにしてサイケデリック、まさにエフェクター黎明期を象徴する効果と言っていいですが、より現代の音楽シーンに合わせて多機能かつ 'サイバーな' トレモロが登場しているのも面白い。特に新たなトレモロともいうべきGravitasのChase Bliss Audioはその多様かつ細かな操作性、高品質な一品として今後の注目株となるでしょう(かなり高価なのが難ですが・・)。





Z.Vex Effects Super Seek Trem
Z.Vex Effects Sonar

さて、時代はグッと駆け上がり、いわゆるシンセサイザーの発想により音量をコントロールする新しいトレモロを見ていきます。こちらのザッカリー・ヴェックスによるZ.Vex Effectsから、16ステップのシーケンサーを組み込んだ '変態トレモロ' のSuper Seek Trem。16のステップによるシーケンスから好きなステップを選択し、さらにその速度やタップテンポ、Glissと名付けられたツマミでランダムに設定することで予測不能な効果を生成。またMIDIで外部機器との同期をするなど、トレモロというよりシンセで用いるアナログ・シーケンサーの発想ですね。一方のSonarは、このサイズにしてこれまた多様な揺れ方を設定できるぶっ飛んだもの。Clean/Machineのスイッチでクリアーなトレモロと極悪に歪んだトレモロ、Dutyツマミはタップテンポのスイッチと連動し、1、2、4のテンポ設定と合わせて等速、倍速、4倍速と変わり、Deltaツマミは上部のスイッチと合わせてスピードの可変を・・ふぅ、複雑過ぎるので動画で確認してみて下さいませ。しかし、Z.Vex Effectsほど、トレモロだけでこんなに面白いヤツ(その他TremoramaやTremolo Probeなどもあり)をラインナップしている会社はないですヨ。







Lightfoot Labs Goat Keeper GK.2
Koma Elektronik BD101 Analog Gate / Delay
Dreadbox Taff - Scientific Tremolo
Dreadbox Kappa - 8 Step Sequencer + LFO

突然その姿を現し、数量限定でGK.1〜GK.3までのシリーズを残して忽然と消えていってしまったLightfoot Labs Goat Keeper。たぶん、トレモロと名の付いたものとしては最も '飛び道具' 的色彩の強いものでしょう。ウムム・・これもSuper Seek Trem同様に説明するのが大変なくらいぶっ飛んだもの。トレモロの波形やテンポはもちろんシーケンス的効果も出来るのですが、これがかなりエレクトロニカ風 '壊れた' 揺れまでカバーしており・・もう、何が何やら。正直、トレモロというより 'グリッチ/スタッター' 系エフェクターのジャンルに入れてもおかしくないですねえ。またSync Inの端子を用いれば外部のドラム・マシーンとの同期もOKなのですが、一方、本機の6つからなる(後の6つはユーザー・プリセット)シーケンス・モードをLFOで出力し、CVで外部機器をコントロールすることが可能。動画はKoma Elektronik BD101のGateと同期して 'グリッチ/スタッター' 風シーケンスを生成、ちょっとした 'プチ・モジュラー' 気分が味わえますヨ。ちなみに、このBD101のGateセクションだけでもトレモロ的効果を生成することが出来ます。しかしオレゴンの片田舎からこんなネーミング・センスと羊のイラストで疾風の如く駆け抜けた迷機、本当に謎のまま多くの 'Pedal Geek' たちを狂喜乱舞させた存在でした。続いて、ギリシャで 'モジュラーシンセ' 的発想によりエフェクターを製作するDreadboxのTaff。一見すると一般的なトレモロと共通するパラメータを持ちながら、メーカーからは 'Scientific Tremolo' と名付けられて従来のトレモロ感に捉われない音作りを推奨しております。本機自体はDepthとSpeed、4種類からなる波形選択と深さを調整するパタメータを備えつつ、外部にLFOと8ステップ・シーケンサーを持つKappaと電圧制御(CV) で繋ぐことで、MoogerfoogerやKoma Elektronikのエフェクターと共通する 'シンセライク' な音作りに変貌。







Stone Deaf Tremotron - Digitally Controlled Analog Tremolo

2010年、LukeとKeithのHilton親子により英国マンチェスターから登場した工房、Stone Deaf。日本ではMaestro Parametric Filterというマニアックな一台をデッドコピーしたPDF-1でその存在を知りましたが、現在ではかなり多彩なラインナップを誇っているようです。このTremotronというのもかなりユニークな一台で、アナログの質感はそのままにデジタルによるユーザー・プリセットとMIDI制御でタップテンポ含め、トレモロの変調をかなり自由に操作することが可能。面白いのは 'Waves in Reverse' という逆再生しながらの揺れ方・・。単なるレトロ志向ではなく 'テクノ世代' にも訴える新しいものですね。





Rainger Fx Minor Concussion - Sidechaner Mk.1

こちらもDavid Raingerが手掛ける英国ロンドンの工房、Rainger Fxの相当に風変わりなトレモロ、と言っていいのかな?ここの製品といえば、"目覚めよフランケンシュタイン!" とばかりにガシャンとナイフスイッチで電流流すイメージそのまま、ぶっ飛んだファズのDr. Freakenstein Fuzz DRFF-3で一躍エフェクター界にその名を広めました。このMinor Concussionも相当にぶっ飛んだコンセプトのようで、通常のトレモロのほかに外部からのトリガー信号を受けて相対的に音量を抑えながら変化を付ける機能を備えていること。コレ、いわゆるVCAコンプレッサーの ' サイドチェイン' の機能を応用したものでして、テクノの '4つ打ち' と同期させてレベル・コントロールによるダイナミズムの '演奏法' ではDJたちに普及しております。Releaseでドラムからのトリガーの感度を調整し、同期によるエンヴェロープを操作できるなど、完全にDJ用エフェクターの発想をコンパクトに持ち込んだものですね。



Strymon Flint - Tremolo & Reverb

ここまではアナログ回路によるトレモロ/ヴィブラートをご紹介してきましたが、こちらは、そんなトレモロとスプリング・リヴァーブの組み合わせによる 'あの感じ' を現代のDSPテクノロジーで1つにまとめてしまったStrymon Flint。本機の再現性は目を見張るものがあり、リヴァーブ部は1960年代のピチャッとした 'バネくさい' ものから70年代のプレート・リヴァーブ、そして80年代の初期デジタルなホール・リヴァーブまで組み込んでおり、'アナログ・モデリング' の特徴を活かした実に多様なセッティングを引き出すことができます。ここ最近のStrymon製品に共通する仕様として、Inputはアンバランス入力のほかにY字のインサート・ケーブルTRS側を繋ぐことでステレオ入力に対応、キーボードでの使用にも対応します(もちろん楽器入力とLine入力への変換もあり)。





Dwarfcraft Devices Memento

そして番外編。再び登場のZ.Vex EffectsによるLoop Gateは、機能としてはノイズ・ゲートでありながら、本機の 'キル・スイッチ' を用いた '力ワザ' として結果的にトレモロの効果となってしまったもの。'Send / Return' を備え、そこに歪み系などをインサートして何でもこのLoop Gateでブツ切りしてやろうという魂胆なのです。本機はNormalとChopの2つのモードを有し、Normalではインサートしたエフェクトに対して通常のゲートとして働き、その '切り加減' を入力感度のSens.と音のエンヴェロープに作用するReleaseで調整します。そして本稿の目的であるトレモロ的 'ブツ切り' 感を演出するChop。この時のReleaseはゲートの開閉速度として、トレモロのSpeedツマミと同等の働きに変わります。このゲートによる 'ブツ切り' をもっとランダムに、例えば 'グリッチ/スタッター' 系エフェクターのように作用したら面白いんじゃないか?じゃ、やってみようということで試してみたのが、新たな '変態エフェクター' として頭角を現しているDwarfcraft DevicesのMemento。基本的にはミュートするための 'キル・スイッチ' を応用したもので、このカットするテンポを 'キル・パターン' としてKillスイッチにタップテンポで記憶させるだけ。後はRe-Killスイッチを踏めばその踏んだテンポの状態で 'ブツ切り' が再現されます。また、この再現中にKillスイッチを踏めばキル・パターンの速度を2倍、もしくは4倍にできます。





Pigtronix Philosopher King ①
Pigtronix Philosopher King ②

そんなゲートをさらにエンヴェロープ・ジェネレーターと組み合わせ、いわゆる 'オート・ヴォリューム' の効果を生成するエンヴェロープ・モディファイアの発展型Pigtronix Philosopher King。設計は1970年代後半に本機のルーツ的機種、Electro-Harmonix Attack Decayを手がけたハワード・デイビスで、その中身はコンプレッサーのアタックとサスティン、VCAとゲートにより動作する 'シンセサイズ' のADSR機能と同一のもの。'オート・ヴォリューム' からテープの逆回転風 'テープ・リヴァース'、LFO的パーカッシヴなトレモロの特殊効果まで、ある意味 '好き者' にはたまらない効果を備えております。ただし、あまりに特殊&繊細な使い勝手から一定の率でキレイな中古もよく出回るのですが・・。



Pigtronix Tremvelope

あ、もちろんPigtronixではトレモロ自体もちゃんとラインナップされておりまする。しかし、そこは一筋縄ではいかないPigtronixらしく、エンヴェロープ・フォロワーを内蔵してタッチセンスにより入力の感度調整でスピードを自在にコントロールできるという変わり種。効果自体はクラシックな古き良きトレモロの味を持ちながら、エンヴェロープによる繊細かつヴィブラート風コントロールからステレオ・パンまで幅広く対応。







H&A.Selmer Inc. Varitone ①
H&A.Selmer Inc. Varitone ②
Vox / King Ampliphonic Stereo Multi Voice
Hammond / Innovex Condor GSM ①
Hammond / Innovex Condor GSM ②
Hammond / Innovex Condor RSM
Hammond / Innovex Condor SSM

管楽器においては、世界初の管楽器用エフェクターであるSelmer Varitoneにもオクターバーと共にアンプに内蔵されていたのがトレモロでした。また、後続で登場したGibson / MaestroのSound System for WoodwindsやVox / kingのAmpliphonic Stereo Multi Voiceなどにもトレモロは搭載されます。この素朴な効果のためだけにこんな大仰なサウンド・システムを稼働させなければならない可搬性の悪さ・・しかし、こんなぶっとい感じのトーンは現代のデジタルでは再現できないでしょう。また、HammondがOvationと協業して1969年に発売した世界最初のギター・シンセサイザー、Innovex Condor GSMもファズやオクターバーに加えて、トレモロ、ヴィブラートを備えております。わたしは本機の管楽器版、Condor RSMを所有しているのですが、Vibrato / Tremoloとは別に 'Attack' という一風変わった効果を装備。これはトレモロの揺れを一発の 'アタック' としてスタッカートで飛び出すものでして、ギターならピッキング、管楽器ならブレス一発で 'ボン!' と力強く飛び出してくる感じはその名の如く心臓に悪い。いわゆる 'Machine Gun Tremolo' の異名で機関銃を連射するイメージからすれば、この 'Attack' は強力な大砲をぶっ放すと言ったら良いでしょうか。まあ、どこで使って良いのか分からない謎の効果なんですけど(苦笑)。

モジュレーション系エフェクターの元祖として、懐かしくも遠い過去の記憶と共にユラユラと空間を震わせるトレモロの音色・・揺れるって案外と人間の感情に近いところがあるのかもしれませんね。

2018年3月1日木曜日

エフェクター世界一周

まだ肌寒いとはいえ、冷え切った長いトンネルを抜け出してようやく暖かな春の訪れ。寒い季節からたっぷりと陽射し浴びる嬉しい陽気となりました。自分は花粉症なのに真冬に比べたらホントに過ごしやすい・・もう、寒いのはイヤだ。そんな季節の変わり目を祝福してデレゲーションの 'Oh Honey' をど〜ぞ、と思ったら、UPする数日前にリンクの規制がかかりました(悲)。まあ、昨今のCDが売れなくなった状況から、無料で好きなだけ聴き放題、見放題のYoutubeの存在に歯止めをかけたい、っていう思いは分かるんですけどね。この 'Oh Honey' から続けて聴きたいジ・アイズレー・ブラザーズの 'For The Love of You' やフランキー・ビヴァリー率いるメイズの 'Joy and Pain'、ロジャー・トラウトマンの 'Emotions' とか、大手が権利持ってるR&Bのイイ曲はことごとくリンク不可。とりあえず、どれも春の訪れを告げるに相応しい気持ちイイ曲なんでYoutubeで聴いてみて下さいませ。



が、どーしてもR&Bを一曲入れたかったのでザ・カーペンターズ 'Close To You' をトークボックスでスティーヴィ・ワンダーがカバーしたヤツを追記。もう、何でもエフェクツの効いた音色が好きなんですよね。




う〜ん、いまいち出鼻を挫かれた感じではありますが、さて、そんな世界はペダルで満ち溢れている・・いや、スイッチひとつでどこか違う世界へ 'ぶっ飛んでいく' ことを欲望している、というべきか?ある意味、サイケデリックの '副作用' はまだまだこの世のあちこちを徘徊しているということでしょうか。しかし、'Pedal Geek' というのは楽器関係の中でも変わり者というか、大体において尊敬より残念な対象として取り上げられている気がする(苦笑)。ギターは何本持っていてもそんな感じにはならないのに、なぜエフェクターを山のように並べたりすると '無駄使い' のような印象を与えるのだろうか?コレって管楽器奏者に例えれば、たくさんのマウスピースに手を出しちゃうことに似ているのかもしれない。演奏上ドツボにはまり調子を崩した、最近、何々が良いようだ・・などなど、手を出すきっかけは様々ですが、普段使っているものから '浮気' するようにいろんなメーカーのサイズを買い漁るも結局は 'タンスの肥やし' と化す結果に・・。さらに共通するのはどちらも手の出しやすい価格帯であり、マウスピースなら3万前後、エフェクターなら10万前後という安くはないけど手の出ない価格でもないというビミョーな上限があり、また、そこそこ集め出しても邪魔にならない 'コンパクトさ' が買い物依存症に拍車をかけていると思うのです・・。ま、どんなモノでも使ってみなけりゃ分からないってことだけは '真理' ですけど、ね。





WMD
WMD Geiger Counter Pro
WMD Protostar

欧米で流行している 'ユーロラック' モジュラーシンセのブームは、これまでコンパクト・エフェクターを製作していたメーカーまで続々参入している勢いです。Malekko、Dwarfcraft Devices、4MS、WMD、Masf Pedals...etc、そしてついにStrymonまで!しかし、一方ではコンパクト・エフェクターという物理的サイズ、足元という環境の中で大手から個人によるガレージ工房、ソフト・プログラミングから参入してくるベンチャー系、そして、昨日初めて半田ごて持って回路図と睨めっこしながら製作、ヤフオクやネット上の取り引きで話題となる自作マニアに至るまで、実に幅広い層に支えられている面白い '業界' でもあります。そんな勢いは日本や西欧の市場を飛び越えて、旧共産圏の新たな 'ビルダー' による市場の開拓に波及。ここでは、そんな英米のセンスとは一味違う工房の製品をご紹介しましょう。あ、そーいえば、危険な '放射能測定器' としてエフェクター界を揺るがした 'Geiger Counter' がいよいよ 'Geiger Counter Pro' として '測定度UP'、よりデッカくなって市場に放たれます!また、モジュラー的音作りにも対応した '突然変異' 的フィルターのProtostarとか、ほんと '飛び道具' 好きにはたまらないミョーな製品ばかりを作るWMDは期待大!







Meris Effects Polymoon
Boomerang Ⅲ Phrase Sampler

しかし、ペダルを 'ガジェット' 的に並べてひとつの世界を構築するやり方は、小さな子供が与えられた積み木やブロックを使って創意工夫、熱中するような '興奮' と同じ気質のもの。膨大な量のペダル類をああでもない、こうでもないと言いながら足元に並べ踏み、気に入らなければ床にしゃがんで入れ替え、買い替え・・。ループ・サンプラーを中心にパフォーマンスするNovellerさんもそんな一人。新たにMeris EffectsのディレイPolymoonを本人の定番、Boomerang Ⅲ Phrase Samplerと共に新たなスタイルを見せつけます。







Dwarfcraft Devices Grazer
Red Panda Lab.
Red Panda Tensor

さて、'旧共産圏' &非英米圏のペダルへ行く前に米国産のこちらもどーぞ。'グリッチ/スタッター' 系エフェクターのParticle、Rasterでその名を轟かせたRed Pandaですが、現在、そのシーンは群雄割拠の賑わいをもたらし劣勢を強いられて・・いるかと思いきや、この新作Tensorを投入!高品質にディレイ、ピッチ・シフターを軸とした '全部乗せ' ながらParticleの機能を整理、アップグレードしたその姿はオリジネイターの気概を見せ付けます。特にDwarfcraft Devicesの新作であるGrazerとは真っ向勝負と行きたいところ!そしてRed Pandaもギタリスト以外のユーザーである管楽器奏者へのアプローチを開始!すでにMXR、Electro-Harmonix、Earthquaker Devicesなどが管楽器奏者によるPR動画を作りましたけど、まだまだ管楽器奏者にとってこの手の 'ガジェット' と音作りは新鮮に映りますからねえ。新しい市場になることは間違いないと思いますヨ。







Mattoverse Electronics
Mattoverse Electronics Swell Delay
Beetronics
Mantic Effects Flex Pro
Mantic Effects Flex

続く米国ウィスコンシン州でハンドメイドにより製作する新たな工房Mattoverse Electronics。ファズなどもありますが、このSwell Delayを始めドローン型シンセサイザー、4ステップ・シーケンサーなど '好き者' にはたまらないラインナップでこれまた期待大。エンヴェロープのアタックから立ち上がってくる 'オート・ヴォリューム' とディレイを組み合わせたこのSwell Delayは、現代の 'エレクトロニカ' 的音楽シーンをも射程に入れて、いわゆる 'グリッチ/スタッター' な効果をもカバーする新しいディレイ像を打ち出してきましたね。そして、米国カリフォリニア州ロスアンゼルスでブラジル出身の兄弟により製作する工房Beetronics。MXR Blue Boxに代表される 'ロービット' 系オクターヴ・ファズのWhoctahellとOctahiveの2種をラインナップしながら、その独創的かつ '一点もの' のハンドメイド・デザインが美しい。どこか戦前の和風っぽいセンスでデザインするのはブラジルのCaramuru Baumgarther氏、また、こちらも独創的なプリント基板で製作するのはイタリアのMassimo Cubeddu氏それぞれのコラボレーションということで、まさにワールドワイドな製品ですね。そんな 'ロービット' 系ファズの特徴である追従し切れないことからくる 'エラー' ノイズは、そのまま 'グリッチ/スタッター' の効果として、米国コロラド州デンバーで製作する工房、Mantic Effects Flex Proへと行き着きます。







Elta Music Devices
Elta Music Devices Console

まずはロシアの新たな才能、Elta Music Devices今年一番の注目株Console。このメーカーの存在は、Lovetoneのリング・モジュレーターRing Stingerの 'デッドコピー' であるString Ringerを知ったこと。そもそも、かなりマニアックかつ '知る人ぞ知る' 的どマイナーな製品をなぜクローン化しようとしたんだろうという興味が立ち、そのHPを覗いてみれば、これまた旧ソ連製のアナログ・シンセサイザーとして '知る人ぞ知る' 存在なPolivoksのVCF部分を抜き出したDJ用エフェクターがラインナップされているという・・。いやあ、今や各メーカーが往年の名機クローンに熱心だというのにその斜め上をいくセンスに惚れましたヨ。そして、いよいよ同社ならでのアイデアとテクノロジーを具現化させたConsoleの登場。コンパクトのマルチ・エフェクツながらSDカードで自社の機能をあれこれ入れ替えて、ジョイ・スティックでグリグリ動かすデザインにまとめ上げるなんて素敵過ぎる!その10個のSDカード・カートリッジの中身は以下の通り。

⚫︎Cathedral: Reverb and Space Effects
⚫︎Magic: Pitched Delays
⚫︎Time: Classic Mod Delays
⚫︎Vibrotrem: Modulation Effects
⚫︎Filter: Filter and Wah
⚫︎Vibe: Rotary Phase Mods
⚫︎Pitch Shifter: Octave and Pitch
⚫︎Infinity: Big Ambient Effects
⚫︎String Ringer: Audio Rate Modulation
⚫︎Synthex-1: Bass Synth

やはり '空間系' 中心のメニューですけど、今後いろいろなヴァリエーションが増える予定などあるのでしょうか?何とか日本に入ってこないかなあ?筐体に描かれたデザインも 'マレーヴィチ' 風ロシア・アヴァンギャルドな感じで格好良し!



Mak Crazy Sound Technology
Mak Crazy Sound Technology Black Jack

そんな広大なロシアはソビエト連邦崩壊後、多くの '連邦共和国' がそれぞれの民族的アイデンティティをもって独立します。すんなりとその影響下から抜け出した国もあればいろいろと政治的にモメて未だにグダグダやっているところもあり・・。このMakという新たな工房は何とクリミア自治共和国からの参入で、数年前に '美しすぎる女性検事総長' としてロシアのクリミア半島南部編入に対する親露派の人物で話題となりましたよね(笑)。本機Black JackはそんなMakのフラッグシップ機に当たる 'ギターシンセ' と呼ぶべきもので、近年流行の 'Shimmer Reverb'と 'Freeze' 機能を軸にオクターヴを付加して加工していくものです。その他、リヴァーヴのSpace Reverb、ディレイであるTemporal Time Machineにピッチ・シフター/リヴァーブのOctronix、マルチ・エフェクツのGuitar Fairyなどがラインナップされておりますが、何とHPはもたずFacebookでアナウンスするのみ。



ZCat Pedals
ZCat Pedals Hold-Delay-Chorus

旧ソビエト連邦からの独立で最も早く抜け出したのが力により併合されたバルト三国。そのリトアニア、エストニアと並ぶラトビア共和国からやってきたこのZCat Pedals、日本にも西欧圏以外のペダルとしては早くから輸入されておりました。ここもMak同様 '空間系' のラインナップが充実しておりますが、コレってソフト・プログラミングなどの理工系エンジニアを多く輩出し、それらがこういった音楽ビジネスに参入しているのでしょうか?デジタルにおけるアルゴリズムやコンボリューションを反映した 'Reverb + Hold' 機能のペダルだけでここまで揃えているのは珍しく、その中からZCat Pedalsのフラッグシップ機にあたるHold-Delay-Chorus。この 'Freeze/Hold' させながらリヴァーブのアンビエンスをバックにいろいろなフレイズをシーケンスさせた多重演奏・・。何だか今のYoutuberに多くいる、ギターひとりでドローンなパフォーマンスをするスタイルの先鞭を付けた製品と言えるかも。





Gamechanger Audio
Gamechanger Audio Plus Pedal

こちらもラトビアからの新興メーカー、Gamechanger AudioのPlus Pedal。ピアノのダンパーペダルを模したコントローラーで踏んだ直前のサスティンをリアルタイム処理で 'Freeze'、ループによるロング・サスティンを実現した驚異のペダルです。サスティンは最大5つまでオーバーダブすることが可能でフェイドインの速度やディケイの細かな設定はもちろん、お手軽なループ・サンプリングとエフェクト音のみのWetへ瞬時に切り替えるフット・スイッチも付属するなど、ある意味、Electro-Harmonix Freezeをより音楽的に発展させたもののようです。最近では、超高圧信号をキセノン管でスパークさせた新しいやり方によるディストーション、Plasma Pedalを発表して大きな話題をさらうなど・・旧ロシア圏恐るべし。





Dawner Prince Electronics Boonar
Gurus Amp Echosex 2
Catalinbread Echorec

ソビエト崩壊と東欧の民主化は、バルカン半島を統合していたユーゴスラヴィア社会主義連邦共和国をも揺り動かします。国内で幾多の血が流された後、このクロアチア共和国もその '連邦' から独立しますが、そこで磁気ディスク式エコーの名機、Binson Echorecを解析、現代のテクノロジーでクローン化したのがこちらDawner Prince Electronics Boonar。上ふたつの製品が '空間系' の 'Shimmer Reverb' や 'Freeze/Hold' といった機能に着目したのに対し、本機は往年の名機を徹底的に解析、シミュレートして送り出されてきたこと。つまり、西欧圏のニーズ、マーケティングをよく研究した上でオリジナルへのリスペクトをしながら勝負してきたところが面白い。実際、製品としてもEchorecを欲しがるマニア心をくすぐるようなクオリティを保っており、単なるサウンドの模倣から一歩も二歩も踏み出しております。わたしはトランジスタ仕様のEchorec EC3を以前所有しておりましたけど、やはりEchorecを代表するのは4つのマルチヘッドが生成するリズミックなタップ・エコーですね。このタン、タタタン・・と捩れたピッチと共に跳ねる質感、たまりません。





Salvation Mods Vivider
Beigel Sound Lab Mu-Fx Octave Divider

旧共産圏の崩壊でロシアはもちろん旧ユーゴスラヴィアを始め、数多くの民族的葛藤、分裂をもたらしましたがこのチェコ共和国もその内のひとつ。ついつい '昭和世代' は 'チェコスロヴァキア' と呼んでしまいそうになりますが、今はスロヴァキア共和国とそれぞれ分離独立しております。そしてこのSalvation Modsはギターアンプの製作を得意とする工房なのですが、そんなところが1970年代オクターバーの名機、Musitronics Mu-Tron Octave Dividerをクローン化してきたというのが素晴らしい。実はこのVividerを所有、メインのエフェクターボードに入れておりまして、いわゆる '往年の名機' シミュレートとしてはかなりイイ線いっております。以前、オリジナルを所有してアナログ・オクターバーとしては一番好きな機種だっただけに、それを現代のサイズ、高品質化させる上でどれを買おうかかなり悩んでおりました。一番のライバルは '本家' Octave Dividerを設計したマイク・ビーゲルが自身のブランド、Mu-Fxから新たにリイシューしたもの。結局はSalvation Modsの方が小型化、かつDC9Vで作動するという利便性でこちらにしましたけど、本機はオクターヴの追従性の部分のみデジタルで制御することで、かなりトラッキング性は上がっているのがグッド!ただし、オリジナルにも付いているトラッキング性向上の 'Stabirize' をOnにすると逆にエラーしまくっちゃうのですが・・(謎)。願わくば原音とオクターヴ音を 'Mix' ツマミでブレンドするんじゃなく、原音は別個に確保して欲しかったかな。しかし、アナログ・オクターバーとしてはかなり優秀かつ 'ぶっとい' ですねえ。





G-Lab
G-Lab Woowee Wah WW-1
G-Lab TBWP True Bypass Wah Pad

東欧のエフェクター・ブランドとしてはいち早く市場を確立、現在では西欧圏でも確固たる地位を築いているのがポーランドのG-Labでしょうね。同国の精密機器メーカーELZAB社の楽器部門としてコーラスTCH-1やディレイSD-1、リヴァーブDR-3などの空間系からMIDIスイッチャー、パワーサプライなどの総合的かつ高品質な製品開発により、ここ日本でも代理店を新たに現在でも供給されております。そして、このG-Labの名前を一躍有名にしたのが感圧式のワウペダルであり、ギター用のWW-1とベース用のBWW-1、そしてこの感圧センサーのみを単体で製品化して他社のワウペダルを自在に搭載、改造することなく足を乗せるだけでトゥルーバイパスとセンサーによるOn/Offを実現したTBWP True Bypass Wah Padのヒットは記憶に新しいですね。







SviSound
SviSound - handmade guitar pedals and devices
SviSound Optical Phaser Techno-FA
SviSound EchoZoid
SviSound WahoZoid
Systech Harmonic Energizer

そしてバルカン半島のちょい上、旧ユーゴスラヴィアとロシアに挟まれたブルガリアから登場してきたのがSviSound。そのラインナップのほとんどがファズ、ディストーションからオーバードライブなどほぼ '歪み系' に特化したブランドという拘りよう。これまでの無骨かつ質実剛健ながらちょい野暮ったいデザインの多い旧共産圏のペダルにあって、ここSviSoundの製品は共産圏っぽい無骨さを残しながら工芸品と言ってしまいたくなるような美しさ!もちろん見てくれだけではなくそのサウンドへの評価も高まっているのですが、多くの '歪み系' なカタログの中でオプティカル回路のOptical Phaser Techno-FAやコーラス&ディレイEchoZoid、さらにゲルマニウム・トランジスタのGE Auto Wahなど個性的製品がズラッと・・いや、これは購買意欲をそそります!ちなみに日本の代理店のラインナップは '歪み系' 中心のセレクトのようで、わたしのような管楽器奏者にとって '歪み' だけってのは鬼門・・うう。とりあえず国内のラインナップを眺めてみれば、おお、GE Auto Wahとは別にWahozoidというのがあるゾ!しかし、そこは '歪み系' を得意とするSviSoundだけにゲルマニウム・トランジスタな '歪み' とのハイブリッドで、いわば 'ファズワウ・フィルター' といった趣ですね。これってフランク・ザッパが1970年代に使用したOberheimのVoltage Controlled Filter VCF-200と共に噂の超絶レアペダル、Systech Harmonic Energizerをイメージしているのでしょうか。しかし残念ながら本機も日本未発売・・う〜ん、代理店としては純粋な '歪み' 系以外売りにくいのかな?



Nalbantov Electronics

あ、ブルガリアといえばヨーグルト、じゃなくてPiezo Barrel同様の管楽器用ピックアップを製作するNalvantov Electronicsがあります。ここからピックアップのみならずBoss OC-2をベースにしたと思しき管楽器用オクターバーOC-2 eXtremeを製作。古の管楽器用オクターバーであるConn Multi-ViderやVox Ampliphonic Octavoiceに倣った奏者の腰に装着するスタイルです。









Moody Sounds
Carlin Compressor / Fuzz
Moody Sounds Carlin Compressor Clone
BJF Electronics Pine Green Compressor

では、そんな '歪み系' ということでちょっと東欧から寄り道して北欧、スウェーデンに行ってみましょうか。MXR Dyna Compの影響は世界中のコンプレッサー普及のきっかけとなるのですが、1970年代にスウェーデンのエンジニア、Nils Olof Carlinの手により生み出されたこのコンプレッサー。本機が面白いのは、コンプと銘打たれていながら 'Dist.' のツマミを備えてることでファズっぽく歪んでしまうこと。あのElectro-Harmonix Big Muffもサスティンの効いたファズのニーズがあるというところから始まったようで、エフェクター黎明期においては 'ファズ・サスティナー'、クリーンにコンプ的動作をするものを単に 'サスティナー' として使い分ける傾向があったそうです。本機は当時のスウェーデンの音楽シーンにおいて人気を博していたらしく、それを同地の工房であるMoody SoundsがCarlin本人を監修に迎えて復刻しました。しかしスウェーデンという地はこのCarlinやMoody Soundsのほか、現在、KlonのBill FinneganやWay HugeのJeorge Trippsと並び '名ビルダー化' しているBJF ElectronicsのBjorn Juhl、シンセサイザーにおいてはNordやElektronなど、世界の音楽シーンにおいてかなり影響力のある人物、製品を輩出しておりますね。Carlinはこの他にペダル・フェイザーやリング・モジュレーターを復刻しておりますが、そのリング・モジュレーターはA/B2つの入力をマルチプライヤー(乗算器)で掛け合わせて変調させるマニアックな一台、わたしも愛用しております。また、これら復刻に協力するMoody Soundsは光センサーでピッチシフトするディレイMashroom Echoとか妙な製品を送り出すなど・・ここも少々発想が斜め上だ(笑)。そんなCarlinのコンプの下はBJF Electronicsの名を知らしめた製品のひとつであるPine Green Compressor。ザ・ビートルズが当時のアビーロード・スタジオで用いていたコンプレッサー、RS-124(Altec436BのEMIモディファイ)が本機製作のきっかけだそうで、最近のナチュラルなコンプレスの潮流に倣ったトーンを持ち、これは管楽器の持つヴォリュームのカーブ、トーンの質感を均すのにも良いかも。このBJFEの音は世界に認められて、お隣フィンランドのブランド、Mad ProfessorからForest Green Compressor、そして米国のブランドBear FootからPale Green Compressorとしてライセンス生産による 'Re-Product' モデルが登場しております。まあ、コンプって動画ではヒジョーに説明しにくい製品なんですけど、ここでのDyna Comp的Carlinの圧縮感とナチュラルなBJFEのコンプ感はかなり対照的。







Dreadbox
Dreadbox Epsilon - Distortion Envelope Filter
Dreadbox Square Tides - Square Wave Micro Synth

東欧、北欧と回ってきて再びバルカン半島を飛び越え地中海、今やIMF寸前か?というくらい経済危機の叫ばれているギリシャです。ここのDreadboxの製品はMoogerfoogerやKoma Elektronikを意識したと思しきCV(電圧制御)の同期を備えるエフェクターが多く、実際、現在は 'ユーロラック' モジュラーシンセの分野へ積極的に参加しているようですね。そのコンパクト・エフェクター群は、専用の8ステップ・シーケンサーKappaとの連携を中心に作られているものの、Moogerfoogerなどに比べればCVも限定的でいまいち拡張性に乏しいのが残念。そんなユーザーの声?を聞いたのか、よりヴァージョン・アップした後継機が現地では登場しているものの、そのような中でかなりユニークなエンヴェロープ・フィルターとして登場したのがEpsilon。本機もすでにヴァージョン・アップされたEpsilon 2があるようですが、この初代機もなかなかどうしてエフェクターという枠を超えた発想を刺激してくれますヨ。VCF自体は2ポール・フィルターなのでそれほど過激ではないのですが、本機にはディストーションが内蔵されてあらゆる音源を潰してくれます。その歪み方はいわゆるギター用というより 'DAW' 的というか、動画にあるようにドラムマシーンのキックがほとんどダブステップ風のウォブル感満載で潰れちゃってます。また、Kappaとの連携は出来ない代わりにエンヴェロープ・ジェネレーターを出力して外部機器との同期をサポート。そしてGateスイッチという名の '人力' トリガーがあるのですが、これは踏むことでエンヴェロープのリリースをカットオフするのと同様の効果が得られることから、DJ的にフィルターで動きを与えていくのをスイッチひとつで出来ちゃうのが面白い。何か中途半端な機能と安くない価格で売れてないっぽいですが(汗)、多分、廃盤後に '隠れ名機' としてニッチな再評価を受けるんじゃないかと睨んでおります。そして、もちろんシンセの得意なDreadboxだけに 'ギターシンセ' のSquare Tidesもご用意。Electro-Harmonix Micro Synthesizerをさらにエグくしたような本機は、この手の効果を求めている方ならまさにオススメの狙い目なんじゃないでしょうか。



Jam Pedals
Jam Pedals - handmade analog pedals

そしてギリシャといえば個性的なハンド・ペインティングのデザインで目を引くJam Pedalsですね。すべての設計、製作をヤニス・アナスタサキス氏が担当し、ここ日本ではクロサワ楽器が代理店となって供給しております。歪み系からコーラス、アナログ・ディレイやワウペダルなど総合的に手掛けておりますが、ここでは多目的なトレモロ・ペダルであるThe Big Chillをご紹介。2つのスピード切り替えとSquare、Sine、Triangleからなる3種の波形、そしてスライサー的切り刻むようなChop Effectを搭載し、さらにエクスプレッション・ペダルを繋いでリアルタイム・コントロールまで出来ちゃう至れり尽くせりな仕様です。





Benidub
Benidub Digital Echo
Benidub Spring Amp

このまま地中海を西に向かって突き進んで行けば暖かなラテン気質の国、情熱のスペインへ辿り着きます。その地でダブに特化した機器を専門に製作しているのがこのBenidub。ギタリスト以外の分野でエフェクターというものを創造の道具として積極的に活用しているのがダブに携わる人たち、いわゆる 'ダブ・マスター' の仕事ぶりです。貧しくも限定的な環境の中で結果的に 'ローファイ' となった音作りの中から、スプリング・リヴァーブ、ディスク式エコー、テープ式エコー、フェイズ・シフター、フィルターといった機器を '想定外' のやり方でミキサーと共に発見するプロセスを提示しました。Benidubはそんなダブの方法論を古の名機を研究しながら現代の環境でより便利、かつ多様に扱いやすい機器として製作。ともかく、すぐにミキサーの 'インサート' や 'センド・リターン' へ挿入すればあらゆる音源に対して強烈な効果を生成することを約束します。











Copilot Fx Polypus
Copilot Fx - Products
Sonomatic
Sonomatic Cheddar
Dedalo Effect Pedals
Dedalo Effect Pedals Pixel
Pedals MG - MG Music ①
Pedals MG - MG Music ②
Pedals MG Stax Rocks Wah Wah

そのスペインから大西洋を渡り見えてきたのが南米大陸。そんな中南米からはドミニカ共和国のCopilot Fx、アルゼンチンのSonomaticとDedalo Effect Pedals、ブラジルのPedals MGなどのガレージ工房が控えており、ムムム・・まさにエフェクターは世界を巡る勢いだ。Copilot Fxは早くからLep / ナインボルトを代理店に日本でも紹介されておりましたが、ここ最近はすっかりご無沙汰・・と思いきや、相変わらず '飛び道具' ばかり作りまくるミョーなブランドです。発振系ファズ、リング・モジュレーター、エンヴェロープ・フィルター、Exotic Effects Robo Talkに影響されたランダム・アルペジエイターなどの複合系ペダルを小まめなマイナーチェンジで '新作' に仕立ててリリースするのがここの流儀ですが、決してモジュラーシンセには行かず、エクスプレション・コントロールのCVで複数連動させて 'ガジェット' 的にこだわる製品作りはもはや執念のように感じますヨ。このPolypus SupuremeはZ.Vex Effects 'Super Seek' シリーズを簡易的にまとめたペダルのようで、やはり中南米の陽射しはクラクラと熱帯のサイケデリアを呼び寄せるのかもしれません。一転してアルゼンチンのSonomaticとDedaloは真っ当なシンプル&定番に沿う製品作りを心がけている模様。'アナログ・ライク' なデジタル・ディレイのCheddarなど、派手さはないけど飽きの来ない高品質なヤツってのは一音聴いて分かります。そしてDedalo Effect Pedalsも同様の飽きの来ないラインナップ・・と思いきや、何とPixelという 'ギターシンセ' を作っているのですね。なになに・・アナログはドライスルーの設計で、短形波、ノコギリ波、三角波、オンダM、デジタル5種類の波形で1オクターヴ上、4度下(7音半)、1オクターヴ下を生成し、エイリアシング・コントローラーによる倍音を含んだシンセ・トーンの音作りが出来るとのこと。おお、結構本格的じゃないですか!そして '音楽大陸' の最南端、ブラジルからはMG Musicのペダル部門と言うべきPedals MG。以前に新潟の楽器店あぽろんが少量取り扱っていたようで、Uni-Vibeを模したMono Vibeやまさに '飛び道具' 的ディレイと呼ぶにぴったりなSpace Cityなどがありますが、ここではワウペダル往年の名機、Vox & Crybabyが持つ 'ワウ・ヴォイス' に貢献するFasel & Haloインダクター切り替え、ファズも内蔵したMG Stax Rocksをご紹介。ファズは個別にOn / Off可能でRegular、Mid / Bass Cut、Bass Cutの3モード切り替え、ワウのキャラクターを変える 'Voice' コントロールはHi Treble、Led Boots、Papa Was A Roling Stone、Shaft、Bootsy、Filterの '分かる人には分かる' (笑)6種切り替えモードを搭載、60'sロックのヴィンテージ・トーンにこだわった効果が得られます。ちなみにケース裏にはイカした農夫?のオッサンの絵が描いてある!そんなブラジルはサンバやボサノヴァのイメージが強いのだけど、いやいや・・1960年代後半のロック革命と 'トロピカリア' の熱気は、こんなブラジリアン・サイケの世界を描き出してしまいました。





Red Witch Pedals
Red Witch Synthotron

さあ、グルッと回り太平洋に突き抜けて到達すると見えてくるのが山と海の自然の宝庫、ニュージーランド。はて?こんな南半球の地にエフェクターと関係するブランドがあったっけ?と思い出せば、1970年代に登場し、90年代から再生産されたオーバードライブの名機、Crowther Audio Hotcakeが有名ですね。そして新興メーカーとして数年前に島村楽器が代理店となって扱っていたRed Witch。そのラインナップは '歪み系' からモジュレーション、ギターシンセまで揃えるなど、ちょっとPigtronixっぽいセンスを持った会社のようです。残念ながら日本でそれほど売れなかったのか市場では見かけなくなりましたけど、このRed Witchの手掛けたSynthotronはカラフルなデザインと相まって興味を惹かれます。いわゆる2つのサブ・ハーモニック・シンセで生成するオクターヴとLFO、そしてXotic Effects  Robo Talkで有名なランダム・アルペジエイターによるピコパコとした '擬似ギターシンセ' 風の効果は、どちらかと言うとロービット系のオモチャっぽく可愛い感じのサウンドですね。こういう無理して 'シンセっぽく' 振舞っているヤツは大好物!





Seppuku Fx

そして南半球最大の大陸、オーストラリア。わたしも愛用のPiezo Barrelピックアップもこの地の製品なんですが、そんな所から登場したガレージ臭たっぷりの一品、Seppuku Fx。う〜ん、まさに 'Garbage!'。ホント、そのルックスから音に至るまで 'ゴミ' としか言いようのないジャンクぶりですが、日本からオーストラリアに移住したノイズ・メーカーのLastgasp Art Laboratoriesなど含めて、こういう退廃的かつ 'マッドマックス' なものを引き寄せる土壌が息づいているのでしょうか!?このSeppuku Fxを扱う日本の代理店も思い付いたように少量仕入れたりするのだけど、あっという間に完売・・根強いマニアはいるようです(笑)。同じくジャンク仲間というべき素敵にペダルを紹介するYoutuber、'UglyCasanova' さんも狂ったように集めますねえ・・。









Ezhi & Aka
Effekt-1 - Fuzz / Vibrato / Wah ①
Effekt-1 - Fuzz / Vibrato / Wah ②
Vermona Engineering Phaser 80
Vermona Engineering Retroverb Lancet ①
Vermona Engineering Retroverb Lancet ②

これまでの固く冷たく閉ざされた '鉄のカーテン' の時代に比べれば、今やインターネットがもたらす市場の論理に従って新たな音楽ビジネスの刺激が始まったばかり。ふたりのビルダーによるロシアのガレージ工房、Ezhi & Akaは、そんなエレクトロニカ以降の 'ガジェット' 的欲求のシーンを横目で見ながら少量製作でニッチなペダルばかりを世に送り出しております。そう、こういうものを欲しがる人は世界のどこかにいるのです。そしてVermonaといえば、今やシンセサイザーからテクノ系機器の製作メーカーとしてヨーロッパで確固たる地位を築いておりますが、元々はドイツ民主共和国こと '東ドイツ' で音響機器を製作していた国営企業。その旧共産圏時代に製作したこのいかにも古めかしいフェイザーは、その地味なルックス&少ないパラメータでエグさよりシンプルなヴィブラート風のかかり具合ながら、歪ませてFeedback強めにすると一応軽めな 'ジェット感' も醸し出す気持ち良さ!しかし旧共産圏時代の機器はソビエト製エフェクターもそうですが、入出力端子が通常のフォンではなくMIDIケーブルで使われる5Pin端子の仕様というのが不思議だ。現在、Vermonaが得意とするエフェクターは 'スプリング・リヴァーブ+VCF' とLFOの組み合わせで、このRetroverb Lancetはシンセからギターなどあらゆる音源に対して変調し、もちろんスイッチ1つでスプリングを叩くのと同じ 'バシャ〜ン' という雷鳴音も鳴らせる多用途な一台。







Rodec / Sherman Restyler
Rodec / Sherman Restyler Review
Lehle Little Lehle Ⅱ - 1 Loop Switcher
Dr. Lake KP-Adapter

さて、メインとなる自身のエフェクターボードにDJ用エフェクター、Rodec / ShermanのRestylerを新たに導入しました。いわゆるフィルター・エフェクトでして、その中身はぶっ飛んだアナログ・フィルターで時代の寵児となったShermanが、ハードの部分はDJ用機器で確固たる地位を築いたRodecがそれぞれ担当という素晴らしいコラボレーション。ちなみにRodecとShermanはどちらもベルギーのメーカーですね。Restylerの定価はとんでもなく手の出ないものですが(汗)、運良く安価な中古を発見!そんな本機をドイツの質実剛健なループ・セレクター、Lehle Little Lehle Ⅱに入れてみたものの、これは失敗。一応本機は、シンセからギターまで幅広い入力に対応とのことですがいまいちレベルが合わず歪んでしまうという結果に・・。じゃ、RCAのライン入出力で試すべく新潟の楽器店あぽろんプロデュースの特殊なループ・セレクター、Dr. Lake KP-Adapterに繋いで再度チャレンジ。やはり、ラインレベルの機器はラインで使ってこそ本来の効果を発揮することを確認しました。まあ、これで何をやりたいのかといえば、ループ・サンプラーで生成したフレイズをグニョグニョとリアルタイム・ダブすること!ユニークなのは 'Transient' の機能でフレイズ自体のアタック、リリースを弄ってさらに変調出来ます。面白いと同時に正直、ここまでくるとラッパである必要があるのか?という気はしますけど・・(苦笑)。










Ludwig Phase Ⅱ Synthesizer
geofex - Homepage of GEO
Dead End Fx
Pigtronix Envelope Phaser EP-2

あ、そうそう、もうひとつ。1970年代初期の 'ギターシンセ' ともいうべきHammond / InnovexのCondor GSMやEMS Synthi Hi-Fliと並ぶミステリアスな一台、Ludwig Phase Ⅱ Synthesizerの 'クローン' を手に入れたゾ!ドラム・メーカーがなぜこんなのを当時発売したのかも謎なら、現在まで '復刻' の再評価もされず謎のまま捨て置かれているという稀有な存在。ここ日本では、作曲家の故・富田勲氏が 'ラデシン’ の名で 'Moogシンセ' 導入前の仕事にかなり重宝していたことが知られております(最近、楽器フェスの富田ミュージアムで展示されておりましたね)。この 'クローン' の元となっているのは、エフェクターの自作をするR.G. Keenという方が自身のサイト 'geofex' で公開された回路図にあり、これをベースに個人、ガレージ工房などが本機の 'クローン化' に挑みました。Dead End FxというところではそのR.G. Keenに感謝を述べながらプリント基板のみ売っておりますね。動画のものは数年前に販売していたKep Fx(現在は閉店)のものですが、わたしが手に入れたどっかの米国人製作による 'クローン' とそのレイアウトはほとんど同じ。実際、個人製作とは思えないほど製品として良く出来ているのですが、本機がフィルターとフェイザーの 'ハイブリッド' な効果からも想像できる通り、ラッパで使ってみるとこのPigtronix Envelope Phaser EP-2とほとんど同じような効果となるんです・・。もしかしてEP-2は 'ラデシン' の 'クローン' だったのかな?ちなみに、オリジナル機はeBayで状態により30万〜40万ほどで取り引きされている超高額ペダルのひとつですね。





Electro-Harmonix 95000 Performance Loop Laboratory

さらにもう一丁。わたくし 'エレハモ' の復刻版16 Second Digital Delayを愛用しているのですが、そんな同社の 'ループ・サンプラー' もいよいよここまで到達・・'元祖' の威厳とはこういうことを言うのでしょうか。ほとんどリアルタイム操作のMTRというか、それでもあえてペダルという形態に拘っているというのが 'エレハモ' らしい。コレ、間違いなく 'ひとりダブ野郎' になれますよね?というか、そういうYoutuberがドッと増えますよね?(笑)最長375分、最大100個のループをmicroSDカードと共に扱うことが可能で、ステレオ・トラック1つ、モノの6トラックと1つのミックスダウントラック搭載。もちろんクォンタイズのOn/Off、タップテンポによるBPM入力、2オクターヴの範囲でのピッチ調整、オーバーダブ、パンチイン、アウト録音・・ふぅ、とりあえず 'ループ・サンプラー' の決定版であることは間違いなさそうです。