2024年6月1日土曜日

コンプが先か?フェイズが先か?

ある時期、ある時代に流行したペダルの組み合わせから提案される '革命' というのがあります。MXRはそのカラフルな筐体と手のひらサイズのスタイリッシュなデザインにより、それまで高価で大仰な '装置' と呼ぶに相応しい1970年代のエフェクター市場に大きな衝撃を起こしました。そのMXRを代表するペダルが真っ赤なコンプレッサーDyna CompとオレンジのフェイザーPhase 90の2つであり、その後の各社カタログの先鞭を付けた '70年代鉄板の音作り'。つまり、それまで '縁の下の力持ち' の如くレコーディング・スタジオのテクニックのひとつであったものを、当時の '新兵器' であるフェイザーと共に奏者へ投げ付けてきた技術者からの '挑戦状' とも言えるのです。 






さて、この 'コンプ+フェイズ' の提案としてはそのMXR以前、Maestroの手によりThe Sustainer SS-1とPhase Shifter PS-1の組み合わせがあり、これをコピーしたと思しき9V電池2つの18V駆動による国産Roland AS-1 Sustainer、Electro-HarmonixのBlack Fingerなどが市場に開陳されておりました。後述するコンプ使いの名手、鈴木茂氏の動画内でもいわゆる 'ペダル・コンプレッサー' 回路の出発点としてそのMaestro The Sustainerをベースに各社開発しているとしながら、当初はその入力インピーダンスがロー・インピーダンスだったことからよりギター向けの改良が施されていったとのこと(SS-1後端のInput Lo/Hi切り替えスイッチはベース、ギターの帯域別と思われます)。ちなみに、あくまでピークを抑えてサスティンを伸ばすだけが目的だった 'サスティナー' が歪みのヴァリエーションである 'ファズ・サスティナー' と両義で用意されていたのに対し、MXRのDyna Compは明確に 'コンプレッサー' という圧縮に焦点を絞った '質感生成' を目的としたものであったところに特徴があります。それまでの先入観としてあった踏めば明確に音が変わってこそ 'エフェクツ' であるという価値観は、このサスティナー/コンプレッサーと呼ばれる製品が市場に投入されることで奏者自身のタッチ、レスポンスといった奏法とセットで音作りする意識へと変わるエポックメイキングの出来事だと言えますね。もはや、わざわざ筐体に 'Distortion - Free' などと注意書きをする黎明期は終わったことを告げたのがMXRの赤い小箱、Dyna Compの功績なのです。















ちなみにファズとワウの熱狂で狂乱の 'サマー・オブ・ラヴ' の時代を駆け抜けたエフェクター黎明期。その転換点ともいうべき 'フェイザーの時代' 到来を告げる1971年のMaestro Phase Shifterはエポック・メイキングな出来事でした。後に 'オーバーハイム・シンセサイザー' で一躍時の人となる設計者トム・オーバーハイムの手がけたこのペダルと呼ぶにはあまりに大きな '装置' は、ほぼ同時期にドラム・メーカーのLudwigによるPhase Ⅱ Synthesizerやスタジオ用レコーディング機器の名門、Eventide ClockworksからInstant Phaserが登場してそのカテゴリーが定着します。また、そこから遡ること1967年!にスタジオ用レコーディング機器として最古のフェイザーとされるCountrymanのType 967/968 Phase Shifterが確認されております。他には世界初の 'ギターシンセ' の触れ込みでいち早く市場に開陳されたHammondがInnovexのブランドで手がけるCondorのシリーズから、ステレオ入出力を持つCondor SSM(Sound System Modular)にスプリング・リヴァーブやヴィブラートと共に早くも青い 'Phaser' スイッチが1969年の時点で搭載。そして、我が国日本からは天才エンジニア、三枝文夫氏の手がけるPsychedelic MachineとVibra Chorusが各々Honeyのブランドで1968年のカタログに登場し、ちょうど時代がレスリー・スピーカーからよりサイケデリックな 'フェイズ' の変調を追体験する先駆としてジミ・ヘンドリクスと共に '伝説' となりました。そもそも三枝氏はこの先駆的な変調効果をレスリー・スピーカーではなく、当時ソビエトから短波などあらゆる周波数で飛ばされて来たモスクワ放送の電離層でもたらされる 'フェーディング' 現象(フェイズじゃない!)から着想します。まだ、日本と欧米には距離が開いていた時代。直接的なLSD体験もなければザ・ビートルズが用いたADT (Artificial Double Tracking)の存在も知られていなかったのです。つまり、世界の誰かが同時多発的に似たようなアプローチで探求していた後、いくつかのメーカーから電子的にシミュレートした機器、エフェクターが発売される流れとなっていたのがこの黎明期の風景でした。ちなみにその 'フェーディング' 現象については、電圧により 'Vari Speed' の変調から効果を生み出すADTの話と交えてザ・ビートルズのプロデューサーであるジョージ・マーティンもこう述べております。

"アーティフィシャル・ダブル・トラッキング(ADT)は音像をわずかに遅らせたり速めたりして、2つの音が鳴っているような効果を得るものだ。写真で考えるといい。ネガが2枚あって、片方のネガをもう片方のネガにぴったり重ねれば1枚の写真でしかない。そのようにある1つのサウンド・イメージをもう1つのイメージにぴったり重ねれば、1つのイメージしか出てこない。だがそれをわずか数msecだけズラす、8〜9msecくらいズラすことによって、電話で話してるような特徴ある音質になる。それ以下だと使っている電波によってはフェーディング効果が得られる。昔、オーストラリアから届いた電波のような...一種の "点いたり消えたり" するような音だ。さらにこのイメージをズラしていき27msecくらいまで離すと、われわれがアーティフィシャル・ダブル・トラッキングと呼ぶ効果になる...完全に分かれた2つの声が生まれるんだ。"

また、いわゆる 'モジュレーション' 系エフェクター登場前夜の試みのひとつとして、まだこの手の位相を操作して効果を生成するにはレスリー社のロータリー・スピーカーに通す、2台のオープンリール・デッキを人力で操作して、その位相差を利用する 'テープ・フランジング' などに頼らなければなりませんでした。日本を代表する先駆的な作曲家、富田勲氏はこのような特殊効果に並々ならぬ関心を持っており、いわゆる 'Moogシンセサイザー' 導入前の仕事でもいろいろ試しては劇伴、CM曲などで実験的な意欲を垣間見せていたのです。1969年制作のNHKによるSF人形劇 '空中都市008' では、まだ電子的な 'モジュレーション' 機器を入手できないことから当時、飛行場で体感していた 'ジェット音' の再現をヒントに出発します。

"その時、ジェット音的な音が欲しくてね。そのころ国際空港は羽田にあったんだけど、ジェット機が飛び立つ時に 'シュワーン' っていうジェット機そのものとは別の音が聞こえてきたんです。それは多分、直接ジェット機から聞こえる音ともうひとつ滑走路に反射してくる音の、ふたつが関係して出る音だと思った。飛行機が離陸すれば、滑走路との距離が広がっていくから音が変化する。あれを同じ音を録音した2台のテープ・レコーダーで人工的にやれば同じ効果が出せると思った。家でやってみたらうまく 'シュワーン' って音になってね。NHKのミキサーも最初は信じなくてね。そんなバカなって言うの。だけどやってみたらこれは凄い効果だなって驚いてた。これはNHKの電子音楽スタジオからは出てこなかったみたい。やったーって思ったね(笑)。('空中都市008' では)同じ演奏の入ったテープ・レコーダー2台を同時に回して、2つがピッタリ合ったところで 'シュワーッ' って変な感じになる効果を使ったんです。原始的な方法なんだけど、リールをハンカチで押さえるんです。そしたら抵抗がかかって回転が遅くなるでしょ。'シュワーッ' ってのが一回あって、今度は反対のやつをハンカチで押さえると、また 'シュワーッ' ってのが一回なる。それを僕自身が交互にやったんです。キレイに効果が出てるでしょ。"






わたしの所有するDyna Compはヴィンテージではなく、MXRが 'Custom Shop' の限定品として2008年に発売した'76 Vintage Dyna Comp CSP-028となります。中古で購入した時点でどっかの工房がモディファイしたと思しきLEDとDC端子が増設されておりましたが、こういった往年の 'ヴィンテージトーン' が現代のシーンに復刻される意味を考えましたね。特に現代のエフェクターにおいて '原音重視' やナチュラル・コンプレッションなどが持て囃される昨今、いかにもダイナミズムをギュッと均すコンプは、時に演奏の細かなニュアンスを潰す '悪役' として敬遠されてしまうのも事実...。そのDyna Compと並び1970年代を代表する 'ペダルコンプ' として殿堂入り、現在に至るまで定番として新たなユーザーを獲得しているのがRossの 'グレーボックス' とも言うべきCompressor。創業者Bud Rossの意志を継いだ孫らにより2019年に 'Ross Audibles' として復活させたものが 'Gray' Compressorでその後、JHS Pedalsに継承されて現在の市場へと供給されております。ちなみにそのRossとDyna Compは回路的にはほぼ '従兄弟' のような関係ということで(笑)、ここでは日本を代表するギタリスト鈴木茂氏と佐橋佳幸氏による 'コンプ動画' をどーぞ(やっぱヴィンテージのRoss良い音だなあ)。そんな1970年代には当たり前であったコンプレッサーでしか出来ない圧縮を演出の '滲み' として捉えるとき、そのDyna Compが現在の市場でも変わらず製造されている意味とは何なのであろうか?。昨今はスタジオの定番アウトボードであるUrei 1176やTeletronix LA-2Aを設計ベースとしたペダル類のナチュラルなコンプレッションが好まれる中、そのヒントとして現在でもDyna Compの愛用者であるギタリストの土屋昌巳氏はこう述べております。

"ダイナコンプは大好きなんでいくつも持ってます。筆記体ロゴ、ブロック体ロゴ、インジケーター付きを持ってます。壊れてしまったものもあるし、5台以上は買ったんじゃないかな。やっぱり全然違いますしね。個人的にはインジケーターなしのブロック体という中期のモデルが好きですね。ダイナコンプを使うことで、ギターのボリュームのカーブがきれいになるんですよ。フル・ボリュームの時と、7〜8ぐらいにした時の差がすごくいい感じになる。ライブでも、レコーディングでも、ダイナコンプは必ずかけっぱなしにしています。コンプレッション効果よりも、ギターのボリュームのカーブをきれいにするために使うんですけどね。(中略)けっこう雑に設定してあるというか、変にハイファイに作っていない分、ツマミをほんの1ミリ調整するぐらいで音が全然変わってくるところとか僕は好きですね。特にダイナコンプは、ちょっとツマミを動かすだけでアタックがかなり変わってくる。本当、ダイナコンプは、完全に僕のスタイルに欠かせないものになっていますよね。あれがないと自分のギターの音が出せないと思う。"

一方、いわゆるフェイザー普及の時代を牽引したMXR Phase 90。こちらはそれまでのブームを生んだ '装置' のようなデカさのMaestro PS-1から一転、機能はそのままに手のひらサイズのカラフルな筐体で 'エフェクターペダル' のコンパクト化を推進するきっかけとなりました。そもそもはMXR創業者であるテリー・シェアウッドとキース・バールのふたりが経営していた修理会社に持ち込まれたMaestro PS-1を見て一念発起、MXR起業へのきっかけとなったことは有名な話。これは、ロジャー・メイヤーがジミ・ヘンドリクスの為にカスタムで製作していたOctavioを修理する機会のあったTycobraheがデッドコピー、新たにOctaviaとして製品化した(パクった)というエピソードにも通じます。MXRは4ステージのPhase 90、その廉価版の2ステージなPhase 45、フォトカプラー搭載の6ステージによるデラックス版Phase 100の3種を用意しました。Pedal Shop Cult主宰の細川雄一郎氏は、そのMXR起業初期に夜のライヴハウスなどで '手売り' されていた頃の超初期型のPhase 90を所有されております。小さなMXR表記のスクリプトロゴ、回路の定数設定に起因される電源投入後の '暖気' 安定までのタイムラグ、本機唯一の機能を司る 'Speed' ツマミが反時計回りの効き方を示すなど、初期型ならではのプロトタイプ的仕様を提示しており実に興味深いですね。ちなみにわたしの所有品は1974年のPhase 90をMXR Custom Shopで復刻したCSP-026で、現行品のM-101に比べるとよりマイルドな効き方です。












1970年代初めにスウェーデン初のビルダー、ニルス・オロフ・カーリンの手がけたブティックペダルは各々100台前後製作されたPhase PedalとCompressor。これだけでも超レアものですけど当時、オーダーによりわずか3台しか製作されなかったRing Modulatorなど珍しいラインナップで辺境なスウェーデンのロック・シーンを支えました。このCarlin Compressorの特徴はコンプと銘打たれていながら 'Dist.' のツマミを備えてファズ的な 'サチュレーション' を付加するところに特徴があり、そのユニークな発想からCarlinは今でいうBJFEに象徴されるスウェーデン産 'ブティック・ペダル' のルーツ的存在として同地で称えられております(カーリン本人は天体望遠鏡のバロードレーザーという光軸調整の手法を考案したことで、本業の天文学ではもの凄い人らしい)。そんな1960年代後半から70年代初めにかけてキャリアをスタートさせたCarlinのペダルは、電球を用いた独自設計による8ステージのフェイザーPhase Pedalのほか、持ち込まれた既成の製品(多分MXRのDyna Comp)をベースにしたCompressor、そして、わずか3台のみのオーダー品で大半の同製品が2つの入力の和と差をマルチプライヤー(乗算器)という回路で非整数倍音生成の掛け合わせにキャリア内蔵が一般的のリング・モジュレーターにあって、Carlinのものはリング変調の原点に則りA、Bふたつの入出力を掛け合わせて音作りをする原初的な仕様で製作されました。さすがに当時製作されたヴィンテージの3台を見つけることは無理ですが、復刻に際して当時のパーツでカーリン本人の手により2013年に 'リビルド' されたものが確認できます(Moody Soundsは1,850クローネでこれを販売済)。また、製品化はされませんでしたが、CMOSフリップフロップ回路によるCD4013チップを用いたオクターバーの試作もしていたとのこと。上の回路図は1970年代にカーリン本人により手書きされたもので、後の復刻時に 'Carlin Octav' の名でラインナップする予定だったそうですが残念ながら実現しませんでしたね...。これら3種のCarlinペダル類は2016年に同地の工房Moody Soundsから製作者本人の監修のもと復刻、現代風の仕様にブラッシュアップされて現在の市場へ供給されております。左右逆のIn/Out入出力、LED、DC供給などが主な変更箇所であり、Phase Pedalは当時の電球とCDSが使用不可となったことから白色LEDをベースに再設計、新たな筐体へ組み込んだCarlin Phaserとして再デザインされました。Ring Modulatorも当初はオリジナル通りのレイアウトで復刻されましたが、こちらもすぐにA、B各々でレベル調整出来る仕様へと変更されて使い勝手が向上します。さて、そのCarlin Compressorをカーリン本人により当時の設計、製品化のエピソードについてこう述べております(かなり専門的なお話です...汗)。

"もう随分と昔のことなんだけど楽器店ディーラーがわたしにコンプレッサーペダル(ブランドは言うまでもないでしょう)を見せてくれて、もっと良いものが作れないか?と尋ねてきたんだ。その回路を見てやってみようと思い、試行錯誤の末に思い付いたのがCarlin Compressorです。自作してみたい人たちの為にわたしが考案した方法を説明します。コンプレッサーはアタックとディケイを補正する為にゲインを調整する必要がある。こうすることでトーンの 'ホールド' もしくは 'サスティン' が他の方法よりもずっと長くなる。これを除けば音のキャラクターが変わることはありません。これはまた歪みが少ないことを意味します(実際に測定された量の歪みを加えたい場合は除く!)。トーンの立ち上がりが即座に反応しないとギターのキャラクターが完全に失われてしまうのです。もうひとつ、ギターが静かな時はゲインが高いので固有のノイズはできるだけ低く抑える必要があります。また消費電流が少なくなければならない。わたしが見たユニットにはこれらの特徴がほとんど無かったけど、わたしはJFETを電圧制御抵抗器として使うという基本的なアイデアを設計に取り入れました。

最初のBC548b(または低ノイズのNPNトランジスタ - 適切なタイプはたくさんある。一番左の2つのトランジスタは低ノイズであることを重視して選びました!)。エミッター・フォロワー・ステージとしてハイ・インピーダンスのギター・ピックアップに負荷をかける為ではありません。4.7k+2.2Fは入力のフィルターとして機能します。JFETの2N5457と47kの抵抗は電圧制御のシグナル・アッテネータとして機能します。JFETは信号がない状態では抵抗値が高くなるように設定されていますが、バイアスが上がると抵抗値が下がり信号が減衰します。この信号は2段アンプ(次の2つのBC548b)に送られ、出力ボリューム・コントロールに供給されます。サスティン・ポットはこのアンプのゲインを約500〜17までコントロールするのです。この出力は位相インバータBC307(PNPタイプなら何でもよい)に供給され、アクティヴ整流器(BC548bの左のペア)に送られます。このペアはアタックが来るとすぐに4.7uFのコンデンサーを充電するように出来ています(小さな信号でも整流を開始する為にトランジスタが 'オン' にバイアスされていることに気付くでしょう!)。この電圧はJFETのゲートに供給される制御電圧でトータル・ゲインを下げます - JFETの特性上、圧縮は約1:3になります。しかし、JFETはかなりノンリニアなのでかなりの第2高調波歪みが発生します。これをキャンセルする為に信号電圧の半分をJFETのゲートに加えます(サスティン・ポット、1.5kと1.1Mの抵抗の接合部では電圧は入力電圧の1.97/0.47=4.19倍となり、1.1Mと150kの抵抗 -後者はFuzzポットに接続されている- で1250/150=1/8.33倍で分圧されます)。これで僅かな第3高調波歪みが残るだけです。しかし、もっと歪ませたい場合は2つ目のペアのBC548も整流しますがコンデンサーは付けません。ギターのコンプレッション・エンヴェロープのままです。Fuzzポットを回すことで電圧をミックスすることが出来て、他のユニットとは異なり好みの歪みを得ることが可能です。22kトリマーはJFETのカットオフ付近のバイアス電圧を設定します(わたしの記憶が正しければ約1.5〜1.8V)。入力がない状態でサスティン・ポットを最大に設定し、出力ノイズを聞いてちょうど減少し始めるところにトリマーを設定します。2つ目のBC548bのトランジスタのベース・エミッタ電圧を基準電圧として設定されており、バッテリー電圧の何分の1というわけではありません。

もうひとつの特徴: JFETを横切る2.2nFのコンデンサーはローパスフィルターを形成し、無信号時に1500Hz以上をカットする。しかし、信号が強くJFETを導通するとカットオフ周波数は非常に高くなります。従ってトーンが強い時はオーディオ・スペクトルをすべて通過させるが、トーンが減衰するにつれて(いずれにせよ高周波数は消滅する)高周波ノイズは大幅に減衰します。オリジナルの回路基板をスキャンしてみました(確か300ピクセル/インチ - 取り付け穴の中心間64ミリ)。回路基板をそのままコピーする必要はありません。もしわたしが今プロトタイプを作るとしたらバーフ基板を使うでしょう...。"

2007年1月 ニルス・オロフ・カーリン






Spectra 1964 Model V610 Complimiter
Spectra Sonics Model 610 Complimiter Custom
Spectra Sonics Model 610 Complimiter 'Sequential Stereo Pair'

そんなCarlin Compressorに見る '歪むコンプ' の系譜は、いわゆる 'ファズ+サスティン' とは別にスタジオで使用するアウトボード機器で珍重された '飛び道具コンプ'、Spectra SonicsのModel 610 Complimiter がございます。1969年に発売以降、なんと現在まで同スペックのまま一貫したヴィンテージの姿で生産される本機は、-40dBm固定のスレッショルドでインプットによりかかり方を調整、その入力レベルによりコンプからリミッターへと対応してアタック、リリース・タイムがそれぞれ変化します(本機はそのアタックタイムの早い動作としても有名)。クリーントーンはもちろんですが、本機最大の特徴はアウトプットを回し切ることで 'サチュレーション' を超えた倍音としての '歪み' を獲得出来ること。上のドラムの動画にも顕著ですけど一時期、ブレイクビーツなどでパンパンに潰しまくったような '質感' で重宝されたことがありました。オリジナル通りの仕様で復刻となったModel C610が終了し、現行品はModel V610としてリファインしながらその個性は変わらず市場に供給されておりまする。こんな個性的に潰すコンプの味はAPIやNeveのモジュール、Urei 1176やTeletronix LA-2Aなどの流れに続き、ぜひともSpectra 1964からこのユニークなラック・ユニットの 'ペダル化' 実現で新たなブームを期待したいですね。







そんなCarlin復刻を手がけたMoody Soundsは現在、BJFEのBjorn Juhlがデザインしたペダルのキット販売も加えてスウェーデンの 'ブティック・エフェクター市場' における中心地の役割も果たしております。そのナチュラルな効果で唯一無二のスウェーデン産BJF ElectronicsのPale Green Compressorは、Bjorn Juhlの名を知らしめた代表的製品のひとつです。ザ・ビートルズが当時のアビーロード・スタジオで用いたコンプレッサー、RS-124(Altec436BのEMIモディファイ)が本機製作のきっかけとのこと。最近のナチュラルなコンプレスの潮流に倣ったトーンから真ん中のツマミ 'Body' を回すことで空間的な幅の調整がイジれます。このBJFEの音は世界に認められてお隣フィンランドのブランド、Mad ProfessorからForest Green Compressor、さらに米国のブランドのBearfoot FxからPale Green Compressorとしてそれぞれライセンス生産による 'Re-Product' モデルが登場。動画はそのPale Greenの後継機に当たるPine Green CompressorとBear Footのものですが、本家BJFEとしては2002年の登場以降、淡いグリーンのニトロセルロースラッカーから深いグリーンへの変更と共にPine Green Compressorへ変わります。ここでフォトセルと 'Body' を司る単軸二連ポットが変更されて3ノブ、4ノブ、5ノブの仕様と共に現在に至ります。わたしのチョイスは不定期にPedal Shop Cultがオーダーする初期Pale Green Compressorの '2020復刻ヴァージョン'。








ちなみにその 'コンプ+フェイズ' の音作りとしては謎多き一台というか、1970年代の数多あるエフェクター・ブランドの中で未だ '発掘調査' の進んでいないGretschのFreq-Fazeをご紹介しましょう。一般的にコンプレッサーと呼ばれるエフェクターは単体のほか、冒頭の 'ファズ・サスティナー' を筆頭に歪み系ペダルとの '2 in 1' で製品化される場合が多いですね。その中でもこのFreq-Fazeは唯一無二の 'コンプ+フェイズ' をひとつの製品として組み込んでしまった "なぜそうなる?" が具現化された珍品。このGretschのペダルといえばExpandafuzz、レスリーのTremofect、管楽器用オクターバーであるTone Divider、またイタリアのJen ElettronicaのOEMでGretschが 'Playboy' ブランドで販売したものがありましたけど、どれも一般的知名度の低い 'レアもの' 扱いとあってこのFreq-Fazeも滅多に市場へ姿を現すことはありません。本機が実に奇妙な仕様となっているのは、まず卓上に乗せるような 'ハーフラック・サイズ' であること。多分、キーボードの上に鎮座して使うことを想定させておきながら、いわゆる '尻尾の生えた' AC電源仕様ではなくまさかのDC9V電池駆動のみなのは・・なぜ?。エフェクツのOn/Offは筐体前面のトグルスイッチで行うのですが、筐体後面に回るとIn/Out端子のほかに蓋がされている。多分、ここにオプションのフットスイッチ繋いでOn/Offさせるつもりだったらしく、これも特に実用化されずに蓋をされてしまったということは色々と頓挫していた模様(苦笑)。この時代ならではのかなりガッツリとかかるコンプがフェイズの倍音を際立たせる効果で、こういう意外な組み合わせは再評価しても面白いでしょうね。いま復刻するのなら、OK Custom Design Change BoxやCooper FxのSignal Path Selectorのような 'フリップ' するスイッチを組み込みフェイザーの前後をコンプが各々入れ替えられる 'コンプ⇆フェイズ' の仕様で製品化してみたい。そもそもこのFreq-Faze入手をきっかけに今回の内容を書き出したので需要があるのか知らんけど(苦笑)、いわゆるセオリーと思われてる接続順を飛び越えた '提案' から新たな音作りを目指して欲しいのですヨ。






ということで 'コンプ⇆フェイズ' の実験をやってみた(笑)。

単なるエンハンサーやコンプレッサーではない、というピックアップアップ・マイクからの '質感生成' を向上させるのに適したペダルが数多市場へと投入されている昨今、その原点ともいうべき '忘れられたモノたち' による温故知新はバカにできません。過去、この手の地味な '音質補正' というか、ある時代の価値観として広まった解像度を上げる効果で '栄枯盛衰' を体現するエキサイターというものがありました。そもそもこの名称はAphexという会社により製品化された商品名の 'Aural Exciter' であり、続くBBEからは 'Sonic Maximizer' など独自の技術で商品化された後、一般的には 'エンハンサー' というカテゴリーで他社が続々と追随します。共通するのは各社それぞれの回路により 'スパイス' 的に高域成分を原音へ混ぜるというもので、その混ぜ方にどこか '化学調味料' 的不自然なギラ付きがあること含め、今や 'DAW' のプラグインにオーディオやTVの音響効果に備えられた 'EQ的処理' の大半で耳にするのみです。1980年代にはPearl TH-20 Thrillerやラック中心のBBEから珍しいペダル版のModel 601 Stinger、そしてBossのEH-2 EnhancerやDODからFX85 Harmonic Enhancer、そして同社の 'Psycho Acoustic Processor' ことFX87 Edgeというワンノブのヤツなど、いかにも 'ハイファイ' 志向の時代を象徴する製品が市場に用意されておりました。まさに原音重視のエフェクターが跋扈する現代では完全に '過去の遺物' と化しておりますけど、実はEQのセッティングなどであれこれ悩んでいる方にはコイツを 'スパイス' 的に振りかけてやれば解決する場合も多いのです。何かエキサイターの解説って 'ドーピング' でも勧めているようなネガティヴなものが多いですね(苦笑)。ここではそんな国産エキサイターとして初期に登場したTokai TXC-1 Exciterをチョイス。さらに高域のシャリシャリ感を落ち着かせるリミッター的効果として同社のTCO-1 Compressorと同じくTPH-1 Phaserを各々組み合わせてみました。ちょっとレアなのがこれら3つのペダルのツマミがどれも最初期仕様のモノでして、これがツマミ上面が剥がれたり壊れやすいというトラブル多発により急遽2ndロットから別のツマミに変更されたことで半年ほどしか店頭に存在しなかったもの(だから何だ、という話ではあります)。しかし、Tokaiのシブい質実剛健な筐体のデザインはカッコイイ...と思いながら、当時店頭で派手なBossのペダルと並べられていたらBossの方を手に取っちゃうだろうな、というユーザーの気持ちも良く分かる(苦笑)。ちなみに 'エキサイター+コンプ' を一台にまとめた効果のペダルとしては、過去に布袋寅泰氏がBoowy時代に愛用していたことで妙なプレミアの付くGuyatoneの 'Double Effect' シリーズで登場したGuitar Exciter & Comp PS-021がありまする。あ、残念ながらTokaiのフェイザーTPH-1 Phaserの動画はありません...(涙)しかし、硬質かつリゾナンスも程よく効いた良い80'sフェイザーでオススメですヨ。












ちなみにここでの基本セッティングは、その '2チャンネル' のミックスによるエレアコ用プリアンプPreSonusのAcousti-Qを使用。本機はハーフラックサイズに12AX7真空管を1本搭載、3バンドEQとノッチフィルターに外部エフェクツ用センド・リターンを備えた今となっては使い勝手の良いのか悪いのか分からない(苦笑)仕様となります。別売りでミュートとCut/Boostの切り替えられるフットスイッチが用意されており、さらに鉄板を 'くの字' に折り曲げただけの安易なスタンドに本体設置するのが面白い。ちなみに所有しているのは日本語取説付きなのにAC18Vの120V仕様ACアダプターであり、そこは真空管使用ということから東栄変成器のステップアップ・トランスで適正に昇圧しております。正直、今ならHeadway Music Audioのファンタム電源も兼ねたXLR入力とDI、センド・リターンを備えるエレアコ用プリアンプEDB-2 H.E.といった高品質なものもあるのですが、この少々型落ちの古いプリアンプなどを見つけて管楽器の 'アンプリファイ' に活用してみるのも面白いと思いますヨ。このクラスの真空管モノは単に出力部で通してソレっぽくしてるだけなのですが、その 'エフェクター臭さ' もちょっとした味として楽しめる機材です。あ、そうそう、今回は 'コンプの音作り' に焦点を当てているのでピエゾ側の音色を司るNeotenicSound AcoFlavorの 'Limit' ツマミはオフにしとかないとね...。また、このAcousti-Qの 'センド・リターン' はラインレベルということで、'+4dB→-20dB' のインピーダンス変換とコンパクトペダルを 'インサート' できる専用機器のお世話となりまする。あこの手の '便利小物' ならPA関連機器でお任せの老舗Radial Engineeringから '逆DI' ともいうべきReamp BoxのEXTC-SA。最初の動画は 'ユーロラック500' シリーズのモジュール版ではありますが、本機は独立した2系統による 'Send Return' を備えてXLRとフォンのバランス/アンバランス入出力で多様に 'インピーダンス・マッチング' を揃えていきます。さらに ' フル・ステレオ' の接続にも対応するEXTC-Stereoなども用意されておりますが、現在の円安の影響なのかメチャクチャ高価になりましたね(汗)。そして同種の製品では、国産のConisisことコニシス研究所からE-Sir CE-1000というハーフラック・サイズのモノが受注製作品としてあります。わたしも過去DAWによる 'ダブ制作' の折に大量のコンパクト・エフェクターを 'インサート' してお世話になりましたけど、こちらもこの手の機器の先駆としてとても良いモノです。さて、わたしの環境ではこちらの受注生産で用意されているガレージ的製品を愛用しているのでご紹介。そもそもはギターアンプのプリアンプ出力とパワーアンプ入力の間に設けられる 'センド・リターン' でラック型エフェクターを用いる為のもので、アンプの修理をメインに請け負う工房E-C-Aからその名もズバリの '+4dB → -20dB Convert Loop Box' という名で受注製作しております。本機はDC24VのACアダプターにより駆動して、各入出力の 'オーバーロード' を監視出来る便利なLEDを備えた2つのツマミでレベル調整が可能。大きな容量の電解コンデンサーで平滑、コンパレータに正常な電圧がかかるために電源後20秒ほど-20dBのLEDが点灯してから使用するという仕様。また、高級なアウトボード並みの多機能なインピーダンス変換を誇るUmbrella CompanyのSignalform Organizerや、大阪で業務用を中心に各種 '縁の下の力持ち' 機器を製作するEva電子さんからもInsert Box IS-1が登場。こちらのIS-1は入力レベルのツマミと出力のPhaseスイッチを装備、+4dBのIn/OutをY型のインサート・ケーブルでミキサーと接続します。まあ、こんな '煩雑なセッティング' で悩むより素直にこの手の 'インサート機能' に特化したマイク・プリアンプEventide MixinglinkやZorg Effects Blow !、Radial Engineering Voco- Locoなどを使えばサラッと解決する話なんですけどね(苦笑)。







OTO Machines Boum - Desktop Warming Unit

そしてラインレベルによるテクノやヒップ・ホップなどの '質感マシン' として、ステレオ入出力にも対応しているのがフランスOTO Machinesから登場する 'Desktop Warming Unit' のBoum。すでに '8ビット・クラッシャー' のBiscuit、デジタル・ディレイのBimとデジタル・リヴァーブなど各々Bamの高品質な製品で好評を得た同社から満を持しての '歪み系' です。その中身はディストーションとコンプレッサーが一体化したもので、18dBまでブーストと倍音、コンプレッションを加えられるInput Gain、Threshold、Ratio、Makeup Gainを1つのツマミで操作できるコンプレッション、低域周波数を6dB/Octでカットできるローカット・フィルター、4種類(Boost、Tube、Fuzz、Square)の選択の出来るディストーション、ハイカット・フィルター、ノイズゲートを備え、これらを組み合わせて36のユーザー・プリセットとMIDIで自由に入力する音色の '質感' をコントロールすることが可能。この手の '質感アナログマルチ' としては好評を得たElktron Analog Heatとの比較動画もありまする。







そして衝撃のデビューから7年、コロナ禍と戦争による半導体不足により一昨年 'ディスコン' となったものの高騰する中古市場と一部のマニアたちによる熱いエール?がチェコの天才たちに届いたのか今月、いよいよ 'Thyme+' として復活します!。基本的な機能はそのまま?によりスタイリッシュなデザインとして洗練されました。大きなツマミに初代のTRSフォン1つによるステレオ入力もちゃんとデュアルのステレオ仕様に変更、しかしMIDIがTRSミニプラグのスレーヴ入力のみで本機の特徴でもあった木製サイドパネルは廃止されちゃったのが残念なり...(Thymeをマスターで走らせるユーザーが少なかったんだと思う)。Thymeの大ファンであるわたしも触ってみたいけど、実は初代を2台所有しているんですよね...(悩)。






そして、久々にCDショップへと足を運んでみてMaya Dread1975年の 'Kaya Dub' を見つけたので購入。本盤はあのJah Lloydの傑作ダブ・アルバム 'Herb Dub' の米国仕様として曲名、収録順が変更になったモノとのことで...なんだ、'Herb Dub' は持ってたな、と(苦笑)。ちなみにミックスはキング・タビー本人の手によるもの。そんな 'Kaya Dub' といえばやはりバニー・リーのプロデュースによりお抱えバンドThe Aggrovatorsの名義で1977年にリリースされた傑作ダブ・アルバムが有名ですね。ミックスはキング・タビーのスタジオTubby's Hometown Hi-Fiということで、プリンス・ジャミーが手がけたミックスとされております。(このド派手なダブは確かにそうかも)。こっちの内容はボブ・マーリィの楽曲目白押しによるダブ化ということで、スライ&ロビーや実際にマーリィのレコーディングにも参加するカールトン&アストンのバレット兄弟参加と超強力メンツの 'フライング・シンバル' 状態!。その一曲目はマーリィの 'Sun is Shaining' をもじった 'Dub is Shining'。そもそもメジャーのIslandレーベルと契約し、いち早く世界の市場でスターダムにのし上がったボブ・マーリィはキングストンのゲットー感覚丸出しなダブの音作りと距離を置いており、そういう意味でも間接的に 'マーリィのダブ' を味わえる稀有な一枚と言えますね。さて、そんなタビーのスタジオは若手エンジニアの登竜門的存在として多くの弟子を育成しており、その'首領' であるタビー本人はミックスより島の電気屋としてトランスを巻いたり修理の出張など本業で忙しかったのです...。この 'ルーツ・ダブ' の全盛期に最も多くのミックスを手がけて一躍その名を有名にし、後に独立してジャマイカ随一のプロデューサーとなったのがプリンス・ジャミー(キング・ジャミー)。ここではその師匠と弟子2人のダブ・ミックスによる '換骨奪胎' の違いをどーぞ。ただ、やっぱタビー御大のミニマルにして '一刀両断' 的な音の細分化こそダブのオリジネイターなんだと毎度感嘆してしまう...。

2024年3月15日金曜日

亜熱帯スティールパン紀行

物事はどんどんシンプルに...これからまた暑い季節がやってくるかと思うと待ち遠しい。しかし、今年になってようやくわたしの '冬嫌い' が切実たる思いであるのを確信しましたヨ。温暖化?移り変わる四季の訪れ?申し訳ないですが一年中、燦々と日差し溢れた熱帯気候で平均気温20度を下回る地ではもう暮らしたくないなあ。春の花粉で鼻をかみすぎと陽気のアップダウンから耳管がおかしくなるし...最悪ですヨ。とにかく今年は寒さがしつこ過ぎて体調管理でえらい目にあった...。目指すは活気のあるハノイ、ホーチミン...本格的に引っ越せないか?などと夢想中だけど(ハノイも冬は寒いんですが)、現地でベトナム中部の少数民族が用いて有名となった伝統の竹琴楽器、トルン(T'rung)や一弦琴のダンバウ(đàn bầu)など弾きながら穏やかな南国生活を満喫したい(笑)。ま、実際はベトナムの猛暑って日本とまた違った意味での過酷であり(そもそも南国は日中出歩く人少ない)、また東南アジアはその経済発展の裏で工場やバイクによる大気汚染の深刻化などもありましたね(汗)。












ちなみに、先日のVox Real McCoy WahやV846 Vintage Wahから引き続き、さらに 'トーキング・ワウ' という擬似的な人声に特化したものがありまする。古くは1970年代初めのいわゆるファズとVCFをベースとしたMaestroのFuzz Phazzer(コレもFP-1〜FP-3まで各々回路が違う)から1970年代後半に登場するColorsound Dipthonizerや 'エレハモ' のTalking Pedalなどが普及し、これは原初的なトークボックス(マウスワウ)とは別のVCFにおけるバンドパス帯域を複合的に組み合わせることで 'A、I、E、O、U' といった母音のフォルマントを強調、まるで喋っているようなワウの効果を生成するものです。その 'エレハモ' からはすでに 'ディスコン' だけど新たな 'Next Step' シリーズとして加速度センサーを利用したユニークなTalking Pedalや多目的なStereo Talking Machineなどが用意されております。そして、この手の効果のルーツ的存在である老舗ドラムメーカー製作の '擬似ギターシンセ' Ludwig Phase Ⅱ Synthesizerや英国のシンセメーカーEMSでデイヴィッド・コッカレルの手がけたSynthi Hi-Fli、現行品としてベルギーの奇才Herman Gillisさんによる傑作Sherman Filterbank 2などなど...。そんな強烈なフィルタリングから発振、シンセサイズの歪みをドラムマシン、ギターはもちろん管楽器にまでかけるモノとして、クラブ・ジャズ的なスリーピース・バンドPhatや現在はソロでquartz-headやrabitoo、この高橋保行氏とのユニット 'びびび' で活動するサックス奏者、藤原大輔さん。1990年代後半にテクノ界隈で人気を博したフィルターのSherman Filterbank 2(現在2台使い!)とその下に置くラック型ディレイKorg DL8000RのHold機能を駆使して、過激に発振するエレクトロニカ的スタイルを披露。まさに 'オシレータのないモジュラーシンセ' と言っても良い化け物的機器で、どんな音をブチ込んでも予測不能なサウンドに変調してくれますヨ(動画途中の 'Intermission' は長いため第2部は58:33〜スタートします)。ちなみにですが、これら 'トーキング・ワウ' を管楽器のピックアップマイクからこの手のペダルに通して使用した感想としては、あまり思ったような '喋る効果' にはならないんですヨ(汗)。う〜ん、ギターと違って管楽器は倍音が多いのが原因なんでしょうか?(謎)。さて、このようなリゾナンスを強調する音作りに欠かせないものとしてLudwig Phase Ⅱを 'ラデシン' と呼び愛された日本を代表する作曲家の富田勲氏によれば、いわゆるMoogシンセサイザーの単純な波形に揺らぎを与えるべく 'なまらせる' ものから機器自体の発する 'ノイズ' がとても有効であることを力説します。

"最近(の機器)はいかにノイズを減らすかということが重要視されていますが、僕が今でもMoogシンセサイザーを使っている理由は、何か音に力があるからなんですね。低音部など、サンプリングにも近いような音が出る。それはノイズっぽさが原因のひとつだと思うんです。どこか波形が歪んでいて、それとヴォリュームの加減で迫力が出る。だから僕はノイズをなるべく気にしないようにしているんです。デジタル・シンセサイザーが普及してノイズが減り、レコーディングもデジタルで行われるようになると、音が透明過ぎてしまう。ファズやディストーションもノイズ効果の一種だし、オーケストラで ff にあるとシンバルや打楽器を入れるというのも騒音効果です。弦楽器自体も ff になるとすごくノイズが出る。そうしたノイズは大切ですし、結果的にはエフェクターで出たノイズも利用していることになるんだと思います。"









そして、フィルターといえばテクノや古のルーツ・ダブのリアルタイムなミックスで威力を発揮するダイナミズムの専用機ということで、ダイナミック・スタジオから払い下げてきた中古のMCIミキシング・コンソール内蔵ハイパス・フィルターを後に自身のトレードマークとしたキング・タビーの特殊効果をパッシヴで再現したものをご紹介。タビーをフックアップしたプロデューサーのバニー・リーをして "ダイナミックスタジオはあのミキサーの使い方を知らなかったんじゃないか?" と言わしめた独特なワンノブによるハイパス・フィルターは、ここからワン・ドロップのリズムに2拍4拍のオープン・ハイハットを強調する 'フライング・シンバル' の新たな表現を生み出すなどレゲエの発展に寄与します。そのハイパス・フィルターは、左右に大きなツマミでコンソールの右側に備え付けられており、70Hzから7.5kHzの10段階の構成で、一般的な1kHz周辺でシャット・オフする機器よりも幅広い周波数音域を持っていました。そのMCIコンソール内蔵のハイパス・フィルターのベースとされたのがAltecの9069Bという1950年代のフィルターモジュールであり、それをスペインのAudio Mergeがパッシヴで再現させたのがこのKTBK-1Bになります。スペインといえばBenidubなどダブに特化した機器を製作する工房もあり、なぜかルーツ・ダブに対する希求を隠さない情熱的な国でもあります(笑)。ちなみにこのKTBK-1Bと同種のコンセプトで製作されたものとして、Altec 9069をベースにしたWestfinga EngineeringのWF Filter 222Aという製品もありまする。さて、そのMCIコンソールの特殊効果についてタビーの下でエンジニアとしてルーツ・ダブの創造に寄与、'Dub of Rights' のダブ・ミックスも手がけた二番弟子、プリンス・ジャミー(キング・ジャミー)はこう述懐します。

"ダイナミック・サウンズ用に作られた特注のコンソールだから、すごく独特だったよ。最近のコンソールには付いていないものが付いていた。周波数を変えるときしむような音がするハイパス・フィルターとか、私たちはドラムでもベースでもリディムでもヴォーカルでも、何でもハイパス・フィルターに通していた。ハイパス・フィルターがタビーズ独特の音を作ったんだ。"


陽射し溢れるカリブ海とバハマ一帯。実は音楽的に '不毛地帯' ではなかったことを証明する怪しいシリーズ 'West Indies Funk' 1〜3と 'Disco 'o' lypso' のコンピレーション、そして 'TNT' ことThe Night Trainの 'Making Tracks' なるアルバムがTrans Airレーベルから2003年、怒涛の如く再発されました・・。う〜ん、レア・グルーヴもここまできたか!という感じなのですが、やはり近くにカリプソで有名なトリニダード・トバゴという国があるからなのか、いわゆるスティールパンなどをフィーチュアしたトロピカルな作風が横溢しておりますね。カリブ海といえばトリニダード・トバゴ、そして '20世紀最後のアコースティック楽器' として世界に登場した旋律打楽器、スティールパンを生み出した地でもあります。2本のマレットで叩けば真冬であろうとコロコロと南国のムード溢れるドラム缶の気持ち良さで、上記コンピレーションからもThe Esso Trinidad Steel Bandを始め数多の 'パンマンたち' が奏でます。また、バハマとは国であると同時にバハマ諸島でもあり、その実たくさんの島々から多様なバンドが輩出されております。面白いのは、キューバと地理的に近いにもかかわらず、なぜかカリブ海からちょっと降った孤島、トリニダード・トバゴの文化と近い関係にあるんですよね。つまりラテン的要素が少ない。まあ、これはスペイン語圏のキューバと英語圏のバハマ&トリニダードの違いとも言えるのだろうけど、ジェイムズ・ブラウンやザ・ミーターズ、クール&ザ・ギャングといった '有名どころ' を、どこか南国の緩〜い '屋台風?' アレンジなファンクでリゾート気分を盛り上げます。ジャマイカの偉大なオルガン奏者、ジャッキー・ミットゥーとも少し似た雰囲気があるかも。しかし何と言っても、この一昔前のホテルのロビーや土産物屋で売られていた '在りし日の' 観光地風絵葉書なジャケットが素晴らし過ぎる!永遠に続くハッピーかつラウンジで 'ミッド・センチュリー・モダン' な雰囲気というか、この現実逃避したくなる 'レトロ・フューチャー' な感じがたまりません。そして、このジャコ・パストリアス・グループのカリプソ風ファンキーな 'The Chicken' で叩くのはトリニダード・トバゴ出身の名スティールパン奏者、オセロ・モリノー。










そんなバハマといえば首都のナッソー(Nassou)、そのナッソーといえば 'Funky Nassou' ということで、この 'カリビアン・ファンク' で最も有名なのがバハマ出身のファンクバンド、The Bigining of The End。1971年のヒット曲で聴こえる地元のカーニバル音楽、'ジャンカヌー' のリズムを取り入れたファンクは独特です。このジャンプアップする 'Funky Nassou' 一曲だけでカリブの泥臭くも陽気な雰囲気はバッチリ伝わっており、その優れたファンクを全編で展開したデビュー作以後、ディスコ全盛期の1976年にバンド名そのままの2作目をリリースして消えてしまいました。そしてもう一度、Trans Airのコンピ 'Disco 'O' Lypso' から 'Funky Nassou' のディスコ・カバーをどーぞ。そして中米パナマ出身のウィルソン3兄弟を中心にアフロ、ラテン、ニューソウルからロックの熱気など雑多な要素を黎明期のファンク革命にブチ込んだバンド、マンドリルも異国情緒の熱い風を届けてくれまする。そんな彼らの代表作としてレア・グルーヴ・クラシックにしてヒップ・ホップの 'ネイティヴ・タン' 一派、ジャングル・ブラザーズの 'Straight Out The Jungle' でサンプリングされた 'Mango Meat' の格好良さよ!。









そして中南米から大西洋を渡り北アフリカへ上陸!。エチオピアから '昭和歌謡の哀愁を持つ男' (笑)ことムラトゥ・アスタトゥケを始めとした、この懐かしくも夏祭りの叙情溢れる 'エチオ・ジャズ' で今年の夏も乗り切って行きましょう。ジャマイカで推進されたラスタファリ運動の神ジャーの '化身' として推戴されていたのがエチオピアの皇帝、ハイレ・セラシエ一世だったということで、なぜかジャマイカもそうなのだけど、彼らと日本の音楽が持つ '演歌性' の親和感って一体どこで繋がっているのだろうか?(謎)。そのジャマイカといえばスカ、ロック・ステディから初期レゲエ期を支えたヴァイブ奏者、レニー・ヒバートも素晴らしい。まさに、この夏の夜の盆踊りとムラトゥ・アスタトゥケやヒバートのひんやりした和モノ感覚...不思議とハマってくるように聴こえませんか?。そんな歌謡性溢れる熱帯夜から一転、ジャズ界のアウトサイダーとして変拍子の魔術に取り憑かれたラッパ吹き、ドン・エリスの 'Despair to Hope'。まるでオモチャ箱を引っくり返したような音のピース(破片)は、ジョン・ケージの不確定性音楽から強い影響を受けながらアル・フランシスのヴァイブがその不穏な静寂の狂気に一役買っております。










さて、そんなラウンジなラテン・ジャズとアヴァンギャルドを繋ぐ稀有な存在としてこちら、孤高のインプロヴァイザーであるエリック・ドルフィーに触れないわけには行かないでしょう。ドルフィーってそのキャリアの始めからずーっと自身のバンドに恵まれなかった人だったと思うのだけど、それはオーネット・コールマンやセロニアス・モンク、マイルス・デイビスのようにバンドで自らの音楽を構築していくタイプではなく、すでにドルフィーの身体がそのまま木管と合一することで現れる '異物なアンサンブル' として完結していたと思うのですヨ。駆け出しの頃のチコ・ハミルトンからオーネット・コールマン、ジョン・コルトレーンらと一緒の時でもどこか '疎外感' の如くハミ出してしまう個性。その孤立から '居場所' を放浪するドルフィーの音楽性と親和性を保っていたのがチャールズ・ミンガスのグループ在籍時であり、そこにはエレクトロニカと共通する '顕微鏡のオーケストラ' ともいうべき微細な破片を拾い集めるような静寂と統率力を垣間見るんですよね。つまり、ミンガスのどっしりとした指揮がそのままドルフィーを自由に羽ばたかせる為の '土台' として機能しているのです。しかし、元祖 'DV男' として後ろから手に持った弓でバシバシ叩かれるような威圧感を与えるボスのご機嫌取るのは大変だったと思うのだけど(苦笑)、その鬱憤が 'LJQ' ことラテン・ジャズ・クァルテットのような軽やかなアンサンブルで一息付けたと思うのですヨ。そろそろドルフィーをコルトレーン的シリアスな語り口から解放してあげたいなあ...。一方、フランク・ザッパは 'Eric Dorphy Memorial Barbecue' で天才ドルフィーへのアンサンブルの希求を露わにしております。ザッパとドルフィーの共演なんてあったら鳥肌もんですよねえ...本当に惜しい。










一方、そのドルフィーに象徴される孤高ゆえにハミ出すしかない個性は、米国でも既成の様式美から外れた 'アウトサイダー' による越境者たちの試みへ受け継がれているのが面白い。ロスアンジェルス在住のサックス奏者にしてクリエイター、サム・ゲンデルの暖かな世界は、ドイツ製Rumberger Sound Productsの 'マウスピース・ピックアップ' K1Xを装着し各種ペダルでサックスを 'アンプリファイ' させております。ちょうど1990年代後半にトータスやThrill Jockeyレーベルなど 'シカゴ音響派' 周辺の匂いと共通するというか、何やらレイ・ハラカミのようなポルタメントを軸としたサウンドスケープを聴かせてくれるなど、この従来のジャズからハミ出した感性が良いなあ。そうそう、このゲンデルさんもタブラマシーンやリズムボックスを用いて緩〜いグルーヴを好んでるんだよなあ。しかし、現代音楽専門であったNenesuchレーベルも随分とポップな意匠へと変貌しましたね(笑)。


ここ日本ではLittle Tempoなどがこういうスタイルで早くからアプローチしておりましたが、ダビーな音像によるスティールパンとフェンダーローズ、ヴォコーダーの絡みがとっても気持ち良いなあ...。なるほど、ここでのローファイなブレイクビーツはRolandのSP-404SXで流してるのか。そんな去年に出会った動画の中でかなりお気に入りとなったのが、このフェンダーローズとヴォコーダー、スティールパンによるデュオのユニット。もっと再生数伸びても良いくらいカッコいいサウンドやってると思うんだけど、昨今の人たちにはあんまり訴えないのかな?(謎)。いまフル・アルバムを聴きたいアーティストのひとつなんですけどパンを奏でる渡辺明応さん、本業はお坊さんなんですよね(凄)。お昼の午睡に最適なほどトリップできる 'ローファイ&ワウフラの帝王' こと 'Boards of Canada' のような世界観が素晴らしい...めちゃくちゃインスパイアされました!。ちなみにわたしのスティールパン(ローテナーパン)はチューニング済みの中古を某所で入手したのですが、我が家に到着してスタンドにセッティングしたその夜、東京にそこそこの揺れの地震(3.11じゃないです)がやってきてドカン、コロコロ...の落下からあっという間にチューニングが狂ってしまいました(悲)。どうしようと思っていたところ兵庫の山奥で一人国産のパンを製作する唯一無二のパンマン、生田明寛氏にお願いして再度チューニングして頂きました。元の状態よりさらに響き良くしておきましたヨ、とまで言って頂き大感謝です。いつかは生田氏のパンが欲しいなあ...。

このスティールパンとエキゾチカ、そこにエレクトロニカとポップの要素を振りかけたイメージとして最適なのが細野晴臣氏による名曲、Simoon。1978年のYMOデビュー盤で開陳された ' 世紀末の砂漠' ともいうべきオリジナルからクラフトワークのラテン化に次いで挑戦したセニョール・ココナッツの 'YMOラテンカバー'、そして千葉を中心に活動していた(今はまた別メンによるYMOカバーユニットで継続中)秀逸なYMOカバーバンドCMOのこれぞ、21世紀の超絶ポップなアレンジによるSimoonまで名曲は時代を超えて色褪せません。コギャル風な(笑)Itsukiさんの 'ケロ声' 処理とカタカナ英語、ヴォコーダーが今の無機質な時代を象徴します。




さて、ジャズのラッパ吹きであるクリスチャン・スコットといえば強烈なトラップのリズムで新たなジャズの即興演奏に挑む創造性を発揮しておりますが、いよいよラッパの 'アンプリファイ' においてAuto-Tune、Pitch Correctなどいろんな名称が与えられている 'ケロ声' ラッパの登場です(笑)。スコットのステージ後方にチラッとPCの画面が見えていたのでプラグインのAuto-Tuneで処理しているっぽいですが、ライヴではBossのVT-4 Voice Transformerによるリアルタイムな音声加工でそれこそ数え切れないほど '強制ピッチ' の変調ヴォイスをアフロビーツのWizkidからトーフビーツ、椎名林檎までステージの 'お供' として食傷するくらい聴かされてるかと思いまする(苦笑)。VT-4の精度の高さはレイテンシーゼロの処理速度とMIDIによる '隠しモード' のイコライザー5種、Female、Male、Rap、Rock、Thickからひとつ選んでより緻密に補正することが可能なこと。あ〜我らの夏よ〜!。







そんなスティールパンの 'アンプリファイ' として、The Coradoの高品質なピエゾ・トランスデューサー・ピックアップを底面に貼り付けております。クラスAによるプリアンプ内蔵の完全バランス型であり、その高いS/N比のピックアップ特性を別途DC24〜48Vのファンタム電源により駆動します。本体裏面の-10dBのPadや50Hz〜17kHzの帯域でBass/Boostのハイパスフィルターを搭載するなど、ピックアップ単体で基本的な音作りにも対応しているのが嬉しいですね。ちなみにパン専用ピックアップというモノも米国で製作されており、The EnSoul Pan Pickupと称されたソレは250Hz〜100Hzにかけてハイパスフィルターの周波数帯域を設定した4種(Lead/Tenor、Double Second、Cello、Bass)がラインナップされておりまする。ピックアップ本体がマグネットで着脱可能なのはさすが 'パン専用' という感じで便利ですね!。また、スティール・パンの親戚?と言うべきか、近年登場した手で叩くハンド・パン用の中華製Muling Pick-Upなども使いやすそうですね(Ali Expressから購入可)。当然、装着位置はパンの中で最も音色の小さい高音域の湾曲面ど真ん中にすると分かりやすい...。本当は湾曲面上方からスタンドマイクも立てアンビエンスも集音するミックスにした方が芳醇な音色になるのですが(一応、ダイナミックマイクの名機であるElectro-Voice RE-20やSennheiser MD441Uなど所有しております)、なんかそういうことよりササッとやれちゃうセッティングを目指しているのですヨ。その最たるモノがZoomのマルチエフェクツA1 Four / A1X Fourに付属される単三電池2本で駆動するマイクプリアンプ、MAA-1。そのZoomのマルチ本体の方は特に欲しくないけど(苦笑)、このマイクのXLRからフォンへと変換するマイクプリだけは別売りにしてくれー、と発売時から望むくらい手に入れたかったのでした。なぜかこの付属品だけ中古で手放した奇特な人がいたようで、それを鷹の目の速さで(笑)見つけてササッと掻っ攫ったのはわたしです。エフェクターボードの後端にペタッとベルクロで貼っ付けておこう。しかし、この湾曲面をグルッと5度圏(サークル・オブ・フィフス)で配置してある旋律打楽器のスティール・パンを演奏することで、より新たなコードとヴォイシングの関係を意識出来たのは嬉しい収穫です。







そんなスティールパンと一緒に使ってみたいのが足下の 'DAW' ともいうべきループサンプラーのSingular Sound Aeros Loop Studio。このコンパクト・サイズで簡便かつ '緻密なスタジオ' を所有出来るというのが嬉しい本機は、同社のプログラマブルなドラムマシン、Beatbuddyと同期して拡張した音作りを可能とさせるもの。6つのトラック単位で録音、再生出来るループ・サンプラー。モノラル入力で最大3時間、ステレオ入力で最大1.5時間、SDカード使用時は最大48時間の大容量録音を可能とします。1つのソング・トラックに最大36個のループトラック、また各ループトラックへの無制限オーバーダビング、これらを大きな4.3インチのタッチスクリーンで波形を見ながら大きなホイールをスクロールしながらエディット、4つのフットスイッチで作成したソングをセーブ、エクスポートすることでリアルタイムに作業、演奏に反映させることが可能です。もちろんWi-Fi/BluetoothやMIDIと連携して外部ネットワークからのファームウェア・アップデート、保存などにも対応します。そして、複数のトラックのリアルタイム・コントロールを可能にするMaestro MIDIコントローラーも用意。本機を接続してアサインすることで足下でのソングコントロール、1回のプッシュで各トラックのミュート/アンミュート、アンドゥ/リドゥ、新しいソングパートへのレコーディング、各ソングパートの自由な順番による再生可能を選択することが可能です。本機は現在、ファームウェア・アップデートVer.5.0に対応しているのですが、その現行ヴァージョンとしてフットスイッチを金色のGold Editionで新たに用意されておりまする。そして、このループ・サンプラーと併用したいのがHologramのグラニュラーシンセシスによるグリッチペダル、Microcosmをハープであらゆるペダルやガジェット探求に勤しむEmily姉さんがご紹介します。Dream Sequence、Infinite Jets Resynthesizerで 'グリッチ' とループ・サンプラーの分野に新たな価値観を提示するHologram Electronicsから 'グラニュラー・シンセシス' の奇跡とも言うべき本機は、発想的にはElektronのOctatrackやDigitaktなどを簡易的にペダルに落とし込んだものとしてこの業界を賑わせました。まさに無尽に湧き出すように生成されるシーケンスの数々・・ここ最近では、よりユーザープリセットとしての自由度の高いMeris LVXに水を開けられている感もありますが個人的にはこのくらい分かりやすいインターフェイスの方が使いやすいですね。何よりこのMicrocosmを使った 'ビートチョップ' のセンスはヤバい!。そんなMicrocosmの基本的構成はステレオによる最大60秒の 'ループ・サンプラー' を軸に 'Preset Selector' を回して11種×4プリセットの44種からなる音作りを約束します。

【Micro Loop】フレイズの一部分を繰り返すモード
-Mosaic- 様々な速度で繰り返す
-Seq- リズムを再配置して繰り返す
-Glide- 繰り返すごとにピッチが変わる
【Granules】音の断片からドローンを生み出すモード
-Haze- ごく短い音の断片が次々入れ替わる
-Tunnel- 音の断片を周期的に繰り返す
-Strum- 最終入力音を繰り返す
【Glitch】入力音をリアルタイムに再配置するモード
-Blocks- 入力音を一定のパターンで再配置する
-Interrupt- エフェクト音が入力音に割り込む
-Arp- 入力音を分散和音のように散らす
【Multidelay】複雑な鳴らし方が出来るディレイ・モード
-Pattern- 4つの異なるリズムを持つディレイ
-Warp- フィルターとピッチ・シフトがかかるディレイ



ちなみにハープの 'アンプリファイ' でいろんなペダルを探求するEmily Hopkins姉さんによる 'グリッチペダル' 変異2種がこちら。そろそろこの手の分野も製品ラッシュの飽和状態で没個性化から懸念されておりましたが、やはりいま勢いのあるChase BlissとHologramは面白いペダルを作りますね。Reverse Mode CはEmpress Effectsとのコラボでお送りするマルチディレクション・エコー。2008年にリリースされて大好評を博士たSuperdelay搭載の特別なモードに特化、インスパイアされたものとのこと。前進、後進、上昇と各々異なる方向へ動く複数のディレイヴォイスを組み合わせレイヤー状の空間構築、内蔵シーケンサーでチョップやフリケンシーシフト(シフト2種、ヴィブラート、コーラス、トレモロ2種)からパターン構築など、多彩な効果を生成します。MIDI(PC、CC、Clock同期)、エクスプレッション・コントロール、タップテンポなどChase Bliss特有の '隠れ' パラメータにも対応することでペダルの限定的な世界を飛び出した拡張性を発揮。Hologram ElectronicsのChoroma Consoleは一昨年 'グラニュラー・シンセシス' の革命児として話題となったMicrocosmの機能を整理、新たなサウンドデザインでマルチエフェクツ化されました。本機に搭載される4つのカテゴリーで再配置可能なエフェクト・モジュールはプリセットで20種用意されており、それらはMovement(Vibrato、Phaser、Tremolo、Pitch)、Texture(Filter、Square、Cassette、Broken、Interference)、Difusion20(Reverse、Collage、Space、Reels、Cascade)、Character(Swell、Howl、Fuzz、Sweeten、Drive)、そしてツマミの動きをGestureでモーションキャプチャー、3種から設定出来るフィルター、タップテンポ、80種からなるユーザープリセット、MIDI(クロック同期)などなど、その縦4列に並ぶ効果を自由に入れ替えながらカラフルなツマミやグラフィックと合わせ触っていて楽しそうなペダルですね。動画を見る限りではデジタルによる歪みのプリセットなど、ギタリストに特化した印象を受けました。






そして、せっかくのステレオ・ルーパーなのでこんな '疑似ステレオ' 効果でスティールパンの音像を広げてみます。古くはあの 'エレハモ' から名匠ハワード・デイビスの手により市場へ送り出された 'Mono to Stereo Exciter' のAmbitronなどがありましたが、現在ではスウェーデンの新興工房、Surfy Industriesからこんなアップデートされたモノが市場に用意されておりまする。基本的な構成は 'ABYボックス' のラインセレクターながら本機はアナログ回路により完全なバッファリングとStereo及びL/Rのモノラル切替によるソフトタッチのJFETスイッチング、トランス絶縁出力、アナログ相補コムフィルターによる疑似ステレオ効果、180度の位相反転、グランドリフトの各機能を搭載。その肝心の機能である疑似ステレオ効果は、ステレオのWidth(幅)と音量のVolumeコントロールの2つのツマミで操作してPadスイッチにより楽器レベルからラインレベルまでのインピーダンスに対応します。またアンバランスのみならずTRSフォンのバランス出力にも対応してDIボックスとしての使用も可能。面白いのは2台のアンプを鳴らす時に現れる 'Hollow Sound' の位相問題から、180度の極性反転回路により2つの出力プラグを半分ほど引き抜いた状態することで逆走になります。ちなみに、このStereo Makerの直前でいわゆるフィードバック・コントロールをリアルタイムに弄りたいということから今は無き米国のガレージ工房、Eye Rock ElectronicsによるO.K. Delayを接続。この手の 'ローファイ' な質感をシミュレートしたデジタル・ディレイに搭載されているのがPT2399というICチップであり、それを650msという短いディレイタイムながら筐体両側面にある2つの大きなホイールで原音→エフェクツのMixとRepeat、そしてペダル・コントロールをDelay TimeとフィードバックのRepeatsツマミ型スイッチで各々入れ替えることで全て足下により操作可能です。この工房からは他に、デイヴィッド・ギルモアがワウとエコーのフィードバックを組み合わせ音作りする 'カモメの鳴き声' サウンドをシミュレートしたエンヴェロープ・フィルターGullmour Wahを製作するなど、かなりニッチな需要に特化したモノということで一瞬注目を浴びました。












せっかくの旋律打楽器ということから(笑)、ここは叩いてシンセサイザーもトリガーしてみたいよな、ということでCVとエンヴェロープ・ジェネレータによる 'ユーロラック・モジュール' を物色してみます。あまり大仰なシステムにはしたくないのでモジュールのケースは4msのPod34Xをチョイス、JoranalogueのReceive 2とTransmit 2の各々6HPと8HP分のSynovatronのCVGT1...空いている10HP分にエンヴェロープでコントロールするCG ProductsのPeak+Holdを入れてみた。ちなみにこのマイクからCV/Gateへの変換モジュールでは、マイク入力を持つDoepferのA-119Vというモジュールが有名ですね。そんなニッチな同種品ではBefacoのInstrument InterfaceやCG Productsのピエゾ・ピックアップ付きPeak+Holdなどがありますけど、ここではそのPeak+Holdをピエゾ側のトリガーとして、もう一方のマイク側へは外部に用意したペダルや 'アウトボード' 類と連携すべくRadial Engineering EXTC 500のようなBastl InstrumentsのHendriksonというモジュールに接続。この種のモジュールは他社による同種製品としてMalekko Heavy Industry SND/RTN、Busy Circuits ALM006 S.B.G.、XAOC Devices Sewastopol、The Harvestman Black Locust、ステレオ入出力のStrymon AA.1といった製品があります。また、単なるインピーダンス・マッチングからモジュラーならではのCVを利用したトリガー/ゲート、エンヴェロープ機能との複合機としてもその威力を発揮。そしてReceive 2からトリガーで出力してPeak+Holdをエンヴェロープ・フォロワーにSynovatron CVGT1から変換後はBuchla Music Easelを発音させていく流れ...とやっていたのですが、Buchlaのバナナプラグに対応するPeak+Holdをゲット!(電圧による動作の安定性からBuchlaとのグラウンドを共通にする為アースプラグをPeak+HoldのIn 2に接続)。本機導入によりCVGT1での変換によるモジュールはケースから外し、Music Easelからのステレオ出力と後述するBastl Instruments Hendriksonからの出力をLand Devicesの楽器/ラインレベル切り替え可能な4チャンネル・ミキサーを介してステレオのDI機能を持つJoranalogue TX 2へと接続。そんなユニークなモジュールを製作する工房、CG Productsを主宰するChristian Guenther氏は元々ジャズ・ミュージシャンということで、ラッパから各種パーカッションと電子機器によるパフォーマンスを自ら披露しておりまする。まるでブルーノ・スポエリかギル・メレのような立ち位置にいる人だな(笑)。







そして、さらにスティールパンの 'ビートメイク度' を上げるべく直感的なシンセサイズということでSoma LaboratoryのThe Pipeをチョイス。いわゆる 'ヴォイスシンセ' というか、この一見EWIのような 'ウィンドシンセ' 風コントローラーに見えるThe Pipeを加えることでリズミックなプレイが可能。本機は専用のコンタクトマイクによりブレスやヴォイスでトリガー、様々な効果を偶発的にコントロール出来るロシア製の音源モジュールとなります。そのコンタクトマイクは中高域のトーンを拾う 'Standard' とよりナチュラルな出音の 'Flat'、より低域を強調する 'Bassy' の3種が各々用意されており、それを軸にした内蔵の 'シンセサイズ' の為の12種からなるアルゴリズムの内訳は以下の通り。

●Orpheus
The Pipeの為に最初に作られたアルゴリズムです。声によって反応する2つのヴァーチャル・レゾネータによって構成されています。声の高さを変えることでレゾネータをコントロールし、様々な周波数で共振させることが出来ます。

●Filterra
ダイナミック・レゾネータとリヴァーブのコンビネーションです。美しいリード・サウンドやパーカッシヴなサウンド、ノイズまで演奏することが出来ます。Freezeセンサーを使用してリヴァーブのサウンドをフリーズし、合唱団のようなバックトラックを作成出来ます。

●Synth
シンセサイザーのようなリードサウンドを演奏します。カットオフ・フリケンシーを調整可能なダイナミック・ローパス・フィルターを備え、リヴァーブ/ディレイ、オクターバーと一緒に使用出来ます。

●Reverb
リヴァーブと調整可能なディストーション、ディレイのコンビネーションです。FXセンサーでディストーションをオンにし、サウンドに柔らかいドライブを加えるサチュレータとして使用出来ます。DLY DBツマミを回すとディストーションにディレイが追加され、最大値近くまで回すと自己発振します。

●Madelay
あるポイントから別のポイントへとリードポイントがリズミカルにジャンプするユニークなディレイです。ジャンプのスピードはTempoツマミでコントロールしてトラックや他のビートに同期出来ます。テンポは次のアルゴリズムと同期しているので、演奏中に次のアルゴリズムと切り替えでクリエイティヴな演奏が出来ます。Freezeセンサーはディレイのごく一部をフリーズさせ、シンセティックな効果を生み出します。

●Pulse
入力した声をリズミカルにアルペジエートされたシンセサイザーの様なサウンドに変えます。Decayツマミでパルスの長さを調整し、より明確なサウンドにすることが出来ます。このアルゴリズムにはリンギング・リヴァーブが含まれており、入力した声にメタリックなトーンを加えます。

●Bass Drum
ヴォイス・コントロールによるRoland TR-909風のバスドラムです。入力音に対し敏感に反応し、様々なヴァリエーションやアクセントを付けた演奏が可能で、ドラムマシンでプログラムするのが難しい複雑なリズムを直感的に作成出来ます。このアルゴリズムはスネアドラムの演奏も可能です。高域の量がしきい値を超えると、バスドラムのサウンドの代わりにマイクからの処理済みのサウンドが再生されるので、このサウンドをスネアドラムとして演奏できます。

●Switchable Bass Drum
Bass Drumアルゴリズムのヴァリエーションで、入力音の周波数ではなくFXセンサーでサウンドを切り替えます。通常時はマイクからのサウンドを出力し、FXセンサーをタッチしている間、バスドラムを演奏することが出来ます。

●Bass Drum + Snare
Bass Drumアルゴリズムにスネアドラムを追加したアルゴリズムです。FXセンサーを押さないとスネアドラムが鳴り、FXセンサーを押すとバスドラムに切り替わります。

●Oktava
オクターヴ・ピッチシフター、フィルター、ディレイのコンビネーションです。ディープなベース・パッドやシュールなリード・サウンド、唸り声や珍しい発声方法を使って、野獣の咆哮や不思議な生命体の歌を演奏することが出来ます。

●Generator
The Pipeの中でも最もユニークなアルゴリズムで、声でコントロールされたサウンド・ジェネレータ、フィルター、リング・モジュレーター、動的フィードバックを搭載したディレイで構成されています。長く大きなサウンドを入力するとディレイのフィードバック・レベルが100%を超え、入力レベルが下がるまでサウンドの一部が自己発振しフリーズします。FXセンサーに触れると、この自己発振を止めることが出来ます。

●Harcho
Harchoは、米、クルミ、トマリのサワーソースが入って、ジョージア(グルジア)王朝風の濃厚で美味しいビーフスープです。このアルゴリズムは3種類のデジタル・ディストーション、ディレイ/リヴァーブ、ローパス・フィルターを組みわせたThe Pipeの中でも最も極端なアルゴリズムです。グルジア語の 'Harcho' の語感は英語の 'Harsh' (耳障り、刺々しい、荒い)に似ており、エクストリームなノイズや強烈な電子音が必要な場合は、このアルゴリズムを選択すれば間違いありません。天使と悪魔の聖歌隊、エイリアン・カモメの叫び声、黄泉の国から響く声、そのほか身の毛もよだつようなサウンドはこのアルゴリズムで実現出来ます。

しかしこのThe Pipeを前にして、やはりテクノロジーはまだまだアナログの時代に発想されていたものを容易に '再現' することに汲々としているのだなあ、としみじみ思っちゃいますね。というか、このピックアップに向けてラッパ吹いたり、口を付けてヒューマン・ビートボックス風に "ブンッ、チッ、パッ" とか言うのはちと間抜けな印象がありますけど(苦笑)。














さて、最後はスティールパンばかりに '浮気' してるワケじゃないよ、ということで(笑)、愛機であるTaylorの短いラッパをご紹介。このTaylorといえばヘンチクリンなデザイン過多のヤツ、ただただ重たい 'パクリMonette' なヤツには全く興味なかったのですが、アンディ・テイラー氏が2014年に独自設計の楕円形 'Ovalベル' で手がけたラッパ '46 Custom  Shop' Shorty Ovalは一目で惹かれてしまった。Taylorはこの年を境に 'Oval' と呼ばれる楕円形のベルを備えたシリーズを 'Custom Shop' で展開しており、それを短いサイズにしたトランペットとして新たな提案をしたことに意味があるワケです(そもそも彼はホルンの名門、Paxmanでベル職人として研鑽を積んでおります)。ええ、これは吹奏感含めロングタイプのコルネットではありません。トランペットを半分ちょいほど短くした 'Shorty' なのですが、ベルの後端を 'ベル・チューニング' にして '巻く' ことで全体の長さは通常のトランペットと一緒です。その 'Shorty' シリーズとしてはこの 'Oval' ベルのほか、通常のベル、リードパイプを備えたタイプも楽器ショーの為に製作されたので総本数は2本となりますね。重さは大体1.4kgほどなのですが、短い全長に比して重心がケーシング部中心に集まることからよりズシッと感じます。また、普段この 'Shorty Oval' はマウスピースに穴を開けてPiezoBarrelピックアップ装着の 'アンプリファイ' で鳴らしておりますが、そのままアコースティックのオープンホーンで吹いてみても通常のラッパと何ら遜色無くパワフルに音が飛びますヨ。ただ、その 'Oval' ベルの大きさからHamonのミュートでは嵌まらずJoralのバブルミュート必須となりまする(汗)。そして、本機にはハンドメイド系工房のラッパでは 'MAWピストン' と並びフェザータッチによる操作性で好評の 'Bauerfeind' ピストンが備えられております。そのBauerfeindバウアーファイント社とはドイツ南ヴィスバーデンのナウハイムにある会社でTaylorやInderbinenにWeber、そのほか海外にある多くの工房へピストンブロックをOEM供給しております。過去、そのオーナー会社が何度か変わりWilson傘下の時期に製作された品質の評価が高いですけど、現在はオランダの大手管楽器工房Adamsの傘下に入っております。ちなみにTaylorでは、コレとは別にかなりの '巻き' の入ったショート・トランペットを 'Custom Shop謹製' で製作していたりします。そんなショート・トランペットにおけるルーツ的存在として知られているのは、過去フランスで製作され近年再評価からそのPujeのファンだったブレント・ピーターズ氏による '復刻Puje' のトランペットがあるのですヨ。大久保管楽器店のリペアーさんが試奏もせず一目惚れの 'ジャケ買い' でオーダーし手に入れたそーですが(笑)、いくつかのレギュラーモデルのほか、動画ではGetzen製のピストンを組み込んだ4 and 3/4のコパーベルの 'Shorty' と5 and 1/8のアンディ・テイラー謹製によるコパーベルを組み込んだ 'Shortay' ('Tay' はTaylorのTay)の比較が面白い。さらにヴィンテージベルを流用した最新作として、まるでわたしのヘヴィなTaylorショート・トランペットを研究したと思しき管体の '巻き' までそっくりな 'Super-T' なる短いラッパも登場...。こちらはOldsスーパーコルネットのOEMベルを用いて5本のみ製作されたモノとのこと。ちなみにPujeやわたしのShorty Ovalもそうなんですが、ベル側から最初に '巻く' ところでトリガーによりスライドさせることからクォータートーンなどマイクロ・チューニングに対応しているところは面白いですね。












こちらスイスのトーマス・インダービネン氏による工房Inderbinenのカタログの中でもレアな一品であるコルネット、Rondoを購入された日本の方がいるようです。個人によるカスタムオーダーで処理してもらったという黒く酸化したベルが格好良いですね!。ショート・コルネットとはいえ、そこはボアサイズのデカいラッパばかりラインナップするInderbinenということから、ズシッとした140mmのベルサイズはTaylorの 'Shorty Oval' と良い勝負です(笑)。そして名匠Monetteからは、これまた珍しいシカゴに工房があった時代の頃の 'STC-1' タイプと近年の見るからに '真鍮無垢材' 丸出しを金メッキした 'Cornette' なる豪華なコルネットが登場。Monetteのラッパ全般で特徴的な灰皿のようにパッと急激に開くベルフレアーはもちろん、一般的なラッパに比べてそのサイズ感が狂いますね(苦笑)。またRyo氏の言われる通り、Monetteやいわゆるヘヴィタイプ特有のミチッとした均一なピッチの破綻の無さからくる吹奏感は慣れが必要です。一方、最近その勢いを誇っているジャズのラッパ吹き、クリスチャン・スコット。彼の作品 'Stretch Music' のジャケットに現れるラッパを上下引っくり返したような 'Reverse Flugelhorn' は正直、かな〜り格好イイんですが、このスコットさんはいろんなタイプのアップライト・ベルなラッパをAdamsに '一品モノ' でオーダーしております。そのフリューゲルホーンのみならず、'Sirenette' というこれまた独創的でユニークなコルネットも 'ACB' ことAustin Custom Brassのオースティンさんがチェック(画質とマイクの音質が惜しい...)。そんなオースティンさんはAdamsとのコラボで新たなコルネットをプロデュース、そのプロトタイプも披露しました!。以前もMonetteのFlumpetから影響されたシェファードクルークのデザインも格好良いコパーベルの 'Coppernicus' というラッパをAdamsで製作しましたが、このコルネットも最近のラッパ界の流行を取り入れながら誰もが欲しくなる逸品なり。そして 'モダン・コルネット' の第一人者ともいうべきナット・アダレイが1968年にアプローチしたこの '電気コルネット'。いわゆるH&A SelmerのVaritoneを用いてA&M傘下のCTIからリリースした 'You, Baby' は、前年にクラーク・テリーがアルバム 'It's What's Happnin'' でアプローチしたことを追いかけるかたちで 'サマー・オブ・ラヴ' の季節を謳歌した異色の一枚となりました。このVaritone、サックスの場合はマウスピースにピックアップを取り付けますが、トランペットやコルネットの場合はリードパイプ上部に穴を開けて取り付け、コントローラーは首からぶら下げるかたちとなります。効果的にはダークで丸っこい音色のコルネットが、蒸し暑いオクターヴ下を付加してモゴモゴと抜けの悪いトーンになっているのですけど・・。そんなVaritoneのコルネットで吹く貴重なナット・アダレイ1968年の動画から '電気うなぎ' こと 'Electric Eel' のTV収録ライヴ。首からコントローラーをぶら下げて(2:29)、ピエゾ・ピックアップはリードパイプの上に穴を開けて接合(4:19)されているのがこの荒い動画から確認出来まする。