2019年7月5日金曜日

夏の夜長に耽る・・

あー、まだかまだかの '梅雨明け宣言' を待ちわびながら先週末からずーっと曇天及び連チャンで降りしきる '梅雨真っ只'。しかし、ジワジワと蒸し暑くなってきており一面真っ青な夏空はすぐそこ・・夏大好き。今年も気持ちの良い汗をかけるでしょうか?





そんな真夏の夜長ほど狭い一室に誂えてある機材に向き合いたい!?人がいるかどーかは分かりませんけど(苦笑)、寝苦しい熱帯夜で汗だくのままうなされるよりかは機材の電源を入れた方が精神衛生上良い、とは思うなあ(近所迷惑にならない範囲で)。もちろん、しっかりとした睡眠と '体内時計' の調整はホントに大事なので徹夜することを勧めてるワケではありませんが、どうしても眠れない時はその発想を転換、喚起されるように音と戯れることで '意識を拡張' し、明け方グッタリとベッドに沈み込んだ方が深い眠りに就けると思うのですヨ(そして今日は週末だ!)。











Elektron Octatrack DPS-1 (discontinued)
Elektron Octatrack Mk.Ⅱ
Benidub Digital Echo

しかしコンピュータの前に座って画面眺めながら切った張ったのチマチマした作業は嫌だ。ただでさえクソ暑いのにそんな根を詰める作業はやりたくないし、下手したら 'ネットサーフィン' して無駄な時間を過ごすことになるかも・・。とりあえずレコードを使うのならElektronの変態サンプラー、Octatrackを使用してこんなパフォーマンスの方が何倍も楽しいのでは?ま、その前に操作性で一、二を争う難易度の高い本機と向き合わなければならないのだけど、ね(汗)。もしくはミキサーをお持ちなら単純に4トラックくらいでループするフレイズをパラってダブの真似事をしても楽しいかもしんない。そんなダブに適したディレイといえばリアルタイム操作で多機能なスペイン産のコイツ、Benidub Digital Echoをミキサーの 'センド・リターン' に繋いで頂きたい。





Redshift Effects Mirage ①
Redshift Effects Mirage ②
Electro-Harmonix Attack Decay - Tape Reverse Simulator

ちなみにディレイといえばこんな新興の工房からまた物欲をそそるヤツが登場、Redshift Effects Mirage。DSPによる最大3秒のリバース、オクターヴアップリピート、パターンをユーザー自身でカスタマイズ出来るマルチタップ・ディレイを中心に4種のモジュレーション(トレモロ、ローパス、ハイパス、リゾナント)を備え、さらにスイッチ一発でフィードバック発振をコントロールするなど多彩な効果を発揮します。またDecay、Dep/Pat、Rate/Varの3つのツマミはそれぞれエクスプレッション・ペダル及びCVによる電圧制御!に対応しており、これはここ最近のペダルと 'モジュラーシンセ' の混合した関係を睨んだ機能だと言えるでしょうね。そして最近のデジタル機器で当たり前となったUSBによるファームアップデートへも対応しており、本機で作成したパターンや細かな設定をPCとやり取りすることが可能です。そんなディレイにもう一味、さらに拡張した音作りに威力を発揮するのが現在ではあまり話題に登らなくなったエンヴェロープ・モディファイア。この手の 'ニッチな' アイテムならお任せの 'エレハモ' から往年の迷機、Attack Decayが現代的にパワーアップして再登場。シンセサイザーでお馴染みのADSR(Attack、Decay、Sustain、Release)と呼ばれるエンヴェロープを操作するもので、この新作ではそれをワンショットのモノラル、ポリフォニックの2つのモードに3つまでセーブ/リコールのプリセット可能です。また効果をより鮮明にすべくファズも内蔵し、いわゆる本機の効果で最も有効性のある 'ヴォリューム・エコー' に最適な 'センド・リターン' を搭載することで、ここにディレイやモジュレーションを繋いで積極的な音作りに活用出来ます。本機のツマミはエクスプレッション・ペダルのほか、これまた最近の風潮に則ったCVにも対応することで 'モジュラーシンセ' からもコントロールすることが可能。これはまさに '宅録野郎' が夜な夜なひとり遊ぶのにピッタリですね。





Chase Bliss Audio Mood ①
Chase Bliss Audio Mood ②

そうそう 'Digital Brain Analog Heart' のキャッチコピーでお馴染みのChase Bliss Audioからも新たな 'グリッチペダル' Moodが登場です。そろそろこの手の効果も食傷気味かな?という印象がなくはないのだけど、やっぱり動画を見てしまえば色々と想像力を掻き立てられて試したくなってきます!とにかくこの工房の製品はそのサイズでやれることが満載なだけに説明も大変なのだけど(汗)、2チャンネルのグラニュラー/マイクロルーパー/ディレイが基本形。パッとそのスペックを見た感じでは海外でこの手の製品としてヒットしているカナダの工房、The Montreal AssemblyのCount to Fiveなどの好敵手といった感じかな。面白いのはその2つのチャンネルの内、Holdするマイクロルーパーの機能をベルギーの工房Drolo Fx、もう一方の幻想的な空間系プログラムを米国の工房Old Blood Noise Endevorsがそれぞれ担当した 'コラボ' 製品であること。そのループ・モードではEnv、Tape、Stretchの3種、一方の空間系モードではReverb、Delay、Slipの3種をそれぞれ備え、本機の中央に位置するClockツマミで各チャンネルのループ・タイムを11種から選択することが可能。もちろんそこにChase Bliss Audioならではの 'Digital Brain' な頭脳、Dipスイッチで設定してプリセットからMIDIやCVとの連携まで任されております。しかし、これだけ飽和した市場に対してどれだけ 'グリッチ' は音楽の世界を刷新しているのだろうか?保守的な耳はまだまだ機材の面白さに追い付いていないのが現状ですヨ。





Bastl Instruments Thyme - Robot Operated Digital Tape Machine ①
Bastl Instruments Thyme - Robot Operated Digital Tape Machine ②

そんな 'グリッチ/スタッター' 系エフェクターの中でモジュラーシンセとの連携も目指してやってきたのがこちら、'Robot Operated Digital Tape Machine' と題したThyme。'ガジェット' 全開な機器を製作する一方でCVやMIDIを統合しながらプログラマブルな本機を製作してしまう旧共産圏のチェコ共和国、恐るべし。本機筐体の真ん中辺りに並ぶDelayセクション3つのツマミCoarse、Fine、Spacingをテープの 'バリピッチ' の如く操作し、それをTape SpeedとFeedback、Filterで変調させながらフレイズが破壊されていきます。そしてもうひとつのRobotセクションではFM変調の如く金属質なトーンへと変調し、それを真下にズラッと並ぶ6つの波形とエンヴェロープ、外部CVから操作・・というかここでは説明しきれないほどの機能満載でございます。





Elektron Digitakt DDS-8 ①
Elektron Digitakt DDS-8 ②

いやあ、流石にOctatrackの操作は覚えるのに一苦労・・という声がスウェーデンの技術陣に届いたかどーかは分かりませんが(笑)、シンプルなワンショットのループ・サンプラーとドラムマシンをひとつにまとめたDigitaktが登場、現在 '宅録野郎' たちを中心にヒット街道爆走中であります。このサイズでサンプラーとドラムマシン、シーケンスが一括して打ち込めるという分かりやすさはイイですね。ホント、夏の夜長の 'お供' になること請け合い。





Headrush Looperboard ①
Headrush Looperboard ②

さて、こういったリアルタイム・サンプリングに有効なのがループ・サンプラーなのですが、この分野も 'ひとりYoutuber' という市場が生まれた?ことでぐんぐん進化、いよいよこんな化け物のようなヤツが現れました。Headrush LooperboardはパワフルなクアッドコアDSP、7インチのタッチディスプレイ、8時間以上の録音、リアルタイムストレッチ、高品質な内蔵エフェクツ、外部USB/SDストレージ、USBオーディオインターフェイスと・・ほぼ、サンプラーのふりをしながらマルチトラック・レコーダーのような様相を示しておりまする。特にこのタッチディスプレイに現れる波形表示、スワイプからドラッグ&ドロップ操作による波形編集などは完全にDAWというか、こんな簡易的なループ・サンプラーもいよいよここまで来たかと感慨ひとしお。と同時に果たしてここまで盛り沢山な機能をこーいうフットペダルに落とし込んだということは、音楽をやる敷居としてもうPC使わん!という流れが加速?しているかな、などと邪推してしまいますねえ。そのループ操作は基本的な録音機能としてオーバーダブ、アンドゥ/リドゥ、リバース、トランスポーズ、バウンス、フェードやループ全体の長さから速度などのタイムストレッチにも対応するなど至れり尽くせり。モノ及びステレオの各ループは5つのトラックモード(固定、連続、同期、連続/同期及びフリー)のいずれかで実行、そのオーディオ・ルーティングでは4つの入力とループ・トラック、バッキングトラック、クリックのをいずれか4系統の出力(ヘッドフォン含む)またはその両方へとアサインすることが可能。もちろんMIDIによる同期からUSBを経由してPCへと作成したミックスを送ることが出来ます。ふぅ、凄いなこれは。





1010Music
1010Music Blackbox

いや、そんなデカイのは流石に・・という方は小型ながらまさに 'ワークステーション' としてビートメイクに威力を発揮する1010Music Blackboxはいかがでしょうか?本機は同社の 'ユーロラック' モジュールとして製作するサンプラーBitbox、シーケンサー/ファンクション・ジェネレーターToolbox、そしてマルチ・エフェクターのFxboxを統合、卓上型の専用機に仕上げました。基本的にはAkai Professional MPCシリーズと共通する各パッドへのサンプルのアサイン、内部シーケンサーにプログラムして内蔵エフェクツなどを駆使しながらエディット、ソングとしてビートメイクしていきます。そしてタッチパッド式のキーボードも備えているので '上物' のハーモニー的生成もバッチリであり、またMicro SDカードでその他PCのDAWとのやり取りも可能です。











Buchla Easel K
Buchla Music Easel
Buchla Music Easel Review

そそり立つ壁に対して膨大なパッチケーブルが 'スパゲッティ状態' のモジュラーシンセをお持ちであれば、即興的に変化するノイズからドローンや複雑なリズム生成で遊んでみても面白い。しかし、ひとつずつモジュールを買い足して自らのセットを組んでいくこのモジュラーシンセはとにかくお金がかかります・・。ということで、ここは思い切って(思い切り過ぎか!?)MoogやArpと並ぶシンセ黎明期のひとつ、Buchlaに手を出してみるのはいかがでしょう?1970年代にEMS Synthiをイメージして少量製作したアタッシュケース型のMusic Easelが復刻。いやあ、この狂ったようなぶっといオシレータの出音含め格好良いですねえ。本機は独特な構造を備えており、2VCOがVCA/VCFの合体したDual Lo Pass Gateという2チャンネルのモジュールからゲート、変調用オシレータ、外部入力を選び、またエンヴェロープ・ジェネレータをLoop、発振させてオシレータにするというまさに 'シンセの原点' と呼ぶに相応しいものです。あ、もちろんArp OdysseyやKorgのMS-20 Miniのような安価に始められる 'セミ・モジュラー' から始めてみるのもヨシ、ですヨ。






EMS Synthi Hi-Fli ①
EMS Synthi Hi-Fli ②

ちなみにMusic Easelに見る 'アタッシュケース' 型モジュラーシンセといえば、今や天井知らずなほど中古市場価格が高騰しているEMS。この会社の製品はどれも '激レア' というくらいのコレクターズ・アイテムばかりなのだけど、その中でもマニアックな人気を誇るのが1970年代に少量生産されたSynthi Hi-Fli。いま英国行きのチケットを持った '懐の暖かい' 方はReverb.comで購入出来るチャンス!ってか・・ホント高いな(涙)。専用のスタンドは無いけど2連仕様の専用フット・コントローラー付きの本機は、いわゆる '万博世代' やAppleの製品にゾクゾクする人なら喉から手が出るほど欲しいはず。しかし、このEMSは過去製品の 'リビルド' を中心に現在でも会社は存続しているのだからAppleが買収、電源Onと共に光る '🍏' マーク付けた復刻とかやってくんないかな〜?個人的に 'エフェクター・デザイン・コンテスト' が開催されたら三本の指に入る美しさだと思います。


さて、こーいった 'ガジェット的' にあれこれツマミやスイッチを弄るやり方としては、コンパクト・エフェクターを適当に繋いで遊んでみるのもシンプルに面白い。ここ最近のわたしのトレンドとしては 'CV' 入出力を持ったペダル類を中心に同期、変調させること。いわゆる 'プチ・モジュラー' 気分というか、本格的ではなくあくまで限定的な機能で触ってみるのが楽しいのですヨ。Carlin PedalsのCompressorとRing Modulator、Analogue Systems Filterbank FB3 Mk.Ⅱと4チャンネル・ミキサーのNobels Mix-42C、Dreadboxの 'ギターシンセ' ともいうべきSquare Tidesを揃えましたがこれらの内、Ring Modulator、FB3、SquaretidesはそれぞれCV入出力を有しておりまする。さらにこれらを活かすべく重要なのがここでご紹介するKoma Elektronik RH301、Boardbrain Music Transmutron、SpacemanのMission Controlといった 'CVコントロール' を得意とする機器と組み合わせること。この 'プチ・モジュラー' 気分というか、いわゆるコンパクト・エフェクターやラック・エフェクターと 'CV In/Out' でいろいろ電圧制御することで単にペダルを繋ぐだけでは味わえない面白さがあります。






Koma Elecktronik RH301は、ドイツでモジュラーシンセを得意とする工房の 'CV/MIDI/DIN Sync' を統合したマスタークロック生成器でここでのCV(電圧制御)の中心となりまする。本機はこれら規格の違う機器同士を同期させることが可能で、CVではローファイ・オシレーターとしても機能するLFOを備え、サイン波、三角波、スクエア波、サンプル&ホールドとノイズの5種からなる波形は0.25Hzから260Hzのレンジで出力します。そしてマスタークロックに同期したループ・モードの可能なエンヴェロープ・ジェネレーターの装備。これはADSR(Attack、Decay、Sustain、Release)コントロールに加え、Rangeツマミでエンヴェロープのタイムレンジを設定出来ます。LFO、EG共に逆相で出力することで複数の機器に対して凝ったパッチングにも対応します。またKoma Elektronikお得意のモーション・コントローラーともいうべき本機の赤外線LEDとパッチしてテレミン的操作が可能。





Koma Elektronik Field Kit - Electro Acoustic Workstation
Koma Elektronik Field Kit - Modular Multi-Effects Processor
Koma Elektronik Field Kit Expansion Pack ①
Koma Elektronik Field Kit Expansion Pack ②

ちなみにこのKoma Elektronikが 'モジュラーシンセ' とは別にクラウドファンディングにより製品化した 'ソレノイド・キット' のField Kit - Electro Acoustic Workstation。いわゆる現代音楽の世界でジョン・ケージやデイヴィッド・チュードアらがセンサーやモーター、コンタクトマイクなどを用いて身の回りの '具体音' を収集、それを電子変調した不確定音楽の為のアプローチを今のエレクトロニック・ミュージックの文脈で蘇らせたものです。 本機にはLFOやEG、AM/FMラジオのチューナーからビー玉、アッテネートされたケーブルなどを用いてあらゆる '具体音' をモジュラーシンセと組み合わせて用いることが可能。これぞ 'ダダイズム' の極致、今なら噴飯ものの前衛まっしぐらだったケージの '耳を開く' 哲学とは、あらゆる環境で '息づいて' いるミクロな世界に '額縁' を用意することなのだ。






BoardbrainのTransmutronは、パラレルで個別、同時にミックス出来るほか 'Fission'、'Fusion'、Fallout' の3種モードにより、2つのLoopの機能を変更することが可能なコンパクト・エフェクターとエクスプレッションCV、'ユーロラック' モジュラーシンセのCVによる統合したスイッチング・システム。

●Fission
このモードでは、入力された信号の周波数帯を分割し、それぞれを2つのLoopにスプリットして再びミックスして出力出来ます。後述するUmbrella Company Fusion BlenderやVocuのMagic Blend Roomなどと同種の機能ですね。またエクスプレッション・ペダル及びモジュラーCVでのコントロールにも対応。

●Fusion
このモードでは、2つのLoopのバランスを調整してブレンドすることが出来ます。これらミックスのバランスは筐体真ん中にあるSplitpointツマミ、またはエクスプレッション・ペダル及びモジュラーCVでのコントロールにも対応。これは前述したDwarfcraft Devices Paraloopと同種の機能に当たります。

●Fallout
このモードでは、2つのLoopの前にワイドノッチ・フィルターを適用して、Splitpointツマミやエクスプレション・ペダル及びモジュラーCVでのコントロールにも対応。ペダル・コントロールすることでワウのような操作を付加することが出来ます。また本機には、これとは別にHicut、Locutのフィルターを搭載して音作りに適用することが出来ます。

ちなみに本機搭載のフィルターは12dB、24dB、48dB/Octのスロープ角度を選択出来、それぞれFission、Falloutモードのワイドノッチ・フィルターにも適用されます。もちろん、Ch.2のLoopでフェイズアウトが起こった際の位相反転にも対応出来るのは素晴らしい。そして2つのLoopからなる 'Send/Return' にはフォンと 'ユーロラック' モジュラーでお馴染み3.5mmミニプラグが同時対応し、さらにこの3.5mmのLoopには内部DIPスイッチにより楽器レベルとラインレベルで 'インピーダンス' を切り替えて使用することが出来ます。





Spaceman Effects Mission Control

そしてSpaceman EffectsのMission Controlは、オートフェーダー、エフェクトループ、Dry/Wetブレンダー、パラレル・スプリッター、2チャンネルミキサー、エンヴェロープ・ジェネレーター(EG)のCVコントロールにも対応するスイッチング・ユニット。本機の中核を成すのはVCAで7種のモード切り替えとエフェクトループ、CV In/Outを併用することで多彩な効果を生成します。通常のIn→Out接続ではモメンタリーなActuateスイッチをトリガーにしてオートフェーダーになり、さらに本機のエフェクトループに他のペダルを繋ぐことで原音とエフェクト音(Dry/Wet)のミックス、全面に並ぶEGのコントロールAttackとReleaseは65msから33秒までの広い範囲で設定可能で、素早い立ち上がりから長い減衰までエンヴェロープをコントロールします。また付属のCV-TRS変換ケーブルでエクスプレッション・コントロールも可能。

●Offset
ゼロ以下の最小音量レベルを設定します。最小の音量からエフェクトが始まるモードでは、Offsetツマミでその音量を設定し、最大の音量からエフェクトが始まるモードでは、最終的な音量を設定します。

●Attack
'Actuate' スイッチが押されてから効果が現れるまでのスピードを設定します。各モードにより、効果が現れるまでのスピードと効果が消えるまでのスピードをそれぞれ切り替わります。

●Release
'Actuate' スイッチの効果が終わるまでのスピードを設定します。各モードにより、その効果が終わるまでのスピードと効果が戻るまでのスピードにそれぞれ切り替わります。

●Blend
エフェクトループ使用時にDry/Wetのレベルのバランスを設定します。またこのコントロールはエフェクトループ使用に関わらずブースター的設定も可能。Dry信号は本機背面にある 'Phase' スイッチを通っており、これはどのような場合でも原音は常に入力時から確保されております。

●Phase
本機背面にある小さなスイッチで、Dry信号の位相をコントロールします。'Blend' ツマミ使用時にエフェクトループに繋いだエフェクターと位相を揃えたい時に使用します。

●Mode
本機は'Gate(GT)'、'One Shot(OS)'、'LFO(LF)'、'Trigger(TRG)' の4種モードを備えており、その内の3種類に 'Up' と 'Down' の選択肢があります。

:Gate ↑
'Acuate' スイッチが押されると最大音量('Offset' ツマミで設定された音量)から 'Attack' ツマミで設定されたスピードで音がフェイドインして最大音量となり、'Actuate' スイッチが押されている間は音量を保持します。'Actuate' スイッチを離すと 'Release' ツマミで設定されたスピードで、最大音量まで音がフェイドアウトします。

:Gate ↓
'Actuate' スイッチが押されると最大音量から 'Attack' ツマミで設定されたスピードで音が最小音量('Offset' ツマミで設定された音量)までフェイドアウトし、'Actuate' スイッチが押されている間は音量を保持します。'Actuate' スイッチを離すと 'Release' ツマミで設定されたスピードで最大音量まで音がフェイドインします。

:Oneshot↑
'Actuate' スイッチが一回押されると最小音量('Offset' ツマミで設定された音量)から 'Attack' ツマミで設定されたスピードで音がフェイドインし、自動的に 'Release' ツマミで設定されたスピードでフェイドアウトします。

:Oneshot ↓
'Actuate' スイッチが一回押されると最大音量から 'Attack' ツマミで設定されたスピードで音がフェイドアウトし、自動的に 'Release' ツマミで設定されたスピードでフェイドインします。

:LFO ↑
'Actuate' スイッチが一回押されるとLFOが働き、最小音量よりフェイドアウトします。LFOの波形とスピードは 'Attack' (増)と 'Release' (減)ツマミでそれぞれコントロール出来ます。再び 'Actuate' スイッチを押すとLFOが止まり最小音量に戻ります。

:LFO ↓
'Actuate' スイッチが一回押されるとLFOが働き、最大音量よりフェイドアウトします。LFOの波形とスピードは 'Attack' (減)と 'Release' (増)ツマミでそれぞれコントロール出来ます。再び 'Actuate' スイッチを押すとLFOが止まり最大音量に戻ります。

:Trigger
'Actuate' スイッチが一回押されると最小音量より 'Attack' ツマミで設定されたスピードで音がフェイドインし、最大音量を保持します。再び 'Actuate' スイッチが押すと 'Release' ツマミで設定されたスピードでフェイドアウトします。

:Actuate
全てのモードでトリガーとして機能するモメンタリースイッチ。選択されたモードに応じてシングルタップか、モメンタリーホールドに切り替わります。

以上、ほとんどエンヴェロープ・ジェネレーター(EG)のADSRやLFOで最小限に出来ることに特化しており、正直モジュラーシンセのようなパッチケーブルと壁を築いて複雑なプロセッシングは出来ないのだけど・・そこがイイ。コンパクト・エフェクターが備える 'CV' も最低限な機能しか対応しないのですが、いやあそんなシンプルさがイイじゃないですか。あのジャマイカという亜熱帯な環境で開花したダブ・マスターたちの仕事ぶりにも顕著ですけど、最近はPC中心のミニマルな環境から抜け出し、よりプリミティヴなかたちで限定的な環境からあれこれ音を出すシンプルさ、重要になっていると思います。







Pigtronix Mothership
Korg MS-20 mini Monophonic Synthesizer
WMD Protostar
Recovery Effects Viktrolux
Recovery Effects Cutting Room Floor V.2
Hungry Robot Modular
Hungry Robot Pedals

LFOによる同期で一風変わった仕様のマルチモード・フィルターDwarfcraft Devices Happiness。本機はFilter CVとScramble CVのほか、LFOのCV出力をマスターにArturiaのアナログシンセとKorgのサンプラーを同期し、ユニークなバックトラックにするという '離れワザ' を披露。このようにコンパクト・エフェクターは従来のギターから離れて、ドラムマシンやサンプラーなどとの多様な制作手法に対応するなど、そのニーズも時代に応じて大きく様変わりしました。ちなみに変態的なトラッキングとフィルタリング、多彩な音作りに対応しているのがPigtronixの 'ギターシンセ' であるMothership。現在、小型に新装したMothership 2はエクスプレッション・ペダルのコントロールは出来ますが、大柄な '初代' に用意されていた各種CVが減ってしまったのは残念。このCVを活用して、例えばパッチング出来るアナログシンセKorg MS-20 Miniなどと組み合わせて楽しみたい方は 'ディスコン' となった '初代' Mothershipをどーぞ。またこの他にもWMDのProtostarといった各種CV(Sidechain、Env Out × 2、LFO Out、LFO Rate、LFO Amt、Freq、Feedback)を備えたものやピッチ・モジュレーションの変異系と呼ぶべきRecovery Effects Viktroluxでは、ディレイタイムに対してCVで 'Trigger' 入力がかかり、外部ドラムマシンのテンポと同期してリズミックな生成へと変調します。ちなみにこのViktroluxはすでに 'ディスコン' となり、現在この機能は 'グリッチ' 系ペダルのCutting Room Floor V.2に '移植' され健在でございます。そして、米国で個性的なペダル・エフェクターを製作する工房、Hungry Robot Pedalsから通常のコンパクト・エフェクターとは別に 'ペダルサイズ' のモジュール・ユニットが登場!モジュール・ユニットをひとつずつ組み込む大仰なシステムに比べて敷居が低く、これならCV入出力の備えたコンパクト・エフェクターなどと一緒に個別で遊ぶことが出来まする。さあ、これで眠れない夜を楽しんで下さいませ。











WMD ①
WMD ②
WMD Geiger Counter GC-1
WMD Geiger Counter Pro 
WMD Geiger Counter Eurorack

そんな 'CV入力' を備えたコンパクト・エフェクターといえばWMDの破壊的 '放射能検知器' と言うべきGeiger Counterがございます。いわゆる 'ウェイヴ・シェイパー' から 'ビット・クラッシャー' を軸に252種からなる 'Wave Table Modulation' を組み合わせて強烈な歪みを生成するその姿は、まさに '夏の夜長' に相応しいほど没頭出来るでしょう。そのオリジナルな個性は現在、DAW上のVSTプラグインとしてもコントロール出来る '究極版' Geiger Counter ProからさらにCVの機能強化した 'ユーロラック' 用モジュールに至るまで好評を得ておりまする。











Digitech Whammy Ricochet
Digitech Whammy Ricochet Review
Boss PS-6 Harmonist

真夜中に管楽器鳴らすのはご法度なのだけど、そろそろ空も白み始めてきたからいいか!?いやいや、布団にベル突っ込むかYamahaのSilent Brass使うか、レガートぎみにピアニッシモでソロソロ吹けば大丈夫・・かな?(汗)とりあえず、シンセをあれこれ使い出すとこんな蒸し暑〜いオクターヴトーンを管楽器で求めてしまいますヨ。あ、そこは黙ってEWIなどの 'ウィンドシンセ' 使えば?なんてツッコミは無しで・・(笑)。









Zorg Effects
Zorg Effects Blow !
Flux Effects Liquid Ambience
Electro-Harmonix Micro Synthesizer
Anasounds Utopia
Retro Mechanical Labs 432k Distortion Box
Meris Ottobit Jr.
Death by Audio Reverberation Machine
Digitech FreqOut
Glou-Glou Pralines
Electro-Harmonix Synth 9
Glou-Glou Randez-Vous

ちなみにZorgtaverはフランスの新たな工房、Zorg Effectsのオクターバーなんですが、最近なぜか管楽器の 'アンプリファイ' に熱心?な同地の反応を受けてか、'インサート' 付きマイク・プリアンプBlow !は力強い逸品なり。すでにAudio-Technica VP-01 Slick FlyやRadial Engineering Voco-Loco、Eventide Mixing Linkなど同等製品が市場に現れておりますが、こーいう機器があるか無いかでそのアプローチする敷居の高さは変わりますヨ。そういえば、このZorg Effectsのみならずデジタル・ディレイUtopiaのAnasounds、フィルターの変異系ともいうべきPralinesやRandez-Vousを製作する新興の工房、Glou-Glouもフランス・リヨンの製品だった。今後はこの手のアプローチはフランスを中心に世界を駆け巡るかもしれませんね。









Gamechanger Audio
Gamechanger Audio Plus Pedal
Drolo Fx
Drolo Fx Molecular Patches
Swindler Effects
Swindler Effects Red Mountain Tremolo

あ、そうそう、そーいえばサックスで膨大なペダルを使うプレイヤーとしてはフランスで活動するGuillaume Perretさんがおりますけど、ここに新たな 'Youtuber' と言うべきか、BlendReedさんというお方が定期的にサックスでペダル・パフォーマンスを披露しているのが嬉しい限り!ラトビア共和国の新興、Gamechanger AudioのPlus PedalやPlasma Pedalといった新製品はもちろん、結構グリッチ系ペダルに対する新しい価値観を持ち合わせているのが素晴らしいなあ。ベルギーの工房、Drolo FxのMolecular Disruption DeviceやSwindler Effectsなる工房のランダマイズにトリガーするするトレモロ・ペダルは初めて見ましたヨ。ちなみに上でご紹介したBoss OC-3の動画もこの人でございます。しかしこのBlendReedさん、単にペダル繋いでサラッと吹いてみましたという感じではなく、ちゃんと管楽器奏者の視点からペダル・レビューを丁寧にやっているところが好感持てますね。










Viga Music Tools intraMic

ちなみに、このBlendReedさんがサックスのネックに取り付けているピックアップはViga Music ToolsのintraMicというフランス製のもので、同地で活動するGuillaume Perretさんが使っていたことでずーっと気になっておりました。固定する金属製ピンの付いたピックアップ本体とプリアンプがセットになったものですが、なるほど、そのセンサー部分をネックとマウスピースの間に挟み込むようにして取り付けるんですね。挟み込むことによる耐久性は分かりませんが、これは楽器に穴を開けたくない人には朗報的ピックアップなんじゃないでしょうか!また管楽器の収音では順にコンデンサー、ダイナミック、グーズネック式、そしてintraMicでのGuillaume Perretさんによる 'キーノイズ' や '被り' とフィードバック含めた音質比較動画が分かりやすい。しかしフランス恐るべし。









https://www.instagram.com/blendreed/

BlendReedさんのこーいう 'ペダル・パフォーマンス' もああ、この人ペダル大好きなんだろうなあという好奇心溢れる思いが充満していてナイス!同じ 'ペダル・ジャンキー' として多分、今後際限なくエフェクターボードは大きくなり、頻繁に買い替え、増殖していくことは間違いないと見た(笑)。次は是非ともRed Panda Tensorの個別レビューをお願い致します。そして、大量な 'ペダル・ジャンキー' といえばThe Kandinsky EffectのWarren Walkerさんもなかなかの物量で攻めており、最近は冒頭の動画でモジュラーシンセにサックスを突っ込んでおりまする(この人もintraMic使ってるのかな?)。他人事ながらコンドーさん以降のラッパ界隈・・頑張ってくれ〜。おっと、気がついたら時刻はちょうど午前4時・・ここまで来たら '完徹' まであともうちょっとだ。





ふぅ、汗だくでツマミやらスイッチ、ドラムマシンやそこらにあるものを叩いてサンプリングしては同期、奇妙なシーケンスで鳴らしている内に漆黒の闇を陽射しが空高く照らし始めました。まだ体力有り余っている人はそのままラジオ体操に行ってもらうとして(笑)、たまにはこんな眠れない夜を徹夜で過ごしてみるのも '夏の一コマ' として思い出深いんじゃないでしょうか。

2019年7月4日木曜日

クイーカできるかな? (再掲)

それまでモダン・ジャズの極北ともいうべき複雑なコード・プログレッションとインプロヴァイズの探求を行ってきたスタイルから一転、スーツを脱ぎ捨てヒッピー風の極彩色を纏い、ベルを真下に向けて屈み込みワウペダルを踏む姿は未だ '電気ラッパ' の 'アイコン' ではないでしょうか。



しかし、アレが果たしてデイビスにとって '正解' だったのか何だったのかは分からない。実際、あのスタイルへと変貌したことで従来のジャズ・クリティクはもちろん、当時、デイビスが寄せて行ったロック、R&Bからの反応もビミョーなものだったのですヨ。ここ日本でも1973年の来日公演に寄せてジャズ批評の御大、油井正一氏が 'スイングジャーナル' 誌でクソミソに貶していた。ワーワー・トランペット?ありゃ何だ?無理矢理ラッパをリズム楽器に捻じ曲げてる、ワウワウ・ミュートの名手であるバッバー・マイリーの足元にも及ばないなどと、若干、あさってな方向の批評ではありましたけど、まあ、言わんとしていることは分かるのです。極端な話、別にデイビスのラッパ要らなくね?って感想があっても何となく納得できちゃったりするのだ(苦笑)。





まだ、デイビスが最初のアプローチとして開陳した1971年発表の2枚組 'Live-Evil' の頃は要所要所でオープンホーンとワウペダルを使い分け、何となくそれまでのミュートに加えて新たな 'ダイナミズム' の道具として新味を加えようとする意図は感じられました。しかし1972年の問題作 'On The Corner' 以降、ほぼワウペダル一辺倒となり、トランペットはまさに咆哮と呼ぶに相応しいくらいの 'ノイズ生成器' へと変貌・・。それはいわゆるギター的アプローチというほどこなれてはおらず、また、完全に従来のトランペットの奏法から離れたものだっただけに多くのリスナーが困惑したのも無理はないのです。これは同時期、ランディ・ブレッカーやエディ・ヘンダーソン、イアン・カーらのワウワウを用いたアプローチなどと比べるとデイビスの '奇形ぶり' がよく分かるでしょうね。そんなリズム楽器としてのトランペットの '変形' について個人的に大きな影響を受けたんじゃないか?と思わせたのがブラジルの打楽器、クイーカとの関係なんです。デイビスのステージの後方でゴシゴシと擦りながらラッパに合わせて裏で 'フィルイン' してくるパーカッショニスト、アイルト・モレイラの姿は、そのままワウペダルを踏むデイビスのアプローチと完全に被ります。その録音の端緒としては、1970年5月4日にエルメート・パスコアール作の 'Little High People' でモレイラのクイーカやカズーと 'お喋り' する電気ラッパを披露しており、すでにこの時点で1975年の活動停止に至るラッパの 'ワウ奏法' を完成させていることにただただ驚くばかり。こんな管楽器とエフェクターのアプローチにおいて、ほんの少しその視点を他の楽器に移して見ると面白い刺激、発見がありまする。そんな 'アンプリファイ' における奏法の転換についてデイビスは慎重に、そして従来のジャズの語法とは違うアプローチで試みていたことをジョン・スウェッド著「So What - マイルス・デイビスの生涯」でこのように記しております。

"最初、エレクトリックで演奏するようになったとき、特に感じるものはなく、そのことはマイルスをがっかりさせた。コカインでハイになるのとは違っていた - むしろエレクトリックというのは徐々に体の中で大きくなっていくものだ、とマイルスは表現した。快感はある。しかしそれはゆっくりとした快感だった。やがて、必死なって音を聞こえさせようとしない方が長くプレイすることも可能だとマイルスは知った。そのためにはいくつかの調整が必要だ。あまり速く演奏してしまうと、パレットの上で絵の具が流れて混ざるように、音が混ざってしまう。そこでフレージングの考え方を一から見直すことにした。長くて二小節。メロディの合間からもっとリズムを聞こえさせたいと思っていたマイルスにとっては、実に理にかなった発想だった。"





ちなみにブラジルにはこのクイーカの他にもユニークな打楽器がいろいろあり、例えばこちらは弦を弓で叩いたり擦ることで鳴らすパーカッション、ビリンバウも有名です。この楽器の世界的名手といえば、エグベルト・ジスモンチやアート・リンゼイなどと共演したナナ・ヴァスコンセロス。すでに冥界へと旅立たれて行かれましたが、彼の擦過音はそのまま宇宙の彼方からこの地上にいまも降り注いでおりまする。









Cuica

そんなデイビスのパーカッシヴな奏法を理解しようというワケではありませんが(笑)、ラッパとは別にクイーカなんぞを手にして暇なときに擦っておりまする。このクイーカというヤツはバケツや樽に山羊や水牛などの皮を張り(近年はプラスティック打面もあり)、その真ん中へおっ立てた竹ひごを濡れた布(ウェットティッシュなども最適)でゴシゴシ擦ると例の "クック、フゴフゴ・・" と鳴るブラジルの民俗楽器です。皮の打面をチューニングしながら指でミュートすることで音程を変えることも可能で、大きさで人気のあるのは大体8インチ、9.25インチ、10インチのもので大きいほど音量も大きくなります。バケツ側の素材は昔は樽を用いたこともありましたが、その他ブリキ、真鍮、アルミ、擦る手元の見える透明のアクリル樹脂などがありますが、一般的なのはステンレスですね。そんなクイーカの音色といえば30代後半以降の世代ならNHK教育TV 'できるかな' に登場するキャラクター、ゴン太くんの鳴き声として記憶にインプットされているでしょう。最初の '音比べ' の動画では順にContemporaneaの9.25インチステンレス胴(プラスティック打面)、Lescomの9.25インチ真鍮胴(山羊革)、Art Celsiorの9.25インチブリキ胴(水牛革)で鳴らしておりますが、これだけでも結構な音質の違いが分かると思います。



Highleads Electric Cuica + New Cube Mic-W

わたしはブラジル産のArt Celsior製8インチのステンレス胴(山羊皮)を入手し、さらに日本で 'アンプリファイ' した打楽器専用のピックアップを製作するHighleadsへ連絡。通常はPearlの8インチに加工済み製品をラインナップしているのですが、工房主宰のともだしんごさんに特別にCube Micをわたしのクイーカの胴へ穴を開けてXLR端子を加工、装着して頂きました。












TDC by Studio-You Mic Option
NeotenicSound AcoFlavor ①
NeotenicSound AcoFlavor ②
Electro-Harmonix Bassballs - Twin Dynamic Envelope Filter
MG Music / MG Pedals
Rainger Fx Igor Mk.2 Pressure-Sensitive Controller
Catalinbread Csidman
Masf Pedals Possessed

XLR出力(ファンタム不可)からTDCのMic Optionを用いてフォンへと変換後、ピックアップのインピーダンスを操作出来るNeotenicSound AcoFlavorに接続。次にHatena ?のActive Spiceでプリアンプ的に音質を補正してわたしはSovtekのBassballsというベース用エンヴェロープ・フィルターに入力、ええ、'アンプリファイ' されたクイーカが見事に "ゲコーッ" と喋りましたヨ!そして 'アンビエンス' と 'フィードバック' の付加として、ここはブラジル産MG Musicのアナログ・ディレイThats Echo Folksというマニアックなヤツをチョイス。正直、見た目は普段わたしが積極的に手に取る感じではないのだけど(苦笑)、しかしこの '埃っぽい' 感じのぶっといアナログトーンは納得の 'ブラジル臭' を放ちますねえ。特に 'Pigs Tail' というルックス通りの 'ブタの尻尾' 的エクスプレッション・コントロールは変態なんですが・・残念ながらわたしのものは欠品(涙)。もしかしたらRainger Fxの感圧パッドセンサー 'Igor' を流用すれば使えるかもと思い・・注文、現在、海の向こうから届くのを待ちわびておりまする。そしてさらにCsidmanやPossessedのような 'グリッチペダル' を繋いでやったりすると勝手に奇妙なリズムを生成してくれますヨ(笑)。





Meris Hedra - 3-Voice Rhythmic Pitch-Shifter

また、そんなグリッチ効果とは別にピッチ・シフターをクイーカで試してみても面白いかもしれない。DSPの 'アナログ・モデリング' としてLIne 6→Strymon(Damage Control)と渡り歩いてきて今、この分野で存在感を醸し出しているMerisのHedra。本機は '3-Voice Rhythmic Pitch-Shifter' と呼ばれており、3ヴォイスのピッチとディレイの複合機でクロマティック及び指定キーによる 'インテリジェント・ピッチシフト' 機能、さらにマイクロチューニングによるデチューン機能で細かなピッチ補正にも対応します。そしてピッチヴォイスにディレイをかけることが可能で、ハーフスピード、オートスウェル機能を装備。さらに外部エクスプレッション・ペダルに各パラメータを割り当てて 'ワーミー' 効果から、タップテンポやMIDIによるビートクロックシンク機能でその名の如くリズミックなピッチシフトも出来るなど、ちょっとクイーカで使うには勿体無くも試してみたい機能満載です。日本では7月4日の今日発売!








ちなみにここではHattena ?のActive Spiceを取り上げましたが、より '生っぽい' 音質に補正できるプリアンプ、PureAcousticを試してみるのも良さそうです。Active Spiceでは独自のパラメータと言える4つのツマミ、全体を調整する音量のVolume、音圧を調整するSencitivity、歪み量ではなく音の抜けや輪郭の調整を施すGain、Colorはコンプ感とEQ感が連動し、ツマミを上げて行くほどそのコンプ感を解除すると共にトレブリーなトーンの構成でしたが、このPure Acousticはいわゆるプリアンプらしい機能に '独自のスパイス' を振り掛ける仕様。一見、取っ付きにくそうな整然と並ぶ6つのツマミに怯みますけど・・どれどれ。

⚫︎Master: 出力される最終的な音量を調節します。
⚫︎Body: 楽器本体のサイズ感を豊かに増強させます。右に回すほど楽器の存在感がしっかり押し出されるようになります。
⚫︎Lo: Bodyツマミで決めた位置に対して、低域の膨らみ感を調節します。左に回すほどスッキリとしたタイトなサウンドになります。
⚫︎Hi: 弦を弾いたときの音の硬さを調節します。右に回すほど硬い音に、左に回すほど柔らかい音になります。
⚫︎Wood: 楽器の持つ木の鳴りの成分を電気的に強調させたり抑えたりします。左に回すと共振部分が抑えられた大人しい落ち着いた雰囲気に、右に回すと木が響いているような広がりが得られます。演奏する楽曲の楽器編成などに合わせて調節して下さい。
⚫︎Density: 弦を弾いたときのタッチに対するレスポンスの立ち上がり比率を決めます。左に回すと過度に立ち上がり、右に回すほどその感度が圧縮されます。タッチとレスポンスのバランス点を越えると音の雑味や暴れはさらに抑えることが出来ますが、音の表情は均一化されていきます。

なるほど。特に 'Body' と 'Wood' というアコースティックの '鳴り' に特化した2つのツマミがキモのようです。このあたりをEQのLoとHiを補助的に配置して、あえて '鳴り' というイメージで2つのツマミに落とし込んだのは見事ですね。Magical Forceもそうなんだけど、NeotenicSoundの製品は視覚的に把握させながら耳で音を決めていくセンスが抜群だと思います。EQの何kHzをブーストして・・なんて言われてもよく分からないけど、こっちのツマミが '箱鳴り' で隣のツマミで 'エッジ' を出して、そこにローかハイが足りてないと思ったらEQしてという方が把握しやすく音が目の前にある感じ。また本機は、ダイナミックレンジ確保の為にDC18Vの専用電源でヘッドルームを広く取った設計もグッド。ツマミの構成から 'アコギ' 専用と捉えられがちですが、いわゆるアコースティック楽器全般に対応しているそうです。残念ながらPure Acousticの動画はありませんが、コレと似たパラメータを持つ '姉妹機' 的存在なベース用プリアンプDyna Forceの動画をどーぞ。こっちをクイーカで試してみても面白いかもしんない。



クイーカによるポップな楽曲と言えば何があるのでしょうか?マルコス・ヴァーリの 'Flamengo Ate Morrer' を始め、ブラジルのMPB辺りを漁ってみればいろいろ出てくるのは当然ですけど、意外なところではファンカデリック1979年のディスコ・チューン '(Not Just) Knee Deep' が絶妙なスパイスとして効いておりまする。

2019年7月3日水曜日

未来世紀ブラジル (再掲)

ラテン・アメリカの文化圏の中でもブラジルは特別な存在ではないでしょうか。唯一ポルトガル語を公用語としているほか、俗に '音楽大陸ブラジル' などと呼ばれているように、そこにはアフリカとヨーロッパからの影響が '異種交配' した独自の血脈を誇っております。伝統的なショーロからサンバ、ブラジル最初の '新世代' とも呼べるボサノヴァといった下地がそのまま、現在まで豊富なポップ・ミュージックの '前衛' として息づいているのです。



アントニオ・カルロス・ジョビンとジョアン・ジルベルトのボサノヴァによる産声は、より大衆的なスタイルで世界から愛されたセルジオ・メンデス、ロック世代と '共闘' するかたちでマルコス・ヴァーリやジルベルト・ジル、カエターノ・ヴェローゾらMPB世代に引き継がれて、新たなブラジル流ポップを世界に証明しました。この '音楽大陸' が持つその膨大な音源はとてもこの項だけでは扱いきれないので(汗)、個人的に引っかかった 'レアグルーヴ' 的色彩の濃いものを中心にピックアップします。







ブラジル北東部はペルナンブーコ州の土着音楽をルーツにボサノヴァなどとミックスしたスタイルでMPBを代表するエドゥ・ロボ。アマゾン出身で現在はニューヨークを拠点に活動するヴィニシウス・カントゥアリアのルーツ的存在とも言えます。続いてプログレッシヴさが 'サマー・オブ・ラヴ' の空気と濃密に溶け合った奇跡の一枚として、タンバ・トリオのピアニスト、ルイス・エサが 'Familia Sagrada' というコミューン的グループで1970年にメキシコで制作した最高の一枚!組曲形式の一曲目 'Homen Da Sucursal / Barravento' の変拍子全開な疾走感から完全にヤラレてしまいます。こんな '捻れたポップ' 感覚はブラジルという場所以外からは生み出せないでしょうね。そしてブラジル流テクノポップと言うべきか、ヴォコーダー全開のエグベルト・ジスモンチによる異色エレクトロ・ポップ 'Coracao Da Cidade' を始め、ミルトン・ナシメント、エルメート・パスコアールといったプログレッシヴなスタイルで世界に打って出た者たち。またジャズやフュージョンのアレンジで1970年代に活躍したデオダードなど、ブラジルから発信されるその '引き出しの多さ' は世界的にも類を見ないでしょう。





そんなユニークなブラジルの個性の中でも奇才、エルメート・パスコアールほど 'ジャンル' というカテゴリーを超えて探求する音楽家はいないでしょう。アイルト・モレイラらとのクォルテット・ノーヴォからラウンジな短命バンド、ブラジリアン・オクトパスを経て1970年、いよいよマイルス・デイビスとの共演 'Nem Um Talvez' にまで至ります。まさに 'エルメート節' 全開で 'Little Church' と 'Selim' のヴァリエーション的展開含め、2枚組作品 'Live-Evil' に収録されてフォーキーとアンビエントの狭間を口笛吹きながら浮遊・・昇天。しかしブラジルのマルチ・プレイヤーって誰でも皆、こーいう 'ジャンク' からブラジルという大地に根付く自然の騒めきに耳をそばだて、それらが宇宙との交信を目指す壮大なスケールへと直結する '信仰' のようなものに支えられている気がしますヨ。









そんなブラジルといえば'1960年代後半の 'サマー・オブ・ラヴ' の季節と共にカエターノ・ヴェローゾ、ジルベルト・ジルらを中心に彷徨い出たムーヴメント、'トロピカリア' とブラジル流サイケデリック・ロックの潮流がありました。まあ、当時でいうところの '世界同時革命宣言' 的なロックと若者の意識変革なのだろうけど、そんなMPB(ムジカ・ポプラール・ブラジレイラ)よりもっと下世話な連中からこぼれ落ちてくるものこそ今の耳を引きまする。





そんな 'トロピカリア' 革命の中でひとりブッ飛んだ方向を向いていた男、トム・ゼー。1960年代後半から70年代にかけて散発的にアルバムを発表してきましたが、むしろ彼のユニークさは 'トロピカリア' 再評価とシカゴ音響派などへの影響を経て、元トーキング・ヘッズのデイヴィッド・バーン・プロデュースによる1998年作品 'Com Defeito de Fabricacao' から2000年の作品 '真実ゲーム' (Jogos de Armar) の頃に盛り上がったイメージがあります。









このガレージサイケ感というかやさくれ具合というか(笑)、同時代の日本のGSとかもそうなのだけど、こういう世界的流行の通俗性溢れる 'コピー' からこぼれ落ちてくるものほど、よりその国の土着性が垣間見れる瞬間がありますね。この辺りの 'ブラジリアン・レアグルーヴ' コンピレーションとしては上述した 'Brazilian Guitar Fuzz Bananas' のほか、'Soul Braza: Brazilian, 60's & 70's Soul Psych Vol.1 & 2'、'Love, Peace & Poetry: Brazilian Psychedelic Music'、'The Brasileiro Treasure Box of Funk & Soul' などで幅広く聴くことが出来まする。しかしマイナーな音源なのかと思いきや、実はメジャーレーベルが権利を持ってるからか案外とYoutube以外での視聴制限がかけられているのが多い・・(涙)。









このひとの持つコード感がもの凄く好きだ。自分の 'こえ' の最も波長の合うところを分かっているというか、良い意味でずっとそれはソロ1作目から変わりません。まったくの 'ノー・チューニング' によるDanelectroの11弦ギターを掻き鳴らし、一切の音楽的楽理から距離を置いたところでその個性を獲得したアート・リンゼイは、いわゆる '本場' ブラジルが放つ '取っ付きにくさ' をポップ・ミュージックとの橋渡しとして上手く機能させました。ああ、まるで宇宙遊泳をしているようなこの無重力感。まるで宇宙の果てへたゆたうように飛ばされながら一切の真空の中、耳元で囁かれている宇宙飛行士のような気分・・。ボサノヴァに象徴される '余白' とコードの魔力、首都ブラジリアを設計したオスカー・ニーマイヤーの持つ近未来的デザインと宇宙飛行士がボサノヴァと融合する・・分かりますかね?この感覚。







過去と未来が混在する 'コスモポリタン' としてのブラジル。そういえば2004年頃、ブラジルの現代美術を紹介する催しとして 'Body Nostalgia' を見に行ったことを思い出します。タイトルはブラジル現代美術の出発点である女性作家リジア・クラークが自ら一連の作品に与えた名称 'Nostalgia do corpo' (身体の郷愁)から取られており、それはよくブラジルの雰囲気を説明するときに用いられる 'Saudade' という言葉をグッと深化させて、'Nostalgia' の語源がギリシア語の '帰郷(ノストス)' と '苦痛(アルジア)' の造語から派生したということと深く結び付いているということ。つまりブラジルという場所は、根元的に多くの '痛み' とその '記憶' から身体の新たな '出会い' を促しているのではないでしょうか。それはここで聴ける土着的なものと洗練されたハーモニーの '異種交配' において、ブラジルほどその自浄作用が機能している場を他に知らないからです。

2019年7月2日火曜日

7月のラウンジ・コレクション

あの猛暑だった去年の夏。それでは今年は?ということで真夏にふさわしい音色のヴァイブ、スティールパン、シタール、ファンクやボサノヴァ、ロックステディからレゲエといった緩〜い感じのグルーヴ、行ってみましょうか。




ラテン・ヴァイブの王様、カル・ジェイダー、ファンキー・ヴァイブの王様、ビリー・ウッテン、アフロ・ヴァイブの王様ならさしずめムラトゥ・アスタトゥケになるでしょうか?そしてラガ・ヴァイブの王様?と言ってよいのか、ジャマイカにはこのレニー・ヒバートがおります。さて、一転してマーティン・デニーと並ぶエキゾチカの作曲家、レス・バクスターのキャリアの中で最も怪しい時期とされているのがこの 'KPMライブラリー・ミュージック' に提供していたもの。すでにAPIでロジャー・コーマン監督のヒッピーたちを題材にした 'B級バイカーズ' 映画でファンクに接近したバクスターは、このエキゾな 'KPM音源' でさらにもう一歩踏み込んだブラジル風 'エキゾぶり' を発揮します。







ここでの選曲の中心はマイアミ〜バハマ一帯、実は音楽的に '不毛地帯' ではなかったことを証明する怪しいシリーズ 'West Indies Funk' 1〜3のコンピレーション、そして 'TNT' ことThe Night Trainの 'Making Tracks' など一連のTrans Airレーベルからの再発でお送りします。う〜ん、レア・グルーヴもここまできたか!という感じなのですが、やはり近くにカリプソで有名なトリニダード・トバゴという国があるからなのか、いわゆるスティールパンなどをフィーチュアしたトロピカルな作風が横溢しておりますね。実際、上記コンピレーションからはスティールパンのバンドとして有名なThe Esso Trinidad Steel Bandも収録されているのですが、その他は見事に知らないバンドばかり。また、バハマとは国であると同時にバハマ諸島でもあり、その実たくさんの島々から多様なバンドが輩出されております。面白いのは、キューバと地理的に近いにもかかわらず、なぜかカリブ海からちょっと降った孤島、トリニダード・トバゴの文化と近い関係にあるんですよね。つまりラテン的要素が少ない。まあ、これはスペイン語圏のキューバと英語圏のバハマ&トリニダードの違いとも言えるのだろうけど、ジェイムズ・ブラウンやザ・ミーターズといった '有名どころ' を、どこか南国の緩〜い '屋台風?' アレンジなファンクでリゾート気分を盛り上げます。ジャマイカの偉大なオルガン奏者、ジャッキー・ミットゥーとも少し似た雰囲気があるかも。しかし何と言っても、この一昔前のホテルのロビーや土産物屋で売られていた '在りし日の' 観光地風絵葉書なジャケットが素晴らし過ぎる!永遠に続くハッピーかつラウンジで 'ミッド・センチュリー・モダン' な雰囲気というか、この現実逃避したくなる 'レトロ・フューチャー' な感じがたまりません。









同じサムネ画ばかりで目がクラクラしているでしょうけど、この亜熱帯にラウンジな感じはまだまだ続きますヨ。誰かすぐにホテルを手配して航空機チケットをわたしに送ってくれ〜。今夜一眠りして、翌朝目が覚めたら一面、突き抜ける青空と青い海、降り注ぐ日差しを浴びながらプールサイドで寝そべっていたらどれだけ気持ち良いだろうか。そして、バハマといえば首都のナッソー(Nassou)、そしてナッソーといえば 'Funky Nassou' ということで、ここら辺で最も有名なのがバハマ出身のファンクバンド、The Bigining of The Endでしょう。長いことその 'カリビアン・ファンク' を代表するバンドであり、1971年のヒット曲で聴こえる地元のカーニバル音楽、'ジャンカヌー' のリズムを取り入れたファンクは独特です。彼らのデビュー・アルバムは全編、優れたファンクを展開しながらこの後、ディスコ全盛期の1976年にバンド名そのままの2作目をリリースして消えてしまいました。







グッと陽射しの照り付ける7月の暑さを無視するようにチャカポコと一定のリズムで進行するリズムボックスの 'サイケ' 具合もなかなかのもの。一昔前はホテルのラウンジバンドでオルガンの伴奏用であったこのチープな機械は、あのスライ・ストーンがぶっ飛んだ状態でスイッチを入れて新たなファンクへと蘇生させました。また、ダブの巨匠であるリー・ペリーの 'Blackark' スタジオにもKorg Mini Pops 3リズムボックスのOEM、Uni-Vox SR-55でチクタクと亜熱帯のリズムを刻みます。そして '太陽神' として '宇宙の声' をゲットーに届けるサン・ラもフリーフォームにチャカポコとディスコ!しかし、無機質に何の感情もなく繰り返すリズムボックスの響きってサイケだよなあ。









さて、カリブ海に面した西インド諸島がコロンブスによる誤解から名付けられたことは有名ですが、そこからグイッと太平洋を超えてインドに寄り道してみましょうか。と言っても 'ホンモノ' は必要なくあくまで雰囲気だけ味わえれば良いのだからこんな 'インドmeetsボサノヴァ&ファンク' なんてのはどうでしょ?先ずは謎のグループ、ザ・ソウル・ソサエティの 'The Sidewinder' で、そう、一聴してお分かりのようにリー・モーガンのヒット曲ですね。これは1960年代後半に 'Satisfaction from The Soul Society' というアルバムをDotというレーベルからリリースしたグループで、その他、当時のヒット曲であるサム&デイヴ 'Soul Man' やザ・ローリング・ストーンズ 'Satisfaction'、ミリアム・マケバの 'Pata Pata' などをファンキーにカバーする '企画もの' 的一枚のようです。本曲のラテン・アレンジによるイントロで鳴るシタールの '響き'、ええ、たったこれだけのアレンジで濃厚な 'インド臭' を放ちます。続いて、インドの古典音楽が持つ即興演奏の '構造' を自らのビッグバンドに取り入れたドン・エリス謎のお宝音源。'Hindustani Jazz Sextet' という名の実験的グループによるライヴ音源のようで、ジョー・ハリオットよりもさらに早い1964年の時点でその後の 'インド化' の端緒を試行錯誤していたとは・・(驚)。しかしその中身はシタールとボサノヴァがラウンジに融合するという怪しげな展開・・コレ、もっと音源ないんでしょうか?ここでのタブラやシタールの演奏はHari Har Haoなるインド人?が担っているようですが、ヴァイブのエミル・リチャーズやベースのビル・プルマーなど、エリス同様にインドへかぶれてしまう連中が参加しているのも興味深い。さて、コリン・ウォルコットといえば類い稀なる無国籍グループ、オレゴンやマイルス・デイビス1972年の問題作 'On The Corner' への参加が知られておりますが、そのキャリア初期にはラヴィ・シャンカールに師事してシタールを習得、ビル・プルマーやカリル・バラクリシュナ、ビッグ・ジム・サリヴァンらと並び米国人の 'インド化' に大きく貢献しました。このアラン・ローバー・オーケストラもそんな 'サマー・オブ・ラヴ' の季節を象徴する一枚。シタールでボサノヴァな 'マシュ・ケ・ナダ' が怪しくも楽しい〜。最後はアシッド・ジャズからモンド・ミュージックへの流れで 'ラーガ・グルーヴ' きっかけの象徴的一曲となったザ・デイヴ・パイク・セットの 'Mather'。このグループでパイクと並ぶ '双頭' リーダーのひとり、ギター、シタール担当のフォルカー・クリーゲルは本曲収録のアルバム 'Noisy Silence - Gentle Noise' のライナーノーツでこう述べております。

"まだ2週間にしかならないけれど、インドの楽器シタールと取り組んでいるところなんだ。ご多分にもれず、この偉大な楽器のすばらしいサウンドに興味を持ったからね。'Mathar' っていうのは、ラヴィ・シャンカールが人前で演奏できるようになるまで、グルの元で14年間学んでいた北インドの村の名前なんだ。でも、それだけじゃない。この言葉には、'Mathar' が 'Mother' (母)と 'Sitar' という言葉も含んでいるように思えるんだ。"







さあ、そろそろ大団円の雰囲気が漂ってまいりました。ここでの選曲は2011年にTrans Airなるレーベルから登場したコンピレーション 'West Indies Funk' を中心にお送りしておりますが、そんな一連の '再発' の中で唯一単独のアルバムとしてリリースされたのがこの 'TNT' ことThe Night Trainの 'Maiking Tracks'。この粘っこいセカンドライン風ファンクの蒸しっとしたグルーヴには遠くニューオーリンズへの憧憬が詰まっておりまする。





そんなラウンジな 'TNT' に続いて、夏といえば忘れちゃいけないヴァイブの音色ってことで、再びスカ〜ロック・ステディ期を代表するジャマイカ唯一のヴァイブ奏者レニー・ヒバートに締めて頂きましょう。'TNT' のワルター・ワンダレイのような 'エレベータ・ミュージック' 的オルガンの調べやレニー・ヒバートの途中の '針飛び' 含め(笑)、ああ、プールサイドに寝そべって永遠の優雅な休日を過ごすべくウトウトと・・これぞ常夏の白日夢なり。


2019年7月1日月曜日

夏の始めはミニマル・ダブ (再掲)

以前にお届けした '夏の終わりにミニマル・ダブ' を '再掲' して、再び '夏の始まり' へとループさせてみました(笑)。これを書いた2年半前の晩夏は雨ばかりの冷夏だったようで・・どことなくミニマル・ダブもひんやりとした空気の中で響いておりました。





そんな '一発目' はフランスで活動するVOSNEのミニマル・ダブ・セッション。この 'サウンドスケイプ' ともいうべき深〜いリヴァーブ&エコーの音像から滲み出す '4つ打ち' の美学は、まさにジャマイカで育まれたダブの世界観がそのまま、暗く冷たく閉ざされたヨーロッパの地で隔世遺伝した稀有な例と言っていいでしょうね。1996年、ドイツでダブとデトロイト・テクノという真逆なスタイルから強い影響を受けたモーリッツ・フォン・オズワルドとマーク・アーネスタスは、自らBasic Channelというレーベルを設立してシリアスな 'ミニマル・ダブ' を展開するリズム&サウンドと、1970年代後半からニューヨークでダブを積極的に展開させたロイド "ブルワッキー" バーンズの作品を再発させるという、特異な形態でダブを新たな段階へと引き上げることに成功しました。





当時、世界的に興隆したドラムンベースやエレクトロニカの手法の中心にはダブが色濃く漂っており、それをミニマルなテクノの様式で 'ヴァージョニング' させたこのミニマル・ダブは、Basic Channelのサブ・レーベル、Chain Reactionから登場したロバート・ヘンケと彼のプロジェクトのモノレイク、ステファン・ベトケのプロジェクトであるポール、そのベトケが設立したレーベルScapeから登場したキット・クレイトンらが続くことで、ひとつの様式美を打ち立てます。そしてBasic Channelの '心臓部' ともいうべきスタジオ 'Dubplates & Mastering' と敏腕エンジニア、ラシャド・ベッカー(ベトケもカッティング・エンジニアとして関わってます)が彼らの空間生成に寄与するという万全の体制、やはりダブにとってスタジオは創造の源泉と深く結び付く重要な '聖地' なのです。最初の動画はBasic Channelの質感、ミックスなどを伝えるべく50分近くのノンストップ・ミックスでまとめた優れた動画。うん、これだけでミニマル・ダブの構造がよく分かります。






彼ら 'Basic Channel' と 'Dubplates & Mastering' の協同体制は、特にモーリッツとマークのふたりからなるRhythm & Soundの 'ルーツ志向' から、ジャマイカの歌手であるJennifer Lalaを迎えた 'Queen In My Empire' や、1998年の 'イルビエント' 末期、ニューヨークのアンダーグラウンドでひっそりとカセットでリリースされたSpectreなるヒップ・ホップ・ユニットの作品も 'Dubplates & Masterring' で 'ワッキーズ' 同様にリマスタリングされて再発されるなど、その原点への配慮も忘れてはおりません。やはりこの硬質なダブの質感は、当然、亜熱帯の緩〜い気候と共に育まれたジャマイカ産の 'ルーツ・ダブ' とも、ニューウェイヴと共にメタリックな質感を持った 'UKダブ' とも違う、テクノを経過したドイツ産の 'Dubplates & Masterring' 特有のものでしょうね。









またミニマル・ダブの流れは、ヴラディスラヴ・ディレイやこのヤン・イェリネックなどに聴けるエレクトロニカ寄りというか、Mille Plateauxレーベルのクリック・テクノっぽい質感を持ちながら、やはりダブとテクノをコンピュータを媒介して '換骨奪胎' させる方向へと波及します。古いジャズのレコードのスクラッチを採取して生成したグリッチは別にして、低域の処理などで典型的ダブっぽさとは一味違う感じ。ミニマル・ダブと比較する意味でこの名盤を置いてみました。後半2枚は直接ミニマル・ダブと関係するワケではありませんが、やはりビート・ミュージックの極北を極めた存在として、ミニマル・ダブと同時期に話題をさらったオウテカ2001年の傑作 'Confield' とEDM全盛の中でストイックにビートを追求するダブステップの御仁、ブリアル2007年の衝撃デビュー作。それぞれ無機質でありながら深く暗いリヴァーブの音像とミニマルの構造から積み上げていくセンス、これ全てダブの血脈が息づいている証拠でもありまする。







肝心のモーリッツさんは現在Moritz Von Oswald Trioとして活動しており、'Sounding Lines' ではフェラ・クティのアフロビートを支えた伝説的ドラマー、トニー・アレンとの 'コラボ' を果たしております。しかし、彼らのライヴ動画を見る限りモーリッツさん、ほとんど残業でメール・チェックしている部長にしか見えないな(笑)。





DAWと並行して、ここ最近のガジェット的なテクノ機器の隆盛と平準化は、上述したVOSNEやこちらドイツのMartin Sturtzerなどにより 'Youtuber' 的なパフォーマンスで 'ミニマル・ダブ' の音作りを開陳致します。すべては誰もが手に入れられる環境にあって、いかに音作りと編集、ミックスにおいてそのクオリティーに差を付けられるのか。センスはもちろんですが、いかに飽きさせずに反復するための '展開' を描いていけるかがカギでしょうね。さあ、いよいよ夏本番。こんなミニマル・ダブでひんやりとした汗をかいて 'Chillout' して下さいませ。

2019年5月5日日曜日

ピックアップあれこれ (再掲)

昨日取り上げたオーストラリアでスティーヴ・フランシスさんが手がけるピックアップの工房、PiezoBarrel。管楽器用のピックアップ・マイクとしては完全に '過去の遺物' となったマウスピース・ピックアップですけど、まだまだホーンでエフェクターを使いたい人には 'ニッチな' 需要があるのです。個人的に驚いたのがオスマン・トルコの軍楽隊の伝統なのか、バルカン半島一帯からトルコ、ギリシャにかけてクラリネットを中心に小さな工房が頑張っていること。とりあえず、ここでは管楽器の 'アンプリファイ' が始まった1960年代後半から70年代、そして最近の製品のいくつかを取り上げてみたいと思います。








H&A.Selmer Inc. Varitone ①
H&A.Selmer Inc. Varitone ②
H&A Selmer Inc. Varitone "Full Set"

1965年に管楽器メーカーとしてお馴染みH&A.Selmer Inc.が手がけた元祖 'アンプリファイ' サウンド・システム、Varitone。Selmerブランドのほか、管楽器への市場拡大を狙ってなのかBuesherブランドでも販売されておりましたが、製作自体は現在でもPAの分野で大手のElectro Voiceが担当したようです。振動を感知して電気信号に変換するピエゾ・トランスデューサー方式のピックアップは、音源に対して理想的な取り付け位置を見つけるのが難しく、マウスピース部分はもちろん、金管楽器のリードパイプやベルの真横などいろいろ試しながら完成に漕ぎ着けたとのこと。ちなみにVaritoneは通常の '3300 Auditorium Model' のほか、上の動画にある '3100 Club Model' の2種がラインナップされておりました。この 'Club Model' はライヴなどの汎用性を高めた '若干' 小ぶりな仕様で、'Auditorium Model' のアンプ正面に備えられていたTremoloの 'Speed' と 'Depth' コントロールは外部からのコントロールに移されております。



またSelmerはVaritone専用のほか、サックス用ネックと共に 'Cellule Microphonique' の名で単品でも販売しており、これは当時日本の管楽器店も輸入販売しておりましたが・・いやあ、ピックアップ本体で2万円、取り付け用器具込みのサックス用ネックが1万円と、そのまま現在の価格にしても半端ではない高価なものだったようです。これは売れなかっただろうなあ。ちなみにVaritoneのピックアップは真鍮製の台座をネックやリードパイプに接合し、ピックアップ本体は台座とスクリューネジで着脱することができます。










C.G. Conn Multi-Vider
C.G. Conn Model 914 Multi-Vider

続いて登場したのが管楽器の名門、C.G.ConnのMulti-Viderであり、Selmer Varitoneに比べると他社の製品、ギター用のエフェクター(当時は 'アタッチメント' という呼称が一般的)などとの互換が可能な汎用性に優れておりました。また、ピックアップ自体も後発のGibson /MaestroやAce Tone Multivox専用のピックアップと互換性のある2つのピンでピックアップ本体に差し込むもので、その普及という点ではVaritone以上の成功を納めます。こちらの設計はファズやワウなどの製作をするJodan Electronicsが担当し、それまでのVaritoneにあった不自由さから一転、後発のVox / King AmpliphonicやGibson / Maestroの製品にも採用される、マウスピース側に接合するソケット部とピックアップ本体をゴムパッキンで嵌め込む方式をMulti-Viderが最初に始めました。またメーカーからはカールコードと通常のケーブルの2種が用意されて、ピックアップを外した後は真鍮の蓋で覆い通常のマウスピースとして使用することが可能です。







ちなみにConnは自社製品のほか、Robert Brilhartさんという方が手がけるデンマーク製マウスピース・ピックアップ、'R-B Electronic Pick-Up' なども純正品として推奨していたようです。こちらはピックアップとアンプの間にパッシヴのヴォリューム・コントロールを用意して、奏者の腰に装着するかたちとなりますね。この 'R-B Electronic Pick-Up' は当時、サックスやトランペットはもちろん、フルートへの使用などかなり普及しておりました。




さて、この 'R-B Electronic Pick-Up' とよく似たものとしては英国でジミ・ヘンドリクスも愛したファズ・ボックスの名品、Fuzz Faceを製作したIvor Arbiter氏による管楽器用マウスピース・ピックアップを発見!クラリネット用でパッシヴのヴォリューム・コントロール装備の 'The Bug' とサックス用の 'Brilhart' の2種が用意されているのですが、これらは多分Robert Brilhartさんが手がけたOEM品だと思いますね。このような付属ケーブルにおいてカールコードと通常のストレートのほか、標準フォンとミニプラグの2種が用意されているのは、これが管楽器用ユニットから足元のギター用ペダルなどへそのまま 'プラグイン' 出来る汎用性に対応したものですね。










Gibson / Maestro W-1 Sound System for Woodwinds
Gibson / Maestro W-2 Sound System for Woodwinds
Gibson / Maestro W-3 Sound System for Woodwinds

一方でGibson / Maestroのものは、ピックアップの本体部分はサックスのリード、クラリネットのバレルに一体成型されており、そこへ2つのピンを差し込んで使用するかたちとなります。このMaestro Woodwindsは1967年のW-1から1971年のW-3に至るまでこの分野における最高のヒット作となり、エディ・ハリス、トム・スコット、ポール・ジェフリー、ジョン・クレマー、ドン・エリス、マザーズ・オブ・インベンションのイアン・アンダーウッドやバンク・ガードナーなど多くのユーザーを獲得、変わったところでは作曲家の富田勲氏も '姉妹機' にあたるG-2 Rhythm n Sound for Guitarと共に愛用しておりましたね。この錚々たる名前からも分かるように、それは現在でも状態良好の中古がeBayやReverb.comなど定期的に出品されていることからも裏付けるでしょう。



Gretsch Tone Divider Model 2850 ①
Gretsch Tone Divider Model 2850 ②
Gretsch Tone Divider Model 2850 ③
Gretsch Effects

そんな 'お宝探し' も楽しいReverb.comでGretschのTone Divider Model 2850がオリジナル・ケース付きで出品されました!GretschってExpanderfuzzや 'Play Boy' シリーズなどのエフェクターが中古で現れることがあるのですが、妙なデザイン含めイマイチその全貌が掴めないのですヨ。このTone DividerはC.G.Conn Multi-ViderやVox Ampliphonicと同時期の1967年に発売されたもので、4つのツマミにClarinetとSaxophoneの入力切り替えやSound On/Off (Effect On/Off)のスイッチ、そしてNatural、English Horn、Oboe、Mute、Bassoon、Bass Clarinet、Saxophone、Cello、Contra Bass、String、Tubaの11音色からなるパラメータはMaestro Woodwinds辺りを参考にしたっぽい感じ。ここにTremolo、Reverb、Jazzというエフェクツをミックス(外部フットスイッチでコントロール可)するという、まあ、同時代の管楽器用エフェクターで定番の仕様となっております。この金属筐体に描かれた木目調のダサい感じがたまりませんねえ(笑)。ちなみにeBay出品①のものはその価格もさることながら、'A Product of Sound Research' の名で 'Telexピックアップ' (多分Conn Multi-ViderのOEM品)も付属しているのでかなりのお得ですヨ!。









Vox / King Ampliphonic
Vox / King Ampliphonic Pick-Up

このMulti-Viderとほぼ同時期に登場したのが英国の名門ブランド、Voxが手がける 'Ampliphonic' のシリーズです。これまでのピックアップがパッシヴだったのに対してこの 'Ampliphonic' ピックアップは、'A〜B〜C' と可変するヴォリュームの付いたアクティヴの仕様が特徴。基本的な作りはSelmer Varitone同様スクリューネジの着脱(互換性はない)となりますが、一部、Multi-ViderやGibson /Maestroとの互換性に合わせてゴムパッキンのソケット部を持つ製品もラインナップされました。また、管楽器市場への拡大を狙ってか当時、Voxと同じく傘下であったKingのブランドでも販売して総合的なPA製品含め展開しました。






Vox 'Ampliphonic' Woodwind and Brass Instruments
Piezo Barrel on eBay
Piezo Barrel Wind Instrument Pickups
Piezo Barrel Instructions
vimeo.com/160406148

そして、こちらはVoxが 'Ampliphonic' シリーズのひとつとして展開した管楽器群。すでにクラリネットのバレルやコルネット、トランペットのベル横に穴開け加工を施し、そのままピックアップ装着してステージに直行できます。このコルネットなどは同じく傘下のKingのOEMじゃないかな、と思うのですけど、ベル横に開けられた穴はまず小さなピンで塞ぎ(失くしそう)、それからネジ式の蓋で閉じるという構造となっております。ドン・エリスなどもそうなのですけど、管楽器奏者にとってマウスピースというのは音色を司るものから加工を嫌がる人も一定数おり、このような場合にラッパのリードパイプ上やベル横に穴を開けて装着する場合があります。PiezoBarrelとエンドース契約していると思しき?ユーザーのひとり、Tony Dimitrioskiさんなるラッパ吹きもがっつりベル横に穴を開けて装着。

さて冒頭でも触れましたが、このような旧態依然なマウスピース・ピックアップも一部、エフェクツを愛する管楽器奏者たちには需要があるようで(わたしです)、何故か古くはオスマン・トルコの軍楽隊に由来するのか、バルカン半島から地中海一帯において小さな工房が頑張っております。その中からブルガリアのNalbantov Electronics、ギリシャのTap ElectronicsなどがオーストラリアのPiezoBarrelのライバルとして今後注目されるかもしれません。というか、ワイヤレス・システムに対応していたり、オクターバー内蔵のピックアップを製作したりと製品開発の力の入れようはこちらの方が上かも・・。







Nalbantov Electronics
Nalbantov Electronics on eBay

PiezoBarrelのライバルその1。ブルガリアの工房Nalbantov Electronicsです。ガレージ臭たっぷりのPiezoBarrelに比べて、製品としてよりハイクオリティなパッケージとなっており、専用のオクターバーからDIYキット、ワイヤレス・システムに至るまで幅広く対応しております。動画は穴開け用のドリルなどがピックアップと共に梱包された 'DIY' キットの作り方ですが、いやあ、サックスのネックを万力などで固定せずそのままドリル貫通・・振動でブレて穴がズレたり抑えている指いっちゃいそうで怖い(苦笑)。





TAP Electronics
TAP Electronics Pick-Ups

PiezoBarrelのライバルその2。ギリシャのTAP Electronicsです。こちらもNalbantov同様に幅広いラインナップを揃えており、PiezoBarrelに比べ製品としてよりこなれた設計となっておりますね。昨日の項でも紹介しましたがピックアップ本体にオクターバーを内蔵させるとか、なかなかメンドくさがりな管楽器ユーザーの心理をよく読んでいる(笑)。この 'Octa' はオクターヴトーンのほか、1バンドEQ、ヴォリュームの3つのパラメータを持ち、USBによる90秒の急速充電により8時間ほどのパフォーマンスが可能。そろそろPiezoBarrel、Nalbantovに続いて本格的にeBayへ 'お店' を構えて頂きたいなあ。









The Little Jake ①
The Little Jake ②

こちらは '番外編' というか、バスーンの 'アンプリファイ' として唯一無二な存在のピックアップ、The Little Jake。どちらといえばアンサンブルの楽器で即興演奏とは無縁のバスーンは、ポール・ハンソンさんの演奏と共にその鈍重なイメージをマイケル・ブレッカーばりに刷新しました。細いパイプに穴を開けて装着するピックアップとガムの空き缶を利用したプリアンプがセット。その下のJim Dunlopのデモ動画としてバリトン・サックスのマウスピースに接合されているのは、2010年前後に英国で製作していた工房、Pasoanaのマウスピース・ピックアップ。Nalbantov ElectronicsのNCM600との比較動画なども残されておりますが(ロシア語なんでサッパリ・・)、このグルグル渦巻き柄のPasoanaピックアップはワイヤレス・システムなど幅広く手がけていたものの残念ながら消滅・・。ああ、この 'ニッチな' 分野で生き残るのは生半可なことではないようです。











Gibson / MaestroのSound System for Woodwinds用ピックアップはほとんどConnと大差ないので割愛して、管楽器用 'アンプリファイ' システムの最後発、Hammondが開発したInnovex Condor RSMのマウスピース・ピックアップをご紹介。と言ってもこちらはマイクの名門、Shureに外注として用意させた付属品で一般には手の入らない貴重なもの。つまり、Condor RSMのユーザーだけが手にすることができたもので、1971年のデイビスの動画及び上の写真にある緑のマークの付いたものがInnovexブランド専用、下のリンク先の写真が本家Shureのものでその他、上の写真にあるISC Musicのブランドのものが存在します。また、ピックアップ本体はスクリューによる着脱可能でSelmer Varitoneピックアップとの互換性があり、金管楽器への接合にはさらにソケット部の土台をゴムOリングにしてConn Multi-Viderとの互換性も発揮するなど、後発らしい他社製品との連携が考慮されておりました。Hammondは当時、エディ・ハリスや駆け出しの頃のランディ・ブレッカー、そして御大マイルス・デイビスへ本機の '売り込み' を兼ねた大々的なプロモーションを展開。そんなデイビスとHammondの関係は、1970年の 'Downbeat' 誌によるダン・モーゲンスターンのインタビュー記事から抜粋します。

"そこにあったのはイノヴェックス社の機器だった。「連中が送ってきたんだ」。マイルスはそう言いながら電源を入れ、トランペットを手にした。「ちょっと聴いてくれ」。機器にはフットペダルがつながっていて、マイルスは吹きながら足で操作する。出てきた音は、カップの前で手を動かしているのと(この場合、ハーモンミュートと)たいして変わらない。マイルスはこのサウンドが気に入っている様子だ。これまでワウワウを使ったことはなかった。これを使うとベンドもわずかにかけられるらしい。音量を上げてスピーカー・システムのパワーを見せつけると、それから彼はホーンを置いた。機器の前面についているいろんなつまみを眺めながら、他のエフェクトは使わないのか彼に訊いてみた。「まさか」と軽蔑したように肩をいからせる。自分だけのオリジナル・サウンドを確立しているミュージシャンなら誰でも、それを変にしたいとは思っていない。マイルスはエフェクト・ペダルとアンプは好きだが、そこまでなのだ。"




残念ながら本機自体はデイビスのお眼鏡に叶わなかったものの、このShureのマウスピース・ピックアップはデイビスの愛用品、Giardinelliのマウスピースに穴を開けて接合されて1975年の活動停止まで突っ走ります。以下、リンク先のShureのHPから質問コーナーに寄せられたピックアップに対する回答。

Shure CA20B Transducer Pick-Up

"Q - わたしはShurre CA20Bというトランペットのマウスピースに取り付けるピックアップを見つけました。それについて教えてください。"

"A - CA20Bは1968年から70年までShureにより製造されました。CA20BはSPL/1パスカル、-73dbから94dbの出力レベルを持つセラミックトランスデューサーの圧電素子です。それはHammond Organ社のInnovex部門でのみ販売されていました。CA20BはShureのディーラーでは売られておりませんでした。

CA20Bは(トランペット、クラリネットまたはサクソフォンのような)管楽器のマウスピースに取り付けます。穴はマウスピースの横に開けられて、真鍮のアダプターと共にゴムOリングで埋め込みます。CA20Bはこのアダプターとスクリューネジで繋がっており、CA20Bからアンバランスによるハイ・インピーダンスの出力を60'ケーブルと1/8フォンプラグにより、InnovexのCondor RSMウィンド・インストゥルメンツ・シンセサイザーに接続されます。Condor RSMは、管楽器の入力をトリガーとして多様なエフェクツを生み出すHammond Organ社の電子機器です。Condorのセッティングの一例として、Bass Sax、Fuzz、Cello、Oboe、Tremolo、Vibrato、Bassoonなどの音色をアコースティックな楽器で用いるプレイヤーは得ることができます。またCA20Bは、マウスピースの横に取り付けられている真鍮製アダプターを取り外して交換することができます。

Condorはセールス的に失敗し、ShureはいくつかのCA20Bを生産したのみで終わりました。しかし、いく人かのプレイヤーたちがCA20Bを管楽器用のピックアップとしてギターアンプに繋いで使用しました。その他のモデルのナンバーと関連した他の型番はCA20、CA20A、RD7458及び98A132Bがあります。"





Giardinelli Miles Davis 'Special' Model

そんなShure CA20Bも6年近い '沈黙' を経て再びステージに立った頃には、すでに '時代遅れの代物' と化したのか、ピックアップ本体は外されて蓋で閉じられた 'アコースティック・マウスピース' としてミュートと共に奏でます。こういう変化からすでに 'ワウの時代' ではなくなったことを象徴する一コマと映るのですが、それは復帰作 'The Man with The Horn' の中でタイトル曲のみワウペダルを使用していたことにも現れました。すっかりラッパの練習を怠っていたデイビスはワウペダルを使う気満々だったのだけど、そんな '時代遅れ' の雰囲気を伝えるべくテオ・マセロらがワウペダルを隠してしまったことから仕方なくアコースティックで開始、あのヘロヘロした病み上がりのトーンへと結実するのです。当然、こりゃヤバイ!とデイビスが体調改善と共にラッパを必死に練習したことは言うまでもない・・。






さて、ここまではいわゆる管楽器用エフェクターの付属品として用意されていたマウスピース・ピックアップを見てきましたが、1970年代に入るとピックアップ単品として発売されて気軽にアプローチすることが可能となります。そのきっかけとなったのがピックアップの老舗、Barcus-berry。この会社の製品が革新的だったのはピックアップ本体の小型化であり、マウスピースという限られたスペースの邪魔にならない取り付けを実現したこと。しかし、個人的には製品の耐久性という点でイマイチな部分が多く、わたしの環境ではマウスピースに接合して一年ほど過ぎるとガクッと感度が落ちてエフェクツのかかりが悪くなります・・(2つダメにしました)。そもそもピエゾ・トランスデューサー式はマイク同様に湿気に弱く、定期的なピックアップ本体の着脱を通して製品の寿命へ貢献すると考えております。実際、猛烈な息の出入りにより熱気から急速に冷えた結露としてピックアップに対する負担は相当なもの・・結局、現在はカタログ落ちしているのを見ると製品としての設計に無理があったのでしょう。




ちなみにBarcus-berryはこの製品の特許を1968年3月27日に出願、1970年12月1日に創業者のLester M. BarcusとJohn F. Berryの両名で 'Electrical Pickup Located in Mouthpiece of Musical Instrument Piezoelectric Transducer' として取得しております。特許の図面ではマウスピースのシャンク部ではなく、カップ内に穴を開けてピックアップを接合しているんですねえ。しかし、カップ内で音をピックアップするとプシャ〜とした息の掠れる音が入り、動画はPiezoBarrelのものですが、こんな独特な音色となってイマイチ扱いにくいのでシャンク部に穴を開けた方が使いやすいと思います。





1982年のジャコ・パストリアス・グループ参加の頃はそんな '転換期' であり、モデルチェンジしたピックアップと共に中継コネクターをマウントする部分が、ベルとリードパイプ括り付けの 'タイラップ仕様' から専用のクリップでマウントする方式に変更。しかし動画のランディ・ブレッカーは、マウントするパーツが未だ従来のタイラップも付けたまま状態という、いかにも過渡期の勇姿を拝むことができます。また、ボブ・ミンツァーが吹くバス・クラリネットもBarcus-berryの1375-1で 'アンプリファイ'。後年、ランディ自身はこの頃のセッティングを振り返ってこう述べております。

"エフェクトを使い始めたころはバーカスベリーのピックアップを使っていたし、マウスピースに穴を開けて取り付けていた。ラッキなーことに今ではそんなことをしなくてもいい。ただ、あのやり方もかなり調子良かったから、悪い方法ではなかったと思うよ。"





最初の写真のものは1970年代初めに製品化された金管楽器用1374で、中継コネクターを介して2.1mmのミニプラグでフォンへと接続します。中継コネクターにぶら下がるタイラップはベルとリードパイプ部分をグルッと引っ掛けておくという仕様でして、この会社の製品はその '作り' という点でも結構荒っぽいんですよね。これ以後、1970年代後半には3.5mmのミニプラグに仕様変更され、金管楽器用は中継コネクターを専用のクリップでリードパイプに着脱できるようになったのが真ん中の写真のもの。この時期の製品を個人的に調べてみて分かったのは、1982年製造と1983年製造のものでピエゾの感度がかなり変わってしまったことでして、正直、1983年製は 'ハズレ' と言いたいくらいエフェクツのかかりが悪いですねえ(謎)。そして1990年代半ばに発売されるも少量で生産終了した 'エレクトレット・コンデンサー' 式の6001が同社 '有終の美' を飾ります。Barcus-berryが社運を賭けて開発したと思しき本品は同社で最も高価な製品となり、当時代理店であったパール楽器発行の1997年のカタログを見ると堂々の65,000円也!しかし、すでにグーズネック式のマイクがワイヤレスと共に普及する時代の変化には太刀打ちできませんでした。



この6001の代表的なユーザーとしては、近藤等則さんが1990年代終わり頃から 'DPA' 流用によるオリジナルなマウスピース・ピックアップへ換装する2007年頃まで使用しておりましたが、今や、同社を象徴していたマウスピース・ピックアップはカタログからその姿を消し、この老舗の '栄枯盛衰' と共にすっかり寂しいものとなったのは残念至極。やはり他社がやらないところで、この会社ならでの発想を活かす製品作りを継続してやって頂きたいですねえ。ちなみにこの6001使用時の近藤さんは、ベル側のマイクとマウスピース・ピックアップを2チャンネル真空管プリアンプの名機、Alembic F-2Bで 'モノ・ミックス' して出力しておりました。




珍しいBarcus-berryの 'エレクトレット・コンデンサー' 式ピックアップとしては、一時期、金管用の5300というのがラインナップされておりました。これはラッパのベルのリム縁にネジ止めしてマウントするもので、1981年に復帰したマイルス・デイビスもメーカーは違いますが同種のピックアップをステージで使用しておりましたね。当時、もの凄いお金のかけたワイヤレス・システムだったそうですが、このBarcus-berryの方はすでに '廉価版' としてリーズナブルなお求めやすい価格で提供されました。こんな構造ですけどオープンホーンはもちろんミュートもちゃんと拾うナチュラルな収音であるものの、ワウなどのエフェクツをかけると簡単にハウってしまいます。基本的にはリヴァーブやディレイ程度で '生音' の収音に適したピックアップなのですが、これもグーズネック式マイクの登場であっという間に '過去の遺物' に・・(デイビスもあの '傘の柄' のようなワイヤレス・マイクに変えちゃいましたしね)。






Barcus-berry 1375 Piezo Transducer Pick-Up
Barcus-berry C5200 (C5600) Electret Condenser Pick-Up ①
Barcus-berry C5200 (C5600) Electret Condenser Pick-Up ②

その他の製品は、木管楽器用1375-1、穴は開けずにリード部分へ貼り付ける仕様の廉価版1375などがあり、現在では、元々フルートの 'アンプリファイ' に力を入れていた同社らしく頭管部に差し込む6100、サックス/クラリネット用としてベル内側にベルクロで貼り付ける(荒っぽい!) 'エレクトレット・コンデンサー' 式のC5200 (C5600)などの一風変わったピックアップを供給するなど、相変わらず '斜め上' のセンスで細々と展開しておりまする。動画はジャン・リュック・ポンティ、ジョージ・デュークらを擁したフランク・ザッパ1973年の全盛期のものですが、イアン・アンダーウッドのバス・クラリネットに貼り付け型1375を用いてエフェクティヴなソロを披露。しかしネック部にConn Multi-Vider用ピックアップのための穴も開けられて蓋で閉じられております。この '貼り付け型ピエゾ' は穴を開けて接合するピエゾに比べてハウりやすいイメージが強いのですが、Eventide H9による 'ハーモナイズ' なサックスのトリガーとしてちゃんと使えます。どうしても楽器に穴を開けたくない・・って方はこちらをお試しあれ。







フルートの 'アンプリファイ' として頭管部に差し込み、まだ 'プログレ' 期のクラフトワークで吹くフローリアン・シュナイダー。1970年代初頭の市場に現れたBarcus-berryはあらゆるアコースティック楽器のピックアップを総合的にラインナップし、Gibson / MaestroのSound System for Woodwindsや初期シンセサイザーのトリガーとしてこの手の機器は大きく貢献しました。



Barcus-berry 1333 Super Boost

ちなみにBarcus-berryの 'ピエゾ式' マウスピース・ピックアップはパッシヴなので、メーカーから別に汎用のプリアンプが用意されておりました。これも時代ごとのモデルチェンジが激しく、初期の1330S High Impedance 'Standard' Preamplifier、Super Boostの1333や1433-1、1980年代からは3Vのボタン型リチウム電池のプリアンプがピックアップと同梱して販売され、その後の1990年代頃からはUniversal Interface 3500Aなどが登場しました。また、'エレクトレット・コンデンサー' 式の6001に対応したBuffer Preamp/EQ 3000Aはこれらとインピーダンスが違うので共用することはできません。写真のものは1970年代後半の1430 Standard Pre-Ampと1432 Studio Pre-AmpというDI出力の付いたもので、9V電池のみならずDC9V電源の駆動も可能とします。









Toshinori Kondo Equipments
DPA SC4060、4061 Review
Phoenix Audio DRS-Q4M Mk.2
Rumberger Sound Products K1X ①
Rumberger Sound Products K1X ②

そんな我らが '電気ラッパ' の伝道師、近藤等則さんなのですが、永らく愛用したBarcus-berryからファンタム電源の供給可能なDPAの直径5.5mmな 'ミニチュア・マイロフォン' で一新!ピックアップ本体の着脱から防水としてポリプロピレンのシールドをソケット部に貼るなど、その構造はBarcus-berry 6001をほぼ踏襲しており、これを音響機器の世界で伝説化されているNeveの質感を再現したマイク・プリアンプPheonex Audio DRS-Q4M Mk.2と共に使用。また、ピックアップをマウスピースに装着するソケット部は新大久保のグローバルにオーダーして製作してもらったとのこと。このようなファンタム電源に対応しているマウスピース・ピックアップは、数は少ないですが他にドイツのRumberger Sound Productsのものがありますね。以前にこのK1XのフルセットをeBayで見つけたものの約6万・・なかなかの高級品ではありまする。








NeotenicSound AcoFlavor ①
NeotenicSound AcoFlavor ②

このような管楽器の 'アンプリファイ' においてはラインによる音作りが重要なのですが、その '無味乾燥' な環境に一味加える特別なスパイスをご紹介しましょう。ピエゾ特有の硬くシャリッとした '質感' を補正してくれる唯一無二の便利アイテム、NeotenicSound AcoFlavorが結構売れているそうですヨ。わたしも微力ながら本機モニターとしてお手伝いさせて頂いたので、こういうアイテムが楽器は違えど同種のニーズを求められているのは嬉しい限りです。そんな本機は 'Acoustic-Pickup Signal Conditioner' と呼ばれており、その後ろに 'ダイナミック・プロセッサー' のMagical ForceとHeadway Music AudioのEDB-2でダイナミック・マイクのSennheiser e608とミックスさせて愛用中。PiezoBarrelピックアップひとつでも高音域をカバーしている為に十分なのですが、ここにマイクを混ぜることでより '空気感' が加わりますね。また、このAcoFlavorは単なる 'インピーダンス・マッチング' のみならず音に密度が増しており、ピックアップからの感度調整を司るFitとは別にLimitツマミを回すことで '暴れ感' を抑えることができます。現在のセッティングはMaster 1時、Fit 10時、Limitを9時にセット・・。以前はLimitは0だったのですが、少し上げてやると格段に演奏がしやすくなりまする。そんなAcoFlavor、プリアンプと勘違いする方も多いと思いますけど、奏者にとって演奏時に感じるレスポンスの '暴れ' をピックアップのクセ含めて補正してくれるもの、と思って頂けると分かりやすいでしょうね。


そして、これらピックアップで取り出す信号に対してダイナミズムの演出に欠かせないのがヴォリューム・ペダル。過去にVox AmpliphonicやギリシャのTAP Electronicsのピックアップに代表されるパッシヴのヴォリューム・コントロール内蔵はありましたが、基本的に音量調整を持たない 'エレアコ' においてはヴォリューム・ペダルを用いるのが必須ですね。1970年代の 'エレクトリック・マイルス' の時代、マイルス・デイビスもより繊細な音量コントロールを求めて1972年からヴォリューム・ペダルの老舗、DeArmondにトランペットの音量カーブに合わせたパッシヴ '610' の特注品をオーダーしました。そんな 'ダイナミクス' の恩恵と音楽の新しい '聴こえ方' についてこう述べております。

"ああやって前かがみになってプレイすると耳に入ってくる音が全く別の状態で聴きとれるんだ。スタンディング・ポジションで吹くのとは、別の音場なんだ。それにかがんで低い位置になると、すべての音がベスト・サウンドで聴こえるんだ。うんと低い位置になると床からはねかえってくる音だって聴こえる。耳の位置を変えながら吹くっていうのは、いろんな風に聴こえるバンドの音と対決しているみたいなものだ。特にリズムがゆるやかに流れているような状態の時に、かがみ込んで囁くようにプレイするっていうのは素晴らしいよ。プレイしている自分にとっても驚きだよ。高い位置と低いところとでは、音が違うんだから。立っている時にはやれないことがかがんでいる時にはやれたり、逆にかがんでいる時にやれないことが立っている時にはやれる。こんな風にして吹けるようになったのは、ヴォリューム・ペダルとワウワウ・ペダルの両方が出来てからだよ。ヴォリューム・ペダルを注文して作らせたんだ。これだと、ソフトに吹いていて、途中で音量を倍増させることもできる。試してみたらとても良かったんで使い始めたわけだ。ま、あの格好はあまり良くないけど、格好が問題じゃなく要はサウンドだからね。"

さて、そんなヴォリューム・ペダルで評価の基準とされているのが、'踏み心地' とバッファーの兼ね合いからくる音質の変化。単に音量の 'On/Off' だけならミュート・スイッチで十分なワケでして、あくまで操作性と立ち上がり 'カーブ' の最適な踏み心地を提供すべく、ペダルをギアポットから紐によって可動させ、安定して足を乗せられる踏み板とピッキングに対する追従性が問われます。バッファーに関してはそれぞれの '好み' に左右されますが、これもロー・インピーダンス仕様の製品であれば、上質なバッファーで一旦下げてしまった後の変化はそれほど気になるものではないようです。

正直わたしも、以前はそれほどヴォリューム・コントロールに対して気にかけておりませんでしたが、自らの足元へ 'ループ・サンプラー' 導入に対するダイナミズムの演出でヴォリューム・ペダルほど大げさじゃないもので何かないかと探しておりました。そんなヴォリューム・ペダルの使用に当たって注意したいのは、最初にベストな音量の設定をした状態から可動させた後、瞬時に元の設定位置へ戻すのが大変なこと。




OK Custom Design VPLM

このようなニッチな不満に応えようと現れたのが、そんなヴォリュームの状態を視認できる '便利グッズ' と呼ぶべきレベル・インジケーター。音量の増減に合わせてググッとLEDが上がったり下がったり・・その視認性の高さ以外に見た目としても華やかで楽しく、チューナーアウトもしくはエクスプレッション・アウトの端子を持つヴォリューム・ペダルに対応しております。このOK Custom Designのものは、接続する製品によって極性を合わせる為に裏面のトリマーを調整してレベル・マッチングを図ることが出来るのも便利(現行品は筐体上面にトリマー装備)。


Neotenic Sound Purepad ①
Neotenic Sound Purepad ②

さて、残念ながら動画はありませんが、わたしの足元にはお馴染みNeotenic SoundのPurepadがスタンバイ。これは2つに設定された 'プリセット・ヴォリューム' をスイッチ1つで切り替えるもので、ひとつは通常の状態(赤いLEDのSolo)、もうひとつが若干ヴォリュームの下がった状態(緑のLEDのBacking)となっており、Padで音量を抑えながら全体のバランスを崩すことなく音量を上下できる優れもの。この切り替えによる音質の変化はありますが、音量を下げても引っ込みながらシャープなエッジは失われずまとまりやすい定位となります。そんなメーカーの '取説' は以下の通り。

"ピュアパッドは珍しいタイプのマシンなので使用には少し慣れとコツが必要かもしれませんので、音作りまでの手順をご紹介します。アコースティックの場合は図のように楽器、プリアンプ、ピュアパッド、アンプの順に接続します。エレキギターなどの場合は歪みペダルなど、メインになっているエフェクターの次に繋ぐとよいでしょう。楽器単体でお一人で演奏される場合は、初めにピュアパッドをソロ(赤ランプ)にしておいて、いつものようにプリアンプやアンプを調整していただければ大丈夫です。ピュアパッドのスイッチを踏んで、緑色のランプになったら伴奏用の少し下がった音になります。複数の人とアンサンブルをする場合には、初めにピュアパッドをバッキング(緑のランプ)の方にして、他の人とのバランスがちょうどいいようにプリアンプやアンプで調整します。そしてソロの時になったらピュアパッドのスイッチを踏めば、今までより少し張りのある元気な音になってくれます。また、ピュアパッドを繋ぐと今までより少し音が小さくなると思いますが、プリアンプよりもアンプの方で音量を上げていただく方が豊かな音色になりやすいです。もしそれでアンプがポワーンとした感じとなったり、音がハッキリクッキリし過ぎると感じたら、アンプの音量を下げて、その分プリアンプのレベルを下げてみてください。ツマミを回すときに、弾きながら少しずつ調整するとよいでしょう。"

わたしの環境では 'ループ・サンプラー' でのオーバーダブする際、フレイズが飽和することを避ける為の導入のほか、宅録の際にもアンプのヴォリュームはそのままに全体の音像を一歩下げる、もしくは歪み系やディレイ、ワウのピーク時のハウリング誘発直前でグッと下げる使い方でとても有効でした。


そんなPurepadはLED視認の為の電源以外はパッシヴの仕様なのですが、NeotenicSoundさんによれば新たにバッファー内蔵のアクティヴ版Purepadを近々発売するとのこと!従来のパッシヴ版ではプリアンプや '歪み系' エフェクターの後ろに繋いでマスタープリセット的に使用することを想定していたようですが、このアクティヴ版は各種スイッチャーのチャンネルに組み込んだり、楽器の先頭に繋いでブースターの補助的アイテムとして用いたりとその '使い勝手' の幅が広がりました。堂々と 'Dynamics Processor' の名と共にDC9Vアダプターのほか9V電池による駆動可。

最後は日本を代表する楽器メーカーのひとつ、Roland。その創業者である故・梯郁太郎氏が1960年代からRolandとして独立するまで携わっていたのがAce Toneです。いわゆる 'GSブーム' においてはGuyatoneやElk、Tiesco、Honeyなどと並び 'エレキ' の代名詞的存在となったことは、その製品カタログにおいてオルガン、リズムボックス、エフェクター、アンプなどを総合的に手がけていたことからも分かります。そんな世界の新たな動きに呼応しようと奮闘した日本の 'Ace Tone' ことエース電子工業株式会社。まさに日本の電子楽器の黎明期を支えたメーカーと言って良いでしょう。


Ace Toneが鍵盤奏者やギター奏者のみならず、管楽器の 'アンプリファイ' にもアプローチしていたことはほとんど知られておりません。そもそも '電化アレルギー' の多い保守的なジャズの世界でこの手の機器にアプローチすることは '堕落' したことと同義であり、実際の効果はもちろん、それをステージ上で積極的に探求しようとした奏者もほぼ皆無であったと推測されます。しかしこれは、それまでバンド・アンサンブルの '主役' であった管楽器が '退場' する瞬間でもありました。ビッグバンドにおける4ブラスを始めとした豪華な '音量' は、些細なピッキングの振動がそのまま、ピックアップとアンプを通して巨大なスタジアム級のホールを震わせるほどの '音圧' に達する 'エレキ' に簡単に負けてしまったのですから。









Vox / King Ampliphonic Octavoice Ⅰ and Ⅱ
Vox / King Ampliphonic Stereo Multi-Voice

このあたりは海外でもほぼ同じ状況ではありましたが、しかし巨大なスタックアンプの爆音によるアンサンブルの中で埋もれない為や、ジャズよりもプログレやR&Bのスタイルでの需要など、消極性と可能性の狭間で愛用の管楽器に穴を開けざるを得ませんでした。いわゆる 'ジャズの帝王' マイルス・デイビスですら、それまでのモダン・ジャズのキャリアを捨ててロックに色目を使った、ポップの軍門に降ったなどと頑固なジャズ・クリティクから罵詈雑言を浴びせられていたのにも関わらず、自らの新たな音楽の探求の為に 'アンプリファイ' の可能性に賭けたのです。Ace Toneがこういう海外の事情にいち早く飛び付き、例えコピーと言えどもひとつの製品として市場に送り出すのはHoneyと双璧の存在と言って良いでしょう。



1968年、当時としてはかなり高価な管楽器用 'アンプリファイ' サウンド・システムであったMulti-Vox。各種オクターヴを操作するコントローラー・ボックスEX-100は39,000円、マウスピースに穴を開けて接合するピックアップPU-10は3,000円と、その 'ニッチな' 需要と相まってなかなか手の出るものではなかっただろうと推測されます。当初の広告では、コレでジョン・コルトレーンのタッチやソニー・ロリンズの音色が再現出来るとのキャッチコピーが泣かせますね(笑)。またAce Toneは1968年にHammondと業務提携をして、本機もOEMのかたちで米国に輸出する旨がアナウンスされていたことを1969年のカタログで確認することが可能。しかし 'Inquire for details and prices' と強調されているのを見ると日本から現物が届いておらず、カタログでアナウンスされたものの米国では発売されなかった感じですね。実際、今までeBayやReverb.comなどに流れてきた記憶がないので、世界最大のエフェクター・サイトである 'Disco Freq's Effects Database' にもこれまで本機が掲載されることはありませんでした。どなたか本製品の現物をお持ちの方、情報お持ちしております!





さて、このMulti-Vox EX-100。サックス用にはコントローラーをVaritone同様にキー・ボタンの側、ラッパでは奏者の腰に装着して用いるもので、日野皓正さんなどは同社のギターアンプSolid Ace SA-10にテープ・エコーEC-1 Echo Chemberの組み合わせをアルバム 'Hi-Nology' 見開きジャケットで拝むことが出来ます。当時、このようなスタックアンプといえばTeiscoやElkと並び総合的にPAを手がけていたAce Toneの土壇場だったのですが、海外製のギターアンプと比べると圧倒的に歪まなかった・・。しかし、それがこのような管楽器用アンプとしては十分に威力を発揮したのだと思います。



Terumasa Hino Quintet 1968 - 69

このMulti-Voxをいち早く導入したのがマイルス・デイビスの '電化' に感化されていたトランペットの日野皓正氏とテナーサックスの村岡建氏のふたり。すでに本機発売の翌年、そのデモンストレーションともいうべき管楽器の可能性をいくつかのイベントで披露しております。

⚫︎1969年3月24日 初の日野皓正クインテット・ワンマン・コンサートを開催する(東京サンケイ・ホール)。'Love More Train'、'Like Miles'、'So What' などを演奏、それに合わせてあらかじめ撮影された路面電車の 種々のシーンをスクリーンに映写し、クインテットがインプロヴァイズを行う。日野さんのラッパには穴が開けられピックアップを取り付けて初の電化サウンドを披露した。

⚫︎1969年6月27、28日 クインテットによる「日野皓正のジャズとエレクトロ・ヴィジョン 'Hi-Nology'」コンサート開催(草月会館)。写真家の内藤忠行のプロデュースで司会は植草甚一。第一部を全員が 'Like Miles'、'Hi-Nology'、'Electric Zoo' を電化楽器で演奏。第二部は「スクリーン映像との対話」(映画の公開ダビング)。「うたかたの恋」(桂宏平監督)、「POP 1895」(井出情児監督)、「にれの木陰のお花」(桂宏平監督)、「ラブ・モア・トレイン」(内藤忠行監督)の5本、その映像を見ながらクインテットがインプロヴァイズを行い音楽を即興で挿入していった。コンサートの最後にクインテットで 'Time and Place' をやって終了。





Ride and Tie / Takeru Muraoka & Takao Uematsu

日野皓正さん1969年の傑作 'Hi-Nology' の内ジャケットでは使用中の写真がありますけど音源には入っていない模様。本作で共演するサックス奏者、村岡建さんは、この時期から少し経って1971年の植松孝夫さんとの '2テナー' によるライヴ盤 'Ride and Tie' で全編、'アンプリファイ' なオクターヴ・トーンを堪能することが出来ます。実はコレ、Ace Tone Multi-Voxなのでは?と思っているのですが、取説での村岡さんの談によればヤマハから '電気サックス' 一式を購入したことが本盤制作のきっかけとなったそうで、その海外事業部を介して手に入れた '海外製品' (Varitone ?Multi-Vider ?)を使用したと理解する方が自然かもしれません。ちなみに日野さんは、この時期の '日野ブーム' と共に大きく影響を受けた 'エレクトリック・マイルス' 及び '電気ラッパ' に対してこう述べております。

- エレクトリック・トランペットをマイルスが使い始めた当時はどう思いましたか?

"自然だったね。フレイズとか、あんまり吹いていることは変わってないなと思った。1970年ごろにニューヨークのハーレムのバーでマイルスのライヴを観たんだけど、そのときのメンバーはチック・コリアやアイアート・モレイラで、ドラムはジャック・ディジョネットだった。俺の弟(日野元彦)も一緒に観に行ってたんだけど、弟はディジョネットがすごいって彼に狂って、弟と "あれだよな!そうだよな!" ってことになって(笑)。それで電気トランペットを俺もやり始めたわけ。そのころ大阪万博で僕のバンドがああいうエレクトリックのスタイルで演奏したら、ヨーロッパ・ジャズ・オールスターズで来日中だったダニエル・ユメールに "日野はマイルスの真似しているだけじゃないか" って言われたことがあるんだけどね。"








Nalbantov Electronics OC-2 eXtreme with Preamplifier
Nalbantov Electronics

肝心の日野さんによるMulti-Voxを用いた音源は未だ聴けていないのですが、そんなMulti-Voxの血脈を受け継いだ '末裔' じゃないか?と思わせるのがこちら、BigJamのSE-4 Octave。Ace Toneは1970年代に創業者の故・梯郁太郎氏が独立、Rolandを創業した後も存続し、その親会社の日本ハモンドが展開したエフェクターブランドがこのBigJam。SE-4の筐体の色からMXR Blue Box辺りの影響を感じさせますが、これは典型的な '極悪' オクターバーでございます。1オクターヴ下、2オクターヴ下、5度下!などという3種モードが意味ないほど、全くトラッキング無視の '飛び道具'。さて、同じ大阪万博のステージでC.G. Conn Multi-Viderを引っ提げてやって来たのがスイス出身のサックス奏者、ブルーノ・スポエリ。これは万博スイス館のためにThe Metronome Quintetとして来日したもので、それを記念して日本コロンビアから7インチ 'EXPO Blues' を吹き込んでおります。この、Multi-Viderのネロ〜ンとした電気サックスの音色がたまらない・・。ちなみにこのような奏者の腰に装着する管楽器用オクターバーは、古のVox Ampliphonic OctavoiceやC.G. Conn Multi-Vider、Ace Tone Muli-Voxなどがありましたが、現在ではほぼ見かけることのない懐かしいスタイル。そんな中でブルガリアの工房、Nalbantov ElectronicsのBoss OC-2をベースにしたと思しきOctaver OC-2 eXtremeは貴重な一台としてeBayから購入出来まする。