2021年1月5日火曜日

電気仕掛けの '喇叭あそび'

ズラッと床に並ぶ最近のペダル群。というのは正確ではなくて(苦笑)、大体は一昨年から去年にかけての製品が一つ二つ・・後は昔の 'お気に入り' ばかり。これは近年ものと言った方が良いでしょうね。しかし、一体どういうユーザーを想定して設計、製作されたものなのかよー分からんヤツがいっぱいあります。こういうのは大抵、総数50台も満たないものをニッチな層が物珍しそうに飛び付き、マスの市場で目にすることなく記憶の彼方に消え去ってしまうのがほとんどなんですヨ。それが何十年後かにあの 'お宝'、'超レア'、'某アーティストの足下で再評価' のようなキャッチコピーと共に突然 '神棚' に祀られるのです。まさに '使い方は見つけるもの' の典型な正体不明の謎ペダルたち・・ですから皆さん、とりあえずどう使って良いかわからんヘンテコなものは今のうちに買っときましょう(笑)。


わたしのチョイスはこの8点でParasit Studio Multiwave Mega、Vongon Electronics Paragraphs、Catalinbread Coriolis Effect、Old Blood Noise Endeavors Dweller、Ezhi & Aka Fernweh、些か古い機種ですけどBlackout Effectors WhetstoneにMoody Sounds Blah Blah、Honda Sound Works Fab Delay。この内、Multiwave MegaとCoriolis Effect、FernwehにDweller、Whetstoneなどに関しては単体の効果に特化したものでは無く、フィルターからピッチシフト、ディレイに至るまでかなり多機能な音作りに対応した '簡易マルチ' としても担えるのが特徴的ですね。




まずはスウェーデンの新興工房、Parashit StudioからMultiwave Megaの名で登場した 'ギターシンセ' です。Korg Monologueシンセサイザーに触発されたようなオシロスコープ的波形のLEDの怪しげな魅力はもちろん、アナログとデジタルの 'ハイブリッド' による2つのVCOを 'Wavetable' 的に掛け合わせた 'サブ・ハーモニック' からローパス・フィルターによる変調、LFOやEGでトリガーさせてやることで奇妙に 'シンセサイズ' されたトーンを放つ・・のですが、残念ながら代理店のLep Internationalからは取説無し。ほとんどぶっつけ本番で挑んでおりますけど全く偶発的効果が飛び出るかと思えば反応一切無しの沈黙・・どれが '正解' なのか分かりませんね(苦笑)。以下、簡略的なThe Multiwave Megaの機能説明です。

●2 VCO
本機には2つのメインオシレータを搭載し、これらの波形を組み合わせることができます。常時使用するプライマリオシレータに加え、ブレンドすることのできるセカンダリオシレータも個別に波形を設計可能。また、プライマリオシレータにはデチューンをかけることでモノフォニックながら和音やフェイザーをかけたような音色を作ることもできます。
●Lowpass Filter
本機のレゾナントローパスフィルター(VCF)は、ギターのシグナルをトリガーとしたエンヴェロープフィルターとして、またはLFOを用いたオートフィルターとして使用することができます。
●LFO
さらにシグナルの音量や周波数などにも影響するLFOを設定することができます。このLFOにもランダムを含む複数の波形を選択することができます。
●Sustain
アナログサンプル/ホールド回路を用いた2つのサスティンモードを搭載します。サスティンモードはモメンタリースイッチでOn/Offすることができます。スイッチを踏んだときの音がそのまま永続するHoldモードと、ギターの信号が入力されるたびに永続する音が変わるEnv Trigモードを切り替えることができます。




ちなみにこちらは新たな日本発の工房、Lemon & Gingerから 'そそる感じ' 満載のローパス・フィルターmyomyomyooon(ミョミョミョ〜ン?)。ギターと無縁なわたしにとってギタリスト必須の歪み系ペダルは全く入る余地ナシですが(汗)、だからなのか、こーいうニッチな 'フィルター系ペダル' にアプローチする工房は無条件で応援したくなってしまいます。とりあえず、もうモディファイ含めて乱発される◯◯系はそろそろ市場でも飽和してませんか?。コレっていわゆる 'ラーメン屋商法' を彷彿とさせており、ひとつヒット作を出した有名店の近所に競合店を出店してそこで並ぶお客(パイ)を奪い合う構図に似ているというか(苦笑)。本機は基本的なDepth、Rate、VCFのトーンを調整するToneCutやResonanceを中心に6種の波形選択とタップテンポでRateのリアルタイム可変、エクスプレッション・ペダルでワウからフィルター・スウィープと幅広い音作りに対応しております。基本的なエンヴェロープ・フィルターからそれこそサンプルにかけて 'フィルタリング' させても面白いですね。

 






これは最近も最近、去年の暮れにGETしたカリフォルニア州オークランドから登場するフィルターの新たな刺客、Vongon Electronics Paragraphs。まさに 'フィルターフェチ' なわたしには打って付けな一台でして、'4 Pole' のエンヴェロープ・ジェネレータを備えたローパス・フィルターを基本にモメンタリースイッチでトリガーするエンヴェロープ、CVやMIDIによるモジュラーシンセとの同期など現在の多目的な音作りに対応しているのが良いですね。そのVCFの心臓部はAS3320のアナログチップを用いてLFOに相当するエンヴェロープ・ジェネレータは0.05Hzから始まり20秒のサスティン、300Hzのスレッショルドに至るまでうねるようなモジュレーションを付加します(もちろん自己発振可能)。また、入力部には楽器レベルからラインレベルまで幅広い信号を受け持つゲインを受け持っているのが近年の機器らしいですね。ちなみに同工房からは1978年の初期デジタル・リヴァーブLexicon 224の 'プレート・リヴァーブ' をモデリングしたUltraseerも用意しておりまする。以下はParagraphsの各機能。

●Output Level
最終的な出力の調整(楽器レベル〜ラインレベル)。
●Gain
入力部のゲイン調整で赤色のLEDでクリッピングを示し、オレンジ色のLED点滅でオーバーロード開始、緑色のLEDでは通常レベルの状態を示します。
●Rise
'ADSR' におけるエンヴェロープ・ジェネレータが最大レベルに上昇するまでの時間の長さを調整します。
●Fall
'ADSR' におけるエンヴェロープ・ジェネレータが最少レベルに下降するまでの時間の長さを調整します。
●Multiplier
エンヴェロープ・ジェネレータの全体的な速度調整。
●Lin,/Exp
エンヴェロープ・ジェネレータの波形が直線的な上昇、もしくは指数関数的に下降するかどうかの選択をするトグルスイッチ。
●Trigger
エンヴェロープ・ジェネレータをトリガーする為のソフトタッチのフットスイッチで3種モードを搭載。
:Cycle
エフェクトOn時で常時エンヴェロープ・ジェネレータ作動。
:Hold
フットスイッチを押している時のみエンヴェロープ・ジェネレータ作動。
:Once
モメンタリーで押した瞬間のみエンヴェロープ・ジェネレータ作動。
●Amount
カットオフによりエンヴェロープ・ジェネレータへの影響をどの程度与えるかを調整します。
●Cutoff
ローパス・フィルターのカットオフ周波数を調整します。
●CV/MIDI








ちなみにVongon Electronicsからは1978年の初期デジタル・リヴァーブLexicon 224の 'プレート・リヴァーブ' をモデリングしたUltraseerも用意しておりまする。木製のウォールナット材に嵌め込まれたこのステレオ・ユニットは、32bitのフローティングDSPで作られた残響を '初期デジタル' の質感の為にあえて16bitにダウンサンプリング。そして、いわゆる処理の甘さからくるが故の 'エラー的' な揺れを 'ヴィブラート' として、レスリー風効果を生成するサイン波の 'Cycle' と日焼けで反ったアナログ盤や劣化テープの 'Random' をリヴァーブ・アルゴリズムに追加します。そして新たにChase Bliss AudioとMerisの 'コラボ' からは、同じく1970年代後半のデジタル・リヴァーブの質感と共にスタジオの定番として未だ鎮座するLexicon 480Lをこんな価格帯で実現してしまったもの凄いヤツが登場。Tank Mod、Diffusion、Clockなど3種のリヴァーブ・アルゴリズムを備え、リヴァーブテイルを完全にシェイピングするディケイ・クロスオーバー、10プリセット×3バンクのユーザー・プリセットを6つのムーヴィング・フェーダーでトータル・リコール出来る再現性はもはやペダルの範疇を超えておりまする。というかコレ、足下に置く人はいないでしょ(笑)。また、高品質リヴァーブといえばEventide Spaceで極めたプログラムを 'インフィニットモード' と 'フリーズモード' のリヴァーブ2種を中心にコンパクトにまとめ、'H9シリーズ' 同様PCと連携してソフトウェア 'Eventide Divice Manager' でプリセットの追加、保存、エディットを行うBlackhole Pedalが登場。一方で、いやいやリヴァーブはやっぱりアナログだよって人は、残響のディケイの長さを順に 'Le Bon'、'La Brute'、'Le Truand' のスプリング・ユニットとして3種用意されたフランスの工房、AnasoundsのElementをどーぞ。そして、キセノン管をスパークさせて特異な歪みを生成するPlasma Pedalでこの市場に一石を投じた以降も革命的なアイデアで惹き付けるラトビアの変態、Gamechanger Audioの光学式スプリング・リヴァーブLight Pedal。いよいよここ日本にも上陸して参りましたが・・さ、どう使いこなしましょうか?。







 

反復の 'サウンドスケイプ' ともいうべき深〜いリヴァーブ&エコーの世界観といったらコレ。その音像から滲み出す '4つ打ち' の美学は、ジャマイカで育まれたダブの方法論がそのまま、暗く冷たく閉ざされたヨーロッパの地で隔世遺伝した稀有な例と言っていいでしょうね。1996年、ドイツでダブとデトロイト・テクノの真逆なスタイルから強い影響を受けたモーリッツ・フォン・オズワルドとマーク・アーネスタスは、自らBasic Channelというレーベルを設立してシリアスな 'ミニマル・ダブ' を展開するリズム&サウンドと、1970年代後半からニューヨークでダブを積極的に展開させたロイド "ブルワッキー" バーンズの作品を再発させるという、特異な形態でダブを新たな段階へと引き上げることに成功しました。この 'Basic Channel' と彼らダブの心臓部ともいうべき 'Dubplates & Mastering' の協同体制は、特にモーリッツとマークのふたりからなるRhythm & Soundの 'ルーツ志向' からワッキーズとの '共闘'、そしてMoritz Von Oswald Trioによるアフロビートの巨匠、トニー・アレンとのコラボから1990年代後半の 'イルビエント' に到るまでダブの隔世遺伝的な原点への配慮も忘れてはおりません。やはりこの硬質なダブの質感は、亜熱帯の緩〜い気候と共に育まれたジャマイカ産の 'ルーツ・ダブ' やニューウェイヴと共にメタリックな質感を持つ 'UKダブ' とも違うテクノを経過したドイツ産 'Dubplates & Masterring' 特有のものです。









ちなみにここでのエクスプレッション・コントロールはRainger Fxの感圧パッドセンサー 'Igor' が便利。大仰なペダル操作ではなく踏んだり触ったりすることで反応する感圧センサーは、そのままCoriolis Effectの 'Exp' スイッチに割り当てた 'Vel' でVelocityコントロール、'Acc' のAccelerationコントロールをリアルタイム可変可能です。そんなエクスプレッション・コントロールと言えば去年、新たな発想によるアプローチがフランスのAnasoundsからもたらされました。同社のトレモロSilver、Agesのレイト・コントロールに特化したものとのことで、そのSpinnerの羽の回転スピードに合わせて上げる、下げる、センサーがSpinnerを感知したタイミングでのみ信号をカットするキルスイッチの3種モードで使うことが出来ます。他社製品の外部コントロールで流用出来んかな?。しかしフランスってこのAnasoundsといいJacquesのエンヴェロープ・フィルターTrinityのポンプ式 '踏み踏み型コントロール' など、米国のペダルではまずアプローチしない奇妙なチャレンジ精神がありますね(笑)。そして国産の新たな一台としては、Roland創業の梯郁太郎氏のご子息が 'Ace Tone復活' をぶち上げ 'BAC Audio' の名で出したエフェクター 'Stomp Ace' シリーズのひとつ、Filter。このシリーズ共通の '売り' である 'エフェクト・モーフ' なるフットスイッチ長押し→エディットに入り、タッチセンスのペダル触ってフィルタリングの操作が可能、と。まあ、特に個性の無い感じの音色ではありますが、ワウは結構古典的なトーンをシミュレートしておりますね(将来的にはUSBを介してネットから色々なプリセットを供給出来るようです)。








フィルターにおけるリアルタイム・コントロールとしては、ペダルはもちろん、上でご紹介した感圧パッドセンサー、ポンプ式で '踏み踏み' するもの、さらにプロペラ式の新たな発想に基いたコントローラーが続々と市場に登場しました。その中でも '非接触型' の身体と機器の距離からコントロールする 'テルミン式' のものこそ奏者の希求に応えるもので、まさにソーシャル・ディスタンスの時代を予言したと言えるかも(苦笑)。有名なところではZ.Vex Effectsの銅板アンテナにより操作するWah ProbeやSource Audioの指輪で操作するSA115 Hot Hand 3などがありますが、やはりここは最近の傾向である加速度センサーとアプリを利用したウェアラブル・コントローラーをご紹介。現在、Indiegogoがクラウドファンディングで募っているMotion SonicはSonyが製作に携わっており、従来のウェアラブル・コントローラーにあったMIDIによるパラメータのアサインを用いず、アプリ(現状iOSのみ)からBluetoothで左右、上下、回転など合計5種のモーション・センサーとして起動します。直感的な反面、MIDIのCC(コントロールチェンジ)など細かなエディットには対応しておりませんが、これは管楽器の ' アプリファイ' において革命的なデバイスとなること間違いナシ!です。








スウェーデンの工房Moody Soundsからも歪みとVCFをひとつにまとめたBlah Blahというペダルがありました。オプティカル・センサーによる2つの 'Q-Value' と 'Freq' コントロールをそれぞれ足で隠したり開いたり、'エアー' でワウを踏む真似をすることでなかなかにエグいトーンが咆哮します。フットスイッチを上部に配置しての '棺桶型' な筐体もオリジナリティがあって良いですね。そして、今やすっかり '曰くつき' (苦笑)のブランドとなってしまいましたがある時期、日本の 'ブティック・ペダル界' で気炎を吐いていたHonda Sound Worksが2007年に工房を閉じる最後の製品として送り出したFab Delay。PT2399チップを用いた 'アナログライク' のデジタル・ディレイなのですが、FeedbackとTimeをスライダーコントロールとすることでリアルタイムかつ攻撃的に扱うことに特化したもの。動画は静岡の工房Soul Power Instrumentsでディレイ音を残しながらOn/Offする 'Trail機能' をすべく、ミキサー回路内蔵のモディファイをしております。オリジナルは2つの小ぶりなプラスティック製のスライダーで操作しますが、現在、手許にあるのはゴム製の大ぶりで量感のあるスライダーに換装されているのが格好良し!。しかし主宰者の本田氏、わたしは1990年代後半の 'ヴィンテージ・エフェクター' ブームを牽引した専門店 'Ebisu Gang' で店長をしていた時に色々教えて頂いた頃が懐かしい(笑)。最後はロシアのガレージ工房Ezhi & Akaから登場のFernweh(フェルンヴェ)。バナナプラグによるその巨大な 'モジュラーシステム' の中身は4種のローファイ・ディレイ&ピッチシフトの変異系、Mr. Nice、Mr. Glitchy、Mr. Clap、Mr. Arcadeとブッ壊れたファズ、モジュレーション、ローファイな20秒のループ・サンプラーのLoopeeで構成されております。とにかく何でも '汚い質感' にしてくれる複合機でして、本機の売り文句である 'テープを噛み砕いて燃やしたようなサウンド' という表現はなかなか的を射ておりまする。そして基板内部はご覧の通りの錯綜した 'スパゲティ状態' の酷い有様(苦笑)。







Old Blood Noise Endeavors Dweller

新たなペダル界のスタンダードとして追撃する勢いの 'OBNE' ことOld Blood Noise Endeavors。いわゆるアナログの遺産ともいうべき過去の名機の '美味しいところ' に忠実でありながら、現在のテクノロジーでより過激な効果へと昇華させていることを別名 'Phase Repeater' ことDwellerは証明します。とりあえずコイツは凄いですヨ。何て言ったってツマミの可変ひとつでフェイザーからマルチタップのディレイ、グリッチ風のグラニュラーな効果までカバーしてしまうのですから!。

●Stretch
このツマミでフェイザーからディレイへのサウンドを調整します。反時計回り最小設定ではスタンダードなフェイザー、時計回りに回していくことで空間的な残響が付加されてフェイザーがストレッチしディレイへと可変します。Depthツマミを最小にするとスタンダードなディレイになります。
●Rate
このツマミでフェイザーのスピードを調整します。反時計回りで遅く、時計回りで早くなります。最小のポジションでフェイザーは停止します。
●Depth
フェイザーの効きの深さを調整します。反時計回り最小にするとフェイズシフトが無くなり、真ん中でクラシックなフェイザー、時計回り最大でかなりエグい効果へと変貌します。
●Regen
回路のフィードバックを調整します。フェイザーのセッティングではその効果の深さや厚み、ディレイのセッティングではその反復を調整します。
●Mix
ドライシグナルとウェットシグナルのブレンド・コントロールです。最小設定では100%ドライ、最大設定では100%ウェットとなります。真ん中のポジションでドライとウェットが1:1となります。
●Voice
このトグルスイッチで2タイプのフェイザーを切り替えられます。左側で4ステージ・フェイズ、右側で8ステージ・フェイズとなり、4ステージではソフトでヴィンテージなサウンド、8ステージはより複雑でモダンなサウンドとなっております。
●Shape
このトグルスイッチでフェイズの波形を3種類から切り替えられます。左側でサインウェイヴ、真ん中でトライアングルウェイヴ、右側でランダムステップウェイヴとなっております。
●Output Trim
基板内部のOutput Trimポットで出力の調整が出来ます。基本はユニティゲインに設定されており、このポットを時計回りでブースト、反時計回りでカットします。
●Exp
このExp端子からエクスプレッション・ペダルでStretchツマミのコントロールを操作、フェイズからディレイへの可変やランダマイズしたシーケンスをリアルタイムに弄れます。






ちなみにDweller同様、フェイザーを基本にした多目的な 'マルチ' としては昔から所有しているコイツが好き(最近のではなく失礼)。このWhetstoneを製作するBlackout Effectorsはすでに会社のHPも無くたまにeBayやReverb.comで商品を見かけるのみ、という状況ですけど、ここ日本でも発売時の2009年にそのユニークな仕様から話題となりましたね。2ステージ/4ステージのクラシックなフェイザーやヴィブラートとしての機能はもちろん、リゾナンスをきつくすることでエンヴェロープ・フィルターから本機ならではのユニークな 'Pads'、'RIng'、'Fix' のAMラジオ風 'ローファイ'、そしてFilter Matrix風 'リング変調' に至るまで唯一無二の存在を放っております。まさに '栄枯盛衰' なペダル業界ですけどこの工房が消えてしまったのは勿体無かったなあ。

●Feedback
非常に幅広いレンジを持つコントロールです。1〜8のセッティングではクラシックなモジュレーションとなります。8以上のエクストリームなセッティングではフィードバックした信号が入力信号を超え、発振します。
●Rate & Range
RateツマミとRangeスイッチは連動しております。RangeスイッチはRateツマミで操作出来るLFOのスピードレンジを可変させます。通常の 'Normal' では適度にスロウ〜ファストの最も一般的なフェイザーになります。'Pads' ではスピードレンジを非常に遅く出来ます。最も遅いセッティングでモジュレーションの両ピークは約40秒となります。'Ring' は非常に速いスピードレンジとなります。このセッティングによる 'ウルトラファスト・フェイズ' にはリング・モジュレーション風や発振ノイズなど、様々な効果が付加。またこのモードでDepthツマミを下げるとオクターヴ風の効果になります。'Fix' はLFOをカットした効果となります。このモードでRateツマミは一般のフェイザーとは違ったマニュアルスウィープ・コントロールとなり、ワウ '半踏み' 風味から 'AMラジオ' 効果など、これまでには無かった新しいアプローチのトーンを生成します。
●Depth
ウェットシグナルをどのくらいドライシグナルにブレンドするのかを調整します。1〜3のセッティングではほんの少しのフェイズサウンドで、ドライシグナルにあまり強い効果を付加しません。このセッティングでは 'Ring' モードにおいて、オクターヴ下を作り出したり速いフェイザーでドライを際立たせたりする場合にも有効です。4〜6のセッティングでは、最も一般的なフェイズサウンドとなります。8〜10では強烈なフェイズサウンドへと変貌します。
●Level
過去のフェイザーはいわゆるヴォリューム調整を備えたものはありませんでしたが、本機ではこのLevelツマミによってバイパス時との音量差を無くした調整を行えます。このLevelツマミは基板内部のGainトリムポットと連動し、このトリムポットでさらにヴォリュームのレンジを調整、ブーストすることが出来ます。
●Stages
このトグルスイッチでフェイズサウンドを生成するオールパス・フィルターの段数を2ステージか4ステージで選択出来ます。2ステージは柔らかく、4ステージはより深く、ハッキリとしたフェイズらしい音色となります。
●Vibrato / Phased
通常、フェイザーのPhasedではドライシグナルとウェットシグナルをミックスして出力しますが、このVibratoではドライシグナルを遮断してウェットシグナルのみ出力します。こうすることでフェイザーがピッチヴィブラートの効果となります。このモード時はDepthツマミが10の位置を基本に調整して下さい。
●Asymmetrical / Symmetrical
このトグルスイッチはフェイザーのシュワシュワとしたサウンドとは違い、これまでにない新たなフェイズ効果を生成します。Asymmetricalはよりイレギュラーなスウィープとなり、ロータリー・スピーカーのような音色となります。これまでのフェイザーが上下運動的なかかり方とすれば、このモードは立体的でドップラー効果的なかかり方をします。このままVibratoモードにするとオートワウ〜トレモロ風な音色が生成出来ます。
●Low Pass / All Pass
このトグルスイッチは、フェイザーの持つオールパス・フィルターをローパス・フィルターへと切り替えることが出来ます。4ステージ・フェイズでは2つのオールパス・フィルターを通っておりますが、それをローパス・フィルターにする為、非常にダークなフェイズトーンを生成します。2ステージ・フェイズではメロウなフェイズトーンとなり、独特なフェイズ〜トレモロな効果となります。さらにVibratoやAsymmetricalモードと組み合わせてフィードバックを調整すると変貌するでしょう。
●Sweep
LFOの可変幅を切り替えることが出来ます。ShallowではLFOの可変幅を小さく設定することが出来ます。その為Rateは若干速くなります。WideはLFOの可変幅が大きく、少しRateが遅くなります。Rangeスイッチで 'Ring' モードとした時、このSweepスイッチはリング・モジュレーションやオクターヴ効果のヴァリエーションを増やすことが出来ます。







Toadworks Enveloope (discontinued)

そして今は無き工房、Toadworksが世に送り出したエンヴェロープをニッチな機能で特化させた珍品Enveloopeを中心に据えたセッティング。コレ、いわゆる1ループのセレクターにエンヴェロープの機能を内蔵して、そのインサート内のペダルを攻撃的に遊んでみようという謎アイテム。発想としてはDeath by AudioのTotal Sonic Annihilationや2ループをミックスするUmbrella Company Fusion Blenderなどと近い製品ですね。 動画では同社のトレモロPipelineをループにインサートしてのエンヴェロープ操作、なんですが・・地味だなあ。SensitivityとReleaseの2パラメータを軸にして、実は5通りほどの操作が楽しめるとのことでどれどれ・・取説を見てみましょうか。2つのトグルスイッチがそれぞれのモードに対応しており、通常のトゥルーバイパス・モードと 'Dyn' バイパス・モードがあり、'Dyn' モードにすると隣の 'Direction' スイッチの 'Normal' と 'Rev' の2モードに対応します。それぞれ 'Dynamic Forward' と 'Dynamic Backward' からなり、'Forward' では入力信号を複数に分割してエンヴェロープ操作、そして一方の 'Backward' はそれが逆となり(だから 'Rev')、主に基本の信号はループからのものとのことですが・・よくこの機能だけをペダル化しようと思いましたね(苦笑)。そんな '飛び道具' 的奇妙なループには以下、Catalinbread Coriolis EffectとLige is Unfair AudioのSynaptic Cleftというこれまた一癖も二癖もあるペダルをチョイス。







Catalinbread Coriolis Effect

今やMalekkoやMr.Blackと並びエフェクター界で大きな存在感を誇るCatalinbreadから登場したCoriolis Effect。ピッチシフトとテープ逆再生からターンテーブルの '電源落とし' 風効果、エクスプレッション・ペダルによるワウやフィルタリングからグリッチのランダマイズに至るまで奇妙な '飛び道具' を生成する満載感が素晴らしい。本機の多機能ぶりはシンプルにしてリアルタイム性に寄ったものながら、この 'Hold' スイッチはモメンタリーにした方が良かったかも。しかし、まだまだこの手のペダルの勢いを止めることは出来ませんね。そんな聞きなれない各種ツマミ、スイッチの機能は以下の通り。

●Position
ドライシグナルとウェットシグナルのバランスを調整します。時計回りでフルウェット、反時計回り最小でフルドライとなります。
●Velocity
ウェットシグナルのピッチを調整します。時計回り最大でドライシグナルと同じ(ユニゾン)となり、真ん中付近でオクターヴ下、反時計回り最小に近づくに従い、0Hzへと向かってピッチが下がります。
●Acceleration
ウェットシグナルにかかる2軸ローパスフィルターをコントロールします。時計回り最大ではフィルターがかからず(オールパス)、そこから下げていくとウェットシグナルの高域が減衰し、反時計回り最小ではローパスフィルターとなります。
●Exp
このトグルスイッチでエクスプレッション・ペダルに割り当てるコントロールを設定します。'Vel' にすればVelocity、'Acc' にすればAccelerationのコントロールをペダルで行えます。
●Hold
このスイッチを踏むことでその瞬間の音をホールドします。そのまま操作しなければホールドは2分間続きます。再びHoldスイッチを踏めばそのホールドは解除されます。ホールドされるのはウェットシグナルのみとなります。その状態はVelocityやAccelerationツマミで操作することも可能で、またホールド中にPositionツマミでホールドしたシグナルと入力しているシグナルとのバランスを調整出来ます。
●Expression Pedal Polarity
基板内部にある右上のスイッチで通常はNormalに設定されております。このスイッチを 'Reverse' にするとエクスプレッション・ペダルの極性が反転し、一部のペダルではこちらの極性で正常に可変するものがあります。またペダルの手前側と奥側を入れ替えるように操作出来るので、あえて 'Reverse' ポジションにすることで好みのサウンドを作ることが出来るかもしれません。
●Bypass
基板内部の左下にあるスイッチです。バイパス時の設定を切り替えます。'TB' 側ではトゥルーバイパス、'Buff' 側ではバッファードバイパスとなります。こちら 'Buff' 側のポジションにすると単にバッファーを通るだけではなく、Positionツマミが常時有効となります。また反時計回りにすればバイパス時の音量も大きくなります。





英国から新たに登場した何ともユーモラスなネーミングの工房、Life is Unfair Audio。そのイメージを裏切らないように出してきたのがこれまた奇妙なトレモロ、という体裁を取ったCVを軸として 'モジュラー' と連携する音作りを目指したSynaptic Cleft。単純にトレモロとしての使い方であれば16種の波形の選択とタップテンポ、また3種のパラメータをアサインするエクスプレッション・ペダル繋いでリアルタイムにその '揺れ' を楽しめます。しかし、本領を発揮するのは8つからなる3.5mmのミニプラグ端子に電圧制御を与えて従来のトレモロを脱した新たな音作りを生成可能。まさに 'Synaptic Cleft' (樹木状に広がる神経細胞)の名の如くDepth、Multiplier、Waveform、Wave Distort、Synthesizer In/Out、Sync In、Clock Outを拡張させて自らのサウンドを見つけて下さいませ。



 トランペットの 'アンプリファイ' において魅力的な音色を作る。コレ、まさに十人十色(10人もいるかな?)の個性だと思うのだけど、わたしがかなり以前から気に入ってアプローチしているのが 'リンギングトーン' なのです。'リンギング' (Ringing) とはいわゆるリング変調風の音色ということで、完全にリング・モジュレーターで 'ブッ潰した' 無調の響きとは違いますヨ。あくまでテーマは 'リンギング' という薄っすらジリジリとした金属質の '倍音生成' を行うこと。リング・モジュレーター '唯一の演奏法' と言えばFrquencyのエクスプレッション・コントロールであり、そのギュイ〜ンと非整数倍音をシフトする '飛び道具' 的効果からギターアンプの '箱鳴り' という一風変わったシミュレートの探求へと向かわせます。このような音作りに興味を持ったのはギタリストの土屋昌巳さんによる雑誌のインタビュー記事がきっかけでした。

"ギターもエレキは自宅でVoxのAC-50というアンプからのアウトをGroove Tubeに通して、そこからダイレクトに録りますね。まあ、これはスピーカー・シミュレーターと言うよりは、独特の新しいエフェクターというつもりで使ってます。どんなにスピーカー・ユニットから出る音をシミュレートしても、スピーカー・ボックスが鳴っている感じ、ある種の唸りというか、非音楽的な倍音が出ているあの箱鳴りの感じは出せませんからね。そこで、僕はGroove Tubeからの出力にさらにリング・モジュレーターをうす〜くかけて、全然音楽と関係ない倍音を少しずつ加えていって、それらしさを出しているんですよ。僕が使っているリング・モジュレーターは、電子工学の会社に務めている日本の方が作ってくれたハンドメイドもの。今回使ったのはモノラル・タイプなんですけど、ステレオ・タイプもつい1週間くらい前に出来上がったので、次のアルバムではステレオのエフェクターからの出力は全部そのリング・モジュレーターを通そうかなと思っています。アバンギャルドなモジュレーション・サウンドに行くのではなくて、よりナチュラルな倍音を作るためにね。例えば、実際のルーム・エコーがどういうものか知っていると、どんなに良いデジタル・リヴァーブのルーム・エコーを聴かされても "何だかなあ" となっちゃう。でもリング・モジュレーターを通すとその "何だかなあ" がある程度補正できるんですよ。" 

そんな 'リンギング・アプローチ' の為に用意したペダル3種。Dreadboxのループ・ブレンダーであるCocktailと組み合わせたMoody SoundsのCarlin Ring Modulator、Blackout Effectors Whetstone内蔵の 'Ring' & 'Fix' モード、そしてDreadboxのモジュレーション・ユニットKomorebi(木漏れ日)。まずCarlinを選んだのはその拡張性。本来、2つの入力の和と差をマルチプライヤー(乗算器)という回路で掛け合わせて非整数倍音を生成するオシレータを内蔵したリング・モジュレーターの製品が多い中、本機は '掛け合わせること' 自体の原点の構造に則った今どき珍しいもの。A、Bふたつの入出力を掛け合わせて音作りを行えるのでそれこそB出力をB入力にパッチングしたり、B入力に外部からLFOなどのキャリア入力をしたりと多様な音作りに威力を発揮します。ここではB入力にEpsilonからの 'Envelope' 出力やKomorebiの 'LFO' 出力を突っ込んでみましょうか。ただ、本機は原音ブレンドの無い完全に無調な響きを生成する '飛び道具' であり、そこでループ・ブレンダーの出番となるワケです。一方のWhetstoneは基本として2ステージ/4ステージのアナログ・フェイザー。しかし、Rangeツマミで切り替える4種の内、'Pads'、'Ring'、'Fix' という他社の製品では見かけない機能が内蔵されていることで現在まで手許に残っております。ここではその 'Ring' と 'Fix' が焦点なワケでして、この2種モードにするとRateツマミは 'Ring' では非常に早い細切れスピードとなり、そのままDepthツマミを下げてLFOの可変幅を切り替えるSweepスイッチ(Shallow/Wide)と組み合わせると一風変わったオクターヴ効果に早変わり。一方の 'Fix' はモジュレーションを無効にした揺れということでまさに 'Filter Matrix' 効果であり、そのままRateツマミはマニュアルによるフィルター・スウィープとして 'ワウ半踏み' 風味からチリチリとしたローファイな 'AMラジオ' 効果などを生成。こんなユニークなペダルが今や会社ごと無くなってしまったのは残念ですねえ(定期的にReverb.comなどで中古は出てきますけど)。最後はギリシャでモジュラーシンセのモジュール製作などを行うDreadboxのKomorebi(木漏れ日)。なぜ、この奇妙な日本語をチョイスしたのか全くの謎ですが(苦笑)、本機の基本はアナログのBBDチップを用いたフランジャー/コーラス・ユニット。しかし、Static、Rate、LFO OutのCV入出力を備えることからフツーの扱い方だけで満足して貰うことを頑なに?拒否します(笑)。フランジャーとしてはその可変幅の広さでやはり 'エレハモ' のDeluxe Electric Mistressをベースにしているようで、特に 'リンギング' に適した 'Filter Matrix' 効果が出せるのは素晴らしいですね。ここでは早速のCVを用いてLFO出力をCarlinのB入力、またCarlinのB出力をKomorebiのStaticやRateに繋ぐことでさらに過激な音作りを目指します。







その他の 'リンギング' な効果としてはやはり 'エレハモ' の名機、Deluxe Electric Mistress内蔵の 'Filter Matrix' モードも地味ではありますが使えますヨ。基本はフランジャーなのでほとんど無視されちゃいますけど、これが 'Range' ツマミ1つの機能ながらなかなかにハマってしまう。しかし同製品の動画を漁って見てもほぼフランジャーのみの解説ばかりで、もはやオマケですらなく完全に忘れ去られている・・(悲)。数少ないものでは最初の動画後半の4:42〜5:44、そして本機のデッドコピーであるHartmanの動画の3:30〜くらいで、改めて言うけどまあ、やっぱり忘れちゃうくらい地味ですよねえ(苦笑)。あ、そうそう、この機能は同社のPoly Chorusにも搭載されており、さらに触れるツマミが増えているのでこれまた地味に嬉しい(なぜか本機のヴィンテージと復刻版では 'Feedback'、'Width'、'Tune' の各ツマミ配置が変わってますけど)。とりあえず、この効果は 'Range' をリアルタイムで操作した時に '体感' 出来るので、やはりこのツマミをエクスプレッション・ペダルでコントロールしたい衝動に駆られるでしょう。そして叶うのであれば当時の 'エレハモ' が用意したHot Footを用いて、取り外した 'Range' ツマミの軸を摘むように接続して踏んで下さいませ。動画は初期型のものですけど、縦方向の動きをこんなギアの組み合わせで横方向に変換するというまさに 'アイデア商品' なり(笑)。








そんな 'リンギング' をよりダイナミズムを付けて操作、演出する為にこんなエンヴェロープ・フィルターと組み合わせてみます。このDreadbox Epsilonにはエンヴェロープ・ジェネレータが内蔵されており、Attack、Releaseのエンヴェロープをモメンタリースイッチでリアルタイムのみならず、'Envelope Out' からCV出力することが可能です。ここではCarlin Ring ModulatorとDreadboxのKomorebiによる 'Static' と 'Rate' のCV入力、'LFO Out' のCV出力から同期出来まする。ちなみにこの 'Filter Matrix' 効果に影響受けたと思しき '飛び道具' としては、エフェクター界の奇才Doug Tuttle主宰による工房、Mid-Fi ElectronicsのScrape Flutterなどもその類似した機能として加えても良いかな。また、同じくDreadbox(動画では旧社名のFreaqboxだけど)から 'ビットクラッシャー' なディレイと組み合わせたSonic Bitsもそんな 'リンギングトーン' の生成に力を発揮します。そして最後は英国の工房、Life is Unfairから古典的トレモロのPale Spectreをどーぞ。本機にはトグルスイッチによる3種のモードが搭載されており、その内の2つはVoxのRepeat Percussionに似たレトロ感たっぷりのパルス的トレモロといわゆるClean Boostなのですが、ここで取り上げたいのが3つ目の 'Heterodyne Modulator' と題した一風変わったリング・モジュレーター!。これも一般的に想像されるFrequencyをギュイ〜ンと変調するものとは違い、LFOに当たるツマミを回し切ることでジリジリとした 'リンギングトーン' へと変貌します。




さて、個人的に重宝したいのはKoma Elektronik BD101 Analog Gate/Delayによる 'Intergaractic Sounds' と称した 'フランジ効果' が素晴らしい。 Koma Elektronikお得意の赤外線センサーによるショート・ディレイ変調がもたらす、まるで土管の中に頭を突っ込んでしまった時に体感する 'コォ〜ッ' とした金属的変調感はなかなか他に比べるものが無いユニークな効果ですね。これは、あのMarshal Electronicsの隠れた名機にして 'ダース・ベイダーの声' の立役者であるTime Modulator Model 5402にも匹敵しますヨ。このBD101自体の効果は強いので、Dreadboxのクリーン・ブースト内蔵の便利な 'ループ・ブレンダー' Cocktailで原音とエフェクツ音のミックスが最適ですね。また、同種の効果としてはあのGamechanger Audioと並び現在ペダルやシンセで気炎を吐くラトビア共和国の工房、Erica Synths。いわゆるデスクトップ型のDJ用エフェクターとしてPolivoksシンセサイザーのVCFを抜き出したAcid Box Ⅲや英国のレーベル、Ninja Tuneとの 'コラボ' により製作されたZen Delayと共にラインナップされているのがこのFusion Box。BBDチップを用いたアナログ・ディレイ、コーラス、フランジャーの効果に真空管ドライブを掛け合わせたステレオ・ユニットで、さらに 'センド・リターン' を設けてより過激な音作りにも対応します。








こちらはDweller、Whetstoneに続くこれまた多目的な8種類のエフェクツ搭載による '飛び道具' 的ペダル、Sunfish Audio Ikigai(生き甲斐?)。何とも奇妙なネーミングですけど(苦笑)、この手のニッチな効果を生成するエフェクターは近年国産品も活発化しており、'Possessed' で話題となったMasf Pedalsから限定製作されたSuper FlutterのS3N、そしてお馴染みBananana Effectsといった従来の 'ギター屋さん' ではないところで続々と参入中。このSunfish Audioもそんな一味違うスパイスを効かせたラインナップを誇っており、いわゆる 'グリッチ' にまで対応したデジタル・ディレイAutoscopyで提示したアプローチがこのIkigaiにも盛り込まれております。その多目的なプリセットの中身は1 - Tremolo/Ring Modulator、2 - Old Vinyl、3 - Filter Sample & Hold、4 - Fuzz、5 - Organ Simulator、6 - Crystal Delay、7 - Talking Filter、8 - Random Samplerの8種。そして、こちらは大阪から東京に本拠を移して '黄色いバナナ' を目印に小ぶりな '飛び道具' を市場に送り出しているBananana Effects。以前に同名でラインナップしていた 'Tararira' がデザイン、機能共に全て一新して今年2月に帰ってきます。その可愛いグラフィカルなLEDはもちろん、8ステップ・シーケンサーと9種のシーケンス、8種のエフェクツを中心に27種のスケールと3種のエディット可能なユーザー・スケール、9種のプリセット保存によりエレクトロニカの新たな世界を開陳するでしょう。このポップなデザインだけで欲しくなる、というか買います(笑)。また英国から登場した新興の工房、Intensive Care Audioのコーラス/ヴィブラート・ユニットの皮を被った '変態グリッチ' の変わり種、Fideleaterも面白い。'痩せ' と 'デブっちょ' のマークの付いた 'Untie' スイッチを 'デブっちょ' にすると一変、まるでテープを噛み砕いてブチブチと燃やしたようなグリッチ効果を8種のLFOと共に崩壊させます。

Pladask Elektrisk Fabrikat
Red Panda Tensor

そして管楽器による 'グリッチ' の一例。例えばモジュラーシンセとの組み合わせではCV/Gateからの同期によりフレイズのランダマイズ、いわゆる 'グリッチ/スタッター' の効果へのアプローチが楽しいのですが、最近はDSPを駆使してお手軽に 'グラニュラー・シンセシス' な効果を生成するペダルも用意されております。ベルギーの工房Drolo FxのMolecular Disruporやノルウェーの工房Pladask ElektriskのFabrikat、この手の機器としては今や老舗感すら漂わせるWMDのTensorなどなど・・。とにかくセンス一発が問われてしまう '飛び道具' なので上手く付き合えるかどーかは貴方次第。





 




そんな過激な 'グリッチ' に至る前段階として、いわゆる簡易的な '擬似シンセ' のアプローチで遊んでみるのも一興ですヨ。最近、魅力的な製品を続々市場に送り込み日本でも知名度と人気を得ているEarthquaker Devices。ここでは同社の 'オルガン・トーン' を生成するOrganizerとディレイのSpace Spiral、そして 'ディスコン' ではありますがPitch Bayとピッチシフトの変異系である '飛び道具' Rainbow Machineをそれぞれサックスで '擬似シンセ' 化。とにかくココはユーザーが欲しがっているツボを突いた製品の多いのが特徴ですね。とにかくピッチ・シフターとフィルター、ディレイなどを組み合わせてみるだけでもシンセっぽい感じは出せまする。さらに去年話題をさらったHologram Electronicsから 'グラニュラー・シンセシス' の異色作、Microcosmも面白い。











さて、すでにこういった古典的 'IDM' の音像も懐かしいものになりましたが、やはり、わたしは未だにこういう削り出していくような '音響の彫刻' ともいうべき美学が好きですね。エレクトロニカにおけるミニマル・ダブからクリック・テクノを繋ぐ雛形を作ったヤン・イェリネック、ヴラディスラヴ・ディレイ、オウテカ。というか、このオウテカの極北ともいうべき 'Confield' の根底に流れるヒップ・ホップの解釈は、ショーン・ブースとロブ・ブラウンの二人により1993年のデビューから2020年の最新作 'Sign' まで一貫してブレずに流れているのは驚嘆しますね。そして 'グリッチ' のオリジネイターにして孤高の存在、'オヴァル' ことマーカス・ポップの痙攣する '顕微鏡のオーケストラ' に耳をそば立てて下さいませ。一方、このエレクトロニカの流れがR&Bの新たな解釈と合流した '兆し' として米国LAから現れたのが 'フライング・ロータス' ことスティーヴン・エリソンと彼のレーベル、Brainfeederの活動。そのレーベルで女性トラックメイカーとして頭角を現した 'トキモンスタ' ことジェニファー・リーのファースト・アルバム 'Midnight Menu' も完成度高くてびっくりしたなあ。



久しぶりにドラムンベースを 'Kick' する・・すでにカビの生えたこのブレイクビーツの是非をここでは問いません。ひとつのプログラムから別のプログラムを起動させるというコンピュータに起因したこの用語を用いるとき、レコードや生のドラムから音色をサンプリングして、細かくバラしていくと共に組み直し、テンポを上げてピッチはストレッチさせるサンプラーありきの 'プログラム的な' ビート・ミュージックであったことを思い出します。緻密でポリリズミックな高速ブレイクビーツと、ダウンテンポの無調なベースラインの '二層的な' 構造でひとつのグルーヴを生み出すのが画期的だったのです。そんなドラムンベース全盛の時代は未だMIDIプログラミングが当たり前だったのだけど、今やコンピュータ・ベースによるオーディオデータ貼り付けの制作システムにおいても、基本的にはそのドラムンベースの時代から変わっていない。そういう意味では音楽が創造的な時代の最後のピークであり、その盛り上がり方から燃え尽きるまで案外と早かったジャンルでもありましたね。それは、まだ 'ジャングル' という呼称でラガマフィン・スタイルをベースに 'リミックス' 中心のノべルティ・タッチな作風だった頃に比べて一転、デトロイト・テクノやジャジーな響きを纏ってシリアス・ミュージックとしての可能性に転向してからは、その作り込みとは別にビートの '過剰さ' に寄りかかり過ぎて自滅していった感があります。それでも4つ打ちのテクノ、スモーキーなダウンテンポのブレイクビーツに現れる '普遍性' に対してドラムンベースの方法論は、現在のダブステップからグライム、トラップといったEDMのスタイルに変容したことで、いわゆるビートの細分化とプログラミングのスキルによるネットワークで '再起動' したものと見ることが出来るでしょう。





つまり、流行のサイクルは短いけれど何度でも組み直されることの '変奏' により、ビートが身体の限界を '管理' する様態へいつでも接近したい欲求こそドラムンベースだったのではないでしょうか。そういう意味では当時、このドラムンベースを最もプログレッシヴなかたちへと昇華させたスクエアプッシャーがその後、見事に 'EDM化' したのも納得。現在、世界的に流行するヒップ・ホップ・ダンスの一種である 'Poppin' では、まさにビートと拮抗するように身体の限界に挑む創造性を発揮しております。ええ、上の動画はCGでもなければ編集も無し、スクリレックス以降のダブステップに特徴のウォブルベースに合わせてブルブルと痙攣させたり、無重力に逆再生するような流れでガクガクとヒット(身体を打つようなPoppinの動きをこう呼びます)させる特異な動きなど、いやあ、これはサイボーグの時代到来ですねえ。この断片化された情報の 'かけら' をひとつずつ収集、分解、再解釈していく姿は、英国の音楽批評家サイモン・レイノルズによれば '想像を超えた激しい情報過負荷時代に対応するため、再プログラミングされた身体の鼓動' であると同時に 'ステロイドを使ったポストモダンのダブ' とドラムンベースを定義しました。まさにこれまでの器楽演奏によるスキルやプレイヤビリティとは全く違う領域から音楽を聴取、身体に作用する感覚が生成していることを無視することは出来ません。






ちなみにすっかりポップ・ミュージックから離れてしまったのだけど、久しぶりにYoutubeで耳を惹き付けたのがこちら、Friday Night Plans。おお、まだまだ 'J-POP' (って言っていいのかな?)も捨てたもんじゃないやん!などとエセ関西弁で唸ってしまいましたが、どういう素性のコ(女性ヴォーカル一人らしい)なのかさっぱり知りませんけど、あの竹内まりやさんの 'Plastic Love' のカバーから、いきなりフランキー・ビヴァリー&メイズの 'Joy and Pain' のオマージュか!?と言いたくなるようなイントロの 'Honda'、ラガマフィンのテンポながらコードに対する '異化効果' としてぶつけてくるサンプルが面白い 'UU'、そしてヴォコードなイントロから始まるスロウジャム 'All The Dots' にまるでデトロイト・テクノ・マナーな '4つ打ち' の 'Unknown' まで、とにかくこの気怠いヴォーカルと共に醸し出す '夜の匂い' がたまりません。いやあ、何でこーいう才能ある人をもっとメディアは取り上げないんだろ?。











そして管楽器の 'アンプリファイ' におけるわたしの足下は上からそれぞれメインボード、実験ボードの2種を用意。'メイン' と '実験' は基本の音作りとしてNeotenicSound AcoFlavor、Magical Force、PurePad、Headway Music Audio EDB-2、Terry Audio The White Rabbit Deluxe、Radial Engineering JDIで入り口から出口までを構成します。その 'メイン' ではDr. LakeのKP-Adapterを繋いでいるのですが、ここにライン入力を持つDJ用エフェクターやBastl InstrumentsのThymeなどを繋ぎます。また '実験' の方では2つに設けたインサート・ポイントとして、NeotenicSoundの 'Insertion' というIn/Outを備えた機器をパッシヴ(青)とアクティヴ(赤)でそれぞれ賄っているのがキモですね。もちろん、ここでのピックアップマイク→プリアンプ→ペダル→DIという直列の接続だけではなく、ペダルを 'インサート' することの可能な管楽器に特化したプリアンプ/DIを使えばより簡便なアプローチが可能。もはやこのようなペダル類はギタリストだけのものではありません。さて、そんな管楽器による 'アンプリファイ' もすっかりその敷居が低くなりました。そもそも一昔前はその情報自体が 'トライ&エラー' の賜物でして、いわゆるPAと少々の 'インピーダンス・マッチング' における専門的な知識に辿り付ける奏者はほぼ皆無。また、その為の機器も市場に用意されていなかったことからピックアップ・マイクは購入したもののの後はワケが分からず、見様見真似でマイク・プリアンプからDI、小型のライン・ミキサーなどを組み合わせては試行錯誤に明け暮れていたことが昨日のことのように懐かしい(笑)。





今ならZorg EffectsのBlow !やRadial EngineeringのVoco-Locoといったマイク入力とDIを軸にコンパクト・ペダルと 'インピーダンス・マッチング' に特化したプリアンプをそのまま購入、特に悩むことなくアンプやPAに繋いで管楽器での 'アンプリファイ' を楽しめちゃうのです。一昔前の管楽器における '電化論争' とか、今の若いコたちには、ん?何ソレ?ってくらい実感がないというか、別にマイクやコンパクトペダル、PAを使った音作りをやったからといって管楽器自体の魅力が閉じるなんてことは全く無いんですよね。面白いんだから試しにちょっと遊んでみたら?って軽い気持ちでアプローチしても全然OK!。ちなみにZorg Effectsの新作であるBlow ! Blow !! Blow !!!は2つのマイク入力とDI出力、そして 'インサート' するセンド・リターンまで全て 'ステレオ' に拡張しました。これでEventideやStrymonなどの高品質な 'ステレオ・ユニット' をそのまま使うことが可能・・なのですが、ひとつ注意!。本機のマイク入力は残念ながらファンタム電源無しのダイナミック・マイク専用となりまする。'モノラル版' のBlow !の方はファンタム電源可能なので機器の '住み分け' なのかな?と思いましたが、しかし、ここは 'プロの現場' の意見が反映されていると考えれば納得する部分の方が大きいでしょうね。このような 'インサート' 付きプリアンプの取説ではマイクをそのままXLR入力する旨が記載されておりますが、実際のステージでこのような接続はほぼ無いのが現実です。会場の音場を掌握するPAエンジニアにとって重要なのはトラブルの無いステージ進行であり、その為にステージ上からの各種楽器の音はそのまま欲しい。つまり管楽器からのマイクはPAのミキシング・コンソールに繋がれて、別途エフェクツ類の使用においてはコンソールの 'バスアウト' からDIで 'インサート' するかたちでステージ上にペダル類を提供する 'リアンプ' 的手法が一般的なのです。この手の機器もほぼそのような接続で利用されており、それは例えばペダル類のトラブルが起きた場合すぐさま 'バスアウト' の回線を切って管楽器の生音に復帰出来ます。また突発的なハウリング・マージンを稼ぐ場合にもPA側でバランスを取りやすいというメリットがありますね。しかし、そろそろZorg Effectsは日本の代理店が取り扱って頂きたいなあ。







今や管楽器奏者にとってすっかり定番のRadial Engineering Voco-Locoとこちらもダイナミック・マイク専用ながらコンパクトペダルの 'インサート' はもちろん、2つの独立したマルチエフェクツ(A - Octaves、Phaser、Short Delay、Reverb 1、Reverb 2、B - Rotaly、Flange、Long Delay、Reverb 3、Reverb 4)や音作りとしてサチュレーションのブースト機能まで備えたOld Blood Noise Endeavors Mawが登場。このMawはあれこれペダルを '買い増し' したくない管楽器奏者にとっても嬉しい仕様なんじゃないでしょうか(笑)。











細々ながらしかし着実にコンパクト・エフェクターという分野を従来のギタリストの枠を超えてアプローチする傾向に拍車がかかっておりますが、いま目の前に二つの簡易的なセットがございます。ひとつはHatena ?の 'エレアコ' 用プリアンプであるSpice Cube、もうひとつはVoco-Locoと並び管楽器奏者に愛用されるEventideの 'インサート' 付きプリアンプMixinglinkであり、それぞれNeotenicSoundの 'Acoustic Pickup Signal Conditioner' と題されたAcoFlavorと組み合わせておりまする。Hatena ?はそもそもNeotenicSoundのビルダーであるいっぺいさんが過去に展開していたブランドであり、Spice Cubeはそこで人気を博したActive Spiceの機能はそのままにDIとチューナー出力、'センド・リターン' を設けてY型の 'インサート・ケーブル' によるマイクとピエゾのミックスが可能です。この2チャンネルによるToneの音作りがユニークで、基板内にある 'TH/TL' と 'RH/RL' という2つのスライドスイッチを触ってTRSフォンの 'Tip' と 'Ring' に相当してそれぞれ 'High' や 'Low' 側の帯域に対してツマミをそれぞれ独立したToneに加えて設定出来ます。ここではマイク側の 'Ring' を 'RH' (高域)、ピエゾ側の 'Tip' を 'TL' (低域)としてそれぞれカバーさせます。そして、一方のEventide Mixinglinkは2つのMic/Line(コンボ端子)、Lo/Hi切り替えのInst.入力はもちろん、音作り補正としてのEQは無い代わりに 'インサート端子' を設けてコンパクト・エフェクターとのブレンドを行うことが可能。面白いのはフットスイッチが 'Hold' と 'Latch' で選択出来たり、高級なラック機器を触った時に感じるクリクリ・・とした心地良いクリック感のあるツマミなど、さすが高品質なEventideならではという感じ。また、ヘッドフォン出力も備えられており買ってきたペダルを 'インサート' してすぐチェック出来るお手軽さは楽しいですね。ただしEQは搭載されていないので別個にLeqtiqueの10 Band Graphic EQを搭載!。さて、これら共通のプリアンプの 'スパイス' として機能するのが 'ピエゾ' によるマウスピース・ピックアップ必須の唯一無二なアイテム、NeotenicSoundのAcoFlavor。ホント、こういうエフェクターって今まで無かったんじゃないでしょうか。というか、いわゆる ' エレアコ' のピックアップの持つクセ、機器間の 'インピーダンス・マッチング' がもたらす不均衡感に悩まされてきた者にとって、まさに喉から手が出るほど欲しかった機材がコレなんですヨ。そもそも本機は '1ノブ' のPiezoFitというプロトタイプからスタートしており、それをさらにLimitとFitの '2ノブ' で感度調整の機能を強化した製品版AcoFlavorへと仕上げ始めたのが2017年の暮れのこと。そのいくつかの意見を聞くべく微力ながらお手伝いをさせてもらったのですが、多分、多くの 'エレアコ楽器' におけるピックアップ自体が持つ仕様の違いから、こちらは良いけどあちらはイマイチという感じで、細かな微調整を工房とやり取りをしながら煮詰めて行きました。当初、送られてきたのはMaster、Fit共に10時以降回すと歪んでしまって(わたしの環境では)使えませんでした。何回かのやり取りの後、ようやく満足できるカタチに仕上がったのが今の製品版で、現在はLimit 9時、Master 1時、Fit 11時のセッティングにしてちょうど良いですね。ちなみに本機はプリアンプではなく、奏者が演奏時に感じるレスポンスの '暴れ' をピックアップのクセ含めて補正してくれるもの、と思って頂けると分かりやすいと思います。その出音以上に奏者が演奏から体感するフィードバックの点で本機の 'あると無し' じゃ大きく違い、管楽器でPiezoBarrelなどのマウスピース・ピックアップ使用の方は絶対に試して頂きたい逸品です。








Hatena ? Spice Land
Hatena ? Active Spice A.S. - 2012 ①
Hatena ? Active Spice A.S. - 2012 ②

そんな '音場補正' に特化したプリアンプとして '緑色の筐体' でおなじみActive Spice。2000年代初め、ヴィンテージ・エフェクター再評価以後、いわゆる 'ブティック・ペダル' と呼ばれた個人によるペダル製作の工房が全国で勃興します。'Hatena ?' というブランドを展開したEffectronics Engineeringもその黎明期を象徴する工房で、特にActive Spiceはベーシストを中心にヒットしました。唯一動画としてUPされているThe Spiceはその最終進化形であり、すでに廃盤ではありますがダイナミクスのコントロールと '質感生成' で威力を発揮してくれます。後継機のMagical Forceも独特でしたがこのThe Spiceのパラメータも全体を調整するVolumeの他はかなり異色で、音圧を調整するSensitivity、Gainは歪み量ではなく音の抜けや輪郭の調整、Colorはコンプ感とEQ感が連動し、ツマミを上げて行くほどそのコンプ感を解除すると共にトレブリーなトーンとなる。さらにブースト機能とEQ感を強調するようなSolo !、そしてTightスイッチはその名の通り締まったトーンとなり、On/Offスイッチはエフェクトの効果ではなくSolo !のOn/Offとのことで基本的にバッファー的接続となります。ちなみに画像左側のものは初期のプロトタイプであり、Level、Wild !、Toneの3つのツマミという仕様でDC9Vのほか、9V電池ホルダーが基板裏側に内蔵?されるように装着しているのが面白いですね。ToneはそのままEQ的機能ですがこのWild !というツマミ1つを回すことでSensitivityとGainの効果を担っており、この後の製品版よりサチュレーション的飽和感の '荒さ' がいかにも初期モノっぽい。まだ南船場で工房を構える前の自宅で製作していた頃のもので、この時期の作業はエッチング液に浸した基板から感光幕を除去すべく玄関前?で干していたブログ記事を覚えております(笑)。Acitive Spiceはその 'クリーンの音を作り込む' という他にないコンセプトで今に至る '国産ハンドメイド・エフェクター' の嚆矢となり、さらに 'プリアンプ感' の強調した派生型Spice Landを始め、2009年、2011年、2012年と限定カラー版(2011年版はチューナー出力増設済み)なども登場しながら現在でも中古市場を中心にその古びないコンセプトは健在なり。







現在のメインはHeadway Music AudioのEDB-2。いわゆる 'エレアコ' のピックアップ・マイクにおいて 'ピエゾ + マグ' とか 'ピエゾ + コンデンサー' とか、いかにしてPAの環境で 'アコースティック' の鳴りを再現できるのかの奥深い探求があり、本機EDB-2はフォンとXLRの2チャンネル仕様でEQをch.1、ch.2で個別及び同時使用の選択、2つのピックアップの '位相差' を揃えるフェイズ・スイッチと突発的なフィードバックに威力を発揮するNotch Filter、DIとは別にフォンのLine出力も備えるなど、高品質かつ '痒いところに手の届く' 精密な作りですね。ただしXLR入力のファンタム電源が48Vではなく18V供給となっているところは注意。そんなEDB-2も新たにEDB-2 H.Eとしてモデルチェンジし、新たに 'H.E.A.T (Harmonic Enhanced Analog Technology)' としてプリアンプ、EQ部を刷新すると共に本体に 'Send/Return' が装備されました。



Beyerdynamic TG-I52
SD Systems LDM94C

わたしにとって2つのピックアップ・マイク使用によるセッティングは譲れないのですが、その手軽さという点ではグーズネック式マイクだけでも十分に 'アンプリファイ' を堪能することが出来ます。このマイクも探してみるとほとんどで電源の必要なコンデンサー・マイクがズラッとラインナップされておりますが、むしろお手軽さと頑丈な構造、エフェクターとの相性という点ではダイナミック・マイクの方が扱いやすいと思いますね。Sennheiserの珍しいグーズネック式ダイナミック・マイクEvolution e608、サックスであればSD SystemsのLDM94も良いでしょうね。残念ながら日本での供給が無くなってしまったBeyerdynamic TG-I52はちょっと音痩せが目立つかな?。通常、管楽器の '生音' が持つアンビエンスを余すところなく収音してくれるのはコンデンサー・マイクに軍配が上がりますが、エフェクターを積極的に使う場合ではダイナミック・マイクの方がガツッとしたエフェクターの 'ノリやすさ'、限定的な帯域の収音に対するハウリング・マージンの確保の点で有利なことが多いのです。コンデンサーに比べてマイクを駆動する為の電源は要りませんが、プリアンプを挟むことで好みの音質に補正すればかなり追い込むことが可能ですね。現在、あまりにもその選択肢が少ないということで、もっとAudio-TechnicaやAKGといった大手メーカーもグーズネック式のダイナミック・マイクを手がけるべきですヨ。












管楽器奏者であれば '足下' の前に '口元' のチェックをしなければならないということで(笑)、最近の管楽器における 'アンプリファイ' では、従来のグーズネック式マイクのみならずマウスピースやネックに穴を開けて接合するピエゾ・ピックアップ、さらに穴空け不要でピン状のピエゾをネックへ挟み込むViga Music Tools製ピックアップなど実に多彩となってきました(Youtubeにも登場するWarren Walker、BlendReed、Guillaume Perretら三者が愛用中)。リーズナブルな価格帯でeBayを中心に人気を博すPiezoBarrel製ピックアップのほか、同種の製品ではブルガリアからのNalbantov ElectronicsやギリシャのTAP Pickups、そして、ドイツはRumberger Sound Productsから登場したピエゾ・ピックアップ、WP-1XとK1Xの2種がありまする。またFacebook中心で数年前から製品改良しているトルコのDoze.roという工房のものもありますね。Rumbergerの製品はトランペットでも装着するユーザーのレビューがありましたけど、K1Xはやはり木管楽器用だからかネックに穴を開けるアダプターのサイズがデカい。ということで小型化したWP-1Xの穴空けサイズを見ると7.5mm・・あのBarcus-berryのピックアップ取り付けで開けるサイズが7mmですからギリギリだ(汗)。この手のピックアップの大半がほぼ木管楽器に隔っているのは、単純にピックアップ取り付けの為のスペースが金楽器用マウスピースでは薄く狭いからだと思います。いわゆるヘヴィ・タイプのマウスピースにすれば良いのでは、と思いでしょうが、あの分厚い真鍮の切削加工に苦労するのが嫌でPiezoBarrelのスティーヴ・フランシスさんは通常のラインナップから外しましたからね(苦笑)。ともかく管楽器でエフェクターを使うにはこの 'ピックアップ・マイク' が無ければ始まりません。現在、その環境は見事に揃っており、管楽器奏者は臆することなく無数のペダルを繋いで遊び倒しましょう。







NeotenicSound Magical Force - Column
NeotenicSound Magical Force - Dynamic Processor ②
NeotenicSound Magical Force Pro - Linear Compressor (discontinued)

さて、わたしのエフェクターボードから絶対に欠かせないのがNeotenicSoundのダイナミクス系エフェクターMagical Force。いわゆる 'クリーンの音作り' というのをアンプやDI後のライン環境にまで幅広く '演出' させたものなのですヨ。まさに '縁の下の力持ち' 的アイテムというか、実際の楽器本来が持つ '鳴り' や 'コシ'、'旨味?' のようなものを 'アコースティック' だけでは得られないトーンとして生成します。2011年頃に 'Punch'、'Edge'、'Level' の3つのツマミで登場した本機は一度目のリファインをした後、新たに音の密度を司るこの工房お得意の 'Intensity' を追加、4つのツマミ仕様へとグレードアップしたMagical Force Proへと到達しました。しかし、不安定なパーツ供給の面で一度惜しむらく廃盤、その後、声援を受けて小型化と 'Intensity' から 'Density' に名称変更して根本的なリファイン、4回目の変貌を遂げたのが現行機Magical Forceとなりまする。

本機はプリアンプのようでもありエンハンサーのようでもありコンプレッサーのような '迫力増強系' エフェクター。とにかく 'Punch' (音圧)と 'Edge' (輪郭)の2つのツマミを回すだけでグッと前へ押し出され、面白いくらいに音像を動かしてくれます。'Density' (密度)を回すと音の密度が高まり、コンプレスされた質感と共に散っていってしまう音の定位を真ん中へギュッと集めてくれます。コレはわたしの '秘密兵器' でして、Headway Music Audioの2チャンネル・プリアンプEDB-2でピックアップマイク自身の補正後、本機と最終的な出力の160Wコンボアンプの3バンドEQでバランスを取っております。本機の特徴は、DI後のラインにおける 'クリーンの音作り' を積極的に作り込めることにあり、おいしい帯域を引き出してくれる代わりにガラリとバランスも変えてしまうのでかけ過ぎ注意・・。単体のEQやコンプレッサーなどの組み合わせに対し、本機のツマミは出音の変化が手に取るように分かりやすいのが良いですね。設定はLevel (11時)、Punch (1時)、Edge (11時)、Density (9時)。ともかく、わたしのラッパにおける 'クリーン・トーン' はコイツがないと話になりません。ただし '魔法' とはいえ、かけ過ぎればコンプ特有の平べったい質感になってしまうのですが、あえてガッツリと潰しながらEdgeをナロウ気味、Punchで張り出すような '質感生成' してみるのが面白いかも。とりあえず、各自いろいろと研究しながらコイツを体感してみて下さいませ。




Terry Audio The White Rabbit Deluxe ①

そしてもう一方のTerry Audio The White Rabbit Deluxe。こちらは1960年代のMcintoshのオーディオ・アンプがベースとなっており、いわゆるコンパクト・エフェクターにおいて 'ライン・アンプ' の発想から音作りをするものです。本機の '解説' を読んでみるとNeotenicSound Magical Forceと類似した効果を求めているようで、一切その表記のない3つのツマミは左から青い矢印と共にゲイン、赤い矢印の2つのツマミはメーカーによれば '回路の動作自体をコントロールし、シャッタースピードと絞り量で調整されるカメラの露出のように有機的に連動している' とのこと。何だかMagical ForceのPunchとEdgeを思わせるパラメータのように聞こえますが、これら2つのツマミの設定をフットスイッチで切り替えることが出来ます。また、ゲインを上げていくとファズの如く歪んでくるのもまさにギター用に特化した 'ブースト的' 音作りと言って良く、その歪み方としてはJHS Pedals Colour Boxのコンソールにおける 'ファズっぽい' 感じと同様ですね。本機はわたしのセッティングでも愛用しているのですが、まさに効果てき面!サチュレートした 'ハイ上がり' のトーンと共に一枚覆っていたような膜がなくなって音抜けが良くなります。エフェクターボードの先頭と後端で威力を発揮するMagical ForceとThe White Rabbit Deluxe、これがわたしの '魔法' です。







ちなみに過去、この手の '音質補正' というか、ある時代の価値観として広まった解像度を上げるような機器にエキサイターと呼ばれるものがありました。そもそもこの名称はAphexという会社により製品化された商品名 'Aural Exciter' であり、続くBBEからは 'Sonic Maximizer' など独自の技術で商品化された後、その効果のカテゴリーとしてはエンハンサーと呼ばれることが一般的ですね。共通するのは各社それぞれの回路により 'スパイス' 的に高域成分を原音へ混ぜるというもので、その混ぜ方にどこか '化学調味料' 的不自然なギラ付きがあることから、今や 'DAW' のプラグイン、オーディオやTVの音響効果として備えられた 'EQ' 的処理の大半で耳にするのみです。1980年代にはTokai TXC-1のほか、Pearl TH-20 Thrillerやラック中心のBBEから珍しいペダル版Model 601 Stinger、Boss EH-2 EnhancerにDODから 'Psycho Acoustic Processor' こと 'FX87 Edge' というワンノブのヤツ、 そしてElectro-HarmonixのレアなAmbitronなど、いかにも 'ハイファイ' 志向の時代を象徴する製品が市場に用意されておりました。また、ここ近年では元祖Aphexから高域に加えて低域の 'Big Bottom' を補正出来るExciterも登場。まさに原音重視のエフェクターが跋扈する現代では完全に '過去の遺物' と化しておりますが、むしろ不自然なほどの '色付け' を得意とするこのエキサイターから新たな音色を '見つけて' 頂きたい。Balance、Frequency、Brightからなる3種ツマミでシャリシャリ、ギラギラ・・あんなに不自然だと思っていた効果が突然、時代の求める音色となったりして(笑)。というか、単純に音抜けでピンポイントに突くのであればEQに悩むより本機で補正した方が解決する場合もありますヨ。さて、このAmbitronを設計したハワード・デイビスによれば、きっかけはモノラルのレコードから '疑似ステレオ' を取り出すことにあったとのこと。

 "Ambitronを思いついたとき、わたしのコレクションのいくつかのレコードはモノラルのロックばかりでした。古いものでは45回転や78回転のものもあり、また当時のステレオ録音の中には実際の 'ステレオ・ミックス' がされていないものもありました。多くの場合、ミックスの '真ん中が抜けて' ('hole-in-the middle')おり、おそらくヴォーカルとベースを除いて楽器は真ん中もしくはその近くに無く、左右に振り分けられていました。モノラルのソースからリアルな疑似ステレオを生成して実際に部屋やスピーカーを変更することなく、より周囲の音響を合成したステレオ効果を強調する方法が必要でした。このようにして誕生したのがAmbitronです。"





Neotenic Sound PurePad ①
Neotenic Sound PurePad ②

さらに 'エレアコ' にとってプリアンプと共に大事なのがヴォリューム・コントロール。以前はそれほどヴォリューム・コントロールに対して気にかけておりませんでしたが、自らの足元へ 'ループ・サンプラー' 導入に対するダイナミズムの演出でヴォリューム・ペダルほど大げさじゃないもので何かないかと探しておりました。そんなヴォリューム・ペダルの使用に当たって注意したいのは、最初にベストな音量の設定をした状態から可動させた後、瞬時に元の設定位置へ戻すのが大変なこと。このようなニッチな不満に応えようと現れたのが、そんなヴォリュームの状態を視認できる '便利グッズ' と呼ぶべきレベル・インジケーター。音量の増減に合わせてググッとLEDが上がったり下がったり・・その視認性の高さ以外に見た目としても華やかで楽しく、チューナーアウトもしくはエクスプレッション・アウトの端子を持つヴォリューム・ペダルに対応しております。このOK Custom Designのものは、接続する製品によって極性を合わせる為に裏面のトリマーを調整してレベル・マッチングを図ることが出来るのも便利(現行品は筐体上面にトリマー装備)。そしてわたしが愛用しているのはヴォリューム・ペダルの代わりに 'Pad' でダイナミズムを生成するNeotenicSoundのPurePadをスタンバイ。これは2つに設定された 'プリセット・ヴォリューム' をスイッチ1つで切り替えるもので、ひとつは通常の状態(赤いLEDのSolo)、もうひとつが若干ヴォリュームの下がった状態(緑のLEDのBacking)となっており、'Pad' で音量を抑えながら全体のバランスを崩すことなく音量を上下できる優れもの。この切り替えによる音質の変化はありますが、音量を下げても引っ込みながらシャープなエッジは失われずまとまりやすい定位となります。わたし的には先頭でも後端でもなく真ん中に繋ぐのがポイントで、そんなメーカーの '取説' は以下の通り。

"ピュアパッドは珍しいタイプのマシンなので使用には少し慣れとコツが必要かもしれませんので、音作りまでの手順をご紹介します。アコースティックの場合は図のように楽器、プリアンプ、ピュアパッド、アンプの順に接続します。エレキギターなどの場合は歪みペダルなど、メインになっているエフェクターの次に繋ぐとよいでしょう。楽器単体でお一人で演奏される場合は、初めにピュアパッドをソロ(赤ランプ)にしておいて、いつものようにプリアンプやアンプを調整していただければ大丈夫です。ピュアパッドのスイッチを踏んで、緑色のランプになったら伴奏用の少し下がった音になります。複数の人とアンサンブルをする場合には、初めにピュアパッドをバッキング(緑のランプ)の方にして、他の人とのバランスがちょうどいいようにプリアンプやアンプで調整します。そしてソロの時になったらピュアパッドのスイッチを踏めば、今までより少し張りのある元気な音になってくれます。また、ピュアパッドを繋ぐと今までより少し音が小さくなると思いますが、プリアンプよりもアンプの方で音量を上げていただく方が豊かな音色になりやすいです。もしそれでアンプがポワーンとした感じとなったり、音がハッキリクッキリし過ぎると感じたら、アンプの音量を下げて、その分プリアンプのレベルを下げてみてください。ツマミを回すときに、弾きながら少しずつ調整するとよいでしょう。"

わたしの環境では 'ループ・サンプラー' でのオーバーダブする際、フレイズが飽和することを避ける為の導入のほか、宅録の際にもアンプのヴォリュームはそのままに全体の音像を一歩下げる、もしくは歪み系やディレイ、ワウのピーク時のハウリング誘発直前でグッと下げる使い方でとても有効でした。以前のPurePadはLED視認の為の電源以外はパッシヴの仕様なのですが、現在は新たにバッファー内蔵のアクティヴ版PurePadで新装してラインナップ。従来のパッシヴ版ではプリアンプや '歪み系' エフェクターの後ろに繋いでマスタープリセット的に使用することを想定していたようですが、このアクティヴ版は各種スイッチャーのチャンネルに組み込んだり、楽器の先頭に繋いでブースターの補助的アイテムとして用いるなど '使い勝手' の幅が広がりました。堂々の 'Dynamics Processor' という名と共にDC9Vアダプターのほか9V電池による駆動も可能です。







そんな管楽器の 'アンプリファイ' におけるヴォリューム・コントロールについては御大、マイルス・デイビスも重要なものとしてこのように述べております、その繊細なニュアンスの変化は1972年を境にヴォリューム・ペダルの老舗、DeArmondにトランペットでの音量カーブに合わせたパッシヴの 'Model 610' の特注品をオーダーしたことからも分かるでしょう。そんなダイナミズムがもたらす耳のポジションが音楽の新たな '聴こえ方' を提示しているのが興味深い。

"ああやって前かがみになってプレイすると耳に入ってくる音が全く別の状態で聴きとれるんだ。スタンディング・ポジションで吹くのとは、別の音場なんだ。それにかがんで低い位置になると、すべての音がベスト・サウンドで聴こえるんだ。うんと低い位置になると床からはねかえってくる音だって聴こえる。耳の位置を変えながら吹くっていうのは、いろんな風に聴こえるバンドの音と対決しているみたいなものだ。特にリズムがゆるやかに流れているような状態の時に、かがみ込んで囁くようにプレイするっていうのは素晴らしいよ。プレイしている自分にとっても驚きだよ。高い位置と低いところとでは、音が違うんだから。立っている時にはやれないことがかがんでいる時にはやれたり、逆にかがんでいる時にやれないことが立っている時にはやれる。こんな風にして吹けるようになったのは、ヴォリューム・ペダルとワウワウ・ペダルの両方が出来てからだよ。ヴォリューム・ペダルを注文して作らせたんだ。これだと、ソフトに吹いていて、途中で音量を倍増させることもできる。試してみたらとても良かったんで使い始めたわけだ。ま、あの格好はあまり良くないけど、格好が問題じゃなく要はサウンドだからね。"










わたしの現在の足下に収まっている '手のひら' ワウの先駆、シンガポールのガレージ工房が手がけたPlutoneium Chi Wah Wah。光学式センサーによる板バネを用いたワウペダルで通常のワウとは真逆の踵側をつま先で 'フミフミ' して操作します。専用のバッファーを内蔵して0.5秒のタイムラグでエフェクトのOn/Off、そして何より便利なのがワウの効果をLevel、Contour、Gainの3つのツマミで調整できるところ。特別、本機にしか出てこない優れたトーンを持っているとは思いませんが、基本的なワウのすべてをこのサイズで実現してしまったものとして重宝しております。ワウの周波数レンジは広いものの、ペダルの踏み切る直前でクワッと効き始めるちょっとクセのあるタイプ。また、2010年の初回生産分のみエフェクトOn/Offのタイムラグが1.1秒かかる仕様だったので、中古で購入される方はご注意下さいませ(2010年10月以降は0.5秒仕様)。本機はペダルボードの固定必須で使うことが安定する条件となり、普通に床へおいて使うと段々と前へズレていきます。個人的にはその踵側を踏む姿勢から、立って踏むより座って踏んだ方が操作しやすいですね。ちなみに上記のリンク先にあるPlutoneiumのHP、ええ、アジア色全開の怪しいサイトではございません(笑)。







こんな増殖するペダル群と共にもうラッパの領域を超えてますか?。いやいや、完全に裏切られてしまう結果となろうとも何が起こるか分からないから面白い。まさに 'トライ&エラー' で挑む、もとい遊び倒してしまう過程こそこのようなペダルという名の 'ガジェット' との付き合い方なのです。しかし、こういうマウスピース・ピックアップによる 'アンプリファイ' の誘惑は、そのままラッパのベルに穴を開けてピックアップ取り付けたい欲望にかられてきます(笑)。マウスピースのサイズはもちろん、楽器本体のリードパイプとのギャップ調整など、結構トランペットのサウンドに重要なところでいろいろな悩みが出てくるのですヨ。ということで、ここ近年は従来のラッパの設計思想に捉われない面白いスタイルのものが増えてきております。その中でも顕著なのが楽器自体の重量を増やした 'ヘヴィタイプ' というもので、このような真鍮の塊の 'ぶっとい' ヤツが市場に現れたのは1990年代初めのこと。当時、シカゴに工房を構えていたデイヴィッド・モネット製作のラッパをウィントン・マルサリスが吹いて話題となってからだと思います。しかしこの手のヘヴィタイプは、それこそコンサートホールの2階席後方あたりを目指して音を飛ばす '遠達性' の為に余計な共振を抑えた設計であり、実際は '側鳴り' でモニターのしにくい 'マイク乗り' の悪い楽器なんですけどね(苦笑)。とりあえず、ここで取り上げたのは 'ハイエンド' に属する高価で趣味性の高いラッパばかりですけど、別にこーいうものだけが優れた楽器だということでは全く無く(作りに '手間' がかかっているが故に高価)、数百年もの歴史の中で一見変わらないように見える金管楽器も実はこんなに世界が変わっているんだ、ということをご確認下さいませ。











Inderbinen Wind Instruments

2018年に急逝してしまったロイ・ハーグローヴと言えばスイスのトマス・インダービネンが主宰する工房、Inderbinenを吹くイメージが強いのではないでしょうか。従来のラッパにはなかった奇抜な発想の先駆的メーカーとして、管体すべてに銀をダラダラと垂れ流しちゃうこのSilver Artの衝撃。正直、ラージボアで銀の固めまくったベルは鳴らすのキツそうで、さらにInoxやDa Vinciとか・・この 'やり過ぎ' な感じは一体何なんだ?。伝統的なトランペットを愛する者からすればもう、ふざけているとしか思えないくらいぶっ飛んだラッパのオンパレード・・。実際、ラッパ業界は 'Selmer信仰' の強いサックスに比べてヴィンテージへの執着が薄いからなのか、実は結構チャレンジ精神旺盛のマイスターが多いのですヨ。このInderbinenのラッパに特徴的なのは、通常のチューニングスライドとは別にベルが可動式の 'チューニングベル' 式としてネジ止めされていること。またハーグローヴは、同工房のWoodというこれまた独自のトーンを持つフリューゲルホーンも吹いておりました。 










Spiri Da Carbo Vario B♭ Trumpet Review
daCarbo

そしてロイ・ハーグローヴがInderbinen Silve Artの次に使い出したのがこの独特なカーボンファイバー製のベルを持つスイス産SpiriのdaCarboです。Varioは去年急逝された '電気ラッパの伝道師' こと近藤等則さんもメインとして愛用しておりましたが、 この 'daCarbo' シリーズとしてベル丸ごとカーボンの 'Vario' と半分のみカーボンの 'Unica'、そしてToni Maierなるラッパ吹きのシグネチュアモデル(サターン・ウォーターキー付き!)の3種がラインナップしております。また 'Unica' の方はTheo Crokerというジャズのラッパ吹きが吹いておりますね。とりあえずYoutubeの動画からも伺えますけど、全てブラスの管体と比べてどこか '筒っぽい' コォ〜とした共鳴の抑えた鳴り方がカーボンならではなのかな、と思います。







このようなハンドメイド系ラッパは新奇な技術を '特許出願' するカタチで色々とやっておりますが、そのような進取性をいち早く取り入れた工房がここ日本にもありました。Yamaha?Brass Sound Criation (BSC)?・・いやいや、ミュートやマウスピースの製作でその名を知られたBest Brassが一念発起してトランペット製作、デタッチャブルベルで1,750g!のヘヴィな仕様のAioliaは当時100万超えとしても話題となりました。そして同じくヘヴィ系に属する1,450g(金メッキ)のArtemis、ライトウェイトのAphroditeの3種がラインナップしております。ここ近年、他社製品のバルブブロックを流用する 'ハイブリッド' が基本となったハンドメイド系工房に比べ、こちらは代表にして開発者の濱永晋二氏による 'HAMANAGAバルブ・システム' を搭載したことは特筆したいですね。数百年もの金管楽器の歴史の中でクネクネとうねるように構成するバルブブロック部の '息ムラ' や流れの弊害は、そのまま濱永氏により提起されたこの新たなバルブ・システムでトランペットの世界を一新します。しかし未だアダム・ラッパによる古くて短いデモ動画しかありませんが、そろそろ新たな動画を作りませんか?(笑)。で、そんなラッパさんは自身プロデュースによるLotusという工房のマウスピースとトランペットを愛用しており、どこかTaylorのラッパとよく似とるなあ、と思っていたら、実際Lotusの製作はそのアンディ・テイラーが請け負っているとのこと。その 'アダム・ラッパ仕様' とも言うべき独特な4バルブ・システムを備えたSilver Flare登場!。後述するイタリアの工房、AR Resonanceのラッパもそうなのですが、このLotusのラッパにはイエローブラス、ブロンズ、フォスファーブロンズ(リン青銅)、ニッケルシルバーという異なった素材を適材適所に組み合わせて新たな '鳴り' を獲得しております。今後、このようなハイブリッドなラッパがひとつのトレンドとなることは間違いありません。





現在、奇抜なラッパばかりを作るイメージの強いTaylorで通常タイプのフリューゲルホーンから一転、グニャグニャと曲がりに曲がった管体のPhat Boy登場。さらに小型化されたショートタイプのPhat Puppyを始め、とにかく従来のトランペットに横溢していた先入観を英国の奇才、アンディ・テイラーの手により 'Custom Shop' 謹製で次々と破壊されて行きます(笑)。ただ正直、あまりにやり過ぎて楽器本来の内容を見失っているもんもあるけど・・ね(汗)。そしてMonetteの独創的な 'Flumpet' に対する英国からの '解答' としてやっぱり出てきました 'Phrumpet'!。














さて、ヘンチクリンなデザイン過多のヤツ、ただただ重たい 'パクリMonette' のヤツはまったく興味なかったのですが、実は・・独自設計な楕円形 'Ovalベル' によるラッパの '46 Custom  Shop Shorty Oval' を買ってしまった(汗)。これまでヘヴィタイプのラッパをあまり良いとは思わず、個人的に好きなのはMartin Committeeのようなニュアンスの幅が広い楽器。しかし、このTaylorが2014年に製作した '46 Custom Shop Shorty Oval' は一目で惹かれてしまった。Taylorはこの年を境に 'Oval' と呼ばれる楕円形のベルを備えたシリーズを展開しており、そのユニークかつ独創的なスタイルに注目していたのですが、それを短いサイズにしたトランペットとして新たな提案をしたことに意味があるワケです。ええ、これは吹奏感含めロングタイプのコルネットではありません。トランペットを半分ちょいほど短くした 'Shorty' なのですが、ベルの後端を 'ベル・チューニング' にして '巻く' ことで全体の長さは通常のトランペットと一緒です。その 'Shorty' シリーズとしてはこの 'Oval' ベルのほか、通常のベル、リードパイプを備えたタイプも楽器ショーの為に製作されたので総本数は2本となりますね。重さは大体1.4Kgほどなのですが、短い全長に比して重心がケーシング部中心に集まることからよりズシッと感じます。また、この 'Shorty Oval' はマウスピースに穴を開けてPiezoBarrelピックアップを装着する 'アンプリファイ' で鳴らしておりますが、そのままアコースティックのオープンホーンで吹いてみても通常のラッパと何ら遜色無くパワフルに音が飛びますね。そして、Getzen/Alliedの 'Bauerfeind' バルブによるフェザータッチの操作性は最高です。ちなみにこの手のショート・トランペットにおけるルーツ的存在では、以前フランスで製作され近年再評価により復活したPujeのトランペットがありまする。



Luttke / Elephant Brass Instruments

そんなTaylorの作風とよく似たものとしては、このWhisper-Pennyなるドイツの工房の一風変わったラッパにも波及しております。とにかくこの工房のラッパはかなりの '独自理論' で突っ走っとる・・。しかし、マウスピースのスロートから奇妙な金属棒を入れてスロート径を狭くし、ズズッと息の抵抗を強調する 'サブトーン' な 'エフェクト' は初めて聴きましたけど、ミュートとは別に新たなラッパの 'アタッチメント的' 音色として普及したら面白いですね。ちなみにこの工房のラッパと良く似たものとして、Luttkeという工房が製作するElephant Trumpetというのがあるのだけど何か関係あるのかな?(謎)。











こちらはイタリアの新興工房、AR Resonance。ここ最近、日本で代理店が決まったことからあらゆる奏者に声をかけての試奏動画がYoutubeに上がっており、日本には140mmのブロンズベルを備えた 'Suprema'、150mmビッグベルの 'Estrema'、132mmと140mmのニッケルシルバーベルを各々選べる 'Feroce' の3種、フリューゲルホーンの 'Soave' が入ってきております。また、AdamsやTaylor、Lotusのラッパにも標準装備される画期的なピストン・システム、M.A.Wilk Brassの "MAWバルブ" を装備し、さらに上述した英国の工房、Lotusのラッパと同じくこちらもフォスファーブロンズ(リン青銅)などハイブリッドな素材を組み合わせた最近のトレンドに倣っておりますね。そして特徴的なのが、レシーバー部がスクリューネジ式でMonette風の一体型マウスピースから専用のアダプター装着による既存の他社製マウスピース使用など、幅広いセッティングにも対応しているのは嬉しいですね。トランペットにおいてこのギャップ事情というのはなかなか悩ましいものがありまして、各メーカーごとにマウスピースのテーパー・シャンクとレシーバー部のサイズが異なり使えない場合があります。そんなAR Resonance同様、着脱式のレシーバーでギャップ問題にアプローチしているのがHarrelsonの工房のもの。一方、同じイタリアからは同地のラッパ吹き、ファブリツィオ・ボッソの愛機でもあるG&Pのトランペットとフリューゲルホーンも日本に入ってきております。動画ではそのFloraとAdams A1 Gen Ⅱとの比較試奏をどーぞ。








永らくその変わらないフォルムの伝統を引き継ぎ、ヨーロッパのクラシックの中で育まれてきたトランペットという金管楽器は、このMonetteを主宰するデイヴィッド・モネットを合図にして変貌・・近年、かなり独創的なラッパを好む層が増えてきました。それはアート・ファーマーの要望でMonetteが製作したトランペットとフリューゲルホーンの '混血' Flumpetに結実し、今やトランペットやフリューゲルホーンから違和感なく持ち替えられるようにひとつのスタイルとなりました。そしてすでに上の動画でご紹介しましたが、この 'Flumpet' からインスパイアされて英国の工房Taylorが同種のラッパを製作しましたけれど、そっちは 'Phlumpet' とのこと(笑)。










Monette Prana 3 - Owned by Guy Barker

さて、そのTaylorやロータリー・トランペットで有名なドイツの工房、Weber製作によるフリューゲルホーンをケニー・ウィーラーやダスコ・ゴイコヴィッチらが吹いたことで流行したグニャっとする流線形の管体は、いよいよヘヴィ・トランペットの元祖Monetteにも波及し始めました。あのウィントン・マルサリスの愛機であり、まさに '真鍮の塊' とも言うべきMonetteに代表されるヘヴィなラッパの哲学は、その賛否含めて長い金管楽器の歴史を大きく変えた存在だと言って良いでしょう。そんなヘヴィなラッパの最高峰、Raja Samadhiはラッパ風の体裁を取りながらいよいよ豪華絢爛な工芸品の美しさとエグさの共存により、財力と体力に自信のあるラッパ吹きなら一度は所有、吹いてみたいものの一本ではないでしょうか。





Van Laar Trumpets & Flugelhorns

オランダでAdamsと並び高品位なラッパをハンドメイドで少量製作しているのがハブ・ヴァンラー主宰の工房、Van Laar。すでに規模を大きくして大量生産型のシステムになりつつあるAdamsに比べ、このVan Laarは未だ少量生産にこだわりOiramというラッパの評価が高いですね。ここではLuca Aquinoというイタリアのラッパ吹きのシグネチュアモデル、Van Laar Aquinoをご紹介。この特徴的なシェファード・クルークの外観にその柔らかい音色はやはりフランペットを想起させますね。そして過去、ドン・エリスがインド音楽やジューイッシュ、アラビック・スケールなどを吹くべくHoltonにオーダーしたものとして知られているのがクォータートーン・トランペット。4本目のピストンを追加することで半音の半分、1/4音という微分音を鳴らすことが出来ます。最近、そのアラビック・スケールを基調に活動するフランスのラッパ吹き、Ibrahim Maaloufがこの微分音を求めてVan Laarにオーダーしたものを吹いておりますね。4本目のピストンを左手の人差し指で押しやすいように、若干左側に傾けて配置しているのが特徴です。









そんなHoltonといえばこちら、ハイノート・ヒッターとして名高いメイナード・ファーガソンの為に製作されたというST-303 Firebirdの ' スライド・トランペット' も面白い。通常のピストンにスライドを付加してギュイ〜ンとベンドさせながら、しかし、トロンボーンほど幅広いポジションを与えるまでには至らない '飛び道具' 的ラッパですね。むしろ、このピッチベンドの面白さという意味では民俗音楽の分野で活用してみたり、ドイツの '音の収集家' ともいうべきアクセル・ドナーのアプローチに威力を発揮するのが '正しい使い方' な気がします(笑)。フリー・ジャズと言えば '特殊奏法' を駆使したインプロヴァイズの溜まり場でもあるのですが、ドナーがこのST-303 Firebirdを用いて行う多様なノイズの '採取' は(実際、怪しげなピックアップする加速度センサー?が取り付けられている)、いわゆる旧来のフリー・ジャズよりエレクトロニカ以降の 'グリッチ' と親和性が高いように思うのですがいかがでしょうか?。それはフリー・ジャズにあった 'マッチョイズム' 的パワーの応酬ではなく、まるで顕微鏡を覗き込み、微細な破片を採取する科学者(ラッパ界のケージか?)のようなドナーの姿からも垣間見えると思うのです。ちなみにキワモノラッパ大好きな英国のアンディ・テイラーも 'Custom Shop' 謹製で手掛けているとのこと・・ホント、何でもやるなあ(笑)。









そんな独創的なラッパの中でもドイツやオーストリアなど一部のオーケストラでは、トランペットと言えばピストンをフレンチホルンと同じロータリーバルブの横置きにしたロータリー・トランペットのことを指すようです。ジャズでは構造的にハーフバルブなどの細かいニュアンスが出来ないとかで一般化しておりませんが、ブラジル出身のラッパ吹き、クラウディオ・ロディッティなどはロータリーでバップをやったりしております。そのロータリーを今度はそのまま縦置きにしてピストンと同じ感覚で吹けるように作ってしまったのが、発案者であるトマス・ガンシュの名を付けたSchagerlの 'Gansch-Horn' とフリューゲルホーンの 'Killer Queen'。柔らかいトーンとロータリーならではのメカニカルな操作、そして 'くの字' 型に曲げたベルがこれまた格好良し。ロータリーでジャズやラテンが出来ないって誰が言った?。





さらに 'Gansch-Horn' をベースにしてポルトガルのマトジニョシュ・ジャズ・オーケストラでリードを務めるラッパ吹き、Gileno Santanaとの共同開発で完成させたのがこのSpyder。さらに続けてこれまた新奇なラッパ、Raweniというのも登場してSchagerlの新たなラインナップに加わります。そのRaweniもこんなカタチをして実は '縦置き' 型ピストンに配置したロータリー・トランペットだそうで、'Gansch-Horn' 共々、何となく敷居の高かったロータリーという分野をより身近な存在にさせてくれるのではないでしょうか(価格は全く '身近' じゃないですけど・・汗)。













最近、メディアでその名前をよく聞くクリスチャン・スコットの作品 'Stretch Music' のジャケットに現れるラッパを上下引っくり返したような?ヤツ(クレジットは 'Reverse Flugelhorn' となっている!)、これって実はオランダの工房Adamsでオーダーしたヤツなんですヨ。正直、かな〜り格好イイんですが、この人のやっている音楽も複雑なポリリズム構造でこれまた格好イイ!。また、彼と共演するフルートのElena Pinderhughesさんが美しい❤️。しかしスコットさん、いろんなタイプのアップライト・ベルなラッパが好みというか・・すべてメーカーのカタログには無い '一品もの' ばかりで、お気に入りなフリューゲルホーンの 'Reverse' のみならず 'Sirenette' というこれまた独創的なコルネットも製作。とりあえず、その濃いキャラ、バリバリと鳴らす個性、ジャズという狭い範疇に捉われないスタイル、最近のラッパ吹きの中では一番勢いがあるんじゃないでしょうか。個人的にこのポリリスティックなラテンへの強い関心は素晴らしいなあ。そんな彼の 'アップライト・ベル好き' は以前から続いていたようで(笑)、現在のAdamsで製作したトランペットの 'Atunde Adjuah' や 'Siren' と併用しながらGetzenでアップライト・ベルに特注した 'Genesis' も未だ愛用しておりまする。






ちなみに 'Trent Austin' として毎度世界のラッパたちのレビュー動画をせっせとUPするYoutuber、オースティンさんがAdamsの協力により以前製作したオリジナルのラッパを再販、自身のお店で現在販売中でございます。コパーブラスにシェファード・クルークの 'フランペット' 的ルックスを持ち、ほ〜んの少しだけ傾けたアップライト・ベル(彫刻含めオースティンさん仕様かな?)から放たれるこの柔らかい響き。まさにコロナ禍で疲れた世界の皆さんに向けて '感謝祭&クリスマス' にかこつけたオースティンさんからの素敵な '贈り物' (という名の商品ですのでお会計は必要ですヨ・・笑)。一方、'Monette丸出し' なほどヘヴィなA8はこんな姿に・・(汗)。というか、今は無きKanstulに代わって世界中の管楽器工房へパーツの供給を一手に引き受けるほど成長したAdamsですけど、段々と作るラッパの方向性が 'Taylor化' していってるのはコワイ(苦笑)。あ、そういえば最近の動画でオースティンさんの吹くマウスピースのほとんどがアクリルリムだけど、もしかして金属アレルギーになっちゃったのかな?(怖)。







ラッパ吹きにしか分からない会話(笑)。わたしがトランペットにのめり込み始めた当時、それまで日本の代表的ラッパ吹きとして 'ヒノテル' こと日野皓正さんの名前ばかり上がるジャズ・シーンに多くの若手ラッパ吹きが到来、一部メディアが挙って '日本ジャズ維新' などと呼称して盛り上げました。五十嵐一生、原朋直、松島啓之、岡崎好朗、ちょっと後には高瀬龍一やTOKU各氏らがそれぞれリーダー作品をリリースして、モダン・ジャズとトランペットに対する新たなリスナーを獲得します(もちろん、現在も活躍中)。そして類家心平、川崎太一朗、Soil Pimp Sessionsのタブゾンビ各氏らはまさに今のトランペット・シーンを盛り上げている3人としてこんな動画をどーぞ。こういったジャズの新たな流れは、その他、歌手のMISIAと一緒に演っている黒田卓也氏はもちろん、女性のラッパ吹きも随分と登場したのがここ近年の流れでしょうか。ホントに上手い人たちが増えたなあ。ここで登場するRoy Lawler、Van Laar、Inderbinen、Harrelson、Monette、Calicchio、Taylorというマニア御用達のラッパたちも実に濃い・・。