2018年11月5日月曜日

'私的' 今年のペダルを振り返る

まだ1ヶ月以上残っているけど、今年もいっぱいペダルが市場に溢れました。何だかGibson破産を筆頭にギター市場は廃れたとか、少子化で楽器人口が淘汰されただとか、音楽全然売れないという声はちらほら聞こえておりますが、このニッチかつ 'ガジェットな' 市場に関する限りまだまだ盛り上がっているようにも感じます。ここ日本でも 'Effector Book' なるニッチな雑誌が10年近く店頭に並んでいるのだから・・いや、凄いもんですヨ。









おさらいとして毎年やっているYoutuber、Dennis KayzerさんとPedals And Effectsさんによる一昨年&去年の 'ペダル・ベスト20&10'。なるほど、このランクを見るとEarthquaker Devices、Dwarfcraft Devices、Merisを象徴的にデジタルの新しい機能(グリッチやグラニュラー系)を持ったものが大挙現れた感じがしますねえ。そしてPigtronixなどもそうなのだけど、機能はそのままで小型化の流れも拍車がかかっております。





Red Panda Tensor
Bananana Effects

そんな流れは、ParticleやRasterでこの 'グリッチ/スタッター' 系エフェクターの先鞭を付けたRed Pandaからの新作Tensorにも反映して盛り上げます。その他、Catalinbread、Alexander Pedals、Hologram Electronicsなどがこの流れに続きました。日本からは定番のMasf PedalsやBananana Effectsの存在も特筆したいですね。これは裏を返せばひとつのカテゴリーとして定番化したと言うか、各メーカーが安定して市場に供給するくらいポピュラーになったと言っていいでしょう。ただし、この辺のアプローチはまだまだ機材の方が先走ってる感じで、ここから面白い音楽が生まれるのはもうちょっと先になるのかもしれません・・。









Bastle Instruments Thyme - Robot Operated Digital Tape Machine

そんな 'グリッチ/スタッター' 系エフェクターの中でモジュラーシンセとの連携も目指してやってきたのがこちら、'Robot Operated Digital Tape Machine' と題したThyme。筐体の真ん中辺りに並ぶDelayセクション3つのツマミCoarse、Fine、Spacingをテープの 'バリピッチ' の如く操作し、それをTape SpeedとFeedback、Filterで変調させながらフレイズが破壊されていきます。そしてもうひとつのRobotセクションではFM変調の如く金属質なトーンへと変調し、それを真下にズラッと並ぶ6つの波形とエンヴェロープ、外部CVから操作することが出来ます。このように高品質なデジタル・ディレイの大半が 'グリッチ' やループ・サンプラー、MIDIによるプログラマブルな機能に寄った製品の当たり前となった現在、すでにSuper Delayでこの分野を開拓したカナダの工房、Empress Effectsから新たに登場したEchosystemはその集大成的内容で戻ってきました。本機は 'Dual Engine Delay' とあるように2つの異なるディレイを搭載し、シリアル、パラレル、ステレオL/Rで使用することが出来ます。そしてDigital、Tape、Analog、Multi、Mod.、Filter、Ambient、Delay + Reverb、Reverse、Stutter、Lo-Fi、Whiskyの12のプログラムが用意されて35のプリセットとして保存することが可能。また、SDカードを通じてメーカーからの定期的なアルゴリズムのアップデートに対応しており、最近新たにループ・サンプラーの機能が付加しました。



Electrograve
Electrograve Search and Destroy SAD-1

こちらは名古屋でガジェット系シンセなどを製作するElectrograveから4チャンネル出力を持つパンニング・マシン、Search and Destroy SAD-1。ステレオ音源はもちろん、ギターからの入力をジョイスティックでグリグリとパンニングさせたり、Autoスイッチを入れてトレモロのテンポをSlowからFast、NormalからRandomに切り替えることで 'グリッチ風' の効果まで幅広く対応します。4つの出力はそれぞれ個別に切り替えることが可能で、50% Dutyスイッチを入れることでモノラルでも十分な空間変調を堪能することが出来ます。この4つの出力を受けるミキサーが必要になりますけど、パンニング機能だけでここまで遊べるものって意外に無いんですよね。個人的にこういった個性的な製品を製作する国産の工房は応援したいなあ。





The Montreal Assembly Count to Five ①
The Montreal Assembly Count to Five ②
The Montreal Assembly - Knobs

海外のYoutuber含め、彼らの足元、手元でよく見かける 'グリッチ/スタッター' 系エフェクターがこちら、カナダの工房The Montreal AssmblyのCount to Fiveというヤツ。日本ではこういうジャンルの先鞭を付けたMasf PedalsのPossessedやRaptioが定番ですが、基本的にこの手の効果の製品は高いだけにCount to Five、あっちでは安いのかな?本機はRed Panda ParticleやRasterなどと同種のピッチ・シフト機能の付いたディレイの変異系で、いわゆるリヴァース・ディレイからぶっ壊れていくようなランダマイズが心地よい。本機の特徴は、モメンタリー・スイッチによるループ・サンプリング機能と 'Dir 1' & 'Len B、S、Dir 2' というツマミがキモであり、具体的なスペックはMode1〜3までを丁寧に教えてくれる上の動画とリンク先のKnobsさんによるブログ記事に詳しいです。





Industrialectric
Industrialectric Echo Degrader ①
Industrialectric Echo Degrader ②

そんなデジタル・ディレイの中で定番となったのが 'ローファイ' な質感への憧憬。古いサンプラーに象徴される劣化具合の激しい低いサンプリング・レートは、そのままデジタルのエラーする 'なまり方' の心地よさだったりします。エフェクター業界において今や群雄割拠の賑わいを見せるカナダですが、そこから新たに登場した工房、Industrialectricの 'グリッチ' に特化した 'ローファイ・ディレイ' Echo Degrader。おお、これはかなりの 'Lo Fi' というか 'Garbage' というか、もはや個性的なひとつの '楽器' と言っていいくらい主張しますねえ。特に本機の名称としてアピールする 'Degrade' ツマミを回すことで、よく 'ビット・クラッシャー' などで用いられる 'テープを燃やしたような' バリバリ、ブチブチというノイズを付加してくれます。本機の取説を開いてみれば、そこにはユニークなツマミ、スイッチ類が並んでおり興味津々。

⚫︎Tone / Threshold
サウンド全体のトーンと、オシレーションのスレッショルド、さらに多くのパラメータと合わせて設定することで様々な効果を作れます。
⚫︎Degrade
ディレイに入るシグナルをカットし、壊れたテープマシンのようなトーンやコムフィルターをかけたディレイなどのサウンドを作ります。
⚫︎Tape Stability
テープが揺れるようなモジュレーションをかけたり、より強力な設定ができます。
⚫︎Tape Inputスイッチ
シグナルのインプットッレベルを選択します。Tape Stabilityの設定により違った挙動を示すことがあります。
⚫︎Tape Fidelityスイッチ
ダウンポジションではテープノイズが最大となり、アップポジションではリピートが高周波のみとなり、よりローファイでノイジーなトーンとなります。









Industrialectric RM-1N ①
Industrialectric RM-1N ②
Industrialectric 4046-M (discontinued)
Death by Audio Reverbration Machine

なるほど〜・・とはならないくらい '正解' のないセッティング(苦笑)。2つあるフットスイッチのひとつがモメンタリースイッチとなり、キルスタッターやループ、オシレーション、モジュレーションのスイッチなど、様々な設定に応じて作動させることが出来るとのこと。また、このEcho Degraderの姉妹機として '歪むリヴァーブ!' のRM-1Nというユニークなヤツもラインナップ。'シューゲイザー' 的というか、空間系と '歪み'をセットしたものではDeath by AudioのReverbration Machineなどがありますけど、このRM-1Nの 'Garbage具合' はさらにその上をいく汚さ!そしてすでに廃盤なんですが(涙)、過去にこんなエグくてカッコいい 'ギターシンセ' も製作していたんですねえ、欲しい!さて、前述しましたがこの森と湖と自然の宝庫、カナダは現在のエフェクター市場において高品質な製品の 'モノつくり' で今やお馴染みとなりました。このIndustrialectricのほかRadial Engineering、Fairfield Circuitry、The Montreal Assembly、Diamond Guitar PedalsそしてEmpress Effects、さらに6 Degrees FxとDr. Scientist Sounds、MJM Guitar FxにSolidgold Fxなどなど・・その名前を聞いただけで '品のある良い音' がしてくると思いませんか?Echo Degraderの 'Garbage' 具合ですらどこかキメ細かく聴こえてくる(苦笑)。







Rainger Fx - Products
Rainger Fx Air Traffic Controller
Death by Audio
Death by Audio Evil Filter
Keio Electronic Lab. Synthesizer Traveller F-1

ちなみにそんな 'シンセファズ・フィルター' のペダルと言えば、WMD Geiger Counterと並びぶっ飛んだコンセプトで話題となったDr. Freakenstein Fuzzを製作する英国の工房、Rainger Fxの 'ホワイトノイズ・フィルター' であるAir Traffic Controllerも面白い。ここはその筐体にも遊び心があり、目覚めよ、フランケンシュタイン!とばかりにOnするカフスイッチをDr. Freakenstein Fuzzで用いたことからも明らかで、本機ではタイトルに因んで飛行場の滑走路に並ぶ誘導灯がピカピカと賑やかに光ります。もちろん、ディストーションとホワイトノイズをローパス・フィルターでエグく変調させるその効果も絶大でして、'飛び道具' ばかりを製作するこの工房のイメージを裏切りません。この手のものでは他にオリヴァー・アッカーマンが主宰するニューヨークの工房、Death by AudioからEvil Filterといったエグいヤツもありまする。ああ、こういう 'フィルターもの' にはほんと弱いのでヨ。そして最後は、これらの源流ともいうべき日本が誇る偉大なエンジニア、三枝文夫氏が手がけた京王技研(Korg)のSynthesizer Traveller F-1。国産初のシンセサイザーKorg 700に搭載された 'Traveller' フィルターは、-12dB/Octのローパス・フィルターとハイパス・フィルターがセットで構成されたもので、それぞれの動きを連携させて '旅人のように' ペアで移動させるという三枝氏のアイデアから名付けられた機能です。このF-1はそんな 'Traveller' を単体で抜き出したものであり、ファズワウからオシレーター発振、VCFコントロールに至るまで未だ孤高の存在として奏者への挑戦状を叩き付けております。









Elektron Analog Heat Mk.Ⅱ
Earthquaker Devices Data Corupter
Meris - Products

一方、ギタリスト的には '歪み系' のチェックは毎年やる '恒例行事' (笑)のようなものなのかもしれませんが、そんな 'ブティックもの' を中心に往年の名機の再評価、リニューアルとは別に 'ギターシンセ' の発想からデジタル含めた '歪み' のアプローチが変わりました。代表的なものでDAW中心によるElektron Analog Heat、去年の製品ですがEarthquaker DevicesのData CorrupterやMerisの新作であるEnzoなどがあります。そして今や 'グリッチ界のご意見番' (笑)と言っていいのか、見る度に興奮して購買意欲を促進させる動画の魔術師、Knobsさんの 'Meris 3兄弟'。やっぱりこの人はこういう '飛び道具' の魅力を分かって演出しておりますね!もう、各メーカーから黙っていてもサンプル品が送られてくるんじゃないでしょうか?しかし、Line 6から独立してDSPの 'アナログ・モデリング' を牽引したDamage ControlことStrymon、そこから新たに独立して新製品のリリース・ラッシュ状態なMeris・・この創作意欲の貪欲なことヨ!。











Moog Moogerfooger
Dave Smith Instruments Mopho

ということで今年は、そのスペックやイメージだけで購入したものの '失敗' して手放したものもありますが、基本的にわたしのメインとなる足元のリニューアルな感じでいくつか入れ替えました。やっぱり気になったペダルは自分の環境の中で試さないとその真価が分からないですよね。そういえばMoog博士の 'Moogerfooger' シリーズの大半がほぼ生産終了してしまった模様(悲)。何かトランプ政権の中国に対する追加関税の余波をモロに食らったようで、中国から仕入れていたパーツ代高騰が響いてしまったのでは?。ああ、いつかMF-107 FreqBox買おうと思ってたんだけどなあ(涙)。



Dreadbox Square Tides - Square Wave Micro Synth
Dreadbox Kappa - 8 Step Sequencer + LFO

そんな幻となりつつあるFreqBoxの代用というワケではありませんが、ギリシャでモジュラーシンセなどを得意とする工房、DreadboxのSquare Tides。これは 'エレハモ' のMicro Synthesizerをベースにしたと思しき一台のようで、ブチブチした 'サブ・ハーモニック' に歪むオクターヴはもちろん、エクスプレッション・ペダルや別売りの専用シーケンサーKappaと組み合わせてかなりエグい 'シンセトーン' を生成します。









NeotenicSound AcoFlavor ①
NeotenicSound AcoFlavor ②
NeotenicSound Board Master (discontinued)

これはわたしも関わらせて貰った(笑)、NeotenicSound AcoFlavor怒涛の4連発。いやあ、こういうエフェクターって今まで無かったんじゃないでしょうか。というか、いわゆる ' エレアコ' のピックアップの持つクセ、機器間の 'インピーダンス・マッチング' がもたらす不均衡感に悩まされてきた者にとって、まさに喉から手が出るほど欲しかった機材がコレなんですヨ。そもそもは、過去に同工房が製作したBoard Masterを手にしたことで管楽器に取り付けるピックアップの問題点が解消したことから始まりました。コイツに備わったMasterというツマミ1つを回すことでピックアップの出力をコントロールすることが出来たのですが、それをさらにLimitとFitという感度調整の機能を強化した専用機に仕上げたのだから素晴らしい!しかし、去年の暮れから今年の始めにかけてその 'プロト機' の調整は本当に大変でした。多分、多くの 'エレアコ' のピックアップ自体が持つ仕様の違いから、こちらは良いけどあちらはイマイチという感じでどこを '中心' にするかで悩んでいたんじゃないかな?と思うのです。当初送られてきたものはMaster、Fit共に10時以降回すと歪んでしまって(わたしの環境では)使えませんでした。何回かのやり取りの後、ようやく満足できるカタチに仕上がったのが今の製品版で、現在のセッティングはLimit 9時、Master 1時、Fit 10時の位置にしてあります。ちなみに本機はプリアンプではなく、奏者が演奏時に感じるレスポンスの '暴れ' をピックアップのクセ含めて補正してくれるもの、と思って頂けると分かりやすいでしょうね。管楽器でPiezoBarrelなどのマウスピース・ピックアップ使用の方は絶対に試して頂きたい逸品です!





Piezo Barrel on eBay
Piezo Barrel Wind Instrument Pickups
Piezo Barrel Instructions
vimeo.com/160406148

さて、そんなAcoFlavorとの相性ピッタリなPiezoBarrelのマウスピース・ピックアップなのですが、しばらく使用しているとマウスピースに接合しているピックアップのネジ周りから白く粉を吹いたようなものが付着します。コレ何だろ?と思っていたのですがスティーヴ・フランシスさん曰く、吹き込んだ息から付着する水分が蒸発した後の塩分の残りカスだそう(驚)。ピックアップ自体は防水してあるので問題になるワケではないのですけど、どうしてもカスは下に溜まりやすいのでピックアップ本体をマウスピースの上か横へ位置するように装着して欲しいとのこと。しかし、クラリネットもMarshallのアンプから出力すると低域でボーンと 'エレアコ' 特有の扱いにくい感じが出てきますねえ。コレ、解消しましょうヨ、AcoFlavorで(笑)。



Headway Music Audio EDB-2
Headway Music Audio EDB-2 Review
SWR California Blonde Ⅱ

長く使っていたマイク・プリアンプのJoemeek Three Qをヤメた。従来はダイナミック・マイクからThree Q、ピエゾ・ピックアップからNeotenicSound Board Masterにそれぞれ入力した2つの信号をRoot 20のミキサーで 'モノミックス' するやり方でした。しかし、これをHeadway Music Audioの2チャンネル・プリアンプEDB-2にすることで大幅に簡便なセッティングに変身!いや、この簡便さ以上に嬉しい誤算というか、実はずーっと気になっていた問題の原因だったのがThree Q自体が放っていたノイズ・・。正直、それまで微かにブ〜ンと唸っていたノイズはアンプのSWR California Blonde Ⅱから出ていたものだと思っており、まあ、何とか許容範囲内で誤魔化しながら使っていたのですが、その厄介な問題がアンプじゃなくプリアンプだったなんて・・。こういう固定観念はなかなか通常のセッティングの中では気が付きにくいもんなんです。それがこのEDB-2に変えた途端、ピタッとノイズが消えてレンジの広い出音になってしまったのだからビックリしますヨ、ほんと。本機は内蔵のEQ含め触るところがいっぱいあってセッティングに時間はかかりますが、やはり 'エレアコ' にとってプリアンプって大事だなあと思わせる経験でした。



Terry Audio The White Rabbit Deluxe

基本的にラインレベルで用いるアンプの音色は素っ気ないものなのですが、こちらのTerry Audio The White Rabbit Deluxeを導入したことでかなりその辺の 'クセ' というか '好み' が改善されました!。本機は1960年代のMcintoshのオーディオ・アンプをベースにしており、何の表記もない3つのツマミと2つのスイッチがそのミステリアスさに拍車をかけます。これはプリアンプと呼ぶべきなのか?青い矢印の付いたツマミは全体のユニティゲインを司るものながらトーンのキャラクターを微量に変化させ、右側2つの赤い矢印の付いたツマミは回路の動作自体をコントロールするもので、テリーさん曰くシャッタースピードと絞り量で調整されるカメラの露出のように、有機的に絡み合う機能をこの2つのツマミで連動させているとのこと。これらはスイッチを切り替えることでゲインの増減というより '質感' の生成に大きく寄与しているものの、青矢印のツマミはフルに回すとコンソールを過大入力した時に起こる 'ファズっぽい' 歪みが、また赤矢印のツマミ2つは同時に回すとゲインブーストの如くアップさせる 'プリらしい' 機能も備えております。わたしのセッティングは青矢印のツマミを2時、真ん中は8時、右側のツマミ2時にすることでコンプ感の伴うトーンを生成。また、青矢印のみのセッティングでも奥行きのある空間的なトーンになります。Magical Forceが先頭に繋ぐものならば、本機は最後段に繋ぐことでマスタリング的にトータルのトーンを補正する役目をする。実際、本当に不思議なんですがコイツをOnにしただけで定位がくっきりし、ラインのペラッとした質感から倍音含め、クオリティーの向上がはっきりと分かります。う〜ん、Mcintoshのオーディオアンプというリッチなトーンに着目したテリーさんは耳が良い!ちなみに本機、電源を入れてから1分ほどの '暖気' 必要のほか、汎用性のあるDC9Vながら個別電源供給以外では、アイソレートされていないパワーサプライでの電源供給が出来ません。





Carlin Compressor / Fuzz
Moody Sounds Carlin Compressor Clone
Carlin Kompressor & Phaser Original
Moody Sounds

さて、このような '質感生成' においてフィルターやプリアンプと並び取り上げられるのがコンプレッサーの世界。しかしダイナミズムをギュッと均すコンプは、時に演奏の細かなニュアンスを潰す '悪役' として敬遠されてしまうのも事実。そんなコンプというエフェクターでしか演出できない音作りを今一度見直しても良いのではないでしょうか?そのエフェクティヴに 'パッコン' とした効果で有名なMXR Dyna Compの影響は、1970年代にスウェーデンのエンジニア、Nils Olof Carlinの手により生み出されたこのコンプレッサーに結実します。本機はコンプと銘打たれていながら 'Dist.' のツマミを備えることでファズっぽく歪んでしまうこと。あのElectro-Harmonix Big Muffもサスティンの効いたファズのニーズがあるというところから始まったようで、エフェクター黎明期においては 'ファズ・サスティナー'、クリーンにコンプ的動作をするものを単に 'サスティナー' として使い分ける傾向があったそうです。当時、本機はスウェーデンの音楽シーンにおいて人気を博していたらしく、それを同地の工房であるMoody SoundsがCarlin本人を監修に迎えて復刻したもの。最近はBJFEのコンプやKeeleyが '再現' させたRoss Compressor、スタジオの定番Ureiのコンプをコンパクト化するナチュラルな圧縮感がウケておりますが、いま一度このようなコンプ本来の '質感' を管楽器で探求してみるのも面白いかもしれません。







Carlin Phaser
Moody Sounds Carlin Phaser Clone
Moody Sounds Carlin Ring Modulator Clone
Moody Sounds / Carlin Pedals

ちなみにCarlinはコンプのほか、僅か3台しか製造されなかったリング・モジュレーター以外でこのペダル・フェイザーも当時人気を博したそうです。オリジナルは単三電池4本、Uni-Vibe同様にプラスティックチューブで覆われたライトバルブの光量の変化でモジュレーションを生成、ペダルで8段フェイズの効きをコントロールするものでした。Moody Soundsによる 'クローン' ではその電球から白色LEDの抵抗値で可変する方式へと変更されております。こういう隠れた逸品の存在からも当時、世界を駆け巡った 'フェイザー・ブーム' の一端を垣間見ることができるのではないでしょうか。また、このレアなリング・モジュレーターは、2つの入力の和と差をマルチプライヤー(乗算器)という回路で掛け合わせることで非整数倍音を生成する原点の構造に沿ったもの。ステレオ音源を通す、A出力をB入力にパッチングする、B入力に外部からオシレータやLFOをぶち込むなど、いろいろな使い方の発想を刺激してくれます。わたしも早速購入しましたが、ひと言で表現するならば '塩辛い'!いや、ヘンな表現で申し訳ないですけど(笑)、通常のリング変調にみるシンセっぽい感じとは違い、チリチリとした歪みと共にビーンッ!と唸る感じに柔らかさは微塵もありません。





Mu-Tron Octavider
Salvation Mods Vivider

古くからのアナログ・オクターバーにはデジタルでは求められない独特な '質感' と荒さがあり、どうしてもピッチ・シフターによるオクターヴ・トーンって好きじゃないんですよねえ。1970年代の名機であるMusitronics Mu-Tron Octave Dividerはわたしの一番好きなアナログ・オクターバーなのですが、それをチェコ共和国のSalvation ModsがコピーしたVividerはわたしの足元で今も愛用中。そんなところでオリジナル設計者のマイク・ビーゲルが以前に復刻したMu-Fxブランドのものを一新、いよいよ 'Mu-Tron' ブランドを取り戻して小型化したのがこちらOctaviderです。Mu-Fxのものは専用のAC12Vで駆動するものでしたが、このOctaviderは汎用性のあるDC9Vでグッと使いやすくなりました。さて、Salvation Modsのものはオリジナル通り原音とエフェクト音のMixツマミでブレンドするものでしたが、新しいMu-TronのものはAuxという端子で原音をそのままスルーで出力出来ます。おお、これは有り難い・・と思いきや、この原音との '2 Outs' では変換用のY型アダプターが必要になったり、何よりこのAux端子が3.5mmのミニプラグという使いにくさなのですヨ・・。とにかく、オクターバーは原音100%に対してオクターヴ音をミックスする仕様に変えて欲しいですねえ・・。古いオクターバーの大半ってオクターヴ音のみを取り出すことは出来るけど、どうしてもMixツマミでオクターヴ音を増やすほど原音は削れて引っ込んだように感じてしまうのが惜しいんだよなあ。ちなみに安定性ではオクターヴのトラッキング(追従性)をデジタルで処理している分、Salvation Mods Vividerの方が有利ですね。










Gibson / Maestro W-1 Sound System for Woodwinds
Gibson / Maestro W-2 Sound System for Woodwinds
Gibson / Maestro W-3 Sound System for Woodwinds
Vox / King Ampliphonic Stereo Multi-Voice
Vox / King Ampliphonic Octavoice Ⅰ and Ⅱ
Vox / King Ampliphonic Pick-up

現在ではeBayやReverb.comなどでレアなヴィンテージ・エフェクターを購入することが可能で、オリジナルのMu-Tron Octave DividerやVoxの管楽器用オクターヴ・ファズ、Ampliphonic Stereo Multi VoiceとOctavoice、Maestro Sound System for Woodwindsなどが比較的良い状態で出品されており手に入れることが出来ます。しかし、この時代の管楽器用オクターバーって今の製品とは別物というか、ほとんど 'サブ・ハーモニック・シンセ' と言って良いくらい扱いの困るものなんですヨ(苦笑)。大雑把なかかり具合で調整幅も狭く、アンプのキャビネットを震わせるような 'ぶっとい' 低音はもの凄いのですが、これはアンプからのオクターヴ音をマイクで収音し、ベル側の生音とミックスすることを前提としたセッティングから来る '古の手法' に起因しております。そしてEarthquaker Devicesを主宰する代表、Jamie Stillman氏はもの凄いヴィンテージ・コレクションをお持ちですねえ。なるほど、この '資産' が自社製品へとフィードバックされているのか。



Gretsch Tone Divider Model 2850 ①
Gretsch Tone Divider Model 2850 ②
Gretsch Tone Divider Model 2850 ③
Gretsch Effects

そんな 'お宝探し' も楽しいReverb.comでGretschのTone Divider Model 2850がオリジナル・ケース付きで出品されました!GretschってExpanderfuzzや 'Play Boy' シリーズなどのエフェクターが中古で現れることがあるのですが、妙なデザイン含めイマイチその全貌が掴めないのですヨ。このTone DividerはC.G.Conn Multi-ViderやVox Ampliphonicと同時期の1967年に発売されたもので、4つのツマミにClarinetとSaxophoneの入力切り替えやSound On/Off (Effect On/Off)のスイッチ、そしてNatural、English Horn、Oboe、Mute、Bassoon、Bass Clarinet、Saxophone、Cello、Contra Bass、String、Tubaの11音色からなるパラメータはMaestro Woodwinds辺りを参考にしたっぽい感じ。ここにTremolo、Reverb、Jazzというエフェクツをミックス(外部フットスイッチでコントロール可)するという、まあ、同時代の管楽器用エフェクターで定番の仕様となっております。この金属筐体に描かれた木目調のダサい感じがたまりませんねえ(笑)。しかし、未だにアコースティックとか 'エレアコ' 系のエフェクターって何で木目調や '暖色系' なんですかね?











Earthquaker Devices Organizer
Earthquaker Devices Pitch Bay (discontinued)
Electro-Harmonix Pitch Fork
Electro-Harmonix HOG 2 - Harmonic Octave Generator
Digitech Whammy DT
Digitech Whammy Ricochet

もちろんデジタルでもEarthquaker DevicesのOrganizerやPitch Bay、お馴染み 'エレハモ' のPitch Forkなどのオクターヴ、ハーモニー生成などではかなり面白い音作りが可能。やはり多機能なピッチ・シフターは、オクターヴはもちろん5度上やハーモニーの生成、または指定のスケールに従ってプログラムしたハーモニーを付加する 'インテリジェント・ピッチ・シフト' に至るまで管楽器の領域を広げます。そしてさらに10のハーモニー/オクターヴ音として、Freeze機能とワウ、フィルターによるエンヴェロープ変調からエクスプレッション・ペダルの 'Whammy' 効果、MIDIに至るまでピッチ・シフターの決定版と言えるHOG2をご用意。ほんと 'エレハモ' って何でもあるな。さて、そんなEarthquaker Devicesは最近、'エレハモ' と並びエフェクター業界の中で好調に魅力的な製品をリリースしており要注目!





Mak Crazy Sound Technologies
Mak Crazy Sound Technologies Black Jack
Electro-Harmonix Superego Synth Engine

そんなピッチシフトとリヴァーブを軸に 'Freeze' 機能を備えた旧ロシアはクリミア自治共和国からのBlack Jackもずっと気になっている一台。特にリアルタイムで 'Hold' スイッチを踏んだ瞬間の音(Press)、一度スイッチを踏んで離した瞬間の音(Release)のどちらを 'Freeze' させるか、また 'Freeze' 時のトーンをクリーンにするか(Ice)、暖かくするか(Thaw)まで小まめに設定できるというこだわりがいいですね。'Freeze' 機能だけでここまで特化したものは他にないのでは?このような 'Freeze' 機能は管楽器でもドローンによるバッキングとして色々なアイデアを刺激し、動画はトロンボーン奏者ですが 'エレハモ' のSuperego Synth Engineで分厚いアンサンブルを生成しております。本機は 'インサート' も備えており、ここにお好きなエフェクターを繋げばさらに過激な音作りに挑むことが出来まする。







Meridian Guitars Funk-U-Lator ①
Meridian Guitars Funk-U-Lator ②
Source Audio SA143 Bass Envelope Filter
r / Electric Trumpet
HornFx

こちらはベース用ではありますが、イタリアの新興による工房Meridian Guitarsからオクターバーとエンヴェロープ・フィルターが合体したFunk-U-Latorは面白そう。ベース用は当然ベースの帯域に振ったものなので、サックスならいざ知らずトランペットだと高音域にはかからずモワ〜ンとした歯切れの鈍い効果になりがち。本機は 'シンセベース' とうたってわざわざ 'Synth' というツマミもありますが、リゾナンスが極端にピーキーとなってピャウみたいな感じにはならず、結構渋い感じで倍音の質感変化を担っている模様。もちろん、エンヴェロープ・フィルターならではのエグい感じにも対応しており、ここまで帯域変化するのならトランペットでもイケるんじゃないでしょうか?あのJohn BescupさんだってSource Audioのベース用エンヴェロープ・フィルターSA143を使ってるしね。個人的にはラッパと合うエンヴェロープ・フィルターを探して相当 '痛い目' に合っているので・・ムム、悩みますヨ、ほんと。そろそろどっかの楽器屋さんがレンタル試奏システムみたいなの、やってくれないかなあ。ちなみにこのBescupさんが主宰するフォーラム 'r / Electric Trumpet' も 'HornFx' と並び、結構活発な議論で賑わっているようです(もちろん英語ですけど・・汗)。









Vintage Fender Effects from The 1950's - 1980's
Catalinbread Adineko Oil Can Delay
Old Blood Noise Endeavors Black Fountain Delay

さて、今や主流であるデジタル・ディレイではありますが、一方では相も変わらず '往年の名機' 再現に挑む為のDSPによる 'アナログ・モデリング' 探求が盛んです。まだまだ人間の耳はアナログの曖昧さを求めているワケですけど、磁気テープ・エコー、磁気ディスク・エコーと来てもひとつやってきたのがこちら、Tel-Rayオイル缶エコーの世界。オイルで満たされた 'Adineko' と呼ばれる缶を電気的に回転させることでエコーの効果を生成するものなのですが、このオイルが今では有害指定されていることで物理的に再現することが不可能。じゃ、ひとつモデリングでもしてみっか?とやってみたのがCatalinbreadとOld Blood Noise Endeavorsの2つの工房からのもの。このオイルの雫のイメージそのままドロッとした揺れ方というか、懐かしくも 'オルガンライク' に沈み込む '質感' というか・・たまらんなあ。









Mid-Fi Electronics Electric Yggdrasil ①
Mid-Fi Electronics Electric Yggdrasil ②
Mid-Fi Electronics Electric Yggdrasil ③
Electro-Harmonix Mod Rex - Polyrhythmic Modulator
Keeley Electronics Bubble Tron
Mak Crazy Sound Technology Guitar Fairy

このような '滲むように' 揺れるレトロなトレモロとヴィブラートの '混合' ということなら、米国ニューハンプシャー州で製作するMid-Fi ElectronicsのElectric Yggdrasil(エレクトリック・ユグドラシル)。設計は 'MMOSS' というバンドのギタリスト、Doug Tuttle氏で、いわゆる '現場の発想' から奇妙な '飛び道具' エフェクターばかりをひとり製作しております。Mid-Fi Electronicsといえば、'変態ヴィブラート' ともいうべきPitch PirateやClari (Not)のぶっ飛んだ効果で一躍このブランドを有名にしましたが、本機は位相回路による 'フェイズ・キャンセル' の原理を応用し、Uni-Vibe風なフェイズの効いたヴィブラートでサイケデリックな匂いを撒き散らします。最近はすっかりモジュレーション系エフェクターと縁遠くなってしまいましたが、一番最初に購入したエフェクターがJim Dunlop Uni-Vibe UV-1だったというくらいこの水中を泳いでいるような古臭い揺れの虜でした。また、こんな古臭い揺れものの一方で、お馴染み 'エレハモ' からはマルチ・モジュレーションの集大成としてアナログとデジタルの 'ハイブリッド' と言えるMod Rexが登場。キーボードにも対応したステレオ入出力を持ち、テンポ同期する4つの独立したMod、Trem、Pan、Filterモジュレーション・セクションを心臓部として、その揺れを司るLFOの波形にはRising Sawtooth、Triangle、Falling Sawtooth、Squareの4種を装備。ここからTempoコントロールをMIDIなどで同期させながら自由に独立して設定できることで無限のポリリズミックを約束してくれるとのことで、これは 'エレハモ' が1970年代に少量製作した珍品、Pulse Modulatorのぶっ壊れたトレモロの再現が可能かもしれませんヨ(笑)。もちろん、これらのプログラムは最大100個のプリセットとして保存、呼び出しが可能です。いや、そんな豊富なモジュレーションはいらない、単純にフィルター、フェイザー、フランジャーを切り替えて・・って人ならこちら、KeeleyのBubble TronやMak Crazy Sound Technology Guitar Fairyはいかがでしょう?いわゆる 'ブティック・エフェクター' 黎明期を引っ張ったKeeleyも当初はスイッチ、ツマミ増築の '魔改造' 丸出しでしたが、今や製品としてここまで洗練されたパッケージとなりました。ちなみに本機に内蔵される 'Flange' モードはフランク・ザッパが愛用したMicMix Dyna Flangerをシミュレートしているとのこと。そしてクリミア自治共和国製のGuitar Fairyは、6つのプリセット(Chorus、Flanger、Phaser、Tremolo、Vibrato、Envelope Filter)で切り替えて、各々の設定に従いReverb、Speed、Depthを調整するという至極簡単なマルチ。ま、管楽器ではこのくらいシンプルな方が使いやすいかも。







Electro-Harmonix 16 Second Digital Delay
Rodec / Sherman Restyler
Rodec / Sherman Restyler Review
Dr. Lake KP-Adapter

正確には去年の暮れくらいの導入なのですが(汗)、まあ、新しい機材としてここに入れよう。これまで定番的にずっと変わらず使っているループ・サンプラーのElectro-Harmonix 16 Second Digital Delay。本機で生成したループ・フレイズをさらにグニャグニャと変調、遊ぶべくベルギーの会社であるRodecとShermanがコラボレーションしたDJ用エフェクター、Restylerを新潟の楽器店あぽろんプロデュースのDr. Lake KP-Adapterを介して接続しました。本機はすでに生産終了しているもので定価はとても手が出ないのだけど、運よく安価な中古を見つけて購入。





ちなみにこういうDJ用エフェクターというのはなかなかにクセがあり、単純にギターや管楽器と一緒に使うだけでは良い結果を産むことが少ないですね。しかし、例えばオリジナルの16 Second Digital DelayとKorgのDJ用エフェクターであるKaosspadを使用するネルス・クラインのように、従来のギター的アプローチとは違うかたちで魅せるやり方もあります。そんな本機RestylerはあくまでDJ用のフィルター・エフェクトとして 'モジュラーシンセ' 的アプローチをするFilterbankとは違います。Sherman特有の斜面型筐体の前面に陣取る3つのスライダーはLo-pass、Band-pass、Hi-passとその上の各フィルター・スロープの波形切り替えスイッチ。そして左右に配置された2つのツマミは右の青いのがマスター・カットオフ・フリケンシーでLo-pass、Band-pass、Hi-passすべてのフィルター・カットオフを調節、左の緑のツマミがスレーブ/トリガー・フリケンシーのツマミとして2つの機能を持ち、エンヴェロープ・フォロワーをトリガー信号にしてかかるBand-passのカットオフ周波数と、スレーブに設定されたフィルターのカットオフ周波数を共に調節するもの。そう、本機はこのエンヴェロープ・フォロワーによるユニークなトリガー・セクションがあり、このトリガーの入力レベルを調節するSensitivity、Speed、Transitionの3つのツマミと各フィルターに配置されるAMモジュレーション(Lo-pass、Band-pass、Hi-passの各音量をエンヴェロープ・フォロワーでコントロールする深さ)とFMモジュレーション(各フォルターのカットオフ・フリケンシーをエンヴェロープ・フォロワーで変調)、さらにResonanceのツマミを合わせることでフレイズを破壊的に変えることが可能なのです。







Performance Guitar TTL FZ-851 "Jumbo Foot" F.Zappa Filter Modulation
Performance Guitar F.Zappa Filter Modulation
Guitar Rig - Dweezil Zappa
Triode Pedals Leviathan ①
Triode Pedals Leviathan ②
Filters Collection

そしてコレです、コレ!わたしはギタリストではありませんが(汗)、ザッパのフィルタリングに対する音作りの研究に関心を持つ方はいないのでしょうか?本機は父親の楽曲を再現する上で息子のドゥィージルがザッパと縁の深いPerformance Guitarにオーダーしたという、かなりマニアックな一台。Boss FV-500とFV-50の筐体を利用し、どでかい鉄板風アルミ板(軽い)を強引に乗っけてLo-pass、Band-pass、Hi-passを切り替えながらフィルタースィープをコントロールするという荒削りさで実際、ペダル裏側には配線がホットボンドとマスキングテープで固定してレーシング用フォーミュラカーを見るような迫力がありまする。その肝心の中身なんですが・・ええ、この動画通りのほとんどVCFをノックダウンした 'シンセペダル' と呼びたいエグいもの。これを管楽器などで使ってしまい怒られやしないか(誰に?)とヒヤヒヤするけど、VCFを丸ごと抜き出してきたような帯域幅の広いQの設定で、半踏み状態によるフィルタリングの '質感生成' からワウペダルのリアルタイム性まで威力を発揮します。また本機はBoss FV-500の筐体を利用したことでタコ糸によるスムースな踏み心地なり。しかし、こういうペダルだとついついワウワウのエグい効果に耳が行きがちですが、本機のLo-pass、Band-pass、Hi-passの帯域でフィルタースィープを削りながら '質感' の変化を体感していると、海外の 'フィルターマニア' ではないですけどいろんなフィルターを探求してみたくなりますねえ。一方、米国はメリーランド州ボルチモアで製作する工房、Triode Pedalsのリゾナント・フィルターであるLeviathan。アシッド・エッチングした豪華な筐体に緑のLEDとツマミが見事に映えますけど、その中身もハンドメイドならではの '手作り感' あふれるもので期待させてくれます。いわゆるエンヴェロープ・フィルターの大半がリズミックにワウをかけるものばかりで、ゆったりとフィルターがスウィープ、LFOの音作りに特化したコンパクト・エフェクターって案外多くないんですよね。本機のちょっと分かりにくいパラメータの数々を取説で確認してみると・・。

●Song
コントロールはフィルターのカットオフ周波数を設定します。クラシックなフィルタースウィープを作ることが出来ます。
●Feed
コントロールを調整すれば、レゾナンスフィードバックをコントロールしてエフェクトのかかりを最小から発振まで設定可能。
●↑/↓の3段階切り替えトグルスイッチ
上から順にハイパス、バンドパス、ローパスフィルターの設定です。
LFOセクションはSongコントロールの後に設置されます。ChurnコントロールはLFOスピード、WakeコントロールはLFOの深さを調整します。LFOをフルレンジでオペレートするには、Songを中央に設定し、Feed、Wakeを最大または最小に設定します。
●'Wake' と 'Churn' ツマミ間のトグルスイッチ
LFOの波形を三角波と短形波から選択できます。
●エクスプレッション・ペダル端子とDC端子間にあるトグルスイッチ
LFOのスピードレンジとレンジスイッチです。上側のポジションでFast、下側のポジションでSlowのセッティングとなります。







EMS Synthi Hi-Fli
Digitana Electronics Synthi Hi-Fli
Korg Arp Odyssey Module Duophonic Synthesizer
Korg Arp Odyssey Module Duophonic Synthesizer Review
Monster Multilators: Vintage Guitar Synth Pedals

個人的には、そろそろEMSが製作した '幻の名機' ともいうべきSynthi Hi-Fliをどこかの工房がチャレンジしてくれませんかねえ。ピンク・フロイドのデイヴィッド・ギルモアやジェネシスのスティーヴ・ハケットが使ったという話だけは伝わっておりますが、まず日本の市場でお目にかかることは滅多にない。今年初めのeBayで状態最良のものが日本円にして約90万!ほどの価格で出品されておりました。近年、EMSシンセサイザーの修理を中心に行うDigitana Electronicsから一部 'リビルド' のかたちで少量 '復刻' されましたけど、そもそも生産台数の少ない本機だけにほとんど一般の目に触れることはなかったですね。仕方がないので、KorgのArp Odyssey Moduleをベースに 'EMS風ギターシンセ' のセッティングでも追求してみようかな?









Glou Glou Pralines
Glou Glou

そんなエンヴェロープ・フィルターとモジュレーション、さらにはファズやリング・モジュレーションまでカバーするエグいヤツがフランスはリヨンの新興工房、Glou Glouから2機種登場しますヨ。真っ赤な筐体で '喋り捲る' リゾナント・フィルターのPralinesとマルチ・モジュレーションの集大成的なRendez-Vousは、ギターやベース、キーボードはもちろん管楽器!まで含めてくれるという動画が嬉しい。いやあ、こういうモノの '有る無し' だけで管楽器奏者の懐事情は助かります(苦笑)。というか、名前が 'Rendez-Vous' → 'Deja-Vu' → 'Avant-Garde' と3回も変更されたのか・・(笑)。しかし、さすが '飛び道具の伝道師' とも言うべきKnobsさんは2016年にチェックされていたとはビックリ。今後、この手の製品を製作するビルダーはまず彼の元へ送るべしですねえ(笑)。









Chase Bliss Audio
Chase Bliss Audio Warped Vinyl Mk.Ⅱ
Chase Bliss Audio Warped Vinyl Hi Fi
Chase Bliss Audio Thermae

そして現在の注目株Chase Bliss Audio Warped Vinyl Mk.Ⅱの登場。米国ミネソタ州ミネアポリスに工房を構えるJoel Korte主宰のChase Bliss Audioは、この細身の筐体にデジタルな操作性とアナログの質感に沿った高品質な製品を世に送り出しております。特にこのWarped Vynal Mk.Ⅱのアナログによる古臭い質感をデジタルでコントロールするという、'ハイブリッド' かつ緻密な音作りに感嘆して頂きたい。Tone、Volume、Mix、RPM、Depth、Warpからなる6つのツマミと3つのトグルスイッチが、背面に備えられた 'Expression or Ramp Parameters' という16個のDIPスイッチでガラリと役割が変化、多彩なコントロールを可能にします。タップテンポはもちろんプリセット保存とエクスプレッション・ペダル、MIDIクロックとの同期もするなど、まあ、よくこのMXRサイズでこれだけの機能を詰め込みましたねえ。また、今年の新製品であるアナログ・ディレイ&ピッチ・シフトの 'ハイブリッド機' Thermaeも登場しました。唯一の難点は、この工房の製品はどれもお高いってこと・・。



Cooper Fx
Cooper Fx Generation Loss

そんなWarped Vinyl Mk.Ⅱはもちろん、'ローファイ' のきっかけとなったZ.Vex Effects Instant Lo-Fi Junkyなど '質感' の生成に特化するエフェクターにライバル出現。Cooper FxのGeneration Lossは劣化するコーラス、ヴィブラートの揺れもの効果とオシレータによるノイズの付加、さらにハイパスとローパスのフィルターで鈍らせるなど、なかなかに堪らないものがあります。最近、この手の製品がコンパクト・エフェクターで出回り始めている背景として、いわゆるDAWの 'プラグイン' からの影響がそのままハードへと反映されているのかなあ?などと思ったり・・。

さて、このChase Bliss Audioを筆頭にMIDIが備えられた最近のエフェクターは、いわゆるプログラマブル・スイッチャーのコントロールはもちろん、例えば、単純にドラムマシンとのMIDIクロックによるテンポ同期なども簡単に出来てしまいます。もちろん、それはMIDIだけではなくアナログ・シンセサイザーでお馴染みCV/Gateを備えるもの、LFOによる同期や専用の 'Trigger' 機能を備えたものでも同様の効果を作り出すことが可能です。最近、そんな 'ユーロラック・モジュラーシンセ' と連携、同期して幅広い音作りに対応したコンパクト・エフェクターが登場しております。例えばこちら、WMD Protostarの筐体上部にズラッと並んだ豊富なCV入出力端子。







WMD Protostar

●Attack
エンヴェロープが信号に反応する速さを調整。このツマミでAttackとReleaseの両方をコントロールします。
●Threshold
信号に対してエンヴェロープが反応する敏感さを調整。
●Env Amt
エンヴェロープがフィルターの周波数にどの程度影響するかをコントロールするアッテネーターです。正負両方の設定が可能。
●Resonance
フィードバックやQと同様の意味を持つコントロール。カットオフ周波数周辺のブーストを調整します。
●Freq
フィルターのカットオフ周波数を設定します。
●LFO Rate
前うLFOのスピードを調整します。
●LFO Amt
LFOがフィルターの周波数にどの程度影響するかをコントロール。
●Compression
信号の最終段にあるコンプレッションの強さを調整。余計な音色や共振を抑えるために使用します。
●Dry / Wet
エフェクト音に原音をミックスします。
●Mode
本体の動作モードをボタンで切り替えます。4つのモードは上からノッチダウン、ハイパス、バンドパス、ローパスです。
●Send / Return
外部エフェクトループ。フィルターの前段に設置したいエフェクトを接続します。
●CV / Exp
エクスプレッションペダルを電圧制御(CV)でコントロール。この端子はExp Outに直結します。TRSフォン使用。
●Sidechain
エンヴェロープ・フォロワーへのダイレクト入力です。外部ソースを使用してエンヴェロープ・フォロワーをコントロール。
●Exp Out
CV / Exp入力の信号を出力します。ここからエクスプレションペダルで操作したいソースへと接続。
●Env Out
常時+5Vを出力し、エンヴェロープがトリガーされると0Vになります。
●LFO Out
トライアングルウェーブのLFOを出力します。スピードはLFO Rateでコントロール。
●LFO Rate
LFOのスピードをコントロールするためのCV入力。
●LFO Amt
LFO Amtコントロールを操作するためのCV入力。
●Freq
カットオフ周波数を操作するためのCV入力。
●Feedback
レゾナンスを操作するためのCV入力。

現在、このWMDはコンパクト・エフェクターのほか 'ユーロラック・モジュラーシンセ' の分野にも積極的に参入しているのですが、そのノウハウが本機Protostarにギュッと詰め込まれていると言えます。まずは簡単に本機のEnv OutやLFO OutをLFO RateやLFO Amt、Freq、Feedbackに繋いでみても 'プチ・モジュラー気分' を味わえるのでパッチングしてみましょう。面白いのは本機に 'Send / Return' が備えられているので、ここに同じくCVを備えたエフェクターを繋げばさらに凝った音作りが可能な点。どうでしょう?単純ながら単体のエフェクターだけで音作りするのとは違う複雑な効果が聴こえて来ませんか?



Korg SQ-1 Step Sequencer ①
Korg SQ-1 Step Sequencer ②

いや、そんな大層なモジュラーシンセなんて持ってないよ、などと萎縮する必要はありません。一番手っ取り早いのはKorgから1万弱で発売されている8ステップ・シーケンサーのSQ-1を手に入れて何でもCV(電圧制御)にぶち込んでみて下さい。ただし、基本的なルールとしてこれらCV入力を備えたエフェクターがシンセサイザーと違うのは、シンセでは音量とピッチを同時にコントロールする為に 'CV/Gate' として繋ぐに対し、これらエフェクターはあくまでSQ-1からコントロールする為(CV Out→CV In)に繋ぐということ。上述したWMD ProtostarでいえばLFO Rate、LFO Amt、Freq、FeedbackがSQ-1からコントロール出来るパラメータとなります。もちろん、これらモジュラーシンセとは電圧により複数の機器を同時にコントロール、変調させることが最大の魅力であり、その他シンセと連携させてProtostarのその他CV出力と組み合わせれば、さらに凝った音作りを生成することが出来ます。ちなみに同じCVではありますが、TRSフォンによりコントロールするエクスプレッション・ペダルはここでは割愛します。



さて、ここではそんな大それたことまで網羅できないので(汗)、一部、コンパクト・エフェクターに備えられているCVを見て行こうと思います。また、本格的ともいえるMoogの 'Moogerfooger' シリーズやドイツのKoma Elektronik、Sherman Filterbank 2などもそのパラメータは豊富過ぎるので割愛(苦笑)。ただ、これらの 'シンセライク' なエフェクターと連携させればわざわざモジュラーシンセを用意する必要はないので、是非活用して見て下さいませ。









Dreadbox Epsilon
Dwarfcraft Devices ARF
Malekko Heavy Industry - Malekko Effect Pedals

まずはこちら、Envelope Outを備えたエフェクターでございます。さて、そのエンヴェロープとは何か?といえば、これは音の立ち上がりから持続、減衰といった一連の時間的動きを電圧でコントロールするもの。本格的なシンセではAttack、Decay、Sustain、Releaseとこれら動きを分解して 'ADSR' と称されておりますね。エフェクターでお馴染みなのはVCAで構成されたコンプレッサーのかかり方で体感した方も多いのでは?ここではギリシャの工房、Dreadbox Epsilonと米国の工房、Dwarfcraft Devices ARFの一風変わった '歪み内蔵' エンヴェロープ・フィルター2種。現在、Epsilonはより 'ユーロラック・モジュラーシンセ' との連携を深めた後継機、Epsilon 2に切り替わっておりますが、ここでは現在日本で入手出来る初代のもの。一方のARFは一見すると何だコレ?となりますが、DRV、Freq、Rez、Dpth、Attack、RLZ、Master Vの7つのツマミとFreq CV、Env Out、そして外部からのTrigger入力を備えております。ARFは 'Attack Release Filter' の略で、Epsilon、ARF共に通常のエンヴェロープ・フィルターながらエンヴェロープ・ジェネレーターを入力する信号に対してモメンタリー・スイッチで作動させることが可能。また、Malekkoの 'オート・ヴォリューム' であるエンヴェロープ・モディファイアSneak Attackも、付属のエクスプレッション・スイッチであるLil Buddyを踏むことで同種の効果を生成出来ます。こういうVCAによるフワッとしたエンヴェロープ・コントロール・・ちょっと地味過ぎて分かりにくいかな?





Dwarfcraft Devices Happiness
Recovery Effects Viktrolux

今や '飛び道具' 的発想でEarthqukaer Devicesと並び新作のリリースラッシュなDwarfcraft DevicesからLo-Pass、Band-pass、High-passのマルチモード・フィルターHappiness。基本的にはフツーのエンヴェロープ・フィルターなのですが、Filter CVとScramble CVのほか、LFOのCV出力をマスターにArturiaのアナログシンセとKorgのサンプラーを同期、ユニークなバックトラックにしております。また、ピッチ・モジュレーションの変異系と呼ぶべきRecovery Effects Viktroluxでは、ディレイタイムに対してCVで 'Trigger' 入力がかかるという珍しい仕様。ぐにゃぐにゃした効果としてはMid-Fi ElectronicsのClari (Not)やPitch Pirateなどと同様のものながら、外部ドラムマシンのテンポと同期してリズミックな生成へと変調します。このように従来のギターから離れて、ドラムマシンやサンプラーなどとの多様な制作手法に対応するなど、そのニーズも時代に応じて大きく様変わりしました。









Snazzy Fx
Snazzy Fx Divine Hammer
Snazzy Fx Effect Pedals

現在、積極的に 'ユーロラック・モジュラーシンセ' への分野にも参入するDan Snazalle主宰の工房、Snazzy Fx。このDivine Hammerは何と形容すればよいのか、入力する音をフィルタリングとモジュレーションを加えるという意味ではウェイヴ・シェイパー的アプローチではありますが、本機内蔵のLFOを操作するSpeedツマミとは別にCVとFixedをコントロールするBias、Mod CV、Bias CV、EuroそれぞれのCVで外部との連携した音作りが可能。そしてこの工房を一躍有名にした 'ペダル3種'、Wow and Flutter、Mini Ark、Tracer CityがErica Synthsの協力により '復活' しました!エグい!





Pigtronix Mothership 2 Analog Synthesizer
Korg MS-20M + SQ-1 Monophonic Synthesizer Module Kit
Korg X-911 Guitar Synthesizer

そしてKorg MS-20をCVトリガーにしてPigtronixの 'ギターシンセ' Mothershipを鳴らす。このMS-20に内蔵されている 'Pitch to CV' コンバーターを単体の 'ギターシンセ' に特化させたのがX-911なのですが、このまま行くと間違いなく 'モジュラーシンセ' の領域に足を踏み入れます(笑)。すでに古い使い尽くされた手法ではありますが、一方で現代の 'プラグイン' 世代には、こんなエフェクティヴの領域が従来のペダルを超えて広がる良いきっかけとなるんじゃないでしょうか。












Electro-Harmonix Stereo Talking Machine
Analogue Systems Filterbank FB3 Mk.Ⅱ
Sherman Filterbank 2

管楽器だけについつい好きなフィルター話ばかりになってしまいますが、今年はLudwig Phase Ⅱ Synthesizerの 'クローン' も手に入れたんだった。このLudwigといえばフォルマント・フィルターの '喋るワウ' 効果なんですけど、こんなレアなヤツに手を出さずとも現在では同種の効果を狙えるものが市場に存在します。フィルターの '化け物' として現在でも孤高の存在Sherman Filterbank 2や、まさにそのカタログには '何でもある' 状態の 'エレハモ' から多彩にフォルマントを操作できるStereo Talking Machine。あ、別に機械の中に 'オッサン' が住んでいるワケではありませんヨ(笑)。ある意味、ワウってのはトランペットのミュートから出発した '先祖返り' 的エフェクトというか、管楽器究極の目標は楽器で '歌う' 歌手になることだと思うのです。ちなみにLudwigの 'クローン' で試してみたところ、管楽器ではあまりイイ結果にはならなかった・・(悲)。確か、オリジナルのカタログでは管楽器にも最適って推薦されていたんだけどなあ(謎)。ここまで 'ギターシンセ' だなんだと述べてきましたけど、個人的にはSherman Filterbankのようなもの1台だけであれこれ探求したい欲求もあるんですよね。クラブ・ジャズ的なスリーピース・バンドPhatの活動でその存在を知られ、現在はソロでquartz-headやrabitooほか、いくつかのユニットで活動するサックス奏者藤原大輔さん。1990年代後半にテクノ界隈で人気を博したフィルターSherman Filterbank 2(現在2台使い!)とその下に置くラック型ディレイKorg DL8000RのHold機能を駆使して、過激に発振するエレクトロニカ的スタイルを披露します。これはわたしも '初代機' を所有しているのですが、ほとんどオシレータのないモジュラーシンセといっていい '化け物' 的機器で、どんな音をブチ込んでもまったく予測不能なサウンドに変調してくれます(動画途中の 'Intermission' は長く第2部は58:33〜スタート)。







Elta Music Devices Console (White)
Elta Music Devices Console (Black)
Elta Music Devices PLL-4046

わたしが個人的に気になっていたロシアの新たな才能、Elta Music DevicesのConsoleもかなり満足した一台。コンパクトのマルチ・エフェクツながらSDカードで自社の機能をあれこれ入れ替えて、左手でジョイ・スティックをグリグリ動かすデザインにまとめ上げるなんて素敵過ぎる!その10個のSDカード・カートリッジの中身は以下の通り。

⚫︎Cathedral: Reverb and Space Effects
⚫︎Magic: Pitched Delays
⚫︎Time: Classic Mod Delays
⚫︎Vibrotrem: Modulation Effects
⚫︎Filter: Filter and Wah
⚫︎Vibe: Rotary Phase Mods
⚫︎Pitch Shifter: Octave and Pitch
⚫︎Infinity: Big Ambient Effects
⚫︎String Ringer: Audio Rate Modulation
⚫︎Synthex-1: Bass Synth

'モジュレーション/空間系' 中心のメニューですけど、'Vibe' や 'Vibrotrem'、'Magic' などのピッチを変調させるプログラムが多く、それをジョイ・スティックでグリグリと動かす為に何でもグニャグニャ・・。正直、もう少し幅広いプログラムがあっても良かったですけど今後に期待?個人的に気に入ったのが 'Synthex-1' の 'ベースシンセ' というか、イメージとしてはチューバでブッバ、ブッバとしゃくり上げる感じの効果が面白い。Electro-Harmonix Micro Synthesizerに内蔵された 'Attack' スライダーでエンヴェロープのアタックを消して、Voiceセクションでフィルタースウィープさせる感じと言えば分かって頂けるでしょうか。また、本機は筐体に描かれたデザインが 'マレーヴィチ' 風ロシア・アヴァンギャルドなデザインも良いんだよなあ。そしてEltaの大物というべきハーモニック・シンセサイザーのPLL-4046。PLLとは 'Phased Locked Loop' (位相同期回路)という入力信号からフィードバックで制御したものを短形波に変換、その周波数をマルチプルまたは分割して元のピッチから倍音を生成するというシンセライクなもの。上で紹介した廃盤のIndustrialectric 4046-MやEarthquaker DevicesのData Corrupterなどもこの回路によるものです。










いわゆるコンパクト・エフェクターの全盛期となった1970年代、それをデジタルのテクノロジーで 'ハイファイ' の価値観に押し上げた1980年代、そんな高品質への '反動' から60年代〜70年代 '往年の名機' の再評価が始まった1990年代、そして新旧それぞれの価値観を 'アナログ・モデリング' 含めたハイブリッドの製品開発で今に至る2000年以降・・と、この世界の住人たちは止まるところを知りません。そんな '魔法の小箱' の物語は今年もたっぷりと楽しませて頂きました・・まだ後一ヶ月の間に面白いヤツが出てくるかなあ?

2018年11月4日日曜日

アンプという箱を鳴らす

以前に取り上げた 'アンプ!アンプ!アンプ!' の項を再構成。

正直、場所ばっかり取ってしまうので困るのだけど、やはりライン・ミキサーからパワード・モニターで再生するよりもこぅ、何というかスピーカーから飛び出してくる出音が気持ち良いんですよね。現在、管楽器はライヴからレコーディングにおいてほぼラインによるマイクの収音、PAから '返し' による再生が一般的です。しかし1960年代から70年代においてはラインの音を一旦アンプで鳴らし、その 'かぶり' の入った出音を複数のオフマイクで拾ってマイクで収音した '生音' とミックスするという手法も行われておりました。





マイルス・デイビス1969年の傑作 'Bitches Brew' ではエンジニアにより8トラックを用いて4チャンネル方式で録音し、編成の大型化したアンサンブルに対抗すべくデイビスのトランペットも3通りのやり方で収音しております。まず、デイビスの吹くMartin Committeeにも穴が開けられピエゾ・ピックアップを装着、それをアンプから出力した音にマイクを立てて収音、そのアンプへと出力する直前にDIによって分岐されたラインの音をミキサーへ入力、そしてベルからの生音をマイクを立てて収音され、デイビスの目の前には小型のモニターが置かれてほぼライヴ形式でのレコーディングと言って良いですね。これら3つの音をエンジニアの手により混ぜ合わせることで、デイビスの 'ヴォイス' は自由に加工できる余地が生まれ、それはタイトル曲で印象的なタップ・ディレイの効果に顕著です。







Yamaha Stagepas 400i / 600i

実際、自宅であればこの程度の小さいアンプ、もしくはDTMなどで一般的なライン・ミキサーと小型パワードモニターでも十分過ぎるほど鳴ってくれます。最近は小さいものでも結構パワフルに鳴らせるデジタル・アンプを用いた小型アンプなどが登場しているのですが、しかし、やはりコンボアンプのようなドシッとした箱、それも12インチほどのスピーカーから再生させる方が生音とのバランスを考えるとよく聴こえます。ちなみに現在、管楽器のライヴによる再生方法はYamaha Stagepasに代表される簡易PAシステムを用いたものが一般的。ひと昔前の 'アンプリファイ' な管楽器奏者が好んでいたアンプを用いてのセッティングは、その他電気楽器とのアンサンブルや複数マイクを立てることによる煩雑さから現代ではイヤがられると思います(苦笑)。また、客席側に聴こえるPAを通した '外音' に対して、いわゆる '返し' と呼ばれるステージ上の '中音' を司るパワード・モニターの音量も限度があることから、最近のステージでは管楽器奏者の耳に直接インイヤー・モニターを推奨するPAも多くなってきております(ヴォーカルは完全にコレです)。










Roland KC-150 - 4 Channel Mixing Keyboard Amplifier
Roland KC-350 - 4Channel Stereo Mixing Keyboard Amplifier
Behringer K900FX Ultratone
SWR California Blonde Ⅱ

Youtubeなどで管楽器奏者がよく使っているのはRolandの12インチ一発、最大65W出力のキーボード用アンプKC-150か最大120W出力のKC-350をよく見かけます(去年、このKCシリーズはラインアップを一新してKC-200 & KC-400となりました)。また、比較的入手しやすいキーボード・アンプとしてBehringerの12インチ一発、最大90W出力のK900FXは評判が良いですね。わたしが現在メインで使っているのはSWRの12インチ一発、最大160W出力の 'エレアコ' 用アンプCalifornia Blonde Ⅱでして、特に通常のアンバランス入力のほか 'Low Z Balanced' のスイッチを入れることでTRSフォンのバランス入力に対応すること。取説ではこう記されております。

"ローインピーダンス仕様のギターのバランス出力を入力端子に接続するときは、このスイッチを押し下げてください。TRS端子による接続が必要なバランス接続では、最高のダイナミックレンジと低ノイスの環境が得られます。"

いかにも 'エレアコ' 用といった感じでマイクとAux入力、またアンサンブル中での '音抜け' を意識して 'ドンシャリ' にする機能 'Aural Enhancer' を備えるなど、ライヴにおける使い勝手を意識したデザインとなっております。EQはBass、Mid Range、Trebleの3バンドでリアにハイのツィーターをコントロールするツマミが個別に用意、外部エフェクツ用 'センド・リターン' とスプリング・リヴァーブを内蔵(ちょっとノイズ多目ですが)。ちなみに各ツマミは少々ガリの出やすいところが玉に瑕で、重量も堂々の24Kgと重たいものの、アンプとしての音色は後述するGenz-Benz UC4よりかなり好みですね。


Genz-Benz UC4-112T
Ashly LX-308B 8 Channel Mic / Line Mixer
Mastro Valvola

サブというか、色々なエフェクツの '実験用' として所有しているのがこちら、Genz-Benzの最大135W出力なPA用コンボアンプというかなり変わった仕様のUC4。スプリング・リヴァーブと4つの入力というミキサー機能を備え、その内のひとつがライン入力なのでAshlyのライン・ミキサーLX-308Bと組み合わせて使用中。内蔵空冷ファンが少々うるさいものの、キャビネット内部の吸音材を廃材の古布を利用したニードフェルトに入れ替えたことでハッキリした定位とタイトな音色に変わりましたが、基本的な出音はPAライクな素っ気ないもの(苦笑)。Ashlayのライン・ミキサーを使用しているのは、一度エフェクターからの出力をパッシヴDIでローインピーダンスのバランス出力へと変換、ミキサーからUC4のラインへと入力する為です。また、UC4の 'センド・リターン' にはMastro ValvolaのTimelab Multi Delayを繋いでおります。



Carvin AG100D

 こちらはそんなGenz-Benz UC4とよく似た構成のアコースティック&PA用コンボアンプ、Carvin AG100D。12インチ一発の100W出力で3つの独立した入力チャンネルとデジタル・エフェクツ、5バンドのグラフィックEQを内蔵しております。Ch.1はアコギやエレキ、Ch.2はドラムマシンにキーボードなど、そしてCh.3はマイク/ライン入力となっており、管楽器であるならばパッシヴDIからライン・ミキサーを経てこのCh.3にラインで入力したいですね。以前はサウンドハウスが代理店として扱っておりましたが、その後Carvinが楽器製作をやめてしまったことで現在では中古で探さなければなりません。











Kustom Amplification
Kustom Amplification Bass 150
Trace Elliot 7215SMC GP7

いわゆるエレクトリック・ギター用のアンプは中域に特徴の歪ませること前提としたモノなので、クリーンに幅広い帯域で鳴らす管楽器では不要なノイズも目立ち上手く行きません。一方、低域という幅広い帯域を確保すべく鳴らすベース・アンプはクリーンであることが前提であり、実は 'エレアコ' 用アンプの代用としても十分機能します。Guillaume Perretさんはテナーサックスでかなり歪ませるタイプのようですが(汗)、ここではAmpegのベース用スタックアンプで気持ち良く鳴らしております。さらに続く 'メリーさんの羊' オジサン(笑)の動画では、モコモコしたビニール地のソファ風アンプで有名なKustomのスタックアンプを鳴らしており、リンク先の 'Kustomファン' によるサイトによれば150W12インチ2発によるBass 150というモデルのようです。その下の 'アンビエント' 風ドローンなサックスは、Trace Elliotの150WベースアンプGP7によるもの。しかしこのTrace Elliotは音色含め、イマイチ抜けが悪いという評価もありベーシストにとっては好き嫌いの別れるアンプのようですねえ。






さて、このようなベース用スタックアンプとして有名なのが、あのジャコ・パストリアスが愛用したことでも知られる名機、Acoustic Control Corporationの360 + 361の組み合わせ。近年、その 'ジャコ熱' のマニアに推されてか '復刻' しましたけど、このAcousticのアンプはそのクリーンな鳴りから管楽器奏者の 'アンプリファイ' でも広く普及しました。エディ・ハリス、ランディ・ブレッカー、フランク・ザッパのマザーズ・オブ・インヴェンションではザッパはもちろん、イアン・アンダーウッドとバンク・ガードナーの '管楽器組' が使いました。そして1970年から73年の来日直前まで御大、マイルス・デイビスのステージの後ろにそそり立っていたAcousticの壁。デイビスはギター用の260 + 261、361キャビネットの組み合わせで鳴らしていたようです。ちなみにこのスタックアンプは当然ながら80Kg近くの重量があり、これまた当然ながら自宅で使うものではありません(汗)。





Yamaha PE-200A + TS-110
Yamaha PE-200A + TS-100
Yamaha PE-200A
Yamaha TS-200

そんなAcoustic Control Corporationから、1973年の来日公演を機にエンドース契約をして使い始めたのがYamahaのPAシステム。デイビスも使用したヘッドアンプ部のYamaha PE-200Aはスプリング・リヴァーブ、トレモロのほかにオートワウ!も内蔵されており、そのオートワウも 'Wah Wah Pedal' という端子にエクスプレッション・ペダルを繋ぐことでペダル・コントロールできるというかなり変わった仕様。案外、デイビスはワウペダルだけじゃなくこのオートワウも 'On' にしていたのでは?そしてパワーアンプ内蔵のTS-110キャビネット部分を縦に赤、黒、緑と'アフロカラー' で染め上げ、上から 'MILES、DAVIS、YAMAHA' とレタリングをすれば、もう気分は70年代の 'エレクトリック・マイルス' 一色!メチャクチャ欲しいけれど、12インチ二発で上下合わせて60Kg強という'冷蔵庫' のようなスタックアンプでございます(汗)。





Musicman Amps HD / RD Series
Musicman 115B 250 Bass Combo

一方、こちらのイアン・カー率いるジャズ・ロック・グループ、ニュークリアスのステージではドイツのアンプ、PAメーカーDynacordのアンプがチラッと映っておりますね。ここでもベルからの  '生音' はマイクからそのままPA、ワウペダルを踏む 'アンプリファイ' のトーンはDynacordのアンプにマイク立てて集音、PAのミキサーでミックスされて会場のパワードモニターに振り分けられており、昔はこれが一般的な管楽器の 'アンプリファイ' による再生方法でした。また、ノルウェーのパレ・ミッケルボルグはテリエ・リピダルとの1978年のステージでMusicmanのアンプを用い、この向かい合わせの客に対して一人 '異空間' なラッパを吹いている(笑)。バンドの規模にもよりますけどでっかいスタックアンプではなく、60〜120W程度のアンプでもPAを併用すれば十分な音量を確保することが出来ます。






Fender Pro Reverb
Fender Solid State Reverb FR-1000
Roland JC-120 Jazz Chorus
Roland JC: Send Return Operation

もちろん、ギター用アンプも全てが合わないというワケではなく、例えば1993年に '復活' したザ・ブレッカー・ブラザーズのランディ・ブレッカーはRolandのトランジスタアンプの定番、JC-120 Jazz Chorusを2台ステレオで使用しており、また、1968年の管楽器 'アンプリファイ' 黎明期の立役者、ドン・エリスは最大40W出力で12インチ一発のFender Pro Reverbアンプとスプリング・リヴァーブのFR-1000を用いて同社カタログに堂々登場しております。このFenderのギターアンプはSnarky Puppyのラッパ吹き、Mike 'Maz' Maherさんもスタジオでダイナミック・マイクのSM58を立ててワウやオクターヴ・ファズによるワイルドなトーンを実践!しかし、一転してディレイの柔らかいトーンの場合は繊細なリボン・マイクでライン録音とそれぞれの使い分けによる違いがよく分かります。ちなみにJazz Chorusにはラインで鳴らす為の '裏ワザ' があり、本機の後ろにあるReturnからステレオで接続することでJCのパワー・アンプのみを利用できること。例えばアンプ・シミュレーターなどで好みのトーンを設定し、後はJCのクリーン&ステレオ・コーラスな鳴りを堪能することが出来まする。コレ、最近はエレクトリック・ギターもラインアンプを用いてLine 6やKemperによる ' アンプ・シミュレーション' 的な音作りが一般的になってきましたけど、管楽器による 'アンプリファイ' でも十分応用できるものだと思いますね。そんな上記動画の1993年ザ・ブレッカー・ブラザーズ '復活' ツアーの際、来日公演時の 'Jazz Life' 誌とのインタビューによる機材話が興味深いので抜粋してみます。

ランディ "ここには特別話すほどのものはないけどね(笑)。"

− マイク・スターンのエフェクターとほとんど同じですね。

ランディ "うん、そうだ(笑)。コーラスとディレイとオクターバーはみんなよく使ってるからね。ディストーションはトランペットにはちょっと・・(笑)。でも、Bossのギター用エフェクツはトランペットでもいけるよ。トランペットに付けたマイクでもよく通る。"

− プリアンプは使っていますか?

ランディ "ラックのイコライザーをプリアンプ的に使ってる。ラックのエフェクトに関してはそんなに説明もいらないと思うけど、MIDIディヴァイスが入ってて、ノイズゲートでトリガーをハードにしている。それからDigitechのハーモナイザーとミキサー(Roland M-120)がラックに入ってる。"

− ステレオで出力してますね?

ランディ "ぼくはどうなってるのか知らないんだ。エンジニアがセッティングしてくれたから。出力はステレオになってるみたいだけど、どうつながっているのかな?いつもワイヤレスのマイクを使うけど、東京のこの場所だと無線を拾ってしまうから使ってない(笑)。生音とエフェクト音を半々で混ぜて出しているはずだよ。"

− このセッティングはいつからですか?

ランディ "このバンドを始めた時からだ。ハーモナイザーは3、4年使ってる。すごく良いけど値段が高い(笑)。トラック(追従性のこと)も良いし、スケールをダイアトニックにフォローして2声とか3声で使える。そんなに実用的でないけど、モーダルな曲だったら大丈夫だ。ぼくの曲はコードがよく変わるから問題がある(笑)。まあ、オクターヴで使うことが多いね。ハーマン・ミュートの音にオクターヴ上を重ねるとナイス・サウンドだ。このバンドだとトランペットが埋もれてしまうこともあるのでそんな時はエッジを付けるのに役立つ。"

− E-mu Proteus(シンセサイザー)のどんな音を使ってますか?

ランディ "スペイシーなサウンドをいろいろ使ってる。時間があればOberheim Matrix 1000のサウンドを試してみたい。とにかく、時間を取られるからね。この手の作業は(笑)。家にはAkaiのサンプラーとかいろいろあるけど、それをいじる時間が欲しいよ。"

− アンプはRolandのJazz Chorusですね。

ランディ "2台をステレオで使ってる。"





Fishman Loudbox Artist Amplifier
Fishman SA330X Solo Performance System
Fishman SA220 Solo Performance System
Bose L1 Compact System

このほか、Fishmanの8インチ一発、100W(最大230W)出力のLoudbox 100 Pro-LBX 400なども管楽器に最適。個人的には現行Loudboxシリーズより、この 'ディスコン' となった前モデルの方が無骨な感じで好きですねえ。その他、6インチ二発で130W(最大500W)出力のPro-LBX-300などもありましたが、'エレアコ' アンプにおける最大出力というのは、エレキギター用アンプなどに比べればその体感度はスペックとかなりかけ離れた印象がありますけど、このLoudboxシリーズは(その名の如く)12インチ未満ながらかなりの音量も得られることで評価が高い。正直、小口径で音量が小さいと音圧はもちろん '生音' との兼ね合いでバランスが悪いんですよね。さて、このような縦と横の方向へまっすぐ飛んでいくスピーカーの箱に対し、あくまで水平方向に広がる特性で狙った範囲に音を行き渡らせて距離による減衰を抑えたラインアレイ型の簡易PAシステムがあります。FishmanのSA330XやBoseのL1 Compact Systemなどは管楽器でも十分な威力を発揮してくれそうですね。ま、こんなカタチなので箱っていう鳴り方とは真逆ですけど・・。




Barcus-berry XL-8
Barcus-berry 1720
Barcus-berry 1520 Preamp + 1602 Poweramp-Head Combo
Vox Ampliphonic Sound Nova Amplifier ①
Vox Ampliphonic Sound Nova Amplifier ②

1970年代に 'エレアコ' の分野でそのシェアを伸ばしてきた老舗、Barcus-berry。上のカタログでもコンボタイプから大型なPA用パワードモニターに至るまで幅広くラインアップしており、1970年代後半に登場した8インチ一発の最大出力15WのXL-8は3バンドEQとMasterヴォリュームのほか、InputにDriveとVolumeの備えた2ヴォリューム仕様という変わったものです。また1960年代後半、H&A Selmer Inc. Varitoneをきっかけに登場したVox AmpliphonicやGibson / Maestroからも専用のアンプが用意されており、わたしもC.G. ConnがMulti-Viderの為に用意した500 Amplifierを所有しておりますが、とにかくデカイ音で 'ぶっとい' オクターヴ音がキャビネットから飛び出してくるのが快感!。しかしVolumeのつまみは10時くらいが限度ですねえ・・(汗)。本機は2つの入力とVolume、Treble、Bassの2バンドEQ、トレモロとスプリング・リヴァーブを備えたシンプルなものなのですが、ユニークなのは各ツマミが大小2つのツマミとして二重に操作出来るのです(上手く伝わってるかな?)。EMSシンセサイザーなどにも採用されているバーニアダイヤルと同様の構造ですね。また2つの入力とは別にMulti-Vider専用の入力もあるのですが、こちらはあくまでパワー・アンプからの再生のみでプリと各ツマミ類は使えません。







H&A.Selmer Inc. Varitone ①
H&A.Selmer Inc. Varitone ②

そしてH&A.Selmer Inc.が手がけた元祖 'アンプリファイ' サウンド・システム、Varitone。Selmerブランドのほか、管楽器への市場拡大を狙ってなのかBuesherブランドでも販売されておりましたが、製作自体は現在でもPAの分野で大手のElectro Voiceが担当したようです。振動を感知して電気信号に変換するピエゾ・トランスデューサー方式のピックアップは、音源に対して理想的な取り付け位置を見つけるのが難しく、マウスピース部分はもちろん、金管楽器のリードパイプやベルの真横などいろいろ試しながら完成に漕ぎ着けたとのこと。ちなみにVaritoneは通常の '3300 Auditorium Model' のほか、上の動画にある '3100 Club Model' の2種がラインナップされておりました。この 'Club Model' はライヴなどの汎用性を高めた '若干' 小ぶりな仕様であり、一般的な 'Auditorium Model' のアンプ正面に備えられていたTremoloの 'Speed' と 'Depth' コントロールは内部に移されております。







1969年にOvationと協業でHammondが製作した世界初のギター・シンセサイザー、Innovexブランドの 'Condor' シリーズも専用のPA用アンプを用意しておりました。そういえばマイルス・デイビスの家にHammondがInnovex Condor RSMのフルセットを送り付けてきたという話がありましたけど、このアンプがリビングにデンと鎮座していたのだろうか?(笑)。しかし、デイビスとPAによる 'アンプリファイ' の関係も苦難の連続だったようですね。1966年にキャノンボール・アダレイが大ヒットさせた 'Mercy Mercy Mercy' を聴いて触発され、そこでエレクトリック・ピアノを弾くジョー・ザヴィヌルとPAをチェックする為にわざわざメキシコの公演まで足を運び、自分もさっそく導入したもののお互いが聴き取りづらいという不満から各種モニターとそれを運び込むフォルクスワーゲンのミニバンまで購入。また 'Freedom Jazz Dance' のカバーが縁となり、一足先にサックスの 'アンプリファイ' を探求していたエディ・ハリスにも助言をもらいながら、この新しい表現様式で '何が' 出来るのかを慎重に精査していたマイルス・デイビス・・。初めて '電気ラッパ' をアンプに繋ぎ、あれこれ試し吹きしているデモ音源とか '発掘' されたら興奮するだろうなあ。









ラインで鳴らすという意味ではPA用のパワードミキサーとモニターの組み合わせと同じなのだけど、やはり、自分の隣や後ろにアンプがドンと置いてある存在、そのキャビネットから音が飛び出してくる感じが好きだ。あくまでラインレベルという意味ではとてもギター用アンプと比較は出来ませんが、ほんの少しだけギタリストの求める気持ちが分かったかも(笑)。

2018年11月3日土曜日

ピート・コージーの機材

わたしはギターを弾かないのですが、いわゆる 'エレクトリック・マイルス' の時期にひとり異彩を放っていた怪人ギタリスト、ピート・コージーの機材については強い関心を持っております。正直、その活動歴の大半がこのわずか3年ちょっとの時期に集約されており、それ以前の地元シカゴでChessやArgo / Cadetレーベルのセッション・ミュージシャンをやっていた頃や、マイルス・デイビス共演と並行してやっていたAACM(創造的音楽のための地位向上協会)とその他、散発的な仕事についてはほとんど分かっておりません。











Morris Mando Mania

現在ではブートレグなどで比較的良好な画質の '放送用動画' がお手軽にYoutubeでチェックすることが出来るのですが、なかなかピート・コージーの '足元' をはっきりと写してくれるものはありません。使用するギターはFenderのStratocasterやTerecaster、ピグスビーアーム付きのGibson Les Pallなど一般的ではありますが、1973年のオーストリアはウィーン公演の動画を見るとVoxのPhantom Ⅻという12弦ギターによるビザールなセレクトが泣かせます。また、この時期のコージーのトレードマーク的存在なのがこちら、日本のモリダイラ楽器のブランドMorrisが少量製作した透明アクリルのピックガード付き木目調のセミアコ、Morris Mando Mania。現在ではEastwood Guitarsという工房からピート・コージーのイメージに当て込んで '復刻' していたようです。



Yamaha PE-200A + TS-110
Yamaha PE-200A + TS-100
Yamaha PE-200A
Yamaha TS-200

その巨漢を上回る後ろに控えたスタックアンプは同年の東京公演以降、Yamahaのエンドースによって用意されたPE-200AとTS110の組み合わせ。これはコージーやレジー・ルーカス始め管楽器群のデイビスやデイヴ・リーブマン、ソニー・フォーチュンに至るまで皆このクリーンなアンプでの音作りに終始します。さて、そんなコージーの機材で最も見えにくいのがテーブルの上と下に置かれているエフェクターでして、基本的にコージーの歪みはアンプではなくエフェクターによって音作りされているようです。ちなみにこのPE-200Aは、一般的なBass、Middle、Trebleの3バンドEQとスプリング・リヴァーブのほか、内蔵のトレモロとエンヴェロープ・フィルター!をそれぞれ切り替えてエクスプレッション・ペダルでコントロール出来るというユニークな仕様。さて、当時の 'スイングジャーナル' 誌1975年来日公演の取材記事を開くと足元のペダル類に関してはこう記載されております。

"初演を待つ東京・新宿厚生年金ホールの舞台では、午後、一番にやってきたロード・マネージャーのクリス・マーフィーが、バンドのサウンド・システムをひとつひとつたん念にチェックしている。なにしろ、7人のミュージシャンたちが演奏に使用するペダル類のアンプへの接続だけでもひと仕事だ。マイルスがトランペットに接続しているペダルは、オハイオ州トレドにあるパワー・インダストリーズ社製の「De Armond」とキング製「Vox-Wah」というワーワー・ペダルの2種。マイルスは今回、マーティンの新しいトランペット(ブルーのメタリック塗装がほどこしてある)を持参したが、マウスピースはGiarnelli Specialと刻印のある古いもの。これは、マイルスが12才(!)のときから使ってきた愛器。このマウス・ピースに無造作にガムテープでピックアップ・マイクがくっつけてあった。ヤマハ・オルガンには、パワー・ペダルとCry Bofyというペダルがついている。ソニー・フォーチュンが使っているペダルは「De Armond」。レジー・ルーカスはモーレイ社製の「Sho-Bud」というペダル。ムトゥーメは「Univox」というリズムボックスにMu-Tron Ⅲという変調器を接続している。ピート・コージーはマエストロ社製のFuzz-Tron、それにPhase 90という変調器、さらにSynthiというアタッシュ・ケースの形をした小型シンセサイザーを用い、テーブルの下に3台のペダルを用意している。ベースのマイケル・ヘンダーソンはマエストロ社製のPhase Shifterを用いている。" (原文ママ)









Forgotten Heros: Pete Cosey
Maestro FZ-1S Fuzz Tone
Maestro FZ-1B Fuzz Tone ①
Maestro FZ-1B Fuzz Tone ②
Maestro FZ-1B Fuzz Tone John Landgraff Modified
Jordan Electronics Model 1000 Boss Tone ①
Jordan Electronics Model 1000 Boss Tone ②
MXR Phase 90

まあ、ジャズ専門誌なのでいくつか表記の怪しいものもあるのですが(苦笑)、レジー・ルーカスの足元はMorleyの巨大なワウペダルとSho-Budのヴォリューム・ペダル、そして他のステージ写真で確認したのですがMXR Phase 90とDallas-Arbiter Fuzz Faceを使っておりました。ムトゥーメが使うリズムボックスは1973年の来日時にデイビスのバックステージへ急遽届けられたもので、多分、新映電気がUnicord社へOEMで生産していたものだと推測されます。そして、ここでコージーの使うFuzz-Tronとは世界初のファズ・ボックス、Maestro Fuzz Toneのことであり、これはシカゴ出身のコージーがMaestroエフェクターを製作していたC.M.I.(Chicago Musical Instruments)との関係を考えると無理のないセレクトと言えるでしょう。ここで問題はFuzz ToneでもFZ-1BとFZ-1Sのどちらだったのか?ということ。FZ-1Bはここでのデモ動画でもお分かりのように、ザ・ローリング・ストーンズ1965年の 'Satisfaction' で印象的なブラスっぽいリフを奏でたFZ-1Aの直系に当たるモデル。FZ-1SはよりSastainを伸ばすことで当時のElectro-Harmonix Big Muffへの対抗機的位置付けなのかな?どちらにしてもファズ特有のジージー&コンプ感が強いですね。そしてリンク先の 'Forgotten Heros: Pete Cosey' によれば、Jordan ElectronicsのBoss Toneというアタッチメント的なファズも使用していたとのこと。Phase 90は現在でもフェイザーの名機として定番のMXR製であり、時期的にはいわゆるスクリプト・ロゴの軽いBud筐体の入った初期のものだと思います。当時のステージ写真を見るとPhase 90は足元ではなく机の上に置いて手でOn/Offして使用していたようですね。さらにテーブルの下に3台のペダルを用意しているとありますが、多分、ワウペダルの他にこれはウィーン公演の動画(1:01!)及びいくつかのステージ写真で一瞬、その足元を写したことから判明したのですが、Musitronicsのエンヴェロープ・フィルターであるMu-Tron Ⅲなのです。











Musitronics Mu-Tron Ⅲ
Vox Clyde McCoy Wah Wah Pedal
Morley Tel-Ray Pedals (Pre-1983)
Halifax Fuzz Wah Z
Hofner Fuzz Wah Z
Halifax Fuzz Wah Z2

さあ、ここまでくると肝心のワウペダルが気になりますが、エンヴェロープ・フィルターの名機であるMu-Tron Ⅲ以外では'Forgotten Heros: Pete Cosey' によればコージーのワウについてこう記されております。

"He Sat behind the table and put his effects - two wahs (a Morley for warm tones, a Halifax for solos, and Sometimes a Vox Clyde McCoy)"

なるほど、コージーは足元に2つのワウを置いていたようで、一つがMorleyの暖かなトーンを持つワウ、そしてワウペダルの名機、Vox Clyde McCoyをたまにスイッチして使っていたそうですけど、彼のリードトーンを司るのがドイツのHalifaxからのマニアックなファズワウ・ペダルだったとは!上記の 'スイングジャーナル' 誌から抜粋したステージ写真で確かにそのHalifaxのペダルを踏んでおりますね。このHalifaxはOEMとして 'Hofner' ブランドでも製造していたようですが、同じドイツ産のSchallerのファズワウ・ペダル同様プラスティック製筐体なのかな?





Maestro FP-1 Fuzz Phazzer
Maestro FP-2 Fuzz Phazzer

個人的には、この人から漂う 'マイナー感' (VoxのPhantomやMaestro Fuzz Tone、Halifaxとか)のせいか、例えばFuzz Toneと同じくMaestroのFuzz Phazzerなどを聴いていると、'アガパン' での蛇がのた打ち回ったようなトーンでコージーが使っていてもおかしくないエグい感じがある。Fuzz Phazzerは実際にコージーが使っていたワケではありませんが、何となくコージーっぽい音色があるってことでここで推薦します。さて、上記した ' スイングジャーナル' 誌のステージ写真に見えるHalifaxの前段に繋いだFuse付き銀メッキの怪しげなボックス・・何なのだろう???どう見てもMaestroには見えないし、銀メッキで斜面型の箱ですがこんなペダルは見たことありません。上のステージ写真ではギターケースで見えませんけど、接続順としてHalifaxの次にMu-Tron Ⅲを繋いでおります。





Maestro Phase Shifter PS-1A + PSFW-2 Foot Switch
Heptode Virtuoso Phase Shifter

ちなみに 'エレクトリック・マイルス' 全盛期の1973年のステージで、レジー・ルーカス、マイケル・ヘンダーソン、そしてデイヴ・リーブマンらの足元に鎮座していたのが世界初のフェイザー、Maestro Phase Shifter PS-1A。トム・オーバーハイムにより設計された本機は大ヒットとなり、後続の小型化したMXR Phase 90やElectro-Harmonix Small Stoneの普及と合わせて '70'sフェイザーの時代' を象徴しました。最近、アプローチする人は少ないけど、この時期のデイヴ・リーブマンが奏でる管楽器のフェイズの効いた 'オルガン・トーン' が凄い好きだなあ。










1973年の4月に加入したコージーがそれまでの10人編成から一挙に7人編成となり、実質的な 'コージーお披露目会' 的様相となった東京公演。いわゆる 'アガパン' の妖艶なギターと比べてもエフェクツ類の少ない素朴なセッティングというか、まだまだ 'ジミヘン度' が足りませんねえ(笑)。この加入当初のコージーのギターに聴ける 'ホーンライク' なフレイズにはジャズ・ギタリストとしての片鱗も垣間見えて、これは同じくジョン・コルトレーンからの影響を公言するもうひとりの怪人ギタリスト、ソニー・シャーロックと同質なものだと思うのです。さらにもうひとり、オーネット・コールマンから 'ハーモロディクス' の薫陶を受けた変態ギタリスト、ジェームズ 'ブラッド' ウルマー。そもそもコールマンが 'Prime Time' 結成に際して最初に声を掛けたのがコージーの '相方' であったレジー・ルーカス。結局はルーカスが同郷のジャマラディーン・タクーマを推薦することで加入することは無かったのですが、しかし、コールマンがバーン・ニックス&チャールズ・エラービーの '2ギター' を見つけられなければコージー&ルーカスの '2ギター' は、'Prime Time' として再出発していたかもしれませんねえ。そんな '2ギター' の絡みでイマイチ聴き取りにくいレジー・ルーカスのファンク・カッティングを堪能出来るのがこちら、1973年11月7日の旧ユーゴスラヴィア、ベオグラード公演の音源をどーぞ。さて、この怪人ギタリストを異様なものにしているアイテムのひとつとして、1971年に英国のEMSが開発したSynthi Aの使用があります。まだまだモノフォニックのアナログ・シンセ黎明期、記憶媒体のない本機をSonyのカセット・レコーダー 'Densuke' と共に用いることで、実に前衛的な 'ライヴ・エレクトロニクス' の効果を生み出しました。1975年の 'スイングジャーナル' 誌でもこう取り上げられております。





EMS Synthesizer

"果たせるかな、マイルスの日本公演に関しては「さすがにスゴい!」から「ウム、どうもあの電化サウンドはわからん」まで賛否両論、巷のファンのうるさいこと。いや、今回のマイルス公演に関しては、評論家の間でも意見はどうやら真っ二つに割れた感じ。ところで今回、マイルス・デイビス七重奏団が日本公演で駆使したアンプ、スピーカー、各楽器の総重量はなんと12トン(前回公演時はわずかに4トン!)。主催者側の読売新聞社が楽器類の運搬に一番苦労したというのも頷ける話だ。その巨大な音響装置から今回送り出されたエレクトリック・サウンドの中でファン、関係者をギョッとさせたのが、ギターのピート・コージーが秘密兵器として持参した 'Synthi' と呼ばれるポータブル・シンセサイザーの威力。ピートはロンドン製だと語っていたが、アタッシュケースほどのこの 'Synthi' は、オルガン的サウンドからフルートやサックスなど各種楽器に近い音を出すほか、ステージ両サイドの花道に設置された計8個の巨大なスピーカーから出る音を、左右チャンネルの使い分けで位相を移動させることができ、聴き手を右往左往させたのも実はこの 'Synthi' の威力だったわけ。ちなみにピートは、ワウワウ3台、変調器、ファズトーンなどを隠し持ってギターと共にそれらを駆使していたわけである。" (原文ママ)





実際その '右往左往ぶり' は、1996年にリマスタリングされた 'Agharta' 完全版の二枚目最後のところ(オリジナル版では割愛されていた部分)で存分に堪能することができます。また1974年の 'Get Up With It' に収録された 'Maiysha' では、ギターを本機の外部入力から通し、Synthi内臓のLFOとスプリング・リヴァーブをかけた奇妙なトレモロの効果を聴くことができますね。









ここでもうひとり。ほとんど '飛び入り' の如くステージに上がりマイルス・デイビス・グループの '公開オーディション' を受けて1年弱、バンド・アンサンブルの拡大に貢献?した若干18歳のフレンチ・ブラジリアン、ドミニク・ゴモン。その彼の記録である1974年3月30日、ニューヨークはクラシックの殿堂 'カーネギー・ホール' でのライヴを収めた 'Dark Magus' は、ゴモンとピート・コージー、レジー・ルーカスの '3ギター' によるほとんど獰猛なピラニアが獲物に喰らい付くようなカオス状態に終始しているのですが、その他、ブートレグでは5月28日のブラジル、サンパウロ公演のものが比較的良好な音源で聴くことが可能。こうやってゴモン単体での音源、動画などを見ると結構タイトかつファンキーなギタリストであることが分かります。ファンカデリックから80年代のマイルス・デイビス・グループを経験したドウェイン 'ブラックバード' マクナイトと似た匂いも感じるなあ。裏を返せばピート・コージーのようなフリーキーの要素は薄いのだけど、多分、デイビスの意図はコージーに足りなかった '妖艶さ' を体得すべくゴモンを 'カンフル剤' として起用したんじゃないかな、と思うのです。もちろん、その効果は翌年の 'アガパン' を聴けば納得して頂けるのではないでしょうか。







とにかくそのメジャーな活動歴も短ければ動画や資料も少ない・・。それでいて一聴すればコイツは何者だ!?とその興味を惹かれずにはいられない稀有な存在、ピート・コージー。未だにギター業界ではジミ・ヘンドリクスの機材やセッティングについて、ああでもない、こうでもないと現代の技術で 'モデリング' したり、個人の情熱でヴィンテージのパーツを見つけては何とか '再現' しようとする市場があるのだから面白いものですね。いつか、この怪人ギタリストに興味を持って追求する人が現れるかもしれません。